『米中首脳会談の勝利者はどっち?表面的にはトランプの一方的勝利だが……』(12/5日経ビジネスオンライン 福島香織)、『G20に見る、米中の駆け引きの真相とは 中国を巡る問題への対応は着実に進んでいる』(12/5日経ビジネスオンライン 細川昌彦)について

12/5NHKニュース 16:59<名古屋などで活動の演奏団 南京でコンサートへ 6年ぶり>

名古屋市と南京市は友好姉妹都市で、6年前に川村市長が「南京虐殺はなかったのでは」と発言したので交流がストップしていたとのこと。別に異論を認めない国・市と友好することもなかろうに。中国は、米国との関係が危うくなってきたので、日本に国と市を挙げて近づこうとしているのが見えないのでしょうか?利用されているという事です。愚かな。

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20181205/k10011735741000.html?utm_int=nsearch_contents_search-items_001

もう一つ愚かと思った記事。

11/6日経<中国・清華大、日本で起業支援 650億円投資

中国の名門校、清華大学が日本のスタートアップ企業を支援する。人工知能(AI)やロボットの技術を発掘し、数年で40億元(650億円)を投資する方針で、国内有数の規模となる。日本発の技術革新を中国の資金が支える。(中国スタートアップ紅い奔流特集を掲載)

清華大の投資子会社、TUSホールディングスが11月末、東京大学の同業、東京大学協創プラットフォーム開発(東京・文京)に事務所を開いた。両社は提携で合意しており、日中スタートアップの共同研究や人材交流を促し、互いの市場進出を支援する。

フィンテックも含めて先端技術分野に投資する。日本のベンチャーキャピタルが2017年度に国内スタートアップに投じた金額は約1400億円。清華大の投資計画の大きさが目立つ。>(以上)

まあ、東大も「貧すれば鈍す」で、目の前の金に目が眩んだのでしょう。中共は金で技術獲得の時間を買うことを考えていることが分からないのでしょうか。所詮、学力だけの秀才で、本質を見抜く力も、先を読む力もありません。ウイグル人がどう扱われているか知らないのでしょうか?そういう国から支援を受けることに良心の呵責を感じないとしたら、道徳心が無いのでしょう。自分の領域だけで判断するのは誤りの元です。科学技術も人類のよりよい生活を願って発達してきた訳で(勿論軍事技術もありますが)、人権弾圧に使われることを考慮すれば、支援はNoと言うべきです。

これに対し、米国でも動きが・・・

11/6日経<日本の新興勢、米ITが投資 セールスフォース、100億円枠 クラウドに狙い

米IT(情報技術)大手が日本のスタートアップへの投資を本格化する。セールスフォース・ドットコムは100億円規模の投資枠を用意し、グーグルは育成プログラムを始めた。日本のパブリッククラウド市場の成長性に着目し、関連サービスを手掛けるスタートアップを取り込む。日本のスタートアップにとっても一気に海外展開できる可能性がある。米企業が素通りしてきた日本市場にようやく目が向き始めた。…>(以上)

12/5希望之声<习近平访问葡萄牙真正目的是这个=習近平がポルトガルを訪問した真の目的はこれだ>習近平はパナマ訪問後、現地時間12/4午後にポルトガルに着いた。2日に亘る国事訪問である。北京は一帯一路を推進しようと計画したが、欧州では順調にいかず、独・仏・英トも皆警戒している。ギリシャと東欧の国家が計画を受け入れただけ。習がこの4か国(スペイン、パナマ、アルゼンチン、ポルトガル)で最初に訪れたのはスペインであるが、この計画を拒絶した。ポルトガルが、もし一帯一路に加入すれば、西欧として初となる。

ポルトガルは西欧の中で最も貧しい国の一つである。2008年のグローバル金融危機で大きく傷を受け、中国から大量の資金供給を受けた。2010~2016の間、中国からの投資はポルトガルのGDPの3%を占めた。中共政府はポルトガルの最大の企業集団であるポルトガルエネルギーの28%の株を持っている。

https://www.soundofhope.org/gb/2018/12/05/n2451424.html

12/4希望之声<蓬佩奥:美国将建立一个世界新秩序=ポンペオ:米国は一つの世界新秩序を打ち立てるだろう>ポンペオ国務長官は、12/4ベルギーのブリュッセルで行われた米・独マーシャル財団会議で講演した。「中国、ロシア、イランは長期に亘り国際組織を濫用して、自身の利益を貪って来た」と厳しく批判。「この現状を変えるため、米国政府は国際組織改革を促し、米国のリーダーによる民主主義に裏打ちされた新しい世界秩序を打ち立てる」とも。

