1/2日経<2018年の世界10大リスク、首位は「中国の影響力拡大」>第2位の「偶発的なアクシデント」の例としては、サイバー攻撃や北朝鮮問題などで偶発的な衝突が起きる危険性を挙げています(朝日新聞)。今年は中朝絡みで世界が揺れ動くという事です。日本国民も覚悟しておかないと。平昌オリンピックで浮かれることは、日本人はないでしょうけど、その後が危ないという認識は持っておいた方が良いと思います。鈴置氏の記事では、米国の北への核放棄の期限は2月末と言っていますが、平昌オリンピック・パラリンピックの開催期間はそれぞれ2/9~25、3/9~18です。ここまで来れば米軍の攻撃はあるとすれば3/19以降と読むべきか?1/5産経ニュースに<米韓合同演習は平昌パラリンピック終了後 マティス米国防長官>とありました。まあ、韓国軍は信用できませんので、合同演習時ではなく、米軍の単独行動で先制攻撃すると思います。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO25283350S8A100C1FF8000/
1/9日経朝刊<「18年最大のリスクは北朝鮮」 英国際戦略研究所長に聞く
2017年は北朝鮮や中東情勢の緊迫など、地政学リスクが国際社会を揺さぶった。18年の展望について、安全保障の分野に強い英有力シンクタンク、国際戦略研究所(IISS)のジョン・チップマン所長に聞いた。
英国際戦略研究所(IISS)のチップマン所長
――18年の国際社会を取り巻くリスク要因をどう分析しますか。
「典型的な地政学の観点で最も大きなリスクは、北朝鮮の紛争だろう。地域のパワーバランスを変えるリスクとしては中東でのロシアの台頭も懸念される。サイバー攻撃もグローバルな脅威で、政府機関と民間の双方が対策を優先課題に据えなければならない」
――北朝鮮情勢を巡る緊張緩和に向けて何が必要ですか。
「緊張を和らげるための第一歩は、緊張をやや高めることではないか。米国が国連安全保障理事会の支持を得て進める経済制裁はその一環で、北朝鮮の活動コストを引き上げるものだ。経済面で中国にできることがまだあると思う。日本や西側諸国が期待するほど影響力を行使していない印象だ」
――トランプ米政権による軍事行動の可能性をどうみますか。
「0か100であり、確率は推し量りようがない。明らかなのは、仮に北朝鮮がグアムであれ米領土に直接攻撃すれば、米軍が報復に動くリスクは高いということだ」
「多くの人が注目するのが中国の(軍事的な)出方だ。北朝鮮の指導者の受け入れがたい行動への対処に乗り出す必要性を認識する可能性も排除できない。もっとも、米中がどれだけ軍事面で強固な協力関係を築けるかにかかっている」
――日本は対北朝鮮で何をすべきでしょうか。
「ミサイル防衛能力の向上が大切で、米国と弾道ミサイル防衛システムの開発を続けるべきだ。中国は韓国や日本のミサイル防衛強化に難色を示すが、それを認めないなら、日韓が独自に抑止力を持つ必要性を模索することになる。中国は北朝鮮を説得できていないがゆえの結果として受け入れるべきだ」
――中東のリスクは。
「イランが支える勢力とイスラエルの衝突が主なリスクだ。イランはこの1年、過激派組織『イスラム国(IS)』との戦いを通じてイラクやシリア、レバノン、イエメンで影響力を広げた。イスラエルはその領域的な広がりだけでなく、イランが後ろ盾となる軍事勢力がミサイル能力を持つことも警戒している」
――米国はエルサレムをイスラエルの首都と認定しました。
「東西を分けずにエルサレム全体が首都だという考え方を支持しているのは米国だけだ。追随する国はほぼ出ないだろう。最大の問題点は、米国が果たしてきた中東和平プロセスを進める調停役が、他にいなくなってしまったこと。新たな役割を欧州諸国に期待する向きもあるが、まだ彼らはそこまでの外交政策を持ち合わせていない」
――ISは支配地域をほぼ失いました。テロとの戦いの行方は。
「テロはSF映画で顔を変え続けるモンスターのようなもので、見た目が変わっても同じ力を持ち続ける。支配地域が一掃されてもコピーされた手法が拡散し、戦い方を難しくする。18年もテロの脅威は続く」(聞き手はロンドン=篠崎健太)>(以上)
中国が何を言おうが、民族の生存権として脅威に対する抑止力を持つべきと考えます。今は米軍頼みで歯がゆい部分があります。日米同盟は自由・民主主義・法治・基本的人権の尊重と言った価値観を共有する同盟ですので、日本の軍事力強化と矛盾しません。
米国も国際社会の反応を見ているのでしょうが、金正恩とその手先の文在寅の時間稼ぎを許さないようにしてほしい。朝鮮半島の非核化で、一番良いのは金正恩の亡命、二番目がクーデターか金正恩の暗殺、三番目が戦術核を使った核施設の破壊、四番目が戦術核を使わない核施設の破壊となると思います。
