『「民族の祭典」に酔いしれた韓国人 南北首脳会談の批判は許されなかった韓国メディア』(5/2日経ビジネスオンライン 鈴置高史)、『トランプ氏、「途中退席」覚悟で米朝首脳会談へ 金正恩と文在寅に「空爆カード」を取り上げられ、目算狂う』(5/2日経ビジネスオンライン 高濱賛)について

漢民族の阿漕さ・嘘つきさを内蒙古出身の楊海英氏が『「中国」という神話 習近平「偉大なる中華民族」のウソ』に書き表しています。今で言うハニトラと賄賂にトルコ民族のルーツも誑かされたという事です。ドイツは中国との関係が昔から深く、中国が喜びそうなことをしてきました。

「ウイグル人の伝説的な父祖の地はモンゴル高原にある。モンゴル高原の中央部、ホシヨ―チャィダムという草原に石碑が一体、立っている。世界の学界では「突厥(トルコ)の碑文」として名高い。八世紀半ばに建立した石碑には次のようなシナとシナ人が登場する。

シナの民はその言葉甘く、その絹柔らかき。甘き言葉と柔らかき絹を以て来て欺き、遠き民を近づけてありき、彼ら。甘きその言葉に、柔らかきその絹に欺かれて、多きトルコの民、死せり。

これは、トルコの先人が「あまねく子孫たち」に刻み残した警世の名言である。古代トルコ系の人々が、美辞麗句と豪華な絹布で周辺の民族を騙すシナとシナ人を邪悪な存在だと理解していた証左である。厳密にいうと、この碑文が語る「シナ人」も中国人ではなく、「中国化した鮮卑拓跋系の人々」を指す。唐が、鮮卑拓跋系の王朝だったことは、今や常識である。だが、鮮卑拓跋系であっても、「シナ化」することは、内陸アジアの諸民族に極端に嫌われていたのも事実である。そうした感情を私たちは碑文から読み取れよう。 」(P.200~201)、「「一帯一路」と「シルクロード幻想」

ニ〇一七年五月に、中国の首都北京で「一帯一路フォーラム」が開催された。世界ニ九カ国の首脳をはじめ、一三〇カ国からの一五〇〇人が参集したと報道されている。「一帯」とは「アジアとヨーロッパを繫ぐシルクロード経済べルト」で、「一路jは「南シナ海やインド洋を結ぶニ一世紀海上シルクロード」だと宣伝されている。

このいわゆるシルクロードは単なる幻想に過ぎない、と歴史学者は以前から批判してきた。ことの発端は一九世紀末、ドイツの地理学者リヒトホーフエンが「ザイデンシユトラーセン」(絹の道)と書いてしまった「失敗」からこの空想は生まれた。中国特産の絹が西方ローマの貴人たちの体を飾っていたらいいな、との天真爛漫な発想だった。しかも、 リヒトホーフエンは中国の土地•物産を遅れてきた帝国ドイツが如何に手に入れるかについて、調べていた。西洋列強の新参者であるドイツの中国進出を促そうとして、この実態にそぐわない空論を出しただけである。以来、シルクロードというキャッチフレーズは各国の読書人に持てはやされ、中でも特に日本人はありもしない「絹の道」に壮大なロマンを抱くようになった(杉山正明『遊牧民から見た世界史–民族も国境もこえて』一九九七年)。 当の中国人は、自国の絹が洋の西にまで運ばれていたという美しい夢を見てこなかったし、東西文化の交流に関するユニークな学説も出したことはなかった。自国を天下の中心と思いこむ中国人はそもそも異国にさほど関心を示してこなかったからだ。」(P.215~216)

次はFacebookより取った写真。中国人が平和を愛する民族と誰が信じますか?おれおれ詐欺と同じで騙される方が悪いと思わなければ。ただ気になるのは、横断幕は繁体字(台湾・香港で使用)で書かれています。簡体字(大陸で使用)では沖縄県民が分からないと思ったのか?左上には簡体字で「米尔社区」と書かれていますから、中国国内向けに報道するために作ったのでしょう。裏で中国が金を出しているでしょう。「沖縄は中国のモノ。最初は自治区を作って」と中国国民に刷り込むためと思われます。姑息なやり方です。

こちらも4/30facebookから

贾国希‎ 中國公義民主黨=賈国希 中国公義民主党

中共49年后干了四件大事:中共は中華人民共和国建国の1949年以来4大事件を引き起こした。
一,以革命的名义杀人 革命の名を以て人を殺した
二,以公有名义抢劫  公有の名の下、掠奪をほしいままにした
三,以改革名义分赃  改革を標榜して不当な権利の分配をした
四,以维稳名义封口  安定を大義名分に口封じをした
还有很多,篡改历史,毁灭文化,砸毁公检法,拆解汉字,计划生育。。。中共的罪行1001夜也说不完。=まだまだ沢山ある。歴史の改竄、文化破壊、公安と人民裁判による法の毀損、簡体字の使用、一人っ子政策等中共の罪悪は千一夜でも語り尽くせない。

共産主義者の金と共産主義シンパの文が会ったことがそんなに嬉しいことなのかが小生には分かりません。朝鮮戦争で亡くなった4万とも言われる米軍の英霊は何と見るかです。朝鮮半島の自由と民主主義を守るために彼らは戦ったのでは。今のやり方はそれに逆行しているように見えます。日本は『非朝鮮半島三原則』で行きたいですが、安全保障と拉致問題とがあり、完全に無視を決め込むわけには行きません。

ハンギヨレと言うのは左翼新聞なので朝日新聞同様、平気で嘘がつける新聞です。嘘は左翼の有力な武器で、プロパガンダとして使います。でも騙される方も騙される方です。真贋を見抜く鑑定眼を持たなければ。

文は気に入らない報道をしたら免許取り消しするぞと脅したらしいですが、松本龍が震災復興大臣の時にメデイアに言ったのと同じです。左翼は権力を持つと自分に都合の悪い報道はさせないようになるという事です。一方、今の日本のオールドメデイアの報道の偏向ぶりは目に余るものがありますが。事実に基づく自由な報道の保証こそが大切と考えます。

高濱氏の記事では北の核放棄だけでなく、イランとの核合意破棄も交渉中とのこと。両方とも非核化の道を歩ませねば。オバマが宥和政策を取ったのがまずかったと思っています。北の核放棄ができなければ日本も核保有をしなくては。憲法改正と違い法的問題はありません。政治的決断だけです。

鈴置記事

南北首脳会談の様子を報じるソウル駅の街頭テレビに見入る人たち(写真:ロイター/アフロ)

前回から読む)

韓国メディアは南北首脳会談を「民族の祭典」としてうたいあげた。批判は許されなかった。

平和を開く板門店宣言

—4月27日に板門店で開かれた南北首脳会談。韓国紙の反応は?

鈴置:左派系紙は手放しで褒めあげました。ハンギョレの社説の見出しは「板門店の春、平和・繁栄の時代開く」(4月28日、日本語版)。韓国語版も全く同じです。

ハンギョレは文在寅(ムン・ジェイン)政権に近く、北朝鮮との関係改善を重視する新聞です。日本語版からポイントを引用します。

両首脳は分断線を手を握って共に越え、また乗り越えた。全世界が見守る中で、予定になかったパフォーマンスを通じて分断を越えて平和と統一に進もうという南北の意志を明確に示してくれた。

両首脳は「板門店宣言」を通じて、朝鮮半島にこれ以上戦争のない新しい平和の時代が開かれたことを明らかにした。

今回の首脳会談は11年ぶりに再び開かれた南北首脳会談という意味を越え、朝鮮半島の平和定着に劇的な転換点となる事件として記録されるに値する。

……と、まずは「歴史的事件だった」と強調しました。次のくだりでは「金正恩(キム・ジョンウン)委員長が率直な人であり、北朝鮮を正常な国家へと導いている」と訴えました。

金委員長の夫人リ・ソルジュ女史が、晩餐で文大統領とその夫人のキム・ジョンスク女史と同席したことも正常な国家とする意志をはっきり示したものと言えるだろう。

金委員長は率直に破格の姿で登場した。文大統領と会った瞬間、軍事境界線を共に行き来したことからして破格的だった。金委員長が北の道路事情は良くないということを率直に打ち明けた姿も印象的だった。

実力以上の虚勢はなく、足りない点は足りない通り話すことができる姿は、信頼を植え付けることに役立つ。偽りのない姿ほど相手を信頼させるものはない。

信頼できる金正恩

—金正恩氏が「いい人」に見えてきますね。

鈴置:北朝鮮は「非核化」の約束を何度も破ってきた。当然、金正恩委員長が何を約束しようが信用されません。それに対しハンギョレは「約束を破った祖父や父親とは異なるタイプの人物だ」と強調したのです。このくだりの後には、やはりというべきか、以下の文章が続きました。

焦眉の関心事であった朝鮮半島の非核化の点で両首脳は「完全な非核化を通じて核のない朝鮮半島を実現するという共同の目標を確認した」と発表した。

これまで北朝鮮は非核化の意志はないのではないかという話が出ていたが、今回の宣言を通じてこのような疑問ははっきりと払拭されることとなった。

金正恩委員長は信頼できる。だから非核化の約束も信用できる――という論理展開になっているわけです。北と南の当局が仕組んだ「平和ショー」の筋書きをなぞったと言われても弁解できません。

1つの証拠が「軍事境界線を手を握って共に越え、また乗り越える、予定になかったパフォーマンス」という部分です。

普通の記者なら「このパフォーマンスは予定になかったと政府は言うが、予め発表しなかっただけだろう。そちらの方が驚きを持って迎えられ『平和ショー』が引き立つからだ」と考えます。でも、ハンギョレは「予定になかった」と政府発表そのままに書いたのです。

政権のラッパ手

—そんな簡単なトリックに韓国人は騙されるのですか?

鈴置:この記事を素直に信じた人もいました。韓国語版の記事には「『朝鮮半島の春』となり、世界平和の『太平聖代』が来ることを祈ります」と書き込んだ読者がいました。

一方で、「平和の春だって?!」「権力の犬」「政権のラッパ手」といった厳しいハンギョレ批判も書きこまれました。

野党第1党で保守派の自由韓国党党首、洪準杓(ホン・ジュンピョ)代表は自身のフェイスブックでこう呼び掛けました。

南北首脳会談は金正恩と文在寅政権が合作した南北偽装平和ショーにすぎない。

北朝鮮の核廃棄は一言も引き出せず、金正恩が声をあげたものをそのまま受け入れて書いたものが南北首脳会談の発表文だ。

偽装平和ショー

—「偽装平和ショー」とは?

鈴置:まず、洪準杓代表が指摘した通り「板門店宣言」では北朝鮮の核廃棄は明確にうたわれなかった。それどころかこの宣言は米国の核廃棄要求をそらし、時間を稼ぐための術策に満ちたものでした。

韓国政府が発表した日本語の報道資料「韓半島の平和と繁栄、統一に向けた板門店宣言」から、関係する部分「3―④」を引用します。

南と北は、完全な非核化を通じて核のない韓半島を実現するという共通の目標を確認した。

北は、北側が取っている主動的な措置が韓半島の非核化のために非常に意義があり、大きい措置だという認識を共にして、今後それぞれ、自己の責任と役割を果たすことにした。

南と北は、韓半島の非核化のための国際社会の支持と協力を得るために積極的に努力することにした。

「核のない朝鮮半島」という目標を実現するために国際社会の協力を得る――つまり、北朝鮮を非核化したいなら、米国も韓国との同盟を破棄せよ、との宣言です(「『文在寅の仲人口』を危ぶむ韓国の保守」)。

「北朝鮮の非核化」ではなく「朝鮮半島の非核化」と表現したのがミソです。韓国も米国との同盟により核の傘を持っている。それを捨ててこそ半島全体が非核化できる、との含意があります「中朝首脳会談、『米韓同盟揺さぶりで一致』」参照)。

これを巡る話し合いに入れば時間がかかります。米韓同盟廃止という重大事に関わりますから、韓国内だけでも結論はすぐにはまとまりません。その間に、北朝鮮はちゃっかり核武装を進めるでしょう。

南北共闘を明文化

—要は「時間稼ぎ」ですね。

鈴置:その通りです。北朝鮮と韓国が仕掛ける「段階的な妥結」というワナの一環です(「米朝首脳会談は本当に開かれるのか」参照)。

板門店宣言のこの部分は「北朝鮮の時間稼ぎに協力する」と韓国が差し出した証文でもあります。「北側が取っている主動的な措置」とは4月20日に朝鮮労働党が採択した「決定書」を指します。

これは「核・ミサイル実験の中止」宣言として報じられましたが、本質は米国に対する「北朝鮮を核保有国として認めよ」との要求です(「しょせんは米中の掌で踊る南北朝鮮」参照)。

「板門店宣言」の「南北はこの措置の意義を認め、それぞれが役割を果たす」というくだりにより、韓国は「北の対米要求に賛同する」と約束したのです。

南北の「時間稼ぎ共闘」を明文化したのです。米朝首脳会談に備え、北朝鮮は交渉力を増したつもりでしょう。

一方、米国は韓国をはっきりと北朝鮮の使い走りと見なしたはずです。親米派の洪準杓代表が「板門店宣言」を「金正恩の言いなり」と非難するのも当然です。

北朝鮮はまともな国家に

—保守系紙も激しく、今回の首脳会談を批判したでしょうね。

鈴置:それが、そうでもないのです。中央日報の社説の見出しは「文在寅―金正恩、非核化の大長征の扉を開く」(4月28日、日本語版)。韓国語版も全く同じで、見出しから手放しで称賛したのです。

本文を見ても今回の首脳会談に対する批判らしい批判はありません。「金正恩委員長から具体的な非核化発言を引き出せなかった」くらいです。それどころか、ハンギョレ同様、「北朝鮮がまっとうな国家の道を進んでいる」と書いたのです。

何よりも今回の会談で注目されるのは、北朝鮮が正常国家のイメージを得ることになったという点だ。

金正恩委員長は残忍な独裁者、狂ったロケットマンから、開放的で率直でユーモアもある合理的イメージを得ることになった。

双方の夫人までが同席した夕食会で北朝鮮は正常国家にさらに一歩近づいた。

峰打ちで叩く

東亜日報の社説も見出しは「北『完全な非核化』 新しい歴史、初めのページを書いた」(4月28日、韓国語版)でした。

見出しだけだと、左派系紙のハンギョレと変わりません。本文では「(板門店宣言の『非核化』が)国際社会が強調する『完全で検証可能で不可逆的な非核化(CVID)』であるかは分からない」などと批判はしました。

ただ「板門店宣言」が時間稼ぎに使われるとの本質的な批判には踏み込みませんでした。急所は突かず、峰打ちで叩いている感じです。

朝鮮日報の社説(4月28日、韓国語版)の見出しは「北の核は『米朝』に任せ、対北支援に本腰入れた南北首脳会談」と批判をにじませました。

本文でも問題点は指摘しています。しかし「北の核廃棄に対し、本当に深い論議があったかは疑問だ」などと微温的な批判に留めました。これも峰打ちです。

洪準杓代表が指摘した「偽装平和ショー」に関しては触れませんでした。韓国保守を代表するメディアを自負し、左派政権の国益毀損を舌鋒鋭く追及するのが朝鮮日報なのですが……。

独裁時代がよみがえった

—韓国紙は激しい言葉を使ってののしることが普通なのに……。

鈴置:4月28日の東亜日報はもう1本、社説を載せました。「『政府発表を基に報道せよ』…『新報道指針』を下した放審委」(日本語版)です。以下が骨子です。

放送通信審議委員会(放審委)は4月27日、南北首脳会談の取材報道と関連して、「政府発表を基に報道せよ」という注意事項を発表した。客観性、出所明示、誤報訂正のための特別モニタリングを実施したいとしたうえで強調した内容である。

事後審議機関である放審委が言論の自由を萎縮させる事前介入の脅しをしたことになる。過去の独裁時代の「報道指針」の陰湿な亡霊がよみがえったようだ。

放審委の傲慢な措置は、自分たちが行う審議・制裁が3~5年ごとに行われる放送局の再許可承認のいかんに直結されることを意識したものである。

朝鮮日報も同じ趣旨の社説「放審委、今や報道指針まで」(4月28日、韓国語版)を載せています。

要は、文在寅政権が「南北首脳会談で気に入らない報道をしたら、免許を取り消すぞ」と放送局を脅したということです。

韓国の保守系大手3紙は放送局を持っていて、収益の柱になりつつあります。政権は免許改廃という武器を振り回すことで放送局に加え、保守系大手紙も脅したのです。

TV朝鮮を廃業させろ!

—保守系紙の奇妙な弱腰。この脅しに怯んだのですね。

鈴置:韓国のメディア関係者ではそう見る人が多い。ちょうど与党議員の不正疑惑報道に絡み、青瓦台(大統領府)が朝鮮日報系のテレビ「TV朝鮮」を存続させるべきか否かの検討に入ったところでした。

聯合ニュースの「『TV朝鮮の許可取り消し』 青瓦台への請願 20万超す」(4月23日、韓国語版)によると「虚偽、誇張、ねつ造報道により、国民の知る権利を毀損するTV朝鮮の廃業を請願する人が1カ月で20万人を超えた。青瓦台は法律に基づき請願に回答することになった」というのです。

保守派は、この20万人が政権の息のかかった20万人と見ていますが。

—文在寅政権はどんな手を使ってでも、南北首脳会談や板門店宣言の怪しさを指摘されたくないのですね。

鈴置:首脳会談はすぐに透けて見える薄っぺらい台本を基に演じていますので、誰かが「猿芝居ではないか!」と叫んだらお終いなのです。ただ、国民の中にも「猿芝居とは思いたくない人」がいるのも事実です。

韓国人なら、できれば「金正恩は本当はいい人なのだ」「彼は本気で核兵器を捨てる気だ」「平和が来る!」と信じたい。

世論調査会社、リアルメーターが4月27日に「北朝鮮の非核化と平和定着の意思に関し、会談前と後で見方が変わったか」を聞きました 。

会談前から「信頼していた人」は14.7%。それが会談後には64.7%に急増しました。一方、「信頼しない人」は78.3%から28.3%に激減しました。

そんな読者を抱える新聞社は「南北首脳会談はペテンだ」と決めつけにくい。保守系紙の筆の甘さは自主規制からも来ていると思います。

「民族」が12回

—甘い現実認識が広がれば、国益を毀損します。

鈴置:「民族の敵」のレッテルを貼られたくないとの懸念も、韓国メディアにはあると思います。植民地支配を受けたうえ、内戦で分裂したままの朝鮮半島では「民族」が極めて重要なキーワードです。

民族主義が強すぎて戦争を起こしたと反省する日本人とは反対に、韓国人は「民族に対する忠誠心のない指導者が恥ずかしい歴史を作ってきた」と考えています。

文在寅政権は今回の首脳会談を「民族の祭典」と位置付けた。「板門店宣言」は日本語ベースで約2000字。その中に「民族」という単語が12回、「同胞」は2回出てきます。

南北首脳会談は民族の和解劇として演出されたのです。北朝鮮とスクラムを組んだ韓国はこの先、奈落の底に落ちるかもしれない。でも、今この瞬間は、人々は「民族の団結」に酔っていたい。

そんな時、メディアが「猿芝居」と批判したら「民族の反逆者」の烙印を押されかねないのです。そして政権を批判するメディアを失った韓国という国は、どんどん北朝鮮側に寄って行くことでしょう。

(次回を読む)

高濱記事

—ドナルド・トランプ米大統領は南北首脳会談をどう評価していますか。

高濱:トランプ大統領は、南北首脳が会談で朝鮮戦争終結に向けた決意を示し、朝鮮半島の「完全非核化」で合意したことを前向きに評価しています。そして6月初旬までに予定されている米朝首脳会談で非核化を実現したいとの意向を改めて表明しました。

(写真:AP/アフロ)

しかしその一方で「南北朝鮮にしてやられた」と思っていることは隠しきれません。トランプ大統領は28日、こう述べています。「米朝首脳会談で私は前任者たち(歴代大統領)のようにうまく操られることだけはしない。オーケー? 必ずや取引(deal)を成功させてみせる。できなかったらどうする。それでも結構(fine)だ」

今回の南北首脳会談は歴史的出来事だと世界中が称賛しています。が、南北朝鮮統一問題にしても「非核化」にしても、具体的にどうするのかは「板門店宣言」に書かれていません。ロードマップがあるわけではありません。

金正恩・朝鮮労働党委員長は、その「板門店宣言」を引っ提げてシンガポール(米朝首脳会談の開催地として有力視されている)に乗り込みます。もっともトランプ大統領は4月30日に「開催地は板門店が象徴的」などとツイートしており、そうなると金委員長は板門店を再訪問することになります。

南北首脳会談は儀礼に彩られたパフォーマンス

トランプ大統領の今の心境はこうでしょう。「金正恩は、同胞愛を強調する儀礼に彩られたエモーショナルなパフォーマンスを首脳会談の場で見事にやってのけた。金王朝の存続を韓国に約束させ、非核化の中身は懐に秘めたまま、文在寅と示し合わせて、米国の軍事力行使を封印してしまった」(米主要テレビのコメンテイター)。

—どうして、米国の軍事力行使を封印したことになるのですか。

高濱:南北朝鮮の指導者が「もう戦わない」と宣言してしまったからです。朝鮮半島の直接の当事者が無条件で「不戦宣言」をしてしまったら「助っ人」である米国は、「サージカル・アタック」(核施設だけを狙う限定的攻撃)などはできなくなってしまうではありませんか。

AP通信でピョンヤン支局長を務めるエリック・タルマージ氏はこうコメントしています。「金正恩は、トランプにこう言い放つでしょう。<私は文在寅と朝鮮戦争終結に向け、当事者の南北朝鮮、米国、中国と四者で話し合おう、朝鮮半島の『完全非核化』(complete denuclearization)を実現しようということで合意した。米国はどうする>」。

「空爆を含め、あらゆる選択肢を保持して、保有している核の完全放棄を金正恩に要求しようと目論んでいたトランプにとって、米朝首脳会談の前に切り札の一枚を取り上げられてしまったようなものだ」

(”AP Analysis: Korea summit put nuclear ball in Trump’s court,” Eric Talmadge, AP, Washington Post, 4/28/2018)

—トランプ大統領は米朝首脳会談にどう臨むのでしょう。

高濱:トランプ大統領は、これまで口を酸っぱくしてこう言ってきました。「北朝鮮に核ミサイル開発を中止させるだけでなく、すでに保有している核兵器やミサイルも放棄させる。北朝鮮がそう確約しなければ首脳会談などやっても意味がない」。

ですから首脳会談をやるからには「核兵器放棄」の約束を北朝鮮から取り付けようとするでしょう。

米国内では、強面なトランプ大統領への期待が、かつて北朝鮮の核開発阻止交渉を担当した専門家たちからも高まっています。バラク・オバマ政権下で国防副次官補だったエイブラハム・デンマーク氏は、「金委員長に会うからには口約束だけでなく、核放棄に関する詳細なロードマップを提示させるべきだ」と注文をつけています。

(”Why Trump’s Boasts About the Korea Summit are Premature,” Robin Wright, New Yorker, 4/27/2018)

ジョージ・W・ブッシュ政権下で朝鮮半島担当特使として「朝鮮半島エネルギー開発機構(KEDO)」に参加したジョセフ・デトラニ氏は、こう進言しています。「非核化のために与える猶予は数年といった長い期間ではなく、半年や1年以内が好ましい。核放棄の検証では、あらゆる核兵器、核施設、核施設勤務の科学者などを申告させる必要がある」。

(参考:米元特使、南北首脳会談評価も「非核化の具体化が課題」、NHK、4/28/2018)

北朝鮮はこれまで膨大なカネとエネルギーを使って核開発、ミサイル開発をしてきました。ですからトランプ氏の要求をすんなり受け入れるかどうか。米朝首脳会談は難航し、決裂するかもしれません。トランプ大統領は会談の途中、机を蹴って退席する可能性が十分ありそうです。

イラン核合意からの離脱、期限は5月12日

—決裂が最初から分かっていてもトランプ大統領は金委員長との首脳会談に行くのですか。

高濱:トランプ大統領は3月21日、米朝首脳会談の延期を示唆しました。4月19日には「実りのない会談なら行かない」と発言。これまでにも何度も否定的なことを言っています。トランプ政権内部ではジョン・ボルトン国家安全保障問題担当大統領補佐官などが米朝首脳会談に否定的なようです。

しかしトランプ大統領としては、この期に及んでキャンセルなどできないでしょう。南北朝鮮にここまでお膳立てされてはやらざるを得ません。世界の目がトランプ大統領の一挙手一投足に注がれています。

実は現在、トランプ大統領は、二つの「潜在的核保有国」と核放棄交渉をやっているのです。一つは北朝鮮。もう一つはイランです。

トランプ政権は4月30日、イランとの間で2015年に結んだ核合意からの離脱を示唆しました。5月12日までに判断する意向です。4月に仏独両首脳が相次いで訪米したのはトランプ大統領に離脱を思いとどまらせるためでした。

国務長官に正式就任したばかりのマイク・ポンぺオ氏が急遽、ブリュッセルの北大西洋条約機構(NATO)に向かったのも、イラン核合意からの離脱を欧州首脳と最終協議するためです。

米国は依然、北朝鮮の「嘘つき」を警戒

—南北首脳会談後、文在寅大統領はじめ韓国国民は金正恩氏に親近感すら持っているように見えます。米国民の金正恩観も変わりましたか。

高濱:米国民はそれほどエモーショナルじゃありません(笑)。それにコリアン同士の和解ドラマに米国民がそれほど感情移入することもありません。もっとも在米コリアンたちは大騒ぎですけど。

それに、ついこの間まで金委員長は「大陸間弾道ミサイル(ICBM)で米本土を攻撃する」と言っていたのですから。米国人の金正恩観が激変したとは思えません。

トランプ大統領の人物評価は猫の目のように変わります。かっては金委員長を「ロケットマン」などと揶揄していましたが、最近では「立派な人物だ」と言い出しています。米朝首脳会談が決裂すれば、金委員長に対してまた罵詈雑言を吐くかもしれません。

—金委員長に対する米国の警戒心はまだやわらいではいないのですね。

高濱:実は米情報機関は南北首脳会談の前後、北朝鮮が<嘘つき>であることを立証する事実を掴んでいます。ロイター通信は、米情報機関筋の話としてこう報じました。「金委員長が韓国特使に対し『核実験場を閉鎖した』と告げていた豊渓里の施設の一部が閉鎖されないまま残っている。今も使用可能だ」

(”North Korea test site still usable, closure easily reversed–U.S. Intelligence,” Jonathan Landay and John Walcott, Reuters, 4/28/2018)

もっともこの報道の後、北朝鮮は閉鎖した核実験場を米韓の専門家やメディアに公開すると言い出していますが……。

米軍の活動は何ら変わっていません。米軍は、英国、オーストラリア、カナダ軍と共同で、東シナ海の公海上で北朝鮮が繰り返している密輸取引(瀬取り)の警戒監視活動を強化しています。その拠点は沖縄県の嘉手納基地で、自衛隊も情報収集などで連携しています。

(”Canada, Australia to send military aircraft to monitor North Korean ships,” CBC, 4/28/2018)

いずれにせよ、これからの2週間、何をやり出すか想定困難なトランプ大統領と、したたかな金委員長との「前哨戦」が活発化しそうです。米朝首脳会談はすでに始まっているのです。

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『南北会談は「政治ショー」で非核化に進展なし、元駐韓大使が論評』(5/1ダイヤモンドオンライン 武藤正敏)、『北朝鮮が突然、核開発・外交スタンスを豹変させた理由』(5/1ダイヤモンドオンライン 真壁昭夫)、『日本が過小評価する南北宥和が狭める米の選択肢 四者協議の対象は休戦協定にとどまらない』(5/1日経ビジネスオンライン 森永輔)について

4/27NewsWeek 遠藤誉<金正恩の心を映す、中国が描く半島非核化シナリオ>

https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2018/04/post-10062_1.php

