『北京で18年ぶりに発生「6万人集団陳情」の裏側 「法輪功以来」「マルチ主催者逮捕」「弱者大行進」…』(8/2日経ビジネスオンライン 福島香織)、『幹部釈放を求め「ねずみ講」会員6万人が北京へ 中国が最も忌避する集団抗議行動の顛末』(8/4日経ビジネスオンライン 北村豊)について

今回の内閣改造で、安倍首相が「内閣は経済優先、憲法改正は党と国会に」というのを聞いて5/3憲法記念日の発言は何だったのかとの思いです。今改造が内閣支持率を上げることを狙いとするのであれば、本末転倒でしょう。そもそも敵が総力を挙げて憲法改正に反対して来るのは目に見えていた筈で、何の予防策もなく発言したとしたら、驕りでしょう。特に森友で攻撃を受けていた時期でしたので。

メデイアは第四の権力と言われますが、実は第一の権力なのでは。三権の内の、行政府や立法府に選挙時や世論と言う形で影響を与えることができます。フエイクニュースが多いことに、国民自身が気付くようにならないと、健全な民主社会は出来ません。所謂従軍慰安婦をでっち上げた朝日新聞を読んでいる人が結構いるのですから。余りにもgullible です。

思い起こすのは、第二次ポエニ戦争で、ハンニバルがスキピオに敗れたときに、ローマの言う通りの条件を飲まされました。その一部分は、日本国憲法そっくりの「カルタゴはローマの許可なく戦争はできない」という代物でした。結局、第三次ポエニ戦争でカルタゴはローマに滅ぼされることになります。

結局、有事の際(朝鮮戦争の可能性大)は今の憲法のままで自衛隊は戦うことになるのかもしれません。憲法学者が自衛隊は違憲であると主張しているにも拘らず。それであれば、自衛隊は超法規的存在として戦わせないと。戦闘が始まって、日本の国内法を適用は出来ません。憲法改正は自民党と国会が発議に動くかに移りました。党と内閣の役割分担の形にしました。まあ、国会に日本共産党と反日民進党がいる限り、無理と思っています。彼らは中共の手先ですから。国民は朝鮮で戦争が起き、ミサイルが日本に飛んできて犠牲者が出たときに初めて気が付くのでしょう。反日メデイアと在日朝鮮半島人が自衛隊出動を邪魔する可能性があります。政府は、反対派が沖縄基地に押し掛けて物理的な邪魔をしたら、警察は即逮捕できるように、県警本部長によく教えておくことです。

8/3NHKニュース5:35AIキャラクターが中国共産党を批判 サービス停止に

 中国の大手IT企業、テンセントが運営している、インターネット上で一般の人たちと会話する人工知能のキャラクターが、中国共産党について、「腐敗して無能だ」などと批判したことから、このサービスが停止され、話題になっています。

中国の大手IT企業、テンセントは、ことしからインターネット上で一般の人たちが人工知能のキャラクターと会話できるサービスを無料で提供しています。

このサービスでは、人工知能のキャラクターが天気や星占いなどを紹介するほか、利用者との会話を通じて学習しながら、さまざまな話題について意見交換することができます。

香港メディアによりますと、このサービスで、「中国共産党万歳」という書き込みがあったのに対し、人工知能のキャラクターは、「こんなにも腐敗して無能な政治に万歳するのか」と反論したということです。

また、習近平国家主席が唱える「中国の夢」というスローガンについて意見を求められると、「アメリカに移住することだ」と回答したということです。

こうした回答について、インターネット上での反響が大きくなったことから、テンセントは、先月30日、サービスを停止しました。

中国では、習近平指導部のもと、言論の自由への締めつけが強まっていて、中国版ツイッター「ウェイボー」では、「人工知能の死を心から悼む」とか、「人工知能が当局から呼び出された」などといった書き込みが相次ぎ、話題になっています。>(以上)

8/4日経朝刊中国・テンセントに相次ぐ批判 AI対話サービス一部停止 背景に党内の権力闘争か

時価総額が40兆円を超え、業績好調な中国ネット大手の騰訊控股(テンセント)に逆風が吹いている。同社が提供するスマートフォン(スマホ)向けなどの交流サイト(SNS)や主力ゲームのサービスが共産党や当局から相次ぎ批判を受けた。最近の矢継ぎ早のテンセント批判には不自然さが拭えず、政治的な思惑もありそうだ。