米軍の攻撃があれば、日本の左翼メデイアとそれに洗脳されている人達が騒ぎ出すと思います。自分達の安全が脅かされているのに、意図的に知らない振りをしているのか、単なる間抜けなのかは別として。北からミサイルが飛んでくるか国内でテロが起きて被害者になって初めて気が付くのかも。或はそれでも「トランプが悪い」、「安倍が悪い」とか言いだすのでしょう。少しは自分の頭で世界の現実を見ろと言いたい。
1/8ぼやきくっくり<虎ノ門ニュース 青山繁晴氏>
(年末にハワイの太平洋軍司令部を訪問して、北への攻撃を)
「米軍は苦悩している。 やるべきだと思いつつも、民間人に犠牲を出さないというのはシミュレーションではできるが、果たして可能なのかと。最終的にはやっぱり大統領の決めることだと強調していた。」とあります。
http://kukkuri.jpn.org/boyakikukkuri2/log/eid2140.html#sequel
鈴置記事
金正恩委員長は新年の辞で「平昌五輪に代表団派遣の用意がある。核のボタンは常に私の机の上にある」と発言した(写真:AP/アフロ)
(前回から読む)
韓国と北朝鮮は最後の賭けに出た。北朝鮮ののど元を締めあげる米国の剛腕を、南北合作の「五輪休戦」でふりほどく作戦だ。
中国の支持も獲得
—1月9日午前10時から、南北朝鮮は閣僚級の会談を開き、北朝鮮の平昌(ピョンチャン)冬季五輪参加について話し合います。
鈴置:窮地に立った金正恩(キム・ジョンウン)委員長に、親北左派の文在寅(ムン・ジェイン)大統領が助け舟を出したのです。
文在寅政権は平昌五輪・パラリンピックに重なる時期――例年、3月初めごろから約2カ月間実施予定の米韓合同演習を延期し、それをテコに北朝鮮を対話に引き出す構想を温めていました(「平昌五輪『選手団派遣は未定』と言い出した米国」参照)。
平昌五輪・パラリンピックの期間中、米韓軍事演習も実施されず、北朝鮮の妨害活動も核・ミサイル実験も行われない――つまり「五輪休戦」を韓国の手で実現することで外交の主導権を握る、との目論見です。
中国の支持も得られると読んでいました。かねてから中国は米韓合同軍事演習の中断と、北朝鮮の核・ミサイル実験の中断を取引し、これをきっかけに米朝が対話に入る「双中断」を主張していました。
「五輪休戦」は五輪を名分にして、結果的に「双中断」を実現することになります(「『約束を守れ』と韓国の胸倉をつかんだ中国」参照)。そのため中国は、今回の南北会談が決まると直ちに「事実上の双中断である」と歓迎しました。
文在寅政権は政権維持のためにも「五輪休戦」を実現する必要に迫られていました。韓国民の間には、自分たちの運命を決する北朝鮮の核問題を米中と北朝鮮が仕切り、韓国は疎外されているとの不満が高まっていたからです。
2017年4月13日 |
文在寅氏、大統領選挙の討論会で「(米国が先制攻撃を準備する場合)北朝鮮にホットラインを通じて直ちに連絡し、挑発を中断するよう要請する」と発言 |
5月10日以降 |
「手続きが不透明」としてTHAADの追加配備を認めず |
8月15日 |
文在寅大統領、「朝鮮半島での軍事行動は大韓民国の同意なくして誰もできない」と米国の先制攻撃に反対 |
9月21日 |
「時期は未定」としつつ、800万ドルの対北人道支援を発表 |
9月27日 |
国連総会第1委員会で、北朝鮮の非核化を念頭にした「核兵器廃絶決議案」に棄権 |
9月28日 |
文在寅大統領、「戦時作戦統制権を早期に米国から韓国に移す」と国軍の日の記念式典で演説 |
10月31日 |
「中韓合意」を発表。THAADの追加配備などを否定する「3NO」とTHAADに関する協議の実施を受け入れ |
11月29日 |
文在寅大統領、北朝鮮のICBM発射直後に「米国が先制攻撃を念頭に置く状況にならぬよう防がねばならない」と発言、米国を牽制 |
12月14日 |
中韓首脳会談で「朝鮮半島の戦争は絶対に容認しない」などの「4大原則」に合意し、米国を牽制 |
12月19日 |
文在寅大統領、NBCに「平昌五輪期間中は合同演習を延期するよう米側に提案」 |
2018年1月2日 |
北朝鮮に五輪と南北関係改善を協議する高官級会談を提案 |
1月9日 |
南北高官級会談を実施へ |
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美女応援団で再び聾落
「五輪休戦」にかける政権の意図をはっきりと語っていた人がいます。大統領の本音を体現することから「影の外交部長官」と呼ばれる、文正仁(ムン・ジョンイン)統一外交安保特別補佐官です。
2017年12月27日、国民日報のナム・ドヨン政治部長に、以下のように述べました。国民日報は大手キリスト教会の指導者が創設した保守系の中堅紙です。
