『拡散するブレグジット・リスク 漂流する英国と分裂するEU』(2/1日経ビジネスオンライン 倉都康行)について

グローバリストには世界の激動が見えないのかもしれません。英国のEU離脱もトランプ大統領誕生も、テロリストになる可能性のある移民に対する国民の反感がベースになっています。政治家が国民の感情に寄り添うのは当り前でしょう。勿論政治家が国民を啓蒙・領導する面もありますが。

企業で考えれば、お得意先や社員の困っている点があれば、全力で問題解決しようとするでしょう。「テロは沢山」と言う気持ちを国民が持っているとしたら、それに対する対策を迅速・矢継ぎ早に打たなければ。それこそが政治家の果たす役割です。前例主義の官僚にはできないでしょう。役人は惰性でしかできない人達が多いです。特に外務省。阿比留瑠比氏の2/1facebookには「昨夜聞いた話。駐韓大使らを早く帰任させるべきだとの意見が外務省内には根強くあったわけですが、その理由の一つは「在外勤務手当はどうなるんだ?」という心配からだったそうです。」とありました。国益より自分の待遇が心配と言うのではまともな外交交渉ができるとは思えません。ロクな仕事もしないのに恩恵だけは受けようというのですから。民間でしたら、韓国大使等は長期帰任回避が明らかになっていますので、別の部署に配置し、帰任する時期が来れば(そんなに早く来るとは思えませんが)その時人事をすれば良いとなります。本当に下種しか外務省にはいません。

3/15のオランダ議会選挙が当面の関心事になります。英米に続いて国民益優先の政治ができるかどうかです。本記事を見ますとウイルダース党首の率いる自由党が多数派を形成する予想ですが、第二党以下の連立政権になるとのこと。日本の憲政の常道とは違いますね。リベラルは反EU・反移民政策の持主を極右とか人種差別主義者とか言って攻撃します。恰も自分が絶対善の立場に立ってです。驕ることなかれと言いたいです。

フランスのフィヨン大統領選候補は妻の不正給与の問題で失速しています。ルペンが最終的に大統領になる可能性もあります。英米蘭の結果を見て、独の経済的独り勝ちを許し、難民も大量に受け入れて異質の文化を持った人間に侵略されていると言った感情は人道主義よりも優先され、選挙結果に反映されると思います。

http://jp.reuters.com/article/france-election-inquiry-idJPKBN15F071

ドイツも蘭・仏の選挙結果によっては、国民がメルケルを見放し、メルケルが下野するかもしれません。EUの崩壊の始まりになるかも。

トランプ大統領の弾劾は2年後の中間選挙の結果に依るでしょう。上院の2/3の賛同を得るのは難しいのでは。それだけの議席数を民主党が取るのは難しいと思っています。因みに現在は共和党:民主党=52:48です。民主党が67議席確保するには後19議席増やさないとなりません。今回の7ケ国の入国禁止の大統領令の世論調査でも賛成:反対=49:41だったではありませんか。メデイアが大騒ぎしているだけ。それならトランプの政策への代案を出せと言いたい。テロリストの入国を防ぐにはどういう手があるのですかと?メデイアは国の内外を問わず、大人になり切れていない未熟児同様です。

記事

EUからの完全離脱の方針を表明する英国のメイ首相(写真:REX FEATURES/アフロ)

金融市場の最大の関心事が、先月20日に第45代米国大統領に就任したトランプ氏の外交・経済政策であることは論をまたない。株式市場はダウが2万ドルを突破するなど上昇の勢いを保ってきたが、従来の政権との非連続性が明白で予測が困難な、そしてイスラム国からの入国禁止など非人道的姿勢をも正当化しようとするトランプ流の「政治戦術」に対し、世界中が強い警戒感を抱いているのは明白であり、そうした緊張感が経済に及んで「新地政学リスク」として市場の波乱要因になることは十分想定される。

同大統領の政策には、同盟システムの軽視と単独行動主義という特徴がみられる、と新アメリカ安全保障センターのラップフーパー氏は指摘している。アジアの経済的価値には無関心で、欧州に対する同盟意識は薄く、中東のパワー・バランス変化にも無頓着である。今年のダボス会議では多くのパネリストがプーチン大統領の名前を連発していたと伝えられるが、それもトランプ大統領に対する懸念の別表現だろう。主要メディアと対立している以上、いわゆる「ハネムーンの100日間」も予断は許さない。

