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『米中が朝鮮半島で談合する時 「北の核」と「米韓同盟」を取引しよう』『「米韓同盟」も「中朝」も賞味期限切れだ 「同盟国を捨てる機会」を見計る米中』(4/5・6日経ビジネスオンライン 鈴置高史)について

本記事を読みますと、ニクソンも周恩来も「朝鮮民族は米中にとっても扱いにくい」と思っていたのが分かります。日本はそういう民族を1910年~1945年まで仲間として統治していたのですから、如何にロシアの脅威があったにせよ、大変だったと思います。何せルーツは中国人、言葉も中国語の方言のようなものです。中国人をもっと「すれっからし」としたのが朝鮮人です。それはそうでしょう。事大主義で強い方に靡くのですから裏切りが当り前です。

沈志華教授とマイケル・スウェインが主張する「朝鮮半島の統一と非同盟」がセットという考えは中国に大きなメリットを齎すだけです。米韓同盟と中朝同盟をなくし、韓国主導で統一させたとしても、抗日政府を樹立した北朝鮮に正統性があるという親北派の多い韓国民を、“所謂従軍慰安婦”に見られるように、裏で操作できるようにするでしょう。また、韓国主導と言っても、政治システムを議会制民主主義化することはありません。金正恩の北朝鮮が抵抗するでしょうし、中国も共産主義国家で香港の一国二制度すら形骸化させてきているのに、朝鮮人に自由を認めるはずがありません。統一は李氏朝鮮時代の属国に戻すことを意味します。最初は韓国主導と言いながら、政治体制について議会制民主主義へのギャランテイーなしというか、朝鮮半島を第二の香港にするつもりでしょう。親中派議会人を多く送り込み、共産党一党独裁化することを狙っていると思います。

しかし、映画「スノーデン」で彼が横田基地に在籍していた時に、日本のインフラにマルウエアを埋め込んだというのが出て来るそうです。北や中国にも同じことができる技術を米国は持っていないのでしょうか?米国の軍事予算を増やすためとか、兵器を消費して最新型にするために、日本を脅威に晒すのだったら止めてほしい。

でも、北や中国に時間の利益は与えることは出来ません。腹黒い中国の言うがままに「朝鮮半島の統一と非同盟」に乗せられると中国を利するだけです。トランプがどう判断するかです。取引の達人と自負しているトランプですから習を追い込む姿勢を見せないと。中国国内は嘘の報道であふれるでしょうが。

4/5記事

「ヤルタ体制に戻れ」。中国の学者の主張が注目を集めている(写真:AP/アフロ)

前回から読む)

「米中が協力し朝鮮半島を統一・中立化する」構想が米中双方で語られる。北朝鮮から「核」を取り上げるのが目的だ。

「韓国主導で統一を」と中国学者

鈴置:今、アジア専門家の間で注目を集めている講演があります。中国の有力な学者が「韓国が主導する朝鮮半島の統一」を訴えたのです。

主張したのは中国の冷戦研究の第一人者と言われる華東師範大学の沈志華教授です。中朝関係史に詳しく、豊富な資料を駆使して『最後の「天朝」』(日本語)を書いた人でもあります。「中国と北朝鮮は血盟の間柄」との神話を打ち砕いた大著です。

沈志華教授は3月19日、大連外国語大学で「中朝関係史の角度から見た『THAAD問題』」(中国語)と題し講演しました。講演筆記は中国のSNS(交流サイト)の「微博」など、ネットで読めます。

—「韓国による統一」に中国政府が動く可能性があるのですか?

鈴置:この講演の存在をご教示下さった中国研究者の辻康吾氏は「『韓国による統一』を中国政府が直ちに受け入れるとは考えにくい。しかし、こうした主張が堂々と中国のネットに掲載されていることには注目すべきだ」と語っています。

これは私の見方ですが、この講演が広く公開されているのは「1つの選択肢として提示し、米国の反応を見る」目的と思います。

「韓国による統一」は上手にやれば中国の利益になりますが、その実現は米中の足並みがそろわなければ難しいからです。

辻康吾氏は毎日新聞の香港・北京支局長を歴任した後、東海大学と獨協大学の教授を経て、現代中国資料研究会代表を務めるベテランの中国学者です。講演筆記は長文なので、辻康吾氏による抄訳を以下に引用します。

北は敵、南は友人

  • 表面的には中朝は同盟関係にあり、米国と日本が支持する韓国は北朝鮮と対峙している。だが、これは冷戦の遺物に過ぎない。状況は根本的に変化した。北朝鮮は中国の潜在的な敵となる一方、韓国は中国の友人となった。
  • 中朝が朝鮮戦争を共に戦ったことによる特殊な関係はすでに瓦解した。原因は3つある。1970年代初めから中・米関係が大きく改善したという「外交的要因」。北朝鮮が欲しいものは何でも与えるという姿勢を中国が改めたことによる「経済的要因」。そして1992年の中韓国交正常化という「政治的要因」だ。
  • 中朝関係の根本的変化が北朝鮮を孤立させ、その核開発を引き起こした。北朝鮮の相次ぐ核実験が朝鮮半島の危機をエスカレートし、中国を取り巻く環境を不安定にした。
  • 中国の根本的な利益には平穏な環境、対外発展が必要だが、北朝鮮の核武装で失われた。中朝の利益は必然的に対立している。であるからして北朝鮮の核問題は中国が主導的に解決すべきである。北朝鮮の立場に立っての解決は不可能なのだ。

米・朝を喜ばせた「中韓」の悪化

—「中国が主導的に解決すべき」とは?

鈴置:中国政府はこれまで「北朝鮮の核問題は米朝が対立していることが原因だ。解決には米朝対話が不可欠だ」と主張してきました。

沈志華教授は「そんな外交的レトリックを使って逃げてばかりでは、問題は解決しない」と断言。そのうえで「こうした受け身の姿勢により、敵に得点を与えている」と政府を厳しく批判しました。

「敵に得点」とは北朝鮮の核武装を放置したため、東北アジアでの戦力増強や「米日韓3国軍事同盟」結成の名分を米国に与えたことです。

さらには、米軍の戦力増強の一環であるTHAAD(=サード、地上配備型ミサイル迎撃システム)配備により、中韓関係が悪化したことです。沈志華教授は、これも米国と北朝鮮を喜ばせるだけだった、と言うのです。

兵糧攻めで「統一」を飲ませる

—今の状況は、中国からは「米国の得点」に見えるのですね。

鈴置:米国や日本からは「北朝鮮の核武装を暗黙裡に認めることで中国は、在韓米軍撤収や米韓同盟廃棄と交換するカードを着実に作っている」と見えるのですがね。

実際、中国はしばしば「米韓合同軍事演習の中断と、核実験の中断を交換せよ」と米朝に呼び掛けます。表「朝鮮半島を巡る米・中のカード」で示したように、米朝対話のシナリオの大団円として中国は「米韓同盟廃棄」を考えていると思われます。

朝鮮半島を巡る米・中のカード

米国 中国
THAAD配備留保 従来より強い対北朝鮮制裁容認
米韓合同軍事演習の中断と一部制裁の解除 北朝鮮の核・ミサイル実験の中断
米朝平和協定(不可侵協定)の締結  ・米朝国交正常化  ・在韓米地上軍撤収  ・在韓米軍撤収  ・米韓同盟廃棄 北朝鮮の核兵器廃棄  ・核弾頭の増産中断  ・弾頭再突入技術の開発中断  ・弾頭小型化技術の開発中断  ・保有核兵器の全廃
「朝鮮半島の非核化・中立化」の制度的保障

注)左右の項目は必ずしも連動しない

—では、沈志華教授はどんな大団円を主張するのですか。

鈴置:結局は「米韓同盟廃棄」ということなのでしょうが、表向きは「南北統一」を掲げています。講演では以下のように語っています。

(中国にとって必要な)米日韓3国軍事同盟の打破と、朝鮮半島の長期的な平和には第1に「統一」、第2に「米国との関係」がポイントになる。

そして「統一された朝鮮半島は中国の脅威にならない」「それどころか韓国主導の統一国家は、中国・東北部の経済発展に大きく寄与する」と強調したのです。

—確かに統一すれば、米国や韓国に負けまいと作った北朝鮮の核は不要になります。でも、どうやって統一に持って行くのでしょうか。

鈴置:ええ、その疑問がわきます。「統一」が簡単にできるのなら、とっくにしているはずです。ことに「韓国主導の統一」を北朝鮮が素直に飲むとは思えません。途方もない状況を作れば別ですが。

沈志華教授は講演で「統一」に至るプロセスに一切、触れていません。が、現実には「途方もない状況を作る」――例えば、中国が北朝鮮との貿易を完全に中断して兵糧攻めにする――くらいしか選択肢はありませんので、それを念頭に置いていると思います。

あるいは米国が北朝鮮の核・ミサイル施設を先制攻撃し、金正恩(キム・ジョンウン)政権が死に体となった後の「出口戦略」として「韓国による統一」が有効と考えているのかもしれません。

人民解放軍が北に侵攻

—中国は「米国による対北先制攻撃」は、何が何でも阻止したいのではありませんか?

鈴置:中国政府はその姿勢を打ち出してはいます。しかし「米国による北の核開発能力の除去」、果ては「金正恩の除去」を期待する中国の専門家もいます。

何と、中国人の学者が米国での講演会で堂々とそう語ったのです。聯合ニュースが「China scholars, policy makers begin talking about supporting surgical strike on N.K.: Chinese professor 」(2016年10月7日、英語版)で報じています。以下は前文と本文の書き出し部分の邦訳です。

  • 中国の学者と当局者が、北朝鮮への外科手術的な攻撃と指導者である金正恩の権力からの追い落としを、政策の選択肢として支持する方向で議論し始めた。
  • コロンビア大学(Columbia University)のZhe Sun上級客員研究員がワシントンで開いた安全保障に関するフォーラムで、そうした会話が中国の指導層で交わされていると明かした。

情報源を明示した上での報道です。記事によると、Zhe Sun上級客員研究員は以下のように踏み込んで語りました。

  • 米韓による「外科的手術と首のすげ替え」を支持すべきだと語り始めた学者や当局者がいる。もっと過激な意見もある。中国が指導者(金正恩)を換えねばならない。軍が国境を超えて北朝鮮に駐屯し、核開発の放棄と改革開放政策の採用を迫る――との意見だ。

暗殺事件の引き金か

—金正恩がこれを読んだらパニックに陥ったでしょうね。

鈴置:そう思います。隣の大国、それも同盟国が自分の国への侵攻と自身の「除去」を議論し始めたのです。この記事は英文でしたので、そのまま世界中の媒体に掲載されました。「面子も丸つぶれ」です。

マレーシアでの異母兄、金正男(キム・ジョンナム)氏暗殺事件(2017年2月13日)は、この記事が引き金となった可能性があります。「首をすげ換える」としたら、金正男氏が後継と見なされていましたから。

—中国の人民解放軍が北朝鮮に侵攻して核開発を止める、なんてことがあり得るのでしょうか。

鈴置:米国に先に実施されて主導権を握られるぐらいなら、自分が先にやろうと中国が考えても不思議ではありません。

ちなみに、私の書いた近未来小説『朝鮮半島201Z年』(2010年11月刊)でも、米軍ではなく中国軍が北朝鮮に侵攻して「核」を北から取り上げます。

北京の目と鼻の先に空軍基地

—なるほど「中国による侵攻」も否定できないのですね。では「統一韓国」が生まれた後、米韓同盟はどうすべきだと沈志華教授は言っていますか?