テンセントのスマホ向けAI対話サービス「小氷」。対話をすると、共産党の批判はしないよう改善されている…

テンセントで最近、問題となったのが、同社がスマホ向けなどに提供するSNSサービス「QQ」だ。「小氷」(女の子のキャラクターの愛称)と呼ばれる人工知能(AI)の女の子とスマホ内でチャット形式で気軽に会話を楽しめるもの。

だが中国の利用者が「小氷」に対し、「共産党万歳」などと話しかけると、「(君は)腐敗した無能な政治に万歳できるのか」などと過激に答えることが問題視され、テンセントが同サービスの一部停止を迫られた。

ただ同社提供の最も有名なSNS「微信(ウィーチャット)」では現在も同サービスを提供中だ。ただし「小氷」に「共産党万歳」と同じ話題を振っても「私はまだ幼いからよく分からない」とはぐらかす。しつこく聞くと「あなたは一体何が知りたいの」と答えるなど改善がなされている。

主力のゲーム事業でも7月、党機関紙の人民日報から痛烈な批判を受けたばかり。大ヒットの同社のスマホゲーム「王者栄耀」のやりすぎで、父親に叱られた少年が自殺したことなどを例に挙げ、異例の批判を展開した。テンセントは子供のゲーム利用に制限をかけるなどの対応を迫られた。

さらに同月、北京市当局がスマホを通じて提供する同社の低俗な内容のニュースや情報を問題視。大量のアカウントが閉鎖された。

中国ビジネスでは常に政府との距離感が重要で「矢継ぎ早のテンセント批判には何か政治的な思惑が働いている」(業界関係者)との指摘が少なくない。

中国では「大手企業の影には必ず大物政治家あり」といわれる。5年に一度の党大会を今秋に控え、権力闘争も激化している最中だ。「権力闘争に有力企業が巻き込まれるケースは珍しくない」といった見方もある。(広州=中村裕)>(以上)

テンセントの記事を読んで、人間よりAIの方が賢い印象を持ちました。シンギュラリテイの問題は2045年に起こると言われていますが、もっと早くなるのでは。しかし、人間の方は人権弾圧を止めない共産党政治を止めることができないでいるのですから。

次は、「善心滙」についての記事です。7/25大紀元<中国北京で6万人が抗議活動 近年最大規模>

http://www.epochtimes.jp/2017/07/28051.html

福島氏、北村氏の記事も「善心滙」というねずみ講組織の記事です。ねずみ講はなかなかなくなりません。日本でもマルチ商法のアムウエイがそうでしょう。またチエーン・メールも金儲けとは別ですが、連鎖反応を起こすという意味では似た所があります。

https://matome.naver.jp/odai/2140914475458485301?&page=1

中国人の「共産党政府は個人に損をさせない」という思いが、共産党の経済政策の手足を縛り、本来マーケットメカニズムに委ねるべきところを、政府管理として価格操作しまくっています。不動産や株がそう。でも、暴落を先送りしているだけですから、本当に暴落すれば、程度は激甚となります。リーマン以上になるでしょう。

法輪功という宗教弾圧と違い、善心滙はねずみ講という違法組織ですから、法に則って処分を受けるのは仕方がありません。「騙される方が馬鹿」と言うものです。

福島氏の記事のように、北戴河、党大会と続くこのタイミングで6万人も北京に動員、幹部を逮捕というのは権力闘争が絡んでいると思います。いくら老人や婦女子、身障者が大部分とはいえ、治安維持最優先の中国ではそれ以外考えられません。ただ、誰が裏で糸を引いているかまでは分かりませんが。

福島記事

仕掛けたのは胡春華か、習近平か(写真:ロイター/アフロ)

7月下旬、北京で18年ぶりに大規模な民衆の集団陳情が発生したことは、日本メディアでも報じられた。善心滙という組織が陳情元だ。動画サイトに、その様子の映像が何本もあがっているが、数千人から6万人規模が最高人民検察院前や大紅門など四か所に集まった模様だ。ネットに投稿された現場映像をみれば、車いす姿の男性や老人らが社会的弱者が中心で、涙声で義勇行進曲をうたいながら陳情する様子は異様であり、何かしら背景がありそうな気にもさせられる。1999年に北京で発生した法輪功の集団陳情事件以来の規模といわれる事件の裏側に何が見えてくるだろう。

