『習近平「野望人事」と米中関係を読み解く 副主席、副首相、外相人事が意味することとは』(3/7日経ビジネスオンライン 福島香織)、『習近平氏はもう後戻りできない 亜細亜大・遊川和郎教授が語る全人代後の中国』(3/6日経ビジネスオンライン 菅原透)、『「思想」飛ばした李克強、何度も映る王岐山 「習近平の新時代」を映す全人代』(3/6日経ビジネスオンライン 小平和良)について

北の独裁者が米国の攻撃を避けるため、韓国特使に甘いことを言ったようですが、南北合同で米国を騙す算段でしょう。単なる時間稼ぎに使われるだけです。対話に臨むようなふりをして、核とICBMの研究を加速化するつもりです。日米は騙されてはいけません。夏までには攻撃態勢をしっかり整えておかないと。

3/5ブルームバーグ<Kim Jong Un Hosts Seoul Envoys for First Time Since Taking Power>

https://www.bloomberg.com/news/articles/2018-03-05/kim-jong-un-hosts-seoul-envoys-for-first-time-since-taking-power

に対してトランプはツイッターで“We will see what happens!”と発言しました。

さて、王岐山は国家副主席になるのは間違いないと思います。劉鶴の副首相は読めません。

3/5阿波羅新聞網<習近平破常規常委格局生變 王岐山編外常委加正國級?>王岐山は政治協商会議主席の汪洋を除いた常務委員(チャイナ7―1=6人)と同じ列に座ったとのこと。破格の扱いです。彼は8番目の常務委員と言われているとか。楊潔篪と王毅の上司に成るようですが、楊潔篪は江派で実務は王毅に牛耳られるため、窓際族になりそうとのこと。国家監察委のトップは王岐山ではなく趙樂際がなりそうとのことです。

http://tw.aboluowang.com/2018/0305/1079440.html

3/6中国禁闻网<两会惊人一幕:一将军向王岐山敬礼 原来是他?>

范 長龍が王岐山に敬礼する所。范 長龍は胡錦濤系でしたが。彼は、中国共産党中央政治局委員、党中央軍事委員会副主席、国家中央軍事委員会副主席。階級は上将。2017年10月の第19回党大会において党中央委員から外れ、引退が決まった。この全人代と政商会議が終われば引退とのこと。この挨拶は下りた後の処遇がどうなるか分からない(逮捕されるかどうか?)ためだろうと。

https://www.bannedbook.org/bnews/cbnews/20180306/910334.html

福島氏の記事で言うように、国際社会が習の独裁を認めるような論調になれば、中国は益々増長、世界制覇の野望を実現しようとシャカリキになります。いくら経済的な結び付きがあっても批判しなければ。彼らが直さなければ経済的封じ込めをすれば良いでしょう。ロシアと同じく経済制裁するのです。ロシアはその分緩めれば良い。

菅原氏記事で、遊川氏はやはり役人上りだから、現状肯定から入り、大きな絵が描けず、敗北主義者の印象です。出身の外務省当たりの考えが刷り込まれているのでしょう。長い目で見たら日本の国益になるとは思えず、人権についても目を瞑っているとしか思えません。

小平記事で、李克強は習にささやかな抵抗を示したと。所詮、そんな事しかできない、団派と言うエリート集団の限界でしょう。今後習にブレーキをかけるのがいなくなり、大躍進・文革の再来になるかも。反日中国人は日本に逃げて来ないように。

福島記事

劉鶴が副首相になるか注目が集まる(写真:ロイター/アフロ)

国家主席の任期制限を撤廃した習近平の憲法改正について、トランプ米大統領は「(習近平は)大したもんだ。いつか我々も(終身制を)やってみたいもんだ」と絶賛したそうだ。政権内部に厳しい対立があり、思うように指導力が発揮できないトランプにしてみれば、習近平のスピード集権はちょっとうらやましいらしい。米国の大統領は連続二期8年の制限があるし、なにより4年ごとの選挙で有権者の審判にさらされるので、米国大統領の独裁化はなかなか難しい。ちなみに、この発言はフロリダでの共和党スポンサーたちが主催する午餐会でのもので、そこにいた人たちはトランプのこの発言に拍手喝采した。その拍手後にトランプが続けて「彼(習近平)は中国百年来の最も権力のある国家主席である。私が中国を訪問したときは、彼らの対応は極めてよかった」と語ったとか。

