『2018年「北の核」は軍事攻撃か体制崩壊で決着 かすかに残る「核をカネで買う」妥協案』(12/26日経ビジネスオンライン 鈴置高史)について

12/26日経朝刊2018年の世界(2)現実味増す米朝衝突 北京大学国際関係学院院長 賈慶国氏

――2期目に入った中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席は「新型の国際関係」を築くべきだと訴えています。

「(中国がオバマ前米政権に提起した)『新型の大国関係』と基本的に同じだ。核兵器が存在するなかで大国がいがみ合えば、出口はなくなる。協力するためには、何よりもまず互いの主権と領土保全を尊重しなければならない。大国同士が協力し、はじめて(国際社会を)率いる力が生まれるという考え方だ」

――中国が南シナ海などへの進出を加速すれば、米国や国際社会と衝突するのではないですか。

「南シナ海、東シナ海のいずれでも、中国はずっと前から権益を主張してきた。最近になって言い始めたわけでない。過去との違いは中国が強大になったことだ。国家の権益を守るため、以前より積極的な措置を採るべきだとの声が増えている。もちろん、周辺国との意見の相違は平和的な方式で処理すべきだ」

――今年9月、朝鮮半島での有事に備え、中国は米国や韓国と事前に協議すべきだと提言し、大きな反響を呼びました。

「朝鮮半島で危機が起きる可能性は大きく高まっている。(1)北朝鮮の核実験で事故が発生する(2)国連の制裁強化で北朝鮮の経済が行き詰まる(3)米国が予防的な軍事行動に出る(4)北朝鮮で政治的な動乱が起こる――の4つの事態が考えられる」

「危機対応策は中米韓が個別に考え、互いに擦り合わせていない。本当に危機が起きたとき、それぞれの軍隊が偶発的に衝突する恐れもある。難民の受け入れなどを含め、関係国は事前に十分な話し合いをすべきだ」

――米国が北朝鮮に対して軍事行動に出る可能性はありますか。

「その可能性は大きくなっている。さまざまなルートから入ってくる情報によると、米国は北朝鮮への予防的な攻撃を真剣に検討している」

――米国は中国に北朝鮮への石油供給を止めるよう求めています。

「かえって危機を引き起こしかねず、中国政府は非常に慎重だ。それでも石油供給の停止を完全には排除できない。北朝鮮が国際社会の反対を顧みず、核・ミサイル開発を続ければ中国はさらなる努力を迫られる」

――米朝の直接対話はあり得ますか。

「当然、あり得る。問題は何らかの合意を得られるかだ。私は難しいと思う。北朝鮮は中国を含め、誰も信用していない。核兵器を開発するしか自らの安全を守る方法はないと考えている」

――日中関係に改善の兆しがあります。

「ある程度は改善しているが、正常な水準に戻ったとは言い難い。両国は協力できる分野が数多くあるのに、歴史や領土の問題が障害となり、関係をなかなか改善できない悪循環に陥っている」

――中国の巨大経済圏構想「一帯一路」での協力は、日中関係の改善を後押ししませんか。

「世界の多くの国でインフラ需要があり、中国は資金や技術だけでなく管理の面でも助けを必要としている。一帯一路は中日が協力する非常によい機会となる。両国がビジネスの面でも競い合っているだけでは、お互いに損するだけだ」

(聞き手は中国総局長 高橋哲史)

中国の国政助言機関、全国政治協商会議の常務委員も務める。金正恩(キム・ジョンウン)氏が最高指導者に就いた後、北朝鮮を1度訪れたことがある。61歳>(以上)

賈慶国氏については9/19の本ブログでも取り上げたことがあります。でも中国人は平気で嘘がつけないと出世できないという事です。尖閣や南シナ海について中国はずっと前から権益を主張してきたと言いますが、「証拠を出せ」と言いたい。「南京」や「慰安婦」と同じで指し示す史料は何もなく証言だけではないですか(中国の南京の史料は捏造と東中野修道氏に見破られました)。日本に史料はたくさんあります。裁判(当事者間の権益の調整)をする場合、当然“factual evidence”に基づいて判断されます。証言だけでは偽証や勘違いもあり、証拠としては不十分です。米国では、民事の場合“preponderance of evidence”が判断基準に、刑事事件の場合は“beyond reasonable doubt”が判断基準になると渡邉怱樹氏の本に書いてありました。まあ、民主主義も体験したことの無い中国ですから、近代法に則り行動することを要求しても無理なのかも。力の信奉者で遅れて来た帝国主義者ですから。

