『海南航空集団・王健会長の突然死を巡る黒い噂 背後にチラつく大物政治家たちの利権』(7/11日経ビジネスオンライン 福島香織)、『関税合戦は序の口、深刻度増す“米中経済戦争” 日本も他人事でなくなる』(7/11日経ビジネスオンライン 細川昌彦)について

7/10 facebook 中国观察 于艳华の投稿

川普,你在嚇唬人?
美國已在網上透露,要爆光中國180萬官員之國外子女檔案。這些資料將一一介紹其背景職務,還配有照片,將印刷幾千萬份防水傳單,撒播到中國。
川普說:和中國發生戰爭,起碼要三四千億美元,成本太高。而這180萬貪官的子女就是中國最大的癌細胞群。爆料是我手中最有效的一張牌成本很低,等著瞧……運到海外中國資金有五兆美元,川普掐住它

トランプ、あなたは人を怖がらせている?
アメリカがネットで明らかにしたのは、「中国の180万人の役人の海外子女の身上調書を晒すだろうということである。この資料はバックの仕事、本人の写真等数千万の防水宣伝ビラとなって中国に伝わるかもしれない。トランプは「 中国との戦争が起きれば、少なくとも3,4千億$もかかる。コストがかかりすぎ。この180万人の腐敗した職員の子供たちは中国最大の癌細胞である。これを晒せば、私の手の中でコストが安く、皆が見たいと思っている一番効果的なカードである。海外へ持ち出した中国の金は五兆ドルもある」と。トランプはそれを押えている。

7/12阿波羅新聞<离岸人民币急挫逾700点子!分析料年底恐见“7算”=人民元は売られ6.7まで行った 今年の年末には7.0まで行くのではと恐れられている多分、そんなもので止まらないと思います。9月までに総額5000億$の関税が付加されれば、共産党の思惑以上に売られるでしょう。元安は輸出に有利と言ったって売り先がなくなります。

http://www.aboluowang.com/2018/0712/1142439.html

7/11阿波羅新聞<习近平当断不断反受其害 曾庆红发声他是此大案罪魁 —孟建柱等人操纵天字号第一案 美国驻华使馆称这些被抓人为英雄=習近平が決断を逡巡したため失ったものは大きい 曽慶紅は習がこの罪の大本であると発した 孟建柱等人を操るのは素晴らしい 駐中国米国大使館は逮捕された人達を英雄と呼ぶ>

これらを見ますと日本の人権派弁護士とか人権派判事が如何に薄っぺらいものか分かります。表題の意味するところは、「3年前に人権派弁護士を弾圧したのは江沢民系で、指揮者は曽慶紅である。彼のメデイアを使って事件の元凶は人権派のゴロツキと言って非難した。その時に習は逡巡し何も言わず、その結果を習が引き受けることになった。18大の後、習は妥協し、江派の大ボスを逮捕せずにいたので江派はずっと習を引きずり下ろす目的を持って攻撃する機会を窺っていた。」と。

http://www.aboluowang.com/2018/0711/1142240.html

7/13麗澤大学の英語の授業でDr. Ligaya Acosta(女性)氏から“The Philippines today: globalism, populations, and geopolitical challenges ”という題で講演を聞きました。当方より「ドテルテ大統領は中国に宥和政策を採っているように見える。苦労して国際仲裁裁判所で勝利の判決を勝ち取ったのに利用していない。本日の日経には「昨日マニラでフオーラムが開かれ、前外相のアルベルト・デル・ロサリオが大統領の行動に不満を述べた」とある。どう感じるか?」と質問しました。それに関連して7/12ABS・CBN News“’Philippines, Province of China’ banners hung in parts of capital”の記事を紹介します。中国に妥協すると骨の髄までしゃぶられることが分かります。「中国の一省であるフィリピンにようこそ」とのバナーです。敵対している麻薬屋・華僑の仕業と思われますが、徹底的に取り締まらなければ。沖縄も野放図にしておくと危ないです。沖縄県警は外国人の政治活動を取り締まらなければ。

http://news.abs-cbn.com/news/07/12/18/philippines-province-of-china-banners-hung-in-parts-of-capital

福島氏の記事では海南航空の王健の死亡と習近平の肖像画にペンキをぶっかけた女性の話が出てきますが、7/6と7/7本ブログでも既に紹介しました。早く中国経済が崩壊してほしい。

細川氏の記事は、米中貿易戦争はトランプの中間選挙対策としか見ておらず、世界覇権の争いとせず矮小化して捉えている印象です。ハイテク規制も軍事絡みで行っている訳で、経済だけで見ると誤ります。ただ、対中COCOMが発動されたときには日本企業は引っかからないようにというか、その前から敵国中国には付き合わないようにするべきです。

