『「習近平新時代」の中国は経済発展しても自由は限られる』(1/16ダイヤモンドオンライン 加藤嘉一)について

1/14看中国<贸易额大幅下降 北京对朝动真格?(组图)>1/12中国税関の発表では、2017年対朝貿易は50.6億$、前年比▲10.5%、輸出超過が16.2億$で2.2倍に拡大。12月だけ見ると前年比で▲81.6%で5434万$であった。これは2014年1月以来最低の数字である。11月以降石油供給はなく、朝鮮企業や料理店も閉店させた。しかし、中国船籍の船が石油を密輸していたのがばれた。習の心配は金正恩がコントロールできなくなり朝鮮政府が瓦解すること、もう一つは米中の貿易問題が日増しに高まっていることである。まあ、中国のことですから平気で二枚舌を使っているだけでは。制裁しているフリをして朝鮮を助けていると思います。中国では、上の許可なくして何もできないはずです。それが習の決裁かは別にして。

https://www.secretchina.com/news/gb/2018/01/14/846937.html

1/14看中国<官方操控无处不在!华人被迫放弃“踩界”(图)>カナダのアムネステイ・インターナショナルの調査に依れば、北京はカナダの対中異議申立者に対し、脅迫の段階を上げて直接脅すようになった。ウイグル族、独立思想を持ったチベット人、台湾人、民主主義唱道者、中でも重いのが法輪功信者である。国家安全部の人間は「カナダのメデイアで中国政府を批判するのを止めなければ、中国にいる親戚が酷い目に遭うだろう。どんなことが起きようともそれはあなたの責任」と言ったとのこと。流石ヤクザ国家のやることは違います。これを映像にとって全世界に流せば、流石に金儲けのことで頭が一杯の国や企業も少しは考え直すのでは。

https://www.secretchina.com/news/gb/2018/01/14/846984.html

1/15阿波羅新聞網<驚人消息:中共快玩不下去了 ——銀監會聲明坐實中共恐懼難解的金融風險>何清漣が言うには「中国経済発展は貨幣発行の膨張にある。17年6月に中国経済体制改革研究会の前副会長の石小敏をインタビューした時に彼は「発行した金は不動産に流れて、債務がドンドン増えていくだけ。もう遊べない所まで来た。この2年で債務はGDPと同じまで伸びた」」と。また人大財経委副主任の吳曉霊が言うには、中国は日本、米国、欧州の貨幣供給量を超えて世界最大の貨幣印刷機となったと。去年の11月までに地方債務は170,000億人民元となり、債務の大部分はシャドウバンクでゾンビ企業を生き延びらせ、債務破綻の危険性が大きいとのこと。資本主義だったらとっくにバブル崩壊しているのでしょうが、債務の飛ばしをやって別の所に移し替えているのでしょう。言ってみれば中国は全部国営と思ってよいので(私企業の自由はない)、国がぐるぐる債務を回しているのだと思います。それが何時まで可能か?外資が撤退すれば面白いのですが、資金の流出規制をする国ですから。

http://twent.aboluowang.com/2018/0115/1055117.html

加藤氏の記事は何時も思うのですが上っ面を撫ぜているだけ。深みがありません。単なる翻訳マシーンに化しているだけとの印象を持ちます。普通に考えたら習の言ってることとやっていることの違い、都市市民だけでなく農民工にインタビューしたらと思います。北京の大興区の追い出し事件等は彼の眼中には無いのでしょう。結果の平等を追求する共産主義が何故こんなに経済格差が生じるのか、何故自由がないのか、根本的に考えたらと思ってしまいます。小生は為政者の我儘が総て通る独裁政治に原因があると思っていますが。

記事

習近平による毎年恒例の新年挨拶

2018年の本連載は、習近平中共中央総書記・国家主席・中央軍事委員会主席(以下敬称略)が行う毎年恒例の新年の挨拶をレビューするところから始めたいと思う。

昨年末に行われた挨拶の冒頭で、2017年に中国共産党の第19回大会を開催し、「全面的に社会主義現代化国家を建設するための新たな道のりが始まった」と述べた習近平は、2017年に中国共産党が収めた成果を羅列的に紹介した。

・国内総生産が80兆元の大台に達した ・都市部で新たに増加した就業人口が1300万人を越えた ・社会養老保険が9億人以上を網羅するに至った ・基本医療保険が13.5億人を網羅するに至った ・1000万人以上の農村貧困人口が貧困からの脱却を実現した

「各民生事業が加速的に発展し、生態環境が徐々に改善し、人民群衆はより多くの獲得感、幸福感、安心感を得るようになっている。我々は全面的に小康社会の建設を実現するという目標にまた一歩近づいた」

小康社会とは大まかには「少しゆとりのある社会」を指し、1970年代末から80年代初にかけて、鄧小平が中国経済社会の発展のためのロードマップを描く過程で提起した概念である。中国共産党は「全面的に小康社会を建設すること」を“2つの100年目標”のうちの第一段階、すなわち中国共産党結党百周年に当たる2021年に実現すると目標を定めている。

中国はXX周年という儀式を歴史的に重んじ、政治的に利用する国であると感じてきたが、習近平政権ではそれを高度に重視し、国威発揚につなげようとしている姿勢が見て取れる。習近平は3つの儀式を紹介している。

「我々は朱日和連合訓練基地で軍事パレードを行い、中国人民解放軍建軍90周年を記念した。香港返還20周年の際、私は香港へ行き、祖国が強い後ろ盾となるなか香港が長期的に繁栄し、安定している状況をこの目で見てきた。明日はより良くなるのは必至であろう。我々は全民族抗日戦争勃発80周年の儀式と南京大虐殺死亡者国家公祭儀式を行い、歴史を刻み、平和を祈った」

習近平外交の特徴は“お友達外交”

ここから習近平は外交に話を移していく。私から見て“習近平外交”たるものが仮に存在するとすれば、その第一の特徴は“お友達外交”、すなわち中国の政治体制、イデオロギー、発展モデルを理解・尊重し、中国の国際貢献や外交努力を賞賛し、中国の核心的利益を“承認”してくれる“お友達”を増やしていくための外交である。

そのためのツールは投資や援助を中心とした経済であることが多いが、“習近平外交”のもう一つの特徴は、中国自らプラットフォームを構築し、議論のアジェンダを設定し、可能な限り自国でそれを主催し、かつ習近平自らが司会するというものである。そんな特徴を洗い出すかのように、習近平は次のように語っている。

「我々は国内でいくつかの多国間外交活動を主催した。第1回“一帯一路”国際協力ハイレベルフォーラム、BRICS国家指導者厦門会議、中国共産党・世界政党ハイレベル対話などである。また、私は世界における重要ないくつかの多国間会議にも参加した。今年の年初、世界経済フォーラムの年次総会に出席し、国連ジュネーブ本部でも談話を行った。その後20ヵ国集団指導者サミット、アジア太平洋経済協力会議などにも出席した。これらの異なる場面において、私は各方面と深く意見交換をしたが、皆共同で人類運命共同体の構築を推進し、世界各国の人民に恩恵をもたらそうという私の意見に賛同してくれた」

“人類運命共同体”とは、“新型国際関係”と並んで習近平が世界に向かって掲げる世界観であり、外交目標であるとも言えるが、そこには第2次世界大戦後米国を中心に西側諸国が主導してきた国際秩序への一定の不満がにじみ出ており、“より合理的で公平な、国の大小にかかわらず平等に恩恵を受ける”国際秩序の構築を渇望するだけでなく、構築プロセスを中国が中心となり、“お友達”を引き連れる形で引っ張っていく意思、そして野心を示していると言える。

2018年は改革開放40周年“無産階級”に寄り添う

2018年は習近平第2次政権スタートの年であると同時に、改革開放40周年に当たる。習近平は「改革開放は当代中国が発展・進歩する上で、中国の夢を実現する上で避けては通れない道である」と主張し、同時に40周年を祝うことを契機としながら「改革をとことん進めていく」と宣言した。

昨年末に開催された中央政治局会議や中央経済工作会議を通じて2018年度の政策目標に掲げられたのが「ターゲットを絞った貧困撲滅」である。習近平は2020年までに貧困人口をゼロにするという目標を掲げてきた。

自らを「労働者階級の先鋒」と定義する中国共産党であるが、習近平はとりわけこの意識が強く、農民や工場労働者をはじめとした“無産階級”に寄り添う政策が顕著に見受けられる。

「2020年まであと3年しかない。全社会が行動しなければならない…3年後予定通りに貧困撲滅という闘いに打ち勝つことができれば、これは中華民族の数千年の歴史の発展において初めて全体的に絶対貧困現象を解消することになる。この中華民族や人類全体にとって重大な意義を持つ偉業を皆で一緒に達成しようではないか」と呼びかけた。

最後の2段落は、習近平第2次政権下の中国共産党が対外・対内戦略・政策を打ち出していく背後で何を考えているかという問題の一端を垣間見られる内容となっている。

まずは対外関係から見ていこう。習近平は次のように主張する。

「現在、各国は人類の平和と発展の将来に期待もあれば懸念もある、中国が立場や態度を表明することを期待している。天下は家族のようなものである。中国は責任を負う大国として、言っていかなければならないこともある。中国は国連の権威と地位を断固として守り、国際義務と責任を積極的に履行していく。グローバル気候変動に対応する約束を守り、“一帯一路”の共同建設を前向きに推し進めていく。首尾一貫して世界平和の建設者、グローバル発展の貢献者、国際秩序の保護者を演じていく。中国人民は各国人民と手を携えて人類のより繁栄した、安寧な、素晴らしい未来を切り開いていくことを望んでいる」

中国が国際社会においてこれまでよりも積極的に発言し、行動していく意思が見受けられる。特に中国自身の発案である“一帯一路”を国際社会全体が共同で推進すべき公共財であるように謳っている事実から、中国が国際秩序やルールの構築、より厳密に言えば再構築に強い関心を示し、積極的にコミットしていきたいと考えている戦略的意図を抽出することが可能である。

建設者・貢献者・保護者の部分は、もちろん国際社会からすれば歓迎であるが、中国が実際のところどのように行動するか、および他国と価値観や利害関係をどう調整していくかといった問題が我々の前に立ちはだかるのは必至であるように思われる。

「知る権利」や「表現の自由」を改善していく意思や予定は見られない

最後に対内関係であるが、習近平が放った次の言葉は私から見て意味深長である。

「私は人民群衆が最も関心を持っているのは教育、就業、収入、社会保障、医療、養老、居住、環境などの分野であることを承知している。皆さんは多くの収穫を得ているが、心配事や煩わしい事も少なくないだろう。我々の民生に関わる仕事には人民の要望を満足させられていない部分が少なくない。これは我々が使命感と責任感を強化し、人民の幸福に叶う事に真の意味で、地に足をつけて取り組んでいくことを要求している」

習近平が掲げた分野を見てほしい。確かにこれらは中国人民が近年最も関心を持ち、自らの生活や将来に関わる問題として党や政府に改善や推進を求めている分野であるといえる。

一方でここには「人権」や「自由」といった概念は見られない。全社会・全分野における共産党の領導を強化するという基調の下、特に言論や知識といった分野で上からの締め付けが強化されている状況下で、「知る権利」や「表現の自由」といった分野を提供・改善していく意思や予定は共産党指導部にはないのだろう。

これも習近平政権の特色である。

問題は人民がそれを求めているか、求めていくかどうかであろう。

私は現在四川省成都市で本稿を執筆している。現地で交流した20代後半の女性(文化事業従事)と男性(メディア関係者)の言葉が印象的だった。

成都の発展の状況を聞いてみると、女性は笑顔で生き生きと語った。

「成都の近年の発展は本当に素晴らしい。しかもとても住みやすい。状況はとても良い方向に動いている」

彼女の表情や言葉からは、上記で言及した上からの締め付けに対する不満は微塵も感じられない。「自由」や「人権」を求める気配も感じられない。

男性と習近平政権の政治について議論していると、異常なほど落ち着いた表情と口調で彼はこう言った。

「自分と関係ないことは考えないようにするのが中国人の生き方だ」

習近平による政治や政策が人民の生活に関係しないことはあり得ないが、この男性が指摘する「自分と関係ないこと」というのは「自分がどう足掻こうがどうにも変わらないこと」という意味であると私は解釈した。

どれだけ渇望しても変わらない、そのためにどれだけ行動しても変わらない、それを切実に知っているからこそ、「自分とは関係ない」と割り切って、そんなものははなから存在しないものなのだと自分に言い聞かせて、生活を営んでいくのであろう。

私の観察と感覚によれば、9割以上の中国人民はそういう生き方に納得している。少なくとも、受け入れた上で人生と向き合っている。

(国際コラムニスト 加藤嘉一)

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『ある女性ロビイストの憂鬱 なぜ米国は「ロビーの国」になったのか』(1/15日経ビジネスオンライン 池松由香)について

1/15読売新聞<韓国の追加要求拒否、支持83%…読売世論調査>

http://www.yomiuri.co.jp/politics/20180114-OYT1T50121.html?from=ytop_main3

1/15TBS<JNN世論調査、日韓合意での韓国側対応「理解できない」が85%>

http://news.tbs.co.jp/newseye/tbs_newseye3264213.html?from_newsr

やっと国民も韓国のおかしさに気付いて来たと言う所でしょうか?所謂従軍慰安婦問題は、そもそもで言えば、中国が一番奥の奥にいて、北を動かし、韓国の挺対協、朝日新聞や反日日本人を動かして捏造した事件です。慰安婦なぞどこにでもいるではないですか。客の後を追っていくのが商売女です。米国のフッカー将軍は南北戦争時の北軍の将軍でしたが、戦場に女を侍らし、それで売春婦のことをフッカーと呼ぶようになったとか言われていますが、真偽の程は分かりません。問題は慰安婦にするのに銃剣突き付けたか(強制性)どうかです。20万人も拉致されて黙っている筈がないでしょう。南京の30万と同じく信憑性がありません。挙証責任は原告にあります。

日本にもロビイストと言う名前ではありませんが、業界団体や個別企業が政治家に陳情しています。請願権ですから民主主義の根幹を為す権利と思っています。ただ、日本では米国のようにロビイストとして役人が退職後に圧力団体として存在することはありません。米国ではロビイストの他にもいろんなシンクタンクやコンサルタントがいて金が流れる仕組みがあり、ロビイストだけが問題ではないような気がしますが。キッシンジャーなんて中国からコンサルタント料を受け取り、米国の為ではなく、中国の為だけに動いているのでは。こちらの方が余程問題です。

請願権については、小生もオバマ政権にメールで請願したことが数回あります。数が集まらないと請願しても無効になりますが、ちゃんと返事のメールは送って貰いました。外国人でも大丈夫です。

http://okfn.jp/2013/02/12/we-the-people/

“If you are not at the table, you are on the menu”という言葉を日本人は良く噛みしめませんと。謙譲の美徳が通じるのは日本人の間だけ、外国人には通用しません。中国・韓国の捏造に大人ぶって反駁しない限り、国際社会では相手の言い分を認めたと解釈されます。朝日新聞を始め左翼は日本人のお人好しの性格と国際社会に無知なのに乗じて、反駁しないように誘導してきました。反論すれば「右翼」「国粋主義者」「人種差別主義者」等のレッテルを貼って。而も新聞だけではなく、洗脳された愛読者から言わせるように仕向けました。洗脳されて自分の頭で考えない方も考えない方ですが。今の日本の知的水準を表していると言えます。中共や韓国のように平気で嘘がつける朝日、岩波を有難がっているようでは。

記事

2017年末、1月29日号特集の取材で米国ワシントンに出張した。テーマは「ロビー活動」。実質3日間で13人の現役ロビイストを取材するという過酷スケジュールだったが、おかげで「ワシントン」という独特な地域について理解できるようになった。

米国の国会議事堂(Capitol)

シリコンバレーにベンチャーキャピタリストや起業家などが構成する独特のエコシステムがあるように、ワシントンにも全く形の異なるそれがある。その中で重要な役割を果たしているのがロビイストたちだ。

ワシントンには無数のロビー事務所があり、そこにロビーを生業とするプロのロビイストたちが所属している。米国内はもちろん世界中の名だたる企業が彼らを雇い、自社や自社の属する業界が米国でバッシングされたり、不利な法案を成立されたりするのを防ぐ(逆に自社に有利な法案の成立を促す場合もある)活動を展開しているのだ。

ロビイストの多くは「元政府職員」

そんなロビイストのほとんどは、ホワイトハウスや関連省庁に勤務していた元職員、あるいは大統領候補や知事候補の選挙を手伝っていた元スタッフ。前職の人脈をフル活用して現職の懐に入るので、国のトップである大統領からはあまりよく思われていない。

前大統領のバラク・オバマ氏もそうだったが、現大統領のドナルド・トランプ氏もまた「強烈なワシントン嫌い」として知られている。トランプ氏が大統領に就任した直後の17年1月28日、同氏は「政府職員は離職後5年間のロビー活動を禁止する。外国政府のためのロビー活動は期限なしで禁止する」との大統領令に署名した。

奇想天外な発言を繰り返すトランプ氏(写真:UPI/amanaimages)

ワシントンで取材して一番驚いたのは、ロビイストたちのトランプ氏を見る目が日本のそれとは全く異なることだった。記者が日本からトランプ氏を見ていた時は、「よっぽどの世間知らずか、よっぽど計算高い策士か……」などと漠然と予想していた。ワシントンの地を踏んで、あやふやだった「トランプ像」がよりリアルに見えてきた。

その実像は特集に取っておくこととして(ぜひお読みください!)、ここでは記者が取材したロビイストの中でも特に印象に残った、ある女性ロビイストについて取り上げたい。

ロビーをすることは「恥」なのか?

彼女はトランプ氏が大統領選を戦っていた時、彼のスピーチのゴーストライターを務めていた人物だ。取材中も言葉(ワード)の選び方が秀逸で、それだけでも書き手としての能力の高さがうかがえた。

話が「なぜ米国でロビー活動が普及したか」について及ぶと、彼女は思い立ったようにこんな話を始めた。

「あたながもしアメリカで街行く人に『ロビイストのことをどう思う?』と聞いたら、きっとこんな反応が返ってくるでしょう。『(眉間にしわを寄せて)ウーム』」

ネガティブなイメージを持たれているということだ。同様のイメージを持たれている職業として彼女は、「自動車の営業マン」「弁護士」「政治家」を挙げた(これらの職業そのものが悪いわけではなく、あくまで一般人の持つイメージだ)。

日本でも、ロビー活動と聞くと、「どうせ政治家と癒着して自社の利益のためにズルしてるんでしょう?」と受け取られがちだ。同じような風潮がロビー先進国として知られる米国にもあるようだった。

「でもね」。彼女は、これだけは言わせてほしいとばかりに語気を強めた。

「私はロビイストという職業に誇りを持っているの」

米国からロビーがなくならない理由

そこで彼女が持ち出したのが「First Amendment(アメリカ合衆国憲法修正第1条)」だった。1791年に採択された憲法修正(権利章典)に出てくる最初の条項で、米国議会に「宗教の自由」「表現の自由」「報道の自由」「平和的集会の権利」「政府へ懇願する権利(請願権)」を妨げる法律の制定を禁じている。記者も米国の大学でジャーナリズムを専攻していた時に授業で習ってから、大好きになった法律だ。彼女は言った。

「この何年もロビイストのスキャンダルばかりが報道されて、すっかり『卑怯な人たち』のイメージが付いてしまった。(あえて個人名は言わずに)現行の大統領も選挙戦の間は特に、ロビイストをあたかもワシントンの悪の象徴であるかのように言ってきた。個人的には、必要以上にロビイストという職業が汚されているように感じています」

そんな彼のゴーストライターをしていたのだから、さぞ心の葛藤があっただろう。彼女は一気に続けた。

「でも、それは本当のロビイストの姿ではない。本来はFirst Amendmentに保証されている基本的人権を守る専門職なんです。請願権は、アメリカのデモクラシー(民主主義)を構成する重要な要素。私が言うとちょっと偏った意見になってしまうけれど、強く信じているのは、私たちのFirst Amendmentの一部である以上、請願権(right to petition)が無くなることはこれからも絶対にないということなんです」

「請願のやり方は、時代と共に変わるかもしれない。でも、権利そのものはあり続ける。決して消えることはありません」

同じ言葉を繰り返しながら懸命に訴える彼女を見ていて、目頭が熱くなってしまった。

米国民にも忘れられかけている

というのも記者は、この取材の直前、少しだけ時間が空いていたのでキャピトルヒル近くの「Newseum」という博物館に立ち寄っていた。報道(News)をテーマにしたワシントンらしい博物館(Museum)だ。

記者が訪問中、ちょうど子どもたちが見学に来ていた

見学の子どもたちに混じって館内を歩いていると、First Amendmentに関する展示に出くわした。そこでは街頭インタビューの映像が流れていた。「First Amendmentの権利を全部、言えますか?」とインタビュアが聞くと、大抵の人が「宗教の自由」「報道の自由」までは出てくるのだが、「請願権」まで答えられる人はほぼいなかった。

First Amendmentの文面

博物館には「Fake News」(ウソのニュース)とメディアを痛烈に批判するトランプ氏に関する展示もあった。

言うべきことを言わない方が恥ずかしい

こうした展示を見た直後の取材だったので、彼女の発言には重みを感じた。First Amendmentが200年以上も前に成立し、「国民が議会に物を言う権利」と共に歩んできた米国。ロビー活動は、本来は悪の象徴ではなく、基本的人権であり、民主主義を支える礎なのだ。だが、米国でビジネスを展開する日本の企業はもちろん、当の米国民ですら、その権利をないがしろにしつつある。それを彼女は記者に伝えたかったのだ。

ワシントンの比喩としてよく使われる言葉にこんなものがある。

“If you are not at the table, you are on the menu”

(発言のテーブルに着かなければ、食われるだけ)

ロビーをする(言うべきことを言う)ことは、何も恥ずかしいことではない。逆に言うべきことを言わないことを恥じるべきなのだ。

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『ロシアが北朝鮮情勢を注視する真の理由 米国のミサイル防衛網配備に懸念』(1/12日経ビジネスオンライン 池田元博)について

1/13看中国<俄游客心脏病发 大陆民众竟然围观嘲笑(图)>「自由アジアTVによれば、南シベリアネットニュースの記事を引用して、中国海南島を旅行中のロシア(クラスノヤルスク)人が突然心臓発作起こし、死亡したのは、中国の救急制度のレベルが低かったからと報道。三亜空港が熱暑の為であるが、妻が言うのには「ロシアだったらすぐ救急車が来るのに、ここでは待つこと30分、その間中国人が周りを取り囲み、大声で笑っていた。救急隊員のレベルも低く、顔を見れば直ぐに心臓病と分かりそうなものだが、ゆっくり血圧を測り、病院へ搬送することにしたが途中渋滞で30分もかかった」と。診察に数十万ルーブルかかり、ガイドや他の旅行客からかき集めて払った。また遺体をロシアに送るのに百万ルーブルかかるとのこと」。まあ、別にロシア人を差別して笑ったわけでなく、中国人は人の不幸を笑いものにする道徳最低な民族(韓国も同じですが)と思った方が良いでしょう。

https://www.secretchina.com/news/gb/2018/01/13/846857.html

1/14宮崎正弘氏メルマガの書評から<木村汎『プーチンとロシア人』(産経新聞出版)

一気に読める本である。そのうえ面白い。その活力ある筆致と簡潔な比喩、人間の描写が生き生きとしている。

プーチンが柔道をこよなく愛しているから日本のことが好きだと日本のロシア分析が飛躍するのは暴論のたぐい、プーチンが柔道に励んだ動機は、彼の幼少のころ、「いじめられっ子」だったからだと木村氏は言う。

プーチンの闘争の哲学は、このところに原点がある。

兄二人が夭折したため、母親が41歳で生んだプーチンは溺愛され、それゆえにサンクトペテルブルグの『通り』でよくイジメられた。『通り』というのは不良少年のたまり場である。

いじめっ子より強くなれば良い、こう結論したプーチンは猛烈に体を鍛える。環境が強い意志をはぐくんだことになるが、短距離出世を狙ってKGBにはいるという直線的な人間でもある。

