12/4日経ビジネスオンライン 北村豊『富豪を誘拐、見知らぬ女性を絞殺させた狂気 脅された富豪は、罪に処されるべきか』について

如何に中国人の発想と日本人の発想が違うかという事を日本人はもっと自覚しないと。「人類は皆兄弟」というのは、敵が騙しやすい日本人を相手にするときに使って、利用する目的のためです。日本人も、相対化して見れば、如何に世界は薄汚れているか気付くはずです。

請託殺人ですから4人組は殺人罪の共同正犯になるのか教唆犯になるのか分かりませんが、当然殺人罪を構成するでしょう。中国ですから2審で即日死刑となると思います。こちらにあります「犯罪阻却事由」は日本で言う「違法性阻却自由」で、「脅従犯」は「強要された緊急避難行為者」に近いと思います。日本でも脅されて殺人を起こした裁判例があります。

http://www.ritsumei.ac.jp/acd/cg/law/lex/98-6/matumiya.htm

日本でもこう言うことがもっと起こるようになるかもしれません。「悪友」と付き合えば似た発想になるからです。中韓へのビザ緩和はすべきではありませんし、帰化条件ももっと厳しくすべきです。

この記事で主張されていますように、殺された人の遺族に、殺人を強要された人は補償金を支払うべきです。1億元を払わずに済んだのですから。その1割でも払うべきでしょう。

記事

11月10日、四川省の“宜賓(ぎひん)市”で同市一の富豪が何者かに誘拐された。誘拐された富豪は犯人一味に手製の拳銃を突きつけられて身代金の支払いを要求された。命の危険を感じた富豪は身代金の支払いに同意したが、犯人たちの要求はそれだけに止まらなかった。犯人たちは富豪に彼らが別途誘拐して来た女性の殺害を要求したのだった。要求に従えば生きられるが、従わなければ殺される。生か死か。富豪が選んだのは、見知らぬ女性を殺害することだった。やむなく富豪は女性をロープで首を絞めて殺害したが、犯人たちはその絞殺の過程をビデオに撮っていた。犯人たちはそのビデオ映像を富豪が殺人を犯した証拠として残した上で、富豪を解放したのだったが、それは富豪に事件を公安警察へ通報させないためだった。

身代金1億元の支払いに同意したが…

 中国メディアが一斉に報じた「宜賓“首富(第一の富豪)”が誘拐され、脅されて殺人を犯した事件」の概要は以下の通り。

【1】宜賓市は四川省の南部に位置し、その境を貴州省と雲南省に接している。人口は554万人であり、このうちの80%以上が農業に従事している、純然たる農業地域である。一方、面積は1万3283km2であるが、これは日本で第4位の面積を持つ長野県(1万3562km2)とほぼ匹敵する広さである。なお、中国一の大河“長江(揚子江)”は、上流の“金沙江”と“岷江”が宜賓市で合流することによって始まることから、宜賓市は“万里長江第一城(長江第一番目の都市)”として知られている。

【2】誘拐された富豪は“章英啓”(53歳)、宜賓市を本拠とする“伊力集団有限公司”(以下「伊力集団」)の“法人代表(法定責任者)”である。章英啓はかつて宜賓市内の某工場に勤めていたが、工場を辞めた後に商売の道に入って成功を収め、1993年に伊力集団を設立した。伊力集団はその後順調に成長を続け、単一の化学製品の生産から始めた業務は締付金具、水力発電開発、不動産開発、石炭開発、貿易、高速道路建設などにまで発展し、今や宜賓市のみならず四川省内でも知られた押しも押されもしない企業となっている。伊力集団は傘下に多数の子会社を有するが、子会社を合わせた従業員は2000名余りである。また、伊力集団の販売ネットワークは全国30の省・自治区・直轄市に及んでおり、その製品は欧州、南米、中東、東南アジア、韓国、台湾などへ輸出されている。なお、伊力集団は宜賓市の優秀民営企業として認定されている。

【3】その伊力集団の代表である章英啓が誘拐されたのは、11月10日の夜9時頃だった。章英啓は宜賓市中心部を流れる長江の南岸に位置する“翠屏区”の住宅団地“南岸雪絨花園”内の高級マンションにある自宅へ帰ろうと、マンションのエレベーターに乗ったところを襲われて誘拐された。エレベーター内で誘拐犯たちは唐辛子スプレーを噴霧して章英啓の自由を奪い、手足を縛った上で「さるぐつわ」を噛ませ、目隠しをした。その後、犯人たちは章英啓を車に乗せて、同じ翠屏区内にある金沙江沿いの辺鄙な場所に彼らが事前に借りていた1軒の農家へと運び込んだ。農家に到着すると、犯人たちは章英啓に手製の拳銃を突き付け、2016年3月までに身代金1億元(約19億円)を支払うように要求した。拳銃を突き付けられては、否も応もなかった。章英啓は1億元の身代金を期限内に支払うことに同意した。同意したのだから、解放されると思ったが、そうはいかなかった。