福島記事

フランスで転落死した王健会長 (写真:AFP/アフロ)

中国最大の民間航空コングロマリット・海南航空集団(HNA)の会長、王健が旅先の南フランス・プロバンス地方の教会で、記念写真を撮ろうと高さ15メートルの壁に上って、転落死した。7月3日のことである。このニュースは、かなり衝撃を持って報じられた。

その理由の一つは、HNA自体がいろいろといわくつきで、習近平自身やその右腕たる現国家副主席の王岐山がらみの黒い噂の絶えない企業であったこと。しかも、ブルームバーグによれば、昨年末時点で負債総額が推計6000億元にのぼり、事実上破綻しているということ。2月には、中国当局が主だった国有銀行にHNA救済を窓口指導し、政府主導のもとでの再建話が進んでいるということ。

一方で、HNAはドイツ銀行やヒルトン・ワールドワイドなど名だたる海外企業の筆頭株主で、その海外資産は120億元以上、国内外合わせた子会社は450社以上で、その再建の成否は国内外企業、経済にかなり大きな影響を与えるという意味でも注目されていた。これは単純な事故死なのだろうか。一体HNAで何が起きているのだろう。いや、中国経済界で何が起きているのだろう。一人の民営企業幹部の死から見えてくるものを整理してみたい。

王健について改めて説明すると1961年天津生まれ。元は民航総局計画局の公務員で、1988年に海南省の出資1000万元をうけて民間航空総局の公務員であった陳峰とともにHNAの前身である海南省航空公司を創立した。その後、海南省航空公司が株式化、中国市場に上場し海南航空集団として事業を拡大していく中でも実務派としてかじ取りしてきたHNAのナンバー2である。

中国民航大学や中国発展改革研究院で客員教授も務めていた。彼は7月3日昼前、プロバンス地方に視察旅行中、観光名所のボニュー村の教会で記念写真をとろうと、壁によじ登ったのだという。一度登ろうとして失敗し、二度目に登ったときに転落したらしい。地元警察は事故と発表しているが、当然、それを信じない人も大勢いた。というのも、HNAは事実上破綻の危機にさらされ、しかもその組織や株式構成には非常に複雑な大物政治家の利権と黒い噂が絡んでいたからだ。

利権に絡む? 王岐山の親族

HNAは、すでにこのコラムでも触れてきた(「大物・王岐山の進退、決めるのは習近平か米国か」)ように、王岐山の親族が利権に絡んでいる、と言われてきた。王岐山の甥がHNAの匿名役員であるとか、HNAの過半数株を占める二つの慈善団体・海南省慈航公益基金会と在米海南慈航公益基金会の最終受益者がそれぞれ王岐山と習近平の私生児であるとか、といった話である。

このネタ元は、北京五輪プロジェクトの黒幕でもあった政商・郭文貴で、今は習近平政権から汚職などの国際指名手配を受けて米国に逃亡中だ。その逃亡先のニューヨークからインターネットを通じて、王岐山の“スキャンダル”をいくつも投じているが、郭文貴情報にはフェイクも相当混じっているといわれ、うのみにするのは要注意だ。

だが、わずか1000万元の資金でスタートした海南航空が、ジョージ・ソロスを口説き落として出資させ、中国A、B、H市場に同時上場し、新華、長安、山西といった地方航空会社を次々と買収する資金を得て、中国主要銀行がほとんど無審査で6000億元以上の融資を行って、外国企業を買いまくってきたプロセスをみれば、そこに大きな政治権力が介在していたことは間違いない。その大きな政治権力を代表する一人が王岐山であるというのは、HNA創始者の一人、陳峰が、王岐山が農村信託投資公司社長時代の部下であったことを思い出せば、腑に落ちるところでもある。

だが、このHNAは2017年ごろから、ホワイトハウス広報部長・スカラムッチの所有するヘッジファンドにも買収の手を伸ばすなど、トランプ政権の警戒心を呼んだ。米国メディアは、その株主構成や資金の流れに対してすでにかなり深く取材しているし、米国当局もおそらくHNAに対する調査をおこなっているはずだ。こうした流れを受け、習近平政権は主要銀行にHNAを含む五大民営企業に融資を一時停止するよう指示。この結果、HNAが受けていた6000億元に及ぶ融資は瞬く間に焦げ付き、今年に入ってからは香港やシンガポールの資産の投げ売りが始まっている。

一方で、習近平政権は今年2月には改めてHNAの“救済”を決定した。これはウォールストリート・ジャーナルが報じている。どうやら安邦保険集団を接収したやり方よりはマイルドなようだが、それでも国有資産管理当局の下での強制的な再編成であり、フィナンシャルタイムズ(7月5日)などは、安邦の事例と並べて習近平政権の民営企業に対する強硬姿勢と論評している。もっと率直に言えば、民営企業の乗っ取りともいえるかもしれない。