彼はまた「トランプ大統領のリーダーシップの下、我々は国際社会におけるリーダーとしての地位を手放すことはしないし、友人たちをも見捨てはしない。我々の行動は、主権国家からなる開放、正義、透明な自由世界を維持、保護、推進することである」と強調した。

https://www.soundofhope.org/gb/2018/12/04/n2450479.html

12/5希望之声<川普连连发推步步紧逼 中方急出“备忘录”继续忽悠?=トランプは次々とツィッターをアップし、少しずつ追い詰める 中国は急遽“備忘録“なるものを出し相変わらず揺れている。>先週日曜のトランプ・習の晩餐会で、米中は合意に達した。米国は関税アップを90日猶予し、北京は構造改革が必要で、ワシントンンでの交渉事とした。ツィッターが好きなトランプは、4日数回にわたり交渉経過を示し、北京に対し「もし合意しなければ、中国製品に大幅関税をかける」と獅子吼した。同じ時間には、中共の38部は共同して「史上最も厳格な」知財侵犯懲罰措置を発表、あたかもトランプの獅子吼に積極的に反応したかのように。

まあ、本気で取り締まることは無いでしょう。中共が生き延びるためには、先進国から技術窃取しないと経済が延びて行きませんので、人件費も上がり、もっと安い国へ生産移管されれば、高度のテクノロジーで稼がねばなりません。でも大躍進や文革で遅れた科学技術の40年を取り戻すには、中国お得意の窃盗しかありませんので。

https://www.soundofhope.org/gb/2018/12/05/n2452033.html

福島氏記事では、トランプ・習会談で安全保障・人権問題は避けたが、一時休戦しただけで、3ケ月後には再燃と予測しています。それはそうです、中国は口先だけか表面を糊塗するやり方で、本質は変えようとしませんから。変えるのなら、先ずウイグル人を釈放せよと言いたい。出来ないでしょう。過去に言ってきたこと、やってきたことと齟齬が出ますので、上述のポンペオの発言のように米国が新しい世界秩序を作ればよいでしょう。

細川氏の記事では、今度のG20は来年日本で開催されるG20に道を拓いたとの見方です。ただ、米中貿易戦の行方がどうなるのか、見通せません。米国がWTO脱退、その内、機能しない国連も脱退して、新しい国際組織を作るかもしれません。一気には行かないでしょうが。悪の中共を入れた国際組織なんて、「悪貨は良貨を駆逐する」「朱に交われば赤くなる」だけでしょう。自由主義国だけで組織を作ればよいし、共産主義国とは貿易もしないことです。

福島記事

12月1日、ブエノスアイレスで行われた米中首脳会談で向き合うトランプ米大統領と中国の習近平・国家主席(写真:ロイター/アフロ)

アルゼンチンのブエノスアイレスで行われたG20サミットの席で現地時間12月1日夜、米大統領トランプと中国国家主席習近平が会談した。両首脳は、米国側が2019年1月1日から予定していた2000億ドル分の中国製品に対する輸入関税25%への引き上げを90日間延期するという妥協案で合意。米中貿易戦争は一時休戦、と海外メディアは報じている。

とりあえず中国側はかなりほっとしたことだろう。だが米中貿易戦争がこれで決着したわけでもないようだ。今後の展開について考えてみたい。

まず中国公式メディア、人民日報3日付けはこの首脳会談をどのように報道しているか、みてみよう。

両国首脳は誠実で友好的なムードの中、中米関係及び共同の国際問題で深く意見交換し、重要な共通認識に至った。……

習近平は次のように指摘した。

“中米は世界平和と繁栄を促進する共同の重要責任を背負っている。一つの良好な中米関係が両国民の根本利益に合致し、国際社会の普遍的期待でもある。協力は中米双方の最良の選択である。双方は中米関係発展の大方向を把握し、両国関係の長期的健康で安定した発展を推進し、両国人民及び世界各国の人民をより多くよりよく幸せにしていかねばならない。”

