5/12日経ビジネスオンライン 『日本人には「リアリズム」の視点が欠けている 今、世界史と地政学を学ぶ理由(1)』、5/13日経ビジネスオンライン 『移民を先兵に領土を奪ってきたリアルな歴史 今、世界史と地政学を学ぶ理由(2)』について

日本の歴史学会は実証主義とアイデアリズムをベースにしていると茂木氏は言いっていますが、実証主義については「慰安婦」や「南京虐殺」など中韓のデッチアゲを認め、畸形左翼のイデオロギーで歪曲したものが大手を振ってまかり通る世界です。また、アイデアリズムというのもダーウィンを発展させた社会進化論をベースにした進歩主義(≒リベラリズムではないか)で保守主義とは相容れない価値観でしょう。戦後民主主義が齎した弊害と思います。歴史学会の偉い先生が教科書を執筆する訳ですから堪ったものではありません。偏向教科書になるのは必定。教科書以外であれば、「表現の自由」の範囲内ですが。育鵬社や自由社の教科書が採択されないのは問題です。出版社が教育委員や先生に賄賂を与えて、教育を捻じ曲げていることに国民はもっと怒るべきです。

日本人は権威に弱いというか、安易に権威を有難がり過ぎでは。和田秀樹の『学者は平気でウソをつく』にも権威に対しもっと眉に唾して見た方が良いとありました。学説は時代と共に変わり、ニュートン力学からアインシュタインの相対性理論に、フロイトも世界では20年くらい前から相手にされなくなったとのこと。フロイトが日本でまだ生き延びているのは、マルクス経済学を教えている大学がまだあるのと同じです。東大=官僚と朝日新聞を有難がる心理は戴けません。日本に害を為す連中は糾弾していかねば。

これに対し、地政学はリアリズムの世界、突き詰めればハードパワー(軍事力)とソフトパワー(経済・文化)の世界です。

第二次大戦で果たした日本の世界史的役割は、副次的効果(主たる目的は資源確保・アウタルキーできる生存権確保)でありましたが植民地の解放を成し遂げたことです。トインビーもそれを認めています。日本の戦後利得者達が認めないだけです。護憲を言っている連中は言うことで利権(メシの種)を持っているからです。

<1956年10月28日付け「オブザーバー」紙

ひとたび失われた(欧米の)政治権力はもはや回復できない。インドシナ半島を取り戻したフランスはわずか8年でベトナムの抵抗に屈し、インドネシアを取り戻したオランダは戦前の地位を回復できないで独立を承認した。・・・・・マレー半島とシンガポールで起きた激変はイギリス軍の軍事的瓦解である。ひとたび惨敗した以上、失われた権威は戻らない。・・・・・第二次大戦において日本人は、日本のためよりもこの戦争によって利益を得た国々のために偉大な歴史を残したと言わねばならぬ。それは日本が掲げた思想『大東亜共栄圏』に含まれた国々である。今日のアジアの最重要課題は、この覆された日本の衣鉢を誰が継ぐかである。日本人が歴史の上に残した業績の意義は、西洋人以外の人類の面前で、アジアとアフリカを支配してきた西洋人が、過去二百年の間に考えられてきたような不敗の半神ではないことを明示したことにある。イギリス人も、フランス人も、オランダ人も、ともかくわれわれは皆ばたばたと将棋倒しにやられてしまったのだ。やっと最後にアメリカ人だけが軍事上の栄誉を保てたのである。>

米国は親中派の国の首脳を、パナマ文書を利用して追い落としを図っているように見えます。英国のキャメロンや豪・ターンブル等。キャメロンはオズボーン(パンダハガー、ハニーにかかったのではと小生は見ています)財務相の言いなりになって臍を噛んでいるのでは。エリザベス女王の園遊会での中国人に対するrude発言は内閣に「中国に近づくな」という事を示唆したのでは。中国経済が崩壊寸前で「元」を活用して儲けようというのは甘すぎ。独も中国に近づきすぎてEUもガタガタになるでしょう。6/23Brexitは起きないと見ていますが。

記事

「世界史」と「地政学」がにわかに注目を集めている。メディアの報道を見ると「地政学的リスク」という文字があちこちで躍る。書店では「○○の世界史」というタイトルが棚を占める。地政学とは何なのか。世界史とはいかなる関係にあるのか。地政学と世界史を学ぶと、世界で起きているニュースはどのように理解できるのか。『世界史で学べ! 地政学』などの著書がある茂木誠氏に聞いた。

(聞き手 森 永輔)

—「地政学」という文字を頻繁に目にするようになりました。この言葉の使われ方を見ていると、「世界史」と何が違うのだろうという疑問が浮かびます。

Makoto Mogi-1

東京都出身。大学受験予備校の世界史科講師。iPadを駆使したビジュアルな授業に人気がある。近著に『世界史で学べ! 地政学』『ニュースの“なぜ?”は世界史に学べ』がある。(撮影:菊池くらげ、以下同)

茂木:まず「歴史」についてお話ししましょう。事実の羅列・記録は歴史ではありません。なので年表は歴史とは言えません。年表を歴史にするためには歴史観を加える必要があります。たくさんある出来事の中で、どの事実に注目するのか、ある事実ともう一つの事実はどういう関係にあるのかを解釈するための視点ですね。

—私が高校時代に習ったのは世界史ではなくて年表だった気がします。その年表すら十分に覚えることはできませんでしたが。

茂木:同じ事実を見ても、その解釈の仕方は幾通りもあります。その解釈の視点の一つが「リアリズム」という考え方に基づいて歴史を見る方法です。「歴史には正義も悪もない。生存競争を続けているだけ」とする歴史観です。地政学は「リアリズム」の一つで、地理的条件に注目して国家の行動を説明します。

 学者や教科書の執筆者は自分の歴史観を示すのを嫌がる傾向があります。歴史観は多様なので、異なる歴史観を持つ人から必ず批判されます。それを恐れて、事実の羅列に終始するのです。

—他の国の歴史教育も、事実の羅列にとどまる傾向があるのですか。

茂木:例えば米国には検定制度がありません。だから、教科書会社がそれぞれの歴史観に基づいた教科書を出版しています。日本への原爆投下を「仕方がなかった」と解釈する教科書があれば、「必要なかった」と書いているものもあります。

 日本の学会はこの半世紀にわたって事実に重きを置く実証主義とアイデアリズム(理想主義)に重心を置いてきました。アイデアリズムというのは、世の中は「進歩」「統一」「戦争のない世界」などの理想(アイデア)に向かって動いているという歴史観です。

 例えば国連中心主義というのはアイデアリズムに基づいた考え方の典型例です。日本もこれに則って、第2次世界大戦までの行動を反省し、国連の一員として活動し、軍備を制限すれば平和に貢献できると考えてきました。

 ところが、周囲を見渡すと、どうもそうなっていないことが肌感覚として分かってきました。それが、世界史と地政学が注目を集めるようになった原因なのだと思います。

 悪である共産主義が打倒され、冷戦が終わった。自由と民主主義の世界が実現し、紛争はなくなるだろうと米国の思想家フランシス・フクヤマ氏が『歴史の終わり』で論じました。しかし、そんな世界は到来しませんでした。中東は大混乱に陥って、過激派組織の「IS(イスラム国)」が登場。中国は海洋進出を強化。ロシアもウクライナ問題に介入し、西側に対して再び対決姿勢を取るようになりました。

 こうした現実を説明する手段として、リアリズムが注目されているのだと思います。

学校では教わらないリアリズム

—今、ビジネスパーソンが世界史と地政学を学ぶ意義は何でしょう。

茂木:ビジネスと地政学はかなり遠い関係にあると思います。ビジネスは「理性」の世界ですよね。数字に基づいて合理的判断する。市場があって儲かるところに出ていく。一方、地政学は不合理と感情の世界です。価格が多少高くても自国製品を使いたいとか、生産性が低くても国内での雇用を優先したいというのは感情です。「ナショナリズム」の世界と言い換えてもよいでしょう。しかしこれがリアルな現実なのです。

 ビジネスパーソンにはぜひリアリズムの考え方を身につけていただきたいと思います。日本の学校では、小学校でも中学校でも、アイデアリズムに基づいた教育がなされます。「話し合えば、ジャイアンとも仲良くやっていける」と習うわけです。性善説に立っているわけですね。こうしたしつけの影響は大きい。結果として社会や世界に出た時に、騙されたり、いいように使われてしまったりするわけです。

世界にはずるいことをする国や、ダブルスタンダードで外国に接する国があることを世界史と地政学から学ぶ必要があるわけですね。英国は第1次世界大戦の時、トルコ人が牛耳るオスマン帝国を内部から崩壊させるべくアラブ人をけしかける一方で、同帝国の支配地域をアラブ人の意向を無視して列強で分割する協定をフランスやロシアと結びました。米国はイスラエルの核開発には目をつぶる一方で、イランや北朝鮮には厳しい態度を崩しません。

 私は世界史と地政学を学ぶべき理由として、日本人は「大きな地図」を見る訓練ができていないことがあるのではと考えています。「小さな地図」はちゃんと見ています。しかし、大きな地図にはなかなか注意がいきません。

 日露戦争が典型例です。朝鮮半島の権益を巡って日本と帝政ロシアが対立しました。日本人の頭の中には、日本とロシア、朝鮮半島、中国の一部からなる地図が思い浮かぶ。これが小さい地図です。

 一方、日露戦争は、南下政策を進めるロシアとこれを阻止しようとする英国とが演じるグレートゲームの一部をなすものでした。英国は、クリミア戦争ではロシアと戦うオスマン帝国を支援、第2次アフガニスタン戦争ではロシアに支援されたアフガニスタンと対決。日露戦争ではロシアと戦う日本を支援しました。この「大きな地図」については、司馬遼太郎さんが書いた「坂の上の雲」も多くの紙幅を割いてはいません。

 —日本人は大きな地図を見られるように訓練する必要があるのではないでしょうか。

茂木:世界観の欠如ですね。日露戦争の時、ロシアとの講和に反対し、ロシアの当時の首都だったサンクトペテルブルグまで攻め込むよう新聞に意見広告を出した東大教授がいました。大きな地図を見ることができなかったのでしょう。

 ただ、大きな地図を見られる人は限られています。世界に影響を及ぼすことのできる大国、例えば米国、英国、ロシアといった国のリーダーだけです。

学ぶべきは近代以降の支配国の歴史

—ビジネスパーソンが改めて世界史を学ぼうと考えたとき、どこから手を付けるのがよいでしょう。期間は長いし、国の数も多いので悩みます。

茂木:近代以降の帝国主義の時代、日本で言えば明治時代からの歴史を学ぶべきです。この時代を動かす原理は「国益」です。これは今にも通じます。古代や中世はとりあえず放っておきましょう。これらの時代を動かしていた原理は「宗教」で今とは異なります。

 注目すべきは支配する側だった国、列強ですね。欧州では英国、フランス、ドイツ、オーストリア、イタリアの5大国。これにロシアと米国。あと日本を加えた8大列強です。

—日本史を見ると、スポットライトが当たる時期というのは決まっています。NHKの大河ドラマは戦国時代と明治維新を繰り返し取り上げています。世界史にも同様の時期があるのでしょうか。

茂木:世界史、なかでも欧州史は統一と混乱の繰り返しです。最初の統一はローマ帝国が果たしました。これが崩壊して中世が始まる。中世はカトリック教会が再統一します。これをルターによる宗教改革が打ち壊した。カソリックとプロテスタントによる宗教戦争が拡大して混乱。これを収集して統一を果たしたのがナポレオンでした。ナポレオン体制が崩れると三国同盟と三国協商が対立する混乱の時代が訪れ第1次世界大戦へとつながります。第1次世界大戦でオーストリア、ロシア、ドイツの3つの帝国が滅びると、生き残った国々は国際連盟を結成して統一を図りました。

次回に続く)

『世界史で学べ! 地政学』などの著書がある茂木誠氏に聞く第二弾。世界の注目を集める現在進行形の事件について、その意義と背景をリアリズムの視点から斬る。取り上げるのは「ブレグジット」「パナマ文書」「中国の一帯一路政策」「カラー革命とアラブの春」だ。

(聞き手 森 永輔)

(前回記事はこちら

ブレグジットは、英国によるドイツ覇権への反発

—ここからは、いま注目を集めている出来事を対象に、世界史と地政学の視点からどう解釈できるかうかがいます。最初のテーマは英国のEU(欧州連合)離脱(ブレグジット)です。英国はこれまでオフショアバランシングを対欧州大陸政策の柱にしていました。大陸に覇権国家が現れそうな時にはそのライバル国を支援して叩くというものです 。第2次世界大戦ではドイツを叩くべく、ソ連と手を組みました。それまでグレートゲームを戦ってきたにもかかわらずに。ブレグジットはこのオフショアバランシングとはずいぶん趣を異にしているように見えます。

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東京都出身。大学受験予備校の世界史科講師。iPadを駆使したビジュアルな授業に人気がある。近著に『世界史で学べ!地政学』『“ニュースのなぜ?”は世界史に学べ』がある。(撮影:菊池くらげ、以下同)

茂木:英国にとってドイツは長年のライバルです。ブレグジットは、ドイツの風下には立ちたくないという英国のナショナリズムの表れでしょう。英国から見ると、EUはドイツに仕切られている機関にほかなりません。

 英国は産業革命によっていち早く工業立国を実現したものの、19世紀後半には輸出額でドイツに抜かれ、金融立国に転換しました。輸出によって蓄えた資本を外国に投資し、その収益によって成り立っています。いま、この金融国家の地位もドイツに脅かされるようになりました。冷戦が終わって東西ドイツが統合し巨大ドイツが復活したことも英国にとって脅威でした。ユーロ導入を拒否してポンドを守ってきたのもそのためです。

 ドイツが仕切る大陸市場に依存したくない英国が選んだ投資先が中国です。中国の習近平国家主席が昨年10月 に訪英した時に、キャメロン首相らが非常な歓待をしたことが話題になりました。中国が主導するアジアインフラ投資銀行(AIIB)に参加するといち早く名乗りを上げたのもこのためです。米国の不興を買うことも厭いませんでした。

—第1次世界大戦の時にロシアと手を組んでドイツを叩いたように、他の国と協力してドイツにビジネス的に対抗することは考えなかったのでしょうか。

茂木:現在の欧州にドイツと対抗する力を持った国は見当たりません。

 ロシアも頼りにはなりません。プーチン大統領とドイツのメルケル首相が良好な関係を維持しています。またロシアは、「90年代に外資導入で痛い目にあった」というネガティブな感情を英国に対して抱いています。プーチン大統領の前任だったエリツィン大統領が外資の導入と資本主義化を推進したのに伴って、ガスや石油といった基幹産業を含む多くの企業が外資企業やそれと結んだ新興財閥によって買収されたからです。

 米国のドル支配に対しても、英国は快く思っていません。ドルもユーロも敵となれば、人民元と手を組むしかない、というのがロンドンの金融街(シティ)の判断です。

パナマ文書はドイツによる英国への意趣返し

 パナマ文書が注目を集めています。これはドイツによる英国への意趣返しの面があるでしょう。この文書を最初に入手したのは南ドイツ新聞とされています 。そしてキャメロン首相と習近平国家主席の名前がいの一番に報じられました。

 この文書を世界に公開した国際報道ジャーナリスト連盟(ICIJ)という団体には、米国の代表的ヘッジファンドのジョージ=ソロスが資金を提供しています。ウォール街は、英国と中国が関係を密にするのを面白く思っていません。同文書を巡って、米国の大物政治家の名前が出てこないのも作為を感じます。

一帯一路政策は「モンゴル帝国」の再来

—なんともきな臭い話ですね。次にお伺いしたいのは中国が進める一帯一路政策です。これは習近平国家主席がモンゴル帝国(元朝)の再現を狙っているのでしょうか。極東から欧州に至る巨大な勢力圏を築こうとしている。

茂木:その通りです。目的の一つは、長い国境線を接し、潜在的には緊張関係にあるロシアとの間でユーラシア同盟を築きたいということ。同時に、カザフスタンなど旧ソ連圏の中央アジア諸国に投資して影響力を拡大すること。

—ロシアはかつて2世紀にわたってモンゴル帝国に支配されました。一帯一路政策が経済的に元を再現するものであれば、ロシアはこれに恐怖を抱いているのではないでしょうか。

茂木:そうですね。ロシアはその2世紀を「タタールのくびき」として暗黒時代と位置づけています 。「タタールがまた来た」という思いかもしれません。

 ロシアは極東でも中国の人口圧力を警戒しています。バイカル湖以東のロシア人口が620万人で千葉県の人口程度しかいないのに対し、国境の南の旧満州には1億人が住んでいます。

米国は移民を先兵にテキサスとハワイを手に入れた

—移民を受け入れることは「人道的に正しいこと」というイメージがあります。しかし、現実には移民は“武器”と言えませんか。茂木先生は著書の中で「テキサス共和国」について触れています。米国は、当時はメキシコ領だったテキサスへの移民を拡大。これは合法的なものでした。人口でメキシコ人を上回ると独立を宣言し、米国への加盟を申請し、28番目の州になりました 。

 ハワイでも同様のことをしています。大量の移民を送り込んだ後に「ハワイ革命」を起こし、米国の50番目の州となった 。

茂木:おっしゃる通りです。ロシア系住民が多いクリミアをウクライナから分離してロシアに併合したプーチン大統領も、当然、これらの歴史的事実を意識していたでしょう。

 加えて、一帯一路政策は純粋な経済政策ではないことも、ロシアの恐怖心を高めていると思います。例えば中国企業が、「一帯」の西端に位置するギリシャ最大の港、ピレウス港を買収しました 。ロシアから見ると、ロシア艦隊が黒海から地中海に出る際のチョークポイントを、中国に塞がれる可能性が出てきました。

 同様に中国は、海路である「一路」の通り道であるオーストラリアでも港を抑えています。米海兵隊がローテーションで駐留するダーウィンの港を、中国企業が99年にわたって借りる契約を結びました 。米豪の同盟関係にくさびを打ち込むことが狙いでしょう。オーストラリア経済は、資源を海外に販売することで成り立っています。その最大の貿易相手は中国です。

—オーストラリアが、米海兵隊の拠点近くの港を中国に貸し与える判断までしているのでは、日本の潜水艦が選ばれないのも道理ですね(関連記事「豪潜水艦の商談を機に日本の防衛産業を考える」)。

茂木:オーストラリアには中国からの移民が年々増えています。中国傾斜を強めるターンブル政権は彼らの意向にも配慮する必要があったのでしょう。

—ここでも移民が重要な役割を果たしているのですね。

 中央アジア諸国は一帯一路政策をどう思っているのでしょう。彼らもモンゴル帝国に支配された記憶を思い出すのでしょうか。

茂木:ロシアほどではないと思います。民族的にも同じ系統ですし。

 例えばカザフスタンの場合、反イスラム過激派ということで中国と利益を共有しています。ナザルバエフ大統領 は旧ソ連時代から政権を維持しており世俗主義をとっています。従ってイスラム過激派とは相容れません。一方、中国はISが新疆のウイグル人独立派に勢力を拡大しようとしているのを警戒しています。「反テロ」で両者の利害は一致します。

—ロシア以外に大きな反対勢力がないとすると、一帯一路政策は順調に進むのでしょうか。

茂木:この政策の進み具合を左右するのは、周囲の国の動向よりも、上海株の暴落以来、失速している中国経済のほうだと思います。

カラー革命とアラブの春の背景にあったもの

—米国の状況についてうかがいます。内向き志向がどんどん強まっているように見えます。オバマ大統領は2013年9月に「米国は世界の警察官ではない」と明言しました 。次期大統領を目指して予備選を戦う候補者たちも、格差を中心とする内政にその興味が向いています。TPP(環太平洋経済連携協定)やTTIP(環大西洋貿易投資協定)などのメガ自由貿易協定にもネガティブな姿勢を示しています。

茂木:おっしゃる通りですね。米国が内向きになった理由はイラク戦争とリーマンショックの二つです。イラク戦争が長引いたため、厭戦気分が広まりました。「なぜ中東で、米国の若者が命を落とさなければならないのか」という声が高まっています。

 リーマンショックは貧富の格差を拡大させました。奨学金を返済できずに苦しんでいる人がたくさんいます。ここに、共和党のトランプ氏や民主党のサンダース氏が大統領候補として躍進してきた理由があります。

 米国が力を落としたのにつけ込んで、ロシアはウクライナに、中国は南シナ海に触手を伸ばしました。

—アラブの春も米国の衰退が原因でしょうか。

茂木:アラブの春は様相が異なります。これはソ連の崩壊を受けて米国が中東の親ロシア政権を倒す運動の一環でした。

 アラブの春で倒れたのは、エジプトのムバラク、チュニジアのベン・アリ、リビアのカダフィの各政権です。いずれも親ソ派でした。これらの国は冷戦終結を受けて米国にすり寄る姿勢を見せましたが、米国は面従腹背と見て信用しませんでした。

 アラブの親ロ政権が倒される中で、唯一、政権を維持しているのがシリアのアサド政権です。ロシアが軍事介入に踏み切ったのはそれゆえです。ロシア海軍がシリアのタルトス港を拠点として利用しているのも理由の一つです 。

 アラブの春に先立って、ジョージア(グルジア)でバラ革命が、ウクライナでオレンジ革命が起こりました。これは旧ソ連諸国における親ロ政権を倒したものです。スポンサーは例のジョージ・ソロスの財団でした。アラブの春はこれを中東に応用したものです。

—独裁政権が倒れるのは、アイデアリズムの視点から見れば好ましいことですが、その結果起きたのは混乱でした。

茂木:中東には「どんな独裁であっても混乱よりはましだ」ということわざがあります。

—なんとも皮肉なことわざですね。

再びシーパワーを目指す中国

茂木:中国の話をしましょう。習近平政権は明時代の中国のようにランドパワーからシーパワーへ転換することを目指しているのだと思います。永楽帝は、鄭和に南海遠征を命じました 。艦隊を東南アジアからインド洋、東アフリカへと回らせ、周辺国に朝貢するよううながしたのです 。

—しかし、その試みは長続きしませんでした。

茂木:北方騎馬民族のモンゴル人が中国の北辺を再び襲ったからです 。

—茂木先生は著書の中で、中国は長いこと南と北に敵を背負ってきたことを説明されています。「北虜南倭」ですね。北には騎馬民族、南には倭寇。米国の力が衰え、ようやく海洋進出の機会を得た中国は、北を襲う可能性があるロシアと敵対したくはないでしょうね。

茂木:中国の海洋進出が可能になったのは、ソ連崩壊で北の脅威から解放されたからです。

 冷戦期に、ソ連に対抗するため毛沢東とニクソンが米中関係を正常化して以来、両国は良好な関係にありました。だからこそ、中国は経済を急速に発展させることができた。しかし、海洋進出やAIIBの設立で流れが変わりました。AIIBの設立は米国にとって、飼い犬に手を噛まれたようなものでしょう。米国は今後、警戒感を強めるでしょう。

 これまでは米国防総省と防衛産業が中国を敵視しても、米国務省と金融界は中国に好意的でした。しかし今は国務省も警戒感を強めています。習近平国家主席は「やり過ぎた」と言えるでしょう。

—米国の戦略家、エドワード・ルトワック氏の近著『中国4.0』によると、習近平政権はやり過ぎに気付き、政策を改めつつあるようです。

茂木:習近平政権が政策を改めるかどうかは国内政治の動向によるでしょう。カギを握るのは人民解放軍です。独裁政権は民衆の声を気にしませんが、軍の忠誠は政権の維持に不可欠です。そして軍の中には「米国なんか目じゃない」と主張する強硬派がいるのです。

—世界史と地政学の視点から分析すると、米中関係の将来像が読めるものでしょうか。

茂木:地政学では北米大陸を巨大な島と考えます。カナダやメキシコが、米国を軍事的に脅かすことは考えられません。一方、中国は常に、北方にロシアの脅威を抱えています。

—オバマ政権の動きを見ていると、ウクライナ問題でもシリア問題でもロシアに対して寛容であるように見えます。これは、中国の北辺にプレッシャーをかけ得る存在であるロシアとの関係を保ちたい意図があるからでしょうか。

