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『ロボット100万台と工員14人飛び降りの因果 鴻海の中国工場で、まずは工員7万人を削減』(6/3日経ビジネスオンライン 北村豊)

98年~2000年まで深圳で勤務しました。その時にビール壜の洗壜工場へ見学に行きました。台湾人の経営という事でその非人間的なやり方に吃驚しました。当時は外省人と本省人の区別もついていませんでしたので、多分外省人が経営していたのだと思います。従業員の宿舎は、コンクリ-トでできた建物の大部屋に3段ハンモックを吊るし、ぎゅうぎゅう詰めにし、それでも足りなければ廊下に莚を敷いて寝かせていたりしていました。(深圳は暑い地域です)。仕事は市場から帰ってきた壜を手洗いするのですが、出来高払いで1本0.01元。しかも手袋をしないので、手がふやけてしまいます。いくら山奥から人を引っ張ってきても、当時逃げ出す人は多かったです。

鴻海の郭会長も勿論、外省人です。外省人(蒋介石が連れて来た台湾に住む中国人の子孫)と本省人(台湾人)では性格が違います。Facebookの記事を見ましたら、蒋介石が台湾に逃げ込んできて70年近くなりますので、外省人の本省人化、本省人の外省人化が出てきているとありましたが、大勢は外省人(台湾に住む中国人)と本省人(台湾人)と思えば良いのでは。鴻海の郭会長のやり方は洗壜工場のやり方と同じだったのでしょう。ですから、14人も飛び降り自殺(?)者が出たのです。普通は2,3人自殺者が出れば、監督官庁やマスコミが放っておくはずがありません。地方政府は雇用で文句が言えないのと、同じ中国人同士賄賂付けになっていたと思います。流石に14人にもなって放置できなくなったのでしょう。最初の飛び降りをした“馬向前”の後の報道がされたのかどうか?中国では金で報道させないこともできますので。

鴻海のシャープ買収で約束はすぐに反故にされました。当たり前です。日本人は中国人の性格を理解していないからです。契約とか約束とかは自分に都合の良いときだけ守ると。「騙す方が賢く、騙される方が馬鹿」という民族的特質を持ちますので。

http://www.sankei.com/economy/news/160514/ecn1605140026-n1.html

http://www.itmedia.co.jp/business/articles/1605/23/news062.html

人員合理化のための機械化・ロボット化は合成の誤謬を引き起こすでしょう。マクロで見れば、失業増、消費減となります。中進国の罠と北村氏は言っていますが。郭会長が台湾を愛するなら、中国大陸でなく、台湾に投資すべき。元々安い人件費狙いで大陸に進出したはずです。2000年に上海にいた台湾人カメラマンに聞いた話ですが、中国人の女子大生を囲っているとのこと。小生にも別な女性を紹介すると言われましたが勿論断りました。経営者で数人囲っているのは当り前です。台湾から離れて女性囲い狙いもあったのでしょう。言葉が通じますので。しかし、今や大陸の人件費も上がり、ロボットを増やすのであれば、別に大陸で投資する必要はありません。郭会長は台湾人ではなく、中国人だからでしょう。

記事

中国の国営ラジオ放送局“中国人民広播電台(中央人民放送)”のウェブサイト“央広網(ネット)”は5月26日付で、「ロボットの展開で富士康昆山の工員11万人が5万人に削減」と題する記事を掲載した。「富士康昆山」とは“富士康科技集団(英文名:Foxconn)”(以下「富士康」)の江蘇省“昆山市”にある工場を指す。その概要は以下の通り。

ロボットが人に取って代わる現実

【1】ロボットが人間に取って代わることは、いまや趨勢ではなく、広く展開されている現実である。富士康はすでにロボット技術を採用し、昆山工場の工員を2013年の11万人から5万人まで削減し、人件費の大幅な削減に成功した。

【2】典型的な労働集約型企業である富士康に対する外部の印象は、無数の生産ラインがあり、出入りが激しい工員と厳しいコスト管理下で行われる連続の超過勤務である。しかし、周期的な工員不足、人的コストの上昇に伴う工場の遠隔地への移転などの各種圧力に直面して、富士康は生産形態の転換なくしては破滅に至ることを認識していた。それなら、どうやって行員数を半減して、営業額を増大させることができるのか。

【3】仮に一般工員の給与を年間5万元(約85万円)、工業用ロボットの市場価格を約12万元(約204万円)とした場合、生産ラインの改造を通じて、多数の工員をロボットに置き換えることができる。ロボットは24時間操業を可能とするし、誤差は小さく、製品率はさらに高いので、3年程度で富士康昆山工場は削減あるいはその他の方法で工員を半分に減らすことができる。

【4】江蘇省昆山市のほか、浙江省、広東省などの東部、東南部の経済発展地区でもますます多くの地域でロボットが人に取って代わる現象が出現している。広東省の2015年を例に挙げると、ロボットの保有量は4.14万台で、全国の18.8%を占め、全世界の2.49%であった。そのうち、2015年に新たに増加したロボットは1.82万台で、全国の4分の1、全世界の6.9%を占めた。一口で言えば、広東省はロボットが人に取って代わる有力な省になりつつある。

【5】ロボットの導入が盛んになっている背景には、労働力市場の矛盾が浮かび上がる。2015年の1~9月に広東省の定点観測企業2万社における工員不足の平均人数は38人であった。「世界の工場」として名を馳せた“東莞市”はかつて工員不足に悩んだが、ロボットの導入後は工員不足が大幅に緩和された。

【6】コストの上昇もロボットの導入を後押ししている。2008年より前の30数年間、珠江三角州の労働者の賃金水準は年に100元(約1700円)程度しか上昇しなかったが、2008年以降の7年間に広東省“広州市”の最低賃金水準は月額800元(約1万3600円)から1895元(約3万2200円)に上昇して毎年1.2倍の伸びを示したが、製靴、家具などの業界では倍増したところもあった。仏山市経済・情報化局副局長によれば、普通工員の平均月給が3500元(約6万円)として、ロボットを導入した後に、ロボット1台が平均して工員8人分の仕事をすれば、1年間で30万元(約510万円)の人件費を節約することができる。また、ロボットを導入すれば、製品の品質が向上する。ロボットは精度が安定しており、製品の品質を大幅に高めることができる。

【7】多くの人々が心配するのは、ロボットが導入された後に流れ作業の生産ラインの工員たちが大挙して失業することになるのではないかということである。ある家具生産工場を例に挙げれば、1台20万元(約340万円)のロボットは年俸10万元(約170万円)の熟練工2人に取って変わることができる。言い換えれば、1年間でロボットの購入費用を回収できることになる。あるネットユーザーは富士康昆山工場で6万人の工員が削減された記事を見て、工員の失業時代が間もなく到来するという思いを深くしたという。

シャープ買収の台湾・鴻海が推進

 さて、今年3月30日に台湾の“鴻海精密工業股份有限公司”(以下「鴻海精密工業」)が3888億円の第三者割当増資を引き受ける形で日本の家電大手であるシャープを買収したことは大きな話題となったが、富士康はその鴻海精密工業が中国本土へ投資することを目的に設立した企業である。実質的には台湾の鴻海精密工業を中核とする“鴻海科技集団”が、中国では富士康という企業名で運営されているもので、鴻海科技集団と富士康は表裏一体の関係にあると言ってよい。富士康はアップルの委託を受けてiPhoneやiPadを生産していることで知られるが、アップルのみならず世界の大手メーカー各社から電子機器の生産を請け負う世界最大の電子機器受託生産サービス(EMS)企業である。なお、鴻海精密工業は米フォーチュン誌の世界企業番付「Fortune Global 500」2015年版の31位(2014年版では32位)にランクされている。<注>

<注>2015年版で鴻海精密工業の同業者は、韓国サムソン13位、米国アップル15位。ちなみに、日本企業で最高位のトヨタ自動車は9位。

鴻海精密工業は1988年に富士康の名義で対中投資を行い、広東省“深圳市”に最初の工場を建設した。その後、冨士康の業績は順調に拡大したことから、深圳工場だけでは生産が需要に追い付かず、同じ広東省で深圳市に近い“恵州市”、“中山市”、“仏山市”などの珠江三角州周辺に工場を建設したが、さらなる増産の必要性から中国各地に工場を建設し、今では中国全土に合計35カ所もの工場を持つに至っている。工場数の増大に伴い工員数も飛躍的に増大し、中国国内だけで最高時は150万人に達していたと考えられている。