鈴置:それにも明確には言及していません。しかし米韓同盟は当然、廃棄すべきだと考えていると思います。そうしなければ中国は米軍が駐留する「統一韓国」と国境を接してしまいます。

北朝鮮を消滅させるために汗をかく中国としては割の悪い話です。それを避けるために、米軍は朝鮮半島南部――現在の韓国にだけ駐留できるとの約束を取り付ける手もあります。

しかし今や、米国と対等な関係を目指す中国人の目には、それも不愉快千万な状況に映るでしょう。中国は米国のそばに軍事基地を持たない半面、米国は北京と目の鼻の先の韓国に空軍基地を置き続けるのですから。

韓国の反米情緒を活用

—韓国が同盟廃棄を飲むと沈志華教授は考えているのですか?

鈴置:直接的には語っていませんが、講演では「米日韓3国軍事同盟」に関連し、次のように述べています。

  • 韓国には親米勢力と反米勢力が存在する。外交的な手段を上手に駆使すれば韓国の反米情緒をかき立て、反米勢力をして「3国軍事同盟」を解体することができる。

統一すれば、反米派の「米国との同盟は不要」との主張がより説得力を持つようになります。仮想敵である北朝鮮が消滅するのですから。

—しかし、中国というもっと大きな脅威と国境を接することになりませんか、「統一韓国」は。

鈴置:それを懸念して米国との同盟を続けたいと考える韓国人もいるでしょう。ただ日本人や米国人が想像するほどには、彼らの「中国に対する恐怖」は大きくないと思います。

千数百年間にわたって、朝鮮半島の歴代王朝は中国大陸の帝国の一部――朝貢国でした。「中国人の下で生きて行くこと」に韓国人は慣れているのです。それを楽しいと思うかは別の問題ですが。

ヤルタ体制に戻れ

—米国は米韓同盟の廃棄に応じると沈志華教授は見ているのですか。

鈴置:少なくとも呼び掛ける価値は十分にあると考えているようです。先ほど引用した部分でも「朝鮮半島の長期的な平和には『統一』に加え『米国との関係』がポイント」と言っています。

辻康吾氏は沈志華教授の講演の最後の部分「冷戦で崩壊してしまったヤルタ体制に戻れ」に注目します。中国にとって「ヤルタ体制」とは「アジアのことは中国が仕切る」との国際的な約束なのです。

沈志華教授は「ヤルタ体制では朝鮮半島や台湾は米国の防衛線の外に置かれた」とも語っています。それからすると「統一韓国」は中国のシマになるべきと考えているはずです。狙いは最低で朝鮮半島の中立化、できれば「統一韓国」と中国の同盟でしょう。

トランプ政権が北朝鮮の核武装阻止に本気で動き始めました。中国にとっては「北の核」と「米韓同盟」を同時に廃棄しようと米国に取引を持ちかける、絶好のチャンスが来たのです。

沈志華教授はそれを「韓国による統一」という糖衣でくるみ、米国や韓国が飲みやすくしたのです。もちろん北朝鮮に配慮せねばならない中国政府は「過激な意見」と見なすのでしょうが。形式的ではありますが中朝同盟はまだ、存在しています。

米国から呼応

—米国が韓国を見捨てるでしょうか?

鈴置:興味深いことに、沈志華教授が「朝鮮半島の統一」――本音ベースでは「ヤルタ体制への復帰」を唱えた直後に、それに呼応するような意見が米国で語られました。

「核問題解決には、米中が協力して朝鮮半島の統一と非同盟化を進めるしかない」との論文が有力外交誌に載ったのです。「米韓同盟を打ち切る」つまり「韓国を見捨てる」のが前提の議論です。

「Foreign Policy」の「China and America Need a One-Korea Policy」(3月21日、英語)です。

—4月6、7日と米国で米中首脳会談が開かれます。

鈴置:いずれの記事も、それに合わせて掲載されたかと思われます。

(次回に続く)=4月6日に掲載予定

4/6記事

1972年、ニクソン大統領と周恩来首相が交わした“本音”は、今も米中の共通認識となっている(写真:AP/アフロ)

前回から読む)

米国と中国が仕切る「朝鮮半島の統一・中立化」は実現するのか。

統一による平和

前回は「米中が協力して朝鮮半島の統一を進めよう」との声が両国であがり始めた、という話でした。

鈴置:中国の学者、華東師範大学の沈志華教授の主張を要約すれば「北朝鮮の核問題は小手先では解決しない。『統一』という大技を発動すべきだ。それこそが中国の利益になる」です。

米国にも「統一による非核化」を主張する学者が登場しました。カーネギー国際平和財団( the Carnegie Endowment for International Peace)のマイケル・スウェイン(Michael Swaine)シニアフェローです。

米外交誌の「Foreign Policy」に「China and America Need a One-Korea Policy」(3月21日、英語)を載せました。

この記事の副題は「北朝鮮(の核武装)を止めるには、朝鮮半島の将来の統一と、非同盟を保証するしかない」です。

「統一による非核化」という点で沈志華教授と全く同じですが、より明確に「中立化」をうち出しています。原文は以下です。

  • The only way to stop North Korea is by guaranteeing the peninsula will eventually be united–and non- aligned.

「日本は我慢しろ」

本文のポイントを訳します。

  • この数十年間、米中韓日、そして時にはロシアが北朝鮮に核武装計画を断念させようと懐柔、威嚇、甘言をもって努力を続けてきた。しかし、完全な失敗に終わった。
  • 米中は過去の失敗を再演するのではなく、協力を始める時だ。米中は双方が受け入れることのできる朝鮮半島の平和的な統一を目指し、誠意を持って行動に移るべきだ。半島の統一と、広い意味での非同盟化(すなわち、外国軍が駐留しない)が解決策である。

—なぜ今、こうした声が米中であがり始めたのでしょうか。

鈴置:北朝鮮の核武装が時間の問題となったからです。ただ、平和裏に解決するには中国の強力な経済制裁しか手がない。けれど、それは北東アジアの安保環境の激変につながる。だからこそ、スウェイン・シニアフェローは次のように強調したのです。

  • 非同盟化は韓国と日本を危険にさらす。しかし、北朝鮮に対し極度の孤立と崩壊の危険を選ぶのか、あるいは核武装なしで安全を確保するのかを問いただす道は、中国の対北影響力を完全に発揮することだけなのだ。

軍事力を使わずに北朝鮮から核を取り上げるには、中国の経済制裁を通じた「統一・中立化」しかない。米国から事実上、同盟を打ち切られる韓国と、大陸に向けた盾を失う日本は不安にかられるだろうが、北の核をなくすのだから我慢しろ、ということです。

出そろう取引材料

沈志華教授はこの状況を見て「米国が困っている今だからこそ、朝鮮半島から手を引かせられるチャンスだ」と考えたのでしょう。

スウェイン・シニアフェローは「統一・中立化構想」を「future Korea」と名付け、これを協議する米中双方の「取引条件」にも具体的に言及しています。以下です。

  • 米国はすべての戦闘力の朝鮮半島からの撤収と、米韓連合司令部の解体、米韓合同軍事演習の中止、THAAD(=サード、地上配備型ミサイル迎撃システム)配備撤回の可能性を探らねばならない。
  • 一方、中国は北朝鮮とのすべての経済的な関係の中断を準備すべきだ。「統一韓国」に対しては明快で拘束力のある安全保障上の保証を与える必要がある(これには外国の軍隊が挑発的な姿勢で展開しないとの約束も含む)。将来は中朝軍事同盟も廃棄すべきだ。

表「朝鮮半島を巡る米・中のカード」でも示したように、両国が話し合うとするなら、この辺が取引材料となるのです。

朝鮮半島を巡る米・中のカード

米国 中国
THAAD配備留保 従来より強い対北朝鮮制裁容認
米韓合同軍事演習の中断と一部制裁の解除 北朝鮮の核・ミサイル実験の中断
米朝平和協定(不可侵協定)の締結  ・米朝国交正常化  ・在韓米地上軍撤収  ・在韓米軍撤収  ・米韓同盟廃棄 北朝鮮の核兵器廃棄  ・核弾頭の増産中断  ・弾頭再突入技術の開発中断  ・弾頭小型化技術の開発中断  ・保有核兵器の全廃
「朝鮮半島の非核化・中立化」の制度的保障
 

注)左右の項目は必ずしも連動しない

時間がかかる米中合意

—「future Korea」は実現するのでしょうか。

鈴置:米中の話し合いというか、談合路線には1つ難点があります。合意を得るのに、あるいは対北制裁の効果が出るのに時間がかかりそうなことです。下手すると、その間に北朝鮮が核武装に成功してしまう。

4月2日、FTがトランプ(Donald Trump)大統領にインタビューしました。4月6、7日の習近平主席との会談直前ですから「米中間の取引」について聞いています。

日本語では日経の「〔FT〕トランプ氏会見、中国に北朝鮮への対応迫る」(4月3日)で読めます。FTの元記事は「Donald Trump warns China the US is ready to tackle North Korea」です。

FTの質問は「中国が北朝鮮への圧力を強める代わりに、将来の朝鮮半島からの米軍引き揚げを保証する『大きな取引』を検討しているか」でした。

それに対しトランプ大統領は「中国が北朝鮮問題を解決しないなら、我々がやる。今言えるのはただそれだけだ」と述べました。原文は以下です。

  • Asked if he would consider a “grand bargain” ? where China pressures Pyongyang in exchange for a guarantee that the US would later remove troops from the Korean peninsula ? Mr Trump said: “Well if China is not going to solve North Korea, we will. That is all I am telling you.”

