2/18日経ビジネスオンライン 福島香織『中国にブラックスワンが飛来する 権力闘争が市場を揺るがす』について

習(太子党)VS江(上海派)+胡(団派)の戦いになってきました。どちらが勝つか見物ですが、間違っても目を逸らすために日本に戦争を仕掛けないように。自分のことしか考えない人達ですから自分が追いつめられると習にしろ、江・胡にしろ勝手に軍を動かして相手のせいにする可能性があります。中国で軍閥がいたように7軍区だって共産党が押さえているかどうか分かりません。下剋上ですので。江・胡・習誰も軍の経験はありません。毛・鄧のようなカリスマ性はありません。毛には臆病な周恩来という実務家がいましたが習にはいません。軍のトップの徐才厚や谷俊山を逮捕、贅沢禁止令で軍には不満が充満していると思われます。習が無事でいられるかどうかです。

権力闘争が市場に影響を与えると言っても分かっていたこと。共産主義・社会主義国は三権分立でないため腐敗が当たり前です。財務諸表も3つほど作って相手別に渡します。「言論の自由」を認めない国で、経済だけ資本主義化しても歪みが出てきます。資本主義と言っても国営企業の比率が高いですが。

世界は危機を先送りするのではなく、キチンと対処しないとより痛手を受けるのでは。ギリシャもそう、スケールの大きさでは中国もそうですが。

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今年は中国のマーケットにブラックスワンが飛来する…。と巷で噂になっている。

 大手商業銀行のひとつ民生銀行の元頭取、毛暁峰が規律違反で党中央規律検査委の取り調べに連行された事件が最初のブラックスワンだと。

李克強VS習近平、仁義なき戦いの火ぶた

 毛暁峰の失脚は、中国報道によれば、すでに失脚している元統一戦線部長の令計画の汚職事件に連座したということになっているが、毛暁峰がかつて共産主義青年団(共青団)中央庁の要職にあり、現首相の李克強とのコネクションも強い共青団の金庫番であることは周知のことなので、令計画事件はもはや、周永康の汚職に連座した事件というより、第19回党大会の人事をめぐる李克強首相を中心とする共青団派と習近平国家主席の仁義なき戦いの火ぶたが切っておとされたのだと、考えるのが普通である。

 中国の権力闘争は5年周期で激しくなるので、こういう展開は不思議でもなんでもないが、習近平政権の場合、これがどうやら、予測不可能な金融リスク、経済リスクとして、市場に大きな影響を与えることになりそうだ、という。

 「ブラックスワン」とは、金融用語で、確率論や従来の知識では、事前にほとんど予想できず、発生したときの衝撃が大きいことをいう。白鳥は白いと思い込んでいたら、オーストラリアで黒い白鳥も発見されたことで、鳥類学者の常識が覆されたという事実を引用して、この理論を展開している認識論学者のナシーム・ニコラス・タレブの著書のタイトルから生まれた言葉だ。中国語では「黒天鵝事件」と言う。

 たしかに中国の権力闘争が、経済や金融に直接影響するケースは今まであまりみなかった。だが習近平政権の場合、従来の権力闘争と違う、と言われている。まず容赦がない。江沢民政権や胡錦濤政権のときは、社会や経済の安定を損なうのでこれ以上やってはいけない、という自制があった。ところが習近平政権は、その自制がなく、とことんまで、相手サイドを追い詰める。この結果、多くの官僚たちが心安らかに業務に専念できない、中央の政治家・官僚とコネのある大企業家も経営に専念できない、という事態が生じてもともと減速中の経済が、ますます悪くなっているのだとか。

 それでなくとも、昨年から、どこかの民営銀行が破産する、とかいう予測も飛び交っている。中国は今年、銀行改革を進めるつもりらしいが、その過程で、これまでの中国の政権が、あえて社会の安定を優先させて潰さなかった不良債権を抱える銀行を、見せしめ的に今年はつぶすつもりだとか。預金保障の明文化を含めた銀行法立法が急がれているのはそのためだとか。昨年11月に、「民生銀行武漢支店が破産した」というデマが流れて、そのデマを流した投資家の若者が逮捕されているが、そういうデマもうっかり信じてしまうようなムードが今の中国にある。

 さて、問題の民生銀行の元頭取・毛暁峰とはどのような人物で、どんな理由で取り調べを受けているのか。

民生銀行の元頭取・毛暁峰と令計画

 中国の時事経済ニュースサイト・財経ネットによれば、毛暁峰が「双規」(党中央規律検査委の取り調べ)に連行されたのは1月25日。この時は、民生銀行幹部たちは、毛暁峰は調査に協力しているだけで、2、3質問に答えたら、すぐに戻ってくるだろうとタカをくくっていたらしい。だが27日の銀行業監督管理委員会の報告会まで連絡がとれず、ついに紀律違反容疑に問われていることが確認された。表向きは令計画の汚職容疑の関係者として身柄を抑えられたことになっている。31日に毛暁峰の頭取辞任が役員会で承認された。毛暁峰の妻も身柄を拘束されているほか、民生銀行幹部も何人か連行されているという。

 毛暁峰は中国の上場銀行の中では最年少の頭取だった。公式には1972年生まれとなっているが、実のところ1970年生まれらしい。

 令計画と毛暁峰の関係は深く、令計画も卒業した湖南大学工商管理学院で毛暁峰もMBAを取得。令計画にとって毛暁峰は優秀な期待の後輩であった。当時共青団中央宣伝部長だった令計画は、口実を見つけては湖南大学に立ち寄り、毛暁峰との親交を深めていたという。毛暁峰は少年時代から神童と言われるほど頭がよく、1999年から2002年まで共青団中央弁公庁総合処副処長、処長を歴任、団中央実業発展センター主任助理などを歴任しつつ、この間、ハーバード大学ケネディスクールの公共行政管理学修士の学位をとっている。

 2002年、共青団中央から突如、民間の民生銀行総行任弁公室副主任に「天下り」し、2008年には副頭取、役員会秘書となった。当時年収425万元の最も高給取りの「秘書」と噂された。2014年8月、上場銀行における最年少頭取となる。この若き頭取の行内の評判は非常によく、優秀で、仕事熱心で、残業をいとわず、また周囲への物腰も柔らかであったとか。彼がどのような形で汚職に携わっていたかは、まだ明らかになっていないが、銀行側は毛暁峰個人の問題であって、銀行の業務とは無関係と主張している。

 今のところ、令計画汚職の接点としては、令計画の妻、谷麗萍に民生銀行傘下の子会社の役職を用意したことが挙げられている。民生銀行内には、銀行の仕事を実際にしていないのに、ナントカ主任などの肩書きだけ与えられて給料をもらっている政治家・官僚の夫人たちが10人以上おり、彼女らは「夫人クラブ」と呼ばれていた。谷麗萍のほか元政治協商会議副主席の蘇栄(2014年6月失脚済)夫人などがメンバーにいるという。これは、どこの企業も多少はやっていることだが、事実上の賄賂である。

人気キャスターの芮成鋼を夫人たちが“共有”

 ちなみに、この夫人クラブのメンバーたちの間で、谷麗萍の愛人でもあったCCTV人気キャスターの芮成鋼が、共有されていたらしい、というゴシップスキャンダルがネットで流れている。中国の政治家・高官の愛人共有はよくあることで、これは拙著『現代中国悪女列伝』(文春新書)を参照していただきたいのだが、政治家・高官夫人たちも若い男を共有することがままあるらしい。芮成鋼は以前にこのコラム欄で書いた「CCTV劇場型汚職摘発の裏側」でもふれたCCTV汚職に連座した形で連行されたと思われていたが、現在は米国のスパイ容疑で起訴される可能性が取りざたされている。令計画夫人の谷麗萍はじめ、民生銀行夫人クラブのメンバーから寝技でとった内部情報を米国に売り渡していた、という話を昨年秋、北京社会科学院外国問題研究所の研究員でテロ問題専門家でもある王国郷が微博でつぶやき(すでに削除)話題になっていた。

 毛暁峰を汚職がどれほどあくどい汚職にかかわったか否かは別として、一つ言えることは、毛暁峰が民生銀行に入ってから、民生銀行が共青団派の金庫的役割をはたしていたことだろう。

 民生銀行は1996年に設立した中国初の民間資本による全国区の商業銀行。株主は中国を代表するそうそうたる民営企業集団・企業家が名を連ねており、その中には中国でおなじみの健康保険食品「脳白金」を売り出した史玉柱なども含まれている。これら企業家たちは、おおむね共青団親派の実業家たちで、共青団出身の毛暁峰はこうした株主たちから望まれてやって来て、時間をかけて育てられて満を持して頭取になったと言われている。2003年に共青団、中華全国青年連合会、国家工商行政管理総局、旧国家労働社会保障部、国家統計局、中華全国工商業連合会、英国大使館などが提唱した「中国青年創業国際計画」(YBC)を全面的にバックアップしたのも民生銀行。この計画執行総幹事が谷麗萍で、YBCの事務所と民生銀行の役員室は同じ建物にあったという。YBCの設立式には毛暁峰も参加している。

共青団派の金庫に“妙な動き”

 そういう民生銀行で、実は昨年から妙な動きがあった。昨年から民生銀行の株主構造が急激に変わったのだ。

 現在、民生銀行の最大大株主は安邦保険で、昨年11月28日から2か月あまりで約22%の株を獲得した。この銀行の株を、10%をこえて持つ株主は安邦だけである。郭広昌がCEOを務める復星国際集団の持ち株をすべて譲りうけたようだ。上海浙江商会名誉会長で全人代代表でもある郭広昌は昔から政治の風向きの嗅覚の鋭い人物と言われている。

 安邦保険は中国の大手保険企業の一つだが、開国元帥・陳毅の息子の陳小魯が安邦保険集団の株式の55%を押さえる大株主で、鄧小平の外孫娘婿の呉小暉がCEOを務める、いわゆる「紅色企業」である。香港蘋果日報情報によると、この陳小魯の妻・粟恵寧の姪の息子・粟子軍が習近平と非常に親密であるらしい。粟子軍は元解放軍総参謀長・粟裕の孫でもある。共青団色の強い民生銀行が、昨年末、急にいわゆる「紅色二代」(革命世代二代目、太子党)企業に株をものすごい勢いで買収されるとほぼ同時に、共青団からきた頭取の毛暁峰が排除されたわけである。

 これは偶然ではないだろう。同じ様なケースを他にも聞いたことがある。たとえば令計画一族の失脚が迫っている時期に、令一族が投資しているメディア企業の株の譲渡を破格の安価で有無を言わさずに習近平派の紅色企業が迫って来ると、関係者から聞いたことがある。これによい返事をしないと、翌日に自社株がありえない形で、急落する。つまり当局側による株価操作が行われるわけだ。

習近平の権力闘争がマーケットを揺るがす

 要するに政治の権力闘争が、そのまま経済のマーケットに影響するようになったということである。もともと中国は「権貴政治」であり、政治権力と経済が結びついている。だがここまであからさまに急激に株主を入れ替えたり、株価を操作したり、企業トップの挿げ替えるような真似は江沢民、胡錦濤政権時代は控えらえていた。そんなことをすれば中国経済の秩序は持たず、国際的信用も落とすではないか。だが習近平政権は、そういう既存の秩序に挑戦するかのようなことをやってみせるようだ。

 結果的には、毛暁峰事件の影響による株価急落が予想されたよりはひどくならなかったのは、鉄板の紅色企業・安邦保険が最大株主になったという面があるのだが、逆にいえば安邦の胸先三寸で民生銀行の運命はどうにでもなる。習近平(太子党)VS共青団の権力闘争が、企業の盛衰、株価の乱高下につながるとなれば、みながこれを「ブラックスワン」と恐れるのももっともな話である。

 同じようなリスクが、これから拡大するだろう、と言われている。官僚の息子や妻に役職を与えて給料と言う名の賄賂を支払い、権力との風通しを良くしている銀行など掃いて捨てるほどある。春節が終われば、習近平政権は、エネルギー関連などの26中央企業の巡回規律検査を行うことも宣言している。どの企業も、紅二代か官二代か、太子党か共青団派か、権力とのコネクションをもつ株主や役員がいる。

 習近平の権力闘争は利権闘争であり、それはすなわち経済闘争となる。企業の業績とは別のところで、中央企業に対する汚職摘発がきっかけで陰の支配者がかわり、株主がかわり、役員、幹部が入れ替えられる。習近平が権力闘争に優勢であると見られれば、中国石油のように株価が上がることもあるが、実のところ、習近平がこのまま権力闘争に勝ちつづけるかどうかは、疑う声もあるのだ。彼は敵を増やしすぎているのではないか、と。

 2017年に習近平が第19回党大会で決まる次世代政権の人事を掌握できるか否か、それまでの2年、中国の市場関係者はおちおちと枕を高くして寝てはいられない、ということらしい。

