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『中国「企業の姓は党」キャンペーンの先に待つ闇 北戴河会議終了、「習近平独裁」への道は広がったのか』(8/23日経ビジネスオンライン 福島香織)について
8/25日経電子版<中国国有企業、止まらぬ巨大化 習氏主導で合併相次ぐ
中国で国有企業の合併が相次いでいる。仕掛ける共産党が掲げるスローガンは「より強く、より優れ、より大きく」。世界で戦える巨大な国有企業をつくる構想は、権力集中を進める習近平総書記(国家主席)の政権戦略と密接に絡む。

石炭大手の神華集団と、発電大手の中国国電集団が合併へ――。2日、国有企業の大型再編を伝えるニュースに、業界関係者は色めき立った。
北京で開かれた公開のフォーラムで、国電幹部が明らかにしたのを受けた報道だった。ところが主催者は翌日、奇妙な対応を取った。「上の指示で、国電の幹部が発言した部分だけ会議録を渡せなくなった」。合併を表明した発言を事実上なかったことにしたのだ。
関係者は「発言は事実だ」と認めたうえでこう解説した。「国電幹部は党の許可を取らずに話してしまったのだろう」
中国には国務院(政府)が所管する「中央企業」と呼ばれる大型の国有企業が現在、99社ある。神華と国電はいずれも中央企業だ。当局はいま、猛烈な勢いでその統合を進めている。
当局の背中を押すのが、共産党中央と国務院の連名で2015年8月にまとめた「国有企業改革の深化に関する指導意見」だ。「世界一流の多国籍企業を育てる」との目標を掲げ「20年までに決定的な成果を上げる」とぶち上げた。「より強く……」のスローガンもこの中に出てくる。
数値目標は設けなかったが、当時110社あった中央企業を40社程度に集約する案を念頭に置いていた。期限まであと3年。自動車大手の中国第一汽車集団と東風汽車公司などをはじめ、ここにきて多くの統合構想が浮上してきた背景には当局の焦りがのぞく。
15年の指導意見は、共産党が国有企業改革で前面に出る根拠にもなっている。「習総書記のたび重なる指示を受け、改革の方向性と基本ルールを明記した」。国務院の担当幹部は当時の記者会見で、意見が「習氏の意向」であると強調した。
習氏の狙いを理解するには、06年末に胡錦濤前政権がまとめた国有企業改革の指導意見を振り返る必要がある。
中央企業を再編し、グローバルな競争を勝ち抜く巨大な企業集団をつくる発想自体は変わらない。しかし、あくまで主役は国務院で、党は余計な口を挟まないという姿勢をにじませていた点が15年と大きく異なる。
それが裏目に出た。国有企業は既得権を守るために統合を渋り、再編は遅々として進まなかった。党高官や引退した長老らの利害が複雑にからみ合い、胡指導部はひどくなる一方の汚職に手をつけられなかった。
12年に最高指導者の地位に就いた習氏は、党が国有企業をコントロールできていない状況に危機感を抱いたはずだ。
反腐敗闘争を通じて国有企業の幹部を次々に摘発し、党の指示を忠実に守る人物を新たに送り込んだ。経営上の重要な決定にあたって党の意見を事前に聞かなければならないとする規定を定款に書き込ませ、党の意のままに動く企業グループを次々につくり出した。
1990年代後半に当時の朱鎔基首相が取り組んだ国有企業改革とはだいぶ違う。朱氏は非効率な国有部門を小さくし、民間部門を育てて競争を喚起しようとした。80年代に実現した日本の国鉄や電電公社の分割民営化を研究し、参考にした。
習氏は逆だ。国有企業を集約してさらに大きくし、国内である程度の独占を認める。中国勢どうしの消耗戦を避け、世界に出ていく発想だ。
習政権下で合併してできた鉄道車両の中国中車や、海運業の中国遠洋海運の存在感は世界で無視できない。低価格を武器にますますシェアを高め、他国の企業との競争を有利に進めている。
だが、国や党の思い通りになる巨大な紅(あか)い企業が世界の市場でわがままに振る舞えば、自由で健全な競争をゆがめかねない。必ずしも経済合理性だけで動かないとされる中国企業の巨大化に警戒感が強まる。(中国総局長 高橋哲史)>(以上)
習近平の狙いとするのは、「共産主義」の革命の世界輸出ではなく、中国が軍事的・経済的に世界を制覇することでしょう。富を全部彼らが奪いたいと思っているだけです。そもそも今の中国に「共産主義」の理念とする「結果の平等」なんてありません。勿論ソ連にもありませんでしたが。三権分立していないため、ノーメンクラツラーが好き勝手できる社会です。ただ、今の中国は世界と貿易して富んでいる分だけ余計に質が悪いと言えます。
中国は貿易で稼いだ富を人民に分配するのでなく、高官の蓄財と軍拡に使っています。それでGDPに占める消費の割合が37,8%にとどまっている訳です。
毛沢東時代には左派の陳雲が「鳥籠経済」を唱え、閉じた経済で中国国内にしか影響を与えませんでした。歴史的転換は①1971年のキッシンジャー訪中で中国共産党をソ連共産党から引き剥がし米国側につけたこと。(キッシンジャーは中国人の底意が読み切れていなかったのでしょう。利用するつもりで利用された訳です。中国お得意のハニーやら賄賂に動かされたのでは)②2001年12月の中国のWTO加盟(日米とも後押しをしてモンスターを造ってしまったわけです。製造物責任が両国にはあります。「中国が富めば民主化する」何て幻想を抱くのは中国人を余りに知らな過ぎです。「騙す方が賢く、騙される方が馬鹿」という国ですから)です。中国人は利用できるものは何でも利用します。民主主義の弱点に付け込むこともして来ます。
8/25日経記事にありますように、朱鎔基は1998年総理となり、鉄飯碗と言われた国営企業改革に命を懸けて取り組みました。鄧小平の下で企業に経済的自由度を与えようとした訳です。習近平は正しくそれと逆方向のことをしようとしています。米国に亡命した何清漣が1年前に習の経済政策について解説したものがあります。ご参考まで。
http://heqinglian.net/2016/08/06/soe-reform-2/
習の国営企業合併策は、経済音痴で力の信奉者の為せる業です。第二の毛沢東を目指すというよりは、毛沢東越えを目指していると言った方が適切です。毛は「大躍進」や「文化大革命」で2000万~1 億人もの中国人を殺したと言われています。今度の習は毛を越えるというのであれば何億人殺すのでしょう?今度は自国民だけでなく、外国人も含めた殺戮を楽しむ核戦争を始めるつもりでは?福島氏が「習近平独裁の中国は、北朝鮮よりもさらに巨大で横暴な大国として日本の脅威になりそうな予感である。」と述べているのは杞憂ではありません。現実化しつつあります。
馬渕睦夫氏の『アメリカ大統領を操る黒幕 トランプ失脚の条件』から中国について述べた部分を紹介します。中国ほど危険な国はありません。日本国民、日本企業には自覚が求められます。
(P.150~151) 習近平は反腐敗キャンペーンを行ない、汚職に手を染める党幹部や官僚を摘発していますが汚職に関与していない党幹部などいるはずがなく、誰でも摘発できるわけで、政敵 の掃討に利用しているだけです。
中国では「上に政策あれば、下に対策あり」とよく言われますが、そういう社会に生きてきた一般の民衆が、上の人間たちの腐敗を目にして社会や国家への帰属意識をもたなくなり、「自分の身は自分で守る」と考え、それがエスカレートして極めて自分本位な考え方になるのは当然です。
私は別に中国人が嫌いでも何でもなく、むしろ非常に気の毒だと思います。しかし、こういう自己中心的な人々が何億人集まろうと、「国家」にはなりません。韓国もよく似た面がありますが.後述するように中国は「国家」ではないので、いくら条約を結ぼうと、 合意をしようと守らなくても平気です。
南京大虐殺問題でも、中国が嘘を平気でつくのは、それが“中国の性”だからだと言えます。戦前に中国に渡ったアメリカの外交官、ラルフ•タウンゼントが著わした『暗黒大陸中国の真実』(田中秀雄・先田賢紀智訳•芙蓉書房出版)には、誰もが平然と嘘をつき、それを恥じない中国人が詳細に描かれています。タウンゼントは同書で、「他人を信用する中国人はいない。なぜなら自分が他人の立場に立ったら、自分を信用できないからだ」と述べています。
支配者が搾り取れるだけ搾り取ろうとし、そこから逃げなければ生きていけないという 世界に生きていれば、そうなるのも当然だと思います
中国は「国家」ではない
中国が自力で発展できなかったのは、愛国者がおらず、「国家」になれなかったからです。 では、あの地には何があるのかというと、「安い労働力」と「13億人の市場」があるたけです。アメリカやEU、日本や台湾、韓国などが資本や技術などを支援しなければ、自力で発展することができなかった国なのです。
(P,152~153)一方の中国には大した天然資源がなく、安い労働力があっただけでした。だから、工場 を移転させて、安い労働力を利用して、世界の工場にしたのです。
その際に役に立ったのが中国共産党政府です。民主国家であれば、土地の強制収用には 面倒な手続きが必要で、反対運動でも起きれば頓挫してしまぅこともあります。しかし、 共産党政府であれば強権的!に有無を言わさず、強制収用ができます。労働者を劣悪な労働環境で働かせたり、排気ガスや廃水で環境を汚染したりしても、住民を黙らせてくれます。 だから、共産党政府を温存したのです。
アメリカは中国を民主化しようなどとは微塵も考えてきませんでした。共産党の体制下で、甘い汁を吸ってきただけです。それが限界に来て、酸っぱい汁しか出なくなったので、 いよいよ中国からの撤退を始めたというところです。 実際,中国の経済成長はすでに:終わりつつあります。
中国が発表する統計数字はデタラメばかりで、明らかに経済は失速しているにもかかわらず、経済成長率が7%前後なんてあり得ません。そこには理由があります。2013年 の全国人民代表大会(全人代、国会に相当する)で習近平政権が誕生したときに、中国の実質GDPを10年で「2倍にする」という公約を打ってしまっているのです。実質GDPを 10年で2倍にするためには、年間の経済成長率を7%前後に維持しなければ達成できません。
しかし、7%から大きく乖離した数字を発表すれば、習近平政権が公約違反をしたという話になってしまいます。中国共産党の権威は、経済を成長させ、中闰人民を豊かにするということで支えられています。だから「年7%前後の経済成長」が守れないとすると、習近平、いや中国共産党の威信が失われてしまいます。実態はそれこそマイナス成長だったとしても、絶対に発表するわけにはいかないのです。
「世界の工場」として経済発展したおかげで労働者の賃金が上昇し、すでに中国は「安い労働力の国」ではなくなりつつあります。レイバーコスト(人件費)が上がって、かつ品質の悪い製品しか製造できないのであれば、外国企業が撤退していくのは当然です。
(P.158~159) 本物の海洋国家であるアメリカの海軍に挑戦し、衝突すれば、ひとたまりもなく粉砕さ れるでしょう。そんなことは中国側もよくわかっていますから、常識的に考えれば中国が本気でアメリカに対峙することはないと言って構わないでしょう。しかし、中国の対米関係は習近平の権力闘争の一環でもあることを考えれば、習近平がアメリカを挑発し続ける可能性は排除できないでしょう。もし、アメリカの海洋覇権という.虎の尾を踏めば、アメリ力は中国を軍事的に叩くと考えられます。
そもそも、人民解放軍が本当に共産党政権を守るかどうかも怪しいと言わざるを得ません。人民解放軍は自給自足型の軍隊で、不動産開発から医療事業、農業、工業に、ホテルやレストラン、カラオケ店の経営まで、非常に幅広く営利事業を展開し、共産党政府からの予算だけに縛られていません。
中国の国家主席は、人民解放軍を実際に動かせる力があるかどうかで決まるといわれ、逆に人民解放軍からすれば、共産党政府が倒れたところで昔の軍閥に戻ればいいだけで、大した影響はありません。国家に対するロイヤリティがなく、目先の利益にしか興味がないのは、人民解放軍とて同じです。
フランスの経済学者で、ミッテラン仏大統領の補佐官や復興開発銀行の初代総裁を務めたジャック•アタリは.著書『21世紀の歴史―未来の人類から見た世界』(林昌宏訳、作品社)のなかで、「2025年には、いずれにせよ中国共産党の76年間にわたる権カに終止符が打たれるであろう」と述べています。アタリの予想通りならば8年先ということになりますが、私はそれより早く崩壊.が訪れるだろうと予測しています。
注目すべきことは、そもそもアタリは何故こんな予測ができるのかということです。アタリは、世界統一を目指す国際金融勢力の仲間だから、彼らの計画を述べることが可能なのです。
一般に言われているように経済成長が望めなくなれば、今まで民衆の間に吹き溜まってきた不満がいよいよ爆発します。経済が伸びて潤っていたから我慢していただけで、「金の切れ目が縁の切れ目」となります。経済成長が止.まれば、国際金融資本も共産党一党支配を支える必要がなくなります。彼らが作った中国共産党政権に引導を渡すことになるのです。
記事

「習近平独裁」への道は広がったのか(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)
このコラムでも注目してきた今年の北戴河会議(河北省のリゾート地・北戴河で行われる共産党幹部・長老の秘密会議、秋の党大会の根回しが行われる)がどうやら8月16日までには終わっていたようである。政治局常務委員の一人、張徳江(全人代常務委員長)が湖南に全人代執法検査のために訪れた様子を、16日夜のCCTVテレビが報じていたからだ。17日には習近平もメディアで動静を報じられるようになった。北戴河会議はいつ始まって終わったと広報されることはないので、政治局常務委メンバーの動静が報じられなくなった段階で始まったな、と判断し、その動静が再び報じられて、あ、終わったな、と気づく、そういうものである。そうすると8月3日ごろから15日ごろまで開かれたのだろうと判断できる。
ただ、この北戴河会議で、人事における激しい攻防があったとか、そういう話は今のところ、流れてこない。むしろ習近平の思惑どおりの人事が進んだ、習近平の勝利で終わった、という分析の方が香港メディアを中心に多くでているのではないか。5月ごろまでは、北戴河会議では壮絶な権力闘争、駆け引き、特に反習近平派の反撃が展開されると思われていた。だが蓋をあけてみれば、異様なほど静かな北戴河会議であったようだ。
長老たちの静かな夏休み
北戴河会議直前に、孫政才を完全失脚させるなどの荒技で、長老らアンチ習近平派が会議での反撃の意欲を失ったということなのだろうか。8月18日付けのサウスチャイナ・モーニングポストのように、例年のような秋の党大会の水面下交渉といった意義のある北戴河会議自体が今年は開かれなかったのだ、と報じる香港メディアもあった。つまり、長老たちの影響力自体がすでになく、彼らの北戴河入りは、単なる“夏休み”に過ぎなかった、というわけだ。
サウスチャイナ・モーニングポストは習近平寄りの政商・馬雲率いるアリババが資本を握るメディアなので、これは習近平サイドのプロパガンダの可能性もあるが実際、江沢民は連続三年、北戴河会議を欠席しており、兪正声、孫春蘭、劉延東ら現役政治局員を含む幹部がこの時期、内モンゴルに視察に行って北戴河会議には出席していなかった。
江沢民派、上海閥には特に若手の後継もなく、習近平の対上海閥との権力闘争という点では、習近平に軍配が上がる形でほぼ決着がついているので、兪声正らが会議をさぼるのはわかるのだが、孫春蘭や劉延東ら共青団派の重鎮たちが会議に参加しなかったら、孫政才が失脚後、ほぼ唯一の希望の星といっていい共青団ホープの胡春華の政治局常務委員会入りは危ないのではないか。しかも、胡春華自身もどうやら北戴河会議に参加していない。また同じく政治局常務委員入りの可能性があるといわれている汪洋(副首相)も、韓正(上海市書記)も、北戴河会議の期間、海外に行ったり、地元の視察に行ったりしていた。つまり出席していない。
となると、北戴河会議は政治局常務委員会入り人事に絡む重要人物や長老たちの多くが欠席したか、あるいは開催したとしても、ろくな話し合いをしなかった可能性がある。
これを、習近平がすでに独裁的な権力を掌握しており、今年の北戴河会議は習近平による習近平のための会議であったので、多くの長老や現役政治局委員たちが出席する意欲すら起きなかった、ととらえる人も多い。しかも習近平寄りのネタ筋は、盛んに党規党章に「習近平思想」が書き込まれることが北戴河会議で決定したという情報も流している。
とすると、本当に習近平が毛沢東、鄧小平に続く中国共産党第三の強人独裁政治を打ち立てるのだろうか。ならば、もし習近平強人独裁政権が確立したら、中国はどんな国になるのだろうか。それを今回、想像してみたい。
中華民族が偉大であった時代とは
習近平思想は具体的に何を指すのかというと、「中華民族の偉大な中国の復興の夢」「中国の特色ある社会主義の堅持と発展」「四つの全面(全面的小康社会、全面的法治、全面的改革の深化、全面的に厳格に党を治める)の実現」「五位一体(政治・経済・社会・文化・エコ)の全体的レイアウト」「平和発展の道」「国防と軍隊の現代化」「人民を主体とした党の一切の指導」などが挙げられている。
特に重要なのは「中華民族の偉大な中国の復興の夢」。では習近平が目指す中華民族が偉大であった時代とは、いつのことかといわれると、最大版図を築いた清朝なのか。あるいは外国まで侵略した元王朝なのか、いや両方とも外来民族が築いた王朝ではなかったか。それなら一応漢族の王朝であった明朝を目指しているのか、といった話になる。要するに、かつてあった世界の中心として周辺国を朝貢国として従えていた帝国を再現したい、という風にとらえられている。必ずしも、現代世界の責任ある近代国家の大国を目指しているわけではないのがミソだ。