http://dwellerinkashiwa.net/?p=7218

News Alert – Mattis Asks Troop To ‘Prepare For War’ As Storm Clouds Gathering Over Korean Peninsula=マテイス長官は朝鮮半島を覆う戦雲に対し、部隊に「戦いに備えよ」と。

https://www.youtube.com/watch?v=JZjmGPWOnrA&feature=share

鈴置氏の言うように、暗殺・クーデターで朝鮮半島の非核化ができるのが理想です。でも北朝鮮の人々は洗脳されていますのでなかなか難しいのかと。国際社会の経済制裁が効いてきても、自国民を餓死させても、金正恩は核開発に邁進するでしょう。それを防ぐには、クーデターが起きないのであれば、早めに米軍が攻撃して北朝鮮の体制変換を図った方が良いのでは。金正恩はmadman なのでMADは成立しません。

記事

年末年始の特別企画として、日経ビジネスオンラインの人気連載陣や記者に、それぞれの専門分野について2018年を予測してもらいました。はたして2018年はどんな年になるのでしょうか?

(「2018年を読む」記事一覧はこちらから)

12月12日、ティラーソン国務長官は、MADが成り立たない北朝鮮には核を一切持たせないと言明した。(写真:AP/アフロ)

前回から読む)

北朝鮮の核問題の行方はほぼ2つに絞られた。米国が軍事攻撃して核を除去するか、金正恩(キム・ジョンウン)体制が崩壊するか――である。いずれにせよ2018年中に決着する可能性が高い。

中ソと異なり共存できない

トランプ(Donald Trump)大統領の国連演説(9月19日)を通じ、米国は「北朝鮮の核武装はいかなる形であっても認めない」姿勢を明確に打ち出した(「北朝鮮に『最後通牒』を発したトランプ」参照)。

もし北朝鮮がテロリストに核を売らないと約束すれば、あるいは、米国まで届くICBM(大陸間弾道弾)を開発しなければ、核武装を黙認する、との構想がワシントンで語られたこともあった。しかしトランプ大統領はそうした妥協策をはっきりと否定したのだ。

妥協案の背景には「核保有国のソ連や中国とも米国は共存した。核を持つ北朝鮮ともできないはずがない」との理屈がある。だがトランプ政権は北朝鮮を、金正恩という異常な指導者に率いられる共存できない存在と見なした。

韓国での国会演説(11月8日)でトランプ大統領は、数々の例をあげて北朝鮮の人権蹂躙を非難し「狂信的カルト集団」と規定した(「トランプ大統領の韓国国会演説のポイント(1)」参照)。

■トランプ大統領の韓国国会演説(2017年11月8日)のポイント(1)

北朝鮮の人権侵害を具体的に訴え

10万人の北朝鮮人が強制収容所で強制労働させられており、そこでは拷問、飢餓、強姦、殺人が日常だ

反逆罪とされた人の孫は9歳の時から10年間、刑務所に入れられている

金正恩の過去の事績のたった1つを思い出せなかった学生は学校で殴られた

外国人を誘拐し、北朝鮮のスパイに外国語を教えさせた

神に祈ったり、宗教書を持つクリスチャンら宗教者は拘束、拷問され、しばしば処刑されている

外国人との間の子供を妊娠した北朝鮮女性は堕胎を強要されるか、あるいは生んだ赤ん坊は殺されている。中国人男性が父親の赤ん坊を取り上げられたある女性は「民族的に不純だから生かす価値がない」と言われた

北朝鮮の国際的な無法ぶりを例示

米艦「プエブロ」の乗員を拿捕し、拷問(1968年1月)

米軍のヘリコプターを繰り返し撃墜(場所は軍事境界線付近)

米偵察機(EC121)を撃墜、31人の軍人を殺害(1969年4月)

韓国を何度も襲撃し指導者の暗殺を図った(朴正煕大統領の暗殺を狙った青瓦台襲撃未遂事件は1968年1月)

