6/11NewSphere『“中国共産党は崩壊しつつある”著名学者の主張、世界的話題に5つの論拠とは』記事について

アメリカの識者も中国を視る眼が厳しくなってきているという事です。中国のことですからいろんな人に金を配って味方にして来ました。でも中国の本音がアメリカに挑戦することにあると気付いてもう味方することはできないと思い出したという事です。金融面でAIIB設立、情報面で日米にハッキングを仕掛け、軍事面では南シナ海に九段線を引き、南沙諸島に中国の軍事基地を造り、多分防空識別圏を設定するつもりでしょう。ここまで中国を増長させた責任は日米にあります。ロシアは軍事大国と言ってもGDPはアメリカの1/8しかありません。中国は全経済主体で2600兆円の負債を負っていると言われますが、GDPでは1267兆円(2014年、1人民元=19.8726円で計算)あります。中国の出してくる数字をどこまで信用して良いかわかりませんが。それで自信を付けて、アメリカに反旗を翻そうとしているのでしょう。しかし中国の同盟国というか属国は北朝鮮しかありません。その北朝鮮ですら北京に核ミサイルを向けるかもしれません。如何に人望のない国か。戦争をしなくとも中国の石油輸入(輸入量は600万バレル/日、消費量は1000万バレル/日、日本の輸入量は300万バレル/日)ですから海上輸送できなくすれば、中国は干上がってしまいます。アメリカが圧力をかければ、寄港地として貸す国もなくなるでしょう。要はオバマにその覚悟があるかどうかです。

記事

3月に発表された、中国肯定派の学者による中国崩壊論が、「今度は本物か?」と識者に衝撃を与え、ネットやメディアでいまだに話題となっている。これに対し中国メディアは、西側のご都合主義と不満を露わにしている。

◆中国通から驚きの崩壊説

ウォール・ストリート・ジャーナル紙(WSJ)に、『来る中国の崩壊』と 題した記事を寄稿したのは、ジョージワシントン大学の国際関係の教授 で、中国政策プログラムのディレクター、デービッド・シャンボー氏だ。

ウェブ誌『Slate』は、「共産党崩壊寸前」説は目新しくもないとする が、以前から中国共産党の強さと適応力を強調してきたシャンボー氏のような学者の口から、このような大胆な話が飛び出したことが、中国ウォッ チャーに驚きを与えたと述べる。皮肉にも同氏は今年1月に、中国外交学院からアメリカで2番目に影響力のある中国専門家に選ばれている。

◆5つの兆候

シャンボー氏は記事の中で、政権のぜい弱性と党の組織的弱さに関する、 次の5つの兆候を提示している。

 1.中国の経済的エリートは、共産党システム崩壊を恐れ、海外に逃げる準備をしており、子弟を海外で学ばせ、市民権獲得のため子供を米国で出産し、海外で不動産を買いあさっている。

 2.習主席は政治的抑圧を強めており、民主主義など、西側の普遍的価値を信任するものの洗い出しを行っている。

 3.多くの体制支持者でさえ、そのふりをしている。プロパガンダは力を失い、指導者は裸の王様状態だ。

4 .汚職は政府や軍のみならず、中国社会にはびこっている。腐敗撲滅運動が進められているが、汚職の摘発が権力闘争につながっており、恣意 (しい)的な選択による粛清となっている。

 5.中国経済は停滞し、「体制的なわな」にはまっており、安易な出口はない。消費は増え、官僚主義も減り、財政改革も導入したが、経済改革 は既得権益を守るグループに阻まれている。

同氏は、解決には政治改革しかないと主張。しかし、習主席が恐れている のはソ連のゴルバチョフの二の舞になることで、解放よりも、統制を強めていくだろうと見ている。

◆中国メディアはほぼ否定的

『Slate』 は、シャンボー氏の記事に対し、中国国営メディアは脳卒中寸前と表現。人民日報傘下の『Global Times』は、すでに晩年を生きる同氏が「日和見主義者の仲間に入った」とし、「威厳を持ってふるまい、意見はよく考えるべき」と助言した。同じく政府系のチャイナ・デイリーは、 同氏が中国のポジティブな側面を完全に無視し、偏見を持って見ていると し、典型的な米メディアの書き方だと批判した。

ただし、中国の改革派歴史家、チャン・リーファン氏のように、シャンボー氏の意見を理解する声もある。ドイツの報道機関DPA通信に対し、 チャン氏は「習主席は権力を集中させ、反腐敗キャンペーンを続けており、大きな危機に直面している」とし、「もし失敗すれば、結果は政権の手に負えないものとなるだろう」と述べている(Slate)。

チャイナ・デイリーに寄稿した、アメリカのICA研究所のリサーチ・ディ レクター、ダン・スタインボック氏は、経済に関しての中国崩壊論に言及。崩壊論は、西側の経済が落ち込むと出てくる話題だと述べた。崩壊論者が根拠とする経済成長の停滞は、大きな絵のなかの一部にすぎないと説明。西側の政府と中央銀行では打つ手がなくなっているが、中国にはそれは当てはまらないとし、経済崩壊はないという認識を示した。

◆崩壊なしでも困難は続く

『Slate』は、世間一般の通念として、文化大革命、天安門事件などの危機を乗り越えた共産党は、新たな困難を克服するため、強く、抜け目ないままだと述べる。同誌はシャンボー氏の警告は真実であり、香港民主化運 動や環境汚染等の、指摘されなかった問題も多くあると指摘。党は崩壊の 危機にはないが、プレッシャーはかかっている、とまとめている。

6/11・12日経ビジネスオンライン 鈴置高史『米国も今度は許す? 韓国の核武装 核抑止論が専門の矢野義昭客員教授に聞く』記事について

2日分の記事で長いので短くコメントします。

①昨日も言いました通り、日高氏によれば中国の軍事力は「張り子の虎」、プロパガンダである。惑わされてはならない。いざとなれば海上封鎖、経済制裁すれば輸出入で成り立っている中国経済は崩壊する。アメリカは中国打倒について能力の問題ではなく意思の問題。矢野氏の見方はプロパガンダに踊らされている。まあ、プロパガンダであっても、最悪を考えての準備は必要ですが。

②朝鮮人への見方はキッシンジャーは他の白人と同じ。現実主義者だから当然と言えば当然。イザベラ・バードの『朝鮮紀行』は読んでいるでしょう。今の国務省も“Korea Fatigue”になっていますし。日本人も慰安婦の嘘が分かってきて韓国がいくら謝罪を求めて来ても、国民が日本政府の謝罪を許さないでしょう。

記事

 韓国で浮上する核武装論。核抑止論が専門の矢野義昭・拓殖大学客員教授(元・陸将補)は「今度は米国も認めるかもしれない」と言う(司会は坂巻正伸・日経ビジネス副編集長)。

朴正煕時代から核開発

矢野義昭(やの・よしあき)

岐阜女子大学客員教授、日本経済大学大学院特任教授、拓殖大学客員教授、博士(安全保障、拓殖大学)。専門は核抑止論、対テロ行動、情報戦。1950年大阪市生まれ。京都大学工学部機械工学科を卒業後、京都大学文学部中国哲学史科に学士入学し卒業。1975年、陸上自衛隊幹部候補生学校入校。以来、普通科幹部として第6普通科連隊長兼美幌駐屯地司令、第一師団副師団長兼練馬駐屯地司令などを歴任。2006年小平学校副校長をもって退官(陸将補)。2014年、フランス戦争経済大学大学院において共同研究。単著に『日本はすでに北朝鮮核ミサイル200基の射程下にある』(光人社、2008年)、『核の脅威と無防備国家日本』(光人社、2009年)、『あるべき日本の国防体制』(内外出版、2009年)、『日本の領土があぶない』(ぎょうせい、2013年)、『イスラム国 衝撃の近未来』(育鵬社、2015年)がある。

矢野:鈴置さんの記事「ついに『核武装』を訴えた韓国の最大手紙」を面白く読みました。

—誰も止めない北朝鮮の核武装。これに焦った韓国の保守が「いつでも核武装できる権利――核選択権――を我が国も持つと宣言しよう」と呼び掛けた、との話でした。

矢野:それを「宣言抑止」と言います。核兵器を持たない国が「あなたが核で私を脅したら、こちらも即座に持つよ」と予め宣言しておくことにより、仮想敵の核攻撃や威嚇を防ぐ手法です。

 もちろん核兵器を短期間に開発できる能力があることが前提となります。そして韓国はその能力を持っています。朴正煕(パク・チョンヒ)時代からプルトニウムの抽出技術に取り組んだ結果です。

 弾道ミサイルや巡航ミサイルなど、核の運搬手段もすでに保有しています。6月3日、韓国軍は射程500キロの地対地の弾道ミサイルの発射に成功しました。射程800キロのミサイルも開発中です。また、潜水艦から発射する巡航ミサイルも開発済みです。

朝鮮半島に「核の均衡」

鈴置:注目すべきは「作ってしまえば、米国も核武装を認めてくれる」と韓国人が考え始めたことです。

矢野:まさに、そこがポイントです。私も、韓国の核武装を米国が黙認する可能性が高いと見ています。北朝鮮の核武装を止める手立てがほぼない、という厳しい現実からです。

 鈴置さんがあの記事で指摘したように「北が核を持つことで、南を軍事的に挑発する可能性」が増しました。つまり、米国から見れば戦争に巻き込まれるリスクが高まったのです。

 このリスクを減らすには韓国にも核武装させて、南北朝鮮の間で「核の均衡」を作ればよい、という理屈になるのです。

 例えば、仮想敵に囲まれるイスラエルの核武装を米国が黙認したのも、中東での戦争に巻き込まれないためです。

—米国が日本と進めるミサイル防衛(MD)に韓国も加わればいいのではないですか。

MDでは撃ち漏らす

矢野:公式的には米国もそう言っています。でも、自分のミサイルで敵のミサイルを落とすMDは万全ではないのです。大量のミサイルで攻撃された時、撃ち漏らしが出てくるからです。

 これを「飽和状態」と言います。完全に核攻撃から身を守る手段がない以上、信頼できる同盟国の核保有を認めるのもやむを得ない、との考え方もあるのです。

 核兵器の製造技術は世界に拡散しており、核分裂物質と適当な資材があれば、誰でも初歩的な核兵器を作れるようになりました。米国は世界的に「同盟国の核」を黙認する方向にあると思います。

 中東をご覧下さい。先ほど申し上げたように、米国はイスラエルの核武装を黙認しました。イスラエルは公表していませんが、300発近い核弾頭を持つ、英仏並みの核保有国です。

 さらに、米国はイランとの核協議で和解し、その核保有を黙認する可能性が出てきました。「イスラム国」(IS)との戦いで、米国はイランの地上戦での協力を必要とするからです。

 今後、米国から核を黙認されたイスラエルとイランの間で、核の相互抑止体制が成立するのかもしれません。

 そのイランを念頭に、サウジアラビアが核保有に動く可能性が高まっています。中国から「東風3」など弾道ミサイルを輸入済みです。核弾頭に関してもパキスタンの核開発に当初から資金を提供しており、入手に障害はないと見られています。

緩くなった「韓国に対する縛り」

 中東で、地域の主要国に核を持たせて均衡する、という新たな核政策に米国は転換しつつあるように見えます。それが朝鮮半島にも及びかねないのです。

 兆候と言うべき動きがあります。2012年に米韓ミサイル協定が改定され、韓国は射程が800キロまでの弾道ミサイルを持てるようになりました。それまでは300キロでした。これでは北朝鮮の北東部へはミサイルは届きませんでした。

 2015年4月には米韓原子力協定が見直され、仮署名に至りました。様々の制限は付いていますが、韓国はウラン濃縮も可能になり、使用済み燃料の再処理も自由度を増しました。

鈴置:改定された原子力協定でもかなり制限が付いています。米国が「韓国の核武装」を黙認したとは言いにくいと思いますが。

矢野:でも、核の縛りが緩くなったのも事実です。米国の同意――暗黙裡の同意も含みますが――さえあれば、韓国は核開発に動けるようになったのです。

「黙認の時代」が始まる

—「核の黙認」の時代が始まるというのですね。

鈴置:米国の外交誌で「アジアの同盟国に核を持たせるべきか」で議論が起きました。

 2014年1月30日、The National Interestは戦略国際問題研究所(CSIS)のデヴィッド・サントロ(David Santoro)シニア・フェローの「Will America’s Asian Allies Go Nuclear?」を載せました。

 「韓国や日本が核武装に走る可能性が出てきた。その際、米国はそれらの国との同盟を打ち切るべきだ。核拡散防止条約(NPT)体制の崩壊を呼ぶからだ」との主張です。はっきり言えば、韓国や日本の核武装は何があっても止めるべきだ、との意見です。

 これに対し、新アメリカ安全保障センター(Center for a New American Security)のエルブリッジ・コルビー(Elbridge Colby)フェローが2月28日、同じ雑誌に「Choose Geopolitics Over Nonproliferation」を寄稿して反論しました。

 その主張は見出し通り「事実上破綻している核不拡散を守るよりも、同盟国をつなぎ止めておく方が重要だ」です。

 2つの意見は真っ向から対立します。が、共通点もあります。「北朝鮮が核兵器を持ち、中国が膨張するのに対抗し、韓国や日本が核武装に走るのは当然だ」との認識です。

日本も核を持て

矢野:ちょうどその頃、日本に対して核武装を勧める米国の安全保障専門家が登場しました。ウォルドロン(Arthur Waldorn)ペンシルバニア大学教授が2014年3月7日の日本経済新聞で「核武装の勧め」を書いています。

鈴置:そうでした。経済教室欄に寄稿した「米国との同盟、過信は禁物」ですね。肝心の部分は以下です。

  • 日本のミサイル迎撃システムは、おそらく世界の最先端だが、英国やフランスに匹敵するような安全保障を提供できないことは明確に理解する必要がある。
  • システムが「飽和状態」になってしまう、つまり対処できる以上の攻撃にさらされる可能性があるからだ。
  • 大規模な通常兵器と核兵器を開発している敵対的な中国を背景に、これらの事実は、日本がこれまで考慮してこなかった、政治的に微妙だが現実的で避けることのできない問題を突きつける。
  • 日本が安全を守りたいのであれば、英国やフランス、その他の国が保有するような最小限の核抑止力を含む包括的かつ独立した軍事力を開発すべきだ。

2014年に変わった米国の姿勢

—なるほど、はっきりと核武装を勧めていますね。

矢野:この記事が載った少し後、訪日した別の米国の安保専門家も少数の日本人の前で核武装の勧めを説きました。

 「日本は米国から原子力潜水艦を購入すべきだ」との言い方でした。核武装を前提にした議論でして、核ミサイルを発射するためのプラットフォームも必要だから整備しろ、という意味です。

 米国の専門家の間では「日本人に対し、核武装を認めるような発言をしてはならない」との暗黙の合意がありました。でもそれが、2014年初めを境に突然、変わったのです。

鈴置:矢野さんは2014年に核抑止に関する共同研究のため、フランスに滞在されました。欧州の専門家は「アジアの核」をどう見ているのでしょうか。

ドゴールの核の独立

矢野:フランスの複数の核の専門家が「韓国が核兵器開発を念頭に置いていることは我々も承知している。驚くにはあたらない。北朝鮮がそれを実際に進めていてかつ、韓国には潜在能力があるからだ」と語っていました。

 これが世界の常識的な見方でしょう。日本は被爆国ですから国民は核に対し強い忌避感を持ちます。しかし、韓国人に核アレルギーはありません。そして過去に侵攻してきたうえ、今も厳しく敵対する国が核兵器を持ちつつあるのです。

 東西冷戦下の1960年、フランスは初の核実験に成功し、核保有国となりました。「米国の核の傘の信頼性への不信」からです。

 米国は様々の特恵と引き換えに、仏の核の引き金も共同で持とうと持ち掛けました。しかし、フランスは拒否したのです。当時のドゴール大統領は「どの国も、自分のためにしか核の引き金は引かない」と信じていたからです。

 旧・西ドイツのアデナウアー首相も核を持ちたかった。しかし敗戦国であり、フランスや英国など他の欧州諸国からの不信感が根強く、とても持てなかった。そこで「核シェアリング」の権利を確保しました。

西独の核シェアリング

—「核シェアリング」とは?

矢野:西ドイツは米国が自国内に配備した戦術核の使用に関し平時から訓練しておく。緊急時には米大統領の承認を得たのちに核兵器を譲り受けて使用する――権利です。

 「核の引き金」は米大統領が握っているので真の「シェアリング」とは言えず、象徴的な権利に過ぎません。それでも西ドイツは、緊急時には核を使える可能性を確保したのです。

 ちなみに、韓国の軍事的な環境は西ドイツに似ています。国土が狭くて――つまり奥行きがないというのに――地続きの、北朝鮮と中国の強力な通常戦力の脅威に直面しています。

 英国は1952年に核実験に成功し、いち早く自前の核を持ちました。しかし国力の限界から、現在は抑止専用の自衛的な核戦力に留めています。

英国の切り札は潜水艦

—具体的には?