平昌を平和五輪にすることには2つの意味がある。1つは軍事的な衝突が起きないとの狭義の意味。もう1つは南北関係が改善し、北朝鮮と米国の対話も始まることで朝鮮半島に平和の機運が生まれるとの広義の意味だ。文在寅大統領は後者を望んでいると思う。
—南北関係が改善したからと言って、米朝対話が始まるものでしょうか。
鈴置:文在寅政権は「南北関係が改善すれば、韓国民の間に米国主導の『第2次朝鮮戦争』への反対機運が高まる。すると米国も『非核化』要求を降ろして北と対話せざる得なくなる」と計算しているのです。
平昌五輪・パラリンピックに南北が合同チームを作って参加したり、北朝鮮が「美女応援団」を送ってきたら、韓国の空気はかなり変わると思います。
美人ぞろいのうえ、きさくで人間らしさを感じさせる「美女応援団」。2002年の釜山アジア競技大会で初登場し、韓国人の北朝鮮観を大きく変えました。
反米感情の苗床に
—でも今や、北朝鮮は核を持っています。
鈴置:確かに2002年当時と比べれば、北朝鮮に対する感情はさほど好転しないかもしれません。しかし「美女応援団」を間近に見て「北にも我々の同胞が住んでいるのだ」と思い起こし「金正恩は悪い奴だが、罪のない同胞を巻き添えにしてまで北を攻撃しようとする米国も悪い国だ」と考える人が出てくるのは間違いありません。
北朝鮮と文在寅政権にとって、それで十分なのです。韓国で米国への反感をかきたてれば、米国の先制攻撃の可能性が減じると考えているのです。
2018年春までに北朝鮮が核を放棄しない限り、米国が先制攻撃するかもしれない、との懸念が韓国内で広まっています。それは北朝鮮も同じことでしょう。それを防ぐことが彼らにとって緊急課題なのです。
米国は無条件で対話せよ
—「反米感情により攻撃可能性が減じる」のですか?
鈴置:韓国が反対すれば米国は戦争しない、と思い込んでいる韓国人が未だに多い。米国は自身の安全を担保するために北朝鮮の非核化に動いている。というのになぜか、米国が韓国を救うために介入した「第1次朝鮮戦争」のノリで考えるのです。
それに平和ムードを醸し出せば、世界の世論も米国の強硬姿勢に厳しくなるのは間違いありません。世界のほとんどの国にとって、北朝鮮が核武装しようが関係ないのです。
「何と美しい光景だったろうか。米朝を含め世界中の選手が手に手をとった平昌五輪。トランプ(Donald Trump)大統領はこの平和の尊さを心に刻み、かたくなな姿勢を改めて無条件で北朝鮮との話し合いに応じなければならない」なんて主張する左派系紙が日本でも出ると思います。
なお、文正仁特別補佐官の発言は国民日報の「文正仁『南北関係が改善すれば、韓米同盟に過度の依存も不要に』」(1月1日、韓国語)で読めます。
同盟破棄は覚悟のうえ
—「米韓同盟は不要」とも発言したのですか?
鈴置:米韓同盟に関し、文正仁特別補佐官は以下のように語りました。
我々が同盟を結ぶのは北朝鮮の脅威があるからだ。南北関係が改善すれば同盟に恋々とすることもなくなる。
驚く話ではありません。文正仁特別補佐官はこれまでも米韓同盟の破棄を主張してきました(「『米韓同盟破棄』を青瓦台高官が語り始めた」参照)。
文在寅政権は民族至上主義者の集まりです。人権を蹂躙しようが国際ルールを破ろうが、どんな政権であろうと同族なら手を結ぶのが彼らの正義です。
民族至上主義者にとって米国は民族の団結を踏みにじる邪悪な存在であり「米韓同盟はない方がいい同盟」なのです。
そこまで腹をくくっているからこそ文在寅政権は、米国を怒らす「五輪休戦」に平気で乗り出したのです。
核武装に向け最後の時間稼ぎ
—南北が手を組んで米国の圧迫と開戦を防ぐ「五輪休戦」。意図がよく分かりました。
鈴置:もちろん韓国の保守は「危険な南北対話」を批判しています。朝鮮日報の社説「『核武装完成』の時間稼ぎの会談は許せない」(1月8日、韓国語版)の結論部分を翻訳します。
国際社会が構築した対北朝鮮制裁の原則を壊したり、一部の大統領の参謀が主張するように韓米合同演習を「核開発を凍結する」との約束と取引してはならない。
そうした形の南北合意は北朝鮮が核武装完成という目標に駆け上がる間、息をつかせるものであり、北朝鮮の対話提案の下心に踊らされるものである。
「五輪休戦」で時間稼ぎするうちに、北朝鮮は米国に届くICBM(大陸間弾道弾)を完成する。そうなったら韓国は終わりだ――との悲鳴です。
一方、左派系紙のハンギョレはこうした批判を先回りして封じ込めようとしました。1月5日の社説「『軍事演習延期』が南北会談成功への道」(韓国語版)は以下のように締めくくりました。
口さえ開けば「安保」を叫ぶ保守派が、朝鮮半島が対話局面に進むことを不安視して苛立つ様は見苦しい。南北対話の進展を邪魔しないでほしい。
意表を突かれたトランプ
—「五輪休戦」は予想されていたのですか?