これを実現するために必要なのが「国防と軍隊の現代化」「人民を主体とした党の一切の指導」ということになる。「四つの全面」などのスローガンをみると、習近平思想も法治や改革を目指しているのだろうと言う人もいるかもしれないが、四つの全面に挙げられている全面的な法治国家の実現とは「共産党による法を使った支配」を指しており、西側民主主義国家の法治概念「法の支配」と全く別ものということは、すでに現役の人民最高法院長らが言明している。さらに「党の一切の指導」は強化され、下部組織は上部組織に従うという共産党独裁の原則が徹底される。もちろん今までも共産党独裁であったが、党内のシステムをいえば、最終的な決定は政治局常務委員による多数決で決まる合議制であり、寡頭独裁、あるいは党内寡頭民主といわれる多数派政治であった。総書記の発言には否決権も議決もなく、奇数人数の政治局常務委員会メンバーが持つ一票分の権力に制限されていた。
強軍化へ軸足を移す
習近平は、これを自分自身が「唯一無二の党の核心である」と位置付けるキャンペーン、「メディアの姓は党」(メディアは党に忠誠を誓う)キャンペーンでメディアを通じた世論コントロールを強化。今度の党大会では党規党章に「習近平思想」を盛り込み、できれば党主席制度の復活も狙っている。党主席とは毛沢東独裁の象徴のような職位。否決権も議決権も持ち、定年制も関係ない特別の唯一無二の地位、ということになる。習近平が党主席となって党の指導思想を「習近平思想」と呼び「党の一切の指導」という独裁体制を徹底し、清朝だか明朝だか元朝だかの版図と国際影響力と取り戻す。それが習近平の目指す長期独裁体制である。
そのための国防と軍の近代化は、決して国軍化ではなく、党の私軍という解放軍の基本に立ち返ることであり、共産党の執政党としての権威維持の根拠は鄧小平、江沢民、胡錦涛時代まで続いていた経済発展から、中国の夢の実現をかなえる強軍化へと軸足を移すということである。
この「党の一切の指導」の徹底というのが、今顕著に表れているのは経済分野である。たとえば今、注目を集めている「企業の姓は党」(企業は共産党に忠誠を誓う)キャンペーン。企業は、共産党の指導に従うことを徹底する、ということであり習近平政権は、現在約3200社の大企業に、党の指導に企業が従うことを条文に盛り込んだ定款に変更するよう通達を出している。これには香港上場企業も外資との合弁企業も含まれており、また民営企業も追随する方向で動いている。すでに200前後の企業が定款変更届を出しており、うち香港上場企業も30社以上含まれるようだ。
リコノミクスは雲散霧消
中国における企業はすべて自社利益よりも党の利益を優先すべきであり、投資案件も株の売買も人事も党の利益を最優先して決定される、ということだ。すでに万達集団や復星国際などの民営大手が、勝手な外資購入を行ったとして銀行融資を止められる懲罰を受けているが、今後、民営、国有、合弁、上場企業問わず、外国投資は党が「戦略的」と判断したものしか許されなくなるという。この「戦略的」という判断は、企業にとっての経営戦略の意味ではなく、国家戦略、包み隠さずいえば対外拡張戦略、軍事国防戦略を指す。なぜなら習近平思想の骨子は、「中華民族の偉大なる復興の中国の夢」、清朝あたりの版図および国際影響力の復興だからだ。すでに何度かこのコラム欄でも指摘していると思うが、習近平のぶち上げる経済構想「新シルクロード構想・一帯一路」も軍民融合戦略も、企業や消費者に利益をもたらすように設計されていない。これは中国の長期軍事戦略の視点から打ちたてられたものである。
習近平のいう「改革の深化」とは当然、同じ方向性で、党の統制強化のための改革である。「国有企業改革」とは、ゾンビ企業を淘汰して民営化して、外資なども入れて香港市場に上場して経営を立て直すなどといった真っ当な国有企業改革ではなく、有力国有企業の合併を進め、大規模化し、その経営から人事に至るまで党がコントロールし、その大規模国有企業を通じて市場を党がコントロールするという方向に変わった。2013年秋の三中全会にリコノミクス(李克強が主導する経済政策)として打ち出された経済政策は、「簡政方権(行政手続き簡素化と権限委譲)」といったキーワードで説明されていたが、今やリコノミクスは雲散霧消し、習近平が目指すのは企業の党への忠誠と市場の支配である。
これはわかりやすくいえば、鄧小平路線の終焉である。共産党寡頭独裁(あるいは党内寡頭民主)も、改革開放路線も鄧小平が打ち立てた共産党秩序と方向性である。鄧小平は党員が資本家になり、資本家が党員になる道を開き、共産党こそが人民を豊かにしてくれるという幻想を共産党の執政党としての権威根拠に利用した。その結果、権貴政治と呼ばれる政治家と資本家が癒着した腐敗構造が起き、富める党員・中産階級と改革開放の恩恵を受けられず搾取される農民・労働者という二元構造が中国共産党政治の大いなる矛盾として持ち上がり、ついには経済発展の頭打ちという現象が胡錦涛政権末期に表れるのである。西側民主主義的発想ならば、ここで天安門事件以降棚上げされていた政治改革に取り組め、ということになるのだが、この矛盾を抱えたまま政権を禅譲された習近平は鄧小平路線そのものを捨てる方へ舵を切った。共産党の権威の根拠を持続的な経済発展に求めるのではなく、党の指導強化と強軍化に求め、清朝並みの国際社会における版図、影響力を取り戻すという野望を人民と共有することで、求心力を維持しようと考えたわけだ。
巨大で横暴な、最後の王朝か
習近平独裁の中国イメージがおのずと湧いてくるのではないか。中国が段階的にロシア方式で変貌していくという一部西側の学者たちの期待は裏切られつつあり、中国は、むしろ北朝鮮の先軍政治に近い方向に向かっている。いかに、習近平が有能な経営能力を持っていたとしても、企業活動に党が深く介入すれば経済の活力は大きく低下し矛盾は増大する。国際社会が最後のフロンティアと期待した中国市場は閉ざされていく。もちろん、AIやITなど共産党が戦略意義を認める分野には集中的に資金投入され、中国がAI、IT技術で世界を凌駕するかもしれないが、そのAI、IT技術がジョージ・オーウェルの小説「1984」に出てくる「ビッグブラザー」を創り、周辺国を支配するために利用される。人類を幸福にするイノベーションとは程遠そうだ。
習近平が目指す長期独裁政権に対する私のイメージはこんな感じだ。全く見当違いだと批判する人もいるだろうし、私自身、見当違いであってほしい。権力を握った習近平が、いきなりゴルバチョフのようにペレストロイカやグラスノチを打ち出すといった大転換があればよいのに、とも思う。だが、この5年間の習近平政権の言動を総合すると、習近平独裁の中国は、北朝鮮よりもさらに巨大で横暴な大国として日本の脅威になりそうな予感である。
まだ党大会までには時間もあり、また党大会前には七中全会(第七回中央員会全体会議)もあるはずで、人事も習近平思想も党主席制度もどうなるかはわからない。私自身はそのような独裁体制がたとえ誕生しても、長期の安定を維持できるとはとうてい思えないので、習近平王朝が最後の王朝で、多くの人が思うよりも短命ではないかという希望的観測はまだ保留しておきたい。
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『「世界の敵」とスクラムを組む韓国 「中立宣言」は中立で終わらない』(8/22日経ビジネスオンライン 鈴置高史)について
8/22facebook記事、ソウルの慰安婦謝罪碑を貼り替えた奥茂治氏の文大統領あての提言(ハングルもありましたが、英語と日本語のみ表記)です。わざと逮捕され、韓国の裁判で慰安婦問題が朝日新聞によってデッチ上げられたことを証言するとのことです。是非支援していきましょう。
<OKU SIGEHARU
Recommendation to the President of Korea The other day, “towards the problem solving of the comfort women, recruitment of Engineering, universal values and national consensus of humanity, relapse prevention promise we need” in the speech of the sentence standing Tiger president in place the Liberation Day in Seoul, Korea in the I suspected my ears. Why will not you try to remove the stone monument that false wording in the National Cemetery managed by your own country and reveal it as false why? The monument is to be a false wording chopped the Japanese Kiyoji Yoshida in order to bring out the compensation from Japan to the recruitment of Engineering and the comfort women Japan and the Korean problem in Japan, but I such that the Korean researchers have observed, President Roh seems to have no idea about it. To resolve the issue the statement the President himself was raised does not seem only not to listen to the left and right are correct expert opinion in its own way to it, but statements president required quest of truth activists of action. If the national consensus is needed in Korea, how much compensation was made to a legitimate comfort woman about the comfort women problem that hinders friendship between Japan and South Korea? Why prevent Abe / Park’s implementation of the Japan-Korea agreement? If Korean citizens know its origin, I think that the problem of comfort women is disgusted. From now on Korean politicians and the press will not cherish the behavior of the activists who raise the fists as the voice of the people. I think the president should notice promptly that the silent majority is important. And it is shameful that was erected the monument of apology to Seiji Yoshida, you want to propose whether heir is not a chance to remove what now requesting the removal.
Because Mr. Kotaro Miura translated for the time being, I will post it.
OKU SIGEHARU 韓国大統領への提言 先日、韓国ソウルで行われた光復節での文在寅大統領の演説で「慰安婦・徴用工の問題解決に向け、人類の普遍的価値や国民的合意、再発防止約束が必要だ」には我が耳を疑った。 自分の国が管理する国立墓地に虚偽の文言を刻んだ石碑を堂々と建立させ虚偽と判明しながらもなぜ取り除こうとしないのか?その石碑は慰安婦と徴用工を日韓の問題にして日本から補償を引き出すために日本人吉田清治が刻んだ虚偽の文言である事は日本、韓国の研究者が認めている事なのだが、文大統領はその事を全く知らないようだ。 文大統領自身が提起した問題を解決するにはそれなりに真実の探求が必要なのだが文大統領は活動家の行動に左右され正しい研究家の意見には耳を傾けてないとしか思えない。 韓国で国民的合意が必要なら日韓両国の友好を妨げる慰安婦問題についても正当な慰安婦にどれだけの補償がなされたのか?安倍・朴の日韓合意の履行を何故、誰が阻止させているのか?韓国国民がその原点を知れば慰安婦問題はもううんざりだと思うだろう。 これからは韓国の政治家やマスコミは拳を振り上げる活動家の行動を国民の声として大切にするのではなく。サイレントマジョリティーこそ大切である事に大統領は早く気づくべきだと思うのである。 そして吉田清治に謝罪の碑を建立させたことを恥ずべきであり、相続人が撤去を要求している今こそ取り除くチャンスではないかと提言したい。>(以上)
8/2ustralia-Japan Community Network (AJCN) (EN)記事<Setting the Record Straight: Comfort Women and Compensation>。山岡鉄秀氏(モラロジー研究所(麗澤大学内)研究員)の英文の寄稿です。外務省が戦闘能力を持たないため、個人が努力して戦っています。中共や朝鮮半島は間違いなく国が関与してジャパン・デイスカウント作戦を実行しているというのに。米国が今までは日本の主張を抑えて来たとすれば、米朝、米中、で対峙するのが明らかになってきていますので、今が慰安婦やら徴用工問題を世界に向けて、修正するチャンスです。米国と擦り合わせて、いつでも発信できる準備を外務省はしておかないと。
http://jcnsydney-en.blogspot.jp/2017/08/setting-record-straight-comfort-women.html?m=1
8/23アポロネット<朝鮮給敘利亞化武貨物被截獲 3國核武來源於中共=北朝鮮はシリアに化学兵器を与え、パキスタン、イラン、北朝鮮の核兵器技術は中共由来>には“維基解密:中共是核擴散的始作俑者
維基解密曾披露,中共副總理錢其琛手下線人向美國密報,朝鮮根本就沒有核武器,都是北京秘密部署的,目的是平衡美國在台灣的影響力。中朝兩國唱雙簧,藉由永遠議而不決、決而不行的“六方會談”爭取美國最終放棄台灣,否則即將面對朝鮮“核代理”所發動的戰爭。中共可以置身事外,坐收戰爭成果。=ウイキリークス:中共が核拡散の悪事の先例を作った。 ウイキが言うには、中共の副総理であった銭其琛の部下が米国に密告した。「朝鮮は全く核兵器は持っていない。全部北京の秘密基地のものである。目的は米国の台湾への影響力とバランスを取るためである。中朝両国合作の6者会談は永遠に議して決めず、決めても実行せず、最終的に米国に台湾を諦めさせる。さもなければ、朝鮮を代理とした核戦争に直面するであろう。中共は我が身を外において、座って戦争の成果を受け取れば良い」”と。銭其琛が副総理でいたのは1991年~2003年であるため、今や北は自力で核やICBMを開発できるところまで来ました。ウィキの米国に密告したというのは首を傾げますが。普通は黙ってやるのではと。でも、小生が習近平VS江沢民派+瀋陽軍区+北朝鮮の構図で捉えない方が良い、デイスインフォメーションの可能性があるというのを裏付けます。まあ、ウイキがどの程度信用できるかという問題もありますが。やはり、台湾にも米軍基地を置き、日米台の同盟で中国の太平洋進出を抑止しなければ。また南シナ海やインド洋進出もASEAN諸国とインドと連携して中国を封じ込めないと。
http://hk.aboluowang.com/2017/0822/981834.html
鈴置氏の記事で、8/16朝鮮日報の社説「「戦争反対」とか「平和的解決」などの言葉は確かに間違ってはいない。だが、それにより北朝鮮の核廃棄ができない場合、大韓民国の5000万人の国民は金正恩の核の奴隷として生きていくしかない。そうでなければ他にどんな方法があるというのか。」というのを日本に置き換えてみれば良いでしょう。それを伝える日本のメデイアは産経以外ないのでは。まあ、日米の認識として、韓国は向こう側の国と思っているでしょうから。ただ、米国が素直に裏切りを許すとは思えません。そんなに甘くはないです。日本に原爆投下するくらいの国ですから。クーデターを起こさせるか、戦争を起こして北の攻撃でソウルを火の海にすることくらいは考えているのでは。米国によれば、朝鮮半島全体が「世界の敵」認定されたということですので。
記事

顔をしかめるナウアート米国務省報道官(写真:AP/アフロ 8月9日撮影)
(前回から読む)
韓国が「平和」を名分に掲げ「中立」に動く。それは「北朝鮮との共闘」の入口だ。
「裏切り」に質問が集中
—北朝鮮のグアムへの威嚇を期に、韓国が「有事の中立」を宣言しました。
鈴置:8月15日、文在寅(ムン・ジェイン)大統領が「光復節」の祝辞ではっきりと、米国による北朝鮮への先制攻撃は許さないと宣言しました(「ついに『中立』を宣言した文在寅」参照)。
青瓦台(韓国大統領府)の「第72周年光復節祝辞」のその部分を翻訳・引用します。
朝鮮半島で再び戦争を繰り返してはなりません。朝鮮半島での軍事活動は大韓民国だけが決めることができ、誰も大韓民国の同意なくして軍事活動はできません。
政府は何があっても戦争だけは止めることでしょう。
米国が先制攻撃する際、韓国はそれを止めるし加担もしない、との宣言です。
—「中立宣言」に米国はどう反応しましたか?