茂木:オバマ大統領がそこまで考えているかどうかは分かりません。しかし、側近の中にはそのように考えている人もいるでしょう。

—だとするとオバマ政権は、安倍政権がプーチン政権との関係を深めるのも歓迎でしょうか。

茂木:日ロ首脳会談を開くことにオバマ大統領は不快感を示していますね。しかし、リアリズムの視点に立てば、日ロの関係強化を認めることもありうるでしょう。

 ロシアがISへの空爆を始めて以降、ロシアに対するオバマ政権の姿勢はソフトになっています。対ISでロシアの力を利用しようと考えているのでしょう。同じように、中国を牽制するためにもロシアを利用しようと考えるかもしれませんね。

 だとすると、現在の環境は、日本にとって北方領土交渉を進めるチャンスです。米国からの妨害を受けずに対ロ交渉を進められますから。米国の衰退は、日本が自立した外交を展開する千載一遇のチャンスなのです。

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5/13日経ビジネスオンライン 池田元博『プーチン大統領が安倍首相を歓待した3つの理由 ~孤立脱却、対中、そして経済~』、5/15日経『石油転変(7)ロシア、ガス外交暗転 供給盾に権勢、市況急落の誤算』について

中国はレアアース、ロシアはガスを政治力として利用してきています。独裁国家のやり口です。サウジも宗教国家であり、独裁国家で石油を政治力に使ってきました。米国のシエールオイルを潰すために故意に原油価格を下げたのも独裁国家だからできることです。

ルトワックの言うように、中露分断が日本の独立にとって死活的に重要ですので、領土問題が一気に片付かなくても、シベリア振興の経済協力をして行った方が良いと思います。袴田茂樹氏の「北方4島」一括返還は無理でしょう。これでは敵国を増やすだけです。

藤和彦氏の言う日本にガスパイプラインを敷くのは、日経記事を読みますと危険な気がします。メタンハイドレートも商用化できればパイプラインも必要なくなります。

池田氏が言うように、プーチンの交渉術に嵌まってはダメで、当方からの提案に対して、如何に相手の譲歩を引き出していくかが大事になります。

確かに、安倍—プーチンでなければ、領土問題は解決しないかもしれません。国民の支持と支援が大切です。戦争しないで奪われた領土が還ることはありません。金で買えば別でしょうけど。米国のアラスカ買収はこの例です。ただ、情報が一瞬に世界を俟ることができる今日にあって、金で領土を売るのは不面目になりますので難しく、経済協力の形しかないと思います。

日経ビジネスオンライン記事

Abe VS Putin

5月6日、ロシアで2年ぶりに日ロ首脳会談が開かれた(代表撮影/ロイター/アフロ)

 プーチン大統領は大のスポーツ好きだ。自ら様々なスポーツに果敢に挑戦するし、スポーツが国民の愛国心をくすぐり、ひいては国民の支持を自身に集める手段として利 用できることも十分に心得ている。

 そのロシアで5月6日、2016年のアイスホッケー世界選手権チャンピオンシップが開幕した。今年は80回目の記念すべき大会で、アイスホッケーはロシア国民の間でとくに人気のスポーツだ。

 そんな注目度の高い国際大会の開幕式での演説は、国家指導者にとって格好の国民向けアピールとなるはずである。ところがモスクワで開かれた開幕式に、プーチン大統領の姿はなかった。この日、栄誉ある演説をしたのはナンバー2のメドベージェフ首相だった。

3時間超の首脳会談で見せた「日本重視」の姿勢

 大統領はどこにいたのか。一昨年の冬季五輪の開催地として世界的に有名となった、南部の保養地ソチである。

 日本の安倍晋三首相との首脳会談が主要な目的だった。同日夕刻から始まった日ロ首脳会談は少人数会合、通訳のみを交えた2人の会談、そして閣僚らも交えたワーキングディナーと続き、合計で3時間10分に及んだ。大統領は当初、日ロ首脳会談を短時間で切り上げ、首相が同意すれば一緒にモスクワに向かい、チャンピオンシップの開幕式に出席する案も検討したようだが、結局は断念した。それだけ安倍首相とのソチでの会合を重視したわけだ。

 「日本は単に我々の隣国だけでなくパートナーだ。とくにアジア太平洋地域における重要なパートナーである」――。大統領は会談の冒頭、日本を重視する姿勢を強調し、ソチを訪れた首相を歓待した。

 非公式会談にもかかわらず、ディナーまで用意してもてなした。3時間を超える会談時間は2013年4月、安倍首相がモスクワを公式訪問した時とほぼ同じだ。これらを踏まえれば、日本重視の姿勢は単なる外交辞令ではなく、大統領の本音とみてもいいだろう。

15年3月、伊首相訪ロ以来の画期的な出来事

 では大統領が安倍首相のソチ訪問をここまで歓待したのはなぜか。大きく3つの理由を挙げられるだろう。1つ目は国際的な孤立からの脱却だ。

 安倍首相の訪ロは2014年2月、冬季五輪開会式への出席をかねた首脳会談のため、ソチを訪問して以来となる。ところが今回、首脳会談に同席したラブロフ外相は終了後のメディア向けブリーフィングで、「安倍首相が13年4月にロシア(モスクワ)を訪問して以降、初めてとなる本格形式の訪問となった」と強調した。五輪の開会式や国際会議の場を利用した首脳会談とは質が全く異なるというわけだ。なぜ、そこまでこだわるのか。

 ロシアと西側諸国との関係は14年以降、急速に悪化した。同年春、ロシアがウクライナ領のクリミア半島を併合し、同国東部にも軍事侵攻したためだ。日米欧はロシアが国際秩序を乱したとして主要8カ国(G8)の枠組みから除外し、厳しい経済制裁も科した。当然、西側との首脳外交も大きく停滞した。

 もちろん、ウクライナ危機後も訪ロする外国の首脳はいたが、こと主要7カ国(G7)に限れば、もともとロシアと関係が深いイタリアのレンツィ首相が15年3月にモスクワを訪問したぐらいだ。G8の枠組みから外されたロシアは、西側主要国との首脳外交の面でも相当な孤立感を味わっていたといえるだろう。

 確かに、危機後にドイツのメルケル首相、フランスのオランド大統領がロシアを訪問した経緯はあるが、ウクライナ危機の収拾策の協議や記念行事への出席が目的で、2国間関係の発展のために特別、訪れたわけではない。ラブロフ外相が重視する「本格形式の訪問」という意味で、ロシアにとって安倍首相の訪問は、伊首相の訪ロ以来の画期的な出来事となったわけだ。

米国の影響力の限界を誇示できたロシア

 ラブロフ外相は1月の記者会見で、日ロの外交分野での緊密な協力を訴えるとともに、外交政策で「米国の立場を100%追随する」のではなく、「より自立した日本をみてみたい」と述べていた。その日本が米国の否定的な反応にもかかわらず、首相の訪ロを断行した。ロシアにとっては、米国の影響力の限界を誇示する面でも意義があったわけだ。

 「日本の友人たちは米国をはじめとするパートナーたちの圧力にもかかわらず、(日ロ)関係を維持しようと努めている」。プーチン大統領が首脳会談に先立って語った言葉は、それを如実に示している。しかも、日本は今年のG7の議長国だ。ロシアもさすがに対ロ制裁緩和のきっかけになるとは期待していないが、少なくともウクライナ危機をめぐるG7の対ロ包囲網の弱まりを内外にアピールできたとみているようだ

 2つ目の理由は中国との絡みだ。ロシアはウクライナ危機後の国際的孤立のなかで、対中傾斜を一段と強めた。中ロは実際、両国首脳が戦勝70周年の記念行事に互いに出席したり、東シベリアの天然ガスを長距離のパイプラインを建設して中国に大量供給する〝世紀のディール〟に調印したりするなど、その蜜月ぶりが国際社会でも話題になった。

 ロシアは当初、とくに経済面では欧米の経済制裁による打撃を中国が完全に穴埋めしてくれると期待していたと、多くの専門家が指摘する。ところが中国はそんなロシアを「ジュニア・パートナー」とみなし、ロシア市場での独占的な地位を利用して無理難題を押しつけたり、契約の履行を渋ったりするケースもみられるようになったという。

 ロシアにとって中国は国別で最大の貿易相手国ではあるが、昨年の貿易額は前年比でおよそ3割も減少した。ロシアの外交評論家フョードル・ルキヤノフ氏は「ロシアの政権は中国に前向きな発言は続けているが、対中依存の比重を減らすべくアジア外交のバランスをとろうとしている」と分析する。

「新アプローチ」の背景に中国の影

 「日本はアジア太平洋地域の重要なパートナー」とするプーチン大統領の発言が単なる外交辞令でなく本音とみられるのは、こうした背景がある。今回、安倍首相は北方領土問題を含む平和条約締結交渉を「新たな発想に基づくアプローチ」で加速しようと提案し、プーチン大統領の同意を得た。

 この新アプローチについて日本側は、グローバルな視点を考慮したものとしている。中国の海洋進出や軍事的台頭を踏まえれば、中国とどう付き合うかは日本の安全保障にとっても重要だ。新アプローチの中に中国ファクターを踏まえた日ロ協力の視点が含まれる、とみるのが自然だろう。

 そして3つ目が日ロの経済協力だ。「経済が最も重要だ」。プーチン大統領は会談で昨年の日ロの貿易額が210億ドルにとどまり、前年比で30%も減少したとする一方で、ロシアで活動する日本企業が約270社に上ると指摘。具体的なビジネス案件も挙げて、日本の企業進出を歓迎したという。

trade between Japan and Russia

 大統領はもともと、経済協力の具体的な数字を挙げて2国間関係のバロメーターにし、将来の関係発展につなげようとする思惑が強い。とりわけ近年は、原油安と欧米の経済制裁の影響でロシア経済は低迷している。経済大国の日本の首相との会談で経済協力に弾みをつけ、停滞する極東開発の活性化などにつなげたいとの思いは強かっただろう。

 現に大統領は日ロ首脳会談の2日前、極東開発を担当するトルトネフ副首相、ガルシカ極東発展相をクレムリンに呼び、開発の進展状況を聴取している。さらに当日の首脳会談にはラブロフ外相のほか、ウリュカエフ経済発展相、マントゥロフ産業貿易相、ノバク・エネルギー相やロシア最大の国営石油会社「ロスネフチ」のセチン社長を同席させた。

領土交渉をめぐるハードルが低くなるとは限らない

 その意味で、安倍首相が「8項目の協力プラン」を提示したことは、大統領の関心をくすぐる格好の演出になったといえそうだ。エネルギー開発、医療、原子力・情報技術(IT)、都市づくり、中小企業など8項目の協力を掲げたプランを大統領は歓迎し、具体化の作業を進めるよう求めたという。

 孤立脱却、対中、そして経済協力――。ロシアの期待に見事に応えた首相のソチ訪問は、ウクライナ危機で冷え込んだ日ロ関係を再構築するきっかけになったことは間違いない。ただし、これが北方領土問題を含めた平和条約締結交渉の加速につながる保証はない。今月中旬にはさっそく、トルトネフ副首相が来日する。くだんの「8項目プラン」にはロシア極東地域の産業新興協力が含まれており、日本側の本気度が試されるだろう。

 プーチン大統領が9月にウラジオストクで開く東方経済フォーラムに安倍首相を招待したのも、頻繁な首脳対話に執心する首相の心をくすぐりつつ、極東での経済協力の具体的な〝果実〟を暗に求めたともいえる。さらに、仮にロシア側の要求に満足するような対応を日本側が示したにせよ、領土交渉をめぐるハードルが低くなるとは必ずしもいえない。

 過去のプーチン語録をひとつ、最後に紹介したい。「人道、文化、経済の絆が強まれば、もちろん環境づくりにはつながる。しかし、経済、人道、文化交流の見返りに、領土交渉の立場を軟化させるという取引はすべきではない」。06年9月、大統領と各国の有識者による国際会合「ヴァルダイ会議」での発言だ。

 百戦錬磨の外交経験をもつプーチン大統領が、手ごわい相手であることを忘れてはならない。

日経記事

世界最大級の埋蔵量を誇る原油と天然ガスの輸出をテコに権勢を振るってきたロシアのプーチン政権を原油安が直撃した。エネルギーを勢力拡大に利用、武力行使も辞さない強硬外交で「大国再興」を誇示し、絶頂の中で市場の変化を見誤った。(モスクワ=古川英治)

Russia's pipelines

 2月、ロシアからトルコへのガス供給が減少した。ロシアが2015年12月、突如値上げを要求し、これに応じないトルコ民間ガス会社向け輸出を一時最大4割減らした。

 「ビジネス上の問題」とするロシアの説明を額面通りに取る向きは少ない。プーチン大統領は15年11月、トルコがロシア軍機を撃墜した事件に激怒し、報復を宣言していた。輸出削減はガス需要の5割をロシアに依存するトルコへの圧力だったとの見方が多い。

 ロシアはこれまでも政治を絡めてガス供給を操作してきた。輸出を担う国営ガスプロムが06年1月、ウクライナへの供給を止めた事件は欧州を凍り付かせた。

 親欧米に転換したウクライナに大幅値上げを通告し、交渉不調を理由に輸出を止めた。同国を通るパイプラインでロシアからガスを調達する欧州にも影響が広がった。「ガスによる脅し」との非難を浴びながら、ロシアはエネルギー大国の力を見せつけた。

友好度に応じ格差

 ロシアにとってガス供給は政治上の武器になる。欧州は需要の3割をロシアに頼る。どこからも調達が容易な原油と比べ、ロシアはガスパイプラインで各国と結び、供給の元栓を握る。

 ガスプロムは各国との長期契約の価格を石油相場に連動させながら、その国のロシアとの友好度合いなどによって差を付ける。バルト3国やポーランド向けの価格は、地理的に遠いドイツ向けを上回る。

 ロシアから延びるパイプラインは政治の縮図ともいえる。プーチン政権は主要ルートが通るウクライナ外しを画策し、経済性を問わずに新たな輸送網の建設をガスプロムに指示。ドイツとの間では海底パイプラインで直接結ぶ「ノルドストリーム」を完成させた。

 この輸送網のルートから外された東欧のある首脳は当時、自国の調達確保を優先したドイツへの怒りをあらわにした。「ナチスドイツとソ連が東欧の勢力圏分割を決めた1939年の密約と同じだ」。輸送網は特定の国を取り込み、欧州を分裂させる手段でもある。

 「(ロシアを強国にするには)天然資源が最も重要な要素になる」。プーチン氏は2000年の大統領就任前にエネルギー戦略の青写真となる論文を書いている。ソ連崩壊後に「オリガルヒ」と呼ばれる新興財閥が支配した資源の国家管理を唱え、国策を担う強力な企業の必要性を主張した。「資源政策は地政学上の利益と安全保障に資するものでなければならない」。

 2003~04年のユーコス事件がこの戦略の起点となる。政権と敵対した石油大手ユーコスの社長を脱税容疑で逮捕し、国営ロスネフチに買収させた。三井物産と三菱商事が参加する石油・ガス開発「サハリン2」には環境問題を口実に圧力を掛け、権益の過半をガスプロムに譲渡させた。

 国際的な批判を省みず強行した一連の事件についてロシア政府高官は当時こう語った。「誰もロシアを無視できない。ロシアに変わるエネルギー源はない」

 プーチン氏はその後、原油高騰と連動するかのように強硬路線に傾く。価格ピーク時の08年に親欧米路線を強めたジョージアに侵攻。14年にはウクライナ領クリミア半島を武力で自国に編入し、同国東部への軍事介入にも踏み込んだ。原油はまだ1バレル=100ドルを維持していたころだった。

 クリミア編入を巡り欧米が制裁を発動すると、ロシアはアジアカードを切る。プーチン氏は14年5月に訪中し、新たなパイプラインを通じた大型ガス供給で合意した。中国に輸出を振り向けることによって、欧州を揺さぶる思惑があったのは間違いない。

ソ連の教訓学べず

 戦術にたけたプーチン氏も、その半年後の原油急落は見通せなかったことが誤算になった。シェール革命や欧州の供給源多様化の影響を過小評価していた。景気が減速した中国への輸出も不透明になった。エネルギー頼みのロシア経済は不況に陥った。

 第2次石油危機後に起きた1980年代の原油価格急落は、エネルギー輸出依存を強めていたソ連の崩壊の引き金となった。新生ロシアの改革を担った故ガイダル元第1副首相は2006年末の取材で警鐘を鳴らしていた。「原油高が永遠に続くかのように振る舞うプーチン政権はソ連の教訓を学んでいない」

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5/13日経ビジネスオンライン 北村豊『21歳の辞世ブログが暴いた中国医療の暗部 がん発症の大学生、ニセ病院とウソ広告に翻弄された悲劇』について

麗澤大学の図書館で、台湾の5/10「中国時報」を読みました。WHA(世界衛生大会)のオブザーバー参加についてWHO(世界保健機構)は台湾が「一つの中国の原則」を認めないとダメと言ってきているとのこと。台湾民進党は「オブ参加と一つの中国は無関係、健康は人類の普遍的価値だから条件を付けるのはおかしい」と言ってるようです。何せ国連事務総長が韓国の潘基文、WHOの事務局長はSARSの時の対応がまずかった香港人のマーガレット・チャンですから、中国人の圧力に弱いので、5/20蔡英文総統就任まで圧力をかけ続けるでしょう。本記事によれば招待状は届いたが、参加できるパスワードが書いていないという姑息なことをやってるようです。如何に国際組織が腐っているかです。5/20総統就任式での発言によってパスワードを出すか出さないか決めるのかもしれません。

China Daily20160510

蔡英文次期総統は、日本の潜水艦を米国経由で購入し、安保面でも米日と連携していく考えとメルマガかFacebookで読みました。ただ、軍は国民党支持が多いのと、将来経済がうまく行かなくなれば台湾民進党から国民党に政権が変わる可能性もありますので、良く検討した方が良いでしょう。今、豪のターンブル首相がパナマ文書で名前が挙がっているのは、彼は中国に近いので牽制の意味もあったのでは。日本の潜水艦購入を米国は画策していたのに、米日豪一体で中国へ対抗しようとする目論見が崩れたためでしょう。でなければもっと早く名前が出ていたはずです。

本記事は如何に中国社会が腐敗しているかという事です。賄賂や不正を許容する社会、力を信奉する社会ですから、弱者に対する目配りはありません。民主主義国家であれば、選挙でダメな政党は政権交代させられますが、共産主義国では望むべくもありません。本来このケースのような場合には、国民が怒って、革命を起こすべきでしょう。民衆自体不正に狎れ、また自らも不正をしているケースが多々あるので怒りのエネルギーが出て来ないのでしょう。何せ「騙す方が賢く、騙される方が馬鹿」という基本的価値観の国柄ですから。

中国在勤時代には、怪しげな診療所のチラシが電柱や壁に貼っていました。町中で堂々と営業していました。とても怖くて診て貰いたいとは思えないような所でしたが。それでも病院へ行くと保険があっても、当時2000年頃は20元くらいの給付しかないので、金持ちしかかかれませんでした。病気になったら、自分で治すしかない社会でした。

記事

中国の医療は“看病難、看病貴(診療を受けるのは難しく、受けられても医療費が高い)”と言われて久しく、ただでさえも悪評ふんぷんだが、その医療体制を根底から揺り動かす驚くべき事実が明らかになった。それはがんで死亡した21歳の大学生が死の直前にスマホのメッセージアプリ“微信(WeChat)”に書き込んだ、病魔と闘う経緯を記した文章が引き金となったものだった。

がんとの戦い、武警第二医院に託す

 “魏則西”は陝西省“西安市”にある“西安電子科技大学”の“計算機学院(コンピューター学部)”の学生であった。彼は大学2年生の時に行われた“体格検査(健康診断)”で異常が発見され、精密検査を受けた結果、がんの一種である滑膜肉腫の晩期であることが判明した。滑膜肉腫は悪性軟部腫瘍であり、新たな技術開発や臨床実験中の技術を除いて有効な治療方法が発見されていない難病である。将来の希望に燃えていた魏則西にとって、これは正に青天の霹靂であったが、彼の両親にとっても寝耳に水の出来事だった。大事な1人息子を凶悪な病魔に侵されて、両親は悲しみに打ちひしがれた。

 晩期であっても治療方法は必ずあるはずだ。そう考えた両親は魏則西を連れて北京、上海、広州など各地の医院を訪ね歩いたが、どの医院も治癒の可能性に否定的だった。最早この病気から逃れる術はないのか。思いあぐねた魏則西はその治療方法についてインターネットの活用を思い付き、2014年3月30日に中国最大の検索エンジン「百度(バイドゥ)」で滑膜肉腫の治療方法を検索してみた。その検索結果の第1位にランクされたのは「武装警察北京総隊第二医院」(以下「武警第二院」)の生物免疫療法だった。この旨を両親に告げると、両親は即座に武警第二院へ電話を入れて面談の約束を取り付けると、大急ぎで北京へ向かった。

 北京に到着した両親は、武警第二院で「“生物診療中心(センター)”」主任医師の“李志亮”と面談した。両親は息子が滑膜肉腫の晩期であることを告げて、何としても生物免疫療法で治癒して欲しいと述べると、李志亮は両親に次のように語った。すなわち、生物免疫療法は米国のスタンフォード大学が研究開発したもので、滑膜肉腫に対する有効確率は80~90%に達しているので、息子さんの命を20年間保証することは何も問題がない。

 これを聞いて安堵した両親が李志亮について調べてみると、李志亮は“中央電視台(中央テレビ)”の番組で何度も紹介されているし、武警第二院は“三甲医院(最上ランクの医院)”であった。さらに、武警第二院の生物免疫療法は百度の検索結果で第1位にランクされていたこともあり、信頼に足ると判断できたことから、両親は魏則西の治療を武警第二医院に委ねることを決断したのだった。

2014年9月から2015年12月末まで、魏則西は武警第二院で都合4回にわたる生物免疫療法の治療を受けた。この間の費用は20数万元(約400万円)に達したが、両親は家中のカネをかき集めても到底足りず、親戚友人に借金して賄った。しかし、魏則西の病状は一向に改善しないばかりか、がんは肺に転移する始末で、医師から余命2か月と宣告されるに至った。

最大の悪は希望を餌に苦しむ人を騙すこと

 生物免疫療法を4回も実施したのに病状は悪化するだけで、何らの改善も見られないのはなぜか。疑問を感じた魏則西が知り合いの米国人留学生経由で調査を行った結果、生物免疫療法は米国では20年前に淘汰された技術であり、米国内の医院では全く使われていないことが判明した。一方、父親が主任医師の李志亮に「息子の命を20年間保証すると言ったのに、余命2か月とはどういうことだ」と詰め寄ると、李志亮は前言を翻し、今までにどの患者にも命の保証などしたことがないと述べ、生物免疫療法をさらに続ければ効果がでると言う始末だった。李志亮が魏則西と両親を騙し続けていたことは明白だった。

 2016年4月12日、武警第二院の病室で魏則西は21歳の若き命を閉じた。魏則西は死の直前、スマホの“微信”へ「あなたは人間性で最大の悪は何だと思う」と題する文章を書き込み、病魔と闘う経緯を記していた。魏則西はその答が何かを明確に述べてはいなかったが、彼の文章を読んだ人々は、それが「人間性で最大の悪は希望を餌に苦しむ人を騙すこと」なのだと理解した。魏則西の死によって辞世となった彼の文章は、人々の共感を呼んで広く知られることとなり、中国社会に大きな波紋を投げかけた。彼の文章に突き動かされた人々やメディアは、中国の医療体制を根底から揺り動かす一大事を暴き出したのである。メディアが報じた内容を取りまとめると、その概要は以下の通り。

【1】武警第二院が“武装警察”系列というのは名ばかりで、経営の実態は“莆田(ほでん)系”と呼ばれる詐欺的医療集団が請負っていた。彼らの目的は金儲けだけで、病気の治癒などは最初からまじめに考えていなかった。莆田系とは、福建省“莆田市東庄鎮”出身の医療従事者を言い、その起源は文化大革命期間中に毛沢東によって生み出された“赤脚医生(はだしの医者)”に遡る。彼らは正式な医学教育を受けていない農村医療人員で、農業に従事しながら初歩的な予防・治療活動を行っていたが、文化大革命終結後は全国各地をわたり歩いて無免許で違法かつ詐欺的な医療行為を行った。