 鴻海精密工業が上述した世界企業番付「Fortune Global 500」に初めてランクインしたのは2005年版で371位であった。この輝かしき栄誉を礎として、さらに上位を目指して業績の拡大を図っていた富士康科技集団を突然襲ったのが、2010年1月から11月までの11か月間に連続して発生した14件の工員飛び降り事件だった。

若手工員14人が飛び降り

 最初の事件が発生したのは1月23日の早朝だった。深圳市“宝安区”にある富士康の“華南培訓処(華南訓練所)”の宿舎で19歳の工員“馬向前”が階段の上り口で死亡しているのが発見された。警察は馬向前の死因を高所から墜落したことによる外傷性ショック死と断定したが、これは宿舎の高い所から飛び降りたということを意味していた。しかし、馬向前の遺族は馬向前がすでに会社へ辞表を提出済みで、2月9日には富士康から去る予定だったとして、警察発表の死因に異議を唱えてメディアに訴えたことから事件は大きく報じられ、冨士康は世論の厳しい追及の矢面に立たされることとなった。但し、メディアが事件を大きく報じた裏には、冨士康が台湾の投資企業であることも大きく影響していた。

 この事件を皮切りとして、わずか11か月間に工員の飛び降り事件が合計14件発生したのだった。その内訳は、3月11日(飛び降りた工員の年齢・性別:20歳・男)、3月17日(不明・女)、3月29日(23歳・男)、4月6日(19歳未満・女)、4月7日(18歳・女)、5月6日(24歳・男)、5月11日(不明・女)、5月14日(21歳・男)、5月21日(21歳・男)、5月25日(29歳・男)、5月26日(23歳・男)、8月4日(22歳・女)、11月5日(22歳・男)であった。なお、彼らが飛び降りた結果は死亡12件、負傷2件であったが、このうち自殺あるいは自殺の可能性と判断されたものは8件で、不明が4件だった。

 上記から分かるように飛び降りた工員は“80后(1980年代生まれ)”あるいは“90后(1990年代生まれ)”と呼ばれる若者であり、彼らの全てが農村の出身者で、冨士康へ入社してから時間はそれほど経過していなかった。彼らは富士康の厳しい管理体制の下で機械のように単純な生産作業に長時間従事することで精神のバランスを崩し、思い詰め、逃げ場を求めて飛び降り自殺に走ったものと考えられる。

employees in a Chinese manufacturing

2010年、若手工員の連続飛び降り事件が発生した際、鴻海は広東省の工場を国内外のメディアに公開した(写真=ロイター/アフロ)

2010年当時の調査によれば、富士康の給与は的確に支払われていたし、工員に対する福利厚生も他社に比べて遜色のないものだった。但し、労働環境は非人間的な単純作業の繰り返しであり、トイレに立つ回数すら制限する奴隷労働に近いものだった。富士康の本拠地である深圳市の工場では、わずか3平方キロメートル足らずの土地に40万人以上の工員がひしめき、退勤時間には深圳市で最も繁華な地区以上に込み合う様相を見せていた。富士康が工員に求めるのは、ひたすら速度と効率であり、生産ライン上では、自由な発言や携帯電話を受けることは禁止され、交代者が来ない限り持ち場を離れることは許されなかった。これに加えて、工員を監督する現場管理者の態度は極めて悪く、横柄であった。工員が命令に従わない時には暴力を振るい、暴言を吐き、首にするぞと脅して従わせる。要するに富士康の職場には働くことの喜びもなければ、夢も希望も見い出せなかった。

 中国がまだ貧しかった時代に生まれ育った“60后(1960年代生まれ)”や“70后(1970年代生まれ)”の工員たちは、富士康のような外資系企業の工場で働くことで、国内企業よりも良い給与を得ることに喜びを感じた。しかし、物心付く頃に中国が飛躍的な経済成長を遂げた“80后”や“90后”の工員たちは、一人っ子政策が生み出した「一人っ子」であるために親に大切に育てられた。このため、彼らは厳しく単調な労働に耐える力が無かったし、深圳市のような大都市の生活に憧れる抱いて富士康へ入社したのだった。そうした彼らが夢と現実の乖離に絶望を感じて、飛び降り自殺を図ったことは想像に難くない。

3年以内に100万台のロボットを導入

 メディアは富士康で起こった14件の連続飛び降り事件を“14連跳”と名付けて、富士康叩きに狂奔した。富士康は全ての工員宿舎に自殺防止ネットを設置し、70人の心療内科医を常駐させることで、工員の飛び降りを抑止する措置を講じた。その後、富士康は工員に対する大幅な賃上げを実施し、1日当たりの超過勤務を3時間に制限する規定を作ることで、“14連跳”による企業存亡の危機を乗り越えた。この“14連跳”を契機として、2011年頃に鴻海精密工業の創業者で、鴻海精密工業と富士康の“董事長(会長)”を兼ねる“郭台銘”が提起したのが、機械が人に取って代わる“機器人(ロボット)計画”だった。郭台銘は3年以内に100万台のロボットを導入して富士康の生産ラインを改良すると公言したのだった。

 郭台銘がロボット開発計画を提起したのは2006年だった。彼は米国マサチューセッツ工科大学から技術者グループを招聘して富士康の生産ラインに適合するロボットの開発を要請した。2007年には富士康の「AR(Automation Robotics:自動化ロボット)事業部」を深圳市に発足させ、本格的に工業用ロボットの研究開発をスタートさせた。2008年には開発された富士康製ロボットを生産ラインへ投入してテストを行い、2009年には“Foxbot”と命名された富士康製ロボット15台が完成し、塗装、組立、運搬などのラインに配備された。こうした過程を経て、郭台銘は日産1000台のペースでロボットを生産すれば年間30万台という確信を持ち、2011年に3年以内に100万台のロボット導入を公言したのだった。

2015年5月24日付の上海紙「新聞晨報」が報じた富士康の関連記事によれば、富士康は2010年から2015年5月までに、3億元(約51億円)を投入して昆山工場生産ラインの自動化改造を進めており、すでに採用している自主開発のロボットは2000台以上に上っている。同紙に掲載された富士康の自主開発ロボットには、“富士康深圳一号”の文字が書かれていた。

 上記の記事には、“中国機器人産業聯盟(中国ロボット産業連盟)”の統計データが紹介されていた。同データによれば、2014年に中国市場で販売された工業用ロボットは約5.7万台で、前年比で55%増大した。5.7万台は全世界の販売量の4分の1を占め、中国は2013年・2014年と2年連続で世界一のロボット市場となった。このうち、中国の国内企業のロボット販売量は1万6945台で前年比76.6%の増大、外資企業のロボット販売量は約4万台で、前年比47%の増大であった。

中進国の罠に、はまり込む

 上述したように、中国では人間に取って代わるロボットの導入が積極的に進められているが、その大部分は設備投資の資金に余裕がある、あるいは、資金を借りる能力のある大企業が主体である。これに対して、中小企業は銀行からの借入は困難で、資金調達能力に限界があるため、ロボットを導入したくてもできない状態にある。こうした状態が進めば、ロボット導入を果たした大企業はますます富み、導入ができない中小企業はますます窮することになり、企業間格差はより一層拡大しよう。

 一方、ロボット導入が進めば、大量の工員たちが職場を追われ、失業者が増大することは火を見るよりも明らかである。中国では経営破たんしながら政府や銀行の支援を受けて存続している国営のゾンビ企業を整理する方針が出され、数百万人規模の失業者が出る可能性が高い。ロボット導入はさらなる失業者の増大を加速させることになるが、中国政府はこうした失業者にどのように対処する積りなのか。その根底にあるのは、中国政府が最低賃金水準を年々大幅に引き上げたことによる賃金上昇が企業業績を悪化させ、人件費節約のためにロボット導入を余儀なくさせたことにある。

 こうして見ると、中国が中進国の罠(わな)にはまる可能性は極めて高く、容易には罠から抜け出せないように思えてならない。

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『トランプはなんとイスラム教徒にも大人気だった 日本では伝えられないアメリカの現実』(6/1JBプレス 部谷 直亮)について

本記事を読みますと、イスラム教徒の中でのトランプ支持者は①経済活性化②イスラムの教えに沿っていること③充実した医療保険を理由に挙げています。イスラム教徒は民主党支持者が多いので、数少ない共和党支持者の中でのトランプ支持者ですから総数はグッと少くなるのでは。でもトランプの支持率がヒラリーを抜いた記事もありました。ヒラリーはFBIの聴聞もあり、追い込まれています。また、サンダースが民主党候補になれない場合(特別代議員の存在もあり、サンダースが候補になることはないでしょう)、独立候補となる可能性もあります。共和党で独立して候補となる人はいません。ヒラリーにとっては苦難の道が続くと思います。