矢野:原子力潜水艦に核兵器を載せて、これを核報復力としたのです。

鈴置:先制核攻撃を受けても、位置を発見されにくい潜水艦は生存できる。そこで他国に対し「もし我が国を核攻撃したら、潜水艦から核で報復するよ」と脅せるわけですね。

矢野:その通りです。潜水艦は陸上の核ミサイル基地と比べ、敵の先制核攻撃からの残存性が高い。そこで、報復の切り札に使うのが合理的なのです。

 日経に論文を載せたウォルドロン教授も、訪日して「米国製の原子力潜水艦を導入せよ」と語った米国の専門家も、英国方式の――潜水艦搭載型の弾道ミサイルによる核抑止力を持て、と言っていると思われます。

 なお、英国は「潜水艦の核」に関し、自前の核弾頭と原子力潜水艦を運用していますが、潜水艦搭載型の弾道ミサイルは米国から「ポラリス」を導入しました。米英は1962年のナッソー協定(Nassau Agreement)でこれに合意しました。

 いずれにせよ、欧州各国の「核の歴史」からすれば、アジアの同盟国に独自の核戦力を持たせて抑止力を増そう、と米国が考えても何ら不思議ではないのです。

「衝動的な人々」と核

鈴置:日本は敗戦国のうえ、原爆を落とされていますから「核を持たせれば、それで復讐してくるかもしれない」との恐怖が米国にはあったでしょう。

 韓国人は「情緒的に不安定な人たち」との認識を米国の指導層からも持たれがちです。例えば1972年に訪中したニクソン大統領は、周恩来首相に以下のように語っています。

  • 朝鮮人は、北も南も感情的に衝動的な(emotionally and impulsive)人たちです。私たちは、この衝動と闘争的態度が私たち(米中)両国を困らせるような事件を引き起こさないよう影響力を行使することが大切です(『ニクソン訪中機密会談録』=日本語=100ページ)。

 原文は「Nixon’s Trip to China」の「Document 2」の17ページで読めます。

 米国にとって「自分たちと同じ人間が住む欧州」と比べ、アジアは「信用できない人たちの地域」でした。未だにそうした見方が根強いと思います。はて、アジアの核も「欧州並みに」と米国人が考えるでしょうか。

矢野:「韓国が核を持ったら、黙認してもいい」と米国が考える動機が急速に膨らんでいるのです。それは「北朝鮮の核武装」というローカルな理由に留まりません。米国の軍事戦略が根本から変化しているからです。

大戦争はできない米国

—前回の矢野さんのお話は、韓国の核武装を米国が黙認するかもしれない。北朝鮮の核武装に加え、米国の軍事戦略が世界的に変わったからだ、ということでした。

矢野:東アジアと西太平洋で、米中の軍事的な力関係が逆転する可能性が出てきました。米国は今後10年間で1兆ドル近い国防費を削減します。一方、中国は成長率の鈍化にもかかわらず毎年、軍事費を2桁のペースで増やしています。

 米国の陸軍と海兵隊は、アフガン戦争以前の水準に削減されます。そんな米国に、数10万人もの死傷者が出るような大規模の地上戦はもう、不可能なのです。

 米国が絶対に避けたいのは2つ。まず、中国との核戦争に拡大する恐れのある紛争に巻き込まれること。もう1つは大規模の地上兵力を長期に派遣すること、です。

鈴置:米国は、同盟国を守るという約束を果たせるのでしょうか。

矢野:難しくなります。米国は今でさえ、1つの戦争をすることで精一杯です。下手すると今後は、同盟国の領土の回復にさえ直接は関与できなくなります。

 そこで「韓国や日本などの同盟国が独自の核抑止力を持つことを黙認し、中国や北朝鮮の侵攻を防ぐ」という選択を米国がするかもしれない、との見方が広がっているのです。

有事の際、米軍は後退

鈴置:ブレジンスキー(Zbigniew Kazimierz Brzezinski)元・大統領国家安全保障担当補佐官が「米国の力が弱まると、その核の傘の信頼性が落ちる。すると韓国や台湾、日本、トルコ、ひいてはイスラエルでさえ新たな核の傘を求めるか、自前の核武装を迫られる」と書いたのも、そうした判断からなのですね。

 2012年に出版した「Strategic Vision: America and the Crisis of Global Power」の114ページです(「ついに『核武装』を訴えた韓国の最大手紙」参照)。

米国が「エア・シー・バトル」(Air Sea Battle)という、新しい戦争の方法を検討してきたと聞いています。

矢野:その構想でも、有事の際は中国のミサイルの集中攻撃を避けるため、在韓米軍も在日米軍もいったんは後方に分散退避することになっています。今後は基本的には韓国の防衛は韓国の、日本のそれは日本の責任となります。

 背景には、中国の中距離以下のミサイルの増強があります。その脅威から逃れるため、米軍はグアム以東に後退します。米国の一部シンクタンクは、米軍が反攻に転じるのは1カ月以上先になると見積もっています。

 2015年4月に18年ぶりに改定した日米防衛協力のための指針(ガイドライン)では、日本有事の作戦構想から地上作戦時の「極力早期の兵力来援」や、米空海軍による「打撃力の使用を伴う作戦」を示す文言は抜け落ちました。

必敗の精神

鈴置:そこで発生する問題は、アジア有事の際――つまり在韓米軍に後退されてしまった後の韓国が、北朝鮮の脅威に精神的に耐えることができるか、ですね。

矢野:そこなのです。韓国人の米軍に対する依存心の高さを見ると、とても耐えられるとは思えません。

鈴置:韓国国会の国政監査で議員が「米国の支援なしに我が国単独で北と戦ったらどうなるか?」と聞いたことがあります。核を考えずに、通常戦力だけで戦ったらどうなるか、との想定です。

 軍の幹部がきっぱりと「負ける」と答えたので問題になりました。 韓国の経済力は北朝鮮の40倍あります。どうやったら負けるのか、外国人には理解しがたいのですが、重要なのは多くの韓国人がそう信じていることです。

 韓国には徴兵制度があって、多くの男性が軍隊に行く。このため国軍の「必敗の精神」が国民に広く浸透してしまうのだ――と解説してくれた韓国の記者がいます。

 なお「負ける」発言が問題になった主な理由は「言ってはいけない本当のことを、軍幹部が語ってしまったから」でした。

崩れる「中台」軍事バランス

—有事に米軍が後退する可能性が高まったことも、韓国の核武装を加速する、ということですね。

矢野:その通りです。

鈴置:1970年代に朴正煕(パク・チョンヒ)大統領が核武装を考えたのも在韓米軍が削減され、いずれは完全撤収もありうる、と見られたからです。

 韓国を巡る安全保障の環境は今と似ています。1970年代の核武装計画は、米国の強力な圧力で挫折しましたけれど。

「在韓米軍や在日米軍が後方に引くような」有事とは、具体的にはどんな状況ですか?

矢野:例えば、中国と台湾の軍事衝突です。中国が台湾に侵攻した場合、米国はそれに「抵抗する能力を維持」することで台湾を支援せねばなりません。米国の台湾関係法で定められているからです。

 現在、台湾が持っている空と海の優勢――昔の言葉で言えば制空権と制海権ですが――は2020年代前半に、中国側に傾くと見られます。

 そうなれば中国が台湾を軍事的に威嚇する可能性が高まります。これが軍事的衝突に拡大する懸念があります。

 一方、台湾はそれを防ぐための核武装を考えるかもしれません。すると、ますます衝突の可能性が増します。中国は、台湾の核武装を侵攻の条件の1つに掲げているからです。

南シナ海が試金石

 あるいは中国が沖縄県の先島諸島――「尖閣」や与那国島、石垣島、宮古島に対し、今以上に挑発の度を高める可能性があります。

 この際、1995年と1996年の台湾海峡危機と同様に、ミサイル演習と称して中国が沖縄周辺に、あるいは東京湾を出たあたりの公海に多数の実戦用弾頭を撃ちこんでくるかもしれません。こうなっても在韓、在日米軍が後退する可能性があるのです。

 今、南シナ海で米中のつばぜり合いが激しくなっています。もし、中国の人工島の埋め立てを米国が阻止する力を見せないと、中国は「米国弱し」と見て台湾や沖縄でさらに強気に出てくるでしょう。

鈴置:20年前の台湾海峡危機の時、米国は空母打撃部隊を台湾周辺海域に送って中国を牽制しました。今度は反対に、後ろに引くかもしれないとは……。

矢野:中国のミサイルの性能が急速に向上しているためです。中国が最近開発した対艦弾道ミサイルの射程圏内――大陸から1000カイリ以内の東シナ界や南シナ海には有事の際、米空母打撃部隊は入らないでしょう。

米空母はもう、来ない

鈴置:「空母キラー」と言われる「東風21D」のことですね。でも、本当に実用化に成功したのですか? 超高速で大気圏に再突入する弾道ミサイルを、30ノットで動く艦船に当てられるものでしょうか。

矢野:確かに、そう疑う向きもあります。ただ、同時に多数の「東風21D」に狙われたら、直撃されなくても大きな被害が出るでしょう。

 至近弾に留まったとしても、炸裂した弾頭から放出される約1000発の子弾によって、米艦船は通信電子装備に深刻な損害を受けます。そのリスクを考えただけで、射程内の海域から空母を引き上げざるを得なくなります。

—結局、米中が衝突した時、これまで頼みの綱だった米空母は助けに来ないかもしれない、ということですね。

鈴置:その可能性を考えただけで、韓国人は核を手にしたくなるでしょう。北朝鮮の挑発があれば必ず米空母が急行してくれる――というのが韓国の常識になっていますから。

朴正煕時代の韓国ではない

—韓国が核を持った場合、米韓同盟はどうなるのでしょうか。

鈴置:韓国には「核兵器を開発しようとすれば経済制裁されて阻止される」「同盟を打ち切られる」と懸念する声もあります。朴正煕政権当時の米国の強力な圧力の記憶が、未だに残っているのです。

 保守運動の指導者で核武装論者である趙甲済(チョ・カプチェ)氏はこの懸念に対し、以下のように説得しています。「核開発して滅びた国はない」(5月14日、韓国語)から引用します。

  • 世界5大工業国、5大原子力技術国、7大輸出国、8大軍事力(通常兵力)、8大貿易国に浮上した韓国が中国側に傾けば、日本も対抗できないし、中国はユーラシア大陸の覇権国家になる。
  • こんな韓国が中国と北朝鮮を牽制するために核兵器を持とうとするからといって、米国が韓国を制裁できるのか? 韓米同盟は重要であり韓国にとって米国は大事だが、同じように米国にとっても韓国は大事なのだ。
  • 朴正煕大統領が1976年頃に核開発を放棄したのは、韓国の原子力発電所に協力しないと圧迫を受けたためだ。だが、2015年の韓国は1976年の韓国ではない。

核さえあれば、こちらのもの

 趙甲済氏ら核武装論者は「北の核にはどんなことをしても対抗しなければ、韓国は生き残れない」との悲愴な判断と「核武装すれば道は開けるし、それしか道はない」との覚悟を抱いているのです。

—米国が反対しようが韓国は核を持つということでしょうか。

鈴置:趙甲済氏らはそこまではっきり言っていません。しかし、そうなっていく――容易に強行突破論に転化し得ると思います。

 矢野先生との議論は「韓国の核を米国は黙認するか」がテーマでした。また、米国の外交誌「The National Interest」で起きた「同盟国に核を持たせるべきか否か」という論争も「米国が同盟を打ち切るぞと脅せば、同盟国は核武装をあきらめる」との前提がありました(「米国も今度は許す? 韓国の核武装」参照)。

 でも韓国の場合、米国の脅しの効果は急速に薄くなっています。「もう、昔の弱い韓国ではない。米国の言いなりにはならないぞ」という意識が強まっていますから。

—「核さえ持てば何とかなる」と、後先考えずに核武装に走るかもしれない、ということですね。

破綻する米韓同盟

鈴置:いわば、核至上主義――北朝鮮と同じ発想です。もう1つ、見落とすべきでないのは「完全中立化に伴う核武装」の可能性です。

 朴槿恵政権は2013年2月のスタート以来、事実上の米中等距離外交を採用しました。でも、限界に達したのです。

 米国が北朝鮮のミサイルに備え、在韓米軍に終末高高度防衛ミサイル(THAAD)を配備しようとしています。

 一方、それが自分の核の威力を減じる目的と考える中国は「配備を認めたら核攻撃の対象にするぞ」と脅します。韓国はどちらにも「NO」と言えないので頭を抱えています。

 北朝鮮の脅威から米国に守ってもらいながら、米国による防衛に反対する――。この韓国の奇妙な態度は、米韓同盟の矛盾に根ざしています。

 韓国の主要敵は北朝鮮であって、絶対に中国ではない。一方、米国のそれは中国であって北朝鮮ではない。米韓同盟は主要敵が完全に異なってしまった――はっきり言えば、破綻しつつあるのです。

南シナ海でも「離米従中」

矢野:THAADだけではありません。南シナ海を舞台に激化する米中対立もそうです。中国は各国の反対を押し切って、南シナ海で埋め立て工事を実施し、軍事基地を作っています。

 これに対し米国を中心に日本、豪州、フィリピン、ベトナムなど関係国がこぞって非難しています。というのに韓国は知らん顔です。

鈴置:韓国の気分は「もう、中立」なのです。韓国は「南シナ海の領有権と我が国は関係ない」と逃げ口上を打っています。

 しかしそれは言い訳です。中国は、米国とその同盟国を狙う核ミサイル原潜の隠れ家にしようと、南シナ海の内海化を進めているのです。

 中国の顔色を伺うばかりでそれに反対しない韓国を米国はどう見るのでしょうか――。6月3日、ラッセル国務次官補はワシントンのシンポジウムで、韓国に対し批判の隊列に加わるよう迫りました。

 米国も二股外交の韓国に、堪忍袋の緒を切ったのです。かといって韓国が対中批判に加われば、中国から苛め抜かれるでしょう。

 ラッセル発言は韓国で大きな問題となりました。中央日報の「米国務次官補『韓国が南シナ海紛争に声を高めるべき』」(6月5日、日本語版)で読めます。

独島を日本から取り返される

—韓国の「板挟み状態」は厳しくなる一方ですね。

鈴置:だから、悩んだ韓国が米韓同盟の破棄を考えるかもしれないのです。そうすれば、THAAD配備問題も南シナ海問題もきれいになくなります。

 もちろん今すぐ、という話ではありません。何らかの「引き金」がいると思います。例えば、米中の軍事的な対立が深まって、中国が韓国に対し「在韓米軍基地を攻撃するぞ」と脅した場合です。

 韓国は米国に対し「軍隊を引いてくれ」と頼む可能性が高い。そうなったら米韓同盟は消滅します。同時に韓国は核武装に乗り出さざるを得ない。

 対北朝鮮はもちろんのこと、中国や日本に対しても核が必要になるからです。米国の後ろ盾がなくなれば、中国が韓国に対し無理難題を突きつけるのは確実です。日本も独島――竹島を取り返しに来る、と韓国人は信じています。

 でも「核さえ持っていれば中国や日本になめられないで済む」――のです。「韓国の核」は北朝鮮専用ではありません。

グリップが効かない核保有国

矢野:韓国は北京や東京にも届く弾道ミサイルの開発に取り組んでいます。これに通常弾頭を載せても効率が悪い。日本や中国への核威嚇が念頭にあるのは間違いありません。

 朴槿恵政権の米中等距離外交も「仮に米国と縁が切れても、核を持っておけば中国の言いなりにならないで済む」という発想が根にあるように思えます。

鈴置:世論もそうです。「核さえ持てば、慰安婦問題だって日本は頭を下げてくる」などと上手にナショナリズムに火を付ければ、韓国社会に核武装論が一気に盛り上がると思います。

 そもそも国民の70%弱が核武装に賛成です。日本とは異なって核アレルギーはありません。だから強力な反対勢力は存在しないのです(「ついに『核武装』を訴えた韓国の最大手紙」参照)。

 むしろ韓国には「核を持たないから馬鹿にされるのだ」との思いの方が強い。「慰安婦」で米国が日本の肩を持ったとの理由で、ネットに「核武装して米国から独立しよう」との声が溢れる国なのです(「『ヴォーゲル声明』に逆襲託す韓国」参照)。

 もっとも「同盟国でなくなる韓国」の核に関しては、米国は阻止するかもしれません。米国のグリップの効かない核保有国は何をするか分からないからです。情緒が安定した国とは言えませんしね。米国や日本にとって“北朝鮮”がもう1つできては困るのです。

『朝鮮半島201Z年』

—鈴置さんは近未来小説『朝鮮半島201Z年』で米中が取引し、韓国が核武装する前の段階で北の核を取り上げたうえ、朝鮮半島全体を中立化する――と予想しました。

鈴置:米国は同盟国を1つ失う代わりに、戦争に巻き込まれるリスクを軽減する。中国は北朝鮮への軍事作戦という汗をかく代わりに、韓国から米軍を追い出す――という談合が米中間で成立するのです、この小説では。

 中国だって韓国に核を持たせたくはない。台湾や日本の核武装の呼び水となりかねないからです。それに南北双方が核を持てば、この半島を操りにくくなる。

—朝鮮半島の非核化を実現するためとはいえ、米国が簡単に同盟国を手放すでしょうか。

鈴置:先ほど申し上げたように、米韓同盟自体が巨大な矛盾を抱えています。いつまで持つか分からない同盟なのです。苦労して維持する必要があるのか、首をひねる米国の安全保障専門家が出始めました。

 「米国との同盟がなくなった後、中国の恐ろしい素顔を見れば韓国は戻ってくる」と言う専門家もいます。米軍基地を追い出した瞬間、中国にミスチーフ礁をとられた「フィリピン体験」を韓国にもさせよう――というわけです。

米中は「半島」では仲がいい

—米中関係は悪化する一方です。小説のように米国と中国が朝鮮半島に関し「談合」できますか?