つまり、この人生への強い姿勢こそロシア人の基本の掟である。

「力が正義」なのである。

「強くなる意志を一貫して抱き」続け、「相手を徹底的にたたく」。そうした人間がロシアでは英雄である。

ロシア人との交渉事で、妥協は禁物である。そもそも「ロシア語」には「妥協」というボキャブラリーはない。交渉事で、論理が一貫しなくても、ロシア人は気にしない。倫理をまったく重視しないし、交渉においては友情も交友関係も過去の貢献もまったく度外視される。

つまり「交渉は闘争」であり「交渉は戦争」であり、そして「交渉は武器」なのである。

なんだか中国人と似ている。ロシアのチェスも中国の将棋にも、そういえば捕虜駒がない。妥協の発想がないという一点に関しては、中ロは二卵性双生児かもしれない。

「『インテリゲンツィア』という言葉は、日本語における『青白きインテリ』という用法から想像される内容のものではない。必ずしも人間の出自、教育、職業に直目する概念ではなかった。ロシアにおいて「インテリゲンツィア」とは、その人間が自身の高い理想や使命感を抱くとともに、その使命の実現のためには全生命を賭けて戦う準備や姿勢を持ち、かつ闘いを実践中の知識人を意味する言葉だった」(62p)。

どうしてロシア人がこういう性格を形成してきたのかといえば、第一に気候、天然資源、寒さ、そしてあまりにも広大な土地が原因であると木村教授は言う。

ロシア人が二律背反を気にしないのも、論理的思考をしないからである。領土は戦争で奪うものであり、政府が何をしていようが、個人レベルでのロシア人はほとんど気にも留めない。

あれほど凶暴な謀略をめぐらし政敵を粛正しても、ロシア人がスターリンを好きなのは、かれが「大祖国戦争」に勝ったからである。ゴルバチョフに人気がないのは彼が西側に屈服したと感じているからである。

「ロシア人は、外部の世界に劣等感を抱いている。外国の列強諸国は、隙さえあればじぶんたちに襲いかかろうとする。頭からこう信じている。彼らは外部の世界を疑い、恐れおののいているのだ。(中略)彼らは善意によって差し伸べられた友好の手をいうものを信じようとしない。そこには、何か巧妙な落とし穴のようなものが隠されているのではないかと、疑る。この世に純粋な好意など存在するはずがなく、あるのは闘いのみだ」(178p)

このようなロシア人気質を了解するならプーチンの謎を解くカギが読める。

プーチンは強いもの、力を信奉する政治家を好むから、優柔不断で人権と民主とか、浮ついたことを主張したオバマを軽蔑し、短絡的なトランプが好きなのである。三木武夫を嫌い、田中角栄がすきな日本人と、この点は似ているのかもしれない。

とどのつまり民主政治をロシアに期待するのは無理な注文であり、ロシア人は準独裁、強い指導者が好きなのだ。

だからシリアへの空爆で、もやもやしたロシアの脆弱政治を吹き飛ばしたプーチンに89%ものロシア国民は賛同し、クリミア併合でも83%が賛成し、西側の制裁なんぞどこ吹く風である。

すなわち「プーチン外交には、必ずしも確固とした原則や戦略など存在しない。時々の国際状況、とりわけ、『力の相関関係』の変化、そして主要プレーヤーや相手方の出方などを注意深く観察する。その隙間を縫って自国ロシアの影響力の拡大、ひいてはプーチン自身のサバイバルを図ろうとする。すぐれて状況主義的、機械主義的、便宜主義的な行動様式を採る」(143p)

プーチンは過去18年間、事実上ロシアの命運を左右し、そして次の六年間も最高権力を掌握するだろう。合計24年におよぶロシアの最高権力者は、ピョートル大帝を尊敬しているという。したがってトリックを用いて、自国を実力以上に見せる戦いを続ける。

プーチンは「勝利をもたらし、ロシア人の不安を吹き飛ばすために,『小さな戦争』を好む」だろう。

繰り返すが、一気に読了した。快作である。>(以上)

『小さな戦争』が日本相手にならないことを祈ります。まあ、日本が相手であれば『小さな戦争』とはならないでしょうけど。池田氏記事によりますと、ロシアは「米国とその同盟国が北の脅威を防ぐためと言って、ミサイル防衛システムを配備して、中露を包囲するつもりではと思っていると。日本のイージスアショアもその一部」と考えているとのこと。話があべこべでしょう。中露は北の脅威を拡大させ、米国一極の世界を打破し、多極化世界にしようと目論んだのでは。そのために核ミサイルの技術支援やら財政支援してきたのでは。米国と同盟国が脅威に晒されるのを黙って見ている筈がないのは当り前の話。それが嫌であれば、北を飼ってきたのが両国なのであるから、餌を与えない(=国連決議遵守は勿論、石油供給の全面停止等核ミサイルの開発ができない)ようにすれば良いのでは。

1/11JBプレス 榎本 裕洋<ロシアに新経済制裁、米国が検討中 ルーブル下落と金利の急上昇、外貨準備急減の再来も経済制裁、特にロシアのルーブル建て国債取引の禁止をしても、ロシアの経済成長を下げる可能性があるだけで、致命傷にはならないとのこと。米国も大国過ぎて真の敵が中国であることに気付かないのでしょうか。北朝鮮が日米韓の離間を図るように、少なくとも中露の離間を図るような動きをしてみたらと思います。このようにロシア制裁を強化すれば、中露の結びつきを強めるだけでしょう。米国は中国にこそ制裁を課すべきです。

http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/52045

記事

「ロシアは北朝鮮を核保有国とは決して認めない」。プーチン大統領は北朝鮮の核問題の対話による解決を主張しつつも、圧力を強めて核放棄を促そうとする国際社会と協調する姿勢は崩していない。ロシアが北朝鮮情勢を注視する真の理由は別にある。

ロシアが昨年12月にウラジオストクでも運用を開始した地対空ミサイルシステム「S-400」(写真:AP/アフロ)

ロシアメディアは昨年12月下旬、ロシア軍が最新鋭の地対空ミサイルシステム「S-400」の運用を極東のウラジオストクで開始したと報じた。戦闘機や巡航ミサイル、弾道ミサイルを撃墜できる能力を飛躍的に高めるのが狙いだ。

ロシア軍がS-400を極東に展開すると表明したのは2009年。軍幹部は当時、その理由として「北朝鮮によるロケット発射が失敗し、その破片がロシア領に落下するのを防ぐためだ」と説明していた。

その北朝鮮は当時の金正日(キム・ジョンイル)体制から3男の息子、金正恩(キム・ジョンウン)体制に変わったが、ミサイルの発射回数は増える一方だ。昨年は1年間で合計15回(総数は20発)も弾道ミサイルの発射を強行し、昨年9月には大規模な地下核実験も実施した。

しかも極東のウラジオストクから北朝鮮との国境までは、およそ100キロメートルしか離れていない。ロシア軍がS-400の運用を開始したのは当然、北朝鮮の核やミサイルの挑発におびえる地域住民の不安に対処したためと考えがちだ。しかし、実態は必ずしもそうではないようだ。

ウラジオストクの海洋国立大学で北朝鮮問題を専門にするアナスタシア・バランニコワ研究員によると、「地元のロシア市民たちは北朝鮮の弾道ミサイル発射にほとんど反応しない。核実験があった時も社会に緊張感はなく極めて平静だった。市民たちが北朝鮮に抗議することもない」と話す。北朝鮮が敵視するのは所詮、米国とその同盟国であり、ロシアの脅威にはならないという意識が根強くあるのかもしれない。

北朝鮮に近いウラジオストクですらそういう状況だけに、ロシア全体でみると、北朝鮮の核・ミサイル問題に対する関心はさらに薄くなる。

北朝鮮の核よりシリア問題

独立系の世論調査会社レバダ・センターが昨年12月、ロシア市民を対象に「2017年の最も重要な出来事」は何だったかを問う世論調査を実施したところ、過激派組織「イスラム国」(IS)との戦いやロシア軍の撤退宣言などを含め、圧倒的なトップがシリアでの戦闘だった。

続いて2位がロシアのスポーツ界を揺るがすドーピング・スキャンダル。国際オリンピック委員会(IOC)が平昌冬季五輪へのロシア選手団の参加を禁止する一方で、潔白な選手は「ロシアからの五輪選手」として個人参加を認める方針を決めたことが高い関心を呼んだ。そして3位はプーチン大統領の次期大統領選への出馬表明。半面、北朝鮮の核実験や北朝鮮をめぐる紛争は、ロシア革命(十月革命)から100年と並んで10位にとどまった。

日本と違ってロシア社会では、北朝鮮の核・ミサイル開発はさほど深刻な脅威とは受け止められていないようだ。では、ロシア軍がS-400の運用を開始するなど、北朝鮮との国境防衛強化に乗り出しているのは米国と北朝鮮の軍事衝突を警戒するためなのだろうか。

プーチン大統領の側近のニコライ・パトルシェフ安全保障会議書記は昨年末、ロシア紙「論拠と事実」のインタビューで、「米政権は韓国に25万人の米国人がいるという現実を考慮せざるを得ない。仮に朝鮮半島で大規模な軍事行動が起きれば数万人の米国市民が犠牲になる」と述べ、トランプ政権が軍事オプションを選択する可能性は極めて低いとの見通しを示した。

ミサイル配備は韓国の米軍の動きに対処したもの

興味深いのはむしろ、パトルシェフ書記の次の発言だ。「もはや誰にとっても秘密ではないが、北朝鮮の核・ミサイル問題は、ロシアと中国を抑止するため、アジア太平洋地域の軍事化を続ける口実に使われている。米国は世界的なミサイル防衛(MD)システムの要素をこの地域の国々に次々と配備して計画を実現している。北朝鮮情勢の緊張は多分に、米国の戦略的な目標実現に寄与しているという側面を見逃してはならない」というのだ。

パトルシェフ書記の主張を踏まえれば、ウラジオストクでのS-400の運用開始は緊迫する北朝鮮情勢に対処するというよりも、米国主導の中ロを標的にしたMDシステム配備の動きに対抗するのが真の狙いとみることができるだろう。

ロシアは実際、自国の安全保障を脅かすとして、米軍の地上配備型ミサイル迎撃システム(THAAD)の在韓米軍への配備に強硬に反発。プーチン大統領は昨年7月に中国の習近平国家主席が訪ロした際、北朝鮮問題に関する中ロの「共同声明」をまとめ、在韓米軍へのTHAAD配備の即時中止を求めた経緯もある。

THAAD配備について米韓両国は、北朝鮮の弾道ミサイルの脅威に対抗するのが目的と説明するが、中ロは高性能レーダーによって自国のミサイル基地が監視されると警戒している。とくに中国は韓国企業を標的にした事実上の「経済報復」まで実施し、中韓関係は大きく悪化した。韓国はTHAADの追加配備をしないといった約束をしてようやく文在寅(ムン・ジェイン)大統領の昨年末の訪中を実現したものの、THAADを巡る対立は解消していない。

日本の「イージス・アショア」を警戒

中国ほどあからさまではないとはいえ、在韓米軍に配備されたTHAADへの警戒感はロシアでも根強い。さらにここに来て、ロシア軍幹部や安全保障関係者が注視し警戒を強めているのが日本の動向だ。日本政府は昨年、北朝鮮の弾道ミサイル発射に備えて、地上配備型の迎撃システム「イージス・アショア」の導入を決めた。ロシアはこれを「中ロを標的にした米国の世界的なMDシステム構築」の一環とみなしているのだ。

「イージス・アショア」の導入問題は昨年11月、河野太郎外相がモスクワを訪問し、ラブロフ外相と会談した際に主要議題の一つとなった。

ラブロフ外相は日ロ外相会談後の共同記者会見で、「世界的なミサイル防衛(MD)システムの要素を実際に展開しつつある米国の計画は懸念せざるをえず、アジア太平洋地域の安全保障に極めてマイナスの影響を与える」と指摘。THAADを配備した韓国と同様、日本も米国のMDシステムの一部が配備される地域になるのではないかと強く心配していると表明した。

米国はかつて、北大西洋条約機構(NATO)のMDシステム構築の理由を「イランのミサイル攻撃の脅威から欧州を守るため」と説明していた。しかし、とくにウクライナ危機後はロシアの軍事的な脅威に対抗する狙いが浮き彫りになっている。ラブロフ外相は「アジアでは北朝鮮の脅威を口実にしているが、地図を見ると分かるように、米国のMDシステムが絶妙な形でロシアと中国を包囲するのは明白だ」とも非難している。

ロシア側の懸念は昨年12月、ロシア軍のヴァレリー・ゲラシモフ参謀総長が来日した際にも日本側に伝えられた。ウクライナ危機の影響などで長らく延期されていた制服組トップの来日がようやく実現し、北朝鮮の核問題を含めたアジア地域での軍事・安全保障協力の強化を期待した日本側にとっては、想像以上に厳しい会談となったようだ。

ロシアからはさらに、脅しともいえるような気がかりな発言まで飛び出している。イーゴリ・モルグロフ外務次官が「日本政府がイージス・アショアの導入を決めたことはロ日関係、とりわけ平和条約の締結作業に否定的な影響を与える」とロシアの通信社に語っているのだ。

モルグロフ次官は北方領土での日ロ共同経済活動を始め、領土問題を含めた平和条約締結交渉の直接の担当者だ。ロシアが今後、北方領土問題の解決を先延ばしする言い訳に使う懸念は否定できない。

昨年12月、国連安全保障理事会は北朝鮮に対する追加制裁決議案を全会一致で採択した。新決議は北朝鮮向けの石油精製品の輸出の9割削減、海外で働く北朝鮮労働者の2年以内の送還などを打ち出した。

米国と中国の間で事前にすりあわされた決議案は採択の直前、ロシアの要求で修正が加えられた。当初案では北朝鮮労働者の送還時期が1年以内だったが、それに難色を示したのだ。ロシアには現在、約3万5000人の北朝鮮労働者がいるとされ、「全員送還させるのに2年はかかる」というのが理由だったという。人件費が安く重宝する労働力を失う経済的な不利益を先延ばしする思惑とみられ、北朝鮮の核問題で主導権を握ろうとしたわけではない。

ロシアは軍事的な選択肢もちらつかせる米国の姿勢を批判し、北朝鮮の核問題の平和的解決に向けた対話の仲介役にも意欲を示す。ただ、北朝鮮への影響力は極めて限定的だ。かつ北朝鮮の核の脅威に対する認識も日米ほど高くはない。ロシアが北朝鮮の核問題を注視し懸念するのは、核拡散の脅威や朝鮮半島有事への警戒よりも、アジアでの米国のMD網構築の行方に重心が置かれているとみるべきだろう。

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『「湿地回復」へ改良ポプラ300万本を全量伐採 中国にはびこる上意下達の画一処理モデル』(1/12日経ビジネスオンライン 北村豊)について

1/13看中国<任意抓人 赴中国旅游需“提高警觉”(组图)>「中共当局は、旅行中の米国人やカナダ人を拘束、出国禁止や逆に追放とかをする。スマホ等で中共を批判しただけでも、国の安全と言う名目で」。中国への旅行は危険です。最も危ないのは麻薬をスーツケース等に忍び込まされて逮捕されること。最悪死刑です。罪をでっち上げることは、中共は得意ですから。日本人は平和ボケしていてそんなことは起こりえないと思っているでしょうけど、腹黒い連中ですから、何が起きても不思議ではありません。リチャードギアの映画「北京の二人(レッドコーナー)」を見れば、嵌められる怖さが分かります。

https://www.secretchina.com/news/gb/2018/01/13/846851.html

1/13看中国<衛星發射殘骸墜廣西 火光四射傳出巨響(組圖)>「中国の人工衛星が広西省で打ち上げられたが失敗、残骸が落下。地方政府の発表ではケガや死亡した人はいないとのことだが、疑問との話です」。天空1号が地球に落下、中国は没問題と言っていますが、制御不能で落ちて来るのですから、日本にも落下の可能性があり、有問題でしょう。中国の言っていることが嘘でないことを祈ります。

https://www.secretchina.com/news/gb/2018/01/13/846850.html

https://www.excite.co.jp/News/chn_soc/20180108/Recordchina_20180108013.html

http://www.sankei.com/world/news/171013/wor1710130069-n1.html

1/13NHKニュース21時37分<中国の歴史教科書 「文化大革命」を大幅縮小へ 批判高まる

中国の中学生の歴史教科書が改訂され、中国を混乱に陥れた政治運動「文化大革命」を扱う内容が大幅に縮小される見通しとなったことから、インターネット上で、共産党は歴史の教訓を十分に伝えるべきだという批判の声が高まっています。

改訂されるのは、中国の教育省が監修し、ことし3月から中学2年生が使用する歴史教科書です。 香港メディアによりますと、新たな教科書では、1960年代から70年代にかけて、中国を混乱に陥れ多数の犠牲者を出した文化大革命を扱う内容が大幅に縮小される見通しです。これまでの教科書では「文化大革命の10年」と題した項目がありましたが、この項目がなくなり、「毛沢東が誤った認識をしていた」という表現や「動乱と災難」という見出しなども削除されているということです。 新しい教科書とされるものはインターネット上に流出していて、教科書の出版社は文化大革命が巨大な損失を与えたことなどを十分に紹介していると釈明しています。しかしインターネット上では、「歴史を直視しなければ未来はない」とか「歴史教科書の問題は重要で、アジアの隣国も見ている」といったコメントが相次ぎ、共産党は政策の誤りに向き合い歴史の教訓を十分に伝えるべきだという批判の声が高まっています。>(以上)

中国や韓国が日本の歴史教科書に容喙して来るのは内政干渉です。宮澤喜一というリベラル政治家が近隣諸国条項なるものを定めたからです。文科省は外国の言うことなぞ聞く必要はないでしょう。今回の中国の歴史教科書で共産党に都合の悪い事実は消してしまう訳ですから。日本は逆に事実でないもの(慰安婦や南京)も採り上げています。採り上げるならきっぱり否定しませんと。事実が外国の政治的圧力で歪められることになります。まあ、前川喜平が事務次官をやるような三流官庁の文科省では無理でしょう。隠れ左翼が多い日本は滅びるかも。教育や政治に無関心では一党独裁の中国の侵略を防げません。

1/14日経<データ資源、米中攻防 経済覇権狙い囲い込み

インターネット上の閲覧や買い物の履歴など「データ資源」をめぐる米中の攻防が激しい。経済のデジタル化が進むなかで、データは消費者の嗜好分析やマクロ予測まで経済活動の基礎となる宝の山。その質と量が競争力を左右する。大きな消費市場と巨大なネット企業を抱える米中は、データ資源で優位を築く覇権争いを繰り広げる。政権の安定へネット統制を正当化する中国にデータの門戸を開くのか主要国は難しい選択も迫られている。

中国のネット通販最大手、アリババ集団傘下のアント・フィナンシャルは2日、米マネーグラムの買収を断念すると発表した。電子決済サービス「支付宝(アリペイ)」との相乗効果を狙い、世界200カ国超で送金サービスを提供する国際送金大手のマネー社を約12億ドル(約1330億円)で買収する計画だった。

ところが、外資による企業買収を安全保障上の観点から審査する対米外国投資委員会(CFIUS)が待ったをかけた。米国人の資産や送金情報など「マネー社の個人データ流出を懸念した」(米国法弁護士)とみられる。

米国では「個人情報の扱いに信頼性がない」として中国企業による買収阻止は当然との見方が多い。中国国営の新華社通信は「CFIUSの審査はブラックボックスだ」と批判。「(中国企業を過度に警戒する)『過敏症』を改めるべきだ」とけん制した。

その直後、中国でアントのずさんな個人情報管理が露見。アリペイの利用者が2017年の利用履歴を閲覧すると、ほぼ自動的に「個人情報を第三者に提供する」との条項に同意したことになる仕組みが発覚した。謝罪しシステムを変えたが、中国の情報管理への懸念が米国の過敏症でないことを浮き彫りにした。

一連の動きは、データ資源をめぐる米中の攻防を象徴する。米国はグーグルなどネットの巨人5社が世界中で日々、膨大なデータを蓄積する。一方、14億人の巨大市場を抱える中国では、5億人が使うスマートフォン(スマホ)決済のアリペイは毎秒2千件もの決済情報をサーバーに蓄積する。世界のデータ生成量は25年に163兆ギガ(ギガは10億)バイトとなり、16年の10倍に膨らむとされる。データを集めれば、それだけ人工知能(AI)の性能を高められる。「膨大なデータは現代の石油になる」(アリババの馬雲会長)。こんな認識が米中を突き動かす。

米国がデータ資源で中国を仮想敵とする大きな理由は、ネットに対する管理・統制を「国家主権の問題」として正当化していることだ。チャットの会話内容や移動の履歴も含めた個人のデータを国民監視や治安維持の道具にも使っていると指摘される。

中国は17年6月に「インターネット安全法」を施行。外資による中国内のデータの持ち出しを厳しく制限した。各国に批判されても、国家の安全を優先する姿勢を崩さない。米アップルが中国のクラウド事業を地元企業に移管すると発表するなど海外勢は対応に苦慮している。中国の広域経済圏構想「一帯一路」で経済支援する東南アジアやアフリカ諸国を中心に、中国発のネット統制が世界に拡散する恐れも強まっている。

米国市民の機微情報を渡さない――。米議会の超党派議員は17年11月、CFIUSの機能を強化する改正案を議会に提出した。肝は個人情報や遺伝子情報など米国市民に関する「機微情報」が、外国政府や外国企業に渡らないよう厳格に審査するルールだ。

CFIUSの従来の審査対象は、軍事や半導体など安全保障に直結する案件が中心。法案が原案通り成立すれば、米国民の個人データを持つ企業の買収は厳しく審査される可能性が高い。米下院公聴会では、CFIUSに関わった元政府高官が証言。中国政府の経営関与を疑われる中国企業が、AIやビッグデータなど先端分野の技術や情報を持つ米企業を続々と買収していることに危機感を示した。法案は事実上、中国企業の買収阻止を狙っているといえる。

個人情報保護に厳しい欧州連合(EU)も18年5月に、EU域外へのデータ移転を厳しく制限する「一般データ保護規則(GDPR)」を全面的に施行する予定だ。欧州の制度は情報の流通をただ制限するだけではない。「十分な保護水準がある」とした国や地域は、個別に許可をとらなくても個人情報の域外移転ができる仕組みも併せて備える。データという資源を保護する一方で、ビジネスへの活用との両立を図る狙いだ。

データの非資源国である日本は、自由な流通を掲げる。18年春にEUとの間で、EU並みの保護水準を確保して日欧間でデータを移転しやすくする新たな枠組みで合意する見通し。日本はアジア太平洋経済協力会議(APEC)が定めた個人情報の越境移転ルールに米国、カナダ、メキシコ、韓国とともに加わり中国にも採用を求めている。

データは21世紀の経済に不可欠な資源になった。世界経済の発展には、安全保障や人権を大義名分に自国で囲い込むのではなく、各国・地域で共有することが欠かせない。データを求めて動き始めた中国。ネット上の言論統制や国民監視など、民主主義とは相いれにくい動きを強める中国にデータの取得を許すのか。主要国には難しい判断が待ち構えている。(上海=小高航、ワシントン=鳳山太成、八十島綾平)>(以上)

日本も中国に対して買収(企業だけでなく土地や建物も)防止策を打たないと。それとスパイ防止法を早く成立させてほしい。日本には外国のスパイがうようよいるのに罰する法律がないため、スパイ天国と言われています。また日本人のスパイも相当数いる筈です。利敵行為をする人間は断罪されねば。

北村氏の記事で思い起こされるのは、1999年から始まった「退耕環林」プロジェクトでしょう。「退耕環林」の説明には「連作障害などで収量の減った土地での耕作をやめ、代わりにポプラなどを植えて林業へ転換して環境への負荷を減らし、収益も上げようという政策。参加した農民には、8年間分の補助金と苗木が支給される。苗木が育てば、森林法の範囲内で伐採・利用が可能。しかし、灌水・除草や柵のメンテナンスなど育生・管理コストは農民の自己負担であるため、ほとんどの土地が植栽後の管理をされておらず、植栽苗の生育は芳しくない。同様の政策で、退牧環草政策がある。牧草地利用を止め、草原を回復するという政策で、同様に補助金が支給されるが、こちらも補助金を食いつぶした後の展望がない点では同様。」とあります。 農民が手入れをすることがないのは農薬を大量散布して手をかけず毒野菜とする心理と一緒でしょうか?