5/2日経朝刊<米国防次官補「核の傘、米朝協議の対象外」 アジア太平洋フォーラム

【シリコンバレー=永沢毅】日米の有識者が安全保障の課題を話し合う「第2回アジア太平洋地政経済学フォーラム」が30日、米カリフォルニア州スタンフォードで開かれた。ランドール・シュライバー米国防次官補は講演で、今後の米朝協議では日本や韓国への「核の傘」の提供を含む「拡大抑止」は議論の対象にはならないとの認識を表明。そのうえで「拡大抑止を強化しないといけない」と訴えた。(関連記事国際面に)

シュライバー氏

拡大抑止とは同盟国が攻撃を受けた場合に自国への攻撃とみなし、核戦力による反撃も含めて報復する意思を示すことで第三国に攻撃を思いとどまらせる考え方だ。「朝鮮半島の非核化」を唱える北朝鮮は今後の米朝協議で自らの核放棄にとどまらず、在韓米軍の撤収や韓国への「核の傘」の提供までやめるよう求めてくる可能性が指摘されている。核の傘がなくなれば、東アジアでの米軍の抑止力は著しく減退する。

シュライバー氏は「北朝鮮は『非核化』を広い意味で使ってきた」と指摘。そのうえで「私たちの同盟国防衛に関する決意は少しも揺るがない」と強調し、こうした懸念が生じないよう努める姿勢を示した。核放棄を実現するまで「最大限の圧力」を維持すべきだと訴えた。

フォーラムは日本経済新聞社、米フーバー研究所の共催。石破茂元防衛相、長島昭久元防衛副大臣らが出席し、北朝鮮情勢やアジアの通商政策などを巡って議論を交わした。>(以上)

本日はいろんな記事を載せていますので、コメントは短くします。遠藤氏は「中朝韓で米軍の北への攻撃をかわし、中国の経済支援で北の経済を発展させると中国が考えている」との記事ですが、日経記事では米国は中朝の思い通りにはさせないという意思を感じました。そもそも国際法に反することをしてきた方が悪いのであって、だから国連が経済制裁してきたのではないですか?非核化もせず、今までのかけた時間とコストを北の核保有の正当化の理由にする時点で中国の自己中心さが窺えます。

CVID(Complete, Verifiable, Irreversible Dismantlement))に基づく北の核放棄が前提での米朝交渉で経済制裁緩和なぞもっての他です。共産国の好き勝手にはさせないことが重要です。5/2朝のNHKニュースではドミニカが台湾と断交したと言っていました。札束外交です。共産中国を富ませると碌なことになりません。米国の対中姿勢は正しいです。

森記事の中で「日本は蚊帳の外」というのは、左翼の論調です。昨日の本ブログで高橋洋一氏が論破していました。武貞氏はいつも思うのですが「日本ファースト」でなく「朝鮮半島ファースト」です。どんな国民でも普通「自国ファースト」となると思うのですが、ならないというのは日本人ではないのか、影響を与える女性がいるのか分かりませんが不自然な気がします。そう言えばシュレーダー元首相が韓国人男性に民事訴訟を提訴されました。不名誉なこと。韓国人と付き合うと碌なことにならないという典型です。4/30中央日報<シュレーダー元独首相パートーナーの韓国人前夫が1億ウォン求める訴訟「婚姻破綻に責任」>

http://japanese.joins.com/article/992/240992.html

武藤記事

板門店宣言に署名した後、抱き合う金正恩委員長と文在寅大統領 Photo:代表撮影AP/AFLO

「主演・金正恩、共演・文在寅」の政治ショーだった南北首脳会談

世界が注目する中、4月28日に行われた「南北首脳会談」は、「主演・金正恩、共演・文在寅」の“一大政治ショー”だったといえる。

確かに、北朝鮮の金正恩・朝鮮労働党委員長について、新しい側面を見みることができたのは事実であり、その意味では新鮮だった。

まず、軍事境界線での出会いの折、韓国の文在寅大統領を北朝鮮側に招いたことは、演出効果として満点。首脳会談冒頭の発言は、北朝鮮のテレビ放送を通じて見る単調な演説スタイルではなく、時折、冗談を混ぜながら語り掛けており、人間味を感じさせた。そして、朝鮮半島の非核化を目標とする「板門店宣言」を文大統領とともに発表したことも好感を与えた。

これにより金委員長は、叔父の張成澤(チャン・ソンテク)や、異母兄の金正男(キム・ジョンナム)を殺害し、多くの国民を苦しめる“残忍な独裁者”のイメージを改善させることに成功したといえる。

また、多くの韓国人に「南北の平和共存に希望を持たせた」という意味では、率直に評価すべきかもしれない。

今回の会談を通じ、これまで頑なに非核化を拒否してきた北朝鮮が、「核ミサイル完成」をうたって以来、初めて非核化に言及し、しかもそれを「板門店宣言」に明記した。加えて、より広い視野で平和共存のための枠組みを提示するなど、朝鮮半島の緊張緩和に向けて前進したと見ることができるからだ。

では、首脳会談でどのようなことが話し合われたのだろうか。その中身を具体的に見ていくことにする。

まず、年末までに休戦状態に終止符を打つため、「休戦協定」を「平和協定」に転換し、恒久的で堅固な平和構築に向けた「南北米3者会談」、もしくは中国を加えた「南北米中4者会談」を積極的に推進していくとした。

そして、南北首脳会談の定例化と、直通電話を通じた信頼関係の強化により、朝鮮半島の平和と繁栄、統一に向けたいい流れを拡大していくために努力していくとした。その第1弾として、文在寅大統領は今秋、平壌を訪問することになった。

また、国防長官会談を始めとする「軍事当局者会談」を頻繁に開催し、軍事的緊張の緩和を図るとともに、地上、海上、空中すべての空間で、軍事的緊張と衝突の根源となる一切の敵対的行為の全面中止にも合意した。

最大の焦点だった北朝鮮の非核化

今回の首脳会談は、「米朝首脳会談」への橋渡し役を担う意味合いがあった。そういう意味では、「非核化」の問題がどのように取り上げられるかが最大の焦点だった。

首脳会談は、午前と午後に予定されていたが、実質的な会談は午前の1時間40分だけ、午後は板門店宣言の合意を確認するだけだった。当初、宣言の中身は事前の調整でほぼ合意されており、非核化の問題だけを首脳同士で議論すると言われていた。それだけ、非核化の議論が時間を要すると考えられていたからだ。しかし、それが短時間で終わったということは、ほとんど議論しなかったことの表れと見ることができる。

午後に入って、両首脳は植樹の後に散歩を行い、橋の上で報道陣を遠ざけ2人だけで、30分強話し合った場面があった。もしかしたら、ここで非核化について議論したのかもしれないが、お互いの立場を乗り越えて激論を交わしたようには見えなかった。

文大統領も金委員長同様、米朝首脳会談が決裂し、米国が攻撃するような事態は避けたいという“共通の利害”を有している。そういう意味で、米朝首脳会談が円滑に進むよう、文大統領が金委員長に知恵をつけたのではないかとの疑念を抱いたのは私だけだろうか。

とはいえ、南北首脳会談で非核化をめぐる議論に進展がなかったのは、想定の範囲内だ。というのも、北朝鮮にとって非核化の問題は「米朝首脳会談」で解決すべき問題であり、仮に何らかの譲歩を行う意図があっても、それは米朝首脳会談に取っておくのが定石だからだ。

「完全な非核化」に向けた実質的な前進はない

このように見ていくと、今回の首脳会談を通じて日米が求める「北朝鮮の完全な非核化」に向けて前進があったとは、到底言えそうにない。

確かに首脳会談後に両首脳が署名して発表された「板門店宣言」には、「完全な非核化を通じ、核のない朝鮮半島を実現する共同目標を確認」という文言が盛り込まれている。韓国側は、この「完全な」という表現にこだわったと言われる。

しかし、「核のない朝鮮半島を実現する共同目標を確認する」という文言からも分かる通り、あくまで“確認”しただけであり“合意”したわけではない。しかもそれは、北朝鮮側が主張している「朝鮮半島の非核化」の丸のみであって、「北朝鮮の非核化」ではないからだ。

そもそも、韓国人には珍しく、非常に回りくどい表現だ。なぜ、直接的に「完全な非核化」に合意したと言えなかったのだろうか。おそらく非核化をうやむやにした上で、日米韓との関係を進めたいという北朝鮮の意を汲んだからだろう。

今回、北朝鮮は非核化を除けば、かなり譲歩して見せた。休戦協定の平和協定への転換を始め、南北会談の定例化、敵対的行為の全面中止に合意したのも、相当な譲歩だ。会談を前にした21日の朝鮮労働党中央委員会総会でも、「核実験とICBM発射実験を中止する」「威嚇のない限り核兵器を使用しない」と表明している。

これは、裏を返せば、北朝鮮が追い込まれているということだ。米軍による攻撃の脅威が現実のものとなったこと、そして経済制裁が効果を発揮し、経済的に行き詰まってきたことがある。そして、非武装地帯周辺が平和地帯になり重火器が削減されれば、北朝鮮の防備は核ミサイルに頼らざるを得ないのが現実。だからこそ、それ以外は譲歩してでも核ミサイルだけは保有し続けたかったのだ。

トランプ大統領は「いいことが起きつつある」

こうした南北首脳会談の結果について、トランプ大統領は「歴史的会談」と評価した上で、「いいことが起こりつつあるが、時のみぞ知る」とツイートした。

トランプ大統領は、北朝鮮の非核化が実現するまでは、圧力をかけ続ける方針を示した上で、ドイツのメルケル首相との共同記者会見の場で、北朝鮮の非核化は「現職の米大統領である私の肩にかかっている」と述べ、米朝会談成功への自信をのぞかせた。

確かに、北朝鮮のさらなる譲歩を引きだすためには、圧力を維持し続けることが不可欠であり、そういう意味ではトランプ大統領の肩にかかっている。

北朝鮮の非核化を巡って、米朝は水面下で交渉していると言われる。ポンペイオ新国務長官がCIA長官として訪朝し、金正恩氏と会談。その中身は不明だが、何らかの“肯定的感触”が得られたのではないかという憶測がある。そうだとすれば喜ばしい。それを踏まえてのトランプ大統領の反応であることを期待する。

中韓の歩み寄りには懸念、国際社会が一体となる必要あり

筆者はこれまで、北朝鮮や文政権に対して厳しい指摘を続けてきた。だが、多くの有識者同様、北朝鮮が非核化に応じてくることについては期待している。しかし、中国や韓国が北朝鮮に歩み寄っている現実に対し、強い懸念も持っている。国際社会が一体となり、北朝鮮に強く非核化を迫っていくことを期待する。

北朝鮮は、米国が北朝鮮敵視政策をやめること、そして北朝鮮経済の立て直しのための支援を求めている。これに対し文大統領は、圧力と同時に、対話の重要性も強調する。

確かに、こうした問題について対話の中で取り上げていくことも重要だ。しかし、それはあくまでも北朝鮮が非核化の道に進むことが前提だ。こうした問題を全体としてどのように進めていくのか、北朝鮮と話し合っていくことが必要だといえる。

(元在韓国特命全権大使 武藤正敏)

真壁記事

驚くほど豹変した北朝鮮の対外的スタンス

朝鮮労働新聞ホームページより

3月下旬以降、北朝鮮の対外的なスタンスは驚くほど豹変した。これまでの頑強な核開発に対する積極姿勢が、少なくとも表面的には和らいでいる。

これまで北朝鮮は、米国を射程に収めるICBM(大陸間弾道ミサイル)の発射技術を確立し、核の脅威を強調することで体制維持や制裁緩和などの譲歩を米国に求めてきた。4月20日、その北朝鮮が核実験場の廃棄とミサイルの実験中止を発表し、「経済開発を優先する」と政策を修正した。中国はこの発表を歓迎し、北朝鮮への圧力重視の考えを後退させつつある雰囲気になっている。

北朝鮮が方針を豹変させた重要な理由は、中国への「恭順の意」を示すことだ。金正恩政権が独裁体制を維持するには、どうしても後ろ盾である中国との関係を改善し、その関係を維持する必要がある。

昨年の複数回に及ぶミサイル発射および核実験の結果、中国は北朝鮮への懸念を強めてきた。中朝国境地帯での50万人規模ともいわれる難民収容施設の設営や、大規模な軍事演習は、ある意味、中国から北朝鮮への警告とも受け取れる。

もう一つは、制裁措置が徐々にではあるが、北朝鮮を窮状に追い込んでいることがある。北朝鮮のイカ釣り漁船が東北地方沿岸に漂着したことや、洋上での積荷引渡し(瀬取り)の横行にみられるように、制裁は北朝鮮をかなり疲弊させてきた。

こうした状況が続くと、民衆の不満が高まり体制維持への不安が出るだろう。その中で核開発を続ければ、中国からの警戒は一段と高まる。その結果、金委員長は独裁体制を維持することが難しくなる可能性もある。

当面、北朝鮮は強硬姿勢を封印して対話を重視する可能性が高い。それは、中国からの配慮を取り付ける“点数稼ぎ”だ。その一方、北朝鮮が本気で核の能力を放棄するとは考えづらい。北朝鮮の態度は冷静に分析することが重要だ。

中国に恭順を示すため対話重視に転じた北朝鮮

3月25~28日、金委員長は非公式に中国を訪問し、習近平国家主席らと会談の場を持った。これは、国際社会からの制裁に加え、軍事演習などを通した中国からの圧力を受けて、金委員長が自らの将来に対して不安を強めたことの表れと考えられる。中国の庇護(ひご)を受け、体制を維持していくことが、訪中とミサイル発射の中止表明などの理由だろう。

突き詰めていえば、「命綱」の確認だ。制裁などによる米中からの圧力を受け、金委員長は“米・中に殺される”と恐怖を覚えているとの報道や分析もある。その真偽を確認するすべはないが、中国の対北朝鮮政策は同委員長に恐怖心を植え付けたはずだ。

近年、中国は北朝鮮の核開発に対して懸念を表明することはあったが、国境地帯での演習を実施するほどに警戒感を示すことはなかった。韓国メディアによると、演習中、人民解放軍の兵士には「止まれ」などのハングル語の教育も実施されているという。中国は朝鮮半島での有事の発生、体制の不安定化による難民の大量発生を想定している。

長期の支配基盤を築きたい習国家主席にとって、難民の流入や金政権の体制維持が困難となり米国との直接対峙(たいじ)を強いられる状況は、何としても避けたい。中国にとっては、北朝鮮という緩衝国があるからこそ、米国との対峙という緊張状態を回避することができる。それを分かっているから北朝鮮は、中国の顔色をうかがいつつ核開発を進めて体制の維持を目指してきた。

問題は、金日成、正日の時代に比べ、若い独裁者である正恩氏が中国への配慮を軽視し、傍若無人にふるまってきたことだ。中国が保護してきた金正男氏の暗殺、中国からの対話に関する提案の拒否など、金委員長は聞く耳を持たない独裁者との印象を中国に与えてきたといえる。言い換えれば、金委員長はようやく自らの言動の危うさに気づき、中朝関係の改善の重要性を認識し始めたということだろう。

中国がうまく利用した米国の強硬姿勢

中国とともに対北朝鮮対策で重要な役割を持つのが米国だ。トランプ大統領は度重なる北朝鮮からの軍事挑発を非難し、先制攻撃も辞さない考えを示してきた。マクマスター前大統領補佐官は、“ブラッディー・ノーズ(鼻血)作戦”の存在を否定したが、軍事作戦の臆測が高まったということは、政権、あるいは共和党内で北朝鮮への強硬な対応が必要との主張が出たことの裏返しだろう。それも北朝鮮に相当の危機感を与えたはずだ。

トランプ大統領の言動は、中国にとっても利用価値のあるものだと考えられる。北朝鮮を巡る米中の対応を見ていると、まず、トランプ政権が強硬な姿勢を示した。それに対し、当初、中国は慎重姿勢をとった。つまり、金委員長に一定の配慮を示し、対話の余地を確保したわけだ。

その後、北朝鮮の挑発が増加するにつれて米国の強硬姿勢が強まった。それに合わせるようにして、中国も圧力をかけた。同時に、中国は韓国にも圧力をかけて融和姿勢を重視させ、北朝鮮が“ほほえみ外交”に方針を修正するチャネルを確保したといえる。

以上をまとめると、中国は米国の北朝鮮への圧力をうまく利用して、北朝鮮を自らの意に従わせる環境を整備してきたと考えられる。この見方が正しいとすれば、強硬論者をそろえるトランプ大統領に比べ、習国家主席の対北朝鮮政策の方が上手だ。ある意味では、国際政治の常識をわきまえないトランプ大統領がいたからこそ、こうした状況がもたらされたともいえる。

中国の動きを受けて、米国も極東政策にエネルギーを傾け始めた。ハリス太平洋軍司令官が駐韓大使に指名されるとの報道は、米国が極東の安全保障に一段のコミットメントを示し、中国をけん制しようとしていることの表れだ。

北朝鮮はミサイル発射の中止を表明し、中国の庇護を受けようとしている。米国は、北朝鮮問題が中国主導で解決されることを食い止めようとしている。6月上旬までに開催されると見られている米朝の首脳会談の注目点は、米国が非核化に向けた取り組みを北朝鮮から引き出し、査察受け入れなど国際社会全体での問題解決への道筋を示すことができるか否かだ。

北朝鮮に核を放棄する意思はない

4月20日を境に、一部では北朝鮮が本当に核を放棄するのではないかとの期待、臆測も出始めているようだ。この点は、今後の展開を注視しなければならず、断定的なことは言えない。

ただ、歴史的にみても、北朝鮮が核兵器の開発や攻撃能力の保有を完全に放棄することは想定しづらい。なぜなら、金独裁政権にとって核兵器の保有こそが体制維持のための必須手段に他ならないからだ。

金日成、正日の時代も北朝鮮は非核化を宣言した。しかし、いずれも国際社会との協約が順守されることはなく、秘密裏に北朝鮮は核攻撃能力を開発してきた。その延長線上に、今日の金正恩委員長があるわけだ。表向きは対話を重視して国際社会からの圧力を減殺しつつ、核兵器を捨てなかったことが独裁政権を支えてきたのである。

リビアのカダフィ政権は核を不可逆的に放棄したが、それは内戦に米欧が軍事介入を行う余地を作った。もし、リビアが核を保有し続けていれば、状況はかなり違ったとの見方もできる。

北朝鮮が同じ轍を踏むことはないだろう。地下や山中に場所を移して、核兵器の開発が続けられる可能性はある。一部では、すでに北朝鮮が運用可能なミサイル発射技術を確立したとの指摘もある。そう考えると、対話は体制を立て直す時間稼ぎにすぎないといえる。

22日に起きた中国人観光客を巻き込む交通事故への対応で、金委員長は初めて中国大使館を訪問した。同氏は、かなり中国に気を遣っている。あくまでも、北朝鮮が目指しているのは当面の社会を安定させるための支援を中国から取り付けることだ。そのために北朝鮮は核施設の廃棄を示したのだろう。

今後、米国の役割が一段と重要になる。米朝の首脳会談で北朝鮮が最終的かつ不可逆的な核放棄の意思を示さなかった場合、トランプ大統領が会談の席を立つことも想定される。それは、交渉を一段と困難にし、朝鮮半島情勢の緊迫感を高めるだろう。中間選挙を控える中でトランプ氏は強硬姿勢を示すことで有権者の支持を得たい。

それだけに、米国が中国などと協力し、対話を進めつつも従来の制裁を維持して一切の妥協を許さない姿勢を粘り強く北朝鮮に示すことができるか否かが問われる。

(法政大学大学院教授 真壁昭夫)

森記事

金正恩委員長(左)と文在寅大統領はともに軍事境界線を越えた(写真=アフロ)

約11年ぶりに南北首脳会談が開かれた。金正恩委員長と文在寅大統領は満面の笑みをたたえてハグし合い親密ぶりを示した。米朝首脳会談を米国が決裂させることができない条件が出来上がった。日本は東アジアの安全保障議論で蚊帳の外に置かれつつある。

(聞き手 森 永輔)

—4月27日、約11年ぶりに南北首脳会談が開かれました。北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)委員長と韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領は満面の笑みをたたえて何度もハグ。金正恩委員長が文在寅大統領を軍事境界線の北側に招き入れるサプライズも含めて、両者は親密さをアピールしました。一方で、「完全な非核化は『目標』にとどまった。具体的な施策は何もなし」と批判する向きもあります。武貞さんは今回の会談のどこに注目しましたか。

武貞:今回の会談には3つの柱がありました。①朝鮮半島の統一、②朝鮮半島の平和体制構築、③非核化です。中でも比重が重かったのが①と②です。そもそも③は南北だけで決められる問題ではありませんし。

武貞 秀士(たけさだ・ひでし)氏
拓殖大学大学院特任教授。
専門は朝鮮半島の軍事・国際関係論。慶應義塾大学大学院修了。韓国延世大学韓国語学堂卒業。防衛省防衛研究所に教官として36年間勤務。2011年、統括研究官を最後に防衛省退職。韓国延世大学国際学部教授を経て現職。著書に『韓国はどれほど日本が嫌いか』(PHP研究所)、『防衛庁教官の北朝鮮深層分析』(KKベトスセラーズ)、『恐るべき戦略家・金正日』(PHP研究所)など。

北朝鮮のメディアが、板門店に向かう金正恩委員長一行の車列を放映しました。いくつもの対戦車障壁をくぐって進む。壁の1つには大きく「自主統一」の文字が躍っていました。「自主統一」の文言を共同宣言に書き込むために、金正恩委員長は板門店に向かっている、ということを北朝鮮国内にアピールしたかったのです。

日本ではこの①②が持つ重み、さらに、これらが6月に予定される米朝首脳会談にも影響することが理解されていないようです。日本は東アジアをめぐる安全保障の議論に参加できず、不利な環境に置かれる可能性があるのです。

前回のインタビューで、まさに①朝鮮半島の統一こそが主題になるとうかがいました(関連記事「南北会談の主題は「非核化」ではなく「統一」」)。南北が親密であることを、米国や中国に示すことができるか否かが重要になると。ご指摘の通りになりました。

武貞:今回、署名された「板門店宣言」を見てください。最初の文に始まり、全体の分量のうち5分の4以上は①と②が占めています。非核化は最後の最後に登場するだけ。

北朝鮮と韓国が半島を「自主」「統一」することを再確認したことこそ特筆すべきなのです。「自主」は米国の関与を排除するという意味。盧武鉉(ノ・ムヒョン)大統領のときの南北首脳会談で署名された共同宣言に盛り込まれた表現を再度挿入し、「外国の介入を遮断して南北対話で統一する」という悲願達成を誓うものです。

これから米韓北の間で起こる事象を理解するためにこの構図を説明することは大事です。「南北で」という原則に基づいて北朝鮮は韓国に対し、たたみかけるように援助を要求するでしょう。

そして南北交流を進めれば、米国は「なぜ韓国と北朝鮮が勝手に事を進めているのだ」と苛立ちを強める。特に、休戦協定を平和協定に転換しようとすれば、一方の主役は国連軍を代表していた米国です。文在寅大統領は米国と北朝鮮の両方に良い顔を見せなければなりません。

米韓の間には既に微妙なすれ違いが見て取れます。南北首脳会談の翌日、ホワイトハウスのある高官が「北朝鮮と韓国だけで問題が解決できるものではない」と皮肉に満ちた発言をしていました。

文氏を北側に招き入れ、「イーブン」な関係を示す

南北首脳会談は、米朝首脳会談の“前座”であるとの見方があります。板門店宣言の最後の最後で非核化に触れているので、南北首脳会談が米朝首脳会談につながるというのは確かにそうです。しかし、これは非核化の詳細な議論は米朝首脳会談に任せるというだけのことです。

そうであるにもかかわらず、日本では非核化について北朝鮮がどのような表現を用いるかに関心が集中していました。北朝鮮と韓国の指導者は「南北が主役である」「緊張緩和と信頼醸成に努めよう」と語り合い、統一にむけてのプロセスを相談したのです。

前回のインタビューで、「南北が親密であることを示すことで、北朝鮮は米国や中国にプレッシャーを与えることができる」とうかがいました。この視点から見ると、今回の南北首脳会談の採点は……

武貞:韓国と北朝鮮にとっては100点満点だった。テレビでの生放送、共同記者会見、晩餐会――いずれも親密度をアピールするものでした。

金正恩委員長が文在寅大統領を軍事境界線の北側に招き入れたのは圧巻。金正恩委員長は事前に考えていたフシがありますが、文在寅大統領にはサプライズだったので一瞬、戸惑った様子が放映されました。

この行為は米中に対するアピールであるのと同時に、北朝鮮の国内に向けてのメッセージでもありました。「金正恩委員長が韓国の軍門に下り、境界線の南側に足を運んだ」といった見方を否定し、文在寅大統領も北側に来たので、南北の関係はイーブンであると印象づけることができるからです。

—過去2回の南北首脳会談はいずれもピョンヤンで行われました。その時に北朝鮮の金正日(キム・ジョンイル)総書記は国民に「南側の指導者が北に教えを乞いに来た」と説明していました。この流れで今回の南北首脳会談を見ると、金正恩委員長が板門店に足を運んだことを北朝鮮の国民がどう見るのか、気になっていました。きちんと手は打ってあったわけですね。

武貞:はい。金正恩委員長は国内向けにさまざまなアピールをしていたと思います。余裕綽々の振る舞い。文在寅大統領のものより立派な専用リムジン。12人のイケメンからなる警備陣。世界レベルの警備体制を敷けることをアピールしました。

非核化を約束していないのに莫大な援助と投資へ

—板門店宣言の内容をどう評価しますか。前回2007年の南北首脳会談の時の共同宣言と比べてどうでしょう。

武貞:「既に採択された南北宣言や全ての合意などを徹底的に履行する」とうたっています。したがって板門店宣言は2007年宣言を包含したものと言える。そして、2007年宣言で挙げた経済協力を「実行するぞ」と高らかに宣言した。

前回お話した「市場統合」につながる勢いのあるものだと思います。文在寅大統領が自ら口にしているように、同氏は任期がまだ4年ありますから。2007年の南北首脳会談は、盧武鉉(ノ・ムヒョン)大統領の任期が終わる直前にあり、仕事ができずに終わってしまいました。その時とは異なるのです。

具体的には、韓国から北朝鮮に相当の投資と援助がなされるでしょう。「民族経済の均衡的な発展」とはそういう意味です。

北朝鮮はまだ核兵器を放棄すると明言してはいません。それにもかかわらず、韓国はこれだけのことを板門店宣言に盛り込んでしまいました。米国は穏かではいられないでしょう。

—金正恩委員長が橋の上で2人だけ会談を持ちました。あそこではどんな話をしたと思いますか。板門店宣言には盛り込めない秘密の話をしたのでしょうか。

武貞:あのような形の会談を持ったことが、まずもって「異例」です。対北朝鮮制裁の緩和・解除。朝鮮戦争の「終戦」に伴う在韓米軍の撤収――戦争が終われば軍事境界線を守る米軍は必要がなくなります。その先にある米韓同盟の修正・終焉。南北統一の形態――連邦制か、連合制か。こうしたテーマを話し合ったのではないでしょうか。

日本人拉致の問題も話し合ったとしたら、この時でしょう。日本人としては期待したいところです*。

*:共同通信が4月29日、安倍晋三首相と文在寅大統領との電話会談の中で、同大統領が「拉致問題について提起し、安倍首相の考えを伝えた」と説明したと報じた

四者協議の議題は平和協定だけではない

—今、言及された「終戦」について。この言葉は初めて聞きました。

武貞:朝鮮戦争をめぐっては、初めて登場した言葉だと思います。

—朝鮮戦争の休戦協定は、北朝鮮の朝鮮人民軍と中国人民志願軍、そして国連軍との間で交わされました。韓国は署名していない。このため、北朝鮮と韓国との間の「休戦」を「終戦」と呼ぶのでしょうか。