2/18宮崎正弘メルマガ『ロシアを「あちら側」へ追いやったオバマの愚策  中国が建設のニカラグア運河をロシアは軍艦の通り道にする』について

宮崎氏の述べていることは、小生のずっと述べてきたことと同じです。小生がだから偉いというのではなく、歴史を真っ直ぐに見据えればそうなるということでしょう。左翼リベラルと言われる人たちには見えないというか、敢えて見ないようにしているのでは。既得権を守ろうとしているだけです。口を開けば「平和」と言いますが、「平和」を守る覚悟もない連中です。或は外国の手先でしょう。現実に起きている事象、ISILによる日本人人質殺害事件、中国の尖閣奪取行動を見て「平和」と唱えるだけで「平和」が守られていますかと聞きたい。「平和」には相互確証が必要でそれがバランスオブパワーです。「抑止力」を持たない限り、悪の帝国にやられてしまいます。日本はABCD包囲網を敷かれて、負けると分かっていても戦争せざるを得ませんでした。あの当時植民地を持って収奪していたのは欧米列強の白人です。Cの蒋介石は自分が天下を取りたくて日本人と手を組むことを拒絶、孫文の側近だった汪兆銘の南京政府と対抗しました。西欧のお先棒を担いだだけです。この敗戦から日本が学ぶことは「正義が勝つ」とは必ずしも言えない、力のある方が勝つ、同盟が物を言うという所です。

今中国は傍若無人に好き勝手やり出しました。日清戦争前の北洋艦隊の軍艦定遠・鎮遠の長崎での暴行事件みたいになってきています。そもそも「定遠」は「遠くを定める」、「鎮遠」は「遠くを鎮める」の意ですから、昔から侵略体質を持っていたということです。中国の言う「平和的台頭」なんてありえません。偽計に決まっています。

アメリカは「先が読めない国」でありますが、「中国封じ込め」のために中心となって動いて貰わないといけないです。オバマはルトワックの本を読んで研究しないとダメですね。

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 考えてみれば歴代アメリカ外交は誤断に基づくとてつもない見込み違いを繰り返し、結果的に取り返しの付かない失敗に繋がることの連続である。

近年ではサダム・フセインが大量破壊兵器を開発しているという理由でイラクに戦争を仕掛け、あげくにスンニ派のバース党を解体させ、シーア派政権をバグダッドに樹立させた。

 その揺れ返しがISILという「アルカィーダ」よりも残酷なテロリスト集団を誕生させた。もとはと言えば米国の失策から誕生したのだ。アルカィーダもアフガニスタン戦争の結果が産んだ化け物である。

1930年代後半から日本の台頭に不快感を抱いたルーズベルトは心底からの親中派で、共産主義に深い同情と理解を示した。

もっとも彼の周りはコミンテルンのスパイばかりだったため、あろうことか中国を支援し、日本をくじいた。ヤルタの密約で、宏大な利益をソ連に差し上げたのもルーズベルトだった。

 味方と考えてきた蒋介石への援助を中断し、毛沢東に結局シナ大陸を支配させた。「誰がチャイナを失わしめたか」とリチャード・ニクソン等は後年、ルーズベルト外交を攻撃した。

こんにち真珠湾攻撃はルーズベルトの仕掛けた罠であったことも証明されている。が、米国でこの真実を言うと「修正主義」のレッテルを貼られる。

 朝鮮戦争で恩を仇で返すかのように毛沢東は朝鮮半島に義勇軍を送り込んできた。米国は爾来、ソ連と中国を一枚岩の共産主義同盟と誤認し、封じ込めを計った。

 40年代の政策を逆転したのである。

 中ソ対立が起きていたことを鉄のカーテンの向こう側の政局激変をしらずにいた米国は、ある日気がついた。それは敵の分断、内訌を促進する作戦である。

米国と自由世界の主要敵であるソ連を封じ込めるには、むしろ中国を駒として利用することが得策であり理にかなっていることに米国は活路を見いだした。

ニクソンの安全保障担当補佐官だったキッシンジャーは中国の軍事同盟国=パキスタンを訪問し、三日ほどホテルで病気と称して引きこもった振りをして、イスラマバード経由で北京に密かに飛んで周恩来と密談をなし、米中関係の劇的な再生に結びつけた。

ニクソン・ショックと呼ばれる米大統領の北京訪問が発表された。

 この間、米国は徐々に中国へてこ入れを開始し、1971年のニクソン訪中から、79年の国交回復の期間に台湾と外交関係を断ち切り、スポーツ文化交流から軍事交流への道を突っ走る。

もし中国がソ連と軍事衝突し、それが長期化した場合、米国は装備などの支援のほか、ソ連軍の動きを分析した情報の提供もほのめかし、中国軍の脆弱性を補完するなど中国軍の近代化に側面的援助をなした。

 それが布石となって今日の中国軍はおばけのような凶悪な存在となった。

 米中雪解けを商業的に先読みした日本は中国に急接近するために台湾を弊履の如く捨て、異様な金額を注ぎ込んで、中国の経済発展を助けた。

 将来を不安視する声を、日本のマスコミは黙殺し、企業は中国への投資を進めた。戦前のコミンテルンのごとき代理人役を果たしたのが、日本の主力メディアだったのだ。

やがて中国が経済力をつけると、それが軍拡になって将来日本への脅威となることを当時の日本の政治家も財界人も考慮した形跡がない。だから米国の歴代政権同様に日本も愚かだった。

 しかしソ連が崩壊し、新生ロシアが米国の脅威とみなされなくなると、米国の対中態度はがらりと変わる。

なにしろ米国の軍事力に挑戦しようというライバルの出現に敵対的になるのは大国として当然である。

 したがって現状を分析すれば、「ロシアを中国から引きはがすことは、あたかも1970年代にソ連から中国を引き離したときにように、アジアに於ける力の均衡において好ましい影響をもたらすことになる。ヨーロッパにおけるロシアの報復主義を阻止しながらも、アメリカ政府はこの可能性を排除してしまうような行動はいっさいとらないようにすべきであろう」(アーロン・フリードバーグ『支配への競合』、佐藤亮監訳、日本評論社)

 だがオバマは間違えた。

オバマはルーズベルトと同じ過ちを犯し、ロシアを『あちら側』に追いやってしまうという愚を、歴史の教訓を考えずに、周囲の反対も聞かずに押し切って将来の歴史家から愚昧な大統領として評価されるしかない道を選んでしまった。

 ▼ロシアの反撃が始まった

 すでに多くの点で米国の思惑は大きく外れ、中国の敵対的行動は、とうとう米国の目の前に現れたのだ。

 ニカラグア運河の建設が始まった。

 「米国の裏庭」で中国は、米国の大きな権益があるパナマ運河に対抗するため膨大な建設費を投じてニカラグアの東西を貫通させる運河を建設し、数年で完成させると息巻いている世紀のプロジェクトだが、はたして『ニカラグア運河』が完成するか、どうかは高見の見物だろう。

世界の情報筋も、これを半信半疑で見ている。

 ロシアのセルゲイ・ショイグ国防大臣は先ごろ、このニカラグラ、ベネズエラ、そしてキューバを訪問した。

いずれも中国が大々的な投資をおこなっている国々だが、もとはと言えばソ連時代の「あちら側」だった国々である。

キューバはソ連の代理戦争を各地で闘ったほど、反米のあまりにソ連衛星圏の中核的存在だった。オバマは、そのキューバへの制裁を徐々に解除しはじめ、将来の国交回復を述べた。

 ニカラグアのサンディニスタ独裁政権はソ連の後ろ盾で革命に成功した。

 セルゲイ大臣はニカラグアでソ連軍艦寄港の弐国間取り決め交信にサインし、また将来、ニカラグア運河完成のおりは、ソ連の軍艦が通過するとした。

 「これは重要な案件であり、ソ連の軍艦が太平洋からメキシコ湾へ入れることを意味する。ロシア海軍は長距離巡航ミサイルを装備した艦船を保有しており、これらがキューバの近海で遊弋すれば、米国の下腹部をいつでも襲撃可能となる。これこそはロシア周辺国に米国と連携した軍隊の展開に対してのロシアの回答である」。

 米国のキューバへの急接近はキューバ側が要求しているグアンタナモ基地の撤収が最初になされて以後、本格化するかも知れないが、ロシアは国防大臣を送り込んで、米国の急な接近を牽制する。

 ただしキューバでラウレル・カストロ議長と何が話し合わせたかは発表がなかった(英語案プラウダ、2月16日)。

  ベネズエラでは火砲、戦車、機械化装置など軍事物資の購入に関して打診し、また共同の軍事演習についてつっこんだ話し合いがもたれたという。

 インドはモディ首相の登場以来、たしかに親米路線に外交方針を変えたが、それでもプーチンをあたたかく迎え、対米外交との均衡をとる。なぜならインドの武器システムはソ連時代から露西亜製で体系化されており、短時日裡に米軍システムに切り替えは不可能だからだ。

ニカラグア、キューバはインド同様な境遇にあり、中国がいかにしゃかりきになろうともラテンアメリカ諸国の武器、防衛体系は一朝一夕に中国のシステムに二者択一というわけにはいかないだろう。

 ともかく中南米でおきているのはロシアのクリミア併合に端を発し、ウクライナの戦火拡大に抗議してとられた欧米の対ロ経済制裁が、ロシアをして、こうした報復的行動を採らせてしまった。

最大の脅威=中国にロシアは依拠せざるを得ない環境をつくりだしたわけであり、オバマのロシア制裁はあまりにも拙速だった。

 

2/16ZAKZAK『古森義久氏【あめりかノート】中国「100年のマラソン」戦略 米国側の想定はみな錯誤だった…』『【湯浅博の世界読解】対日世論戦で巻き返しに出る中国 潘基文国連事務総長に送った書簡と意図』記事について

中国のプロパガンダを許し続けると、「慰安婦」や「南京虐殺」のように世界が信じてしまいます。「嘘も百回言えば真実になる」が実行されるだけです。いつも言っていますように彼らの発想は「騙す方が賢く、騙される方が馬鹿」ですから、彼らは日本人と比べ賢いと思っているでしょう。鄧小平は「韜光養晦、有所作為」と言っていたし、中国の歴史や漢人と実際付き合えば「豊かになれば民主化する」なんて幻想とすぐ気づくはずです。中国は経済的豊かさを軍事力拡張、賄賂工作資金に使います。豊かにすればそれがブーメランとなって日米の国民に跳ね返ってくるのを理解してほしい。5月の安倍首相の訪米と9月の習近平の訪米と、オバマがどういう対応をするかです。

イマジカがSDIメデイアを買収と報道されていました。政府も国際報道の充実を考えているなら、彼らの協力を求めた方が良いかもしれません。NHKでは偏向して報道される可能性がありますので。民主党はNHK会長を呼び出して糾弾するなど、報道の内容に経営が容喙できないよう手足を縛ろうとしています。日本のことを考えればNHK出身の安住議員を選ぶのは考えられません。

2/16宮崎正弘氏のメルマガで読者の「中国経済の崩壊が予測されて久しいのですが、まだ崩壊しない。そればかりか、上海株式は上昇しています。これらの事象をみていますと、宮崎さんの予測とは逆のことが起きていますね。」という質問に、

宮崎氏の回答は「世界第二位のGDPを誇る中国は巨大ゆえに、一夜で潰えることはありません。しかし不動産バブルは瓦解しており、デベロッパーの倒産が連鎖しています。銀行は不良債権を糊塗するために、壮大なごまかしをやっており、そのあおりで真実の公開に頬被りした米国の四大監査法人は罰金を支払いました。

中国人民銀行など金融当局は預金準備率を引き下げ、理由のない緊急貸し出しを数回もおこない、さらに大手企業の債権デフォルトを予防するために、「謎の投資家」がつぎつぎと登場したり、あらゆる手段を講じて防戦中です。

 何回か指摘しましたが、中国経済は危殆に瀕しているにもかかわらず、まだ持っているのは外国企業からの直接投資がまだ続いているからです。

 そして米国のFATCA発効により、世界のタクスヘブンに逃げていた巨額不正資金の一部が「外国籍」を装って中国に還流しているため、上海株式があがっているのです。

破裂は秒読みですが、これを回避するために次に国務院が打ち出すのが稀有壮大というより破滅へ向かっての世紀の賭け、すなわち都市化プロジェクトです。

 ゴーストタウンをまた増やすだけのことですが、経済成長維持のトリックをしばらく中国は続けざるを得ないのです。

 つまり中国経済は事実上破綻しているが、壮大なトリックで外国投資がつづき、未曾有のごまかしをやっているのが実態です。」との回答でした。外国の金=国際金融資本が中国を支える、これが世界を不安定化しているにも拘わらず。儲かればいいというか、戦争で儲けようとしているのかも知れませんが。」

古森義久氏記事

「日本の首相の靖国参拝は中国への再度の侵略への精神的国家総動員のためなのだ」 「日本の宇宙ロケット打ち上げはすべて弾道ミサイル開発のため、プルトニウム保有は核兵器製造のためだ」  米国の中国軍事戦略研究では第一級の権威とされるマイケル・ピルズベリー氏が2月3日のワシントンでの討論会で現在の中国指導部内では日本について以上のような断言が堂々となされていることを指摘した。中国側の明確な記録にも残るこうした独断に日本側は正面から論争を挑み、正すべきだと同氏は提言するのだった。  1970年代のニクソン政権から現オバマ政権まで一貫して国防総省の中国軍事動向を調べる要職にあったピルズベリー氏は最新の自著「100年のマラソン=米国と交代してグローバル超大国になろうとする中国の秘密戦略」を紹介し、議論する集いでそんな発言をした。 この書の内容は衝撃的である。もう40年以上も中国の対外戦略を研究してきた同氏が中国は「平和的台頭」や「中国の夢」という偽装めいたスローガンの陰で、実は建国から100周年の2049年を目標に経済、政治、軍事の各面で米国を完全に追い抜く超大国となり、自国の価値観や思想に基づく国際秩序と覇権を確立しようとしている-と総括するのだ。  同書がいまワシントンの外交政策関係者たちの間で熱っぽい議論の輪を広げているのは、米国側のこれまでの対中観や対中政策が著者自身の認識も含めて根本から間違っていた、と断ずるからである。米国の官民は中国に対し「欧米や日本の犠牲になった貧しく弱い国」との認識から始まり、「建設的関与」により中国を最大限に支援してその根幹を強くし、豊かにすれば、国際社会への参加や協力を強め、西側に同調すると考えてきたが、それは巨大な幻想だった、と強調するのだ。