また生態系に悪影響があると言われていたにも拘わらず、李鵬が賄賂を取るため、三峡ダム建設を強行しました。中国駐在時代、1998年に三峡川下りをして白帝城に行きました。劉備玄徳と諸葛孔明の人形が展示されていて、劉備の死に際し「息子の劉禅が蜀の皇帝の器量がなければあなたが代わりになってくれ」と言ったとのことでした。そこも今は水没して浮島になったとのこと、中共は人権だけでなく歴史も尊重しない賄賂塗れの悪逆非道の連中です。

記事

植樹も伐採も“極端な処理”が中国流

民間の社会団体である“中国環境保護協会”は、そのウェブサイトに2016年11月29日付で「“西洞庭湖”で生態の殺し屋“欧美黒楊”を徹底処理」と題する記事を掲載した。“洞庭湖”は、湖南省北東部にある淡水湖で、通常の面積は2820km²で琵琶湖4つ分に相当するが、増水期には2万km²に拡大して四国の面積(1万8800km²)を上回る規模となる。洞庭湖は、先端を少し短くした「J」の様な形状で、東、南、西に3地区に分けられ、それぞれ“東洞庭湖”、“南洞庭湖”、西洞庭湖と呼ばれる。

“欧美黒楊(学名:Populus xeuroamericana)”とは、「改良ポプラ」と呼ばれるもので、欧州・北米原産のポプラを欧州各地で交配して生まれた品種である。上述の記事には伐採されて、短く切り分けられた改良ポプラの木材を載せた運搬船が運河を進む写真が掲載され、下記のような説明が書かれていた。

改良ポプラのあだ名は湿地の“抽水機(吸い上げポンプ)”であり、改良ポプラは湖岸湿地の乾燥化を早めて“生態殺手(生態の殺し屋)”となる。洞庭湖保護区内の改良ポプラは出来るだけ早く徹底処理すべきで、今年7月末に中央政府の「環境保護監督査察チーム」が湖南省政府に提起した意見の中で整理改革を要求する突出した問題となった。目下、西洞庭湖にある国家級自然保護区の中心地区内の改良ポプラ5万ムー(畝)<注1>余りはすでに伐採が完了しており、南洞庭湖にある自然保護区の改良ポプラ2万ムー余りの伐採作業が進行中である。

<注1>1ムー(畝)は約667m²。1万ムーは6.67km²。5万ムー(33.35km²)は東京の杉並区の面積(34.1km²)に近く、2万ムー(13.3km²)は墨田区の面積(13.8km²)に近い。

狂ったように植えた300万本を全て伐採

さて、2018年1月2日付の全国紙「経済参考報」は、「洞庭湖の改良ポプラ300万本が全て伐採された:往時は狂ったように植樹」と題する記事を掲載した。その概要は以下の通り。

【1】300万本近い改良ポプラが切り倒された。2017年12月31日、これは中央政府の環境保護監督査察チームが湖南省政府に対して要求した洞庭湖湿地の改良ポプラ9万ムー以上<注2>を全て伐採する期限であった。往年は行政命令で“瘋狂植樹(狂ったように植樹)”したものを、今は惜しげもなく“全面砍樹(全面伐採)”している。発展と保護という相反する2つの力を反映し、“長江之腎(揚子江の腎臓)<注3>という称号を持つ洞庭湖でまたしても発展か保護かの綱引きが行われている。植林して造林するという過激な“大躍進”<注4>運動は、自然を救済して原点に戻ることで収束することになるが、これは地方政府の“非糧(食糧以外の)”産業の育成を反映しており、行政による衝動的な動きを抑制することは難しい。そして、それがもたらす産業の苦痛には深く反省させられるものがあるが、洞庭湖地区産業の持続的発展という難題の解明が待たれる。

<注2>9万ムーは60km²で、東京都大田区の面積(60.7km²)に相当する。

<注3>洞庭湖は長江の水を調節する機能を果たしていることから「長江の腎臓」と呼ばれる。

<注4>“大躍進”とは、1958年から始まった中国の第2次5か年計画の初年度に行われた農工業の大増段を図った政策であったが、非科学的であったことからわずか1年で失敗して終結した。

【2】2017年7月末に中央政府の環境保護監督査察チームが湖南省政府に提起した意見は、「洞庭湖地区に植えられている製紙用経済林である改良パルプの面積は39万ムーであり、その中核区域は9万ムー、周辺区域は21万ムーである。これらの改良ポプラは洞庭湖の生態安全に深刻な脅威をもたらすので、2017年の年末までに洞庭湖保護区中核区域内の改良ポプラを全て伐採することを要求する」というものだった。湖南省政府から命令を受けた人々は、否応なく改良パルプの伐採に応じた。2010年から改良ポプラの植林事業に参画した地元出身の企業家は4000ムー以上の植林を行っていたが、生態保護という名目には抗し難く、止む無くポプラを全て伐採した。“漢寿県”の西洞庭湖自然保護区で“造林模範”と呼ばれた“余青山”はチームを組織して10日間かけて長年育てた改良ポプラの樹を泣きの涙で全量伐採した。彼らには何らの補償金も出ないから、その損失は甚大なものがある。

草も生えず、鳥の影もない

【3】湖北省と湖南省の間に横たわる中国第2の淡水湖である洞庭湖は、長江の重要な調整湖で、“魚米之郷(土地が肥沃で物産が豊な土地)”として知られている。その地理的優位性から洞庭湖は中国で最初に『“国際湿地公約(ラムサール条約)”』に登録された7つの湿地の1つで、世界的にまれな巨大な「種の遺伝子」の宝庫と呼ばれている。その洞庭湖に改良ポプラが導入されたのは2000年の初めだった。当時は食糧を植えても利益が薄く、一方で製紙工場の“楊樹(ポプラの樹)”に対する需要が急増していた。洞庭湖地区では水田にポプラの苗木を植えるところが出現したため、「新華社」が2003年に「良田にポプラを植える風潮に警戒せよ」と報じ、これを政府が問題視すると同時に世間が注視するようになった。すると、ポプラの植樹は⽔⽥から離れ、堤防を越えて洞庭湖の⽔際へと移って行った。水際の荒地が大量に請負われて改良ポプラの植林場と化したことにより、湿地保護区の中核地区でさえもその被害を免れることはできなかった。

【4】請負人は勝手気ままに水際を変貌させ、原生の葦(あし)を刈り払ったり、直接に排水を行った上で改良ポプラを植えた。甚だしい場合は水際にコンクリートの枠を組んで土地を囲い込み、排水した上で改良ポプラを植えた。「湿地の吸い上げポンプ」というあだ名を持つ改良ポプラが自然保護区に大量に植えられたことによる損害は甚大で、湿地は日に日に陸地化が進んだ。改良ポプラの成長に有利なように、植林の請負人たちは、油圧ショベルで溝を掘り、掘った土で湿地を埋め立てて土壌に変えた。また、ポプラはカミキリムシの食害に遭いやすいことから、殺虫剤も多用されたため、土壌汚染も進んだ。改良ポプラが密集する地域では、渡り鳥の姿もなく、地元の人々は、「樹の下には草も生えず、樹の上には鳥の影もない」と嘆いた。

【5】改良ポプラの価格は2000年前後がピークで、改良ポプラ1ムー当たりの木材価格は5000元(約8万7000円)以上であったが、伐採する前3年間は樹の周囲で野菜の栽培が可能で、別途1ムー当たり1000元(約1万7400円)の収入を得ることができた。ところが、改良ポプラの1ムー当たりの木材価格は2003年頃から急激に下降し、2014年には2000元(約3万4800円)前後に落ち込んだ。

【6】2014年4月、『洞庭湖生態経済区計画』が中央政府“国務院”で承認され、これに加えて「長江経済ベルト建設」が国家戦略になると、洞庭湖地区は新たな歴史的転機を迎えることになった。しかし、洞庭湖の生態悪化は明白で、洞庭湖地区の生態環境は深刻な状況にあった。中央政府の環境保護監督査察チームが湖南省政府に意見を提起した時には、“一針見血(ずばり急所を突いて)”次のように指摘した。すなわち、洞庭湖のⅢ類水質<注5>は2013年には36.4%あったものが、2016年にはゼロに低下し、出口部分の総リン濃度は97.9%に上昇しており、形勢は楽観できないものとなっている。洞庭湖周辺の人々は、“靠湖吃湖(湖に頼って生活)”しながら、洞庭湖の生態保護など一顧だにせず、長年にわたって慣れと依頼によって洞庭湖をむしばんで来た。その縮図の最たるものが改良ポプラの植林なのである。

<注5>中国の水質基準(地表水)はⅠ類が水源水、Ⅱ~Ⅲ類が生活飲用水、Ⅳ類は工業用水、Ⅴ類は農業用水。

残る21万ムーも全て伐採へ

こうした状況下で、2017年7月末に中央政府の環境保護監督査察チームが湖南省政府に要求したのが、12月末までに洞庭湖湿地の中核地区に植えられた9万ムーの改良ポプラを全て伐採して根絶することだったのである。この9万ムーに植えられていた改良ポプラの総数は何と300万本、それを8月から12月末までの5カ月間で全て伐採することが至上命令として中央政府から湖南省政府に下され、湖南省政府はそれに応えて12月末を待たずに300万本の改良パルプの全量伐採を完了させたのだった。

2000年頃から始まった改良ポプラの植林は、地方政府にとって利益を生む、うま味のある事業であったことから、洞庭湖周辺の市政府や県政府が挙って詳細な「改良ポプラ発展計画」を策定し、政府出資の奨励策や企業誘致などを行って大々的に改良ポプラ植林事業を展開した。“郷”や“鎮”の幹部が植林事業に不熱心であると、その怠慢の責任を追及されたという。

改良ポプラを植林したことにより、洞庭湖の湿地は乾燥して土壌となり、改良ポプラが密集する地域では太陽光がポプラにさえぎられて、周辺の植物は壊滅の危機に瀕した。また、改良ポプラは魚類の繁殖地や鳥の生息地をも破壊した。さらに、湿地が土壌に変わったことにより、洪水期には水の円滑な流れが阻害され、洪水防止にも影響を与えた。確かに改良ポプラの植林は地元の政府や企業に利益をもたらしたが、ラムサール条約に登録されている洞庭湖の湿地を破壊し、その貴重な生態系に甚大な損害を与えたのである。

上述したように、洞庭湖地区における改良ポプラの植林面積は30万ムーであり、2017年12月末までに伐採されたのは、そのうちの中核区域の9万ムーに過ぎない。残る21万ムーは引き続き伐採されることになるが、改良ポプラの数量は9万ムーの密集地域で300万本であったから、密集度が多少低い21万ムーでは恐らく500万本前後になるだろう。今後何カ月かけて21万ムーの伐採が完了するかは分からないが、伐採によって作られる改良ポプラの木材が膨大な量であることは間違いない。

全てお上のご意向に沿って“一刀切”で

1月3日付の北京紙「新京報」は、環境研究者である“于平”の「300万本の改良ポプラを植林して伐採し、洞庭湖を痛めつけた責任は誰が負うのか」と題する所見を掲載した。于平はこの事件の経緯を説明した上で、専門家や業界人が絶えず植林事業に異議を申し立てたにもかかわらず、目先の利益に目がくらんだ地元政府の役人は耳を傾けることなく無視を決め込んだため、植林狂騒はますますひどいものとなったと苦言を呈し、文末で次のように述べている。

過去数十年間、勝手に湿地を占拠してでたらめな開発を行うことは、全国各地で普遍的に行われて来た。利益を得るために、一部の地方役人はそれをはばかることなく行っているが、湿地保護の法的執行力が脆弱なだけでなく、責任を追及する体制ができていない。指導幹部の環境に対する「離任審査」や「責任の終身追及」制度はすでに明確になっているが、目下のところ、地方政府の主要幹部が湿地破壊により責任を追及された例はない。環境破壊を行いながら昇進した役人に対して遡って処罰しないのであれば、誰もが湿地開発に手を伸ばすのではないか。湿地を野蛮な開発の犠牲にしないためには、法律の完備と事後の責任追及が伴わなければならない。

これは正論であり、湿地破壊に止まらず、“形象工程”と呼ばれる「指導者個人のイメージアップや指導者とその仲間の利益獲得を目的とした、実際には必要ないのに、権力を濫用して国民の財産・労力を浪費する工事」などにも当てはまる。そうした無用な工事が業績として評価された者は党の高級幹部や高級官僚に昇進し、無用な工事の後処理を背負わされた後任者が貧乏くじを引くことになるのだ。改良ポプラの植林を推進して地方財政を潤すことに成功した官僚たちは昇進を果たしただろうが、後処理の伐採作業を強制させられた後任者たちこそいい面の皮と言えよう。

ところで、中国語に“一刀切”という言葉がある。これは「(実情を無視して)物事を画一的に処理する」ことを意味する。上述した改良ポプラの植林も伐採も全てお上のご意向に沿って“一刀切”で行われたものであり、中国共産党主導の中国では異議を唱えることは許されない。改良ポプラを例にとれば、改良ポプラが湿地の“抽水機(吸い上げポンプ)”であることを科学的に検証していれば、貴重な洞庭湖の湿地を破壊するであろうことは事前に分かったはずである。しかし、科学的な検証を怠り、目先の利益だけを追求した結果が、改良ポプラの植林による湿地の破壊であり、今回の30万ムーの改良ポプラの全量伐採である。改良ポプラを全量伐採したとしても、根っこまで掘り出すわけではなく、短期間に元の湿地に戻るわけではない。科学的検証を経て、湿地に回復する最善の方策を究明した上で改良ポプラの伐採を行うのならまだしも、単に伐採すればよいと“一刀切”で動くのはいかがなものか。

繰り返される「非科学的技術とずさんな管理」

1958年に毛沢東主導で開始された“大躍進”政策では、農工業の大増産により数年で経済的に米国や英国を追い越すことを目標としたが、非科学的技術とずさんな管理により数千万人の餓死者を出して失敗し、1959年に毛沢東は責任を取って国家主席を辞任した。この時も科学的検証に基づき毛沢東をいさめる人がいれば、数千万人の餓死者を出す悲劇は起こらなかったはずだが、全国民が毛沢東の指示に妄信的に従い“一刀切”で動いたことが甚大な損害と悲劇を導いた。当初の政策決定が非科学的であり、目先の短期的利益を追求するものであれば、後日必ずその後遺症が現れる。それは大躍進により発生した数千万人の餓死者であり、改良ポプラの植林によって破壊された洞庭湖の湿地であった。

2017年11月18日に北京市“大興区”の“聚福禄公寓(アパート)”で発生した火災を契機として北京市が開始した“低端人口(低級人口)”を北京市内から駆逐する動きは、“一刀切”でいかなる例外も認めない形で進められている。地方から出稼ぎに来た人々に借家・借室から数日以内に立ち退くよう要求し、拒めば住居の取り壊しや電気・水の供給停止を行い、立ち退きを強制している。彼らが北京市内から去った後は、家政婦、子守、トラック運転手、宅配便の配達員、各種の店員や作業員などの低賃金労働者が不足し、物価上昇や都市の機能不全が発生している。北京市ではこれと同時進行で、大気汚染を減らすための“煤改気(石炭を天然ガスに換える)”や都市景観を整えるための「ビル屋上・壁面から広告・看板標識の撤去」<注6>が強制的に“一刀切”で行われた。

<注6>“煤改気”および広告・看板標識の撤去の詳細は、本リポートの2017年12月15日付『1000万人が凍える中国「暖房変換政策」の失態』および12月22日付『北京に吹き荒れた「看板・広告撤去騒動」の顛末』参照。

2017年12月17日に“北京大学”講堂で開催された第19回「北京大学光華新年フォーラム」に登壇した教育企業“新東方教育科技集団”会長の“兪敏洪”は講演の中で、北京市で行われている低級人口の駆逐、“煤改気”、広告・看板の撤去に言及し、「私が特に怖いのは、中国で出現している各種各様の“一刀切”モデルである。中国の官僚主義は上位下達の管理モデルで、下部が執行する時に現実の状況を考慮しないばかりか、庶民感情も考慮せず、盲目的に指示に従う対応を引き起こす」と述べて、事前に事態を十分に検討することの必要性を訴えた。このように“一刀切”の問題点を公式の場で堂々と指摘する人物もいるのだが、こうした意見が取り入れられて“一刀切”モデルが見直されるのはいつの日か。

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『中国「北朝鮮フェイク文書」はなぜ流布したか 偽造犯は米国逃亡中の元スパイ?』(1/10日経ビジネスオンライン 福島香織)について

1/13現代ビジネス<中国「大物政治家」のスキャンダルを暴露し続けた大富豪の狙い 民主化の星か、中国版籠池氏か… 安田 峰俊>

http://gendai.ismedia.jp/articles/-/54113

1/11ZAKZAK<中国共産党が恐れる郭文貴を直撃 「宿敵・王岐山を絶対潰す」>

https://www.zakzak.co.jp/soc/news/180111/soc1801110012-n1.html

郭文貴が未だ生き延びられているのは、彼の持っている金のお蔭か、彼の持っている中共にとって都合の悪い資料を米国が守るため安全を保証しているためかは分かりません。両方かも知れません。『毛沢東の私生活』を書いた李志綏は米国移民して本の出版3ケ月後、シカゴの自宅浴室で遺体となって発見されました。1995年2月のことで、心臓発作が原因との発表でしたが、江沢民が殺したとの噂がありました。タイミングが良すぎましたので。

また、先日慰安婦像の寄贈を受けたリー・サンフランシスコ市長も中共のスパイ容疑でFBIの調査が入る前日に、中共が暗殺したとの噂がたちました。死因は同じく心臓発作です。朝日新聞の若宮啓文元主筆も北京のホテルで病死しました。中共は用済みになれば無慈悲に処分するという事でしょう。「ザ・レイプ・オブ・ナンキン」を書いたアイリス・チャンの自殺も中共の関与があってもおかしくないと思っています。

https://youtu.be/yQsXoPvwZVI

郭文貴はデータを小出しにしていると、いつ暗殺されるか分からないから、手持ち資料を全部出した方が良いのでは。CIAには渡しているのかもしれませんが。米中衝突のタイミングを見ているのかもしれません。アサンジやスノーデンはロシアが支援していると1/12宮崎正弘氏メルマガにありました。米露で暴露合戦をすれば国民を犠牲に悪に手を染めているのが白日の下に晒されるから良いと思いますが。

http://melma.com/backnumber_45206_6632369/

1/12日経電子版<中国、17年の対米黒字最高 米経済好調で輸出拡大>

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO25601980S8A110C1MM0000/

これで益々トランプは中国に厳しい政策を採るようになるでしょう。1/11ロイターの記事“China opposes U.S. pro-Taiwan bills welcomed by Taipei”のように中国の嫌がることを米議会でも始めています。

1/13宮崎正弘氏メルマガ<『広辞苑』こと『嘘辞苑』は開き直り、岩波の本性を暴露したが  デルタもマリオットも「台湾は独立国」ばかりか、チベットも主権国家だ、と>では、

「中国に乗り入れている米国のデルタ航空はウェブサイトにおいて「台湾、チベット、マカオ、香港」を独立国家として扱ってきた。

同様に最大のホテルチャーン「マリオット」、服飾の「ZARA」、そして医療メーカーの「エドロニクス」などは自社のウェッブサイトにおける表現で「台湾、チベット」は独立国家と記述してきた。」とありました。日本は中国に弱腰すぎます。在米の民主派を価値観を共有するとして支援、南京や慰安婦は中共の息のかかった在米反日組織の「世界抗日戦争史実維護連合会」(世界史維会)のプロパガンダと主張して貰えば良いでしょう。

記事

“犯人”は郭文貴?(写真:ロイター/アフロ)

先週のネットの話題でなかなか興味深かったのは、中央弁公庁の“絶密文書”を米国のニュースサイト・ワシントンフリービーコンが入手した、というものだった。この“絶密文書”は、中国党中央として、下部組織に、国連の対北朝鮮制裁決議は象徴的に実施するにとどめとけ、とか、北朝鮮が核実験をやめてくれれば、中国としては体制維持を保障し、北朝鮮の国防建設や民生インフラ建設への投資を拡大して、中距離弾道ミサイルなんかも供与する、とか、北朝鮮にすぐさま核兵器を廃絶させる必要性は中国にはない、とか結構スゴイことを通達していた。本物の絶密文書であれば、超一級特ダネであり、とりあえず日本の毎日新聞だとか産経新聞だとか、それなりの大手メディアも転電していた。

だが、この絶密文書、コピー写真が同ニュースサイトで公開されていて、それをよくよくみれば、なんか偽物っぽい。1月2日に公開されて、3日に日本や英米メディアが転電したりしたが、4日はおおむねの人が「フェイクニュース」と断定するにいたった。しかしながら、時期的にも、北朝鮮が南北対話を受け入れるというタイミングで、さらにトランプ政権の暴露本『炎と怒り』出版もかさなり、米中はいったい北朝鮮問題をどうするつもりなんだというところに投下された、この“フェイクニュース”は、誰が何のために、作り上げたのだろうか、と興味をそそられることだろう。ちょっと勝手な推理をしてみようか。

「核問題解決を深化させるための決定」

まず、文書の中身をもう一度、詳しく紹介しよう。

タイトルは「我が国と朝鮮民主主義人民共和国が当該国の核問題解決をさらに一歩深化させるためのコミュニケーション協調工作に関する中央弁公庁の決定」。2017年9月15日発行の日付と中央弁公庁印がついてある。党中央の外交マターを担う中央対外連絡部に決定を通達する文書であるが、9月19日には全人代、国務院、中央軍事委員会にも回された、という。

内容は「朝鮮(北朝鮮)は我が国の西側敵対勢力に抵抗するための重要な軍事緩衝区であり、わが党が指導する中国の特色ある社会主義制度としても、朝鮮の持つ政治的戦略的地位の重要性は何物にも代えがたい。このため、わが党、国家は一切の代価を惜しまずに朝鮮の主権とその領土の保全を守り、そして朝鮮政権の安定と継続を切実に保障する必要性がある」

「手をこまねいて傍観することはない」

「党中央および国務院の北朝鮮問題対応にかかわる関連部署および中央国家安全委員会のこれまでの会議の中で処理してきた北朝鮮にかかわる問題の指導的精神にかんがみ、朝鮮執政当局と当該国の核問題について交渉協力工作を行う関連部署に対しては、以下のように具体的な要求を通達する」

「中共中央を代表し、朝鮮サイドに対してはわが方は朝鮮政権の防衛の決心を一層強調する」

「朝鮮政権の崩壊及びこれにより引き起こされる米国を始めとする西側敵対勢力が朝鮮半島において引き起こすであろう直接的軍事対峙(原文では対持と誤記)を防ぐため、わが国とロシアなどの国家は外交斡旋と軍事牽制など一切の手段を駆使して、必ずや朝鮮半島の平和安定を保障し、戦乱が生じることを防止すると決心しており、これはわが方とロシアなどが共通して堅持する立場である」

「同時にもし米国が対朝鮮戦争を発動した場合、アジア太平洋地域および全世界の政治経済の枠組みが巨大な影響と衝撃を受けうることを十分考慮し、わが方とロシア方面は絶対に朝鮮半島の混乱情勢を手をこまねいて傍観することはない」

「国連の対北朝鮮制裁決議については、我が国は朝鮮内の内需を十分に保障する前提のもと、象徴的に処理して懲罰すればよい」

「中国で開設されている朝鮮企業は閉鎖されたが、わが方は対北朝鮮貿易仲介機関および第三国(地区)を経由して引き続き関連貿易活動を展開することをしばらくは制限しない」

「朝鮮民生と基礎インフラ建設に対する援助は、2018年度は、2017度比で一回当たり15%増とする。今後5年の間、年平均で前年同期比10%増をくだらないようにする」

「わが方の朝鮮と関連する銀行業務は一時的に停止する規定があるが、これは中央直属の国有銀行および一部地方銀行に限定することになるだろう」

「北朝鮮の防御的軍事建設に対する投資は増加させ、わが国の先進的中短離弾道ミサイルやクラスター爆弾などハイレベル軍事科学技術を提供する」

「厳正に朝鮮当局に核問題における自制を警告すると同時、目下、わが方に強制的にすぐさま朝鮮の完全核兵器廃棄を要求する必要性は存在せず、そのかわり北朝鮮に自制を求め、将来若干の条件が成熟したときに、徐々に改革を行い、最終的に朝鮮半島の非核化要求に到達すればよい」…。

要するに、中国は北朝鮮がこれ以上の核実験を行わないでいてくれるなら、ロシアとともに核兵器保有を容認する、国連の制裁決議も象徴的な実施にとどめるし、何なら北朝鮮の国防のために中距離ミサイルやクラスター爆弾をあげてもいいよ、という話であり、中国が国連の対北朝鮮制裁決議に賛成したり、米国と足並みをそろえて北朝鮮に圧力をかけるというのは完全な見せかけである、という内容である。本当ならば中国の嘘の大暴露である。

作ったのは、逃亡中の郭文貴?