昨年12月に発表した国家安全保障戦略で、中国とロシアを、「技術、宣伝および強制力を用い、米国の国益や価値観と対極にある世界を形成しようとする修正主義勢力」と名指しして、かなり挑発的な言葉で戦略的ライバルと位置づけた一方での、「習近平持ち上げ発言」が本音なのか、皮肉なのかは別として、日本として気になるのは、米国と中国の今後の関係である。5日に開幕した全人代(全国人民代表大会)では、政府人事が決定されるのだが、その人事案から中国の対米戦略、米中関係の行方を少し考えてみたい。

王岐山と劉鶴に注目

今回の全人代人事の注目点は、一つは王岐山が国家副主席になるかどうか。二つ目は劉鶴が副首相になるかどうか。この二つの人事は、習近平野望人事ともいえる。

王岐山人事から説明すると、党中央の職務を完全引退した王岐山を国家副主席に起用することで、いわゆる党中央の定年制と関係なく国家の要職について、権力を維持できる前例がつくれる。昨年秋の第19回党大会では、習近平の野望の一つであった「党主席制度復活」はかなわず、王岐山の政治局常務委員残留による「68歳定年制」の内規も崩すことができなかった。それどころか、王岐山の党中央職完全引退は、どれほど優秀であっても、68歳定年制内規は崩れないという、逆の証明になってしまった。

そういう意味では第19回党大会は、決して習近平の「完全勝利」ではなかった。この党大会で妥協を余儀なくされた部分について、全人代において習近平野望憲法と習近平野望人事を実現させて巻き返しを図ろうというところだろう。王岐山が党中央職を完全引退した上で国家副主席職につき、しかも権力、影響力を発揮できれば、習近平が総書記任期を68歳で引退したあとも、少なくとも国家主席職を継続でき、しかも終身国家主席でいることも可能となる。

ただ、国家主席職も国家副主席職も、本来はけっして強い権限をもつ職位ではない。どちらかというと主に外交任務を負う名誉職的な役割であり、国家主席が強い権限を持つようになったのは中央軍事委員会副主席であった楊尚昆が国家主席を兼務し、天安門事件において国家主席名で戒厳令を発令して以降である。国家主席が強い権限を持っていたのではなく、鄧小平の信頼を得ていた軍の実力者が国家主席職に就いたので、国家主席権限が強くなったのである。

天安門事件後、鄧小平は強い権限をもつようになった国家主席職と総書記職が対立することによる党内分裂のリスクを避けるために、江沢民に総書記職と国家主席職、そして実際に最も強い権力を有する中央軍事委員会主席を兼務させる形をとった。国家副主席も同様で、1993年から98年まで国家副主席となった栄毅仁は政治局常務委員どころか非党員の実業家である。

つまり国家主席も国家副主席もその職位自体に権限があるというよりは、誰がなるかで権限が強くなる可能性がある。王岐山の実績、実力を考えると、国家副主席職に就けば、強い権限をもつかもしれないと予測されている。

序列8位の政治局常務委員

全人代開幕前に行われた予備会で、王岐山の席順は現役政治局常務委員と同じ列であり、メディアの報じ方もすでに政治局常務委員に準じた「序列8位の政治局常務委員」扱いであった。

目下の香港メディアが報じているところによれば、王岐山国家副主席起用の最大の目的は対米外交だと見られている。王岐山が1997年のアジア金融危機と2007年のリーマンショックの被害を最小限に抑え込んだ非常に優秀な金融・経済官僚であることは周知の事実だが、特に米国の金融・財界からの評価が高い。リーマンショック当時の米中戦略経済対話でのカウンターパートであったポールソン(当時財務長官)はじめ、米金融・財界人とは現在もしばしば面会し、トランプ政権の趨勢・動向についての意見交換、情報収集にすでに奔走しているとか。