トランプ大統領「弾劾裁判やむなし」の可能性

トランプ大統領に関しては、弾劾リスクを指摘する声も増えている。現職大統領の罷免と言えば昨年のブラジルのルセフ大統領のケースが記憶に新しいが、米国においても反逆罪、収賄罪、または重大な犯罪や非行行為によって下院の過半数に拠る賛成で訴追され、裁判を行う上院の弾劾手続きでその3分の2の賛成があれば、有罪として大統領は罷免されることになっている。

過去には1868年にジョンソン大統領が、1999年にクリントン大統領がそれぞれ弾劾裁判を受けたが、双方ともに無罪となって罷免を免れている。1972年のウォーターゲート事件でニクソン大統領も弾劾裁判で罷免が確実視されていたが、自主的に辞任したために罷免とはならなかった。

最低の支持率で就任したトランプ大統領に仮にロシア関連文書の存在が明るみに出たり、目に余る非行行為が表面化したりすれば、米国民の間にも「弾劾裁判やむなし」とのムードが生まれる可能性は高い。共和党内にさえ、ペンス副大統領の方がリーダーには適役との声もあると言われ、下院・上院での反トランプ意識が弾劾への道を拓く可能性は高い、と1984年から昨年まで過去9回の大統領選挙の結果をすべて当てたアメリカン大学のリヒトマン教授は述べている。

とはいえ足許の米国経済の腰は強く、入国制限措置を契機とする新大統領への失望感が押し下げているドルや株価の下げ幅も、恐らくは限定的だろうと筆者は考えている。新大統領の主軸の無い場当たり的な政策が市場に跳ね返るリスクに関して機関投資家はまだ未消化の状態にあるのは事実だが、先月書いたように(「2017年のカギを握る米国長期金利と米中関係」)、長期金利の急上昇や米中関係の急速な悪化が見られない限り、市場の安定感は簡単には崩れまい。

だが「トランプ・リスク」に「欧州政治リスク」が同期して国際秩序が不安定化し、国際経済が混迷に向かう懸念が強まるような事態になれば、機関投資家も長期的シナリオを修正する必要が出て来るかもしれない。

2017年最初に市場のさざ波をもたらしたのは英国のメイ首相であった。昨年6月のブレグジット決定から約7カ月が経過、メイ首相は「決められない首相」「優柔不断なメイビー首相」などと揶揄されていたが、先月漸く発表したその基本姿勢はいわゆる「ハード・ブレグジット」と呼ばれるEUからの完全離脱の方針であった。

メイ首相の「プランB」にEU諸国は猛反発

その内容は、予想通り移民流入規制と司法権限独立を支柱とするものであり、EU単一市場へのアクセスや関税同盟からの離脱方針が明確化されている。市場はブレグジットの姿が明確になったと評価しているが、金融機関や企業そしてEUへの残留を望んでいたスコットランドなどは、いま強い不安に包まれていることだろう。

特に「ハード・ブレグジット」により、EU全域でビジネスができる「金融パスポート」を失う可能性の高い金融サービス業は、戦略見直しが必至の情勢だ。英国は「パスポート制度」から「同等なシステム(エクイバレンス)」つまり英国とEUとで規制が両立しうるとの認識による金融サービス継続へと戦術変更を余儀なくされると思われる。

だが、EUが英国を同等と承認するまでどれくらいの時間が掛かるのかが定かでなく、EUはその適用を1カ月前の通知で取り消すことが可能な仕組みになっているため、金融機関は安心して営業することができない。

歴代の首相と違って金融に特段の興味を抱いていないメイ首相が、どれほど精力的にこの問題に取り組むのか、との猜疑心も目立つ。既にHSBCは「脱英国」の準備を具体化していると見られ、ロイズはフランクフルト支店を子会社に衣替えする、とも報じられている。ゴールドマン・サックスがロンドンの陣容を半減し、UBSは投資銀行部門をマドリードに移転する、といった観測記事も散見されている。

メイ首相が3月に離脱通告を行えば、2019年3月を以て英国はEUから完全に切り離されることになる。英国は混乱を避けるために「段階的な移行措置」を求める方針のようだが、EU側が寛容な対応を見せる保証はない。関税同盟に代わる新たな協定締結にどれくらいの期間を要するかも全く見当もつかない。同首相は「EUからは離脱するが欧州からは離脱しない」と述べたが、そのレトリックには非現実感も見え隠れしている。