鈴置:十分可能です。米中はこの半島に関しては一種の合意があるからです。前回も引用しましたが、1972年に訪中したニクソン大統領は、周恩来首相に以下のように語りました。今回は後半部分に注目下さい。

  • 朝鮮人は、北も南も感情的に衝動的な(emotionally and impulsive)人たちです。私たちは、この衝動と闘争的態度が私たち(米中)両国を困らせるような事件を引き起こさないよう影響力を行使することが大切です(『ニクソン訪中機密会談録』=日本語=100ページ)。

 原文は「Nixon’s Trip to China」の「Document 2」の17ページです。

 「感情的に衝動的な朝鮮人」が起こした朝鮮戦争のために、米国は5万人もの若者の命を失いました。中国は数10万人の戦死者を出したと言われています。

 米中がいかに敵対しようと「この不愉快な地域に再び足を取られてはならない」との共通の思いは変わらないのです。

核はこっそり開発できる

矢野:米中の思いは確かにそうでしょう。でも「鈴置シナリオ」には難点があります。核兵器はこっそり開発できるのです。「非核化」させたはずの南北朝鮮が、いつのまにか核を持つかもしれない。

 そうなったら元の黙阿弥です。それよりか、インドとパキスタンのように「顕在化した核均衡」の方が安定的です。

鈴置:なるほど、そうかもしれません。「中立化」によって南北が米中との同盟を破棄した後は、大国の監視や干渉は受けにくくなるでしょうしね。

矢野:結局、2020年代前半に――10年以内に日本は、潜水艦に搭載した核ミサイルを持った南北朝鮮と対峙することになる可能性が相当にあるということです。

鈴置:そうなるかもしれないし、そうはならないかもしれない。でも可能性が出てきた以上は、そうなった時のことを考えておかねばならないでしょうね。

6/10日経ビジネスオンライン 奥山真司『中国がかわしたい米国の“海峡封鎖” 大国の世界展開は「内海」の確保に始まる』記事について

日高義樹氏の『中国敗れたり』によると①米海軍は中国の知らない内に、中国を海上封鎖できるキャプター型機雷を近海に敷設するのは可能とのこと。特殊原潜で敷設は気づかれないそうです。衛星で操作することなく必要時点で浮き上がってきて艦船(軍事用、民間船を問わず)を撃沈。海底に長期間敷設可能とのこと。これをやれば、中国経済は崩壊間違いなしです。もう既にやっている可能性もありますが。②A2/AD戦略を中国はプロパガンダしていますが、中国の空母キラーと言われるクルージングミサイルDF-21D(中国名:東風-21D)はマッハ5~6で非常に遅い(普通の大陸間弾道弾のスピードはマッハ20~30)し、破壊力もハープーン程度(?)で大したことがないとのこと。米空母は最大30数ノット(50数Km/h)で走り、ミサイルが飛んでくる間に位置を変えれるし、中国側のレーダーを攪乱してDF-21Dの飛行を妨害できるとのこと。これによりエアシ-バトル戦略を採らなくても中国軍はなす術がなくなります。

問題は能力でなくて意思の問題です。オバマが宥和政策を取れば(民主党と言うのは日米とも碌でもない政党です。中国から多分オバマは献金を受けているでしょう。ヒラリーがそうであったように。なにせ大統領選時、投票者登録をごまかして大統領になったと言われている史上最低の米大統領です)中国はつけあがり、ドンドン侵略して行って既成事実化を図るでしょう。内蒙古、チベット、ウイグルのように。米軍は中国の主張する12海里に艦船を通過させるべきです。中国の主張は国際法違反、何の強制力も持たないことを世界に知らしめるべきです。

日本は相変わらず民主党や共産党が国際環境の変化を考えない議論をしています。このままいけば日本の独立も危うくなります。女でミソを付けた山崎拓がしゃしゃり出て来て集団的自衛権にイチャモンつけていました。中国でハニートラップに遭い、今回も中国から言わされているのでしょう。裏に古賀や野中、加藤、河野辺りが蠢いているのかも知れません。野党が充分な議論が足りないというなら通年国会にすべき。国民はもっと怒るべきです。民間企業でそんなに休むことはできないでしょう。選挙対策でなく、議員本来の仕事である国会で法案作成に専念すべき。Lawmakerの名が泣くでしょう。中国と比較すればアメリカの方がずっとマシです。日米同盟が基軸で多国間で中国を封じ込めるべきです。中国に有利な発言をする政治家やメデイアの人間は裏に何かあると見た方が正解です。

記事

 マッキンダーが提唱した言葉に「内陸海」がある。英語では「ミッドランド・オーシャン」(Midland Ocean)。大西洋を囲む自由主義陣営の国々がソ連(ロシア)に対抗するイメージを表すために使ったものだ。マッキンダーの死後、この概念は北大西洋条約機構(NATO)として結実した。

 地政学ではこのように、ある海を囲む、つまり「内海化」する国家や同盟国が、シーパワー国家としての土台を獲得し、世界展開を目指す傾向があると見なすことが多い。古代に栄華を誇ったローマ帝国は地中海を内海化した。英国も地中海と大西洋を内海化したことがある。

 オスマン・トルコも地中海と黒海を囲い込んだ。ソ連は黒海やバルト海、それにオホーツク海を内海化した。そして日本も「大国」であった戦前は、日本海と東シナ海を内海化していた。

カリブ海の内海化から米国の世界展開が始まった

 では米国の場合はどうなるか。現在は上記のように大西洋をはじめ、世界のほとんどの海を「内海化」している。とりわけ世界展開を始めた時期に最初に内海化したのが、自国のすぐ南側にあるカリブ海であったことが重要だ。

 当時のカリブ海は、砂糖の原産地や奴隷貿易の拠点として、英国をはじめとする欧州の列強たちが関与していた場所であった。これに対して米国は1823年にモンロー大統領が提唱した、いわゆる「モンロー・ ドクトリン」に従って、西欧の列強を西半球(南北アメリカ)から排除する方針を取り始めた。

 当初は、カリブ海最大の勢力であった英国(1833 年に奴隷制を禁止)と協力する形で奴隷貿易を取り締まる警戒活動などを行っていた。だが、1899年の米西戦争でスペインを排除し、20世紀前半に英国がこの海域から撤退すると、米国政府は彼らがこの海域に二度と復帰してこられないように様々な手段をとっている。

 その後、第一次世界大戦の時期に、米海軍がこの海域での覇権を握った。このため、カリブ海全域が「アメリカの地中海」(American Mediterranean)と呼ばれるようになった。

 つまり、米国が本格的に世界展開を始めるきっかけとして、自国周辺の海域の「内海化」があったと言えるのだ。

南シナ海を巡る米中の攻防

 このアナロジーをそのまま中国にあてはめて考えると、興味深いことが分かる。「アメリカの地中海」に相当するのは、スパイクマンが「アジアの地中海」(Asiatic Mediterranean)と呼んだ、南シナ海を含む海域だ。

 ご存知のように、中国は現在、南シナ海の領海化を必死に進めている。その証拠に、南沙諸島周辺で7カ所の岩礁を埋め立てていることが最近確認されており、フィアリー岩礁をはじめとする少なくとも3カ所の海域で、ジャンボ機も発着可能な3000メートル級の滑走路を建造中であると報じられている。

 これはまさにスパイクマンが予測した、「アジアの地中海」において中国が覇権を確立するための第一歩と言えるものだ。もしこの「内海化」が実現すれば、中国はユーラシア大陸のリムランドの南部の海域と空域をコントロールする力を持つことになる。

 もちろんこれが実現するかは未知数だ。少なくとも現時点の米国は、この「アジアの地中海」から手を引く意志はないように思える。そうなると、この海域を巡る米中の権益の衝突は当面続くことが予測される。ただし19世紀末までカリブ海を抑えていた英国が、20世紀初頭にアメリカに覇権を譲り渡して撤退した事実は気になるところだ。アメリカも「その時」が来れば撤退する可能性もある。

海上交通路とチョークポイント

 このような「内海化」のもう一つの側面として重要になるのが、海上交通路(SLOCs:スロックスと読む)とチョークポイント(choke points)の確保である。

 英国がシーパワーとして世界の海を管理できたのは、この海上交通路やチョークポイントにおいて覇権を握っていたことが大きい。日本も日露戦争でこの恩恵を受けた。ロシアのバルチック艦隊が日本に向かうのを、スエズ運河のようなチョークポイントや海上交通路で英国が妨害をしてくれたおかげで、日本海海戦(1905年)に快勝することができた。

 米国も同様に、海上交通路やチョークポイントの確保に熱心だ。前述した米西戦争が起きた原因の一端は、カリブ海の海上交通路の確保にあった。米国は1914年、フランスが着工していた工事を譲り受けて、チョークポイントの典型であるパナマ運河を完成させている(ちなみにマハンはこの年に亡くなった)。

 後に2つの世界大戦に参戦した米国は、まさに英国の海上交通路とチョークポイントを引き継ぐことで世界覇権を握ったことを忘れてはならない。

 現在の主な海上交通路とチョークポイントは、米国が管理しており、それには当然ながらこの南シナ海も含まれる。ヒラリー・クリントン前国務長官が2010年のASEAN地域会合で「米国は航行の自由を守る」と宣言したのは、世界最大のシーパワー国家として、海上交通路(とチョークポイント)の覇権を確保する覚悟の表れであったと言える。

中国が抱えるマラッカ・ジレンマ

 他方、中国にとっての海上交通路とチョークポイントに関係してくる問題を考えると、彼らにとっての最大の懸念として挙げられるのは「マラッカ・ジレンマ」である。

 このジレンマとは、中国が経済的に発展して国力が高まると、米国(とシンガポール)に対する脆弱性が高まってしまうというものだ。経済発展するとエネルギーの需要が高まり、中東からの石油の輸入に頼らざるを得なくなる。その際の海上交通路のチョークポイントは、マラッカ海峡(中国が輸入する原油の80%がここを通過)だ。したがって同海峡を管理する米国(とシンガポール)との関係が重要になる。

 当然ながら中国には、このジレンマを解消しようという動機が働く。その解決策として北京は現在、3つの計画を進めていると言われている。

 第1がパキスタンのグワダル港と新疆ウイグル自治区のウルムチまで、パイプラインを結ぶ計画だ。グワダル港はイランとの国境のすぐ東にある。インド洋に向かって開けている砂漠の南端にある良港だ。最近の「一帯一路」につながる「中パ経済回廊」というスローガンの下で、中国政府がすでに大規模な投資を行っている。今後さらに深海港化――大型の船を着岸できるようにするため浚渫(しゅんせつ)工事を行う――や港湾施設の拡充を行う方針をパキスタン政府と決定している。

 ただし、プロジェクト全体の実現性が疑問視されている面もある。グワダル港周辺に住む民族(バルチ人)は、パキスタンの首都イスラマバード周辺に住む民族(パンジャブ人)と対立関係にあって、分離独立の機運もある。もし中国のパイプラインがグワダルまで延長されれば、イスラマバードに対抗するために「パイプラインを破壊し、中国人労働者を殺害する」と明言する独立運動側のリーダーもいる。また、北から吹く風が砂漠から運んでくる大量の砂によって港が埋まってしまう問題も抱えている。

 第2がミャンマーへのパイプラインだ。これは中国南部の昆明からチャウッピュー港まですでに伸びていて、今年の2月の時点で完成していると言われている(原油の輸送を開始しているかどうかは不明)。

 これはまさに戦前の「援蒋ルート」の再現だ。連合軍側が戦時中に、中国内の日本軍に対抗すべく整えた物資補給路が、現代において、マラッカ海峡をバイパスするための中国自身のための原油ルートとして復活したことになる。だが、北京政府が同時に敷設する予定だった鉄道のほうは、地元住民の反対などもあって中止している模様だ。

 第3が「クラ運河」――マラッカ海峡をバイパスする形で、マレー半島を横断して太平洋 (タイ湾)とインド洋(アンダマン海)の間の44キロを結ぶ――の建設である。つい先日、中国とタイの企業が計画を発表したが、こちらも、その実現性に疑問符がついている。報道が錯綜しており、タイ政府側はこの計画の存在自体を否定したという情報もある。

 いずれにせよ、中国側はマラッカ海峡という自らが権限をもたないチョークポイントを回避するため、新たな陸上ルートを開発する計画を次々に打ち出そうとしている。

米国が握る太平洋覇権に中国が挑戦

 マハンの頃から、まるで「太平洋を握るものは世界を制する」とでも言うべき現象が国際政治の場に現れている。第二次世界大戦では、この海域の覇権を巡って日米が激突した。日本の敗戦後は、米国がここの覇権を握った状態が続いている。言い換えれば、1945年以降、米国は太平洋を「内海化」しているのだ。

 ところが2000年代に入ってから、中国がこの覇権に異を唱え始めた。2006年にキーティング米太平洋艦隊司令官(当時)に対して中国海軍の司令官が「太平洋を2分割しよう」と提案したという逸話がある。

 習近平国家主席が2013年夏の米中首脳会談以来、「新型の大国関係」を唱え始めている。「G2論」の派生版だ。この頃から「広い太平洋には米中両大国を受け入れる十分な空間がある」というフレーズを使い始めた。つい最近も北京で米国のケリー国務長官に対して同様の言葉を発している。

 つまり中国は、太平洋において米国が覇権を握っている状態をよしとしていない。そこに国力に見合った自分たちの影響圏を確保し、覇権とは言わないまでも、米国と太平洋を分割し、できれば共存したいという意図を持っていると解釈できる。

 かつては、「米中は太平洋において共存できる」という楽観論も持ち上がった。米ボストン・カレッジ大学のロバート・ロス教授は、1999年に書いた論文の中で、このように主張した(ロス教授は後に考えを修正)。しかし、現在の南シナ海の状態を見て、米中が共存関係に向かっていると楽観的に判断する人々はすっかり減ってしまった。現状変更を積極的に進めようという中国の意図があまりにも明白に見えているからだ。

 いずれにせよ、「一帯一路」という広大なビジョンからも分かるように、中国が日本よりも大きなスケール、つまり「システム」レベルで国家戦略を地政学的に考えている点は、どうにも否定できない事実である。

米中に翻弄される日本

 米中という2つの「大国」は競争しながらも共存できるのかもしれない。だが、これまでの人類の歴史を見れば、この2国の間で戦争を含む大なり小なりの紛争が起こる可能性を否定することはできない。

 そして、東アジアという「サブシステム」の一角を占める日本は、今後もこの2国の関係に翻弄されることになる。

 このような中で、日本が考えるべきは、米中の覇権戦争に巻き込まれることなく、いかに相対的にパワーポジションを維持もしくは向上させるかだ。日本のリーダーたちには、日本をずる賢く立ちまわらせる知恵が必要になってくると言えよう。

6/10日経ビジネスオンライン 福島香織『長江クルーズ”人災”事故の背景 思想の自由を欠く国に事故を防ぐ想像力は育たない』記事について

中国は人民の生命を虫けら同様に考えているというベースを理解しておかないと。韓国も一緒です。日本人とは発想の仕方が違うのですから、彼らと付き合うことが本当に良いことかどうか真剣に考えるべきです。小生が長江下りをしたのは97年の10月ですからハッキリ外国人向けの船と中国人向けの船と分かれていました。中国人向けの船は過積載が当たり前。前にも書きましたが外国人向けの船であっても食事の後のゴミは黒いビニール袋に詰めて川に沈めていました。環境保護なんて考えてないという事です。

思想の自由の前に、「何をして良いか、何をしてはいけないか」の道徳の問題がある気がします。韓国同様責任者のトップが我先に逃げる文化があるとしたら日本人の育ってきた文化とは余りに異質です。孔孟の生まれた国と言っても誰も彼らの言い分をまともとに聞かず、社会で実践することがありませんでした。日本人は漢詩や論語の世界でしか中国を見ませんので、過つことになります。いつも言ってますとおり「騙す方が賢く、騙される方が馬鹿」な世界ですから。

記事

 中国湖北省荊州市監利県で江蘇省南京から重慶に向けて運行していた観光クルーズ船「東方之星」が6月1日午後9時半ごろ、湖北省監利県の長江上で転覆した事故は、確認されるだけで430人以上の死者を出す大惨事となった。長江三峡クルーズは、私も一度行ってみたいと長年、思っていた憧れの旅であり、自分が乗っていても不思議ではない。夜の暗闇の中、突然転覆し長江の水にのまれた乗客に自分がいたかもしれないと想像すると、その恐怖やパニックはいかほどであったかと胸がつまった。衷心より哀悼をささげる。

 ところでこの事故が、まったくの不運な天候による避けられない事故であったかというと、そうではないようだ。船の違法改築問題や、悪天候を押しての運行の責任問題が徐々に明らかになり、人災である可能性も濃厚になってきた。また、遺族の不満が当局に向かうことを避けようとするあまりの過剰な報道規制や、遺族の行動規制も中国特有のものとして日本などでは報道されている。中国では、確かに「小康社会」(ほどほどに豊かな社会)が広がるにつれて旅行人口が急激に増えているが、実は観光旅行をめぐる環境やリスク管理意識自体は、それに追いついていない。中国旅行に憧れる日本人も多いと思うが、中国の観光業界の問題点、リスクなどをこの事故から少し考えてみたい。

お手頃価格の文明船、改修改造に原因?

 東方之星号がどのような船なのか、まず説明したい。重慶東方輪船公司に所属する長さ76.5メートル、幅11メートル、深さ3.1メートル、2200トンの船で、定員は534人。GPSシステム、衛星テレビ、電話、カラオケルームなども備わり、一、二、三等に船室がわかれている。クルーズ船としては、ハイクラスの文明船として交通当局から高い評価を受けているが、クルーズ費用は1000元から2500元と「お手頃」価格の中国中間層向けだ。1994年に建造され、2度の改修を経ているが、中国における旅客船の強制廃船年限30年にはまだ達していない。

 重慶東方輪船公司は1967年に設立された国有企業で、長江旅客船運営会社の中ではかつては国内最高のサービスとされ、中国五大長江クルーズ船、東方之珠、東方王子、東方皇宮、東方皇苑、そして事故にあった東方之星、すべてこの会社の船である。

交通当局によると1997年と2004年に改修改造工事が行われている。

 このような大惨事を引き起こしたのはこの改修工事のせいではないか、という指摘もある。この会社の関係者や船舶検査士が中国紙・新京報に明らかにしたところによれば、船の構造を変え、船体の長さ長くしたことにより、重心が不安定になったことが、転覆リスクを増加させたのではないかという。

またあるメディアによれば、東方之星は重慶東風船舶工業公司が設計、重慶涪陵川東造船工場が建造したことになっているのだが、重慶涪陵川東はこれを否認しており、東方輪船が自分のところで建造したことが今頃になって明らかになった。つまり、東方輪船が、川東造船から既製の船舶構造の提供を受けて、それを東方輪船が自分のところで勝手に内装工事をしたというのだ。この方法で東方輪船は4年の間に6隻のクルーズ船を建造したという。

 となると東方輪船は実際のところ、東方之星を含む6隻のクルーズ船について、正規の旅客船造船工場でいちから建造したのではなく、かなりの節約方式で建造したということになる。ちなみに当時の東方輪船公司傘下の造船工場はすでに三峡ダム工事によって水没している。聞くところによると1992年以前は、その工場で建造されていた船は全部、小型の貨物船で、大型旅客船をつくるような設備ではもともとなかったとか。

節約方式で建造した船の事故、続発

 ちなみに同じ方式でつくられた6隻の船のうち、東方之珠、東方王朝、東方王子はいずれも事故を起こしている。東方之珠は1997年に西陵峡で衝突事故、幸い死者はでなかったが、かなりの賠償責任を負った。東方王朝は船上火災事故を起し、その後2001年に交通当局から改修工事に対して不合格評価をされて廃船、東方王子は2000年に座礁事故を起したほか、08年4月には、他の船との衝突事故を起している。

 東方之星は21年間無事故であったが、1997年の改修工事では、内装高級化のため、窓を増やしたり、客室の観音開きの扉をとって、中央に向かう廊下に改造したりしたという。このため、見た目はよくなったが、船の構造が複雑になり、事故が起きたときに脱出しにくくなったのではないか、という指摘もある。また客室ベッドを固定性のものから木造の移動性のものにしたため、船が傾いたときベッドが床をすべって移動してしまい、船が転覆しやすくなったとか、脱出のためのドアをふさいだのでは、という指摘もあった。またこの改修時、船体の長さが11メートル長くなった。しかし、この時の安定性に関する計算結果は、船舶検査でも合格ラインを十分に超えていたという。