トランプは習近平の両国関係の評価に賛同を示し次のように語った。

“米中関係は十分に特殊で重要であり、我々両国はともに世界に重要な影響を与える国家だ。双方が良好な協力関係を維持することは両国と世界にとって利する。米国は中国側に話し合いを通じて両国の協力度を増していくことを願うとともに、双方に存在する問題を積極的に討論し双方に有利な解決法を探っていこうと願う。”

両国元首は継続して様々な方法で密接な交流を維持し、ともに中米関係を発展に導くことで同意。適時、双方が再び往来するとした。双方は各領域で対話と協力の強化に同意。教育、人文交流を増進していくとした。トランプは“米国は中国学生の留学を歓迎する”と語り、ともに積極的な執法強化行動を取り、フェンタニル類管理を含む薬物禁輸などで協力すると同意。……

経済貿易問題については、習近平は次のように強調した。

ニュアンスが違う米中の公式アナウンス

“中米は世界最大の二つの経済体として、経済貿易交流は十分に密接で、相互に依存している。双方の経済貿易領域には多少の立場の違いが存在することは全く正常なことであり、重要なのは相互に尊重し、平等な相互利益の精神で妥当にコントロールしていくことであり、同時に双方が受け入れ可能な解決方法を探し当てることである。”

両国首脳は中米経済貿易で積極的かつ成果の豊富な討論を行った結果、あらたな追加関税を停止するとともに、両国の経済チームにより緊密に協議を行って、すべての追加関税を取り消す方向でウィンウィンの具体的な協議を達成するように指示することで合意した。

中国側は“中国の新たな改革開放のプロセスをもって、国内市場及び人民の需要に従って市場を開放し、輸入を拡大し、中米経済貿易領域の問題を緩和させるように願っている。双方はお互いの利益とウィンウィンの具体的協議が中国側の米国に対する関連の積極的行動の基礎と前提であるとの合意に至った。双方は共同の努力でもって、双方の経済貿易関係を早急に正常な軌道に戻し、ウィンウィンの協力を実現すべきである”とした。

習近平は台湾問題における中国政府の原則的立場を述べ、米国は政府として一中政策を継続すると述べた。さらに両国元首は朝鮮半島など重大な国際的地域の問題について意見を交換。中国側は米朝首脳の再度の会談を支持し、米朝双方がお互いに合理的関心を顧みながら、半島の完全非核化と平和メカニズムの確立を推進することを望むとした。米国は中国が積極的影響力を発揮していることを称賛し、中国とこの問題についてコミュニケーションと協調を維持したいとした。”」

新華社もほぼ同じ内容であるので、これが中国の人民に対する公式のアナウンスである。この通りなら、米国は関税を停止し、貿易戦争は休戦、停戦に向かっての話し合いが前向きに進む、という印象である。

だが米国側のアナウンスは、これとかなりニュアンスが違う。ロイター通信によれば、ホワイトハウスが広報し各メディアが報じたのに、中国外交部がアナウンスせず、中国国内の公式メディア(SNSをのぞく)でも報じられていない内容は以下の通りだ。

①中国の抵抗で7月に破談になったクアルコムによるNXP(オランダ)の買収について習近平は承認する態度を示した。
②習近平はすぐさま中国の構造改革についての協議にとりかかることに同意。それには技術移転の強要、知財権保護、非関税障壁、ネット侵入、ハッキングによる情報窃取、サービス業及び農業分野がテーマとして含まれている。 ③来年早々に実施する予定だった2000億ドル分の追加関税は90日間猶予を与えるが、米国サイドが指摘した技術移転強要などの問題を解決しなければ10%の関税を25%に引き上げる。 ④中国側は米国から農産品、エネルギー資源、工業及びその他の産品を大量購入する。とりわけ農産品の購入は即刻開始する。