【2】彼らは性病、鼻炎、腋臭(わきが)、リューマチ、皮膚病など、命に関わることのない病気を治療する旨の広告を電柱に張って客を集め、効果が期待できない自家製の軟膏、膏薬、丸薬などを原価の何倍、時には何十倍の価格で売り付けて大儲けした。客の患者たちが全く効果のない薬に疑問を抱く頃には、彼らはとんずらして他地域へ移動しているという筋書きであった。どだい彼らには医学や薬学の基礎知識すらなく、有るのは口八丁で患者を騙すペテンの技術だけだった。何はともあれ、偽医者である彼らは全国をわたり歩いて患者を騙してカネを稼ぐことで巨万の富を築き上げた。

【3】2002年頃から、彼らはその財力を背景に、各地の二流医院や“人民解放軍”や武装警察などの系列医院の「科」や「室」の経営を請け負うことを始め、徐々に系列医院や民営医院そのものの経営を請け負うようになり、その後は民営医院を買収して勢力を広げていった。2013年の政府統計によれば、全国の医院総数は2万4700カ所で、そのうち民営医院は1万1300カ所だが、8000か所(70%)以上の民営医院は莆田系と考えられている。莆田系の民営医院では“陳”、“詹(せん)”、“林”、“黄”の4大家族グループが有名で、彼らが大きな勢力を占めている。陳家グループは全国の“華夏”、“華康”、“華東”を頭に冠した医院、詹家グループは全国の“瑪麗医院”と“瑪麗亜婦産医院”、林家グループは全国の“博愛”、“仁愛”、“曙光”を頭に冠した医院、黄家グループは各地の“五洲男子医院”および“聖保羅(セントポール)女子医院”などをそれぞれ経営している。

ニセ医者集団が病院をグループ化

【4】彼ら4大家族グループの創始者も“游医”と呼ばれる各地を転々とする無資格の医師であったが、偽薬を販売することで大金持ちとなり、今ではこれら4大家族グループに属する人々の中には個人資産が億元(約17億円)を超える人が数百人いると言われている。一方、莆田グループ発祥の地である福建省莆田市東庄鎮では、全人口11万人のうちの7万人が医院だけでなく、薬品や医療器械などの医療産業に従事している。彼らは全国の1万社以上の医薬関連企業に身を置いており、その年間営業額は3200億元(約5兆4400億円)に達しているが、この規模は寧夏回族自治区、青海省、チベット自治区の各域内総生産(GRP)を上回っている。ちなみに、全国31省・自治区・直轄市のGRP(2015年)は、29位の寧夏回族自治区が推計2900億元、30位の青海省が2417億元、31位のチベット自治区が1026億元。

【5】それでは、武警第二院で魏則西に生物免疫療法による治療を行った主任医師の李志亮は本当に莆田系なのか。李志亮は魏則西の死亡後に武警第二院を引退した模様だが、ネット上に残る李志亮に関する紹介文には次のように記載されている。

 李志亮:“中国腫瘤(=腫瘍)生物治療協会”常務副会長、“南京明基医院腫瘤精準医院中心”主任医師。1977年に“江南(長江下流南岸)”の有名校、“東南大学医学院”を卒業。40年近く一貫して悪性腫瘍の臨床治療と科学研究に従事し、国家や地方政府の課題研究に数多く参加し、科学研究論文を30本以上発表している。現在、武警第二院腫瘤生物診療中心主任医師。

メディアの記者がこの内容を調査した結果は以下の通り。 (1)東南大学医学院の学籍簿には李志亮という名の卒業生は見当たらない。 (2)中国腫瘤生物治療協会という組織は存在しない。 (3)悪性腫瘍の専門家に問い合わせても、誰一人として李志亮という名を知る者はいない。 (4)紹介文には李志亮が発表した論文30本以上の明細が列記されていたが、それら全ては他人が発表した論文で、李志亮本人の論文は見つからなかった。

 これ以外にも李志亮が中央テレビで紹介された事実はなく、カネを出して李志亮が映し出される広告を買ったというのが真相だった。

かつては電柱、今は百度

【6】要するに、李志亮という人物は医学の知識も医師の資格も持たないインチキ医師であることが明白となったのである。そのインチキ医師が魏則西に施したという生物免疫療法による治療とは何だったのか。恐らく生物免疫療法と称して治療の演技を行っていただけで、魏則西の病状を放置したものと思われる。李志亮にとって、魏則西は生物免疫療法という疑似餌(ルアー)に飛びついた魚で、釣り上げた後は好きに料理してカネを儲ければ良かったのだろう。それこそが莆田系のインチキ医師の本分であり、魏則西の場合は見事にそれが成功した例であったのである。

【7】魏則西が生物免疫療法を見つけ出したのは、検索エンジン「百度」で滑膜肉腫の治療方法を検索した結果であり、武警第二院の生物免疫療法は検索結果の第1位にランクされていた。魏則西がそれを信頼できるものと考えて両親に伝えたことが、全ての始まりだった。李志亮によるルアーフィッシングに手を貸し、検索結果の第1位に配置することにより武警第二院の生物免疫療法に権威と信頼性を与えたのが百度だった。

【8】かつては電柱に広告を張って客(患者)を呼び込むことで偽薬を販売した莆田系だが、彼らの営業戦略は依然として宣伝広告である。時代の変遷は彼らの広告手段を電柱からインターネットやテレビへと変え、今や彼らの広告媒体の主体は中国最大の検索エンジン「百度」となり、百度にカネをつぎ込むことで患者の獲得を図っている。それは、百度が広告枠の配置順位をオークションにより決定しており、それが推薦可能な医院の検索結果にも反映されることになっていることに起因している。財力に勝る莆田系医院は常に広告枠の上位を勝ち取り、推薦可能な医院の検索結果でも上位に配置される。

【9】最も重要な事は、百度が広告主の資格審査を従来から全く行わぬまま、オークションで高価格を提示する莆田系医院を優遇し、彼らのインチキ商売に手を貸し、彼らを野放しにしたことだった。百度と莆田系医院の密接な関係は、2003年に百度が広告枠のオークション制度を開始した時から始まり、すでに13年が経過している。百度はカネが儲かるという理由だけで、広告主の資格審査を行わぬまま、莆田系医院に便宜を図ってきたことは明白だった。その結果が百度の検索結果を信じた魏則西を死に追いやったといっても過言ではない。

【10】こうした背景を知った世論は激高し、百度の責任追及を求める声が沸騰した。世論の圧力を受けた百度は医院広告の担当責任者を解雇することで事件の沈静化を図ったが、世論はその姑息な対応に怒りをさらに強めた。世論に押された中国政府および北京市の関係部門は5月2日に調査チームを組織し、“魏則西事件”に絡んで百度の広告枠オークション制度の調査を行った。5月9日、調査チームは調査結果を発表し、百度に対して医療広告の全面的見直しと広告枠オークション制度の廃止を含む業務改善を勧告した。一方、同調査チームは百度と並行して武警第二院の調査も実施し、武警第二院は営業停止を命じられた。

無法の放置、撲滅なるか

 『三国志・蜀志・諸葛亮伝』に「死せる孔明生ける仲達を走らす」という言葉がある。これは偉大な諸葛孔明は死んでも、敵の仲達を恐れさせて敗走させたということで、「死してもなお影響力のあること」を意味する。魏則西は諸葛孔明のような偉人ではないが、死を前にして“微信”に書き込んだ文章が死後に注目されたことで、百度の医院広告の不条理や莆田系医院によるインチキ治療が暴き出される切っ掛けとなった。

 百度は調査チームの勧告に従って業務改善を行うだろうが、問題は民営医院の70%以上を占め、一部の公営医院にも進出している莆田系をどうするかであろう。今回の事件により莆田系医院が百度の検索を広告媒体とすることには歯止めがかかるだろうが、財力がある莆田系の人々がただ手をこまねいているとは思えない。中国政府が徹底的に無資格医を取締り、莆田系を壊滅させない限り、魏則西に続く新たな犠牲者が出る可能性は高い。また、死に至っていなくとも莆田系医院およびその医師によって騙された経験を持つ国民は膨大な数に上るはずである。莆田系の撲滅はひとえに中国政府の決断にかかっている。

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5/12日経ビジネスオンライン 鈴置高史『「トランプからの請求書」は日本に回せ 在韓米軍の経費を誰が支払うのか』、5/16日経ビジネスFT『トランプ氏は世界秩序の脅威だ』について

FTの記事は米大統領選で「ヒラリーが楽勝すると考えるのは危険」という事です。宮崎正弘氏ノメルマガでも同じような指摘がありました。

http://melma.com/backnumber_45206_6366088/

日本もトランプ大統領になったときのことを真剣に考えないと。政治家任せは危険です。国民主権なのだから、国民一人ひとりが日本のあるべき姿を考えねば。韓国の経費を日本が払うのは論外です。こいつらの頭の中を覗いてみたい。どうしたらこういう発想ができるのかと。聞くだに不愉快になります。今まで日本人が甘やかして来たツケが回っています。これからは違うという事を日本人は中韓北に見せないと。舐められてばかりでは子々孫々に不名誉を遺産として残すことになりかねません。

トランプは日本人に今まで深く考えずに済んできたことを強制的にでも考えさせてくれます。戦後米軍に憲法を押し付けられ、思考停止してずっと生きて来た日本人が今また米国人によってその頸城から脱せられるのかもしれないという事態です。主体性がありません。外圧頼みでしか物が考えられないのでは国際社会は生き抜いていけませんが。

日米同盟と核保有については宮崎正弘氏の言う日本の持つ米国債で第七艦隊(核付き)を買うというアイデアが実現できれば良いのでしょうけど、人員付きでなければ動きませんので、米国籍のままですと、完全な傭兵となり、米軍のプライドから言って無理でしょう。

やはり、米国と1個1個相談しながら、日本の自立を進め、米国の覇権に挑戦する中国の包囲網を両国を中心に展開していかねば。

5/12記事

Trump-8

米大統領選で共和党の指名を確実にしたトランプ氏は、日本と韓国の「米軍駐留経費全額負担」を主張(写真:ロイター/アフロ)

 在韓米軍の費用は日本に払わせればよい――。韓国でこんな声が出てきた。

日韓独は100%支払え

—米軍の駐留経費の分担問題が日本の新聞をにぎわせています。

鈴置:共和党の予備選で、不動産王のトランプ(Donald Trump)候補が「日本や韓国、ドイツなどには駐留経費を100%支払わせよう」と語ったのがきっかけです。

 トランプ氏が大統領にならなくても、駐留経費は米国と同盟国の間で問題化しそうです。「なぜ、我々の税金を使って豊かな同盟国を守っているのか」と考える米国人が増えているからです。

 韓国では日本以上に論議を呼んでいます。米国との同盟があるからこそ国を維持できている、との意識が強いためです。ことに今、韓国は北朝鮮の核武装の脅威に直面していますし。

米国に払うなら中国と同盟

—でも、米韓同盟は揺れているのではありませんか?

鈴置:ええ、そこがポイントです。「北朝鮮の核」に対しては米韓同盟を頼りにしたい半面、それにより本当に抑制できるのかと韓国人が疑いを持ち始めたところです。

 米国ではなく中国を頼りにすればいい、という発想も広がっています。意識調査を見ても明らかです(「米中どちらが重要か」参照)。

グラフ●米中どちらが重要か

Important nation for Korea

 今後、米国が「トランプ化」するにつれ、在韓米軍への負担――米韓同盟を巡る議論はかなり複雑になるでしょう。米国が「経費分担を増やせ」と強力に要求するのなら、中国と同盟を結ぼう――という声も出てきかねないからです。

 ただ今現在は、ほとんどの韓国メディアが「米韓同盟は存続する」との前提で「韓国は十分に経費を分担している」と主張しています。保守系紙は政府を代弁して、左派系紙は反米感情から――と背景は異なりますが。

GDP比では韓国は優等生

鈴置:この分野で有名な、朝鮮日報のユ・ヨンウォン軍事専門記者は「トランプの主張を受け入れ米軍の韓国駐留経費を100%負担すると、韓国の支払いは年間9320億ウォン(1ウォン=約0.09円)から2兆ウォン程度に倍増する」と推算しました。

 「トランプの望み通りにするなら……韓国が出す米軍負担金は9320億→2兆ウォン」(5月6日、韓国語版)という記事です。

 そして同じ日に「米軍防衛費負担、GDP比重で考えれば韓国が最高水準」(韓国語版)も書きました。韓国政府の主張を紹介した記事です。骨子は以下です。

  • 政府当局者は「米軍駐留費用の(受け入れ国による)負担比率に関して言えば、韓国は日本よりも低いが、ドイツなどNATOより高い。とはいえ、GDP基準で考えれば、我々が世界最高の負担水準にある」と分析している。

日本は75%負担

 計算方式にもよりますが、日本は米軍駐留経費の50-70%を負担しているとされます。米国防総省が2004年にまとめた「2004 STATISTICAL COMPENDIUM on ALLIED CONTRIBUTIONS TO THE COMMON DEFENCE」にもデータがあります。

 この手の統計はあまり公開されないためか、少し古いのですがあちこちで引用されます。それによれば日本は直接・間接的な支援を合わせ、米軍駐留経費の74.5%を払っています(B-21ページ)。

 韓国は40.0%(B-22)、ドイツは32.6%(B-7ページ)です。何でも日本と比較される韓国とすれば、こんなデータを持ち出されたらかなりまずい。そこで韓国政府は「GDP比」という、自分に都合のいい概念を考え出して対米交渉に臨んできたのでしょう。

 もっとも韓国政府が計算したという対GDP比の韓国の数値は0.068%。ドイツの0.016%と比べればはるかに大きいのですが、日本の0.064%とはほぼ同じ水準です。

日本こそ「ただ乗り」だ

—へ理屈ですね。

鈴置:ヘ理屈でも何でもいいから、予想される「トランプの値上げ攻勢」を乗り切ろうとの韓国政府の必死の姿勢が、この記事から伝わってきます。現行の負担を決めた米韓協定は2018年末に満了となり、改定交渉が近く始まることも影響しているのでしょう。

 「トランプの値上げ」に対するもっと強力な、というか珍妙な反論も開陳されました。同じ朝鮮日報の崔普植(チェ・ボシク)先任記者の「全斗煥(チョン・ドファン)が米国を助けた方式」(5月6日、韓国語版)です。以下、要約しながら翻訳します。

  • 朴正煕(パク・チョンヒ)政権とカーター(Jimmy Carter)政権当時の韓米関係は最悪だった。カーター大統領は1977年に就任するや否や「在韓米軍を今後4-5年以内に段階的に撤収する」と、人権問題を指摘しつつ通告してきた。朴正煕大統領は「撤収するというならすればよい」と核兵器開発に動いた。
  • 朴正煕大統領が暗殺された後を継いだ全斗煥大統領は、レーガン(Ronald Reagan)大統領が就任すると直ちに訪米した。1981年2月、ホワイトハウスで全斗煥大統領は「在韓米軍を撤収すると、ソ連はアジアの兵力を欧州に展開できる」との理屈でレーガン大統領を説得し、米軍撤収を撤回させた。
  • さらに「この会談はレーガン大統領をお助けするためのもの」と切り出し「韓国はGNPの6%を国防費に支出しているが、日本は0.09%しか充てていない。日本は無賃乗車している。日本をして韓国に100億ドルの借款を提供させれば、そのカネで米国製の兵器も買える」と説いた。
  • レーガン大統領は「意見の相違はない」と大きな声で答え、笑い出した。2年後、韓国は日本から40億ドルの借款を引き出した。このケースは将来、トランプを相手にする際に(韓国の)指導者がどんな心構えで突破しなければならないのか、どうすれば局面を我が国に有利なものに変えるかの答えである。

またも韓国・天動説

—なるほど。「トランプ大統領」から防衛費の負担増を求められたら日本に請求書を回せばいい、との主張ですね。

鈴置:その通りです。なお、この記事はいくつか誤りがあります。当時から日本の防衛費の対GDP(GNP)比は1%前後で推移しています。0.09%という数字は1ケタ間違っています。

 当時、レーガン大統領に日本のただ乗りを強調するために全斗煥大統領が適当な数字を言ったか、現在の韓国人読者に「日本は悪い奴だ」と強調するため崔普植先任記者がそれらしい数字を挙げたか、あるいは単純に間違えたか、どれかでしょう。なお、韓国の数字も現在は3%弱で、6%には遠く及びません。

 そもそも韓国の大統領の説得で米国や日本を動かした――との認識は、相当に天動説的な発想です。1980年代初めに米国と日本に登場した保守コンビ――レーガン大統領と中曽根康弘首相はソ連に強い姿勢で対しました。

 米国や日本の保守派にすれば、在韓米軍撤収なんてとんでもない話。韓国の大統領に言われなくとも撤回すべき案でした。

 また1979年の朴正煕暗殺後、とにもかくにも韓国を安定させた全斗煥政権は、日米ともに強力に支える必要があったのです。

 「無賃乗車の日本を懲らしめると同時に、米国製兵器の売り上げ増を狙って米国が日本に借款を出させた」わけではありません。

 なお、全斗煥政権のこの借款は――「日本からカネを出させた」と国民に誇るためのスタンドプレーは、後に韓国を苦しめることになります。

 円ベースの借款でしたが、返済時にはかなりの円高となっていたからです。記事の書き込みでも、1人の読者がそれを指摘しています。

「言いつけ方式」は藪蛇に

—韓国人は周辺大国を自分が操っている、という話が好きですね。

鈴置:「我々はいつも周辺大国の都合で突き動かされている」との現実認識があるためでしょう。

 韓国紙を読んでいると、時々こういう気宇広大な記事に出くわします。中国の戦国時代に遊説家――武力は持たず、口舌だけで諸侯を動かした人々が活躍しました。彼らこそが韓国知識人の理想の姿なのかもしれません。

—では「全斗煥方式」と言いますか「言いつけ方式」で「トランプ大統領」を説得できるのでしょうか。

鈴置:難しい、というか藪蛇になると思います。仮に、韓国が説得に成功し、在韓米軍の駐留経費のなにがしかを日本に支払わせることで米韓が合意したとします。

 すると日本が「トランプ大統領」に対し「米韓同盟はいつまで持つのですか。韓国は米国よりも中国の言うことを聞くようになっているようですが」と尋ねるのは間違いありません。

 トランプ氏の外交・安保認識は現実と比べ、10年は遅れています。そこで最新の状況を調べ、朴槿恵(パク・クンヘ)政権下の韓国が「中国側の国」になっていることにようやく気がつくことでしょう。

AIIB債も韓国が引き受け

—普通の米国人は「韓国の寝返り」にまだ気づいていないのですね。

鈴置:外交関係者は別として、普通の人は中韓関係などに関心を払いません。でも、いったん注目を集めると、状況は変わるでしょう。

 ことに「トランプ大統領」の関心が深い経済分野で、韓国の裏切りが目立つからです(「米中星取表」参照)。

案件 米国 中国 状況
日本の集団的自衛権 の行使容認 2014年7月の会談で朴大統領は習近平主席と「各国が憂慮」で意見が一致
米国主導の MDへの参加 中国の威嚇に屈し参加せず。代わりに「韓国型MD」を採用へ
在韓米軍への THAAD配備 韓国は米国からの要請を拒否していたが、2016年2月7日に「協議を開始」と受け入れた
日韓軍事情報保護協定 中国の圧力で署名直前に拒否。米も入り「北朝鮮の核・ミサイル」に限定したうえ覚書に格下げ
米韓合同軍事演習 の中断 中国が公式の場で中断を要求したが、予定通り実施
CICAへの 正式参加(注1) 正式会員として上海会議に参加。朴大統領は習主席に「成功をお祝い」
CICAでの 反米宣言支持 2014年の上海会議では賛同せず。米国の圧力の結果か
AIIBへの 加盟 (注2) 米国の反対で2014年7月の中韓首脳会談では表明を見送ったものの、英国などの参加を見て2015年3月に正式に参加表明
FTAAP (注3) 2014年のAPECで朴大統領「積極的に支持」
中国の 南シナ海埋め立て 米国の対中批判要請を韓国は無視
抗日戦勝 70周年記念式典 米国の反対にも関わらず韓国は参加
米中星取表~「米中対立案件」で韓国はどちらの要求をのんだか (○は要求をのませた国、―はまだ勝負がつかない案件、△は現時点での優勢を示す。2016年5月11日現在)

(注1)中国はCICA(アジア信頼醸成措置会議)を、米国をアジアから締め出す組織として活用。 (注2)中国はAIIB(アジアインフラ投資銀行)設立をテコに、米国主導の戦後の国際金融体制に揺さぶりをかける。 (注3)米国が主導するTPP(環太平洋経済連携協定)を牽制するため、中国が掲げる。

 金融による米国の世界支配を崩そうと、中国がAIIB(アジアインフラ投資銀行)を設立しました。韓国は米国の反対を押し切って参加しました。

 さらにAIIBの無格付けの債券も、韓国は引き受けることにしました。時事通信が「AIIB債、無格付け発行=設立当初、韓国引き受けか」(2015年12月3日)で報じています。

 2015年12月8日、韓国政府は中国市場で30億元(1元=約16.5円)の人民元建て国債を発行しました。もちろん初めてのことで、人民元の国際化への援護射撃です。

 「強いアメリカ」の復活を旗印に掲げるトランプ氏が、米国の足を引っ張る中国のお先棒を担ぐ韓国に対し、激怒するのは間違いありません。

 「米国はもう、世界の警察官ではない」と繰り返すオバマ(Barack Obama)大統領でさえ「中国を批判しろ」と朴槿恵大統領を満座の中で難詰したのです(「蟻地獄の中でもがく韓国」参照)。

契約違反の店子

—韓国のやっていることは「ただ乗り」どころか「利敵行為」ですからね。

鈴置:「トランプ大統領」は韓国の「追い出し」を直ちに指示するでしょう。それまで韓国は日本やドイツと同様、自分の所有する不動産に相場よりも安く入居するテナントと見なしていた。

 ところがよく調べると、韓国は隣のビルとの間の壁に穴を開けて行き来している。もちろん、貸しビルは無茶苦茶に……。

 こんな状況が判明した以上、貸借契約を守らず、ビルを破壊する店子を大家が追い出すのは当然です。少なくともビジネスマンたるトランプ氏はそうするでしょう。

 彼にとって、日本やドイツとの同盟に関する懸案は「テナント料金の値上げ」問題です。しかし韓国とは「不良の店子」をどう処理するかの問題なのです。

「損切り」の対象に

—これまでは、そんな韓国でも許されてきた……。

鈴置:神戸大学大学院の木村幹教授は「失礼な奴でも自分の陣営に置いておくことで大国は度量を見せる」と説明しています(「『南シナ海』が揺らす米韓同盟」参照)。

 でも、そんな度量の重要さに考えが及ぶのは政治家だけです。株主の短期的な利益を極大化することが仕事の経営者は、会社に損害をもたらす要因は直ちに切り捨てます。

 崔普植先任記者の主張する「全斗煥方式」――日本の無賃乗車を声高に言い立てて費用分担を転嫁する方式が実施されなくとも、トランプ的な発想が広がるほどに米韓同盟は危機に瀕するのです。

—なぜ、韓国人はそれに気がつかないのでしょうか。

鈴置:「米韓同盟は血盟だ」と信じているからです。米国は朝鮮戦争で4万人もの戦死者・行方不明者を出した。だから米国にとって韓国は何があっても手放せない存在だ――という神話と言いますか、信仰が韓国にはあるのです(「『中国に立ち向かう役は日本にやらせよう』」参照)。

 だから舌先三寸で適当なことを言っておけば、米国との同盟は続く――といった言説が、韓国では堂々とまかり通るのです。

 それも、米国の有力な大統領候補者が「これ以上、損害を増やさないために同盟の見直しを検討しよう」と“損切り”を言い出した時に、です。

「全額、支払おうではないか」

 もっとも少数ながら、韓国が直面する危うさに気がついている韓国人もいます。「ヴァンダービルド」の匿名を使い、外交・安保を縦横に論じる識者です。

 興味深い主張をしています。趙甲済(チョ・カプチェ)ドットコムの「トランプの暗示は『韓日は米軍撤退に備え、核武装を検討せよ!』」(3月27日、韓国語)から、要約して引用します。