 2004年の改修は、主に船上で出る汚水の浄化設備の設置やトイレの改修工事だったという。長江の環境保護のために船上汚水を垂れ流すことが禁止されたための措置だった。だが、構造や船体の重さ、バランスが変わった可能性もある。ちなみに船を改造した造船工場は10年前に破産して、もうない。

 こうなると船舶検査当局の検査能力の信頼性が問題となってくる。一般に、検査当局は地元交通局の主管となる。東方輪船は、設立当初は万州区交通主管部門傘下の国有企業で、1992年に四川省東方輪船公司、97年に重慶市東方輪船公司と名前を変える。03年には万州区国有資産管理委員会の主管となる。東方輪船公司の党委員会書記および総経理ら幹部は全員、万州区交通局によって任命され、はっきり言ってしまえば、交通局の身内みたいなものである。なので、船舶検査も身内同士で行っているようなもので、果たして客観的でフェアであったかというのは、中国の地方でありがちな例をみれば、今ひとつ信用のおけないものであったといえるだろう。

 当地の海事局関係者の地元紙の説明によれば、東方之星の安全検査の頻度は非常に多く、二カ月に一度は安全検査が行われていたとも言う。普通は一年に一度の検査で済むはずだが、それだけ老朽化し、故障が多かったとか。この船のこれまでの安全検査では故障個所は累計287か所であったという。

老朽化×過剰運営=人災の影濃く

 また管理運営方面では、過剰運営が指摘されている。暴風雨の悪天候の夜間、なぜ航行を強行したのか。他の船は運行を見合わせた船もある。おそらくは、いわゆる儲け主義優先からクルーズの中止などによる返金対応や、次のクルーズ客の予約などが埋まっていたことから、スケジュールを変える判断ができなかったのだろう。この会社は、かつて従業員の養老保険支払いをごまかしていたことが、従業員の告発でばれ社会問題化していた。このため2004年ごろから経営が悪化、2013年の企業年報によれば、総資産7720万元、負債総額が1億6846万元、2014年の企業総資産は8975万元、負債総額が1億8468万元だった。

 こういったことから、事故は目下、中国国内報道でも人災の側面がクローズアップされている。生存者14人中、船長と機関長がともに助かっていることも、遺族の反感を買っている。船長は、突風を受けたために左旋回して風を流そうとしたが間に合わなかったと証言している。彼は22歳で初めて船舵を取って以来30年、操舵手としての経験をもつベテランで、2007年から東方之星船長を務めている。2011年には「万州区安全先進」の表彰を受けていた。だが、そんなベテラン船長がなぜ、暴風雨の夜間航行を強行したのか。新華社の取材に船長は、背から風を受けて北上できると思ったが、突然風が強くなり、船体をコントロールできなくなったと話していた。ちなみに船長の月収は4000元と、都会の大卒新入社員以下だ。

 目下、事故の責任は国有企業と地元政府の問題に集約される形で世論が誘導されるような印象でもある。特に現場が、すでに失脚している元重慶市党委書記の薄熙来が執政責任者であった土地でもあり、現政権としてもメディアとしても遠慮なく批判できるという面もある。

 だが、この企業だけが特別問題を抱えていた悪徳企業であるのかというと、そうとはいえない。むしろ、企業の儲け主義、あるいは正常な市場競争経済でないため、経営悪化の続く国有企業が倒産せずに人の命を預かる観光クルーズ船経営を継続できる現状、中国に根付いているリスク管理軽視、地元検査当局との癒着体質、すべて中国のあらゆる産業に共通する問題があるといえる。

 ただ、観光業はこの10年の間、急激に拡張を続け、観光客が急増していること、また観光客の主流がやや豊かな市民たちであり、それなりの学歴があり情報収集能力や発信力がある彼らの批判や権利主張は、他の産業の事故、たとえば炭鉱事故などの犠牲者たちと違って、世論に影響しやすいという点が、当局にとっては他の産業界よりもやっかいなのである。今まで、事故犠牲者の批判や責任追及の声を無視することに慣れていた関係当局の官僚たちは、近年の観光産業に関しては思い通りにできず、ときのその反応や必要とされる対応が、彼らの想像力を超える。

 根っこは、昨年大晦日に上海市のバンドのカウントダウンイベントで発生した群衆雪崩事故などとも、同じといえる。あのイベント事故も、主催者側の危機管理能力、想像力を超える見物客の多さと行動があり、また、上海市民や上海に来ている観光客に事故犠牲者がでることの影響力を軽く見ていた。

 こう考えてみると、中国では普通の観光客が晒されている安全問題は、他の食品安全や環境汚染同様、結構深刻である。もし、あなたが、中国で観光旅行、とくに中国人庶民が参加するようなツアーに参加したり、ゴールデンウィークや春節時期のイベントなど、殺人的な人出が予想される観光地に赴くのであれば、当然そのリスクは理解しておいた方がよいし、保険などそのリスクから身の安全を守るための措置を自分で講じておいた方がよいだろう。

情報と思想の自由の欠如が、次の悲劇へ

 長江事故犠牲者のため、初七日には追悼式が行われたが、当局対応への不満と怒りに燃えて現場に駆け付けている遺族1400人は、混乱を避けるために招かれなかった。また、身元確認のDNA鑑定結果を待つ遺族は、当局の管理下におかれ、外国メディアの取材も勝手に受けられない状況であることに、不満はさらに募っているという。国内メディアに対しても、新華社の共通原稿を使い、独自取材を禁じる通達が出ているとか。いまだ、この国は、犠牲者や悲しみに暮れる遺族の立場よりも、権力サイドの立場を守るために情報をコントロールすることを第一に考える。

 こういった大事故の根本原因について、私は官僚から企業、そして普通の人民に至るまでの想像力の欠如だと思っているが、想像力というのは十分な情報と思想の自由があって初めて広がるもの。今の中国で最も欠けているものだろう。だから、こういった事故はまた起こるのではないかと懸念している。

6/10日経ビジネスオンライン 森永輔『国交正常化50年だが、韓国の日本外しは不変 武貞秀士・拓殖大学大学院特任教授に聞いた』記事について

武貞氏はTVで見る限り韓国に対して思い入れがあり、客観的な目を曇らしているのではという思いがあります。詮方なきことかもしれません。韓国に長く住み、それが飯の種になっていれば。相手国の悪口を言えば情報が入って来なくなるので。小生の場合、中国に8年いましたけど別にそれが飯の種になった訳でもなく、逆にしょっちゅうぶつかり合っていました。それで裁判やら労働委員会に訴えられたわけですが。でも行った当初は骨を埋める覚悟でしたが、余りの人間の厭らしさに唖然として止めました。

朴槿惠大統領の今月の訪米は中止になりました。MERSのせいと言われていますが、本人がアメリカに病原菌を運ぶのをアメリカが嫌ったのか、朴槿惠大統領が訪米するとTHAADの配備を押し付けられるのを嫌がったのが原因かは分かりません。でもペンタゴンはこれで益々韓国に対する目が厳しくなるでしょう。「戦時作戦統制権」は期限なしで延長していますが、裏を返せば期限を定めなかったのはアメリカが何時でも韓国に返しますよという事でしょう。そうなれば北は一気に攻め込みます。油が足りないと言っても韓国から奪えば良いので。ソウルを火の海にすれば韓国人ですからすぐに戦意喪失するでしょう。

軍艦島の世界遺産登録にも韓国は異議を申し立てています。東京オリンピックの時もそうでした。日本のやる事為すことに反対してきます。ここまではっきりした態度を示せば間違いなく敵国です。福島の農水産物の輸入禁止措置はまだ解除していません。日本が韓国をWTOに訴えたことだけは立派。ただMERSなんだから韓国人の日本入国と日本人の韓国への出国は禁止すべき。それができないようでは「腰抜け」と言われても仕方がない。相手がやってきたことに唯唯諾諾と従うだけでは舐められます。反撃せねば。別に戦争しろと言ってるのではなく、合法的に制限は可能と言ってるだけです。日本の政治家も官僚も根性が足りません。

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6月22日、日韓国交正常化から50年を迎える。

だが、日韓関係は5つの大きな問題――竹島、教科書問題、慰安婦、靖国神社参拝、戦時強制徴用工補償--を抱えたまま、膠着状態を抜け出せずにいる。いずれの問題も解決の目途がたっていない。

改善の兆しらしきものは見えてきた。3月には、岸田文雄外相と尹炳世(ユン・ビョンセ)韓国外相が会談をした。5月30日には、中谷元防衛相と韓民求(ハン・ミング)国防相が4年ぶりの会談を行った。

日韓関係の現状と今後の展望について、武貞秀士・拓殖大学大学院特任教授に聞いた。(聞き手 森 永輔)

—日本と韓国が日韓基本条約を結び、国交正常化から50年が経ちました。この間の歴史を振り返ると、現在の日韓関係はどれくらい悪いものなのでしょう。

武貞:最悪ではないと思います。朴正煕(パク・チョンヒ)大統領(当時)の陸英修(ユク・ヨンス)夫人が1974年に死去する事件が起こりました。この時には、朴正煕大統領が日本との国交断絶を検討するよう指示を出したほど険悪な状態になりました。

 朴正煕氏は現職である朴槿恵(パク・クネ)大統領の父親、陸英修夫人は母親です。在日朝鮮人の文世光が朴正煕氏を暗殺しようとして、その流れ弾が陸英修夫人に当たったのです。使用された拳銃は大阪府警の派出所から盗まれたものでした。加えて文世光は、偽のパスポートを使い、日本人を装って韓国に渡っていました。このため、日本政府の対策が十分でないとして韓国が態度を硬化させました。

 1973年に金大中(キム・デジュン)拉致事件が起きた時も日韓関係は悪化しました。1998年に大統領になる金大中氏を、韓国の情報機関である中央情報部が日本国内で拉致して韓国に移送した事件です。韓国政府が日本の主権を侵害したわけですね。この時は日本側が事件を問題視しました。

 これらの事件が起きた時に比べれば、現在の状況はましと言えるかもしれません。しかし、一層深刻とも言えます。2つの事件が起きた時には、問題は目の前の1つに限定されていたし、解決策も見えていました。現在は竹島、教科書、慰安婦、靖国神社、戦時強制徴用工補償といった5点セットが同時に問題になっています。そして、いずれの問題も落とし所があるわけではありません。

—日韓関係は、李明博(イ・ミョンバク)前大統領が竹島に上陸したのを機に悪化し、朴槿恵政権が強硬の度合いを強めるにしたがって現在に至るように見えます。

武貞:韓国はいま、満を持して国家の戦略を立てて日本に真っ向勝負を挑んでいます。安倍首相が歴史認識を改めないかぎり首脳会談はない。日本と北朝鮮が接近することは許さない。戦時中に犯した罪を謝罪すべき。70年談話はこれまでと同じ表現を用いるべき。慰安婦には国家による補償をすべき。さらに、こうした主張を欧米諸国に広めています。

 朴槿恵大統領は計算づくで「日本外し」へと舵を切ったのだと思います。その計算に最も大きな影響を与えたのは中国の台頭でしょう。中国は韓国にとって最大の貿易相手国です。韓国を訪れる中国人観光客も多い。済州(チェジュ)島の開発には中国企業が多額の投資をしています。韓国にお金をもたらす国に目が向いたわけですね。韓国にとって中国は不可欠な存在、日本よりも優先すべき存在なのです。

 韓国は、韓国と中国が戦略的パートナーシップを結び、両国が中心となって、東アジアの信頼を醸成し発展していく環境を築こうと考えています。朴槿恵大統領は大統領選挙の期間中からこの方針を決めていました。

 日本人は、アジアの発展を日中韓の3カ国でやれば、もっといいじゃないかと考えるでしょう。しかし、それは中国が許しませんでした。中国は、「日本に苦労させられた者同士でことを進めよう」と韓国を説得したのです。日中韓のFTA(自由貿易協定)にしても、中韓を先行するよう韓国に求めました。その勢いは韓国の想像を超えるものでした。

 だから、日韓関係が悪化している一連の動きについて、韓国は中国に乗せられた側面もあると思います。

 朴槿恵大統領はこれまで述べた中国と連携して進める政策とは別に、2013年10月に「ユーラシア・イニシアチブ」と呼ぶ政策も発表しました。アジアから欧州へとつながるユーラシア大陸をひとつの共同体に育て上げるという構想です。この構想は「その東の果ては韓国」と定義しています。つまり、日本外しですね。

日本の沈没を期待

 中国の台頭に加えて、韓国が対日強硬政策を取る引き金となったのは東日本大震災です。これを機に韓国で日本沈没論が力を得ました。被災地の復興には長い時間がかかる。日本経済は長期にわたって停滞するだろうと認識したからです。

 「沈没させたい」という期待もあったでしょう。韓国は「韓国の勝ち、日本の負け」ということをあらゆる機会を通じて確認せずにはいられないトラウマを背負っているからです。

 韓国は日本統治時代を通じて、日本に一度も勝つことができませんでした。韓国の1948年憲法は前文で「三・一運動で建立された大韓民国臨時政府の法統」を継承しているとうたっています。三・一運動はささやかな反日デモを計画したのですが、総督府によって規制されて不発に終わりました。その後、日本の統治から脱することができたのは第二次世界大戦終了によってです。つまり、韓国は自らの力で日本の統治を終えたのではありませんでした。これがトラウマになっているのです。

 一方、北朝鮮の1948年憲法は、抗日パルチザン闘争の経験をもとに、日本に勝ったという経験を強調しています。韓国は「日本に勝った」という爽快感がないまま建国しました。

日本叩きをしているうちに韓国自身が孤立する危機

—最近、日韓の政府レベルの交流が進み始めました。3月には岸田文雄外相と尹炳世(ユン・ビョンセ)外相が会談しました。5月30日には、中谷元防衛相と韓民求(ハン・ミング)国防相が4年ぶりの会談を行っています。一連の会談は日韓関係が良好な方向に向かいつつあることを示しているのでしょうか。

武貞:そうは思いません。朴槿恵大統領の訪米を6月に控えているので、日本との関係改善を進めながら、米韓首脳会談の環境整備をしている印象を受けます。何もしないまま米国を訪れれば、米国が不満に思うことは必至です。

 韓国政府の最近の対話姿勢の背景には、韓国の国内世論の影響もあるでしょう。韓国ではメディアも学者も「韓国が日本叩きをしている間に、韓国そのものが孤立してしまった」という認識を示し始めました。

 こうした見方が浮上し始めた理由の1つは、4月に行われた安倍晋三首相と習近平国家主席との首脳会談です。韓国は直前まで、この首脳会談は実現しないと読んでいたので、さぞかし驚いたことと思います。習近平国家主席の表情が、2014年11月に行われた前回の日中首脳会談に比べて和らいだものになっていたこともショックだったでしょう。

 この5月に、自民党の二階俊博総務会長が全国旅行業協会の関係者など3000人を引き連れて訪中し、歓迎を受けました。日中の関係改善を目にして、韓国はまた驚きました。

 中国のお先棒を担いで日本叩きをしてきたのに、中国に梯子をはずされるのではないかと危機感を覚えるようになったのです。中国が推進するアジアインフラ投資銀行(AIIB)も、韓国は当初、中国と韓国、インドが主導するものと理解して参加を決めていました。だから日本に副総裁の座を提示していたとのニュースには唖然としたことと思います。

—韓国の世論が変化したことには、安倍晋三首相の訪米も影響したのでしょうか。

武貞:もちろんです。安倍首相の米連邦議会での演説について、韓国政府と在米韓国人は一体となって、あの手この手を使って阻止しようとしました。ですから韓国は、米議会が安倍首相に演説させることはないだろうと踏んでいました。しかし、結果は違った。

—韓国は安倍首相の演説をどのように評価しているのでしょう。

武貞:多くの人が「安倍首相は米国でひんしゅくを買った」「良識のある米国人は安倍演説を評価しなかった」と捉え、マスコミはそのように報道しています。

安倍首相が訪米で得た成果を相殺できるか

—朴槿恵大統領の訪米は何がテーマになるのでしょうか。

武貞:米国が韓国に対して、米韓関係と韓中関係のどちらを重視するのかを確認する場になると思います。韓国としては、経済面では中国が大事です。一方、軍事面は米国を頼りたい。米国の機嫌を損ねる事態は避けたいところでしょう。けれども、これを両立させるのは困難です。

 具体的な議題としては、まず有事の際の作戦統制権の移管問題があります。米国と韓国はこれを在韓米軍から韓国軍に移管することを決めました。しかし、韓国の都合で延期されています。韓国は、米軍が作戦統制権を持っている方が北朝鮮の核ミサイルなどに対する抑止力が働くと考えたのでしょう。米国は、一度決めたことなのだから実行するよう韓国に求めています。

 最も大きい議題は高高度防衛ミサイル(THAAD)、いわゆるミサイル防衛システムの配備に関する問題です。米国は韓国に、配備に同意することを求めるでしょう。しかし韓国は明言することは勘弁してほしいと訴えるのではないでしょうか。配備を受け入れれば、中国と北朝鮮から直接強く責められることになるからです。

—朴槿恵大統領はたいへんな立場ですね。さぞかし米国に行きたくないことでしょう。

武貞:でも行く必要があるでしょう。朴槿恵大統領は、安倍首相が米国で演じたパフォーマンスの効果をオフセットしたいところです。米国に大事にされるところを韓国民に見せつけ、韓国が孤立していないことを示したい。

—米国側の対応によっては、孤立していることをかえって浮き立たせることになりませんか。

武貞:その可能性は否定できません。しかし、米国に行かなければ、その方が孤立を一層際立たせることになります。

日韓関係を改善するには日本が強くなるしかない

—最悪とは言えないまでも深刻化している日韓関係を改善するためには、どうすればよいのでしょうか。

武貞:身も蓋もない言い方になりますが、短期間ではどうしようもありません。先ほど申し上げたように、日韓の間で持ち上がっている問題はいずれも構造的なもので、早急に解決できる性質のものではないのです。相互信頼と未来志向の日韓関係を築くためには、時間をかけて、これから挙げる政策に取り組んでいくしかありません。