その前段では「中国は北朝鮮に対し非常に大きな影響力を持っている。中国は北朝鮮問題で我々に力を貸すか否かを決めることになる」「米国に協力するなら、それは中国にとって非常に良いことだ。協力しないなら、誰にとっても良くない結果になるだろう」と語っています。

左派政権誕生を待つ中国

要は「北朝鮮への強力な経済制裁をかけるよう中国に要求する。それが嫌なら米国は北への先制攻撃で核問題を解決する」と宣言したのです。

「大きな取引」(grand bargain)に対しては否定も肯定もしていませんが、トランプ大統領の一連の発言からは「問題解決に時間をかけるつもりはない」とのワシントンの空気がひしひしと伝わってきます。

もっとも、中国は「大きな取引」あるいは「future Korea」にすぐには応じないと見る向きが多いのです。5月9日の韓国の大統領選挙で左派「共に民主党」の文在寅(ムン・ジェイン)候補が勝つ可能性が極めて高いからです。

「反米親北」色の濃い次期政権が米国との関係を悪化させれば中国は米国への譲歩、つまり対北圧力なしでの米韓同盟の弱体化、消滅を期待できるのです。

成均館(ソンギュングァン)大学のキム・テヒョ教授は朝鮮日報に寄稿した「米国は北朝鮮より韓国を懸念する」(4月3日、韓国語版)で以下のように書いています。

  • 中国にすれば、韓国の次期大統領さえちゃんと選ばれれば問題は解決する。あえて米国と韓米関係で争う必要はない。

韓国を格下げした米国

—「米中の談合」が今すぐ始まる可能性は低いということですね。

鈴置:その通りです。ただ、それでも「米中による統一・中立化に向けた話し合い」には目を向けておく必要があります。それは「筋がいい解決法」だからです。

まず、この方法を捨てれば、軍事行動をとるしかなくなります。米国が北朝鮮の核・ミサイル施設を破壊する場合、空・海軍力だけを動員すると見られています。

地上戦に持ち込めば被害が大きくなるからです。ただ、それは米国の思惑であって、限定戦争のつもりが北朝鮮の反撃にあって、全面戦争に拡大する可能性がないわけではない。

その際にも中国は参戦しないでしょうが、北朝鮮からの難民を引き受けるリスクが高まります。それに戦争の結果、北東アジアにおける米軍の存在感が一気に高まってしまいます。

もう1つ、米中にとって「筋がいい」理由があります。それは賞味期限切れの「米韓」「中朝」の両同盟を、北の核問題を解決するとの名分の下、解消できるからです。

沈志華教授が強調したように、中朝同盟は形骸化したうえ、中国にはお荷物になっています(「米中が朝鮮半島で談合する時」参照)。

米国にとっても韓国との同盟は不良資産化しています。米国が同盟国と中国包囲網作りに励む中、韓国だけがそっぽを向いています。それどころか米中対立を利用して、両国を天秤にかける「二股外交」まで始めました。

米国が巨額の予算と人材を投入し、韓国を北朝鮮の脅威から守っているというのに、あまりのやり方です。

ティラーソン(Rex Tillerson)国務長官が韓国を「同盟国」ではなく「パートナー」と呼んだのも当然です(「米国から『同盟国』と呼ばれなくなった韓国」参照)。

共通の主敵を失った米韓、中朝

—なぜ、そんなことになったのでしょうか。

鈴置:米韓が共通の主敵を失ったからです。米国の最大の仮想敵は中国。しかし韓国は絶対に「隣の巨人」中国を敵に回そうとはしません。

在韓米軍へのTHAAD配備問題が揺れるのは、米韓同盟の矛盾の象徴です。中国との良好な関係を維持したい韓国は、在韓米軍を守るための兵器の導入に難色を示し続けたのです。次期政権は配備を拒否するかもしれません。

仮想敵の異なる国同士の同盟は極めて不安定です。どうせ長続きしない同盟なら、それを捨てて見返りに中国から「強力な対北制裁」を引き出そうと米国が考えても不思議ではありません。

半島の構図は合わせ鏡です。中朝も共通の敵を失いました。中国の仮想敵は米国と日本であって韓国ではありません。

半面、北朝鮮の主敵は韓国であって米国ではありません。できれば米国や日本とは関係を改善し「国境を接する巨人」である中国を牽制したいのです。

寿命の尽きた2つの同盟

—確かに「米韓」「中朝」の2つの同盟は寿命が来ていますね。

鈴置:いずれも惰性で続いているのです。沈志華教授はこの構図を見切ったからこそ「強力な対北制裁」つまり「北朝鮮の切り捨て」を実行し、その代価として米国に韓国を捨てさせようと主張しているわけです。

赤字の事業を抱える大企業が2社あると想像下さい。収益が悪化し続けるというのに、ライバルと張り合うため2社ともその事業を嫌々ながら続けてきた。ある日、その馬鹿馬鹿しさに気づいた2社のトップが談合、それぞれの赤字事業を同時に切り捨てる――というアイデアなのです。

—それはあり得ますね。ただ、最近の米中は決して仲が良くない。

鈴置:でも、朝鮮半島に関しては「極めて仲がいい」のです。米中には「朝鮮民族の内輪もめに引き込まれ、多大の人的損害を出した朝鮮戦争の失敗を2度と繰り返したくない」との共通認識があるからです(「韓国は無視して『パンドラの箱』を開ける米国」参照)。

1972年、米中関係正常化のためニクソン(Richard Nixon)大統領が訪中しました。その際、周恩来首相に以下のような本音を漏らしています。

「衝動的な人たち」に嫌気

ニクソン訪中機密会談録』(毛里和子・毛里興三郎訳)の100ページから引用します。『増補決定版』では136ページです。原文は「Nixon’s Trip to China」の「Document 2」の17ページで読めます。

  • 朝鮮人は、北も南も感情的に衝動的な人たちです。私たちは、この衝動と闘争的態度が私たち両国を困らせるような事件を引き起こさないよう影響力を行使することが大切です。朝鮮半島を我々両国政府の争いの場とするのは愚かでばかげたことです。一度起こってしまいましたが、二度と起こしてはなりません。首相と私が協力すればそれを防ぐことができると思います。

周恩来首相も次のように答えました。

  • そのことがまた南北の接触を促進するでしょう。

「感情的に衝動的な」(emotionally impulsive)人々には大昔から、米中ともに嫌気がさしているのです。

日本は米中が突然に談合し、朝鮮半島を投げ捨てる日に備える必要があります。それは「北の核」が平和的に解決される時はもちろん、力で解決される場合にも「後始末」として起こり得るのです。

(次回に続く)

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『中国の民主化、困難な理由と実現の可能性を問う 民主化運動の楊建利氏「日本よ、アジアの民主共同体の盟主に」』(4/5日経ビジネスオンライン 福島香織)について

民主化といっても幅があります。ここでの民主化は「人民民主」ではなく、「議会制民主」を指していると思います。ただ、中国が民主化したとしても、日本や欧米の民主と違い、韓国型になるのではと予想します。つまり、法治国家でない(事後法当たり前、憲法裁判所が条約無効の判断等)、基本的人権(産経新聞のソウル支局長の軟禁)もない国です。今の中共でも同じようなことをしています。民主主義の基盤は選挙という外形だけでなく、国民の民度・教育によって齎されます。反日教育を長く受けて来ていて、相手を憎むことしかできない国民に多様な見方ができるかどうか。まあ「騙す方が賢く、騙される方が馬鹿」という嘘つき民族ですから。

日本は明治時代(1890年)から選挙制度を採り入れ、大正(1925年)には普通選挙、戦後すぐ(1945年)には女性の参政権も認められました。別に米国から教わらなくとも、不平等条約のお蔭で、民主主義は機能してきた訳です。森友問題で教育勅語が槍玉に挙がっていますが、左翼にとって都合が悪いものですから、「憲法違反で1948年には廃止された」とか言っています。仲間を平気で裏切り、リンチしたり、ゲバ棒を振るう輩にとって、道徳律としての教育勅語は自分達の生き方に反するからでしょう。「汝臣民は、父母に孝行をつくし、兄弟姉妹仲よくし、夫婦互に睦び合い、朋友互に信義を以って交わり、へりくだって気随気儘の振舞いをせず、人々に対して慈愛を及すようにし、学問を修め業務を習って知識才能を養い、善良有為の人物となり、進んで公共の利益を広め世のためになる仕事をおこし、常に皇室典範並びに憲法を始め諸々の法令を尊重遵守し、万一危急の大事が起ったならば、大義に基づいて勇気をふるい一身を捧げて皇室国家の為につくせ。」とあり、確かに戦後の押付け憲法の主権在民からは外れますが、今でも国家元首は天皇であり、内容でおかしい所はありません。今の法律に合わない所を読みかえれば良いだけです。佐伯啓思氏の本に「共和制の市民は、王権神授説を採らず、天賦人権説を採るのであれば、王の保護を受けない代わりに、自分達の身は自分で守ることが暗黙の裡に要請されている」とあったと記憶しています。(正確でないかも知れませんが)。そもそも教育勅語を廃止した1948年はGHQの占領時代で彼らの意向に沿わないものは、検閲してまで止めさせていた時代です。それも考慮に入れねば。押付け憲法と同じです。

中華民国時代には、中国国民党は孫文の後、欧米の支援を受けた蒋介石と日本の支援を受けた汪精衛(汪兆銘)に分裂しました。中国人の総てが悪い人間ではない証左とも言えます。しかし、今の時代、火力を持たない、一揆のような形態の反逆では簡単に鎮圧されます。天安門事件が良い例でしょう。軍の一部でも味方につけなければ、いくら大衆が不満を持っていても、革命は成功しません。却って国民の不満を逸らすため、日本とか台湾とか戦争を起こす可能性があります。

やはり、外部の力を借りなければ、中共政府を転覆させるのは難しい気がします。特に米国がどう動くかです。米国は北の問題が片付き次第、中国を金融制裁するようになれば、情勢は変わるかもしれません。勿論、中国が真の民主主義国家となり、平和を愛好する国になってくれれば、日本としても安心です。でも可能性としては限りなく低いと思っています。

日本は既に民主主義の模範国となっています。ただ反日国家のプロパガンダを撥ね返せないで来ました。米国の圧力があったからです。米国も中国の裏切りに気付いたようですので、これからは徹底的に反日国の嘘を暴いていく時期と思います。

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中国は民主化する可能性があるのか。“中国屋”と呼ばれる中国専門ジャーナリストや研究者の永遠のテーマだが、先日、米国最大手の中国の民主化運動を推進するNGO・公民力量の主宰者、楊建利が東京を訪れていたので、私もインタビューしたし、明治大学現代中国研究所が主催した講演会にも行ってきた。独裁体制をより強化しようとする習近平政権の登場で、中国の“党内民主”化は以前よりも遠のいたようではあるが、楊建利が“中国の民主化をあきらめない”とする分析もなかなか興味深いので、ここで紹介したい。

まず、困難な理由を分析すべき

楊建利は高校を経ずに飛び級で山東省師範学院数学系に入学し、1989年の民主化運動に参加したのち、米国に移住。ハーバード大学で政治経済学、カリフォルニア大学バークレー校(UCバークレー)で数学の博士の学位を取得し、米国に拠点を置きながら、中国民衆の権利と自由を推進する活動を続けてきた。当然、中国当局からは中国入国拒否のブラックリストに入る人物だが、2002年に中国東北部の失業者大規模デモの状況を視察するため、他人のパスポートで入国したところを逮捕され、不法入国などで5年間投獄された経験を持つ。2007年、当時のブッシュ大統領の働きかけで釈放され米国帰国後、中国のNGO・公民力量を創設し、中国の民主化を海外から働きかける。

楊建利は、中国の民主化は非常に困難、と認めながらも、その実現をあきらめていない。その困難を打開するためには、その困難である理由を分析すべきだし、日本を含む国際社会の支援が必要だと指摘する。