なので、王健の死に疑問を持つ人たちは、ひょっとすると、このHNA再建のプロセスで、隠蔽せねばならないこと、消し去られねばならない証拠があって、王健を邪魔だと考える者たちによって、「自殺」させられたのではないか。あるいはHNA内部の権力闘争、利権争奪戦の過程で王健が負けて排除されたのではないか、などといった謀略小説のようなストーリーを想像するのである。実際、HNA内部の合併がすすめられると、利権争いがおきて、陳峰VS王健の対立が先鋭化していたという話もある。

HNA内では王岐山と近しい陳峰が立場は上だが、実際の実務は王健がやっている。王健は陳峰を陳総(陳総裁の略)と敬称で呼び、陳峰は王健を王同志と呼ぶ、微妙な関係だ。HNAの負債問題が表面化したのち、対応に奔走していたのは王健だが、陳峰の息子の陳暁峰が半月前に王健の特別助理になった。人によっては、これは王健の動向を陳峰が監視するための人事ではないか、という。この直後に王健が亡くなったということに、なんらかの陰謀を感じる人もいるわけだ。

郭文貴はこんな謀略説をひろめている。「王健はホワイト・グローブとして王岐山、習近平はじめ多くの党幹部の資金洗浄に関与しており、その証拠である海外口座のデータや担保人、保障人などの記録を保有しているのは、実務担当の王健。HNAは今や中興とともに、米国調査当局のターゲットとなっており、王健が米国調査当局に口を割る前に、亡き者にされたのではないか」。

殺されたのではなくとも、家族の安全と財産の保障をする代わりに秘密を抱えたままの自殺や、事故死を装った自殺を迫られたのではないか、という説もある。あるいは、巨額の負債に精神を病んでいたので事故死を装って自殺した、とか。

王健の死によって、彼の持ち株は慈航公益基金会に贈与され、王健の職務は取締役会主席である陳峰が引き継いだ。そう考えてみれば習近平、王岐山の損にはなっておらず、謀略説もありそうな気がする。だが、実務を一手に引き受けていた王健の突然死で、今後難しいHNAの再建がさらに難航しそうだという観測が広がった。

波紋を呼んだ29歳女性の政権批判

こうした憶測が流れる中で、29歳の不動産仲介業者勤務の女性が4日、早朝に上海の海航大廈(HNAビル)前で、「習近平独裁専制の暴政を暴く!」と言いながら、近くにある習近平の宣伝ポスターに墨汁をかけるパフォーマンスを行った。そして、海航大廈を指さして、あれは習近平の資産だ!と批判したのだ。この様子はスマートフォンで録画されて彼女のツイッターアカウントにアップされた。当然、これがなぜ王健死亡翌日に海航大廈前で行われたのか、ということが中国人ネットユーザーの間で噂になった。

こんな形で習近平批判をすれば、彼女はタダではすまない。インターネットで習近平のことを「肉まん」と揶揄しただけで、ネットユーザーが拘束された例もあるのだ。この女性は同日午後3時半ごろに「玄関の前に制服の一群が来た。私は着替えて外に出る準備をしよう。私に罪はない。罪があるのは私を傷つけた人と組織よ」と意味深な言葉と、玄関前に来ている複数の警官をドア越しから写した写真をツイッターにアップしたあと、このアカウントは閉鎖された。

彼女が王健と何等かの接点があったのか、なかったのかはわからない。単なる、政権に対する不満の表明に過ぎないのかもしれない。が、多くの普通の市民たちは、HNAの破綻と王健の死と習近平や王岐山の利権に、なんらかの関連があるかもしれないと注目した。

ところでいったい、習近平政権は中国の民営企業をどうしたいのだろう。鄧小平時代の国退民進(民営化を進め国有企業を整理していく)からの国進民退の逆行は、間違いなく中国経済の活気を失わせている。HNAに限らず、中国の民営企業は、習近平政権になってから受難続きだ。飛ぶ鳥を落とす勢いであった安邦保険集団のCEO呉小暉は汚職で逮捕、起訴され安邦集団は政府に接収された。ハリウッドを買い占めると豪語していた大連万達グループのCEO王健林は政治的にはまだ首の皮一枚つながっているが、グループ資産約2兆円の売却をよぎなくされ、そのあおりで子会社の女性社長と従業員が今年6月に自殺(他殺の線も消えていない)した。

民営経済秩序を徹底破壊か

習近平の狙いは、紅二代、太子党といった共産党長老の子弟の利権の温床となっている民営企業の再建を建前として、政治的ライバルの利権の接収、および身内への再分配だという人もいるが、放漫財政を取り締まるという名目で打ち出した金融引き締め政策を受けて貸し渋りや貸しはがしにあって、倒産している民営企業には、個人企業家が頑張って立ち上げ軌道に乗せてきた普通の企業も多くある。