武貞:多くの人が同様の認識を持っていますが、それは間違っています。

—え、そうなのですか。

武貞:はい。韓国は休戦協定の当事者です。朝鮮戦争の休戦協定は北朝鮮、中国、国連の間で交わされました。米軍の司令官が国連軍を代表して署名しました。そして、この国連軍に韓国軍も参加していました。この開戦直後に韓国軍は「指揮権」を国連軍に譲っているので、国連軍司令官は韓国軍をも代表して休戦協定に署名したのです。

ただ、16か国からなる国連軍の中に韓国軍が編入されたのではないために、多くの人が勘違いしているのです。

それに北朝鮮は70年代、「韓国は休戦協定に署名していないので平和協定の当事者でない」と説明し始めた。そして誤解が拡散してしまったのです。

—北朝鮮はなぜ、韓国は休戦協定の当事者ではないと主張したのですか。

武貞:休戦協定の平和協定への転換を米国と直接話し合い、在韓米軍の撤退に「うん」と言わせるためです。休戦協定に従って、中国義勇軍は1954年と58年に撤収しました。しかし在韓米軍は韓国に駐留し続けた。

こうした経緯があったので、北朝鮮は今になって「韓国は休戦協定の当事者である」とは言いづらい。そこで、北朝鮮と韓国の間で新たに「終戦を宣言」することにしたのです。

南北で終戦を宣言したあとは、国連軍を代表した米国と中国と北朝鮮が休戦協定を平和協定に転換する。その先に平和体制の構築が始まります。板門店宣言は、日本とロシアも役割を果たすべき平和体制構築のプロセスまで含めて、南北米の3者、もしくは南北米中の4者が話し合おうと言っています。日本とロシアは完全に蚊帳の外です。

—ちょっと待ってください。日本は朝鮮戦争の当事国ではありませんでした。同戦争をめぐる平和協定の議論に参加できないのは仕方がないことなのでは。

武貞:確かにそうです。しかし板門店宣言は「今年、終戦を宣言し、休戦協定を平和協定に転換し、恒久的で強固な平和体制を構築するため、南北米三者、または南北米中四者会談の開催を積極的に推進していくことにした」とうたっています。

3者もしくは4者による会談は平和協定だけでなく、そのあとに続く「恒久的で強固な平和体制」の構築も議題にするのです。ここに誰も気づいていない。安倍晋三首相は日本が蚊帳の外に置かれることはないと発言していますが、無理があるのではないでしょうか。

今回の南北首脳会談は、南北の首脳が膝を交えて協議をして、これだけのことを話し合ったのです。それにもかかわらず、いま日本にあるのは「前座は終わった。さあ、これから本丸である米朝首脳会談だ」という見方だけです。これでよいのでしょうか。

南北が親密度を高めたことで、米国は、①最大限の圧力をかけ北朝鮮に非核化を迫ること、②条件が合わなければ米朝首脳会談を決裂させることのリスクを負うことになりました。圧力を強めても韓国が制裁を緩和し支援を増やせば効果は薄まってしまいます。仮に米朝首脳会談を開かない、もしくは決裂させれば、北朝鮮と韓国をさらに近づけることになる。中国は北朝鮮にさらに支援を申し出るでしょう。

こうした環境は米国にとって当然好ましいものではありません。今後、米国内で「南北が宥和したのなら、米国の若者を朝鮮半島に駐留させておく必要はない」と議論が起こることも予測されます。金正恩委員長はこうした環境をうまく作ってきたと言えるでしょう。

—日本はどうすればよいのでしょう。

武貞:例えば、ピョンヤンに連絡事務所を設置する。私はこれを4年前から主張していますが実現に至っていません。

—北朝鮮と直接話をするためのチャネルを維持しないと、本当に蚊帳の外になりかねないわけですね。

武貞:その通りです。多くの日本人がここに気付いていません。

南北首脳会談が始まるまで、日本は周回遅れの状態にありました。今は2周遅れです。米朝首脳会談が終わった時には3周遅れになりかねない 。幸い、安倍晋三首相は文在寅大統領との電話会談で金正恩委員長に対して日朝首脳会談を開催する意思があることを伝えてほしいと述べたようです。日本の巻き返しが始まりつつあります。

トランプ氏は「完全な非核化」の意味が分かっていない

—今回、板門店宣言に「完全な非核化」という表現が盛り込まれたことが注目されています。この点をどう評価しますか。

武貞:日米が求める「完全で検証可能かつ不可逆的な核放棄(CIVD)」に応じる準備があるとトランプ大統領向けに発信しているのでしょう。ただし、米国にも同様に「完全」を求めている言葉です。同盟国への「核の傘」の提供中止を求めています。B1、B2といった核兵器搭載可能な戦略爆撃機を朝鮮半島に飛来させない約束を含みます。米韓演習もやらせない。

—「あらゆる敵対行為を中止し」とあるのは米韓演習を指すわけですね。

武貞:はい、そうです。朝鮮半島への米軍の関与を一切のやめさせるという意味です。当然、在韓米軍の撤収 も含みます。トランプ大統領が「(南北首脳会談の結果に)勇気づけられた」と発言して歓迎していますが、北朝鮮が「完全な非核化」に込めた意味に気づいていないからでしょう。彼は専門家ではありませんから。

一気に上がる、文在寅の支持率

—これまで3回の南北首脳会談はいずれも韓国進歩派政権の下で行われてきました。文在寅政権が任期を終え、次に保守の政権ができた時、現在の親密な南北関係がひっくり返ることはないでしょうか。

武貞:これまでの韓国を振り返って考えると、ひっくり返るでしょう。

ただし、その前に、今回の会談の結果を受けて文在寅大統領の支持率が高まりつつあります。現在も75%程度で、就任から1年経った韓国大統領の支持率として史上最高の高さです。これが80%を超える可能性がある。

金正恩委員長に対する評価も高まるでしょう。仮に、韓国民に「統一後の大統領」の候補を問えば、上位に上がってくると思います。2000年に金大中(キム・デジュン)大統領(当時)と金正日総書記(同)が会談した後、金正日氏への期待が高まりました。

また文在寅政権の今後の4年間を想像してみてください。南北間で鉄道網がつながり、行き来が増す。米国などの介入を防ぎつつ、民族の力量を世界に示すわけです。韓国民が持つナショナリズムを満足させる。そうなれば、次の大統領選挙で、誰が保守勢力に投票するでしょうか。

金与正氏の出席は暗殺を恐れなかった証

—南北首脳会談の出席者について伺います。今回、金正恩委員長の実妹、金与正(キム・ヨジョン)氏が会談に同席しました。暗殺の危険などを考えると、この二人が同席するのは考えづらいことだと思います。北朝鮮はそうした懸念を持たなかったのでしょうか。

武貞:まったく警戒していなかったようです。橋の上で金正恩委員長と文在寅大統領が2人だけで会談した時、屋外に設置された椅子を消毒したという話は聞こえてきません。韓国側が準備した料理を毒見したという話も耳に入ってきません。

—芳名帳に署名するとき、韓国側が用意したペンを使わなかったことが話題になりましたが。

武貞:使い慣れたペンで署名するのは珍しいことではない。テレビに映るところで世界の基準に合わせて行動したのでしょう。

—映像を見ていると、たくさんのドローンが上空を飛んでいたようです。金正恩委員長と文在寅大統領が軍事境界線をまたいだ時も、2人だけで会談した時も。

武貞:準備段階で、北朝鮮側が安全を理由にドローン使用を拒否することはなかった。2人がドローンを警戒する素振りをみせることもありませんでした。それくらい信頼を深めた上で南北首脳会談に望んだのだと思います。 ――最後に、北朝鮮の市民や朝鮮人民軍は今回の会談をどう評価するでしょう。 武貞:市民は歓迎すると思いますよ。「指導者が支援を乞うために南に行った」とは見ないでしょう。「朝鮮戦争に米国が軍事介入して韓国を支援したために統一が先送りとなり、北朝鮮は貧しい生活を余儀なくされた。そうした生活に終止符を打つチャンスが到来した」と考えるでしょう。

生活向上のために、金正恩委員長を先頭に押したてて米国を追い払い、韓国の融和政策を引き出し、北朝鮮への投資を呼び込む必要がある――と考えていると思います。

軍は、独自の意見を持っているわけではありませんが、歓迎しているでしょう。金正恩委員長は韓国軍から栄誉礼を受けましたから。栄誉礼には2つの意味があります。1つは敬意を表すること。もう1つは栄誉礼を受ける人が敵ではないことを示すこと。今回の栄誉礼はフルではありませんでしたが、韓国軍が金正恩委員長に敬意を表し、「敵対関係ではありません」といって、振り上げていた拳を降ろしたわけです。

—北朝鮮はこれまで核開発に力を入れてきました。この方針を変えることに北朝鮮人民軍は不満を持つことはありませんか。北朝鮮のメディアは板門店宣言の内容をすべて報道しており、軍は「完全な非核化」の報道を知っています。

武貞:ないでしょう。米国が提供する核の傘の廃止と、自分の核兵器放棄のプロセスについて、細部を米国と合意することは可能です。しかし、米朝不可侵協定が成立し、在韓米軍が撤退したあと、統一するまでは北朝鮮は核兵器を廃棄する気はありません。前回お話しした通りです。

北朝鮮のロジックはこうです。北朝鮮の最終目標は朝鮮半島統一です。統一の過程で米国は核兵器の使用もほのめかしながら軍事介入することは明白だから、介入をあきらめさせるために、米政府の中枢を核攻撃する手段(ICBM=大陸間弾道ミサイル)を保有するということです。軍事介入には大きな犠牲が伴うと米国が判断すると、米国は中立の立場を取ると北朝鮮は計算しています。南と北だけで統一を実現したい北朝鮮にとって、戦争をしないで統一するために、「使える」核兵器が必要なのです。

「完全な非核化」という抽象的な文言と引き換えに、韓国からの支援の道を開いた板門店宣言は、非核化問題の解決を米朝首脳会談に委ねました。米朝首脳会談は、トランプ大統領が「統一のための核」という北朝鮮の核戦略を読み取り、北朝鮮の体制を保証する具体案と引き換えに北朝鮮が核兵器を放棄するロードマップを作成する場なのです。

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『北朝鮮非核化交渉「日本は蚊帳の外」論は大きな間違いだ 本質を見誤ってはいけない』(4/30現代ビジネス 高橋洋一)、『「米朝会談」トランプが席を蹴って立つ可能性 米仏会談で見えた「強硬派」の存在感』(4/28現代ビジネス 歳川隆雄)について

4/30NHKニュース 7:38<北朝鮮はリビア方式で非核化実現を ボルトン大統領補佐官

アメリカのボルトン大統領補佐官は、アメリカが求める北朝鮮の非核化について、かつて大量破壊兵器計画を放棄したリビアを前例に、国際社会の制裁を維持しながら北朝鮮が、まずは非核化を着実に実行することが欠かせないと強調しました。

ホワイトハウスで安全保障担当のボルトン大統領補佐官は、29日、アメリカのFOXテレビの「FOXニュース・サンデー」などに出演しました。
この中でボルトン補佐官は、北朝鮮が、核を放棄する重大な決断を実際に行ったか現時点ではわからないとしたうえで「米朝首脳会談で、北朝鮮側が核の放棄という決断の証拠を示せるのか確認したい。歴史的な合意となる可能性もあるし、ならない可能性もある」と述べました。
そのうえで、アメリカが求める北朝鮮の非核化について、2003年に大量破壊兵器計画の放棄を表明し、実行に移したリビアを前例に挙げ、国際社会の制裁を維持しながら北朝鮮が、まずは非核化を着実に実行することが欠かせないと強調しました。
そして、ボルトン補佐官は「リビアでは、アメリカとイギリスの監視団がすべての核関連施設への立ち入りを認められたので、リビアへの疑念が消えていった」と述べ、北朝鮮に対する国際社会の疑念を払拭(ふっしょく)するためにも、核開発計画の完全な申告と検証が重要だと説明しました。
一方、ボルトン補佐官は、北朝鮮に拘束されている3人のアメリカ人について、「トランプ大統領の最優先事項だ。解放すれば首脳会談に向けて誠意を示すことになる」と述べ、北朝鮮の決断を見守る姿勢を示しました。

「リビア方式」核放棄を先行

リビア方式とは2003年に大量破壊兵器の放棄を表明し実行に移したリビアを前例に、核の放棄を先行させ、その後に制裁解除などの見返りを与える考え方です。
リビアでは2003年の12月に当時のカダフィ政権が、核兵器や弾道ミサイルなどの大量破壊兵器の開発計画を放棄すると表明しました。
そして、放棄を表明した直後の2003年12月末にIAEA=国際原子力機関の査察チームを受け入れたほか、表明から1か月後の2004年1月には、遠心分離機など核兵器を開発するための機材や弾道ミサイルの開発を記した文書など、合わせて25トン分をアメリカ側に引き渡しました。
これを受けて、アメリカの当時のブッシュ政権は2004年2月からリビアへの制裁を段階的に緩和。2年後の2006年にはリビアをテロ支援国家の指定から外し、大使館を開いて国交正常化を実現しました。
当時、ブッシュ政権でこのリビアの大量破壊兵器の放棄に軍縮担当の国務次官として関わっていたのが、ボルトン大統領補佐官です。ボルトン補佐官はリビア方式に基づいて、まずは北朝鮮が核開発計画の完全な申告と査察などの検証を受け入れるよう主張しました。
しかし、北朝鮮のキム・ジョンウン(金正恩)朝鮮労働党委員長は「段階的で歩調を合わせた措置を講じれば朝鮮半島の非核化の問題は解決できる」と先に述べるなど、米朝の同時並行的な措置を主張していて、立場の大きな違いが浮き彫りになっています。>(以上)

歳川記事にありますように、米朝首脳会談にボルトンが出席するのであれば、トランプが金に懐柔されることはないと思います。戦争にならずリビア方式で決着してほしいと思っていますが、核兵器を隠蔵する可能性の除去(米軍が北に入り、徹底調査、かつ秘密裡に他国に運搬、特に中露に運んで預かっていて貰うことの防止)と生物化学兵器の除去もしてほしいです。勿論、拉致被害者の全員帰還もです。

4/19本ブログで武貞秀士氏は「北の目的は朝鮮半島の統一にあり、それまでは非核化はしない。その間は在韓米軍の駐留を認める」と言っていました。でもマテイス長官は在韓米軍撤退も議論の対象にと言いましたから、武貞氏の読み通りの展開にはならないのでは。戦争の可能性もあるという事です。日本人は平和ボケしていないでもっと真剣に戦争と平和について考えるべきです。念仏を唱えていても戦争はなくなりません。戦争と平和の繰り返しは人類の歴史そのものです。そう言う意味で「戦争は人間的な営み」と言えます。思考停止が一番頭脳を退化させます。

http://dwellerinkashiwa.net/?p=8762

日本が蚊帳の外と言うのは左翼とか在日が日本を何とか北への支援をさせたくて使っている言葉です。日本の朝鮮半島へのスタンスは不関与政策です。『非韓三原則』ならぬ『非朝鮮三原則』にしなければ。勿論、拉致被害者の全員帰国に際しては、経済的見返りは必要でしょう。身代金支払いの様で腹が立ちますが仕方のないことです。それ以外、朝鮮半島人の性悪さを日本人は嫌と言うほど見て来ましたので近づかないことです。日本にとって必要なのは軍備の充実と軍人の育成、憲法改正、スパイ防止法の制定等やることは沢山あります。野党が審議拒否している間にドンドンいろんな法案を通過させれば良いでしょう。でも職場放棄している野党議員を許す日本国民と言うのは如何なものか?民間であればすぐクビです。次回の選挙では落としてほしい。5/1NHK朝のニュースで、連合も今回のメーデーのイベントには加藤厚労大臣は呼んだが、野党議員は呼ばなかったとのこと。日本を侵略しようとしている国の手先となり、メデイアと一緒になって政権の弱体化を図っている議員なぞ必要ありません。次の参院選挙で連合は野党を押すのを止めたらどうですか?政治活動に血道を上げて、労働者の権利・福利の向上に無頓着なようでは本末転倒です。

高橋記事

まず、板門店宣言をどう評価するか

4月27日、韓国の文在寅大統領と北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長は板門店で首脳会談を行った。両国の首脳会談は2007年10月以来、実に11年ぶりだ。これまでは、韓国の大統領が平壌に訪れていたが、北朝鮮トップが韓国入りしたのは初めてだ。

これに対して、内外の新聞の社説は次の通りだ。

朝日新聞「南北首脳会談 平和の定着につなげたい」(https://www.asahi.com/articles/DA3S13471671.html?ref=editorial_backnumber

読売新聞「南北首脳会談 非核化の道筋はまだ見えない」(http://www.yomiuri.co.jp/editorial/20180427-OYT1T50153.html

毎日新聞「11年ぶりの南北首脳会談 非核化への流れ、止めるな」(http://mainichi.jp/articles/20180428/ddm/005/070/110000c

日本経済新聞「板門店宣言を北の完全非核化につなげよ」(https://www.nikkei.com/article/DGXKZO29974940Y8A420C1EA1000/

産経新聞「南北首脳会談 微笑みより真の非核化を 米朝会談に向け圧力継続せよ」(http://www.sankei.com/column/news/180428/clm1804280001-n1.html

東京新聞「南北首脳会談 非核化宣言を行動へ」(http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2018042802000153.html

朝鮮日報「非核化より経済協力の話が目立った南北首脳会談」(http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2018/04/28/2018042800434.html

中央日報「文在寅-金正恩、非核化の大長征の扉を開く」(http://japanese.joins.com/article/973/240973.html

ウォール・ストリート・ジャーナル「南北首脳会談の高揚感に惑わされるな」(http://jp.wsj.com/articles/SB10920515820464333357004584191323619797070

ほぼすべて同じ論調であり、一言で言えば、両国の友好ムードは演出でき、扉は開かれたが、具体的な話はまだないというところだ。

韓国紙はすでに報じているが、板門店宣言文(https://www3.nhk.or.jp/news/special/inter_korean_summit_2018/)を読むと、「南と北は、完全な非核化を通じて、核のない朝鮮半島を実現するという共通の目標を確認した」の中で「完全な非核化」という言葉は新しく出たものだが、全体としては過去の6ヵ国協議での共同声明より後退している。

つまり、2005年9月の共同声明では、北朝鮮は「すべての核兵器及び既存の核計画を放棄すること、並びに、核兵器不拡散条約及びIAEA保障措置に早期に復帰することを約束した」と明記され、さらに「朝鮮半島の検証可能な非核化」についても明記されていた(http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/n_korea/6kaigo/ks_050919.html)。確かに、後退していると評価されても仕方ない。

一方、トランプ大統領は27日に、

「KOREAN WAR TO END! The United States, and all of its GREAT people, should be very proud of what is now taking place in Korea!」「朝鮮戦争が終わる!アメリカと全ての偉大な人々は朝鮮半島で今、起きていることを非常に誇りに思うべきだ!」(https://twitter.com/realDonaldTrump/status/989820401596366849

と、この板門店宣言を歓迎した。

トランプ大統領は、非核化についてはコメントしていないが、南北首脳会談はあくまで米朝首脳会談の露払いであるので、非核化については、米朝首脳会談での自分の出番と考えているから、このような「歓迎コメント」を出したのだろう。新聞報道によれば、トランプ大統領は「非核化は私の責務」と語ったという。トランプ大統領としては珍しい言葉だ。

米朝首脳会談は、3~4週間以内に開催するとされている。場所は、シンガポールとモンゴルの二箇所に絞り込まれているようだ。どのような展開になるのか、注視していきたい。

さて、3月25日の中朝首脳会談、4月17日の日米首脳会談、27日の南北首脳会談、5月の米朝首脳会談の一連の首脳会談の中で、日本だけがこの流れから取り残されているという「蚊帳の外」論が、日本の左派系メディアから頻繁に流された。

「蚊帳の外」論はどこから出てくるのか

こうした情報を流すのは、ただ単に安倍政権の外交を貶しめたい人もいるし、一方で日本政府を慌てさせたい他国が、いわば陽動作戦の一環として行っている場合もある。外交では、こうした情報戦がしばしば行われ、自国政府に反対する人がその情報戦の先兵として利用される。

安倍首相は、そうした批判に対して、実際の外交実績から堂々と反論している(https://www.sankei.com/world/news/180429/wor1804290006-n1.html)が、ここでは、「蚊帳の外」論を外交論から検討してみよう。

北朝鮮の非核化を国際社会が主張するのは、国際社会にとって、今の「核不拡散体制」の堅持が重要だからだ。特に朝鮮半島の場合、1950年に戦争が勃発、現在も、休戦状態にありながらも続いていることが、その深刻度をさらに大きなものとしている。つまり、北朝鮮の非核化はもちろんのこと、朝鮮戦争を終結させることも必要になってくる。

さて、朝鮮戦争を振り返ると、これは米軍を中心とする国連軍と中朝連合軍の戦いだったことが分かる。それは、休戦協定からも明らかだ。休戦協定には以下の5名が署名している。

・金日成、朝鮮人民軍最高司令官
・彭徳懐、中国人民志願軍司令員
・クラーク国連軍総司令官
・南日 朝鮮人民軍代表兼中国人民志願軍代表
・ウィリアム・K・ハリソン・Jr 国連軍代表

この手続きから、朝鮮戦争を本当に終戦に導くためには、アメリカ、北朝鮮、中国は必ず含まなければまずいだろうことが分かる。

韓国であるが、実は国連軍の一員として朝鮮戦争に参加している。国連軍に参加したのは、米韓を含めて22カ国である。朝鮮戦争開戦当時、日本は占領下であったので参戦国とされていないが、国連軍の要請で特別掃海隊を派遣し、死者も出ている。

日本が果たすべき役割

以上の経緯からみれば、朝鮮戦争の終結のために必要なアクターは、アメリカ、北朝鮮、中国のほか、戦場となり、国連軍の主要部隊だった韓国ということになるだろう。

そのため、板門店宣言では、

「南と北は、休戦協定締結65年になる今年、終戦を宣言して停戦協定を平和協定に転換し、恒久的で強固な平和体制構築のために、南・北・米の3か国、または南・北・米・中の4か国の協議開催を積極推進することになった。」

と書かれている。

こうした経緯からみれば、朝鮮戦争について、日本は、米、韓国、北朝鮮、中国の4カ国からは、もともとやや距離があるのは、外交論や歴史的な経緯から考えれば当たり前のことである。

あえていえば、米国、韓国、北朝鮮、中国の4カ国に、日本とロシアを加えた「6カ国協議」があるが、日本とロシアはこの4カ国からは似たような距離感なのだろう。これまで、4カ国間の首脳会談はあっても、ロシアを入れた5カ国のものはない。北朝鮮がロシアに接近することもあるだろうが、ロシアは米・韓と日本の距離に近いだろう。この意味で、日本は「蚊帳の外」になっていないと言える。

さらに日本は、4カ国の中に、米・韓を介在して入り込もうとしている。それは、「拉致問題」を軸とした「人権」という新たな切り口である。

この作戦は、今のところ功を奏している。今回の南北首脳会談において、文大統領は金党委員長に対し、「日本が北朝鮮と対話する意思を持っていて、過去の歴史清算に基づいた日朝の国交正常化を願っている」と伝えると、金氏は「日本と対話する用意がある」と返したという。

文氏の「過去の歴史清算」というのがやや気にかかるが、日本が「蚊帳の外」というわけではないだろう。

南北首脳会談の後、安倍首相は、トランプ大統領と文大統領とそれぞれ電話会談して、南北首脳会談の内容を聞いている(http://www.mofa.go.jp/mofaj/na/na1/us/page4_003964.html 、http://www.mofa.go.jp/mofaj/a_o/na/kr/page1_000519.html)。この意味からも、日本は「蚊帳の外」ではない。

こうした多国間での交渉では、できるだけ仲間を作った方が自国に有利である。米韓も日本をある程度組み入れた方が自国に有利になるので、日本を「蚊帳の外」に置くことは得策ではないのだ。

日本は、軍事オプションではまったく役に立たないが、平和では大きな貢献ができうる。2002年には、日本と北朝鮮の間で日朝平壌宣言が行われている。当時の小泉純一郎首相と金正日氏の日朝首脳会談の際に調印されたもので、拉致問題の解決、植民地支配の過去の清算、日朝国交正常化交渉の開始などが盛り込まれている。日本からの1兆円を超えるとも噂される経済援助の約束もあった。

しかし、この日朝平壌宣言は、その後の北朝鮮の核・ミサイル実験により有名無実化した。

日朝平壌宣言の枠組みには批判があるが、実効可能性はある。しかも北朝鮮が喉から手が出るほどほしい経済援助を「武器」にするのは、日本らしい方法だ。経済援助とともに、北朝鮮の(非核化も含めた)監視を行うことこそ、日本が非軍事的な面で貢献できる分野だ。もちろん外交交渉であるので、相手がこの日本の関与を欲しがるような手順が必要なのはいうまでもない。

とにもかくにも「蚊帳の外」論は、実は外交にとって有害無益である。そして今回の「蚊帳の外」論は完全に状況を見誤っている。これを言っている人の意見は信じられない、といっても過言ではないことを指摘しておきたい。

歳川記事

ボディランゲージに見る「対日」「対仏」の温度差

ドナルド・トランプ米大統領は、実に分かりやすい人物である。その仕草、いわゆるボディランゲージから同氏の心情を推しることができるからだ。

トランプ大統領は4月17日午後(米国東部標準時間)、フロリダ州パームビーチの大統領別荘「マーラ・ラゴ」正面玄関で安倍晋三首相を出迎えた際、シャッグ(シェイク&ハグ)をしなかった。

安倍、トランプ氏両首脳はやや硬い表情で握手をしながら互いの左手を相手の右手二の腕の上側に添えただけ。昨年2月10日にホワイトハウス正面入口で出迎えた時はシャッグだった。トランプ氏の頭に瞬時、その後行われる首脳会談で通商・貿易問題で安倍氏にとって耳の痛い話をしなければならないという想いがよぎったからではないか。

そして次のシーンは同24日の米仏首脳会談。ホワイトハウス正面入口で待ち受けたトランプ大統領は、何と国賓で迎えたエマニュエル・マクロン仏大統領とシャッグを交わしたのである。大統領就任後1年3ヵ月間、トランプ氏は数多の海外要人と会談しているが、親愛の情を表すシャッグをしたのは安倍氏に次いで2人目である。

マクロン仏大統領と「シャッグ」を交わしたトランプ米大統領(Photo by GettyImages)

米仏首脳会談前の各国メディアの報道を見ると、「イラン核合意巡り溝」という論調が主流であった。2015年7月、国連安保理常任理事国(P5)の米英仏中露+独の6ヵ国がイランの原子力関連の活動を制限する代わりに、対イラン制裁緩和することをイランと合意したのが所謂「イラン核合意」である。

トランプ氏は米大統領選当時から、オバマ前政権が進めた同合意は「破滅的な欠陥がある」と批判してきた。そして大統領就任直後の昨年1月12日、イラン核合意からの離脱を前提に120日間の猶予期間を設定、その間にイランの弾道ミサイル開発の規制を盛り込む修正案提示を、米国を除くP5側に求めた。

その設定された期日が5月12日である。これまで国際社会ではイランが合意を遵守しているというのが共通認識だったが、トランプ氏が非妥協路線に転じたことを憂慮したマクロン氏の指示を受けた仏外交当局は水面下で対米折衝を続けてきた。

そして、マクロン氏が「お土産」を持参してワシントン入りすることを事前に知らされていたが故にトランプ氏はシャッグで出迎えたのである。

結局、採用された「強硬派」の判断

案の定、マクロン大統領はトランプ大統領に対イラン新合意案を提示したのだ。すなわち、(1)イランの核開発を長期にわたって抑制する、(2)イランの弾道ミサイル開発を停止する、(3)イランの中東での影響力拡大を阻止する――という現行の核合意にない三つの要素が含まれる(「読売新聞」26日付朝刊)。