【4】犯人たちは、章英啓にその場にいた若い女性を殺害するように要求したのだった。その女性は章英啓と同様に犯人たちによってどこからか誘拐されてきたものと思われた。拳銃は依然として突き付けられている。女性を殺害しなければ、自分が殺される。「生か死か、それが問題だ」とはハムレットの科白(せりふ)だが、当時の章英啓はまさにハムレットの心境だった。自分が生きるためには女性を殺害するしかない。章英啓は犯人たちに「殺す」と答えた。犯人たちは章英啓の手の戒めを解き、その手にロープを握らせると女性の首にかけて絞め殺すように命じた。人を絞め殺すことに逡巡がなかった訳ではないが、拳銃を突き付けられての緊迫した状況下では、罪悪感にさいなまれながらも、章英啓には一気にロープを絞めるしかなかった。犯人たちはこの絞殺の一部始終をビデオに撮った。ビデオの映像は章英啓が殺人を犯した証拠であり、それが彼らの手元にある限り、章英啓は事件を公安警察へ通報せずに約束通り身代金を支払うものと、犯人たちは確信していたものと思われる。

「殺人ビデオ」と引き換えに解放

【5】こうして、章英啓は殺人のビデオ映像と引き換えに解放された。翌11日の午前4時頃、章英啓は“宜賓市公安局”(以下「公安局」)に対して事件を通報し、「10日夜帰宅途中に誘拐され、脅されて見知らぬ女性1人を殺害させられた。誘拐犯には巨額の身代金の支払いを要求されている」旨を告げた。通報を受けた公安局は、速やかに捜査に着手し、11日午後1時頃、“劉強”(39歳)、“岳紅”(43歳)、“陳偉”(39歳)、“馮治”(44歳、女)の4人を容疑者として逮捕したのだった。公安局の捜査チームは、章英啓が誘拐された直後の時間帯に南岸雪絨花園の駐車場から出て行った車を突き止めることにより駐車場の借主を特定し、迅速な逮捕にこぎ着けたものだった。

【6】公安局の調査によれば、犯人一味の4人は半年前位に章英啓の自宅がある「南岸雪絨花園」内の高級マンションの1階に部屋を借り、同時に車1台分の駐車場を借りていた。また、9月頃には金沙江沿いにある1軒の農家を借りて、章英啓を誘拐するための事前準備を行っていたことが判明した。主犯の劉強(39歳)は商売で巨額の損失を出し、借金を抱えて苦しんでいた。そこで思い付いたのが富豪の章英啓を誘拐して身代金を奪うことだった。半年ほど前、劉強は、岳紅、陳偉、馮治の3人に声をかけて仲間に引き入れ、章英啓誘拐計画を練り、事前に高級マンションの1部屋と駐車スペース並びに1軒の農家を借りた。彼らは章英啓が住む高級マンションの1階に借りた部屋から章英啓の行動を監視し、彼の規則的な帰宅時間を把握していた。

【7】犯人一味4人を逮捕した後、公安局は章英啓が監禁され、女性が絞殺された現場となった農家を捜索し、炉の中で焼却された女性の遺体を発見した。遺体から採取したDNAおよび遺留品、さらに犯人一味の供述から、女性は宜賓市内の“建設路”に林立するマッサージ店の1軒、「“温馨按摩”」に勤めるマッサージ師の“西妹”(23歳)<仮名>であることが判明した。同店の経営者によれば、西妹は11月10日夜11時頃に仕事を終えて1人で帰ったとのことだったが、目撃者は西妹が店を出た時に1人の男が待っていたと証言している。恐らく西妹は店を出た所で、犯人一味の誰かに騙されて車に乗せられ、犯行現場となった農家へ連れ込まれたものと思われる。その目的は章英啓に殺害させるためだった。

「誰に責任を追及すればよいのか」

【8】西妹は宜賓市から南西に約200km離れた“凉山彝(い)族自治州雷波県”に実家があり、少数民族の彝族である。11月20日は彝族の新年で、西妹は近々故郷へ戻る予定であったのだという。23歳の彼女はすでに3人の子持ちであった(男4歳、女3歳、女1歳半)。そればかりか、彼女は8人兄弟の長女で、下には7人の弟と妹がいた。父親は3年前に死に、母親は父親の死後に再婚して去ったため、これら弟妹の生活も彼女と次女の2人が支えていた。しかし、雷波県では賃金も安く、貧しい生活を支えて行くことは困難で、西妹は宜賓市へ出稼ぎに出たのだったが、それが悲しい結末を迎えようとは思いもよらぬことだった。

【9】11月18日にメディアが報じたところでは、章英啓は11月11日早朝に解放された後に、会社へ立ち寄ってから医院へ入院したが、現在は自宅で休養しているという。また、章英啓の妻はメディアの質問に対して、「私たちは被害者だ」と答え、「事件が公になって以来、私や家族は毎日大量の電話を受け、まともに生活ができない状態が続いている。全ては公安局の調査結果を待つしかない」と述べている。一方、章英啓に絞殺された西妹の妹(次女)はメディアに対して、「姉の西妹を直接絞殺した章英啓の責任を追及してよいものかどうか、一体誰に責任を追及すればよいのか、全く分からない。とにかく、誰かが姉の死に責任を負わねばならないのだが」と述べたという。