まず中国の喫緊の民主化運動が挫折した歴史、1989年の天安門事件当時を振り返ろう。この虐殺事件は中国人大衆と共産党政府の双方に深いトラウマを残した。民衆は政治について議論することに恐怖を覚えるようになった。共産党政府は、人民が本音のところで自分たち共産党の統治を否定していることに気づいてしまった。人民と政府、双方が人権や民主化の問題を口にしないようになった。一方、国際社会においては、旧ソ連が解体され、このことは共産党の危機感を呼び覚ました。中国は人道無視の残酷な国家として国際社会で孤立した。共産党政府はこの危機をどう打開するべきかわからず、狼狽した。

救いの手をのべたのは、実は米国だった。ブッシュ政権は天安門事件発生後3週間たたないうちに、特使を派遣、外交上の立場としては中国を非難するものの、米中関係は維持していく方針を伝え、鄧小平は安堵した。米国内では、反中世論が盛り上がったが、日本が米国の意向を汲んで真っ先に対中経済制裁を解くことで、国際社会世論の流れを変えることになった。

この日本の対中経済制裁解除の代わりに、中国民主化運動リーダーの物理学者・方励之の米国への出国を中国が認めた裏取引については、方励之自身も知らず、彼は死ぬまで日本の態度を非難していたが、これは米国世論をなだめながら中国との関係回復を模索していた米国の頼みを断りきれずに、日本が泥をかぶったかっこうだった。この件については、産経新聞が当時大使だったジェームズ・リリーと橋本恕に生前インタビューし、裏をとっている。

日本が国際社会の対中包囲網に穴をあけることになるが、やがて欧米も立場を変え、中国に対する投資を競うようになった。欧米諸国の建前は、いわゆる中産階級理論、つまり中国が豊かになれば中産階級が生まれ、彼らは自然と民主、自由を求めるようになり、中国の民主化が進むであろう、という主張だった。

だが実際はこの通りにはならなかった。むしろ、習近平政権になってから、ますます民主化は遠のき、毛沢東時代に先祖返りを見せている。

なぜ中産階級理論は破たんしたか

楊建利は「なぜ中産階級理論は破たんしたか?」と、考える。

まず鄧小平の南巡講話以降、中国共産党中央は落ち着きを取り戻し、冷静に現実を見極めることができた。そして一つの結論にたどり着く。人々への共産党への忠誠は、イデオロギーは関係ない。むしろ経済、金による。そこで、党員に金儲けをさせ、腐敗させ、そのうまみを与え弱みとして党への忠誠を約束させる方法をとる。腐敗を統治の手段とし、全面的な腐敗を認めたのだった。

さらに党員に資本家を招き入れ、“有限会社共産党”化することで、経済成長を推進していく。一方、人民の人権水準は依然低いままにしておき、人民を安価な労働力として使い倒す。この安価な労働力にひかれて、外交資本が中国に殺到し、奇跡的な経済成長を実現させた。

共産党の政治エリート、資本家ら経済エリート、そして政治・経済エリートが協力して掌握するメディアによる洗脳教育で知的エリート、文化エリートも有限会社共産党の一員となる。プロレタリアートのための共産党は、完全にエリートたちの金儲け機関に変化してしまった。エリートになれば、共産党の利益にあずかれる、というシステムを作り上げれば、エリート=中産階級は共産党に刃向かわなくなる。党の主導によって実現した経済発展で生まれた中産階級エリートは、党に忠誠を誓い、中産階級が民主化を求めるという欧米式の中産階級理論は破たんした、という。

だが、利益と腐敗で結びついた党中央が絶対的安定を築いたかというと、そうではなかった。楊建利はこの結果、中国が二つに分断された、という。つまり、有限会社共産党の利益に属するエリート。そして、10億人以上の、党の利益にあずからない、何の力もない、庶民の中国。国際社会が中国に持つイメージは有限会社共産党だが、それはメディアコントロールの影響であり、現実は10億人以上のエリート以外の人民の国だ。

分断とウィルスと反腐敗と

一方、国際社会、特に欧米社会の状況を振り返ると、中国の貿易を通じての経済力によるコントロールを受けたことで、“中国ウィルス”にも感染してしまった。楊建利は言う。

「米国では、ある作家が、ウイグル族の本を出版するとなると、編集者はわざわざ中国大使館に電話して、これは政治的目的の本ではありません、文化を紹介する本です、と事前に告知するんです。出版の自由がある米国で、なぜ、編集者はわざわざ中国大使館の許可をとらなければならないのでしょう。米国メディアは時の政権を批判したりからかうネタは放送できるが、中国政府をネタに扱うときは慎重になる。ハリウッドも中国映画市場を考えると中国批判はできない。中国政府は米国に文句をつけることができるが、米国は中国の嫌がることはできません」

中国ウィルスに感染すると、公然と中国を批判できないのである。

中国の経済発展に伴い、もう一つ重要な問題が台頭してくる。それが安全保障問題だ。共産党の正当性、権威を支える柱は三本ある。経済力、ナショナリズム、軍事力だ。経済力の発達は軍事力増強につながり、それはナショナリズムの発揚につながる。天安門事件の民主化の挫折後、欧米民主国家は、中国をこのような国に育ててしまった。

そういう状況で習近平政権が登場した。

習近平政権は近代中国史上、最大の反腐敗運動を開始した。同時に、民主化・法治化を徹底的に拒む姿勢を見せた。党独裁の絶対維持の決心を見せた。

習近平の反腐敗キャンペーンには三つ理由がある。一つは政敵打倒、独裁の強化だ。二つ目は、政治エリートに嫉妬する国民の支持を得ることだ。三つ目の理由は、現実として共産党に新しく生まれる中産階級を吸収する余裕がない。つまり経済成長がすでに下降に入った段階で、これ以上、統治集団=利益集団メンバーを増やすことができないのだ。

となると、楊建利が想像する習近平の思考は次のようになる。中国の構造は、利益にあずかれるエリート(中産階級)と、利益にあずかれない大衆の二つに分裂している。この二層構造が不安定となる原因だと考えた。だから、エリート層を弾圧した。反腐敗キャンペーンで政治的エリート、経済エリートを弾圧し、メディア・言論統制強化で文化エリートを抑え込む。だが、習近平は毛沢東のように庶民の力を利用する勇気はない。毛沢東は庶民から崇拝されていたが、習近平は庶民との間にそういう関係を構築しようとして、結局できなかった。だから、庶民に対する締め付けも強化した。

三つに分断、三つの根拠、四つの条件

この結果、何が起こったか。エリート・中産階級が統治集団と距離を置くようになり、庶民も統治集団と距離を置き、中国は三つに分断されることになった。楊建利によれば、これは習近平にとって大きな危機のはじまりだという。

つまり、まず、ゲーム理論になると、二人のプレイヤーが三人のプレイヤーになり、中国共産党独裁の基盤が揺るがされる。次に、共産党統治の正当性の三つの根拠、経済発展、ナショナリズム、軍事力のうち、経済発展そのものが揺らぎ、そのバランスをとるために、ナショナリズムと軍事力を利用せざるを得なくなる。その結果、周辺国家と摩擦を起こし、外部の敵をつくることで、政権の維持をはかろうとするようになる。これが、今の習近平政権の状況だという。

だが、こういうかつてないほど共産党統治が不安定な状況だからこそ、民主化運動にとってはチャンスもあるのだという。

「いますぐ、革命は起きるとは思っていないのですが、それが起きるときのために準備を整えておくことが今必要だと思います。民主化には、四つの条件が必要です」

四つの条件とはつまり、①政治の現状に対する普遍的かつ強い不満、②持続可能な全体的な生命力のある民主化運動、③共産党指導部の分裂、④国際社会の承認と支持。

このうち中国にすでにあるものは①だ。

エリート外の10億人以上の中国人はおおむね現状に不満を抱いている。それどころか、習近平政権の反腐敗キャンペーンによって中産階級、エリート層にも不満が広がっている。

②は現在は存在しない。だが、習近平の反腐敗キャンペーンによって統治集団から離反した政治・経済エリート、中産階級が底辺の庶民層との関係を回復すれば、民主化運動の新たな勢力を形づくることができるかもしれない。

③指導部の分裂も、激しい権力闘争は継続しているが、決定的な政治路線の違いによる対立はまだ表れていない。だが可能性は存在している。その可能性を示したのは、クーデターを起こそうとした薄熙来だ。今の統治システムに不満を持つ指導部は存在する。指導部に分裂が起きたとき、それに呼応して、②の民主化運動が起きやすくなる。

そして最後に重要なのが、国際社会の支持。天安門事件のとき、もし国際社会がもっと積極的に中国に干渉していればどうなったか。

日本よ、民主共同体の盟主に

楊建利はここで、今の中国の現状についてこう警告する。

「習近平政権は、総書・国家主席二期目10年の統治システムを変更して、三期目も権力を維持する個人独裁化を進めようとしている。これは従来の共産党秩序、システムを破壊しようとする動きだ。

となると、習近平政権が三期目を続けるには新たな正当性の理由が必要だ。その正当性の理由付けとしてありうる可能性の一つは選挙だ。習近平が“人民の選挙による大統領”であれば、その権力の正当性は建前上認められる。だが、独裁志向の強い習近平により選挙が導入されたならば、不正選挙の似非民主であろう。その似非民主もうまくやれば、やがて本物の民主になる可能性もあるが、むしろユーゴスラビアの大統領のミロシェビッチのような結末になる可能性が強い。

もう一つの可能性は、何らかの政治的危機を演出することだ。非常事態を乗り越えるために、経験豊かな習近平が三期目も総書記・国家主席を続投する、という理由になる。その政治的危機とは、戦争の可能性がある。そのシナリオを考えて対策を立てる必要はあるだろう」

おりしも、米国ではトランプ政権が誕生し、国際社会の旧来の秩序も変革に差し掛かっている。戦争、紛争の火種はあらゆるところにあり、また揺るぎないと思われてきた人権や自由や民主の普遍的価値観よりも、自国の利益を最優先に考えることが、先進国の間でもトレンドとなってきた。楊建利は、トランプ政権が当初のような対中強硬姿勢を今後も貫く可能性について「まだどうなるかは不確定だが、あまり期待はしていない」と語り、むしろ米中二強国によって世界が振り回されることを懸念する。

そういう時代だからこそ、日本に期待を寄せたいという。

「アジアで最も経済実力を持つ民主化された先進国である日本に、アジアをカバーする民主共同体の盟主となってほしい。中国の民主化運動にもっと興味をもってほしい。かつて辛亥革命を手伝ったのも日本人でしたね。中国が民主化し、共通のルールや価値観のもとで、話し合いで問題を解決できる近代国家になれば、日本にとって一番の安全保障になると思います」

国際秩序の大きな変わり目を迎えた今、そろそろ日本の担うべき役割や責任を真剣に考える時期ではないだろうか。

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『遥かなる「ローマの休日」、60年後のEUの憂鬱 分裂に向かうのか、再結束に踏み出すのか』(4/4日経ビジネスオンライン 岡部直明)、『ブレグジットと「帝国健忘症」 帝国時代よりナチスとの戦争に重点を置く歴史教育に問題』(4/4JBプレス FT)について