首脳会談で勝利したのは

この双方の公表内容の違いをみれば、この首脳会談が中国側の主張する友好なムードのもとで行われたとは思えないし、中国が何度も繰り返すウィンウィンという感じでもない。米国から言うことを聞かねば追加関税を実行すると脅され、ねじ伏せられた印象だ。だから中国国内では、こうした内容は伏せられたのだ。トランプはこの首脳会談について帰国のエアフォースワン内で「信じられないような素晴らしいディール」と語ったらしい。

トランプ側も必ずしも100点の成果を得た、というわけではなかろう。まず、米国にとって切実な安全保障上の問題であった南シナ海問題などについて言及できなかった。また、中国の要求に従って、台湾問題について「一中政策」継続を確認した。また、トランプ政権が技術窃取の尖兵として警戒している中国学生の米国留学問題については、むしろ「歓迎する」と発言した。また、トランプは当初、中国のインターネット開放を求めていたが、それには触れなかった。

つまり安全保障にかかわる問題については、双方とも議論になることを避けたのだ。米国が圧倒的に強気で有利な立ち位置であれば、南シナ海問題でなにがしかの譲歩を求めただろうし、中国人留学生の技術窃取問題に言及したし、人権や中国の閉じられたネットの問題も突いてきただろう。だが、トランプはそこまで強気になれなかったわけだ。おそらくは、中国側の米国産大豆や豚肉の実質上の禁輸措置は米国にとってかなりのダメージであったし、中間選挙の下院敗北も多少は影響したのかもしれない。

中国としても農産物購入や薬物禁輸の部分なら妥協の用意はあったし、また外圧による構造改革推進は共産党としても歓迎する部分はある。問題は技術移転強要や知財権保護、ネット侵入の問題で中国側がトランプ政権が納得いくような善処を3カ月でできるか、だ。だが、たとえそれができなくても、習近平としてはかまわないのだ。彼は年末か年初に開かねばならない四中全会を切り抜け、3カ月後の全人代を無事迎えられれば、それでよいのだ。

なので、この首脳会談、米中どちらが勝利したか、という観点でみれば、表面的にはトランプの一方的勝利、といえるが、習近平にとってみれば、わずか90日間でも猶予を得たことは大勝利といえるかもしれない。この米中首脳会談でのディールが失敗すれば、習近平は失脚しかねない、といわれるまでに追いつめられていたからだ。

四中全会が未だ開かれていないが、一説に、開いてしまうと習近平の対米政策および経済政策の失敗についての責任追及が始まってしまい、総書記の座を維持することすら危ないからだとささやかれている。ただ、ここにきて少しだけ習近平に追い風が吹いてきたのは、台湾の統一地方選挙における与党・民進党の惨敗と日本が習近平の肝入り戦略“一帯一路”に参与するなど習近平政権に協力的な姿勢を示したことだ。さらに米中貿易戦争が一時的にしろ休戦したので、習近平のメンツはかろうじて維持できる公算がつよまり、四中全会はずいぶん遅れたが、無事に開かれるだろう。

米中貿易戦争、再燃の可能性

これは米国や日本らの中国に国家安全を脅かされる国々にとってはむしろ残念なことかもしれない。なぜなら中国の改革開放路線(経済の資本主義化、自由主義化)の最大の障害となっているのは習近平自身なのだ。習近平は未だアンチ鄧小平路線であり、鄧小平路線が継続すればいずれ共産党体制は崩壊すると考え、共産党がより市場や民営企業を含めた経済コントロールを強化する国家資本主義路線に転向することが体制維持に絶対必要と考えている。習近平が想定するのは、資本主義や民主主義とは異なる中国発の新たな経済の枠組みや国際秩序でもって人類運命共同体を構築する世界観だ。米国や国際社会の望みがこれを阻止し、従来の米国的経済秩序、国際スタンダードに従う方向での中国の発展であるなら、習近平からより鄧小平路線に忠実な指導者に代わることを期待する以外ない。

なので、米中新冷戦構造は非常に長い今後の国際社会の基本構造となるだろうが、その第一フェーズである米中貿易戦争の決着点は習近平の実質上の引退ではないか、といううっすらとした期待を個人的にもっていたが、追加関税の90日間猶予はこの可能性をさらに低くしたことになる。