 1つは、日本社会と日本人をよく知る韓国の人材を増やすことです。このためには交換留学などの交流を拡大していくことが大事ですね。日本で学ぶ韓国からの留学生はどこの大学でも激減しています。ウォン高・円安であるにもかかわらずです。日本を訪れる韓国人観光客の数は増えていますが、短期間の観光旅行で日本社会を理解することは難しい。

 金大中大統領の時代に日韓関係は大きく改善しました。これは金大中大統領が日本社会と日本人を熟知していたからです。今の日韓関係からは想像しがたいことですが、金大中大統領が1998年に来日した際に公表した日韓共同宣言には「両国間の安保対話及び種々のレベルにおける防衛交流を歓迎し、これを一層強化していくこととした。また、両首脳は、両国それぞれが米国との安全保障体制を堅持するとともに、アジア太平洋地域の平和と安定のための多国間の対話努力を一層強化していくことの重要性につき意見の一致をみた」とあります。これを機会に日韓の防衛分野の交流が進みました。

 2つ目の施策は日本の防衛力を高めることです。日本は非常に抑制的な防衛政策を取ってきました。非核三原則、武器輸出三原則等、防衛費のGNP(国民総生産)比1%枠。憲法9条はその最たるものです。

 こうした抑制的な防衛政策が、日本の軍事力は怖くないという楽観を韓国に与えてきました。これを改める必要があります。空対地ミサイル、弾道ミサイル、巡航ミサイル、作戦遂行に必要な数の空中給油機を装備するのがよいでしょう。いずれも、既に韓国が装備しているものです。日本も韓国と同じ発想で防衛を考えていることを示すわけです。こうすることで、韓国が日本とは仲良くしないといけないことを理解してもらう。

 日本が防衛力を高めれば韓国は反発するでしょう。しかし、自主規制しても反発されてきたのが日本の戦後史です。ならば、やることをやって反発された方がよい。

 第3は、日本の国際的な地位を高めることです。これにはいくつかの手段が考えられます。まず、国際連合の安全保障理事会で常任理事国になること。それから、国際的な金融体制を日本が主導することです。例えば、アジア開発銀行の本部を霞ヶ関に持ってくる。

—日本が力を付け、「沈没」しない国であることを見せる必要があるわけですね。そのためには経済力を復活させることが欠かせません。

武貞:おっしゃるとおりだと思います。

進歩派が政権に就いても大きく変わることはない

—日韓関係が悪化した背景には朴槿恵大統領の判断が大きいという話を伺いました。2017年の大統領選挙で政権が交代すると、日韓関係が改善する可能性はあるのでしょうか。保守政権が続いているので、例えば、韓国進歩派が政権を取ったらどうなるでしょう。

武貞:大きな変化は考えづらいでしょう。竹島、教科書、慰安婦、靖国神社、戦時強制徴用工補償を問題視する姿勢は、進歩派も、朴槿恵大統領と寸分違いません。むしろイデオロギー的な日本批判を強めることがあるでしょう。

 ただ、進歩派は親北朝鮮が多く、この点は朴槿恵政権と異なります。日本が北朝鮮との対話を継続し、関係が改善できるとすれば、韓国進歩派の政権と認識を共有できる部分があるかもしれません。

—進歩派の大統領候補になり得る人物で、親中派はいるのですか。

武貞:現在、名前が挙がっている文在寅(ムン・ジェイン)氏や安哲秀(アン・チョルス)氏、国連事務総長を務めている潘基文(パン・ギムン)氏はいずれも特に親中というわけではありません。朴槿恵大統領は個人として親中派です。しかし、いまの経済、政治、安保分野の動きを見ると、韓国の次の政権下でも中韓関係をさらに緊密化する以外の選択肢はないでしょう。

6/8日経ビジネスオンライン 白壁達久『天安門事件から26年後の香港の現実 中国化の波が迫る中で進む悲しい民主派の分裂』記事について

今の香港の姿を台湾の人達は良く見ていた方が良いでしょう。去年3、4月の台湾での太陽花学運では王金平立法院長の斡旋で中国とのサービス貿易協定にストップをかけることができました。外省人の馬総統が焦って中国との統一の足がかりとしようとしましたが、結局11月の統一地方選で国民党は惨敗を喫しました。来年1月の総統選は蔡英文民進党党首で決まりです。今回の訪米でも前回の総統選前の取り扱いと違い、アメリカは歓待しました。それはそうでしょう。総統になるのが確実な上に、中国がアメリカの覇権に挑戦しようとしているのですから。

それに引き換え中国と陸続き、かつ97年に法的にも中国の一部となった香港の運命は悲惨です。行政長官の民主選挙の約束も共産党はあっさり反故にしてしまいました。昨年9月の雨傘革命もポシャリ、本年6月4日の天安門事件追悼集会の参加者も少なくなったという事は、中国共産党の意思が香港内部にどんどん浸透してきているという事です。香港は今までは自由世界との経済的な窓口でしたが、上海や深圳が成長し、香港の地位はぐっと下がっています。共産党は強気で香港に臨めます。

民主派の分裂と言いますが多様な意見の存在は民主主義の根幹をなすものです。ただ、共産党という大なる敵を前にして大同団結しないといけないのでは。本記事を読んで、意見の違いというよりは世代間の人生観の違いかと感じました。年寄りは老い先長くないので「長いものに巻かれよ」式で、若い人は「将来の香港の基本的人権の一つである自由権」が確保されるかどうか心配という所。日本でも、南シナ海の中国の内海化を見ても年寄りは考え方が変わらず(新聞・TVから情報入手しているためと思われる)、集団的自衛権に反対している人が多い。若い人はいろんな媒体から情報入手できるので、年寄りよりは自分の頭で判断できるのではないかと思います。

共産党というか左翼の人間は、どの国であれ、平気で嘘がつけれる人達です。また虐殺が得意です。毛沢東、スターリン、ヒットラー(国家社会主義ドイツ労働者党)が御三家です。そこにポルポトも加わります。左翼の言うことは疑ってかかった方が良いです。

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「今年は明らかに人が少ない…昨年はもちろん、2年前に参加した時でさえもっと混んでいて、身動きもできないほどだったのに…」

 6月4日夜、香港島で最大の公園であるヴィクトリアパークにやってきた香港のある男子大学生(21歳)は、困惑気味にこう語った。

(6月4日に香港島のヴィクトリアパークで開かれた天安門事件の追悼集会。13万5000人が参加したが、昨年より25%も減少した。)

( 1人で参加する若い人も少なくなかった)

香港では毎年、6月4日の午後8時からこのヴィクトリアパークで、天安門事件の犠牲者を追悼する大規模集会が開かれる。参加者は配られたろうそくに火をともし、みんなで歌を歌い、黙祷を捧げるなどして天安門事件で命を落とした学生たちの魂を鎮めると同時に中国本土の民主化を願う。

 ただ、天安門事件から26周年となった今年6月4日の香港の追悼集会は、恐れていた通りの展開となってしまった。

参加者が前年比で25%も減少

 追悼集会を主催する香港市民支援愛国民主運動連合会の発表によると、今年の参加者は13万5000人と、昨年の18万人から大幅に減少した。昨年は天安門事件から25周年という節目の年でもあり、参加者数が過去最高を記録したのは自然なことで、その意味で今年の参加者数が減る可能性はあったとも言える。

とはいえ、香港市民の間で、民主化に対する関心が薄れているのかというと、そうではない。2017年以降の香港政府のトップである行政長官を選ぶ選挙の仕組みを巡って、昨年9月末から大学生が中心となって大規模なデモを繰り広げたことをご記憶の読者も多いだろう。

昨年9月にデモが起きたのは、同年8月末に中国の全国人民代表会議(全人代)の常務委員会が、2017年の行政長官選挙に立候補するには、「指名委員会の半数以上の委員の推薦が必要」との条件を盛り込んだからだった。指名委員会は中国共産党の意を受けたメンバーが多数を占めているため、指名委員会の推薦が必要となると、民主主義を求める人物は事実上、排除され立候補できなくなることを意味する。

そのため、一国二制度の下で自治権が認められていたはずと考えていた香港市民の間では、この選挙制度に対する失望が広がった。なかでも、大学生や高校生を中心とした若者たちが強く反発、大学の講義や学校の授業をボイコットし始め、さらに大規模なデモをしたり香港の経済の中心地である中環(セントラル)の一角を占拠したりと、3カ月にもわたって抗議活動を展開したのだった。

 そうした動きを踏まえれば、中国の民主化を求める今年の追悼集会には、昨年の25周年にも増して人が集まってもおかしくはなかったはずだ。だが、今年の追悼集会への参加者数は昨年に比べ25%も減り、2008年以来の少なさとなったという。

民主派が分裂、世代間で認識のギャップも

悼会への参加者数が減った背景には、香港における民主化を求める運動が、ここへ来て変質してきていることが大きい。追悼会場で参加者がなぜ減ったのかを聞くと、みな同じ答えを口にした。

 「分裂です」

 香港の民主化運動が、その求める民主化の内容によって分裂してきているのだという。まず従来から香港民主派を自称してきた一派の主張は、「中国本土の民主化を願い、進めること」だった。若かった頃、大陸で何らかの民主化運動に加わり、そのために政府から厳しい弾圧を受けるなどしたことから、当時はまだ英国統治下にあって自由が保障されていた香港へと逃れてきた人が少なくない。今や年配になったとはいえ、そうした香港人の多くは本土の民主化を心から願っている。だからこそ、中国における民主化を求めて1989年に立ち上がったものの、中国政府による武力弾圧で犠牲になった天安門の学生たちを今も追悼したいとの思いから毎年、6月4日に集っている。

 ところが、学生を中心とした若者たちが求める民主化の主張は異なる。昨年のデモで中核的存在となった香港大学など複数の大学の学生会は今年、天安門事件の追悼集会への不参加を事前に表明していた。中国本土の民主化ではなく、自分たちが住むこの香港の民主化の維持、発展にこそ集中すべきだ、というのが彼らの言い分だ。

 香港の民主化を重視する一派の中には、さらに香港そのものの独立を目指すべきだとして、抗議活動を展開している強硬派グループも誕生している。

 民主化運動が、その求める内容、主張によって分かれていく一方、追悼集会に参加した人たちに話を聞くと、彼らの間にも様々な意見、見方があることがうかがえる。

 友人と参加した18歳のある女子大生は、「(中国本土の民主化を求める)この追悼集会の主旨すべてに賛成しているわけではない。(行政長官の)選挙制度改革について、真の普通選挙の実現をもっと訴えるべきだと思う」と香港の民主化の必要性を主張する。一方、ある53歳の会社経営者の男性は「大陸の民主化こそが私の願いだ」と訴える。

民主派の弱体化は中国政府の思うつぼ

 このような状況に対し、ある中年の会社員男性は「この集会は、天安門事件で犠牲になった人たちを追悼する儀式のはずだ。それが最近、香港の民主化運動をまとめて論じる人が増えてきた。おかしい。本来の姿に戻すべきだ」と不満を漏らす。

年配の世代は自らの過去を振り返って中国本土の民主化を願い、若い世代は自分たちが暮らしていく今後の香港の民主化を願う。今後の行政長官選挙の在り方が明らかになった昨年以降、こうした世代間ギャップが、これまでひとくくりに論じられていた民主派を分裂させている。

 背景には年々、香港への圧力を強めつつある北京政府の動きに対する不安が高まっていることがあるのは間違いない。それを間近に感じているのは若年層だ。2012年、中国共産党は香港政府に対して、中国国民としての愛国心を育む「愛国教育」を導入するよう求めた。教育という仮面をかぶった洗脳には、教師や保護者だけでなく中高生も強く反発、香港の街中で住民も巻き込んだデモを起こし、愛国教育義務化の撤廃に持ち込んだ。

 自分たちがこれからの人生を送る香港の自由が侵されるのであれば、将来に不安を感じるのは当然だろう。しかし、年配者にとっては「若者の抱く将来への不安」を我がことのように理解するのは難しいかもしれない。

 本来、そうした逆風の時にある時こそ市民の一致団結が求められる。それだけに、筆者はこうしたこの世代間ギャップによる民主派の分裂という展開を恐れていた。

民主化を求める運動が分裂すればするほど、1つの抵抗勢力としては弱体化する。それは中国政府にとっては思うつぼだろう。香港市民が懸念する急速な中国化。民主派の分裂は、自らこの流れを早めることになるからだ。

6/8ダイヤモンドオンライン 北野幸伯『「AIIB」後~米国の逆襲で、激変する日米中ロのパワーバランス』記事について

一昨日のBS日テレ「深層News」に宮家邦彦と朱建栄が出演していました。朱建栄は7ケ月も上海で監禁されたこともあって、中国の肩を持つ発言ばかり。(以前もそうでしたが)。朱の発言は他の中国人同様論理がムチャクチャ。中国にとって都合の悪い話になるとすぐ論理のすり替えをする。「中国だけが埋立している訳でない」(中国がやったから対抗上か、先制防御の意味だろうに。規模が違いすぎるし、中国と違って将来ミサイル基地にとか考えていないでしょう)、「戦争中は西南諸島(西沙諸島と南沙諸島?)は台湾が統治していた」(台湾と言う国はなかった。あるとすれば日本の統治だが、戦争中にそんな島が価値があったかどうか)とか。宮家が「日本の外務省は中国が領有権を主張するのであればキチンと説明してくださいと言っている」と言ってもそれは説明できるはずもない。盗み・パクリの得意な民族ですから。証拠があれば中国のことですから我先に出すでしょう。でっち上げてでも。それが出て来ないのはないからです。日本の尖閣領有を認めた中国の地図を日本が出した時に中国は何と言いましたか。「百枚、千枚でも出せる」と大見得を切ったにも拘わらず出して来ないではないですか。ないからです。言ったもの勝ちの発想でしょう。そう言わないとクビでしょうから。証拠のあるなしは関係なし。中国が如何に法治国家でないかという事です。法治国家であれば、挙証責任は訴える側にあり、明確な証拠が必要です。韓国の慰安婦のように証言だけで断罪するのでは法治国家とは言えません。明確な証拠が必要です。

日本は日米同盟機軸でしか生きる道はありません。核保有が理想ですが、時間的余裕がなければ、米国と早くニュークリアシエアリングすべきです。中国は基本的に「騙す人が賢く、騙される人が馬鹿」という価値観の民族ですから、まともに付き合ったら経済的な損失はおろか精神的にスポイルされます。中韓のような人たちと付き合えば発想が彼らのようになるでしょう。日本人は敬して遠ざけるべき。天心、新渡戸、鈴木大拙の英語で書いた本を読んでみると良いです。彼らが白人に英語で日本人の立場を主張していますので。ゴマスリ日本人とは志の高さと美に対する意識の違いを感じさせてくれます。

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AIIB事件」で世界的に孤立した米国が、中国に逆襲をはじめている。一方、これまで「主敵」だったロシアとの和解に乗り出した。一方、「尖閣国有化」以降、戦後最悪だった日中関係にも、変化がみられる。

コロコロ変わり複雑! 大国間の関係は今、どうなっているのか?
 

「AIIB事件」以降、米国の対中戦略が大きく変わってきた。南シナ海における「埋め立て問題」で中国を激しく非難するようになったのだ。一方で、これまで最大の敵だったロシアとの和解に乗り出した。

 対する中国政府は、日本からの訪中団を大歓迎し、「日中和解」を演出した。“昨日の敵は今日の友”を地で行くほどにコロコロ変わり、複雑にみえる大国間の関係。いったい今、世界で何が起こっているのだろうか?


 2015年3月に起こった「AIIB事件」は、後に「歴史的」と呼ばれることになるだろう(あるいは、既にそう呼ばれている)。

 3月12日、もっとも緊密な同盟国であるはずの英国は、米国の制止をふりきり、中国が主導する「アジアインフラ投資銀行」(AIIB)への参加を決めた。その後、ドイツ、フランス、イタリア、オーストラリア、韓国、イスラエルなども続々と参加を表明し、米国に大きな衝撃を与えた。


 この問題の本質は、「親米国家群が米国の命令を無視し、中国の誘いに乗ったこと」である。「誰もいうことを聞かない国」を、はたして「覇権国家」と呼ぶことができるだろうか?「AIIB事件」は、「米国の支配力衰退と、中国の影響力増大」を示す歴史的な出来事だったのだ。しかし、米国は、あっさり覇権を手放すほど落ちぶれていない。



「米国は必ず『リベンジ』に動くだろう」。筆者はそう確信し、米国の過去の行動から予想される「リベンジ戦略」について書いた(詳細はこちらの記事を参照)。そして米国は、はやくも予測通りの行動をとりはじめている。


「南シナ海埋め立て問題」で 緊迫する米中関係

 もっともわかりやすいのは、米中関係が急に冷え込んできたことだろう。これは、特に世界情勢を追っていない人でも感じているはずだ。表向きの理由は、「中国が南シナ海で大規模な埋め立てをしていること」である。たとえば、米国のカーター国防相は5月27日、中国の行動を厳しく批判した。(太線筆者、以下同じ)



<米国防長官、中国を非難…「地域の総意乱す」
読売新聞 5月28日(木)12時6分配信

【ワシントン=井上陽子】カーター米国防長官は27日、ハワイ州で行われた米太平洋軍の司令官交代式で演説し、南シナ海のスプラトリー(南沙)諸島で岩礁埋め立てや施設建設を進める中国の動きについて「中国は、国際規範や、力によらない紛争解決を求める地域の総意を乱している」と強く非難した。>



 そして、数ヵ月前には想像もできなかったことだが、「米中軍事衝突」を懸念する声が、あちこちで聞かれるようになった。



<米中激突なら1週間で米軍が制圧 中国艦隊は魚雷の餌食 緊迫の南シナ海
夕刊フジ 5月28日(木)16時56分配信


 南シナ海の南沙(英語名スプラトリー)諸島周辺の領有権をめぐり、米中両国間で緊張が走っている。

 軍事力を背景に覇権拡大を進める習近平国家主席率いる中国を牽制するべく、米国のオバマ政権が同海域への米軍派遣を示唆したが、中国側は対抗措置も辞さない構えで偶発的な軍事衝突も排除できない状況だ。>

「中国が、他国と領有権問題を抱える場所での埋め立てをやめないから米国が怒っているのだ」というのは、「表向き」の理由に過ぎない。

 なぜなら、この問題は以前から存在していたからだ。中国が本格的に埋め立てを開始したのは、13年である。そして14年5月、フィリピン政府は、ミャンマーで開かれたアセアン首脳会議の場でこの問題を提起し、中国に抗議した(フィリピンは、中国が埋め立てを進める場所は、「自国領」と主張している)。


 つまり、この問題は、1年前には全世界の知るところとなっていた。ところが、米国はごく最近まで、この問題を事実上「無視」「放置」していた。米国が、急に中国の動きを大々的に非難しはじめたのは、「裏の理由」(=AIIB事件)があるからだろう。


中ロ両方は敵に回せない! 突如ロシアとの和解に動き出した米国

 前回の記事で筆者は、米国が中国にリベンジするにあたって、「ロシアと和解する可能性がある」
と書いた。米国はこれまで、「敵に勝つために、他の敵と組む」ことを繰り返してきたからだ。

 たとえば、米国は第2次大戦時、日本とナチスドイツに勝つために、「米帝打倒」を国是とするソ連と組んだ。戦後は、敵だった日本とドイツ(西ドイツ)と組み、ソ連と対峙した。1970年代にソ連の力が増してくると、米国は中国との和解に動いた。


 こういう過去の行動を見れば、米国がロシアと組む可能性は否定できない。誰がどう考えても、中国・ロシアを同時に敵に回すより、ロシアを味方につけて(少なくとも中立化させて)中国と戦うほうがいい。では、「AIIB」後、米ロ関係にどんな変化が生じているのだろうか?