4/4韓国大使を戻したのは、トランプの要請だったのでは。普通は「このタイミングで何故」と思うでしょう。4/6、7にトランプは習近平と会談します。その時に日米同盟の連携の強さを見せ、中国が北をキチンとコントロールしないのであれば、軍事オプションもありというのを「日本の韓国大使帰任」ではっきり見せようとしたのでは。

普通に考えて、慰安婦像の撤去が進まないどころか増えている状況で、韓国への制裁の一つである大使召還を解除するのは、それなりの理由が必要です。次期大統領への情報収集と人脈作りとか理由に挙げていますが、誰が大統領となろうとも反日は変わらず、理由としては薄弱です。

やはり、戦争になったときの邦人救出のため、今回の措置は背に腹は代えられないとの安倍政権の覚悟の表れでは。何せ韓国政府は、半島有事の際、在韓邦人を退避させるための協議を拒否し続けているということです。韓国は当てになりません。どう在韓邦人を救出するかは米軍の足手まといになる可能性もあり、日本政府は苦慮してきたところです。まあ、下記URLにあります通り、自己責任の問題です。韓国旅行に行かないのは勿論、企業の駐在員も早く帰国させるべきです。特に家族は早めに帰し、残す駐在員も少なくして、日本大使館に米軍ヘリ1機を下して救出(ヘリポートor代替地があるかは不明ですが)できるくらいの数にして、途中で日本のヘリ空母等に降ろすしかないのでは。

http://www.recordchina.co.jp/b120306-s0-c30.html

大使は韓国に戻ったら、すぐに日本人会を開催して、帰国を促し、それでも残る人には、口頭で救出の手順を説明すべきです。官邸も経団連を通じ、帰国させるようにすべきです。特に軍事機密に触れることはないでしょう。米軍が軍事オプションもありうると言っていますので。将来の米中対決の予行演習と思えば良いでしょう。何も起こらなければ、それはそれでハッピーと思えば良いのでは。平和ボケ日本人に、危機管理の大切さを教えることにもなります。

本題のEUの問題は、やはり反移民をどう考えるかと思います。左翼・リベラルは反移民を主張する人を、極右とかポピュリズムとか呼んで非難します。だから、反移民=反EUになる訳です。最初に反EUがあった訳ではありません。ポピュリズムが悪いのかというと、国民の意思を体現しているという意味で、一部の似非知識人の主張より遙かに健全と思います。国民は、直感的に移民は危険なことと思っているからです。勿論、衆愚政治に陥らないためには政治家とメデイアが国民の思いを掬い取り、軌道修正をするのであれば、「何故そうするのか」をキチンと説明することが必要です。あたかも「反移民は良くない」と自明扱いするのは間違っています。

英国の歴史教育もご都合主義でしょう。世界を股にかけて植民地を作っていった砲艦外交について触れず、ヒットラー打倒だけが強調されるのであれば。元々ヒットラーの台頭を許したのは、チエンバレンの宥和政策でしょう。また、「民主主義VS全体主義の戦い」というのは戦後戦勝国が流布したプロパガンダです。それは、新旧の帝国主義者の争いなだけで、露米中が日本を第二次大戦に引きずり込んだ結果、英国を筆頭に、宗主国は植民地を手放さざるを得なくなりました。第二次大戦の真の勝者はスターリンと言われる所以です。

英国のEU離脱で、EU側が英国の言い分を認めないことは織り込み済みでしょう。ダメモトで言っていると思います。ドイツ第四帝国と言われるEUの終わりの始まりになるのでは。

日経ビジネスオンライン記事

欧州連合(EU)の原点であるローマ条約の調印から60年が経った。この3月25日に、ローマ条約に調印したローマのカピトリーノの丘(capitoline hill)でEU特別首脳会議が開催され、英国離脱後のEUの将来像を示すローマ宣言が採択された。参加したのは、英国のメイ首相を除く27カ国の首脳たちである。ローマ条約調印時の6カ国に比べると加盟国は大幅に増え、ユーロ創造など統合は深化した。しかし、いまEUは創設以来の最大の危機に直面している。EUは分裂に向かうのか。それとも再結束に踏み出せるか。節目となる60年後のローマ会議はEU首脳たちにとって「ローマの休日」には程遠かった。

3月25日、ローマ条約の60周年を記念するEU特別首脳会議に出席した欧州各国の首脳ら。(写真:ZUMA Press/amanaimages)

「欧州合衆国」構想の夢と現実

その日、ローマはまるで初夏のような気候だった。冬支度のまま会議場への坂道を上るのはやや難儀だった。ようやくたどりついても、記者へのセキュリティ・チェックは厳重だった。ちょうど1年前、ブリュッセル空港や地下鉄でテロが起き、こんどはロンドンの議事堂前でもテロが起きたばかりだ。緊迫した雰囲気のなかで開かれたEU首脳会議だが、欧州統合に歴史的な一歩を踏み出したローマ条約調印のような昂揚感は感じられなかった。

60年前のローマ条約に参加したのは、フランス、西独、イタリア、オランダ、ベルギー、ルクセンブルクの6カ国である。原加盟国と呼ばれる。第2次大戦後の仏独和解を背景にした欧州石炭鉄鋼共同体(ECSC)設立に続いて、EEC(欧州経済共同体)を軸に欧州統合を幅広く押し進めるのが狙いだった。そこには、欧州統合の父、ジャン・モネの「欧州合衆国」の夢が反映されていた。

そんな戦後の欧州統合の機運は、ウィリアム・ワイラー監督の米国映画「ローマの休日」(1953年製作)にも映し出されている。オードリー・ヘップバーン演じる王女が記者団を前に欧州統合について語る最後のシーンは印象深い。記者が「欧州の連邦化は経済問題の解決策だと思いますか」と質問すると、「欧州の一致団結を促すなら、どんな政策も歓迎します」と答える。別の記者が「国家と国家の友好は保たれているでしょうか」と聞くと、「そう信じます。人と人との友情を信じるように」と語る。

これはもちろん「ローマの休日」を楽しんだグレゴリー・ペック演じる記者へのメッセージなのだが、欧州統合は「人と人とを結びつける」というモネの思想にも通じるところがある。名作の舞台であるローマは欧州統合の舞台になり、そしていまEUの将来を占う舞台になった。

映画「ローマの休日」の一場面。(写真:Everett Collection/amanaimages)

大欧州という大所帯を束ねる難しさ

ローマ条約によるEECから欧州共同体(EC)へ、そしていまのEUへ、EUは拡大と深化を遂げた。しかし、大欧州という大所帯ゆえの難しさに直面している。

ローマ条約調印にならって、加盟27カ国首脳とEU機関のトップたちがローマ宣言に次々と署名する儀式が行われた。ローマ条約調印で使用されたペンを使ってである。その光景をみていて、それぞれに国家主権を背景にした27カ国の首脳を束ねるのはいかに困難かが実感できた。なにしろ使用言語は20カ国語にも及ぶ。英国などから批判されるブリュッセル官僚のかなりは、実は通訳官や翻訳官である。言語主権を維持しようとすれば、どうしてもコストはかかる。

「拡大」と「深化」という目標をともに実現できたのは、冷戦終結という歴史的転換にめぐまれたからだった。ふつう「拡大」と「深化」は二律背反する。いまEUはその新しい現実に直面している。

マルチ・スピード構想の光と影

このローマ特別首脳会議を前に、EU委員会はEUの将来について5つのシナリオを提示している。現状維持から欧州合衆国構想まで幅広く盛り込まれているが、ユンケルEU委員長やドイツのメルケル首相ら主要国首脳は「マルチ・スピード構想」を推奨している。意欲ある一部の国だけが先行して統合を進めるという構想だ。モネが描いた目標である「欧州合衆国」構想は、一つの選択肢にすぎなくなってしまったようだ。いまその夢を語るのは、フェルホススタット欧州議会議員(ベルギー元首相)ら数えるほどしかいない。

ローマ宣言も柱は「マルチ・スピード構想」である。ローマ特別首脳会議の議長、イタリアのジェンティローニ首相は会議後の記者会見で先行して統合する分野について「防衛や雇用政策などが対象になる」と述べた。

EUはもともと二重構造の組織である。ローマ条約の原加盟国と英国、スペインなど出遅れ組、そして旧東欧圏、バルト3国など後発組に分かれる。単一通貨ユーロの加盟国と非加盟国、移動の自由を定めたシェンゲン協定の加盟国と非加盟国で大きな違いがある。

英国はEECへの参加をことわり、加盟後もユーロにもシェンゲン協定にも加わらなかった。EU内ではつねに「アウトサイダー」の立場にあった。EU離脱に動いた背景はここにある。

マルチ・スピード構想は、英国の離脱などで危機にあるEUを軟着陸させ、EUを将来に向けて束ねていくための現実的選択にみえる。

その一方で、統合に消極的なら置いて行かれる冷厳な構想でもある。だから後発組の東欧諸国は反発する。ポーランドのシドゥウォ首相は直前になって「ローマ宣言には署名しない」と息巻いた。調印式では、署名前に一瞬、間を置いてみせ不満を態度で表した。これを横目でみていたポーランド出身のトゥスクEU大統領は他の首脳にしていた拍手はせず、苦虫をかみつぶす表情をあからさまにした。ポーランド内の政争がEUに持ち込まれたような光景だった。

反EUポピュリズムの連鎖を防げるか

EUはいま英国の離脱に続くポピュリズム(大衆迎合主義)の連鎖を防げるかどうかが試されている。とくに米国のトランプ大統領登場がどう影響するかが大きな懸念材料だ。排外主義の連鎖が米欧に広がれば、世界全体を危機に陥れる。

その先駆けになる恐れがあったオランダの総選挙は、ウィルダース党首率いる極右の自由党が第1党の座を奪えず、ルッテ首相率いる自由民主党はかろうじて第1党を維持した。ローマの特別首脳会議で最も晴れやかな表情だったのはルッテ首相だった。しかし、ルッテ首相のいう通り「ポピュリズムのドミノ倒しを防いだ」かは、仏独の国政選挙の結果にかかっている。

フランスの大統領選挙は極右、国民戦線のマリーヌ・ルペン党首がどこまで票を伸ばせるかが焦点だ。英国のEU離脱に続くトランプ米大統領の登場が「追い風」になるとみられていたが、トランプ流排外主義による大混乱で「反面教師」となる可能性も出てきた。

ブリュッセルのシンクタンク、ブリューゲルのガントラム・ウルフ所長は「ルペン氏とマクロン前経済相(無所属の中道派)の争いになるが、決戦ではマクロン氏が勝利する」と読む。当初、最有力とみられていた共和党のフィヨン候補は妻の給与をめぐる疑惑で後退を余儀なくされている。

マクロン氏は30歳台と若く行政経験も乏しいが、そこに不安はないとウルフ氏は指摘する。「私の前任の所長、ピサニフェリー・パリ大教授が経済顧問に就いているのが大きい」とみる。ピサニフェリー氏はユーロ危機などでも幅広く提言したバランス感覚あるエコノミストだ。ユーロ共同債の発行などで欧州統合を前進させる必要があることをかつて筆者に語っていた。マクロン大統領が誕生すれば、重要ポストに就く可能性があるという。