だから同書は米国側の年来の「対中関与は協力をもたらす」「中国は民主主義へと向かっている」「中国は米国のようになりたいと願っている」という想定はみな錯誤だったとも断じる。そのうえで次のようにも指摘する。

 「中国共産党の中核は米国が実は中国の現体制を骨抜きにし、国際的にも封じ込めて変質させ、米国主導の国際秩序に従属的に参加させる意図だと長年、みてきた」

 「しかし中国指導部は米国の主導と関与の誘いに従うふりをしながら、国力を強めて米国の覇権を奪い、中国主導の国際秩序を築く長期戦略を『100年のマラソン』として進めている」

 ピルズベリー氏によると、中国はその世界覇権への野望の主要手段として「現在の日本は戦前の軍国主義の復活を真剣に意図する危険な存在だ」とする「日本悪魔化」工作を実行してきた。アジア諸国と日本国内をも対象とするこの反日工作は日本が米国の主要同盟国として安保と経済の大きな柱である現状を突き崩すことを目的にするという。冒頭の中国の日本糾弾もその路線に含まれるわけである。

 この書は日本の対中政策形成のうえでも重視すべき新たな指針だろう。

湯浅博氏記事

中国の劉結一国連大使から一通の書簡が今月初め、に送られた。書簡は今年が「国連創設・世界反ファシズム戦争勝利70周年」にあたり、安全保障理事会の閣僚級公開討論会の月内開催を呼びかけていた。公開討論会は「国際の平和と安全の維持」と、一見するとまともなテーマを挙げている。

 ところが、副題には「歴史を鑑(かがみ)とし、『国連憲章』の趣旨と原則に対する揺るぎない約束を重ねて表明する」と書き込まれていた。議長は中国の王毅外相があたるというから、例によって、作、演出、主演とも中国で、国連の場を借りて都合良く誘導しようとの意図がほの見える。

 副題にある「歴史を鑑」とくれば、日本を原罪意識で金縛りにする常套(じょうとう)句であることに気付くだろう。中国が持ち出す歴史カードの実相は、むしろ「現代を鑑」に、つまり現在のモノサシで歴史を裁こうとする危うい外交作法である。

 公開討論会の目的が、「国連創設の背景を全面的に回顧」して、憲章の「揺るぎない約束を重ねて表明」とくれば、その狙いは明らかである。国連は元来が第二次大戦の戦勝国による「連合」であり、旧敵国条項により敗戦国に不穏な動きがあれば容易に攻撃できる条文が残されている。この条文は国連決議によって否定されてはいるが、削除はされていない不安定なシロモノである。

 まして、書簡を受け取る潘事務総長は、韓国の次期大統領候補に名前が挙がるほどの人物だから、抗日の連帯を呼びかけたようなものである。

ラヂオプレスが伝えたその数日前の人民日報は、「占豪」の署名論評で、戦勝70周年の抗日戦勝記念日(9月3日)に行う閲兵式の狙いを「日本を震え上がらせる」ためであると書かせている。戦後70年の今年、中国は歴史カードを次々と切って、日本を揺さぶるつもりなのだろう。

 これまでの強硬策が裏目に出て、世論戦で分の悪い中国が巻き返しに出てきた構図である。昨年は、習近平国家主席がオバマ米大統領に持ち掛けた「新型の大国関係」が、南シナ海などを核心的利益と認めさせる方便であることを見抜かれた経緯がある。いくつもの国際会議で、日本の「法の支配」に対して、中国の「力による現状変更」が批判の対象になった。

 かくして中国は、戦後70年という近年にない機会をテコに、逆に日本が「戦後の国際秩序を覆そうと企(たくら)み、日本の敗戦国という地位の変更を企む」との論理で反転攻勢にでようとしている。中国と韓国は戦争が近代国家の形成に深く関わり、反日がその出発点として刻み込まれている。これが仮想現実である以上、日本は「過去からの攻撃」が底なしであることを覚悟する必要がある。

 それでも英紙フィナンシャル・タイムズの社説は、日本人人質「殺害」事件に関連して「ここ数週間の出来事で安倍晋三首相の憲法改正への取り組みが台無しになってはならない」と、現在に目を向けている。

 中国の意図的な世論戦に対しては、怯(ひる)まずに反世論戦で応じ、心ある言論人を獲得していくべきだろう。この5月に予定される首相訪米で、戦後70年の首相談話が日米ですり合わせられよう。中韓の「過去からの攻撃」に対し、自由、民主主義の共通の価値観をもつ国際協調の輪を広げていくに如(し)くはない。(東京特派員)

昨日に続き南房総より

昨日に続きスマホからの投稿です。
PCももって来ましたがスマホで十分
です。
旅行にはスマホで投稿とメールが
読めるのが確認できました。
3月に台湾旅行しますので、海外
でスマホを安く使えるか試して
見たく思っています。
本日自宅に帰ります。
写真はホテルの入口側からのと
昨日の夕食です。

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南房総に来ています。

昨日から南房総に来ています。
生憎の雪と雨で12階の浴場
から富士山が見えませんでした。
部屋から海を見た所と夕食の
写真を添付します。
こちらは酒の持ち越みOKです。

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2/13日経ビジネスオンライン 加藤嘉一『中国の専門家が読む、米国の「2015年版国家安全保障戦略」 2015年のハイライトは習近平の訪米』について

学歴詐称の加藤氏の記事です。どうせ中国寄りの記事を書いているだろうと予測はつきます。アメリカのライスはオバマの腰巾着で有名です。あのリベラルなヘーゲル国防長官(共和党)でも追い出しに成功、カーターに替えました。限定空爆だけと言うオバマの「戦争せず」の公約を守ろうとライスが動いたためです。(オバマはやっと地上部隊を送るようにするようですが遅い。後手後手に回っている)。どう考えてもISIL打倒には地上軍を派遣しなければできません。ただアメリカは軍事で簡単に勝っても、その後の統治に金がかかるためにオバマはやりたくないと思っているのでは。イラクがその例で、途中で手を引き、結果としてISILを跋扈させました。またアラブの春でエジプトの選挙後出来たモルシ政権のようにイスラム原理主義者が統治者として出てきてしまいます。中東・アフリカは一筋縄ではいきません。

ライスは一昨年の11月にはG2を認めた発言をして明らかに中国寄りの立場を取っています。オバマがその当時考えていたことだったのでしょう。今はG2と言うことはオバマも言っていませんが、9月の訪米に習が確実にぶり返すでしょう。戦勝パレードにオバマも招待するつもりなのかもしれません。ダメモトで。オバマは軍事オンチで同盟の意味すら知らないから不安です。

下記のフォーサイトの記事でベンガジの米大使館爆破事件やアフリカのケニアとタンザニアの米国大使館爆破事件についてライスのことが書かれています。国務大臣候補だったのが共和党の横やりでなれなかったのです。こんな人物の言うことを有難がって報道するのですから加藤の座標軸が知れます。

中国は「歴史を鑑として」とよく使いますが、それならチベット・ウイグル・モンゴルも返すべきではないか。自分に都合よく歴史解釈するのは止めてほしい。

フォーサイトの記事

『バラク・オバマ大統領は、クリスマス休暇を生まれ故郷ハワイで過ごすためにハワイへ移動する直前の今月21日、既に退任の意向を表明しているヒラリー・クリントン国務長官の後任として、現在、米議会上院外交委員会委員長の要職にあり、2004年の民主党大統領候補であったジョン・ケリー上院議員(マサチューセッツ州)を正式に指名した。当初は、オバマ大統領が出馬した2008年民主党大統領候補指名獲得争い当時から外交顧問だったスーザン・ライス国連大使を次期国務長官に指名するのではないかと見られていた。そのため、次期国務長官候補の1人であったケリー氏は、第2期オバマ政権では間もなく退任すると見られているレオン・パネッタ国防長官の後任に指名されるのではとの憶測も一部にあった。

 だが、オバマ大統領が次期国務長官としてライス国連大使を検討している事実が表面化すると、J.クリストファー・スティーブンズ駐リビア米国大使をはじめとする米国人4名が殺害された、今年9月11日に発生したリビア東部の在ベンガジ米国領事館襲撃事件が、この人事に大きな影を落とすこととなった。ライス国連大使はホワイトハウスの要請に基づき、同襲撃事件直後の9月16日に日曜政治討論番組に相次いで出演し、米諜報機関から提供された情報に基づき同襲撃事件は反米暴動が原因との見解を示していた。ところがその後、同襲撃事件は周到に準備されていたテロ事件であったことが明らかになり、オバマ政権は大統領選挙キャンペーンが本格化した直後に発生した同襲撃事件がテロ事件であることを隠蔽しようとしていたのではないかとの疑惑が浮上したのである。とりわけ、在ベンガジ米国領事館襲撃事件でのオバマ政権の対応についての批判で急先鋒に立ったのがジョン・マケイン(アリゾナ州)、リンゼイ・グラム(サウスカロライナ州)の2人の共和党上院議員であった。

 オバマ大統領は再選後初めて行なった11月14日のホワイトハウスでの記者会見で、マケイン、グラム両上院議員を名指しし、ライス国連大使の名声を汚そうとする両上院議員の姿勢は「極めて侮辱的(“outrageous”)」との厳しい表現を用いてライス氏を全面擁護した。ライス国連大使はマケイン、グラム両上院議員らに対し在ベンガジ米国領事館襲撃事件発生後の対応について米議会内で面談して説明を行なったが、マケイン上院議員らの理解は得られず、ライス氏は厳しい立場に追い込まれることとなった。さらに、共和党穏健派のスーザン・コリンズ上院議員(メイン州)は、ライス氏が第2期クリントン政権で国務次官補(アフリカ問題担当)在職当時の1998年、ケニアとタンザニアの米国大使館爆破事件で米国人をはじめとする多数の犠牲者が出たのは、ライス氏が在外公館のセキュリティ強化を十分に行なわなかったためであると指摘、当時の責任をも追及する事態となった。

「ライス国務長官」を葬ることになった決定打は、マケイン上院議員が今月10日、現在、野党筆頭理事を務めている上院軍事委員会から、次期国務長官の指名承認プロセスを担当する上院外交委員会への移籍に言及したことだった。共和党の議員規則では、6年以上連続して同じ委員会の委員長や野党筆頭理事を務めることが禁じられているために、マケイン上院議員は軍事委員会から外交委員会への移籍に関心を示した。その判断は、現在、ミッチ・マコーネル共和党上院院内総務(ケンタッキー州)ら上院共和党指導部の判断に委ねられている。だが、マケイン氏が外交委員会へ移籍すれば、委員会で行なわれる公聴会でライス氏の長官指名に反対するのは必至だ。マケイン上院議員のこのような動きがオバマ大統領にライス国連大使の次期国務長官指名を見送らせ、ケリー上院議員を指名する1つの圧力となったことは間違いない。マケイン氏のこうした意思表明が行なわれた3日後の今月13日、ライス国連大使はオバマ大統領に対し、自身を次期国務長官の検討対象から除外するよう自ら申し出ている。次期国務長官指名承認プロセスに関与する共和党有力議員らはケリー上院議員の外交政策に関する見識を高く評価しており、指名承認プロセスは順調に推移するとの見方を相次いで示している。そのことはケリー氏が上院外交委員会委員長の要職を辞任することを意味する。

 マケイン氏とケリー氏はともにヴェトナム戦争従軍経験を共有しており、ケリー氏は2004年民主党大統領候補として副大統領候補にマケイン氏を検討していた経緯がある。また、第1期ジョージ・W.ブッシュ政権当時、マケイン氏は共和党を離党することをトム・ダッシュル民主党上院院内総務(サウスダコタ州)(当時)と真剣に協議していた。だが、現在、対ロシア外交やアフガニスタンからの米軍撤退問題、あるいは、シリア情勢を巡りオバマ外交を共和党から最も厳しく批判しているのはマケイン上院議員である。2人は2008年大統領選挙を2大政党のそれぞれの大統領候補として競ったが、あれから4年以上が経過した現在の2人の関係は「協力」よりも「対立」で定義されている。今回、マケイン上院議員がオバマ大統領の信頼の厚いライス国連大使の次期国務長官指名を事実上阻止したことで、オバマ大統領とマケイン上院議員との間には感情的しこりが残ったのではないだろうか。マケイン上院議員の上院外交委員会在籍を上院共和党指導部が認めた場合、マケイン氏は上院外交委員会を舞台にオバマ外交批判をさらに強めるのではないかと筆者は考えている。