特にメイ首相が「バッド・ディールよりもノー・ディール」と述べ、有利な通商協定が得られなければ協議は停止して「プランB」即ち低税率の導入や規制緩和で資本や企業を呼び込み、英国独自の経済成長モデルを追求する、という考えを示したことに、EU諸国は猛反発している。

相手を脅して有利な条件を引き出そうとする戦術は、むしろ英国の立場の弱さを示しているのかもしれない。同首相は英国とEUが自由貿易協定を締結するのは経済的に合理性があると述べているが、EUの政治的な論理とは噛み合わないように思われる。

英国にとってもこの代替案は得策とは言えないところがある。法人税の大幅引き下げで、財政赤字が急拡大するのは不可避であるからだ。因みに1%の減税で英国の歳入減は約20億ポンド(約2800億円)と試算されており、10%規模の減税となれば毎年約3兆円の赤字拡大となってしまう。また英国の金融街は約90億ポンド(約1兆2600億円)の利益を喪失するとも試算されており、減税とシティ縮小という2つの穴を「プランB」で埋めるのは夢物語だろう。

さらに先月、英最高裁が「EU離脱通告には議会承認が必要」との高等法院の判断を8対3で支持したことで、敗訴した英政府は早々に議会に対して承認を求める法案を提出せねばならなくなった。

議会にはEU残留派も多いが、国民投票の結果を軽視することはできない。但しメイ首相の強硬方針に反対する労働党やスコットランド民族党(SNP)などは、路線変更を求める修正案提出を準備している。態度を表明した同首相は容易には妥協できないだろうが、それが審議の長期化や通告時期の延期などを呼ぶ恐れもある。そのブレグジット戦略がどこかで挫折し、メイ政権が崩壊へと追い込まれるようなサプライズも無いとは言えまい。

注目せざるを得ないオランダ総選挙

また、ハード・ブレグジットの背景にある移民流入への反感の強さは、大陸諸国における「反EU勢力や極右勢力」を元気づけている。周知の通り、今年は3月のオランダ総選挙を皮切りに4~5月にフランス大統領選挙、そして11月にはドイツの連邦議会選挙が予定されており、イタリアやギリシアでも総選挙が前倒しされる可能性が浮上している。筆者の知る限り、オランダの総選挙が国際金融市場の話題になった記憶はないが、今回は流石に投資家も同国の政治リスクには注目せざるを得なくなっている。

オランダの総選挙は3月15日に行われるが、どの政党も単独で過半数を取ることは無さそうだ。与党の自由民主国民党は、現時点で世論調査の首位に立っている極右政党の「自由党」の後塵を拝すことは確実だ。

極右政党として勢力を伸ばしてきた自由党を率いるウィルダース党首は、移民への過激な発言で有罪判決を受けるなど反イスラムのヘイトスピーチや反EU姿勢で知られるが、一部国民の間での人気は衰えていない。だがそれは、連立を組む相手が居ないことを意味している。今回第一党となっても議席数は25%程度と予想されており、恐らく政権には就けないだろう。

現実には、第二党以下の政党が連携する連立政権になる可能性が高いが、少数党での政権樹立も容易ではない。そもそもオランダでは総選挙後の政権が発足するのに数カ月を要することが多い。2012年には約2カ月、2010年には4カ月以上掛かった。戦後平均は72日である。今回も組閣でもたついているうちに、フランスの大統領選が始まるかもしれない。その政権樹立過程で自由党が存在感を示すようなことになれば、ル・ペン氏を勢い付かせるような展開にもなり得る。

そのフランスでは、流石にル・ペン氏が大統領に就任するとの見方は少数に止まっているが、昨年の英米における教訓を忘れるべきではない、と警告する声も強まっている。極右政党の国民戦線(FN)を率いるル・ペン氏が4月23日の第1回投票で勝ち残るのはほぼ確実と見られているからだ。

先月行われた「Ifop-Fiducial」による世論調査では、同氏の支持率が約26%でトップ、約24%に止まったフィオン氏をリードしている。もっとも、5月7日の決選投票での形勢不利は否めず、一騎打ちとなった場合の支持率ではフィオン氏が64%でル・ペン氏は36%と大きく差を付けられている。