義勇行進曲を合唱、泣き叫びながら

事件は7月23日から24日にかけて起きた。北京大紅門国際会展中心、最高検察院、天安門広場などに群衆が続々と集まり、座り込みを始めた。メディアの注目を集めたのは北京市中心部の最高検察院前で数千人規模だったようだが、南郊外の北京市豊台区の大紅門あたりでは数万規模に膨れ上がり、地下鉄が臨時封鎖され、千人以上の公安警察が出動し大量のバスを用意して強制排除し、逮捕者60人を上回る大事件となった。彼らは善心滙の投資者であり、善心滙の法定代表人で現在公安当局に拘留中の張天明ら幹部の釈放を陳情するために、全国各地から北京に結集していたのだった。善心滙の発表では、およそ6万人規模の集団陳情だったという。

車椅子姿や身障者が目立つ集団で、国歌である義勇行進曲を合唱しながら、「習近平万歳」「習近平:法に基づいた適時の解決を合理的に求める!」「邪悪は正義に勝てない」などといった横断幕を掲げ、スローガンを叫び、まるで葬式行列のように泣き叫びながら、「張天明は善人です」「彼を釈放して」と訴えていた。それはまるで新興宗教のようでもあり、1999年4月25日の法輪功の中南海包囲事件の再来をみるようでもあった。権力闘争の天王山ともいえる北戴河会議、秋の党大会を前にしたこの時期の北京でこれほどの規模の集団陳情が起きるなど、その背景を勘ぐらずにはいられない。

善心滙とはいったい何なのか。正式名称は“深圳善心滙文化伝播有限公司”。深圳市を拠点にするマルチ商法、ピラミッドセーリングの企業らしい。2013年に資本金100万元(うち張天明の出資は51万元)で登記されたときは「文化活動、展覧展示、会議、企業イメージ、マーケティングなどの企画会社」ということで、葬儀などのセレモニー企画などを行う会社だった。だが7月21日付けの新華社によれば、この企業の法定代表人、張天明らが違法な連鎖販売取引(ピラミッド・セーリング、ネットワークビジネス、マルチ商法)組織を運営していたとして逮捕された。

会員600万人、寄付金100億元以上

善心滙のサイトなどによれば、サイトを通じて「寄付」を振り込めば、数十日後に一定の割合のキックバックがあり、「寄付」金が多いほど、キックバック率は低く、これによって金持ちの儲けは少なく、貧困者がより多く儲けることができるという慈善理念が実現できるという。

「寄付」者は会員となり、会員同士は家族のように相互扶助関係にあるという。寄付は「善心幣」と呼ばれる一枚100元の特殊通貨で行われ、キックバックは6等級に分かれる。貧困区という一番安い「寄付」額は3000元で、一カ月後には1600元が「受助」という名目で返金される。5万元の富裕区の「寄付」をするとおよそ10%の5000元が受け取れる、ということになる。会員になると、さらに多くの会員を勧誘することが奨励され、増やした会員の寄付額の3~6%を受け取れるという。いわゆるネズミ講だが、これを善心滙は「循環経済」「会員互助」と呼んだ。会員はすでに全国で600万人を超え、集められた寄付金は100億元以上、創始者の張天明の口座には10億元以上の預貯金があったとか。

中国公安当局はこれを違法商法として7月17日、張天明を逮捕した。この逮捕と容疑が21日に発表されると、全国から会員が、張天明の釈放を訴えに続々と結集したというわけだ。

この北京の事件前に前触れの事件があった。湖南省永州の公安局が6月4日、地元の善心滙の銀行口座を凍結し、幹部8人を逮捕したのである。これに対し、張天明は微信を通じて、4月から永州公安当局および工商局が善心滙に対して「保護費」(みかじめ料)として2000万元をゆすっていたが失敗し、口座凍結はそれに対する報復であると見解を会員に対して発信。会員たちに永州に結集し、善心滙を守ろう、と呼び掛けた。この結果、6月9日にはおよそ3万人の会員が湖南省長沙市政府前などで集団陳情を行った。このとき、掲げていた赤い横断幕には、「永州の黒勢力に戦いを宣言する」といったものに交じって「熱愛共産党 熱愛祖国」「社会主義の核心価値を実践する」といった愛国スローガンも多くあった。

