7/9宮崎正弘氏メルマガ<ポンペオ、三回目の訪朝の成果はなし。「強盗の要求ばかりだった」 「交渉は二年半かかるだろう」というポンペオ発言の深い意味>
http://melma.com/backnumber_45206_6706816/
7/9阿波羅新聞網<川普改美国总统几十年战略 完美风暴降临 北京哭晕了=トランプはこの数十年に及ぶ米国大統領の戦略を変える 大嵐を起こしたのは完璧で北京は茫然自失して泣く>大陸の《国情内参》の主席研究員の巩勝利は、「トランプが貿易戦を仕掛けなければ、米国は今後10年、20年と世界市場でのNo1の地位の確保は難しくなる。ほかの国は猶更生きることすら難しい。“今後は中共の生存圏と米国の生存圏の問題になる。米国は欧州、日本、豪州、カナダ等40の先進国の利益代表で、中共はマルクス主義の利益代表、簡単に言えば暴力で世界中の富と利益を得ようとしている”」と。
http://www.aboluowang.com/2018/0709/1141227.html
7/10看中国<川普点名朝鲜变脸背后黑手 有信心金正恩遵守协议(图)=トランプは北朝鮮の豹変には背後に黒幕がいると名指し 金正恩が協議を守ることを信じている>トランプのツイッター:金正恩が我々と結んだ約束、それ以上に我々が握手したことに敬意を払うことに自信がある。我々は北朝鮮の非核化に合意した。一方、中国は貿易戦争を理由に我々の為した取引に悪影響を与えようとしているのかもしれない。そうでないことを祈る。
https://www.secretchina.com/news/gb/2018/07/10/864119.html
宮崎氏、鈴置氏、高濱氏の米朝関係の見方は様々です。でも北は非核化しないというのは一致しているのでは。米国がどう出るかがポイントです。でも日本も安全について他国を当てにするのではなく、核武装すべきです。①ニュークリアシエアリング②米軍の核を有償譲渡(米軍基地内に保管・密約で、自衛隊員が駐在警備)③自力開発のプロセスを経て自国の安全を確かなものにしませんと。北の核保有が認められるのであれば、日本も持てない道理はありません。
鈴置記事
7月8日に会談したポンペオ米国務長官と河野太郎外相、康京和韓国外相。北の攻勢に押される米国に、日本、韓国は果たして……。(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)
(前回から読む)
北朝鮮は「誰の核」に守られるのか。非核化交渉の本質はここにある。
あいまいな「安全の保証」
鈴置:北朝鮮の非核化を話し合いで解決するというトランプ(Donald Trump)大統領。交渉役のポンペオ(Mike Pompeo)国務長官とともに「核を手放せば経済発展を全面的にバックアップする」とニンジンを見せています。
しかし、北朝鮮にとってそのニンジンだけではとても足りません。肝心の安全が確保できるのか、確信が持てないからです。
—シンガポールで結んだ米朝合意で米国は「北朝鮮の安全を保証する」と約束しました。
鈴置:確かに米朝共同声明で、非核化の見返りに「トランプ大統領は北朝鮮の安全を保証する」と謳いました。以下です。
President Trump committed to provide security guarantees to the DPRK, and Chairman Kim Jong Un reaffirmed his firm and unwavering commitment to complete denuclearization of the Korean Peninsula.
でも、これではあまりに抽象的です。「どうやって安全を保証するのか」がはっきりしないのです。共同声明では4項目の合意を明文化しています。
米朝は1番目の項目で両国の関係改善を、2番目の項目で「永続的で安定的な朝鮮半島の平和体制」を約束しています。いずれも「安全の保証」に関わる約束ですが、これらも具体性を欠いた表現に留まっています。
- The United States and the DPRK commit to establish new U.S.─DPRK relations in accordance with the desire of the peoples of the two countries for peace and prosperity.
- The United States and the DPRK will join their efforts to build a lasting and stable peace regime on the Korean Peninsula.
- Reaffirming the April 27, 2018 Panmunjom Declaration, the DPRK commits to work toward complete denuclearization of the Korean Peninsula.
- The United States and the DPRK commit to recovering POW/MIA remains, including the immediate repatriation of those already identified.