鈴置:こんなにあっけなく「五輪休戦」に向け、世の中が動くと読んでいた人は少なかった。米政府の目には「『反米・親北・従中』に突き進む文在寅政権がまた小陰謀をたくらんでいる」と映っていた。演習延期の申し出など、まともに取り合いませんでした。
それに業を煮やしてのことと思います。12月19日、文在寅大統領は米NBCに「五輪期間中は合同演習を延期するよう、米国に提案した」と語りました(日経・電子版「なぜ韓国は『五輪休戦』に執着するのか」参照)。
「軍事演習を予定通り実施すると、北朝鮮がテロなどで平昌五輪を妨害する可能性がある。五輪が混乱すればNBCも大損だろう」と独占放映権を持つNBCを揺さぶったのです。
韓国政府の力ではトランプ政権を動かせない。そこでNBCの力を借りたと思われます。
しかし、これに対しても米国が見せたのは冷たい反応でした。ティラーソン(Rex Tillerson)国務長官は同日「演習の予定を変える、いかなる計画も私は知らない」と述べたのです。
当然です。合同軍事演習も北朝鮮に核放棄を迫る極めて重要な圧力の一端だからです。それに演習を延期しても、北朝鮮が五輪を妨害しないとの保証はありません。
結局、その3週間後の1月1日になって北朝鮮は「妨害しない証拠」として「五輪参加」を言い出したのです。
これはトランプ政権にとっても予想外の動きでした。大統領を含め、南北会談への評価は揺れ続けました。よほど意表を突かれたのでしょう。
メダルが取れない北朝鮮
—北朝鮮は五輪に参加するつもりはなかったのですね。
鈴置:2018年1月1日に金正恩委員長が参加を表明するまで「参加しない」というのが大方の見方でした。韓国が主宰する大会であるうえ、韓国選手がメダルを多数取ると見られています。半面、北朝鮮の選手で五輪の出場枠を得たのはフィギュアスケートのペアだけ。
北がこの五輪に参加すればあらゆる点で韓国との国力の差を見せつけられ、メンツを潰すのは確実です。出場枠を得たフィギュアスケートのペアも、期限までに出場の意思を示していませんでした。
文正仁特別補佐官も同じ理由から、北朝鮮が五輪参加を表明するとは想像していなかったようです。国民日報のインタビューで「参加できる選手も少ないうえ、成績も期待できないとなれば(五輪参加は北朝鮮にとって)政治的に負担が大きい」と語っています。
朝鮮日報の元旦の社説「北朝鮮の核『3か月期限説』の中で始まる2018年」(韓国語版)の書き出しは次のようなものでした。
「北朝鮮が核を搭載したICBMを完成するのにかかるのは後3カ月」と米CIAが分析したとの報道が出て1カ月経った。新年の春までに何らかの決着が付くということだ。
韓国を排除して米国と北朝鮮が朝鮮半島問題を協議することもあり得るし、軍事的に衝突することもあるだろう。ところが我々はこの危機を他人事のように見ている。
「韓国は無視されている」と嘆くこの社説がネット版に掲載された数時間後に、金正恩委員長が「五輪対話」を韓国に呼び掛けたのです。執筆した朝鮮日報の論説委員は頭をかいたことでしょう。
予想以上の圧迫効果
—なぜ、大方の予想に反して北朝鮮は五輪参加に転じたのですか。
鈴置:外から見る以上に、北朝鮮は心理的に追い詰められていたと思われます。米国は経済、軍事、外交面で圧迫を強めています。それを瞬時でも緩めたくなったのでしょう。メダルの数で韓国に負けるなどということは、もう小事になっていたわけです。
12月22日、国連安保理は北朝鮮向け石油精製品の輸出を90%削減するなどの追加制裁決議を採択しました(日経・電子版「安保理、北朝鮮への制裁強化 全会一致で決議採択」参照)。
北朝鮮に対する制裁に乗り気でない中国も、米国の圧力で決議案に賛成しました。この制裁強化ですぐさま北朝鮮が困窮するわけではありません。が、経済がじり貧になっていくのは確実です。
米軍の爆撃機「B1B」が北朝鮮周辺を飛び回るようにもなりました。「B1B」は金正恩暗殺用と見なされており、北朝鮮は神経を尖らせています(「金正恩をコーナーに追い詰めたトランプ」参照)。
12月4日から8日まで実施した大規模の空軍演習「ビジラント・エース 18」(Vigilant ACE 18)。F22やF35など最新のステルス機を含む230機が参加、実戦に近い形で実施されました。米国は「空爆だけでお前を潰せるぞ」と腕まくりして見せたのです。
12月5日には米国務省の報道官が「北朝鮮への先制核攻撃も辞さない」と、米政府系メディア、VOAに述べました(「『北に先制核攻撃も辞さず』と言明した米国務省」参照)。