 マケイン上院議員は2010年中間選挙で5選を果たしており、任期は2017年1月までである。2017年1月はオバマ大統領が2期8年の任期を終えてホワイトハウスを去る時期と重なる。2014年中間選挙では共和党現職13名が改選期を迎えるのに対し、民主党は現職20名が改選期を迎えることになっており、上院民主党は「守りの選挙」を強いられることになる。2014年中間選挙で民主党が多数党の立場を失った場合、上院外交委員会委員長のポストも共和党上院議員により握られることになる。マケイン上院議員が同委員会での年功序列を重視し、ボブ・コーカー上院議員(テネシー州)が上院外交委員会委員長に就任しても、マケイン上院議員の外交・安全保障問題に関する発言力はさらに増大することになろう。共和党支配の議会での制約から逃れるために外交面での業績を残そうとする第2期オバマ政権にとり、マケイン上院議員は目障りな存在となる可能性がある。〔Foresight〕より』

加藤氏記事

2015年2月6日12時45分、ブルッキングス研究所、ワシントンDC。

 各国の駐米大使やテレビ・新聞の記者たちは、ノートとペンを手に、固唾を呑みながら1人の女性が現れるのを待ち構えていた。会場は緊張感に包まれていた。

 時計の針が13時を少し回ると、スーザン・ライス米大統領国家安全保障担当補佐官が姿を現した。ちょうど同じ日にバラク・オバマ大統領が発表した『2015年版国家安全保障戦略』(前回は2010年)の概要を説明すべく、ライス補佐官は、“知的集積地”であるこの研究所を訪れたのだ。ブルッキングス研究所は政策と研究の交点で、同補佐官自身、かつて勤務した経験がある。

 実母を伴って“古巣に帰省”したライス補佐官は元同僚や旧友たちに笑顔で手を振りつつ演壇に上った。スピーチの冒頭で「ブルッキングスは私にとっての家です」と述べるなど、リップサービスも怠らなかった。

 会場には中国の政府関係者や研究者、ジャーナリストの姿も多く見られた。彼ら・彼女らは、5年ぶりに発表された『国家安全保障戦略』が中国をどう描いているのかに強い関心を持っていた。ライス補佐官は、米国の強靭なリーダーシップをどのように維持・向上・発揮していくかについて、同盟国やパートナーとの関係、経済政策、普遍的価値観、国際秩序といった視点から紹介した。

対中批判を控えた? ライス補佐官のスピーチ

 対中関係についても、慎重に、言葉を選ぶようにして見解を披露した。

 「米国は建設的で、機能的な協力を中国とともに進めていく。領土問題やサイバーセキュリティー、人権といった分野で米中間には立場の違いが存在するが、公共衛生や気候変動といった分野で協力を深めていく」と語った。

 また、今年、オバマ大統領が日本の安倍晋三首相と中国の習近平国家主席を国賓待遇で招待するとも発表した。2人の名前を同じフレーズのなかで並列させるように読み上げたライス補佐官の表情を見て筆者は、「任期が残り2年となった」(ライス補佐官)オバマ大統領が日中関係の改善を重視し、米国がその橋渡しをすべきだと考えていると感じた。

 スピーチ終了後、会場で遭遇した知り合いの上海政府関係者に「彼女の対中観をどう受け取りましたか?」と聞くと、「結構、抑えていましたね。意識的に中国批判を控えていた気がする。中国に遠慮していました」との感想が返ってきた。

 筆者はこの時、前日の5日にワシントンDCで開かれた、ある朝食会の光景を思い出していた。米国の宗教関係者が1年に1度集まる会合で、チベットのダライ・ラマ14世も出席していた。オバマ大統領はスピーチの中で“友人”ダライ・ラマ14世の活動と貢献を称賛した。

 オバマ大統領とダライ・ラマ氏がどのように対面するかに注目が集まっていたが、両氏が面と向かって言葉を交わすことはなかった。オバマ=ダライ・ラマ会談に頑なに反対する中国政府に対し、米国側が遠慮した形となった。

『戦略』が表す米国の対中認識

 ライス補佐官の講演が終了した後、ブルッキングス研究所内で『2015年版国家安全保障戦略』(以下『戦略』)が配布された。真っ白な表紙に、NATIONAL SECURITY STRATEGY FEBRUARY 2015と記されている。全31ページ、7つのパート(概要、イントロダクション、安全、繁栄、価値観、国際秩序、結論)から成る『戦略』は、Chinaに約10回触れている。

 以下、Chinaが含まれているフレーズを翻訳し、箇条書きにしてみたい。

(概要)

  • 中国との協力範囲は前代未聞である。我々は依然として中国軍の近代化を警戒し、挑発的なやり方で領土紛争を解決しようとすることを拒絶しているけれども。
  • 我々は温暖化ガスを削減について中国と合意に達した。

(イントロダクション)

  • インドの潜在力、中国の台頭、ロシアの侵略は、将来の大国関係の在り方に対して重要なインパクトを持っている。

(安全)

  • 世界最大の二酸化炭素排出国として、米国と中国は、炭素公害を減らすために重要な行動を取ることを取り決めたランドマークとしての合意に至った。
  • アジアにおける領土紛争をめぐり、米国は緊張を煽るような挑発的・恫喝的な行為に反対する。国際法に基づいて平和的に紛争を解決するための開かれた対話のチャネル構築を奨励する。また、中国とASEAN諸国の間で、南シナ海問題を解決するための有効な行動原則をめぐって早期に合意に至ることを支持する。

(国際秩序)

  • 米国は中国の安定的、平和的、繁栄的な台頭を歓迎する。
  • 米国は米中両国民およびアジアと世界の安全と繁栄を促進することに資するような建設的な対中関係を発展させたいと考えている。
  • 米中の間には競争が存在するけれども、衝突が不可避だとは考えていない。
  • 我々自身の強さを持って競争をマネージしていくと同時に、海洋戦略、貿易、人権といったイシューにおいて、中国が国際的なルールや規範を守るべきだと主張していくつもりだ。
  • 我々は中国軍の近代化とアジアにおけるプレゼンス拡大を監視する一方で、誤解や誤算をするリスクを減らすべくやり方を模索していくつもりだ。
  • サイバーセキュリティーに関して、民間か政府かを問わず、中国側が商業的な利益を得るために、米国側の企業秘密を盗もうとする場合には、必要な措置を取ることを通じて我々のビジネスやネットワークを保護していくつもりだ。

 ライス補佐官のブルッキングス研究所におけるブリーフィングと比べて、『戦略』は特に(1)領土紛争、(2)軍の近代化、(3)サイバーセキュリティーという3分野で中国を比較的強く牽制しているのが読み取れる。一方で、(1)中国の健全な台頭を歓迎し、(2)衝突は不可避ではなく、(3)誤解や誤算のリスクを減らす努力をしていく必要があるとも述べている。中国が持つ不確実性に対する警戒・懸念・牽制と、中国の発展に対する評価・期待・関与のあいだでバランスを取ろうと心がけているのが伺える。

中国専門家が読む米国の『戦略』

 中国の有識者は『戦略』をどう解釈したのか。

 中国外交部直属のシンクタンク、中国国際問題研究院国際戦略研究所の蘇暁暉副所長が党機関紙《人民日報》に論考を発表している(“米国が『国家安全戦略』を発布、中国に対しては多面的なアプローチを配置”、2月9日)。

 蘇副所長は2010年版の『戦略』と2015年版の『戦略』がそれぞれ中国をどのように描写しているかを比較している。「米国はずっと中国の台頭、特に軍の近代化に注目し、中国が発展する方向性に影響を与えたいと目論んできた」と、過去5年のあいだ変わらない米国の対中戦略に言及しつつ「一方で、中国の戦略に対する米国の認識に若干の変化が生じている」と指摘した。

 蘇副所長によれば、“若干の変化”は次の4つの側面に表れている

 第1は、米中間で起こりうる衝突リスクに米国が関心を示すようになったこと。『戦略』が「衝突は不可避ではない」と主張する部分に注目する。

 第2は、中国との協力関係に米国が関心を示すようになったこと。『戦略』が「米中の協力範囲は前代未聞」と主張し、特に両国が二酸化炭素排出削減目標を共有し、合意に至った成果を前向きに評価した部分に注目する。

 第3は、中国に対する米国の警戒心が深まっていること。『戦略』が「中国が国際ルールや規範を守るべく主張」「緊張を煽るような恫喝的な行為に反対」などと言及している部分に注目する。

 そして第4は、米国が新しい分野での対中競争を強化していること。『戦略』がサイバーセキュリティーを明記し「中国側の機密窃盗行為に対して必要な措置を取っていく」と牽制している部分に注目する。

 蘇副所長は、「これらの変化は中米の国力の変化に由来する」と分析し、米国側が昨今の中国の国力と発展を次のように認識していると指摘した。

  • 中国は5年前に比べて国力を増強させた。今後も、外部的な要因に影響されることなく発展していく
  • 米国の発展や戦略に対して、“中国要素”がますます重大な影響を及ぼすようになった
  • こうした状況下において、中国と対抗・衝突することは米国の国家安全保障上の利益にかなわない。

米国に先んじて、中国は『国家安全戦略綱領』を発表

 実は、オバマ大統領が『戦略』を発表する約2週間前の1月23日、中国共産党中央政治局は会議を開き、中国版『国家安全戦略綱領』(以下『綱領』)を審議、採択している。党中央の声明や国営新華社通信などの報道を見るかぎり、『綱領』が中米関係や中国の対外政策を具体的にどのように定義しているのかはよく分からない。

 しかしながら、自ら司会を買って出た習近平国家主席が、会議のなか以下の点について強調したことは国営新華社通信による報道(2015年1月23日)によって明らかになっている。

1.『綱領』を制定・実施するのは国家の安全を保障するという差し迫った需要を満たすため

2.総合的な国家安全観を指導思想とし、国家の核心的利益、重大な利益を断固として守る

3.中国共産党による国家安全保障戦略における絶対的な領導を堅持すること

 中国のある政府関係者は「米国が『国家安全戦略』を発表する前に中国が『国家安全戦略綱領』を審議したことは象徴的だ。中国が自らの国家安全保障と核心的利益を断固として守るという決意を米国側に伝える効果を持っていた」と筆者に語った。

 筆者には“党による絶対的領導”という言葉が印象的だった。内政・外交を問わず、習近平国家主席率いる現共産党指導部が“絶対的な”指導力を発揮しつつ、あらゆる政策をトップダウンで打ち出していくに違いない。

 “核心的利益”に関して、中国は米国を意識している。台湾、チベット・ウイグル、南シナ海・東シナ海といった分野において、党指導部は中国の核心的利益を認めさせるべく、引き続き米国に圧力をかけていくに違いない。その効果は既に現れている。前述のように、オバマ大統領は同じ会場にいたダライ・ラマ14世と顔を合わせることも、言葉を交わすこともなかった。

歴史認識について中米接近を進める中国

 『戦略』が発表された6日の夜、崔天凱駐米中国大使は、ワシントンDCにある中国大使館で新春レセプションを主催した。在米華僑や留学生、中国企業やメディアなどで働く約800人の“華人”が出席した。

 スピーチの中で同大使は、こう主張した。「新しい1年を迎えるにあたり、我々は引き続き中米間の往来を、ハイレベルから草の根レベルまで、政府でも民間でも発展させ、相互理解を深め、相互信頼を増進させ、協力を推し進め、違いや摩擦をマネージし、中米新型大国関係という巨大なビルをより高く打ち立てていく」。このレセプションに出席した中国2大国営通信社の1つ、中国新聞社の記者に対して、崔大使は「我々は現在、習近平国家主席の訪米日程を調整している」と語った。この日、ライス補佐官が習近平国家主席宛てに招待状を送ったと公表したことを受けての発言だ。

 米中関係の“次”を占う上で、習国家主席の訪米が1つのカギとなることは間違いないだろう。ライス補佐官と崔大使が年内の習近平訪米を同じ日にほのめかした。それから1週間も経たない2月10日(米国東部時間)、習国家主席はオバマ大統領と電話で言葉を交わし、オバマ大統領からの招待を受け入れ、9月に公式訪問すると伝えた。2人は電話の中で、米中がサイバーセキュリティーをめぐる摩擦をいかに緩和させるか、グローバルな安全保障問題をめぐっていかに協力し、対応していくかなどを話し合っている。国営新華社通信が伝えた(2月11日、中国時間)。

 今年は終戦70年に当たる。第二次世界大戦の“戦勝国”である米中二大国が“戦後70周年”というイベントにどう向き合うのかに注目したい。筆者は、中国は習国家主席訪米と戦後70年をリンクさせ、歴史認識をめぐって米中接近をこれまで以上に推し進めるべく、綿密に戦術を練っていると考えている。

 6日夜、崔大使は新春レセプションを次の言葉で締めくくり、米中協力の必要性を強調した。「2015年は世界反ファシズム戦争および中国人民抗日戦争勝利70周年、そして国際連合設立70周年に当たる。歴史を鑑にすることでしか、より良い未来はやってこない。平和の力を大きくすることでしか、侵略の再来を防ぐことはできない」。

2/15 伊勢雅臣氏メルマガ『人権よりも中国への配慮を優先する「冷酷なハト派」』記事について

昨日に続き、中国の少数民族問題です。やはりモンゴル人だけでなくチベット人も弾圧・虐殺しております。前にもブログで書きましたが、旅行で拉薩(ラサ)のデポン寺でチベット僧が掃き掃除をしていた時に、漢人通訳に掃き捨てる素振りをしていたのを思い出します。それだけチベット人は漢人に対し憎悪、怨恨を持っているのだろうと思います。中国が大戦後の隙をついてチベット人の土地を奪ったのです。今やっと日本人は中国のつく嘘に気が付くようになりました。気づいていないのは朝日に代表される日本のマスメデイアだけでしょう。