非核化の手順と同様、「安全の保証」に関しても米朝は全く詰めていない。シンガポールでの首脳会談は周辺の期待とは裏腹に、何の前進もなかったのです(「から騒ぎに終わった米朝首脳会談」)。
中国の傘に戻れるか
シナリオ | 北朝鮮は誰の核の傘に入るのか? | 韓国はどうする? |
Ⅰ | 中国の核の傘を確保 | 米韓同盟を維持 |
Ⅱ | 米国と同盟・準同盟関係に入る | 米韓同盟を維持 |
Ⅲ | 半島全体が中立化し、国連や周辺大国がそれを保証 | |
Ⅳ | 自前の核を持つが、米国まで届くICBMは放棄 | 米韓同盟を維持するか、北朝鮮の核の傘に入る |
北朝鮮の非核化の行方 |
—「安全の保証」を具体的に言うと……。
鈴置:「北朝鮮に対し、誰が核の傘を提供するのか」との視点で考えると分かりやすい。「表・北朝鮮の非核化の行方」をご覧下さい。
現状を動かさないなら中国――シナリオⅠです。中朝の間には形式的ですが軍事同盟が残っています。北が核を完全に放棄する、あるいはしたことにしてその見返りに、中国が改めて「自分の核で北朝鮮を守る」と宣言するなどして保証する手法です。
ただ、これは北朝鮮が受け入れないでしょう。そもそも北朝鮮は、中国の核の傘を信じられないから核武装に走った面もあります。
中国が核の傘を提供しないのは、北朝鮮が韓国への侵攻計画を捨てず、しばしば軍事挑発するからです。南北の間で軍事衝突が起きれば米国が介入します。その際、米国は戦術核を使う可能性まである(「『北に先制核攻撃も辞さず』と言明した米国務省」参照)。
中国は一応、北朝鮮との同盟関係にありますから、下手すると米国との戦争――核戦争に巻き込まれかねない。そこで中国は、北朝鮮が核開発を露骨に進めた1990年代から、非公式にですが「中朝軍事同盟は有名無実化した」と言って回るようになったのです。
ですからシナリオⅠは北朝鮮だけではなく、中国も賛成しない可能性が大きい。もし中国が賛成するとしたら、北朝鮮を完全にコントロールできるとの自信を持てた時でしょう。
米国の傘に入れるか
—トランプ大統領は、金正恩(キム・ジョンウン)委員長を信頼できる人と評価しました。
鈴置:米朝首脳会談後の会見で「talented man(才能ある人)」「very smart. very good negotiator(賢く、優秀な交渉者)」と述べました。
彼一流のおだてです。この会見で、トランプ大統領は文在寅大統領のことだって「very, very fine gentleman(とても立派な紳士)」と評しているのです。
中国は厳しく北朝鮮を見ています。面従腹背の朝鮮民族を一番知るのが中国人です。千年にも渡って朝鮮民族に朝貢させていただけのことはあります。
話を「シナリオ」に戻すと、金正恩委員長に対しトランプ大統領が「米国の核の傘に入れてやる」と語っている可能性もあります。シナリオⅡです。ただ、これには中国が大反対します。米軍が中朝国境沿いにまで来ることになりますから。
この案には北朝鮮も本気では乗らないでしょう。人権蹂躙国家である北朝鮮との同盟を米国世論が許すはずがない。トランプ大統領自身が韓国国会で「いかに金正恩体制が滅茶苦茶か」と豊富な事例を挙げて説明しています。
そんなトランプ大統領から「核を捨てたら同盟を結んでやる」と言われて信じるお人好しではないでしょう、金正恩委員長は。親族を粛清して権力を維持している人です。
■トランプ大統領の韓国国会演説(2017年11月8日)のポイント(1)
北朝鮮の人権侵害を具体的に訴え
10万人の北朝鮮人が強制収容所で強制労働させられており、そこでは拷問、飢餓、強姦、殺人が日常だ
反逆罪とされた人の孫は9歳の時から10年間、刑務所に入れられている
金正恩の過去の事績のたった1つを思い出せなかった学生は学校で殴られた
外国人を誘拐し、北朝鮮のスパイに外国語を教えさせた
神に祈ったり、宗教書を持つクリスチャンら宗教者は拘束、拷問され、しばしば処刑されている
外国人との間の子供を妊娠した北朝鮮女性は堕胎を強要されるか、あるいは生んだ赤ん坊は殺されている。中国人男性が父親の赤ん坊を取り上げられたある女性は「民族的に不純だから生かす価値がない」と言われた
北朝鮮の国際的な無法ぶりを例示
米艦「プエブロ」の乗員を拿捕し、拷問(1968年1月)
米軍のヘリコプターを繰り返し撃墜(場所は軍事境界線付近)
米偵察機(EC121)を撃墜、31人の軍人を殺害(1969年4月)
韓国を何度も襲撃し指導者の暗殺を図った(朴正煕大統領の暗殺を狙った青瓦台襲撃未遂事件は1968年1月)
韓国の艦船を攻撃した(哨戒艦「天安」撃沈事件は2010年3月)
米国人青年、ワームビア氏を拷問(同氏は2016年1月2日、北朝鮮出国の際に逮捕。2017年6月に昏睡状態で解放されたが、オハイオに帰郷して6日後に死亡)
「金正恩カルト体制」への批判
北朝鮮は狂信的なカルト集団に支配された国である。この軍事的なカルト集団の中核には、朝鮮半島を支配し韓国人を奴隷として扱う家父長的な保護者として指導者が統治することが宿命、との狂った信念がある
半島全体の非核化
—シナリオⅢは?