一方、当該のイランは「新たな争点は米国が合意を履行してから議論すべきだ」(ローハニ大統領演説)とした上で、核拡散防止条約(NPT)脱退を示唆するなど、反発を強めている。

そうした中で、トランプ大統領が下した判断はやはり「イラク核合意」からの離脱だった。対イラン強硬派のジョン・ボルトン大統領補佐官(国家安全保障担当)がマクロン大統領提案に強く反発、これまでの非妥協路線の堅持を進言したことが大きかったとされる。

今回のイラン問題に関する米仏首脳会談は、6月上旬までに行われる北朝鮮の金正恩労働党委員長との米朝首脳会談が、どのような進展を見るのかを予測する上で参考になる。

米朝首脳会談は「ボディランゲージ」にも注目

会談場所は諸説ある。(1)米朝ともに大使館を置くモンゴルの首都ウランバートル、(2)米朝ともに国交締結のシンガポール、(3)金正恩氏が幼少期を過ごしたスイスの国際都市・ジュネーブ、(4)南北を分断する板門店の軍事境界線の北朝鮮側にある「板門閣」、(5)北朝鮮最大の港湾都市・元山沖合の公海に停泊させるクルーズ船上――などだ。

そして筆者の関心は、果たしてトランプ氏は金正恩氏と初対面した時にどのようなボディランゲージを示すのかである。よもやシャッグすることはないが、するとしても中国の習近平国家主席にしたリスペクト・シェイク(相手を敬する握手)ではないか。

習近平国家主席と握手を交わすトランプ大統領(Photo by GettyImages)

トランプ氏がマクロン氏との共同記者会見でつかったワーディング、「get rid of nukes」(核兵器を捨てる)ことに金正恩氏が同意をしなければ、トランプ氏が会談の席を立つことも十分にあり得る。なぜならば、米朝首脳会談にボルトン氏が同席するからだ。

トランプ・金正恩会談の先行きを見通すことは、あまりにも不確定要因が多くて難しい。トップ会談のイニシアチブを決める会談場所、対北朝鮮強硬派のボルトン氏の存在、非核化の定義とその検証方法、金体制の保証の中身(文書化、条約化)などだ。

大型連休後には、現在水面下で進行中の米朝協議の内容が少しずつ表面に出てくるはずだ。詳細な見立ての開陳には猶予をいただきたい。

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『国家に従わない官僚「ディープ・ステート」が活発化 米国の筆頭はモラー特別検察官? 日本の財務官僚や防衛省制服組は?』(4/27JBプレス 高濱賛)について

4/28看中国< 听者骇然!毛泽东在大饥荒时期的部分语录(图)=聞いた人は仰天 毛沢東の大飢饉の時の語録>①「中国は領土も広く、資源も沢山あるが、田んぼは少しあるだけ。人口が多すぎ。米がなかったらどうする?食べるのを少なくせざるを得ない。食べ過ぎて腹がパンパンになるのは漫画の外国資本家と同じ」②外国貿易省に「穀物、大豆、植物油」を国民から供出させて輸出に回すよう指示。次には「肉は国内市場を縮めて輸出に回せ。果物や茶葉は輸出を先にし、残りを国内に回す」よう指示③農民の収穫に対する供出について「調べて、出さないのは無理にでも出させる」よう省の書記に命令④同じく、「生産小隊は自分達の取り分を誤魔化している。見張りを立てろ」と。農民は「昼には大根の葉を食べ、夜にやっと米にありつける。取り分を誤魔化すなんて不名誉な話。共産主義の風格はどこに行った?農民は農民、こんなものである」と⑤水利事業で河南省と安徽省を表彰した時、「河南省は300億m2の工事をしたというが、自分は3万人それで死んだのを見た。安徽省は100億m2の工事で、1万人の死者を見た」と。甘粛省の副省長は「人命と水利工事の交換」と批判したら、「右派反党集団」と決めつけられた⑥「休むな。これこそが共産主義の精神」⑦「生産第一、生活第二」⑧「往生するのは良いこと。孔子がまだ生きていて懐仁堂で会議すれば、2000歳を超える。これは良くない。弁証法で言えば、死に賛成しないのは形而上学である。荘子の妻が死んだときに子供を慰めるために歌を歌ったがこれが正しいありかた。人が死んだら宴会を開いて祝おう。中国の歴史上、人口の半分が減ったのは何度もあること」⑨「人が亡くならないのは駄目。死ぬのはいいことがある。肥料になる」⑩「水利工事以外、いろんな事業にいろんな人が携わっているが、人が多すぎ。中国人の半分はどうしても死ぬべきである。生き残った半分の内1/3か1/10は死んだ方が良い。5千万人が死んでも、君たちの仕事はなくならないが、少なくとも私の仕事は要らなくなる。トップだけの問題である。良く議論してやってくれ。私はどうすることもできない。但し、死人は私を首にはできない⑪毛が故郷に帰った時に親戚の歓待を受けたが、親戚は腹いっぱいに食べられない様子であった。「今は、3・4両食べられる。過去と比べて良いではないか」と。

相変わらず毛には傲慢な姿勢が窺われます。独裁者の必然なのでしょうけど。日本でも安保の時に、紅衛兵宜しく全学連の一部の者が毛沢東語録を振りかざしていたと記憶していますが、彼の人となりを知っていたのでしょうか?愚かとしか言いようがない。国民を一番不幸にした人物を尊敬するとは。

https://www.secretchina.com/news/gb/2018/04/28/856562.html

4/28スプートニク<米、朝鮮半島からの米軍撤退を北朝鮮と議論の用意>トランプ・金会談の時にトランプ側が持ちだすのでは。但し、北から核兵器と化学兵器を廃棄させ、拉致被害者の全員帰還が果たされてからにしてほしい。北の時間稼ぎを許さず、大量破壊兵器の場所を徹底捜索して解体するまでは残しておいた方が良いでしょう。

https://jp.sputniknews.com/politics/201804284831210/

高濱氏の記事にある通り、CIAやFBI、NSAには民主党やグローバリストのシンパが沢山いるのではという気がします。トランプの足を引っ張るため、機密漏洩する輩が居るので、トランプは人事をわざと空白の状態にしていると思われます。ホイッスルブロアーは正義の為とか思ってやっているのかもしれませんが、当然機密漏洩は犯罪です。金やポスト、過去の犯罪の隠蔽等が絡んでいる場合もあるのでは。

日本も同じですが、高濱氏は自衛隊の日報隠しについては制服組が意図的にやったと思っているようです。制服組と背広組の対立の構図で捉えるからでしょう。本質的な問題として、自衛隊の中にもスパイがいて日本共産党に渡した方を問題とすべきでは。中共にもっと大事な情報が洩れている可能性だって考えられます。そもそもで言えば、自衛隊を他の省庁と同じく情報公開の対象にするのがおかしい。敵を利するだけです。防衛大臣は、毅然として公開を拒否すべきです。憲法9条を改正して軍にしないと左翼が情報公開を利用して中共を喜ばせるだけになります。スパイ防止法も作らないと。

記事

ロバート・モラー米特別検察官(資料写真)。(c)AFP PHOTO / SAUL LOEB 〔AFPBB News

「国家の内部に潜んでいる国家に従わない官僚」

「Deep State」(ディープ・ステート)という言葉がある。「国家の内部に潜んでいる国家に従わない官僚」とでも訳すのだろうか。

時の大統領や首相に反旗を翻す官僚軍団である。言葉の起源はバールーフ・デ・スピノザ*が書いた「Imperium in Imperio」からとも言われている。

*バールーフ・デ・スピノザは17世紀のオランダの哲学者。デカルト、ライプニッツと並ぶ17世紀規制合理主義哲学者。スピノザの汎神論はカントやヘーゲルらのドイツ観念論へ強力な影響を与えた。

米国では以前からあったが、ドナルド・トランプ氏が大統領になって以来、その支持者たちが盛んに使っている言葉である。

その例がロシア疑惑捜査に関する内部情報が次々とメディアに漏洩されている点を重視し、それが「ディープ・ステート」の仕業だという指摘だ。

保守派陰謀論者は連邦捜査局(FBI)や米中央情報局(CIA)の中にこうした勢力がいると激しく批判している。

陰謀説で民主党歴代政権やブッシュ政権を糾弾

Killing the Deep State; The Fight to Save President Trump By Jerome R. Corsi Ph.D Humanix Books, 2018

本書『Killing the Deep State』はその「ディープ・ステート」の実態を暴いた警告の書。著者は超保守派のベストセラー作家、ジェローム・コージ氏(71)だ。

同氏は徹底したリベラル派嫌い。民主党歴代政権だけでなく、ブッシュ一家を共和党保守派の邪道だとして叩いてきた。

陰謀論を「天下の宝刀」にし、本を出すたびに物議を醸し、それがベストセラーになっている。

著書を著す一方で、保守派サイトの「WorldNetDaily 」や「Human Event」に健筆をふるっている。2017年からは保守派サイトの「InforWars」のワシントン支局長を務めている。

特に話題になった本には『The Obama Nation』や『Unfit for Command』。

前者はバラク・オバマ氏が米国籍ではないとする「出生証明疑惑」(のちに誤報だったことが判明)、後者はジョン・ケリー民主党大統領候補(当時、のちに国務長官)の軍歴詐称をベトナム戦争に参戦した同僚兵士と共著で暴いた。

ハーバード大学院で哲学博士号、一時は大統領選に立候補

ハーバード大学大学院で哲学博士号を取得したのち、銀行・金融界入り。信託投資業務でかなり成功を収めていた。

ソ連邦崩壊直後、ポーランドへの復興開発計画に投資する信託投資で一儲けしようとした。しかし、多額の損失を出し投資家たちから刑事訴訟を受けたものの、辛くも訴追だけは免れた。

その後政界進出を狙い、上院議員選挙出馬を模索、2008年には第3党の「Constitution Party」(立憲党)から大統領選に立候補するが、途中で断念。

一時は政界進出への強い意志を抱いていたようだ。その後は保守系メディアへの執筆活動に活動の拠点を移した。

コージ氏が注目されたのは、前述の2004年の大統領選に出馬していた民主党大統領候補のジョン・ケリー上院議員(当時)の軍歴詐称を取り上げた時だ。

ケリー氏はベトナム戦争に参戦した際に同僚兵士たちを救出したとして「名誉戦傷章」などを授与されている。

ところが、当時一緒に戦っていた兵士の1人、ジョン・オニール氏が「でたらめだ。救出しなどしていない」と追及したのだ。

この証言を基にコーシ氏が書いたのが前述の『Unfit for Command』だった。

大統領選の最中、この本は爆発的売れ行きを見せた。結局、ケリー氏はジョージ・W・ブッシュ共和党大統領候補に負けてしまう。その大きな要因の1つがこの軍歴詐称といった見方が支配的だ。

FBI、CIA、NSAの中にいる「ディープ・ステート」

コーシ氏は本書を書いた理由についてこう書いている。

「この本の主題は、トランプ大統領が『ディープ・ステート』一味が計画しているクーデターの標的にされているという事実だ」

「ディープ・ステートとはCIA(米中央情報局)、FBI(米連邦捜査局)、NSA(国家安全保障局)をはじめとする情報機関の中に潜んでいるグローバリストが実現を目指す『ニュー・ワールド・オーダー』(新世界秩序)にコミットしている連中のことである」

「ヒラリー・クリントン前国務長官が大統領選に敗れた時、ディープ・ステートは、地球上のどこかで常に戦争をすることを望む産軍複合体から託されたチャンスを失った」

「ディープ・ステートはトランプ政権に危機感を抱いている。トランプ政権は彼らにとって百害あって一利なしなのだ」

「そのディープ・ステートにおける最も獰猛な戦士は、目下ロシア疑惑捜査を続けているロバート・モラー特別検察官(前FBI長官)なのだ」

「モラーは、トランプ大統領を一掃するために、彼の仲間である情報機関員や民主党や主要メディアと共同歩調をとっている」

「民主党全国委員会のトム・ペレス委員長は、民主党支持者の億万長者ジョージ・ソロスから得たカネを使って『ウォール街抗議デモ』、『アンチファ』(ネオナチに対抗する極左集団)、『ブラック・ライブ・マター』(新手の黒人公民権運動団体)などの無政府暴力集団の活動を激化させている」

「ロシア疑惑」捜査をやめ、「クリントン疑惑」捜査をせよ

こうした『ディープ・ステート』のトランプ追い落とし工作にどう対処したらいいのか。コージ氏はこう進言している。

「まず、ホワイトハウスは記者会見を一切しないこと。第2は連邦準備制度理事会を廃止し、公的支援をテコ入れすること。第3はロシア疑惑捜査を中止し、その代わりにヒラリー・クリントン氏とジョン・ポデスタ*、トニー・ポデスタを含む支援者たちに対する刑事訴追を始めることだ」

*ジョン・ポデスタ氏はクリントン政権で大統領首席補佐官、オバマ政権では政治顧問を務めた。トニー氏はワシントンで最強のロビイストとされる人物。クリントン、オバマ両氏を大統領に当選させた最大の後ろ盾とも言われている。

まさに描かれているのは、「陰謀好きなコージのファンタジーの世界で繰り広げられる出来事」(評論家のアレックス・ニコラス氏)かもしれない。

日本の財務省改竄は「ディープ・ステート」の仕業?

だがその一方で、著者が<国家という集合体の一部で国民が選んだ政権に逆らい、事実を隠蔽し、あるいは政権に不利な機密を漏洩する狡猾な「影の政府」が存在すること>を暴いている点は見逃すわけにはいかない。

今、ディープ・ステートがやっていること(ロシア疑惑に関するトランプ政権内部の不正疑惑や捜査状況を暴露すること)が正しいことかどうかは別にしての話だ。

日本の現状に照らしてみると、財務省や防衛省の一部官僚による公文書改竄や隠蔽などはまさに広義の意味で「ディープ・ステート」と言えなくもない。

国民によって選ばれた「国家」に反逆した行為だったという点では「ディープ・ステート」だ。

もっとも財務省の官僚などの行動(虚偽証言や改竄)は、「時の総理大臣」の意向を「忖度した」可能性(?)が濃いような印象を受ける。これを国家に逆らう行為と見るか、あるいはただ単に「安倍首相の国家」を守る行為と見るか――。

本書とは離れて「ディープ・ステート」をめぐる論議は米国だけに限らない。

防衛省の日報隠し工作にしても、文民統制にあの手この手で風穴を開けようとする制服組の「ディープ・ステート」が蠢いているという「陰謀説」は成り立たないだろうか。

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『対米報復はロシア自身の首を絞める 経済規模は15分の1。反撃できないプーチンの悩み』(4/27日経ビジネスオンライン 池田元博)について

4/28には「士気の集い」のコンスタンチン・サルキソフ先生の講演会に出席しました。北方領土問題では「56年重光葵外相時代、2島返還で決着しようとしたが、米国がそれでは沖縄は返さないというので潰れた。今は2島返還も難しくなっている。ロシアはそこに米軍基地を造られるのを嫌がっている。日本に造らないことを確約できるかと聞いたら、それはできないとの返事だったので」とのこと。エリツインは6回も日本人を抑留したことに謝罪したとのこと。会場からの質問で、「ロシアのクリミア侵攻の論理は、クリミアはロシアの領土というものであった。であるなら北方領土も日本の固有の領土なのだから返還すべきでは」との問いに、「クリミアの件は、頭では乱暴すぎる、国際法に準ずべきと思っても、心は喜んでいる。サンフランシスコ条約の第2条には「(c) 日本国は、千島列島並びに日本国が千九百五年九月五日のポーツマス条約の結果として主権を獲得した樺太の一部及びこれに近接する諸島に対するすべての権利、権原及び請求権を放棄する。」とあり、ロシアは北方4島も千島列島に入ると主張し、日本は北方4島は南千島で千島列島に入らないと主張している。1875年にサンクトペテルブルグ条約(樺太・千島交換条約)が結ばれ、これで日露の国境線が確定した。このときに樺太はロシアに、千島18島は日本の領土とした。2島返還を固有の領土と主張すれば可能性はあるかもしれない」とのことでした。先生は、ユダヤ人と並び優秀と言われるアルメニア人の血が入っているという事で、頭脳明晰かつ流暢な日本語を話し、偏頗な見方がないダンデイな紳士でした。

自由世界の敵は共産党が支配する中国と思うのですが、何故かロシアを目の敵にしています。中国はやり方が上手いのでしょう。金の配り方や女のあてがい方、オリエンタリズム(異国趣味)も、白人でクリスチャンであるロシアと違い、興味をそそられるのでしょう。脱線しますが楊海英氏の『「中国」という神話 習近平「偉大なる中華民族」のウソ』の85頁には「他者の実態には全く無関心で、専ら自らのイメージで異文化について語り、描き、そして歪曲することをオリエンタリズムという。このオリエンタリズムという概念はパレスチナ出身のエドワード・サイードが出した概念」とありました。中国人と朝鮮半島人を見て定義したのではないかと思われるほどピッタリです。

4/28産経ニュース<優先監視国に中国など12カ国 米、知財保護の強化要求>

https://www.sankei.com/world/news/180428/wor1804280040-n1.html

やっと、中国にも制裁を課すような動きになってきましたが、ロシアへの動きと比べると緩慢です。南シナ海を侵略しているのですから、ロシアのクリミア侵攻と同じでしょう。民主党や共和党主流派、デイープステートが中国の賄賂攻勢にしてやられているとしか思えません。トランプはエスタブリッシュメントに対して頑張っていると思います。

池田氏の記事にありますようにロシアは米国の1/15のGDPしかないのだから、核を除き恐れることはないでしょう。米露で中国を封じ込める方が米国の覇権を長持ちさせると思うのですが。

記事

米ロ関係が大きく冷え込む中、米国のトランプ政権が今度はロシアの新興財閥も標的にした対ロ経済制裁を発動した。通算4期目の任期入りを控えたプーチン政権にとって大きな打撃となる。対米報復を唱えているものの、有効な策を打てずに二の足を踏んでいるのが現実だ。

対米報復制裁に二の足を含むロシアのプーチン大統領(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

米国のトランプ政権は4月6日、ロシアが世界で様々な「悪意ある行動」を繰り返しているとして、新たな対ロ制裁措置を発動した。昨年8月に発効した対ロ制裁強化法などに基づく措置で、ロシアで「オリガルヒ」と呼ばれる大手新興財閥の経営者など企業家7人、その傘下企業や国営の兵器輸出企業など14社、政府高官17人を制裁対象とした。

制裁対象となった企業家は、大手天然ガス会社「ガスプロム」のアレクセイ・ミレル社長、「ガスプロムバンク」のアンドレイ・アキモフ頭取、大手石油会社「スルグトネフチェガス」のヴラジミル・ボグダノフ社長、ロシア対外貿易銀行のアンドレイ・コスチン頭取、複合企業「レノヴァ」グループを率いるヴィクトル・ヴェクセルベルグ氏、世界有数のアルミニウム会社「ルサール」などを実質支配するオレグ・デリパスカ氏らだ。

一方でヴラジミル・コロコリツェフ内相、ニコライ・パトルシェフ安全保障会議書記など、治安関係を中心にした政府高官も多数含まれている。

今回の特徴は何といっても、プーチン大統領に近いとされる大手新興財閥の経営者デリパスカ、ヴェクセルベルグ両氏が制裁対象となったことだろう。両氏が実質支配する企業も制裁対象になっており、とくにデリパスカ氏の場合は「ルサール」、大手自動車会社「GAZグループ」、複合企業「En+グループ」など複数の企業が制裁リストに加えられた。制裁対象となった個人や企業は米国内の資産が凍結され、米国企業や銀行との取引なども禁止される。

トランプ政権はロシアによる「悪意ある行動」の例として、ウクライナ領クリミア半島の占領継続、ウクライナ東部の紛争と制圧、シリアのアサド政権に対する軍事支援や武器供給、西側の民主主義排除の試み、敵対的なサイバー攻撃などをあげている。要はクリミア併合に始まり、シリアへの軍事介入、さらには米大統領選を始めとする米欧の民主選挙への介入疑惑へと至るプーチン政権の一連の「悪事」に対する報復というわけだ。

では、プーチン政権の一連の外交政策とは一見、無関係なようにみえる新興財閥の経営者が制裁対象に含まれたのはなぜか。

財閥経営者も制裁対象になった理由

米財務省はプーチン政権が「オリガルヒや政界エリートの利益を過度に重視した政策を行っている」と指摘。オリガルヒらはそれによって巨万の富を築き、資金の一部がアサド政権への軍事支援など、ロシアの「悪意ある行動」に利用されていると批判した。

デリパスカ氏については、「私自身は国家と切り離すことはできない」と自ら公言しており、ロシアの外交旅券の保有も認めていると強調。さらに同氏はマネーロンダリング(資金洗浄)、ビジネスライバルへの脅迫、政府高官に対する不法な盗聴などの嫌疑がかけられているほか、政府高官への贈賄、ビジネスマンに対する殺人依頼、暴力犯罪組織(マフィア)とのつながりなどの疑惑も取り沙汰されていると指摘している。

トランプ大統領は昨年8月、議会の上下両院で採択された対ロ制裁強化法に署名した。これを受けて米財務省は今年1月末には、プーチン大統領に近い人物を列挙した「クレムリン・リスト」を公表している。リストはロシアの各省庁の閣僚、大統領府幹部を含めた政府高官や国営企業経営者114人と、大手新興財閥など大富豪の実業家96人の合計210人を列挙していた。

米財務省は当時、クレムリン・リストは「制裁リストではない」と強調していた。だが今回、デリパスカ氏やヴェクセルベルグ氏らを制裁対象としたことで、「クレムリン・リスト」に載っている誰もがある日突然、新たな制裁対象となり得ることも暗示した。海外企業などがこうした実業家との取引を控える傾向は今後さらに強まるとみられ、ロシアに与える経済的、心理的な打撃はかなり大きいと言えそうだ。

米政府がデリパスカ氏とその傘下企業の「ルサール」を制裁対象としたことは、国際的にも大きな波紋を広げている。米国による二次制裁を恐れて、世界の多くの企業がルサール社製アルミの調達を停止。ロンドン金属取引所(LME)や米国のシカゴ・マーカンタイル取引所も同社製アルミの取り扱いをやめ、アルミの国際価格が急上昇した。

ルサールとの取引が多いドイツやフランスなどでは、制裁の適用除外を求める声も強まった。予想外の影響に慌てた米財務省は、米企業とルサールとの取引停止の期限を今秋まで延期したほか、デリパスカ氏との関係が切れれば同社を制裁リストから外す可能性も示唆した。とはいえ国際的な市場混乱は当面、避けられそうにない。

ロシア国内でもルサールを中心に制裁対象企業の株式が急落。通貨ルーブルの下落にも拍車がかかるなど、影響が広がっている。政府系世論調査会社の全ロシア世論調査センターが直近で実施した調査でも、米ドルやユーロに対してルーブルが下落している理由について、回答者の23%が「対ロ制裁」の影響だと分析している。

ロシアではすでに、米国の制裁対象となったロシア企業を政府が全面支援すべきだとの意見が広がっている。マントゥロフ産業貿易相は「我々はさらなる支援をしていく」と表明。制裁対象企業からの国家調達を増やす案などを検討していく方針を明らかにした。さらに極端な方策として、ルサールなどの一時的な国営化案も浮上している。ペスコフ大統領報道官によれば「制裁対象企業に対する支援策のひとつとして提案されている」という。

対米制裁に“二の足”を踏まざるを得ない事情

一方で、今後の焦点となるのは米国への報復制裁だろう。議会の上下両院は連休明けの5月中旬にも、具体的な決議案を採択させる方向で準備を進めている。ただし、経済分野の対米報復には大きな難点がある。「米国と違ってロシアには、米国のビジネスや政府に影響を与えるような方策がない」(国際政治学者のフョードル・ルキヤノフ氏)からだ。

現在、ロシア議会で検討中の主な報復制裁案は、米国産のウイスキーを含めたアルコール飲料やタバコ、医薬品などの輸入制限だ。ロシアはすでに米欧からの食肉、魚、乳製品、野菜等の輸入を禁止しているが、他の食料品やノンアルコール飲料なども含めて禁輸対象を拡大すべきだと主張する声も出ている。

ロシアには一時的にせよ、米国企業に深刻な打撃を与える報復措置が全くないわけではない。ロシアが今でも得意とする航空・宇宙、原子力分野の協力停止は有力な方策となり得る。例えば、米ボーイング社はチタンの約35%を、ロシア国営軍事企業傘下の世界有数のチタン製造会社「VSMPOアヴィスマ」からの調達に頼っている。国営原子力会社「ロスアトム」は濃縮ウランの供給も含めて米原子力会社との関係が深い。

ロシア議会関係者の間では、こうした航空・宇宙、原子力分野の報復制裁に踏み込むべきだとの強硬論も出ている。しかし、当の企業側は「契約をほごにすれば市場を失う。約2万人の従業員も危機的状況に陥る」(VSMPO)などと猛反発しているのが現状だ。VSMPOの場合は7割が輸出向けで、すでに世界49カ国の300社以上の企業と取引関係があるからだ。

プーチン政権も「我が国の企業自体が反対しているのに、なぜ(制裁を)発動しなければいけないのか」(マントゥロフ産業貿易相)と総じて否定的だ。原油や天然ガスなどの資源輸出に頼るロシアにとって、航空・宇宙、原子力産業は資源依存脱却を目指すうえでも、大事に育てていくべき数少ない有望分野でもある。下手に対米報復制裁に踏み込めば、逆に自分の首を絞めかねないジレンマを抱えているわけだ。

米トランプ政権は英国で起きた神経剤によるロシア人元情報機関員の襲撃事件を巡っては3月26日、英政府に同調した対ロ制裁措置として、ロシア外交官60人の国外追放とシアトルのロシア領事館の閉鎖を打ち出した。

対するプーチン政権は「反ロシアキャンペーンが急速に広がっていることに驚きを隠せない」としつつも、これに対する報復制裁の発動は極めて迅速だった。米国が制裁を発表したわずか3日後の3月29日、同じく60人の米国外交官の国外追放とサンクトペテルブルクの米総領事館の閉鎖を通告している。

ロシアの新興財閥などを標的にした米国の対ロ制裁に対しても、プーチン大統領は本来なら、速やかに報復措置を打ち出したかったのかもしれない。だが、ロシアの経済規模はいまや、米国のおよそ15分の1に過ぎない。米ロ間の圧倒的な経済レベルの差は否定しようがなく、プーチン政権もこと経済分野に関しては対米報復に慎重にならざるを得ないようだ。

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『北京のスパイ通報件数は1年間で5000件 通報の報奨金は17万~850万円』(4/27日経ビジネスオンライン 北村豊)、『海外旅行年6回に車はベンツ、中国中産階級の謎 中国の庶民=日本の大企業を定年退職した60代』(4/26日経ビジネスオンライン 山田泰司)について

4/27 FNNニュース<米「米朝会談決裂すれば“北”攻撃」と日本に説明>

https://headlines.yahoo.co.jp/videonews/fnn?a=20180427-00390722-fnn-pol

4/27日経ビジネスオンライン 鈴置高史<米国の空爆を防ごうと「時間稼ぎ」に出た南北 首脳会談は「完全な非核化」と「平和」をうたってみせた>

http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/226331/042500168/?P=1

鈴置氏の記事は昨日、本ブログで書いた通り、南北合同で米国や世界を騙そうと言うものです。日本のメデイアは知っていながらそれに乗ろうとします。悪質としか言いようがない。リベラルのNYTやWPでさえも北の核放棄には懐疑的なのに。

4/27日経<海外メディア、緊張緩和に期待 北朝鮮の非核化には懐疑的>

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO2993951027042018FF8000/

とありました。まあ、このままいけば軍事衝突するのでは。

4/27看中国<高校“教兽”多?毛泽东江泽民推动淫乱害国(组图)=高等教育にはケダモノ教師が多い?毛沢東と江沢民は淫乱により国を害した>4/22本ブログで伝えました『中国の名門大学を騒がせたセクハラ告発運動』の続きのような記事です。中国の様な政府や権力者を批判する自由のない国では、職場でも学校でも権力者が絶対となります。