外務省も相変わらずヘタレな様子。税金の無駄使いですね。それと輿石に代表される民主党です。こんな政党に議席を与えるから日本がおかしくなります。日本人のための政治でなく、共産党が牛耳る中国のための政治をしています。選挙の時はよくよく相手を選んで投票しましょう。国民主権と言うのは、代議士に政治を委託しますが彼らを選ぶことにより、最終的に国民が責任を負うシステムです。外国に利益を与えるような政治家を選ぶと巡り巡って国民に皺寄せが来る、というか植民地にされかねません。

中国の在留邦人の命は危ないとずっと主張してきました。企業の経営者も自分の身でないからというのでなく、自分が中国にいる前提で考えないと。通州事件の再来となります。日本人は帰して現地化を進めるべきです。

記事

■1.ダライ・ラマ法王の国会議員会館での講演

 チベット仏教の最高指導者ダライ・ラマ法王が、つい3年前に日本で講演した事をご存じの読者はどれほど、いるだろうか? ダライ・ラマは中国に侵略されたチベットの解放を目指して平和的な活動を続けており、1989年にはノーベル平和賞を受賞している。

 法王の講演は、平成24年11月13日、衆議院第一議員会館の国際会議場で行われ、実に196名の国会議員が聴講した。当日はテレビカメラが20台ほど設置され、マスコミ席は満員だった。アメリカやヨーロッパなら、ゴールデン・タイムのテレビ・ニュースで報道されたり、新聞の一面トップを飾ってもおかしくない。

 ところが当時の朝日新聞の報道を調べると、事前の11月5日付け夕刊1件(264字)と、当日夕刊1件(344字と写真)のみだ。両方とも夕刊2面の小記事で、ほとんどの人は見逃していまうだろう。多くの人が知らないのも当然だ。

 事前の1件はわずか264字の小記事なのに「今回の講演は中国政府を刺激する可能性がある」と懸念を述べる。当日の記事も講演内容についての紹介は、以下の1文のみだ。

【ダライ・ラマは「チベット文化を保っても独立する危険性はないのに、中国共産党は人権侵害、弾圧をしている」と指摘。チベット族の相次ぐ焼身自殺について「地方から中央に報告されていない」と語った。】

 そして、この短い記事の中でも「日本政府はチベットの帰属は『中国の内政問題』とし、来日中のダライ・ラマについては『政治活動をしなければ問題ない』(外務省幹部)としている」と、中国のご機嫌を損ねることを恐れるかのような注意書きがある。

■2.チベット人への弾圧の実態

 チベットがいかに中国に侵略されたかは、弊誌123号、124号「チベット・ホロコースト50年 上・下」で紹介したが、最近の状況を見ておこう。

 まずは論より証拠、以下のリンクに掲載された写真を見て欲しい。大勢のチベット人が「国家分裂」「国家機関襲撃」などの罪名を書いたプラカードを首から吊され、中国の武装警官隊の監視のもとで、引き立てられたり、トラックの荷台で運ばれたり、広場で坐らされたりしている。

http://blog.livedoor.jp/rftibet/archives/51716984.html

 チベット解放を訴えるウエブサイト「Free Tibet」では、次のようなデータが示されている。

http://freetibet.org/about/facts-about-tibet

・1950年の侵略以来、100万人のチベット人が殺害された。

・99%のチベット僧院が閉鎖された。

・大量の中国人をチベットに移住させ、すでにチベット人は人口1/3の少数民族になっている。

・チベット国旗の掲揚、海外へのメール送信、「人権」を口にすると、拷問を受ける。

 朝日新聞は、1959年に中国が数万人規模の兵力を投入して弾圧したラサ動乱に対しても「チベット暴動説は疑問 亡命者の政治宣伝か」と疑い、隠しようがなくなると「狂信的なカンパ族の仕業」などと人民日報顔負けのプロパガンダを流した前科がある。

 その頃と比べれば、ダライ・ラマ法王の発言とは言え「人権侵害、弾圧、焼身自殺」にまで言及したのは、報道機関として飛躍的進歩だが、チベットの実態はこの一言で済ませられるような、生やさしいものではない。

■3.「ダライと接触することに反対する」

 ダライ・ラマの講演会開催のニュースは、案の上、中国のご機嫌を損ねた。この講演会の実現に奔走していた長尾敬衆議院議員ほかに、中国の程永華・駐日大使からの文書が届いた。それには次のような文面があった。

【チベット問題は中国の核心的利益にかかわるものである。中国政府は民族の分裂に断固反対し、いかなる形、名目でもダライおよびロブンサン・センゲ(JOG注: 後述)による国際的活動に断固反対し、いかなる国の政府関係者も、いかなる形、名目でも、ダライと接触することに反対する。われわれは国会議員の皆さんがダライとロブサン・センゲの中国分裂を図る反中国の本質をはっきり見抜き、『チベット独立』勢力を支持せず、舞台を提供せず、いかなら形でも接触しないことを希望する。】

ダライ・ラマ法王の「チベット文化を保っても独立する危険性はないのに、中国共産党は人権侵害、弾圧をしている」という冷静穏当な文言に比べれば、「ダライ」と犯罪者のように呼び捨てにする居丈高な言いようは、まるで脅迫文のようだ。

 長尾議員は、当時所属していた民主党執行部関係者に「内政干渉ですよね」と問いかけたが、「変なことをするからだ」と相手にしてもらえなかった。しかし「こんなことで、いちいちビビっているわけにはいきません」と、長尾議員は有志とともに呈大使に抗議文を送付した。

■4.「このイベントの詳細を教えてくれ」

 前節の引用にあった「ロブソン・センゲ」とは、チベット亡命政権の首相で、氏もまた長尾敬議員の奔走で、半年ほど前の4月4日に同じく議員会館の国際会議場で講演をした。こちらには96名の国会議員が参加した。

 この時も中国から陰険な横やりが入った。まず中国関係筋から、議員会館内の会議室使用について問合せがあった。会館の総務面の責任者、小平忠正衆議院議員は「議員会館内の会議室の使用について中国大使にあれこれいわれる筋合いはない」と突っぱねた。

 見識ある物言いだが、こんな形で言いがかりをつける中国側の国際常識のなさにも驚かされる。宗主国が属国の内政にあれこれ口を挟む、という中華意識丸出しである。

 またある民主党議員から「このイベント(センゲ首相講演会)の詳細を教えてくれ」と長尾議員に問合せがあった。長尾議員は、てっきり講演会に興味を持ってくれたと思い込み、「ご参加いただけますか」と訊ねた。

 しかしその議員は固い態度のまま、「いや、主催は誰だ? 世話人はこれだけか? 議運(議院運営委員会)の許可は取ったのか?」と、取り調べのように質問してくる。

 この議員は当時の輿石東(こしいし・あずま)民主党幹事長に近い筋だった。輿石氏が山梨県教職員組合で、まるで北朝鮮のような全体主義的動員体制を作って票を集めてきた様子は[d]でも紹介したが、センゲ首相の講演会をなんとか潰そうと、中国から輿石幹事長経由で干渉が入ったに違いない。

■5.中国から逃げ出す政府高官たち

 しかし、「驕(おご)れる者久しからず」という言葉通り、中国の最盛期は過ぎつつある。チベットやウイグルでの独立闘争、共産党政府の暴政、収賄、環境破壊に怒る中国人自身の暴動、長年の一人っ子政策による労働人口の頭打ちと賃金高騰、外国企業の撤退、、、。

 長尾議員は「中国が国としてもどうにもならない状態になっていることに気づいている中国人は決して少なくありません」と言う。

 実際に共産党幹部の海外逃亡が続いている。政府系シンクタンク、中国社会科学院の調べによると、1990年代半ば以降、海外に逃亡した公務員、国有企業の幹部は1万6千人、彼らが持ち出した金額は8千億元(12兆8千万円)を上回ると推定されている。

 これらの多くは、汚職を摘発されて逃亡した官僚などだが、汚職の摘発自体が中国政府内部の権力闘争である。習近平派は今は権力を握っているから摘発側に回っているが、政権を失えばたちまち摘発される側となる。

 したがって、政府高官たちは、いつでも高飛びができるように、海外に資産を隠し、子供たちを海外に留学させている。

 各国要人や富豪の海外隠し財産を追求している国際調査ジャーナリスト連合(ICIJ)は2014年1月に、次のような発表をした。

【タックスヘブンとして知られる英領バージン諸島にある銀行口座のリストを入手した。2万以上の顧客が掲載されているが、そのなかには、中国要人と企業経営者が多数含まれている。海外に隠匿された資金の総額は不明だが、1兆ドルから4兆ドル(約416兆円)に上る可能性がある。】

■6.在留邦人13万人をいかに救出するか

 いずれにせよ、政府高官の多くが沈み行く船から逃げ出す準備をしている。それに比べて、中国に滞在している邦人13万人、進出している日本企業3万社はどうか。

 中国では環境破壊や汚職に怒って、年間20万件近い暴動が起きていると言われている。これを押さえつけているのが、全国で150万人にのぼる人民武装警察である。こうした治安維持にあたる警察関連の予算は1110億ドル(約13兆円)に達し、公称国防費1060億ドルを超えている。[4]

 2012(平成24)年の尖閣諸島国有化に端を発した反日暴動で、日本国民は中国の恐ろしさを知ったが、あれはまだ共産党政府が裏で糸を引いていたため、物的損害だけで済んだ。しかし、中国政府が抑えられなくなった時、暴徒と化した民衆が日本企業、日本人を襲うだろう。

 そして派閥闘争が発展して軍隊や警察どうしが戦う内戦状態が起こるだろう。内戦時に、相手側に国際的な非難を浴びせるために、さも相手側の犯行であるように装って外国人を残虐に殺害するというのは、清朝、国民党、共産党と歴代の中国政府がやってきた事だ。[e]

 こうした有事の際に、日本政府は邦人13万人をどう救出するのか。長尾議員は次のような机上計算をしている。

 まず海上自衛隊、航空自衛隊の輸送機、輸送艦船から、「C1輸送機 収容人数60人x25機配備=1500人」「おおすみ方輸送艦 収容人数1000人x3隻配備=3000人」等々を合計すると、1回あたり7869人を運べる。これを16往復すれば、13万人の救出が可能になると計算できる。

「どうか笑わないでいただきたいと思います。実際には、このような仮設さえ一度も行われていないのですから」と長尾議員は実態を暴露する。

■7.邦人救出を妨げる法の縛り

 過去、我が国は何度も海外在留邦人救出の瀬戸際に立った。

 1997(平成9)年、カンボジアで内戦が起こったときに、当時の橋本首相は万一の際の邦人救出のために、航空自衛隊のC-130輸送機を隣国のタイに進出させた。翌1998(平成10)年4月のインドネシア暴動では、同6機をシンガポールに待機させた。この時の暴動のターゲットは華僑であり、幸いにも邦人が襲われることはなかった。

 しかし、こんな事態でも、当時の民主党幹事長代理・鳩山由紀夫は「民間機での対処が可能だ」と批判し、なおかつ邦人輸送のための艦船派遣を禁じていた自衛隊法の改正に釘を刺した。[f]

 一昨年2013(平成年1月16日にアルジェリア東南部で起きたイスラム武装勢力では人質に取られた日本人10名が犠牲となったが、対応にあたった外務大臣政務官・城内実衆議院議員は、自衛隊法の縛りで国外での自動車の使用すらできないことに歯噛みをしたそうだ。

 この点は、同年の臨時国会において、航空機と船舶に加えて、車両も使えるようになり、ようやく空港や港湾から離れた地点でも自衛隊が救出にいけるようになった。これも通常国会で提出されていた改正案が、野党の国会対策で先送りにされていたものだ。

 しかし、いまだに携行武器が拳銃や小銃に限定されているため、ショットガンやマシンガン程度で軽武装した中国の武装警察が襲ってきたら、たちまち、やられてしまう可能性が高い。

■8.「長尾さんには民主党は似合いません」

 このように「冷酷なハト派」民主党はチベット人弾圧にも海外邦人救出にも関心を示さない。そのために奔走する人々の足を引っ張りさえもする。長尾議員はこう述べる。

【ダライ・ラマ法王後援会では光栄にも司会を仰せつかりましたが、「あらゆる面で中国に配慮する」と政府方針を崩さなかった民主党内において、その後、私はますます居所を失っていくことになり、11月16日の離党に至るのです。】

 離党後、長尾氏は平成24(2012)年12月の選挙に落選、しかし、安倍晋三・自民党総裁から「長尾さんには民主党は似合いません」と言われて自民党に入り、昨平成26(2014)年12月の総選挙で衆議院議員に返り咲いた。

 チベットでの弾圧に反対することと、中国在留邦人の救出を考えるということの根は同じである。政治が人間の幸福を追求する営みであるとしたら、現代社会においてはチベット弾圧を非難し、一朝事ある時の在留邦人の救出を考えるのが、真の政治家だろう。