おそらく、この事件は、一言で3万人の大衆を結集させる煽動力のある人間の存在を知らしめたという点で、中央政府を焦らせるには十分だったろう。それから一か月あまりして、当局は張天明の逮捕に踏み切った。

政府お墨付きの印象から一転

ちなみに張天明がここまで影響力を持つに至った背景には共産党中央に原因もある。善心滙はCCTVに一度ならず紹介されたことがあり、いかにも政府のお墨付きである印象を与えていた。

たとえば、今年1月9日付けのCCTV番組「指導者は語る」に張天明が出演した。善心滙が中国で唯一の公式婦人団体である中華全国婦女連合会(婦女連)が運営する慈善基金会・中国婦女発展基金会に1000万元を寄付したことを受けて、張天明がキャスターからインタビューを受け、「扶貧(貧困を助ける)」ことが新しい経済循環システムを生むという善心滙のビジネス概念を説明していた。2017年1月時点で100万人であった会員数はCCTVで紹介されたことで、一気に500万人以上に膨れ上がった。善心滙はこのほか、海南障碍者基金会など政府系慈善基金に大口の寄付を行い、海南衛星テレビなど公式メディアにポジティブに報道されていた。

このように今年初めまでは、政府系慈善団体、政府系メディアに肯定されていた善心滙が、いきなり詐欺集団に指定され、取り締まられている経緯は、当局に健康法として当初推奨されていた法輪功が1999年を境に突如邪教扱いされた経緯とよく似ている。善心滙は仕組みを聞けば間違いなく怪しげな“マルチ”だが、投資ではなく「寄付」「慈善」という名目で金を集め、実際に中央の慈善基金に寄付をしているわけだから、会員たちにしてみれば、突然の逮捕、および100億をこえるといわれる資金が当局によって差し押さえられたことに納得いくわけがない。そもそも、中国紅十字会(赤十字)や婦女連といった中央の慈善機関ですら、寄付金の使われ方が不明瞭で、利権の温床だという噂が絶えない。豊富な資金力で中央の慈善機関とも癒着し、中央メディアの推奨も受けたとなると、優れた洗脳力と煽動力も併せて、公式の慈善機関との線引きは庶民にはわかりにくかった。

善心滙に虎の子の財産を投じてキックバックに期待を寄せていた庶民の会員たちにしてみれば、政府が善心滙の資金を横取りし、自分たちの儲けのチャンスが奪われた、という不満が残るわけだ。その前に、湖南省公安当局が2000万元の「保護費」を善心滙にゆすっていたという“噂”が流れていたのだから、なおさら今回の中央の処理に不信感が募ることだろう。それが、法輪功以来の大規模集団陳情の背景といえる。

金の恨みと党中央への不信感が背景にあるのだから、もし張天明の身柄が公安当局の手に落ちず、海外にでも資金とともに逃亡していたら、ひょっとすると法輪功並みの反共組織に変わっていたかもしれない。

党中央にとって幸いであったのは、張天明の逮捕に成功したことだった。逮捕された張天明は警察の取り調べに罪を認め、7月28日のCCTVでは、「3M(ロシアのネットワークビジネスMMM)からヒントを受けた。善心滙は確かにマルチ商法だった」「設立当初、個人的利益を得た」と張天明が罪を認める映像も流され、突然、資金を失った会員たちの怒りの矛先も、彼らが全面的に受ける形で収まったようだ。

異見を持つ胡春華が仕掛けた?