 米国のケリー国務長官は5月12日、ロシアを「電撃」訪問した。


<露訪問の米国務長官、ウクライナ停戦履行なら「制裁解除あり得る」
AFP=時事 5月13日(水)7時13分配信


【AFP=時事】米国のジョン・ケリー(John Kerry)国務長官は12日、ロシアを訪問し、ウラジーミル・プーチン(Vladimir Putin)大統領とセルゲイ・ラブロフ(Sergei Lavrov)外相とそれぞれ4時間、合わせて8時間に及ぶ会談を行った。

 その後ケリー氏は、ウクライナの不安定な停戦合意が完全に履行されるならばその時点で、欧米がロシアに科している制裁を解除することもあり得るという見解を示した。>


 引用部分は短いが、非常に重要な内容を含んでいる。まず、ケリー(そして、ケリー級の政府高官)のロシア訪問は、「クリミア併合後」はじめてだった。つまり、「ケリーが来た」こと自体が、ロシアにとっては「大事件」だった。


 そして彼は、プーチンと4時間、ラブロフ外相と4時間、計8時間も会談している(テーマは、シリア、イラン、ウクライナ問題だったと発表されている)。

 個人でも会社でもそうだが、仲良くしたくない相手とは、長く話さないものだ。「長話」はつまり、米国側もロシア側も「仲直りしたい」という意思があるということだろう。そして、ケリーは決定的なことをいった。


<ケリー氏は、ウクライナの不安定な停戦合意が完全に履行されるならばその時点で、欧米がロシアに科している制裁を解除することもあり得るという見解を示した。>



「制裁解除もあり得る!」これも、「AIIB事件」前には、想像できなかった事態である。ここには書かれていないが、ケリーはこの訪問中、「クリミア問題」を一度も口にしなかったという。つまり「クリミアのロシア領有権を認めることはできないが、『黙認』で『手打ち』にしたい」ということではないだろうか?


 このように米国は、ロシアとの和解に動いている。理由は、中国との戦いに集中するためだろう(ちなみに、米国は、中東最大の仮想敵イランとの和解にも動き、イスラエルから激しく非難されている)。

中国が日本に擦り寄る本音は やはり「日米分断」


 もう一つ、「AIIB」後の目に見える変化について触れておこう。そう、中国が日本に「擦り寄ってきた」件だ。習近平は5月23日、中国を訪問中の日本使節団の前に姿を現し、日本に「ラブコール」を送った。

<「朋(とも)あり遠方より来る、また楽しからずや。
3000人余りの日本各界の方々が遠路はるばるいらっしゃり、友好交流大会を開催する運びになった。われわれが大変喜びとするところだ」


 習氏は23日夜、北京の人民大会堂で開かれた交流式典に突然姿を見せ、孔子の言葉を引用しながら笑顔であいさつした。


 会場では二階氏とも面会し、安倍首相の親書を受け取り、「戦略的互恵関係を進めていけば、日中関係はいい結果になると期待している。安倍首相によろしく伝えてほしい」と語った。>(夕刊フジ 5月25日)

 これは、なんだろうか?これまで何度も書いてきたが、中国は、12年9月の「尖閣国有化」をうけて「反日統一共同戦線戦略」を作成した。その骨子は、


1.中国、ロシア、韓国で、「反日統一共同戦線」を作る。


2.日本には、北方4島、竹島、そして「沖縄」の領有権もない。


3.「反日統一共同戦線」には、「米国」も参加させる。

(驚愕の「対日戦略」の全貌はこちらの記事で詳しく解説している)。

 

 この戦略に沿って中国は、全世界、特に米国で、「反日プロパガンダ」を大々的に展開してきた。その効果は十分あり、13年12月26日に安倍総理が靖国を参拝すると、世界的「大バッシング」が起こった(小泉総理は、在任中6回参拝したが、騒いだのは中韓だけだった)。

 中国の「日米分断作戦」は成功しつつあったが、「AIIB事件」と安倍総理の「希望の同盟」演説で、日米関係は逆に「とても良好」になってしまった。

 では、今中国が日本に接近する理由はなんだろう?実をいうと「日米分断戦略」は、今も変わっていない。中国はこれまで「反日プロパガンダ」で、日米分断をはかってきたが、挫折した。


 では、「日中友好」を進めるとどうなるのだろう?実は、これも「日米分断」になる。たとえば、日中関係は、民主党・鳩山−小沢時代にもっともよかった。その時、日米関係は「最悪」だったのである。日本政府は、「反日統一共同戦線」戦略を常に忘れず、「中国が接近してくるのは『日米を分断するため』」ということを、はっきり認識しておく必要がある。


米国を信頼していいのか?
日本はどう動くべきなのか


 今、よほど鈍感な人でないかぎり、「米中関係が急に悪化してきた」ことに気がついている。そして、多くの「反米論者」は、日本が米国につくことに反対で、「米国はハシゴを外す!」と警告している。

 彼らの主張は「日本が米国を信じて中国と争っていると、米国は、突然中国と和解し、日本は単独で中国と戦うハメになり、ひどい目に遭う」ということ。要するに米国は「日本と中国を戦わせ、自分だけ漁夫の利を得ようとする」というのだ。

 これは「まっとうな指摘」と言わざるを得ない。われわれは、大国が「敵」と戦う戦略には、大きく2つあることを知っておく必要がある。

1.バランシング(直接均衡)
…これは、たとえば米国自身が「主人公」になって、中国の脅威と戦うのである。

2.バックパッシング(責任転嫁)…
これは、「他国と中国を戦わせる」のだ。もっとわかりやすくいえば、「米国は、日本と中国を戦わせる」のだ。

  そして、事実をいえば、どんな大国でも「敵国と直接対決するより、他の国に戦わせたほうがいい(つまり、2のバックパッシングの方がいい)」と考える。リアリストの世界的権威ミアシャイマー・シカゴ大学教授は言う。



<事実、大国はバランシングよりも、バックパッシングの方を好む。
なぜなら責任転嫁の方が、一般的に国防を「安上がり」にできるからだ。>
(大国政治の悲劇 229p)



「米国が直接、中国と戦うより、日本に戦わせたほうが安上がり」。ひどい話だが、これが世界の現実である。

 そして、われわれは、「バックパッシング」の例を知っている。たとえば、03年の「バラ革命」で、親米反ロ政権ができたジョージア(旧名グルジア)。この小国は08年8月、ロシアと戦争し、大敗した。そして、「アプハジア」「南オセチア」、2つの自治体を事実上失った(ロシアは、この2自治体を「独立国家」と承認した)
。

 もう1つの例は、ウクライナである。14年2月の革命で、親ロシア・ヤヌコビッチ政権が打倒され誕生した、親欧米・反ロ新政権。オバマ大統領は最近、CNNのインタビューで、ウクライナ革命が「米国の仲介で実現した」ことを認めた(その映像は、ここで見ることができる)。

 つまり、ウクライナは、米国に利用され、ロシアと戦うハメになったのだ。結果、ポロシェンコ政権はクリミアだけでなく、ドネツク州、ルガンスク州も事実上失ってしまった。これらの例から、日本は「米国に利用されること」には、常に敏感であるべきだ。

では、日本はどうふるまうべきなのか?「大原則」は2つである。

1.日本は、安倍総理の「米議会演説」路線で、ますます米国との関係を強化していくべきである。結局、日米同盟が強固であれば、中国は尖閣・沖縄を奪えないのだから。

2.しかし、中国を挑発したり、過度の批判はしない。これは「バックパッシング」、つまり米国にハシゴを外され、(米国抜きの)「日中戦争」になるのを防ぐためである。

 中国を批判する際は、「米国の言葉を繰り返す」程度にとどめよう。日本は、米国に利用されたグルジアやウクライナ、中国に利用されている韓国のような立場に陥ってはならない。

 日本が目指すのは、あくまで「米国を中心とする中国包囲網」の形成である。だから、米国が先頭に立って中国の「南シナ海埋め立て」を非難している現状は、日本にとって、とても良いのだ(もちろん、油断は禁物だが)。

6/4日経ビジネスオンライン 鈴置高史『ついに「核武装」を訴えた韓国の最大手紙 「米国は今度こそ許してくれるはずだ……」』記事について

韓国人の方がまともに見えます。脅威に対してどう手を打ったらよいかを真剣に考えたら、核保有も選択肢の一つになって然るべき。日本に核を持たせたくないのは米中露全部そうでしょう。ですから左翼を使って日本の核保有を邪魔してきました。韓国が核保有すれば当然日本も保有するようになるから米国は韓国の核保有に反対するでしょうけど。

問題は国内にいる敗戦後利得者です。自分たちが国を売ってきて利益を得て来た権益を手放したくないものですから「今そこにある危機」も見ようとしないし、分かっていても米国ではなく中国に隷従した方が良い(中国に代表されるように左翼は金に汚い)と思う人がいることです。国民の大多数が政治に無関心ですからいいようにやられる訳です。

弱腰のオバマを信じることはできません。自ら生き延びることを考えるのであれば、真剣に国民一人ひとりが、偏向メデイアや学者の権威に関係なく、自分の頭で考える必要があります。今の日本は享楽主義に染まっているといってよいのでは。GHQの3S(sex、screen、sports)政策が戦後70年蝕んできました。子子孫孫や国家のために何ができるかを自分の生き方として考えないと。

「安全の欲求」はマズローの欲求5段階説でも生理的欲求の次段階の根源的な欲求として、これが確保されてやっと上位の欲求に行くという説です。高邁に平和論を唱える人達は中国の南沙での侵略行為についてどうして黙っているのでしょう。第二次大戦の日本の行為を非難するのであれば当然今の中国を非難すべき。それができないのであれば、過去の日本の行動も非難できないと言うべき。(小生は日本軍の中国駐留は欧米列強と同じで侵略とは思っていませんが。中国人に聞きたい。欧米の取った行動と日本の取った行動とどこが違うのか教えてほしい。アへン戦争、円明園の焼き討ちとか。満州は漢人の土地ではなく(万里の長城の北側にある)、清朝(満州族の土地)の故郷です。詳しくは「紫禁城の黄昏」(レジナルド・ジョンストン著)を是非読んで戴きたい。見方が変わるでしょうから。)

安全保障を真剣に考えないと。右翼と言って発言を封じ込める時代は終わったというべき。覚醒してほしい。

記事

誰からも止められず、核武装を着々と進める北朝鮮。焦った韓国人が「我々も核を持つ」と言い出した。

次の核実験で宣言

鈴置:韓国の朝鮮日報が「核武装」を訴えました。朝鮮日報は韓国で最大の部数を誇る保守系紙です。日本の新聞業界で言えば、読売新聞のポジションと似ています。

 書いたのは楊相勲(ヤン・サンフン)論説主幹。政治部長、編集局長を経て論説委員会入りした、韓国保守論壇の本流中の本流の人です。それもあって、この「核武装論」は見過ごせません。

 以下は、その「金正恩も、恐れさせてこそ平和を守る」(5月21日、韓国語)のポイントです。

  • 朴槿恵(パク・クンヘ)大統領は、北朝鮮のミサイルを先制打撃するシステムであるキル・チェーンと、韓国型ミサイル防衛(MD)で十分(北の核に)対応できると言う。だが、それが技術的に可能になるには相当の時間がかかる。
  • さらに核保有国を相手に、成功するか不確実な先制攻撃をするというのは机上の空論だ。今の韓国にそれを命令する大統領も、実行する軍も、耐える国民もいない。
  • MDの重要手段である終末高高度ミサイル防衛(THAAD=サード)も、数十発のミサイルを同時に発射された場合、対応できない。
  • 国家間の平和の本質は恐怖の均衡だ。「自分も死ぬ」という恐怖が双方にあってこそ戦争は防げる。核国家である北と、非核国家である南の間の最も大きな危険は、恐怖の不均衡にある。
  • それを均衡させるために、有事の際は金(正恩=キム・ジョンウン=第1書記)を含む北の指導部を「最優先」で「必ず」除去するという斬首作戦を、対北抑止戦略の第1の軸に据えるべきである。
  • 第2の軸は核武装の選択権を持つことである。今後、北が核によって挑発した時に、米国の拡大抑止の実効性がないことが確認された場合には、韓国も即座に核武装すると予告しておくのが核選択権だ。
  • 北が4回目の(次の)核実験を実施し、核ミサイルの実戦配置が確認された瞬間が、大韓民国が核選択権を明らかにすべき時期と思う。
  • 月城原子力発電所(慶尚北道慶州市)の重水炉を利用すれば、核武装には2年もかからない。我が国の技術をもってすれば、核実験の必要もない。

1年半以内に核選択権

 重水炉から出る使用済み核燃料は、核兵器への転用が比較的容易です。1970年代に朴正煕(パク・チョンヒ)大統領が月城原発への重水炉の導入を決めたのは、核兵器開発を念頭に置いたためと言われています。

—「核武装論」とはいえ、今すぐの話ではないのですね。

鈴置:北は近く4回目――次の核実験を実施する可能性が高いのです。1回目は2006年、2回目は2009年、3回目は2013年です。このペースから判断して、2015年か2016年に4回目が実施されると見られています。

 そして4回目の実験で、核弾頭が実用化段階に達して――ミサイルに載せられるほどに小型化して――実戦配備される、と見る専門家が多い。

 ですから、もし楊相勲論説主幹の主張が採用されれば、1年半以内に韓国が「核選択権」を宣言する可能性が増すのです。

「弱腰のオバマ」は信頼できない

—でも「核選択権」の宣言から、次の段階の「核武装」に進むには条件が付いています。

鈴置:その通りです。「米国の拡大抑止の実効性がないことが確認された場合」との条件です。「米国の拡大抑止」とは、北朝鮮が韓国を核攻撃すれば、必ず米国は北を核報復する――との見通しから、北が韓国攻撃を思いとどまる、という意味です。

 ただ、韓国人はここを――米国が本当に核報復してくれるかを、疑い始めたのです。韓国が北によって核攻撃された際、米国が在韓、在日米軍基地、あるいはグアムへの核攻撃のリスクを甘受してまで北朝鮮を核攻撃してくれるのかと、韓国人は考えるようになったのです。

 

 この記事では触れていませんが、米国の大統領が「弱腰のオバマ」であることも、韓国人の不安をかきたてています。

 一方、北の指導者は粛清で権力を維持する、何をするか分からない若者です。韓国人にとっては最悪の組み合わせなのです。

 もっとも米国は北朝鮮の核の脅威の増大を受けて、日本とはMDを共同で開発する一方、在韓米軍基地やグアムへのTHAAD配備を計画するなど、努力しています。

侵攻後に「核を使うぞ」

—米国の拡大抑止、要は「核の傘」ということでしょうが、それが破れているのではないかとの恐れですね。

鈴置:その通りです。日本人だって「実は破れ傘ではないか」と心配してもいいのですが。

—韓国人はなぜ、米国を疑うのでしょうか。

鈴置:「米国に捨てられた」記憶があるからです。まずは、朝鮮戦争の引き金になったアチソン国務長官の声明。「韓国は米国の防衛線の外にある」ことを表明したもので、1950年の話です。

 もっと古くには米国と日本が、朝鮮とフィリピンの支配権をお互いに認め合った1905年の「桂―タフト協定」があります。

 韓国紙はいまだに「米国から捨てられる不安感」を大きく書きます(「日米の『同時格下げ宣言』に慌てる韓国」参照)。アチソン声明も桂―タフト協定も、彼らにとっては昔の話ではないのです。

 北朝鮮と領土を接する韓国ならではの、極めて困惑するシナリオもあります。北が通常兵力による攻撃と、核威嚇を組み合わせたらどうなるか、考えて下さい。

 北が韓国に侵攻した場合、米韓両軍は空軍の攻撃により北朝鮮の兵站線や指揮部を叩きます。これで侵攻を食い止める計画であり、空軍力が北の冒険主義を抑止しているわけでもあります。

 でも今後は、核武装した北が「爆撃への報復として核兵器を使うぞ」と恫喝するかもしれません。米韓両国は逡巡し、韓国の一部を北に占領されたまま、休戦に応じる羽目に陥るかもしれないのです。

未曾有の恐怖と混乱

—核を持った北は、通常兵力の使用を逡巡しなくなる、ということですね。

鈴置:その通りです。さらに注目すべきことがあります。このケースでは、北は核を使っているわけではない。ただ「使うぞ」と言うだけです。

 米国はその北に対し核攻撃はかけにくいのです。そして米韓両軍は、通常兵力による反撃もしにくくなってしまいます。

 楊相勲論説主幹の言う「北が核によって挑発した時に、米国の拡大抑止の実効性がないことが確認された場合」とは、このようなケースを念頭に置いているのです。

 この記事では、2010年に砲撃された延坪島を含む西海5島――ソウル西北の黄海上にあって、北朝鮮と目と鼻の先で対峙している韓国領の島です――に北朝鮮が侵攻する可能性が高い、と指摘しています。

 さらに楊相勲論説主幹は「こうした北の挑発に対抗できない場合、韓国社会には未曾有の恐怖と混乱、内紛が起きるであろう」と警告しました。

 結局、核を持った北朝鮮が次回、小規模なものでも通常戦力を行使した際に、韓国が「核武装」に動く可能性が大きいのです。その前に「核選択権」を宣言してあれば、ですが。

「核選択権」の元祖

—「核選択権宣言論」は韓国でどう受け止められていますか?