金正恩政権は「核の報復攻撃を恐れ、米国は戦争を仕掛けて来ない」と国民を安心させてきました。しかし北朝鮮に対し核兵器を使って先制攻撃すれば、米国は反撃の可能性を極小化できます。
米国務省の「先制核攻撃宣言」を読んだ北朝鮮の要人は、腰を抜かしたことでしょう。多くの日本の安保専門家も「米国は核を使う覚悟も固めたのか」と驚きましたが。
「金正恩後」を米中が協議
—「米国は北朝鮮を攻撃できない。北の核施設は中国との国境地帯にあり、核汚染の被害が及ぶ中国が反対するからだ」と言う人がいます。
鈴置:北朝鮮の指導層はそうも期待していました。でも米国はその安心材料も軽く打ち砕いて見せました。
12月12日、ティラーソン国務長官はアトランティック・カウンシル(Atlantic Council)で演説しました。
その中で「金正恩体制の崩壊後の問題に関し、中国の軍・外交部と話し合っている」と明言したのです。原文は以下です。
the diplomatic and strategic dialogue that Secretary Mattis and I chair with our counterparts, and we actually have included Joint Chief of Staff Chairman Dunford, General Dunford, and his counterparts from China as well.
These are the subjects of these dialogues, and to try ? for us to gain an understanding of, first, how credible do we think the Chinese concern is about a mass flow of refugees across the border in the event of a regime collapse. China is taking steps to prepare for such an eventuality. I think it is something that they can manage.
「中国は難民の大量流入を恐れているが、それへの備えも進めており何とか処理するだろう」と、かなり具体的に意見交換をしていることを明かしました。
指導層に広がる動揺
米中は「金正恩後の北の核」についても相談しています。「もっとも重要なことは核兵器が、それを手にすべきではない人の手に落ちることであり、米中はその問題を話し合った」というのです。
the most important thing to us would be securing those nuclear weapons they’ve already developed and ensuring that they ? that nothing falls into the hands of people we would not want to have it. We’ve had conversations with the Chinese about how might that be done.
さらに「米軍が38度線(軍事境界線)を越えることはあるだろうが、すぐに戻ると中国に約束している」というくだりまであるのです。
We have had conversations that if something happened and we had to go across a line, we have given the Chinese assurances we would go back and retreat back to the south of the 38th parallel when whatever the conditions that caused that to happen. That is our commitment we made to them.
—「北朝鮮処分」を米中で話し合っているのですね。これを読んだ北朝鮮の指導層はショックを受けたでしょう。
鈴置:北朝鮮内部に詳しい人によると、経済・軍事・外交面の圧迫を受け、指導層に動揺が広がっています。そもそも、金正恩委員長に腹心の部下はいないとされます。30歳そこそこで突然にトップに立ったうえ、相次ぐ側近の粛清で「付いて行く人」がいないのです。
米国はそこまで見切ったうえで「核を放棄するのか、しないのか」と北朝鮮を問い詰めています(「米国務長官演説は『ハル・ノート』だ」参照)。
「最後通牒」の返答期限
—「最後通牒」の返答期限はいつですか?