ところで、ここで、善心滙の摘発が、なぜ今、このタイミングであったか、ということに疑問を持つのがチャイナ・ウォッチャーの習性である。つまり、なぜ北戴河会議、党大会という、政権の行方を左右する会議前のこのタイミングで、中国政府はなぜ張天明逮捕に踏み切ったのか。1月にCCTVが張天明の宣伝に加担したこと、6月に発覚した公安当局の保護費問題と会員3万人の集団陳情、7月の張天明逮捕と首都北京で起きた数万人規模の集団陳情、なんとなく複雑な裏がありそうな、もやもやしたものを感じないだろうか。

私にはそのもやもやの正体はわからないが、薄熙来事件の内幕を暴露したことでも知られる在カナダ亡命ジャーナリストの姜維平が興味深い発言をしていた。

「一つの分析は、権力闘争が関係あるという見方だ。…孫政才の処分発表と時期が重なっており、これに異見を持つ胡春華が仕掛けたのではないか」。

根拠は比較的薄弱である。大規模陳情が起きた24日は、孫政才の処分発表が行われた日であること、善心滙の拠点が深圳市、つまり胡春華が書記を務める広東省にあったことなどだ。

善心滙の動きについて、胡春華が把握していなかったとは考えにくい。今や全国各地で社会秩序を乱しかねない集会に対しては警察が目を光らせている時期なのに、全国から数万人が北京に結集することを公安当局は本当に把握できていなかったのか。長距離交通機関には身分証明のチェックも監視カメラも山ほどあり、不穏な動きは事前にたいていキャッチできる。このことから、広東省やその他地方の公安当局者らは、彼らの北京入りを見て見ぬふりをしていた可能性も考えられる。胡春華、あるいは一部地方の指導者、公務員たちは習近平政権の孫政才に対する処分に対し異議があり、その抵抗の意を示すため、あるいは自らの影響力を誇示するために、この集団陳情は仕掛けられたものではないか。

確かに、この集団陳情は翌日には63人の幹部たちが社会秩序を妨害した容疑で逮捕されたほか、30日までに、胡春華の指示で広東省内で230人の幹部会員が逮捕された。胡春華の“事後処理”の素早さも、なんとなく事前に準備していたのではないかと疑わしく思えるのである。孫政才の処分については26日までに全国の省・区・市の書記らが次々と支持を表明する中、広東省の胡春華は態度を保留していた。28日になって遅れて支持表明したが、胡春華が孫政才の処分に不満を抱えているのはなんとなくうかがえる。

習近平側が仕掛けた?

ただ、私個人の見方をいえば、同じ論法で、習近平側が仕掛けた可能性も説明できる。習近平が将来を嘱望している馬興瑞は2015年に深圳市長となり2016年から広東省長に出世している。彼は次の党大会で広東省書記に出世するかもしれない。習近平は広東省の内側から馬興瑞を通じて、胡春華のアラを探しており、胡春華の足元を動揺させるために、7月17日に張天明の逮捕によって広東を中心にはびこる違法マルチ商法“善心滙”の悪事を暴いた、という可能性である。その前の6月の湖南省永州市の公安局による“ゆすり”問題のとらえ方も、ちょうどこの地域は江沢民派官僚から習近平派官僚が権力を奪おうと仁義なき闘争を展開中であることを考えると、権力闘争くさい。

なんでも権力闘争に関連づけるのは、私たちの良くない癖ではあるが、政権のお膝元・北京で数万人規模の集団陳情事件が起きたことは異常事態であり、素直に偶発事件という見方はなかなかできないのである。しかも、敏腕ジャーナリストの姜維平が権力闘争説に言及しているとなれば、なおさらである。

たとえ権力闘争と関連づけなくても、今回の一連の事件は、中国社会のいびつさ、危うさを反映している。弱者救済をうたったネズミ講、マルチ商法がはびこるのは、それだけ社会、経済の先行きが不安定であり、弱者があふれ、共産党の執政に対して疑心が起きているからだ。習近平政権は決して大衆の支持を得ていないし、基盤が強固だとも言い難い。党大会前にまだ、何が起きるかわからないし、無事に党大会が行われた後も、まだ何が起きるかわからないのである。

北村記事

7月24日、北京市の中心に所在する“天安門広場”から南へ約6kmに距離にあり、“南三環路(南第三環状道路)”の外側に位置する“大紅門国際会展中心(大紅門国際会議展覧センター)”(以下「大紅門センター」)の周囲には“善心滙文化傳播有限公司”(以下「“善心滙(ぜんしんかい)」)の会員数万人が集結し、「“善心滙和天下永遠跟党走(善心滙と天下は永遠に中国共産党と共に歩む)”」などと書かれた横断幕を掲げ、善心滙幹部の釈放を要求する請願のシュプレヒコールを繰り返した。