鈴置:米国はシナリオⅢを北朝鮮に提示しているのではないかと思われます。観察されるファクトの多くがそれを指しています。
シナリオⅢは、朝鮮半島全体を中立化することで非核化を実現するとのアイデアです。北朝鮮が核武装したのは米国の核に対抗するためだ。それなら、米国の核の傘を提供される同盟国が半島からなくなれば、北も持つ必要がなくなる――との理屈です。
具体的には、米韓同盟と中朝同盟を同時に廃棄して半島を中立化するわけです。中朝ともに反対しないでしょう。
北朝鮮にすれば、形骸化している中国との同盟を捨てるぐらいで、米国の核の圧迫から逃れられるのです。悪い話ではありません。
中国も笑いが止まらないでしょう。歴史的に自らの勢力圏だった半島から米軍を追い出し、米国から取り戻せるのです。それも自分は汗を一切かかずに。
はっきりと反対するのは日本くらい。ただ、日本は「本当に完全な非核化が実現されるなら」との条件で飲むと思います。米国から「北朝鮮の非核化を実現するためだ。我慢しろ」と言われたら、それ以上はどうしようもないからです。
在韓米軍は撤収へ
—韓国は?
鈴置:本音はともかく、文在寅(ムン・ジェイン)政権を含む左派は大いに賛成するでしょう。「米韓同盟こそが諸悪の根源」と主張している人たちですから。
普通の人や保守派は米国との同盟を失うことに恐怖を感じると思います。ただ、韓国では論理ではなくムードが物事を決定します。
保守の野党第1党、自由韓国党は韓国や米国と積極的な対話に出た北朝鮮を「偽装平和攻勢」と非難していました。が、選挙に負けると「反省宣言」を発表し、北朝鮮との融和政策に路線転換しました。その結果、国会の中で北を批判する組織的な勢力は消滅しつつあります(「米朝会談で崩壊した韓国の親米保守」参照)。
—しかし、米韓同盟が消滅するとは……
鈴置:多くの日本人にとって「ヒョウタンからコマ」でしょうね。北朝鮮の非核化に向け米国と一緒に努力していたら突然、韓国が海洋勢力から切り離されるのですから。
ただ何と言おうと、現実はその方向に着々と進んでいます。トランプ大統領は米朝首脳会談後の会見で「今すぐではない」としながらも在韓米軍撤収を表明しました。
「駐留なき安保」は可能か
—在韓米軍の撤収が直ちに同盟廃棄につながるわけではないでしょう。
鈴置:「駐留なき安保」は「駐留する安保」よりも危険です。駐留していないと米国の抑止力は落ちる、というのに戦争になったら駆けつけなければならない。
そもそも米国にとって、戦略的な要衝ではない韓国との同盟は価値がありません。それどころかカネがかかるし、余計な紛争に巻き込まれるリスクもある。
朝鮮戦争で韓国を助けたために米国はこの半島にはまり込んでしまった。もともと朝鮮半島は米国の防衛線の外にあるのです。
2010年頃から米軍関係者は「米韓同盟は長続きしない」と日本の安保関係者に非公式に通告してきています。
トランプ大統領は5月10日には「半島全てを非核化する」(denuclearize that entire peninsula)」と発言、米韓同盟廃棄を示唆しています(「『米韓同盟廃棄』カードを切ったトランプ」参照)。
北だけではなく南も非核化するとは「韓国に核の傘を与えない」ということですからね。
他人の好意に安全は託せない
—では、シナリオⅢで決まりですか?