鈴置:それは分かりません。ただ「2017年11月末までに、CIA長官がトランプ大統領に対し『あと3カ月で、ワシントンを含む米国の全都市を核で攻撃できる能力を北朝鮮が持つ』と報告した」との情報が流されました(「『北に先制核攻撃も辞さず』と言明した米国務省」参照)。
それが事実とすれば――韓国でもこの説が広く信じられるようになっていますが――どんなに遅くても、返答期限は2018年2月末と想像されるわけです。
先ほど引用した朝鮮日報の元旦の社説「北朝鮮の核『3か月期限説』の中で始まる2018年」(韓国語版)も、それを念頭に置いて書いています。
北朝鮮が「核を放棄する」と答えれば、米朝は「放棄する条件」の話し合いに進むことになります。「核をカネで買う」うえ、在韓米軍の撤収や米韓同盟の破棄などが取引条件になるでしょう。
でも、金正恩委員長が核を手放す可能性は極めて低い。その際、米国は「テロリスト集団が核を手放さないと明言した」ことを名分に先制攻撃をしかけるつもりと思われます。
「核を放棄しない」との返答を期に、北朝鮮船舶に対する臨検を実施、北の暴発を待って攻撃する手もあります。あるいは第2の「トンキン湾事件」(1964年)を起こすかもしれません。
—しかし、南北の間で対話が始まれば……。
鈴置:そこです。最後通牒への回答期限を誤魔化して先送りするためにも、南北対話は活用されていくと思います。
「我々は今、平和に関して話し合っているのだ。邪魔しないでくれ」と米国に言うつもりでしょう、北朝鮮と韓国は。声をそろえて。
●「五輪休戦」を巡る動き |
2017年11月29日 |
北朝鮮、ICBM「火星15」試射、「核武装を完成」 |
12月19日 |
文在寅大統領、米NBCに「五輪期間中は合同演習を中断するよう米国に提案した」 |
2018年1月1日 |
金正恩委員長、新年の辞で「平昌五輪に代表団派遣の用意ある。核のボタンは常に私の机の上にある」 |
1月2日 |
文在寅大統領、南北対話の速やかな実施を指示。韓国、北朝鮮に「高官級会談の1月9日開催」を提案 |
1月3日 |
北朝鮮、南北連絡チャネルを再開、五輪参加を協議と発表 |
1月4日 |
米韓首脳、電話協議で合同軍事演習の延期に合意 |
1月5日 |
北朝鮮、高官級会談の開催を受諾 |
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1月9日 |
板門店で南北高官級会談へ |
2月9-25日 |
平昌冬季五輪 |
3月9-18日 |
平昌冬季パラリンピック |
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(次回に続く)
武藤記事
金正恩が「新年の辞」で平昌五輪への代表団派遣に言及
北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長にとって、2018年は生き残りをかけた「節目の年」となりそうだ。
1月1日、金委員長は国営メディアを通じ、「新年の辞」を発表した。この中で、米国への威嚇と韓国との対話姿勢に言及、硬軟織り交ぜた内容にして、国際社会を惑わすことを狙った。
まず、金委員長は、米国本土全領域が核攻撃の射程内にあり、「核のボタンが私の机の上に常にある」と威嚇しつつ、核弾頭と弾道ミサイルの増産・実戦配備の加速を指示した。一方で、2月に開催される韓国・平昌オリンピックについて「心から成功を願う」と述べ、代表団を派遣する用意があるとした。ただ、南北関係の改善を進めるために米韓合同演習の中止などを要求することを忘れなかった。
しかし、結論から言えば、金委員長が核ミサイルの開発・配備にこだわる限り、国際社会の流れは止められないと思う。対する日米韓にとっての今年の課題は、いかに北朝鮮の政権交代を図っていくかということである。
金委員長の発言に対し、韓国の文在寅大統領はすぐさま歓迎の意向を示し、趙明均(チョ・ミョンギュン)統一相も高官級の南北当局者会談を9日に板門店で開催することを提案した。中国も、対話による問題の解決を進めるように促した。
一方で米国のトランプ大統領は記者団に「様子を見よう」と発言、対話姿勢に疑問を呈した。日本でも、「北朝鮮は、米韓関係にくさびを打とうとしているのではないか」との反応が見られた。 米国を始めとする国際社会は、決して北朝鮮の核保有を容認せず、これを前提とした対話には応じられないとの立場である。しかし文在寅大統領は、平昌オリンピックを契機として北朝鮮との対話を模索しており、これに目をつけた形で揺さぶりをかけてきたのだ。
金正恩発言に対し反応が分かれる国際社会
北朝鮮の戦略は、核ミサイルを保有することで「核保有国」として認めさせ、米国と対等に交渉して自国の安全を確保するとともに、経済制裁を取り下げさせるというものだった。