ロイターなどによれば、2月14日は王岐山と駐中国米大使テリー・ブランスタッドが米大使館内で密会していたことが確認されている。習近平の経済ブレーンの劉鶴も同席していたという。ブランスタッドは習近平と親交が厚いことで知られている親中派。ブランスタッドがアイオワ州知事時代、習近平がまだ河北省正定県書記の駆け出し時代に河北省畜産業代表団を率いてアイオワを訪問した時に意気投合し、以降も友人付き合いが続いているとか。

トランプ政権がブランスタッドを駐中国大使に派遣したのは、対中強硬姿勢を打ち出しながらも、習近平への配慮を忘れていない、というサインだといわれており、習近平サイドも、ブランスタッドを通じてトランプへの直接メッセージを送っている。米大使館における王岐山、劉鶴との密会は、米中貿易不均衡問題が主要テーマであるといわれているが、ブランスタッドが昨年9月以来計3回、中国の招待で中朝国境を視察していたことと考え併せると、米中貿易不均衡問題と中朝貿易、北朝鮮核問題もセットで交渉するということだろう。

王岐山と並んで、劉鶴の人事も注目されている。

習近平が経済ブレーンとして頼りにする劉鶴を副首相にしたいのは、一つは首相の李克強から経済政策の主導権を完全に奪うつもりだからだといわれている。すでに経済政策の主導権は習近平が奪っているものの、国務院の経済官僚たちにとっては上司は依然、李克強である。習近平は自分が主導する過去5年の経済政策の失敗は、国務院官僚たちのサボタージュや抵抗によるものと考えているフシがあり、経済通の劉鶴を使って国務院の主導権を奪いたい考えだろう。

筆頭副首相に就くと見られている韓正も、その他副首相説が流れている孫春蘭も胡春華も、経済にはさほど明るくないが、劉鶴はハーバード大学留学経験があり、かつてはゼーリック(当時世銀総裁)とともに世銀リポート「中国2030」をまとめて、注目を浴びた実力派経済官僚で、副首相になればその存在感は李克強を食ってしまうことになる。

「中国2030」を読めば、劉鶴の本来の路線は李克強に近い新自由主義傾向と思われるが、習近平の経済ブレーンとなってからは国家資本主義、新権威主義を肯定する方向に転じた。ロイターなどは、人民銀行総裁候補だと報じており、副首相との兼任説も出ている。となると、金融政策も習近平の代理人である劉鶴が操縦桿を握る。ちなみに、現人民銀行総裁で間もなく引退する周小川はもともと上海閥であり、ときおり、微妙に習近平路線に不満をにじませた発言もしていた。

対米外交のキーマンは

だが、もう一つの劉鶴の副首相起用の狙いは、やはり対米外交といえる。劉鶴は流暢な英語と洗練されたたたずまいで、米国官僚から受けがよい。2月27日から3月3日までの全人代開幕前夜までの訪米で、ムニューシン財務長官、コーンNEC委員長、ライトハイザー通商代表と会談したのも、副首相、あるいは人民銀行総裁候補とささやかれる劉鶴こそが通商問題のカウンターパートであるという印象を与えるためだろう。

対米外交のキーマンとされるもう一人は、外交担当の国務委員の楊潔篪である。第19回党大会で政治局委員となり、今度の全人代では外交担当の副首相となる可能性もある。もし楊潔篪が副首相になれば、98年以来の副首相4人体制から5人に変わるか、もしくは今副首相職候補にあがっている劉鶴、孫春蘭、胡春華のうちの誰かが副首相になれない、ということもある。

習近平が楊潔篪を重く見ているのは、国務長官のティラーソン、クシュナー・イヴァンカ夫妻との関係がいいからだ。ティラーソン自身、CNNのインタビューで「楊潔篪とは非常に親密な関係だ」と話し、楊潔篪に伝えたことは楊潔篪自身が直接、習近平に伝えられることを強調している。

楊潔篪は平昌五輪開会式の背後で、ホワイトハウスを訪問、ティラーソン、トランプ、マクマスター(安保担当補佐官)、クシュナーらと会談しているほか、ティラーソンとは頻繁に電話でやりとりしているようだ。目下は米国の対北朝鮮姿勢を探りつつ、トランプ政権の対中融和策を引き出すのが主な任務のようだ。