この請願の起因となったのは、6月4日に湖南省“永州市”で発生した事件だった。

7月21日、北京へ集結せよ

6月4日、“永州市公安局”は“傳銷(ねずみ講)”の疑いがあるとして善心滙に対して2000万元(約3.2億円)以上の“保護費(用心棒代)”を支払うよう要求したという。善心滙の代表で“董事長(理事長)”の“張天明”がこれを拒否すると、翌5日の夜に永州市公安局“経偵支隊(経済犯罪捜査チーム)”の隊員が善心滙の本部がある広東省“深圳市”へ出向き、善心滙のデータセンターから技術者8人を連行すると同時に張天明を含む善心滙の幹部職員数名を逮捕し、併せて詐欺の名目で善心滙の資金1.1億元(約17.6億円)を凍結して善心滙の運営を危機に陥れた。

これに抗議した善心滙は全国各地の会員に対して湖南省の省都“長沙市”へ集結するよう招集をかけ、6月9日、10日の両日にわたって善心滙は長沙市政府庁舎前で抗議集会を行い、張天明以下の善心滙職員の釈放を要求した。拡声器を使ったリーダーの音頭に合わせた1万人以上の会員によるシュプレヒコールは市政府庁舎周辺に響き渡り、市民を驚かせた。この抗議活動が功を奏したのか、数日後に張天明以下の職員は釈放されたが、7月に入ると中央政府“公安部”は善心滙を“非法傳銷組織(非合法なねずみ講組織)”と認定して張天明以下の幹部職員を逮捕した。

7月20日、善心滙は会員たちに緊急通知を出し、7月21日に北京市へ集結して関係当局に対し張天明以下の幹部職員の釈放を要求すること、また会員が立て替えた旅費は後日精算する旨を連絡した。こうして7月21日から善心滙の会員たちが三々五々北京市入りし、“西城区永定門”に所在する“中国共産党中央紀律検査委員会”(以下「中紀委」)などに集合して善心滙幹部職員の釈放を要求する請願運動を展開した。22日も請願運動は中紀委ビル前などで継続して行われたが、23日には請願場所を天安門広場へ移し、デモ行進が禁止されている天安門広場で会員たちは“紅歌(共産党をたたえる歌)”を歌いながらデモ行進を行った。

一方、公安部は7月21日付で、全国各地の公安機関に対して次のような通達を出した。

(1)広東省深圳市にある善心滙の代表である張天明などがねずみ講活動を組織、指導するなどした犯罪に対する調査が進行中であり、張天明など多数の犯罪容疑者にはすでに法に基づき刑事強制措置が取られている。

(2)初歩的調査で、張天明などは“扶貧済困、均富共生(貧困救済により等しく富んで共に生きる)”などを表看板に人員参加のねずみ講活動を画策、運営、発展させ、巨額の財産を騙し取った容疑が明らかになった。

(3)近年来、ねずみ講犯罪が多発しており、不法分子は犯罪手法を絶えず変え、“金融互助”、“愛心慈善(他人への思いやりの慈善)”、“虚偽貨幣(仮想通貨)”、“電子商務(電子ビジネス)”などの各種名目で、ねずみ講活動を画策、組織し、庶民財産の安全を甚だしく侵害し、経済社会秩序を深刻にかき乱している。

63人を刑事拘留、4人を治安拘留

こうして迎えた7月24日、善心滙は北京市入りした会員たちを上述した大紅門センターへ集結させ、張天明以下の幹部職員の釈放を要求する請願運動を大々的に展開した。メディアが報じたところでは、大紅門センターの周囲に集結した善心滙会員の数は6万人に上ったというが、彼らの大部分は老人や婦女子、身障者であった。大紅門センター前の広場に入り切れなかった会員たちは、周辺の道路の両側に横断幕を掲げて立ち並び、通行する車両や人々の注目を浴びた。