林昭という北京大学の女性は右派と決めつけられ収監され、毛により8カ月で出して貰い、性饗応を強制されそうになったが拒絶、銃殺となった。14歳だった陳恵敏は毛に強姦され、大躍進の飢饉の時代に家族には食物と日用品が配られた。毛は食べていないようなふりをしていたが食欲と性欲は旺盛だった。毛は「金瓶梅」をよく読んでいて、その通りのことをさせた。少女たちの面前でセックスするのを見せて楽しんだ。毛は女性兵士、文芸団員、スター、服務員などより取り見取りに手を出した。江沢民も毎日処女を相手にしていた。周永康は29人も情婦がいた。周は薄熙来からの女も受け取っていたし、幼女にまで手を出していた。

金一族と一緒、共産主義者が如何に道徳・倫理感を持たないかです。

https://www.secretchina.com/news/gb/2018/04/27/856541.html

北村氏の記事で、5000件も通報があっても大部分ガセというのはその通りでしょう。通報することにより共産党の心証を良くしておきたいと思うからです。事実とは関係ありません。五毛党と同じでプロパガンダを広める役割を果たします。政敵を追い落とすのにも使われるでしょう。

日本人は中国に行ったら(行かないのがベストですが、業務上行かざるを得ないこともあります)、スパイ罪をでっち上げられて逮捕される可能性があることにもっと留意しないと。旅行者であっても、公安が麻薬を旅行バッグに忍ばせて逮捕することだってあるでしょう。冤罪が当り前の国ですから。『レッドコーナー 北京のふたり』の世界です。

これに対して日本はスパイ防止法がないため、スパイ天国になっています。スパイに寛容なのは国を滅ぼします。左翼メデイア、野党、学界、役人の中にはスパイがごろごろいるのでは。だからスパイ防止法に反対するのです。潔白であれば恐れることはないはずです。

山田氏記事は、中国の膨大な債務の存在とバブル崩壊の可能性を忘れています。中国経済は砂上の楼閣です。米国が経済的締め付けを強化すれば、それが引き金になって、バブルが崩壊するかもしれません。

北村記事

スパイ通報を受け付ける電話番号「12339」には多くの情報が寄せられている

北京紙「新京報」のウェブサイト“新京報網(ネット)”は4月9日付の速報で「『“公民(市民)”が“間諜(スパイ)”の手掛かりを通報するのを奨励する規則』(以下「スパイ通報規則」)公布から1年で5000件近い通報を受ける」と題する記事を掲載した。その全容は以下の通り。

【1】2017年4月10日に“北京市国家安全局”がスパイ通報規則を公布・施行して以来、国家安全機関として唯一外部へ発表した市民と組織がスパイ行為の手掛かりを通報する電話番号の「12339」は鳴りやまず、顕著な成果を上げている。

【2】統計によれば、この1年来、北京市国家安全局が受けた社会各界の人々および“境外人士(境界外の人)”<注1>が「12339」へ電話をかけた通報と“信訪(陳情)”ルート経由の通報は5000件近くに達し、国家安全機関が法に基づき偵察行動を深く展開し、スパイ犯罪に有効的な打撃を与えるのに大きく貢献した。北京市国家安全局は『中華⼈⺠共和国“反間諜法”』(以下「反スパイ法」)と『スパイ通報規則』の関連規定に基づき、大きく貢献した組織と個人に対して相応の報酬を支払っている。

<注1>の“境外人士”には外国人の他に、中国の特別行政区である香港および澳門(マカオ)、さらには海外に居住する華僑や中国国民が含まれると考えられる。

【3】北京市国家安全局の関係責任者は次のように述べた。すなわち、2015年に「12339」の通報電話が正式に開通して以来、特に『中華人民共和国国家安全法』(以下「国家安全法」)が公布されて施行された後は、北京国家安全機関は組織に深く入り込んで「4月15日国民全体国家安全教育日」の宣伝活動を展開し、多くの人々が国家の安全を擁護し、共にスパイ犯罪に打撃を与える意識を絶えず増強し、情熱を高く保ち、社会の中に隠れていたスパイ活動が馬脚を現さずにはいれなくした。

通報により「発覚」したスパイ活動

【4】その結果として得られた成果の例を挙げると以下の通り。

(a)劉某はインスタントメッセンジャー「QQ」を通じて、国内の某計算機研究所の研究員である“陳某”と交流し、陳某に対し何度も研究所内の業務内容を打診した。陳某は婉曲に断っていたが、劉某があまりにも執拗なので、「12339」へ電話を掛けて国家安全機関に状況を通報した。これを受けて国家安全機関が調査を行った結果、劉某は我が国の科学研究者を引き込んで国外へ科学技術情報を提供していた犯罪事実が判明し、陳某には報奨金が支払われた。

(b)某大学の博士である“李某”は国外で開催された学術会議に参加した際に、自称某国国際研究機関研究員のピーターという男と知り合い、帰国後も連絡を保ち、2人はメールを通じて何度も学術交流を行い、ピーターは李某へ学術資料や小さな贈り物を送っていた。1年の交流を経て、ピーターは李某に米国のグリーンカードを手続きしてやると持ち掛け、その代わりに彼が参画している科学研究プログラムの状況を密かに知らせるように要求した。

李某はこの事態を「12339」へ電話して国家安全機関へ通報した。国家安全機関が調査した結果、ピーターは外国の情報機関の人間で、李某が面倒事から逃れ、すんなりと国外へ逃れるのを指導する役割だった。この通報により、李某は処罰を免れただけでなく、国家安全機関から報奨金が支払われた。

(c)某軍事研究所の職員である“趙某”は研究所に隣接した書店で本を買った時、外国人から話しかけられ学術的なことを問われ、ついでに仕事の内容を聞かれて、内部資料を大金で買うと持ち掛けられた。趙某はこれを厳しく拒絶し、直ちに「12339」へ電話を入れて、この状況を通報した。調査を経て、国家安全機関は当該外国人が国外情報機関を背景に持つことを発見し、趙某に対して報奨金が支払われた。

(d)タクシー運転手の“王某”は仕事中に数名の外国人が得体のしれない装置を携帯して“軍事禁区(軍関連の立ち入り禁止区域)”付近に長い間留まっているのを発見し、「12339」へ電話を入れて国家安全機関に状況を通報した。国家安全機関が深く調査した結果、この数名の外国人は国外情報機関を背景に持ち、地下探査設備を用いて我が軍の重要秘密を調べようとしていたことが判明した。このため、王某には報奨金が支払われた。

(e)こうした成功事例とは別に、通報電話「12339」が妨害を受けることもある。たとえば、某機密関連機関の職員である“孫某”は、職務上の過失で何度も上司の“楊某”から叱責を受けて逆恨みし、報復しようと「12339」へ電話を入れて、楊某が外国へ機密書類を売っていると通報した。調査を経て、孫某の話が根拠ない虚言と判定した国家安全機関は、孫某の勤務先へこの旨を通報し、孫某は相応の処罰を受けた。また、無職の“周某”は、何度も理由なく「12339」へ電話を入れ、正常な通報業務を妨害したばかりか、通報受付係を侮辱し、何度説諭しても効果がなかったので、公安機関は周某に対して拘留15日間の処罰を科した。

【5】国家安全領域の関係専門家は次のように説明している。通報電話「12339」の開設は、中国共産党第19回全国代表大会で“習近平”総書記が提起した“堅持以人民為中心(人民を中心にすることを堅持する)”という重要講話の精神、党の大衆路線の積極的実践の堅持を、国家安全機関が徹底的に実行したものである。スパイ通報ホットラインの開設は我が国が創始したものではなく、世界中で普遍的に行われているものである。スパイ犯罪に打撃を与え、国家の安全を擁護することは、市民1人1人の責任と義務である。

【6】北京市国家安全局の関係責任者は次のように表明した。すなわち、『国家安全法』、『反スパイ法』およびその実施細則などの国家安全法律法規の宣伝をさらに強化し、「“反奸防諜(裏切り者に反抗し、スパイを防ぐ)”のは、“人人有責(1人1人に責任がある)”」という濃厚な雰囲気を積極的に作らねばならない。教育や訓練を通じて、大衆の国家安全意識とスパイ活動を警戒・抑止する能力を常に高め、大衆の“火眼金晴(不正を見抜く力)”を鍛えさせ、各種スパイ活動の隠れ場をなくし、“反奸防諜”の鉄壁な長城の構築に努力し、着実に国家の安全と首都の安全を擁護しなければならない。

『国家安全法』と『反スパイ法』とは

さて、上述した記事の中にあった『国家安全法』と『反スパイ法』とは何か。『国家安全法』は2015年7月1日に公布・施行された法律で、政治、国土、軍事、文化、科学技術など11分野の安全を守るための国家としての任務を明確に規定したものである。一方、『反スパイ法』は2014年11月1日に公布・施行された法律で、スパイ活動の取り締まり任務を具体的に規定したものであり、同法の第38条はスパイ活動の内容を5項目に分けて規定している。当該5項目は以下の通り。

スパイ組織およびその代理人が実施、あるいは他人に実施を指示、資金援助、あるいは国内外の組織、個人が相互に結託して実施する中華人民共和国の国家安全を脅かす活動。

スパイ組織に参加、あるいはスパイ組織およびその代理人の任務を引き受けること。

スパイ組織およびその代理人以外のその他国内外の機構、組織、個人が実施、あるいは他人に実施を指示、資金援助、あるいは国内機構、組織、個人が相互に結託して実施すること。

敵のために攻撃目標を指示すること。

その他のスパイ活動を行うこと。

スパイ通報報奨金の金額

北京市公安局が2017年4月10日付で『スパイ通報規則』を公布・施行したことは上述したが、その第5条には報奨金の具体的な金額が次のように明記されている。

【a】スパイ活動の防止、阻止、あるいはスパイ事件の解決に、特に大きな作用を発揮し、特に突出した手掛かりで貢献した者に対して、10万~50万元(約170万~850万円)の報奨金を与える。

【b】スパイ活動の防止、阻止、あるいはスパイ事件の解決に、大きな作用を発揮した手掛かりに対して、5万~10万元(約85万~170万円)の報奨金を与える。

【c】スパイ活動の防止、阻止、あるいはスパイ事件の解決に、比較的大きな作用を発揮した手掛かりに対して、1万~5万元(約17万~85万円)の報奨金を与える。

なお、同規則の第6条には「市民が通報した手掛かりが報酬基準に符合した場合には、北京市国家安全局から電話、公告などの方式で通報者に報奨金を受け取るよう通知する」とあり、第7条には、「通報者は報奨通知から90日以内に、本人の身分証明書あるいは委任状に基づき報奨金を受け取る」ことが明記されている。

こうした報奨金に釣られてかどうかは分からないが、文頭に述べた記事によれば、北京市では2017年4月10日のスパイ通報規則の公布・施行から1年間に5000件もの通報があった。1年間に5000件ということは、平均すると1日当たり13.7件の通報があった計算になる。中国ではそれほどスパイ活動が盛んなのかと突っ込みたくなるが、恐らく5000件のうちでスパイ活動の実態が伴っていたのは数件だけなのではないかと思われ、上述の記事にあった成果の例も本当の話かどうかは疑わしい。

国民の不満を抑制する効果も

ただ言えることは、スパイの手掛かりを通報することにより1万~50万元もの報奨金をもらえる可能性があるならば、報奨金を稼ごうと考える人は鵜の目鷹の目でスパイらしき人物を探そうとする。その対象は外国人や外国人と交流のある中国人となり、疑わしいと思えばいくらでもこじつけはできるから、「下手な鉄砲も数撃ちゃ当たる」式で「12339」へ通報する輩もいることだろう。一方、不運にも通報によってスパイの容疑を掛けられた人は、北京市国家安全局から身辺調査や取調べを受けるかもしれず、情報源たる通報者の名前などは秘匿されるから、被疑者はたとえ身の潔白が証明されたとしても、怒りをぶつける先がない。

そうなれば、「やられたら、やりかえせ」とばかり、被疑者とされた人が報復目的で何らかの理由を付けて、特定の嫌いな人物をスパイとして通報する可能性がある。こうした風潮が蔓延すれば、中国は自ずと人々が相互に監視する社会へと変貌する公算が大きい。と言うのは、中国は中華人民共和国成立以来ずっと、大衆をそそのかして大衆と戦わせ、大衆相互に思想的な誤りを告発させてきたからである。“文化大革命”(1966~1976年)の時期は、そうした動きが頂点に達し、人々は相互に中国共産党や“毛沢東”への忠誠心を監視し、忠誠心の欠如が発見されれば、親子間や兄弟姉妹間、さらには師弟間でさえも容赦なく告発が行われた。

上述した『反スパイ法』『国家安全法』『スパイ通報規則』は全て習近平が中国共産党中央委員会総書記に就任した2012年11月以降に公布・施行された法規だが、その背景には国内の安定を図り、国民の団結を促すためには、“境外敵対勢力(国外敵対勢力)”の存在が不可欠という習近平の意図が見え隠れする。こうした国外敵対勢力によるスパイ活動の取り締まりを強化し、スパイを摘発してその罪状を国民に示すことで、国民の視線を国外敵対勢力へ向けさせることができる。それは、国民の愛国心を刺激し、国民の意識を統一し、国内に蔓延する国民の各種不満を抑制する効果を持つ。

さらに言えば、習近平の独裁政権に反旗を翻す可能性がある敵対勢力や不穏分子を国外のスパイ組織と結び付ければ、いかようにも取り締まることが可能になる。こうした前提の下で、スパイ通報規則を活用して国民の相互監視を定着させれば、国内の敵対勢力や不穏分子を監視下に置くことが可能となり、長期政権の維持が保証されることになるのである。

ところで、2014年11月1日に『反スパイ法』が公布・施行されてから現在までに、少なくとも12人の日本人がスパイ活動を行ったとして逮捕され、このうち4人はすでに釈放されたが、6人はスパイ罪の容疑で起訴され、残る2人は未だに拘留中という。中国の『刑法』第110条の“間諜罪(スパイ罪)”には、「スパイ行為により国家の安全に危害を及ぼした者は、懲役10年以上の懲役刑あるいは無期懲役に処す。情状が比較的軽い者は、3年以上10年以下の懲役刑に処す」との規定があり、すでに起訴されている6人は裁判で有罪となれば、この規定に沿った判決が出ることになる。

スパイ容疑で逮捕・起訴された日本人

日中両国のメディアが報じた「2016年以降にスパイ容疑で中国当局に逮捕・起訴された日本人」を取りまとめると、以下の通り。

鈴木英司氏(日中青年交流協会理事長、現在61歳):2016年7月に日中交流イベントに参加するために訪問した北京市で拘束され、2017年2月に逮捕、6月に起訴された。逮捕・起訴された理由はスパイ行為に関与した容疑といわれるが、その詳細は不明。なお、初公判は8月に非公開で行われた模様だが、その後どうなったのかは情報がない。

中国の温泉開発会社の依頼を受けて山東省と海南省で地質調査を行っていた「日本地下探査」(千葉県船橋市)の社員と「大連和源温泉開発公司」(遼寧省大連市)の日本人社員計6人が、2017年3月にスパイ活動を行っていたとして拘束され、4人は7月に釈放されて帰国したが、両社の現場責任者2人は9月に逮捕され、その後起訴された。

樋口健氏(60歳代):遼寧省大連市で建造中の国産空母の写真を撮影したことにより、2017年5月に拘束され、同年9月にスパイ情報活動に従事したとして逮捕され、2018年3月に起訴された。

彼らが行ったとされるスパイ活動がどのようなものであったかは全く公表されておらず、日本側が起訴内容に反論しようにも、その方法がないのが実情である。ことわざに「君子危うきに近寄らず」とあるが、中国に滞在する際は、慎重に行動し、危険な場所にはできる限り近付かないことが肝要である。自分が常に監視されていると思って行動すれば、問題が起きる確率は大幅に減る。

文化大革命時代の忌まわしい相互監視の思い出を持つ人々は、誰一人として相互監視社会の再来を望んでいないと思うが、皮肉なことに歴史は繰り返すものらしい。

山田記事

中国の中産階級は日本の富裕層と似ていると考えると合点のいくことが多い(2018年2月・北京)

留学時代を含め、私は中国に足かけ20年近く暮らしたが、何年暮らそうが、中国のことなんていまだに分からないことだらけだ。

ただ、分からないながらも、最近になってようやく分かりかけてきたことがある。

それは、日本と比較してしまうから、分かるものも余計分かりにくくなるのではないか、ということである。

先に、20年あまり中国に暮らしたと書いた。香港も含めれば28年ぐらいになる。私はいま52歳だから、もはや日本以外の土地で生きた時間の方が長いことになる。

ところが悲しいかな、中国における生活のあらゆる局面で、日本と比較して考えている自分に気付いて愕然とすることがある。物事を考えたり判断するに当たって、自分の物差しを当てはめて考えてしまうのは当然のことなのだろうが、中国のことを考えるとき、自分が無意識のうちに手にしている物差しがいつまでたっても「日本製」だということに気付くのである。だからといって、「ダメだなあ」と自分に絶望したり苦笑したりはしないが、中国のことを考えるには、最初から「中国製」の物差しを当てて考える方が、回り道をしなくても済んだかもしれないな、と思うことが多々あるという話である。

例えば、中国では都市を中心に「中間層」や「中産階級」が育ってきて、この国の行方を左右する存在になりつつあるとの指摘を最近、日本のメディアで見かけることが多くなってきている。ただこの中間層、中産階級を日本のイメージに照らし合わせて考えてしまうと、戸惑うことが多い。消費行動や資産の程度が日本人のイメージする中産階級のそれと合致しないのである。

サラリーマンの平均月収は7599元だが……

中国の求人情報サイト「智聯招聘」が2017年10月に発表した「白領」(ホワイトカラー)の平均月収は全国37都市の平均で7599元。1元=約17円だから、約13万円ということになる。トップは北京の9900元、2位は上海の9365元、3位は深センの8666元で、37都市の中で最下位は黒竜江省ハルビンで6004元だった。ホワイトカラーといっても最近の日本の若い世代にはもはやピンとこないかもしれないが、都会でスーツを着て会社勤めをするサラリーマンのこと。すなわち、日本人がイメージする典型的な中間層ということになる。

この統計が示す層に属する中国人のサラリーマンを、私は上海で大勢知っている。ただどうも日本で言うところの中産階級の上を行く水準の生活を送る人が少なくないのだ。

一例を挙げよう。上海出身の50代前半の男性。10年前に中古で買った上海市内の持ち家のアパート(80平米)に再婚した1つ年上の妻と2人で暮らしている。外資系出版社に勤める20代半ばの1人娘は去年結婚した。彼は上海一の名門、復旦大学を卒業後、出版社やメーカーで月刊誌や社内報、会員誌等の編集をしてきた。数年勤めては転職を繰り返してきたせいか月給は9000元で、まさに先に紹介した上海サラリーマンの平均値だ。東北地方出身の妻は銀行の早期退職制度を利用して30代で退職し、月々約4000元の年金をもらっている。つまり世帯収入は1万3000元、日本円で22万円程度ということになる。

給与所得の2~3倍の不動産収入

この夫婦が、夫が休みを取りやすいこともあり、2カ月に1度の割合で海外旅行に出かけるのだ。昨年はオーストラリア、ロシア、デンマーク、ニュージーランド、イタリア、ドイツに行った。旅程はそれぞれ10日前後で格安の弾丸ツアーではなく、宿泊も4つ星以上のホテルだ。上海にいる時はいる時で、夕食は2日に1回は2人で5000~1万円程度の店で外食している。

なぜ彼らの旅行のグレードや食事の値段を知っているのかというと、訪ねた先や食べたものの写真を逐一SNSに上げており、私はそれを歯ぎしりしながら眺めているからだ。どちらにしても、世帯収入20万円の夫婦の生活レベルではない。

これができるのは、住んでいる家のローンを払い終え住居にかける支出がゼロだということ、そして、給与所得以外に不動産収入があること、この2つが大きい。彼の場合は、既に亡くなった両親がそれぞれ現役時代の勤め先から実質無料で支給された不動産を遺産として受け継ぎ賃貸に出している。具体的な額を彼は教えてくれないが、物件がある場所から見て、夫婦の世帯収入の最低でも倍、下手をすれば3倍あってもおかしくはないと私は踏んでいる。家賃なし、教育費なしでも夫婦2人で月20万円の収入なら年6回の海外旅行と頻繁な豪華な食事といった生活が送れる彼らに「なぜ???」と頭の中が疑問符だらけになる。ところがこれが月60万~80万円なら一転、納得がいく。

そして中国の都市部、とりわけ北京や上海等の大都市では、彼らのケースは特別ではないのだ。

ベンツ・BMWは大衆車

庶民が高級車を乗り回す中国では、ランボルギーニを交差点に路駐して食事に行く猛者もいる(2018年2月上海)

今年の2月、北京に中産階級が集まるカフェがあると聞いて訪れてみた。北京のど真ん中にある天安門広場から地下鉄で東へ50分、マンションの1階にある店舗用の物件で、アメリカンが1杯30元と、スターバックス等のチェーン店と同程度だ。価格設定はまさに中産階級をターゲットにしたものなのだろう。

ただ、「常連さんが最も多い」(店員)という、この店が入居するマンションの住民用駐車場に並ぶクルマを見て、私は頭を抱え込んでしまった。あまりのことに駐車場の一区画に停まっていたクルマを右から左まで動画に撮影したのだが、アウディ、BMW、ベンツ、レンジローバー、BMW、ベンツ、アウディ、レクサス、アウディ、フォルクスワーゲンティグアン、ベンツ、アウディ、ベンツ、レンジローバー、BMW、ベンツ、アウディ、レクサス、アウディ、ベンツ、ポルシェというメンツだったのだ。他の区画もほぼ同様だった。

そして駐車場と店の近くにあった不動産屋をのぞくと、中産階級の常連さんたちが住むというそのマンションは、85平米の2LDKで660万元という値がついていた。1億1000万円である。

日本の物差しを当てはめると、彼らが中産階級だということには違和感がある。しかし、中国の物差しでは、彼らは紛れもない中産階級なのだ。

あえて例えてみると、中国で中産階級と見なされている層は、日本で大企業を定年退職した現在60代以上の人々に近い。すなわち、日本の中でいま、一番お金を持っていて、高額商品のターゲットにされている層のこと。日本で彼らは富裕層のカテゴリーに属する。

これからは中国の中産階級を見るにあたり、日本の中産階級を思い浮かべるのではなく、富裕層を当てはめて考えてみると、これまでモヤモヤして分かりづらかったことがスッキリするはずである。

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『中朝国境の町を歩く 対北制裁で経済的打撃 南北、米朝会談への期待で回復の兆しも』(4/25日経ビジネスオンライン 福島香織)について

4/24ロイター<中朝国境地帯を行く、北朝鮮が静かに沸く「ゴールドラッシュ」(字幕・17日)>北に対して制裁が効いているという事だと思います。でも、北の製品が「中国産」や「ロシア産」に化けて売られているようでは。中露とも米国の一極支配を終わらせようと考えているので、うまく立ち回り、米国の裏をかこうとします。日米でスクラムを組んで撥ね返さないと。

https://jp.reuters.com/video/2018/04/24/%E4%B8%AD%E6%9C%9D%E5%9B%BD%E5%A2%83%E5%9C%B0%E5%B8%AF%E3%82%92%E8%A1%8C%E3%81%8F-%E5%8C%97%E6%9C%9D%E9%AE%AE%E3%81%8C%E9%9D%99%E3%81%8B%E3%81%AB%E6%B2%B8%E3%81%8F%E3%80%8C%E3%82%B4%E3%83%BC%E3%83%AB%E3%83%89%E3%83%A9%E3%83%83%E3%82%B7%E3%83%A5%E3%80%8D%E5%AD%97%E5%B9%95%E3%83%BB17%E6%97%A5?videoId=420705687&videoChannel=201

4/26ロイター<焦点:統一は「かなわぬ夢」か、南北朝鮮がドイツになれない訳>安倍首相は安易に2002年の平壌宣言を持ち出すべきではないと思います。日本が金を出してくれると北や南に思わせるのは得策ではありません。小泉が平壌宣言した時に裏では「5人の拉致被害者は北に戻す、1兆円の支援もする」となっていたようですが、流石に日本国民の怒りが爆発、そうは出来なかったのです。元々拉致は北の国家犯罪です。違法行為に手を染めた国の言うことを聞くのはおかしいでしょう。田中均や福田康夫、小泉が何も考えないでしたことです。国家主権の侵害と言うのが今の政治家・官僚には分かっていません。

https://jp.reuters.com/article/unification-koreas-idJPKBN1HX0SF?il=0

https://yoshiko-sakurai.jp/2011/12/22/3265

4/27日経<南北首脳が会談 正恩氏「対決の歴史に終止符」>

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO29916590X20C18A4MM0000/

まあ、どう見ても南北で米国を騙す陰謀を図っているとしか思えません。加瀬英明氏も、ジェイソン・モーガン先生も本日の授業で、「トランプは北を攻撃できない」と言っていました。加瀬氏は「米国は海上封鎖するので自衛隊も補給だけでなく米軍と一緒の行動を」と主張しています。二人とも韓国、日本の犠牲が多いのを心配していますが、先般お伝えしたようにEMPの“チャンプ”を使えば大幅な犠牲は避けられるのでは。ただ、日本は左翼の洗脳から脱し切れていない国民が多いので、ミサイルが自分の頭の上に飛んでこないと分からず、他人事としてしまう恐れがあります。

もし戦争ではなく、加瀬氏の言うように米軍が海上封鎖したとして、日本が主役として出なければ、悲観的になりますが日米同盟が崩壊する恐れがあり、そうなれば中国の属国になるのは目に見えています。日本も核武装し、どんな犠牲を払ってでも独立を維持する覚悟が無ければ悲惨な運命を辿ります。今の平和ボケした日本人にその覚悟はありや?特に老人は老い先短いので、中国の人権弾圧を受けても苦しむ時間は短いでしょうが、若い人が中共の奴隷になるのは可哀想すぎます。モンゴル、ウイグル、チベットの状況を見ていれば如何に悲惨かが分かろうと言うもの。

http://www.kase-hideaki.co.jp/magbbs/magbbs.cgi

福島氏の記事で、満洲は朝鮮族の多い所です。歴史的に見て高句麗の一部だった時代もありました。大清帝国を作った満州族も女真族でツングース系民族です。高句麗もツングース系民族ですから朝鮮族と近いのでは。習近平としては満洲にいる人間と朝鮮人との民族的な近さが、瀋陽軍区(現在の北部戦区の一部)を恐れる気持ちになっているのでしょう。

本記事で最後に「東アジア勢力図の「洗牌」の始まり」というのはその通りで、惰眠を貪って来た日本もいい加減目を覚まさないと。そうしなければ日本列島という土地は残っても、日本と言う国はなくなり、歴史から消え去ります。民主主義の主人公たる国民が危機に疎いのではどうしようもない。亡国の道を歩むだけになります。その時は超法規的に戒厳令を発布するしかありません。今の自衛隊にその覚悟ありや?