さらに王毅の外相続投および国務委員(外交担当)兼務説も、対米外交重視人事だという見方がある。王毅自身は米国政財界にもトランプ政権にも強いパイプがあるわけではないが、日本に対しては相当強い人脈を握っている。安倍晋三とトランプの個人的関係が相当よく、安倍の発言がトランプの外交政策に影響力を持つ可能性もあるとみて、習近平政権も、従来の日本を挑発することで日米離反を画策するやり方から、日本を懐柔するやり方に変えていく必要性も認識しはじめているということか。

王毅の外相職の後継者として、中央対外連絡部長の宋濤が就くのではないかという説もある。その外交実力はまだ不明だが、王岐山、劉鶴、楊潔篪、王毅、宋濤の中で、一番習近平に従順であるといえるのは宋濤だ。つまり完全なお友達人事といえる。主に北朝鮮労働党との交流を中心とした社会主義国との思想交流を担うのだが、逆に言えば、習近平の対北朝鮮パイプは目下、宋濤に頼るしかない状況ともいえる。

「米中新冷戦時代」突入の予感

こうした外交トップメンバーはおよそ習近平に直接指示を仰ぎ、直接報告することができるという意味で、対米外交の操縦桿を習近平が握る布陣ではある。習近平政権がかくも対トランプ政権重視で外交を考えている背景には、喫緊の問題として北朝鮮の核問題がある。が、その後に明らかに米中新冷戦時代への突入の予感があることが大きい。

それはトランプ政権の国家安全保障戦略をみても、またマティス、マクマスター、ケリーといった軍人出身官僚たちを頼りにする政権の性格からみても想像できよう。中国サイドのトランプ政権分析は、軍人出身官僚とティラーソンやムニューシンら国務省、財務省官僚の間では対中姿勢に温度差があり、またクシュナー夫妻の影響力も強い。その一方で、トランプ自身の対中観には未だ定見がないようで、むしろビジネスマンらしく目前のコストやリスク、利害を見極めて態度を頻繁に変える「ディール」ができる人物と見ている。

だからこそ、北朝鮮問題と貿易問題、人民元、その他、南シナ海や東シナ海、インド洋などの安全保障問題を同じテーブルに並べて交渉していく必要があり、対米外交、対米安全保障、対米通商の全部の操縦桿を習近平自身が握りたい、ということだろう。トランプはしばしば習近平個人に対しては歯の浮くような礼賛を送っており、習近平自身はトランプと対等に渡り合えるとの自信をもっているのかもしれない。

当面は王岐山、劉鶴、楊潔篪らの財界・金融界、国務省、財務省ルートを通じて、北朝鮮マターを材料にトランプの対中強硬姿勢を抑えつつ、同時にトランプ政権とうまく渡り合えることを見せつけることで国内での習近平独裁体制固めを加速させていきたい、というところだろう。そう考えると、トランプの冗談とも本気ともとれない、習近平“終身主席”を歓迎するような発言は、習近平にとっては大いに利用価値があるのである。

ただ、トランプは習近平に対してさも友好的な軽口を発している一方で、中国に対して警戒感、敵対姿勢を強めている。それは、国連の対北制裁決議に反して、北朝鮮の船が洋上で中国海運企業の船などと燃料などの積み荷を移し替える「瀬どり」行為が年末から次々と暴かれている中、トランプ政権が中国・香港企業を5社含む27社に対して米国との取引を禁止する措置をとったことや、FBIが一部の孔子学院に対しスパイ容疑で捜査に乗り出したことなどからも、うかがえる。「北朝鮮瀬どり容疑」の中国系5社と習近平政権との関係性は不明ながら、この5社を含む33船舶の入港禁止を国連加盟国に求める制裁リストを米国が提出しようとすることに、中国側は激しく抵抗している。米中は、北朝鮮問題と貿易問題で対等に駆け引きし、ひょっとすると北朝鮮問題については共闘関係を築き、米中融和を演出する場面もあるやもしれないが、それは次の米中対立の先鋭化ステージに移るまでの短時間のものだと私は見ている。