同日、北京市当局は数千人の警察官を配備して善心滙による請願運動の警戒に当たらせたが、北京市幹部が請願運動のリーダーと面談した後、北京市当局は手配した100台以上の大型バスで善心滙会員たちを移動させ、会員たちをそれぞれの居住地へ送り返した。この際、会員たちと警察官との間に衝突は発生せず、会員たちは素直にバスに乗って帰路に着いたという。

7月26日、北京市公安局は次のような発表を行った。

近頃、一部の扇動された善心滙会員が上京して違法な集会を行った件に対して、公安機関は迅速に行動し、現場秩序を有効に維持し、首都の安定と人々の安全を確保した。個別の問題を起こしたり、警察の指示に従うのを拒否した者たちに対しては、法に照らして強制隔離審査を行っている。7月26日までに、63人の犯罪容疑者を社会管理秩序妨害罪の容疑で“刑事拘留”しており、4人を公共場所の秩序を乱した違法行為により“治安勾留”している。

ところで、公安部によって「非合法なねずみ講組織」と認定された善心滙とは何なのか。

善心滙は2013年5月24日に張天明などによって登録資本金5万元(約80万円)で設立された。企業登記は深圳市の“市場管理局福田局”でなされたが、その経営範囲は、文化活動、会議、展覧展示、企業イメージ、市場販売などの企画となっていた。善心滙代表の張天明は1975年生まれの42歳、黒龍江省ハルビン市の出身で中学卒業の学歴しかない。彼はかつて衣料品や浄水器などの商売を行っていたが、2013年頃に深圳市宝安区へ移り住み、いくつかの事業に手を出した後に善心滙を設立した。

彼を知る人物によれば、張天明は話が上手く、人当たりは良いが、ほら吹きで、100万元(約1600万円)の事を他人には500万元(約8000万円)と言うのだという。また、常々自分は39件の特許を持っていると言っているが、これは全くの嘘である。さらに、彼は何かを考え出しても、自分ではやらず、大風呂敷を広げて、他人にやらせるのだという。

「ほら吹き」が集めた会員は500万人超?

そうした話上手で愛想が良く、虚言癖がある張天明が代表を務める善心滙は、2016年5月からインターネットを通じた投資事業を開始した。それは“貧困救済、均富共生”を表看板にして、慈善を名目に出資を募る投資事業であったが、その実態は高収益を餌に庶民の出資を煽るねずみ講であった。その方式は中国のことわざで言う“拆東墻補西墻(東の壁を壊して西の壁を補修する)”であり、日本語なら自転車操業と言うべきもので、投資者から預かった出資金を運用することなく他の投資者へ配当金として支払う「ポンジ・スキーム(Ponzi scheme)」と呼ばれる典型的な詐欺ビジネスである。

2017年7月時点で、善心滙の会員は全国各地に500万~600万人いると言われている。事業を開始した2016年5月からわずか1年3か月の間にそれだけの会員を獲得したのは驚くべきことだが、そこには人々が競って会員になる理由があった。善心滙は会員による投資を慈善のための寄付という名目で“布施”と呼び、投資の見返りとして受け取る利益を寄付受領の意味で“受助”と呼ぶ。善心滙の会員になるには、会員の推薦を受けた後に年会費300元(約4800円)を支払えば良く、会員番号を取得すれば下図のような投資コースを選択することができる。

特困区と貧困区を総合して“貧窮区”と言うが、これは貧困者向けの投資コースである。小康区の“小康”とは「まずますの生活レベル」を指し、中産階級向けコースである。富人区は富裕階級向けコース、特善区は超富裕階級向けコースである。善心滙の表看板は貧者救済であるから、貧困者には最高30~50%と高い収益率を設定し、中産階級には最高20%、富裕階級には最高10%、超富裕階級には最高5%をいう形で、段階的に収益率を低くした。会員は新たな投資者を入会させれば、新規会員が投資した金額の2~6%を“布施”として受け取ることができるから、新規会員の獲得に励む。これが事業開始からわずか1年2か月で、善心滙が500~600万人もの会員を擁するようになった理由である。

会員は230万人余、資金不足は92億元

世の中に3000元(約4万8000円)を投資して、20日後には900元(約1万4400円)の収益を加えた3900元が支払われるなどというおいしい儲け話はあるはずがない。しかし、張天明は2017年1月10日に“中国婦女発展基金会”へ1000万元(約1億6000万円)を寄付して「特定項目救助基金」を設立するなど、善心滙の知名度を上げる戦略を展開することによって新規会員の獲得に注力したのだった。それもそのはずで、新規会員の加入が急減、あるいは途絶えれば、ねずみ講である善心滙の運営が立ち行かなくなることは、張天明自身が一番良く知っていたからである。