だが残念ながら(?)、この文書がフェイクであることも、ほぼ間違いない。中国外交部は捏造と一蹴しているし、確かに見る人が見れば、変である。

具体的にいえば、今時の公文書には公文書QRコードがつけられる規定になっているが、そのQRコードが見当たらない。「直接的軍事的対峙」とあるべきところが「直接的軍事的対持」というありえない誤字がある。そもそも、絶密文書というのは幹部に回した後、持ち帰ることも許されず、読んだあとはすぐ回収されるので普通はコピーも不可能。コピーすれば画面がつぶれる特殊な紙でできている。用語も党中央とすべきところを中共中央と表示していたり、党中央の文書として不自然な言葉遣いが散見される。ただ、全くのド素人が作ったものとするほど幼稚でもない。(コピーして黒くつぶれたものを特殊な光を当てて読み取ったかのような不鮮明なコピー写真をわざわざ作っている)。それなりに党中央内部に通じた人間が作ったものとみられる。

では、誰が作ったのか、という話だが、一般に噂されているのは「闇の政商」として北京五輪プロジェクトにかかわったビジネスマンで、習近平政権に汚職容疑で失脚させられるとみて、政権スキャンダルの証拠をにぎったまま現在米国に逃亡中の郭文貴である。このコラムでも何度か取り上げた。彼は自分自身でも告白しているが国家安全部17局に所属してビジネスマンの肩書を使って諜報・特務工作に従事していたことがある。つまり、スパイである。文書の偽造などはお手のものではあろう。

ではネタ元が郭文貴だと仮定し、なぜ彼がこのようなこった文書を捏造し、フリービーコンという新興保守ネットニュースメディアに報道させたのか。

郭文貴といえば、昨年から王岐山および中央規律検査委員会のあることないことを含めたスキャンダルをネットを通じて暴露し続け、習近平政権を揺さぶり続けているが、なぜ急に北朝鮮がらみのフェイクの絶密文書を持ち出したのか。自分の身を守るための習近平政権に向けた駆け引き材料としてのフェイクニュース投下なら、習近平や王岐山の蓄財や下半身スキャンダルの方が裏がとりにくい分、長持ちするだろうに。

わかっていても転電したくなる

一つには、この文書がフェイクでありながら、文書の中身がじつのところまんざらフェイクばかりともいえないものを含んでおり、外国メディアがフェイクとわかっていても転電したくなるようなものであるという点だろう。

実際のところ、中国共産党内に北朝鮮擁護派が依然存在しており、金正恩の体制維持は絶対である、という主張はまだ根強い。そういう親北勢力を抑えながら、習近平は少なくとも表向き、対北朝鮮制裁を強化する姿勢を示した。しかしながら、トランプ政権は中国の対北朝鮮制裁の本気度を疑っており、中国の石油タンカーが海上で北朝鮮に原油を提供していることが、米監視衛星の写真などで判明したこともあって、米中の北朝鮮問題をめぐる共闘関係も揺れている。そういうなかで、なんとか南北対話が行われることになったのだが、果たしてこれに素直に期待を寄せてよいのかどうか、不安が募る。

一方、中国の民主化を願う華人活動家や、米国の反中保守派は、北朝鮮問題における米中融和・協力体制が進むこと自体に強い懸念を感じている。というのも、解放軍が実際に北朝鮮の核兵器排除のために米国の要請にしたがって軍事行動を行えば、半島における中国の軍事プレゼンスが強化され、韓国のTHAADミサイルの撤退、ともすれば在韓米軍の撤退などにもつながりかねず、極東アジアの米中パワーバランスは中国が圧倒的に有利になるやもしれない。これは習近平政権の独裁確立シナリオを補強することになり、共産党政権の崩壊を願う華人民主化活動家からすれば、避けたい未来なのだ。

華人民主化活動家たちは、むしろ米中対立が激化し、トランプ政権が中国共産党体制を弱体化させてくれればいい、と思っている。だから、中国の人権問題では真逆の立場にあるスティーブ・バノンを持ち上げたりするのである。バノンは「米国にとって真の敵は中国」といってはばからないトランプ側近の中の反中派の筆頭で、すでにトランプ政権からは追い出されているのだが、華人民主化活動家たちは依然トランプ政権になんらかの影響力を持つと思って働きかけている。トランプ政権が妙に対中融和的な動きをしていることに懸念している在米華人活動家たちは、バノンを通じてトランプ政権をもう一度選挙前に見せたような対中強硬路線にひき戻したい、と考えている。

このバノンと郭文貴は10回以上面会し、郭文貴は独自のメディア・プラットフォームを創るために、ブライトバードニュース会長のバノンにアドバイスを求めていることをAFPのインタビューで明らかにしている。郭文貴はこのインタビューで、自分の活動の目的が中国の体制転換、つまり民主化であるとしている。どこまで本気かは知らないが、少なくとも郭文貴は、自分の生き残り策を、米国で華人民主化活動家たちに協力することで切り開こうとしている。

とりあえず現状に楔を

郭文貴は、華人民主化活動家、バノンら米国政治の反中保守派勢力と共闘関係を構築しようとする中で、こうした米中間の疑心暗鬼を引き起こすようなフェイクニュースを投下した、ということになる。その狙いを想像するに、民主化活動家たちの期待に応えて米中間に不信を引き起こすこと。絶密文書という、めったに手に入らない情報を入手できる自分の価値をバノンや保守派政治家たちにアピールし、その庇護を求めること。さらに言えば、王岐山や党中央指導部の個人スキャンダルレベルでは、米国を含む外国メディアは反応しなくなってきた。もっと、外国メディアが食いつきやすいネタ、それが北朝鮮問題であったということだ。

北朝鮮に対する姿勢は、おそらくまだ党内で完全には一本化されていない。習近平がトランプと対北朝鮮政策でなんらかの合意をもっている一方で、金正恩とも密約があっても不思議ではない、と誰もが思っている。また、北朝鮮核問題の落としどころが、北朝鮮の核保有容認とならざるを得ないということは、中国の専門家の意見にもある。文書自体はフェイクだろうが、中身はこれまで内部での専門家たちの議論が反映されているので、ある種の説得力があるのだ。

だから私はフリービーコンやそれを転電した保守系メディアは、文書の真贋の裏を取らずに、とりあえず米中融和の現状に楔を入れたいという意図もあって、わざと郭文貴のフェイクニュースに乗ったのではないか、とも疑っている。

昨年から「フェイクニュース」という言葉が一つの流行語となっているが、フェイクニュースというのはなかなか面白い。ニュースの受け手自身も、それが事実であるかどうかより、その言説が流布することでどういう影響を政権や国際情勢に与えるかということを優先して信じたり騙されたりする。安倍政権を打倒するという目的で流れるフェイクニュース、トランプ政権を揺るがすフェイクニュース、そして習近平政権を揺るがすフェイクニュースがほとんど同時に世界に流れるのも偶然の一致だろうか。

個人的にいえば、このフェイク北朝鮮文書ニュースに関しては、私もちょっと騙されたふりをしたい気分だ。実際、南北対話なんて、そちらのほうがよほどフェイクな気がする。

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『中国「一帯一路」が英国の国家事業に触手を伸ばす思惑』(1/12ダイヤモンドオンライン 姫田小夏)、『英国のEU離脱を歓迎し、待ち構える中国 ブレグジットでますます深まる英中経済関係』(1/9JBプレス 姫田小夏)について

1/8アポロネット<中共國恐怖計劃 兩年後全體國民成瓮中之鱉 ——逾700萬人登上黑名單=中共国務院は恐怖計画を持つ 2年後には国民全体が甕の中のスッポン同様逃げられず 700万人超がブラックリストに掲載>国が国民を評価するシステムを作り、公共道徳、政府への不満の言論をした人はブラックリストに載せられ、既に700万人を超えたと。二等国民として、航空券や乗車券も買えないし、銀行ローンや住宅も買えない。新聞記者は腐敗追及の記事を載せただけでブラックリスト入りした。2017年、何の通知もなく、逮捕もないのにこの扱いを受けた。2013年に捏造拡散罪で逮捕・起訴、2015年に裁判では名誉棄損で訴えられ、判決はHPに謝罪文の掲載を要求された。この信用システムは、当局が政治的に異なる意見に対し圧力をかける手段として使っているのに、驚くことに、大陸の人は批判を多くしない。

共産党は毛沢東がやった黒5類と同じことをやろうとしています。共産党に敵対する者は二等国民に仕立て上げ、社会生活をできないようにします。まだ文革のように虐殺が起きていないだけマシとは言えるでしょうが、党や政府を批判できない社会程恐ろしいことはありません。これが三権分立のない、選挙で自分達の統治者を選ぶこともできない共産主義の実態です。

http://hk.aboluowang.com/2018/0108/1051666.html

1/8希望の声<“一代奸相”周恩來42周年忌 評:秦檜、西特勒自嘆不如=一代の国民への裏切り宰相 周恩来の42周忌 評価:秦檜もヒットラーも彼には及ばない>毛沢東が文革後、聖壇から降り、周は共産党の道徳聖人の役割を果たした。しかし、周がいなければ、毛は文革を発動できなかったし、他の残虐な事件も周が手を貸していたのでできた。日本人の中で、周は不倒翁として褒め称える向きもありますが、単なる保身の塊です。毛を抑えようとすれば出来たかもしれないのに、それをせず何千万と餓死させました。彭徳懐将軍の方が良心的でしょう。

http://www.soundofhope.org/b5/2018/01/08/n1429749.html

1/10ダイヤモンドオンライン・ロイター<中国の不良債権市場、世界的な専門ファンドが食指>悪辣な中国は、ハゲタカの為すが儘にはさせないでしょう。買わせておいて急に法律を変え、売らせることをできなくし、再建したらハゲタカの買値で、買い戻しするのでは。こんな国を信用する方が間違っています。

http://diamond.jp/articles/-/155410

1/10希望の声<传一批中共特工渗入朝鲜 金正恩生日加强警戒>朝鮮の新義州に中国のスパイが入り込んでいるので、(斬首作戦を恐れてか?)朝鮮の緊張は高まっているとの話です。

http://www.soundofhope.org/gb/2018/01/10/n1439115.html

1/12日経朝刊「EU離脱、後戻りできない英国 ジャンクロード・ピリス氏 元EU理事会法制局長 

英国の欧州連合(EU)離脱交渉の第1段階が簡単でなかったのは、英政府と英保守党が結束できず、国民に「交渉はとても難しい」と説明できずにいたからだ。国民が何を望んでいるかを知るには、EU離脱から15年は必要だろう。その間、経済的には苦しむ。

Jean-Claude Piris フランス国立行政学院(ENA)卒。仏国連代表部などを経て、2010年までEUに勤務。数多くのEU条約の起草に携わった。74歳。

EU加盟国とノルウェー、アイスランド、リヒテンシュタインの31カ国が加盟し、人やモノ、カネ、サービスを域内で自由に行き来させられる欧州経済地域(EEA)がある。英国では今でも多かれ少なかれ、EEAのような合意をEUと結べるという幻想がある。

しかし、英国は合意を結べない。EUから離脱した後はEUの政策決定に参加できないのに、英国のような大国がEUの法律のコピーを受け入れるわけがない。法的に可能だとしても、EEA入りには残る30カ国の議会承認が要る。

英EUの将来の協定は、EUがカナダや韓国と結び、日本と交渉が妥結した自由貿易協定(FTA)なら可能だ。協定はFTAに「プラスアルファ」を加えるのがいい。安全保障やテロ対策、原子力、医薬品、航空といった分野での協力になるだろう。

英国は現状のままだと離脱後、EUの金融サービス市場には自由にアクセスできなくなる。EUとカナダのFTAの金融の取り決めは、世界貿易機関(WTO)の協定を写した薄い内容だ。英国はEUと金融規制などで同等の条件を得ようと努めるだろうが、同等かどうかはEUの執行機関である欧州委員会が決める。

ロンドンの金融街シティーは魅力的な場所で、多くの人材を抱える。(EU離脱後に)1万~10万の雇用が失われても、シティーの終わりでない。EUと自由にアクセスできなくなるのは、英国への懲罰でも差別でもない。EU加盟国でないウクライナのような欧州の国に示した条件と同じだ。

もし(単一市場内での)人の移動の自由を望んでいない国があれば、移動できなくなる。スイスにも金融サービスの自由なアクセスは与えていない。単一市場はEUの魂そのものだ。金融サービスだけいいとこ取りするのは、政治的にも法的にも問題外だろう。

離脱後の少なくとも2年近くの移行期間中、英国は今のまますべてを手に入れられる。ただEUがそれを超えた期間を設定する用意があるとは思えない。せいぜい1年を加えた3年近くだろう。アイルランドは5年というが、無理だ。離脱から5年後(2024年)には市民を代表する欧州議会の選挙がある。

英国のEU離脱自体の撤回は可能だろうか。実は法的には、交渉の最初の時点では可能だと思った。英国が単一市場に残りつつ、ユーロ圏に対しても、国境管理を廃止したシェンゲン協定にも入らない今の立場を保てると思った。しかし、政治的にもう後戻りできるとは思えない。EU離脱を撤回する可能性はせいぜい2~3%で、それ以上ではないだろう。

仮に英国とほかのEU加盟27カ国がEU離脱撤回で合意しても、合意案は英下院だけでなく欧州議会でも審議される。私は英国が要請すれば離脱を撤回できると思っているが、加盟国で構成するEU理事会の法制局によると、撤回には英国の要請に加え27カ国の合意が必要という。

欧州議会は撤回の阻止さえできる。予定通りであれば、英国がEUから離脱した直後の19年5月か6月、次の欧州議会選が控える。(英国のEU残留を前提に)欧州議会の選挙運動が英国で展開されるとは想像できない。現実的・政治的にEU離脱撤回の可能性はほぼなくなった。英議会が離脱に反対し、政権が退陣し、総選挙や再び国民投票があったとしても時間切れを迎えつつある。

EUが英国を失うのはとても不幸で、悲しいことだ。EU理事会の法制局時代も英国人とともに働いてきた。だが、EUにとって単一市場は必要不可欠で、きわめて重要なのだ。単一市場のルールはEU司法裁判所で解釈される。その司法管轄権は厳密に守らなければならない。

(談)

準備進む欧州議会

ピリス氏はEU法の権威だ。英国のEU離脱撤回は可能と訴えてきたが、主張を百八十度変えたところにEU本部のあるブリュッセルの雰囲気の変化がみてとれる。

日本ではなじみの薄いEUの議決機関である欧州議会だが、19年の次回選挙を控え、実は英EU離脱を前提にした改革案をめぐる水面下の議論が大詰めを迎えている。欧州議会選挙法の改正にあわせ各加盟国の選挙法も変えなければならず、「逆算すると18年の早い段階で改革案をまとめねばならない」と欧州議会幹部は明かす。

欧州議会選の準備が着実に進む中、英国はもう後戻りできなくなったというのがピリス氏の判断だ。度重なる条約改正で権限を強める欧州議会は交渉自体にもにらみを利かし始めている。(編集委員 瀬能繁)」(以上)

ピリス氏の言うのは、英国のEU脱退撤回は加盟国の承認が要るのでできないとの見通しですが、元々英国にその気もないでは。あれば早くから手を打っていたでしょう。“Commonwealth of Nations ”と中国を活用しようとしているのかも。ただ姫田氏の意見にもありますように、中国の狙いは“Commonwealth of Nations ”に「一帯一路」を繋げようとしている訳ですから、取らぬ狸になる可能性があります。オズボーンは中国人の正体を知らずウブだったか、ハニーにでもかかったかです。何せ中国の屈辱の原典は阿片戦争にあります。ただ当時の中国は満洲人に統治されていましたが。扶清滅洋から滅満興漢に簡単に切り替わるのですから、漢民族は如何に忠義のない民族という事です。阿片戦争については、英国を相当恨んでいる筈です。英国王室の執事としてのロスチャイルド(真田幸光氏談)に中国とくっつくことをどう思っているのか聞きたいものです。河添恵子氏は習近平はリークワンユー亡き後のロスチャイルドの東南アジアの代理人だと言っていました。

ダイヤモンドオンライン記事

急接近する中国と英国

中国と英国が急接近している。両国が距離を縮め始めたのは、1997年の香港返還が契機だが、これまで中国にとっては、長期にわたって「喉の奥に小骨のささった状態」が続いていた。

ロンドンのチャイナタウンは、すごい賑わいを見せていた Photo by Konatsu Himeda

そもそも、中国と英国の関係には長い歴史がある。南京条約(アヘン戦争の講和条約・1842年)で英国は清朝に開港を迫り、香港を割譲させた。その後英国は、日清戦争(1894~95年)のドサクサにまぎれて香港の領域を拡大させ、1898年から99年間にわたる租借権を設定したのだ。

近年は、2012年にキャメロン首相が、ダライ・ラマ14世と会見したことが関係をギクシャクさせたが、2015年10月の習近平国家主席による訪英で、二国間関係はこれまでにない発展的局面を見せた。

このとき、両国はその外交関係において「21世紀グローバルな全面的戦略パートナー関係」を結び、英中両首脳(当時の英国はキャメロン政権)はこの二国間関係を「黄金時代を迎えた」と自賛した。

従来、中国にとって英国は「全面的戦略パートナー関係」という立ち位置だったが、これが格上げされた形だ。「21世紀」「グローバル」「全面」「戦略」「パートナーシップ」という五つのキーワードの並列について、中国の研究者は「二ヵ国の関係が最高級の段階に引き上げられたことを示唆するもの」と指摘する。

ちなみに同じ欧州でも、中国とフランスの関係は、中英関係に比べて温度差がある。1月9日に北京で行われた中仏首脳会談では、1997年に結ばれた「全面的戦略パートナーシップを推進」することで一致を見たものの、英国とのパートナーシップからすればその成果は精彩を欠く。

「一帯一路」が英国の国家事業とドッキング

訪英時の演説で習主席は、「一帯一路は開放されたもので、英国など欧州国家の参加を歓迎する」と強調し、英国に向けてアピールした。英国によるお墨付きをもらえれば、「一帯一路」も”鬼に金棒”との思惑が見て取れる。

振り返れば2015年、米国やEUとの歩調も顧みず、英国が率先してアジアインフラ投資銀行(AIIB)に加盟したことは、中国が進めようとする「一帯一路」に自信を与えるものにもなった。中国はこれを「英国は『一帯一路』に対し金融面からサポートするもの」と解釈したのだ。

習主席の滞在中、両国は、総事業費160億ポンドの原子力発電所建設プロジェクトを始め、英国政府によるイングランド北部の経済振興策(ノーザンパワーハウス)のプロジェクトを含む、総額400億ポンドにのぼる150のプロジェクトに署名した。 「150のプロジェクトに署名」というのは、そもそも英国が進める国内プロジェクトに中国が便乗した構図だが、英国の一部のプロジェクトは、「一帯一路」とドッキングした形になった。

「既存のプロジェクトに相乗りする」という手法で、「一帯一路」に関わりのある国を増やそうというケースは、他国の例でも散見される。

イングランド北部の経済振興策は、「EU離脱決定を受けて、政府が今後ロンドンのみならず、英国全土への投資誘致を強化する上で重要性を増す」(自治体国際化協会ロンドン事務所)と言われており、ロンドンに次ぐ第二の経済の中心を形成すべく、産業振興と交通インフラ整備が計画されている。これが、インフラ建設を得意とする中国の”垂涎の的”であることは想像に難くない。

原発建設への中国資本の参入については、一時、英国メディアの強い危機感とともに、メイ首相が再検討に入る場面もあったものの、最終的には調印にこぎつけた。

英国が中国資本に対して行った市場開放は、「メード・バイ・チャイナ」(特に原発建設)にお墨付きを与え、世界市場を切り開く追い風になったという意味で、今後の「一帯一路」にとって中国に有利な展開になったことは間違いない。

余談だが、ドッキングを提案したのは、キャメロン政権時の財務大臣ジョージ・オズボーン氏だったという。オズボーン氏は親中派で知られており、英国では「拝金主義者」かつ「中国共産党寄り」という悪評すら存在するようだ。「英国がAIIBに先進国で一番乗りしたのは、彼が首謀したからだ」とも伝えられている。

大英帝国の”遺産”にうまみか

「一帯一路」の布陣を広げるなかで、中国が英国を重要国家に位置づけるのは、いくつかの理由がある。

その一つが、英国を抱き込めば、間接的に英連邦圏への影響を強めることができ、「一帯一路」の舞台を格段に広げられるという胸算用だ。英国をパートナーにすれば、欧州市場はもとより北米、中東、アフリカへのアクセスに弾みがつく。

大英帝国時代、英国もまた植民地でインフラ建設に乗り出し、鉄道や道路の建設が行われた。商品の供給先や資本の投資先、あるいは資源の調達先である植民地で、当時英国が行ったインフラ整備は、まさに中国の「一帯一路」と相似を成す。

サマセット・モームの小説には、南洋の島に英国から派遣された行政官が、実に狡猾に地元の労働者を使いこなす様子が描かれているが、世界経済の頂点に立とうとする中国は、経験豊富な英国を巧みに利用しようとしているのではないだろうか。

英国も「中国しか目に入らない」

日増しに高まる中国の影響に「いまや英国は中国しか目に入らない」と語るのは、ロンドン在住の日本人実業家だ。その変化は日常にも色濃く表れる。

「ロンドンのギャラリーで貸し出すイヤホンガイドは、日本語から中国語に取って代わりました。飛行機のビジネスクラスで配られるのは中国紙、中国人スタッフが常駐するブランドショップでは、中国人客を歓迎こそすれ日本人客には見向きもしません。テレビのコンテンツに至っては、中英同時放映が実現しますが、日本に番組が上陸するのは1年遅れです」

皮肉なことに、筆者がロンドンで最もにぎわいを感じたのがチャイナタウンだった。「安くておいしい」という評判もあるのだろう、小雨の降る夜、実に多くの観光客でごった返し、どの飲食店にも長蛇の列ができていた。

英国において、日本企業はまだ優勢だが、今後は中国企業の対英投資に勢いが出てくる可能性が強い。それは、中国が「世界2位の投資大国」となったからでもある。中国商務部によれば2015年、中国の対外直接投資総額は1456億ドルとなり、日本の対外直接投資の1364億ドルを抜いた。中国の旭日昇天の勢いは否めない。

世界の観光客が集まるロンドンの中華街が暗示するのは、「品質もそこそこで価格も安い」とされる”メード・バイ・チャイナ”の影響力だ。「老獪な英国は、日本と中国を競争させようとしている」(在英の日本人駐在員)といわれるだけに、その動向から目が離せない。

(ジャーナリスト 姫田小夏)

JBプレス記事

英ロンドンのバッキンガム宮殿で開かれた公式晩さん会で、エリザベス女王(右)と乾杯する中国の習近平国家主席(2015年10月20日撮影、資料写真)。(c)AFP/DOMINIC LIPINSKI〔AFPBB News

1月2日、米調査会社のユーラシア・グループが「2018年の10大リスク」を公表した。その筆頭は「中国の影響力」だが、8位に「英国」がランキングしている点にも注目したい。なぜ英国がリスクかというと、ブレグジット(Brexit、英国のEU離脱)の期限が2019年3月末に迫るなか、英国が首尾よくこの離脱手続きを進められるかが問われているためだ。

ロンドンに拠点を置く日本の政府機関も、「英国とEUとの間で交渉の進め方に隔たりがある」と懸念する。英国は離脱に関わる清算金の交渉にケリをつけ、離脱後の貿易条件を協議したいところだが、「EUから自由になりながらもEUとの関係を維持したい英国の思惑に、EUは反発している」(同)という。

EU離脱は英国経済や社会に短期的な弊害をもたらす。一方、EU残留は長期的な苦痛をもたらす――そんな判断のもとブレグジットを選択した英国に対し、国際社会は「2018年のリスクは英国そのものだ」と悲観的な視線を向けている。

ブレグジットは「リスクよりチャンス」

しかし、“ブレグジットは好機だ”とばかりに英国に急接近を図っている国もある。中国だ。

2016年6月、離脱をめぐる英国の国民投票が僅差で「離脱」という結果になったとき、中国は歓迎しなかった。中国による英国企業の買収が進む中、「中国が投資した資産価値はどうなるか」が懸念されたのだ。

だが時間の経過とともに、「英国のEU離脱は、中国にとってリスクよりチャンスが大きい」と楽観視する空気が形成されていき、英国に同調する記事も徐々に増えてきた。

例えば、中国商務部のシンクタンクに所属する研究員は、中国紙への寄稿で次のように指摘している。

「EUの管理システムは官僚主義だ。そのルールは世界で最も細かくて煩わしく、事務効率は主要先進国に比べて低い。これらは英国の経済的活力をそいできた」

EUとの交渉を担当した日本の通産省OBも、「EUは各国の寄り合いなので意思決定に時間がかかるのは事実。そもそも『欧州の統合』という高邁な理念のもとに結成された組織なので、理念先行のきらいがある」と明かす。

英国はこうした大陸諸国とは異なり、よりプラグマチックに思考する。「経済的実利」を追求するという点では、むしろ中国とそりが合うといえるだろう。両国がブレグジットをきっかけに接近を図ってもおかしくはない。

英国市場へのアクセスが容易に?