鈴置:掲載されて2週間経った今も、メディア上に大きな反応は見られません。ただ、この記事が掲載される少し前の5月12日に、保守運動の指導者、趙甲済(チョ・カプチェ)氏が同様の主張を訴えています。

 実は、趙甲済氏こそが「核選択権」の元祖的存在です。左派から「極右」と批判されるこの人の意見を、大手紙がついに掲載したのです。韓国の保守指導層に「核選択権」の合意が形成されつつあるように見えます。

 趙甲済氏の記事「核ミサイル実戦配備に対応する政策を国民投票に付せ!」(韓国語)の論旨は以下です。

  • 大韓民国の憲法72条には「大統領は必要だと認めれば外交、国防、統一、その他の国家の安危に関する重要な政策を国民投票に付すことができる」とある。大統領は「国民投票案」に「自衛的核武装の権利の確認」を入れることができる。
  • 国連と国際社会が北韓政権の核武装を防ぐことができなかったことにより、大韓民国は国家の生存次元で核武装を含むすべての自衛的な手段を考究する権利を持つとの宣言だ。国民は必要なら核拡散防止条約(NPT)も脱退する権限を政府に付与する。
  • NPT第10条の規定によれば、韓国は北韓の核武装を防げなかったNPT体制から脱退する権利がある。
  • 核選択権を政府に委任するとの案が国民投票を通過し、政府がNPT脱退を検討した瞬間、韓国が核問題解決の主導権を握ることになる。中国と北の指導部に深刻な悩みの種をもたらすであろう。

 楊相勲論説主幹の記事と比べ、より具体的です。「国民投票にかけて核選択権の権威を増す」とか「NPTからの脱退を検討する」とか、核武装が世界に受け入れやすくなる手法を提言しています。

 なお、趙甲済氏も「北韓の潜水艦が釜山港のそばから核ミサイルを撃ったなら?」(5月9日、韓国語)で、「西海5島への攻撃と、核を使うぞとの威嚇により、米国は北朝鮮にどんどん譲歩するのではないか」との懸念を表明しています。

70%弱が「核武装に賛成」

—国民はどう考えるでしょうか。

鈴置:被爆国、日本とは大いに異なり、韓国人には核兵器への忌避感が薄い。例えば、世論調査すると70%近い人が――3分の2の韓国人が核武装に賛成します。

 

 例えば、3回目の核実験(2013年2月12日)の直後に韓国ギャラップと、峨山政策研究院が国民に聞いています。

 核武装に賛成した人はそれぞれ64%と66.5%に上りました(「今度こそ本気の韓国の『核武装論』」参照)。もっとも、大手メディアが核武装を主張することはタブーだったのです。

 朴槿恵大統領の就任式の日の2013年2月25日――3回目の核実験の直後でしたが、朝鮮日報は社説で核武装を検討する必要性を説きました。

 ただ、この社説「北の核を切りぬける新しい国家安保戦略が必要だ」では「核」という単語は一切使いませんでした(「今度こそ本気の韓国の『核武装論』」参照)。

 「北朝鮮から核兵器で脅されている韓国としては、国際協力などとは別次元の軍事的・政治的な対処方法を独自に模索するしかない」と、読む人が読めば分かる書き方に留めたのです。

原子力協定改定で”解禁”

—なぜタブーだったのですか?

鈴置:朴正煕政権(1963-1979年)が核武装に動き、米国に潰された過去があるからです。朴正煕大統領暗殺もそれに絡むとの見方さえ韓国にはあるのです。もちろん米国もそれをしっかりと覚えています。

 娘の朴槿恵大統領が初めて訪米した時、米議会調査局(CRS)は「U.S.-South Korea Relations」(米韓関係)という報告書で「韓国の核武装への希求」をはっきりと指摘しました(「『独裁者の娘』を迎える米国の険しい目」参照)。

 それに加え、2010年から韓国は米国と原子力協定の改定交渉に入り、ウラン濃縮や使用済み燃料の再処理の権利を要求していました。

 大手メディアが核武装論など書こうものなら、米国から「ウラン濃縮などの要求は核保有が目的だな」と見なされ、交渉が不利になるのが確実でした。

 2015年4月22日に、新たな米韓原子力協定が仮署名されたので、核武装論が”解禁”になった面もあると思います。

水中発射が最後の一撃

—5月9日に北朝鮮が「潜水艦から弾道ミサイルを水中発射する実験に成功した」と発表しました。これも韓国の「核武装論」の背中を押したということですか?

鈴置:ええ。それが最後の一撃となったと思います。北朝鮮の実験が本当に成功したか、疑問を持つ向きもあります。しかし、もし本当なら、米韓両国は対北軍事戦略を根本から見直す必要に迫られます。

 これまでの計画では、北が核ミサイルを発射しようとしたら、それを察知し、発射前にミサイル基地に攻撃をかける――キル・チェーン――で防ぐつもりでした。

 でも「察知」が可能なのは陸上のミサイル基地。水面下から撃たれたら発射前に察知するなんて、とてもできないのです。

 このため、韓国が北の核ミサイルを防ごうと思ったら、韓国も核ミサイルを持つしかない――との結論に至るのです。

 日本とは異なって、国民の間に忌避感がありません。今後「核への希求」が一気に表面化する可能性があります。

核武装論のバイブル

 趙甲済氏は、韓国の核武装や、その前段階の「核選択権」の必要性を説いた本を、2014年に日本語で出版しています。『韓国の自衛的核武装論』です。

 朴正煕時代の核武装の試みと、米国の牽制によって断念した経緯を丹念に取材し書いています。韓国の参考になるとして、インドやイスラエルの核開発にも詳しく言及しています。韓国の核武装論のバイブルといえる本です。

—核武装に関し、韓国政府はどう考えているのでしょうか。

鈴置:分かりません。ただ言えることは保守の指導層には、核武装のような戦略的動きは朴槿恵政権にはできないと見る人が多いのです。

 ポピュリズムそのままに、その場その場で一番受けそうな行動をしているだけ、との冷ややかな見方です。

 だからこそ、核武装論者は「核選択権の宣言」や「国民投票」へのムードを盛り上げて、政権をそちらに動かそうとしているのでしょう。

日本も駒のドミノ

—「核武装するぞ」と韓国が言えば、日本や台湾もその方向に動く。それを嫌う中国が北から核兵器を取り上げるはず、との狙いも核武装論者にはあるのですか?

鈴置:そうした「口先介入によるドミノ効果」も、あることはあるでしょう。が、本音は「自分も核を持つ」ことではないか、と思います。なぜなら「口先介入によるドミノ」はさほど効果がないと韓国では見なされ始めているからです。

 趙甲済氏は『韓国の自衛的核武装論』の第4章「北核の後援者は中国」で、米国に対抗するため中国こそが北朝鮮などに核を拡散させてきたのだと説きます。

 そして第5章「イスラエル式の秘密核開発」(178頁)などでは「北は米中の間で緩衝の役割をしているため、中国は日本が核武装をすることがあっても、北の核武装を止めないだろう」とのリー・クアンユー・シンガポール首相の発言を引用しています。

 もし、核武装論者が期待するなら、中国ではなく米国でしょう。オバマ政権は北朝鮮にまんまと騙されて以来、北の核問題からは身を引いています。

 北が核やミサイルを実験しても非難するだけ。「戦略的忍耐」と呼んでいますが、はっきり言えばこの問題を放置したままなのです。

 6月16日に米韓首脳会談がワシントンで開かれます。朴槿恵大統領は、この場で切羽詰まる北の核問題の解決をオバマ大統領に迫るべきだ、との声が韓国にあがっています。

朴正煕の復讐劇

—「核武装論」を持ち出せば、オバマ大統領も少しは本気になって北の核阻止に動くかもしれない、ということですね。

鈴置:もう1つあります。「暗黙に」でしょうが、米国が韓国の核武装を認めるかもしれない、との期待が韓国にはあるのです。

 カーター(James Earl “Jimmy” Carter, Jr.)政権(1977-1981年)時代に大統領国家安全保障担当補佐官を務めたブレジンスキー(Zbigniew Kazimierz Brzezinski)氏が、2012年に『Strategic Vision: America and the Crisis of Global Power』を書きました。

 この本の114ページでブレジンスキー氏は「米国の力が弱まると、その核の傘の信頼性が落ちる。すると韓国や台湾、日本、トルコ、ひいてはイスラエルでさえ新たな核の傘を求めるか、自前の核武装を迫られる」と指摘しています。

 安全保障の専門家として名高いブレジンスキー氏が、韓国の核武装を自然な流れと認識し、食い止めるべき対象とは書かなかったのです。

 そしてこの本を、韓国各紙は一斉に社説で取り上げています(「『中国に屈従か、核武装か』と韓国紙社説は問うた」参照)。

 米国の大きな変化に気づかない日本人が「寝ぼけて」いるのであって、韓国人はそれを織り込んで「自前の核」を語り始めているのです。朴正煕の屈辱の歴史を塗り直す核武装を――。

6/4JBプレス 北村淳『南シナ海への認識が甘すぎる日本の議論 人工島の出現で迂回航路も危険な状態に』記事について

中国は西側世界が何もできないことを見越して攻めにかかってきています。欧州にとっては南シナ海は遠く、ウクライナのように近くてロシアの脅威に対抗するのを優先するでしょう。ましてや中国との貿易を考慮に入れれば、東南アジアの国々との領土係争地が中国のものになろうと関係ないと考えていると思います。アメリカも腰が引けているのも中国は見ているのでしょう。オバマは戦争できないと見てオバマが大統領の間に取れるものは取ろうという発想です。

ここに書かれていることが現実になれば、日本で生産するのはコストが高くなり、全産業が壊滅します。農業だって石油が高騰すればコスト高になります。失業者が山のように出るという事です。戦争せずに中国の野望を挫くには経済封鎖しかないでしょう。AIIBは勿論欧州も参加取りやめ、自由主義国は天安門事件に中国に課した経済制裁をするしかないでしょう。G7も非難声明だけでなく、中国の行動を見て次の段階まで来たらこの制裁、次はこの制裁というのを決める会議にすればやる意味も出ようというもの。イラン・北朝鮮・キューバには経済制裁を課してきたではないですか。中国は規模の問題なんて言っても、借金を重ねて大きくなってきただけです。返済できないし、するつもりもないでしょう。いざとなれば武力に訴えてでも借金を棒引きさせるでしょう。アメリカもここが正念場です。これ以上中国が大きくならないうちに罰を与えないと世界は暗いものになります。

日本も核武装して中国と対抗しないといけないのに、国会は集団的自衛権でグダグダやっています。日本国民も目先のことしか考えないから、相応の国会議員しか出てきません。昨日は新渡戸稲造について書きましたが、鳥内浩一氏の情報によると、新渡戸記念館のある十和田市の市長が「耐震強度の問題で廃館もやむなし」とのこと。偉大な先人の扱いを忘れた所業。財政的な問題があるのか、他の問題があるのか分かりませんが、歴史を大切にしない民族に明日はないと思います。県なり、国に相談するのが先で、それを市民に説明してからではないかと思います。国民も政治家を選ぶ時には良く人物を見て選んでほしい。

http://sp.kahoku.co.jp/tohokunews/201506/20150603_25008.html?utm_source=dlvr.it

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south china sea

 

 

 

 

 

 

 

南シナ海で接近する中国の沿岸警備隊の船舶(上)とフィリピンの補給船(2014年3月29日撮影、資料写真)。(c)AFP/Jay DIRECTO〔AFPBB News〕

安倍政権は日本国内での安全保障関連法案に関する説明では、中国の軍事的脅威を極力口にしていない。

 例えば、北朝鮮の弾道ミサイルの脅威は繰り返し強調しているが、北朝鮮の弾道ミサイルとは比較にならないほど日本を脅かしている中国の弾道ミサイルならびに長距離巡航ミサイルの脅威(拙著『巡航ミサイル1000億円で中国も北朝鮮も怖くない』参照)はなぜか口にしたがらない。

 同様に、中国人民解放軍によって南シナ海を縦貫する海上航路帯を妨害される可能性についても沈黙を続けている。

南シナ海を機雷で封鎖するのは困難

 一方で、ホルムズ海峡でイランが機雷を敷設して海上航路帯を封鎖する可能性については安倍首相自らも繰り返し指摘し続けている。安保法制国会審議では「現時点では、ホルムズ海峡での機雷掃海しか、他国領域での自衛隊による集団的自衛権に基づいた武力行使は念頭にない」とまで公言している。

 もっとも、安倍政権はホルムズ海峡危機に関しては「機雷敷設による海峡封鎖」のみを想定しており、イランの地対艦ミサイルや潜水艦や小型攻撃艇それに航空攻撃といったアメリカ海軍が機雷戦以上に警戒している脅威に関しては何ら言及していない。

 日本政府は南シナ海の自由航行妨害という局面についても、このような思考回路の延長で想定しているようだ。つまり、「人民解放軍が機雷を敷設して南シナ海を封鎖する」というシナリオのみを対象にしており、南シナ海における中国軍事力の脅威は真剣に考えられていないように見受けられる。

確かに、日本にとって重大なチョークポイントとなるルソン海峡(バシー海峡とバリンタン海峡との総称=台湾とフィリピン・ルソン島の間の海峡部)を機雷により封鎖するのは、ホルムズ海峡を機雷で封鎖するようなわけにはいかない。海峡の最大幅一つをとっても、ホルムズ海峡が39キロメートルであるのに比して、ルソン海峡は250キロメートルにも及んでいるからである。

 さらに、広大な南シナ海を縦貫する航路帯のあちこちに機雷原を設置するにしても、いくら人民解放軍海軍がロシア海軍に次いで世界第2の機雷保有数(10万個と言われている)を誇っているとはいえ、極めて効率が悪い妨害手段と考えざるをえない。

 したがって、「航路妨害=機雷敷設による海峡あるいは海域封鎖」という単純な等式で考えるならば、南シナ海を封鎖するのは困難であり、いくら南シナ海が中国軍事力によりコントロールされても「重要影響事態」や「存立危機事態」とは見なしがたい。したがって、「南シナ海は迂回可能である」程度の認識が公言されることになったのであろう。

約1800キロ長くなる南シナ海の迂回航路

 しかしながら、南シナ海は迂回できるからといっても、中国によるコントロールが可能になってしまった場合、日本国民生活や経済活動が深刻に脅かされることにはなりえないのであろうか?

 現在、日本に原油や天然ガスその他の天然資源などを運搬するために、膨大な数のタンカーや貨物船が毎日ひっきりなしに南シナ海を航行している。そもそも、そうした船が「南シナ海を迂回」しなければならなくなる事態とは、中国共産党政府が「日本関連船舶の南シナ海での自由航行を妨害・阻止する」といった決断を下した事態を意味している。

 中国政府がこのような決断をした場合、人民解放軍は、日本に関係しない船舶にもダメージを与えてしまう可能性が高い機雷戦は行わず、日本関連船舶だけにターゲットを絞って、ミサイル攻撃・魚雷攻撃・爆撃・砲撃といった手段で航行を妨害するであろう。日本政府はそのことを覚悟せねばならない。

 そして、実際にタンカーに魚雷を打ち込む必要はなく、日本関連船舶が「南シナ海を航行した場合には、深刻な危害が加えられる」との認識を船会社に与えれば十分なのである。

そのような状況になっても日本向け物資を運搬しようとする船会社は、

「インド洋 → マラッカ海峡 → 南シナ海 → バシー海峡 → 西太平洋 → 日本」という南シナ海縦貫航路を避けて、「インド洋 → ロンボク海峡 → ジャワ海 → マカッサル海峡 → セレベス海 → 西太平洋 → 日本」という迂回航路を通航しなければならない。

 前者の中東産油国から南シナ海を北上して日本に至る航路はおよそ1万2200キロメートルであり、後者の迂回航路は、日本までおよそ1万4000キロメートルである。もっともこの迂回航路は、水深が浅いマラッカ海峡を通航できない超大型タンカー(UVLCC、30万トン超の原油を積載)などが平時においても利用している航路である。

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南シナ海航路(白色)と迂回航路(赤色)、大迂回航路(ピンク)

迂回の負担は燃料費だけではない

 大型タンカー(VLCC、20万~30万トンの原油を積載)で迂回航路を航行すると日本まで3日余計にかかることになり、燃料代も(もちろんタンカーごとに差があるが)およそ8万5000ドルから10万ドル余計にかかることになる(このような経済的理由によって、往復では1週間ほど無駄になるうえに燃料代も嵩んでしまう迂回航路を通過をせざるを得ない超大型タンカーは、建造されなくなってしまった)。

 もし燃料代だけを考えるのならば、迂回航路を通航した場合には、往復でおよそ2000万~2400万円の費用がかさむことになる。すると30万トン積みVLCCの場合、燃料代の増加分は1トンあたり67~80円程度となり、20万トン積みVLCCのそれは100~120円程度ということになる。すなわち迂回航路を経由したVLCCで運搬される原油1バレル(原油1トン=7.396バレル)あたりの燃料費増加分は“わずか9~16円”ということになる。原油1バレル60ドルすなわち7200円とすると、このような燃料代分の価格上昇は“取るに足りない額”ということになる。

 ところが、米海軍関係者や日本で船会社を営む専門家によると、燃料代の増加分だけで迂回航路経由の影響を論ずることは「論外」であるということになる。

 なぜならば、平時において迂回航路を通航するのとは違い、中国の軍事的脅迫により迂回航路を通航せざるを得なくなった場合には、国際海運マーケットが過敏に反応して船員費などが沸騰するとともに、船舶保険料も信じられないほど高騰することは必至であるからだ。

それに加えて、そもそも船員の確保そのものが極めて困難になると考えるべきである。というのは、日本船体の船員構成といえども、日本人は船長と機関長それに極めて少数の航海士と機関士だけであって、ほとんどの航海士、機関士、デッキ要員、機関部要員それに司厨員は外国人である(高級士官はクロアチア人、北欧系、台湾人、韓国人など、一般船員はフィリピン人、韓国人、中国人、インド人など)。したがって、中国に軍事的に圧迫された中での日本向け航海への乗組員調達は望み薄となるというのだ。