秋のドイツの総選挙では、4期目をめざすメルケル首相と社民党のシュルツ前欧州議会議長の争いになる。ここに右派勢力の「ドイツのための選択肢」が割って入る可能性はほとんどない。メルケル、シュルツ氏とも筋金入りの欧州主義者だけに、EU運営にはプラス材料だろう。

EUの盟主であるメルケル首相が敗れると今後のEUへの不安が高まる可能性もあるが、シュルツ・マクロンという新しい独仏連携が実現すれば、財政規律最優先から成長重視への転換点になるという見方もある。

「ローマの松」のごとく

仏独の選挙結果がどうあれ、欧州に浸透した反EUのポピュリズムは簡単には消え去らないだろう。ポピュリズムが危険なのは、知らず知らずのうちに人々の心に入り込むことだ。ローマ法王がEU首脳に警告したように、EUが将来に備えられなければ退化するだけだ。EUはしばらく反EU機運のなかで憂鬱な時代を続けるだろう。

しかし、危機をバネに再結束に立ち上がるのがEUの歴史でもある。イタリアの作曲家・レスピーギが交響詩に描いた「ローマの松」のごとく、長く大地に根を張るはずである。

JBプレス記事

英ロンドンで掲げられた英国旗と欧州旗(2017年3月2日撮影)。(c)AFP/Daniel SORABJI〔AFPBB News

ブランド戦略としては不運な展開となった。英国の一部の政府高官が、英連邦諸国と新しい貿易協定を結ぶ仕事を「大英帝国2.0」と呼び始めたのは、単なる内輪の冗談だった。ところが、ブレグジット(英国の欧州連合=EU=離脱)に批判的な人々はこのフレーズに飛びつき、ブレグジットという考え全体のけん引力が帝国への郷愁であることの裏付けだと主張し始めた。

筆者はこの様子を見て、英国とその過去との関係が深刻なほど誤解されていると感じ、衝撃を受けている。英国民は帝国時代のことばかり考えているわけではなく、むしろ帝国時代の経験を、ジョージ・オーウェルの言う「記憶の穴」に大量に葬り去ってきた。ほとんどの英国民は主要な政治家も含めて、大英帝国の歴史を本当に知らない。

しかし、この「帝国健忘症」はブレグジットと大いに関係がある。これは、離脱派の主要なメンバーと「グローバル・ブリテン」の支持者が過去を誤解しており、このままでは将来に禍根を遺すことを意味している。彼らは「偉大なる貿易国家」というかつての姿に戻ることを熱心に説くが、実際のところ、当時の英国は植民地をたくさん抱える大帝国だった。

この重要な区別をしっかりつけておかないと、ほかの国々との貿易の今後を作り直すという作業を甘く見ることになってしまう。今日の英国は世界の海を支配しているわけではないからだ。

帝国時代の英国は、世界の市場に強引に踏み込んでいく癖があった。東インド会社は、貿易上の特権が脅かされると武力に訴え、最終的にはインドのほとんどの地域を支配するに至った。19世紀に入って中国がアヘンの貿易を止めようとしたときも英国は戦争に持ち込み、中国の軍艦を沈め、清朝に香港の割譲を認めさせた。

英国人が大英帝国の歴史を知らないことは、トニー・ブレア元首相の自伝の一節からもうかがえる。ブレア氏の記録によれば、英国が香港を中国に返還した1997年、中国の江沢民国家主席(当時)は、これで英国と中国は過去を忘れることができると述べた。ところがブレア氏は「そのときの私は、その過去がどのようなものだったか、実におぼろげで大ざっぱな理解しかしていなかった」と書いている。

とはいえ、英国のエリート層は大英帝国時代の歴史をほとんど忘れてしまったかもしれないが、英国が貿易国家としての未来にとって極めて重要だと見なしている国々は、明らかに昔のことを覚えている。

インドの議会で外交問題委員会委員長を務めるシャシ・タルール氏はつい先日、大英帝国のインド支配を糾弾する著書『Inglorious Empire(不名誉な帝国)』を発表した。英国とインドとの間には「歴史的・文化的なつながり」があるから素晴らしい貿易協定を新たに締結するのは容易だろうと自信たっぷりに語る英国人は、この本を読んでみるべきだ。インドと中国という21世紀に台頭してきた経済大国の――かつて英国に植民地にされたり戦争で負けたりした結果、英国に対して明らかに愛憎相半ばする気持ちを抱いている国々の――目を通して世界を見てみるのに役立つはずだ。

英国人が大英帝国時代のことをあまりよく知らないのは、学校や大学で教えられている歴史のせいだ。この科目の標準的なカリキュラムは、英国の政治史と議会制民主主義の発展に重点が置かれている。世界のほかの国々とのかかわりについては、ナポレオンやヒトラーとの戦争は学習するものの、大英帝国のことはごくわずかしか学ばない。

火星人の歴史研究家ならまず間違いなく、英国の近代史で最も興味深いのは世界をまたにかける大帝国を作り上げたことだと考えるだろう。しかし英国人自身にとっては、大英帝国ではなくナチスとの戦争を軸にして国家の物語を組み上げるほうが、心理的に納得できる。

実際、英国人はそうすることにより、自分たちは帝国主義の抑圧者ではなく自由の擁護者であり勇敢な弱者であるという国全体の自己イメージをはぐくんできた(勇敢な弱者という自己像は、1970年代のテレビのコメディー番組「ダッズ・アーミー」の人気がいまだに衰えないことからもうかがえる)。

第2次世界大戦での勝利と帝国の喪失がほぼ同時だったという事実も、この傾向を強めた。欧州での勝利に国中が沸き返り、帝国の喪失による心理的な打撃を和らげたのだ。英国の世論形成を主導する人々は皆、欧州での勝利を祝った1945年を記憶に刻み込んでいるが、1947年はインドが独立した年だと言える人はほとんどいない。

また、2度の世界大戦での勝利は、国家と自由の象徴としての英国議会の役割を不動のものとした。ウィンストン・チャーチルが「(ナチスとは)海岸でも戦う」という有名な誓いを立てたのは、議会下院での演説だった。英国のエリートたちがあがめる英国史は、オリバー・クロムウェルやウィリアム・グラッドストーンや重要な改正法などが登場する議会の歴史にほかならない。

この歴史が今日、英国の政治家たちの心に刷り込まれていることは、EUから離脱するための法案に「グレート・リピール・アクト(大撤回法)」という名前が付いたことにも反映されている。恐らくこの名称は、意図的に1832年の「グレート・リフォーム・アクト(大選挙改正法)」を下敷きにしているのだろう。

テリーザ・メイ首相が「グローバル・ブリテン」なるものに向けて未来を築いていきたいと心の底から思うのであれば、市民に教える歴史の種類を変えることを検討してもよいかもしれない。もし将来の英国の政治家たちが、第2次大戦が始まった1939年だけでなく第1次アヘン戦争が始まった1839年の重要性も理解するようになれば有益だろう。

もっとも、英国のエスタブリッシュメント(支配階層)は昔の大英帝国を作り上げた人々のことをすっかり忘れてしまったと言い切るのは不当だ。例えば、1850年代の第2次アヘン戦争(アロー戦争)のときに首相だったパーマストンの名は、英外務省で今でも記憶されている。省内で飼われているネコには、この元首相にちなんだ名前が付けられているのだ。

By Gideon Rachman

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『トランプ×習近平、通商で一気に緊迫か…米政権、対北や為替で協調探る』(4/2産経ニュース)、『米中外交トップが電話会談 楊・ティラーソン氏、首脳会談へ最終調整』(4/3産経ニュース)、『習近平氏主導で新都市建設 鄧小平氏の深圳を意識』(4/3日経)について

4/6,7にトランプと習近平が会談しますが、お互い言い放しで終わると思います。テイラーソン・楊会談(産経ニュースでは楊・テイラーソンの順に書いていますが、同盟国を最初に持ってくるのが普通では。違和感があります)でどこまで詰められるか。総論・美辞麗句で飾ったものだけになるのでは。個別・具体的な問題に踏み込めば、お互い譲歩できないでしょう。

4/3宮崎正弘氏メルマガには<英紙フィナンシャルタイムズの単独インタビューに応じたトランプ大統領は、「米中首脳会談で、もし中国の同意が得られなければ、米国は単独で(北朝鮮問題で)行動を取る」と答えた(FT紙、電子版。4月3日)。>とありました。中国に誤魔化されないぞという意思表示だと思います。

http://melma.com/backnumber_45206_6509345/

5/9韓国大統領選までに、米国は単独でも攻撃するかもしれません。日本政府は国民を守ることを真剣に考えなければ。核ミサイルだけではありません。VXガスを搭載したミサイルが飛んでくるかも知れませんし、朝鮮総連の破壊工作として、大都会にばら撒くかもしれません。民潭の中にも北のスパイがいるでしょうし、反日教育で染め上げられた韓国人や在日がテロを起こすかもしれません。ガスマスクを配って置くことが必要と思いますが、そんなに在庫は無いでしょう。間に合いません。その時にならないと気が付かないというのでは遅すぎです。そうなれば、メデイアに騙され続けて、予防を怠った咎めとしか言いようがありません。勿論、そうならないことを望みますが。自分の身は自分で守るしか方法はないでしょう。

時事通信のヤフーニュースでは4/4に韓国大使と公使を戻すようです。いよいよ米国が北を攻撃するのかも知れません。そうでなければ今のこの時期に戻す理由が見つかりません。①邦人保護②米軍家族保護③拉致被害者救出(北ですが)とやることは沢山あります。

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170403-00000076-jij-pol

習近平は、都市建設を政権浮揚の手段として使うようですが、資金手当てをどうするのでしょうか?3/9宮崎正弘氏メルマガによれば、中国の空家は20億人分もあるというのに。実需がなくても、倒産せず、バブルが崩壊しないのは共産主義だからでしょうか?外資がそれを支えているとすれば、軍拡に突き進む中国の延命を支えていることになります。中国との金融取引を停止するよう米国は動いた方が良いと思います。

http://melma.com/backnumber_45206_6497995/

4/2産経ニュース記事

【ワシントン=黒瀬悦成】米大統領が国際会合の場などを借りず、就任後これほど早期に中国との本格的な首脳会談を行うのは極めて異例だ。トランプ氏としては「北朝鮮」「貿易・為替」という安全保障と経済の最重要懸案に関し、できるだけ早期に中国と基本的な道筋をつけたいとの思惑がうかがえる。

一方で、会談場所がホワイトハウスでなく、トランプ氏が所有する会員制高級リゾート「マールアラーゴ」となったのは、トランプ政権としては高官人事が遅々として進まず、中国と実質的な協議ができる状況にないため、会談とは別に「個人的な関係を築く機会」(スパイサー大統領報道官)と説明できる場所を設定したとみられる。