記事

図們江の向こうに見える北朝鮮。向かって左側にはロシアのハサン湖が、北朝鮮の向こうには日本海が控える(写真:福島香織)

  久々に中朝国境に行ってきた。今回のコラムはその簡単なリポートから始めたい。

 行先は吉林省の琿春という人口23万人程度の小さな街で、ロシアと北朝鮮と中国の3カ国の国境が接する。北京駅から列車で1本、10時間あまり。この路線は、吉林駅あたりから先の風景がなかなか美しいと評判だ。5月も半ばを過ぎたころだと、おそらく車窓から、芽吹いたトウモロコシ畑の新緑の絨毯を眺めながら鉄道の旅を満喫できるだろう。

 私が訪れた4月半ばは、まだ新緑の季節には早かったが、気温は日中15度ぐらいと快適だった。午前6時40分発の列車で、少し予定時間より遅れた午後7時すぎに到着した。

 中朝国境だから緊張しているかと思えば、普通の国境の地方都市であり、耳に入る言葉や目に飛び込む文字が朝鮮語とロシア語が若干多いぐらいの特徴しかない。飲食店のメニューに、朝鮮族の好む「狗爪」(犬の手)が当たり前のように並んでいるのに、朝鮮族自治区らしさを感じる。

 琿春を訪れたのは、琿春と図們などの街に北朝鮮の国境沿って対北朝鮮人用難民キャンプの建設が始まっているとロイターなどが報じていたので、ひょっとすると見つけられるかな、と思ったからだ。だが、残念ながら、さほど現地滞在時間も長くない中、探し切れなかった。おそらく山間部の方にあるのだろう。あるいは、まだ造られていないか。

 もう一つは、中国が対北朝鮮経済制裁に参加し、琿春の税関を通じて中国に例年大量に輸入されていたズワイガニや毛ガニなどの北朝鮮産海産物が全面禁輸となったことを受け、国境の町の経済がどれほど打撃を受けているのだろう、と気になったことだ。

琿春市中心から車で1時間ほどのところには、防川風景名勝区とよばれる北朝鮮、ロシア、中国の国境が接する地域がある。70元ほどの入場料を払って入る有名な観光名所であり、そこの展望台・竜虎閣からは図們江をはさんだ向こうの北朝鮮・豆満江市、ハサン湖事件(1938年の日ソ戦闘、張鼓峰事件)の名前の由来でもあるロシアのハサン湖、その向こうに日本海が一枚の絵のように見渡せる。日本人にとっては、あのあたりまでが満州だったのか、と思ったりすると、感慨深い風景だ。

国境警備隊のチェックの意外な緩さ

 この景勝区の中に、1886年に清朝政府が派遣した高級官僚・呉大澂とロシア側代表バラノフとが設立した「土字碑」がある。中国とロシアの国境線の上に建てられた碑であり、この土字碑周辺だけは中国人にのみ公開され、外国人は近づけない。だが、大勢の中国人と一緒にバスに乗ってしまえば、身分証チェックもあいまいで、中国語が話せない韓国人観光客は入場拒否されたものの、私などは中国人と見分けがつかず、国境警備の兵士に身分証を提示しろと言われても、「えー、駐車場の車の中において来ちゃったよ」というと、しかたないな、という感じで中に入れてもらえた。北朝鮮の核問題で中朝国境もよほど緊張しているのか、と思いこんでいたので、この国境警備隊のチェックの緩さにはちょっと驚いた。

 図們江沿いをずっとドライブしてみると、やはり、さほど国境警備が増強されているという印象もない。報道では本来10万人程度の国境警備は30万人に増強されている、ということだが、見た感じでは、私でも夜陰にまぎれて川幅数十メートルの図們江を渡って中朝を往来できそうなのどかさだった。昼頃、琿春口岸(中朝税関)の前を通りかかると、中国の食料品や日用品を積んだコンテナトラックが列をなしていた。税関は昼休みをとり午後2時からしか通れない。口岸の前にトラックを止めた運転手たちが、傍らでたばこを吸ってたむろしていたので、ちょっと話を聞いてみた。

「コンテナの中には何がはいっているの?」
「具体的には俺たちは知らないよ。食糧とか日用品だろう」
「金正恩が中国に来てから、輸送量は増えた? 禁輸されていた海産物とかもう運べるの?」
「海産物はまだダメだ。だが、もうしばらく我慢すれば解禁になるだろうね」

中朝関係に左右される北朝鮮ツアー人気

 この口岸からは、中国人ならば200~300元程度で羅先経済特区へのツアーにも参加できる。旅行代理店によれば制裁による中朝関係の悪化で、北朝鮮への観光客もずいぶん減っていた。もともと冬季の旅行は寒すぎて人気がない、という部分もある。

 だが、金正恩訪中以降、ツアーはやはり増えてきているようでもある。22日夜、中国人のツアー客の乗った観光バスが北朝鮮の黄海北道で交通事故を起こし、32人が死亡、2人が重傷という大惨事となった。金正恩訪中を受けて、今年は中止していた冬季団体旅行の再開を例年より早めて今月10日からスタートしたとか。

口岸近くの、中朝を結ぶ橋がよく見える場所では、地元の女性が土産物の売店を出していた。3元出せば、双眼鏡を貸してくれるというので、貸してもらって眺める。「向こう岸に見える大きな建物は昨年できたばかりのマーケットだよ」と教えてくれた。黒塗りの高級車っぽい乗用車が停まっている様子なども見える。

 「年末は中朝関係が悪かったから、琿春の観光客は減ったでしょう」と聞くと、「でも、これから暖かくなるし、中朝関係もよくなれば、観光客も貿易も増えるだろうよ」と期待を込めて語っていた。

 「琿春に北朝鮮から逃げてくる難民キャンプを建設中らしいんだけど、どこにあるか知っている?」と聞くと、「川向こうの北朝鮮人はみんな比較的富裕層だよ。難民なんて来ないよ」と笑っていた。

 タクシードライバーに中朝関係について聞けば、こんなことを言っていた。

 「北朝鮮はやはり、すごく貧しいというイメージだ。琿春の海鮮加工工場で、北朝鮮の女性労働者が出稼ぎに来ているけれど、中国人の半分くらいの給料だ。しかも、大半を北朝鮮政府に上納させられるんだろう。だから、中国が経済的に助けてあげなければと思っている。中国もそれによって経済的利益を得る」。

いろいろな予定の合間に、ふらりと訪れただけなので、駆け足で、ざっくりと様子を見ただけだが、中国の対北朝鮮制裁で、経済的にはかなり落ち込んだようだが、金正恩の電撃訪中後は、禁輸解禁間近、という期待が高まっている。

漂う北朝鮮への親近感

 琿春は90年代から国連開発計画が主導する図們江地域国際合作開発の拠点であり、近年は習近平の打ち出す一帯一路構想の極東アジアにおける起点都市の名乗りをあげている。

 たとえば、中国の衣料品メーカーが北朝鮮に工場を作って北朝鮮の安価な労働力を利用して製造する、という出国加工が進められているが、それをそのまま北朝鮮の不凍港である羅津港から中国南部に輸送したり、あるいは輸出することもできたりすれば、陸のシルクロード、海のシクロードともに中国極東の起点となる。北朝鮮の核問題で、中朝関係が冷え込むと、こうした構想も暗礁に乗り上げてしまう。増えかけていた琿春への投資にもブレーキがかかり、街全体に停滞感が漂っていた。

 だが、金正恩が訪中し中朝トップ会談を実現し、続いて南北会談、そして米朝会談を行うことになるということで、この国際合作開発への期待はにわかにぶり返している。防川風景景勝区にいたる国道などで道路拡張工事も行われていた。

 朝鮮族が人口の4割以上を占めるこの町では、北京の中国中央政府よりも、共通言語と共通文化背景を持つ北朝鮮のほうに親近感を感じる人も多く、海産物禁輸が実施されて間もないころは、経済への打撃もあって、中央政府の反感が高まっていたと聞く。外交政策への抗議運動も起きたことがあった。それも、中朝関係の緊張が緩めば、多少緩和されるかもしれない。

 さて、来る南北会談、それに続く米朝会談を前に、金正恩は核実験施設の廃棄を発表。これを金正恩が核廃棄に前向きな姿勢を示したとポジティブに受け取る人もいるが、金正恩の口調からすれば、すでに核兵器保有国になったので、実験施設は必要ない、という宣言にも聞こえる。一部では、中朝国境に近い核実験施設を廃棄することで、中国に配慮を示して、米朝会談においては中国に援護射撃を期待したい考えだ、という見方もある。

 ただ、中国は今回の南北会談、米朝会談に関しては、傍観者を決め込むつもりではないか、というのが、ニューヨーク・タイムズ(NYT)が報じた中国国内外のウオッチャーの見方をもとにした分析だ。つまり、習近平政権としては、やはり金正恩もトランプもあまり信用していない、ということだろう。同時に、不確定要素が多すぎて、中国もうかつに動けない、という面もあろう。

 中国の一番の懸念は、南北が朝鮮戦争終結の平和条約に調印し、半島全体が米国に傾斜することだ。なので、平和条約締結に向けて協議が始まっているというのであれば、積極的にこれに干渉していこうとするのではないか、と思われていた。

 だがそうしなかった理由は、おそらく二つ。金正恩は一旦中国にすり寄っているように見えて、本音では中国への敵意をもっているので、下手に介入しようとしても、中国の思い通りには動かないであろう、という予想があったこと。NYTはこう指摘している。

「今回の金正恩の中国訪問は友好の回復というようなものではなく、金正恩が中国を利用して米国と対抗しようという巧妙な動きであり、これはまさに彼の祖父が中国とソ連の間でかつてやってきたことだ」。

 そうなると、習近平政権としては、二度も北朝鮮にいいように利用されるわけにはいかない。

 もう一つは南北の目下の融和ムード、米朝関係の融和ムードは決して中国にとって悪い話ばかりにはならないのではないか、という見方があること。

 ロングアイランド大学の朝鮮問題専門家・夏亜峰がNYTにこうコメントしていた。

 「北朝鮮の指導者があいまいに核兵器廃棄を承諾したとして、その後には長い時間をかけた協議が続くはず。その中で、中国の発言権は大きなものとなる」。

 さらに、米国主導で南北の平和条約が締結したとき、在韓米軍の存在の合法性、意義というものが維持できなくなる。「半島の非核化」実現という意味でも、平和条約締結後に在韓米軍は撤退するかもしれない。米軍が撤退しさえすれば、中国は統一していようがしていまいが南北ともども経済的影響力で併呑していくことも可能だろう。ASEAN諸国やアフリカを支配するのと同じやり方だ。

東アジア勢力図の「洗牌」の始まり

 前にもこのコラム欄で触れたかもしれないが、中国にとって半島問題は、非核化の問題ではなく、あくまで米中の軍事プレゼンス上の駆け引きである。プレイヤーは米国と中国であるべきで、コマは韓国と北朝鮮。だから中国が北朝鮮のコマになって翻弄されることはメンツにかけて許されない。ならば中国としては、傍観の姿勢を貫き、最後の最後で、情勢を見極めてから、動きだす、と考えるかもしれない。ところで、南北会談、米朝会談、習近平の北朝鮮訪問と続く中で、日朝会談は、どのタイミングに行われるのだろうか。日本が最初に考えるべきは、私は中国の出方にあると思う。この一連の会談が東アジアの勢力図の「洗牌」の始まりであり、拉致被害者を救う最後のタイミングになるのではないか。心して取り組んでほしい。

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『「ポスト習近平」は誰か、対北朝鮮外交から垣間見えた人事』(4/24ダイヤモンドオンライン 加藤嘉一)について

4/24看中国<李锐受访揭毛泽东大饥荒生活和批判胡适真相(图)=李鋭(毛沢東の秘書)は毛沢東の大飢饉の時の生活と胡適を批判した理由の真相を告げる>李鋭は数えで102歳、北京の病院に入院中であるが、「ボイスオブアメリカ」のインタビューを受けた。彼は「TVでやっている毛の家での生活ぶりも長征での暮らしぶりも違って描かれている。」と言った。彼は1958年から59年まで兼職で毛の秘書をした。59年から61年までは大躍進の時期で、大飢饉が起きた。彼は「毛がその間、食べずにいて、7カ月もの間肉は一口も口にせず、栄養不良で浮腫ができたというのは嘘である。肉を食べなかったのは本当であるが医者から豚肉はコレステロールが高いので牛肉か羊肉を勧められたため。(中国人が肉と言えば普通豚肉を指す)。栄養は豊富に摂っていた。毛は知識階級を毛嫌いした。毛が北京大学の図書館で働いた時に労働者の給与しか貰えなかった。ある時、胡適の授業を聞きに行ったときに、胡適が風体を訝しみ、毛に「どこから来た?」と聞いたら、毛は「図書館から」と答え、逆に胡適に「質問の意味は?」と聞いたが、胡適は答えず教室から追い出した。延安整風運動の時、毛は反革命なのは第一:留学生、第二:大学教授、第三:高級官僚、大統領である。次には中学教員,中等官僚は半反革命でその後に小学教員が続く。胡適は「毛は北大の学生でなく、図書館で働いていただけ」と、北大の試験には通っていないことを匂わし、それを聞いた毛は怒って第一の反革命とした」と。

李鋭は文革時には「彭徳懐反党メンバー」として8年も監獄に入っていた。文革終了後、中共幹部として戻り、天安門事件の起こる前には趙紫陽を支持した。江沢民を老人政治(多分院政を敷き、胡錦濤に仕切らせなかったことを指すのでは)として猛烈に批判した。毛沢東も批判の対象で、文革は邪教と同じと。また毛の2番目の妻の遺書の中に「毛は生活も政治もろくでなし」と書かれていたことも披露した。理由はその妻の従妹を強姦したからである。

https://www.secretchina.com/news/gb/2018/04/24/856559.html

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%83%A1%E9%81%A9

毛沢東が性的に乱れており、昼夜逆転の生活をして、女を侍らせ、性病持ちになったというのは李 志綏著『毛沢東の私生活』に詳しいです。出版後すぐに米国の息子の家の浴室で遺体となって発見されましたが中共の手の者に殺されたのでしょう。95年ですから民主党クリントン時代です。米国の保守派のスカリア連邦最高裁判事がオバマ時代にテキサスのオバマの友人の牧場で死んだのも謀殺の匂いがします。民主党はダーテイです。日本もですが。立憲民主党も国民民主党も。

4/26日経<衆院憲法審、月内開催見送り>

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO29826980V20C18A4PP8000/

野党の狙いは憲法改正阻止です。野党が審議拒否に入った大きな狙いは此処にあったのでしょう。飯島勲氏と宮崎正弘氏は「首相は解散すべし」と言っていますがタイミングが難しいでしょう。5or6月の米朝首脳会談の行方によっては戦争が始まるので、選挙なんてやってられないでしょう。解散総選挙するために臨時国会会期中(昨年の解散同様臨時国会冒頭解散もあり)か通常国会会期内(6/20まで)に行う必要があります。一番は9月の総裁選に合わせて解散するのが良いのでしょうけど、米朝戦争になればNEOの関係で8月に開戦の可能性が高いと言われています。

4/26日経朝刊<中国で進化する「真昼の暗黒」 上級論説委員 飯野 克彦 

「電視認罪」という中国語がある。直訳すれば「テレビ自白」。より正確に意味をくみとるなら「テレビを通じて罪を自白すること」といったところか。

具体例をあげてみたい。2016年7月6日、中国国営の中央テレビ(CCTV)は、中国大陸の禁書を主に扱う香港の銅鑼湾書店の店長だった林栄基氏が「私は中国の法律の条文に違反した」と語る様子を放映した。

映像は、禁書を持ち込み販売した疑いで林氏が当局の取り調べを受けていたときのもの。CCTVが流したのは、刑事事件の容疑者が裁判を受ける前の段階で「自白」する映像だった。「電視認罪」の典型的なパターンである。

被告が公判のなかで罪を認める様子を、有罪判決が出たあとにテレビで放映するのは、中国では珍しくない。いわば見せしめとして、あるいは政治宣伝として。ただ、容疑者の段階での放映は最近になって目立ってきた現象だ。

林氏と同じく銅鑼湾書店の幹部だった桂民海氏。人権派の女性弁護士として知られた王宇氏。人権擁護のためのNPOを運営していたスウェーデン人のピーター・ダーリン氏。世界的な関心を集めた彼らは、いずれも15年以降にカメラの前で「自白」する様子が放映されている。

実際には、もっと早い段階から「電視認罪」があった。国際的な人権団体「セーフガード・ディフェンダーズ」が今月はじめに出した報告によれば、遅くとも13年には確認でき、これまでに少なくとも45件あったという。

「自白」の背後には当局による強制と誘導がある。林氏や王氏、ダーリン氏らは後に、記者会見などを通じて「強制があった」と表明した。セーフガード・ディフェンダーズの報告では、ほかにも多くの人が証言している。身の安全のため公然とぬれぎぬを晴らせないだけだと。

強制の手口はさまざまだ。王氏の場合、子どもが拘束されていわば人質にされ「電視認罪」に追い込まれた。睡眠を妨げたりなぐったり、拷問も珍しくないようだ。

「自白」の内容もおぞましい。強制や拷問を受けたことを否定し、中国の司法は公正だとたたえる。共産党や中国政府に感謝を表明する。一方で友人や仕事仲間を批判し、自らの拘束に関心を示した海外の人権団体や外国政府について「中国の印象を悪くする下心がある」と非難する。

いってみれば、共産党政権の政治宣伝の道具として使われ、一方で本人が築いてきた人間関係に自ら亀裂を入れるのである。自由になったあとも心に刻まれた傷がうずき続けている人は少なくない。

近代社会では、刑事事件の容疑者や被告は有罪判決が確定するまでは無罪だと推定されるのが、基本原則だ。自白の強制や拷問は論外だ。「電視認罪」は、二重あるいはそれ以上の意味で近代法の基本原則を踏みにじる、深刻な人権侵害といえる。

世界人権宣言や国際人権規約はもちろん、中国の憲法や刑事訴訟法にも違反する可能性が大きい。にもかかわらず公安部門とCCTVは公然と続けている。CCTV以外のメディア、たとえば香港の英字紙「サウスチャイナ・モーニング・ポスト」や華字紙「東方日報」などが当局に協力した例もある。

注目せざるを得ないのは、「電視認罪」を確認できるのが13年以降だという点だ。習近平国家主席が最高指導者になった翌年である。

習主席はトップに立った直後から「法治」を強調し、司法改革に意欲を見せてきた。「すべての司法案件で公正を感じられるようにする」と述べ、人権侵害の温床だった労働教養制度を廃止したこともあって、期待は高まった。

実態は逆流といわなくてはならない。「電視認罪」が連想させるのは毛沢東時代の「人民裁判」であり、スターリン時代のソ連の「モスクワ裁判」だ。モスクワ裁判に材をとった有名な小説の題名を借りるなら、進化した「真昼の暗黒」が21世紀に出現した印象である。

ほかでもない、やがて世界一の経済大国になろうかという国で。>(以上)

日経は今頃気付いたのかと言うような記事です。まあ“better late than never”ですが。あれだけ日本企業の中国進出を煽って来たので後ろめたい気持ちがあるのかもしれません。中国の人権が守られていないのは、「電視認罪」だけでなく逮捕状なし拘引、拷問による取り調べ、TVによる公開裁判、公開処刑、土地の強制収用、営業免許なしの商売の商品の没収等挙げればきりがありません。日本の左翼・リベラルだったら必ず文句を言って潰すと思われる警官のサングラスによる顔認識も。また少数民族に対する民族浄化も。共産国を助け、経済を肥大化させた咎めが出て来ています。アカの危険性を認識できてこなかったのは本当の頭の良さを持ち得ていなかったからと言えるでしょう。

https://matomake.com/I0006275

4/24ダイヤモンドオンライン ロイター<焦る中国、半導体開発を加速 対米貿易摩擦重く>

http://diamond.jp/articles/-/168599

4/26ロイター<米検察がファーウェイ捜査、イラン制裁に違反か=関係筋>

https://jp.reuters.com/article/usa-china-huawei-idJPKBN1HW278

渡邉哲也氏のfacebookによれば「ソフトバンク 5Gの基地局で 中国通信機メーカー二社(ZTE、ファーウェイ)と組んで実験していましたが、ZTEは米国の制裁対象になり5G規格への参入が絶望的、ファーウェイにも捜査が入りましたので、どちらも使えなくなる可能性が出てきました。」とありました。米国は次世代通信技術の標準を中国には握らせないという事でしょう。ムニューチンが訪中しても、習が1000億$の黒字削減を呑むとは思えませんし、それを仮に認めたとしても、バックドアが仕掛けられている製品の販売を米国が認めることはないでしょう。日本の官僚がボッとしすぎです。ソフトバンクは使わない方が良いでしょう。5Gに乗り遅れます。4/26宮崎正弘氏のメルマガにもフアウェイの記事がありました。イラン制裁の一環だけではないでしょう。中国封じ込めです。

http://melma.com/backnumber_45206_6675481/

http://www.epochtimes.jp/2018/03/32087.html

加藤氏の記事は浅さが目立ちます。まあ、将来の習の後継者を予想しているので仕方がないのかもしれませんが、習・金会談時の王岐山の位置については一言も触れていません。宮崎正弘氏のメルマガによれば「王岐山は李克強首相、王コ寧とともに会見している。いや、そればかりか習近平、李克強が金正恩と握手したあとに、王岐山は、ほかの政治局常務委員の五人を差し置いて、事実上の三番手として、金正恩と握手している」としています。片手落ちでは。

http://melma.com/backnumber_45206_6674927/

また、習近平は終身主席には反対の意向と加藤氏は書いていますが、中国人一流の嘘でしょう。政敵を大量粛清して来た独裁者がその地位を下りた瞬間、悲惨な目に遭うのは自ら抜擢してくれた江沢民・曽慶紅を追い込んでいることから充分理解している筈です。絶対死ぬまで権力は手放さないでしょう。クーデターでも起きない限り。

記事

Photo:KCNA/UPI/AFLO

対北朝鮮外交から見えてくる習近平第2次政権の「人事」

習近平第2次政権の本格的幕開けとなった今年の全国人民代表大会(3月5~20日)閉幕後最初の重要外交として、前回コラム(習近平が訪中した金正恩を破格に手厚く歓迎した理由 )では金正恩・北朝鮮労働党委員長の中国非公式訪問(3月25~28日)を扱った。

習近平総書記の“紅二代”としての性格・特徴や朝鮮半島や米中関係など中国を取り巻く昨今の国際情勢などから習近平・金正恩時代になって初となる中朝首脳会談の模様やそこから導き出せるインプリケーションを検証した。

一方で、限られた文字数の関係上扱えなかったことがあった。

中国の政治体制やイデオロギーにも深く関係する、換言すれば内政的色彩が濃厚な対北朝鮮外交から見えてくる習近平第2次政権のフォーメーション、より赤裸々に言えば「人事」である。

言うまでもなく、金正恩訪中という行事のみを根拠にその現状や行方を語ることはできない。しかしながら、全人代後最初の重要外交行事、しかもその相手が金正恩率いる北朝鮮という点を考慮したとき、そこには軽視できない要素や展望が露呈されているものと筆者には思えた。

金正恩一行を乗せた列車が北京駅に入ってきたとき、ホームではすでに王滬寧・中央政治局常務委員(序列5位)がスタンバイしていた。金正恩が降りてくると、王滬寧は中国共産党を代表し両手の握手で出迎えた。それから、王は後ろに立っていた一人の同僚を自ら金正恩に紹介した。

丁薛祥(Ding Xuexiang)。

第19回党大会で中央政治局委員(トップ25)に昇格し、かつ日本の官房長官に相当する極めて重要なポストである中央弁公庁主任に就任した(それまでは副主任)。丁は右手で金正恩と約3秒間握手を交わした。王が駅のホームで金正恩を出迎える際に自ら意図的に紹介したのは、丁薛祥一人である。

「人事」という観点から筆者が注目していた「席順」

人民大会堂で行われた中朝首脳会談。習近平第2次政権のフォーメーションを占うという意味での「人事」という観点から、筆者は誰が、どういう席順で習近平を囲み、金正恩率いる北朝鮮側と向き合うかに注目していた。

中国側は計8人(北朝鮮側は5人)。習近平から見て左に「王滬寧→楊潔チ(チの字は竹かんむりに“褫”のつくり)・中央政治局委員兼中央外務工作委員会主任→王毅・国務委員兼外交部長」、右に「通訳→丁薛祥→黄坤明・中央政治局委員兼中央宣伝部長→宋濤・中央対外連絡部長」である。

通訳は抜きにして、席順に反映される他の7人の序列を並べると「習近平→王滬寧→丁薛祥→楊潔チ→黄坤明→王毅→宋濤」となる。会談前に同会堂にて習近平夫妻が金正恩夫妻への歓迎式典を主催し、その後会談に入る前に自ら同僚たちを紹介したが、その際の順番がこの序列であった。

王滬寧は政治局常務委員、王毅は国務委員、宋濤は部長ということでその序列的ポジションは明白であるが、政治局における非常務委員(18人)のなかにも序列はある。今回会談に出席した3人のなかでは「丁→楊→黄」という順番であったということだ。中国共産党は並び方や座り順などをその政治的序列や役職に基づいて厳格に手配する。偶然そうなったなどということは原則あり得ない。

楊潔チは外交プロのトップとして習近平の“党国外交”を支えていく

全人代を経た人事を扱った前々回コラム(習近平第2次政権の注目新人事、王岐山・劉鶴・楊潔チ・王毅・胡春華)においてその役割いかんに言及した楊潔チであるが、中央外事工作委員会主任という肩書をもって、党における外交プロフェッショナルのトップとしてこれからの5年間、習近平の“党国外交”を支えていくものと思われる。

王毅と宋濤はそれぞれ政府・党機関として中国の対外関係を担当する外交部・対外連絡部の首長として両端に座っていた。正常かつ妥当な座り方である。前回コラムで書き留めたように、金正恩一行を乗せた列車が中朝国境都市・丹東市の駅に到着した際、宋濤が列車に乗り込み、中国共産党を代表して金正恩を出迎えている。

議論に値するのが残りの3人、即ち王滬寧、丁薛祥、黄坤明である。

まず押さえておきたいファクトが、この3人はいずれも中国共産党中央政治局(常務委員会)の意向・指示・需要に基づいて党務を統括する中央書記処の書記(現在7名)を兼任しているという点だ。

王滬寧はその筆頭書記である。常務委員のうちの1人、政治局委員が数名(今期の第19期は7人中5人;第18期は7人中3人;第17期は6人中2人)書記に名を連ねるのが慣例である。

中国共産党にとって対北朝鮮外交は伝統的に党と党の関係であった。そこには社会主義という政治体制やイデオロギーが深く浸透している。党の機関である対外連絡部が対北朝鮮外交の通常業務を担当してきた理由、丹東駅で出迎えたのが王毅ではなく宋濤だった所以もここにある。

そして、同部の上に立ち、習近平総書記率いる中央政治局の意思を政策に落とし込む過程での政治的任務を担う中央書記処が対北朝鮮外交を統括するのは必然的かつ自然な流れである。

例として、2015年10月、劉雲山中央政治局常務委員(序列5位)兼中央書記処書記(当時)が北朝鮮労働党結党70周年記念式典に出席するために、中国共産党代表団を率いて北朝鮮を公式訪問している。劉雲山のポジションを引き継いだ王滬寧が北京駅で金正恩を出迎え、中朝首脳会談で習近平に次ぐ位置に腰を下ろしたことはプロトコルとして順当なものであった。

中央書記処書記という役職からして、丁薛祥、黄坤明という2人が首脳会談に同席したこと、今回の金正恩受け入れ業務において王滬寧に次ぐ序列的位置にいた丁薛祥が北京駅のホームで王の後ろで金正恩を出迎えたこともプロトコルとして妥当なものであった。

丁薛祥と黄坤明のバックグラウンド

以上を踏まえた上で、筆者は指摘し、一定の議論を試みたい。

本稿がフォーカスする「人事」という観点からすると、丁薛祥と黄坤明、特に前者に関しては、プロトコル以上の“潜在性”を擁しているように思われるという点である。

2人のバックグラウンドを簡単に整理しておきたい。

丁薛祥は1962年生。今期政治局委員のなかでは胡春華・国務院副総理(1963年生)に次いで若い。優秀なテクノクラートを輩出することで有名な江蘇省の出身で(出身者に周恩来、江沢民、胡錦濤など)、中央入りする前そのキャリアのすべてを上海で積み上げてきた。

転機となったのは2007年。3月に習近平が上海市書記に就任して間もなく同市副秘書長から同市常務委員会常務委員、秘書長に昇任した丁は習近平の政治秘書を務めるようになる。同年秋に開かれた第17回党大会で習近平は中央政治局乗務員入りし、上海を離れた。