絶対権力は絶対腐敗する

ところで日本で、習近平独裁化が中国にとってはよいことだ、中国の強いリーダーは歓迎だ、と肯定している人がいるのは、非常に残念に思う。安倍政権の独裁化が問題、と目くじらを立てる人ほど、習近平独裁に対しては肯定的であったりするから驚くのである。中には中国大衆は強いリーダーを支持している、という人もいる。ひょっとするとトランプの軽口に同調しているのかもしれない。

だが今、中国で起きている現象は、反腐敗キャンペーンや改革の建前を使っての権力闘争であり、粛清である。これまで中国が歩んできた改革開放とそれに伴う自由化、市場化への流れに逆行するものであり、政治と経済のシステムの後退である。ほとんどの大衆は習近平を支持しているのではなく、その臆病な国民性から強い者に無批判でなびくだけだ。

経済力やツテをもつ中国人は一斉に移民を検討しはじめ、知識層の多くが内心の不満を隠している。例年に比べて異様に会期の長い今年の全人代は、党内政府内でも習近平のやり方に不満を持つ抵抗勢力が多いことの証左でもある。権力は腐敗するが、絶対権力は絶対腐敗する、というのは英国の歴史家ジョン・アクトンの名言だが、独裁権力による反腐敗社会や善政の実現などありえないのだ。

だから良識ある人や社会は冗談でも、独裁を肯定すべきではない。習近平独裁の野望は時代の方向性に合っておらずどこかで必ず挫折すると私は思うが、国際社会が習近平独裁を歓迎、あるいは肯定すれば、その野望が成就する可能性は高まるのである。それが、日本にとってどんなに脅威であるかを、今一度改めて考えてみた方がいい。

菅原記事

中国の国会に相当する全国人民代表大会(全人代)が3月5日、北京の人民大会堂で開幕した。例年より長い16日間の会期中に政府人事を決めるほか、憲法改正案も採択する見通し。注目は2期10年までとしてきた国家主席の任期規定を撤廃する憲法改正だ。

独裁者、毛沢東氏による文化大革命の反省に立ち、鄧小平氏が設けたのが任期規定だ。68歳を超えたら幹部は退任するという慣習や、国家主席の任期が切れる5年前に次期最高指導者を明示する仕組みも取り入れ、独裁者の暴走を防いできた。

そうした「知恵」をないがしろにするかのような今回の任期規定の撤廃。全人代では習近平氏の盟友であり、反腐敗運動の陣頭指揮をとった王岐山氏も「定年」の慣習を破って国家副主席などの要職に就くとの見方がある。

今回の全人代で習氏の「終身主席」への道を開いた後、中国はどうなっていくのか。日本はそんな中国とどう向き合うべきか。中国の政治・経済動向に詳しい、亜細亜大学アジア研究所の遊川和郎教授に聞いた。

3月5日に開幕した全人代では、中国の将来を大きく作用する憲法改正が採択される見通しだ(写真=ロイター/アフロ)

遊川 和郎(ゆかわ・かずお)氏 亜細亜大学アジア研究所教授 東京外国語大学中国語学科卒、1981年9月から83年3月まで上海復旦大学留学。91年10月から94年3月まで、外務省専門調査員として在香港日本国総領事部調査部に所属。改革開放の先進地であった中国南部の経済発展の動向や、香港財閥系企業と中国企業のかかわりなどを研究。日興リサーチセンター上海駐在員事務所長、北京の在中国日本国大使館経済部専門調査委員、北海道大学准教授、同大学大学院教授などを経て現職。著書に「中国を知る」(日本経済新聞出版社)、「香港−返還20年の相克−」(同)など

—今年の全国人民代表大会では国家主席の任期規定の撤廃が正式に決まる予定です。

遊川和郎教授(以下、遊川):習近平氏による「終身独裁」を許していいのか、というのが今の大方の見方でしょう。それは確かに良いことではない。でも、そうせざるを得ない現状も中国にはあるのです。