  • トランプの要求通り、労務費、施設建設費など在韓米軍を維持するための費用は100%支払えば良い。すでに韓国はその40%を毎年、負担している。残りの60%の1兆3800億ウォンを追加して支払うだけで、在韓米軍の130兆ウォンの装備を我が国に維持できると考えれば安いものだ。
  • 2000年に韓国政府が正式に研究調査した在韓米軍の装備の価値が1112億5000万ドル(約130兆ウォン)だった。装備は高度化され続けており、2000年時点と比べその価値が飛躍的に高いのは間違いない。

日米同盟は片務条約

—思い切った主張ですね。

鈴置:ヴァンダービルド氏は前々から「二股外交をこのまま続ければ、いつかは米国に捨てられるぞ」と朴槿恵政権に警告を発してきました。

 さらに、トランプ候補の浮上とともに「同盟国は米国ばかり頼るな」との「トランプ的発想」が米国で盛り上がると読んだのです。

 日本も他人事ではありません。確かに、米軍駐留経費の負担比率は米国の同盟国の中で飛び抜けて高い。

 しかし、防衛費の対GDP比は1%前後に過ぎません。米国の3%強、英仏の2%前後と比べかなり低いのは事実です。これは以前から米国の安全保障関係者の不満の種でした。

 そして日米同盟が片務条約であることです。トランプ候補も指摘するように「米国は日本を守る義務があるが、日本に米国を守る義務はない」のです。こうした同盟に米国人の支持がいつまで続くかは怪しいのです。

 ことにこれから、中国による太平洋の軍事基地化を日米が力を合わせて防ごうという時なのですから。

(次回に続く)

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5月3日の米大統領予備選で、ドナルド・トランプ氏が共和党候補の指名を事実上、獲得した格好となった。米国は衰退したとはいえ、今も唯一の超大国であり、その米国民の選択は世界中に大きな影響を及ぼす。同氏の主張は詰まるところ現行の世界秩序をひっくり返すことだが、それは米国を含め世界のためにならない。

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トランプ氏の狙いは米国が築いた国際秩序をひっくり返すことにある (写真=ロイター/アフロ)

 世界各国の首都で、米国について2つの点が指摘されてきた。一つは、米国はもはやかつてのような超大国ではない、ということ。もう一つは、米国は大統領選挙が終わるまで重要な案件は保留してきたという点だ。

 だが今、3つ目の見解が加わった。ドナルド・トランプ氏が大統領になったら、悪夢どころではない事態となるということだ。

米国だけの問題ではない

 米国衰退論は、かねて誇張されてきた。それでも米国は今も唯一の超大国である。というのも、米国だけが世界のあらゆる地域に介入できる力を持つからだ。米国は、圧倒的な力を持つ同盟体制の頂点に立っている。

 過去10年ほどで変わったのは、その立場を阻む力が働くようになってきたことだ。世界のパワーバランスが変化し、国内では政治的な空気が足かせになっている。

 とはいえ、米国の力に匹敵する国はほかにないことも事実だ。中国が仮に軍事的な影響力と技術力で米国に肩を並べる日が来るとしても、それは何十年も先のことだろう。米国政府は今なお、世界秩序の維持に欠かせない守護者である。

 ゆえに、ホワイトハウスの主人を決めるのは確かに米国民だが、その選択は世界にとっても大きな意味を持つ。

 特にトランプ氏が、共和党の大統領候補としての指名を事実上、獲得した今、このことの重大性はかつてなく高まっている。

 予備選でトランプ氏がなぜ勝利するに至ったのかについては、多くを指摘することができる。アブラハム・リンカーン以来の歴史を誇る共和党*が、いかに自己破壊的な道を歩むに至ったのか。不動産開発業者からテレビのリアリティー番組のスターへと転身したトランプ氏が、いかに国民の間に高まる不安と怒りを利用したか。米国民は、なかなか改善しない生活水準と、グローバル化が進んだことに伴う社会的、文化的な変化に対し、不安と怒りを募らせてきたのだ。

 そして、残念なことだがマスコミがトランプ氏を、その出馬表明以来、視聴率を稼げるタレントのように扱ってきたことで、いわば同氏の指名獲得に半ば加担する形になったという問題点も指摘できる。

*=1854年に黒人奴隷制反対を掲げて結成され、1860年にリンカーンが初の共和党出身の大統領となる

保守などではないトランプ氏

 世界の多くの民主主義国において、今、左派と右派双方の大衆迎合的な政治家がトランプ氏と似たような発言をしている。

 フランスの極右政党、国民戦線(FN)のマリーヌ・ルペン党首も、ドイツの右派政党「ドイツのための選択肢(AfD)」も、トランプ氏と同じくイスラム排斥を訴えている。英国では欧州連合(EU)からの離脱(ブレグジット)を推す陣営が、やはり政治的エリートに対する一般国民の敵意に乗じて、欧州大陸から英国を引き離そうとしている。

 政治は、その時々の状況に順応しようとするものだ。従って、「そんなにひどい事態にはならないかもしれない」と言いたくなるのも分かる。「候補者たちは、予備選挙中は自分を最も支持してくれる層にアピールする発言をするが、党の指名を獲得すれば方針を中道に戻すのが常だから、トランプ氏も例外ではないだろう」と。

 しかし問題は、トランプ氏の場合、そうはならないということだ。トランプ氏は保守でもなければ、共和党員ですらない。同氏の立場は、左翼的な大衆迎合的経済政策と、非常に醜悪な右翼的ナショナリズムの混ぜ合わせだ。

 トランプ氏には大した外交政策はないが、その特徴と言えば好戦的な孤立主義ということだ。「メキシコとの国境に壁を築く」「イスラム教徒は入国させない」といった政策は、一度表明した以上、簡単に撤回できるものではない。

「どうせ本選挙で負ける」は危険

 古参の共和党員たちは、「11月の本選挙でトランプ氏は勝てないから心配ない」と言う。同氏は、女性の70%、ヒスパニック系やアフリカ系の米国人有権者に至ってはもっと高い比率を敵に回してきた。トランプ氏に対する不支持率は、とてつもなく高い。従って、単純に計算すれば彼は負ける。

 だが、共和党の主流派が本当に心配しているのは、トランプ氏と共に共和党も負けるのではないかという懸念だ。上院では既に民主党が過半数を奪還する可能性が高まっている。トランプ氏のせいで共和党は、下院でも過半数を失いかねない状況にある。

 確かに共和党の候補指名を獲得したからといって、米国民がトランプ氏を大統領に選ぶと決まったわけではない。それでも今回の予備選挙で得た教訓がもう1つあるとすれば、対立候補たちはみんな、ずっとトランプ氏を過小評価してきたということだ。

 トランプ氏の勢いに最も当惑させられてきた共和党員たちの方が、驚いたことに、どうも民主党の人たちよりもトランプ氏が投票日までに自滅すると信じ込んでいるようなのだ。

 ヒラリー・クリントン氏は大統領になる資質を十分備えた人物と言えるだろう。だが、民主党員はだからといって、彼女が有力な大統領候補になるとは限らないことを知っている。

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民主党候補のヒラリー・クリントン氏は大統領としての資質は備えていても当選するとは限らない (写真=ロイター/アフロ)

 ここでトランプ氏の外交政策を見ておきたい。同氏の選挙スローガンは「米国を再び偉大な国にする」だ。彼は自分が大統領になったら、もはや弱腰な外交政策は取らないという。

 米国の敵、特にイスラム国(IS)に対しては奇襲攻撃をかけるだろう。同氏によれば、相手に予測させないことが強みになるという。だが重要なのは、彼の外交政策とは米国が以前に取った孤立主義に、傍若無人なナショナリズムを付け加えるということだ。

 トランプ氏は、欧州やアジアの同盟諸国は米軍の駐留費用を負担すべきで、そうでなければ米軍は撤退することになる、としている。日本や韓国などが東アジア情勢の不安定化に対応するために核武装しようとしても、トランプ氏は気にしない。

 トランプ氏はロシアのウラジーミル・プーチン大統領を崇拝している。トランプ氏は、貿易協定は米国のほぼ全ての企業と雇用に打撃を与えるものと考えているため、そのほとんどを破棄し、中国からの輸入品には新たな関税を課すだろう。

狙いは現在の国際秩序の破壊

 要するにトランプ氏は、第2次大戦の終戦時に米国が構築した世界秩序を事実上ひっくり返すことを提案している。その前提として彼は、パクス・アメリカーナ(米国による平和)とは米国以外の国ばかりが恩恵を受ける秩序だと考えている。つまり、現在の国際秩序は、寛大な米国が、米国に感謝することを知らない世界に対して与えている贈り物であり、米国のためにならない、というわけだ。

 だが、トランプ氏は理解していないが、理解すべきは今の国際秩序におけるルールや制度は米国の国益を織り込んでいるという点だ(つまり、トランプ氏が言うほど米国は容易に孤立主義の立場は取れないはずだ)。米国の繁栄と安全保障は、世界の力関係の中で米国が優越性を保持していることと切り離して考えることはできない。中国をはじめとする新興諸国が、国際的システム管理の在り方について強く主張し始めているのも、それゆえだ。

 海外の駐留米軍を撤退させて、今の国際体制全体をひっくり返したなら、米国の力は大きく減退するだろう。

 決めるのは米国民だ。だが、トランプ氏を選ぶ判断は世界中にとって悪い選択となるだろう。

Philip Stephens ©Financial Times, Ltd. 2016 May .5

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5/9日経ビジネスオンライン 篠原 匡『ヒラリー大統領を阻む難敵』、高濱賛『クルーズ撤退でも四面楚歌のトランプ 「原爆投下」を巡ってヒラリー攻撃に出るか』について

本日より、会社OB13人で北海道旅行へ出かけます。明日から札幌、小樽、余市の写真中心の記事となります。

ヒラリーの弱点は

①FBIの私用メール調査。ベンガジ事件の闇が暴露されるかどうか。高濱氏は「幕引き」のセレモニーと見ているようですが。

②エスタブリッシュに近い。サンダースにここまで追い込まれたのはトランプ旋風に通じるものがある。格差を放置してきた不満がサンダースに流れた。特別代議員(エスタブリッシュそのもの)がいなければもっともっと苦戦したと思われる。ヒラリーが大統領になっても、生活は良くならないだろうと大衆は思っている。

③「ガラスの天井」は2008年予備選のようにはないと思われるが、この8年で年をとって68歳。トランプが69歳でほぼ同じですが、長く政治に携わってきた垢が溜っている。それと健康問題。

トランプの弱点は高濱氏の言うように沢山あります。

①人種差別

②女性差別

③宗教差別

④共和党主流派

共和党員がトランプに投票しない人が多く出て来ると言われるように、民主党員もヒラリーに投票しない人が多く出て来ると言われています。結果はどうなるか?トランプがどのように軌道修正できるかがポイントでは。でも、時すでに遅しか?

でも、日本はトランプの提言を真面目に検討すべきと思います。戦後70年も経って占領統治時代と同じ発想で生きていくことが本当に良いことかどうか。「日本は本当に独立国家なのか」どうか考える良いチャンスです。子々孫々に自尊と名誉の観念を持たせないと。自虐史観に染まったままでは日本人ではなくなります。それが、軍事的・経済的に負担になろうとも。国民の意識覚醒こそが一番大事ですが。

①憲法改正問題。GHQの押付け憲法を今のままにしているのが良いかどうか。良いものは残せば良いと思うが、軍のない独立国家はない。(台湾はその意味で既に独立している。香港・澳門とは違います。人口規模の小さいパラオは米軍に依存しています。通貨も$です)。9条は自衛戦が法的にできるようにしておかないと中国の侵略時に超法規的措置で戦わざるを得なくなります。法治国家としてそれは避けたい。元々米国が日本を「カルタゴ」にしようとして入れた条文と思われますので。

②核保有の是非。キッシンジャーと周恩来の密約と言われる「瓶の蓋」を打ち破る良いチャンス。米国も中国の野心にやっと気づいてきたようで、誰が真の敵か分かってきた。ここで中国に対して楔を打ち込み、アジアの平和には日本の力が必要と米国に思わせないと。

③有事の際の国民の行動。国家にどう協力できるか。後方支援や道路通行等私権の一時的制限。

④日米安保の双務性の向上。

⑤スパイ防止法の制定。外患誘致している日本人(マスメデイアに多い)や在日(朝鮮総連等)の活動を牽制。また外国人のインバウンドを2020年に4000万人に増やすというのだからセキュリテイをもっと考えないと。反テロ法も必要。

篠原 記事

4月26日の予備選で、民主党のクリントン氏が獲得代議員数を積み上げた。この日の勝利でサンダース氏を引き離し、党候補に指名されるのはほぼ確実に。だが米経済の動向次第では、“輸出減”が壁としてクリントン氏に立ちふさがる。

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4月26日、フィラデルフィアで演説するクリントン氏。民主党の結束を訴えた(写真=The New York Times/アフロ)

 思いのほか長引いたが、民主党の候補指名争いはいよいよ最終局面を迎えたようだ。

 4月26日にペンシルベニアやコネティカットなど東部5州で開催された民主党の予備選挙では、初の女性大統領を目指すヒラリー・クリントン氏が4州で勝利、獲得した代議員総数は指名に必要な過半数の9割に達した。

 ライバルのバーニー・サンダース氏はロードアイランド州で一矢を報いたが、過半数の代議員を獲得するのはほぼ不可能な情勢。「最多の票、最多の代議員を獲得して、(7月に開かれる)フィラデルフィアの党大会に戻る」。この日の予備選後にフィラデルフィアで行ったスピーチで、クリントン氏はそう力強く宣言した。

 サンダース氏を振り切ったクリントン氏は、共和党の候補者選びで首位を走るドナルド・トランプ氏と舌戦を繰り広げるなど、11月の大統領選をにらんだ戦いにシフトしつつある。

 もっとも、クリントン氏の前途に立ちふさがる難敵は、共和党候補だけではない。それは米経済の状況、とりわけ為替と輸出入の動向だ。

輸出減はクリントン氏に逆風

 米ジョージタウン大学マクドナー・スクール・オブ・ビジネスのブラッドフォード・ジェンセン教授と同僚のデニス・クイン教授などは、今年1月に発表した論文で国際貿易が大統領選に与える影響を明らかにした。輸出が拡大すれば与党支持が上昇し、輸入が増加すれば与党支持が低下するという相関関係である。

 これが意味しているのは、大統領選の前に為替がドル高に振れて輸出が減少していれば、低スキル・低賃金の製造業が集まる州で与党の候補者が苦戦する可能性が高いということだ。特に、民主、共和のどちらが勝ってもおかしくない州(スイングステート)の場合は大統領選に大きな影響を与える。

 今回で言えば、アイオワ、ウィスコンシン、ミシガン、オハイオ、ペンシルベニアといった中西部や東部に位置する工業地帯の各州が該当する。こういった州のほかにも、雇用に占める製造業の比率が高く、大統領選でカギを握ると考えられる州として、ノースカロライナやニューハンプシャーが挙げられる(下の地図)。

輸出減が本選に与える影響は大きい ●雇用において製造業の影響が強い地域・弱い地域

Swing States

注:2016年2月のデータを基に作成。太枠はスイングステートと予想される州。スイングステートの判断はThe Cook Political Reportを基にした(どちらかと言えば共和党、どちらかと言えば民主党の州もスイングステートに含めた) 出所:米労働省

 経済動向が大統領選に与える影響については、選挙年とその前年の実質GDP(国内総生産)成長率との関係も広く知られている。大統領選が行われる年の実質GDP成長率が前年を上回れば与党候補が勝利、逆に下回れば野党候補が勝つという法則だ。

 事実、ロナルド・レーガン氏が当選した1980年以降を見ると、9回あった大統領選のうち8回でこの法則が当てはまる。「4年前と比べて豊かになったか」という問いに対して、Yesと国民が感じれば与党を信任する、Noだと思えばおきゅうを据えるということだ。「結局のところ、有権者は自分たちの“収入”に投票している」とクイン教授は語る。

低下する一途の「好感度」

 それでは、今年の大統領選は与党候補(クリントン氏)にとってどのような環境なのだろうか。足元を見れば、クリントン氏にフォローの風が吹いていると見えなくもない。

 2014年半ば以降、ドルは主要通貨に対して上昇を続けていたが、現在はドル安傾向にある。米企業の輸出額も2月は前月比プラスに転じた。もちろん、輸出が本格的に回復したと言えるような状況にはないが、最悪期は脱した感がある。1月から2月にかけて混乱した株式市場も今は落ち着いている。

 ただ、これは足元の話で本選が実施される11月までに経済情勢がどう変わるかは予断を許さない。

 「記録的な暖冬のため経済活動が一時的に活発になっているだけで、米経済はいまだリセッションの瀬戸際にいると考えている」。米ジェローム・レビー・フォーキャスティング・センターのデービッド・レビー会長がこう分析するなど、米経済の現状を危惧する声は相変わらず存在する。世界経済が冷え込めば、米国の輸出に悪影響を与える。

 経済が堅調に推移したとしても、今度は米連邦準備理事会(FRB)による利上げが首をもたげる。6月以降、FRBが利上げに踏み切れば、再びドル高に転じることも十分にあり得る。

 国際通貨基金(IMF)が予想する2016年の実質GDP成長率は2.4%で、2015年から横ばいだ。先日発表された2016年1~3月期の成長率が0.5%と弱かったことを考えれば、2016年全体は2015年を下回るかもしれない。トランプ現象が象徴しているように、豊かさを実感できない米国人が増えていることもクリントン氏には逆風だろう。

 「(クリントン氏は)金融機関やエスタブリッシュメントの代弁者」というサンダース氏からの執拗な攻撃もあって、クリントン氏の好感度は下落の一途をたどっている。

 4月に実施された米NBCテレビと米ウォールストリート・ジャーナルの世論調査で不支持率(56%)が支持率(32%)を大きく上回った。別の好感度調査でも数値の悪化が著しい。トランプ氏の数値が輪をかけて低いため、対トランプという面では優位を保っているが、好感度の低下がクリントン陣営のアキレス腱になっているのは確かだ。

 好感度が自身の対応によって改善可能なのに対して、経済動向はクリントン氏の意思でどうにかなるものではない。党候補としての指名は確実にしたが、大統領就任への道のりはすんなりとはいきそうにない。

(ニューヨーク支局 篠原 匡)

高濱 記事

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トランプ氏は共和党の結束を呼びかけるが…(写真:ロイター/アフロ )

—共和党では5月3日、インディアナ州での予備選が終了した直後に、テッド・クルーズ上院議員とジョン・ケーシック・オハイオ州知事が相次いで撤退してしまいました。その結果、不動産王のドナルド・トランプ氏の指名が事実上決まりましたね。

高濱:実は、クルーズ氏はインディアナ州予備選で負けても、もう少し頑張ると思っていました。意外と引き際が早かったですね。

 でも対抗馬がいなくなったとはいえ、トランプ氏が正式な共和党の大統領候補に直ちになるわけではありません。予定されている残り9州の予備選・党員集会は粛々と行われます。そして7月18日からクリーブランドで開かれる党大会で承認を得なければなりません。

 トランプ氏はこれまで対抗馬や共和党の既成の保守主流派を激しく批判してきました。ここに来て、そのツケが回ってきています。共和党主流派の大物の中にはトランプ氏が指名されるのを嫌がり、猛反発しているのです。

マケイン、ロムニー、ブッシュ一家は党大会ボイコットへ

 「トランプが共和党の大統領候補に指名されるような党大会には出ない」と言い出している党内の大物が後を絶ちません。

 前回の大統領選で共和党の候補となったミット・ロムニー元マサチューセッツ州知事や、前々回の共和党候補となったジョン・マケイン上院議員はいずれも党大会をボイコットすると言い出しています。またブッシュ一家も全員欠席すると発表しています。ジョージ・W・H・ブッシュ第41代大統領、ジョージ・W・ブッシュ第43代大統領の両大統領、及び、今回予備選に出て途中で撤退したジェブ・ブッシュ元フロリダ州知事ですね。

 党大会の委員長を務めることになっているポール・ライアン下院議長は5月5日、「現段階ではトランプ氏の指名はまだ認められていないし、支持しない」と発言しています。その理由として「トランプ氏が共和党の価値観や理念を共有しているかどうか、見極める必要がある」としています。 (”Romny skipping GOP convention, joins list of presidents, leaders,” Tom LoBianco, CNN, 5/6/2016)

 こうした動きにトランプ氏は「党大会に出たくない奴は出なくて結構」と負け惜しみを言っています。共和党内の亀裂は深まるばかりです。

—となると、いくら政治の世界の常とはいえ、共和党の一本化は一朝一夕にはいきそうにありませんね。

高濱:米大手紙政治記者の一人は私にこう囁きました。「ブッシュ一家の欠席は、氷山の一角にすぎません。共和党主流派の中には同調する者がまだまだいるはずです。彼らは『トランプでは本選挙でヒラリー・クリントン(前国務長官)には勝てない。その責任を俺たちはとらないぞ』と言っているわけです。『トランプが共和党候補に指名されてしまった後の党立て直しを真剣に考え始めなければならない』と発言する党幹部もすでに現われています」。

ヒラリーは早ければ5月17日には指名獲得

—一方、民主党のほうは、バーニー・サンダース上院議員が善戦していますね。

高濱:インディアナ州の予備選ではサンダース氏が総投票数の52.4%を獲得して、クリントン氏(47.6%)を抑えました。しかし民主党は同州で比例割り当て制をとっているため、サンダース氏の獲得代議員数は43人、クリントン氏は37人となりました。

民主党予備選は、インディアナ州のあとは、5月7日のグアム(代議員数12人)、10日のウェストバージニア州(同34人)と続きます。

 クリントン氏に投票する特別代議員が多いことを考えると、同氏は、早ければ5月17日のケッターキー、オレゴン州予備選あたりで指名を確定しそうです。指名獲得に必要な代議員数は2383人。クリントン氏の獲得代議員数は5月6日に現在、2205人です。

 クリントン氏を悩ませる心配事の一つだった国務長官時代の電子メール公私混同使用にまつわる国家機密漏えい疑惑も、4月上旬にはケリがついたとの報道が流れています。クリントン氏に最も近い側近である女性が米連邦捜査局(FBI)から事情聴取を受けて捜査は終結、つまりクリントン氏は「シロ」との判断がなされたようです。CBSテレビは5月7日、「FBIは今後数週間のうちにクリントン氏とインタビューする」と報じています。これが何を意味するのか分かりませんが、「幕引き」ではないかと観測する向きもあります。

「トランプ旋風」が吹き荒れるのは予備選段階まで?