鈴置:8月15日の国務省の記者会見で「韓国の裏切り」に質問が集中しました。報道官は初めは明確な答えを避けていました。
が、記者の執拗な質問により、最後は「北朝鮮と戦わない韓国」への疑問を、暗示的にではありますが口にすることになりました。
しどろもどろの報道官
—報道官が文在寅演説に関するコメントを避けたのはなぜですか?
鈴置:米国にとって「中立宣言」は明らかな裏切りです。でも、韓国への怒りを表明すれば「米日韓」の対北朝鮮包囲網が崩れたことを認めることになってしまいます。
国務省の「Department Press Briefing-August 15, 2017」から関連部分を拾います。記者が突っ込むごとに、ナウアート(Heather Nauert)報道官がしどろもどろになっていくのが分かります。
会見ではまず、北朝鮮のグアム沖へのミサイル発射計画などについて質問が出ました。続いて、文在寅大統領の「韓国政府の許可なくして誰もが軍事行動できない」との発言に関する質疑に移りました。
ある記者が「それに対する米国の立場は?」と質したのです。報道官は「米韓はいい関係を持っている」「仮定の質問には答えられない」などと誤魔化しました。
すると記者が「金正恩(キム・ジョンウン)が韓国を奇襲攻撃したら、米国は軍事行動に出るのか」とたたみかけました。それに対し報道官は「韓国は同盟国である。我々は韓国を守る」と答えました。このやりとりの原文は以下です。
質問: What if North Korean Kim Jong-un sudden attack South Korea? Can the United States engage in this military action?
報道官: As you know, South Korea is an ally of ours; and as we do with our allies and friends, we pledge to protect them as well. Okay?
韓国の許可が要るのか
当然の答えですし、こう答えなかったら問題です。でも、会見場でこれを聞いた記者たちは「米国は韓国を守るというのに、米国が米韓共通の敵を攻撃するのを韓国が邪魔すると言い出した。韓国はいったい何を考えているのか。米国はそれを許すのか」と疑問を膨らませたことでしょう。
ナウアート報道官はこの率直な疑問に対し、何らかの答えをせざる得なくなりました。記者の作戦勝ちです。
この後いったんは、北朝鮮に対する中国の姿勢などの話題に移りましたが、また「文在寅発言」に話が戻されました。
「米国の(北朝鮮に対する)いかなる攻撃に関しても、韓国の許可が要るのか」との、本質を突く質問が出たのです。ナウアート報道官は「外交的な問題でもあるが、国防総省も絡む問題だ。直ちには答えられない」と答えました。
質問: It’s not really a hypothetical. What do your agreements with South Korea say? Do you have to get their permission to launch any sort of strike?
報道官: Some of those things are diplomatic conversations and some of those would involve the Department of Defense, so I just don’t want to get into that. Okay.
国防総省とたらい回し
—どこかで聞いたような答えですね。
鈴置:米軍制服組のトップ、ダンフォード(Joseph Dunford, Jr.)統合参謀本部議長が8月14日、ソウルの記者会見で同じ質問を受け「それは政治的な決定となることだろう」などと答えています(「ついに『中立』を宣言した文在寅」参照)。
米政府は「この手の質問にはこう答える」と、応答要領を定めているのでしょう。国務省が聞かれた時は「国防総省も関係するから」、国防総省が聞かれた時は「政治的な判断も要るから」と言い訳し、答えを避ける仕掛けです。
ただ、この日の国務省担当記者は誤魔化されませんでした。報道官の「韓国は米国の重要な同盟国だ。米国は韓国を守る」という言葉に付け込んだのです。
記者は「金正恩が韓国を攻撃したら、米国は戦争に巻き込まれると思われる。というのに文在寅大統領は朝鮮半島の戦争は望まないと演説した。彼の真意が分からない」と重ねて聞きました。
報道官は「あなたの質問の意味が分からない」とか「日本もそうだが、誰も戦争を望まない」などと、はぐらかそうとしました。
質問: — very confuse about President Moon remark yesterday, because U.S. and South Korea is alliance. But he not want to be war in Korean Peninsula, but however U.S. supposedly involved with war when the North Korean Kim Jong-un attack the South Korea. But why he discourage it, but —
報道官: I’m sorry. I didn’t understand the last part.
質問: President Moon doesn’t want a war in the Korean Peninsula, but —
報道官: President Moon doesn’t want that. Japan doesn’t want that.
北朝鮮には全世界が懸念
さらに「誰もが戦争を望んでいない」ことを強調するためでしょう。「金正恩への非核化要求は国連安保理の全会一致の決定だった。世界の我々の友人、同盟国、パートナーにとって最も重要なことなのだ」とコメントしました。
報道官: It’s a priority, obviously, at the United Nations and the UN Security Council, where they had the unanimous vote on that matter. It’s a top issue for our friends and allies and partners around the world.
これを聞いた記者は「しめた」と思ったに違いありません。直ちに「だったらこの問題は米朝間ではなく韓国の問題だ。だのになぜ、文大統領は他人事のように語るのか」と切り返したのです。
質問: But this is not at all between U.S. and North Korea problem. This is ? the actually problem is that the South Korea, in fact. But Moon thought this is your guys’ problem. That’s not ? how did you think about ? this —
報道官はまたしても「質問の意味が分からない」と逃げましたが「これが米朝間の問題と考えているのか?」と再び聞かれると、逃げようがありませんでした。
ナウアート報道官は「北朝鮮と全世界の間の問題だ。米国だけが金正恩体制に懸念を表明しているわけではない」と答えたのです。
質問: — between the U.S. and North Korea problem. Do you think this is between the U.S. and North Korea problem?
報道官: Is this issue between the United States and North Korea? No. This is between North Korea ? this is between North Korea and the world. It is not the United States standing here alone expressing concern about the activities of Kim Jong-un’s regime.
「まともではない国」をかばう国
このやりとりを聞いたり、読んだ人は「北朝鮮の核問題は世界的問題だ。なのに、もっともその脅威の下にある韓国が北に立ち向かおうとしない」との印象を深めたことでしょう。米国務省の定例ブリーフは世界の外交関係者の必読サイトです。影響力は極めて大きい。
そしてこの後、ナウアート報道官は予定していなかったと思われる発言をしてしまったのです。
報道官は「いい機会だから言っておく」と切り出したうえ、北朝鮮を「自由でも公正な国でもない」「国民に十分な食料も与えない」「移動の自由もない」「自らの国民を飢えさせ、強制的に堕胎させている」「収容所で国民を強制労働させる」と、口を極めて非難したのです。長くなりますが、原文を以下に引きます。
報道官: And by the way, it’s a good opportunity to remind people what it’s like for North Koreans to live under that regime. Okay. That is not a free and fair country. It is not a country where people have ample food, opportunity. It’s not a country where people can come and go as they please. It’s a country where they’re starving their own people; they’re engaged in forced abortions. Pardon me for talking about that, but that is a very grim reality there, where people are living in labor camps, it’s under horrific situations.
北朝鮮が人権蹂躙国家であることはニュースではありません。でも「中立宣言」が議論された直後にそれを聞かされた人は、韓国という国にますます首を傾げたでしょう。
「人権を平気で蹂躙する危険な国が今、核武装しようとしている。そんな『世界の敵』を、なぜ韓国はかばおうとするのか」――と思うのが普通です。
威嚇なしで核は手放さない
—文在寅大統領は単に「戦争を望んでいない」のでは? 「北をかばう」とは言い過ぎではありませんか?
鈴置:今「米国の先制攻撃を止める」と語れば、却って戦争を呼びかねません。文在寅大統領が主張するように、話し合いにより北朝鮮が核を放棄すれば一番いい。
でも、話し合いで金正恩委員長が核を放棄する可能性はほぼない。核保有国になること自体が目的だからです。核を放棄すれば金正恩体制は大きく揺らぐ。そんな道を自ら選ぶわけがない。
そう判断したからこそ米国や日本など西側の国は、国連による経済制裁と「軍事的手段も辞さない」との米国の威嚇によって強引に――最後の段階は話し合いになるかもしれませんが――核を放棄させようとしているのです。
そんな時に韓国が「米国に戦争はさせない」と言い出し、軍事的な威嚇に歯止めをかけようとする。北がいやいやでも核を手放す可能性を韓国が減らそうとしている――と米国や日本は見ます。
「自分まで届く核を持った北」を米国が見逃すわけはありません。少なくとも、軍事行動への動機を強めます。「韓国の中立宣言」が戦争の危険を増すことになるのです。
平和を叫んでも平和は来ない
—「戦争反対」と言えば戦争がなくなるわけではない……。
鈴置:まさにその視点で、保守系紙、東亜日報と朝鮮日報は文在寅演説を厳しく批判しました。
両紙ともやり玉にあげたのは冒頭に引用した、そして米国務省の会見で質問が集中した「戦争だけは止める」部分です。
東亜日報の8月16日の社説「『不安な平和』ではなく『堂々とした平和』を目指せ」(韓国語版)で、次のように主張しました。
朝鮮半島に戦争の惨禍が起きては絶対にならない。しかし「不安な平和」ではだめだ。当面は北朝鮮の挑発による戦争の防止が重要だとしても、北朝鮮が自ら核を放棄せざるを得なくするようにすべく、国際社会と一緒に最後まで圧迫せねばならない。
ここで軍事的圧迫を緩めれば、北朝鮮に核を持たせてしまうではないか――との悲痛な叫びです。
この社説は結論部分で「『核には核で、挑発には報復で対応する』との原則の下、強力な対北抑止力を確保せねばならぬ」と、国民に核武装を呼びかけました。大統領の「戦争絶対反対」宣言が、韓国の核武装論を加速したのです。
朝鮮日報の社説「対話では北の核を放棄ができないというのに、いったいどうするのか明らかにせよ」(8月16日、韓国語版)のポイントも引用します。
戦争反対」とか「平和的解決」などの言葉は確かに間違ってはいない。だが、それにより北朝鮮の核廃棄ができない場合、大韓民国の5000万人の国民は金正恩の核の奴隷として生きていくしかない。そうでなければ他にどんな方法があるというのか。
「お人好し」か、それとも……
—文在寅大統領の真意は?
鈴置:韓国の左派は大統領を「平和の使者」と素直に称賛しています(「ついに『中立』を宣言した文在寅」参照)。米国の先制攻撃に歯止めをかけさえすれば戦争は起きない、という理屈でしょう。
「韓国だけが朝鮮半島の軍事行動を決めることができる」との大統領の演説を聞いて快哉を叫んだ「普通の人」もいたことでしょう。韓国では「自分の運命がかかる北の核問題で、自分たちは一切口出しできない」との不満が溜まっていたからです。
それに「戦争時の韓国の被害は膨大なものになる」と信じられていますから「戦争が避けられる」と、ほっとした人も多いと思います。先ほど述べたように、それは必ずしも正しい判断ではないのですが。
一方、保守には2つの見方があります。まずは、大統領は軍事的な圧力なしで北朝鮮が核を放棄すると考えている、との「お人好し」説です。
文在寅大統領は6月20日、米CBSのインタビューで「金正恩の核武装計画は『はったり』に過ぎない。本心は対話を望んでいる」と語っています。
保守派のもう1つの見方は、米国に軍事的な圧力を緩めさせることで北朝鮮の核武装を幇助する「北のシンパ」説です。
核を持ったまま「南北共闘」
—「北のシンパ」ですか!
鈴置:朝鮮日報は先に引用した社説で、「大統領に対する疑念」を匂わせています。以下です。
文大統領が米国の軍事的な措置を防ぐ確実な堤防になってくれれば、南を完全な核の人質にできたと(北朝鮮は)自信を深めることだろう。
—韓国人は核の人質になってもいいのですか?