—長期政権にならざるをえない理由があると。

遊川:2012年秋に中国共産党トップである総書記に就き、翌年春の全人代で国家主席に選出された習氏は反腐敗運動を強力に進め、権力基盤を一気に固めてきました。政敵を次々に撃ち落とす、過酷な政治闘争をやってきた以上、もう権力を手放すことは絶対にできません。退任した後の韓国の大統領を見ても分かるように、習氏も平和な引退生活なんてできません。生きるか死ぬかの権力闘争です。おそらく、習氏もそれを覚悟の上で中国の最高指導者になったんだと思います。もう後戻りはできません。

「創業家を守る」

—そこまでして習氏がやりたいこととは。

遊川:共産党政権の存続です。今年は中国が改革開放政策を取り入れてから40周年ですが、この40年の間に中国は確かに目覚ましい経済成長を遂げた。しかし、その裏側では貧富の格差が広がり、党内に腐敗が蔓延した。このままでは共産党の存続が危うい。習氏はそう危機感を募らせた。彼は「世直し」をしてもう一度共産党政権存続の基盤を再構築することが自分の一番の使命だと考えています。

習氏の父親である習仲勲氏は毛沢東氏らと1949年に共産党政権を樹立したメンバーの一人です。つまり、習近平氏は今の中国を作り上げた「創業家一族」。創業家を守る、という強い覚悟の下で、党総書記と国家主席のポストに就いた。

一党支配体制には欠点があります。正しいことをきちんとやろうとすれば、民主主義のような合意形成のコストをかける必要もなく、目標を達成するまでのスピードも速い。しかし、方向を修正しようとすると、なかなかできないのです。一党独裁は変えないにしても、一種の擬似政権交代を起こさないと誤りを正すことはできません。

その意味で、改革開放を進めた鄧小平氏は、文化大革命の混乱に陥れた毛沢東氏の「極左」の誤りを修正するための擬似政権交代を起こした。そして、習氏は鄧小平時代に始まった改革開放の中で生じた誤りを修正する擬似政権交代を進めようとしているのです。

習近平氏は擬似政権交代を起こしている(写真=AP/アフロ)

—創業家を守る、という強い覚悟をもって。

遊川:そうです。皇帝になることが目標でやっているわけじゃない。

ただし、先述のように死ぬまで 権力を握り続けないといけません。そのためにどうするか。一つは自分に絶対忠実な部下を選び、院政を敷く。もう一つは自分が今の地位にとどまり続ける。習近平氏は今の時点で、二つ目の方を選択したのでしょう。

信頼できる部下はいます。昨秋の党大会では側近をどんどん引き上げた。最高指導部を形成する7人の政治局常務委員だけでなく、次期指導部入りの候補者になり得る25人の政治局委員にもかつての部下を大量に送り込んだ。しかも、中央委員という要職を飛び越えて、いわば、「ヒラ」の党員から政治局委員に2回級特進させた例もある。これまででは考えられない人事です。

でも、これらの人たちは「促成栽培」です。誰もが納得できるような実績に乏しい。2期10年というこれまでの任期に従えば、習氏の退任は22年です。それまでに後を任せられるリーダーに育つかといえば、不確実性が高い。だから、習氏は憲法を改正し、任期規定を撤廃し、5年後も自分でやる道を切り開いた。

—強引とも思えるやり方に、党内で反発する声も出るのではないでしょうか。

遊川:習氏の独裁がより強化され、政権基盤は盤石になるとの見方もあります。でも、みんながこれで良いと思っているかといえば、もちろん、そうではありません。反腐敗運動で地位を追われた人たちや、既得権益を奪わられた人たちに加え、いわゆる良識派の中にも「ちょっとやりすぎじゃないか」と思っている人たちはいるでしょう。

ただ、今の状況の中では正面からの異議申立てはできない。となると、どういうことが起きるか。消極的な抵抗、面従腹背でなかなか動かない、サボタージュが起きる。

あるいは、政敵は政権の弱いところ、脆弱性を突くことを考える。例えば、株価の暴落など経済ショックも指導部に打撃を与えるために企てられるといった陰謀説がまことしやかに語られる。

また習氏は寝首を掻かれないよう常に警戒していなければならない。外部からは何が起きているのか窺い知れませんが、体制内部は常に極度の緊張状態でしょう。

—習氏を支えるのは、やはり、革命世代に連なる人たちですか。

遊川:彼らが今も習近平氏をどこまで支持しているのかは分かりません。党の存続が前提であることは分かっていても、既得権益を奪われたり反腐敗で摘発された人たちもいるし、ここまでやる必要があるのか、と思っている人たちもいるでしょう。