—日本では、「トランプ大統領が実現する可能性は皆無ではないんじゃないか」といった見方が出始めています。米国のメディアや一般市民はどう見ているのでしょう。

高濱:トランプ氏とクリントン氏の一騎打ちになった場合、どちらを支持するかという各種世論調査では、クリントン氏がトランプ氏に10%から16%の差をつけています。 (” Latest 2016 Presidential General Election Polls.” RealClear Politics, 5/4/2016)”

 私が定点観測していて気付いたのは、二つの現象が同時に起こっていることです。一つは、メディアが「トランプ旋風」について報道すればするほど、「それじゃ、俺もトランプに一票入れるか」と考える一般の共和党員が増えたこと。

 こういう声を何人かの共和党支持者から聞きました。本選挙でクリントン氏に勝てるかどうかは眼中にないんですね。ある中年白人男性は「トランプに票を入れるのはエンタテインメント(余興)だよ」とまで言っていました。

 もう一つの現象は、「共和党の外」で起こっています。「反トランプ」現象が先鋭化し、燎原の火のように広がっているのです。トランプ氏は完全に四面楚歌の状況にあります。

 この現象は、今後強まることはあっても弱まることはないように思います。一般大衆だけでなく、外交専門家や宗教家も加わって楚歌を歌っているのです。日本や欧州の同盟国の学識経験者たちもこうした「反トランプ」に加わっているのではありませんか。ほかの国が米国をどう思っているのかを、米国人はすごく気にする国民です。

 ある主要シンクタンクで、大統領選を30年間研究してきたベテラン研究員が私にこう指摘しました。「この『反トランプ』現象は本選挙に突入すると、トランプ氏に対して原爆並みのインパクトを与えかねないと思います。その結果は、火を見るより明らかです。トランプ氏は惨敗するでしょう」。

反トランプで結集するヒスパニック、黒人、女性票

 「反トランプ」現象の中心的役割を演じているのはメキシコ系の人たちです。

 トランプ氏は、メキシコ系不法移民を「強姦魔」「殺人犯」と呼びました。不法移民の国外退去や不法入国を阻止するためメキシコ国境に壁を構築する計画を打ち出しています。これにメキシコ系をはじめとするヒスパニック系が黙っているはずがありません。

 ヒスパニック系は一世代前にはカリフォルニア州やテキサス州に集中していました。しかし今ではコロラド、ノースカロライナ、フロリダといった州にも拡散しています。カリフォルニア州についていえば、ヒスパニック系の人口が白人の数を2014年に、超えました。

 数だけではありません。ヒスパニック系国民の平均年齢(中央値)は28歳。これに対して白人は43歳です。若くなるほどヒスパニック系の割合が高くなっているのです。近年、これらヒスパニック系に対して有権者登録するよう呼びかけるキャンペーンをスペイン語のテレビ局などが中心になって続けています。

 彼らの大半は共和党員や支持者ではありません。従ってトランプ氏を指名した共和党予備選や党集会には参加していません。 (” The Nation’s Latino Population Is Defined by Its Youth,” Hispanic Trends, Pew Research Center, 4/20/2016)”

 私の住むカリフォルニア州で「反トランプ」の急先鋒となっているのはヒスパニック系の人たちです。5月1日のメーデーにはロサンゼルスなどで数千人が「反トランプ」を訴えるデモに参加しました。デモはサンフランシスコや、オークランドなどでも行われました。トランプ支持者と衝突して逮捕者まで出ています。 (”May Day rallies in Los Angeles,“, Los Angeles Times, 5/2/2016)”

「女性カード」を逆手にとったクリントン陣営

 本選挙になってトランプ氏に襲いかかるのは、ヒスパニック系だけではなりません。ヒスパニック系を「前門の虎」とすれば、「後門の狼」はトランプ氏を生理的に嫌っている女性と黒人です。

 トランプ氏は女性蔑視発言を繰り返しています。4月26日には「ヒラリー・クリントンが男だったら獲得した票の5%も取れないだろう。ヒラリーには『女性カード』(Woman Card)を使うしか手がないのだ」と発言しました。

 これに対してクリントン氏は「女性のために戦うことが『女性カード』だというのなら受けて立つ」と反撃しました。ピンク地の紙にトイレなどに使われる女性のマークをあしらった実物の「女性カード」を作成し「1ドル献金してくれれば誰にでも差し上げます」と募ったところ、女性有権者から注文が殺到しているそうです。 (” Woman Card,” The Official Hillary for America)”

「支離滅裂」「落第論文」と散々だったトランプ外交演説

—トランプ氏が4月27日に行った外交演説に対する米国内の反応はどうでしたか。その後もトランプ氏は「日本は駐留米軍の費用を全額負担せよ」などと発言していますね。

高濱:トランプ演説に対する外交問題専門家たちの評価は散々でした。トランプ氏を評価する専門家を探し回りましたが、一人もいませんでした。厳密に言うと一人だけいましたが、実名でコメントするのは拒否されました(笑)。

 専門家たちから見て、トランプ演説のどこが不評なのか。

 第一に米国の伝統的外交理念からあまりにもかけ離れた内容だったことです。米国は建国以来、「自主独立」(Sovereign Independence)、「国利・国益」(National Interests)、「全世界における自由のため」(Cause of Liberty in the World)を重視してきました。 (” America’s Founders and the Principles of Foreign Policy,” Matthew Spalding, www.heritage.org., 10/15/2010)”

 ところが「トランプ演説にはこういった言葉が1回も出てこない」(米国務省OB)のです。

 不評であるもう一つの理由は、いやしくも大統領候補を目指すにもかかわらず、演説の構成がめちゃくちゃなことです。

 カリフォルニア大学バークレイ校に籍を置く政治学教授の一人が私にこう言いました。「演説の内容は支離滅裂で、矛盾だらけ。国際情勢に疎い、一米市民の思いつきを並べ立てた即席スピーチとしかいいようがない。うちの学生がこんな論文を書いたら間違いなく落第点をつけるね」。

 著名な政治コラムニストのピーター・ベイナート元「ザ・ニューリパブリック」編集長は、トランプ氏が外交演説に盛り込んだ外交の基本理念についてこう指摘しています。「共和党大統領候補の指名を受けようとする者がこんなことを言うのは理解に苦しむ。撤退したマルコ・ルビオ(上院議員)、ジェブ・ブッシュ(元フロリダ州知事)、リンゼー・グラハム(上院議員)、ロムニー(前共和党大統領候補)だったらこんな外交演説はしないだろう」。

 「まともな共和党大統領候補ならこう言うはずだ。『国際社会にはイラン、北朝鮮、中国、シリア、キューバ、過激派イスラム集団など悪の政府や社会組織がある。こうした勢力がのさばり始めたのは、正義のために戦う国家であることを放棄してきたオバマ大統領とクリントン前国務長官のせいだ。私が大統領になったなら米国は正義のために戦う国家であることを再確認する。そして我が国の軍事力を再強化し、自由と束縛からの解放のためにその軍事力を行使する。ちょうどロナルド・レーガン(第40代大統領)がやったように』。」

 「レーガンは自らの理念を維持する一方で、実践ではより賢明に立ち振る舞った。対中接近を図る一方でソ連に圧力をかけている」 (” Donald Trump and the GOP Traditional Foreign-Policy Incoherence,” Peter Beinart, the atlantic.com, 4/28/2016)”

日本はトランプの対日政策に真正面から反論せよ

—トランプ氏の対日スタンスについて、米国内の専門家たちはどう見ていますか。

高濱:トランプ氏の対日批判の柱は大きく二つあります。一つは防衛面、もう一つは通商面です。

 トランプ氏は共和党候補への指名が事実上確定した後も「私が大統領に就任したら、日米安保条約に基づき日本防衛のために米軍が支出している国防費の全額を負担するよう日本に求める」とCNNテレビとのインタビューで答えています。 (” Election 2016: Donald Trump Wants Japan to Pay More For American Military Facilities,” Lydia Tomkiw, IBT, 5/5/2016)”

 トランプ氏はこれまで「日本が攻撃されたら米国は助けに行くのに、米国が攻撃を受けても日本は助けに来ない。日米安保条約は片務的だ。日本が米国に守ってもらいたいのであればもっと分担すべきだ」と言ってきました。その主張が今も変わらないことを明確にしたわけです。

 日米安保体制の経緯や内容について全く知らない米国の一般庶民は「そうだ、そうだ」と共鳴しています。トランプ氏はこの主張を本選挙でも繰り返すかもしれません。

 日米安保体制に精通している軍事・外交専門家たちは「呆れて開いた口が塞がらない」(元国務省高官の一人)といった感じです。トランプ氏が露わにした米大衆が抱く日米同盟への認識と専門家との間には大きなギャップがあるわけです。(関連記事:「 (大衆が抱く日米同盟への認識、トランプが露わに」)

 こうした認識のギャップを埋めるために、両国政府当局をはじめとする専門家が大衆を啓蒙することが必要であることを痛感します。

 藤崎一郎元駐米大使が5月1日付の「ザ・ワールド・ポスト」(米ハフィントン・ポスト系列のオンラインメディア)に「米国の友人たちへの手紙」と題する一文を寄稿しました。一般大衆が読むとは思えませんが、トランプ氏の主張に日本サイドからもきちんと反論することは重要だと思います。

 藤崎氏の主張は次のようなものでした。 1)日本は防衛面でタダ乗りしているというが、日本は在日米軍駐留費として1年間に20億ドル近くのカネを出している。 2)米国は日本を防衛する義務を受け入れる代わりに日本国内の施設使用を許されている。それにより極東地域の平和と安全を維持するという米国の国益を堅持している。さらに日本が昨年、集団的自衛権の行使に関する解釈を変更することで日米軍事協力が一層強化された。  3)日本の市場は閉鎖的で、その結果、米国の対日貿易赤字が増大しているという主張は80年代のものだ。日本の企業は今や米国内に工場を建設し、製品を現地生産している。これにより70万人の雇用を生み出している。米国製のクルマが日本で売れないのは貿易障壁のせいではなく、需要と供給の問題だ。 (” A Letter to American Friends,” Ichiro Fujisaki, The World Post, 5/1/2016)”

本選挙でクローズアップされる為替とTPP

—トランプ氏は、「日本は為替を操作している」とも批判していますね。クリントン氏も同様のことを、米紙への寄稿文で2月に主張しています。「日本や中国は何年にもわたって通貨の価値を下げて輸出品の価格を人為的に安くしてきた」と。

高濱:安倍政権がアベノミクスで大幅な金融緩和を行った結果、円安が進行しました。この円安傾向を見て、「日本は為替操作をしている」との声が米国内には以前からありました。

 米上院議員団は2月10日、輸出促進を目的とした為替操作への対応を強化するため貿易円滑化・貿易執行法を成立させました。議員団の一人、チャック・シューマー上院議員は記者会見で「日本や中国は為替操作し、米国から何百万もの雇用を盗み、米国をばかにしてきた」と述べています。

 こうした米議会の動きを反映してトランプ、クリントン両氏も日本や中国、韓国、ドイツ、台湾の為替操作を取り上げているわけです。

オバマ政権も為替問題が米大統領選で議論の的になっていることを真剣に受け止めています。その証拠に財務省は4月29日、日本など5か国・地域を為替政策の「監視リスト」に載せ、通貨安誘導を目的とした為替介入への警戒感を打ち出しています。

 5月3日の外国為替市場で円相場が急伸し、1年半ぶりに1ドル=105円台を付けました。日本政府は過度な円高をけん制しています。が、米財務省の「監視リスト」に載ったため市場介入に動きづらくなっています。

 為替問題とともに、安倍政権が重視する環太平洋経済連携協定(TPP)問題も本選挙でクローズアップされる雲行きになってきました。ご存知の通りクリントン、トランプ両氏ともにTPPには反対の姿勢を取っています。

トランプは「原爆投下正当論」を打ち上げるか

 日米関係にかかわることで危惧される問題がもう一つ、ワシントンの日米関係筋の間で浮上しています。5月26~27日に開かれる伊勢志摩サミットに出席するオバマ大統領による広島訪問です。広島への原爆投下について米国民の半数以上が「正しかった」と答えています。したがってオバマ大統領による広島訪問を「原爆投下への謝罪」と受け止める米国人がいるかもしれません。

 この広島訪問について、米メディアがトランプ氏にコメントを求めるのは必至です。そこでトランプ氏がオバマ攻撃をする可能性が十分考えられます。それを受けてクリントン氏との間で「原爆投下の是非」に関する論争が起こるかもしれません。

 国務省の元高官の一人が、私にこうコメントしています。「そうなるかどうか、神のみぞ知るだね。トランプは本質的にはnon-serious person(不真面目な男)。ナンセンスなことでも思いつくと口に出す。メディアはそれを喜んで取り上げる。衆愚の代弁者なのに」。

「宗教保守」は本選挙では棄権か

—クリントン対トランプの一騎打ちの話に戻ります。予備選の前半戦に大きな影響を与えた「キリスト教保守」や草の根保守「ティーパーティ」(茶会)の人たちの声はどこへ行ってしまったのでしょう。少なくともトランプ氏の言動には伝統的なキリスト教の理念とか思いやりは全く感じられないのですが。

高濱:予備選を振り返えると、緒戦のアイオワ州やニューハンプシャー州での共和党予備選・党集会でキーワードになっていたのは「キリスト教保守」でした。共和党各候補は「宗教保守票」を競い合いました。

 アイオワ州では宗教保守の支持を得たクルーズ氏がトランプ氏を破ってトップに立ちました。信仰心が篤いとされる元精神科医、ベン・カーソン氏も宗教保守票を集めました。しかし、予備選がここまで進んでトップを走っているのはキリスト教とは無縁の「暴言王」のトランプ氏です。

 トランプ氏の指名が確実視される中で、キリスト教プロテスタントの著名な神学者や牧師ら52人が4月29日、次の共同声明を発表しました。

 「トランプ氏は自らの政治的野心のために、米国民の間に潜在的に存在する憎悪を弄んでいる。米国内のキリスト教会は今、倫理的脅威に見舞われている。(トランプ氏によって)我が国とその歴史における最も悪質な価値観が俗悪な言動と手法によって露呈しているからだ。米国政治の底辺に潜在的に存在してきた人種、宗教、性別に対する頑迷さが(トランプ氏によって)今、白日の下に晒されている。この億万長者は倫理的、宗教的脅威を作り出している」

 署名者の中には権威ある宗教雑誌「ソジョナーズ」(寄留者)の編集主幹、ジム・ウォリス氏やブライアン・マクリーン牧師、ステーブン・シェネック米カトリック大学教授などリベラル派の神学者が名を連ねています。

 「キリスト教保守」の有権者たちはこうした神学者たちの意見に耳を傾けるでしょうか。

 プロテスタント宗派の一つ、メソジスト教団の牧師で、共和党を支持しているアジア系女性の一人が、私にこう述べています。「神学者や牧師による共同宣言がトランプ氏にとってマイナス要因になるのは間違いありません。だからと言って、彼らが本戦でクリントン氏に投票するとは限らない。棄権することも十分に考えられます。少なくとも私はその一人です」

良ければ下にあります

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5/6JBプレス 伊東乾『トランプ大統領になれば、地に落ちるドルの信用 米国とEUの衰退が顕著ないま、通貨について改めて考える』、5/8日経『「予測不能」がトランプ流 前例打破し本選へ

伊藤乾氏のプロフィールは

「作曲家=指揮者 ベルリン・ラオムムジーク・コレギウム芸術監督

1965年東京生まれ。東京大学理学部物理学科卒業、同総合文化研究科博士課程修了。2000年より東京大学大学院情報学環助教授、07年より同准教授、慶應義塾大学、東京藝術大学などでも後進の指導に当たる。若くして音楽家として高い評価を受けるが、並行して演奏中の脳血流測定などを駆使する音楽の科学的基礎研究を創始、それらに基づくオリジナルな演奏・創作活動を国際的に推進している。06年『さよなら、サイレント・ネイビー 地下鉄に乗った同級生』(集英社)で第4回開高健ノンフィクション賞受賞後は音楽以外の著書も発表。アフリカの高校生への科学・音楽教育プロジェクトなどが、大きな反響を呼んでいる。他の著書に『表象のディスクール』(東大出版会)、『知識・構造化ミッション』(日経BP)、『反骨のコツ』(団藤重光との共著、朝日新聞出版)、『日本にノーベル賞が来る理由』(朝日新聞出版)など。」とあります。

ビットコインの仕組みに疎いので、ビットコインが世界通貨の主流になるのかどうか分かりません。でも日本円を売り、ビットコインを買う時には、金融市場の為替レートを参考にするのではと思いますが・・・・・。固定相場ではやりきれないのでは。新たな仮想国の通貨が出来たと考えるべきなのか?世界を旅するときに、それぞれの国で両替しなくて済むというのは便利です。(つづく)とありますので次回の説明を楽しみに待ちたいと思います。

トランプ大統領になると$の信用が地に落ちると言っていますが、今回はその説明がありませんので、論理的根拠が分かりません。$の基軸通貨としての地位がそんなに簡単に低下するとは思えません。指導者の道徳性で貨幣価値が減ずるとは考えません。そもそも米国は戦争経済ではないですか。

トランプが共和党大統領候補として残ったのは、エスタッブリッシュが米国国民の民意を掬い上げて来なかったからでしょう。「世界人口の半分と同じ富が62人の富豪に集中」(News Week)という資本主義から生じる極端な格差社会を放置してきたためです。日本の戦前、軍人によるテロで社会改革を行うより、選挙で社会を変えようとする方が健全です。トランプの物言いは下品で、好きにはなれませんが、選挙民の心を掴んだという事です。ポピュリズムの極みではありますが。

http://www.newsweekjapan.jp/stories/business/2016/01/62.php

5/8日経には「FBIがヒラリーを数週間内に私用メールアドレス使用の件で聴取」との記事が出ていました。ヒラリーが勝つとは限らないというか、本選に出られない可能性もあります。その時の民主党の候補はサンダースになるのかどうか?

日本国民ももっと国防について真剣に考えなければ。トランプは駐留米軍基地代を全部払わなければ撤退、核武装も認めると言っています。国民的議論を起こす良いチャンスです。黒船来航と同じと考えれば良いのでは。あの当時の日本国民の情報レベルは低かったと思いますが、今はいろんな媒体から情報が取れます。憲法(特に9条)、日米安保、核保有、スパイ防止法、国民の国防義務(徴兵制復活ではありませんので念の為)を議論するようにメデイアは旗振りすべき。

しかし外務省は相変わらずお粗末。トランプに対する人脈がなくてアプローチできないとは。「タダ飯食い」と昔は言ったものです。国民はもっと怒らないと。別な組織で外交しないと、日本は中国の属国にされてしまいます。

JB記事

Hamilton

米初代財務長官アレクサンダー・ハミルトンの肖像が印刷された10ドル紙幣〔AFPBB News

 ついにビットコインの発明者が名乗りを上げました

 オーストラリア・ブリスベンの情報工学者、クレイグ・ライト(1970-)が「サトシ・ナカモト」の正体は自分である、とカミング・アウトした。大きなニュースと思います。

 税制の問題に関連して、唯一最大の謎&置石になっていた「サトシ」の正体が知れたことで、これから暗号通貨は大きく動き出すように思います。そんなことも念頭に、現在進行形の「お金の問題」を考えてみましょう。

 さて、ここで改めてお金の価値って、いったい何で決まってくるのでしょう?

 「近代経済学」という言葉があります。正確には「ありました」というべきかもしれません。私がティーンの頃、つまり冷戦期の日本では、経済学は大きく「近代経済学」と「マルクス経済学」に二分されていました。

 早くに亡くなった父が果たせなかった学問への憧憬として「経済学」のファンであった中学高校時代の私にとって「経済学」とは「マル経」と「近経」を指すもので、両者をバランスよく学びたいと子供なりの頭で思ったりしていました。

 しかし、欧州に留学して冷戦期東側の実情を見て「マル経」に幻滅した経緯があります。

 果たして冷戦体制の崩壊後、急速に「マル経」という分野そのものが消滅するとともに、対概念に近かった「近経」という表現も下火になり、経済学はデリケートに分類されるようになっていきました。

 が、かつて「近代経済学」と言われた分野の本質はケインズ以降の経済学、より明確に特定するならケインズの「雇用・利子および貨幣の一般理論」(1936)以降の「ケインジアン」のエコノミクスで「古典派経済学」クラシックスに対して「モダン」なケインズ経済学として「近経」が位置づけられていたように思います。

 ケインズの経済学は、時期的に見ても、また米国でフランクリン・ルーズベルト大統領が推進した「ニューディール」政策の強力な後ろ盾になったことからしても「世界恐慌(1929-)」という眼前の自体と切り離しては考えられません。

 端的に言えば、1930年代以降のあらゆる経済学は、当該時期のマルクス経済学を含め、「恐慌再発」をいかにして防止するかという究極の目標を持っているといっても過言ではないのです。

 こうした観点はあまりに大上段、かつ大時代がかって見え、精緻な分析を旨とするプロのエコノミストが言及されることは少ないかもしれません。

 しかし、いまデジタルマネーや暗号通貨、ビットコインやブロックチェーンの技術などを考えるとき、あえて改めてこうした大本の観点に立ち返って見ることにも、一定の意味があると思うのです。

 いま改めて「お金」とはいったい何なのか。また「お金のクライシス」通貨危機とはいかにして起こり得るものなのか。金融に端を発する経済恐慌は、どのような政策によって回避できるのだろうか?

 こうしたナイーブな疑問は「経済学の本質的課題」の1つとして、広く問われてよいと思うのです。

お金の価値とは何なのか?

 さて、改めて、お金の価値、その源泉はどこから来るのでしょうか?

 貨幣というものの歴史を振り返ると、古典的には2つの考え方が長く対立してきました。

 第1は「貨幣価値説」と呼ばれるもので「お金そのものに価値がある」という考え方です。例えば金貨はその「金」という物質そのものに価値があるから「お金」なのである・・・。

 仮にそうだとすれば、金地金は立派に「お金」として通用するはずです。が、翻って、現在私たちが使っている日本国の通貨はどうでしょうか?

 調べて見ると「10円玉の原価は約10円」という興味深い事実が分かります。なぜ興味深いかと言えば、非常に珍しく額面と原価が一致しているから。

 と言うのも、「100円玉の原価は約25円」で、決して10円玉の10倍ではありません。それどころか「50円玉は約20円」、「500円玉に至っては約30円」で、およそ額面に比例していない。

 もっと問題なのは「1円玉の原価は約3円」で原価の3分の1の額面価値しか持っていない。これは5円玉が約7円というのと同様、作れば作るだけ赤字ということにもなりかねない。ところが逆もあるわけで、

 1万円札の原価は約22円、つまり50円玉と大して原価が変わらないのに、額面としては50円玉の200倍、原価からすれば約500倍という「割りのいい通貨」になっている。

 つまるところ「貨幣価値説」は、少なくとも21世紀の日本ではまったく成立していない。お金の価値はそれを担う「通貨」の価値と無関係であることが知れます。

国や中央銀行が決めれば「価値」なのか?

 この「貨幣価値説」と並んで長らく唱えられてきたのが「貨幣法制説」つまり法律などルールによって決められているから、お金には価値があるのだ、という考え方です。

 なるほど、1円は1円、1万円は1万円と定められているから、そのように流通しているので、貨幣法制説の方がもっともらしいと思われるかもしれません。

 が、これもよく考えるとすぐに成立しない現実の局面が見えてきます。例えば「国」を跨げばどうなるか?

 私たちは日常的に為替レートの情報を目にします。円安は製造業にとっては歓迎すべき影響をもたらすことが多いですが、円を持って海外に出る人にとっては財布を直撃してなかなか厳しいことになる。

私たちは「円が高い」「円が安い」という相場の変動を当たり前のものとして認識しています。同じ製品を日本で円建てで購入するのと、欧州でユーロ建てで購入するのと、原価から流通コストまで様々な違いがあり乱暴なことは言えませんが、少なくとも「特定の国家が法で定めたから、その通貨にそれだけの価値がある」などと言えないことだけは間違いない。

 さらに、一国内での出来事で考えるなら「ハイパーインフレーション」のような事態を考えれば物事は如実に知れるはずです。

 かつて「ジンバブエ・ドルZWD」という通貨がありました。1980年に導入された当初は1USドル=約0.68ZWD、米ドルと同じ桁で通用する通貨としてのスタートだったはずが、2000年に始まった土地接収行政など政策的な失敗によって人類史上最悪のハイパーインフレ記録を塗り替え続けることとなります。

 2008年のジンバブエのインフレ率は5000億%だったそうです。こう言われても正直ピンと来ませんよね?

 これはつまり、正月に1円で買えたものが、暮れには50億するという話で、リヤカー一杯お札を持っていっても、「こんなもの何の信用も置けない!」と受け取りを拒否されるレベルの代物になっている。

 「貨幣法制説」をこれほど明確に否定する現象はないでしょう。昨年つまり2015年、ジンバブエ準備銀行(中央銀行)は最終的にこの通貨を廃止、3.5京ジンバブエドルつまり、

 35,000,000,000,000,000ZWD=1米ドル

 として残高を精算、通貨としての35年の命を閉じました。

 こんな状況になってしまえば財政政策も金融政策もへったくれもあったものではありません。市場が貨幣を信用しなくなってしまえば、国家がどのような法を定め、どんな財政出動をしようとも、あるいは中央銀行が金利を多少操作しようとも、まさに焼け石に水です。

 近代経済学の諸パラダイムが成立するのは、通貨(政体を含めるべきかもしれません)への信用が大前提、「信用なきところに通貨成立せず」あるいは「信用なき貨幣」に法制説は無用と言うべきかもしれません。

 どんなに政治権力が力で抑え込もうとしても、いったん信用を失った通貨は元来の価値を市場で通用させることができません。

「マルボロ本位制」と暗号通貨

 日に日に通貨価値が下落し、「ジンバブエ・ドル」に何の信用も置けなくなっても、現地で暮らす人々は日々の取引をせねばなりません。そこで彼らは何を用いたか?