さて今後の見通しだが、3カ月後に米中貿易戦争はおそらく再燃する。なぜなら中国が米国と違う新たな国際秩序を打ち建てるという野望を放棄しないからだ。そのためには、半導体その他の米国が保有する核心的技術の国内移転を諦めることはないし、米国に対する産業スパイもサイバーを通じた情報窃取も一層励むことになる。なによりタイミング的に全人代直前であり、習近平としては一寸の妥協も示せない。トランプ側が譲歩しない限り、貿易戦争は再開し、より激しく、長期化することになるだろう。その決着が2020年の米国大統領選直前まで持ち越されるとしたら、それはトランプ政権が維持されるか、あるいは習近平政権が維持されるか、という結果で判定されるかもしれない。

細川記事

主要20カ国・地域(G20)首脳会議が閉幕した。日本の大方のメディアは“米国の反対で「保護主義と闘う」との文言を首脳宣言から削除され、G20の機能不全、劣化は深刻だ”との論調だが、果たしてそうか。むしろ、中国に軌道修正を迫るプロセスは着実に進展している。

(写真=新華社/アフロ)

12月1日、主要20カ国・地域(G20)首脳会議が閉幕した。日本の大方のメディアの報道ぶりは次のようなものだ。

“米中が激しく対立して首脳宣言を出せないという最悪事態は免れたが、米国の反対で「保護主義と闘う」との文言を首脳宣言から削除され、G20の機能不全、劣化は深刻だ”

果たしてそうだろうか。

海外紙と比較すると、日本のメディアのパターン化した見方、「木を見て森を見ず」に危うさを感じる。

米国の「保護主義と闘う」の削除の主張だけを見るのではなく、中国の対応も含めた、米中の駆け引き全体を見なければいけない。

真相は中国の危機感にある!

真相はこうだ。

昨年のハンブルグでのG20首脳宣言では「不公正な貿易慣行を含む保護主義と闘う」との文言で合意した。今回も米国も含めて多くの国がこの文言で受け入れたが、中国が反対した。「不公正な貿易慣行」という表現が、中国の国有企業への巨額の補助金や知的財産権の問題を攻める“口実”を与えるとの危惧からだ。しかし、この文言を削除して、単に「保護主義と闘う」との記述だけでは、米国は受け入れない。

これは直前のアジア太平洋協力会議(APEC)において、中国が孤立して決裂して首脳宣言が出せなかった構図と同じだ(前稿「米中対立のAPEC」が「成功」と言えるワケ)。

もう一つ中国がどうしても受け入れない文言があった。「市場歪曲の措置の除去」だ。これも昨年のG20 では既に盛り込まれている。今回、中国が削除を強硬に主張する背景は「不公正な貿易慣行」と同じだ。

むしろ中国が警戒を強めて、こうした文言の削除に転じたことに注目すべきだ。

中国の国家主導の政策への批判が高まり、孤立の結果、軌道修正させられることは何が何でも避けたい、というのが本音だろう。その危機感からか、これまで合意してきた文言も“地雷”に見えるようだ。

中国が徐々に軌道修正していくプロセスとして、この一局面を時間軸を持って冷静に見ていくことが必要だ。

米国の強硬な反対で「保護主義と闘う」が盛り込まれなかった、との一点にしか目が行かない報道には注意したい。

WTO改革など3点セットの中国対策

むしろ今回のG20首脳宣言をよく読めば、重要な成果を見て取れる。そしてそれがいずれも日本が議長国となる来年のG20を見据えた布石であることに注目すべきだ。

まず最も大事なのは、「世界貿易機関(WTO)の改革を支持する」との文言だ。首脳宣言としては初めて合意されたことに意味がある。現在のWTOのあり様に対しては米国も強い不満を持っており、トランプ大統領もWTO脱退をちらつかせている。米国をWTOに繋ぎ止めておくためにもWTO改革は不可欠だ。

それに対して警戒的なのは中国だ。2001年にWTOに加盟した中国は途上国扱いで優遇されてきた。その甘い扱いに対する反省が米国のWTO批判の背景にある。従って今回の文言を合意しても、「改革」の中身は同床異夢で、これから綱引きが始まる。