トランプ氏は北朝鮮に関し、核武装した金正恩(キム・ジョンウン)体制は「地球規模の脅威」であるとの立場から、これ以上の核実験や大陸間弾道ミサイル(ICBM)の開発を阻止するため、習氏に北朝鮮への圧力強化を要請していく考えだ。

特に、北朝鮮への資金供給の抜け穴となっている、中国国内の金融機関に対する締め付け強化に習氏が応じるかが焦点の一つになるとみられている。

問題は、トランプ氏が通商問題で強硬な態度を打ち出しており、米中が一気に対立局面に突入する恐れも排除できないことだ。

トランプ氏は3月30日、ツイッターで「中国との会談は非常に難しいものになる。われわれは、(中国に対する)巨額の貿易赤字や雇用流出を抱えておくことはできない」と指摘。さらに、「米企業は他の選択肢も準備するべきだ」と述べ、生産拠点を中国から米国に移すよう暗に求めた。

トランプ氏が31日に出した、不公正貿易の是正に関する大統領令に関しても、スパイサー報道官は「中国を念頭に置いたものではない」としているものの、米中会談の直前というタイミングからみて、中国に衝撃を与える意図があったのは確実だ。

貿易分野で中国を過度に圧迫すれば、北朝鮮問題で中国の協力を得るのが難しくなることも予想されるだけに、トランプ氏の交渉手腕の真価が試される。

4/3産経ニュース記事

新華社電によると、中国外交担当トップの楊潔篪国務委員は2日、米国のティラーソン国務長官と電話会談し、6~7日に米南部フロリダ州で行う米中首脳会談に向け最終調整をした。

楊氏は首脳会談について「新時代の両国関係の発展や、世界の平和で安定した繁栄に向け重要な意味を持つ」と強調した。ティラーソン氏は「全力で準備し、会談では重要で前向きな成果を上げたい」と応じた。(共同)

4/3日経記事

【北京=永井央紀】中国共産党と政府は河北省に大規模な新都市を建設すると決めた。習近平国家主席が主導し、過去の最高指導者である鄧小平氏が手掛けた深圳経済特区、江沢民氏の上海市浦東新区に並ぶ国家プロジェクトと位置づけた。最高指導部を大幅に入れ替える今秋の党大会を控え、習氏の権威を高める政治的な狙いがうかがえる。

党機関紙「人民日報」などが2日付紙面で伝えた。河北省雄県など複数の行政区域にまたがる地域を「雄安新区」という名称で都市開発する。北京から南西へ約100キロ、天津から西へ約100キロに位置し、この2直轄市と新区を結ぶと正三角形になる。北京の過密化を緩和するために習指導部が進める北京市、天津市、河北省を一体化させる構想の一環だ。

初期段階で面積は100平方キロメートル、将来は2千平方キロメートルに拡大する。北京の「非首都機能」を移転させるとしているが、時期など具体的な内容は公表していない。関係者によると、研究開発分野の機関を移してイノベーションに強い都市とする案のほか、中央政府と関係が薄い政府機関や国営企業を大規模に移す案などがあるという。

習近平国家主席(左)は政治基盤の強化に向けた布石を次々と打っている(3月15日、北京)

国営新華社通信は「習近平同志を『核心』とする党中央が下した歴史的かつ戦略的な選択で、深圳経済特区や上海市浦東新区に続く全国的意義を持つ」と強調した。習氏は昨秋、党内で別格の存在を指す「核心」の称号を得た。深圳は「初代」核心である鄧小平氏が、浦東は「二代目」核心の江沢民氏が主導した。過去の最高指導者による成功事業を意識したとみられる。

新区建設の責任者には河北省の袁桐利・筆頭副省長が就いたもようだ。袁氏は天津市の再開発地域「浜海新区」のトップを務めた経験がある。共産党は深圳市トップの許勤・党委書記を河北省党委副書記に異動させ、省長候補とする人事を決めたばかり。天津や深圳での経験を活用する狙いとみられ、習指導部の意気込みがうかがえる。

一方、中国メディアによると、新区となる地域ではこの数年間に不動産価格が2~3倍に上昇しており、内部情報に基づき不正な取引があった可能性がある。現在は住宅販売が停止され、建築資材の搬入も禁止されるなど強硬な措置がとられているという。

脱「鄧小平」へ布石

【北京=高橋哲史】中国の習近平国家主席が自ら指揮して巨大な新都市の建設に乗り出す。背後には、改革開放を旗印にした鄧小平氏の時代にひと区切りをつけたいという思惑がちらつく。 「習氏はおそら<鄧氏が好きではないのだろう」。多くの中国専門家がそう感じている。

鄧氏の指名で最高指導者に上り詰めた胡錦濤前国家主席は、重要演説のたびに鄧氏の功績や改革開放堅持に触れた。しかし、後を継いだ習氏は鄧氏の名前をめったに挙げなぃ。

習氏の父、仲勲氏はかって鄧氏と対立した。習氏が鄧氏と距離を置くのは、それが原因だとの見 方がある。真相はどうあれ、習氏が鄧氏を超える指導者になるために、改革開放の象徴である深圳 と上海の浦東新区に匹敵する巨大都市を自らの手でつくろうと考えるのは自然だろう。

中国共産党が2007 年に胡錦濤政権下で開いた第17回党大会の決議文には、改革開放をたたえるくだりが10回も出てきた。習氏が初めて主宰する今秋の第19党大会でその扱いはどうなるのか。脱「鄧小平」の象徴になりうる「雄安新区」のゆくえとともに、大きな注目点になる。

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『助けてトランプ大統領!中国に叩かれて韓国が悲鳴 韓国のTHAAD配備で中国の態度が豹変』(4/1JBプレス 古森義久)、『韓国の「THAAD」配備は中国の身から出た錆だ 北朝鮮の度重なる挑発を招いた制裁の「骨抜き」』(3/31JBプレス 阿部純一)について

所謂“従軍慰安婦”や“強制徴用”問題の裏には朝鮮総連や北朝鮮、またその裏には共産中国がいます。謀略を得意とする国達です。「策士策に溺れる」という展開になりつつあるという事です。中共は北を好きにやらせて日米韓へのカードとして使って来ました。しかし、「北を抑えられるのは中国」という論理は破綻しました。トランプは6者協議で解決できるとは思っていないでしょう。時間の利益を北に与えるだけです。4/6、7の習との会談では北の問題と貿易赤字の問題、南シナ海の問題が重点的に話し合われると思います。いずれも中共が言い分を呑むことはないと思います。せいぜい中国で航空機を購入するとか、米国でのインフラ投資をすることぐらいしかないでしょう。でも、今中共は資金の海外流出を制限しているくらい、外貨準備が減ってきています。そんな大型商談ができるかどうか。まあ、口から出まかせが言えるのは漢民族の特徴ではありますが。

日本もTHAAD配備を推し進めれば良いと思います。兵頭氏によれば、イージス艦の位置が問題という意見はありますが。それと、敵基地先制攻撃できる装備を持つことです。また共謀罪の法案を早く通して、在日の破壊工作を防ぐことを考えませんと、手遅れになります。日本人は何か事が起きないと動きません。日共・中共・北の影響を受けたマスメデイアと腑抜けな官僚の不作為の賜物です。

韓国は本当に愚かです。人を利用しようとすれば、人から利用されることが分かっていません。米国に頼って中国の圧力を解除といっても、米国にはそれを中国に求める義理も義務もありません。独立国家としてのプライドもあったものではありません。長らく事大主義で動いてきた咎めでしょう。まあ、宗主国だった中国の意に反してTHAAD配備を決めたのですから、宗主国として怒るのは当然ですが。日本がレアアースの問題で、中国を逆に苦しめたような技術も持ち得ませんし。所詮、バクチに近い大規模投資をして、安い労働力を使い、アセンブリーするだけですから。

中国も韓国国旗を踏みつけないと入れないホテルが現れました。流石は野蛮人同士です。以前から韓国は日本国旗を同じようにしてきました。文明人としての誇りのかけらもありません。やはり、特亜3国とは敬して遠ざけるべきです。朱に交わらないように。

http://japanese.joins.com/article/872/226872.html

古森記事

客足が途絶えた中国・上海のロッテマート店内(2017年3月13日撮影、資料写真)。(c)AFP/Johannes EISELE〔AFPBB News

中国で韓国叩きがものすごい勢いで広がっている。中国政府が韓国の「THAAD」(サード、終末高高度防衛ミサイ)配備に抗議して、官製の一大反韓キャンペーンを展開し始めたのだ。

韓国系商店のボイコット、韓国の芸能人の公演禁止、韓国ドラマの放映禁止、民間交流の規制、中国人の韓国訪問の禁止、さらにはキムチの販売や購入の禁止まで、中国で異様なほどに韓国排斥運動が高まっている。韓国ではこの反韓運動に音をあげて米国に助けを求める動きまで出てきた。

驚くほどの豹変ぶり

韓国は北朝鮮の核兵器やミサイルの脅威に備えて、米軍の新鋭ミサイル防衛システム「THAAD」の配備を2月上旬に決めた。この配備に対して中国政府は強い抗議を表明するとともに、国内各地の共産党組織を通じて大規模な韓国叩きのキャンペーンを開始した。

手の平を返すとは、まさにこんな事態を指すのだろう。つい最近まで、中国は韓国との交流を大々的にアピールし、日本との間の歴史問題でも韓国と連合を組んできた。2015年9月の「抗日勝利70周年記念」の大軍事パレードには韓国の朴槿恵大統領が出席し、中韓連帯を誇示した。

それが、驚くほどの豹変ぶりなのだ。中国は韓国との関わりがあるイベントをすべて中断し、官営メディアを総動員して国民にボイコットを呼びかけ、国民も「愛国」の名の下に一斉に韓国叩きに走った。

米国メディアも、中国の激しい韓国叩きを報道している。たとえば3月中旬の「ニューヨーク・タイムズ」の記事は、中国各地で合計112店ある韓国企業のロッテのスーパーが消費者からボイコットされ、また、当局から突然の立ち入り検査を受けたことで半数近くが臨時閉店に追いこまれたことを詳しく報道していた。韓国の化粧品やマスク、キムチなどが輸入や販売を規制されたことも伝えられた。

「韓国叩きをやめるよう中国に圧力を」

この動きによって、韓国側は米国に救済の訴えをするまでに追い詰められた。

3月下旬、ワシントンの大手研究機関「戦略国際問題研究所」(CSIS)のハワイ支部にあたる「太平洋フォーラムCSIS」は、「THAADをめぐる中国の韓国叩き=ワシントンにとって他人の問題なのか」と題する論文を発表した。

執筆者は、韓国の政府系シンクタンク「韓国統一研究院」(KINU)の元院長で現在は建陽大学教授の金泰宇氏である。

金氏は同論文で、まず中国の韓国叩きの内容を列挙する。例えば「韓国の芸能人の中国での出演および公演の禁止」「韓国ドラマの中国での放映の禁止」「中国人の韓国観光訪問の禁止」「韓国企業に対するダンピング容疑の追及強化」「韓国産物を輸入する際の検疫強化」「中国観光客の韓国訪問禁止」などだ。