韓国の艦船を攻撃した(哨戒艦「天安」撃沈事件は2010年3月)

米国人青年、ワームビア氏を拷問(同氏は2016年1月2日、北朝鮮出国の際に逮捕。2017年6月に昏睡状態で解放されたが、オハイオに帰郷して6日後に死亡)

「金正恩カルト体制」への批判

北朝鮮は狂信的なカルト集団に支配された国である。この軍事的なカルト集団の中核には、朝鮮半島を支配し韓国人を奴隷として扱う家父長的な保護者として指導者が統治することが宿命、との狂った信念がある

核兵器を持つ国同士が厳しく対立したからといって、必ずしも核戦争は起きない。相手を先制攻撃しても核で反撃されたら我が身も滅びる――と指導者が考えるからだ。核による均衡、専門用語で言えば「相互確証破壊」(MAD=Mutual Assured Destruction)である。

だがMADは「相手も自国民の被害に思い至り、合理的に考えて先制核攻撃はしてこないだろう」と双方が確信した時に成立する。

暗殺、クーデターで体制崩壊

北朝鮮は自国民の人権をためらいもなく侵害してきた。「米国や日本、韓国を先制核攻撃する」とも言い放ってきた(「米中は金正恩を『アジアのムガベ』にできるか」参照)。そんな異常な国とMADは成立しないのだ。

12月12日、ティラーソン(Rex Tillerson)国務長官が再び、MADが成り立たない北朝鮮には核を一切持たせないと言明した。アトランティック・カウンシル(Atlantic Council)での演説だ。

同長官は「北朝鮮はソ連や中国、ほかの核保有国にも相当しない。何らかの国際的規範に裏打ちされた行動をしてこなかった。それどころか正反対だ。だから大統領も私も核武装した北朝鮮を認めない」と述べた。原文は以下だ。

That certainly was not the case with the Soviet Union. It’s certainly not the case with China. It’s certainly not the case with other nuclear countries that possess nuclear weapons.

These are countries that have a history of abiding by certain international norms. North Korea has no such record. In fact, their record is quite contrary to that.

And that’s the reason the President and I agree with his assessment that we simply cannot accept a nuclear-armed North Korea, and I think that’s why it is the policy of the neighborhood as well.

米国がここまではっきりと「北の核は認めない」と宣言した以上、ICBMを持たなければ暗黙裡に核保有を認める、といった妥協はできない。

結局、北朝鮮が核を捨てない限り、米国にとって選択肢は2つしかない。軍事行動で核を取り上げるか、あるいは北朝鮮の指導層に、暗殺やクーデターで金正恩体制を倒させるか、である。

前者の場合も体制が崩壊する可能性が高い。全面的な軍事攻撃を実施する際、米国は当然、空爆による金正恩暗殺を狙う。それに失敗しても、核武装以外に実績のない若い「敗軍の将」が政権を維持するのは容易ではない。

発射台だけ先制攻撃

英紙テレグラフ(電子版)は12月20日「北朝鮮が新型ミサイルを試射する前に、そのミサイル発射台を破壊する作戦『Bloody nose』を検討中」と報じた。「Exclusive: US making plans for ‘bloody nose’ military attack on North Korea」である。

テレグラフは「米国はICBM破壊により本気であると金正恩に見せつけ、核開発の中断と米国との交渉につなげたい考えである」とも報じた。

核施設を航空機やミサイルで破壊するなら、レーダーなど防空網や日米を攻撃するミサイル基地など、軍事関連施設のすべてを叩く大規模な戦争になる可能性が高い。

それを避けるためICBMの発射台に限って攻撃を実施するアイデアが浮かんだのだろう。だが、この「限定的な攻撃」を受けた北朝鮮が、反撃して全面戦争に発展しないとの保証はない。

いずれにせよこうした構想を練るに至るほど、米国は外交による解決に希望を持たなくなっているのだ。

「首のすげ替え」呼び掛ける米

米国が未だに期待しているのは「体制崩壊」だ。金正恩委員長の冒険主義に危機感を抱く指導層や軍部に暗殺、クーデターを起こさせる。後継政権と交渉して核を放棄させる――構想だ。軍事攻撃と比べれば、はるかに「平和的」な方法だ。