次回会合で進捗をレビューすることも合意されたが、その時、WTO改革が頓挫するようでは、トランプ大統領のWTO脱退論も現実化する恐れもある。まさに今後の国際秩序の方向を決める重要な局面だ。

第2に、鉄鋼の過剰生産問題での進展だ。

2年前の杭州でのG20首脳会議からこの問題の仕掛けがスタートした。世界の鉄鋼生産の約半分を生産する中国の過剰生産が問題の根源だ。したがってこの問題はその中国がいかに協力するかにかかっている。

杭州でのG20首脳会議で設立された鉄鋼グローバルフォーラムという場には中国も参加している。ここで情報共有など進めようとしているが、中国の動きは鈍い。来年6月までに実質的な報告をすることを盛り込んで、徐々に中国が協力せざるを得ない状況を作っている。

これは鉄鋼問題にとどまらない。中国による過剰生産問題は様々な分野でグローバルな問題を引き起こしている。深刻なのは半導体産業でも起ころうとしている。

そうした問題の最初のテストケースが鉄鋼なのだ。産業全般の深刻な問題に有効に取り組めるかがこの取り組みの成否にかかっている。

第3に、質の高いインフラ支援だ。中国の一帯一路に対しては、「借金漬け外交」との批判が高まっている。受け入れ国の財政の健全性、債務の持続可能性をも踏まえた対応に軌道修正させるために、原則を国際的に合意していく戦略だ。この国際的な仕掛けも2年前のG20から始まっている。先般のAPECで新たな原則が合意され、G20首脳宣言にも盛り込まれた。そして来年に進捗させることも記述された。

このように、WTO改革、過剰生産問題、インフラ支援と中国を巡る問題を一つひとつブロックを積み上げていくように時間をかけて着実に進展させていき、中国を徐々に軌道修正させていく。いわば「ビルディング・ブロック・アプローチ」こそが中国と向き合う戦略だ。

そういう視点で見ると、今回のG20もそのプロセスの一つとして重要な意味を持つことが理解できよう。そしてその成果が問われるのが、日本が議長国である来年のG20だ。

前稿でAPECに関して指摘したが、これらの国際会議の一つひとつを切り取って評価しても本質を見失う。時間軸をもって大きな流れをつかむことが重要だ。

米中首脳会談は単なる「小休止」

むしろ併せて行われた米中首脳会談に耳目が集まった。しかしこれも米中関係の本質を左右するものではない。

大方の予想通り、トランプ大統領は習近平主席との取引をしたがったようだ。ただし、当然のことながら米国の対中強硬路線の根っこにある本質的な問題は手付かずで、90日の協議で中国側が対応することなど期待できない。制度改正など政策変更を必要とするもので、中国国内の統治、威信にも関わる。

今回の小休止はクリスマス商戦を控えて、さらなる関税引き上げを避けたぐらいのものだ。トランプ大統領は脅しを背景にした、戦利品をツイッターで誇らしげに語っているが、これらは何ら本質的な問題ではない。

例えば、中国の自動車関税の引き下げを勝ち取ったと言うが、米国から中国への自動車輸出はたかだか28万台に過ぎず、今やほとんどは中国で現地生産されている。しかも28万台の内6割以上がドイツ車の米国生産されるSUVなどで、ビッグスリーはわずかだ。実態的にはこの関税引き下げはあまり意味がない。要するにトランプ大統領がツイッターで誇れればいいだけなのだ。

知的財産権の保護についても中国側が対応しようとしているのは、単なる罰則の強化ぐらいだ。米国が要求する知的財産権の問題(強制的な技術移転、ライセンス契約の内外差別)には答えず、すれ違いの対応で知的財産権の保護を強化すると言っているに過ぎない。

こうした中国側の小出し、本質はずしの対応は今後も予想され、中国の国内経済の状況にも左右されるが、関税合戦の駆け引きはしばらく続くだろう。今回の首脳会談後の米中両国の発表もそれぞれの言い分を発表しているだけで、どこまで米中間で合意があったか定かではない。

トランプ大統領の関心は大統領の再選戦略に向かっており、来年も対中国でひと山、ふた山あると見た方がよいだろう。

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