だから、習氏は民衆の支持も必要です。貧困の撲滅や環境対策など実績を示そうとするのもそのためです。確かに、習近平政権で格差に対する不満は緩和されたように見えます。5〜10年前の一般的な見方は格差はどんどん広がり、中国はいずれ行き詰まるというものではなかったでしょうか。今も格差問題は解決したわけではありません。ただ、今の庶民の不満は、金銭的な格差そのものというよりも、生活上の不便さに代表される社会制度の問題点に起因している。

胡錦濤総書記・温家宝首相の前指導部では最低賃金をどんどん引き上げたり、農業税を撤廃したり、と「弱者に優しい政策」をとってきた。ただ、党・政府をはじめ権益集団が好き放題にやってきたので弱者対策は焼け石に水すぎなかった。習近平政権がやっていることは「強者に厳しい政策」です。(違法所得などがなくなることで)青天井の所得が抑えられ、結果的に格差への不満は改善された。ただ、長期政権は常に求心力を維持するための政策を打ち出していかなければならない。

バチカンが握る台湾統一

—今後、習近平政権が求心力を高めるために取る方策は何でしょうか。

遊川:大きく2つあります。一つは国際社会におけるリーダーの地位を得ること。これは共産党政権の正統性をアピールする最大の材料でしょう。昨秋の党大会で2035年、2050年をその達成目標としたわけです。(広域経済圏構想である)一帯一路の推進もこの文脈で考えるべきでしょう。

もう一つは台湾統一です。習氏がこれをできれば、香港返還に道筋をつけた鄧小平氏を超える存在となり、最高の権威づけになります。逆に台湾が独立宣言でもしようものなら、メンツ丸つぶれで習近平体制に対する攻撃材料になります。

中国としては、経済面から台湾の現政権に圧力かけるとともに、台湾を国家として承認している国を世界中でなくすれば外堀を埋めることになります。昨年にはパナマが台湾と断交しました。今、台湾を承認している20カ国のうち、一番、影響力が大きいのがバチカン(ローマ法王庁)。バチカンと中国は信仰の自由を巡る対立から1951年に国交を絶っていますが、バチカンのフランシスコ法王はアジアでの信者獲得をにらみ、中国との関係改善に前向きな姿勢を見せています。もし、バチカンが中国と国交を回復すれば、キリスト教国が多い、ほかの台湾承認国も中国になびくかもしれません。

—「習一強」時代の日中関係についてはどう見ますか。

遊川:日中関係は中・長期的に不安定化せざるを得ないでしょうね。

長期政権になれば、外交的には一貫した戦略に則って進めやすくなります。今の中国外交の大きなテーマはいかにアメリカと折り合うか。先ほど、述べたように、中国の最終目標はアメリカを抜いて世界ナンバーワンになることです。理想は、日本がアメリカから離れて、中国の側についてくれるのが一番、良い。  でも、日本は中国を安全保障上の大きな脅威と捉え、安倍政権は日米同盟の強化でこれと対峙しようとしている。中国からすれば、そんな日本と仲良くすることは考えられないのです。

—日中関係は足元では改善しているようにも見えますが。

遊川:それは、今、中国が直面している外交問題(関係悪化)が、対インド、対オーストラリア、そして朝鮮半島だからです。今はわざわざ日本と関係を悪化させるのも得策じゃない。喧嘩をするタイミングではない、と考えているだけです。

—日本企業はそうした中国とどう向き合うべきでしょう。

遊川:中国企業をパートナーとして引き込むことではないでしょうか。中国は「世界の工場」から「世界の市場」に変貌を遂げました。中国に進出すれば、稼げる時代ではもうありません。日本にいながらでも、中国のお金を取り込むことはできます。インバウンドがそうでしょう。中国というアウェーに飛び込まなくても、日本というホームで戦うことはいくらでもできるのです。

小平記事

全人代の冒頭で李克強首相が政府活動報告を行ったが……(写真:新華社/アフロ)