 一部では「旧ソ連でルーブルが暴落したときと同様」の対処がなされたと言われます。いわば「マルボロ本位制」、つまり、封の切っていない米国フィリップ・モリス社製のタバコ「マルボロ」が通貨代わりに用いられていたらしい。

 これについては旧ソ連末期、ルーブルが紙くずとなり使い物にならなかったとき、日用品その他の売買にマルボロが使われていた現場に居合わせた佐藤優さんから「金でも銀でもルーブルでもない、マルボロ本位制」として体験談を伺ったことがあります。

 赤いマルボロ何個かが金のマルボロ1個に相当、といった、実際の価格とは独立した「マルボロ信用経済」がローカルに成立して、日用品や食物などが取引されていたという。

 国家の信用が崩れたとき、外国のタバコが信用を代替したという、笑うに笑えない現実です。

 さて、2016年の今日、私たちは1989~91年のモスクワやレニングラード=ペテルスブルクのように米ドルを信用することができるでしょうか?

 国際政治的に「世界の警察官」であることをやめ「米国の平和」はとうに終わってしまった超大国米国の通貨「ドル」。

 第2次世界大戦欧州全土が壊滅的打撃を受け、その復興時に米ドルが果たした役割、あるいは1960年代のスタグフレーションを切り抜け変動相場制に移行した時期に機軸通貨ドルが果たした役割・・・。

 いずれも2010年代後半、すでにパックス・アメリカーナが完全に終結し、ドナルド・トランプのようなキワモノ大統領候補が一定の風評を得てしまうところまで来てしまった米国通貨に、今後のグローバル経済が仮託できるものではないでしょう?

 「米ドルこけたら皆こけた」

 こういう状況を回避するために、私たちはどのような命綱を張ることができるのか。

 ここで欧州や日本、そしてなにより自国通貨としてのドルの先行きを案じる米国先覚層が期待を寄せるのが「暗号通貨」ビットコインなどのデジタル・マネーにほかならない。

 そう言っても大げさではないのでは、と思うわけです。

(つづく)

FT記事

米国の政治はもう後戻りできない。実業家のドナルド・トランプ氏が11カ月前、米大統領選挙に名乗りを上げた時、誰もが笑い飛ばした。今や共和党候補の指名獲得が確実だ。

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5日、ウエスト・バージニア州の集会で演説するトランプ氏=ロイター

 二大政党の1つがグローバル化と自由貿易に明確に異を唱える人物を大統領候補に指名するのは近代以降、初めてだ。長い歴史を持つ共和党が、このようにいきなり世界観を覆したのは民主主義史上、まずない。

 (インディアナ州の予備選があった)今月3日の夜、米大統領を選ぶ本選挙が事実上始まった。この選挙で世界の中の米国の立ち位置が変わる。トランプ氏とヒラリー・クリントン氏の戦いは、色々な意味で前例を打ち砕くものになる。

 選挙の構図は共和党対民主党ではない。造反者と支配階級、思いつきで物を言う人と道徳的、政治的に正しい発言をする人、混乱を呼び込む者と現状維持派、自国第一のポピュリストと他国との関係を考える従来型の国際主義者の戦いだ。

 なかんずく今回は、選挙で選ばれる公職に一度も就いたことがない者と、大統領選に勝つために人生をささげてきた者の一騎打ちなのだ。

 普通に考えれば、クリントン氏が勝つに決まっている。トランプ氏はこれまで次々とマイノリティー(少数派)など様々な集団を侮辱してきた。彼らを足し上げると有権者の大半を占める。女性を加えれば圧倒的多数になる。

 さらに言えば、トランプ氏のように有権者に嫌われながらも、本選で勝ちそうになった人物はこれまでいなかった。

 そもそもそうした人物は候補者として指名されることがなかった。この点でトランプ氏はこれまでの常識というものをずたずたにした。仮にこのニューヨークの大富豪が自分に有利になるよう、半数を超える共和党員の気持ちを動かせるとしたら(実際、すでに大きく動かしたが)、彼が本選でそうするのを誰が阻めるだろう。

 従来の判断基準はどれも当てにならない。党の候補者指名を勝ち取るには、党内有力者の推薦を取り付け、徹底した選挙組織を構築し、驚異的な集金マシンで寄付を集め、経験豊富なアドバイザーを複数抱えることが不可欠とされてきた。トランプ氏はこうした鉄則とは無縁のまま、予備選で勝利を収めてきた。今後の注目点は同氏がいつ党内の推薦を取り付け、本選に向け組織を組み立てるかだ。

 膨大な数の共和党のエリート党員がツイッターで展開してきた「トランプは絶対ダメ運動」などはどうでもいい。識者は社会の趨勢が読める。すでにツイッター上では「ようこそドナルド運動」にとって変わりそうな兆しが見える。

 (共和党全国大会が7月に開かれる)オハイオ州クリーブランドで暴動が起きるとは思えない。党大会で候補指名が争われる可能性は3日の夜、インディアナ州で消えた。党大会はトランプ氏の「即位式」になる。

 大統領選は今後、事実上の候補2人の重大な弱点に焦点が当てられていく。

 クリントン氏の最大の弱みは信頼感の低さだ。陣営の中には、信頼されていないことについて同氏が演説で率直に話したらどうかと提案する人がいる。過去の大統領選でも、ジョン・F・ケネディ氏が1960年にカトリック教徒であることをはっきりと語り、あまり成功したとは言えないが、ミット・ロムニー氏が2012年にモルモン教徒であることを明かした。どんな形であれ、発言する前から信用されなければ、クリントン氏は他の問題を打破するのに苦労するだろう。

◇ ◇ ◇

 トランプ氏の問題は、敵に回した有権者があまりにも多いということだ。支持者を扇動しアフリカ系米国人の活動家に嫌がらせをしたり、ヒスパニック系の不法移民を悪者よばわりしたり、女性を見下した発言を繰り返したりした結果、同氏にとっては間違いなくかなり不利な戦いになる。11月の本選で勝つには、驚くほど多くの白人票を獲得する必要がある。とはいえ、今年に入ってすでに常識では考えられないことが起きている。

 劣勢候補とみられていたトランプ氏は、今後も常に予測不能な言動をとることで強みを発揮するだろう。隙を突いてクリントン氏に不意打ちを食らわせ、米国政治で長らくタブーだったような侮辱をクリントン氏に浴びせもするだろう。

 大事なのは社会通念を信じるなということだ。各世代が長らく信奉してきた考えが通用しなくなる。向こう半年の間、近代史以降で恐らく最も興味深い政治劇が展開されるだろう。

 「我々は再び美しい愛すべき1つの国になる」。トランプ氏はインディアナ州の予備選の後、こう述べた。どうもそうはならない気がする。

By Edward Luce

(2016年5月5日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)

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5/6JBプレス 藤和彦『パイプラインは日ロの架け橋となるか? 両国にメリットがあるサハリンからの天然ガス輸送』について

日露はルトワックの言うように、反中国と言う面で手を握ることは可能と思います。ロシアは、シベリアに進出して来る中国人を防ぐため、日本企業に進出して貰い、合理的管理の下、産業を発展させ、石油・ガスに依存したGDPの構成比を変えたいと思っているはずです。日本にとって最大の敵国は中国です。GDPの大きさから言っても、ロシアはシリアでの継戦能力を見ても、日本の敵となるのは考えにくいです。しかし、中国も高橋洋一氏によれば「中国GDPは公表数字の1/3」と言っていますから、400兆円くらいしかない計算となりますが。中国の社会主義市場経済は国際ルールに沿ったやり方でないので、バブルの延命策がどの程度持つか分かりません。バブルの間は予算措置して軍事拡張していくでしょう。

「サハリン2」の権益変更問題や日ソ中立条約を破棄したロシアをどこまで信用できるかという問題もあります。これが北方領土問題に繋がっている訳で、日本の国民感情としては、おいそれと経済協力に踏み込めないのは分かります。

http://www.knak.jp/livedoor/oil/sakhalin.htm

パイプラインを日本に敷くことは長期に購入するのが前提となります。メタンハイドレートや核融合等の代替エネルギーの実現をも踏まえるとその方法が正しいのかどうか。LNGで輸入した方が良くはないのかと思います。

5/6プーチンは安倍首相との会談を1時間遅らしたとのこと(5/7日経)。理由が書いていませんでしたのでどう判断したら良いのか分かりませんが、戦略的にそうしたというなら、武蔵でもあるまいし、失礼な話です。国内世論対策の面があるのかも知れませんが。

記事

Cape Soya

宗谷岬から樺太(サハリン)を望む。(出所:Wikimedia Commons

「パイプラインは日ロの架け橋となる可能性を秘めた重要な事業であると考えている」 

 ロシアとのエネルギー協力拡大をテコに日ロ関係の早期改善を願う自民党の議員たちが、3月末に来日した露ガスプロムバンクの最高幹部と会談した。上記発言は日本側の異例のもてなしに感激したロシア側からなされたものである。

 ガスプロムバンクは世界最大の天然ガス生産企業であるガスプロムの子会社であり、ロシア三大銀行の1つである。主な融資先はガス・化学・機械産業などのロシア製造業であり、日本では言えばかつての日本興業銀行のような産業金融の雄である。

日本の国内資源と言ってもよいサハリンの天然ガス

 ロシア側が述べた「パイプライン」とは、ロシアのサハリン州から日本へ天然ガスを供給するパイプラインのことである。

 北海道の稚内から南端まで最短43キロメートルのサハリン島、その約600キロメートルの海岸沿いの浅い海底下に膨大な量の天然ガスが眠っている。津軽・宋谷の2つの海峡を挟んでいるが、ほとんど地続きと言ってよく、東京からの直線距離は沖縄より近い。

国境を考えなければ、日本の国内資源と言っても過言ではないサハリンの天然ガスは、1980年代から日本とロシアの共同事業によって発見された。天然ガスの可採埋蔵量は約2.4兆立法メートル。日本全体の天然ガス消費量の約24年分である。

 サハリン2鉱区の天然ガスは2009年3月からLNG(液化天然ガス)という形で日本をはじめ中国・韓国などにも供給されているが、その他のサハリンの天然ガス資源の大部分は手つかずのままである。

 サハリン1鉱区の事業者は2000年頃、北海道を経由して首都圏を結ぶパイプラインによる輸送を日本政府に要請したが、買い手側の中心である電力業界が難色を示したため実現に至らなかった。

 国際的には天然ガス輸出の9割以上がパイプラインによる輸送であるが、日本の天然ガス輸入は100%がLNGである。液化・海上輸送・気化に多額の費用を要するLNGは長距離の輸送には利用されているものの、パイプラインによる生ガス輸送に比べるとコストが高い。日本から近距離にあるサハリンの天然ガス輸入は、国際的な常識からすればパイプラインによる輸送が適している

日露のエネルギー協力はLNG事業一色

 ガスプロムも最近日本向けパイプラインを提案したことがある。

 2012年5月民主党の前原誠司政調会長(当時)はモスクワ市内でガスプロムのメドヴェージェフ副社長と会談した。その際、ロシア側は日本向けガスパイプラインの敷設を提案した(2012年5月3日付日本経済新聞)。

 日本を含むアジアをガス輸出の有望市場と位置づけるガスプロムの提案に対し、前原氏は「政府・与党として可能性を検討する用意がある」と前向きな発言をした。だが、帰国後「ロシア・ウラジオストクのLNG輸出基地の建設計画が優先する」としてパイプラインについて消極的な態度を示した。

 日本側に袖にされたガスプロムのミレル社長は、翌6月末、サハリンから日本に天然ガスを輸出するためのパイプラインを敷設する構想について「検討課題ではなくなった」とし、「日本への輸出はLNGに専念する」考えを示した(2012年6月30日付日本経済新聞)。その後、状況は変化することなく現在に至っている。

 前原氏が発言を変更した背景には、ウラジオストクのLNG基地建設に丸紅や伊藤忠商事が事業参加していることがあったと考えられる。前述のサハリン2のLNG事業に三菱商事や三井物産が参画しているように、日本の経済界のロシアとのエネルギー協力はこのところLNG事業一色である。

 民間側の取り組みを後押しする立場の経済産業省も「ロシア側からのオファーはLNGのみである」との見解を有している。

ロシアの本音は「対中偏重を見直したい」?

 このような日本側の意向に対して、ロシア側が再びパイプラインに関心を持ち始めた。そこに「中国ファクター」が作用していることは確実である。

 ウクライナ紛争による欧米の経済制裁で窮地に陥ったロシアは中国との関係を強化してきたが、「すきま風」も吹き始めている(4月10日付日本経済新聞)。

 ロシア原油の最大の輸出先は昨年ドイツから中国へと変わった。資金繰りに苦しむロシア最大の石油生産企業であるロスネフチは株式公開による資金調達を検討しているが、中国石油天然ガス集団(CNPC)が株式の約2割を購入する意向を示している。

 このように石油分野で中国のプレゼンスが飛躍的に増大しているが、天然ガスでも同様の事態が生じようとしている。

 2014年5月にプーチン大統領が訪中した際に締結したロシアから中国への天然ガスパイプラインの東ルートに関するフィージビリティスタデイが4月に終了し、いよいよパイプラインの建設が秒読み段階に入った。

 天然ガスの分野でこれまでのところ中国のプレゼンスはないに等しかったが、パイプラインが完成すれば中国はロシア産天然ガスの大輸入国となる。

 ロシアから欧州に輸出されている天然ガス価格が下落している状況下で、タフな交渉相手である中国が2014年段階で決まったとされる価格でガスを購入するとは思えない。

 4月29日に訪中したロシアのラブロフ外相は「6月にプーチン大統領が訪中する」ことを明らかにした。ロシアは再び中国との蜜月関係を誇示するだろうが、ロシアの本音は対中偏重を見直し、日本に接近してバランスを取りたいということではないだろうか。

パイプラインの「相互確証抑制効果」とは

 パイプラインを結ぶと「ロシアに首根っこを押さえられるのでは」との懸念が日本では根強い。しかし、エネルギー専門家の間では「ガスの禁輸は使えない『武器』である」(本村真澄・石油天然ガス・金属鉱物資源機構主席研究員)というのは常識である。

 現在、各種資源間の競争が激化している中で、資源国が天然ガスの供給を一方的に停止すれば、消費国からの信頼を失い、以降天然ガスを一切購入してもらえなくなるからである。

 その証左が、2015年11月に戦闘機をトルコに撃墜されたロシア政府の対応である。ロシアのトルコに対する経済制裁のリストに「天然ガスの輸出停止」という項目はなかった(トルコ・ストリームという新規の天然ガスパイプラインの建設は棚上げになった)。天然ガス輸入の約半分をロシアに依存しているトルコが窮地に陥いることは火を見るより明らかであったにもかかわらず、である。

 エネルギー専門家たちは、むしろパイプラインが敷設されることにより当該地域の安全保障が向上する効果に注目している。冷戦時代の核の「相互確証破壊効果」をもじってパイプラインによる「相互確証抑制効果」と呼ばれているものだ。

 安全保障が向上する理由は、資源国がパイプライン建設という先行投資を着実に回収するために消費国に天然ガスを安定的に供給するという発想が強くなるため、消費国はもちろん資源国も敵対的な行動をすることができなくなるからである(冷戦時代にロシアと西欧間に敷設された天然ガスパイプラインは、ロシアと欧州の間の安全保障を支える基盤となった)。

 しかしLNGでの供給ではこうはいかない。点と点のつながりであるため、「協調」という要素が薄いからである。

 このような学習効果があったからだろう、ロシアへの経済制裁にもかかわらず2015年9月欧州企業はガスプロムとの間で「ノルドストリーム(バルト海を経由してロシア・ドイツ間をつなぐ天然ガスパイプライン)」の拡張に関する契約を締結した。

日露首脳会談で議題に上るか?

 しかし日本では経済制裁以降、ロシアとの経済協力は停滞したままである。

 5月6日のソチでの日ロ首脳会談も、開催までに紆余曲折があったようだ。

4月20日、モスクワのクレムリンで昨年12月に着任した上月駐露日本大使の信任状奉呈式の際に、プーチン大統領は「安倍首相が5月6日にロシア南部ソチを訪問する」との異例の発言を行った。

 これは、4月16日にロシア外務省の報道官が「米国の執拗な勧告を受けた日本は我々との連絡を狭め、二国間の仕事を中断した」と述べたことをロシアの一部メデイアが曲解して、「来月に予定されていた安倍首相のロシア訪問が米国の圧力により中止となった」と報じたことへの対応であろう。安倍首相との対談をなんとしてでも実現したいとするプーチン大統領の意向の表れでもある。

 プーチン大統領との会談に望む安倍首相は「両国の主張で深い溝がある領土問題に固執せず、経済分野や安全保障分野での連携強化など幅広い協力関係を築くことで、領土問題解決に向けた環境整備を図る」(5月2日付毎日新聞)意向である。

 統一直後にドイツに滞在した筆者は、多くのドイツ人が「旧ソ連がドイツ再統一を認めさせた影の功労者はパイプラインである」と述べていたことを今でも鮮明に覚えている。これにならえば、パイプラインの敷設は長期的には日本にとってプラスであろう。

 今回の首脳会談でパイプラインが議題になるかどうかは定かではないが、パイプラインは一度敷設すれば100年保つと言われている。この「国家百年の計」を実現するためには、ノルドストリーム実現に尽力したドイツのシュレーダー首相(当時)が指摘するように、安倍首相とプーチン大統領がトップ同士で合意することが不可欠であることは言うまでもない。

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5/4日経ビジネスオンライン 福島香織『中国が渇望する「南シナ海有事」に備えよ 日中外相会談、4時間20分の「先」を読む』について

日本人と言うのはどこまでも優しいという気がします。相手の気持ちを忖度して王毅に同情するなんて。小生は8年間中国人と付き合ってきて分かりますが、こちらが相手のことを考えて言ったり、行動すると、中国人はそれを利用しようとします。日本人の善意に付け込む訳です。中国人は日本人が考える以上に強かです。勿論、全部が全部と言う訳ではありません。日本人の価値基準で言うと、中国人の内悪い人は8割、日本人の内悪い人は1割くらいと主観的に思っています。民族的DNAと環境の為せる業でしょう。

岸田外相も叩頭外交だけでなかったようで、良かったと思います。主張すべきは主張しなければ相手に舐められます。中国には「内政の為の外交しかない」と福島氏は言いますが、その通りと思います。「指桑罵槐」、「殺鶏嚇猴」と言った手が良く使われます。日本はそれをよく読み、現象面を見てオタオタしないことが肝要です。

習の軍の実権把握は未だし、軍制改革も失敗というのはチャイナウオッチャーの大方の見方では。ただ南シナ海で事を起こして、陸軍の力を削ごうという見方は気が付きませんでした。前にも書きましたが、人民解放軍の海軍の英文名はPeople’s Liberation Army Navyです。Armyの後ろに Navyが来て陸軍と海軍を併記するのは違和感があります。US ArmyやUS Navy、Japan Ground Self-Defense Forceや Maritime Self-Defense Forceと別にするのが普通では。歴史的には陸軍から派生したものであっても。

鄧小平が起こした中越戦争も敗北したにも拘わらず、国内向けには勝利宣言したとのこと。習もそう考えれば、海軍を使って局地戦を展開する可能性はあります。ただ、陸軍の力を削ぐことにはならないのでは。米軍の介入、日本の後方支援と勝てる見込みはないでしょう。如何に情報遮断しても国民の知る所となります。しかし、経済やITに疎い習のことだから、リスクを考えずに、戦争に進むかもしれません。福島氏の言うように日本も対応を考えておかないと、次は尖閣になります。9条の会の言うことが如何に世界平和に繋がらないかです。

記事

Kishida & Wang

4時間20分に及んだ日中外相会談。駆け引きの先に見えてきたのは、「南シナ海有事」の色濃い影だ(写真=ロイター/アフロ)

 日本の外相・岸田文雄が実に4年ぶりに訪中し中国の外相・王毅と会談した。いよいよ日中関係改善かと期待した向きも多かっただろうが現実はそう甘くない。冒頭、王毅は「もし、日本側が本当に誠意をもってきたならば、中国側は歓迎する」と述べ、「中国の古語に聴其言、観其行(その発言を聞き、行動を見る)と言う言葉がある。今日は外相、あなたがどのような中日関係改善をもっているか、その意見を聞きたい。もちろん、同時に日本が本当に着実にそれを実行するかも見るつもりだ…」と、中国人ですら、何、この上から目線?と驚くほどの高圧的な態度であった。

 しかも以下の四つの改善要求を突きつけた。①歴史を直視、反省し、「一つの中国」を重要な政治基礎とすることを厳守。②中国脅威論や中国経済衰退論をまき散らさない。③経済面で中国を対等に扱い、互恵を基礎に各領域の協力を推進する。④日本は中国に対する対抗心を捨て、地域の平和・安定に尽力せよ。

岸田VS王毅、本命は南シナ海問題

 会食もいれた4時間20分もの会談の中身は報道ベースによると、中国の海洋覇権問題、つまり東シナ海と南シナ海をめぐる両者の応酬であったようだ。産経新聞によれば、岸田は、王毅の反論に対して「立場を述べるだけなら報道官でいい。その上でどうするか考えるのが外相だ」と、かなりキツイことを言ったようだ。中国の外相に何の権限も与えられていないことは当然承知しているだろうに。しかも、王毅は中国の対台湾外交の失策の責を負わされかねない立場にあり、ことさら傲慢な姿勢をテレビ画面で見せつけるのは、彼のきわめて官僚的保身意識の表れだと感じている。

 ちなみに私を含め、私より上の世代の記者にとって王毅は、日本メディアに対しても率直に意見交換をしてくれる「話のわかる官僚」というイメージを持っているだろう。国際会議の場のホテルロビーなどで王毅を見つけて「王毅さーん!」と日本語で呼びかけると、立ち止まって日本語で記者たちの質問に応じてくれることもよくあった。あのころの彼を思いだしながら、今の外相という責任だけ負わされる何の権限もないポジションで、日本に横柄な姿勢を示して、政権への忠誠をアピールするしかない姿を見ると、ちょっと哀れを催す。

 今回の岸田訪中の最大テーマは、喫緊の危機、つまり南シナ海問題ではないかと思う。中国は日本の介入を牽制したい。そのために、岸田を北京に招待したのだろう。その最大のテーマについての話し合いは、報道を見る限り平行線に終わったようだ。それが良かったのか、悪かったのかは最後に述べたい。

まず、南シナ海がどういう状況か整理しておこう。

 南シナ海関連の最近のニュースをざっと見返すと、まず4月25日付の香港紙サウスチャイナモーニングポストが、中国は年内に南シナ海のスカボロー礁(中国名・黄岩島)の軍事拠点建設に着工すると報じた。ソースは解放軍周辺筋で、それによると南シナ海の上空監視を完璧にするための前哨基地にするつもりで、計画では滑走路建設も含まれているとか。中国船による測量がすでに開始され、これに懸念を強めた米国は連日のようにA10攻撃機を飛ばしている。A10は少々被弾しても帰還できる「不死身の攻撃機」の異名をとる対地攻撃専用機だ。米国の本気の怒りがうかがえる。

 だが中国国防部報道官・呉謙は記者会見(4月28日)で、スカボロー礁軍事拠点化計画に対する質問に対しては「私は承知していない。メディアの扇動じゃないか」とうそぶきながらも、「黄岩島は中国固有の領土であり、その主権と安全を守るために各種危機に対応する権利を有する」と言ってのけた。さらに米国が昨年10月来、三度に渡って行っている「航行の自由」作戦に対し「南シナ海情勢を攪乱している」と非難し、「中国に対する政治的軍事的挑発であり空海における不測の事態を招きやすい」と警告している。一方、米国防長官アシュトン・カーターもスカボロー礁問題について「軍事衝突につながるおそれ」に言及。つまり双方が、軍事衝突の可能性をにおわすチキンレース的な挑発合戦に入っている。

 大統領選を控えたフィリピンでは、対中外交も争点になっている。有力候補のロドリゴ・ドゥテルテ(現ダバオ市長)は「祖父が中国人だから中国とは戦争しない」と語る親中派候補。対する、マヌエル・ロハス(前内務自治相)やグレース・ポー(無所属上院議員)は「国際社会と足並みをそろえる」という表現で対米関係強化による中国との対立の方向性にある。フィリピン選挙の結果も多少関係しようが、南シナ海における偶発的軍事衝突というシナリオは十分に考えられるレベルの緊迫度である。