話は10年以上前にさかのぼるが、2005年に繊維製品の輸入数量規制が撤廃されると、EU市場にどっと中国製品がなだれ込んだ。このとき、EUは緊急輸入制限(セーフガード)の発動を発表するが、英国は自由貿易を主張して輸入制限に反対した。中国は今なお、このときの英国の対応を評価している。

そして、英国のEU離脱に対しても、英国との貿易の障壁を低くし、英国市場にアクセスしやすくするものであると確信しているのだ。

2017年1月、浙江省義烏と英国ロンドンを結ぶ国際貨物列車が運行を開始した。鉄道によって中国と英国の市場はますます接近している。義烏から運ばれる貨物は大半が日用雑貨だと言われるが、ロンドン発の復路にはウイスキーが積まれている。

ウイスキーは英国にとって、国内産業をけん引する重要な商品である。しかし人口6500万人(2015年)の島国である英国にとって国内市場は今後の成長が見込めない。そのため輸出拡大への取り組みを避けることはできない。そこにタイミング良く打ち出されたのが中国の「一帯一路」構想だった。英国のウイスキーは今後「一帯一路」に乗って中国へ大量に運ばれるだろう。

中国メディアは「『一帯一路』はブレグジット後の英国に、市場のみならず自信も与えることになるだろう」と論じている。

中国は、英国が債務問題を抱え、生産現場が資金不足に陥っていること、大量のインフラが老朽化していることを知っている。「英国にはパートナーが必要だ。中国の投資で製造業を復活させてやろう」――中国がそう目論んでいることは想像に難くない。

両国は「英中黄金時代」を宣言

中国の掲げる「一帯一路」と英国の「ノーザンパワーハウス(Northern Powerhouse)」(イングランド北部の経済振興策)、中国の「メイド・イン・チャイナ2025」(製造業の強化を図る政策)と英国の工業政策「The future of manufacturing」など、両国の経済政策には類似性があり、さまざまなプロジェクトの相互乗り入れが検討されている。

また、中国は「ロンドンが、中国の人民元の国際化を推進する橋頭保になる」と期待している。ブレグジットが決まった際、「ロンドンは国際金融センターとしての地位が低下し、パリやフランクフルトに取って代わられるだろう」との見方があった。しかし今では、「結局、ロンドンの地位が他所に取って代わられることはなく、影響は限定的だった」(中国の電子メディア)と捉えられている。

「一帯一路」構想で世界への影響力を強めようとしている中国にとって、ブレグジットは渡りに船だ。すでに両国は「英中黄金時代」を宣言しており、ブレグジット後の英国の運命は“中国とのタッグ”に強く支配される気配さえする。

果たして数年後、世界の10大リスクから英国の名前は消えているだろうか。

良ければ下にあります

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『バノンはなぜトランプを刺したのか 「バノン大統領選出馬」から「猿芝居」まで諸説紛々』(1/10日経ビジネスオンライン 高濱賛)、『「史上最低の大統領・親日家グラント」が米国で大評判 スキャンダルと失政だらけで、どこかトランプに類似?』(1/9JBプレス 高濱賛)について

1/10日経<バノン氏、極右サイト会長辞任 暴露本で出資者と対立>によれば、バノンは「ブライトバート・ニュース」会長も辞任とのこと、次の大統領選に誰がスポンサーになるかを考えれば、高濱氏が言っています、バノンが大統領候補となるのは難しいのでは。

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO25493010Q8A110C1000000/

1/10トランプのツイッター“Cutting taxes and simplifying regulations makes America the place to invest! Great news as Toyota and Mazda announce they are bringing 4,000 JOBS and investing $1.6 BILLION in Alabama, helping to further grow our economy!”法人税減税と規制緩和で米国は投資適格国になった。トヨタとマツダはアラバマに4000人の雇用確保と16億$の投資を発表し、そのことは我が国の経済発展に役立つであろう。

1/10看中国<美攻朝 陸攻台?專家談北京局勢(圖)>カナダの学者が「米軍が朝鮮を攻撃すれば、中国は朝鮮半島で戦えないので、報復として台湾を侵攻するだろう」と発表したが、大多数の学者は彼の意見に賛成しなかった。西側全体を敵に回すことになると。中国の心理作戦だろうとの見方。

http://chinaexaminer.bayvoice.net/b5/comments/2018/01/10/386754.htm%E7%BE%8E%E6%94%BB

1/11看中国<中共要掌控对台“制空制海权”(组图)>中共は(日本と)台湾にサラミスライス作戦を展開、現状維持の約束を少しずつ中国有利なように変更して来たと言うもの。

https://www.secretchina.com/news/gb/2018/01/11/846607.html

1/11宮崎正弘氏メルマガ<すごいニュースが飛びこんできた 米国と台湾の政府高官相互訪問解禁の「台湾旅行法」を米連邦議会下院が可決>蔡英文総統のホワイトハウス公式訪問も可となるとのことです。日本も台湾関係法&旅行法&安全法を制定すべきです。日米台で自由主義社会を守るべきです。朝鮮半島には自由はありませんので、彼らは敵と看做した方がより正確です。上記の看中国の記事のように、中共は台湾を手に入れるために、制空権・制海権を抑えることを狙っています。同盟を結び防ぐようにしないと。

http://melma.com/backnumber_45206_6631819/

1/9正義の見方<【マスコミ】視聴者の会「最近のテレビ、偏向報道が増えていると思いますか?」⇒ 調査結果 「最近のテレビは偏向報道が増えている」が 67.8%>

http://www.honmotakeshi.com/archives/52760932.html

日本でも「モリカケ」が捏造だったというのが、知られてきているのでは。それなら、慰安婦も南京も同じようにメデイアが操作してきたのではと勘づけば良いのに。

日経ビジネスオンライン記事

バノン氏が掲げた政策がプアホワイトの琴線に触れ、トランプ氏を大統領の座に就かせたとされる(写真:Jeff Malet Photography/Newscom)

—スティーブ・バノン前大統領首席戦略官・上級顧問 の発言*1が新年早々、大問題になっていますね。ドナルド・トランプ大統領の「分身」とまでいわれた人物です。

高濱:ホワイトハウスは、「バノン爆弾」炸裂で大揺れです。バノン発言を盛り込んだ暴露本が5日に発売されました。飛ぶような売れ行きです。トランプ氏の弁護士は出版差し止めを裁判所に要請しました。

この暴露本には、「トランプ氏は大統領職に適していない」「トランプ氏は元々大統領になどなると思っていなかった」など大統領周辺の関係者が語った話が記述されています。

なんといっても最大のインパクトは、最側近だったバノン氏がトランプ氏の長男や娘婿が取った行動を「売国的行為だった」と糾弾している点です。どちらもロシアゲート疑惑に関わったとされています。

バノン氏は、トランプ氏の長男であるドナルド・ジュニア氏や娘婿のジャレッド・クシュナー氏といった選挙対策幹部たちが選挙中にロシア人弁護士と会っていたことを後から知って、「売国的行為だった」と激しく批判した「事実」を同書で暴露されたのです。

トランプ氏の最側近だった人物がロシアゲート疑惑をめぐって「正論」を述べたというのでメディアは大騒ぎ。トランプ氏はわざわざ声明まで出して、バノン氏を「正気を失った」となじりました。

*1:バノン氏は、1月5日に発売された「Fire and Fury」*2(炎と怒り)の中で、ドナルド・ジュニア氏(選挙当時は選対顧問)らがロシアのウラジミール・プーチン大統領周辺と親しいロシア人弁護士らと選挙期間中に面談していたことについて、「国家に対する反逆行為であり、愛国心のない行為だ。すぐに米連邦捜査局(FBI)に通報すべきだった」と発言した

*2:同書の著者はマイケル・ウォルフ氏(64)。同氏は「USAトゥデイ」などにコラムを書いているジャーナリスト。「事実関係よりも、たくましい想像力に基づく記事が少なくない」との批判が一部にある。サラ・ハッカビー・サンダース大統領補佐官は「本の内容はでっち上げばかり」と攻撃している (”Fire and Fury: Inside the Trump White House,” Michael Wolff, 2018)

「16・6・9会談は売国的行為だった」

—バノン氏は、トランプ・ジュニア氏らがロシア人弁護士たちに会ったことを「売国的行為」と断定しています。なぜ、ですか。

高濱:トランプ・ジュニア氏は16年6月9日午後、ロシア人の弁護士、ナタリア・べセルニツカヤ氏 らとトランプタワーで会いました。タブロイド紙の元記者から「ヒラリー・クリントン民主党大統領候補(当時)のイメージダウンにつながる情報を持っているロシア人がいるが、会うか」と言われて、飛びつきました。

この会談にはクシュナー氏(選挙当時は選対幹部、現大統領上級顧問)や選対委員長だったポール・マナフォート氏(当時選挙対策本部長)も同席しました。

ドナルド・ジュニア氏は「大した話はなかった」と議会の未公開公聴会で証言しているのですが、外国勢力が米大統領選挙に「介在」した点において、ボブ・モラー特別検察官 が捜査中のロシアゲート疑惑の最も重要な事案になっています。

バノン氏の発言が、ホワイトハウスに衝撃を与えたのは、「16・6・9会談」をトランプ氏の最側近だった人物が「売国的行為」と言い切っているからです。

ついに「正論」を吐いてしまったバノンの性

高濱:ワシントンに在住する、民主党系政界オブザーバーの一人は、寓話「サソリとカエル」*に例えてこう言っています。

「サソリ(バノン)は自分が川で溺れ死ぬのが分かっていてもカエル(トランプ)の背中を刺す。サソリの性(さが)なのだろう。部外者には理解できないのがトランプ氏とバノン氏の関係じゃないのか」

*:川を渡りたかったサソリがカエルの背中に乗せてくれと懇願。カエルは、サソリが自分を刺さないことを条件に乗せるが、結局刺されて死んでしまうという寓話

「トランプ氏もバノン氏も保守主義者で、我こそ一番頭が良いと思い込んでいる。政権樹立までは、ともに『アメリカ第一主義』を貫き、オバマ前政権のやってきた政策とは正反対の保守政権を目指した。ところが出来上がった政権は、バノン氏にしてみれば、トランプ氏の親族と軍人と実業家からなる寄せ集め政権。これに耐えられなかった。問題の発言は、解雇された昨年8月以降のもの。ロシアゲート疑惑の中心人物であるドナルド・ジュニア氏やクシュナー氏に対する憤りが口をついて出たのだろう。本音というか、バノン氏の性が出てしまった」

—サソリはカエルの背中を刺してしまいましたが、バノン発言だけではカエルであるトランプ氏の政治生命は終わりそうにありませんね。

高濱:さあ、どうでしょう。サソリの毒がカエルの体中に回って、命取りにならないとも限りませんよ。

バノン氏の意図については、別に2説あります。

一つは、これはトランプ氏とバノン氏が仕組んだ「猿芝居」だという説です。つまりロシアゲート疑惑でトランプ・ジュニア氏が起訴されるのは時間の問題だというのです。ひょっとしたらクシュナー氏も起訴される可能性があります。そうなる前にこの二人を悪者にして、トランプ氏と切り離す。同氏は安泰。まさにトカゲのしっぽ切りです。

もっともバノン氏の発言内容が発覚した後のトランプ氏の憤りを見ていると、本心からのようにみえます。

「スティーブ・バノンは私及び大統領職とは何の関係もない。スティーブは(首席戦略官・上級顧問を)解雇されたとき、その職を失っただけでなく正気も失った(lost his mind)」

「スティーブが私と差しで話すことは極めてまれだった。あたかも(私に対する)影響力があるかのように見せていただけだ。(私との)アクセスや接点もないくせに影響力があるかのように見せ、人々を欺いていた。そしてインチキ本を書く手助けをした」 (”Read Trump’s Reaction to Steve Bannon’s Comments,” New York Times, 1/3/2018)

20年大統領選への出馬に向け準備を始めたバノン?

—もう一つの説はどんなものですか。

高濱:バノン氏は、政治経験のまったくないトランプ氏に選挙参謀、戦略担当者として仕え、同氏を大統領にしてしまいました。トランプ氏の当選を阻もうとした共和党保守本流と真っ向から戦い、それでも見事当選させた。ホワイトハウスを去った後も上院アラバマ州の上院補選で、共和党執行部が支持する候補者に対抗馬を立てて勝ちました。政策面でも選挙でも大変な自信を持っているようです。

なので、バノン氏自身が大統領選に出馬するとの説が昨年後半から出ているのです。そこに持ってきて今回のトランプ氏との「決裂」劇が出馬説をいやが上にも盛り上げる。

無論、この場合、共和党の現職であるトランプ氏が再選を目指さないことが前提条件としてあるわけですが……。つまり、「ポスト・トランプ」を狙うバノン氏のキャンペーンの始まり、というわけです。 (”Bannon 2020? ‘I have Power’: Is Steve Bannon Running for President?” Gabriel Sherman, Vanity Fair, 12/21/2017) (”Bannon may run for president,” Brent Budowsky, The Hill, 10/24/2017)

北朝鮮情勢が何となく収まる方向に進み始める中で、トランプ政権にとっては予想だにしなかった「バノン爆弾」が年明けから炸裂しました。政界はまさに一瞬先は闇です。

JBプレス記事

ドナルド・トランプ米大統領。ホワイトハウスで(2017年12月16日撮影)。(c)AFP PHOTO / NICHOLAS KAMM〔AFPBB News

作者はミュージカル「ハミルトン」の原作者

年末から年始にかけて米国内で売れに売れている本がある。米大統領経験者として初めて日本を訪問したこともあるユリシーズ・グラント第18代米大統領の一生を描いた「Grant」である。965ページの超大作だ。

著者はロン・チャーナウ氏。大ヒットのブロードウェー・ミュージカル「ハミルトン」(アレキサンダー・ハミルトン第1代財務長官の物語)の原作者。

これまでにもジョージ・ワシントン初代大統領をはじめモルガン財閥の創始者ジュニアス・モルガンやジョン・D・ロックフィラーの伝記を書いている。2010年にはワシントンの伝記でピューリッツアー賞を受賞している。

歴史上の人物を徹底的に調べ上げ、新たな視点から人物像を絶妙の筆致で描き出す伝記は多くの読者を引きつけてきた。日本で言うと、さしずめ司馬遼太郎のような作家だ。

目下各紙ベストセラーのランキングではトップの座を占めている。

「書けば売れるチャーナウ」は「米国の司馬遼太郎」

Grant by Ron Chernow Penguin Press; First Edition edition (October 10, 2017)

売れる理由は、まず第1にチャーナウ氏の新作だということ。今や彼が書けば読者は飛びつくのだ。これまで手がけてきた本はすべてベストセラーになっている。

第2の理由は、グラント氏が、どこか、就任1年を迎えようとしているドナルド・トランプ大統領によく似ているからという声を聞いた。

読書家の中学校英語教師、ボブ・ローリンさん(42)。ロサンゼルス在住の公立中学校で歴史を教える白人教師はこう筆者に語っている。

「毎日テレビや新聞で連日報道されるトランプの妄言に皆あきれ返っているんですよ。待てよ、俺たちの大統領の中にこんなひどいのがいたかな、と思う」

「これまで大統領と言えば、みなジョージ・ワシントン初代大統領とか、エイブラハム・リンカーン第17代、ジョン・F・ケネディ第35代大統領を思い浮かべる。何冊もの伝記も出ているし、米一般国民は彼らについては何となく分かる」

そんな中、史上最悪の大統領の1人といったイメージのあるユリシーズ・グラント第18代大統領の本が出た。読んでみようじゃないか、っていう感じなんですね」

「どれほどひどかったのか。トランプと比較したらと、興味が湧いてくるんです」

確かにトランプ政権発足後、米経済は順調に推移している。経営者出身の大統領が何をやり出すかという期待感もある。年末やっと議会を通過成立した税制改正が追い風となるとの見方も出ている。

一部に熱狂的な白人支持者がいる一方で、米国民の60%近くの人たちはトランプ氏に落第点をつけている。

支持率は就任以降、4割を超えるか超えないか。2017年12月28日現在の各種世論調査機関の平均支持率は39.8%、不支持率は55.8%。

政策もさることながら、むしろトランプ氏の人品骨柄と言うか、言動に皆、辟易しているのだ。

南北戦争の「英雄」必ずしも大統領には適さず

オハイオ州の製皮業者の息子として生まれたグラント氏は陸軍士官学校を卒業し、南北戦争では武勲を重ね、英雄となる。その後、北軍勝利の英雄として絶大なる人気を浴び、推されて大統領になってみたもののだった。政治経験はゼロ。

閣僚人事ではウォール街の金融業界の大物や陸軍時代の旧友などを集めた。この「仲良し内閣」が政治音痴の「将軍大統領」の足を引っ張る。閣僚や補佐官たちが次々とスキャンダルを起こし、汚職を繰り返す。

グラント大統領自身は、リンカーン大統領による奴隷解放宣言(1863年)以降の「リコンストラクション期」(南北戦争後の再建期)における諸問題の解決に奔走する。

しかし北部と南部諸州との「しこり」解消や黒人の法的地位の確立などまったくうまくいかなった。さらに原住民(アメリカインディアン)の保留地政策を推進するが、強引な囲い込み策が裏目に出る。

当時の国内分裂の状況は、トランプ政権下の米国の現状にそっくりなのだ。「仲良し内閣」内のスキャンダル騒動もロシアゲート疑惑に振りまわれるトランプ政権によく似ている。

明治天皇に「民主主義とは何たるか」をご進講

ところがこのグラント氏は、大統領を辞めてから外交面で大活躍するのだ。

特に日本との関係では、グラント氏は1879年、米大統領経験者として初めて訪日した歴史上の人物として知られている。

滞在中は、当時26歳だった明治天皇に会い、訪日前に訪問した欧州情勢にはじまり、諸外国からの借款問題、対日不平等条約、教育や招聘外国人教師の問題に至るまで進講したとされている。

これに対し、明治天皇はグラント氏に「発言を多とする。よく検討させてもらう」と感謝の意を表したとも言われている。

(”Remembering Ulysses S. Grant’s visit Japan,” Hiroshi Chida, Stars and  Stripes, 4/8/2004)(参照=https://www.stripes.com/travel/remembering-ulysses-s-grant-s-visit-to-japan-1.22915

本書は、このグラント氏の訪日について詳しく記述している。

大統領を引退したグラントはリチャード・トンプソン海軍長官から地中海からスエズ運河を経てインド、中国、日本を訪れる政府所有の汽船に乗って世界旅行をしないかとの誘いを受ける。1877年5月から1879年9月までの2年間の旅だった。

友好親善と通商促進を目的した米代表団の団長に『武勲のある前大統領』を据えることで米国の「威厳」を示そうとしたわけだ。ある意味では失意のうちにホワイトハウスを去った前大統領の名誉挽回を狙ったとも言える。

それをグラント氏は快諾したのだ。2年にわたる外遊で最後の訪問先日本を訪れる前に清国を訪れ、恭親王と会う。

親王は当時日本との間で外交論争になっていた琉球(沖縄)帰属問題*1でグラント氏に調停役を依頼する。グラント氏はその要請を受けて、伊藤博文内務卿(当時)ら政府高官とこの問題でついて協議。日本側から日清交渉合意を取りつけた。

*1=清国は琉球の帰属を主張、グランド氏の調停で日本は中国国内での欧米並み通商権を認めさせることを条件に宮古・八重山を清国に引き渡す「分島・増約案」で合意。(但し、清国側の都合で署名せず)日本は1895年、日清戦争で勝利したため琉球問題はあいまいなまま日本に帰属。

http://rca.open.ed.jp/history/story/epoch4/syobun_8.html

日本は前大統領を礼砲21発で元首級待遇

「グラント前大統領を乗せた『リッチモンド』が長崎に到着したのは1879年6月21日(9月3日に離日)だった。

日本政府は礼砲21発*2で同氏に最大級の敬意を表した。天皇の特使が出迎えに出た。その夜は由緒ある寺で歓迎の宴が開かれた55品のコースが出された。

グラント氏は近くの公園にベンガル産菩提樹を植えた。その横に建てられる石碑に刻まれる銘文にこう記した。

『この樹木が立派に育ち、未来永劫、生き続けること、そして日本国の末永い繁栄と成長を象徴することを心より望む』

グラント氏は米国を発って約半年の外遊で多くの諸国を訪れたが、ことのほか日本が気に入ったようだった。彼はそこに美しさ、調和、洗練さの典型を見出したのだ」

「自然の美しさとともに日本人の優しさと清潔さに魅了されたのだ。それは世界中で最高のものだった。視察した学校での水準の高い、規律正しい授業。それらが東アジアで最も優れた人々を創り出していることを実感したのだった」

*2=礼砲21発は、当該国の国旗および元首(天皇、国王、大統領など)に対して行われる最大級の歓迎を意味する。

病床のグラント氏に駐米大使を4回も遣わせた明治天皇

米国内では「最低の大統領」といったイメージの強いグラント氏だが、日本では「米歴代大統領としては最も尊敬された人物」だった。特に明治天皇がグラント氏に抱く尊敬の念、親近感は絶大だった。

半年にわたる外遊から6年後の1885年、グラント氏は病に倒れた。その知らせを聞いた明治天皇は直ちに駐米大使を見舞いに遣わした。その年、グラント氏は他界する。駐米大使はその間、明治天皇の命を受け4回もお見舞いに行っている。

1929年、グラント氏の訪問50周年を記念して上野公園内に石碑が建立された。35年には同氏の没後50周年の式典がそこで催された。47年以降、毎年、同氏の命日には追悼式が行われている。