5年後、習近平が想定通り最高指導者に就任すると、丁は上海を離れ上京、中央弁公庁副主任兼国家主席弁公室主任に就任する。5年越しで習近平の政治秘書に返り咲いたというわけだ。国家主席弁公室主任という任務は、丁が政治局委員、そして中央弁公庁主任という極めて重要なポジションに就任した現在でも続いている(筆者注:前任は全国人民代表大会現委員長で序列3位の栗戦書、その前任は“落馬”し無期懲役の刑に問われた令計画。栗・令はいずれもその“親分”である習近平・胡錦濤に重用されていたとされるが、いずれも“国家主席弁公室主任”という“親分”の最も身近で仕える役職は与えられなかった)。丁薛祥は習近平を支える最大の“右腕”、そして“幕僚”の一人だと解釈できる。

黄坤明は1956年生で福建省の出身である。1982年に福建師範大学を卒業した後、1999年までの17年間を福建省内の党幹部として過ごした(最後は同省龍岩市副書記、市長)。習近平は1985年から2002年までの17年間を福建省内の党高級幹部として過ごしている(最後は同省副書記、省長)。

その後黄は浙江省に転任し、2007年からは浙江省常務委員会常務委員兼宣伝部長を、2010年からは同省の省都・杭州市の書記を務めるようになる。黄に遅れること3年(2002年)、習近平も浙江省へと転任し、同省のトップである書紀を歴任している。共に福建省と浙江省で長い時間を過ごし、キャリアを積み上げてきた習近平と黄坤明。2人がひとつ屋根の下で働いた時間や経験は限られていたとされるが、それでも習は黄を高く評価し、信頼していた。

丁薛祥、黄坤明は習近平の「お友達人事」の代表格

国家指導者を親族に持ち、習近平をよく知る“紅二代”が筆者にこう語ったことがある。

「習近平は共産党の権威と安定を確保するためにイデオロギー機関を重要視する。中央・地方を問わず、各宣伝機関の首長には信頼できる人物を据えたいと考える傾向にある。自らが総書記になると、それまでの宣伝部長で、常務委員入りした後も引き続きイデオロギー業務を統括する劉雲山と、劉の後に宣伝部長に就任した劉奇葆をよく思っていなかった。そこで黄坤明を浙江省から引っ張ってきて宣伝部副部長に抜擢し、劉雲山と劉奇葆を監督・牽制しようとした」

要するに、丁薛祥、黄坤明は習近平が上京する前に勤務していた地方から一本釣りで引っ張ってきた人物ということである。チャイナウォッチャーの間では、習近平は自ら信頼できる人物を中央・地方を含めた要職に就かせ、可能な限り自らの息の届いた“お友達”で「人事」を固めようとする傾向にあるという議論がしばしばなされる。

筆者も同意する。と同時に、丁薛祥、黄坤明の2人はその代表格であると考えている。

習近平は丁薛祥を大事に見守り、気にかけている

前出の“紅二代”は丁薛祥についてはこう語る。

「習近平は丁薛祥を大事に見守り、気にかけている。いまだ意思を固めたわけではないし、最終的にどういう決断をするのかは定かではないが、丁を自らの後継者になり得る人物として認識し、育てていることだけは確かだ」

筆者は習近平にも丁薛祥にも会ったことがない。故に憶測と観察に基づいて見解を述べるしかないが、本稿で議論した内容を含めたあらゆる状況証拠を考慮し、分析を加えると、丁薛祥は“ポスト習近平”候補の一人であると言える。黄坤明は現時点では次期政治局常務委員候補の一人といったところか。

もちろん、本連載でも検証してきたように、習近平はすでに憲法改正を通じて国家主席の任期を撤廃しており、法律・制度的には“終身的”に総書記・国家主席・中央軍事委員会主席という三位一体のポジションを担うことが可能になっている。“ポスト習近平”という視角あるいは枠組みにおける議論にどれだけの意義や価値があるのか。少なくとも現段階でははっきりしない。

参考までに、党機関紙《人民日報》は全人代開幕直前の3月1日に掲載した記事(保証党和国家長治久安的重大制度安排)にて、今回の憲法改正は「領導幹部職務の終身制を意味するわけではない」と“弁明”している。また、4月17日に英フィナンシャル・タイムズが掲載した記事(Xi ‘personally opposed’ to life-long rule)は、習近平が最近出席した外国要人や党幹部との3つの会合において終身支配には“個人的に”反対していること、外国の有識者たちが国家主席の任期を撤廃した憲法改正を“誤って解釈している”ことを述べたと報じている。

筆者はこれらの記事の“真相”や“真偽”を識別・判断する術を持たないが、これまで“習近平政治”を観察してきた経緯に照らし合わせて言えば、いずれの記事に対しても「そういう側面や可能性も見いだせる」となり、かつ若干前のめりになって言えば「メイクセンス」である。

“ポスト習近平”を巡って現段階で筆者の脳裏に浮かんでいる視角あるいは情景としては以下の3点がある。

(1)習近平は少なくとも3期目(2017・18~2022・23年)の続行を現実的選択肢として捉えている、(2)実際に3期目を続投するか否か、どういう形で続投するのかに関しては状況を見ながら決定するつもりでいる、(3)どういう状況にも対応できるように、“後継者”になり得る人物に今から目を付け、場合によっては本人や周辺に示唆した上で育てていく。

筆者から見て、習近平にとって“後継者”に目を付け、育てることは、憲法改正を通じて“終身支配”を可能にすることと同じくらい、もしかするとそれ以上に重大かつ深刻なアジェンダであるものと筆者は考えている。

(国際コラムニスト 加藤嘉一)

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『中国依存のドイツが味わう「ゆでガエル」の恐怖』(4/23ダイヤモンドオンライン ロイター)につい

4/23看中国<最后一个爱新觉罗氏聚居村落 世代只做一事(组图)=愛新覚羅が住んだ村落が未だ残っている。当時の村民の仕事は生涯墓守且つ儀式を執り行うための材料を準備すること>清朝が滅亡した100年前に墓守する人もいなくなった。しかし今もその村は残っている。世代が変わり漢化され、儀式を知っている人も少なくなった。祭祀儀礼や習俗を伝えることは大事と思っているが、関心が集まらない。愛新覚羅の陵がある「新宾满族自治县」は遼寧省・瀋陽の東、撫順と通化の間にあります。满族とありますように満州族の住む自治区です。東北3省(黒竜江省・吉林省・遼寧省)は漢人の土地ではありません。元々満州族の土地です。万里の長城の外ですから、明らかでしょう。中共は吉林省長春市にある愛新覚羅溥儀の住んだパレスを「偽満皇宮博物院The Puppet Manchuria Palace Museum」と呼んで歴史を改竄しています。溥儀の英国人家庭教師ジョンストンの書いた『紫禁城の黄昏』(岩波版は左翼にとって都合の悪い部分はカットされていますので、渡部昇一監修版をお読みください)を読めば明らかです。

中国大陸は夷荻に支配されていた時代が長いです。中華人民共和国は56の民族から成るというのもトリックです。漢人の少数民族抑圧を見せないためのロジックで、公平でも何でもなく、事実は凄まじいエスニッククレンジングが行われています。

https://www.secretchina.com/news/gb/2018/04/22/855013.html

4/24自由時報<日本民進黨與希望之黨整合 新黨名確定叫「國民黨」=日本の民進党と希望の党は合併し、新党名は「国民党」と確定>

4/24朝日新聞デジタル<民進党から「国民党」誕生、台湾では「孫文もあっけに」>

4/25日経朝刊では「国民党」ではなく「国民民主党」という名にしたとのことです。自由時報のヘッドラインは誤解されやすいですが、記事の内容を読むとキチンと正式名称は「国民民主党」で略称が「国民党」と記載されています。「民進党」も「国民党」も台湾の現在の二大政党です。よりによって何度も台湾政党の名を使おうというのは台湾の歴史に無知であることを示しています。朝日は触れていませんが、国民党は2・28事件を起こした蒋介石の政党です。作ったのは孫文ですが。孫文死後、跡目争いを蒋介石と汪兆銘とでしました。反日・親米の蒋介石と用日の汪兆銘の路線対立です。日本の民進・希望・立民も元々2017年衆議院選が民進党の名前では戦えないというので分裂したわけで、選挙が終わったらまた元に戻ろうとするのは有権者を愚弄するものです。こういう政党や議員に投票する選挙民が一番悪いのでしょうけど。

http://news.ltn.com.tw/news/world/breakingnews/2405207

https://www.asahi.com/articles/ASL4S6F5BL4SUHBI036.html

ドイツと中国関連の記事として昨年10/9の墨田区会議員・大瀬康介氏のブログ記事を紹介します。<ドイツ銀行経営破たん迫る!世界的金融危機の再来か?チャイナがD銀の大株主の意味 >

http://ose2.blog.so-net.ne.jp/2017-10-09

2017年11/9の日経には<VW、中国でEV車に1兆3300億円投資 2025年まで>とありました。

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO23566090W7A111C1FFE000/

ダイヤモンドの本記事にありますように、中国事業で懸念されるのは①中方に強制的に技術移転(VPN規制も含む)②経営への共産党の強力な関与③中国国内でのライバルの出現です。これに米中貿易戦争が絡んできます。米国はナバロが復帰し、中国を徹底的に叩こうとしています。当然でしょう。米国の覇権に中国はあからさまに挑戦しようとしているのですから。トランプは経済だけでなく、軍事的にも中国を封じ込めようとしているのでは。北朝鮮問題がその前哨戦となります。

ドイツはいつも選択が誤ります。第一次大戦、第二次大戦に負け、今度は中国に賭けて、多分負けることになると思います。米国が中国を甘やかさないでしょうから。また、中国の経済を強くしたことが自国企業にブーメランとして撥ね返り、且つ又中国の37兆$の国家債務の存在にも鈍感です。ドイツは危ない、という事はEUも危ないという事です。英国のブレグジットは正しい判断になるのでは。日本もドイツ・中国には近づかない方が良いでしょう。第一次大戦は戦勝国になったのに、第二次大戦ではドイツと組んだため敗戦国になりました。そもそも37年の第二次上海事変で日本軍が苦労したのは、長江沿いに造られたドイツ製トーチカの存在とドイツ人による戦争指導です。36年に日独防共協定を結んでいたにも拘わらず。

https://jp.reuters.com/article/idJP00093300_20180104_00320180104

記事

4月15日、独建設器械大手のバウアーは、この数十年間、中国に積極投資を行った多くのドイツ企業に比べて、優位な立場にある。写真は2017年7月、ベルリンで会談するドイツのメルケル首相と中国の習近平・国家主席(2018年 ロイター/Axel Schmidt)

[シュロベンハウゼン(ドイツ) 15日 ロイター] – 独建設器械大手のバウアーは、この数十年間、中国に積極投資を行った多くのドイツ企業に比べて、優位な立場にある。

ドイツ南部バイエルン州を拠点とする、1790年創業のバウワーは、中国合弁パートナーの顔色をうかがう必要がない。上海と天津にある2つの工場は、100%自社で所有しているからだ。

また、同社が製造する特殊建設機械はアジア全体で販売されており、不安定な中国建設市場における景気の波に左右されずにすむ。

独建設器械大手のバウアーのトーマス・バウアーCEO。シュロベンハウゼンで3日撮影(2018年 ロイター/Michael Dalder)

しかし、それでも一族経営の7代目にあたるトーマス・バウアー最高経営責任者(CEO)は、中国における自社事業の状況や、これまでドイツ企業と政治家が「確実に儲かる賭け」とみなしてきた中国との経済関係全般について、危惧していると語る。

「ドイツは、1つのバスケットに卵をたくさん入れすぎた。そのバスケットとは中国のことだ」と話す62歳のバウアー氏。バイエルンのアクセントが強く、陽気なバウアー氏は、ミュンヘンから車で約1時間の距離にあるシュロベンハウゼンの本社でロイターの取材に応じた。

同社の懸念は、ドイツで広まりつつある恐れを示している。ここ10年以上、ドイツ経済は、世界金融危機やユーロ圏債務問題、大量の難民流入などにも耐え、欧州成長をけん引してきた。

その強さの裏側には、2つのエンジンがあった。ドイツの革新的企業が、成長経済が必要とするハイエンドな製品を数多く生産してきた。また、ドイツは、オープンでルールに沿った世界貿易システムから利益を上げることに長けており、そこから競争力を得ていた。

中国は、この両面で重要だった。

この10年、外国企業に対して徐々に門戸を開く中で、中国はドイツ製の自動車や機械を驚くべきペースで買い上げている。ドイツの自動車メーカーは昨年だけで、米国販売の3倍以上に相当する500万台近くを中国で売り上げた。

しかし、依然として好況が続いているものの、「ドイツ株式会社」の中国市場に対する見方には、劇的な変化が生じつつある。

習近平政権の下で、中国の開放政策が逆回転を始めているだけでなく、中国企業も、ドイツ側の予想を大きく上回るスピードでバリューチェーンの上流へ移動してしまったのだ。

ドイツが抱える中国のコナンドラム(謎)は、欧州が直面する、より広範な試練の一角だ。ここ数年、内向きな危機対応に追われていた欧州は、今後待ち受ける地政学的、経済的リスクに対応するには、政治的に分断されており、まだ準備不足の状態だ。

欧州大陸はいまや、自己主張を強める中国と「アメリカ・ファースト」を掲げるトランプ米大統領の間で、板挟みになるリスクに直面している。

中国におけるドイツ企業の窮状を、密かに「ゆでガエル」に例える企業幹部もいる。常温の水にカエルを入れ、徐々に過熱すると、熱湯になった時には跳んで逃げることもできず、ゆで上がって死んでしまうのだ。

ドイツのクラウス駐中国大使は、ベルリンで先月開かれた企業経営者との会合で、ドイツと中国の関係に「地殻変動的な変化」が起きると警鐘を鳴らした。同会合の出席者が明らかにした。

「中国とのパートナーシップの新時代について、われわれは心構えを呼びかける必要がある」と、ドイツ最大の産業グループであるドイツ産業連盟(BDI)の幹部は話す。「まだ今は黄金時代だが、今後何が起きるかについては重大な懸念を持っている」

国家の役割

ドイツ企業は、先頭を切って中国進出を果たし、中国経済の発展に伴ってドイツに有利な状況をもたらした。

2国間貿易は昨年、過去最高の1870億ユーロ(約24.7兆円)に達し、中国との貿易高がそれぞれ700億ユーロ程度だった英国やフランスを大きく凌駕している。

2017年のドイツの対中貿易赤字は140億ユーロだったが、米国が抱える対中貿易赤字3750億ドル(約40兆円)に比べればわずかだ。

世界70ヵ国で1万1000人を雇用するバウアーは、1990年代半ばに同社にとって初の中国生産施設を建設した。その当時は、高層ビルや発電所、空港などの基礎工事に必要な、同社が誇る黄色の巨大で複雑な掘削機を生産可能な中国企業は1社も存在しなかった。

だが、2013年までに、そうした掘削機を生産できる中国の競合企業が36社に増加。バウアーCEOは、欧州サプライヤーが共同開発した部品を中国に売却したことで、シフトが加速されたと指摘する。

10年前、バウアーの中国工場には1億ユーロ超の売上げがあった。続く9年のうち5年の年間売上げは、その半分に達しなかった。

現在では、バウアーを含めたドイツ企業は、中国政府が自国経済に及ぼす役割を、何よりも懸念しているという。

中国は昨年、サイバーセキュリティ法を制定し、外国企業が本社との機密連絡に使う仮想プライベートネットワーク(VPN)を含めたインターネットに対する国家統制を強化した。最近では、複数のドイツ企業が、中国合弁パートナーの取締役に共産党役員を受け入れるよう圧力を受けていると苦情を申し立てている。

バウアーCEOは、習近平国家主席が唱える「中国製造2025(メイド・イン・チャイナ2025)」戦略が、ドイツ製造業の優位を直接脅かすのではないかと懸念する。同戦略では、ロボティクスや航空産業、クリーン動力で動く自動車など10分野を重点分野に指定している。

バウアーCEOは、自社の強みを維持するため、デジタル化を急がせている。

「これは模倣者との競争ではない。これは、われわれに取って代わろうとする革新的エンジニアとの戦いだ」と、バウアーCEOは言う。「早期に答えを見つけ出さなければ、非常に悪い結果を招くだろう」

トランプ関税

ドイツが抱える不安は、中国に対して数百億ドル規模の追加関税を突き付けたトランプ米大統領の懸念に似ている。

しかし、ドイツ主要企業があまりにも中国市場への依存を深めていたため、独政府は中国との衝突を避けてきた。

独自動車大手ダイムラーは2月、いかに一部企業が中国政府を怒らせないよう臆病になっているかを自ら体現している。

チベット仏教の最高指導者ダライ・ラマ14世の言葉を引用した、高級車ブランドのメルセデス・ベンツのインスタグラム広告が、中国で大きな反発を呼んだことを受け、同社はこの広告を削除した。

その上で、同社のツェッチェCEOは声明を出し、「不注意で無神経な過ち」により、中国人に「痛みと悲しみ」を与えたとして、深い遺憾の意を表したのだ。

「ドイツの人々が、中国について話すことと、彼らが実際に考えていることの間には大きな違いがある」と、ベルテルスマン財団のベルンハルト・バーチ氏は言う。

同財団は、「10年後には、中国が欧州の政治・経済システムを大きく損なっている」と題する討論会を、ベルリンに本拠を置くメルカトル中国研究所(MERICS)と合同で今月行う予定だ。

中国で活動するドイツ企業のムードも冷めつつある。

中国のドイツ商工会議所が昨年後半に行った調査によると、中国内の新たな場所に投資を計画している企業数が、久しぶりに会員企業の半数を割り込んだ。また、中国に進出したドイツ企業の13%近くが、今後2年以内に撤退する可能性があると回答した。

過去数十年間、中国に対するドイツのアプローチは「通商を通じた変化」という言葉で説明することができた。

だが今や、この戦略は崩壊した。

政府関係者からは、「ウィン・ウィンの新しい意味は、中国が2度勝つということだ」といったブラックジョークも聞こえてくる。

「緊密な経済関係が、開放を促進することを期待していた。だが、明らかにそれは誤った期待だった」と、ある政府関係者は語る。「彼らは、口ではわれわれが聞きたがっていることを言うが、その正反対の行動を取る」

ドイツ政府も、方針転換を始めている。

昨年、中国家電大手の美的集団<000333.SZ>による独ロボット大手クーカの買収が批判を浴びたことで、ドイツ政府は外国企業の投資に対する規制を強化し、欧州における買収審査に関する新ルール策定に向けて動き始めた。

昨年12月には、中国当局がソーシャルメディア上の偽アカウントを通じてドイツの政治家情報を集めていると独情報当局が指摘し、中国側を激怒させた。このように公然と非難することはまれで、中国にメッセージを送る意図があったとドイツ政府は述べている。

今年予定されているドイツと中国の首脳会談において、独側はより強硬な姿勢を取る方向だと、政府高官は語る。

しかし、その一方で、欧州連合(EU)の内部分裂や、単独歩調を崩さないトランプ米政権と欧州との距離が広がっていることから、中国政府に方針転換を強いるのは困難だと認識している。

「中国が本当に心配しているのは、欧州と米国が中国に対して共同歩調を取ることだ」と、ドイツ政府関係者は語る。「その意味で、トランプ大統領はまさに中国にとって天の恵みだ」

(Noah Barkin/翻訳:山口香子、編集:下郡美紀)

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『しょせんは米中の掌で踊る南北朝鮮 北朝鮮は分割占領か、単独占領か』(4/24日経ビジネスオンライン 鈴置高史)、『南北・米朝会談の行方、トランプは南北共同提案の「非核化」に応じる』(4/23ダイヤモンドオンライン編集部)について

5月の「防人と歩む会」は5/26(土)15:00~17:00、高田馬場FI(エフアイ)ビル8階にて産経の阿比留瑠比先生を招いての講演です。詳しくは本ブログのトップページをご覧ください。

4/24ロイター<金正恩氏が中国大使館訪問、中国人死亡のバス事故受け>影武者を謝りに行かせたのでは。

https://jp.reuters.com/article/kim-jong-un-idJPKBN1HU2XU

4/24レコードチャイナ<北朝鮮専門家、開城工業団地の年内再開の可能性に言及=「核廃棄の宣言もしていないのに、もう工業団地再開の議論か」―韓国ネット>

http://www.recordchina.co.jp/b594055-s0-c10.html

記事が長いのでコメントは短くします。上のレコードチャイナの記事も鈴置氏の言う米中VS南北の構図で捉えれば分かり易いのでは。鈴置氏と小此木氏では全然見方が違います。①朝鮮半島以外の情報を取っているかどうか②朝鮮半島ファーストの思いが強すぎるかどうかが二人の見方を分けていると思います。小此木氏は武貞氏同様南北統一に思いを入れ過ぎています。目が曇っているとしか言いようがない。鈴置氏の論説によれば戦争は必至です。トランプは最後通牒を言い渡しに行くのですから。やるのは米軍の準備と夏休みという事でNEOができる8月かと。中間選挙対策ともなりますし。一昨日、本ブログで紹介しました下平氏のEMP武器のチャンプを是非米軍は使って、日本へのミサイル飛来を防いでほしい。

鈴置記事

20日に平壌で開催された北朝鮮の朝鮮労働党中央委員会第7期第3回総会に出席する金正恩委員長(写真:KCNA/UPI/アフロ)

  • 北朝鮮の非核化を巡る動き(2018年)
1月1日 金正恩「平昌五輪に参加する」
1月4日 米韓、合同軍事演習の延期決定
2月8日 北朝鮮、建軍節の軍事パレード
2月9日 北朝鮮、平昌五輪に選手団派遣
3月5日 韓国、南北首脳会談開催を発表
3月8日 トランプ、米朝首脳会談を受諾
3月26日 金正恩訪中、習近平と会談
4月1日頃 ポンペオ訪朝、金正恩と会談
4月17―18日 日米首脳会談
4月21日 北朝鮮、核・ミサイル実験の中断と核実験場廃棄を表明
4月27日 南北首脳会談
5月末から6月 米朝首脳会談
米朝首脳会談の後 習近平、訪朝か

前回から読む)

北朝鮮と韓国が激しく動く。だが、よく見ると米中の掌の上で踊っているに過ぎない。

世界を欺くペテン劇

—北朝鮮が核・ミサイル実験の中断を表明しました。

鈴置: 4月20日、朝鮮労働党が中央委員会総会を開き採択しました。もちろん、ペテン――世界を欺く偽装平和攻勢です。

総会ではまず、金正恩(キム・ジョンウン)委員長が「我が党の課題について」を報告。討議を経て「決定書」が採択されました。そのうち、核に関連する項目は4つです。

北朝鮮のサイト「我が民族同士」の「金正恩委員長の指導の下に朝鮮労働党中央委員会第7期第3回総会が行われる」(4月21日、日本語版)から要約して引用します。

  1. 核兵器開発を完了したと宣言する。
  2. 核実験とICBM(大陸間弾道弾)の発射実験を2018年4月21日以降は中止し、核実験場を廃棄する。
  3. 世界的な核軍縮のために、核実験の全面中止の国際的な努力に合流する。
  4. 威嚇されない限り核兵器を絶対に使用しないし、いかなる場合も核兵器・技術を移転しない。

②の「核・ミサイル実験の中止」はニュースではありません。米国が対話開始の条件として要求した案件です。北朝鮮は訪韓した韓国特使の口を通じ、すでにその受け入れを表明しています(「『文在寅の仲人口』を危ぶむ韓国の保守」参照)。

3月6日、青瓦台(韓国大統領府)は「鄭義溶首席特使の訪朝結果 言論発表」で以下のように発表しています。

・対話が続く間は、北側は追加の核実験と弾道ミサイルの試射など戦略的な挑発の再開はしないことを明らかにした。同時に核兵器はもちろん、在来型の兵器も南側に使わないことを確約した。

核保有国クラブに入りたい

②の「核実験場の廃棄」は完全なペテンです。新たな核実験場を別のところに作るのは容易です。北朝鮮が廃棄すると表明したのは豊渓里(プンゲリ)の実験場と思われますが、相次ぐ核実験で坑道が崩落し、使えなくなったと言われています。廃棄せざるを得ない実験場でしょう。

前例があります。2008年6月27日、北朝鮮は老朽化した寧辺(ニョンビョン)の原子炉の冷却塔を自ら爆破しました。2006年10月の1回目の核実験で世界のまなざしが厳しくなった後のことです。

米国務省の北朝鮮担当者とともに現場に招待された米CNNや日本のTBS、韓国のMBCなどは、その光景を動画で報じ、北朝鮮が平和路線に転換したかの印象を世界に拡散しました。

この原子炉はプルトニウムの抽出用でした。北朝鮮は核兵器の素材をプルトニウムからウラニウムに替えており、この原子炉は不要になったと見る専門家もいます。今回の「核実験場の廃棄」宣言も同じ手口――不要品の廃棄を宣伝に使う――です。

そもそも今回の「決定書」で北朝鮮は米国に核武装を認めろと迫ったのです。①で「核兵器を保有した」と宣言したうえ、③④で核不拡散条約の加盟国と同様に核実験や核の拡散はしないと表明。要は、核保有国の仲間に入れてくれ、と言ったのです。

—北朝鮮が譲歩したのかと勘違いしていました。

鈴置:そう思ってしまった人が多い。例えば「NHK NEWS WEB」に載った4月21日の昼のニュースの見出しは「北朝鮮 核実験とICBM発射実験中止 核実験場も廃棄と発表」(4月21日12時01分)。

この記事も前文でちゃんと「ただ、核保有の立場に変わりはなく、核やICBMの実験を再開する余地も残しています」と指摘しています。が、見出しだけ見ると北朝鮮が改心してまっとうな国になったかと思ってしまいます。

朝鮮半島の春が大股で近づく

—北朝鮮は核保有国の仲間に入れろと要求しながら「いい子になった」と宣伝する……。

鈴置:もう、それしか手がないのです。金正恩氏が生き残るには4月27日の南北首脳会談を利用して米国に体制の存続を認めさせるしかない。

それには韓国の世論を軟化させる必要があります。文在寅(ムン・ジェイン)政権は北朝鮮に好意的――はっきり言えば言いなりです(「米朝首脳会談は本当に開かれるのか」参照)。

しかし、保守派は北朝鮮のペテンを見抜いています。そこで韓国の世論を手なずけるために「核・ミサイル実験の中止」や「核実験場の廃棄」を言い出したのでしょう。

—そんなペテンに引っ掛かるのでしょうか、韓国人は。

鈴置:保守政党や保守系メディアは「偽装平和攻勢だ」と批判しました。一方、青瓦台(韓国大統領府)は北朝鮮の表明を直ちに歓迎しました。

これを受け、聯合ニュースは「北朝鮮の自発的な核実験場廃棄に韓・米が歓迎…『朝鮮半島の春』が大股で近づく」(4月21日、韓国語版)と極めて前向きの見出しで報じました。聯合ニュースは文在寅政権寄りの報道ぶりで有名です。

左派系紙ハンギョレも社説「朝鮮半島の運命がかかる歴史的な首脳会談への期待」(4月22日、韓国語版)で、北朝鮮の表明を手放しで――何の疑いもなく、称賛しました。

事実がどうであれ、半島の春――平和共存時代の到来を信じたい韓国人も多いのです。首脳会談で南北が「朝鮮戦争の終結」を宣言すれば「北朝鮮が核を捨て経済重視に転換すると言いだしたのだから、経済制裁を緩和すべきだ」との声が高まるでしょう。

ハンギョレの社説は先回りして「北朝鮮の体制を保証すれば、中国やベトナムのように経済開放への道を開いてやれる」「北朝鮮が核から経済へと路線を転換したことにより、経済建設への世界の支援と協力を受ける名分ができた」と書きました。北朝鮮は大笑いしていることでしょう。

「対話のワナ」にはまった金正恩

—北朝鮮は米国を交渉相手と見なし、韓国は無視していました。

鈴置:金正恩委員長はトランプ(Donald Trump)大統領の仕掛けた「対話のワナ」にはまった。これから脱するには、韓国を踏み台にするしかないのです。

北朝鮮は「米朝首脳会談に応じる」と韓国を通じ、間接的な形ながら表明してしまった(「『時間稼ぎ』の金正恩に『助け舟』出した文在寅」参照)。

米朝首脳会談の場でトランプ大統領が「直ちに核を廃棄するのかしないのか」と迫るのは間違いありません。

金正恩委員長が「イエス」と答えれば、トランプ大統領は米国や国連の査察機関をすぐさま送りこんで、本当に核施設が廃棄されたのか確かめると言い出すでしょう。リビアを非核化したやり方です(「米朝首脳会談は本当に開かれるのか」参照)。

「NO」と答えれば、トランプ大統領は世界に経済制裁を強化するよう呼びかけるでしょうし、空爆など実力行使に出る可能性もある。ある専門家の言葉を借りれば、米朝首脳会談は無条件降伏――「ポツダム宣言」を言い渡す場になるのです。

だから北朝鮮の「核実験などの中止」宣言というペテンに対しても、トランプ大統領は「歓迎する」とツイートしたのです。

北朝鮮はいまだ、正式には米朝首脳会談に応じるとは表明していません。ペテンだろうと偽装平和だろうと「ポツダム宣言」通告の場である首脳会談の開催に北朝鮮が前向きの姿勢を示せば、米国が大歓迎するのは当たり前なのです。

会談を拒否すれば……

—「究極の2択」を避けるため、北朝鮮は米国との首脳会談に応じないのではありませんか。

鈴置:その際は米国からの圧迫が続きます。トランプ大統領は安倍晋三首相との4月17日の会談後に、以下のように語りました。ホワイトハウスのサイトから引用します。

・ It’s possible things won’t go well and we won’t have the meetings, and we’ll just continue to go along this very strong path that we’ve taken. But we will see what happens.