フィリピンのドウテルテの大統領就任は6/30ですが、大分発言も慎重になってきました。中国は南シナ海の問題で味方につけようといろんな工作を仕掛けるでしょうが、アキノ大統領のしてきた米軍の駐留、南シナ海領有権問題の国際司法裁判所の判決(ドウテルテ大統領就任前に判決が出る可能性もあり)は守るでしょう。6/1Newsweek記事では見出しが「ドゥテルテ次期フィリピン大統領 米国に依存せず」ですが、読みますと南シナ海については多国間協議を支持していますし、自主防衛の力を付けて行くというのは方向として正しいのでは。

http://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2016/06/post-5221.php

http://www.nikkei.com/article/DGXNASGM2800W_Y4A420C1EAF000/

ドウテルテ同様、トランプも今後発言を軌道修正していくと思います。

日本の海外駐在特派員はロクな取材先を持っていないでしょう。せいぜい海外の新聞やTV、ネット記事を翻訳して、さも自分が調べたような顔をしているだけです。日高義樹氏のように取材先を持って自分のTV番組の中で放送できる人は稀です。トランプが大統領になるかもしれないので官民挙げての人脈作りをしていかないと。大統領にならなくても何かで役に立つでしょう。ビル・クリントンはアーカンソー州知事の時には日系企業を誘致して親日的でしたが、ブッシュ父から引き継いで大統領になったときに経済が悪化していたのと中国からの金で日本軽視の姿勢を取りました。日本の人脈作りが下手なせいです。ま、日本人は中国人のようにスマートに賄賂を贈ることは出来ませんから。ヒラリーが大統領になれば、中国宥和策を採るでしょう。

記事

Trump-12

米カリフォルニア州フレズノで開いた集会で演説する米大統領選の共和党候補ドナルド・トランプ氏(2016年5月27日撮影)。(c)AFP/Sandy Huffaker〔AFPBB News

 2015年12月、イスラム教徒を完全に入国禁止にすると宣言したトランプ候補。だが驚くべきことに、在米イスラム教徒団体が2016年3月に行った世論調査では、共和党系候補ではトランプ候補が最も支持を得ているという結果が出た。

 米国でもこの結果は意外感をもって受け止められたようで、トランプ候補を支持するイスラム教徒のグループなどへの各種インタビューが行われている。

 一体なぜトランプ候補がイスラム教徒から支持されているのか。実はその支持の背景にこそ、日本人の多くがトランプ旋風を読み違えてしまった原因がある。

最もイスラム教徒が支持する共和党候補

 米イスラム関係評議会協会(CAIR:Council on American – Islamic Relations)は、在米イスラム教徒の間では名の通った中立的で穏健な団体である。

 トランプ候補が「入国禁止宣言」を行った際にはすぐさま批判を行い、その後も幹部が、トランプ候補をはじめとする共和党候補を繰り返し批判している。

そのトランプ候補に批判的なCAIRが今年3月、全米のイスラム教徒1850人に世論調査を行った。その結果、最も支持する大統領候補は、第1位クリントン候補(47%)、第2位サンダース候補(25%)、第3位トランプ候補(11%)、第4位ルビオ候補(4%)、第5位クルーズ候補(2%)、第6位ケーシック候補(1%)となった。

 在米イスラム教徒の多くは民主党支持者(この調査でも67%が民主党支持、18%が共和党支持と回答)なので、クリントン候補、サンダース候補が首位を占めることは当然であろう。一方、米国内で議論を呼んだのは、トランプ候補が共和党候補で最も支持を集めたことである。トランプ候補のイスラム教徒入国禁止宣言やテロリストの家族も皆殺し発言を強烈に批判した、ルビオ、クルーズ、ケーシックの3候補はトランプに惨敗してしまったのだ。しかも、前二者は地元ですら負けている。CAIRがトランプに批判的な団体であることを考慮すると、まさに意外な調査結果であった。

 また、世論調査で定評のあるギャラップ社の調査でも、CAIRとほぼ同様にトランプ候補は在米イスラム教徒の13%から支持を得ている。

支持の理由は経済と社会保障への対応

 なぜトランプ候補はイスラム教徒から支持を受けるのか。その大きな理由は経済と社会保障への対応である。

 CAIRの世論調査で共和党支持のイスラム教徒に「大統領選挙の候補者選びで最も重要な論点は何か」と尋ねたところ、第1位に経済(38%)、第2位はイスラム教徒への差別(14%)、第3位は医療(12%)、第4位は外交(10%)となった。

 要するに、1兆円を超える資産を稼ぎ出した経営者としての実績を持ち、国内経済再建を強烈に掲げるトランプ候補に、経済問題を重視するイスラム教徒たちの支持が集まっているのである。

 実際に、サジド・タラルという在米イスラム教徒によるトランプ後援会会長は、「トランプが支持されている理由は経済」だと言う。トランプ候補の小さな政府、ビジネス推進政策、財政政策こそが、米国を経済的混乱から救うことができると話す。

 CAIRの行政関連業務マネージャーを務めるロバート・マッカウもCNNの取材に対し、「イスラム教徒でトランプを支持する人間の大部分は、中小企業経営者のための減税などの経済政策に引き寄せられている」と指摘している。

 また、トランプ候補は共和党候補では珍しいことに、オバマ大統領が推進してきた国民皆保険制度に好意的である。彼は、「オバマケアよりも素晴らしい皆保険制度を実現させる」と主張しており、これが医療の充実を願うイスラム教徒の願いに叶っているのだろう。

共和党とトランプ候補はイスラム的価値観を体現している

 各誌が行った、イスラム教徒へのインタビュー等からも興味深い結果が出ている。

 イスラム教徒による共和党系団体「共和党イスラム教徒連合」の代表を務めるパキスタン系米国人で女性弁護士のサバ・アハメドは、USAトゥデイ誌のインタビューで以下のように語っている。

「自分は2011年までは民主党員だった。だが、よくよく考えれば共和党にこそイスラムの価値観があると思い、共和党員になった。すなわち、中絶反対、反同性婚、伝統的な家族制の維持、自由経済および貿易の推進である。イスラムの価値観はまさしく(米国の)保守主義と重なる。

 トランプ候補は、最終的にはイスラム教徒入国禁止政策を撤回するだろう。実際、つい最近、彼は入国禁止政策を“単なる提案”だと言っている。自分は、共和党候補者が誰でも気にせずに支持し、他の在米イスラム教徒にも支持を呼びかけるつもりだ」

 つまり、トランプ候補の問題発言は選挙戦で注目を浴びて勝つためのレトリックに過ぎない、共和党こそイスラムの価値観と親和性があるから支持する、というのがアハメド氏の主張である。

3人のイスラム教徒たちへのインタビュー

 またタイム誌は、CAIRの調査を受けて、トランプを支持する3人のフロリダ在住のイスラム教徒にインタビューを実施した。これらのインタビューも、イスラム教徒たちがなぜトランプを支持するのかを雄弁に語っている。

 まず、37歳の無党派層のアダム・ウォーシャワーは、次のようにトランプ支持の理由を話す。

「トランプ候補は、別にイスラム教徒が嫌いだから入国禁止を提案したのではない。ただ、テロを防ぎたいからそう言っているに過ぎない。私はイスラム教徒として、テロを食い止めるためにトランプ候補を支持する。

 自分は別にトランプ信者というわけではなく、単なるリアリストだ。彼が勝つのであれば、イスラム教徒のために最も良い政策を行ってもらうよう支えたい。イスラム教徒の自分が彼を支持することが、イスラム教徒にとって良き変化をもたらす」

 1990年にシリアから移民した小切手換金サービス会社の社長のオマル・アルカディリ(52歳)も熱心なトランプ支持者である。アルカディリは次のように語る。

「自分はこれまでクリントンやオバマ大統領に投票してきた。しかし、オバマ大統領の下で、経済は悪化した。トランプの反イスラム教徒発言を聞いて最初は悩んだが、もっと大事な問題は経済であるとの結論を得た。

 トランプの反イスラム教徒宣言は選挙戦における炎上戦法でしかない。アメリカの熱狂しやすい人々に向けたエンターテイメントみたいなものだ」という。

 3人目は、パレスチナ移民の子供で、現在はプリペイド携帯会社の支店を複数経営するラエド・ハマダーンである。ハマダーンは「パレスチナ和平を重視する唯一の候補」としてトランプ候補を支持している。

「トランプ候補はメキシコの壁の建設やイスラム教徒の追放を唱えているが、実際には投票なくしては行えないから実現不可能だ。オバマ大統領がグアンタナモ収容所を閉鎖したいと言いながらいまだにできていないのと同じことだ。