「中国共産党第19回全国代表大会で、習近平(シー・ジンピン)『新時代の中国の特色ある社会主義』の歴史的地位が確立した」

中国の全国人民代表大会(全人代)が3月5日、開幕した。開幕直後には例年と同様、李克強(リー・クォーチャン)首相が政府活動報告を行い、過去5年の活動の振り返りと今年の政策の方向性、政府の施策について演説した。

演説が始まってから数分後、過去5年の活動の回顧が始まったばかりのところで、李首相は冒頭のように発言した。「社会主義」の後に続くはずの「思想」の2文字を李首相は発しなかったのだ。

今回の全人代で大きな話題となっているのが、憲法の改正案である。李首相の政府活動報告の直後には、憲法改正案の説明もなされた。直近では、2期以上連続して就いてはいけないとされていた国家主席の任期制限を撤廃する点に注目が集まっている。加えて、毛沢東思想や鄧小平理論と並んで習近平「新時代の中国の特色ある社会主義」思想も憲法に盛り込まれる。

習近平「新時代の中国の特色ある社会主義」思想は毛沢東思想や鄧小平理論と並んで憲法に盛り込まれることからも分かるように、これで1つの言葉だ。会場で配布された政府活動報告の原稿にも「思想」の2文字はしっかりと書かれている。

習近平「新時代の中国の特色ある社会主義」思想は、政府活動報告の中でその後も数回登場し、李首相は冒頭以外では「思想」という言葉をきちんと発している。冒頭で「思想」を発しなかったのは、単なる読み飛ばしの可能性がもちろんある。

ただ重要な「思想」の2文字を飛ばしたのは事実である。習近平国家主席の権威が高まるにつれ、序列2位である李首相の存在感は低下してきた。革命元老の子弟である太子党の習国家主席とエリート集団の共産主義青年団(共青団)出身の李首相は同世代で、トップの座を争ったライバルだ。全人代の直前には、李首相の側近である楊晶・国務委員が重大な規律違反で解任されたばかりだ。

ここから先は推測に過ぎないが、習氏が憲法改正により終身の国家主席となる可能性が出てきたことに加え、毛沢東と並んで自らの名を冠した「思想」を憲法に入れようとしていることに対し、李首相がささやかな抵抗を試みたようにも見える。

3月5日に開幕した中国の全人代。今年は政府活動報告に続き憲法改正案の説明もあった

李首相の「思想」飛ばしの真意は分からないが、今年の全人代は例年と異なる部分が多いのは確かだろう。

政府活動報告の後に憲法改正案の説明があったこともその1つ。また既に報じられているように、今年は会期が1週間ほど長く、20日に閉幕する。政府活動報告と合わせ、憲法改正も審議する必要があるためだ。

現最高指導部メンバーの後に映し出された王岐山氏

さらに昨年秋の共産党大会で党の最高指導部である政治局常務委員から外れた王岐山氏が、現在の最高指導部メンバーに続いて何度もスクリーンに映し出された。

習国家主席の盟友とも言われる王氏は、昨秋の党大会前には党の内規である年齢制限を超えて常務委員を続投するともささやかれていた。結局、常務委員からは退いたものの、その後、湖南省の全人代代表に選出された。常務委員経験者がその後、代表に選出されるのは異例だ。

全人代では、新旧の党最高指導部メンバーが時折、一人ずつアップで映し出される。習国家主席から始まり、まずこれまでの5年間を率いてきた以前の最高指導部メンバーが映り、その後、新メンバーの顔が映し出される。王氏は新メンバーで最も序列が低い韓正氏の後に映し出されていた。

党の政治局常務委員ではないものの、現在の最高指導部と同様の位置付けであり、引き続き国の要職に就くことは確実なように見えた。

全人代の初日の光景は、中国の今後の体制がこれまでとは一線を画す「習近平の新時代」が到来したことを告げているようにも見えた。李首相は政府活動報告の中で「われわれはあくまでも平和的発展の道を歩み、新型国際関係の構築を促していく」と述べた。世界への関与をさらに強めようとしている中国を、表面的な理解で恐れるだけでなく、より深く知る努力が求められそうだ。

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