「米朝会談はうまくいかないかもしれないし、開かれないかもしれない。そんな時はこれまで採ってきた強力な方向を続けるだけだ」と言ったのです。

文在寅政権は、米国から圧迫を受ける金正恩政権を助けるつもりで、結果的にワナにはめてしまったのです。一方、米国からすれば、裏切り者の文在寅政権を使って金正恩氏を対話の場に引き出すことに成功したのです。

韓国とは別に、米国も独自ルートで北朝鮮に首脳会談を呼びかけていた。ただ、韓国に米朝首脳会談を仲介する形をとらせれば、北朝鮮は応じる可能性が増します。韓国を味方に付けて米国との交渉に臨めると北が考えるからです。

タッグを組んだ米中

—米国VS南北朝鮮の構図ですね。

鈴置:より正確に言えば、米中VS南北の構図です。米中はタッグを組んでいるのです。

「米中が北朝鮮包囲網を作ったな」と関係者が実感したのが2017年12月12日のティラーソン(Rex Tillerson)国務長官(当時)のアトランティック・カウンシルでの演説でした。

司会者から「『圧力をかけ過ぎると北朝鮮が崩壊し、難民が押しかけて来る』と中国は懸念していないか」と聞かれたティラーソン長官は「その問題に関しては、米中の外相と国防相ら高官協議の場で緊密に連絡を採っている」と答えました。

・And one of the real values of these new high-level dialogues and the diplomatic and strategic dialogue that Secretary Mattis and I chair with our counterparts, and we actually have included Joint Chief of Staff Chairman Dunford, General Dunford, and his counterparts from China as well.

さらに「中国は難民問題への準備を進めており、上手に処理するだろう」と語った後、驚くべき発言が飛び出したのです。以下です。

・ We have had conversations that if something happened and we had to go across a line, we have given the Chinese assurances we would go back and retreat back to the south of the 38th parallel when whatever the conditions that caused that to happen. That is our commitment we made to them.

「何かが起きた時、我々(米軍)は南北の軍事境界線を越えざるを得ない。これに関しては中国と話し合い済みであり、我々は状況により38度線の南に引き上げると中国に保証している」と語ったのです。

「金正恩後」を堂々と話し合う

—米中は金正恩体制崩壊後の軍事行動について密約を交わしているのですね。

鈴置:その通りです。当然、翌日の中国外交部の会見で「北朝鮮崩壊後に関する米中密約」に関し質問が出ました。

何と、中国の報道官はティラーソン発言を否定しませんでした。肯定もしませんでしたが、否定しなかったことで暗に肯定したと受け止められたのです。

Foreign Ministry Spokesperson Lu Kang’s Regular Press Conference on December 13, 2017」(12月13日、英語)で報道官は以下のように答えました。

・ I have no idea about what was referred to by the US side, but I would like to reiterate that China’s position on the Korean Peninsula nuclear issue remains unequivocal.

「米国側が言及したことに何の意見もない」と言い放ったのです。これを読んだ北朝鮮はすくみあがったことでしょう。

米中が「金正恩後」を話し合うのは予想されたことです。米国のランド研究所(Rand Corporation)は米中による北朝鮮の分割占領を研究し、地図まで公表しています(「米中ロがうごめく『金正恩後の北朝鮮』分割案」参照)。

ランド研究所の「北朝鮮2分割占領案」

しかし、米国の国務長官が堂々と「米中密約」を語り、中国の外交部がそれを事実上、肯定するようになったのです。北朝鮮が米国との首脳会談を受け入れたのも、米中包囲網の締め付けを意識したためと思います。

トランプこそが対話派

—ティラーソン演説の「米中密約」は話題になりませんでした。

鈴置:この演説の全く異なる部分が注目されてしまったからです。米国メディアは、トランプ大統領とティラーソン国務長官の対立の証拠として報じました(「米国務長官演説は『ハル・ノート』だ」参照)。

北朝鮮への強硬策を検討するトランプ大統領に抗し、ティラーソン国務長官が対話を主張している――と、ピンボケの分析をNYT(ニューヨーク・タイムズ)など米国メディアが一斉に開陳したのです。

その結果、金正恩後に関する米中談合は見過ごされてしまいました。日本の外務省は勘違いして「米国が対話路線に転じたのか」と右往左往しました。

「転じる」も何も、初めからトランプ政権は対話路線なのです。だからトランプ大統領は韓国から米朝首脳会談を持ちかけられた瞬間、それに乗ったのです。

4月18日に大統領自らが、ポンペオ(Mike Pompeo)CIA長官の極秘訪朝と金正恩委員長との会談をツイッターで公表したのも対話を熱望する証拠です。

米国が首脳会談に熱心であるとの姿勢を世界に示せば、北朝鮮は断りにくくなります。トランプ大統領こそが対話派なのです。

ただし、その対話の目的は譲歩を念頭に置いた話し合いではなく、ハル・ノートあるいはポツダム宣言を突きつけることにあるのですが。

核実験場を確保する人民解放軍

—2018年初めに中国が朝鮮半島有事を想定した大規模な軍事演習を実施しました。

鈴置:日経の中沢克二編集委員が「米朝戦争への備え、中国軍が異例の全軍訓練」(1月9日)で報じ、関係者の間で大きな話題になりました。

1月3日、習近平主席の指揮のもと人民解放軍は全軍が臨戦態勢に入る極めて大規模な訓練を実施しました。中沢克二編集委員は異例の演習の目的を以下のように解説しました。

・米軍が中国の反対を押し切って北朝鮮領内に踏み込むなら、中国は権益確保へ軍を動かす覚悟が要る。
・万一、戦いが始まるなら中国軍は68年前の米軍と同様に、朝鮮半島の西海岸に上陸する手がある。平壌は目の前だ。米軍と直接、戦わないにしろ、平壌付近を押さえれば優位に立てる。
・一方、陸から北朝鮮に踏み込む中国軍には、別の任務がある。中朝国境から北朝鮮に百キロほど入れば、豊渓里の核実験場を含む核関連施設を押さえ込める。

—また、「豊渓里」が出てきました。

鈴置:トランプ大統領が軍事行動を決意した場合、米海空軍は北朝鮮の核施設を空爆します。ただ、核弾頭の確保と核技術者の拘束は空からはできません。

陸上部隊を派遣するにせよ、大兵力は送れない。そこで中国人民解放軍との協同が不可欠となるのです。その際には、米中両軍の衝突を避けるため、作戦区域の調整が必要です。

ティラーソン演説も「もっとも重要なことは核兵器の確保だ」「我々は中国とそれをどう実現するか話し合ってきた」と明かしています。

・the most important thing to us would be securing those nuclear weapons they’ve already developed and ensuring that they – that nothing falls into the hands of people we would not want to have it. We’ve had conversations with the Chinese about how might that be done.

在韓米軍の撤収が射程に

—米中両軍が朝鮮半島に同時に侵攻するのですね。

鈴置:まだ決まったわけではありません。なお、近未来小説『朝鮮半島201Z年』では中国軍だけが侵攻します。中国は単独で汗をかく代わりに、半島の支配権を米国から認められるのです。

軍事行動には至らないにせよ、朝鮮半島で構造変化が起きる可能性が極めて高い。米国が北朝鮮への軍事攻撃を覚悟したからです。すると中国も対応措置をとらざるを得ない。

もともと中国も北朝鮮を見限り始めていた。米国も中国や北朝鮮側になびく韓国との同盟が続くのか、疑問に思っていた。米中は核問題を解決するのを機に、安全保障の枠組みも変更する方向に動いているのです。

4月17日に安倍首相と会談した後のトランプ大統領の発言が興味深い。「南北首脳会談で朝鮮戦争を(正式に)終結させることができるかもしれない。それを祝福する」と語ったのです。

・South Korea is meeting, and has plans to meet, with North Korea to see if they can end the war. And they have my blessing on that.

韓国では、文在寅大統領と金正恩委員長が「朝鮮戦争は終結した」と宣言すると予想する人が増えている。そして保守派はこれを警戒しています。

「戦争終結」を南北が宣言すれば、在韓国連軍は存在理由を失う。在韓米軍が国連軍としての資格を失えば、有事の際の在日米軍基地によるバックアップを期待しにくくなります。

すると米軍が韓国に駐留するのは難しくなって、米韓同盟自体が希薄化します。つまり、終戦宣言は米韓同盟を弱体化する。だから韓国の保守は警戒するのです。

ところがトランプ大統領はそれに対し「いいね!」と言い出したのです。もう韓国との同盟にこだわってはいないとのサインです。もちろん、習近平主席に向けての意思表示です。

「北朝鮮の核問題が解決したら、中国が望んでいた在韓米軍の撤収や米韓同盟の破棄の方向に動くから、中国も北朝鮮に圧力をかけ続けてね」ということでしょう。

半島は中国の勢力圏に

—トランプ大統領は「韓国は中国の一部だった」と語っていました。

鈴置:「習近平主席から中韓関係について聞いた」として「韓国は事実上、中国の一部だった」と、WSJ(ウォールストリート・ジャーナル)との会見で述べたのです(「『韓国は中国の一部だった』と言うトランプ」参照)。

・He then went into the history of China and Korea. Not North Korea, Korea. And you know, you’re talking about thousands of years …and many wars. And Korea actually used to be a part of China.

WSJ Trump Interview Excerpts: China, North Korea, Ex-Im Bank, Obamacare, Bannon, More」(2017年4月12日)です。

はっきり言えば「韓国は中国の属国であった」ということです。習近平主席は歴史的な経緯から韓国は中国の勢力圏であると主張し、トランプ大統領も習近平主席の主張を公に語ることでそれを受け入れたのです。

米中の「協同」に対してはもちろん、南北朝鮮も手を組んで動きます。1972年の「南北共同声明」もそうでした。現在、半島で起きている様々の出来事は「米中VS南北」として読み解くと、分かりやすいのです。

(次回に続く)

ダイヤモンドオンライン記事

写真:首相官邸HPより

朝鮮半島の将来をめぐるトップ外交が、中朝に続き先週の日米会談、今週の南北首脳会談を経て米朝首脳会談で山場を迎える。なぜ今、トップ外交が急展開したのか。米朝会談で何が決められるのか――。朝鮮半島問題の専門家で日韓歴史共同研究 委員会委員も務めた小此木政夫・慶応大名誉教授は「北の金正恩労働党委員長は本気、南北が“共同提案”する『非核化』にトランプ大統領も応じるだろう」と歴史的転換を予想する。(聞き手・ダイヤモンド・オンライン特任編集委員 西井泰之)

「先南後米」政策に転換した北朝鮮 もう後戻りはできない

小此木政夫・慶応大名誉教授

――北朝鮮の平昌五輪参加を機に朝鮮半島をめぐる動きが急展開です。何が起きているのでしょうか。

一連のトップ外交は、北朝鮮が「先南後米」と呼ばれる外交政策に転換したことが引き金になりました。

北はこれまで、朝鮮半島の安定や核問題で自分たちが相手にするのは米国だということでやってきたわけですが、まず先に南(韓国)との関係を緊密にして、米朝対話の環境を整える政策に転換したのです。

だから正恩氏は、平昌五輪に南北統一チームで参加したり、妹の与正氏を訪韓させたりと、南との対話ムードの醸成、もっと言えば南を抱き込むことを懸命にやりました。

「先南後米」政策はとにかく南を味方にしなければ、成立しないからです。日本では「微笑外交」と受け止められましたが、実際は南へのしがみつき政策といったほうがいいでしょう。それが米朝首脳会談という新しい局面を作りつつあるのです。

北がなぜこのタイミングで動いたかは、二つの文脈があります。

一つは、昨年秋以降、国連で厳しい経済制裁が決議されたことがあるでしょう。400万バレルの原油を例外として、北朝鮮のほとんどの輸出入、外貨を稼ぐ労働者の派遣を絶とうというのですから、事実上の「経済封鎖」です。

ただ制裁が現在、大きな効果を上げているというよりも、効果はこれから出てくる。それが今後、2年も3年も続けば、お手上げだという読みがあったと思います。

それとは別の大きな文脈として、父親の正日氏の時から、米国を念頭に約20年かけてやってきた核・ミサイル開発が最後の段階に近づいたことがありました。

北の指導者は軍事力を抑止力だけではなく、外交力だと考えています。

実際に軍事挑発が行われるのは2年前からですが、首脳会談などの大きなイベントがあるたびに、ミサイルや核実験によって、技術革新と軍事挑発を結合する形で瀬戸際政策を展開してきました。瀬戸際政策というのは外交政策です。

それが昨年9月の6回目の核実験や11月にICBM(大陸間弾道ミサイル)の火星15号の実験をした後、「国家核戦力の完成」を宣言 し、突然、今年になって手のひらを返したわけです。

これは明らかに計画的なものです。

米本土に到達する核ミサイルが完成し、それを外交手段として米国と交渉するという判断があったと思います。 事態が急展開した背景には、制裁によって強要された面があるにしても、もともと自分たちが計画的にやろうと考えていたという側面がありました。

その両方が合わさったために情勢が急展開し、北朝鮮はもう後戻りはできない。このまま前へ進むしかないのです。これは重要なポイントです。

南北関係は民族主義で動く 「統一ナショナリズム」が推進力に

――対北対話路線を掲げる韓国の文在寅政権が触媒役になったのでしょうか。

左派の文政権が誕生して、北が「先南後米」をやりやすくなったことは確かですが、それは計画的なものではなく、幸運だったということです。

朴・前大統領が弾劾されず保守政権が続いていたら、北への対決姿勢をとっていたでしょうから、今のような展開になったかは疑問です。

もともと韓国では左派は民族主義ですし、南北間の対話や交流を重視するのが基本姿勢です。

しかも、文政権は、雀順実事件や財閥との癒着など、朴政権の不正に反発した人々の「ろうそくデモ」をきっかけに誕生しました。そのこともあって文政権は自分たちは、半分、“革命政権”だと思っています。民主化勢力であり統一勢力だとも。逆に保守勢力は軍事勢力であり、北との関係では分断勢力になります。

南北関係もこの違いをわかっていないと、理解できないところがあります。南北関係は民族主義で動いているのです。

日本には、北が文政権を手玉にとって米国との折衝に利用しているとの見方もありますが、実際には半々でしょう。南が主導権をとっているとまでは言えないにしても、北は南の協力なしには、米朝首脳会談は成立しないのです。

――南北の人たちの同胞意識、民族意識はそれほど強いのですか。

第2次大戦後、独立した時も分断されていて、統一した近代国家の経験がない。分断は、冷戦による米ソ両大国の綱引きの結果であり、外から与えられたものだと考えます。

南北が近代国家として統一されてこそ独立が達成されるという「統一ナショナリズム」が根底にあります。特に年配の人たちには、統一しないと、本当の独立ではないという意識が強いのです。同じ分断の歴史があっても、近代国家としての経験があるドイツと違うところです。

ただ今回の場合、南北を急接近させたのは「戦争の恐怖」です。トランプ大統領が「軍事的選択を排除しない」と言い、安倍首相がその政策を100%支持すれば、南北は接近するしかありません。

南北会談はトランプ大統領を喜ばすための「作戦会議」

――27日の南北首脳会談では何が話し合われるのでしょうか。

一連の首脳会談は、5月から6月上旬に開催されるとされる米朝会談を軸にして、そこからさかのぼる形で行われていることを理解する必要があります。

3月に電撃的に中朝首脳会談が行われたのも、南北だけならともかく米朝会談まで実現しそうになったので、習近平国家主席が割り込んできたというのが真相でしょう。朝鮮半島の非核化から将来のことまで、中国が関与しないまま決まりそうなことに危機感を抱きました。

金正恩委員長としても、米朝会談を前に「後ろ盾」が欲しかったのです。

結論から言えば、南北首脳会談は成功するでしょう。というのは 、南北会談は米朝会談を成功させるための会談だからです。

つまり、米国が求める「非核化」という“商品”をどう 売り込むかを話し合う南北の作戦会議なのです。

トランプ大統領を喜ばせないといけない、そのためには何が肝心かということを話し合うのです。

米朝首脳会談は、時間をかけて合意を積み上げていく通常の外交とは違います。相手が何を望んでいるか、その代わりこちらは何を得るかと考える。トップ同士の「取引(ディール)」なのです。

そもそも米朝首脳会談は通常の外交ルートで合意されたわけではありません。

韓国側特使がピョンヤンを訪問し、正恩氏のメッセージをトランプ大統領に伝えて、大統領の「OK」を引き出しました。しかしその過程で作動したのは、米国務省・韓国外務省の外交チャンネルでも、双方の大統領安保担当補佐官・室長の安保チャンネルでもありませんでした。

米国側で動いたのは、今度、国務長官に指名されたポンペオ長官のCIA(中央情報局)であり、韓国側は、徐薫院長の国家情報院でした。情報機関のチャンネルで、で「話が進められました。

韓国側が説明した時、ティラーソン米国務長官はアフリカ訪問中であり、マクマスター安保担当特別補佐官は首脳会談に反対したと伝えられています。その後、2人とも更迭されました。

「非核化で包括的合意」を提案 ICBM廃棄の代償に関係正常化求める

――南北首脳会談でまず「非核化」が合意され、米朝会談で提案されるということですか。

トランプ大統領とポンペオ長官が優先的に求めているのは、まず「米国が安全になる」こと、つまりICBMの破棄です。非核化については「包括的に合意」し、段階的に実施するしかありません。

北朝鮮としては、ICBM廃棄と非核化の包括合意の代償として、米国との関係正常化を求めるでしょう。それが南北が考えるシナリオだと思います。

これまで北が何のために軍事挑発や瀬戸際外交をやってきたかといえば、朝鮮戦争で戦争状態にある米国との関係を正常化させ、北の「体制の安全」を確保するためでした。関係が正常化されれば北朝鮮は安全なのかと、不思議に思うかもしれません。しかしそうなれば、金正恩委員長は北朝鮮を「親米国家」に変身させるでしょう。中国はそれが心配なのです。

他方、米国が一番、欲しがっているのは、ICBMの火星14号、15号の廃棄だからです。

ポンペオ長官は1月のテレビのインタビューで、「北が米国 本土に到達する核・ミサイルを完成させるまでにあと数ヵ月しかない」と、それが最大の脅威だと言っています。

それを取り除くのが、トランプ大統領に対する最大のプレゼントだと、金正恩氏は考えるのではないでしょうか。

日本国内には、北がICBMを放棄するはずはないという固定観念がありますが、そうではありません。今、それを最も高値で売ろうとしているということじゃないでしょうか。

米朝関係が正常化されるのなら、北朝鮮にとって米国はもう「敵国」ではなくなります。在韓米軍についても、いたければいてもいいということでしょう。THAAD(高高度ミサイル防衛システム)の在韓米軍への配備も同じです。そのほうが、中国に対してにらみが利くと考えるかもしれません。

米朝会談は成功の可能性高い 二人の“ディーラー ”が「取引」に賭けた

――北の思惑がそうだとして、米国は南北の提案をのむのでしょうか。

トランプ大統領は秋の中間選挙を考えています。

ICBMの廃棄と包括的な非核化が合意されれば、トランプ大統領は首脳間の「取引」が成功したと、国民に向かって言えるでしょう。華々しい外交の成果ということになります。

米国第一主義で、ホワイトハウスによるトランプ型取引外交が成功したとも強調できます。

だから、米朝会談は成功する可能性のほうが高いのです。

IRBM(中距離弾道ミサイル)などのほかのミサイルや、核兵器や核施設の申告、検証、解体などの手順や方法などは、包括合意の後、通常の外交ルートに戻して話し合うということになるのでしょう。

中国の役割も大事なので、6者協議のような枠組みが復活すると思います。

――トランプ政権は更迭した国務長官や安全保障担当補佐官の後任に、ポンペオ氏やボルトン元国連大使といった強硬派が就任することになります。北朝鮮との交渉で柔軟性がなくなる恐れはありませんか。

確かに強硬派の色彩が強くなりましたが、強硬派と穏健派という区別ではなく、大統領に異を唱える人か、そうでないか、の基準の方が重要ですし、それで考えるほうが、政権の動向が正確に見えると思います。

もっと言えば大統領と気が合うか、肌合いが合うかということが重要になり、大統領に異を唱えない人が増えたということです。大統領のフリーハンドが強まったわけで、むしろ個人外交がやりやすい体制になったのではないでしょうか。

トランプ氏と金正恩氏という、従来の指導者とは個性や発想の違う、出方が読めない二人が会うわけですから、何が起きるかはわからない面もあります。失敗のリスクも小さくありません。

私は北朝鮮の立場はそれほど弱くないと考えています。まだ核ミサイルは廃棄されていなし、通常兵器による抑止も強大です。

トランプ大統領が、北朝鮮は圧力に屈したと考えて、武装解除のようなことを要求すれば、金正恩委員長は「北朝鮮に帰って臨戦態勢を敷く」と反発するかもしれません。

「取引」に失敗すれば、南北の「共同提案」を拒絶するということになるのですから、米国は軍事介入のほかに選択肢を失います。

それは米国には大きな犠牲を伴う選択です。軍事的な選択ということになれば、米韓同盟も破綻しかねません。韓国軍の協力なしに、米国は北朝鮮と戦えるのでしょうか。

今回の首脳会談は、個性の強い二人がやると決断しないと成立しませんでした。個人外交を得意とする二人、いわば「ディーラー」同士がこれはいけると思って成立する会談です。

だから成功するでしょうと言うしかないのです。

1回の会談で合意まで行くずに、延長戦はあるかもしれませんが、失敗を宣言するということは大変なことになりますから、その可能性は少ないと思います。

日本は安倍首相がピョンヤン に飛ぶしかない

――事態が急展開する中で日本は出遅れました。米朝が頭越しに関係正常化を進める可能性も出てきて、安倍首相も急きょ、訪米しトランプ大統領と会談しました 。

首脳同士が会談して、非核化問題でディールをしながら事態を動かすという予想を超えた形になり、サミットシリーズが始まってしまいました。

きっかけを作ったのは、金正恩委員長とトランプ大統領ですが、他の首脳も米朝会談が成功しそうだというので賭けに参加し始めたわけです。プーチン大統領も、いずれ加わってくるでしょう。

トランプ大統領が首脳同士でしかできないディール外交を始めたので、各国とも、外務省がその後を追うような展開になっています。日本も朝鮮半島問題で何かを目指そうとすれば、安倍首相が米韓と話をするだけでなく、ピョンヤン に飛んで金正恩氏と会談するほかないのです。

――米朝合意が現実になった場合、日本への影響をどう考えますか。

日本が直面する問題は二つあります。一つは安全保障の面で、北のICBMは廃棄されても、射程は短いけれど日本を射程範囲としてカバーする「ノドン」や「北極星2」スカッドERなどのミサイルをどうするかという問題があります。

核兵器だけでなく、これらのミサイルの廃棄もトランプ大統領に代わって交渉してもらえばいいという簡単な話にはなりません。日本が北と交渉するしかありません。

もう一つは、日朝首脳会談をやるとなれば、拉致問題の最終的な解決を図らなければなりません。拉致被害者家族会が声を上げているように、これが最後のチャンスでしょう。

この二つの問題の解決が、米朝会談の後に日本には課題になってきます。

戦後外交の「総決算」になる 北も生き残るため日本に期待

――問題解決の展望はあるのでしょうか。

一方で北朝鮮は、二つの問題を解決する代償として、日本に国交正常化を要求してくるでしょう。

日本が植民地支配の過去をきちんと清算し、日朝国交正常化を実現し、核・ミサイルや拉致問題と一括解決することが交渉内容になります。

今まで日本は、国交正常化は拉致問題や核・ミサイル問題を解決してからだと主張してきましたが、北朝鮮側は、国際情勢が変化し始めたのだから、日本が首脳会談を求めるなら、米朝首脳会談と同じく、国交正常化の話をしようと言ってくるでしょう。

安倍首相や外務省には大変、難しい交渉になりますが、南北、米朝、中朝など、朝鮮半島の関係国が動き始めていますから、日本はやらざるを得ない状況です。そうしなければ、新しい北東アジアの形成から除外され、「妨害者」になってしまいます。

ただ事態がここまで来たら、焦らないで米朝会談の結果を見極めてから、戦後の朝鮮半島問題のいわば総決算をするつもりで、腹をくくって取り組むことです。

北朝鮮との関係正常化は、戦後外交の残された課題です。

ミサイルや拉致問題のほかにも、北に残留している日本人や北に渡った日本人妻の問題や、過去の清算に伴う経済協力、いわば「賠償」の問題など、二国間のあらゆる問題を解決しなければいけないのです。

1960年代の日韓国交正常化に似たような交渉を立ち上げるのだから大変です。しかも傍らでは、非核化プロセスが進むわけで、それも確実にしなければなりませんし、これはこれで容易ではないプロセスです。

――北朝鮮は日朝関係改善でも本気なのでしょうか。

北朝鮮にとっても、米朝会談の後、日本と交渉することが不可欠です。金正恩氏は南にだけでなく、米中両国に非核化を約束しました。いまだに約束だけですが、それでも後戻りできません。前に進んで、生き残りのための条件を整えようとしているのです。

今後、何十年間も、 指導者としてやっていくための条件づくりは、核・ミサイル開発が最終段階にある「今」しかできません。

金正恩時代になってから、恐怖政治の面が強調されていますが、明らかに脱イデオロギーが進展し、軍重視の姿勢が後退しています。党機構が前に出て、制度・手続きを重視する傾向も確認できます。金正恩氏は北朝鮮をまず「普通の社会主義国」にしようとしているように見えます。

米朝関係が正常化され、南北が「共存」する枠組みができても、経済復興のためには、日本からの経済協力でインフラなどを整えなければなりません。それがないと、生き残り計画が完結しません。

だから日本は慌てる必要はないのですが、北朝鮮との関係正常化は北東アジア全体の平和と安定にかかわってきます。逃げられないし、ある種の覚悟が必要です。

関係国の動きの中で追い込まれてやらざるを得ないということではなく、自ら北東アジアの全体像を構想して決断していかないと、足をすくわれることになります。

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