 自分は、好戦的な共和党と違って戦争を回避するオバマ大統領を支持してきた。しかし、民主党は税金を経営者からたくさん徴収するばかりで支持できない。共和党ならば、経営者にもより公正な税制にしてくれる」

 以上のように、トランプを支持するイスラム教徒たちは、オバマ大統領の経済手腕に絶望すると同時に、トランプの過激な言動を冷静に分析して期待をかけている。そして、彼らは、先のサバ・アハメド弁護士と同様に、自らが支持を表明し応援していくことが、トランプ候補のイスラム教徒への好意的な反応につながると考えている。

 要するに、イスラム教徒たちは極めてリアリスティックな立場からトランプ候補に期待しているのである。

アメリカの現実を無視している日本の分析

 筆者は昨年末より様々な研究会でトランプ候補優勢を主張してきた。だが、多くは「トランプが大統領になったら高級焼肉を奢る(笑)」という反応であった。現在もマスメディアでは「最後はヒラリーが勝つ」という論調が大勢を占める。

 なぜ日本では、こうした現実を無視する分析が横行するのだろうか。

 その大きな原因は、上記のような選挙戦の帰趨を決定する草の根の支持層の声を軽視してきたからであろう。実際、選挙戦初期の日本のメディアの「ブッシュが勝利する」という分析も、共和党のエリート層に属する人間からの伝聞情報を根拠とし、ティーパーティー(茶会)運動のような市民運動には目を向けていなかった。

 しかし、もはや米国政治(特に共和党内部)は、一部の既得権益を重視するエリート層の手を離れつつある。しかも、ややこしいのは、このエリート層には、これまでの草の根運動を主導してきたはずの「保守派」も、今や含まれているということである。

 要するに、旧来のエリート層や「保守派」に期待しない、減税と自由競争に基づく経済政策を重視する草の根の一般市民たちが影響力を行使する時代に入っているのだ。

 トランプ候補が、エリート層が少なく、既得権益化した「保守派」にも入れない在米イスラム教徒の支持を受けているというのは、そうした時代の変化を象徴していると言えよう。そして、そこにこそ、トランプ旋風を日本が理解できず予測もできなかった原因があるのである。

(*)CAIRの世論調査については、早稲田大学公共政策研究所地域主権研究センター招聘研究員の渡瀬裕哉氏から貴重な助言を頂戴しました。ここに深く御礼を申し上げます。

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『G7とオバマ広島訪問、中国「日本猛攻」の意味 安倍式「歴史の乗り越え方」が中国を焦らせる』(6/1日経ビジネスオンライン 福島香織)について

中国人は自分が都合悪くなると、すぐに論理のすり替え、百年前のことを持ち出すなどして誤魔化そうとします。不合理精神そのものですが、「騙す方が賢く、騙される方が馬鹿」という国柄ですから。でも非難の仕方は相変わらずで、朝鮮半島と同じで下品です。中華・小中華というのは如何に徳のない民族かという事です。エリザベス女王に“rude”と言われるのは当り前です。礼儀を知りませんので。孔子がいくら徳を教えようとしても誰も守ろうとしなかった国です。中国の歴史は虐殺の歴史なのに、デッチアゲの南京事件を言い立てるのは面の皮が厚すぎでしょう。而も共産中国の建国の父・毛沢東は文革時、批林批孔を煽動して紅衛兵に人にあるまじきことをさせました。それが今では孔子学院を世界中に作り、中国語を教えるというのですから。ご都合主義の最たるものです。

本記事の中で、中国のメデイアは「サミット、オバマの訪広が今度の参院選対策」というのですから、選挙もしてない国に難癖をつけられる覚えはないという気にさせられます。悔しかったら選挙して見れば良いのに。出来ないのであれば、黙っているべきと思うのですが、そうできない所に性が出るのでしょう。オバマの訪広は日本が望んだことではないのは、日本の新聞記事、ネットを読めばわかること。日本に多くのスパイを送り込んでいる中国が知らないはずがありません。都合の悪い情報は知らん振りします。

9月のG20は楽しみです。中国は日本を悪者とする絵を描こうとするでしょうが、せいぜい味方は韓国くらいのものでしょう。それだって米国から圧力をかけられれば分かりません。逆に中国が孤立を深めるのではと。議事国の纏め方が楽しみです。

記事

Abe and OBama in Hiroshima

歴史を乗り越えようとする日米に、中国は焦りを募らせる(写真:代表撮影/AP/アフロ)

 8年ぶりの日本でのG7に続いて、オバマ米大統領の広島訪問と、先週の日本は国際ニュースが盛りだくさんであった。しかも、いずれも中国が影の主役であったといえる。ただ8年前は、リーマンショック直後に世界から経済の救世主として期待された中国の存在感とは裏腹に、今回はむしろヒール(悪役)であった。中国の反応から、サミットとオバマ広島訪問を見てみたい。

日本が「悪知恵」で対中包囲網

 G7の首脳宣言では中国を名指しこそしなかったが、国家が国際法に基づき力や威圧を用いないこと、平和的な手段による紛争解決を追求することの重要性を再確認し、東シナ海、南シナ海における状況を懸念し、紛争の平和的管理、解決の根本的な重要性を強調した。

 これに対し中国外交部報道官は27日の定例記者会見で、強烈な反発を表明。「今回の日本が主催するG7サミットは、南シナ海問題を煽り、緊張情勢を拡大させ、南シナ海の安定に不利益をもたらした。G7は先進国の経済問題を話し合うプラットフォームと名乗るにふさわしくない。中国側はG7のやり方に対して強烈な不満を示す」と日本を名指しする形で抗議した。

 さらに30日の記者会見では、「中国が南シナ海で展開している活動は完全に主権範囲内のことで、正当合法であることは議論の余地がない。中国は南シナ海の航行・飛行の自由もしっかり維持している。しかし“航行の自由と自由の横行は同じではない”。中国は個別の国家が航行の自由という建前で中国を悪者にすることには断固反対する」と訴え、G7拡大会議でも中国へのけん制を念頭に海洋問題が議論されたことについては、「会議で何を討論しようとも、他国の利益を損なうことはすべきではなく、地域の緊張を刺激すべきでもない」と批判した。

 安倍晋三首相は記者会見上、一言も中国という国名を言わず、南シナ問題については、2014年のアジア安全保障会議上で提出された三原則、つまり①国際法に基づき主張する②力や威圧を用いない③平和的解決を徹底する、を繰り返しただけである。表現上は決して中国を特別挑発するようなものではないのだが、一部中国メディアは「G7は安倍が“夾帯私貨”(ヤミ商品を紛れ込ませることを)している」という言い方で、いかにもホスト国の日本が悪知恵をめぐらして、G7の本来の議題とは関係のない南シナ海の問題を強引に議題のテーブルに乗せて、対中包囲網を形成したのだ、と日本に対する苛立ちを募らせている。

南シナ海問題以外についても、中国メディアはおおむね酷評しており、「G7モデルは、西側国家が世界経済の舞台上、圧倒的優勢を占めるために作られたのであり、中国、インド、ブラジルなどの新興国が彼らに背を向けて発展し始めた今日、G7サミットはすでに政治的回顧録に過ぎず、政治そのものになりえない」「内容のないショーだ」(中国金融報)、「会議の議題は空疎で、対立は明らかで、成果は乏しく、しかもホスト国の日本がたえず議題を偏向させている」「G7の影響力は日増しに衰退し、世界経済における役割はすでに過去のもの」(中国社会科学報)などとG7オワコン説を力説している。

「G7よりG20」「南京を忘れるな」

 もちろん、9月に中国がホストとなって浙江省杭州で開かれるG20こそが、グローバルな問題の討論と解決のプラットフォームであるということが言いたいがための文脈だ。

 「G20があるのに、G7はまだ必要なのか」というタス通信の報道などを引用して、南シナ海から世界経済減速まで、世界の諸問題の原因となっている中国が参与していないG7ではなく、中国が重視するG20がグローバルメカニズムの核となるのだと訴えている。

 G7に続く、米大統領オバマの広島訪問についても、思いっきり難癖をつけている。

 27日に外相の王毅が記者会見上で「広島は注目に値するが、南京はさらに忘れてはならない。犠牲者に同情することも大切だが、加害者は、永遠にその責任から逃れることができないのだ」と“過去の侵略戦争発動者”日本に釘を刺した。

 華僑系通信社中国新聞社は「やってきたよ、でも謝らない:オバマの広島訪問に日本は満足なのか?」というタイトルで、これがオバマの在任期間のロスタイムの政治ショーにすぎないと揶揄した。