鈴置:北朝鮮は飲まない可能性が高い。表面的には応じて見せるかもしれませんが。「中立化」はともかく「非核化」を受け入れるつもりはないからです。
シナリオⅢでは半島の安全は国連や周辺大国が担保することになります。侵略された場合、国連や大国が助けてくれるから北朝鮮や韓国は心配する必要がない、というわけです。
でも力のない国連や、お互いに利害の対立する周辺大国に期待できるでしょうか。それは国の存亡を他人の好意に任せることを意味します。戦争して負けたのならともかく「話し合い」だけで、自分をそんな境遇に落とす国はあまりありません。
ことに北朝鮮は核を持ったのです。その既得権を手放せというのです。国内からも大きな抵抗があって当然です。
常識からいって、北朝鮮は可能な限り核を持ち続けようとするでしょう。これがシナリオⅣです。
ただ、米国まで届くICBM(大陸間弾道弾)は放棄するフリはし始めました。トランプ大統領は、金正恩委員長から「ICBM用エンジンの実験場は廃棄する」と明かされたと会見で語っています。
ICBMさえ放棄すれば、米国が核武装を認める可能性があると北朝鮮は踏んでいるのです。トランプ大統領は国民に対し「我が国まで届く核ミサイルはなくなった」と言えるし、現にそう言い始めた。
そのうえ日本や韓国に対しても、米国は「北朝鮮が少々、核を持とうと自分の核によって抑止できる。安心しろ」と説得できるからです。
ロシア、中国も米国の同盟国に核ミサイルを向けています。でも、もし攻撃したら核で反撃するぞと米国が脅してくれている――「拡大抑止」により、同盟国は安心できることになっている。
もちろん、米国がワシントンやNYを攻撃されるリスクを冒してまで同盟国を守るかは疑問が残ります。ただ、北朝鮮がICBMを放棄する――米本土への攻撃能力を放棄するのなら、ロシアや中国の核に対する以上に、米国の拡大抑止は働くことになります。
死に物狂いの日本
でも「北朝鮮はロシアや中国とは異なって、核による抑止は働かない」と米国は言っていました。
鈴置:「金正恩体制はカルト集団で正常な判断は期待できない。だから北朝鮮の核はロシアや中国の核と異なり放置できない」と米国は主張してきました(「米中は金正恩を『アジアのムガベ』にできるか」参照)。
しかし北朝鮮と話し合いに入った以上、トランプ大統領はこの認識を修正してみせる必要があります。正常な判断ができないカルト集団と話し合っても意味はないからです。そこで米朝首脳会談後の会見で、金正恩委員長をまともな人と評価して見せたのです。
一方、これを見た北朝鮮は、米国をシナリオⅣに引きずりこめる――ロシアや中国の核武装と同じように、我が国の核武装も認めろと要求すれば、米国は応じると期待したと思います。
—だから日本は米国に対し、ICBMだけでなく短・中距離の弾道弾も放棄させるべきだと死に物狂いで訴えている……。
鈴置:その通りです。「米国に届く核」がなくなっても「日本に届く核」が残る限り、北朝鮮や南北朝鮮から脅され続けるからです。
しかし、日本の願いとは反対に北朝鮮は攻勢に出ています。トランプ大統領が「対話で非核化に成功した」と功績を誇り始めた以上、約束を破ってもそう簡単には軍事攻撃されないと見切ったと思われます。
米国は軍事的な圧迫や暗殺の脅しにより、金正恩委員長を対話に引き出すことに成功しました(「『暗殺』『猫なで声』で金正恩いぶし出すトランプ」参照)。しかし、対話に引き出すことと、非核化を飲ませることは別物です。力で脅し続けない限りは。
完全な非核化を拒否
—脅しの効果は長続きしませんか?