 チベット人弾圧や在留邦人救出よりも「中国への配慮」を優先する民主党には、真の政治家が似合わないのは当然である。

楊海英著『ジェノサイドと文化大革命 内モンゴルの民族問題』を読んで

一読して、漢民族がエスニッククレンジング(民族浄化)を他民族にしたということです。南京虐殺で日本軍がした無道なこととか言っていますが日本人に性的虐待などをする文化はありません。デッチ上げですから彼ら自身がやってきたことを日本軍のせいにしているだけです。多分モンゴル族だけでなく、チベット族、ウイグル族にも同じことをしたと思います。後に胡錦濤がチベット族弾圧を、王楽泉がウイグル族弾圧をしました。中国人の弾圧と言う意味では蒋介石が台湾で起こした2.28事件も同じ構図です。何が民族の団結だと言いたい。彼らは口先だけです。この本を読んで多くの日本人も目覚めてほしい。中国人の言うことは嘘が多いということを。この本は税込で6480円もするので柏図書館で購入して戴きました。450頁の大作で読むのが大変でしたが、皆様も図書館での購入を是非して戴き、お読み願いたく。

長野朗は1930年代、『支那30年』でアメリカは金の力、ロシア人は軍事力、中国は人口の力と喝破しました。中国は先ず人を合法、非合法に拘わらず入れていき、その土地を乗っ取ります。これは ラルフ・タウンゼント( 米国上海副領事)の『暗黒大陸中国の真実』(1933年)にも描かれています。下はその纏め。()は小生の意見。

話しは変わって、『熬包相会』というモンゴル族の民謡があり、小生は好きでしたが・・・。残念乍ら中国語です。

  1. 人口150万人中、虐殺された数は2万~30万人と幅がある。大躍進~文化大革命中、中国全土で亡くなった方は2000万~1億人と幅があるのと同じ。(でも他民族に殺されるのは意味合いが違う。ナチスと同じジェノサイドである。)
  2. 革命を手引きするのは身内。文化大革命の先鞭をつけたモンゴルでもモンゴル人が、第二次大戦中のユダヤ人虐殺でもユダヤ人が手を貸した。言葉の問題があるため。(戦後の日本でGHQの手先になった東大教授のようなものである。)
  3. 何故モンゴル人を虐殺したか。当時はソ連修正主義との関係がおかしくなり、国境の緩衝地帯にしたかったこと。そのため、裏切りを恐れた。
  4. 残虐な刑罰を課した。性的な侮辱もある。(自分たちがやったことを南京虐殺とか言って喧伝しているが日本人には彼らのような阿漕なことをする文化、伝統はない。)
  5. モンゴル人は遊牧民だが、彼らの牧草地を漢人のものにして開墾させた。
  6. 強制移住もさせた。「共産党政府側から相次いで出された公文書や政策に呼応して、人民公社や生産大隊のような行政の末端レべルに至るまで、中国人たちは積極的に大量段戮に参加した。内モンゴル人民革命委員会が一九六九年三月七日に 許可して転送したウラーンチャブ盟における経験がその実態を如実にしめしている。ウラーンチャブ盟の経験によると、中国人たちはまずウラーンフーが過去に土地改革運動中に実施した「モンゴル族の地主と富農は一段と降格して区分」する政策の見直しから着手していることがわかる。農村と牧畜地域において、より多くのモンゴル人たちを搾取階級と認定することで虐殺の正統な理由を発見できたのである。貧下中農毛沢東思想宣伝隊はこのときに威力を発揮し、涎がでるほどに欲しかったモンゴル人の草原をついに手に入れことができたのである。こうした事実からみると、中国の文化大革命とモンゴル人大量殺戮は、実は中国人農民に多大な現実的な利益を確保するために発動された運動であると指摘できるのではなかろうか。」P.232。(これはアメリカのアンドリュー・ジャクソン第7代大統領がインデイアンを虐殺、強制移住させたのと同じ。)
  7. 少数民族は何の価値もない動物同然に見ている。P.249。
  8. 虐殺は今後も起こりうる。
  9. モンゴル語は畜生の言葉。P.310。

10.「遼寧省は多民族混住地域である。先住民はモンゴル人と満洲人で、中国人はあとから、近代に入ってから入植 してきた。中国人たちは満洲地域においても草原を開墾して農耕地にしたことで、民族間に激しい対立が生じた。 日本が満洲国を建立すると、満洲人とモンゴル人たちは日本の力を利用して、中国人の侵略を抑えようとした。 中国人たちは自身があとからの侵略者であるにもかかわらず、モンゴル人と満洲人を「対日協力者」とみなした。」P.318。

11.漢人女性兵士によるモンゴル人への性的虐待。「彼女は楊貴鱗と王継春、孫万巨などとともに、批判闘争を激化させていった。呉萍と李鈞、高元首たちを吊る しあげた大会で、彼女は王継春たちと一緒に「ジエット機式」に立たされていた李に五〇〇ワットの電 球をあてた。李鈞は電球に焼かれて汗びっしょりになり、何回も立たされていた椅子の上から落ちて気を失った。ラワ副部長を闘争するときに、彼女は孫万巨とともに、卑猥なことをして侮辱し、それで以て楽しんでいた。……」P.368.

12.嘘の自白の強要。P.410。

13.「暴力は「砲撃でも放火でもいい」 「内モンゴル人民革命党員が中国人たちを殺そうとしている」との「証言」が得られたことで、中国人たちの モンゴル人に対する「正当な反撃の理由」も成立した。約一週間後の一九六九年一月八日四家堯人民公杜は常務委員会拡大公議を開いた。革命委員会の主任兼書記の白高才はつぎのように指示した。

今回の会議は白兵戦だ。銃剣に血を浴びせよう。同志の皆さんは大胆にやってください。特に敵との戦いでは大胆にやってください。砲撃でも放火でもいい。壁新聞で世論を味方にしよう。内モンコル人民革命党員たちを殲滅するという人民の戦争を成功させよう。

このように、中国共産党の書記は正面から中国人たちに暴力の発動を呼びかけている。「今回の会議は白兵戦だ。銃剣に血を浴びせよう」との表現は公社主任の白高才の発明ではない。これは、内モンゴル自治区革命委員会主任で、最高権力者の滕海清将軍が一九六八年五月一一八日に、自治区南部の集寧市を訪れて演説したときに全自治区を震撼させた表現である(宋永毅2006;楊2008:434)。滕海清の演説がいかに自治区の末端レベルにまで浸透していたかをしめす証拠である。自治区の津々浦々に至るまで、中国政府と滕海清の忠実な部下たちはこの命令にしたがって銃剣をモンゴル人に向けていったのである。」P.411。

14.人道に対する罪で国連人権委員会に訴える時期が来ている。P.415。

mongolian

 

 

 

 

 

 

 

 

内容紹介(抜粋)

レイプなど性的な侮辱

モンゴル人たちを拷問にかけている間、多くの女性たちがレイプされた。たとえば、スニト左旗では中国人の下放青年たちがモンゴル人女性を「人民大衆による独裁」(群衆専政)にかけ、目隠しをしてからくりかえし強姦した。その結果、何人もの女性が妊娠させられた。正蘭旗では、アディヤというニ〇代のモンゴル人女性が中国人にレイプされ、その上、長期間リンチされつづけた。

スニト右旗バヤンノール公社に住むある遊牧民は、一九六九年六月二七日にひとりで政府にやってきて直訴した。彼によると、中華人民共和国の成立前には国民党軍に家族六人のうちの三人を殺害されたという。そのため、何があっても毛沢東と共産党についていこうと決心していた。ところが、中国人たちは彼を裸にしてリンチし、そして一八か、一九歳の少女たちにみせつけながら、「毛主席に謝罪しろ」と強要した。

またスニト右旗バヤンノール公社ドントウス大隊に注むトンデゲはつぎのように政府に訴えた。一九六八年一一月一○日、 トンデゲは「政治学習班」に入れられ、髪を切られた上、同じ「政治学習班」にいたバトトクト、デレゲルらの髪とまぜて女性の陰部の形に編まれて、侮辱された。そして、ここでもまた「毛主席への謝罪」を何度ももとめられた。

同じスニト右旗バヤンジュリへ公社パヤンタラ生産大隊の遊牧民ハルラーは一家四人全員が「内モンゴル人民革命党員」とされた。中国人たちは彼らを裸にして、息子とその母親、義父と嫁が性行為をするよう強制した。 侮辱に耐えられずに、義父は井戸に身投げして自殺し、嫁は首吊り自殺し、息子は刀で自害した。そして、残された母親も狂った。

東ウジムチン旗ボラク公社では、革命的な中国人大衆が老齢のツエベクジャブ夫婦とその息子夫婦を逮捕し、群衆の前で息子とその母親、義父とその嫁とが性行為をするよう強制した。一家が抗議したところ、中国人大衆 はその母親を地面に抑えて、息子を体の上に乗せた。そして、義父と嫁をも同じ方法で侮辱した。中国人たちはそのような蛮行をやりながら、「恥ずかしいのか。お前らモンゴル人は昔からこんなものだろう」といいながら 笑っていた。ツエべクジャブの夫人は家に帰ってまもなく自殺した。

ウラーンチヤプ盟の実例

ウラーンチャブ盟の犠牲者は死者が一六八六人で、負傷者は八六二八人で、身体に障害が残った者は四六五〇人に達する。虐殺がおこなわれていた時期のウラーンチャブ盟の人口は不明であるが、一九七〇年代初期には約五万七〇〇〇人のモンゴル人と二七〇万人の中国人が住んでいた。一九六七年における人口構成比もさほど変わらないだろう。

ウラーンチャブ盟のチャハル右翼後旗では二〇〇人のモンゴル人が殺害された。この旗のウラーンハダ公社サイハンタラ生産大隊では、「解放軍毛沢東思想宣伝隊」や中国人の「貧下中農毛沢東思想宣伝隊」の指揮下で、一八日間で一八人が殺され、三三人が重傷を負った。平均して、毎日ひとりのモンゴル人が殺害されていたのである。このような残虐な殺戮をはたらいた「解放軍毛沢東思想宣伝隊」や「貧下中農毛沢東思想宣伝隊」のメンバーたちは例外なく内モンゴルの外からやってきた中国人たちである。また、中国人の下放青年や、盲流と呼ばれる不良グループ、つまり目的もなく放浪していた中国人たちも積極的に加わっていたのである。

ウラーンチャブ盟盟政府計画委員会のビリクトは、中国人たちにペンチで歯をむりやりに抜かれた上、鼻と舌も切除された。ビリク卜は結局敗血症で亡くなった。

チャハル右翼前旗煤窑公社バャン生産大隊には合計三七戸、一四六人のモンゴル人が住んでいた。そのうちの八八人が「内モンゴル人民革命党員」とされ、一七人が殺害された。同旗のサイハンウス公社の三四戸一五五人 の住民のうち、ニ〇歳以上のモンゴル人は全員が「民族分裂主義者」とされ、一〇人が殺害された。

四子王旗チョクト公社の治安保衛主任のモンゴル人を殺害したあと、中国人たちは彼の遺体を隠して、「モンゴル人民共和国へ逃亡した」と発表し、その家族をも捕まえてリンチを加えた。しばらく経ってから、殺害されたモンゴル人の遺体が雪の中からみつかったが、野犬に食われていた。

性的な虐待

ウラーンチャブ盟共産党学校の教育長ルーイは、生殖器に紐をつけられて、むりやりに引っ張られて、完全にちぎられた。

集寧市熔接工場の書記で、女性の韓淑英は裸にされてから、陰部の毛をぺンチでむしりとられた。

四子王旗バャンオボー公社では、公社書記のノルブジャムソが郵便局につとめる中国人の潘秀玉によって刀で背中を大きく切られた。そして、傷口には大量の塩を入れられ、さらに体中を鉄のアイロンで痛めつけられた。 ノルブジャムソが殺害されたあと、その夫人のドルジソーは中国人たちに何回もレイブされた。そして、熱く焼いた鉄棒を陰部に入れられて、殺害された。二人の間に生まれた五力月未満の赤ん坊も面倒をみる人がいなく、凍死した。

同じ四子王旗バャンオボー公社では、公社の秘書をやっていた若いモンゴル人夫婦は刀で体中を傷つけられてから、傷口に塩を撒かれた。夫の死後には夫人が中国人たちにレイブされ、陰部が火で焼かれた。夫人の死後、残された赤ん坊はまだ母親の死を知らずに、その乳房を吸っていた。

卓資県では一万三〇〇〇人もの人々が「内モンゴル人民革命党員」とされ、九五人が殺害された。残忍な虐待方法は一七〇種以上になり、多くのモンゴル人女性たちがレイプされた。馬連壩生産大隊の書記の夫人は四〇人にくりかえし強姦された。劉光窖生産大隊でも若いモンゴル人女性がレイプされた。

涼威県人民代表大会の主任ナムスライが中国人たちに殺害されてから、その夫人も井戸に身投げして自殺した。 残された一六歳の娘はドータグラという。一九六九年五月以降に、彼女もモンゴル人たちが作った「寡婦上訪団」に加わってフフホト市へ上告に来ていた。しかし、中国人たちは「寡婦上訪団の中に娘がいる」といって彼女の人権を侵害し、人格を侮辱していた。

強制移住

強制移住はだいたい夜に人民解放軍の兵士たちが突然やってきて命令を出して、モンゴル人全員をトラックに乗せて人民公社の本部などにむりやりに連れて行かれる、という方法をとっていた。そして、人民公社の本部で 初めて強制移住が伝えられて、すぐに実施に移されていた。簡単な生活用品以外は何ももっていけなかった。家畜や家屋、そして家財道具類などはすべて放棄せざるを得なかった。ウラーンチヤブ盟だけでも、モンゴル人たちの財産の損失額は四二万元に達する。