鈴置:韓国の左派には「北朝鮮は同族の国である韓国には核兵器は使わない」と信じる人が多い。
さらに、北が核を持ったまま南北が和解すれば、北の核兵器は周辺大国ににらみを効かす「民族の核」になる、とも考えています。
文在寅政権は核兵器保有国には必須の運搬手段である原子力潜水艦の保有に熱心です(「ついに『中立』を宣言した文在寅」参照)。
北朝鮮は核弾頭を開発できても、原潜を作る能力はない。それなら韓国がその準備をしておこうと考えているのかもしれません。
—韓国の「中立宣言」は戦争を避けるための中立に留まらない、という話ですね。
鈴置:一見、中立。でも良く見れば「南北共闘」。ナウアート報道官が人権状況を非難することで北朝鮮が「世界の敵」であると強調したのも、それを牽制するためだったかもしれません。
(次回に続く)
■「北朝鮮の核危機」年表(2017年8月以降)
| 8月5日 | 国連安保理、石炭などの全面輸出禁止を含む対北朝鮮制裁決議を採択 |
| 8月6日 | 労働新聞「米国が核と制裁を振り回せば、本土が想像もつかぬ火の海になる」 |
| 8月7日 | 李容浩外相「米国の敵視政策が変わらない限り、核とミサイルで交渉しない」 |
| 8月8日 | トランプ大統領「北朝鮮は世界が見たこともない炎と怒りに直面するだろう」 |
| 8月8日 | WP「北朝鮮が弾道ミサイルに搭載可能な核弾頭の生産に成功とDIAが分析」と報道 |
| 8月9日 | 朝鮮人民軍戦略軍「『火星12』でグアムを包囲射撃する作戦計画を慎重に検討」 |
| 8月9日 | 朝鮮中央通信、先制攻撃論に関連「決意すれば瞬時に日本を焦土化できる能力がある」 |
| 8月9日 | マティス国防相「北朝鮮は体制の終わりや国民の滅亡につながる行動は中止すべきだ」 |
| 8月10日 | 北朝鮮戦略軍司令官「『火星12』4発は島根、広島、高知の上空を通過しグアム沖に着弾」 |
| 8月10日 | トランプ大統領「グアムに何か起これば、誰も見たことのないことが起きる」 |
| 8月10日 | GT社説「北朝鮮が米国に向け先にミサイルを発射した際、中国は中立を維持する」 |
| 8月11日 | トランプ大統領「北朝鮮が浅はかな行動をとるなら軍事的に解決策する準備が完全に整った」 |
| 8月11日 | トランプ大統領「極めて高レベルの追加制裁を考えている」 |
| 8月11日 | 米中首脳が電話会談 |
| 8月12日 | 米仏首脳が電話会談 |
| 8月14日 | トランプ大統領、301条適用を念頭に中国の知財侵害の調査を指示 |
| 8月15日 | 金正恩委員長「米国の行動をもう少し見守る。危険な妄動を続けるなら決断」 |
| 8月15日 | 文在寅大統領「朝鮮半島での軍事活動は大韓民国だけが決めることができる」 |
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『中国、私企業たたきの裏事情』(日経ビジネス8/21号 FT)について
8/21日経電子版<習氏一喝でGDP修正 遼寧省、名目マイナス20%に
【北京=原田逸策、大連=原島大介】中国の経済統計で異変が起きている。東北部、遼寧省の1~6月期の名目域内総生産(GDP)は前年同期比マイナス20%に急減した。異例ともいえる成長率の急低下は、経済統計の水増しやねつ造を戒める習近平国家主席の強い意向を受けた動きとの見方が多い。ほかの省などにも今後、同じような「修正」は広がりそうだ。

1~6月期の遼寧省の名目GDPは1兆297億元(約17兆円)で、前年同期比マイナス19.6%だった。一方、実質成長率はプラス2.1%。1~6月期の消費者物価や卸売物価はともにプラスで推移しており、物価が上がっているなら名目成長率は実質を上回らないと辻つまが合わない。
遼寧省ナンバー2の陳求発省長は1月、省内の市や県が2011~14年の財政収入を水増ししていたと認めた。陳氏は個別の統計には触れなかったが、複数の指標が改善の方向へ水増しされていたとみられる。
3月の全国人民代表大会(国会に相当)。習氏は遼寧省分科会に出席し、「公明正大な数字こそ見栄えがよい」と述べた。習氏が個別の省の分科会で統計について言及するのは極めて異例だ。
遼寧省はかつて、共産主義青年団(共青団)出身の李克強首相がトップを務めた。共産党指導部が入れ替わる秋の党大会を前に、習氏が統計問題で共青団をけん制したとの見方がくすぶる。
遼寧省の場合、公表済みの名目GDPを過去に遡って反映させると、水増しは財政収入の他にもあったようだ。今回、過去の名目GDPをさわらず、1~6月期の数値だけを実態に寄せたため「マイナス20%」が表れたとみられる。「大まかに言って遼寧省はGDPを2割ほどかさ上げしていた」(中国の外交関係者)
同省ではかねて水増しの噂があった。主力の重工業は不振続きだったのに、省公表の実質成長率はプラス基調を堅持。16年1~3月期に初めてマイナスとなったが、地元の企業経営者は「過去のねつ造をやや直しただけ。経済実態は以前からもっと悪かった」と話す。
共産党中央規律検査委員会は6月、吉林省と内モンゴル自治区で「統計ねつ造がある」と指摘した。複数の省などが今後、改ざんを認める可能性がある。
中国国務院(政府に相当)は8月、統計法の実施条例を施行し、水増しや改ざんの厳罰処分を決めた。ただ、地方政府幹部の評価はいまもGDPと税収が柱。党による高い成長目標も改ざんを誘う。構造問題に手をつけないと中国の統計が正確さを高めるのは難しい。>(以上)
如何に中国が嘘をついているかという事です。数字の改竄が当り前であるなら、歴史に於いても改竄するのは当り前でしょう。ご都合主義者の集団ですので。数字の改竄は遼寧省だけでなく中国全土で行われている筈です。習近平は団派の力を弱めるために遼寧省を取り上げたのだろうと思います。自分のいた福建省や浙江省には手を出さないでしょう。全部が真実に数字を発表すれば外資が逃げるのでしょうから、外貨準備にも影響を与え、貿易を停滞させます。それ故、そうはさせないでしょう。中国が真実の数字を発表することはないと思った方が良いです。
次はカナダのオンタリオ州での「南京大虐殺記念日」制定のニュースです。小生も英語で州議員全員と州知事に、ヘンリーストークス氏の南京虐殺への意見を添えて、反対の意思表示のメールを送付しました。結果は中国系カナダ人が多く、敗れたという事でしょう。外務省が中国の「南京虐殺」の世界遺産登録を放置した咎めです。本当に無能の集団としか言いようがありません。
http://www.recordchina.co.jp/b188151-s0-c10.html
日本人の意識を変えるには、戦争が起きて犠牲者がでないと難しいのかもしれません。危険予知は企業では当たり前のように語られるのに、戦争の対策を語る企業はありません。もし、米朝戦争が起きて犠牲者が出たら、左翼リベラルは日本政府と米軍のせいにするでしょう。何のことはない、核シェルターも準備させない・避難訓練もさせない彼らが一番悪いのです。でも、彼ら似非平和主義者の言うことを簡単に信じて、何も声を上げないor「その通り」とかいう人はその時に自分の愚かさに気付くのでしょう。いくら自分が平和を唱えても襲ってくる人間はいるという事を。今の日本人の頭は小学生レベルで思考停止しているのでは。念仏だけで平和は守れません。そう言う人は少なくとも北朝鮮に行って念仏を唱えて来てほしい。
8/22ZAKZAKの記事、<中国、「事故死者数を隠蔽」は氷山の一角? “デマ取り締まり”名目で告発を封殺>。こちらは炭鉱での崩落事故の死傷者数を誤魔化したと言うもの。SARSの時もそうでしたが、中国にとって都合が悪い場合、なかったことにするか、数字を1/10から1/100にします。中国にとって都合の良いことは、数字を10倍~100倍まで膨らませます。「南京虐殺」なんて無かったものを今や30万人が定説になってしまいました。せいぜい国民党が虐殺したものでしょう。何せ「騙す方が賢く、騙される方が馬鹿」という文化ですので、数字の改竄は当り前です。
http://www.zakzak.co.jp/soc/news/170822/soc1708220029-n1.html?ownedref=not%20set_main_newsTop
8/21自由時報の記事<國民黨分裂接近毀黨 中評委:亡黨後準備一起跳海=国民党は分裂して壊れた状態に近い、中央評議委員会は党がなくなった後、一緒に海に飛び込む準備をすると>。国民党の分裂は起こるとすれば、党内部の中国人と台湾人の争いが原因になるのではと推測しています。本年5月に選ばれた党首の吳敦義は本省人です。それまでは李登輝、呉伯雄以外で本省人の国民党主席はいませんでしたので。
http://m.ltn.com.tw/news/politics/breakingnews/2170071
JETRO7月レポート<台湾国民党の勝利か?――中国国民党主席選挙における本省人・呉敦義の当選>。
http://www.ide.go.jp/Japanese/Research/Region/Asia/Radar/201707_takeuchi.html
FT記事は習近平の権力基盤の確立の為、軍以外にも習の意向を忖度した企業経営をさせる狙いがあると言ったところです。元々企業には必ず共産党書記がいましたから。それを習派で固める狙いです。中国人は全員腐敗していますから、習の反腐敗運動も政敵を倒すためだけに行われていることは承知していると思います。喝采を送るとしたら五毛帮のような連中でしょう。アップルも中国の求めに応じVPNアプリの提供を止めたとのこと。ステイーブ・ジョブが生きていても同じ判断をしたかどうか。少なくともFBIへのデータ提出を個人情報秘匿の為に拒んだ前歴があるので、国が違えども自由を確保する意味では中国の申し出を断るべきだったのでは。金に転んだのでしょう。
http://www.bbc.com/japanese/40774965
記事
中国は今年6月、海外投資に積極的だった一部の民間企業に対し、突然締め付けを開始した。高リスクの資金調達などが国家の安全保障を脅かすとの議論を、習近平国家主席が受け入れたためだ。この動きには、2期目を目指す習国家主席に対抗する勢力の資金源を押さえるという政治的な狙いもある。
中国を支配する共産党にとって、外貨準備高は国力の象徴だ。同時に、経済を急激な変動から守る重要な緩衝材でもある。それゆえ、中国の外貨準備高が3兆ドル(約330兆円)を下回ったという今年1月の驚くべき発表は、何か大きな政策転換があったことを示していた。ただし、その影響が感じられるようになったのは6月以降のことである。
一時、3兆ドルを下回った ●中国の外貨準備高

出所:Thomson Reuters Datastream/Financial Times
過去1年半、中国企業による海外資産の買収が相次ぎ、中国の外貨準備は1兆ドル(約110兆円)以上減少した。この状況に臨んで、中国共産党内で危機感が高まった。
中国政府のテクノクラートらは、早々に地ならしを始めた。2016年12月に開催された経済政策を策定するための年次会議で、彼らは「国家安全保障」という言葉を金融リスクに結びつけた。外貨準備高の数字を盾に、問題の首謀者と彼らが見なす者たちを攻撃する姿勢を示したのだ。その者たちとは、巨額の海外資産を買収してきた新世代の中国民間企業群である。
国策に振り回される
中国人民大学財政金融学院の副院長を務める趙錫軍氏は、「金融の安全が大きな問題となっている。金融が国家安全保障を侵害するとの見方はこれまでにもあった。しかし、それは国家レベルの問題であって、個々の企業の問題ではなかった」と指摘する。
1955年、共産党が政権を握った中国でわずかに残っていた「資本家」たちは、事業の直接的所有権を国に譲り渡す契約に署名をした。
彼らは署名を祝うセレモニーを自ら催したという。獅子舞を招いてにぎやかなパレードを挙行し、ドラを打ち鳴らした。この出来事を契機に、以後四半世紀にわたって、民間企業は中国から姿を消した。
それから60年たった今もなお民間企業は、政府が気まぐれで方針を変えるのに振り回されている。
2014年に中国企業家倶楽部である討論会が開かれ、中国で最も裕福な2人の実業家、柳傳志氏と王石氏が議論に参加した。
柳傳志氏は、レジェンド・ホールディングス(聯想控股)を率いる。同社は米IBMのパソコン部門を買収しレノボと名付けた。欧米でもよく知られる。一方の王石氏は、中国最大の不動産グループ万科企業の創業者だ。
米国の中国研究者、チェン・リー(李成)氏の報告によると、この討論会で柳傳志氏は、中国の実業家は、政治に関係しない限りこの上なく安全だと論じたという。しかし王石氏はこれに反対し、政治家に狙われたら身をかがめているだけでは不十分だと応じた。
結局のところ、王石氏が正しかった。実際、王氏が経営する企業は今年6月、政府の支援を受けるグループに買収された。
加えて、柳傳志氏と古くから付き合いのある事業パートナーたちも政府に狙われている。大連万達も復星も海航も、すべて柳氏とつながりがある。また、中国唯一の民間大手銀行、中国民生銀行に出資している裕福な投資家たちともつながっている。今なお民間企業に敵対的な姿勢を取るこの国で、これらの資本家は相互に融資し合い、契約を結び、網の目のような支援関係を形成している。
政府には逆らえない
世界に進出する中国が持つソフトパワーの顔としてかつて賛美された起業家たちは、政府から攻撃を受け始めた今、急いで新たな秩序に合わせようとしている。
大連万達をハリウッドに進出させた王健林氏は、普段は物事に動じない人物だ。しかし、その王氏も中国の経済誌「財新」に、「主な投資は中国国内に限ることに決めた」と語った。
復星で経営のかじを取る郭広昌会長は、先述のクラブメッドや、カナダのエンターテインメント集団「シルク・ドゥ・ソレイユ」、経営に行き詰まっていたポルトガルの国有保険会社の買収を主導してきた。
そんな郭氏も7月末、次のように書いた書簡を公開した。「海外投資や不正な金融に対して行われている最近の精査は不可欠であり、時宜にかなうものだ。多くの不合理な投資を撲滅できる。我々が何も対策をとらなければ、海外の人々は我々が無尽蔵にカネを持っていると見るだろう」
比較的小さな企業も大慌てで対策を講じている。一部の民間企業は、国内で最も経営が苦しい国有企業の買収に進んで名乗りを上げた。政治的な保護を得られると考えたためだ。
中国の調査会社ギャブカル・ドラゴノミクスのマネージング・ディレクター、アーサー・クローバー氏は、「国有企業の手が届かない事業が増えると、共産党は神経質になる。折に触れて、引き締め策を講じる。影響を被るのは、多くのレバレッジを抱え、政治的に不注意な人々だ」と指摘する。
今回の締め付けには、もう一つの目的がある。習国家主席が進める権力強化の妨げになるかもしれない勢力をけん制することだ。
8月上旬、中国のビーチリゾート北戴河に現指導部と党の長老が集まった。習政権が2期目に突入するに当たって、今秋に予定される党人事で、誰を登用するかを話し合うためだ。
成功を収めた実業家の多くは、共産党のエリートとの間に縁故を築いてきた。民間企業への締め付けは、こうしたエリートたちから独自の支持基盤を奪い、現在の地位と富を保ちたければ習国家主席の恩恵にあずかるしかないという状況を作り出した。
中国には「白い手袋」と呼ばれる人たちがいる。有力者との間に強力なコネクションを持つ複数の一族から信頼を得ており、一族が資産を海外に移す手助けをする。今回の締め付けの主な標的となったのは、この白い手袋だ。
中でも最もよく知られる存在だった肖建華氏が今年1月、滞在していた香港のフォーシーズンズホテルから、本土の公安職員の手で拉致された。その後の消息は今もって不明だ。
この締め付けの主軸を担っているのは、習国家主席と、王岐山氏の“連合”だ。王氏は党中央規律検査委員会でトップを務める。
習国家主席と同様に王岐山氏も、かつての党幹部を身内に持つ。さらに王氏は、金融行政を担うテクノクラートの中に忠実な信奉者を抱える。王氏は過去4年間、反腐敗運動に力を振るい、習国家主席に反対する勢力を排除してきた。

腐敗撲滅に辣腕を振るう王岐山氏(写真=新華社/アフロ)
熱を帯びる政治闘争
ひとたび金融界の利益が標的とされると、政治的な応酬が激しさを増した。肖建華氏が1月に拉致された時、治安機関とつながりを持つ実業家で中国から追放されていた郭文貴氏が突然ニューヨークに姿を現し、王岐山氏の周辺に腐敗があると非難した。
郭文貴氏によると、王岐山氏の親族(強力な閨閥の一つ)は、表に出ない海航の株式から利益を得ているという。海航の創業者は1980年代に王氏の下で働いていた。
海航のある幹部は「彼らは王岐山氏をたたくために我々を追っているのだ」と本音を漏らす。しかしこの幹部は、海航と王氏との間に不穏当な接点は一つもないと否定した。
習国家主席が金融リスクを国家安全保障の問題と考えるようになったため、安邦も、王岐山氏を攻撃する戦列に加わった。しかし、安邦が鄧小平一族など影響力を持つ一族とつながりを持つことは、間もなくマイナス要因へと変わった。
米カリフォルニア大学サンディエゴ校のビクター・シー教授は、「安邦は、習国家主席のそれとは異なる政治グループと明らかにつながるコングロマリットの一つだ」と指摘する。
安邦が王岐山氏への攻撃に同調し始めてから2週間後、大手4社への締め付けを当局が強化したという情報が銀行家から漏れ始めた。
そして、長く雲隠れしていた王氏が国営メディアに姿を見せた。同氏は貴州省の貧困救済プロジェクトで不正が行われたと厳しく批判した。同省では大連万達がプロジェクトを展開していることがよく知られている。
メッセージは明白だった。民間の起業家にとって今は、ドラを打ち鳴らし、政府によるこれまで以上の「統制」を喜んで受け入れると公式に表明すべき時なのだ。
Lucy Hornby ©Financial Times, Ltd. 2017 Aug.10
©The Financial Times Limited 2017. All Rights Reserved. Users may not copy, email, redistribute, modify, edit, abstract, archive or create derivative works of this article. Nikkei Business is solely responsible for providing this translated content and The Financial Times Limited does not accept any liability for the accuracy or quality of the translation.