そのため、北朝鮮は昨年11月29日、米国本土全域を攻撃できるICBM「火星15」の発射実験に成功したとして、「核戦力の完成」を宣言した。
しかし、北朝鮮のそうした期待に反し、核保有を公言した後も米国主導によって経済制裁は一層強化され、米国は北朝鮮をテロ支援国家に再指定した。これにより、北朝鮮への輸出のほぼ全てが遮断されたほか、石油精製品も9割削減され、公海上での石油を始めとする輸出品の積み荷の移転取り締まりも厳しさを増している。
北朝鮮が韓国を狙い撃ちにして仕掛けた”揺さぶり作戦”
このまま行けば、早晩、北朝鮮経済は立ちゆかなくなることは目に見えている。そうした状況を打破しようとした”揺さぶり作戦”が「新年の辞」であり、国際社会の結束の中で最も揺らいでいて”軟弱”な韓国を狙い撃ちしたものなのだ。対話を進めることで時間を稼ぎ、あわよくば北朝鮮に対する国際的な包囲網を打ち破ろうという思惑があったものと見られる。
こうしたタイミングで、北朝鮮は初めて「文在寅大統領」と呼び、中断していた南北間の通話ルートを再開させた。ただ、米国からの報道によれば、近日中に再度、弾道ミサイルを発射する兆候もあるようで、韓国を盾に核ミサイル開発を続けるつもりなのかもしれない。
実は、今回の「新年の辞」のような揺さぶり作戦は、2014年に開催された仁川アジア大会の際にも行われた。
大会の閉会式に、当時、北朝鮮の「実力者3人組」だった黄炳瑞(ファン・ビョンソ)人民軍総政治局長、崔龍海(チェ・リョンヘ)労働党書記、金養建(キム・ヤンゴン)党統一戦線部長を突然派遣。韓国では、金寛鎮(キム・グァンジン)国家安保室長や柳吉在(ユ・ギルジェ)統一部長官などか空港に出迎え、南北対話に対する期待が一気に高まった。実際、南北間の超高官級接触の再開にも合意していた。
しかし、一行の訪問直後、北朝鮮は西海(黄海)北方境界線(NLL)での交戦や、非武装地帯(DMZ)でビラ射撃を行った。そしてその後、韓国の民間団体のビラ散布を問題視して高官級接触を一方的に白紙に戻したという過去があるのだ。
そうした北朝鮮の今回の提案は、あくまでも核保有を前提としたものであって、日米などにとっては受け入れられないもの。そればかりか、北朝鮮は米韓合同軍事演習の中止まで要求している。
これに対し韓国は、北朝鮮の非核化こそ求めているものの、それを対話の入り口とはしていない。また、米韓合同演習については、米国に対しオリンピック期間中を避けることを提案、米国はこれを検討中であると公表した。こうした韓国の姿勢が、北朝鮮に利用されたのである。
しかし、米国のティラーソン国務長官は、そうした事実は承知していないと語っており、マティス国防長官も演習を中止する考えはないと述べている。米国は、北朝鮮の脅威に備えるためには合同演習が不可欠だとの立場であり、北朝鮮の要求は到底のめるものではないのだから当然だ。
つまり、北朝鮮は姑息な手段で延命を図ろうとし、韓国がそれに乗ってしまったという構図。文政権には本当に困ったものである。
核保有を認めて”管理”するのは可能か
確かに、米国国内においても、北朝鮮の核ミサイル開発はもはや完全に止められないのだから、核の保有は認めつつ、対話を進めることでこれを”管理”することを検討すべきだとする意見がある。オバマ政権に近い筋がこのような見解を述べている。しかし、それは可能かなのだろうか。
安倍晋三首相は、「対話のための対話は無意味」だと語っているがその通りである。それは、これまでの北朝鮮の行動を検証してみれば分かることだ。 金委員長は、前述した仁川アジア大会のときのように、約束したことを簡単に反故にしており、ただの一度として守ったことはない。核施設の査察をIAEAに認めるとした約束も誠実に実行せず、最終的には反故にした。また、異母兄の金正男氏を大量破壊兵器となり得る猛毒のサリンで殺害した。
そのようなことをしてしまう指導者が、核を使わないという保証はない。まして、武器を密輸し、資金を確保することを”生業”としている北朝鮮が、核をテロリストに譲渡しないという保証などどこにもないのだ。
要するに「核を管理する」という主張は幻想でしかない。特に日本にとって、核ミサイルを保有する北朝鮮を米国が容認するということは、金委員長が国内で行っている横暴を国際社会の中でも許しかねないという意味で、安全保障上きわめて深刻な脅威となるだろう。
北朝鮮の核ミサイルがどこまで完成したかは、専門家の間でも意見の分かれるところである。しかし、筆者もこれまでダイヤモンド・オンラインに寄稿したように、金委員長としては、もはやこれを自ら進んで放棄することができないところまできていると見るべきだろう。いや、最初から放棄するつもりなど、さらさらなかったと考えるべきだ。これまで、北朝鮮の”良心”に期待してきたのは無駄だった、それによって一層、危険度が増してしまったと言えるのだ。