鈴置:もう、切れた感じです。7月6、7日、非核化を具体的に進めるためポンペオ国務長官が訪朝しました。しかし北朝鮮はまともに応じなかった模様です。
それどころか、ポンペオ長官が日本に向け出国した7日の深夜、完全な非核化を求めた長官を非難する談話を発表しました。
朝鮮中央通信の「朝鮮外務省代弁人が朝米高位級会談に言及」(日本語版)からポイントを引用します。なお、翻訳の質が低いので、丸かっこで補いました。
米国側はシンガポール(での)首脳の対面と会談の精神に背ち(馳)してCVIDだの、申告だの、検証だのと言って、一方的で強盗さながらの非核化要求だけを持ち出した。
米国や日本が求めてきたCVID(Complete, Verifiable, Irreversible Denuclearization=完全で検証可能、不可逆的な非核化)をはっきりと拒否したのです。続けて米韓同盟の廃棄まで暗に要求しました。
(ポンペオ長官は)情勢の悪化と戦争を防止するための基本問題である朝鮮半島の平和体制構築問題については一切言及せず、すでに合意された終戦宣言問題までいろいろな条件と口実を設けて遠く後回しにしようとする立場を取った。
完全な非核化は拒否する一方、在韓米軍の撤収や米韓同盟の廃棄につながる平和体制構築を強硬に要求し始めたのです。まさにシナリオⅣです。
米中全面戦争は好機だ
—突然の強気ですね。
鈴置:7月6日、米中が全面的な貿易戦争に入ったことが背景にあるとみられます。高率の関税をかけ合うこの戦争は人民元の下落を呼んでいます。
下手すると、中国は金融危機に陥る。控えめな日経も「中国メディア、米批判控えめ 指導部が抑制か」(7月8日)で以下のように報じました。
中国の習近平指導部は米国との貿易戦争に関する報道を厳しく抑えている。米国への批判は控えめで関税上げの影響を分析する記事も見当たらない。報道が国民の反米感情を刺激して対米摩擦が過熱し、金融市場の動揺に歯止めがきかなくなる事態を恐れているとみられる。
トランプ米大統領への個人攻撃もご法度のようだ。指導部が懸念するのは金融市場への影響とみられる。
もともと米利上げと当局の金融機関締めつけで(株や通貨の)相場は弱含みだったが、貿易摩擦による景気減速懸念が加わって6月中旬から下落に拍車がかかった。北京の投資ファンド運営者は「金融危機がいつ起きてもおかしくない」と話す。
本物の戦争に例えれば、通常兵器を使う局地戦から核ミサイルを撃ち合う全面戦争に入ったのです。この記事は市場の弱点を突かれた中国が押される様を描いていますが、米国だって中国を相手にすぐに勝てるわけではありません。持久戦です。
米国が非核化問題にかかわる余裕などなくした、と北朝鮮は判断したに違いありません。米中の全面的な経済戦争を機に、一気に攻勢に出てシナリオⅣ――北の核武装の容認――を実現するつもりでしょう。
高濱記事
訪朝したポンペオ国務長官(右)。左は、カウンターパートである金英哲副委員長
—マイク・ポンペオ米国務長官が再び訪朝し、金英哲(キム・ヨンチョル)朝鮮労働党副委員長と協議、非核化の検証を含む複数の作業部会を設置することを決めした。非核化の進め方で進展があったのでしょうか。
高濱:設置する作業部会について具体的な項目はまだ明らかになっていません。それに北朝鮮外務省の報道官は、協議の直後に「米側の態度と立場は遺憾なこと極まりない。まるでギャングのような態度だ」と批判しています。
また米メディアは、金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長が今回、ポンペオ長官と会わなかったことに注目しています。
ポンペオ長官と金英哲副委員長との会談は、6月12日にシンガポールで開かれた米朝首脳会談以来、両国の高官による初めての協議です。首脳会談は「歴史的握手」ばかりが取り上げられ、北朝鮮の非核化が今にも進むかのような印象を与えました。しかし、ポンペオ長官の今回の訪朝の成果を見ると、何となく前途多難な気がしてきます。
ドナルド・トランプ米大統領は「北朝鮮はこれまで8カ月にわたってミサイル発射も核実験も行っていない。私でなければ今頃北朝鮮と戦争していた」とツィートしています。けれども、非核化に対して綿密な戦略を立てて首脳会談に臨んだわけでないことがはっきりしてきました。
「CVID」を取り下げ「FFVD」に変えたトランプ政権
こうした中でワシントンの外交筋が注目しているのは、当初トランプ大統領が公言していた「CVID」(Complete,Verifiable,Irreversible Denuclearization)、つまり「完全で検証可能かつ不可逆的な非核化)を取り下げたことです。