日経ビジネス2017年8月21日号 88~91ページより
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『トルーマン大統領は原爆投下をどのような論理で正当化したか サンドラ・サッチャー教授に聞く(1)、ハーバードで白熱議論「長崎への原爆投下は必要だったのか」(2)、ハーバードの教授が日本に願う「世界の良心であり続けてほしい」(3)』(8/6・9・15ダイヤモンドオンライン 佐藤智恵)、『「原爆投下も本土上陸も必要なかった」ハーバード白熱授業の学生に聞く』(8/21ダイヤモンドオンライン 佐藤智恵)について
8/16JBプレス古森義久氏の記事<なぜか北朝鮮に核廃絶を呼びかけない日本の反核運動>
北朝鮮や中国を非難せず、矛先は日本政府に>に日本の反核平和運動の歪みが述べられています。それはそうでしょう、文句を言うべきは先ず、北朝鮮、中国でしょう。(ロシアも在日米軍があるため日本を標的にしていると思いますが、記事で読んだことはありません)
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/50806
そもそも原水禁(旧社会党系)と原水協(共産系)と分かれたのも「ソ連の核は綺麗な核」と共産が主張するので分裂しました。いずれにせよ左翼の党派性の強い運動体です。広島・長崎市長は今や革新系でないと当選しないでしょう。
佐藤氏の記事の中国系米国学生の発言は「南京事件」のことと思われますが、中共のプロパガンダと言うのを知らないのでしょう。キチンと日本政府が反論しないためです。「あなたは共産党がやって来た自国民の大虐殺を知っていますか?その政府が言うことを素直に信じられますか?国民党も平気で黄河決壊事件を起こしています、知っていますか?」と日本人だったら聞くべきです。
「戦争は人間的な営みである」から無くなることは無いでしょう。ですから、核の時代にどうやって人類の破滅を防ぐかと言うので、出された答えが「非戦闘員の保護」でしょう。終戦の詔書にもその一文が入っています。「加之、敵は新に残虐なる爆弾を使用して、頻りに無辜を殺傷し、惨害の及ぶ所、真に測るべからざるに至る」と。昭和天皇は、米国の非人道性を良く理解していました。元々、排日移民法等人種差別が起こした戦争だった部分もあり、原爆使用も躊躇わず出来たのでは思っています。トルーマンは日本人を人間と見ていたとサッチャー教授は言いますが俄かには信じがたいものがあります。また二発目を長崎に落としたのも、ウランと違ってプルトニウムでの結果も知りたかっただけと思われます。
サッチャー教授の言う「どのような難しい状況においても、アメリカの大統領はモラルリーダーとして、世界の人々の自由と平和を守る役割を果たすべきだと思います。」には大賛成です。過去にばかり目を向け、現在の人権弾圧をしている中国と北朝鮮を片づけないといけないでしょう。
北を攻撃するときでも、「非戦闘員の保護」は考えないとモラルリーダーにはなれません。地下深くに設置されている核兵器廠はB61-11で、板門店のロケット砲はマザーオブボームで無力化できるのでは。
8/21増田俊男氏の記事には、米中北がグルで日本に高い兵器を買わせるために、北のグアム攻撃発言があったとのこと。これは眉唾物と感じてしまいますが。
http://www.chokugen.com/opinion/backnumber/h29/jiji170821_1185.html
http://www.chokugen.com/opinion/backnumber/h29/jiji170821_1186.html
記事

ハーバードビジネススクールの看板授業の1つ、「モラル・リーダー」では、毎年、「トルーマンと原爆」について学ぶ回がある。そこでは、約60名の学生たちが「原爆投下を決断したトルーマン大統領は人道的なリーダーであったか」について議論を戦わせる。授業前半でサンドラ・サッチャー教授が教えているのは、正しい戦争にはルールがあるということ。トルーマンは本当に正しい戦争のルールに従って決断したのだろうか。どのような論理で原爆投下を正当化したのだろうか。正戦論をもとにサンドラ・サッチャー教授に解説していただいた内容を、全3回にわたってお送りする。(2017年4月21日、ハーバードビジネススクールにてインタビュー)
「トルーマンと原爆」の授業
佐藤 サッチャー教授は15年以上にもわたって「トルーマンと原爆」について教え続けてきました。なぜこのテーマをハーバードビジネススクールの学生に教えているのですか。
サッチャー ハリー・トルーマンが、歴史上、国のトップとして最も難しい決断を迫られた大統領だったからです。その決断は日本および日本国民に甚大な被害を与えただけではなく、その後の世界にも大きな影響を残しました。トルーマンの決断プロセスとその結果を検証することによって、学生たちにはリーダーとしての責務や人道的な決断の本質を学んでほしいと思います。
佐藤 この授業の主要な目的は何でしょうか。
サッチャー 2つあります。1つめは人道的な立場から戦争を考えてもらうこと。戦争がもたらす被害は想像もできないですが、確実に言えるのは、戦争は勝者、敗者の両方に甚大な損害をもたらす、ということです。学生たちには、戦争にはルールがあることを学んでほしいと思います。国が戦争を始めるか否かを決断する過程では、「道徳的に十分な根拠があるか」を必ず検討しなくてはなりません。敵を攻撃する際にはどのようなルールにのっとるべきか。人道的見地から禁止されている行為とは何か。正しい戦争には原則があるのです。
2つめは、国のリーダーは決断した内容だけではなく、決断に至るまでのプロセスにも責任を負っていることを認識してもらうこと。リーダーの決断を周りの人々が評価するプロセスを構築することは非常に大切です。自らの決断が間違っていないかどうか、決断する前に反対意見や代替案を検討することは不可欠なのです。

サンドラ・サッチャー(Sandra J. Sucher)教授
授業では、毎年、多くの学生が、「トルーマンは偏った助言しか得ていなかった」「日本の都市に原爆を投下する以外の戦争終結方法を検討しなかった」とトルーマンを厳しく批判しています。決断プロセスの大切さを学べば、学生たちは自国の大統領や首相を公正に評価することができますし、将来、自らがビジネスリーダーとして難しい問題に直面した際にも、正しい決断をすることができます。
正しい戦争と不正な戦争
佐藤 授業では、「正しい戦争と不正な戦争」(マイケル・ウォルツァー著)に書かれてある正戦論をベースに、トルーマンの決断が人道的に正しかったのかどうかを議論します。ウォルツァーは著書の中で戦闘行為を正当化するための原則をいくつか紹介していますが、その中のどの原則を根拠に、トルーマンは原爆投下を決断したのでしょうか。
サッチャー 3つあります。1つめが「功利主義」。トルーマン、トルーマンのアドバイザー、ウィンストン・チャーチルは皆、「本土上陸作戦よりも原爆投下のほうが戦争を早く終わらせることができるため、結果的に犠牲者が少ない」と主張していました。つまり、「戦争における最大の思いやりは、戦争を早く終わらせることができることなのだから、原爆投下は人道的に正しい決断だ」という考え方です。
2つめが「戦争は地獄」。これは南北戦争時の北軍の将軍の言葉に由来する原則ですが、「戦争の罪は、それを始めた人がすべて負うべきだ。敵対行為に抵抗する側は勝つために何をやろうが決して非難されない」(*1)という考え方です。戦争をしかけられ、正義の戦いを行うものは選択の余地なく地獄の戦場に赴くしかないから、というのがその理由です。
「戦争は地獄」に基づけば、「真珠湾攻撃によって、アメリカに対する戦争をはじめたのは日本だ。だから、日本人が始めた戦争を終結させるのに最も早い方法、つまり、原爆を使ったとしても、アメリカに罪はない」という結論になります。
3つめが「スライディング・スケール」。「正義の度合いが高いほうが、より正しい」という考え方です。この原則に基づけば、「正義の度合いが高ければ、戦い方も大きくしてよい」、つまり、「真珠湾攻撃の犠牲者であるアメリカ側の正義の度合いはかなり高いのだから、それに見合った攻撃をしてもよい」ということになります。この考え方もまた原爆投下を正当化するのに使われました。

佐藤智恵氏
佐藤 トルーマンは「功利主義」「戦争は地獄」「スライディング・スケール」という3つの原則によって原爆投下を正当化しましたが、「正しい戦争と不正な戦争」の著者、マイケル・ウォルツァーは、そのような原則で原爆投下を肯定するのはおかしい、と非難しています。この3つを非難する根拠となっている原則は何ですか。
サッチャー 戦争における最も重要なルールは「非戦闘員の保護」です。それはつまり「戦争は戦闘員同士の戦いでなければならず、非戦闘員である民間人を敵とみなして攻撃したり、巻き込んだりしてはいけない」という基本原則です。多くの民間人が犠牲になった原爆投下がこの原則に違反しているのは明らかです。
「ダブル・エフェクト」の原則にも反しています。「ダブル・エフェクト」とは、「意図的に非戦闘員を攻撃することは人道的に許されない」「戦闘員は非戦闘員の被害を最小限に食い止めるために最大限の努力をしなければならない」というルールです。連合国側は日本に対して、「破壊的な威力をもつ新兵器を使う用意がある」と警告はしましたが、その警告は軍部に向けられたものでした。つまり、民間人に被害が及ばないように事前に広島と長崎の市民に対して直接警告することはしませんでした。
「比例性のルール」にも反しています。これは過度の危害を禁じる原則であり、「実質的に勝利に向かわない危害、もしくは危害の大きさに比べて目的への貢献度がわずかな危害は許されない」というルールです。アメリカ政府は、原爆が人間に与える危害を理解することなく使用し、戦争を終結させました。危害の大きさも目的への貢献度も把握しないまま、原爆を投下したのは、比例性のルールに反しています。
佐藤 学生は、トルーマンの論理と、ウォルツァーの論理を比較しながら、「トルーマンの決断は人道的に正しかったのか」を議論していきますが、「戦争のルール」についての議論の中で特に印象に残った発言はありましたか。
サッチャー 軍隊出身の女子学生の発言がとても印象的でした。彼女は自らの経験から、現在、米軍ではどのような決断プロセスが採用されているかを話してくれました。それはトルーマンの決断プロセスとは全く違っているものでした。
現在、米軍では、どの組織であっても、トップは他の隊員からの意見を聞くことなく、最終決断を下してはならないそうです。たとえば、隊長が戦線を拡大したいと思ったとしましょう。その際には必ず「このように戦線を拡大したいと思うがどうだろうか」と部下に意見を求め、それに対して部下は自由に反論を述べたり、他の代替案を提案したりするそうです。少なくとも3つの代替案を検討した上で、最終決断を下すと聞きました。
もう1つ彼女の発言で印象的だったのは、弁護士がトップの決断プロセスに深く関わっていることです。陸軍・海軍・空軍・海兵隊には法務部門があり、軍事専門弁護士が参謀本部だけではなく戦地にも常駐して、戦時法規の観点から助言しているそうです。どのような戦闘行為を行うか、さらに戦線を拡大すべきかどうか、など、すべての決断に弁護士が関わっているとのことです。
この女子学生のコメントに他の学生たちは大変驚いていました。彼女の発言でトルーマンの決断プロセスがいかに未熟なものであったかが、浮き彫りになったと思います。
*1:Michael Walzer, Just and Unjust Wars, Third Edition, (Basic Books, 2000), p. 32.