 さらに「非核化を推進できるのか、日米同盟を強化できるのか、アジアリバランス政策に多少寄与するのか、あるいは日本の侵略行為の罪を淡化させるという安倍の望みをかなえ、7月の選挙のプラス材料となるのか。我々は目をこすって待ってみよう」「かつて非核化推進努力によりノーベル平和賞を受賞したオバマがもっとも気にしているのは残りの在任期間が多くない状況下で、“非核世界”の理想実現のために努力して見せる。それが自分により多くの政治遺産を残すことになる。…安倍にしてみれば、オバマの広島訪問は日本の第二次大戦下での侵略暴行の記憶を淡化させることに役立つ。表面上は世界に核兵器の廃絶を呼びかけるためとしながら、実際は自分たちが第二次大戦の被害者であるイメージを打ち出して、日本が侵略戦争を発動した責任と他国に与えた損害の記憶を薄れさせようということだ」などと、日米の狙いを分析している。

 さらに、次期大統領選の共和党候補ドナルド・トランプが「(オバマが日本訪問中)なぜ真珠湾奇襲作戦について質問しないんだ」と28日にツイッター上でつぶやいたことなどを引用し、日本が戦争被害者でなく加害者であることを改めて強調した。

米国の戦闘能力はピーク時の半分

 またシンガポールのストレーツタイムズ紙を引用する形で、米国のレームダックを印象付けようとしている報道もある。

 「オバマは広島で日本に謝罪はしなかったものの日本にごまをすったことは明白である。これは傲慢なアメリカ合衆国とオバマさんが一夜にして良心に目覚め、日本と対等なパートナーシップを結ぶことを決めたのか? もちろん違う。日米間のパワーバランスはすでに巨大な変化が生じている。米国経済は日増しに衰弱し、オバマは世界覇権維持を軍事力にますます頼らざるを得なくなっているが、その軍事力もまた、経済基礎の上に建設されている。いまや、米軍の戦闘能力は、ピーク時の50パーセント前後である。この米軍の実力的凋落は何なのか。間違いなく、米国のグローバル覇権がいよいよ終焉の時を迎えているサインである」

 「オバマはこの脆さ極まりない世界覇権の地位のため、軍事同盟の関係上、日本にすり寄らねばならないのだ。もちろん安倍は鋭敏にこのオバマの本音をかぎ取っている。米国が日本を必要としている以上に、日本も米国がさらに必要である。…(オバマに広島にG7のついでに立ち寄るよう頼むのは)オバマ大統領が謝罪をすれば一番良いが、謝罪をしなくとも、オバマが来れば、それは一つの態度なのである。オバマが広島に謝罪に来た、というふうに読み取ってよいのだ。安倍は虚栄心とメンツを大いに満足させたことだろう。オバマは何を得たのか? 屈辱以外に? 実際、米国はこんなところまでやってきて、実質なにもよいことはないのである」(中華ネット論壇)

 以上の論評は、外国メディアを引用する形も含めて、かなり中国の本音に迫っているのだと思う。そしてサミットとオバマ広島訪問の成果とは何かを考えるとき、中国の批判の裏側を読めばだいたい当たっているだろう。グローバル経済の問題に対応するとき、G7ではいまひとつ影響力が持てないということもある意味、当たっている。だが今回、注目するべきは国際社会のパワーバランスにおける日本の存在感を中国がかなり意識してくれているということだろう。

 中国は、今回のサミットにしろ広島訪問にしろ、安倍が仕組んだと批判している。中国包囲網でG7とアジア・アフリカ7カ国の結束を固めることに成功し、オバマ広島訪問で米国のレームダックと日本と米国の関係性の変化を国際社会に印象づけた。さらに中国や韓国などとの“歴史情報戦”に一矢報いた。

中韓とは異なる、歴史の乗り越え方を示す

 習近平政権の当初の外交シナリオの中に、日本が“歴史修正主義者”で軍国主義復活を狙っているという間違ったイメージを国際社会の中で広め、日米離反、日本孤立を画策しようというものがあった。日米離反政策は、結果的に習近平がオバマを侮りすぎたことで失敗、米国はむしろ対中警戒を強めて日米同盟が強化される格好になるのだが、その流れに乗じて今回、日本は“過去の戦争の被害者と加害者の和解と未来志向”というものを演出してみせて、過去の戦争の被害者として延々に謝罪を求め続ける中国や韓国にあてつけて見せたのである。

 このことは、いまや国際政治の一つの重要カードとなっている歴史情報戦において、中国が言うように、日本の侵略戦争イメージを薄れさせると同時に、いつまでも過去の戦争の恨みにこだわっている中韓の心の狭さと対比するかたちで、日本という国の歴史の乗り越え方を示すことができたのだ。

安全保障のバランス、再考を

 今回のオバマ広島訪問に関する中国の批判(指摘)の中で、私が一番、なるほどと感心したのは、米国の軍事力衰退の象徴と捉えていることである。米大統領広島訪問の意義としては、日米関係の緊密化アピールによる対中牽制以外に、単純にノーベル平和賞を受賞したオバマが大統領としての最後の花道に広島を選んだのだろうというぐらいにしか考えていなかったのだが、ここは中国の見立てが当たっているだろう。

 日本では、この訪問時期にあわせて共同通信が実施した全国電話世論調査で、日米地位協定を「改定すべきだ」との答えが71パーセントに上った。もちろん、元米海兵隊員の軍属が逮捕された沖縄女性遺棄事件の衝撃が大きな要因ではあるが、この大統領広島訪問も影響があるだろう。軍事大国として圧倒的強者として日本の安全保障を預かってきた米国の大統領が、謝罪の言葉こそ口にしなかったが、かつての虐殺現場を訪れて献花したわけである。

 米国は日本に対して圧倒的強者から、等身大のパートナー国の立場に自ら降りてきて、日本の気持ちに配慮を示そうとしている。米国はかつてほど威圧的でも傲慢でもなくなったが、かつてほど強くもない。ということならば、日本の安全保障のバランスも再考せねばなるまい、という気持ちにさせられるではないか。

 オバマの次の大統領が誰なのかにもよるが、世界がここまできな臭く、南シナ海から東シナ海にかけての緊張がかつてなく高まっている状況で、米国の軍事的実力が落ちているというならば、従来の日米地位協定を変えていこうという流れになるのは当然かもしれない。

中国の非難が示す安倍外交の成果

 “戦後レジームの脱却”を公言していた安倍政権が、それどころか、日米安保強化に動いたという点を批判する声は保守層の間でも起きているが、その日米同盟のパワーバランスが少しずつであるが変化している流れを考えると、やはり安倍外交の根っこにはぶれがないという気がする。

 G7サミットについても、米大統領広島訪問についても、中国がここまで真剣に“安倍のたくらみ”として批判してくるということは、安倍外交としてはかなりの成功だと自信を持っていいということだろう。もちろん、消費増税延期という内政問題にサミットを利用した感などもあるのだが、外交を内政に利用することが悪いというわけではない。

 世界はいま戦後長らく固定されてきた枠組みや秩序から、少しずつ変化しようとしている。主なプレイヤーは米国と中国、あるいはロシアだと思われているが、日本もかなりの存在感をここにきて見せるようになってきたではないか。次はG20で中国のお手並み拝見である。

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『米投資ファンド、中国の不良債権処理に参入 』について(5/30日経)

本記事の債務は小さすぎでしょう。中国は都合の悪い数字は低く発表しますので。宮崎正弘氏のメルマガにも中国の債務はトータルでGDPの320%、30兆$(3300兆円)とヘッジファンドは読んでいるとのこと。中国の発表している数字は融資平台のノンバンクの数字は入っていないのかも知れませんが、それにしても少なすぎの印象があります。

http://melma.com/backnumber_45206_6373694/

実需を無視して建物を作った後には何が残るかと言うと、宴の後の借金と廃墟でしょう。紙幣の増刷で乗り切れるかどうかです。ハイパーインフレになるのでは。そうなれば、共産党は打倒されるでしょう。幹部は亡命、でも預金情報を押えている米国に差押えされるかもしれません。借金の返済に充てられるかも。

ハゲタカのKKRが損をすることはしないと思います。安く買い叩いて、高く売り抜ける目算があるのでしょう。ただ、中国の土地の所有権は共産党が握っています。居住用70年、工業用地50年の使用権だけを切り売りしています。この年限を利用して儲けるのかどうか?やり方は想像できません。

「招商銀行が不良債権の証券化に踏み切った」と言うのは、リーマンの轍を踏むということでしょう。サブプライムで腐った林檎も入れて証券化して、世界的にその証券を買った国や銀行は損しました。そのような証券を中国以外の国が買うことはないでしょう。損するのが分かっていますので。花見酒の経済になるのでは。