代わりに米側が言い出したのが、「FFVD」(Final, Fully Verified Denuclearization)という表現でした。つまり「最終的かつ完全に検証された非核化」です。ポンペオ長官もこの表現を使っています。「完全」でなくとも「不可逆的」でなくとも「検証できればいい」と言っているわけです。
国務省報道官は、「米政府の立場が軟化したわけではない」と否定していますが、CVIDという表現をやめて、FFVDと言い始めたのは事実です。北朝鮮があらゆるチャンネルを通じて協議前にCVIDの撤回を求めたのを受けて、米側が譲歩したと大半の米メディアは受け取っています。
—「CVID」と「FFVD」とはどこがどう違うのですか。
高濱:外交上のレトリックは時として極めて重要です。この点について韓国の峨山(アサン)政策研究院安保統一センター長の申範チョル(さんずい+育+のぶん)博士はこう解説しています。
「非核化の第一歩は北朝鮮が保有する核兵器の数量・規模や核・ミサイル関連施設を完全に公開することです。CVIDを取り下げ、FFVDに変更したのは米側が核兵器や核・ミサイル関連施設が完全に破棄されたことを『verify』(検証)することを最優先議題にするためです」
つまり、これまでの表現と比較すると、「complete」と「irreversible」がなくなり、その代わりに「final」と「fully」が入りました。「verified」は残ったままですが、米側の要求がトーンダウンしています。
その心は、「北朝鮮が主張してきた『行動対行動』の原則を米側が受け入れる。その第一歩として『検証』から始めようではないか」という誘い水のように思えます。「行動対行動」とは、相互の要求事項を満たしながら非核化を進めるということですね。
それでも北朝鮮は「ギャングのような要求だ」と言っています。このへんは今後の交渉に向けた北朝鮮なりの戦略かもしれません。何しろトランプ大統領にとって北朝鮮の非核化は唯一最大の外交上の成果ですから、北朝鮮が多少「拗ねて」も断念するわけにはいきません。ロシアゲート疑惑捜査の状況も同大統領にとって芳しいものではなく、内憂外患の状態にあります。そのへんを北朝鮮は十分に承知していて揺さぶっているのでしょう。
根っこにあるのは米朝間の「歴史的な相互不信感」
—米朝首脳会談以後も「北朝鮮は核を放棄していない証拠」が衛星画像や米情報機関からの極秘情報で明らかになりましたね。
高濱:ポンペオ長官は金英哲副委員長にこの衛星画像を見せて北朝鮮の非核化に向けた本心をただしたようです。北朝鮮が「ギャングのような」と表現したのはこのことを指しているのかもしれません。米側から北朝鮮に対する「一種の恫喝」です。
もっとも北朝鮮にしてみれば、米朝首脳会談は非核化に向けての原則を合意しただけですから(非核化の具体的な段取りについてはまだ合意していない)、これまで続けてきた核・ミサイル開発を完全に停止していなくても文句はあるまい、ということでしょう。
北朝鮮の核開発の動向に詳しいアダム・マウント博士(全米科学者連盟)は、ミドルベリー国際大学院(MIIS)が撮った衛星画像や米情報機関が入手した極秘情報などを基に米朝首脳会談以後の動きをこう分析しています。
- 北朝鮮はこれまでに核兵器1発を破棄し、ミサイル発射実験施設1カ所を取り壊したに過ぎない。
- 北朝鮮は核兵器製造に必要なウラニウム、プルトニウム、トリチウムを増産する一方で、固定燃料型の弾道ミサイル製造拠点を拡張する工事をほぼ完了させている。
- 北朝鮮は、核兵器を廃棄する工程への検証を拒み続ける一方で、保有する核兵器の隠蔽を計画している。
理想的なロードマップは「核停止・政策転換・核廃棄」
—「verify(検証)に重きを置く」背景はなんですか。
高濱:北朝鮮が非核化を進めるといっても、米国は十分な情報を持っていません。北朝鮮がどのくらい核兵器を保有し、どこにどのくらいの核・ミサイル関連施設があるのか、現時点では正確な情報を持っていないんです。ですからここでいう「検証」は、北朝鮮が現在持っている核兵器について、これらのことを公開することです。破棄したあとの「検証」はそのあとの話になります。
非核化のロードマップについてスタンフォード大学国際安全保障・協力センター(CISAC)のセイグフライド・ヘッカー博士らはこう分析しています。「北朝鮮の非核化を急いでもそう簡単にはいかない。即断即決というのは非現実的だ」。同博士はロスアラモス研究所所長を務めたこともある北朝鮮の核問題の権威です。