「人道的リーダーシップ」とは何か
佐藤 「モラル・リーダー」の授業で、学生は「原爆投下を実行したトルーマンを支持するか、支持しないか」、どちらかに手を上げなくてはならないそうですが、「支持する」という学生はいましたか。
サッチャー それほど多くはありませんでしたが何人かいました。私の授業では毎回、同じ質問をしますが、今の学生は皆、原爆投下がもたらした被害を知っているため、多くが「反対」を表明します。しかし「賛成」を表明する学生は必ずいるので、授業では少数派の意見を聞くことから始めます。「なぜトルーマンが原爆投下を決断したのは正しかったと思うのですか」と。
佐藤 それに対してのコメントで印象深かった発言はありましたか。
サッチャー 中国人の学生のコメントが印象に残っています。彼は、中国人の視点から、この戦争がどんな戦争だったか、中国人が日本人の軍人からどのような扱いを受けたか、を語りました。私の授業には毎回、日本人学生や、広島を訪れたことのある学生がいて、興味深いコメントをしてくれるのですが、中国人の学生がこのような発言をしたのははじめてだったと思います。
佐藤 どのような発言だったのでしょうか。
サッチャー 彼はアメリカで育った中国人でしたが、「戦時中の日本軍の残虐行為について、アメリカの学校の教科書にはきちんと記述されていない」と指摘していました。おそらくアメリカ人学生はこの事実を知らないだろうと思って発言したのだと思いますが、彼の発言に他の学生たちは大変驚いていました。ハーバードの学生はナチスドイツ軍についてはよく知っていますが、日本軍についてはあまりよく知らないからです。彼が語った日本軍の行為は、ナチスドイツ軍の行為ととても似ていました。ただし彼は「自分は日本や日本の国民を非難するつもりはなく、日本の軍人が残虐行為を行った事実を伝えたいだけだ」と言っていました。
彼が原爆投下を支持したのは、どんな手段を使っても戦争を早く終結させるべきだと思ったからです。彼にとってトルーマンの決断は中国の国民を救う決断であり、原爆投下は正当化されるべき行為でした。
トルーマンにとっての「道徳」は何だったか
佐藤 授業では、「トルーマンの決断は人道的であったか」をテーマに、議論を深めていきます。サッチャー教授は、不正行為を重ねる人の「道徳離脱」についても研究されていますが、トルーマンが原爆投下を決断したとき、脳内で「道徳離脱」を起こしていなかったのでしょうか。
サッチャー 道徳離脱とは、「小さな不正行為からひどい残虐行為まで、無意識のうちに人間を悪い行動へと導く精神的なプロセス」(*1)のことです。道徳離脱を起こしている人は、自分が他人に害を与えているとか、悪いことをしているといった意識はありません。
戦時中に道徳離脱を起こす人は、敵をアウトグループ(外集団)とみなし、「彼らは自分たちと同じ人間ではないのだから人間として扱う価値はない」「人道的かどうかを検討する必要などない」と考える傾向にあります。つまり相手を自分と同じ人間として見ないのです。
私はトルーマンに関する記録を多数読みましたが、トルーマンは道徳離脱を起こしていなかったと思います。トルーマンは日本人を同じ人間として見ていました。
トルーマンは、「アメリカ国民を守り、アメリカに有利な条件で戦争を終結させることが自分の責任であり、そのために自分ができることは原爆投下を決断することだ」と認識していました。私が思うに、トルーマン自身は、「この状況下で最も人道的な決断を下した」と信じていたのではないでしょうか。
佐藤 トルーマンは、日本人を同じ人間として見ていた、とのことですが、彼は、日本人のことを「野獣」(Beast)と呼んでいました。本当に人間として見ていたのでしょうか。
サッチャー その事実を物語る記録があります。トルーマンは、広島への原爆投下後、ジョージア州の上院議員から、「日本にできるだけ多くの原子爆弾を落としてください。アメリカ国民は皆、日本人が完全に降伏するまで日本を攻撃するべきだと考えています」という電報を受け取っています。これに対してトルーマンは次のように返信しています。
「我々の交戦相手である日本はひどく残虐で野蛮な国だが、日本人は野獣なのだから、同じように我々も野獣のようにふるまうべきだ、という考えには同意できない。日本の一部のリーダーが『頑固に』降伏しないがゆえに、日本の全国民を殲滅しなければならないことを残念に思う。念のために言っておくが、絶対的に必要であるという状況でない限り、私はこれ以上の原爆投下を許可しない。ソ連が参戦すれば、日本は早晩、降伏するだろう。私の目的はできるだけ多くのアメリカ人の命を救うことだ。しかしながら私は日本の女性、子どもに対しても人間的な感情を抱いている。」(*2)
佐藤 ということは、トルーマンの良心は麻痺していなかったということですか。
サッチャー そうです。少なくともルールを守ろうとしていたことは確かです。トルーマンの自伝には次のようにも書かれています。
「原爆投下を決断する前に、私は原爆が戦時国際法に定められているルールにのっとって使用されるのかどうかを確認したかった。つまり私は、原爆を軍事施設のみに投下することを望んでいた。そこで私はスティムソン(陸軍長官)に、『原爆投下のターゲットは、日本軍にとって最も重要な軍需生産拠点に限定すべきである』と念を押した」(*3)
広島と長崎は候補としていくつか上がっていたターゲットのうちの2つでした。京都も候補にあがっていましたが、スティムソンが「京都は日本の文化的、宗教的な中心地だ」(*4)と主張し、候補からはずされました。
広島と長崎の市民に事前に警告しなかったことは、非道徳的行為だと思います。しかし、トルーマンと周りの助言者は、自分たちなりの論理で原爆投下を正当化し、「原爆投下をすれば早く戦争を終結できるのだから、これは人道的な行為だ」と本気で思っていたのです。またトルーマンは、原爆の威力についてはほとんど何も知らなかったというのが実情で、「これまでの爆弾よりもかなり破壊的な威力があるらしい」ぐらいの知識しかありませんでした。
佐藤 これは授業でも議論されている質問ですが、長崎にも原爆を投下する必要性はあったのでしょうか。
サッチャー 2つめの長崎への原爆投下は、日本に心理的なダメージを与えるためでした。トルーマンは、「戦争を終わらせるためには、アメリカが無数の原子爆弾を持っていることを日本人に知らしめる必要がある」と考えました。それには、日本が降伏するまで落とし続けるしかない、だから、広島のあとにももう1つ落としておこうという発想です。
トルーマン自身は「日本政府に終戦の決断を促すためだった」と説明していますが、私が問題だと思っているのは、広島への原爆投下後、2日しか猶予を与えずに、長崎へ原爆を投下したことです。なぜ2日ではなく、1週間ぐらい待つことができなかったのでしょうか。これは人道的な見地からみても説明がつかないと思います。
佐藤 日本の大学生や大学院生に「トルーマンと原爆」をテーマに授業をするとしたら、どのような授業にしたいですか。
サッチャー ハーバードの授業とは少し変えて、2回にわけて教えたいですね。最初のセッションは、日本人の学生がおそらく知らないであろうと思われる内容を含めた第二次世界大戦についての授業。日本の小・中学校では「日本は戦争の犠牲者である」ことは教えているけれども、「日本が加害者であった」ことはそれほど詳しく教えていないと聞いています。この認識だと、「私たち日本人は戦争の犠牲者です。原爆を投下するなんて間違っている」という議論で終わってしまいますから、まずは日本の学生に世界的な視野から戦争を見つめ直してもらいたいと思います。
2回目のセッションでは、ハーバードと同じ形式で進行していきたいです。学生同士で「トルーマンの決断は是か非か」「昭和天皇はどのような役割を果たしたか」などについて、ハーバードの学生に負けないぐらい活発に議論してほしいですね。
アメリカ大統領のモラルリーダーシップ
佐藤 日米関係の発展のためにモラルリーダーシップ(人道的なリーダーシップ)を発揮したアメリカ大統領といえば、ジョージ・H・W・ブッシュ元大統領が真っ先に思い浮かびます。1991年12月、ジョージ・H・W・ブッシュ大統領(当時)が真珠湾攻撃50周年式典で行った演説は、「融和演説」とも言われ、戦後の日米関係史の分水嶺になったと高く評価されています。特にこの部分が有名です。
「私はドイツに対しても日本に対しても何の恨みも持っていません。憎悪の気持ちなど全くありません。真珠湾攻撃により多くの人々が犠牲になりましたが、このようなことが二度とおこらないことを心から願っています。報復を考えるのはもうやめにしましょう。第二次世界大戦は終わったのです。戦争は過去のことなのです」(*1)
第二次世界大戦中、日本軍に自らが搭乗する飛行機を撃墜された経験を持つブッシュ大統領の言葉はとても重いと感じています。サッチャー教授はこの演説をどのように評価しますか。
サッチャー これはまさにモラルリーダーシップの模範例です。ジョージ・H・W・ブッシュ大統領は、ドイツと日本に対して何の恨みも持っていません、とはっきりと伝えています。もうお互いを非難しあう時代ではないと。ブッシュ大統領は、アメリカと同じようにドイツと日本もまた戦争の被害を被った犠牲者である、と認めています。そして「戦地で戦った私がこのつらさを乗り越えられたのだから皆さんもできるはず。だから、私に続いてください」と呼びかけたのです。
佐藤 昨年(2016年)のオバマ前大統領の広島訪問もまたモラルリーダーシップを示した事例でしょうか。
サッチャー そうです。オバマ大統領(当時)は、アメリカの大統領として初めて広島を公式訪問し、アメリカが広島の人々に被害をもたらした事実を認め、原爆投下の犠牲者となった方々を追悼しました。オバマ大統領が被爆者の方の手を握り、抱き寄せた場面は大変感動的でした。それは彼が大統領としてだけではなく、一人の夫として、一人の父親として、一人の人間として、敬意を払っていることを象徴するシーンでした。
オバマ大統領は、また次のように世界に呼びかけました。
「私たちは過去の過ちを繰り返す遺伝子によって縛られているわけではありません。私たちは学ぶことができます。選択することができます。子どもたちに新しい物語を言い伝えることができます。それは、私たちには共通の人間性があることを伝えるストーリーであり、今よりも戦争の数が減って、残虐な行為が簡単に許されなくなるような世界を実現することが可能であることを示すストーリーです」(*2)
世界には戦争の犠牲となった多くの「被害者」がいます。被害者側は、加害者側に自分たちの痛みをわかってほしい、と願っているものです。オバマ大統領の人道的な行動は、こうした世界の人々の願いに応えるものだったと思います。
佐藤 世界の超大国アメリカの大統領はどのようなモラルリーダーシップを示すべきだと思いますか。
サッチャー アメリカ国民だけではなく、世界中の人々が、アメリカの大統領には発言や行動を通じてモラルリーダーシップを発揮してほしいと願っています。
アメリカには、自由を尊重し、人権を守ってきた歴史があります。そのことをアメリカ人は誇りに思っています。そんな私たちにとって最も恥ずべきなのは、奴隷制を長く続けてきた歴史です。その負の遺産が今も人種間に対立をもたらしています。アメリカは「人種のるつぼ」として移民を歓迎しなければなりません。どんな時代であっても彼らの人間性や社会的な貢献力を尊重しなくてはならないのです。アメリカの大統領が移民に対して人道的な視点をないがしろにした政策を実施することを歓迎する人は、世界のどこにもいないと思います。
日本、中国、ヨーロッパ諸国のリーダーに対しても、同じようにモラルリーダーシップが期待されています。それぞれ歴史も違いますし、抱えている課題も違いますが、求めるリーダー像は同じです。市民が必要としているのは、より平和で、安全で、繁栄した世界、誰もが活躍できる自由世界へと私たち市民を導いてくれるようなリーダーであり、口先で約束するだけではなく、自ら行動し、実現してくれるリーダーです。
佐藤 世界最大の軍事大国、アメリカの大統領には、特別な役割があると思いますか。
サッチャー 国を率いるリーダーとして責任がある、という点では他の国のリーダーと同じです。平和で繁栄した国をつくる、国民が政治に参加できる民主的な国家をつくる、という役目に変わりはないでしょう。しかし、軍事大国としての歴史を持ち、自国だけではなく他国を軍事的に支援してきた歴史を持つアメリカには、特別な責任があると思います。
アメリカ国外で起こった紛争に対して、アメリカが介入すべきなのか否か、を決めるための明確なルールはありません。なぜアメリカはイラク、アフガニスタン、シリアの紛争に軍事介入したのでしょうか。本当にアメリカの国益が損じられたから軍事介入したのでしょうか。その理由を探ってみても、背景が複雑すぎて、私たち国民にもよくわからない、というのが現状なのです。
こうした中、世界の国々の自由と平和を守ることが、果たしてアメリカの国益につながるのか、という議論も出てきていますが、私自身はその役目を果たせる国はアメリカしかないと考えています。なぜならアメリカを超えるような大国が他にないからです。どのような難しい状況においても、アメリカの大統領はモラルリーダーとして、世界の人々の自由と平和を守る役割を果たすべきだと思います。
佐藤 日本の政治的リーダーは軍事・外交面でどのような役割を担っていると思いますか。
サッチャー 日本のリーダーは、外交パワーを活用して、世界の国々を助ける役割を果たすべきだと思います。日本の軍事パワーは防衛に限られているとはいっても、日本には外交パワーがあります。軍事パワーよりも、他のソフトパワーのほうが他国と相互依存関係を築いていくのにずっと有益なのです。
日本、中国、ヨーロッパ諸国のリーダーに対しても、同じようにモラルリーダーシップが期待されています。それぞれ歴史も違いますし、抱えている課題も違いますが、求めるリーダー像は同じです。市民が必要としているのは、より平和で、安全で、繁栄した世界、誰もが活躍できる自由世界へと私たち市民を導いてくれるようなリーダーであり、口先で約束するだけではなく、自ら行動し、実現してくれるリーダーです。
佐藤 世界最大の軍事大国、アメリカの大統領には、特別な役割があると思いますか。
サッチャー 国を率いるリーダーとして責任がある、という点では他の国のリーダーと同じです。平和で繁栄した国をつくる、国民が政治に参加できる民主的な国家をつくる、という役目に変わりはないでしょう。しかし、軍事大国としての歴史を持ち、自国だけではなく他国を軍事的に支援してきた歴史を持つアメリカには、特別な責任があると思います。
アメリカ国外で起こった紛争に対して、アメリカが介入すべきなのか否か、を決めるための明確なルールはありません。なぜアメリカはイラク、アフガニスタン、シリアの紛争に軍事介入したのでしょうか。本当にアメリカの国益が損じられたから軍事介入したのでしょうか。その理由を探ってみても、背景が複雑すぎて、私たち国民にもよくわからない、というのが現状なのです。
こうした中、世界の国々の自由と平和を守ることが、果たしてアメリカの国益につながるのか、という議論も出てきていますが、私自身はその役目を果たせる国はアメリカしかないと考えています。なぜならアメリカを超えるような大国が他にないからです。どのような難しい状況においても、アメリカの大統領はモラルリーダーとして、世界の人々の自由と平和を守る役割を果たすべきだと思います。
佐藤 日本の政治的リーダーは軍事・外交面でどのような役割を担っていると思いますか。
サッチャー 日本のリーダーは、外交パワーを活用して、世界の国々を助ける役割を果たすべきだと思います。日本の軍事パワーは防衛に限られているとはいっても、日本には外交パワーがあります。軍事パワーよりも、他のソフトパワーのほうが他国と相互依存関係を築いていくのにずっと有益なのです。