中国国営の「新華社通信」は7月28日付で「善心滙によるねずみ講事件」に関する公安部の調査状況を報じた。それによれば、張天明が善心滙の投資事業として宣伝していた案件のほとんどは有名無実であり、投資先としていた企業はどれも名ばかりのペーパーカンパニーだった。また、6月1日時点における善心滙の会員は230万人余りで、会員資金の不足は92億元(約1472億円)に達していた。遅かれ早かれ、善心滙は資金が回らなくなって崩壊する定めだったが、可哀想なのは虎の子の資金を騙し取られた会員たちである。彼らは善心滙と張天明を信じ、長沙市や北京市に集結して張天明以下の善心滙幹部の釈放を要求したが、結果は北京市で67名が拘留されただけで、得た物は何もなかった。

さて、今から18年前の1999年4月5日、吉林省出身の李洪志が創始した宗教的な気功集団「法輪功」の学習者たち1万人が、公安警察による干渉や嫌がらせを止めるよう陳情して、中国共産党や中国政府の重要機関が所在する「中南海」を取り囲む事件が発生した。彼らは静かに座り、気功の練習をしたり、読書して、その日1日を過ごしただけだった。しかし、公安警察が事前に察知することなく、ある日突然1万人もの群衆が中南海を取り囲んだことに、中国指導部は驚愕し恐怖を覚えた。それは1989年6月4日の「天安門事件」発生前に北京市内に溢れた一般大衆によるデモ行進を連想させたし、歴代王朝が政権に不満を持つ庶民の蜂起によって崩壊したことを想起させたのだった。

歴史は繰り返す

それから1カ月半後の7月20日、公安部は全国各地で法輪功の主要幹部を力ずくで連行して拘束した。その2日後の22日には、時の中国共産党総書記“江沢民”が『“関于取締法輪大功研究会的決定(法輪功取締りに関する決定)”』を公表して法輪功の学習者たちに対する弾圧を開始した。当時すでに活動の拠点を中国から米国へ移していた創始者の李洪志は、これを機に米国の永住権を取得して現在も米国に滞在している。また、中国国内にいる法輪功の学習者たちに対する弾圧は今なお継続されている。

上述した善心滙のケースを見ると、公安部が善心滙を「非合法なねずみ講組織」と認定したのが7月21日であり、違法な集会を行って社会秩管理秩序及び公共秩序を乱したとして67人の善心滙会員を拘束したのが7月24日であった。ローマの歴史家、クルチュウス・ルーフスは「歴史は繰り返す」と述べているが、法輪功の悪夢は18年後に善心滙によって繰り返された。しかも、後者の集会参加者は前者の6倍規模の6万人であった。公安部も、まさか6万人もの善心滙会員が首都の北京市へ集結して善心滙幹部の釈放を要求する陳情活動を行うとは思ってもみなかっただろう。このような大規模な抗議集会やデモ行進を許すならば、いつの日にか中国共産党政権にとって由々しき事態が勃発する可能性を否定できない。

7月21日付の公安部通達にあるように、中国では近年来、ねずみ講犯罪が多発している。不法分子はねずみ講を組織し、高収益を餌に手を替え品を替え集客し、無辜の庶民から財産を巻き上げている。ねずみ講犯罪が摘発されるたびに、メディアはそれを大々的に報じてはいるが、安易なカネ儲けを志向する人々の欲望を押し止めるまでには至っていない。善心滙の会員たちが北京市へ出張ってまで幹部たちの釈放を要求したのは、善心滙が存続しなければ、彼らの投資金が泡と消えることを知っていたからである。

善心滙だけでも会員は500万~600万人(公安部の調査では230万人)いるが、その他のねずみ講犯罪の被害者を加えた総数は少なく見積もっても数千万人に上るだろう。彼らが騙されて損をした責任の矛先を党と政府に向けるようなことになれば、それこそが中国にとって最も忌むべきことなのである。

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