これに対し、米国を始めとする国際社会の大勢も、国連制裁などで北朝鮮に対する包囲網を狭めてきており、北朝鮮との対立は核ミサイルの放棄なくして反転することはない。要するに、北朝鮮の核ミサイル問題を巡る対立は決定的で、もはや止めることができないのである。
米軍の軍事行動による犠牲を最小限にする擦り合わせが必要な時期
そこで浮上するのが米軍による軍事行動である。
日本国内には、もし北朝鮮を非核化するために米軍が軍事行動を起こした場合、犠牲が甚大となる可能性が高いので、安倍総理は「朝鮮半島では絶対に戦争を起こさせない」とする文大統領と一緒になって、トランプ大統領の軍事行動を制止するべきだとの議論がある。
筆者も、軍事行動は非常に大きな犠牲を伴うと考えており、できる限り避けるべきだと考えている。しかし、だからと言って、北朝鮮の核ミサイル開発を容認してもいいと考えているわけではない。金委員長が国内で行っている専制政治の余波を、日本が受けることだけは絶対に避けなければならない。
今のところ米国は、北朝鮮に対する軍事行動には慎重な姿勢を見せている。だが、軍事行動を起こす確率は徐々に高まってきているというのがおおかたの見方だ。軍事行動は最後の手段だろうが、決断された時には、現実問題として止めるのは難しいだろう。
だとすれば、軍事攻撃以外の選択肢にいかなるものがあるか、それを尽くしたのか、仮に最悪、軍事行動が不可避な場合、わが国への犠牲をいかに最小限にとどめるかといったことを、米国と擦り合わせざるを得ない時期に来ているのかもしれない。
もう一つの選択肢として、直接軍事力を使わず金正恩体制を変えるという方法があり、今後、その動きが強まるのではないかと考える。そして、こうした流れに、中国がすでに組み込まれているのではないか。
ティラーソン米国務長官は昨年12月22日講演の講演で、半島有事の際の難民対策や核兵器の管理について中国と協議している、仮に米軍が38度線を越えて北朝鮮に侵攻した場合でも、条件が整い次第、撤退することを中国に「確約」すると伝えていると述べた。
米中の間で議論が始まっている北朝鮮有事への対応
こうした発言は、米中の間で北朝鮮有事への対応について話し合いが始まっているからこそ出てくるもの。中国では、「米国の北朝鮮攻撃不可避論」や「中国の北朝鮮介入論」が徐々に高まっていると聞く。
また、中国共産党関係者からは、有事の際に中国軍が北朝鮮領内に入り、核ミサイル施設を制圧し管理するとの発言もあった。中国の習近平国家主席が昨年夏ごろ、すでに吉林省に難民キャンプ5ヵ所の設置を指示したとの情報も伝えられている。
中国は、米国に北朝鮮との対話を促しながら、一方でこうした現実的な対応も始めている。そうした流れは、習主席の特使として北朝鮮を訪問した宋濤(そう・とう)政治局員が、金委員長との面会すら実現しなかったあたりから強まったと見られる。
北朝鮮で政権交代を促すためには、あくまでも米国の軍事的な圧力が背景となるだろうが、最終的にどのような決着になるかは米中の話し合い次第だ。米中がそろって介入することで、北朝鮮の反撃能力を取り除くことができれば、日本の犠牲は最小限にできるだろうし、米国が北朝鮮を崩壊させることが確実になれば、中国が先に手を下すかもしれない。
また、米国や中国が直接、手を下すのではなく、朝鮮人民軍のクーデターによって政権が交代する方がより犠牲は少なくなるであろうし、その方が望ましい。これまで、北朝鮮におけるクーデター計画は未然に防止されてきた。
しかし、米国ないし中国が後方支援するとなればクーデターを行おうとする動きが出てくるかもしれないし、成就する可能性も高まろう。秘密裏にクーデターを支援するという場合、米国よりも中国の方が協力しやすい面もあるだろう。
日本はタブーを捨て現実的に対応するべき
日本は、これまでこうした議論は避けてきた。しかし、それで本当にわが国の国民の安全を守れるのか。そろそろタブーを捨てて、現実的に対応することが国益に資するのではないか。状況さえ把握していなかったという事態は最悪である。
そしてもう一つ。日本にとって重要なことは、米中の話し合いが先行することがないよう、米国との連携を強化しつつ、米中の連携を後押ししていくことだろう。
文大統領も、こうした選択を迫られた時に影響力を行使できるよう、米中の首脳といい関係を結んでおくべきなのだが、実際にやっていることはこれに逆行するもの。日本に対しても、慰安婦問題などで挑発的な行動に出ている。日米韓の連携が最も重要な時期に何を考えているのかと思うが、それが現実である。韓国とどのような協力が可能か、今しばらくは様子を見るしかない。
こうした動きが本格化するのは、中国の人事などが固まる3月の全国人民代表大会(全人代)以降だろうが、残された時間は少ない。今すぐにでも日本として現実的に取り得る対策は全て整えていく必要がある。
(元在韓国特命全権大使 武藤正敏)
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