チヤハル右翼後旗でもモンゴル人民共和国に近いところに住んでいたモンゴル人七五戸が内地へ強制移住させられた。その代わりに農耕地帯の中国人たちが彼らの草原に入って住み着いた。

四子王旗のバヤンオボー公社ダライ生産大隊には合計ニ三戸のモンゴル人がいた。そのうちのニ一戸が一九六九年九月に強制移住させられた。彼らが去ったあとには、五七戸の中国人たちが人植した。

イケジョー盟の事例―政府の内部資料が伝える虐殺の実態

人民解放軍の兵士たちはモンゴル人を迫害するのに五○種以上の刑罰を用いた。具体的には以下のような残虐行為が横行していた。

一、棍棒を燃やして真赤にしてから女性の陰部や腹部を焼いた。被害にあった女性は陰部が破壊されて男性か女性かの区別もつかなくなった。腹部が破られて中の腸もみえるように大きな怪我を負わせた。

ニ、牛皮で作った鞭の先に鉄線をつけて人を殴る。打たれる度に皮膚が破れ、血が噴き出るが、少しも治療をさせない。そのように打たれた人は結局放置されて亡くなった。打たれて壁中に散った血の匂いは長く消えなかった。また、怪我した人間の傷口に塩を撒いたり、熱湯をかけたりして、殺害した事例もある。

三、太い鉄線で人間の頭部を巻いて、ペンチで徐々にきつくしていき、頭部を破裂させた事例もある。

四、「反革命的な犯人」とされるモンゴル人を燃えるストーブのすぐ傍に押さえて、長時間にわたって焼いた。真赤に焼いた鉄のショベルを人間の頭の上において焼き殺した実例がある。

五、両手を後ろ手に縛ってから梁の上から吊るして脱臼させた。また、吊るしあげた紐をナイフで切って、地面に叩き落されて死亡させた例がある。

六、モンゴル人女性を丸裸にして立たせ、牛の毛で作った太い縛を跨がせてから両側からくりかえし引っぱりあった。その結果、女性の陰部はひどく破壊された。

七、人民解放軍の兵士たちはモンゴル人の男を殺害して、その妻をくりかえしレイプした。モンゴル人少女を強姦した事例もある。

八、モンゴル人の財産を略奪した。ある中国人兵士はモンゴル人の貴重な腕時計を奪った。モンゴル人がイケジョー盟政府所在地の東勝まで追いかけてゆき、返すようにともとめたが、まったく無視された。

以上は中国共産党政府がその発行を一時的に認めていた内部資料に掲載された報告である。そのうちの一部の被害者については、私が追加調査をし、著書『墓標なき草原』(下、2009c)内で詳述している。

「人民の好い総理」周恩来と江青夫人からの激励

北京似にいる中国共産党の指導者たちは滕海清の粛清作業を強く支持していた。一九六八年ニ月一○日の深夜、「人民の好い総理」周恩来をはじめ、毛沢東夫人の江青と情報機関のボス康生らが滕海清を北京に呼んで接見した(楊2009a:l189-197)。周恩来は開口一番に、「ウラーンフーを批判闘争したか」と尋ねている。内モンゴル自治区では新聞紙上で名指して批判するキャンぺーンを開始しているが、全国紙にはまだ登場させていない、と滕海清は返事する。すると周恩来は「いずれ適当な時期に群衆にウラーンフーを渡して批判闘争させていい」とはっきりと指示している。周恩來の「人民の良い総理」というイメージは共産党によって作られたものである。実際の周恩来は卑劣な人格のもち主で、常に同志を売る行為に走っていた、との証言がある(司馬璐2004:402-414)。

「人民の好い総理」はさらに「内モンゴルでウラーンフー打倒に不平不満をもつ者がいれば、そいつらのボスを捕まえなさい」と具体的で、非常に厳しい方策を伝授している。そして、康生はいう。「王再天は陰険なやつだ。私は昨年八月に資料をみたが、彼はソ連修正主義者のスパイだ」。「モンゴル族が住む地域の悪者をモンゴル人の手で抓み出させよう」と康生も巧妙な方法を滕海清に直伝している。将来、問題が発覚しても、「モンゴル人同士の軋鑠にすぎなかった」と強弁するための事前の防備策をすでに設けている。

周恩来はまた一九四六年四月三日以降の内モンゴル人民革命党は反動的な組織だ」と断じている。周恩来の発言と平行して、江青夫人は「内モンゴル人民革命党のボスを迅理しなさい」と命令している。もうひとり、 民解放軍の文化大革命運動を管轄する代理総参謀長の楊成武は「王再天とテンへは一九六三年に国境地帯で行方 不明になつたことがあり、彼らは修正主義のソ連とモンゴル人民共和国のスパイだろう」と細かい事例を証拠にあげている。

流氓政治の邪悪な言語

文革言語に冷静に対処しなければ、文革批判者たちもまた同じ思想構造に陥ってしまう危険性がある、と吉越は呼びかけている(吉越2005:30)。しかし、この限界は簡単に越えられるものではなかろう。内モンゴル自治区に現れた滕海清将軍を批判した造反派たちの文章も、ほぼそのまま中国文化大革命中の言語と表現を踏襲している。批判の手法も文化大革命的であった。それでも、文化大革命は発動された群衆たちの内部からも疑問が突きつけられていた事実に注視する必要はあろう。

滕海清将軍の講話からマルクスやレーニン、スターリンの思想を抽出しようという試みはまったく無意味である。彼は確固たる思想を吐露していたというよりも、むしろ「現代のレーニン」だともちあげていた毛沢東の暴力的な闘争方式の方を信じていたにちがいない。中国人の社会主義思想は中味が貧弱だが、攻撃性は突出している。しかし、だからといって一九六〇年代におけるモンゴル人大量虐殺を単なる文化大革命中の暴力の結果だと 解釈してはならない。あるいは吉越が主張する「邪悪な政治言語」による煽動の結末だと理解しても物足りない。

滕海清将軍のような共産党の首長たちも、一般の中国人たちが夷狄たる北アジアの少数民族をどうみていたか、という大衆的な歴史観を引きずっていたのである。換言すれば、彼らは共産主義者だと標榜しながらも、実際のところは、中国人固有の夷狄観にもとづいて熱心に虐殺をはたらいていたのである。

たとえば、滕海清の部下のひとりで、ジェリム盟軍分区の司令官趙玉温は、「モンゴル的な心情(民族情緒)の強い人たちはしよっちゅう、私たちはチンギス-ハーンの子孫だとか、内外モンゴルの統一とか、モンゴル族の風俗習慣だとか云々する」と話していた。中国人たちには、モンゴル人のこうした当たり前の自己主張はやはり異質的にみえただろう。そして、その異貫性はときとしてイデオロギー的に「民族分裂主義一だと解釈され、排除の対象とされてきたのである。

中国による档案の改竄

档案と聞くと、「オリジナル資料だ」と多くの純粋な日本人研究者は簡単に信じてしまう弱みがある。しかし、現代中国が編集した档案は改竄を経ているという事実に私たちは直面しなければならない。中国政府は過去に少数民族に民族自決権の付与を約束していたという歴史を極力抹消したいという気もちが強い。それでも、才リジナルを焚書せずにタィプし直しただけの改竄だったため、その稚拙な行為が発覚しても、中国共産党に感謝しなければならないかもしれない。

内モンゴル自治区における文化大革命期の重要な档案(公文書)は一九八一年六月に中共中央紀律検査委員会によって北京へ運ばれてしまい、モンゴル人大量虐殺事件の善後処理に使うことも不可能となった(啓之 2010:522)。公文書を隠蔽し、あるいは改竄している国柄なので、少数民族の歴史研究を構築するのには独自に資料収集をつづける努力が必要であろう。

 

 

 

 

 

2/12日経ビジネスオンライン 福島香織『習近平の軍隊、秋にお披露目 日本を挑発、「自衛隊撃滅」を指示』について

習の焦りが目に見えるようです。毛や鄧のように軍の経験がないため、自分にカリスマ性がないことを自覚しているのでしょう。また、江や胡のように一期目は権力闘争で、自分の力を削がれるのを嫌っていると思われます。胡錦濤は江沢民と刺し違えて、習に全権移管しましたが大甘です。中国人は裏切るのが当たり前なのに。やがて江だけでなく胡に対しても厳しい追及をするようになるでしょう。中国人・韓国人に恩義と言う言葉はありませんから。

指桑罵槐、殺鶏嚇猴の類で日本との関係を良くしようとしていた団派、胡錦濤を追い込むための手段かもしれません。習としても現実に戦争して負けたらパージされるでしょうからそんなことはしないと思います。自衛隊殲滅とか言っていますが現段階では「張り子の虎」です。ただ長期戦になれば物量で中国に負けるでしょう。

2/12日経「習が9月訪米」の記事が出ていましたが、こちらが曲者です。弱腰オバマの足元を見て吹っかけてくるかもしれません。ウクライナがロシアの思い通りに展開しているのをみて、アメリカに「尖閣に手を出すな」とでもいうのかもしれません。オバマは嘘つき大統領とアメリカで言われているくらい信用がなりません。

2/13宮崎メルマガによれば、「台湾でも外省人が10月に「抗日戦争勝利70周年記念軍事パレード」を北京に呼応してやるかも」と載っていました。国際的な陰謀が進んでいる可能性もあります。2/12ZAKZAKのケントギルバート氏の記事のように国際宣伝していく必要があります。でも外省人と言うのは中国人そのものですね。

http://www.zakzak.co.jp/society/domestic/news/20150212/dms1502121550003-n2.htm

 

記事

習近平政権は今年の「抗日戦勝記念70周年」の9月3日に、大閲兵式をやるらしい。すでに全人代常務委の承認も得ているらしい。新中国になってから、大閲兵式はこれまで14回やっているが、抗日戦勝記念日にやるのは初めてである。普通は国慶節(建国記念日、10月1日)にやるのであって、文革後は1984年の国慶節に鄧小平が25年ぶりに大閲兵式を復活させたあと、建国50周年の1999年、60周年の2009年に江沢民政権、胡錦濤政権がそれぞれ行ってきた。これまでの例にのっとって考えれば、習近平政権が大閲兵式を行うのは2019年の国慶節のはずである。それをこの抗日戦勝記念70周年の9月3日に行うということはどういうことなのか。ちょっと考えてみたい。

「早くも軍を掌握」を誇示か

 そもそも9月3日を国定記念日に制定したのは2014年、習近平政権である。習近平政権は2014年だけで、日中戦争に関わる記念日を3つも作った。9月3日の抗日戦争勝利記念日、9月30日の烈士記念日、12月3日の南京大虐殺犠牲者国家哀悼日。烈士記念日についてはアヘン戦争以降の民族と国家のために犠牲になった烈士全体をたたえる記念日らしいが、事実上、日中戦争で戦って散った兵士たちを指している。抗日戦争勝利が共産党の執政党たる正統性の根拠になっているので、党の求心力を高めるための記念日設定だといえる。だが、習近平はその自分で決めた記念日に、初めての大閲兵式を執り行うとは、なんとも不敵ではないか。しかも習近平は政権の座についてからわずか3年目である。江沢民政権も胡錦濤政権も大閲兵式は政権二期目に入ってからだった。一般に政権一期目は、権力闘争に明け暮れており、二期目になって漸く軍を把握できたという自信が出来て、初めて閲兵式を行うものなのだ。とすると、習近平は早くも軍を掌握したという自信があるということになる。

 興味深いのは、2月2日の新華社記者と解放軍報記者の連名での署名記事「政治建軍の時代新編-『新たな形成のもとでの軍隊政治工作に関する若干の問題に対する決定』誕生記」だ。

 4000字ほどの記事だが、そこで突出しているのは軍の統帥権が習近平にあることの強調である。「軍隊はいかなる時のいかなる状況であっても、党中央と中央軍事委と習主席の指揮に従わねばならない」。はっきりと習近平主席の指揮と、言い切った。普通なら習近平同志を中心とする党中央とか、そういう表現である。「軍隊政治工作」に関する決定文書が出されたのは1999年以来。胡錦濤政権はこの種の決定を出していない。その理由は、胡錦濤は実質、軍が把握できていなかったからだ。軍の実権は江沢民派閥の徐才厚、郭伯雄といった中央軍事副主席制服組が握っており、中央軍事委主席というトップの肩書をもっていても胡錦濤は中央軍事委の会議の席で人形のように座っているしかなかった、という。

習近平は昨年、この胡錦濤も歯がたたなかった徐才厚を汚職キャンペーンで追い詰め、党籍剥奪に成功、徐を含めた16人の退役・現役将校を解放軍から完全に排除した。また郭伯雄も事実上失脚し、拘束中と伝えられている。その後、2014年暮れから、軍の「大洗牌」と呼ばれる大規模人事異動を敢行、七大軍区のうち北京、瀋陽、済南、南京、蘭州の五軍区の指令をすげ替え、全18集団軍のうち五つの集団軍の軍長をすげ替え、徐才厚の古巣であった瀋陽軍区第16軍、済南軍区第26集団軍の両軍長もすげ替えられた。昨年7月には、習近平に忠実な戚建国・副総参謀長、王教成・瀋陽軍区指令、褚益民・瀋陽軍区政治委員、魏亮・広州軍区政治委員が上将に抜擢され、次の第19回党大会での中央軍事委人事に向けた準備がなされている。この人事は汚職摘発、規律違反摘発と連動しており、その追求の徹底ぶりは自殺者も出しているほどだ。