金氏はこうした中国当局の措置は不当であり間違っていると断じ、その理由を以下のように挙げる。

(1)韓国がTHAADを配備したのは、北朝鮮の核兵器とミサイルによる挑発への対応のためである。韓国は自衛のために対抗策をとったにすぎない。

(2)THAADは純粋に防衛のためのシステムであり、攻撃用の弾頭は装備していない。その目的は韓国軍と米軍を北朝鮮のミサイル攻撃から守ることのみだ。

(3)THAAD の迎撃対象は北朝鮮のミサイルであり、中国を対象にしていない。また、その偵察対象範囲は800キロほどにすぎない。

(4)THAADの偵察能力がたとえ中国領内にまで及ぶとしても、中国が韓国、日本、西太平洋を偵察するレーダーの方がずっと強力である。

(5)中国は韓国の安全保障を無視している。韓国は北朝鮮の核とミサイルという脅威に直面しているのに、中国に対するその種の脅威は存在しない。

金氏は同論文で、韓国は米国からの要請を受けた結果、THAADを配備しているのであり、そもそも米国の関与の度合いが大きい、だから米国政府は中国に圧力をかけて韓国叩きを止めるよう求めてほしい、と要請する。

4月上旬に米国のトランプ大統領が中国の習近平国家主席と米国フロリダ州で会談する。その際に、トランプ大統領が習主席に韓国叩きを止めることを求めてほしい、というのが金氏の主張だ。

中国は、このようにある国の行動が気に入らないと、中国国内でその国を徹底的に叩こうとする。日本もその標的となってきた。今後もまた起こり得るだろう。その際はどのように反撃するべきか。今回の韓国の対応はその指針となるはずだ。

阿部記事

韓国・ソウル近郊の平沢にある烏山空軍基地に到着した「高高度防衛ミサイル(THAAD、サード)」の装備。在韓米軍提供(2017年3月6日撮影)。(c)AFP/US FORCES KOREA (USFK)〔AFPBB News

韓国で米国による「THAAD」(終末高高度ミサイル防衛システム)の配備が開始されたことを受けて、中国の“官製”韓国いじめがエスカレートし、大国としての矜持を全く感じさせない陰湿な嫌がらせが公然と行われている。中国からの訪韓観光客の制限や、THAAD配備の土地を提供したロッテに対する中国での圧力などが、わが国でも報道されている。

しかし、本来、中国には韓国を非難する資格はないはずだ。

そもそも米国が韓国にTHAADを配備したのは、度重なる北朝鮮の核実験や弾道ミサイル実験が招いた事態である。つまり、北朝鮮による軍事的脅威への対処として、米韓で合意されて配備が決まったのだ。

中国に言わせれば、北朝鮮による挑発の責任は、北朝鮮に対し「戦略的忍耐」の名目で「不作為」という放置政策を継続してきた米国にあるということなのだろう。言い換えれば、米国が北朝鮮との直接対話に乗り出していれば、現在のような緊張がエスカレートした状況は未然に防げたはずだという思いが中国側にはあるのかもしれない。

だが、北朝鮮を増長させた主犯は、やはり中国である。北朝鮮の度重なる挑発を招いた主因は、北朝鮮に対する経済制裁に対して「制裁の対象はあくまでも核やミサイルの開発阻止に絞られるべきであり、人民の生活を圧迫してはならない」と主張し、制裁の「骨抜き」を図って金正恩体制の北朝鮮を温存させようとしてきた中国にあるといっても過言ではない。 中国はなぜ韓国に怒り心頭なのか

中国にしてみれば、最悪のシナリオは北朝鮮の内部崩壊による難民の流入と、その後の韓国主導による朝鮮半島統一である。そうなれば、米韓同盟によって米国の軍事的影響力が中国の陸上国境に到達することになるからだ。

そうした事態を未然に防ぐことが、中国にとっては北朝鮮の核やミサイルよりも重大な意味を持つことになる。すなわち、朝鮮戦争以来、中国は一貫して米国とのバッファ(緩衝)としての北朝鮮の存続を必要としているということになる。

朝鮮半島では南北ともに「統一」を将来目標に掲げてきた。それに対する中国の立場は「統一は支持するが、統一後の朝鮮半島は政治的に中立であるべきだ」というもので、明らかに米国の影響力の拡大を牽制してきた経緯がある。

中国では2012年11月に習近平政権が成立し、韓国では翌年の2013年2月に朴槿恵政権が誕生した。以来、両氏は誼(よしみ)を通じ、2013年と2014年の2年間に5回の首脳会談を行うなど蜜月関係を続け、2015年9月の中国・北京で行われた抗日戦争勝利70週年を記念する軍事パレードへの朴槿恵大統領の出席でピークを迎えた。朴槿恵大統領の中国への傾斜は、中国が韓国を米国から引き剥がそうとした成果であり、中国が望む朝鮮半島の中立化の進展でもあった。

懸念を深めた米国はどう対応したかといえば、2015年10月、米国を訪問した朴槿恵大統領に対し、オバマ大統領が首脳会談後の記者会見で、南シナ海での中国の強引な人工島建設を念頭に、中国が国際規範に反する行動を取った際には「韓国が米国と同じ声を上げることを期待する」と発言することで、対中関係での米韓の連携強化を求めた。

しかし、2016年1月の北朝鮮による核実験で状況は一変した。韓国国内では「我が国も核を持つべきだ」という勇ましい議論が起き、それを懸念した米国は、北朝鮮のミサイル脅威に対抗するためのTHAAD配備を韓国政府に強く求めた。その結果、同年7月に韓国へのTHAAD配備が米韓で合意されたのである。

こうした韓国の決定は、中国から見れば「裏切り」に見えたのだろう。あれほど習近平主席に愛想を振りまいていた朴槿恵大統領は、北朝鮮の脅威に直面し、最期になって「頼るべきは米国」ということで、中国が強硬に反対してきたTHAAD配備を受け入れた。結局のところ韓国にとって中国は安全保障の面で頼りにならないと韓国が判断したことになる。

執拗な「韓国いじめ」に狂奔する中国の心理を読み解けば、THAAD配備もさることながら、中国の要請に従おうとしない韓国への怒りがあるのだろう。

THAAD配備は韓国の「核武装論」を抑えるため?

そもそも、なぜ中国は韓国へのTHAAD配備にそれほど激しく反応するのだろうか。

韓国の核武装が中国にとって何よりも受け入れがたいものであるとすれば、それよりもTHAAD配備のほうが、中国にとってはまだ「まし」な選択であったはずだ。しかし、そうはならなかった。

なぜかといえば、米国は韓国の「核保有」を容認するはずがないからである。韓国の核保有は日本に連鎖し、台湾にも連鎖するかもしれない。だから米国は韓国の「核保有」はなんとしても阻止しなければならない。

それを踏まえると、中国にしてみれば、どれだけ「韓国の『核武装論』を抑えるため」という名目を掲げられたところで、米国による韓国へのTHAAD配備には疑念を持たざるを得なくなる。THAADがあってもなくても韓国の核武装はありえないからだ。

韓国には局地ミサイル防衛用のパトリオットPAC-3がすでに配備済みであり、中国としては、THAADの追加配備には別の意図が込められていると見ている。

すなわち、北朝鮮の核・ミサイルの脅威に対抗するためと言いつつ、中国東北部を中心に、中国の弾道ミサイル戦力への監視能力を高めようとしているのではないか、という懸念である。

「Xバンド・レーダー」への中国の懸念

もちろん米国も韓国も、THAAD配備による運用が中国の国防・安全保障にマイナスになる要素がないことを縷々説明したはずである。しかし、中国はその説明を受け入れなかった。

3月に開催された中国の全国人民代表大会(日本の「国会」に相当)で、恒例の外相記者会見に臨んだ王毅外交部長は、「現在中韓関係に影響を与えている最大の問題は、米韓が論争に満ちたミサイル防衛システム『THAAD』の韓国配備を進めていることだ。我々は当初から断固として反対している。THAADの監視・早期警戒範囲は朝鮮半島をはるかに超えており、中国の戦略的安全を損なう企てはすでに誰の目にも明らかだからだ」と主張した。

ここで明らかなのは、中国が懸念を持っているのがTHAAD配備に付随する「Xバンド・レーダー」であるということだ。

Xバンド・レーダー、正式には「AN/TPY-2」と呼ばれるレーダーの探知性能は軍事機密であり、明らかにはされていない(探知能力には諸説あり、控えめな表現で1000キロメートル以上とされ、3000キロメートル以上あるとする説もある)。

北朝鮮から発射される中距離ミサイルを迎撃するための「終末段階(terminal phase)モード」での探知範囲は半径600キロメートルとされる。一方、「前進配備(forward-based)モード」で運用すると、仮に探知範囲が3000キロメートルであるとすれば5倍以上に広がることになる。すなわち、極東ロシア、モンゴルの一部を含め、中国東北部のみならず内蒙古、山西省、北京市、河北省、山東省まで及ぶ広い範囲がカバーされることになる。

しかも、韓国に配備されるのと同じAN/TPY-2レーダーが、すでに日本に2基設置され運用されている。青森県の車力駐屯地と京都府の日本海に面した経ヶ岬である。都合3基のレーダーが三角形を作って運用されることになるのだ。

人民解放軍が中国東北部から発射させた弾道ミサイルは、発射段階から補足され、3基のレーダーが連動(データリンク)することによって飛行経路がより正確に割り出される。その結果、中距離ミサイルをミッドコース段階で迎撃するイージス艦配備のSM-3ブロック2Aによって、高い命中精度で迎撃されることとなる。

つまり韓国へのTHAAD配備は、日米韓によるミサイル防衛網を強化させ、北朝鮮のみならず中国が日本や米国に向けて発射した弾道ミサイルの探知力向上にもつながる。結果として、中国のミサイルによる「報復能力(second-strike capability)」が毀損されることになりかねない。中国が神経質になるのも理解できる。

中国はどんな対抗策をとるのか

では中国はどうするつもりなのか。

手っ取り早い方法はミサイル戦力の増強である。さらには、空母キラーとされる「東風21D」のように、落下するミサイル弾頭に機動性を持たせ、迎撃ミサイルを回避できるようにするか、あるいは、AN/TPY-2レーダーが同時に対処できる目標は最大で60とされているから、それを超えるミサイルの一斉発射で飽和攻撃を目指すことであろう。

場合によっては、北米大陸を狙う大陸間弾道ミサイル(ICBM)を、レーダー探知の及ばない中国西部に全て移動させる必要もあるかもしれない。

ミサイル防衛への対策として、戦略核ミサイルなら多弾頭(MIRV)化が有効である。だが、日本をターゲットとする中距離ミサイルは西部に移動させることもできないし、弾頭のMIRV化も現実的な選択ではないだろう。

いずれにしても、韓国へのTHAAD配備が中国のミサイル戦略に深刻な影響を与えることになるとすれば、北朝鮮の内部崩壊を恐れて、制裁を実効性のないものに仕向けてきた中国の自業自得といえるだろう。

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