(参考=https://wiki.samurai-archives.com/index.php?title=Ulysses_S._Grant

大統領を辞めた後のグラント氏の「外交手腕」は日本でも今も生き続けている。

明治天皇との「絆」のなせる業なのだろうが、米国内で一般向けに評価されるのはおそらくチャーナウ氏の手による本書が初めてではないだろうか。

2018年も厳しい政権運営が迫られているトランプ大統領。安倍晋三首相は積極的なアプローチで「ドナルド・シンゾー」関係を築き上げ、トランプ大統領はにわかに「親日大統領」になったわけだが、米国内ではそのことを評価する声はあまり聞かない。

それよりも「トランプと親しい国はイスラエルと日本だけ」(国務省担当の主要紙記者)と皮肉を言う者もいるくらいだ。

さて、そのトランプ大統領は、これから10年後、50年後、米国ではどのような評価を受けるのだろうか。そして日本ではどのような大統領として歴史に刻まれるのだろうか。

 

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『「五輪休戦」で金正恩の窮地を救う文在寅 「南北合作劇」に虚を突かれたトランプ』(1/8日経ビジネスオンライン 鈴置高史)、『元駐韓大使が占う2018年の北朝鮮、軍事衝突まで想定した具体策を』(1/9ダイヤモンドオンライン 武藤正敏)について

1/2日経<2018年の世界10大リスク、首位は「中国の影響力拡大」>第2位の「偶発的なアクシデント」の例としては、サイバー攻撃や北朝鮮問題などで偶発的な衝突が起きる危険性を挙げています(朝日新聞)。今年は中朝絡みで世界が揺れ動くという事です。日本国民も覚悟しておかないと。平昌オリンピックで浮かれることは、日本人はないでしょうけど、その後が危ないという認識は持っておいた方が良いと思います。鈴置氏の記事では、米国の北への核放棄の期限は2月末と言っていますが、平昌オリンピック・パラリンピックの開催期間はそれぞれ2/9~25、3/9~18です。ここまで来れば米軍の攻撃はあるとすれば3/19以降と読むべきか?1/5産経ニュースに<米韓合同演習は平昌パラリンピック終了後 マティス米国防長官>とありました。まあ、韓国軍は信用できませんので、合同演習時ではなく、米軍の単独行動で先制攻撃すると思います。

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO25283350S8A100C1FF8000/

1/9日経朝刊「18年最大のリスクは北朝鮮」 英国際戦略研究所長に聞く

2017年は北朝鮮や中東情勢の緊迫など、地政学リスクが国際社会を揺さぶった。18年の展望について、安全保障の分野に強い英有力シンクタンク、国際戦略研究所(IISS)のジョン・チップマン所長に聞いた。

英国際戦略研究所(IISS)のチップマン所長

――18年の国際社会を取り巻くリスク要因をどう分析しますか。

「典型的な地政学の観点で最も大きなリスクは、北朝鮮の紛争だろう。地域のパワーバランスを変えるリスクとしては中東でのロシアの台頭も懸念される。サイバー攻撃もグローバルな脅威で、政府機関と民間の双方が対策を優先課題に据えなければならない」

――北朝鮮情勢を巡る緊張緩和に向けて何が必要ですか。

「緊張を和らげるための第一歩は、緊張をやや高めることではないか。米国が国連安全保障理事会の支持を得て進める経済制裁はその一環で、北朝鮮の活動コストを引き上げるものだ。経済面で中国にできることがまだあると思う。日本や西側諸国が期待するほど影響力を行使していない印象だ」

――トランプ米政権による軍事行動の可能性をどうみますか。

「0か100であり、確率は推し量りようがない。明らかなのは、仮に北朝鮮がグアムであれ米領土に直接攻撃すれば、米軍が報復に動くリスクは高いということだ」

「多くの人が注目するのが中国の(軍事的な)出方だ。北朝鮮の指導者の受け入れがたい行動への対処に乗り出す必要性を認識する可能性も排除できない。もっとも、米中がどれだけ軍事面で強固な協力関係を築けるかにかかっている」

――日本は対北朝鮮で何をすべきでしょうか。

「ミサイル防衛能力の向上が大切で、米国と弾道ミサイル防衛システムの開発を続けるべきだ。中国は韓国や日本のミサイル防衛強化に難色を示すが、それを認めないなら、日韓が独自に抑止力を持つ必要性を模索することになる。中国は北朝鮮を説得できていないがゆえの結果として受け入れるべきだ」

――中東のリスクは。

「イランが支える勢力とイスラエルの衝突が主なリスクだ。イランはこの1年、過激派組織『イスラム国(IS)』との戦いを通じてイラクやシリア、レバノン、イエメンで影響力を広げた。イスラエルはその領域的な広がりだけでなく、イランが後ろ盾となる軍事勢力がミサイル能力を持つことも警戒している」

――米国はエルサレムをイスラエルの首都と認定しました。

「東西を分けずにエルサレム全体が首都だという考え方を支持しているのは米国だけだ。追随する国はほぼ出ないだろう。最大の問題点は、米国が果たしてきた中東和平プロセスを進める調停役が、他にいなくなってしまったこと。新たな役割を欧州諸国に期待する向きもあるが、まだ彼らはそこまでの外交政策を持ち合わせていない」

――ISは支配地域をほぼ失いました。テロとの戦いの行方は。

「テロはSF映画で顔を変え続けるモンスターのようなもので、見た目が変わっても同じ力を持ち続ける。支配地域が一掃されてもコピーされた手法が拡散し、戦い方を難しくする。18年もテロの脅威は続く」(聞き手はロンドン=篠崎健太)>(以上)

中国が何を言おうが、民族の生存権として脅威に対する抑止力を持つべきと考えます。今は米軍頼みで歯がゆい部分があります。日米同盟は自由・民主主義・法治・基本的人権の尊重と言った価値観を共有する同盟ですので、日本の軍事力強化と矛盾しません。

米国も国際社会の反応を見ているのでしょうが、金正恩とその手先の文在寅の時間稼ぎを許さないようにしてほしい。朝鮮半島の非核化で、一番良いのは金正恩の亡命、二番目がクーデターか金正恩の暗殺、三番目が戦術核を使った核施設の破壊、四番目が戦術核を使わない核施設の破壊となると思います。

米軍の攻撃があれば、日本の左翼メデイアとそれに洗脳されている人達が騒ぎ出すと思います。自分達の安全が脅かされているのに、意図的に知らない振りをしているのか、単なる間抜けなのかは別として。北からミサイルが飛んでくるか国内でテロが起きて被害者になって初めて気が付くのかも。或はそれでも「トランプが悪い」、「安倍が悪い」とか言いだすのでしょう。少しは自分の頭で世界の現実を見ろと言いたい。

1/8ぼやきくっくり<虎ノ門ニュース 青山繁晴氏>

(年末にハワイの太平洋軍司令部を訪問して、北への攻撃を)

 「米軍は苦悩している。 やるべきだと思いつつも、民間人に犠牲を出さないというのはシミュレーションではできるが、果たして可能なのかと。最終的にはやっぱり大統領の決めることだと強調していた。」とあります。

http://kukkuri.jpn.org/boyakikukkuri2/log/eid2140.html#sequel

鈴置記事

金正恩委員長は新年の辞で「平昌五輪に代表団派遣の用意がある。核のボタンは常に私の机の上にある」と発言した(写真:AP/アフロ)

前回から読む)

韓国と北朝鮮は最後の賭けに出た。北朝鮮ののど元を締めあげる米国の剛腕を、南北合作の「五輪休戦」でふりほどく作戦だ。

中国の支持も獲得

—1月9日午前10時から、南北朝鮮は閣僚級の会談を開き、北朝鮮の平昌(ピョンチャン)冬季五輪参加について話し合います。

鈴置:窮地に立った金正恩(キム・ジョンウン)委員長に、親北左派の文在寅(ムン・ジェイン)大統領が助け舟を出したのです。

文在寅政権は平昌五輪・パラリンピックに重なる時期――例年、3月初めごろから約2カ月間実施予定の米韓合同演習を延期し、それをテコに北朝鮮を対話に引き出す構想を温めていました(「平昌五輪『選手団派遣は未定』と言い出した米国」参照)。

平昌五輪・パラリンピックの期間中、米韓軍事演習も実施されず、北朝鮮の妨害活動も核・ミサイル実験も行われない――つまり「五輪休戦」を韓国の手で実現することで外交の主導権を握る、との目論見です。

中国の支持も得られると読んでいました。かねてから中国は米韓合同軍事演習の中断と、北朝鮮の核・ミサイル実験の中断を取引し、これをきっかけに米朝が対話に入る「双中断」を主張していました。

「五輪休戦」は五輪を名分にして、結果的に「双中断」を実現することになります(「『約束を守れ』と韓国の胸倉をつかんだ中国」参照)。そのため中国は、今回の南北会談が決まると直ちに「事実上の双中断である」と歓迎しました。

文在寅政権は政権維持のためにも「五輪休戦」を実現する必要に迫られていました。韓国民の間には、自分たちの運命を決する北朝鮮の核問題を米中と北朝鮮が仕切り、韓国は疎外されているとの不満が高まっていたからです。

  • 文在寅政権の「反米・親北・従中」
2017年4月13日 文在寅氏、大統領選挙の討論会で「(米国が先制攻撃を準備する場合)北朝鮮にホットラインを通じて直ちに連絡し、挑発を中断するよう要請する」と発言
5月10日以降 「手続きが不透明」としてTHAADの追加配備を認めず
8月15日 文在寅大統領、「朝鮮半島での軍事行動は大韓民国の同意なくして誰もできない」と米国の先制攻撃に反対
9月21日 「時期は未定」としつつ、800万ドルの対北人道支援を発表
9月27日 国連総会第1委員会で、北朝鮮の非核化を念頭にした「核兵器廃絶決議案」に棄権
9月28日 文在寅大統領、「戦時作戦統制権を早期に米国から韓国に移す」と国軍の日の記念式典で演説
10月31日 「中韓合意」を発表。THAADの追加配備などを否定する「3NO」とTHAADに関する協議の実施を受け入れ
11月29日 文在寅大統領、北朝鮮のICBM発射直後に「米国が先制攻撃を念頭に置く状況にならぬよう防がねばならない」と発言、米国を牽制
12月14日 中韓首脳会談で「朝鮮半島の戦争は絶対に容認しない」などの「4大原則」に合意し、米国を牽制
12月19日 文在寅大統領、NBCに「平昌五輪期間中は合同演習を延期するよう米側に提案」
2018年1月2日 北朝鮮に五輪と南北関係改善を協議する高官級会談を提案
1月9日 南北高官級会談を実施へ
 

美女応援団で再び聾落

「五輪休戦」にかける政権の意図をはっきりと語っていた人がいます。大統領の本音を体現することから「影の外交部長官」と呼ばれる、文正仁(ムン・ジョンイン)統一外交安保特別補佐官です。

2017年12月27日、国民日報のナム・ドヨン政治部長に、以下のように述べました。国民日報は大手キリスト教会の指導者が創設した保守系の中堅紙です。

平昌を平和五輪にすることには2つの意味がある。1つは軍事的な衝突が起きないとの狭義の意味。もう1つは南北関係が改善し、北朝鮮と米国の対話も始まることで朝鮮半島に平和の機運が生まれるとの広義の意味だ。文在寅大統領は後者を望んでいると思う。

—南北関係が改善したからと言って、米朝対話が始まるものでしょうか。

鈴置:文在寅政権は「南北関係が改善すれば、韓国民の間に米国主導の『第2次朝鮮戦争』への反対機運が高まる。すると米国も『非核化』要求を降ろして北と対話せざる得なくなる」と計算しているのです。

平昌五輪・パラリンピックに南北が合同チームを作って参加したり、北朝鮮が「美女応援団」を送ってきたら、韓国の空気はかなり変わると思います。

美人ぞろいのうえ、きさくで人間らしさを感じさせる「美女応援団」。2002年の釜山アジア競技大会で初登場し、韓国人の北朝鮮観を大きく変えました。

反米感情の苗床に

—でも今や、北朝鮮は核を持っています。

鈴置:確かに2002年当時と比べれば、北朝鮮に対する感情はさほど好転しないかもしれません。しかし「美女応援団」を間近に見て「北にも我々の同胞が住んでいるのだ」と思い起こし「金正恩は悪い奴だが、罪のない同胞を巻き添えにしてまで北を攻撃しようとする米国も悪い国だ」と考える人が出てくるのは間違いありません。

北朝鮮と文在寅政権にとって、それで十分なのです。韓国で米国への反感をかきたてれば、米国の先制攻撃の可能性が減じると考えているのです。

2018年春までに北朝鮮が核を放棄しない限り、米国が先制攻撃するかもしれない、との懸念が韓国内で広まっています。それは北朝鮮も同じことでしょう。それを防ぐことが彼らにとって緊急課題なのです。

米国は無条件で対話せよ

—「反米感情により攻撃可能性が減じる」のですか?

鈴置:韓国が反対すれば米国は戦争しない、と思い込んでいる韓国人が未だに多い。米国は自身の安全を担保するために北朝鮮の非核化に動いている。というのになぜか、米国が韓国を救うために介入した「第1次朝鮮戦争」のノリで考えるのです。

それに平和ムードを醸し出せば、世界の世論も米国の強硬姿勢に厳しくなるのは間違いありません。世界のほとんどの国にとって、北朝鮮が核武装しようが関係ないのです。

「何と美しい光景だったろうか。米朝を含め世界中の選手が手に手をとった平昌五輪。トランプ(Donald Trump)大統領はこの平和の尊さを心に刻み、かたくなな姿勢を改めて無条件で北朝鮮との話し合いに応じなければならない」なんて主張する左派系紙が日本でも出ると思います。

なお、文正仁特別補佐官の発言は国民日報の「文正仁『南北関係が改善すれば、韓米同盟に過度の依存も不要に』」(1月1日、韓国語)で読めます。

同盟破棄は覚悟のうえ

—「米韓同盟は不要」とも発言したのですか?

鈴置:米韓同盟に関し、文正仁特別補佐官は以下のように語りました。

我々が同盟を結ぶのは北朝鮮の脅威があるからだ。南北関係が改善すれば同盟に恋々とすることもなくなる。

驚く話ではありません。文正仁特別補佐官はこれまでも米韓同盟の破棄を主張してきました(「『米韓同盟破棄』を青瓦台高官が語り始めた」参照)。

文在寅政権は民族至上主義者の集まりです。人権を蹂躙しようが国際ルールを破ろうが、どんな政権であろうと同族なら手を結ぶのが彼らの正義です。

民族至上主義者にとって米国は民族の団結を踏みにじる邪悪な存在であり「米韓同盟はない方がいい同盟」なのです。

そこまで腹をくくっているからこそ文在寅政権は、米国を怒らす「五輪休戦」に平気で乗り出したのです。

核武装に向け最後の時間稼ぎ

—南北が手を組んで米国の圧迫と開戦を防ぐ「五輪休戦」。意図がよく分かりました。

鈴置:もちろん韓国の保守は「危険な南北対話」を批判しています。朝鮮日報の社説「『核武装完成』の時間稼ぎの会談は許せない」(1月8日、韓国語版)の結論部分を翻訳します。

国際社会が構築した対北朝鮮制裁の原則を壊したり、一部の大統領の参謀が主張するように韓米合同演習を「核開発を凍結する」との約束と取引してはならない。

そうした形の南北合意は北朝鮮が核武装完成という目標に駆け上がる間、息をつかせるものであり、北朝鮮の対話提案の下心に踊らされるものである。

「五輪休戦」で時間稼ぎするうちに、北朝鮮は米国に届くICBM(大陸間弾道弾)を完成する。そうなったら韓国は終わりだ――との悲鳴です。

一方、左派系紙のハンギョレはこうした批判を先回りして封じ込めようとしました。1月5日の社説「『軍事演習延期』が南北会談成功への道」(韓国語版)は以下のように締めくくりました。

口さえ開けば「安保」を叫ぶ保守派が、朝鮮半島が対話局面に進むことを不安視して苛立つ様は見苦しい。南北対話の進展を邪魔しないでほしい。

意表を突かれたトランプ

—「五輪休戦」は予想されていたのですか?

鈴置:こんなにあっけなく「五輪休戦」に向け、世の中が動くと読んでいた人は少なかった。米政府の目には「『反米・親北・従中』に突き進む文在寅政権がまた小陰謀をたくらんでいる」と映っていた。演習延期の申し出など、まともに取り合いませんでした。

それに業を煮やしてのことと思います。12月19日、文在寅大統領は米NBCに「五輪期間中は合同演習を延期するよう、米国に提案した」と語りました(日経・電子版「なぜ韓国は『五輪休戦』に執着するのか」参照)。

「軍事演習を予定通り実施すると、北朝鮮がテロなどで平昌五輪を妨害する可能性がある。五輪が混乱すればNBCも大損だろう」と独占放映権を持つNBCを揺さぶったのです。

韓国政府の力ではトランプ政権を動かせない。そこでNBCの力を借りたと思われます。

しかし、これに対しても米国が見せたのは冷たい反応でした。ティラーソン(Rex Tillerson)国務長官は同日「演習の予定を変える、いかなる計画も私は知らない」と述べたのです。

当然です。合同軍事演習も北朝鮮に核放棄を迫る極めて重要な圧力の一端だからです。それに演習を延期しても、北朝鮮が五輪を妨害しないとの保証はありません。

結局、その3週間後の1月1日になって北朝鮮は「妨害しない証拠」として「五輪参加」を言い出したのです。

これはトランプ政権にとっても予想外の動きでした。大統領を含め、南北会談への評価は揺れ続けました。よほど意表を突かれたのでしょう。

メダルが取れない北朝鮮

—北朝鮮は五輪に参加するつもりはなかったのですね。

鈴置:2018年1月1日に金正恩委員長が参加を表明するまで「参加しない」というのが大方の見方でした。韓国が主宰する大会であるうえ、韓国選手がメダルを多数取ると見られています。半面、北朝鮮の選手で五輪の出場枠を得たのはフィギュアスケートのペアだけ。

北がこの五輪に参加すればあらゆる点で韓国との国力の差を見せつけられ、メンツを潰すのは確実です。出場枠を得たフィギュアスケートのペアも、期限までに出場の意思を示していませんでした。

文正仁特別補佐官も同じ理由から、北朝鮮が五輪参加を表明するとは想像していなかったようです。国民日報のインタビューで「参加できる選手も少ないうえ、成績も期待できないとなれば(五輪参加は北朝鮮にとって)政治的に負担が大きい」と語っています。

朝鮮日報の元旦の社説「北朝鮮の核『3か月期限説』の中で始まる2018年」(韓国語版)の書き出しは次のようなものでした。

「北朝鮮が核を搭載したICBMを完成するのにかかるのは後3カ月」と米CIAが分析したとの報道が出て1カ月経った。新年の春までに何らかの決着が付くということだ。

韓国を排除して米国と北朝鮮が朝鮮半島問題を協議することもあり得るし、軍事的に衝突することもあるだろう。ところが我々はこの危機を他人事のように見ている。

「韓国は無視されている」と嘆くこの社説がネット版に掲載された数時間後に、金正恩委員長が「五輪対話」を韓国に呼び掛けたのです。執筆した朝鮮日報の論説委員は頭をかいたことでしょう。

予想以上の圧迫効果

—なぜ、大方の予想に反して北朝鮮は五輪参加に転じたのですか。

鈴置:外から見る以上に、北朝鮮は心理的に追い詰められていたと思われます。米国は経済、軍事、外交面で圧迫を強めています。それを瞬時でも緩めたくなったのでしょう。メダルの数で韓国に負けるなどということは、もう小事になっていたわけです。

12月22日、国連安保理は北朝鮮向け石油精製品の輸出を90%削減するなどの追加制裁決議を採択しました(日経・電子版「安保理、北朝鮮への制裁強化 全会一致で決議採択」参照)。

北朝鮮に対する制裁に乗り気でない中国も、米国の圧力で決議案に賛成しました。この制裁強化ですぐさま北朝鮮が困窮するわけではありません。が、経済がじり貧になっていくのは確実です。

米軍の爆撃機「B1B」が北朝鮮周辺を飛び回るようにもなりました。「B1B」は金正恩暗殺用と見なされており、北朝鮮は神経を尖らせています(「金正恩をコーナーに追い詰めたトランプ」参照)。

12月4日から8日まで実施した大規模の空軍演習「ビジラント・エース 18」(Vigilant ACE 18)。F22やF35など最新のステルス機を含む230機が参加、実戦に近い形で実施されました。米国は「空爆だけでお前を潰せるぞ」と腕まくりして見せたのです。

12月5日には米国務省の報道官が「北朝鮮への先制核攻撃も辞さない」と、米政府系メディア、VOAに述べました(「『北に先制核攻撃も辞さず』と言明した米国務省」参照)。

金正恩政権は「核の報復攻撃を恐れ、米国は戦争を仕掛けて来ない」と国民を安心させてきました。しかし北朝鮮に対し核兵器を使って先制攻撃すれば、米国は反撃の可能性を極小化できます。

米国務省の「先制核攻撃宣言」を読んだ北朝鮮の要人は、腰を抜かしたことでしょう。多くの日本の安保専門家も「米国は核を使う覚悟も固めたのか」と驚きましたが。

「金正恩後」を米中が協議

—「米国は北朝鮮を攻撃できない。北の核施設は中国との国境地帯にあり、核汚染の被害が及ぶ中国が反対するからだ」と言う人がいます。

鈴置:北朝鮮の指導層はそうも期待していました。でも米国はその安心材料も軽く打ち砕いて見せました。

12月12日、ティラーソン国務長官はアトランティック・カウンシル(Atlantic Council)で演説しました。

その中で「金正恩体制の崩壊後の問題に関し、中国の軍・外交部と話し合っている」と明言したのです。原文は以下です。

the diplomatic and strategic dialogue that Secretary Mattis and I chair with our counterparts, and we actually have included Joint Chief of Staff Chairman Dunford, General Dunford, and his counterparts from China as well.

These are the subjects of these dialogues, and to try ? for us to gain an understanding of, first, how credible do we think the Chinese concern is about a mass flow of refugees across the border in the event of a regime collapse. China is taking steps to prepare for such an eventuality. I think it is something that they can manage.

「中国は難民の大量流入を恐れているが、それへの備えも進めており何とか処理するだろう」と、かなり具体的に意見交換をしていることを明かしました。

指導層に広がる動揺

米中は「金正恩後の北の核」についても相談しています。「もっとも重要なことは核兵器が、それを手にすべきではない人の手に落ちることであり、米中はその問題を話し合った」というのです。

the most important thing to us would be securing those nuclear weapons they’ve already developed and ensuring that they ? that nothing falls into the hands of people we would not want to have it. We’ve had conversations with the Chinese about how might that be done.

さらに「米軍が38度線(軍事境界線)を越えることはあるだろうが、すぐに戻ると中国に約束している」というくだりまであるのです。

We have had conversations that if something happened and we had to go across a line, we have given the Chinese assurances we would go back and retreat back to the south of the 38th parallel when whatever the conditions that caused that to happen. That is our commitment we made to them.

—「北朝鮮処分」を米中で話し合っているのですね。これを読んだ北朝鮮の指導層はショックを受けたでしょう。

鈴置:北朝鮮内部に詳しい人によると、経済・軍事・外交面の圧迫を受け、指導層に動揺が広がっています。そもそも、金正恩委員長に腹心の部下はいないとされます。30歳そこそこで突然にトップに立ったうえ、相次ぐ側近の粛清で「付いて行く人」がいないのです。

米国はそこまで見切ったうえで「核を放棄するのか、しないのか」と北朝鮮を問い詰めています(「米国務長官演説は『ハル・ノート』だ」参照)。

「最後通牒」の返答期限

—「最後通牒」の返答期限はいつですか?