大閲兵式で日本を挑発

 人事だけでなく、軍の制度改革にも着手しようとしている。例えば、軍銜年齢制限を復活し、少将は55歳以下にするなど、全体に若返りを進めようとしている。将官の位が事実上売買の対象となり軍の腐敗の温床となっていた状況を、将官の数を制限することで是正しようという。また、解放軍の任務に国家安全およびインターネット安全とコントロールが新しい「軍隊基層建設綱要」に加わり、国内テロやサイバーテロに適応できる情報局部戦能力の向上を目指す、ともしている。

 習近平は国家安全委員会の主席でもあるので、国内外含めた国家安全の実戦、情報戦にかかわるすべての指揮権は習近平に集まる。解放軍は党の軍隊から、習近平の軍隊になったという声もささやかれるほど、露骨な軍権集中が進められているようだ。

 そして秋にはこの習近平の軍隊を「大閲兵式」と言う形で国内外にお披露目しよう、というわけだ。

 この大閲兵式がどれほどのものか、まだ具体的な話はでていないのだが、そこに込められている狙いは、従来の大閲兵式とはずいぶん違うようである。一般的には、大閲兵式の目的は国威発揚、軍威発揚による党の求心力強化である。同時に軍の掌握ぶりを国内外に喧伝する目的もある。だが、今回の大閲兵式は、日本に向けた牽制、あるいは挑発が大きな狙いの一つといわれている。

 人民日報は大閲兵式の目的を以下の四つとしている。【1】中国の軍事実力をお披露目する。【2】日本を震えあがらせて、世界に向けて戦後の世界秩序を中国が維持していこうという固い決心を見せる。【3】国民に自国の軍容、軍心、軍貌、軍備を見せて自信と誇りを与える。【4】党と人民が解放軍を掌握していることを見せて腐敗分子に紀律検査委や司法以外の方法でも彼らを罰する実力があることを示す。

中台統一を邪魔する日本の存在

 シンガポール中文・紙聯合早報の論評記事がこうも指摘していた。「特に日本右翼勢力に、中国の“筋肉を見せつけ”安倍晋三首相に歴史を正視させねばならない」。さらにいえば、台湾へのアプローチもあるという。習近平の政治目標に、中台統一があるが、現状では台湾世論が反馬英九政権、反中国共産党に傾いており、いわゆる経済緊密化によって台湾を取り込むという従来の方法が順調とはいいがたい。

 この中国側の中台統一路線を邪魔するのは、日本の存在である。「両岸(中台)の最大の対立点は、抗日史実に対する評価と分けることのできない内戦のわだかまりが解けないことである」と同紙は指摘する。「例えば、国民党の張霊甫将軍は‘抗日名将’と呼んでよいかという議論が中国で起きた」。張霊甫は、日本軍との戦いでは常勝将軍であったが、その後の国共内戦で戦死している。中国としては「国民党軍(台湾軍)とともに、抗戦勝利を紀念するとしたら話は簡単になる」と考えるわけだ。台湾の国民党議員からもそういう提案が出ているらしい。ひょっとすると中台の抗日老兵士が一緒に参加する場面があるやもしれない。

 日本を震えあがらせるほどの軍事実力を大閲兵式で果たしてお披露目できるのか、と言う疑問についてだが、最近のジェーン・ディフェンス・ウィークリーによれば、中国海軍の実力は数年内に日本を超えて、アジア最強になるという話も出ている。今年は、最初の国産重型四代戦闘機J-20が実戦配備される予定らしく、また空母・遼寧も戦闘群作戦能力を年内に完成させるという予測も出ている。

 J-20戦闘機のほか、運20大型輸送機、対衛星ミサイル、翼龍無人機、レーザー兵器、東風41号ミサイルなどがお披露目される、と香港紙などは報じている。

東シナ海で自衛隊撃滅」を指示

 自衛隊OBの方に聞くと、たいてい中国の軍事作戦能力については評価がかなり低い。確かに、毎晩夕方5時から将校宿舎では茅台酒臭が漂うとか、空軍の中将が軍用機を私用に使って香港にまで買い物にいくとか、一階級昇進するときに、上層部に賄賂が支払われるのが常態だとか、中将クラスの階級は現金で支払うと嵩張るし足がつくので、ダイヤモンドなどが使われるとか、軍の腐敗ぶりを聞くにつけ、そんな軍隊でまっとうに戦えるはずがないとも思う。そういう現状を憂い、習近平は「戦える軍隊」をスローガンに、苛烈な軍の汚職退治を昨年展開したわけだが、果たして2年程度で、本当に「戦える軍隊」になるものだろうか。むしろ、現在の容赦ない汚職退治と露骨な人事が、軍内部の委縮や反感を招くこともあるのではないだろうか。

 だが、2014年に米海軍第七艦隊諜報情報作戦局の副参謀長だったジェームズ・ファネル大佐が「中国人民解放軍は、日本に対して東シナ海で自衛隊を撃滅し、釣魚島を奪取する能力を持たねばならないと、新たな指示を受けている」と発言し物議をかもしていた。ボイス・オブ・アメリカによれば、彼は最近副参謀長職をとかれて退役したそうだが、この発言が原因であったのではないかと言われている。

 そう考えると、「習近平の軍隊」は意外に早く強くなるかもしれない。「中国脅威論」を煽るわけではないが、習近平政権初の大閲兵式はしっかりと観察する必要がありそうだ。

 

2/5号 週刊新潮 櫻井よしこ『報道精神の対極にある朝日の体質』記事について

 

左翼プロパガンダ新聞と言うのは始末に負えませんね。植村隆元記者だけでなく裏で新聞社が動いていると思います。朝日は昨年70万部も部数を減らして680万部になった(押紙があるので実質は540万部くらいでは)との記事をネットで読みました。植村元記者から櫻井よしこ氏と新潮社が名誉棄損で訴えられる以前に西岡力教授と文芸春秋社も同じように訴えられていました。西岡氏は「言論を生業としているのだから司法の場でなく言論の場で戦うべき」と言ってましたが、正しくそのとおりです。植村と言う男は卑怯者の代名詞みたいなものです。戦後の日本はこういう男を大量生産してきました。潔さの欠片もない哀れな男です。

しかし、日本も経済成長の陰に精神の高貴さを置き去りにしてきました。出世のために国の名誉を売っても平気と言うのでは。佐藤優が本の中で「官僚にとって出世は職業的良心」という言い方をしていましたが違うのではと感じます。「出世は公益の手段」というなら分かりますが。日本の社会が腐ってきている気がします。明治の英傑は私益のためには動きませんでした。欧米列強の侵略を防ぎ、強くて豊かな社会を作ろうと命懸けで戦い、相手とやり合いました。そんな気概を持った男・女がいなくなり、小手先の理屈だけ通用すれば良いと思うようになってきているのではと危惧します。

記事

「朝日新聞」の記者有志が『朝日新聞 日本型組織の崩壊』(文春新書)を上梓した。有志記者らは、朝日の一連の不祥事を批判した競合紙や雑誌についてこう書いている。

「朝日新聞社を内部から観察していると、『反日』『左翼』といった右派陣営からの紋切り型の批判は、まったく的外れだ」「朝日の不祥事の原因は左翼的イデオロギーのせいだ、と条件反射的に非難する右派メディアや保守系識者の論調は、まったく事実を見ていない」

そうなのか。私も含めて朝日を批判してきた言論人は「まったく事実を見ていな」かったのか。

有志記者はこうも書いている。

「社全体として見れば、個々の記者レベルでは、改憲や増税の必要性を認める者のほうが、もはや多数派である

私は思わず余白に書き込んだ。「それなら社説、天声人語を含めて紙面を変えて見せてよ」。

朝日記者の多数が憲法改正の必要性を認めているのであれば、今の朝日の紙面は一体どういうことか。考えとは反対の左翼的な論を張り、それを読まされる側が「朝日は左翼的だ」というのを保守の無理解と責めることに何の意味があるのか。批判する前に、まず朝日は自ら紙面を変えてみせよ。

このように本書は或る意味刺激的である。吉田調書の誤報及び吉田清治氏の慰安婦虚偽証言など、朝日が長年、問題報道を重ねてきたことについて、幾年もの間、朝日の社風の中ですごし、朝日の人事の洗礼を受け、朝日という企業の裏も表も知り尽くした数人の記者が物したのが本書である。

手練の記者の文章は読み易く、豊富な具体例が朝日の人間模様を見せてくれる。面白いが、興醒めでもある。「なんだ、批判している貴方も朝日の記者じゃないの」。そう感じる部分があったことは否めない。それでも、幾つか、朝日新聞への理解という点で非常に参考になった。

訂正よりも出世

世紀の誤報とまで批判される一連の不祥事を正すために、慰安婦報道の検証には「第三者委員会」が、吉田調書報道では「報道と人権委員会」が、これらの2つの委員会の調査を受けて、朝日新聞立て直しのために「信頼回復と再生のための委員会」が設置されたが、この種の検証さえ権力争いに利用されていると有志記者は書く。

不祥事や誤報が発覚しても、朝日は訂正したがらない。訂正記事を出せば、記者及びその上司の後のキャリア、人事と給料に直接影響してくる。そのため、両者一体となって訂正回避に力を尽す、その典型が慰安婦報道だそうだ。

97年3月31日の紙面で朝日は、吉田証言の真偽は「確認できない」と報じた。少なくともあの時点で訂正し、謝罪出来ていれば、今日の朝日への信頼失墜は避け得たかもしれない。

しかし、朝日は吉田氏の嘘を「確認できない」で済ませようとした。その心は、「これで『訂正』は回避できた、一件落着、というのが当時の関係者の暗黙の了解だった」と書いている。事実の報道や、虚偽報道の訂正よりも、出世のほうが大事だったのだ。

慰安婦報道に関して衝撃的な内部事情も描かれている。138頁、「取材班の目的は・攻め・」の部分だ。昨年8月5、6日の慰安婦報道の検証記事の当初の目的は吉田証言の信憑性を問うものではなく、「あくまで従軍慰安婦の『強制性』を検証し、『これまでの朝日の報道が間違っていなかった』ことを証明するため」だったという。

2012年12月の衆議院議員選挙を前に、日本記者クラブ主催の党首討論会で、当時まだ野党だった自民党総裁、安倍晋三氏が「朝日新聞の誤報による吉田清治という詐欺師のような男がつくった本が、まるで事実かのように」伝わっていったと、朝日を名指しで批判した。その安倍氏が首相に返り咲き、河野談話の検証が始まった。朝日はこれを朝日包囲網ととらえ、批判を座視できず正当性を示す必要が出てきた結果、「慰安婦問題取材班」が生まれたという。

驚くべき反省の無さである。道理で慰安婦報道に関して、なんの謝罪もなかったわけだ。慰安婦報道見直しのきっかけが、朝日の報道の正しさを証明して安倍政権に立ち向かうことだったという朝日流の考え方を、私たちは心に刻み込んでおきたいものだ。

本書で慰安婦問題を扱った第3章を執筆したのは辰濃哲郎氏で、執筆者中唯一人、「かつて一緒に仕事をした仲間を匿名で切り捨てることに、どうにも心の置きどころが安定しない」として実名を明かした。

23年後に告白

92年1月11日の朝刊1面トップの記事、「慰安所 軍関与示す資料」は氏が書いた。その報道に内閣外政審議室は「蜂の巣をつついたような騒ぎ」になり、動揺した宮澤喜一首相は、1月16日の訪韓で韓国側に8回も謝罪の言葉を繰り返した。

このように日本政府を追いつめた記事について、辰濃氏は書いている――

「ただし、この記事には決定的な誤りがある」。

記事の下につけた解説には、「慰安婦の約8割が朝鮮人女性」「朝鮮人女性を挺身隊の名で強制連行した。その人数は8万とも20万ともいわれる」などと書かれている。

史実を見れば、慰安婦の8割が朝鮮人女性という点も、挺身隊=慰安婦という点も、8万人或いは20万人という数字も、全て誤りだ。

辰濃氏は「この点については謝罪させていただきたい」と書いた。日本軍が慰安所設置に関与したのは、悪徳業者を取り締まるなどの目的だった。そのことを 解説せず、強制連行、挺身隊、20万人などという偽りの解説と共に紙面を構成したことがどれ程の悪印象を形成したか、朝日の慰安婦報道が日本全体をどのような不名誉の淵に突き落としたか、その負の影響を殆ど実感していないかのような書き振りで、 23年後に告白されても困るのだ。

吉田調書の報道でも、朝日人の気質を表わす、これまた仰天話が出てくる。所長命令に違反して東電社員や作業員の9割が逃げたとの報道は、調書さえ入手して読めば、偽りだとすぐにわかる。にも拘らず、なぜ朝日はこんな記事を書いたのか。「これが他の新聞や雑誌がいくら考えてもわからない『謎』だった」と有志記者は 書いたが、そのとおりだ。そして、こう説明した。

「この謎の回答は、極めてシンプルなものだった。彼らはそもそも、調書の一部を、自分たちの描くストーリーにあわせて恣意的に切り取ったつもりなどサラサラなかったのだ。要するに、彼らは『意図的に記事を加工した』という自覚さえ 持っていなかった」

これが朝日だ。本書で朝日と朝日記者をよりよく知ってほしい。