サンドラ・サッチャー(Sandra J. Sucher) ハーバードビジネススクール教授。専門はジェネラル・マネジメント。MBAプログラムにて必修科目「リーダーシップと企業倫理」、選択科目「モラル・リーダー」を教える。現在の研究分野は、世界経済における企業の信用の構築。大手デパート、フィデリティ・インベストメンツ社などで25年間に渡って要職を務めた後、現職。リーダーシップや倫理的ジレンマを主題とした教材を多数執筆。著書に“Teaching The Moral Leader A Literature-based Leadership Course: A Guide for Instructors” (Routledge 2007), “The Moral Leader: Challenges, Tools, and Insights” (Routledge 2008). 現在、「企業と信用」をテーマに著書を執筆中。 佐藤智恵(さとう・ちえ) 1970年兵庫県生まれ。1992年東京大学教養学部卒業後、NHK入局。報道番組や音楽番組のディレクターとして7年間勤務した後、2000年退局。 2001年米コロンビア大学経営大学院修了(MBA)。ボストンコンサルティンググループ、外資系テレビ局などを経て、2012年、作家/コンサルタントとして独立。コロンビア大学経営大学院入学面接官、TBSテレビ番組審議会委員、日本ユニシス株式会社社外取締役。主な著者に『世界のエリートの「失敗力」』(PHPビジネス新書)、『ハーバードでいちばん人気の国・日本』(PHP新書)、「スタンフォードでいちばん人気の授業」(幻冬舎)。佐藤智恵オフィシャルサイトはこちら

レック・デュークセン Alek Duerksen/1987年アイオワ州生まれ。2015年ハーバードビジネススクール入学。2017年MBA取得
2017年4月、ハーバードビジネススクールで「トルーマンと原爆」をテーマとした授業が行われた。この授業では、毎年60名の学生が80分間、「トルーマンの原爆投下はリーダーとして正しい決断だったか否か」について白熱した議論を戦わせる。授業に参加した学生は何を学んだのか。アメリカ人学生のアレック・デュークセンさんに聞いた。
佐藤 今日の授業では「原爆投下を決断したトルーマンは人道的に正しかったか」について議論したと聞いています。授業を受けてトルーマンの決断に対する見方は変わりましたか。
デュークセン アメリカの高校の世界史の授業では「原爆を投下しなかったら日本は降伏せずに戦争を継続し、さらに多くの犠牲者が出ただろう」と教えられていて、それを当たり前のように信じていました。戦争に勝ったのはアメリカなのだから、原爆投下が正当化されるのは当然だろうとも思っていました。
ところが、今日の授業でその考え方が変わりました。なぜなら、「原爆を使用しなくとも日本は早晩、降伏することが予想されていた」という事実を初めて知ったからです。
授業では、正しい戦争にはルールがあることを学びましたが、唯一、ルールに従わなくてもよいとされているのが、「最高度緊急事態」です。私は日本への原爆投下は「最高度緊急事態」だったから実行された、と考えていました。しかしながら、この授業のために多くの資料を読んだり、クラスメートと議論したりする中で、本当にそうだったのか、と疑問に思うようになったのです。
佐藤 「正しい戦争と不正な戦争」の著者、マイケル・ウォルツァー氏は、第二次世界大戦におけるナチスドイツの台頭を「最高度緊急事態」と説明しています。つまり、米英によるドイツ本土への無差別爆撃は「最高度緊急事態」だったから正当化された、という考え方です。1945年の日本をめぐる状況は「最高度緊急事態」ではなかった、とデュークセンさんが考えた根拠は何ですか。
デュークセン 1945年8月の段階で、日本軍はすでに弱体化しており、アメリカ本土まで攻め入ってくる可能性はほぼありませんでした。そこがドイツの状況とは根本的に異なっていたと思います。
たとえば、米軍が本土上陸作戦を実行せず、原爆も投下しなかったとしましょう。ただ日本の周りを封鎖するという作戦をとったとします。その状況で日本軍はどれほどアメリカの市民に直接的な危害を与えることができたでしょうか。あるいは、アメリカの自由、正義、文明を脅かすことができたでしょうか。「その可能性はほぼなかった」というのが私の見方です。
佐藤 サッチャー教授は、授業中「原爆投下をするという決断に賛成の人はいますか」と聞いたそうですが、どちらの立場をとりましたか。
デュークセン 反対の立場です。繰り返しになりますが、アメリカの自由、正義、文明に直接危害を与えるほどの緊急事態ではなかった、だから原爆投下も本土上陸も必要なかった、というのが私の結論です。
しかし、学生の中には、賛成した人も何人かいました。全員欧米人だったと記憶しています。特にアメリカ人にとって、自国が非道徳的なことを行った過去があることを認めるのは難しかったのではないでしょうか。日本の立場を代弁する日本人学生がその場にいなかったことも、彼らが賛成した要因の1つだと思います。
多くの学生は、「原爆投下は正当化される。なぜなら日本軍は残虐行為をしていたから」と発言していました。しかし、議論が深まっていく中で、「その論理は間違っている」と考える反対派に押されていたように感じました。
佐藤 デュークセンさんが、もしトルーマンだったら、どのように決断しますか。
デュークセン 私だったら、反対意見も聞きますし、代替案も検討します。「本当に原爆投下しか戦争を終結させる方法はないのだろうか」「日本を無条件降伏させることを絶対条件にすべきだろうか」「対話による和平交渉はできないのか」といったことも考慮するでしょう。仮に原爆の威力を試す必要があると考えた場合でも、威嚇のために無人島に落とす、といった方法を検討したと思います。
佐藤 威嚇や警告によって、日本に降伏する機会を与える、ということですね。
デュークセン はい。そうすることが適切だと思います。1945年7月にアメリカ、イギリス、中国は共同でポツダム宣言を出しましたが、その際「これを受諾しなかったら原爆を落とす」とは警告していませんでした。少なくとも日本国民に警告して、日本に降伏の機会を与えるべきだった、と思います。それから、授業で、2つめの長崎への原爆は必要だったかどうかも議論しましたが、私は必要なかったと思います。
佐藤 トルーマンはなぜ原爆を投下するという非人道的な決断をしたと思いますか。
デュークセン その問題については、自分がスポーツをしていたときの経験を交えて、授業で発言しました。「段階的な決断プロセス」よりも、「人間がもともと持っている性質」という視点から、トルーマンの決断を合理的に説明したいと思ったからです。
人間なら誰でも、『あんなことを言わなければよかった』と後悔するようなことを言ってしまった経験はあるでしょう。あまりにも目の前のことに集中しすぎて、周りが見えなくなってしまい、ついつい、感情的なことを言ってしまう……。スポーツの試合をしている最中などに私はよくそういう経験をしました。
トルーマンも同じような状況だったのでは、と推察します。アメリカに戦争を仕掛けてきた相手と4年近くも戦い続ければ、勝ちたい、仇討ちしたい、と思うのもわかります。そうなれば、大義よりも、「これを実行すれば相手を打ち負かすことができるか」を重視して決断することになります。
大統領といえども、人間なのですから、その決定プロセスには、人間の性質や意志といった人間的な要素が多分に関わってきます。特に、周りの人たちが皆、賛成している中で冷静に、合理的に決断するというのはとても難しかったのではないかと思います。
佐藤 サッチャー教授は授業の最後に、昭和天皇の「終戦の詔書」を読んだそうですが、それを聞いてどう思いましたか。
デュークセン 昭和天皇は、非常に率直にご自身のお気持ちを述べられているなと感じました。国の名誉のためとはいえ、これ以上戦争を継続すれば、多くの国民が犠牲になる、と判断し、ポツダム宣言の受諾を決断されました。これはとても人道的な決断だったと思います。ただ、私自身は、サッチャー教授が読むのを聞いていて、何だか悲しい気持ちになりました。
佐藤 それはなぜでしょうか。
デュークセン 私自身がスポーツに親しんできたことが大きいと思います。私は子どものころからずっとラグビーの選手だったので、「スポーツマンシップにのっとり、スポーツマンとしての名誉を守り、最後まで戦い抜く精神こそが大切だ」と教えられてきました。
戦争に勝つために全国力を注ぎ、多くの国民を犠牲にして戦い続けたのちに、「途中で勝利を諦めます」と決断しなければならないなんて……。自分が同じような決断を迫られたら、と考えたら、とても悲しい気持ちになったのです。また自分が国民だったら、リーダーには「もうダメだ。あきらめよう」などとは絶対に言ってほしくない、とも思いました。
佐藤 デュークセンさんはMBA取得後、世界有数のメーカーに就職されるそうですが、この授業から得た学びをどのように生かしたいですか。
デュークセン 私はビジネスの場であっても、ついつい「勝ちたい」と思ってしまいますが、こうした人間の感情が正しい判断を曇らせることを今回の授業から学びました。自分が勝つことだけを目的に決断し、その決断を後から正当化する、というのは人道的リーダーとしてふさわしい行動ではありません。この授業から得た教訓を忘れずに、いかなるときも代替案を検討し、反対意見を考慮し、感情的にならず、冷静に判断できるリーダーをめざしたいですね。
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『九寨溝大地震、「寄付金77%不明」は防げるか 四川大地震の失態…世界自然遺産への善意は大丈夫?』(8/19日経ビジネスオンライン 北村豊)について『九寨溝大地震、「寄付金77%不明」は防げるか 四川大地震の失態…世界自然遺産への善意は大丈夫?』(8/19日経ビジネスオンライン 北村豊)について
中国関係の直近のニュースを上げて見ます。
8/18「希望の声」TV局記事から<“元老”是失勢還是潛伏?今年這裡據說真的沒有“會”=長老たちは勢いを失ったのか潜伏しているのか?今年は以下の情報のように本当に(北戴河で)会議は行われなかった>北戴河に来た長老は、純粋にリゾートとして楽しんだだけで、人事等の会議は行われなかったとのこと。“有人已經掌握全局,老人政治業已消散,今年海邊沒有開會。=習が既に全権力を握り、長老たちは政治に関与できなくなり、今年は北戴河で会議は行われなかった”と。7/26・27北京で政治局員の候補者の投票が既に行われたとも。別な報道では王岐山、栗戰書、王滬寧、丁薛祥等習派の大勝とのこと。この記事が本当であれば、習が独裁権力を一手に持ち、戦争できる体制となります。バノンの言ったことは正しい。「アメリカは中国と経済戦争の最中で、北朝鮮問題は余興にすぎない。アメリカは中国と経済戦争の最中だ。このままでは25年から30年後に中国が覇権を握るだろう」と。
8/19アポロネット記事<廣東逾百村民遊行抗議低價強征土地=広東省で100人を超える村人が安く土地を強制収用されようとしているため抗議デモ>中国には結社の自由はありませんから、デモは共産党が認めたデモ以外は当然違法となります。土地収用の件は共産党がやっているので認める訳がありません。潮州市の村ですから広東料理の一番おいしい地域です。既に収用は始まり、村全体でデモは数カ月に及んでいるとのこと。その内流血の惨事になるでしょう。共産党や地方政府が土地活用で賄賂を取ることを狙っていますので、必然です。
8/19Facebook記事から(実名記載ですが、名は伏せます)<バヌアツに運び込まれるはずだった、有害物質を含んだ砂利は、アフリカに行く事に。。
アフリカはそれでいいのだろうか?
こんな事、政府の役人が数十万、数百万円掴まされれば問題なく通る話だ。
今回バヌアツ政府が禁止したこと自体がニュースであると思う。
この記事で映画「トランスポーター3」を思い出しました。ある国の環境大臣に汚染物質を運んだ船を受け入れさせようと、その娘を誘拐して脅すと言うものです。映画以上にひどいことが行われようとしています。アフリカは中国の鉱物資源掘削で環境汚染されていると言うのに。
http://news.livedoor.com/article/detail/11028823/
8/20日経電子版<中国「1兆円支援」でブータン接近 インドと国境対峙
【ニューデリー=黒沼勇史】ヒマラヤ山脈でインド軍と2カ月対峙する中国が、第三の当事国ブータンを自陣営に引き込もうと外交攻勢をかけている。中国は100億ドル(約1兆900億円)に上る経済支援をブータンに提示したとみられ、インドと共闘してきたブータンの対中姿勢は軟化する。中印は相手軍の越境を非難し合うが、ブータンを取り込めば国際社会に正当性を訴えやすくなるだけに綱引きが激しさを増している。
「インド軍の侵入場所はブータン領ではないと、ブータンが明確に伝えてきた」。中国の外交官は今月上旬、インド人記者団にこう主張した。“侵入場所”とは、ブータンと中国が領有権を争うドクラム地方ドラム高原で、インド陸軍と中国人民解放軍が6月から対峙する。この外交官発言が事実なら、ブータンとインドの対中共闘関係のほころびを意味する。
ブータン政府関係者はインドメディアに即座に否定したが、インド側は疑心暗鬼に陥る。インド政府筋は今月上旬、日本経済新聞の取材に「100億ドルの投融資を中国が提案し、ブータンが中国になびき始めたとの情報を入手した」と明らかにした。100億ドルは低利融資、無償援助、直接投資のパッケージという。インド側も巻き返しに動く。スワラジ印外相は11日、地域経済連携の会合で訪れたネパールでブータンのドルジ外相と会談。中国に「だまされないように」とクギを刺し関係維持を迫った。
だがドルジ氏は会談後「ドクラム情勢の平和的、友好的な解決を望む」と述べ、中国を刺激する発言は控えた。ブータン外務省は6月、中国軍の「ブータン領内での道路建設は(現状維持を決めた中国とブータンの)合意に反する」と中国を非難していたがトーンダウン。中国共産党系の環球時報は社説でドルジ発言に触れ「ブータンが中立を保ちたいのは明らか」とインドをけん制した。
中国がブータンに接近するのは、自国の正当性を確保するためだ。インドは長年防衛協力するブータンによる「自国領内で道路建設された」という主張を根拠に、自軍をドラムに動かした。ブータンがドラムにおける領有権の主張を撤回すれば、インド軍は進軍の正当性を失い、中国領に侵犯した結果だけが残る。インド政府関係者によると、中印は7月、「両軍は同時・段階的に兵力を減らし、降雪期の9~10月か年末までに完全撤収する」と非公式に合意した。
2期目入りをめざす中国の習近平国家主席も、モディ印首相も、自国民からの弱腰批判は避けたく「自軍が先に引いたと見なされない合意」(関係者)を交わした。
だがカシミール地方で中印両軍が投石し合うなどいまだ緊張は解けていない。
インド政府筋によると、ドクラム地方で直接対峙するインド軍は約320人、中国軍は500人弱と当初より減ったが、ブータンとの国境にはインドが1万2千人、中国が1万6千人集結する。戦闘になれば小競り合いでは済まないとの見方が強まっている。
▼中印両軍の対峙 中国とブータンが領有権を争うドクラム地方ドラム高原で中国人民解放軍が道路建設しているのを6月16日、ブータンが確認し、隣接するインド北東部シッキム州からインド軍も制止に乗り出し中印対峙が始まった。
中国はインド軍の越境を非難し、インドは3カ国の国境が接する同地方での中国による現状変更を批判する。
インド北部カシミール州や同北東部アルナチャルプラデシュ州に人民解放軍が越境し両軍が短期間にらみ合うことはあったが、対峙が長期に及ぶのは珍しい。>(以上)
中国は世界規模で侵略を実行しているというのに国際社会は何もしません。日本人の好きな国連組織が如何に無能で無力か現実を見れば分かるでしょう。特に米国はロシアを制裁するなら、中国も制裁しないと。中国は金と軍事力を使い、領土を拡張しようとしています。米軍が北朝鮮を攻撃すれば、国際社会の目がそちらに行くため、尖閣で日本と戦争を起こし、またインドとも戦争するかも知れないとも言われています。中国人の発想としては、人民解放軍は人が多いので、合理化できず、戦争を起こして、人減らしすると考えるのでは。クシュナーがトランプの11月APECに合わせて年内訪中するため、その露払いで9月に訪中とのことですが、金に転ばないことを祈ります。
8/20NHKニュース4:11<台湾でユニバーシアード開会式 抗議デモで選手入場できず
台湾で19日夜、学生のオリンピックと言われるユニバーシアードの開会式が行われましたが、会場の近くで年金改革に抗議するデモ隊と警察がもみ合いになり、日本を含む大半の選手団が一時、入場できない騒ぎとなりました。