記事

 【上海=張勇祥】米国の有力投資ファンドが相次ぎ中国の不良債権処理ビジネスに参入している。オークツリー・キャピタルが北京の不動産に投資したほか、コールバーグ・クラビス・ロバーツ(KKR)は中国国有の資産管理会社(AMC)と提携した。中国では景気減速に伴い不良債権が急増している。当局は海外勢の資金を導入し、最終処理を急ぐ考えだ。

condo in Beijing

10年間、建設が止まったままの住宅群(5月、北京)=AP

 オークツリーは2015年に第1弾となる不良資産買い取りを実施したほか、「北京で商業用不動産のプロジェクトに関与している」という。地方都市の不動産への投資は検討せず、上海や北京など大都市圏での投資機会を探るとしている。

 KKRは中国国有の不良債権処理会社、「中国東方資産管理」と共同出資会社の設立で合意した。KKRで中国地区の代表を務める劉海峰氏は「投資先に必要な資本とノウハウを提供する」という。同社は中国の不良債権の多くは不動産が担保になっていると指摘しており、不動産を活用した最終処理を模索するとみられる。

 ゴールドマン・サックスは現時点では残高はないが、北京の拠点を通じ投資機会を探っている。中国では1997年のアジア通貨危機を契機に、大きく膨らんでいた不良債権処理を本格化した経緯がある。中国当局は政府出資でAMCを設立、国有銀行の不良債権を分離して買い取ったほか、ゴールドマンなど海外の投資銀行に債権を売却した。

bad loan in China

 ゴールドマンは国有商業銀行の一角である中国工商銀行のほか、複数のAMCから総額200億元(約3300億円)規模の不良債権や関連資産を買い取った実績があるとされる。ゴールドマンは工商銀にも出資、香港市場などへの上場を支援した経緯があり、過去の実績を生かせると判断しているようだ。

 このほか、ローンスターは国有AMCの一つである「中国華融資産管理」に接触。不良債権ビジネスでの提携を模索している。ローンスターは華融だけでなく、複数の金融機関と協議しているとみられる。

 海外の投資ファンドが相次ぎ中国に進出する背景には、金融機関が巨額の不良債権を抱え、かつ最終処理を急いでいることがある。中国の商業銀行の不良債権残高は16年3月末時点で1兆3921億元と1年前に比べ42%も増加した。

 このほか、不良債権に分類していないものの、将来の元利払いにリスクがある「関注類」と呼ぶ債権が3兆2000億元にのぼる。中国は1~3月期の実質経済成長率が6.7%と7年ぶりの低水準にとどまり、鉄鋼や石炭、造船業などで債務不履行が相次いでいる。中国政府は過剰な生産能力や人員を抱える企業の淘汰を進める方針で、不良債権は今後も増加が続く公算が大きい。

 中国の銀行も最終処理を加速しており、5月には国有大手の中国銀行のほか、招商銀行が不良債権の証券化に踏み切った。銀行の資産内容の劣化を放置すれば金融システムへの信認が揺らぎかねず、中国当局は政府主導で不良債権対策を進める考えだ。

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『オバマ広島訪問、米国内はどう受け止めたのか』(5/30日経ビジネスオンライン 高濱賛)

本日、安倍首相は野党の不信任決議を受けて、粛々と否決し、衆院解散するのでは。麻生副総理、谷垣幹事長、稲田政調会長も「消費税増税を延期するのであれば、衆院を解散して信を問うべき」と言いだしたのはその証拠では。示し合わせての発言ではないかと思います。二階総務会長は先日の御坊市長選で子息が落選する憂き目に遭い、支持基盤がガタガタになっているのでこの近くでの選挙はしたくない気持ちがありありですが。売国議員は落選した方が良いでしょう。

5/30日経では<内閣支持、56%に上昇 オバマ氏訪問「評価」92% サミット外交「評価」62% 

 日本経済新聞社とテレビ東京による27~29日の世論調査で、内閣支持率は56%で4~5月の前回調査から3ポイント上昇した。不支持率は35%で5ポイント低下。先の主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)で議長を務めた安倍晋三首相の働きぶりは62%、オバマ米大統領の広島訪問は92%がそれぞれ「評価する」と答えた。一連の外交成果が支持率を押し上げた形だ。(関連記事総合・政治面に)

approval rating of cabinet

 内閣支持率は2014年9月の内閣改造を受けた調査で60%を記録して以来の高水準となった。

 来年4月の消費増税は「反対」が63%と依然高水準。「賛成」は3ポイント上昇の32%だった。増税先送りで取り沙汰される衆参同日選は「反対」が1ポイント低下の42%、「賛成」は3ポイント低下し38%だった。経済政策「アベノミクス」は「評価する」が38%と2ポイント上昇し、「評価しない」は49%で4ポイント低下した。

 調査は日経リサーチが全国の18歳以上の男女を対象に乱数番号(RDD)方式で電話で実施。固定電話と携帯電話で計2278件を対象に、1089件の回答を得た。

外交成果、参院選へ与党に追い風 本社世論調査 

 日本経済新聞の世論調査で、主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)などの外交成果が安倍政権の内閣支持率を1年8カ月ぶりの高水準に押し上げた。2017年4月の消費増税も「反対」が6割超と、先送りの意向を示した安倍晋三首相を後押しする結果が出た。7月の参院選に向けて追い風になりそうだ。

 首相はサミットで主要7カ国(G7)首脳らとの議論を主導し、世界経済の減速阻止策を柱とした首脳宣言を取りまとめた。こうした議長としての働きぶりを「評価する」は62%で「評価しない」の21%を大きく上回った。内閣支持層で「評価する」との回答は8割に上った。

 政府・与党はもともと参院選を控えた時期のサミット開催を「選挙戦に弾みをつける格好の場」ととらえ、会議の成功を最重要課題としていた。安倍首相は5月の大型連休中に欧州を歴訪、財政出動を含む政策協調に慎重な英国やドイツの首脳と調整を重ね、首脳宣言の採択につなげた。

 世界経済が危機に陥るリスクに触れた首脳宣言は、17年4月の消費税10%への引き上げ先送りの口実になるとの批判も根強い。ただ予定通りの消費税引き上げに「反対」が「賛成」のほぼ2倍。内閣支持・不支持にかかわらず「反対」が多く、増税延期そのものが参院選に大きくマイナスになることはなさそうだ。

 サミットに併せて実現したオバマ米大統領の広島訪問も高い評価を受け、内閣支持率は56%と14年9月の第2次安倍改造内閣が発足した直後以来の高い水準になった。参院選の投票先も自民党が44%と「1強」を維持しており、選挙戦に向けた大きな懸念材料は見当たらないようにみえる。

 ただ沖縄県で米軍属が逮捕された女性遺棄事件への日本政府の対応は「適切ではない」が46%と「適切だ」の37%を上回った。事件には女性の反発が根強く、無党派層も半数近くが政府対応を「適切ではない」と回答した。6月上旬には沖縄県議選があり、その結果次第では参院選に逆風が吹く可能性もある。

参院選候補の野党一本化 「反対」が「賛成」上回る

 世論調査で7月の参院選での野党が進めている候補者一本化について聞いたところ、「賛成」が35%、「反対」が42%となった。

 野党の支持層でみると、民進党支持層が「賛成」73%、「反対」19%、共産党支持層も「賛成」63%、「反対」27%と一本化の軸になる民進、共産両党の支持層には一定程度浸透している。ただカギを握る無党派層は「反対」36%と「賛成」31%を上回った。

 民進、共産両党に社民、生活両党を加えた野党4党は参院選で32ある「1人区」すべてで一本化のメドを立てている。

 今後は政策のすり合わせなどが課題になりそうだ。

 参院選で投票したい政党は、自民党が44%で4~5月の前回調査から変化はなかった。民進党は3ポイント低下の12%だった。公明党4%、共産党5%、社民党1%でいずれも横ばい。おおさか維新の会は2ポイント低下の4%で、生活の党は1ポイント上昇の2%。態度未定は4ポイント増え28%だった。

 政党支持率は自民党が2ポイント低下の44%、民進党が3ポイント低下の8%。無党派は9ポイント上昇し30%だった。>(以上)

安倍首相の支持率も上がり、解散には良いチャンス。参院の野党一本化も衆院と同日選をすることにより実質一本化の活動ができなくなります。第二次安倍内閣の使命は憲法改正です。衆参の2/3を確保する良いチャンスです。先ず96条改正して衆参1/2の発議にすれば良いのでは。国民投票はそのまま。