鈴置:それは分かりません。ただ「2017年11月末までに、CIA長官がトランプ大統領に対し『あと3カ月で、ワシントンを含む米国の全都市を核で攻撃できる能力を北朝鮮が持つ』と報告した」との情報が流されました(「『北に先制核攻撃も辞さず』と言明した米国務省」参照)。

それが事実とすれば――韓国でもこの説が広く信じられるようになっていますが――どんなに遅くても、返答期限は2018年2月末と想像されるわけです。

先ほど引用した朝鮮日報の元旦の社説「北朝鮮の核『3か月期限説』の中で始まる2018年」(韓国語版)も、それを念頭に置いて書いています。

北朝鮮が「核を放棄する」と答えれば、米朝は「放棄する条件」の話し合いに進むことになります。「核をカネで買う」うえ、在韓米軍の撤収や米韓同盟の破棄などが取引条件になるでしょう。

でも、金正恩委員長が核を手放す可能性は極めて低い。その際、米国は「テロリスト集団が核を手放さないと明言した」ことを名分に先制攻撃をしかけるつもりと思われます。

「核を放棄しない」との返答を期に、北朝鮮船舶に対する臨検を実施、北の暴発を待って攻撃する手もあります。あるいは第2の「トンキン湾事件」(1964年)を起こすかもしれません。

—しかし、南北の間で対話が始まれば……。

鈴置:そこです。最後通牒への回答期限を誤魔化して先送りするためにも、南北対話は活用されていくと思います。

「我々は今、平和に関して話し合っているのだ。邪魔しないでくれ」と米国に言うつもりでしょう、北朝鮮と韓国は。声をそろえて。

●「五輪休戦」を巡る動き
2017年11月29日  北朝鮮、ICBM「火星15」試射、「核武装を完成」
12月19日  文在寅大統領、米NBCに「五輪期間中は合同演習を中断するよう米国に提案した」
2018年1月1日 金正恩委員長、新年の辞で「平昌五輪に代表団派遣の用意ある。核のボタンは常に私の机の上にある」
1月2日 文在寅大統領、南北対話の速やかな実施を指示。韓国、北朝鮮に「高官級会談の1月9日開催」を提案
1月3日 北朝鮮、南北連絡チャネルを再開、五輪参加を協議と発表
1月4日 米韓首脳、電話協議で合同軍事演習の延期に合意
1月5日 北朝鮮、高官級会談の開催を受諾
   
1月9日 板門店で南北高官級会談へ
2月9-25日 平昌冬季五輪
3月9-18日 平昌冬季パラリンピック
     

(次回に続く)

武藤記事

金正恩が「新年の辞」で平昌五輪への代表団派遣に言及

北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長にとって、2018年は生き残りをかけた「節目の年」となりそうだ。

1月1日、金委員長は国営メディアを通じ、「新年の辞」を発表した。この中で、米国への威嚇と韓国との対話姿勢に言及、硬軟織り交ぜた内容にして、国際社会を惑わすことを狙った。

まず、金委員長は、米国本土全領域が核攻撃の射程内にあり、「核のボタンが私の机の上に常にある」と威嚇しつつ、核弾頭と弾道ミサイルの増産・実戦配備の加速を指示した。一方で、2月に開催される韓国・平昌オリンピックについて「心から成功を願う」と述べ、代表団を派遣する用意があるとした。ただ、南北関係の改善を進めるために米韓合同演習の中止などを要求することを忘れなかった。

しかし、結論から言えば、金委員長が核ミサイルの開発・配備にこだわる限り、国際社会の流れは止められないと思う。対する日米韓にとっての今年の課題は、いかに北朝鮮の政権交代を図っていくかということである。

金委員長の発言に対し、韓国の文在寅大統領はすぐさま歓迎の意向を示し、趙明均(チョ・ミョンギュン)統一相も高官級の南北当局者会談を9日に板門店で開催することを提案した。中国も、対話による問題の解決を進めるように促した。

一方で米国のトランプ大統領は記者団に「様子を見よう」と発言、対話姿勢に疑問を呈した。日本でも、「北朝鮮は、米韓関係にくさびを打とうとしているのではないか」との反応が見られた。  米国を始めとする国際社会は、決して北朝鮮の核保有を容認せず、これを前提とした対話には応じられないとの立場である。しかし文在寅大統領は、平昌オリンピックを契機として北朝鮮との対話を模索しており、これに目をつけた形で揺さぶりをかけてきたのだ。

金正恩発言に対し反応が分かれる国際社会

北朝鮮の戦略は、核ミサイルを保有することで「核保有国」として認めさせ、米国と対等に交渉して自国の安全を確保するとともに、経済制裁を取り下げさせるというものだった。

そのため、北朝鮮は昨年11月29日、米国本土全域を攻撃できるICBM「火星15」の発射実験に成功したとして、「核戦力の完成」を宣言した。

しかし、北朝鮮のそうした期待に反し、核保有を公言した後も米国主導によって経済制裁は一層強化され、米国は北朝鮮をテロ支援国家に再指定した。これにより、北朝鮮への輸出のほぼ全てが遮断されたほか、石油精製品も9割削減され、公海上での石油を始めとする輸出品の積み荷の移転取り締まりも厳しさを増している。

北朝鮮が韓国を狙い撃ちにして仕掛けた”揺さぶり作戦”

このまま行けば、早晩、北朝鮮経済は立ちゆかなくなることは目に見えている。そうした状況を打破しようとした”揺さぶり作戦”が「新年の辞」であり、国際社会の結束の中で最も揺らいでいて”軟弱”な韓国を狙い撃ちしたものなのだ。対話を進めることで時間を稼ぎ、あわよくば北朝鮮に対する国際的な包囲網を打ち破ろうという思惑があったものと見られる。

こうしたタイミングで、北朝鮮は初めて「文在寅大統領」と呼び、中断していた南北間の通話ルートを再開させた。ただ、米国からの報道によれば、近日中に再度、弾道ミサイルを発射する兆候もあるようで、韓国を盾に核ミサイル開発を続けるつもりなのかもしれない。

実は、今回の「新年の辞」のような揺さぶり作戦は、2014年に開催された仁川アジア大会の際にも行われた。

大会の閉会式に、当時、北朝鮮の「実力者3人組」だった黄炳瑞(ファン・ビョンソ)人民軍総政治局長、崔龍海(チェ・リョンヘ)労働党書記、金養建(キム・ヤンゴン)党統一戦線部長を突然派遣。韓国では、金寛鎮(キム・グァンジン)国家安保室長や柳吉在(ユ・ギルジェ)統一部長官などか空港に出迎え、南北対話に対する期待が一気に高まった。実際、南北間の超高官級接触の再開にも合意していた。

しかし、一行の訪問直後、北朝鮮は西海(黄海)北方境界線(NLL)での交戦や、非武装地帯(DMZ)でビラ射撃を行った。そしてその後、韓国の民間団体のビラ散布を問題視して高官級接触を一方的に白紙に戻したという過去があるのだ。

そうした北朝鮮の今回の提案は、あくまでも核保有を前提としたものであって、日米などにとっては受け入れられないもの。そればかりか、北朝鮮は米韓合同軍事演習の中止まで要求している。

これに対し韓国は、北朝鮮の非核化こそ求めているものの、それを対話の入り口とはしていない。また、米韓合同演習については、米国に対しオリンピック期間中を避けることを提案、米国はこれを検討中であると公表した。こうした韓国の姿勢が、北朝鮮に利用されたのである。

しかし、米国のティラーソン国務長官は、そうした事実は承知していないと語っており、マティス国防長官も演習を中止する考えはないと述べている。米国は、北朝鮮の脅威に備えるためには合同演習が不可欠だとの立場であり、北朝鮮の要求は到底のめるものではないのだから当然だ。

つまり、北朝鮮は姑息な手段で延命を図ろうとし、韓国がそれに乗ってしまったという構図。文政権には本当に困ったものである。

核保有を認めて”管理”するのは可能か

確かに、米国国内においても、北朝鮮の核ミサイル開発はもはや完全に止められないのだから、核の保有は認めつつ、対話を進めることでこれを”管理”することを検討すべきだとする意見がある。オバマ政権に近い筋がこのような見解を述べている。しかし、それは可能かなのだろうか。

安倍晋三首相は、「対話のための対話は無意味」だと語っているがその通りである。それは、これまでの北朝鮮の行動を検証してみれば分かることだ。  金委員長は、前述した仁川アジア大会のときのように、約束したことを簡単に反故にしており、ただの一度として守ったことはない。核施設の査察をIAEAに認めるとした約束も誠実に実行せず、最終的には反故にした。また、異母兄の金正男氏を大量破壊兵器となり得る猛毒のサリンで殺害した。

そのようなことをしてしまう指導者が、核を使わないという保証はない。まして、武器を密輸し、資金を確保することを”生業”としている北朝鮮が、核をテロリストに譲渡しないという保証などどこにもないのだ。

要するに「核を管理する」という主張は幻想でしかない。特に日本にとって、核ミサイルを保有する北朝鮮を米国が容認するということは、金委員長が国内で行っている横暴を国際社会の中でも許しかねないという意味で、安全保障上きわめて深刻な脅威となるだろう。

北朝鮮の核ミサイルがどこまで完成したかは、専門家の間でも意見の分かれるところである。しかし、筆者もこれまでダイヤモンド・オンラインに寄稿したように、金委員長としては、もはやこれを自ら進んで放棄することができないところまできていると見るべきだろう。いや、最初から放棄するつもりなど、さらさらなかったと考えるべきだ。これまで、北朝鮮の”良心”に期待してきたのは無駄だった、それによって一層、危険度が増してしまったと言えるのだ。

これに対し、米国を始めとする国際社会の大勢も、国連制裁などで北朝鮮に対する包囲網を狭めてきており、北朝鮮との対立は核ミサイルの放棄なくして反転することはない。要するに、北朝鮮の核ミサイル問題を巡る対立は決定的で、もはや止めることができないのである。

米軍の軍事行動による犠牲を最小限にする擦り合わせが必要な時期

そこで浮上するのが米軍による軍事行動である。

日本国内には、もし北朝鮮を非核化するために米軍が軍事行動を起こした場合、犠牲が甚大となる可能性が高いので、安倍総理は「朝鮮半島では絶対に戦争を起こさせない」とする文大統領と一緒になって、トランプ大統領の軍事行動を制止するべきだとの議論がある。

筆者も、軍事行動は非常に大きな犠牲を伴うと考えており、できる限り避けるべきだと考えている。しかし、だからと言って、北朝鮮の核ミサイル開発を容認してもいいと考えているわけではない。金委員長が国内で行っている専制政治の余波を、日本が受けることだけは絶対に避けなければならない。

今のところ米国は、北朝鮮に対する軍事行動には慎重な姿勢を見せている。だが、軍事行動を起こす確率は徐々に高まってきているというのがおおかたの見方だ。軍事行動は最後の手段だろうが、決断された時には、現実問題として止めるのは難しいだろう。

だとすれば、軍事攻撃以外の選択肢にいかなるものがあるか、それを尽くしたのか、仮に最悪、軍事行動が不可避な場合、わが国への犠牲をいかに最小限にとどめるかといったことを、米国と擦り合わせざるを得ない時期に来ているのかもしれない。

もう一つの選択肢として、直接軍事力を使わず金正恩体制を変えるという方法があり、今後、その動きが強まるのではないかと考える。そして、こうした流れに、中国がすでに組み込まれているのではないか。

ティラーソン米国務長官は昨年12月22日講演の講演で、半島有事の際の難民対策や核兵器の管理について中国と協議している、仮に米軍が38度線を越えて北朝鮮に侵攻した場合でも、条件が整い次第、撤退することを中国に「確約」すると伝えていると述べた。

米中の間で議論が始まっている北朝鮮有事への対応

こうした発言は、米中の間で北朝鮮有事への対応について話し合いが始まっているからこそ出てくるもの。中国では、「米国の北朝鮮攻撃不可避論」や「中国の北朝鮮介入論」が徐々に高まっていると聞く。

また、中国共産党関係者からは、有事の際に中国軍が北朝鮮領内に入り、核ミサイル施設を制圧し管理するとの発言もあった。中国の習近平国家主席が昨年夏ごろ、すでに吉林省に難民キャンプ5ヵ所の設置を指示したとの情報も伝えられている。

中国は、米国に北朝鮮との対話を促しながら、一方でこうした現実的な対応も始めている。そうした流れは、習主席の特使として北朝鮮を訪問した宋濤(そう・とう)政治局員が、金委員長との面会すら実現しなかったあたりから強まったと見られる。

北朝鮮で政権交代を促すためには、あくまでも米国の軍事的な圧力が背景となるだろうが、最終的にどのような決着になるかは米中の話し合い次第だ。米中がそろって介入することで、北朝鮮の反撃能力を取り除くことができれば、日本の犠牲は最小限にできるだろうし、米国が北朝鮮を崩壊させることが確実になれば、中国が先に手を下すかもしれない。

また、米国や中国が直接、手を下すのではなく、朝鮮人民軍のクーデターによって政権が交代する方がより犠牲は少なくなるであろうし、その方が望ましい。これまで、北朝鮮におけるクーデター計画は未然に防止されてきた。

しかし、米国ないし中国が後方支援するとなればクーデターを行おうとする動きが出てくるかもしれないし、成就する可能性も高まろう。秘密裏にクーデターを支援するという場合、米国よりも中国の方が協力しやすい面もあるだろう。

日本はタブーを捨て現実的に対応するべき

日本は、これまでこうした議論は避けてきた。しかし、それで本当にわが国の国民の安全を守れるのか。そろそろタブーを捨てて、現実的に対応することが国益に資するのではないか。状況さえ把握していなかったという事態は最悪である。

そしてもう一つ。日本にとって重要なことは、米中の話し合いが先行することがないよう、米国との連携を強化しつつ、米中の連携を後押ししていくことだろう。

文大統領も、こうした選択を迫られた時に影響力を行使できるよう、米中の首脳といい関係を結んでおくべきなのだが、実際にやっていることはこれに逆行するもの。日本に対しても、慰安婦問題などで挑発的な行動に出ている。日米韓の連携が最も重要な時期に何を考えているのかと思うが、それが現実である。韓国とどのような協力が可能か、今しばらくは様子を見るしかない。

こうした動きが本格化するのは、中国の人事などが固まる3月の全国人民代表大会(全人代)以降だろうが、残された時間は少ない。今すぐにでも日本として現実的に取り得る対策は全て整えていく必要がある。

(元在韓国特命全権大使 武藤正敏)

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『バノン氏の政敵、トランプ政権のアジア政策責任者に 中国に精通するキャリア外交官、スーザン・ソーントン氏』(1/8JBプレス 古森義久)、『中国続かぬ幸運 米中、国益むき出しの年に 』(1/8日経朝刊 FT)について

メイ・フォン著『中国「絶望」家族』を読みました。抜粋をお届けします。読んだ印象として、著者はWSJの中国系米国人女性記者なので、祖国中国の女性の人権侵害、特に一人っ子政策、それが引き起こした異常な男女比(間引き)、法執行機関の悪逆ぶり、失独(一人っ子が死んで面倒見てくれる子供がいない)の問題を抉っています。でも中国の言論弾圧や少数民族については関心が無さそうな印象を受けました。漢族の末裔だから仕方がないのかもしれませんが。

P.74~75

「姚自身、一人っ子政策のせいで自分勝手な人や他人を信頼できない人が増え、「われわれがチーム競技に弱くなった理由はおそらくそこにある」と考えている。たしかに中国、にはある種のスポーツに劣等感がある。卓球や飛び込み、体操では定期的にメダルをとれるものの、サッ力―やパスケットボールのようなプロのスポーツとなるとパッとしない。

スポーツ関係者はこれを「大球・小球」説と呼ぶ。中国が得意とするのは正確さや機械的練習が重視される競技「小球」だけで、創造性やチームワークが求められる競技「大球」は苦手という説だ。この説はスポーツのみならず、中国の教育システム、優れた経済人の育成に至るまで、あらゆる面で当てはまるといわれている。

開会式の夜、中国が必死で「大球」の地位を得ようとしているのは明らかだった。 私は開会式の模様をライブでネット上にアップし、流産や子供たち、地震といった、自分の心の中で一つにつながって大きな塊となった悲しみのことを考えまいとしていた。過去の数々の非道な行為を葬り去り、中国の栄光のみを称えようとする執拗なゴリ押しムードを漂わせたオリンピックは、そんな私にはうってつけの場に思えた。

しかし、それでも思い出さないなどしょせん無理な話だったのだ。

開催会場一つとってみてもそうだ。中国でもっとも有名な反体制派アーテイストで、中国のアンデイ・ウォーホルとも呼ばれている艾未未は、当初「鳥の巣」の設計顧問だった。ところが、中国政府がオリンピックをまがい物にしてしまったと批判し、結局「鳥の巣」建設から手を引いた。

艾は、震災から10日後に四川省を訪れその実情を撮影し、校舎倒壊の隠蔽について非難した。その後も、震災で犠牲になった子供たち全員の名前をデータベース化しようと試みた。こうした活動のために、暴行や拘束はもちろん、身に覚えのない脱税の罪でニ〇〇万ドルの罰金を科せられている。」

P.123「テレビ、自転車、洗灌機・・・・妊娠したら家財没収

私はこの巨大機構の末端がどのように機能しているのかを探るべく翼城県を訪ねた。この地域では一人っ子政策の規制が特別に緩和されていることから、退職した複数の計画出産担当職員から話を聞くことができた。

その職員の多くは一九八〇年に一人っ子政策が導入される以前から計画出産に関わり、一九八五年に翼城県で第二子の出産許可が下りてからも引き続きこの業務に携わっており、内部の人間ですら困惑するほどの政策のブレを説明できる。 青菊も今はこの計画出産の仕事が事実上不要になったと明言する。担当グループの若者たちは、育児にお金がかかるという理由で二人目をもとうとは思ってもいない。 「子供は一人で十分というのが大勢ね」と彼女は言う。一九八五年以来、黄家鋪村で三人目の 子供をもったのは一家族のみ、自動車部品会社を経営する比較的裕福な家庭だ。

ただし、第二子を認める緩和策が実施されても、村民には相変わらず負担を強いる規則があった。一九九〇年代には、第二子を出産した女性は必ず避妊手術を受けるという規則、そして、 第一子から第二子の出産までは最低五年あけるという規則があったのだ。

では、三人目は望まないから避妊手術は受けたくないという女性はどうなるか。また、もし 五年ではなく三年後に第二子を妊娠したとしたら。そのときには、特別措置を受けている翼城県でさえ、その計画出産機関の冷酷な顔を見ることになる、と黄家鋪村の元村長ホアン•デエンガォウは証言する。

まずは罰金だ。計画出産外の子供をもうけた夫婦には、年間可処分所得の五倍から一〇倍の罰金が科せられる。「夫婦が貧しくて支払えない場合には、家財道具を没収する。これは稀なケースではあるが」とホアンは言う。

村民の年問収入に相当するテレビは格好の没収品で、他にもテーブル、自転車、洗濯機などがよく没収される。没収には一〇名のパートタイム執行役人(通常、屈強で健康な若い男たち) が当たる。没収品を売却した代金は村が管理する。ホアンは、こうした措置は強制ではなく、 むしろ「説得」だと称した。」

P.246~247「一九九六年の全国人民代表大会で、子供は高齢の親を扶養する義務があるとする法律が可決された。次いで中国政府はニ〇一三年、子供が年老いた親を頻繁に訪問することを義務づける 法律を制定した。そうした法律を遵守させるのは難しいが、こういった法律を制定することで 国民に明確なメッセージを送ったのだ。つまり、国ができないことは家族がやれ、ということだ。

残念ながら、破壊行為の中には修復困難なものもあるようだ。介護施設一つをとっても、ガワンデの住むアメリカでは子供がいれば施設に入らなくてもすむかもしれないが、中国では子供がいなければ、介護施設にすら入れない可能性がある。一人っ子を亡くした「失独」家庭は、 こうして二重の苦しみを体験する。

多くの介護施設が「失独」夫婦を受け入れないその理由は、「失独」夫婦には万がーの際に 施設での治療に許可を出し、支払いを保証する子供がいないからだ。この種の差別は墓場にまで及ぶ。

「失独」夫婦の中には、霊園業者が墓地を売ってくれない、自分たちの墓地だけでなく、亡くなった子供の墓地さえも売ってくれないと訴える人々もいる。売り手にすれば、将来の唯持費を負担する人が誰もいないことを懸念してのことのようだ。 「失独」父母は、現在のところ100万人とされ、その数は増加している。彼らは数々の要求を列挙した長文の嘆願書を政府に提出した。そこにはより多額の補償、養子縁組での優先権、それに加えて老齢年金、医療費、墓所割り当てなどの要求が記されていた。

その主張には、いくらかうなずける部分もある。政府は一人っ子政策の違反者から強引に法外な罰金をとってきたのだから、法律を守った一人っ子家庭が、その跡継ぎである一人っ子を失い重要な経済的安定も失った場合は、その資金で補償すべき、という論理だ。

その主張は、困難な状況で下される「ソロモンの判決」のように見事な解決策ではあるが、 何と痛々しい考え方であることか。

中国政府は若干補償金を上げて応じたものの、他の要求に関してはあまり進展がない(「失独」父母にたいする国家補償制度が始まったのは比較的最近で、ニ〇〇七年からだ。現在、月額一六〜五〇ドルの補償金を受けとっている)。 「失独」家庭は、たとえば、彼らの特殊な事情を考慮してくれる老人ホームを要求している。

理由の一つは面会日にある。「他の入居者に家族が面会にきているのを見ると・・・ただただ耐えられない」と、ある「失独」夫婦は言う。

ニ〇一四年に広州市の地方議員が、一人っ子政策違反で集めた罰金の一部を社会保障費として「失独」家庭のために使ってはどうかと提案したが、一蹴された。当局は罰金の使い道はすでに决まっているというのだ。」

P.263「中国で、患者より家族の意思が優先されるという特異な状況が生まれたのには、いくつかの理由がある。その一つが経済的な理由だ。医者が患者の成人した子供たちの意見に従うのは、治療費を支払うのが子供たちだからだ。中国の高齢者の世代は、中国の好景気を享受できた子供たちの世代に比べて相対的に貧しい。

さらに嘆かわしい解説をすると、死の床では、過去の遺物となったはずの孝行心が頭をもたげてくるようだ。「すべては面子、つまり体裁の問題だ」と、ある北京の病院の運営管理者は言う。「子供たちは、できるだけのことはやったと示さなければ体裁が悪い、つまり面子を失う。 だから、たとえそれが不必要で苦痛に満ちた治療になっても、医師に最後まであらゆる手を尽くすように強く要求するのです」

マ医師の見解はまた別だ。過去三〇年以上ものあいだ、中国が資本主義実験を実施した結果、物質主義文化が生まれたせいだという。 「最近の中国人はみな物質主義者です。私は違うが、多くの人がそうなりました。そのため、 死についての教育が実施されなくなりました。物質主義者は自分の目に映るものだけを信じ、目に見えないものは否定します。彼らには宗教心がないのです」

P.280~281「だが、養子縁組幹旋機関の誰もが楽天的なわけではない。ニ〇〇九年、オランダ最大の養子縁組斡旋機関「ワールド.チルドレン」の所長アイナ・フートは、湖南省の事件に抗議して辞職した。さまざまな疑惑に思い悩んだフートは、無駄とは知りつつ中国、オランダ両国の当局に回答を強く求めた。ニ〇〇七年、彼女は一か月にわたる調査を行なうため中国へ飛んだ。

フートは、乳幼児売買の慣行は「私たちが思っている以上に蔓延している」という確信をもって帰国した。養子縁組業界の関係者が彼女に語ったところによると、計画外出産の子供を生まれる前から見つけて確保しておいた助産師には報酬が支払われる。また、孤児院が、養子となった子供たちについて、中央の養子縁組機関や養父母に報告している以上の情報をもっていることも多いという。

彼女は他にも中国の当局者から個人的に、湖南省の人身売買事件の被害者のうち少なくとも二人が最終的にオランダ人の養子になったという話を聞いた。しかし、中国政府からもオランダ政府からも、この件に関する調査をしてもらうことはできなかったという。「彼らにとっては、すでに終わった話なのです」

髪はブロンド、日焼けした肌に陽だまりのような笑みをたたえ、話し方も柔らかなフートは、その容姿から活動家らしさは感じられない。彼女はソフトウヱア分野で成功した起業家であり、 大学の経営者でもあった。

「ワールド.チルドレン」に加わったのはニ〇〇ニ年、はじめての子供死産した直後だった。 その衝撃的体験から、フ-トは「次のステップは世界を少しでもよくすることだ」と決意したという。当初はみずからの養子縁組を計画していたが、養子縁組の内部事情を知るにいたって、待機者リストから名前を削除した。