さて、この事件は中国社会に大きな衝撃を与えた。誘拐された被害者が誘拐犯に脅されて見知らぬ他人を絞め殺したのである。人々は前代未聞の事件に驚きを禁じえなかったばかりか、被害者の犯した殺人が罪として裁かれるか否かを論じ合った。拳銃を突き付けられて殺すと脅されて犯した殺人は罪になるのか。はたまた罪は問われず、無罪放免となるのか。被害者に殺された西妹は殺され損で終わるのか。被害者は西妹に賠償する義務はないのか。

「選択の自由」はあったのか

 北京の著名弁護士である“張新年”はこの事件について次のような解釈を示している。

(1)2015年8月に“全国人民代表大会常務委員会”で可決された「刑法修正案(9)」は、第239条には「財物をゆすり取る目的で誘拐を行い、誘拐された人を殺害した者は、無期懲役あるいは死刑、並びに財産没収に処す」という新規定があり、この事件の犯人一味4人は無期懲役あるいは死刑に処されるに違いない。一方、誘拐の被害者であり、事件の通報者である章英啓が脅迫されて行った殺人に刑事責任を追及できるかについては状況を精査してみる必要がある。

(2)事件当時、章英啓が犯人一味による脅迫と支配を受けて、行動を制御され、意思の自由を完全に喪失し、自己の行動に選択の余地がなかったのであれば、“犯罪阻却事由(違法性を退ける事由)”が成立するので、章英啓は刑事責任を問われず、全ての責任は犯人一味が負うことになる。しかし、もし当時、章英啓に選択の自由があったのであれば、章英啓の殺人は共同犯罪中の“脅従犯(脅迫されて従った犯罪)”を構成することになる。刑法第28条には「脅されて犯罪に加わった者に対しては、犯罪の情状に応じて罰の軽減あるいは処罰を免じねばならない」と規定されている。さらに、これに加えて、自首あるいは重大な手柄を立てた場合は、刑法第67条と第68条および刑事訴訟法第173条の規定により不起訴とすることができる。

なお、2008年10月に河南省“平頂山市”で本件と類似の事件が発生したことがあった。それは、金銭財物をゆすり取る目的で、8人組の犯罪集団が平頂山市“新華区検察院”職員の“夏某”を誘拐した後、夏某とは一面識もない女子大学生の“王科嘉”を誘拐した事件だった。犯罪集団は夏某から1000万元(約1億9000万円)をゆすり取るために、夏某を脅して王科嘉と性的関係を結ばせた後、夏某に王科嘉をロープで絞め殺させた。犯罪集団は夏某が王科嘉を絞殺する一部始終をビデオに撮り、脅しの材料としたのだった。2008年11月8日、王科嘉の遺体は平頂山市の郊外にある鉱山の立て坑の中で発見された。

 10月14日に夏某からの通報で事件を知った“新華区公安分局”は捜査の末に犯罪集団の8人を逮捕したが、事件を通じて夏某はずっと目隠しをされ、王科嘉を強姦した時も、絞殺した時も、常に犯罪集団から力で強制されていたことが確認された。この結果、夏某は被害者として殺人の罪は免じられ、全ての犯罪は犯罪集団の責任に帰されたのだった。

「何らかの罪に処すべき」62%

 ところで、章英啓の事件が報じられると、ネットの掲示板にはネットユーザーが多種多様な意見を書き込んだ。その中で最大の争点となったのは、章英啓が脅迫されて行った殺人に対する量刑をどう考えるかという問題だった。この点に関して、多数のニュースサイトがアンケート調査を実施したが、あるニュースサイトが行った調査結果は以下の通りであった。

(A) 脅されて殺人をしたとはいえ、殺人は処罰されるべき。<36%>

(B) 脅されて殺人をしたもので、自首もしたのだから罰は免じられるべき。<36%>

(C) 脅されて殺人をしたのだから、軽い罰に処すべき。<26%>

(D) その他 <12%>

 (A)の「殺人は処罰されるべき」と(B)の「罰は免じられるべき」という正反対の意見が同率の36%というのは興味深いが、(A)に(C)の「軽い罰に処すべき」を加えると62%になり、章英啓も何らかの罰に処すべきという意見が大勢を占めていることが分かる。

 上述した張新年弁護士の見解から考えて、章英啓は平頂山事件の夏某と同様に、殺人の罪を免じられることになると思われるが、章英啓が富豪である以上は、理由はともかく、自身が手にかけて殺害した西妹の家族に対してそれなりの慰謝料を支払うことを考えるべきだろう。章英啓が西妹の家族に慰謝料を支払ったという話はいまだ報じられていないが、そうあって欲しいと筆者は希望するものである。

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