フィリピン、ベトナムとの係争を契機に

 こうした南シナ海危機の状況は、今、突然、降ってわいたものではない。

 スカボロー礁については、2012年のいわゆるスカボロー礁事件(フィリピン海軍の中国漁船拿捕をきっかけに。フィリピン海軍と中国監視船が一カ月以上対峙した事件)がきっかけで、中国の実効支配が進むことになった。

 フィリピン側が国際海洋法に従って提訴して、軍を撤退させたのに対し、中国側は自国の領土であることは明白だとしてこれを無視し、居座り続けた。翌年6月には、スカボロー礁に大量のセメントなどが運びこまれて軍事施設を建設しようとしているのではないかとフィリピン軍事関係者が衛星写真をもとに訴えていた。

 スカボロー礁埋め立て問題の前には、ベトナムとの領有を争うファイアリークロス礁(永暑島)の滑走路建設問題があった。ファイアリークロス礁は1988年のスプラトリー諸島(南沙)海戦によって中国が実効支配下に置き、軍事関係者が常駐し要塞化している。2014年8月にこの環礁の埋め立て造成がはじまり、2015年1月から突貫工事で3000メートル級の滑走路が建設され、2016年1月には民間機の離発着テストが行われた。4月には解放軍の軍用機(Y-8輸送機)が着陸したことが公表された。これは表向き重病の工事関係者を緊急搬送するためということだが、中国がこの滑走路が軍事使用に耐えうるかをテストしたかったということは想像できる。

時を前後して、パラセル諸島(西沙)のウッディー島(永興島)に解放軍の地対空ミサイルHQ-9を配備したほか、J-11戦闘機、JH-7戦闘爆撃機などの配備が確認され、西沙の軍事拠点化も着実に進めて来た。さらに党中央機関紙・人民日報傘下のタブロイド紙・環球時報が南シナ海における海上浮動式原発の建設計画を報じた。ソースは中国船舶重工集団幹部で、空母遼寧を改修したのもこの会社だ。報道では、目的は燈台などの民事用電力としているものの、これをそのまま信じている人はほとんどいない。

 南シナ海で原発が必要なほど膨大な電気需要があるというならば、それは軍事拠点化に伴う需要、あるいは海洋資源開発を進めるつもりだと考えるのが普通だろう。しかも、南シナ海に原発を造る意味というのは単なる電力供給というだけでない。原発の存在を理由に中国が民間機の飛行制限を求める可能性もあるし、実際、原発上空の飛行を安全のために民間機は避ける。そうなると事実上、中国の制空権を認めた、というような既成事実と受け取られる可能性もあろう。

中国には「内政のための外交」しかない

 2015年9月、習近平は訪米時、「南沙の人工島を軍事拠点化するつもりはない」と言明したにもかかわらず、南シナ海の人工島の軍事拠点化への布石を着々と打っており、そのことが11月のASEAN首脳会議の場で指摘されると「習主席は軍事拠点にしないとは言ったが、軍事施設を建設しないとはいっていない」(劉振民外務次官)という詭弁を弄した。

 4月頭には解放軍制服組トップ(中央軍事副主席)の范長龍がファイアリークロスを視察しており、「軍事拠点化しない」「民事利用」といった建前をもはや中国は守ろうともしていない。私の個人的な見解を言えば、挑発というレベルを超えて、どうみても中国は「紛争」「危機」を起こしたがっている、すでにそのための作戦は静かに進行中だろう。

 では中国は、なぜここまで、米国やフィリピン、ベトナム相手に危険な挑発をするのか。不測の事態、偶発的軍事衝突が起きて、中国が得をすることがあるのだろうか。

 ここで、重要なのは、中国には内政があって外交がない、あるいは内政のための外交という発想しかない、ということである。内政というのは簡単にいえば権力闘争である。中国の権力闘争が激化していることは各メディアで繰り返し述べられていると思うが、今一番、危ういのは軍制改革の行方である。

 習近平政権は年初から四大総部(総参謀部、総政治部、総後勤部、総装備部)を解体し、新たに作る15の専門部局に機能を分散、さらに陸軍中心の七大軍区から、陸海空が同等の存在感を発揮する五大戦区に大幅な軍制改革を行った。また、4月20日、中央軍事委員会統合作戦指揮総指揮(コマンダー・イン・チーフ)の肩書を自ら名乗り、迷彩服で統合指揮センターを視察。軍の総帥権は中央軍事委員主席にあり、習近平はその地位にあるのだが、さらに作戦総指揮を自らとるという姿勢を打ち出した。

 この軍制改革は、建前上は強軍化が目的であるが、実際のところ習近平個人の軍権の掌握が目的であるとしか思えない。軍令と軍政を分けないで軍が正常に機能するのか、とか、習近平に戦略や戦術が分かっているのか、といった問題以前に、左手で敬礼してしまうほど軍のしきたりにうとい習近平が自ら作戦指揮を執るなど、強軍化とは逆走しているだろう。

また習近平は政権のトップになってから、徐才厚、郭伯雄といった江沢民政権時代の権力を継承する軍長老を汚職摘発の名目で排除。その一方で、自分のお気に入りの将校を出世させてきた。趙克石や李暁峰、王安竜、苗華、蔡英廷といった面々で、多くが南京軍区出身、特に第31集団軍出身である。第31集団軍は通称アモイ軍とよばれ、習近平が福建、浙江省勤務にあった時代に人脈を築いた。だが、アモイ軍はいわゆるB級(乙類)集団軍。A級(甲類)集団軍よりも格下に見られている。

 このA級、B級は革命戦争中の戦績や活躍によって振り分けられている。B級集団軍出身者は解放軍内部的には“弱い格下部隊出身”という目で見られがちである。軍権掌握のために自分と仲のよい将校を出世させるやり方は、中国の指導者では当然の手法であるが、習近平の場合、“実力不足の将校がコネで出世”した感が丸出しで、軍内では不満のムードが蔓延している。商品紹介記事しか書けない窓際記者が、社長が変わったとたんいきなり外信部長とか政治部長になって、あれこれ指示を出すようになったら、生え抜きのスクープ記者たちは素直に従えるか? そういう不満である。

 たとえば、苗華は第31集団軍から陸軍政治畑を歩いてきて、2014年6月蘭州軍区政治委員となったが、その半年足らずでいきなり海軍の政治委員となり2015年7月には海軍上将になっている。陸軍中将からいきなり海軍上将、しかも人事権を握る政治委員となれば、海軍内で不満は起きないだろうか。

 七大軍区を五大戦区に塗り替える改革も、事実上、失敗と見られている。この軍制改革は、習近平に敵対する徐才厚派閥の多い瀋陽軍区と郭伯雄派閥の残る蘭州軍区の解体であったが、結局、瀋陽軍区と蘭州軍区は北部戦区と西部戦区としてほぼもとの形のまま残った。それだけ陸軍内の習近平改革に対する抵抗が強かったということでもある。

「フルシチョフの失脚」になぞらえて

 つまり、今のところ習近平の軍制改革は順調でなく軍内の不満はかなりくすぶっている。この状況を一発逆転する一番簡単な方法は「局地的戦争」で、習近平体制の軍で戦果を挙げることである。特に、海軍に具体的な戦果を上げさせ、陸軍の利権・権力を削ぐには海戦である。だから南シナ海危機を習近平は望んでいる、と私は思うのだが、どうだろう。

 これは私の思い過ごしであればよいのだが、例えば最近、日本に移住を表明した香港在住の著名軍事アナリスト平可夫も、こんな指摘をしている。彼は習近平の軍制改革を1964年のフルシチョフの失脚の原因となった旧ソ連の軍制改革になぞっている。フルシチョフは1955年から大幅な軍のリストラを行い1964年6月にはついに陸軍司令部を廃止する。それが軍の不満をよび、十月政変の直接の導火線となった。同じように、今回の軍制改革はおそらく習近平が決定的な政治的危機をもたらすことになると予想している。

 さらにキューバ危機を引き起こしたフルシチョフと、南シナ海で強硬な軍事拠点化を進める習近平は、ともに米国を見くびり、不必要に米国を刺激し、自分の力量を過大評価しているという点でも共通していると指摘している。キューバ危機は回避できたが、同じようなきな臭さが南シナ海に蔓延しているという認識は持つべきだろう。ただ平可夫は、南シナ海や東シナ海で限定的な衝突が発生すれば、むしろ軍事的メンツをつぶされるのは中国の方で、それが、軍の習近平に対する不満爆発の導火線となる、という見立てを示している。

もう一つ、習近平が局地的な軍事衝突を望んでいるのではないか、と想像するのは、鄧小平の先例に倣おうというのではないか、という見方だ。

 1979年の中越戦争、それに続く1984年の老山を戦場とした中越国境紛争は、鄧小平の軍権掌握と軍制改革推進が、その目的の一つであるという説がある。文革終了によって復活した鄧小平は、文革で混乱した軍の整理に着手するが、その過程で自分が信頼する第二野戦軍出身の将校を重用、その人事の正当性を戦争に勝利するという形で認めさせることが軍権掌握の早道であった。

 鄧小平は旧ソ連に強い敵意を持っていたが、さすがに大国ソ連に戦争を仕掛けるのは文革の疲弊が抜けきっていない中国には荷が重いので、その手先とみなすベトナム相手に“懲罰戦争”を仕掛けたとも言える。解放軍はベトナム民兵にぼこぼこにやられるのだが、国内では勝利宣言を行い、結果としては軍権掌握、軍制改革の推進力となった。さらに軍制改革と軍の近代化を確かめる場として84年に中越国境紛争を起こす。激戦ながらなんとか雪辱を晴らし、この勝利をもって鄧小平指導体制が確立することになる。

 こういう先例があるものだが、習近平も同じようなシナリオで動く可能性はあるだろう。習近平が抜擢した軍の幹部たちにも中越戦争、中越国境紛争経験者がけっこういる。

他人事ではない。妥協なく備えよ

 そういうふうに考えると今の南シナ海は非常に危機的な状況であると認識すべきである。キューバ危機のように、ぎりぎりのところで回避されるかもしれないし、中越戦争のように本当に局地戦が起きるかもしれない。だが具体的なことを少しは想像しておくことだ。

 たとえば、南シナ海危機が本当に起きたとき、安保法制の存立危機事態に相当するとみて、米軍やフィリピン軍の軍事行動に同盟国として参与するか否か。参与するとしたらどのレベルまでか。南シナ海問題に日本は無関係だと判断して静観の構えをすれば、結果としてどういう事態が想定されるか。

 日本にとってもシーレーンである南シナ海が中国の軍事拠点化すれば、これは日本の存立危機に通じる話であるし、次に中国の軍事実力によって実効支配のターゲットとなるのは尖閣諸島だろう。私は、他人事にしてはいけないと思っている。

 今回の外相会談の詳細はまだ明らかになっていないが、南シナ海の問題について、日本が妙な妥協をしていないのならば良かった。そのことで日中の政治的関係改善が遠のくことになっても、長い目でみれば、それは地域の平和に利することになるだろう。

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兵頭二十八著『「地政学」は殺傷力のある武器である。』について

日本の地政学の研究は奥山真司氏が有名です。エドワード・ルトワックの本を翻訳し、最近も『中国4.0 暴発する中華帝国』を刊行しました。ルトワックへの6回にわたる連続インタビューをもとに作られた本とのことです。こちらも読んでみたいと思っています。

さて、本書は兵頭氏が地政学について分かり易く解説したものです。マハンの凄さと時代の制約を受けた限界について触れられています。日本の採るべき道についても。

スパイクマンの第二次大戦後の日独への扱いの戦中での予言は、米国の世界観構築の層の厚さと言えるでしょう。

機雷の凄さについて、日高義樹氏も『中国、敗れたり』で触れています。衛星操作に依らない敵艦自動識別・自動浮上できる機雷を中国沿岸に米潜水艦が敷設すれば、中国は輸入・輸出ができなくなり、戦略物資(特に、石油)の輸入ができず、戦わずして負けるというもの。大慶油田は質が悪く、水も多く出ますので、継戦能力は低いです。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%A7%E6%85%B6%E6%B2%B9%E7%94%B0

中国がマラッカ海峡を通らず、インド洋に出口を持つため、ミヤンマーに港湾を造ろうとする意味が良く分かりました。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%81%E3%83%A3%E3%82%A6%E3%83%94%E3%83%A5%E6%B8%AF

パールハーバーはセカンドアタックさせなかったことが悔やまれます。飛行総隊長の淵田三津雄氏もそう述べています。後講釈ですが、ハワイを押えておけば(日本統治)戦局も変わったのではと素人ながら思いました。

本書を読んで、筆者が大切と考えているのは

①ブロケード(海上封鎖)

②位置(ジブラルタルを押えた英国)

③後続支援できる生産体制・・・これが一番大切。1次、2次大戦の米国を見れば分かります。

④マッキンダーの独鉄道網への懸念。これも空からの攻撃で払拭された。

⑤石油の運搬路としての河川の活用

⑥100オクタン価ガソリンの大切さ。戦闘機の能力に差。

面白いですから、是非本を手に取って読んで戴ければ。

内容

①P.66~70

こんなにも先端的な実用工学を山のように蓄積しているフランスが(ナポレオンが、と言い換えてもいいでしよう。一時ウェストポイントにもナポレオン熱が風靡しました)、なにゆえに英国に圧倒されてしまったのか?

そこを、自分よりも若い海軍士官たちに説明ができないようでは、海大で先生面などはできないぞとマハンは考えたに違いないのです。

19世紀後半のアメリカ合衆国が近未来で直面し得る最強の仮想敵も、やはり大英帝国の海陸 戦力でした(その形勢は1920年まで続きます)。

当時英国は、カリブ海のあちこちに領地を保持しており、好機を捉えれば、いつでもその影響力を「中米運河」の工事候補地(パナマに決まって起工されるのは1904年ですけれども、運河が開鑿されることじたいは早くから確定的でした)に及ぼす可能性がありました。

メキシコ湾やペルー沖で何年も海上勤務してきたマハンには、それはアメリカにとっての悪夢だと信じられました。なぜなら、フランスが英国に勝てなかった理由のひとつが、〈ジブラルタルに英海軍が根拠地を持つことを許していた〉ことにあったと、彼には思えたからです。

フランスの大西洋岸にある大軍港ブレストの艦隊と、地中海岸の大軍港トゥーロンの艦隊とは、この英軍ジブラルタル基地によってまったく二つに分断されてしまって、常に一体集合的にそのどちらかに攻めかかってくる英国艦隊に対しては、フランス側は常に少数の一部分艦隊で立ち向かうしかなく、最初から勝ち目は薄かった     とマハンは結論しました。

なにしろ、フランス海軍を葬り去ってナポレオンの英国征服を不可能にした「トラファルガ—海戦」は、ジブラルタル軍港を根城に仏海軍を監視していた英国ネルソン艦隊が、ジブラルタル軍港からわずか50キロメートル先の海面で、もっと遠くから集まってきたフランス艦隊を「邀撃」するといった必勝パ夕–ンだったのです。幅14キロメートルしかない海峡を通航する敵性艦艇は、すべてジブラル夕ルの山の上からはお見通しでした。もしもパナマに英軍が「ジブラル夕ル要塞」を建造してしまったなら、アメリカの未来はどうなるでしょうか?

将来のアメリカ合衆国は大西洋にも太平洋にも艦隊を維持しなくてはなりません。しかしその艦隊をいつでも一体に集合できるようにしないならば、トー夕ルで優勢な英国海軍に対する勝ち目は無くなります。中米運河を「アメリカにとってのジブラル夕ル」にさせてはならないのです。そのためにはカリブ海と中米を、早くアメリカが制圧しておく必要がある、とマハンには思われました。

中米を英国に支配されたくなくば、カリブ海域におけるスぺイン支配地に英国の手が伸びる前に、極力、合衆国の手中に回収して軍事基地化しておくのが得策です。

この目的意識のもと、1898年にマハンが盟友セオドア•ローズヴェルト海軍次官を応援して起こさせたのが米西戦争です。米西戦争の結果、カリブ海での英軍勢力は米軍勢力に対して劣勢となって、英帝国は中米運河の支配を諦めるという流れができました。

太平洋から、英国の同盟者となるかもしれない外国海軍が、中米運河に接近するためには、 途中で貯炭場を利用しなければなりません。だったらその貯炭場も、米国が支配しておかなくてはまずい。この問題意識から、1890年の『海上権力史論』いらいマハンは「ハワイを併合せよ」という論陣を張り、やはり米西戦争中の1898年にそれが実現します。さらにスぺイン領であったフイリピンも奪い取って、シナ大陸と蒸気船で交易するための太平洋上の中間貯炭場を確保し終わりました。

マハンは、西部開拓ブームや、それに連動する鉄道ブームには、心の中で大いに反発をしていたろうと想像されます。このブームが続く間は、アメリカ人民は誰も海上貿易(特に対シナ貿易)の将来などには注意を向けないでしょう。しかしマハンが見るところ、英国が17世紀以降に強大化できたいちばんの理由は、スペインやオランダやフランスが不十分にしか実践をしなかった、商船隊と軍艦と私企業主体の海外市場開発を連動させる富国強兵策を、意図的に推進したことにあったのです。これを大衆に分からせることも『海上権カ史論』の意図のひとつでした。

第1章でも述べた如く、スペイン政府は、新大陸にせっかくの殖民地を得ながら、金銀をせっせと持ち帰らせるばかりで、現地と本国での私企業(製造業•運送業•小売業)の発達を妨害しました。おそらくその理由は、イベリア半島から苦労してイスラム教徒を追い出した、じぶんたちの国家建設過程にあったのでしょう。サラセン人を敗走させ、その財を奪った者が領主階級となって農民の上に君臨していたのがスペイン帝国でした。彼らの気風として、モノを作ったり売ったりするビジネスなんか、考えられるものじゃなかったのです。

オランダ人は国土が狭いので、遠い海外の殖民地を開拓するしかないという覚悟は決めていました。しかしオランダ人は、ライン川の河口港という一大販路も擁していた地勢から、どうしても発想が商人的になり、つかの間の平和を得ると、すぐに陸海軍への出費を減らして、効率.的に儲けることだけに集中しようとするのです。このような商業貴族たちからなる政府では、片時も戦争を忘れないで海軍力を整備しているイギリス人たちとの仁義なき競争において、敗者となるしかありませんでした。アメリカ人は、オランダ人のようになってはいけないと、マハンは『海上権カ史論』で議員さんたちに警告したのです。

フランス人は国土全部が恵まれた農地で、本国での生活の満足度が高いためか、たとえば<イギリスの息の根を止めてやる〉ような海外指向の大戦略に思い至りません。かつてドイツ人のライプニッツがルイ14世 (1661 年に宰相マザランが死んだあと半世紀以上もフランスの対外策を親裁しました)に進言したことがありました。〈隣国オランダと直接戦争するよりも、もっと得な策があります。フランスの陸海軍でエジプトを占領すればいいのです。さすればフランスが地中海を支配できるので、オランダの海運業は衰退し、やがてオランダの東方の宝庫もフランスの手に落ちてきます。直接戦争はしないのですから、インド洋で築いたフランス資産が破壊されることもありません〉と。

ルイ14世時代のフランス軍ならば、この遠征も楽に成就できたのに、帝王はそのコースを採用しませんでした。後にナポレオンがライプニッツと同じ結論に達したときには、すでに英国が、先行してインドまでの中間海軍基地(マルタ、キプロス、スエズ、セントへレナ、喜望蜂・・・)の布石を終え、盤面をすっかり支配しており、フランスには勝ち目はなくなっていたのです。フランス海軍の軍港は地中海ではトゥーロンの1箇所にしかなく、英海軍の根拠地から交通線の脚面を簡単に妨害されました。

マハンは、もしも太平洋のガラパゴス諸島や、カリブ海の島嶼に英軍が基地を作ると、米艦隊が中米運河を利用するときに、側面から牽制されてしまうと読者に注意を喚起しました。逆に米国こそが英国のように行動しなくてはならないのです。太平洋の島嶼を補給港として押さえ、シナ市場をアメリカ商船が支配することは、西部開発よりも大事です。それこそが、アメリカ合衆国が世界の富豪になるための最短コースなのです。

②P.235

米国はドイツと日本を手離すな

スパイクマンは、如上の大局的把握に基づいて、第二次大戦の結末をその渦中において鋭く予測し、アメリカ合衆国が取るべき針路をアドバイスしました。

まず、〈枢軸が敗北するのは決まっているものの、ドイツを無力化してはならず、戦後のソ連と拮抗させなくてはならない〉〈日本の敗戦後、ソ連は国境をめぐってシナと対立関係に入るだろう。リムランドであるシナは、かならず強大化する。ソ連は押されて、中央アジアを支配し続けられない。米国はシナによる日本併吞を阻止せねばならず、むしろ進んで日本と同盟することで、シナと拮抗しなければならない〉と説きました。

こんなことを、アメリカと日独との間の戦争が正式スタートしたばかりの1941年12月31 日に、「アメリカ地理学会」の質疑応答の中で公言しているのです。もちろん学者仲間から総反撃をくらいましたが、戦後にアメリカ政府が服用したのは、まさにスパイクマンの処方箋でした。

戦前のわが外務省に、スパイクマンの米国東部政治エリート層に対する影響力を偵知できるだけの情報収集力や人脈があれば、もうちょっとマシな終戦工作が可能だったかもしれません。

③P.295~305

真珠湾の大へマ?

日本海軍の情報系の幕僚たちが常に優先的に調べ上げなければならなかったことは、米軍は 対日有事のさいにどうやって油脂類を前線まで補給するのか、そのルートについてでした。それが分からなければ、敵の燃料補給線を遮断するプランも立てようがないわけです。しかし、日本海軍の中で燃料問題に最も詳しかった「機関科将校」たちが、日米開戦のプランニングには参画させてもらえなかったことが象徴しているように、日本海軍の首脳には、それについての関心は皆無でした。

日本の軍人は、石油のために国運を賭けて開戦すると叫びながら、敵軍の石油のことなどどうでもよかったのです。このために、日本にも実はわずかにあった勝利の可能性が、ゼロになったと思われます。

対米戦争が日本の完敗に終わって、徐々に、日米開戦時の米海軍幹部の回想録も発表される ようになり、その内容を聞き及んだ日本人たちが意外に感じたことのひとつは、〈真珠湾の油タンクを爆撃しなかった日本人は馬鹿だ)という論評でした。

1942年以降の中部太平洋作戦を指揮したニミッツ元帥(1885〜1966)が、1960年に出版した『The Great Sea War』の中で、〈カリフォルニアから1年以上もかけて運んだ重油450万パレルが、ことごとく真珠湾の地上タンクには入れてあったのに、日本軍はそれを攻撃しないで見逃した。もしその燃料が爆撃で炎上させられてしまっていたら、当時の米国は欧州へ大量の石油を送る約東をしていた関係上、真珠湾に再び大艦隊への重油補給機能が回復されるまでには数か月もかかり、その間、日本軍は西太平洋ではほぼフリーハンドが得られただろう〉と示唆したというのです。

この地上重油タンクは、巨大な茶筒蓋状の鋼製貯槽(1個の容量は7000トンくらいと思われるものの寸法データは調べても出てきません)で、当時の写真からはタンクの屋根は固定屋根だったように見えます。オアフ島の真珠湾軍港の潜水艦埠頭の東からヒツカム陸軍飛行場の北縁にかけて、これが相互に100フイート以上の間隔をあけて26基、配置されていました。

ニミッツは1940年には米海軍の埠頭施設や工廠を総括するポストでしたから、ハワイの重油貯蔵については何から何までも承知していました。また、平気でデタラメを書けるような「豪放軍人」でもありません(緻密な事務に向かないキヤラクターの将官は、日米どちらでも部内の頂点をきわめられないようになっていました)。

太平洋艦隊司令官としてニミッツの前任者で、41年末のハワイに所在したキンメル提督も、 <真珠湾で地上タンクが燃やされてしまっていたならば、ハワイからは大艦隊に対する作戦支援がもはや不可能となったので、いったんは、全艦隊が本土西海岸まで戻る必要があっただろう>と証言しているそうです。

これは、あり得るでしょうか?