「内情を目にして衝撃を受けました。養子縁組の多くは養父母の利益のためで、子供たちのためではないと.い.うことがわかったのです。誰にでも子供を望む権利はあります。でも子供をもつ権利はないのです。子供には両親をもつ権利がありますけどね」

自らの信じる所を公表したフートだったが、その代償を払うことになった。2009年に辞職してからの五年間、彼女にはずっと仕事がなかった。内部告発者として有名になったから、誰も自分を雇いたがらなかったのだ、と彼女は思っているニ〇一四年、彼女はようやく人身売買の被害を救済するオランダの非営利墨組織「CoMensha」の代表に就任した。」(以上)

1/8facebook投稿より。如何に毛沢東が自国民を虐殺したかを示すものです。中国は、天安門に彼の写真を掲げているのですから、殺人鬼を崇め奉る中共教と言う怪しげなカルト教団に国が乗っ取られていると見た方が良いでしょう。

トランプの政策変化が中国有利に傾くのかどうか?スーザン・ソーントン氏が東アジア太平洋担当の次官補になるのであれば、ティラーソン国務長官を延命させることになるし、北朝鮮・中国に対して「力による平和」を実行できなくなるのでは。エドワード・ルース氏が書いたように、中国はトランプのアメリカを「張り子の虎」と看做すようになるかもしれません。まあ、国防総省サイドの行政運営を押し隠すための国務省人事だとすれば頷けますが。共産主義の両国は打倒されてしかるべきです。

FT記事

トランプ米大統領にはごますりが効く。ただ、効果は持続しない。2017年、並み居るライバルを抑え、トランプ氏に最も効果的におべっかを使ったのは中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席だった。北京の人民大会堂でトランプ氏のために豪華な公式夕食会を催しただけで、同氏の頭から対中貿易不均衡や中国の人権の問題をすっかり吹き飛ばしてしまった。

問題は、習氏が絶えずトランプ氏の機嫌をとらなければならないことだ。同氏にこびを売り続けると自尊心が傷つき、我慢できなくなる。トランプ氏へのへつらいも「収穫逓減の法則」で続けても効果は減っていき、18年は恐らくマイナスになるだろう。

2018年は貿易問題を含め米中間の摩擦が激しくなりそうだ=AP

自意識が強いといえば、習氏も同じだ。中国はトランプ政権誕生後の数カ月間、責任ある行動を取れる国だとの期待を裏切らなかった。だがこれ以上の自制はなさそうだ。習氏は17年10月の中国共産党大会で、積極的に対外政策を推し進めると表明した。習氏はあらゆる肩書を手に入れ、自身の思想を党規約に盛り込んだ。個人崇拝も復活している。いまや米中関係は、途方もなく肥大した自我を持つこの2人に託されている。

これは18年にとっては良くないことだ。しかも大きな暗雲も2つ垂れ込めている。一つは冷戦以来初めて米国にライバルが出現したことだ。習氏率いる中国は、世代交代する前に世界一の大国になるという目標を掲げる。旧ソ連と異なり、中国は米国と技術的に張り合っていける。アジア太平洋地域での米国の優位はもはや盤石ではない。もう一つは、米大統領は1時間先のことしか考えないが、中国の指導者は10年単位で物事をとらえることだ。望遠鏡を持つ習氏と鏡を見つめるだけのトランプ氏のどちらが優位かは明らかだ。

■WTOへ米国を提訴も

世界は米国と北朝鮮の核をめぐる対立にばかり注目し、米中関係がどのようになるかについてはほとんど気にしていない。

トランプ氏はいまだに中国が米国のために北朝鮮を非核化してくれると信じている。一方、同氏は対中貿易で保護主義的な措置も取りたがっている。米国は中国を筆頭に諸外国の食い物にされていると思い込んでいるからだ。「(中国が)北朝鮮問題で助けてくれないなら、前からやると言っていることをやるだけだ」と同氏は17年末、米紙に語った。今年、米国は中国に貿易で対抗措置をとり、中国政府は米国を世界貿易機関(WTO)に提訴する可能性が高い。

米中関係悪化の影響は朝鮮半島を越え、はるか遠くまで広がる。中国は17年、アフリカのジブチに初の国外軍事拠点を設け、空母も初めて地中海に派遣した。南シナ海の軍事拠点化も加速している。

トランプ氏と習氏のにらみ合いではどちらが先に引き下がるか。それは知る由もないが、中国は自信過剰になっているようだ。イラク戦争から米大統領選まで中国に有利なことが次々起きた。民主的に選出された指導者に、トランプ氏が侮蔑的な態度をとっていることも中国には好都合だ。とはいえ、幸運が長続きするはずはない。習氏は米フロリダ州のトランプ氏の別荘に招かれ、共に夕食を取っているさなかに、トランプ氏がシリア空爆を命じたことを肝に銘じるべきだ。中国では多くの人がトランプ氏を張り子の虎だと考えている。そうだとしても、実際に試すのは軽率といえる。

By Edward Luce

(2018年1月4日付 英フィナンシャル・タイムズ紙 https://www.ft.com/)

古森記事

米連邦議会議事堂。首都ワシントンで(2017年4月28日撮影、資料写真)。(c)AFP/SAUL LOEB〔AFPBB News

トランプ政権がアジア外交政策の最高責任者にスーザン・ソーントン氏を任命した。

ソーントン氏は米国の歴代政権にキャリア外交官として長年加わってきた。トランプ政権の外交部門の高官任命では初めての現職女性官僚である。

米国でこの人事は、同政権の外交が大きく変質しようとしていることの兆しだとして注目されている。また、トランプ大統領との不和を噂されるレックス・ティラーソン国務長官の影響力が健在であることが示されたという指摘もある。

かつて外交官として中国に駐在

スーザン・ソーントン氏(米国務省HPより)

トランプ政権は昨年(2017年)12月中旬、国務省のキャリア外交官、スーザン・ソーントン氏を東アジア太平洋担当の次官補に任命した。ソーントン氏は議会の上院での審議、承認を経て正式に次官補に就任する。

東アジア太平洋担当の国務次官補は日本、中国、朝鮮半島などを管轄し、政権の対アジア政策を担当する最も重要な実務ポストとされる。日米関係に関しては米国務省の実務面における最高責任者となる。

ソーントン氏は1991年のジョージ・W・H・ブッシュ政権時代に国務省に入省した。外交官として主に中国や中央アジアなどを担当し、とくに中国に精通している。中国の北京や成都、カザフスタンのアルマトイなどの駐在経験があり、本省で中国部長も務めた。

トランプ政権では、2017年3月にダニエル・ラッセル氏が東アジア太平洋担当の国務次官補を辞任してから代行を務めてきた。

ソーントン氏の任命が注目される3つの理由

ソーントン氏の国務次官補任命は、少なくとも3つの理由によりワシントンの外交筋の間で強い関心を集めている。

第1の理由は、ソーントン氏がトランプ政権の外交関連分野で初めて現職キャリア官僚として高官に任命されたことだ。

国務次官補のポストは政権が政治任命し、議会の承認を必要とする職務であるが、トランプ政権はキャリア官僚ではなく共和党系の学者や元高官など非官僚の人物たちを要職に起用してきた。だが、ソーントン氏は政党色のない純粋なキャリア官僚である点が異色だといえる。また政策面でも、同氏はトランプ政権の主流派よりも“正統派”の外交に傾く見通しが強い。

第2の理由は、ソーントン氏の国務次官補任命にはトランプ政権の一部から強い反対があったのに、それが抑えられたことである。

トランプ大統領側近の首席戦略官だったスティーブ・バノン氏らは、キャリア官僚を高官に起用することに対して「民主党色が強すぎる」として強く反対してきた。またバノン氏は昨年8月の政権辞任直後、とくにソーントン氏に対して「中国への強固な政策を保つためには、ソーントン氏のような対中融和の官僚を任命してはならない」と明言していた。

だが、レックス・ティラーソン国務長官の意向が通る形でソーントン氏の起用が決定した。この人事は政権内部の外交政策が変質していることの表れだとみる向きもある。

第3の理由は、そのティラーソン国務長官の政権内での存在感が見直されたことである。

ティラーソン長官は、米国の外交においてきわめて重要な東アジア太平洋担当の国務次官補ポストが空席のままであることを懸念し、代行だったソーントン氏の任命を昨年7月にトランプ大統領に提案した。だが、その人事はなかなか実現しなかった。

その後、11月にトランプ大統領がアジア各国を訪問した際、ソーントン氏は大統領のアジア歴訪の実務面の責任者の1人となって活躍してティラーソン長官に高く評価された。今回、ソーントン氏が国務次官補に任命されたのは、ティラーソン長官がトランプ大統領に改めて要請したことの結果とみられる。ワシントンでは、「トランプとティラーソンの不仲説」や「ティラーソン辞任説」が囁かれているが、そうした噂は否定されることとなった。

こうした背景のもと誕生するスーザン・ソーントン新国務次官補の今後の動向は、日本にとっても大きな関心が持たれるところである。

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『中国の海洋浸出を食い止めるために日米がすべきこと 対処療法的な方針では焼け石に水、確固たる海軍戦略が不可欠』(1/5JBプレス 北村淳)、『日本はいつまで核の傘に「ただ乗り」できるのか 必要なのは憲法改正より日米同盟の見直しだ』(1/5JBプレス 池田信夫)について

1/7は浅草7福神に家内とお参りしました。浅草寺と浅草神社、今戸神社は沢山人が並んでいたので、境内近くでお祈りをしただけですが。写真は今戸神社で取ったもの。浅草寺→浅草神社→待乳山聖天(お土産に大根を貰う)→今戸神社→橋場不動院→石浜神社→吉原神社の順で回り、2時間コースでした。

その後は靖国参拝、文京シビックセンターで白石千尋氏による「スイスの事例にみられる国防意識」セミナーに参加、その後facebookで繋がった「民間防衛」メンバー4人と懇親しました。

中国の強みは北村氏が言うように「一党独裁」で長期的な戦略が樹立できることです。而も、民主的ではないため、当然強権的になり、国民の生命・財産を犠牲にしても目標成就を最優先とする集団が牛耳っています。しかし、これを裏から見れば、統治の正統性がないのですから、国民の怒りを沸騰させ、共産党打倒に結び付けられるようにすれば良いと思います。先ずは、中国経済、特に輸出での稼ぎができないよう報復関税、貿易決済に$を使えなくする金融制裁を早く実施することです。キッシンジャーは「中国と言う怪物」を育て上げ、パクス・アメリカーナからパクウ・シニカに移した売国奴の烙印を押されないためには早く政策転換しないと。そうしなければ、彼の歴史評価は前述の通り定まるでしょう。

池田氏記事の「憲法改正よりはニュークリアシエアリングを」と言うのは、ニュークリアシエアリングについてはその通りで、軍事予算増額・人材育成等と合わせて、憲法改正しないでもできるところはドンドンやるべきと思っています。憲法改正については青山繁晴氏が言っていますように、9条の最後に「但し、自衛権の発動はこれを妨げない」を入れれば良いと思います。しかし、白石氏のセミナーを聞いて思うことは、スイスは800万の小国でありながら、直接民主主義・国民皆兵・永世中立を成し遂げている国で、日本のように他人依存・自立自尊のない国とは違うという事を痛感しました。スイスの一番の脅威は「情報戦・デイスインフォメーション」に引っかからないことでした。日本の現状は中共の手先の日本メデイアに手もなく引っかかり、東大のアカ教授の言説を有難がる滑稽な人達ばかりです。とても自己責任を追求しているスイス国民と成熟度に置いて雲泥の差です。慰安婦や南京に手もなく騙され、核シエルター配備0%で、まだ似非平和主義を有難がっているのでは。

北村記事

香港に到着した中国の空母「遼寧」(2017年7月7日撮影、資料写真)。(c)AFP/Anthony WALLACE〔AFPBB News

昨年(2017年)は、東アジア海域、とりわけ南シナ海において、中国が東アジア諸国はもとよりアメリカに対しても優勢的立場を着実に築き上げ、それに対してアメリカの東アジア方面海洋戦力が目に見えて凋落し始めた年であった。このような状況に関しては、昨年末の本コラム(「北朝鮮暴発の危機」は中国のシナリオだった? 中国の海洋戦略が勝利を手にした2017年」http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/51961)で述べたとおりである。

2018年にはいよいよトランプ政権の海軍力増強政策がスタートするが、南シナ海や東シナ海における中国の膨張主義的海洋侵出に、アメリカは待ったをかけることができるのであろうか?

米国民は東アジア海域に関心を示すのか?

しかし、アメリカが南シナ海や東シナ海での中国の膨張主義的海洋侵出を食い止めるのは容易ではない。まず、トランプ政権が中国の動きを、アメリカの国益という観点からどの程度深刻な軍事的脅威と受け止めるのか? という問題がある。

中国の渤海で行われた軍事演習で、空母「遼寧」の甲板上に駐機された艦載機「殲15」(2016年12月撮影、資料写真)。(c)AFP〔AFPBB News

もちろん、かねてより米海軍関係者たちを中心とする人々は、南シナ海や東シナ海が「中国の海」と化することをアメリカの国益にとって最高度の脅威と考え、絶対に阻止すべきであると唱えてきた。

なぜならば、戦時(そして準戦時)に際して、それらの海域に横たわる海上航路帯(SLOC、シーレーン)を中国がコントロールすることになると、日本や韓国そしてフィリピンといったアメリカの同盟国の経済活動のみならず、アメリカ海軍の軍事行動にとっても致命的な影響が確実に生ずるからである。

しかしながら、海上航路帯の妨害という軍事作戦は、ミサイルや魚雷が飛び交う戦闘行為が繰り広げられることなしに──すなわち、人々の目に何が起きているのかが映し出される以前に、決着がついてしまう。そうした“目に見えないせめぎ合い”は、海軍戦略家以外の人々にはなかなか理解されがたいものである。

そのため、アメリカから遠く離れた「アメリカ国民にとって全く馴染みのない」南シナ海や東シナ海で中国が軍事的優勢を手にすることがアメリカの国防にとって極めて重大な脅威となる、との説明が、トランプ政権や連邦議会、またアメリカの主要メディアや世論などに幅広く受け入れられる見込みは高くはない。

まして、北朝鮮がアメリカ本土に到達するICBMを完成させ、アメリカを直接核攻撃できる能力を手に入れそうな状況下においては、「中・長期的に考えれば、中国海軍戦略の伸展こそが、金正恩のICBM恫喝などとは比べものにならないほどアメリカに対する最大の軍事的脅威となる」との主張が、トランプ政権や連邦議会そして米主要メディアを説得する可能性は低いものと考えざるを得ない。

海軍戦略を欠くアメリカ

もしトランプ政権が、北朝鮮問題に対する中国の役割に期待する無益さを真摯に受け止めて、中国の膨張主義的海洋侵出政策に対して本腰を入れて妨害する決断をなしたとしよう。この場合、マティス長官率いるペンタゴンが南シナ海や東シナ海で中国海洋戦力に対峙する動きを開始させることになる。

とはいっても、現在の米海軍の態勢では、とても中国の海洋侵出の勢いを大きく減速させたり食い止めたりすることはできそうにもない。

なぜならば、中国は確固たる長期的海軍戦略を手にしているが、アメリカ側にはそれに対抗し得る海軍戦略が存在しないからだ。中国の南シナ海(そして東シナ海)での軍事的優勢の確保は、「積極防衛戦略」(米軍ではしばしば「接近阻止・領域拒否(A2/AD)戦略」と呼ばれている)と呼称される国防戦略に立脚して着々と推し進められている。一方、アメリカ側は中国側の動きに応じて対処療法的な方針を繰り出しているに過ぎない。

中国は「よく練られ、適宜に修正を加えられつつある」海軍戦略を基に、南シナ海や東シナ海において次から次へと様々な手を打ち、主導権を手にしつつある。それに対してアメリカ側は海軍戦略といえるものを手にしていないため、押っ取り刀で対応し、結局は中国に振り回されているのが現在の構図である。そうした現状では、中国海軍・空軍・ロケット軍が睨みを効かせる南シナ海や東シナ海において、アメリカ海軍がかつてのように軍事的優勢を手中に収めることはもはやはなはだ困難であると言わざるを得ない。

たしかに、トランプ大統領は、355隻海軍建設のための法的根拠を実現させた。しかし、その355隻の主要戦闘艦が造り出され、アメリカ海軍がかつての大海軍の座を手にするまでには、10年以上もの年月がかかるとも言われている。その間、中国が待っていてくれはしない。

それどころか、数隻の空母や多数の潜水艦を含む500隻大海軍が南シナ海、東シナ海、西太平洋、インド洋に展開し、東シナ海や南シナ海沿岸部からは無数の対艦ミサイルや対空ミサイルが中国大陸に接近する敵勢力に備えているという、積極防衛戦略が描いている状況が実現してしまうことになる。

日米共に効果的な海軍戦略が必要

トランプ政権が打ち出したアメリカ海軍の大増強政策は長期的には必要不可欠な方針である。しかしながら、軍艦という「モノ作り」の前に、中国の積極防衛戦略に効果的に対抗するだけの海軍戦略を生み出さなければ、中国の極めて強力な膨張主義的海洋侵出の勢いを減衰させることはできない。

もちろん、アメリカ以上に海軍戦略(そして国防戦略そのものも)不在状態が続いている日本が可及的速やかに「国防戦略」や「海軍戦略」といえるだけの戦略を策定しなければ、未来永劫アメリカの軍事的属国、そしていずれは中国の属国の地位から脱却できないことは言を俟たない。

池田記事

北朝鮮が実施した大陸間弾道ミサイル(ICBM)「火星14」発射実験の様子を写した写真。国営の朝鮮中央通信(KCNA)が配信(2017年7月28日撮影、同29日配信)。(c)AFP PHOTO/KCNA VIA KNS〔AFPBB News

今年(2018年)は憲法改正が議論される年になるだろう。自民党は通常国会で憲法審査会に改正案を示し、改正の発議をめざす方針だが、公明党は難色を示しており、衆参両院の3分の2を得る見通しは立たない。発議しても国民投票で否決されると二度と改正できなくなるので、自民党内にも慎重論が強い。

最大の争点は第9条だが、安全保障の議論が憲法論議に終始するのは危険である。むしろ今は、戦後の日米関係が大きく変わる時期に来ており、日米同盟を見直す必要がある。そのためには憲法改正は必要条件ではない。

護憲を言い換えた「なんちゃって立憲主義」

憲法論議で最近いわれるようになったのは「立憲主義」という言葉である。これは数年前までほとんど聞かなかった。朝日新聞データベースで調べると、立憲主義という言葉が使われた記事は1985年以降で2221件出てくるが、そのうち1931件が2014年以降だ。つまり安保法制についての閣議決定が国会で問題になったときから、急に増えたことが分かる。

こうなったのは、野党の掲げてきた「憲法を守れ」という統一スローガンが、国際情勢の緊迫で現実性を失ったからだ。立憲民主党などの唱える立憲主義は「護憲」を言い換えた「なんちゃって立憲主義」に過ぎない。

55年体制では、自民党が憲法を改正しようとし、社会党をはじめとする野党は「憲法を守れ」と主張した。第9条1項は1928年のパリ不戦条約と実質的に同じなので、自民党も改正しようとしていないが、問題は第2項である。

「陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない」という規定は素直に読むと、あらゆる軍事力をもたないと解釈するしかない。国に自衛権があるとしても、交戦権がないと自衛できない。

この条文には多くの解釈があるが、憲法学者の多数は「自衛隊は憲法違反だ」と考えている。それは当然だが、奇妙なことに彼らの多数は「憲法を改正するな」という。これは三段論法で考えると「憲法違反の自衛隊を認める」ということだ。これは憲法学の自己否定に等しい。

与野党のなれ合いで続いてきた憲法論争

第9条の奇妙な条文は、不毛な憲法論争を生んできた。1946年に憲法制定議会で、吉田茂首相は「今日までの戦争の多くは自衛権の名によって始められたので、自衛権による戦争と侵略による交戦権を区別することは有害無益だ」と答弁した。

多くの戦争は自衛を理由に行われるので、自衛戦争も含めてすべての戦争を禁止するというのは筋が通っているが、その後は吉田の答弁も変遷し、政府は自衛権を認めるようになった。

今では自衛隊は「戦力」ではなく「自衛のための必要最小限度の実力を保持する」組織と定義されている。これは日本語として奇妙で、「必要最小限度とはどの程度なのか」とか「実力と戦力はどう違うのか」などの神学論争が国会で果てしなく続く原因になってきた。

在日米軍基地も「戦力」だと考えると、それを国内に「保持」することは違憲の疑いが強いので、「自衛隊を解散し、安保条約も破棄して米軍基地を撤去すべきだ」という憲法解釈が自然である。これは社会党の石橋政嗣が1960年代に非武装中立として社会党の政策とし、土井たか子委員長の時代まで続いた。

それは万年野党としては、合理的な政策だったともいえる。1960年代以降の社会党には政権交替の可能性がなくなり、過半数の候補者も立てなくなった。「正しい憲法解釈」を主張した結果として野党に甘んじることはそれなりに潔く見え、中選挙区では1議席ぐらい取れた。

他方、自民党は結党した当初から、保守勢力が「反共」で野合した理念なき党だった。岸信介は日米安保条約の改正に殉じて退陣したが、その後の首相は(安倍首相まで)改正案さえ出さなかった。多数を取るために小選挙区制にしようという案も、党内ハト派の反対で実現しなかった。

それも当時としては合理的だった。1951年に吉田首相は、アメリカのダレス国務長官が要求した再軍備(憲法改正)を拒否した。吉田は第2次大戦の経験から、ロシアや中国の経済力でアメリカと戦争することはありえないと考えていたからだ。1960年ごろのソ連のGDP(国内総生産)はアメリカの3割、中国は2割ぐらいだったので、従来の総力戦の発想では、両方の合計の2倍の戦力をもつアメリカに戦争を挑むことは考えられない。

吉田の判断は、アメリカの核の傘に「ただ乗り」する結果になった。彼はのちに「占領統治を離脱してから日本国民が決めればよいと思った」と語っているが、自民党にはその後、一度も改正を発議するチャンスがなかった。

「核の共有」も日本のオプション

他方、1955年にNATO(北大西洋条約機構)は西ドイツの加盟と再軍備を認め、ヨーロッパにアメリカの核兵器が配備された。このときNATOもアメリカと核兵器を共有し、その使用について拒否権をもつ二重の鍵(dual key)という原則が決まった。

アメリカは日本にも核兵器の配備を行う予定だったが、憲法が障害になってできなかった。むしろ日本では「反核」の世論が強かったため、1960年の安保条約改正では、核兵器の日本国内への持ち込みに「事前協議」を行うことが定められた(実際には協議は一度も行われていない)。

1960年代後半にアメリカはベトナム戦争の軍事負担を日本に求めたが、佐藤栄作は拒否した。日本を懐柔するためにアメリカは沖縄を返還したが、1972年の返還のとき佐藤内閣は「沖縄への有事の核持ち込みは黙認する」という密約を交わした。

このとき自衛隊の海外派兵を拒否するために「集団的自衛権」の行使を違憲とする法制局見解を出し、これがその後も日本の外交を拘束した。アメリカは常に日本の軍備増強を求めたが、日本は「憲法の制約」を理由にしてそれを逃れてきた。安保法制をめぐる騒ぎは、安倍政権がこういうアメリカの圧力をかわすための八百長のようなものだった。

しかし東アジアの地政学的なバランスは、冷戦期から大きく変わった。北朝鮮のような最貧国まで核武装する現代は、軍事力が経済力に比例しない非対称戦争の時代に入ったのだ。北朝鮮のGDPは日本の400分の1だが、その弾道ミサイルは大きな脅威である。

このように核の傘でも抑止できない脅威が高まっている現代では、安全保障を憲法問題に矮小化しないで、日米同盟を見直す必要がある。冷戦時代には米ソの核の均衡が保たれていればよかったが、今は北朝鮮の核攻撃に即応する「核の共有」が必要かも知れない。今では野党も日米同盟を否定していないので、憲法改正は見直しの必要条件ではない。

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