「非核化に向けたロードマップは、①核実験の停止②核開発政策の転換③核開発政策の排除、という長期的視野に立ったアプローチ以外にない」
「具体的には、まず一切の核・ミサイル実験の停止。次いで北朝鮮がどのくらいの核兵器を保有し、どこにどれほどの規模の核関連施設を持っているかの検証から始まる。次の段階ではプルトニウム、ウラニウムなどの生産を停止させ、北朝鮮による核関連機材・技術の輸出・密輸を絶つ必要がある」
「非核化にはそれ相当な期間(reasonable timeline)が必要である。しかも最終的な非核化はその時の当事国の政治情勢などに左右されて遅延しやすい。完全な非核化には少なくとも15年程度はかかる」
以上は、同氏が、5月30日付けで公表された『A Comprehensive History of North Korea’s Nuclear Program』(北朝鮮の核開発問題に関する包括的な経緯)という報告書の中で明らかにしたものです。
NYで第2回米朝首脳会談開催との説が流れる
—ジョン・ボルトン大統領補佐官(国家安全保障担当)が非核化について「北朝鮮が戦略的決断を下し、われわれが協力的であれば、早く進む。1年以内に大部分を物理的に破壊することが可能だ」と言っています。
高濱:「大部分破壊」とは、ここまで「検証」と呼んできた工程で公開された核・ミサイル施設の大部分を破壊できるという意味だと思います。
—ジョン・ボルトン大統領補佐官(国家安全保障担当)が非核化について「北朝鮮が戦略的決断を下し、われわれが協力的であれば、早く進む。1年以内に大部分を物理的に破壊することが可能だ」と言っています。
高濱:「大部分破壊」とは、ここまで「検証」と呼んできた工程で公開された核・ミサイル施設の大部分を破壊できるという意味だと思います。
もう一つ、ヘッカー博士が指摘している重要な点があります。同博士が「短期的に必要不可欠な要素は米国と北朝鮮が信頼関係を築き上げ、相互依存関係を確立することだ」と強調していることです。
「米国はロードマップを実施に移す過程で北朝鮮が望んでいる原子力平和利用、つまりエネルギー、医療、宇宙平和開発部門での活用に理解を示すこと。そうすることで、北朝鮮は、国際原子力機関(IAEA)が派遣する検査官受け入れ、モニタリング設備の設置などに積極的に協力できるようになる」
今回設置が決まった作業部会には、北朝鮮が求める「安全の保証」や経済・エネルギー面での協力が話し合われる部門も含まれることになるでしょう。どちらも、6カ国協議が2007年2月に取り上げた項目です。米朝直接協議の流れの中で6カ国協議の再開へ移行することも考えられます。すでに中国はそれを強く主張していますし。
—ポンペオ長官訪朝の結果を受けて、トランプ大統領はこれから対北朝鮮でどう動きますか。
高濱:トランプ大統領周辺は、金委員長との第2回会談がニューヨークで開かれる可能性を意図的に流しています。9月の国連総会に金委員長が出席する際(出席するか否かは不明)にトランプ大統領と会談するというのです。
(“Scoop” Trump may hold Round 2 with Kim Jong-un in NYC,” Mike Allen. www.axios.com, 7/2/2018)
ポンペオ長官が示した「FFVD」提案を金委員長が秋までに実行に移せば、「トランプ大統領がその褒美として金委員長に<人参>をやるようなもの」(Axiosのマイク・アレン記者)だというのです。国際外交の檜舞台に金委員長を“招待”し、お披露目してやってもいいぞ、ということ。随分と上から目線の話ですけど。
—トランプ大統領としては中間選挙を意識した思惑もあるんじゃないですか。
高濱:その通りです。シンガポールで演じた「歴史的なパフォーマンス外交」を今度は米国、自分の地元ニューヨークでやることでやんやの喝さいを浴び、支持率を上げ、その2カ月後に迫る中間選挙への好材料にしようという魂胆のようです。
6月12日の米朝首脳会談について、米国民の55%が高く評価しました。果たして「柳の下に二匹目のドジョウ」がいるかどうか。米一般国民はもう北朝鮮なんかに関心を示さなくなってきていますから。
(AP-NORC Poll: Majority approve of Trump’s North Korea effort,” Emily Swanson, Associated Press, 6/21/2018)
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