確認しましょう。

1941年12月7日(現地時間)時点で、真珠湾の地上には26基の大容量重油夕ンクが存在し、すべて潜水艦阜頭に隣接していました(ただし潜水艦は軽油で走るものなので、当該貯槽と直接の関係はありません)。この重油タンク群は1939年秋に建設が始まり、1941年10月にはそのうち2基だけに対空迷彩として、ピルデイングに見せかける手の込んだ偽装がなされており、他のタンクも地面色の塗装だったのだと伝えられますけれども、1基1基があまりに巨大ですので上空からはまるわかりでした。位置は、陸軍のヒッカム飛行場からも、海軍のフォ-ド島飛行場からも、目と鼻の先です。ハワイ空襲に参加した搭乗員は、全員、そのタンク群を視野におさめたでしょう。

450万バレルという合計貯油量は、ハワイより西側の太平洋での米艦隊の作戦を2年半まかなうのに足るものでした(この数値は80年代よりも後から流布したもので、ニミッツが明かしたものではありません)。

タンクの側壁のスチールの厚さは、最上部のいちばん薄くてよいところでも「4分の1」インチから1インチ強はあったと想像されますので、当時の日本海軍機が装備した7. 7 mm機銃 (九九式艦上爆撃機はこれ2梃で前方を射撃できた)も、20mm機銃(これは零戦だけが装備)も、側壁の貫通は無理ではなかったかと思うのですが、連合艦隊の戦闘詳報によれば1942年4月9日にセイロン島のトリンコマレー軍港を空母『飛龍』の艦上機で空襲したさいに、重油槽×1を制空隊、すなわち零戦が銃撃炎上させたという記録があります。

重油タンクの天板の厚さは見当がつかないものの、空襲中に激しく射ち上げられた米軍の防空火器(12. 7mm機関銃から3インチ高射砲まで)の外れ弾や落下破片によってその天板が損傷を受けたという話は聞かれません(付近住民の間には落下物による死傷者が発生しています)。

一般論として、重油は、たとい空気と接していても、常温では容易には着火しないものです。パールハーバーの重油の夕ンクの中に60kg以上の日本海軍の爆弾が飛び込んで爆発すれば、 火災(もしくは大爆発)が生じたでしょう。しかしタンク1基の火災が、他の夕ンクも延焼さたかどうかは分かりません。

41年当時の空撮写真を見ますと、すべてのタンクとタンクの間にはタンク1基分以上の間隔がとってあって、しかも1基ごとに高い土手で地面を仕切っています。こうした防油土手は、タンクの内容液全量が漏れてもその外へは溢れ出さぬ高さに設計されていたはずです。

したがって日本機は26基のタンクにひとつひとつ爆弾を正確に配分せぬ限り、真珠湾所在の重油の全量を焼亡させてしまうことは不可能だったでしょう。

空母『翔鶴』と『瑞鶴』の艦上攻撃機隊と艦上爆撃機隊は、他の4隻の母艦飛行隊よりも技術が未熟だというので、真珠湾空襲時には対艦ではなく対地攻撃任務を割り当てられていました。この空母2隻分の艦攻や艦爆がよってたかって上手な爆撃を加えた場合は、貯槽26基を全部燃やしてしまうことはできたと思われます。

ただし、そこには悩ましい問題があったのです。それだけの有力な攻撃力を使って、ヒッカム飛行場やフォード島の海軍格納庫内や飛行場にズラリ並んでいる四発重爆撃機B -17や長距離哨戒飛行艇カタリナや単座戦闘機P—40の上に少しでも多くの破片爆弾を雨下させなくても、 よかったでしようか?

敵戦闘機が地上で撃破されれば味方の第二波や、第二次攻撃隊(これは実行されず)は迎撃を 受けないですみました。また、もし敵の大型長距離機を討ち洩らせば、それが帰路の空母艦隊を発見して、大きな仇を為すかもしれないのです。

当時の貧乏だった日本人の目には、工業的な付加価値のかたまりである新鋭航空機300機 を爆破してやれるチャンスこそがあまりにも貴重であると信じられたのではなかろうかと思われます。

真珠湾攻撃を計画した日本海軍の作戦参謀は、41年末の時点で米海軍が重油を安全な地中に 貯蔵していないはずはない、とも考えていたようです。

日本海軍では1914年以降、重油の蒸発損失をなくし、かつ、空襲にも脆弱でないものにしようと考えて、備蓄タンクを地中式、もしくは覆土式にするようになっていました。

ですから<ハワイ基地の地上に見えているタンク群を全部破壊しても、地下には別の貯蔵タンク群があって米海軍は痛痒を感じまい。もしかすると地上タンクは既に空に近い状態で、 せっかくの爆弾の無駄となるだけかもしれぬ〉と日本海軍の側で勝手に疑っていたとしても、それは無理はないです。

真相は、1991年の冷戦終了後に秘密が解除されて、一部があきらかになりました。オアフ島内の「レッドヒル」と呼ばれる丘陵地帯の地中100フィー卜のところに、1940年12月から海軍少将ニミッツの差配によって、たしかに総計20基もの巨大地下貯油槽が、極秘裡に築造されつつあったのです。それは全体で重油540万バレル+軽油60万バレルを貯蔵できるもので、すべてが完成したのが1943年9月だったといいますから、41年末の時点で一部は概成していたでしょう。日本海軍は、この大規模工事の「噂」を耳にしていたのかもしれません。

それでも、上述のジレンマにもかかわらず、もしも数機の「九七艦攻」が60kg爆弾複数を夕ンク群の上にバラ撒き、うまい具合に重油が全部燃えてしまった……としましよう。

米国指導層の筆頭の関心事は英本国をドイツに支配させないことでしたので、日本およびドイツとの戦争状態(12月11日にドイツから対米宣戦)が発生して以後は、パールハ-パーへの450万バレルもの重油再補給などは当分、後回しとされ、英本国およびソ連への油脂援助(ソ連向けは41年8月から本格化していました)に全力が傾注されたことは疑いありません。

米国内では早くも1941年9月25日に、陸海軍とF•D・ローズヴエルト大統領が、〈まずはドイツを敗北させるべし。そうなれば日本も、やっていけなくなるだろう〉という戦略見通しで一致しているのです。

ソ連への油脂搬入は、夕ンカーでイラン南岸(おそらくホルムズ海峡に面したバンダルアッバース港)にまず揚げ、そこから鉄道貨車でカスピ海南岸へ輪送しなければなりませんでした。日本の空母艦隊は、シンガボールを根城にして、ハワイ基地から米空母艦隊が出撃のできないでいる半年前後の間、インド洋を常続的に制海し、1隻の米英タン力―/貨物船もインド洋側からはホルムズ海峡に近づき得ぬようにできたでしよう。すると、どうなったでしょうか?

第4章でも解説しましたスターリングラード市(およびカフカス地方からパクーにかけて)のソ連軍は、カスピ海およびボルガ川を経由する米英両国からの補給品(特にトラック用燃料)を42 年1月以降は受け取れなくなったでしょう。その結果、42年6月発動のドイツ軍の「青作戦」 は、史実よりも弱い抵抗を排除するだけでよくなって、ドイツはグロズヌイ油田と、最重要水運結節点のスターリングラードを占領して、独ソ戦の流れを変えてしまったかもしれません。

もちろん米海軍も座視してはおらず、南アフリカのケープタウンに根拠地を構築して、大西洋艦隊所属の空母をインド洋へ差し向け、インド洋で日米間の初の空母同士の海戦が生起した可能性もあるでしょう。

アマチュアは戦術を語り、プロは補給を気にする

マハンは、帆船が汽走船に変わったことで、貯炭場の平時からのグローバルな確保が海軍の遠距離作戦能力を左右する時代になっているのだと、政治家たちを啓蒙しようとしました。第二次大戦は、石油時代でもそれがあてはまることを痛感させます。

石炭貯蔵所と違って、重油タンクは砲爆撃によって意図的に着火させやすいので、むしろマハン時代よりも防禦の配慮が必要となりました。

もし日本海軍が、ハワイの地上重油タンク群こそは米国太平洋艦隊の一大弱点であると見抜けたのならば、空母機による真珠湾攻撃の代わりに、潜水艦から発進させた特殊小型水上機によるタンク群への小型爆弾の投下と、潜水艦に特設させた8〜12インチクラスの長距離砲による攪乱砲撃を組み合わせた「ミニ奇襲」が選択されたかもしれません。じっさい英海軍は戦間期に潜水艦に12インチ砲を搭載して、発射後30秒で潜行する実験に成功していましたし、フ ランス海軍も1929年に潜水艦に8インチ連装砲塔をとりつけて、7マイルまで照準が可能であったといわれているのです。

7000トン容量のタンク1基の建設には、戦前の日本の場合ならば1年以上もかかったようです。米陸軍工兵隊の能力ならば、数か月で再建できたでしよう。

それが完成するまでの急場しのぎには、カリフォルニアから重油満載の油送船をハワイ、サモア、豪州方面の諸港へ派出し、そこで「浮かぶ貯油タンク」として待機させておく方法もあったはずです。なにも専用のタン力ー船や給油艦でなくとも、量産型の貨物船を小改造しても当座は間に合ったでしょう。

ここでまた仮に、ハワイ軍港の補給基地としての機能が一時的に麻痺したとしましょう。そのおかげで開戦後の半年から1年間、マレーや蘭印からの日本の石油還送がまったく妨害されることがなくなったとしたら、日本は内地に何百万トンもの原油を余計にストックすることが、可能だったでしょうか?

蘭印だけでも、開戦直前の時点で日量17万バレル=2万7030キロリッ夕―が生産されていました。かたや1941年度の軍用も含めた国内石油消費量は、42年5月に海軍省軍需局が作成した「本邦油槽船発達経過•概要」という資料によれば500万キロリッター、すなわち 1日に1万37 00キロリッターでしたので、もしも蘭印石油を全量内地へ持ち帰れたとしたなら、国内で消費をし続けたうえに、消費したのとほぼ同量の備蓄まで積み増せたという皮算用になりましょう。

しかし、それは実現できなかったはずです。まず、それだけの油を溜めるタンクが、内地にはなかったでしょう。また、それだけの原油を日本本土に持ち帰り得るタン力―を、日本は開戦前に整備していませんでした。19 3 9年に日本が保有していたタンカーは合計43万トンで、 これは日本の全船舶の8%に相当したそうですが、同じ年に、米国は280万トン(全船舶の24%、英国は326万トン(15%)もの夕ンカーを動かしていたのとは、大違いなのです。 迂闊にも大量整備を怠った希少で貴重なタン力ーを、米潜の雷撃から守るための措置も、連合艦隊は講じませんでした。トラック島やパラオ島の陸上の貯油施設が容量不十分であったために、動かすことのできる油槽船を何隻もいつまでも軍港内に浮かべてタンク代りに使わざるを得ず、それを米艦上機のいっぺんの空襲ですベて沈められるといった、二重にも三重にも無駄な戦争資源の運用をしていたのでした。終戦までには110隻もの日本のタン力ーが敵潜水艦によって沈められているそうです。貨物船の運航を打ち合わせるときに用いた日本の暗号まで、米海軍によって解読されていました。

④P.316~317

geopolitics-1

⑤P.327

geopolitics-2

⑥P.328~331

対儒教圏の理想的バリアーとなるハイテク機雷

日本のエネルギー環境が、以上述べました太平洋航路の活用によってこれから好転すると見られるのに比し、中共のエネルギー安全保障は、お先真っ暗です。

中共が経済成長する過程で、中共はエネルギーと食料のアウタルキー(国内自給自足体制)を失いました。ここに彼らのリカバー不可能な弱点ができてしまいました。

中共は2030年までに新たに110基もの原子力発電所を建設して運用開始するつもりで います。が、フランスにおける先行実験が教えているとおり、いくら原発を増やそうとも国家は石油燃料消費をゼロにできるものではありません。特に陸海空軍にとっては、石油は今も血液と同然です。

げんざい、中共が輪入したり輪出したりする必要のある物資の96% (重量換算)もが、海の上を運ばれるようになっております。

空輸や、陸上国境越しに交易されている物資は、重量換算では4%しかありません。これは何を意味するのか。

いまや中共は、「機雷戦」によって自滅するしかない体制となってしまっているのです。 日本では先の対米戦争の末期に撒かれた機雷を戦後に取り除く必要があって掃海部隊が最初に再建され、いらい一貫して機雷戦関係の戦技が磨かれてきています。もし中共軍が日本列島の外周に機雷を撒こうとしても、シナ沿岸ほど遠浅ではないので、「繋維機雷」という面倒なシステムにする必要があり、それは掃海隊にとっては除去は容易です。

また米軍も、冷戦中にもついにソ連が模倣することができなかったハイテク機雷のラインナップを複数、有しています。

かたや中共海軍は、彼らの遅れた技術力では探知が困難な米海軍の優秀潜水艦を首都北京に 近寄せないために、対米有事には漁船まで総動員して手当たり次第に数十万発の機雷を海中に 投入させ、黄海と東シナ海は機雷だらけにしてしまうつもりです。

シナ大陸の沿岸は、河川が吐き出す泥土のために、どこまで行っても遠浅の海です。安価でしかも非常に探知され難い「沈底式機雷」にとって、天津や上海ぐらい「封鎖」しやすい港はないでしょう。そんな機雷が、有事になれば、敵と味方の双方によって、無数に撒かれてしま うのです。

げんざい中共海軍は、沿岸のあちこちに潜水艦用の新根拠地を増やしているところです。が、今日のハイテク機雷は、ごく少数でも、それらの軍港への潜水艦の出入りをまったくできなくしてしまえます。米軍と自衛隊は、「水中ロボット」を使って繰り返し、対潜水艦用の機雷を敷設するでしょう。中共海軍には、それを排除する技術はありません。

中共がずうずうしくも国際海洋法を無視して領有を主張している南シナ海域でも、中共から領海主権を守らなければならない沿岸諸国が、おのおのの自衛のための機雷を敷設するでしょう。血迷った中共がこれらの諸国を攻撃すれば、これらの諸国は、マラッカ海峡、スンダ海峡、ロンボク海峡、マカッサル海峡、バラバク海峡、ルソン海峡、トンキン湾を、機雷によって封鎖してしまうことができます。

多数の機雷が敵味方によって敷設されますと、揚子江の出入用航路の部分だけでも1〜2年では掃海され得ません。中共は、石油の搬入を断たれて、軍隊の機能がまず停止し、軍隊がバックアップしている警察とともにそのまま「軍閥」化し、国内各地に反北京の暴動が起こって、いくつかの軍閥支配区の割拠状態が生じ、そのうちにまた、「ロだけ近代指向」の儒教専制的統一政体に収斂していくことでしよう。シナの地理が変わらぬ限り、シナの歴史も同じことの繰り返しです。かつて辛亥革命に手を貸してやった日本人には、身にしみているでしょう。 中共が長期戦の構えを取ろうが、短期で屈服しようが、機雷は、中共を包囲し続けます。

沿岸部だけに8億人もが集中して暮らすようになった今の中共にとり、その沿岸の海が、自分たちで闇雲に投入した機雷によって通航も漁労もできぬ海面に変わってしまいますと、電力も食料も得られなくなった彼らは、一斉に内陸部、それも水の得やすいチべットかミャンマー方面へでも移動するしかないでしょう。

誰にも除去不能な数万発の機雷は、日本とシナ大陸の間の戦後数十年間の汚れた関係を半永 久に断ってくれると期待できます。江戸時代の平和が復活するでしょう。われわれは、しばらくの間、厄介な儒教圏人たちとは無縁に暮らしていくことができるのです。これほど素敵な 「フリー.バリアー」(無料の障壁)が、他に考えられるでしょうか?

スパイクマンは、アメリカは孤立主義による安全は得られないと警告しました。

日本は逆に、遮断主義(大陸や半島の儒教圏人とは平時から縁を切る)によらなければ安全は得 られません。これは江戸幕府の智恵なのです。

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5/4JBプレス 古森義久『注目のトランプ「外交政策」、やはり中身はなかった 粗雑な孤立主義を米国の識者が厳しく批判』について

5/5朝日新聞デジタル

<米大統領選の共和党候補者指名争いで、獲得代議員数が2位だったクルーズ上院議員(45)が3日(日本時間4日午前)、選挙戦からの撤退を表明し、実業家のトランプ氏(69)が同党の指名を獲得することが確実な情勢となった。同日に行われたインディアナ州予備選で同氏が大勝し、クルーズ氏が選挙戦の継続を断念した。  クルーズ氏は、同日夜のインディアナ州での集会で、支持者を前に「我々は選挙戦から撤退する」と表明。一方、トランプ氏は早くも民主党のクリントン前国務長官(68)との対決を見据え、「我々はヒラリー・クリントン氏を打ち負かす。彼女は偉大な大統領にはなれない」と自由貿易に対する政策の違いなどを強調し、「(本選挙が実施される)11月に我々は勝利する」と述べた。  これまでの獲得議員数で3位のオハイオ州のケーシック知事は依然撤退の意向を示していないが、トランプ氏が7月の共和党全国大会前に候補者指名に必要な代議員総数の過半数を獲得するのは確実な情勢だ。  同党全国委員会のプリーバス委員長は同日、ツイッターで「トランプ氏が共和党候補となるだろう。我が党が団結し、クリントン氏を打倒することに集中する時だ」とコメントし、トランプ氏が指名を獲得するとの見通しを明らかにした。  一方、民主党のインディアナ州予備選ではサンダース上院議員(74)が、クリントン氏を僅差(きんさ)で破り、勝利した。クリントン氏が党の指名を獲得するのは確実な情勢だが、サンダース氏は選挙戦を継続する方針で、最終決着はしばらく先になりそうだ。(インディアナポリス=金成隆一、ワシントン=佐藤武嗣)>(以上)

米大統領本選はヒラリーVSトランプの戦いになりました。トランプが今後考えなければならないのは

(1)共和党全体を纏め上げれるか。特に共和党主流派はトランプを嫌っており、その関係修復をどうやるか。

(2)副大統領候補をクルーズはフィリオーナ(女性)にしていましたが、ペイリン(女性)を指名するかどうか。或は誰を指名するのか。

(3)女性を侮蔑する発言、人種差別発言をしてきたがこれをどう軌道修正していくか。

ヒラリーが共和党を分裂させるため、トランプを擁立させたとの噂がある中で、トランプはアジテーターの役割を止め、真剣に政策を訴えなければ本選でヒラリーに負けてしまうでしょう。

本記事のように矛盾を露呈するようではダメで、早急にスタッフを集めて、知恵を絞ってほしいと思っています。

記事

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米首都ワシントンで、外交政策について演説するドナルド・トランプ氏(2016年4月27日撮影)。(c)AFP/Brendan Smialowski〔AFPBB News〕

 米大統領選で旋風を巻き起こしている共和党候補、ドナルド・トランプ氏が初めて外交政策について演説をした。

 トランプ氏が予備選挙戦で事前に草稿をきちんと準備して演説したのはこれが初めてである。だが、その外交政策は粗雑な孤立主義であるとして、保守派かもらもリベラル派からも厳しく批判される結果となった。

「アメリカファースト」を掲げオバマ外交を批判

 トランプ氏は4月27日、ワシントン市内のホテルで初めて外交政策について演説した。以下がその内容の骨子である。

 まず、トランプ氏は外交政策全体の最重要点として「アメリカファースト」(米国第一)という標語を強調した。アメリカの利害関係を何よりも優先する姿勢である。

 その姿勢は、オバマ大統領の好きな「国際協調」や「多国主義」へのアンチテーゼとも言うことができる。トランプ氏はオバマ外交を「ビジョンがなく、目的も方向もなく、戦略もない」と断じる。そして以下の5点をオバマ外交の弱点として挙げた。

(1)米国の資源を無駄使いしている

 オバマ大統領は米国の軍事と経済を弱体化した。他国の国づくりを唱えながら米国の国力をすっかり骨抜きにしてしまった。

(2)米国の同盟国の負担が不足している

 北大西洋条約機構(NATO)の加盟国28のうち、公約である国内総生産(GDP)の2%以上を防衛費にあてている国は4カ国しかない。これは不公正である。

(3)同盟諸国の米国への不信が増した

 オバマ大統領の「友を嫌い敵を好く」態度によって、米国の同盟諸国の間で対米不信が増した。

(4)競合相手から軽んじられている

 ロシアや中国はおろか北朝鮮までもが米国を恐れず、もちろん敬意も抱かない。特に中国は米国への敵対的行動を盛んに行っているが、米国は対抗措置をとらない。

(5)外交政策に明確な目標がない

 リビアの独裁政権を倒した後 民主主義勢力の崩壊を黙視した。イラクやシリアでもテロ組織IS(イスラム国)の跳梁を座視した。

「国益を守るために軍事力を断固として使う」

 以上のようなオバマ政権批判を踏まえ、トランプ氏は自らの外交政策目標として次の3点を挙げた。

(1)イスラム過激派の勢力拡大を阻止する

 この目標達成には米国だけでなく全世界の努力が必要である。米国は軍事力の行使もためらわないが、哲学的な闘争も必要とする。

(2)米国自身の軍事力と経済力を再強化する

 中国もロシアも軍備を強化して国威を発揚しようとしている。米国も軍備縮小の流れを逆転させ、世界最強の地位を確実にする。経済面でも米国を偉大にする。

(3)米国の国益に基づく外交政策を確立する

 まやかしのグローバリズムに流されるべきではなく、主権国家こそが国民の幸福や調和の真の基礎となる。国際的な連帯もそれ自体には価値がない。

 トランプ氏は以上のような要点を訴えるとともに、「米国の国益を守るために軍事力を断固として使う」「民主主義など欧米の基本的価値観を世界に広める」「NATOおよびアジアの同盟諸国と協議して、共同防衛の経費の負担のあり方を論じ、共通の脅威への対処を考える」とも誓約していた。

立場を異にする3人の識者の評価は?

 このトランプ外交演説を米国各界の識者たちはどうみたのか。米国には多様な政治理念の論者たちがいる。ここでは代表的な3人の識者の反応を紹介しておこう。

・共和党系保守派の見方

 第1は、共和党系保守派の大物政治評論家、チャールズ・クラウトハマー氏の意見である。

「トランプ氏はこの外交演説で、自らを揺るぎない信念の政治家、そして大統領にふさわしいリーダーとして示したかったのだろう。その狙いはある程度は成功したと言える。

 彼の演説の主眼は『アメリカファースト』という標語に集約されていた。その背後には、トランプ氏が誇りとするナショナリズムが影を広げている。トランプ氏のナショナリズムは、他国や他国の国民には米国民の血や資源を犠牲にしてまで介入する価値がない、とする孤立主義と一体となっている。だが、その孤立主義志向は、同盟国の対米不信を取り除こうとしたりイランの封じ込めを唱えるとなると、矛盾が露呈する。いずれも対外的に関与しなければ達成できない目標だからだ」

・民主党系リベラル派の見方

 第2は、民主党系リベラル派の外交ジャーナリスト、ファリード・ザカリア氏の意見である。

「今回のトランプ演説は、メキシコとの国境に壁を建設するとかイスラム教徒の入国を禁止するという実行不可能な措置を提示していなかった点では、改善あるいは前進だと言える。だが矛盾の目立つ演説だった。軍事増強を唱える一方で緊縮財政を主張する。人道的な理由で海外への米軍投入には反対しながらも、海外でイスラム教徒に弾圧されるキリスト教徒の救済には熱心な態度をみせる。

 だが全体として、トランプ氏の外交政策はできるだけ外国への関与を避ける孤立主義の傾向をちらつかせる。しかも大衆迎合のポピュリズム的な外交政策と言えるだろう」

・中立の立場の見方

 第3には、ほぼ中立の立場としてタフツ大学の外交問題専門家、ダニエル・ドレズナー教授の意見を紹介しよう。

「トランプ氏の外交演説はオバマ政権の外交の欠点を大きく取り上げ、激しく非難しているが、そこには代替案がほとんど入っていない。

 トランプ氏の基本的な信念は、米国が一国だけ強大で対抗できる勢力がいないときにこそ世界は最も平和で安定した状態になるということだろう。米国の覇権による平和の維持は、米国の対外関与や対外介入を必ずしも意味しない。

 混乱が続く中東に軍事介入して治安を維持することには反対しながら、その一方で中東で米国的な民主主義を拡大させるためにもっと関与すべきだと唱える。トランプ氏の外交戦略の基本は、なんとなく孤立主義をにじませた、論理や一貫性に欠ける国威の発揚にみえる」

 トランプ氏の外交政策演説は米国内でもこのように多様に評価されており、日本にとっての意味を読むことは難しい。だが日本にとって、日米同盟における負担の是非を問われることは間違いないだろう。

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