ユニバーシアードの夏の大会の開会式は、19日夜、台北のアリーナで行われ、蔡英文総統も出席しました。しかし、選手団が利用する入り口付近で、蔡英文政権が進める年金改革に抗議するデモ隊と警察がもみ合うなどしたため、安全が確保できないとして、日本を含む大半の選手団を一時、会場に入れない措置が取られました。 この影響で、開会式の冒頭に行われた140を超える国と地域の選手団の入場行進は、途中から旗だけが入場する異様な光景が続きました。その後、抗議活動はおさまったため、日本など選手団などが一斉に入場すると、観客が総立ちになって大きな歓声で選手団を迎えていました。 蔡総統が公約に掲げる年金改革をめぐっては頻繁に抗議デモが行われていて、開会式には警察官延べ6000人が動員されるなど警備が強化されていましたが、今回の騒ぎを防ぐことができなかったことを受け、態勢の見直しを迫られそうです。>(以上)
これは民進党・蔡英文総統に対する国民党・中国人の嫌がらせでしょう。恥を書かせるつもりで邪魔したのだと思われます。年金と言っても、軍や公務員、教師等=国民党・中国人の利権の一つです。8/18には<台湾の総統府に暴漢 旧日本軍の軍刀で切りつける>という事件も起こりました。蒋介石が台湾に連れて来た中国人の末裔でしょう。やはり、中国人と言うのは朝鮮半島人同様、どこにいても精神異常者としか思えません。
http://hakkou-ichiu.com/post-8561/
九寨溝には飛行場が建設されてから行きました。2004年だったと思います。その前年、車を雇い、九寨溝に向かいましたが、衝突事故で断念しました。九寨溝は、綺麗は綺麗です。元々チベットの土地ですから。漢民族が侵略して、自分のものとしたため、自然そのものの美しさと言うより、観光客を誘致するため、人工的に手を大分加えているという印象でした。
中国人の寄付金なんて「盗んでくれ」と言って渡しているようなものでしょう。普通の経済活動でも、横領・賄賂が当り前の国ですから。中国に進出している企業は寄付を社会的に強制されます。寄付すればTVや新聞で報道されますので、寄付を煽る訳です。少なければバッシングです。中国で利益を上げているのだから還元しろという事でしょう。でも中国人が海外に出て地元に還元している話は聞かず、悪評だけです。如何に自己中かという事です。トランプ並びに欧州は中国を経済的に封じ込めしてほしい。勿論、日本もですが。
記事

九寨溝を襲った大地震で道路も崩壊、世界自然遺産の美しさは取り戻せるか(写真:AP/アフロ)
“美不勝収(美しい物が多すぎて見切れない), 人間仙境(この世の別天地), 世外桃源(俗世を離れたユートピア)”、春は“山花爛漫(山の花爛漫と咲き乱れ)”、夏は“蒼碧欲滴(深緑滴らんと欲し)”、秋は“五彩斑斕(五彩綾なして美しく)”、冬は“詩情画意(詩歌や絵画の境地)”
観光客500万人超、観光収入8.05億元
これはユネスコの世界自然遺産に登録されている九寨溝を中国の成語で形容したものであり、言葉に尽くせぬほど美しい九寨溝の風景を物語っている。九寨溝の名は“溝(川筋)”に9か所のチベット族の“寨(村)”があったことに由来するという。九寨溝は何分にも辺境の地にあり、清の“康熙帝(在位:1661~1722年)”時代にようやく清の管轄下に組み入れられたが、清の兵士が立ち入ることもなく放置され、人々に知られることはなかった。
中華人民共和国が成立した1949年以降も九寨溝は外界と隔絶されたまま時を刻んだが、1960年代に中央政府管轄の“旅游区(観光区)”となり、1980年代になってようやく観光地として一般へ開放されたのである。世界自然遺産に登録された1992年以降は中国国民の富裕化と相まって九寨溝を訪れる観光客は年々増大し続けて今日に至っている。2016年に九寨溝を訪れた中国内外の観光客は500万人を突破し、観光収入は8.05億元(約129億円)に達した。
九寨溝へ観光客を引き寄せるのはこの世の物とは思えないほど美しい景色である。九寨溝は多数の湖と滝で構成されているが、そこを流れる水は石灰分(炭酸カルシウム)を含み、種々の条件により九寨溝特有の“翠緑色(エメラルドグリーン)”を呈し、人々をえも言われぬ陶酔の世界へと誘い込む。それは桃源郷であり、ユートピアであり、世俗の塵埃を逃れた境地に浸ることができる別世界である。九寨溝は“日則溝”、“樹正溝”、“則査洼溝”と呼ばれる3つの川筋に分かれており、各川筋に合計6つの景勝地区が点在する。九寨溝はどこを見ても美しいが、人気が高い“珍珠灘瀑布”、“諾日朗瀑布”、“火花海”、“五彩池”、“鏡池”、“長池”、“五花梅”などの景色は人々を魅了して止まない。
“九寨溝(きゅうさいこう)”は、四川省北部の“阿壩藏族羌族自治州(アバ・チベット族チャン族自治州)”に属する“九寨溝県”の“漳扎鎮(しょうさつちん)”にある。漳扎鎮は九寨溝県の“県城(県庁所在地)”から西へ46kmの距離にある。海抜は県城が1400mなのに対して漳扎鎮は2089mであり、九寨溝は2000m以上の高地にある。
四川省の省都“成都市”から九寨溝までの距離は約410km、自動車で行けば約6~7時間を要する。2003年9月に隣接する“松潘県”に「九寨黄龍空港」が開港したことにより九寨溝への所要時間は大幅に短縮されたが、同空港からから九寨溝までは88kmあり、バスで1.5時間の道程である。また、九寨溝はその面積が広いことから、車道と遊歩道が整備されている。外部車両の乗り入れは禁止されており、観光客は天然ガスを燃料とする“緑色環保観光車(グリーン環境保護観光バス)”での移動が必要となる。
さて、2017年8月8日21時19分、九寨溝が所在する九寨溝県漳扎鎮を震源地とする大地震が発生した。同地震の規模は“中国地震局”の発表ではマグニチュード(M)7.0、震源の深さは20kmであり、米国地質調査所(USGS)の発表ではマグニチュード6.5、震源の深さは36kmであった。本震後の余震は9分後の21時28分から始まり、8月10日10時までに1741回に及んだ。震源地が九寨溝の所在地であることから、同地震は“2017年九寨溝地震”と命名された。
死亡25人、負傷者493人、行方不明者5人
8月13日までに判明した九寨溝地震による死傷者数は、死亡25人、重傷者45人を含む負傷者493人、行方不明者5人であった。なお、死者の内訳は、旅行客12人、地元民12人、身元不明1人。行方不明者の内訳は、地元民4人、旅行客1人。また、8月11日までに6万1500人の旅行客(含外国人126人)と出稼ぎ労働者が九寨溝から退去し、2万3477人が一時避難を完了した。
8日の地震発生時、九寨溝に滞在していた観光客は約3万8000人であった。彼らは九寨溝周辺のホテルに分散して宿泊していたが、そのホテルの中で被害が甚大だったのは“九寨天堂洲際大飯店(InterContinental Resort Jiuzhai Paradise)”(以下「天堂ホテル」)だった。天堂ホテルは九寨溝の入り口から20kmの場所にある4つ星ホテルで、地震発生時には宿泊客および従業員を合わせて2000人以上がホテル内にいた。天堂ホテルはモダンな総ガラス張りの巨大ドーム2つと小型の丸型ドーム1つを持つことで知られていたが、地震によってホテルのロビーとして使われていた巨大ドームのガラスが完全に破壊された。このため、天井や壁面から崩落するガラスの破片によって死者3人(宿泊客1人とホテル従業員2人)、負傷者18人を出した。
地震発生が21時19分であったため、宿泊客がホテル内にいたことで人的被害は少なくて済んだが、これがもし昼間だったら、九寨溝を散策する観光客に多くの死傷者を出したことは間違いなく、不幸中の幸いであった。しかし、地震は九寨溝の名勝に多大な被害をもたらした。各所で湖の決壊が起こり、水が流出した湖は無残な惨状を呈したし、山崩れによって水の通路を塞がれた滝は干上がった。また、山崩れによって土砂や樹木が湖に流れ込んだことにより、湖水は白く濁り、従前のエメラルドグリーンを想像することすら出来ない状態になった。人気の高い火花海は堤防が決壊して干上がり、石灰石を堆積した白い湖底を露呈した。諾日朗瀑布は水流が途絶えて干上がった。九寨溝が以前の美しい風景を取り戻すことは極めて困難な状況にある。
ところで、九寨溝地震の発生から2時間後に、中国の俳優で歌手の“黄暁明”(1977年11月生まれの39歳)は自分が設立した慈善団体“明天愛心基金会”を通じて九寨溝地震被災地の救済と再建を支援する目的で50万元(約800万円)を寄付する旨をインターネット上で表明して、人々からの寄付を募った。黄暁明は2008年5月12日に発生した“汶川大地震(四川大地震)”(以下「四川大地震」)の時にも自ら救援活動に参加したし、2013年4月20日に四川省“雅安市”で発生したM7.0の“雅安地震”でも救援活動に参加して、負傷した子供を救助したことがあった。
莫大な寄付金を誰が管理するのか
こうした経験を持つことで知られる黄暁明が、九寨溝地震の被災地に対して支援金として50万元を寄付する旨を表明して大衆からの寄付を募ったことに対し、多くのネットユーザーから“熱心(心が温かい)”、“太美麗了(何とすばらしい)”、“大災面前見仁義(大きな災害を前にして仁義を見た)”などという賛辞が殺到した。しかし、こうした賛辞とは裏腹に多数のネットユーザーから寄付金の行方に対する懸念が表明されたのだった。それは、“海量捐款誰来監察(莫大な寄付金を誰が管理するのか)”、“能保証没被耗子偸吃?(ネズミ<=汚職役人>に食べられないと保証できるのか)”、“又要譲貪官有発財機会(またもや汚職役人に金儲けの機会を与えるのか)”などという内容だった。
黄暁明の寄付表明はネットユーザーの間に「寄付すべきか、寄付すべきでないか」という論争を改めて引き起こした。この論争が始まったのは、2011年6月20日にネット上で“中国紅十字会(中国赤十字会)”の略称である“紅会”を肩書として、ブランド品に囲まれた優雅な生活をひけらかし、“郭美美baby”の愛称を用いて一夜で有名になった“郭美美”(本名:“郭美玲”)<注>によるものだった。その後の調査で判明したところでは、郭美美が肩書として名乗っていた“紅会”とは、“中国紅十字商業”という民間企業を指し、彼女はそこの“総経理(社長)”であり、中国紅十字会とは何らの関係も持たないものだった。
<注>郭美玲は2014年7月に賭博の容疑で逮捕され、2015年9月に賭場開設罪により懲役5年、罰金5万元(約80万円)の判決を受け、湖南省の女子刑務所で服役中。
その後、郭美美が優雅な生活を享受できていたのは、“王軍”という人物から援助を受け入れていたからであることが確認された。しかし、郭美美が中国紅十字会と無関係であるか否かにかかわらず、この事件を契機として中国国民の視線は中国紅十字会のカネの流れに向けられることになったのである。それは下記する事情によるものだった。
四川大地震の寄付金、用途公表は約23%だけ
【1】2009年に“清華大学”の“鄧国勝”教授をリーダーとするグループが発表した『四川大地震寄付金の流れに関する研究報告』によれば、2008年5月の四川大地震発生から半年後の11月末までに、被災地支援の名目で全国から集められた寄付の総額は762億元(約1兆2192億円)で、寄付金だけで652億元(約1兆432億円)あった。これは史上最高の寄付金額で、1996年から2007年までの12年間に全国で受け入れた寄付の総額557億元(約8912億円)を上回った。なお、その内訳は寄付金が420億元(約6720億円)、物品が137億元(約2192億円)であった。
【2】寄付金652億元は以下の3つに分類される。 (1)政府が直接受け取ったもの:379億元(58%) (2)各地の紅十字会、慈善団体および公募基金会:199億元(31%) (3)中国紅十字会、“中国慈善総会”および16の全国規模の公募基金会:74億元(11%)
【3】しかし、これら寄付金に関する情報は公表されておらず、600億元以上の寄付金に関する流れや用途が不明のままとなっていた。四川大地震から1年後の時点で、寄付金の流れを知っていた寄付者は4.7%に過ぎす、66.7%の寄付者たちは寄付金の流れを知らなかった。
【4】鄧国勝教授のグループが上記3分類の寄付金に関してその流れと用途を追跡調査した結果を総合すると、四川大地震で集まった652億元の寄付金のうちで、用途の明細が公表されたのは約23%の151億元(約2416億円)だけで、約77%を占める残りの501億元(約8016億円)について明確なことは何も把握できなかった。
【5】四川大地震は中国国民の温かい心を揺り動かすと同時に寄付ブームを巻き起こしたが、管理能力に欠けた少数の独占的地位を持つ募金機構が膨大な資金や物資を取り扱ったことにより、被災地の救済過程で少なからぬ管理上の手抜かりが発生した。募金機構が集めるカネが多くなればなるほど、人々の懸念は大きくなり、寄付金の流れや用途に対する社会的な追及は厳しいものとなる。この結果、募金機構が直面する資金の使用リスクと社会的圧力はより高いものとなる。
『四川大地震寄付金の流れに関する研究報告』は公式の文書であることから、個々の事項について具体的な内容を記述せず、判明した使途不明金の額も敢えて記載しなかったし、寄付金を食べるネズミ(汚職役人)に関する具体的な指摘も行わなかった。用途の明細が不明確な501億元がどれだけネズミに食われたかは分からないが、四川大地震を好機と捉えて私腹を肥やしたネズミが大手を振るって闊歩していることは間違いのない事実である。
2016年5月15日付のブログ「渝州見聞」は、「四川大地震の巨額寄付金をどんぶり勘定にしてはならない」と題する文章を発表して、上述の『四川大地震寄付金の流れに関する研究報告』に言及したが、その文末で次のように述べた。すなわち、「全ての寄付は3つの公開原則に基づいて運行すべきである。個々の寄付について収支を明確にして、その流れを明らかにし、寄付者には安心を、そして、困窮する弱者にはやすらぎを与え、絶対にどんぶり勘定を許してはならない」。
中国進出企業の寄付金は大丈夫か
ネット上では九寨溝地震の被災地に対する黄暁明の寄付金50万元を巡ってネットユーザーが賛否両論を熱く戦わせているが、九寨溝地震の被災地に対する寄付を表明する企業は次々と名乗りを上げている。8月15日までに公表された主な寄付者は以下の通り。 A)米国アップル:700万元(約1億1200万円) B)“中国三星(中国サムソン)”:1000万元(約1億6000万円) C)ポータルサイト“騰訊(QQ.com)”の騰訊基金会:1000万元 D)コングロマリットの“大連万達集団”:1000万元
これら大手企業にとって被災地への寄付は中国で順調にビジネスを展開する上で必要不可欠な要素であり、避けて通れない関門と言える。但し、かれらの寄付金がネズミに食われることなく、被災地の救済と再建に100%投入される保証はないのが実情である。
それはさておき、四川省では2000年以降、大規模地震が多発している。2001年2月の“雅江地震(M6.0、雅江県)、2008年5月の汶川大地震(M8.2、汶川県)、2008年8月の攀枝花地震(M6.1、攀枝花市)、2013年4月の雅安地震(M7.0、雅安市)、そして2017年8月の九寨溝地震(M7.0、九寨溝県)と続いている。昔から四川省は大規模地震の発生が多いと言われて来たが、上述の通り2000年以降は発生の頻度が増え、その間隔が狭まっている。世界最大のダムである“三峡大壩(三峡ダム)”は1995年に着工して、2006年5月に竣工した。同ダムの蓄水容量は100億m3以上と巨大であり、その蓄水の重量がダム底や周囲の地盤に与える圧力は計り知れないものがある。一部の専門家は近年の大規模地震の頻発は三峡ダムの影響によるものではないかと警鐘を鳴らしているが、中国政府はそうした声を完全に無視している。
四川省では2017年6月24日に、九寨溝県から南西に直線距離で140km離れた同じくアバ・チベット族チャン族自治州に属する“茂県”で大規模な山崩れが発生し、10人が死亡し、73人が行方不明になった。この山崩れも三峡ダムの影響によるものかは定かでないが、汶川大地震が発生した際にも、三峡ダムの影響は盛んに論議された。今後も四川省では大規模地震が頻発する可能性は高い。人災によって桃源郷の九寨溝が破壊されたのであれば悲しい限りである。頻発する大地震は天が身勝手な自然の破壊者を罰しているのかもしれない。
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