但し、フィオン氏が1カ月前の調査から支持率を落としていることも事実である。昨今勢力を伸ばしているのが無所属で立候補したマクロン元経済相であり、決選投票での組み合わせ次第では、ル・ペン氏が勝ち残る可能性も無いとは言えない。

世論調査が当てにならないことも実証済みであり、市場は常に「まさかのシナリオ」を念頭に置かざるを得なくなっている。仮にル・ペン氏が当選すれば、EU離脱(フレグジット)とユーロ離脱がメイン・アジェンダに据えられることは間違いない。最近の講演でも同氏は「早期にユーロ建て国債をフラン建て国債に切り替える」と公言している。そんなユーロ離脱観測への市場懸念は、ギリシア問題の比ではあるまい。

オランダとフランスの選挙の間にイタリアやギリシアが総選挙の前倒しを行うようなことになれば、世界は欧州情勢をアップデートするのに一苦労することになるだろう。

リスクを増幅するドイツの物価上昇

そしてドイツの総選挙にはまだ時間があるとはいえ、同国の社会情勢が欧州政治リスクを増幅しかねない要素があることも無視できない。その兆候が、同国におけるやや唐突な物価上昇である。

ドイツの12月消費者物価指数は前年同月比1.7%上昇となり、前月の1.1%上昇から急上昇している。その数字は、インフレに超敏感な同国民にとって気になる数字だろう。ユーロ圏全体では1.1%の上昇とまだ目標値には遠く、ECBは12月に導入した政策の現状維持を決定しているが、その理事会議事要旨ではドイツを含むと思われる一部の国々が資産買い入れ延長に反対したことが明らかになっており、1月も白熱した議論が展開された可能性が高い。

記者会見においてドラギ総裁は、足許の物価上昇は原油などエネルギー価格の上昇に拠るもので、構造的に見て物価上昇傾向は定着していない、との見方を示している。確かにOPECや非OPEC諸国の減産合意で原油価格が持ち直した影響は小さくない。ユーロ圏のコア物価指数は前年同月比0.9%と低水準に留まっている。同総裁は、景気のリスクは依然としてダウンサイドにあるとの見方を示しており、緩和姿勢を変更する気配は感じられない。

だがドイツ国内の不満を沈静化し続けることができるかどうかは微妙だ。ドイツ人記者からの質問に対して、同総裁は「ユーロ圏全体の物価安定はドイツにも有益だ」と述べ、低金利の負担への忍耐をお願いしたい、と回答しているが、ドイツでの物価上昇傾向が定着して南欧諸国での物価低迷との格差が顕著になった場合、そうした総裁の説明や要請ではドイツの忍耐を抑えきれないかもしれない。

ドイツでは、ギリシア支援に対する不満が再燃するリスクも指摘されている。IMFが支援不参加となる可能性が強まれば、メルケル首相は改めて「IMF不在でのギリシア支援」を議会に問わねばならなくなる事態となる。

因みにギリシアの成長率は改善しているように見えるが、国民の生活水準は悪化したままであり、一時は国民的英雄と称賛されたティプラス首相の支持率も急落している。債務再編無きギリシア再建が望み薄であることは、IMFの態度からも明白だ。同国支援を巡る議論は、難民問題と同様にメルケル首相の指導力低下に繋がる可能性もあろう。

欧州で読み直されているツヴァイクの著作

こうしたECBへの不満やギリシアへの不信感は、ドイツ国内の「反エリート感情」に簡単に結びつく。トランプ大統領の就任式の翌日に、ドイツ南西部の都市コブレンツで欧州の「反EU」を掲げる政党が集結する初の集会が行われたことも、欧州を貫く不気味な風が吹き始めた証左である。2012年にユーロを救ったECBも、増幅し始めた主要国の政治リスクには無力である。

いま欧州では、オーストリアの詩人ツヴァイクの『昨日の世界』を読み直す人が増えている、という。同書は、欧州の共通精神を理想に据えた著者が、第一次世界大戦という乱流やまさかの第二次世界大戦への突入という事態を前にして、自殺する数年前に記憶を辿りながら希望と絶望の交差を綴った遺作だ。心の痛み無くしては読めない自伝である。

現代の欧州もまた、ツヴァイクが直面した憂鬱と向き合わざるを得なくなっているのだろう。それが当時と同様に、或いはそれ以上に、日本と無関係でないことは確かである。

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