人工島出現により迂回航路も危険にさらされる

 さらに、日本にとって都合の悪いことに、日中間が上記のような険悪な関係に立ち至った場合には、南シナ海縦貫航路どころかマカッサル海峡経由の迂回航路すらも通航できなくなる可能性が現実のものとなりつつある。

 本コラムでも繰り返し取り上げているように、中国は南沙諸島の数カ所に軍事拠点としての人工島を構築している。そのうちファイアリークロス礁には3000メートル級滑走路が建設中であり、ジョンソンサウス礁をはじめその他の人工島にも本格的な軍用滑走路が出現するものと考えられている。

 それらの南沙諸島人工島の航空基地に人民解放軍戦闘機や爆撃機などが配備されると、迂回航路が通過するセレベス海やマカッサル海峡は人民解放軍戦闘機の攻撃圏内にすっぽりと入ってしまう。その外縁であるジャワ海やロンボク海峡その他のインドネシア海峡部だけでなくティモール海やオーストラリアの北西の要衝ダーウィンまでもが人民解放軍爆撃機の攻撃圏内に収まることになる。

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したがって、迂回航路を日本に向かって北上するタンカーも、中国軍戦闘機や爆撃機の攻撃の脅威に曝されることになり、マカッサル海峡経由の迂回航路は“危険回避”の役割を果たさなくなる。そのため、日本向けタンカーは、中国軍機による攻撃可能性がほぼ存在しない(そうでなければ乗組員は絶対に集まらない)以下のような“大迂回航路”を経由しなければならない。

「インド洋 → メルボルン沖 → 珊瑚海 → グアム沖 → 日本」

およそ2万2000キロメートルに及ぶ大迂回航路を通航する場合、航海日数は南シナ海経由の倍の6週間近くかかることになるため、もはや燃料費も無視しうるレベルではなくなってしまう。それに、航海日数が2倍になってしまうと、当然ながら必要な船腹数も船員数も全て2倍ということになる。そのため、中国軍機による攻撃の可能性はゼロでも、船腹数や船員の確保そのものが極めて困難になり、日本が必要とする原油や天然ガスの供給量は維持できなくなる。

やはり南シナ海は日本の死命を左右する

 中国は広大な南シナ海の8割以上の海域を“中国の海洋国土”と公言してはばからない。いくらアメリカや日本やオーストラリアが非難したからといって、中国がすでに巨額の建設費を投入している“中国の主権下における”人工島の建設を中止する見込みは全くない。

 中国に中止させる唯一の手段は、アメリカをはじめとする反中国勢力が人工島建設を武力によって阻止することであるが、当然それは中国との全面戦争を意味するため、実施可能性はゼロに近い。

 要するに、極めて近い将来に、南沙諸島に複数の航空基地や軍港を備えた強力な人民解放軍海洋基地群が誕生することは避けられそうもない。

ということは、日中関係が最悪の事態に陥った場合には、「南シナ海は迂回できる」などと言っていられない事態に日本国民は直面することになる。南シナ海は日本にとって「重要影響事態」も「存立危機事態」も発生しうる生命線であるとの認識を持って、安全保障関連法案に関する国会審議は進められなければならない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

6/2~6日経『変調 中国ビジネス』記事について

日経も中国の異変に気付きアリバイ作りを始めました。下の記事がそうです。今週ずっと特集していました。今まで中国進出を煽るだけ煽り、企業が苦しんできたことなどは全然報道してこなかったのに。「後から結うのは福助頭」(= Monday morning quarterback)でしょう。リスク管理が全然できない。中国を増長させた責任は日本のマスメデイアが大部分を負うべき。靖国問題、教科書問題、天安門事件後の天皇訪中等如何に中国を助けてきたか。それが南沙諸島の侵略に繋がっている訳です。いつも「平和」「平和」と唱えるだけで真に「平和」を実現しようとはしない似非平和主義者です。

中国から撤退するには時間がかかります。工商局、税務局等の認可を受けなければなりませんので。2年くらいはかかると見ておいた方が良いでしょう。日本人の経営者は債務(含む税、優遇措置)を支払わなければ中国から出ることはできません。経営者を中国人にするとjoyouの蔡みたいに堂々と不正をします。藤森も中国の実態を知らないで買収したのでしょうが責任問題です。辞任は当然でしょう。損失を払ってから辞めてほしい。株主は怒っているでしょう。裁判に訴えて勝てるつもりですかね。中国の司法は行政の一部で裁判官は賄賂を取るのが当たり前というのを知っていて言ってるのでしょうか。小生が中国の裁判・労働委員会で3勝1敗になった時と時代が違います。あの時の中国は外国の金と技術を欲しがっていましたから。今や外資を追い出そうとしている時代です。高い授業料です。他の日系企業も早く撤退した方が良いでしょう。

6/2もう逃げるしかない 中国ビジネス変調(ルポ迫真)記事

中国随一の経済都市、上海。空の玄関口、上海浦東国際空港にその日本人男性が現れたのは寒風吹き付ける1月の夜のことだった。「どこでもいい。国際線のチケットを1枚頼む」。切羽詰まった表情に気押されるように、発券カウンターの女性は日本行きのチケットを手配した。

 「支払いが確認できるまで放すわけにはいかない」。数時間前。男は上海市郊外の日系縫製工場で複数の取引先の中国人に詰め寄られていた。

 進出して20年。最盛期には200人の従業員を抱え、日本のアパレル大手に衣料品を供給してきた。安い労働力を活用して利益も上げていたが、この数年で急速に業績が悪化。ついに取引先に支払いすらできなくなった。

 日本の本社も資金を差し出す体力がない。仲裁役の中国人を挟みながら取引先にわびを入れ、返済の繰り延べを懇願するも形勢は明らかに不利。「生きて帰るには、逃げるしかなかった」。事情を知る関係者が語る。

 中国が対外開放して約40年。安くて豊富な労働力と巨大な市場をにらみ、日本企業は1980年代から続々と進出してきた。政治リスクに翻弄されながらも拠点を増やし、日系企業は2万社を超える。

 だが今の中国に少し前までの右肩上がりの成長は見込めない。この数年で一気に世界に名を知らしめた中国スマートフォン(スマホ)大手、小米(シャオミ)ですら成長に急ブレーキがかかる。

 4月末の週明けの早朝。日系電子部品メーカーが北京オフィスで東京と結んで開いたテレビ会議。日本人幹部らは中国人営業マンの報告に凍り付いた。小米による今年2度目の大がかりな部品納入の延期要請だった。「小米のスマホが売れなくなっている」。日本人幹部らは一様に落胆した。

景気減速の影響がじわり広がるなか、5年で2倍のペースで上昇する人件費も企業に重くのしかかる。日本企業に限れば、円安の逆風も吹く。

 企業は「撤退」も現実的な選択肢に据える。経済産業省が2014年7月に調べた「海外事業活動基本調査」によると、13年度に中国から撤退した現地法人数は205社と前年度を17社上回った。企業の事業再編を手伝う弁護士、賈維恒(44)は「景気減速で拠点の過剰感は強まっている。今後も撤退案件は増える」とみる。

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閉鎖されたシチズンの工場では最終の後片付けが静かに続けられていた(5月30日、広東省広州)

 5月30日。雨期に入り、灰色の雲が覆う広東省広州。シチズンホールディングスが2月に閉めた時計部品工場を訪れると、わずか4カ月前に起きた騒動の記憶を消し去ろうとするかのようにフォークリフトがせわしなく設備や資材を運び出していた。

 春節(旧正月)連休を目前に控えた2月5日。帰省を楽しみにする従業員の表情が一変した。「あしたで工場を清算します」。1千人いる従業員の一斉解雇通告だった。

 「なぜ、解雇する直前に通告するんだ!」

 従業員の不満を抑えつけるかのように雇用契約の解除を迫るシチズン。「書類にサインをしないと、あなた、近いうちに、ほんと大変なことになるよ」。深夜、見知らぬ男からこんな脅迫めいた電話を受けた従業員は300人を数えた。

 「日本人経営者が憎い」。今、閉鎖された工場で最終の後片付け作業をする総務担当の男性社員、劉俊穎(40=仮名)が声を震わせる。真面目に19年間勤め上げた末の突然の解雇通告。「我々は使い捨てか」

 撤退業務が完了する1カ月後には工場は完全に閉鎖される。劉の目が潤む。「私には中学生の息子がいる。お金がかかる。でも40歳を過ぎた私が働ける場所は簡単には見つからない」

 経営難に陥った工場に乗り込んで従業員を解雇する。沿海都市部の工場街ではこんな「撤退屋」が出没している。

 「この会社の資産を買い取った。これからは俺の言うことを聞いてもらうぞ」。企業から工場や設備などの機械を100ドル(約1万2千円)程度の破格の価格で買い取り、地元政府への面倒な手続きも口利きで解決する。手数料や資産売却で暴利をむさぼる。

 「高速成長時代の“遺産”を金を払ってでも手放したい」。そんな企業の思いを見透かしたように撤退屋が暗躍する。(敬称略)

 景気減速が当たり前の「新常態」に入った中国。現地企業に忍び寄る変調の現場を歩く。

6/3変調 中国ビジネス2

「やる気は全くないわ……」。 中国東北部の中核都市、遼寧省大連。同市内の日系電機大手の 工場に勤める40歳代女性従業員、李梅(仮名)がつぶやいた。10年以上も前に今の工場に入った李。とにかく毎日まじめに働いた。地道にモノ作りを続ける日本企業も自分に合った。そんな彼女が最近になって工場に背を向け始めた。きっかけは2013年末、近所の東芝の大連工場で起きたストライキだ。

「もっと補償金を出せ」。武装警察官が見守るなか、約900 人の従業員が声を張り上げた。

1997年からテレビを生産した大連工場。東芝は赤字を理由に閉鎖を決めたが職を失う従業員は退職金相当の補償金を少しでも多く得たいと経営側に抗議。東芝はやむなく要求をのんだ。あの日の事が、今の李には他人事に映らなくなった。

大連に今、景気後退の大波が押し寄せる。大連のある遼寧省の1〜3月国内総生産(GDP)は前年同期比1.9%増。中国が今年目標とする7%前後を大きく下回る全国最低に陥った。 2000社近い日系企業が集積する大連。李の工場も「いつ閉鎖されてもおかし<ない」。だから今は仕事より補償金を多く手にすることしか関心が向かな い。「今は補償金を楽しみに待つだけだわ」

3月5日、北京で開幕した全国人民代表大会(全人代)。午前10時すぎ、所信表明演説で首相の李克強(59)が「中国は製造大国から製造強国へ転換する」と読み上げていた頃、広東省東莞の工場街では5000人規模のストライキが勃発していた。

「未払いの給料を払え」。ナイキなどの1流ブランド靴を作る台湾系工場の従業員がロ々に叫ぶ。翌日には周辺の他の工場にも次々に波及。拳を突き上げた従業員数は数万人に達した。

「もう疲れた」。日本人幹部がこんな言葉を残して東莞から去った日本企業は過去5年で100社以上。輸出競争力は低下 し「世界の工場」は苦境に立つ。 「今、中国では何をすればよいのか」。厳しい現実を前に日系企業幹部の苦悩は深まる。

だが、今の中国の従業員は幹部らのそんな迷いに同情などしない。日系電機大手の工場で長く労働組合トップを務める共産党幹部はいらだちをあらわにする。「そんなに中国から出て行 きたいなら、早くそうすれぱいい。でも二度と中国ではビジネスはさせない。中国とはそういう国だ」

6/4変調 中国ビジネス3

中国首相の李克強(59)をうならせた新興企業は古びた雑居ビルの6階にあった。情報技術 (IT)企業が集積する北京・中関村。壁は薄汚れ、電気が消えた通路には段ボールや資材がうず高く積まれている。

IT専門の転職支援サイト 「拉勾網」を2年前に立ち上げた北京拉勾網絡技術。5月7日午前、創業者の馬徳龍(31)は 中関村に突然視察に訪れた李に自社の事業内容を説明した。「100人あまりの社員で昨年150万人の転職を支援しました」。 行政の効率化に熱心な李は感心した。「それは見事だ。政府も見習わないと」

拉勾網の飛躍のカギは中国I T企業2万社の膨大な求人情報にある。起業家に無料でオフィ スを貸し出す創業支援施設が整う中関村でもべンチャー企業が次々に生まれ、IT人材の需要は旺盛。成長企業でキャリアを積みたい若い人材もあふれている。馬はそこに目を付けた。

「何よりも中国企業で働きたかった」。3月に米系ソフト企業から中国のインターネット大手の部長職に転じた北京在住の張傑(仮名、29)が言う。魅力はその待遇。検索大手、百度(パイドゥ)や電子商取引最大手のアリババ集団など大手を中心に人材獲得競争は激しさを増し、中国IT企業では部長級で年数千万円の高給取りはざら。張の月給も2倍の5万元(約100万円)に跳ね上がった。

1990年代から米マイクロソフトなど外資系IT大手が進出して立ち上がった中国IT産業。「昔は給料が高い外資企業へ憧れがあったが、今は中国大手の方がいい。外資は好待遇を手にする踏み台」。張は言う。

「調査を妨害したらどうなるか。賢明なあなたたちなら分かりますね」。昨年冬、中国独禁法当局の突然の来訪を受けた米半導体大手クアルコムの関係者は調査員の高圧的な態度に驚いた。それからまもない2月。中国当局は60億8800万元という巨額制裁金の支払いを同社に命じた。自社技術をスマートフオン(スマホ)メーカーに押しつけ、不当に特許使用料を得たとの判断だ。

.アリババのような世界的企業が育ち、自信を深める中国IT 産業。習近平(61)指導部も「国産技術.製品の育成を」と外資排除をいとわない。「昔はとにかく技術を教えてくれと頼ってきたのに。時代は変わった」。 クアルコム関係者の言葉からは敗北感がにじむ。

6/5変調 中国ビジネス4

「不明朗な取引が行われている」。5月29日に子会社8社を化学品・医薬品販売興和グループ(名古屋市)に譲渡して創業109年の歴史に幕を下ろした化学薬品商社の江守グループホールディングス(HD)。解体のきっかけは2014年7月に寄せられた匿名の電子メールだった。

疑惑の中心は江守HD中国現地法人トップだった謝飛紅(50)。髪を短く刈り込み、縁なし眼鏡をかけた謝は上海ではやり手の実業家_として知られていた。「丸紅(の中国事業)を抜きますよ」。こう豪語する謝をHD社長の江守清隆(54)はかわいがった。HDの連結売上高は直近5年で3倍の約2200億円に膨らんだが、売上高の7割を謝が率いる中国事業が稼いだ。

その裏で謝は自身の親族がかかわる企業との取引を通じて見かけ上の売上高を膨らませていた。取引先の仕入れ代金を肩代わりして金利をつけて回収する。急成長を演出したビジネスモデルも景気減速で取引先から支払いが滞ったとたん、崩壊した。

「以前から危ない取引をしているのではと思っていた」と同社閏係者は明かす。だが、背後に清隆が控える謝には「誰も何も言えなかった」。

3日午前、上海で開幕した住設機器の大型展示会。水栓金具や温水便座など100点以上の商品を出展した中宇建材集団 (福建省)の営業担当者は「費用対効果の高さが私たちの強み」と来場者にアピールしていた。

どこにでもある展示会風景だが、その様子を苦々しく思っている日本人経営者がいる。同日、 最大660億円の損失を発表したLIXILグループ社長の藤森義明だ。

巨額損失の原因はドイツで上場する子会社ジョウユウの不正会計。創業者の蔡建設が財務諸表を改ざんしていた。その蔡が中国で率いるのが中宇。中宇はジョウユウの子会社だ。 5月22日にジョウユウはドイツで破産を申し立てた。だが、察は虎の子の中国事業を手放さない。中宇の40歳代の男性社員は「破産はドイツの話。私たちに影響はない」と言い切る。

「(蔡氏らに対する)法的措置も辞さない」。3日午後2時。 LIXILが都内で開いた記者会見で藤森は力を込めた。蔡の耳藤森のその言葉は届いただろうか。

6/6変調 中国ビジネス5

北京西部の住宅街の一角。3月末、イトーヨーカ堂が運営する「華堂商場右安門店」がひっそりと営業を終えた。今は看板も取り外され、店舗前の広場では地元の小学生たちがサッ力ーに興じる。のどかな光景を前に近所に住む主婦の王さん(56)は「昔は食品売り場がにぎわっていた」と教えてくれた。イトーヨー力堂が北京に出店したのは中国で近代的な小売店がまだ少なかった1998年。「従業員教育が大事」とヨーカ堂が主張すれば、{安いものを売る大衆店にすれぱいい」と国有企業 の合弁相手も譲らない。経営の軸は時にぶれたが、経済成長時代は利益を出せた。

中国全土が沸いた北京五輪が終わった2008年夏。客足がぱたりと止まった。「北京の上客は五輪向けインフラ工事に駆り出されていた出稼ぎ労働者だった」。ヨーカ堂中国総代表の三枝富博(65)は振り返る。地元客を呼び戻そうと必死になるほど周辺の競合店との価格競争に巻き込まれる悪循環。日本流のサービスで増収を続ける四川省成都での事業とは対照的に不振が続く北京はこの1年で4店舗を閉めた。

「生鮮品以外、お店に出向いて買い物をすることはほとんどない」。遼寧省大連の銀行員、鄒婷婷(27)は話す。最近購入した空気清浄機もインターネット通販サイトで買った。安くて種類.も豊富なネット通販は今や中国の小売市場の1割を占める。店舗を展開する既存の小売業を取り卷<環境は厳しさを増す。

人口1千万人を誇る内陸部の中核都市、湖北省武漢。昨年末に開業したイオンモール武漢店は平日の夕方にもなると、食材の買い出しやレストランで食事を楽しもうという地元客でにぎわう。現地法人の総経理、椎名孝夫48)は「日本の安心・.安全を求めて来店する顧客が多い」と手応えを口にする。 12年には山東省青島の店舗が「反日デモ」で破壊されたイオン。中国事業は赤字が続くが、 それでも購買力が高まる中国の消費市場で商機を見いだす。

世の中が上げ潮の時の事業拡大は簡単。逆に苦しい時に知恵を絞って顧客に受け入れられて こそ価値があるー—。イオンの源流の一つである岡田屋具服店はこんな戒めを家訓に込めた。「下げにもうけよ」。高速成長時代の終わりを迎えた中国で椎名はその家訓をいま一度、かみしめる。