米国も多様な意見の存在が認められる社会ですので、いろんな意見が出るのは健全でしょう。でも、日本が歴史の見直しをしようとすると、「歴史修正主義者」の烙印を押して封じ込めるのは間違っています。お互いの立場を尊重するのが自由主義国家の良い所でしょう。米国人ももっと、自国の歴史を学ぶべきです。インデイアンの虐殺、黒人奴隷、原爆投下は米国の原罪です。自覚してほしい。日本人は謝罪は求めませんが、歴史の見直しはして行きます。

記事

Obama in hiroshima

被爆者の人をハグするオバマ大統領(写真:AP/アフロ)

—米国のバラク・オバマ大統領が来日しました。被爆者を含めた日本国民の多くは同大統領の広島訪問、原爆資料館見学、慰霊碑前での演説の“3点セット”を高く評価しています。米国の反応はどうですか(オバマ演説の英文全文はこちら)。

高濱 3人の米識者に聞いてみました。彼らが付けたスコアはA+~B+(最高点はA+、最低点はC-)でした。

  • リベラル派:ダスティン・ライト博士、カリフォルニア大学サンタバーバラ校歴史学部

 オバマ大統領によるこれまでの演説の中で最も重要な演説として記憶されるだろう。とくに原爆で命を奪われた日本人はもとより、韓国人、米兵ら戦争捕虜の人たちに触れたのも非常によかった。

 加えて、何に言及しなかったかも重要だ。原爆投下によって戦争終結が早まり、あれ以上多くの米兵や日本人が戦争の犠牲にならなかった――という点に触れなかった。これは、原爆投下正当論の修正につながる可能性がある。少なくとも、従来からの論議に一石を投じたことは間違いない。(採点はA+)

  • 穏健保守派:米主要シンクタンクの上級研究員(匿名希望)

 オバマ大統領は就任する前から広島を訪問したいと希望してきた。2009年のプラハ演説で謳い上げた『核なき世界』に向けた決意を広島で再び発信したいという願望を実現した勇気は見上げたものだ。レガシー(遺産)作りの一環だと批判されようと、お構いなしにやってのけた。

 共和党の大統領候補への指名を確実にした不動産王ドナルド・トランプ氏の品位も哲学もないアジ演説を聞くにつけ、オバマ大統領の言動は米国人にとって一服の清涼剤となる。世界に誇れるものだ。これだけの知性と見識を持った大統領はなかなかいない。

 ただ核兵器廃絶についての具体的な青写真が提示できなかったのは残念だ。(採点はA-)

  • 中道派:デイビッド・ストラウブ氏(国務省で日本部長、朝鮮部長を歴任した日韓関係をよく知るアジア通。スタンフォード大学アジア太平洋研究センター朝鮮問題研究プログラムのディレクター)

 オバマ大統領は、就任当初からやろうとしていた広島訪問を実現した。この点についてはそこそこの成功(modest success)と言える。「謝罪はしない」と事前に公言するなど用意周到に根回しをして、米国内にくすぶり続けている政治的な信管を抜き取った。反対してきた退役軍人団体も最後には無視するか、いやいやながら訪問を了承した。

 戦略面でみると、海洋進出を続ける中国や核開発に余念のない北朝鮮に対して、『核兵器なき世界』を広島からアピールする狙いはある程度成功した。

 広島は日米同盟にとって、のどに刺さったトゲだ。それを取り除いて和解することに役立ったのは違いない。ただし、日米の間で和解はすでに済んでいる。

 その一方で、東アジア全域に目を転じて、今回の広島訪問を考えてみると、中国、韓国、北朝鮮は控えめな形ではあるが訪問に否定的だった。オバマ大統領は、慰霊碑の前で述べた所感で韓国人被爆者にも触れた。だが広島訪問が、東アジア全域で第二次大戦の傷を癒す和解につながったかどうかは疑問だ。(採点はB+)

反対してきた退役軍人は反応せず

 米主要メディアも「オバマ大統領は原爆投下について謝罪はしなかったが、悲惨な戦争で命を奪われた罪なき人々を追悼した」(MSNBC)といったトーンで広島訪問が成功だったと報じています。

—当初、オバマ大統領の広島訪問に強く反対していた退役軍人、とくに日本軍の捕虜になった人たちの反応はどうでしたか。

高濱 反対派は反応しませんでした。

 オバマ政権による徹底した根回しが功を奏したのです。オバマ大統領自身、「謝罪しない」とメディアとのインタビューなどで繰り返し述べました。スーザン・ライス大統領補佐官も退役軍人団体の幹部に会って「謝罪はしない」と口を酸っぱくして説明しました。

 退役軍人団体の人たちは当初はこう反発していました。「たとえ謝罪しなくとも、大統領が広島に行って慰霊碑に献花すれば、日本人はそれを謝罪と受け取りかねない」。それが根回しの結果、退役軍人のある者は黙りこくり、ある者は無視する姿勢に変わったように思います。

 オバマ大統領は広島に訪問する直前まで、軍隊や退役軍人といった反対派に配慮し続けました。例えば、米軍岩国基地に立ち寄り、日米同盟の最前線で働いている米兵の労をねぎらいました。

 慰霊碑に献花した際にオバマ大統領は、黙とうはしたものの頭は下げませんでした。見ている米国民に「謝罪」と受け取られかねないジェスチャーを避けたのでしょう。

「広島訪問は愚行」となじる保守系サイト

 もっとも保守派の中には今回の広島訪問を手厳しく批判する者もいます。926万人がアクセスしているというウエブサイト「ヤング・コンサーバティブ」のマイケル・カントレル編集長はこうコメントしています。

 「オバマ大統領がまたまた陳腐な愚行(old shenanigans)をやらかした。被爆地・広島を訪問したのだ。そこで、原爆投下は『罪悪だ』(evil)と言ってのけた。なんで原爆が投下されたか、知っているはずだ。カミカゼがパールハーバーを奇襲したからだ。この男は嘆かわしい(deplorable)」

米国民の原爆投下正当論は変化するか

—オバマ大統領の広島訪問を契機に、米国民の間にある原爆投下正当論は今後、弱まっていくでしょうか。

高濱 しばしば引用される「原爆投下を正当化する米国民は56%」という世論調査結果は2015年のものです。これが今後劇的に減っていくかどうか、まだ分かりません。

 ただ原爆投下正当論の実態を調べていくと、ハリー・トルーマン第33代大統領の原爆投下決定が正しかったという紋切り型の自己弁護以上の何かがあります。それは第二次大戦を戦った米国民の大義名分を守らねばならないという信念です。日本軍国主義と戦い、打ち負かしたという歴史認識の修正は絶対に許せないという「偉大なる世代」*が抱く矜持なのかもしれません。

*:「偉大なる世代」(The Greatest Generation)は、大恐慌を生き抜き、第二次大戦で帝国主義と戦い勝利した1930年以前に生まれた米国民を指す。NBCテレビのアンカーマン、トム・ブロコウ氏が著書の中で使用し、その後一般化している。

反対の理由は「偉大なる世代の業績と遺産」を守ること

 ロイド・ベッセイ米海軍退役少将の指摘にそのことがにじみ出ています。同氏は退役軍人会の幹部で、潜水艦の乗組員として第二次大戦を戦いました。「原爆投下で日本は無条件降伏した。もし原爆を使用しなければ、米軍は日本本土に上陸し、日本軍と戦っただろ。多くの米兵の命だけでなく、日本国民の命を犠牲にしたかもしれない。あのトルーマン大統領の決定は正しかった。第二次大戦に参戦していた米兵にその是非を問えば、彼らのほとんど全員がトルーマン大統領の決定に賛同していたはずだ」。

 「オバマ大統領と安倍晋三首相は、同大統領が広島で謝罪しないことで合意したそうだ。だが、米国の現職大統領が広島を訪問すること自体が大統領による『暗黙の謝罪』(implicit apology)と受け止められる」

 「米大統領は平和と戦争の双方に大変な責務を負っている。トルーマン大統領は原爆投下という空前絶後の歴史的かつ宿命的な決定を迫られた。何らかの謝罪をすべきだと信じている者は、トルーマン大統領が当時直面していた立場に自らをおき、歴史的脈絡の中でその意味を考えるべきだ」

 「われわれ『偉大なる世代』は自らが築き上げた遺産と業績に誇りを持っている。原爆投下について大統領が謝罪することは、第二次大戦に参戦し死んでいった同志の魂を踏みつけにする酷い仕打ち以外のなにものでもない。それがいかなる形であれだ」

「真珠湾vs広島」という一次方程式に疑義

 かって東京特派員だった米ニューヨーク・タイムズの知日派ベテラン外交記者デービッド・サンガー氏は、オバマ大統領の広島訪問について「Obama’s Visit Raises Ghosts of Hiroshima」(オバマ訪問は広島の亡霊を呼び覚ます」という見出しの記事でこう指摘しています。