この案はCIAのポンペオ(Mike Pompeo)長官が公然と提唱してきた(「『金正恩すげ替え論』を語り始めた米国」参照)。北朝鮮の指導層を恐怖に陥れ、体制の動揺を誘う軍事的威嚇と経済制裁強化に米国が余念がないのもそのためだ。

11月29日のICBMの実験以降「米国は2018年3月までに北朝鮮を攻撃する」といった情報が相次いでリークされ「戦争間近」のムードが醸し出されている(「『北に先制核攻撃も辞さず』と言明した米国務省」参照)。

対北朝鮮経済制裁もさらに強化された。12月22日、国連安保理は米国主導で、石油精製品の北朝鮮輸出を9割削減することを決めた。ガソリンやディーゼル燃料の在庫を枯渇させ、戦闘能力を奪うのが目的だ。

11月21日にはジンバブエのムガベ大統領が軍の反抗で失脚している。金正恩委員長の祖父、金日成(キム・イルソン)主席とムガベ氏は親しかっただけに、首筋にひやりとしたものを感じたに違いない(「米中は金正恩を『アジアのムガベ』にできるか」参照)。

「おまけ」は米韓同盟破棄?

軍事攻撃と体制崩壊は朝鮮半島の激変を呼ぶ。もっと穏やかな解決方法として、新たな「対話解決」の道が探られている模様だ。「北の核をカネで買う」案だ。

ティラーソン国務長官のアトランティック・カウンシルでの演説に興味深いくだりがある。

同長官は「北朝鮮が(軍事的な)抑止のためだけに核を持つのではないことは明らかだ。商業用の目的だ」と語った。

it’s clear to us that they would not just use the possession of nuclear weapons as a deterrent. This would become a commercial activity for them. Because we already see elements of it in the commercial marketplace.

テロリストらに売るために核を開発している、と断じたのだ。そうだとするのなら、テロリストの代わりに米国が北から核を買い取ることも可能なはずだ。

ティラーソン長官はこの演説で「初めの会談は前提条件なしに会おう」と対話も呼び掛けた。「彼らも巨額のカネを投資しているのだ。核をあきらめるためだけに対話のテーブルには付かない」と述べている。要は「核を放棄すれば、代償はカネで支払う」と呼び掛けているのだ。

it’s not realistic to say we’re only going to talk if you come to the table ready to give up your program. They have too much invested in it. And the President is very realistic about that as well.

もっとも、金正恩委員長が「カネで売る」取引に応じる可能性は低い。核は「米国に抗する英雄」の象徴であり、権力の源泉である。そこで米国は「在韓米軍の撤収」あるいは「米韓同盟の破棄」など“おまけ”を付けると言い出すかもしれない。

仮に金正恩委員長が応じなくとも、このような具体的な案を示せば北の指導層もいっそう「米国との取引」に魅力を感じ「体制打倒」に心を動かすだろう。

「3月までに決着」と威嚇

北朝鮮の核問題を分析する時、重要なのは「時」だ。放置するほどに北朝鮮が、米国まで届く核ミサイルを完成する可能性が増す。

だからこそ「2018年3月までに軍事攻撃する」との米国発の情報が乱れ飛ぶのだろう(「『北に先制核攻撃も辞さず』と言明した米国務省」参照)。

この情報リークは「クーデターや暗殺を実行するなら早くせよ」と、北の反乱を急かすためとも思われる。あるいは「核の購入期限は迫っている」という意味でもあろう。

北朝鮮がこうした取引に乗るフリをした時、米国は軍事攻撃のタイミングを失うかもしれない。その際、核問題は進展のないまま、こう着状態に陥る可能性がある。米国の焦燥感から見て、その可能性は極めて低いのだが。

  • 北朝鮮の核問題、2018年のシナリオ

①米国の軍事行動により核を除去→全面戦なら金正恩政権崩壊の可能性

②暗殺・クーデターで金正恩政権崩壊→後継政権は核を放棄

③米国が核をカネで買う取引→在韓米軍撤収、米韓同盟破棄の可能性

④こう着状態が続く

(次回に続く)

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