 「オバマ大統領の広島訪問は、大統領選の真っ最中というこの時期を念頭に入れれば、オバマの『謝罪の旅』を批判してきた勢力にとって格好の標的になる」

 「一方、懸念されるのは、それでなくとも歴史認識問題で修正主義的な主張をしてきた日本の保守勢力が、オバマ大統領の広島訪問で勇気づけられ、『先の戦争は正しかった』という自分たちの主張は正しかったと言い出すことだ。彼らは第二次大戦前中に日本軍が犯した南京虐殺、従軍慰安婦問題、捕虜虐待拷問といった過去をしっかりと受け止めようとはしていない」

 「オバマ大統領がなぜ、いま広島訪問に踏み切ったのか、それは広島を知る『偉大なる世代』の人たちが歯が抜けるように死んでいるからだ。やがて彼らは皆いなくなり、トルーマン大統領の原爆投下決定を支持する世代は絶滅してしまうだろう」

—オバマ大統領の広島訪問をめぐる論争は、「真珠湾vs広島」という一次方程式――日本軍が真珠湾を攻撃したからその報復として原爆を投下した――ではないのですね。底辺には根深い歴史認識の問題がある。

高濱 その通りです。

 一つは、原爆投下についての日米の記憶の違いです。米国にとっては、日本帝国主義を破り、第二次大戦を終結させ、冷戦に向けて備えたという意味があります。日本にとっては無条件降伏と世界唯一の原爆被害国としての記憶です。お互いに異なる歴史認識を持っているわけです。

 そこには日米両国民の歴史認識をめぐる溝があるのです。あまりここを突くと、サンガー記者の指摘するように、眠っていた「亡霊」を起こしてしまいます。オバマ大統領が「謝罪する」「謝罪しない」との論議に潜んでいたのはまさにこの歴史認識の問題でした。

—オバマ大統領の広島訪問を受けて、その答礼として「今度は安倍首相がアリゾナ記念館で追悼すべきだ」という議論が巻き起きないでしょうか。同記念館は、水没した戦艦アリゾナ真上に建てられています。

高濱 安倍首相が真珠湾を訪問するという話は、5月25日の日米首脳会談後の共同記者会見でも出ました。安倍首相はそうした計画はないと明言。同首相のこの発言を米メディアはやや批判的に取り上げました。今後、保守派を中心に同様の要求が出てくる可能性は十分ありそうです。

オバマ大統領は従来の歴史認識を堅持

—オバマ大統領は訪日する前、ベトナムを訪問しました。ベトナムは75年4月まで米国と戦争をしていた国です。ベトナムから見れば、米国はベトナムを「侵略した敵国」です。空爆で罪のないベトナム人を大量に殺したことについて、ベトナム国民の間で「米国は謝罪すべきだ」といった声は上がらなかったのでしょうか。

高濱 それがまったくなかったんですね。専門家によると、理由は三つあります。

 一つは、ベトナム人の平均年齢が若いこと。ベトナムの人口9342万人のうち60%以上は「戦争を知らない世代」です。従って、空爆もソンミ虐殺も遠い昔の話になってしまっている。そして若い世代は親米なのです。

 2番目の理由はベトナムの歴史にあります。外国勢力から徹底的に侵略されてきました。まず2000年前に中国に侵略された。1428年に中国から独立したかと思うと、今度はフランスに占領された。1954年まで続きました。

 ベトナム駐在経験のある米外交官は筆者にこう言っています。「米国は63年から75年までベトナムで戦闘活動に従事した。これはあくまでも南ベトナムを支援するためだった。内戦の助っ人だった。だからベトナム人には米国だけを悪者扱いする国民感情はないんだ。現にベトナム人の76%が米国に好感を持っているという世論調査がある」。

 3番目は、中国が脅威となっていること。南シナ海での海洋権益追求、軍事基地化はベトナムにとってはたいへんな脅威です。かって中国と戦争をしたベトナムが中国に対して抱く恐怖心は他国とは比較にならないほど強い。そこで頼りにしたいのが米国です。

 今回のオバマ訪越で実現した武器禁輸の全面解除は、ベトナムにとっては最重要案件でした。「謝罪」なんかよりも「武器」だったのです。

 米国にとっては「侵略に対する謝罪」などもっての外の話です。「共産勢力の拡大を阻止する」という大義名分のため南ベトナムを支援した――これが米国の歴史認識です。

 オバマ大統領にとって今回のベトナム、広島歴訪は、「謝罪することなく、従来の歴史認識を堅持する」の旅でした。

「謝罪なし」は日本から提案した?

—ところでオバマ大統領の「謝罪なき広島訪問」の舞台裏(ジョン・ケリー国務長官とキャロライン・ケネディ駐日大使による水面下での活動など)についていろいろ報道されています。米側から何かインサイドストーリーは流れていますか。

高濱 「謝罪なし」を最初に言い出したのは日本サイドだったことを仄めかす極秘外交文書の存在が明らかになっています。

 オバマ大統領は09年11月に訪日した際に、すでに広島訪問を考えていたのです。これはジョン・ルース駐日米大使(当時)がヒラリー・クリントン国務長官(当時)に宛てた機密公文(09年9月3日付け)で明らかになったものです。ウィキリークスが11年10月12日に暴露しました。

 この中でルース大使は09年8月28日、薮中三十二・外務事務次官(当時)との会談内容についてこう報告しています。「薮中事務次官は次のように述べた。オバマ大統領は日本国民の間で史上まれにみる人気を博しており、同大統領の11月の訪日に強い期待を抱いている」。

 「とくに日本の反核グループは、大統領が4月5日にプラハでした非核演説を踏まえ、大統領が広島に足を運ぶのではないかと推測している。日米両国政府はそのような世論の期待感を抑制すべきだ。オバマ大統領が原爆投下について謝罪するため広島訪問するというのは『non-starter』(考慮するに値しない)である」

 「適切なメッセージを携えた、派手さのないシンプルな広島訪問は確かに極めてシンボリックだが、今年11月の訪日に絡めるのは時期尚早である」

 オバマ大統領が広島を訪問するという考えをルース大使、薮中次官のどちらが言い出したのか、この公文からはわかりません。ただし、オバマ大統領が広島を訪問する可能性について両国政府が極秘裏に話し合っていたことは分かります。また日本側から「謝罪抜き」を提案していた事実も浮かび上がってきます。

—今回の広島訪問は次期大統領選に何らかのインパクトを与えそうですか。

高濱 トランプ氏は28日の選挙演説でこう述べています。「オバマ大統領は広島を訪問したが、謝罪さえしなければ問題にはしない。誰が気にするか、だれもしないだろう」。「黙認」というよりも「無視」といった感じです。ただツィッターでこう書いています。「オバマ大統領は日本滞在中に真珠湾奇襲について話したのかね。数千人の米国人が命を落としてるんぞ」。

 クリントン氏のほうは28日午後9時現在(東部時間)コメントしていません。

 予備選の最終段階に入り、トランプ氏もクリントン氏もそれどころではないのでしょう。また、国論を二分する「原爆投下」の是非論など、どちらも取り上げたくないでしょう。是非論を支持する人は民主党と共和党のどちらの支持層にもクロスオーバーして存在しています。1995年のギャラップ調査によると、「米大統領は原爆投下について謝罪すべきでない」と答えた共和党支持者は74%、民主党支持者は52%でした。

広島で謝らず、死体遺棄で謝罪

 トランプ氏は核使用論を展開していますからオバマ大統領の「核廃絶」宣言には真っ向から反対でしょう。

—オバマ大統領が広島を訪問する直前に沖縄で、米軍関係者が日本人女性の死体を遺棄する事件(いずれ殺人事件になると思いますが)が起こりました。当初危惧された広島訪問への悪影響はなかったようです。米国はこの事件をどう見ていますか。

高濱 確かにバッドタイミングでしたが、広島訪問そのものに悪影響は出ませんでした。

 ただ7月には沖縄で大々的な県民抗議集会が予定されているようです。今回の事件が普天間基地移設問題にどう影響を及ぼすか。1995年に米兵3人が少女を暴行した事件の悪夢を彷彿させます。成り行きを注視しています。

 オバマ大統領は日米首脳会談の席上、この事件について「謝罪」しました。これを受けて米メディアの中には、「広島では謝罪しないのに、元海兵隊員の殺人事件(米メディアは死体遺棄とは言わずに殺人と決めつけています)で謝罪した」と皮肉っぽく報道していました。

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