今年、民営企業の社債デフォルト総額は上半期だけで165億元、過去最悪になると予測されている。ちなみに倒産や巨額の負債に追い込まれて自殺した民営企業家はこの2年の間で100人は下らないともいわれている。一方で、企業利益の見込めない一帯一路プロジェクトなどの国家事業や、自らの利権がかかわるHNA再建には、莫大な融資を国有銀行に窓口指導で命じているわけだ。習近平政権がやろうとしているのは中国で育ち始めた民営経済秩序の徹底破壊ということだろうか。

トランプ政権から習近平政権に仕掛けられた米中貿易戦争によって中国経済は相当追いつめられるという指摘が多いが、私は中国経済を本当に追い詰め、崩壊させようとしているのは、習近平政権自身ではないか、という気がしてきた。

細川記事

米中二大国はとうとう関税の報復合戦を始めた

「7月6日は米中貿易戦争の開戦記念日になるのか」。元外交官の米国人がため息交じりに語っていた。

7月6日、とうとう米中二大国は関税の報復合戦を始めた。その世界経済に与える影響や日本経済に与える影響についてはさまざま論じられている。そうした経済や企業活動への影響も当然重要ではあるが、日本にとっての根本問題を忘れてはならない。

それは巨大国内市場を持った大国が一方的制裁を振りかざす「パワーゲーム」の世界に突入したということだ。そうした事態を回避するために、これまで長年積み上げてきたのが、世界貿易機関(WTO)をはじめとする「ルールに基づく国際的な経済秩序」であった。日本の存立基盤でもある。それが崩壊の危機に瀕しているというのが本質的問題なのだ。

そのうえで、この米中貿易戦争は今後どう展開していくのだろうか。

大事なポイントは「米国」という主語で一括りにすると、本質が見えなくなるということだ。トランプ氏とトランプ氏以外を分けて考えるべきなのだ。トランプ氏以外とは議会、政権内の強硬派、ワシントンの政策コミュニティーだ。

当面のディール成立の可能性はあるが……

トランプ氏の関心は2つある。中間選挙に向けての得点稼ぎと中国との当面の交渉の駆け引きだ。

今回の関税引き上げで、対中強硬姿勢がポーズだけでなく、実行することを見せる。それは国内支持層へのアピールと中国に向けての交渉術としての意味がある。今回の340億ドル規模の関税引き上げでまず国内と中国の反応を見る。あえて500億ドル規模の関税引き上げを第一段階の340億ドルと第2段階の160億ドルの2段構えにしている理由はそこにある。

2000億ドル規模の追加関税については、数字の大きさで世間の耳目を集めているだけだ。

国内については報復関税の被害にあう大豆農家などの農業票の反発の大きさを見定める。

中間選挙を考えれば、トランプ氏の当面のターゲットは8月だろう。中国がそれまでにどういう協力のカードを切ってきて、戦利品としてアピールできるかがポイントだ。

ただ中国もカードを切るのを慎重になっている。その背景は5月の出来事だ。劉鶴副首相が訪米して、ムニューシン財務長官、ロス商務長官との間で農産物、エネルギーの輸入と引き換えに、関税引き上げを保留することで一旦合意したにもかかわらず、翌日にはライトハイザー通商代表にひっくり返された。政権内の路線対立による混乱ではあるが、いずれもトランプ氏がそれぞれに了承しているだけに、トランプ氏自身のブレの大きさに中国もあ然としたようだ。そこで当面のカードを切らず、様子見の方針だ。

中国も国内の強硬世論への目配せが必要なので、今回の報復関税合戦に突入した。次はターゲットの8月に向けて大物・王岐山氏が動くかも注目点だ。

こう見てくると、9月の米国議会再開までに米中間で当面のディールが成立する可能性はあるだろう。しかしそれは米中摩擦の小休止にしか過ぎない。

ハイテク覇権の対中警戒感が「通奏低音」

一方、議会をはじめとした対中警戒感は根深く、ワシントン全体の空気を覆っている。「貿易赤字問題からハイテク覇権問題にシフトしてきている」というメディアの報道もあるが、これは表層的な捉え方で正しくはない。貿易赤字問題は、これに関心があるトランプ氏による「旋律」で、ハイテク覇権の対中警戒感は、いわば「通奏低音」のようなものだ。この「通奏低音」が大きくなって、「トランプ旋律」以上に耳に入ってくるようになっているのだ。

これを象徴する出来事が、中国の通信メーカーZTE社の違法輸出問題だ。米国製品の販売禁止の制裁をトランプ氏は中国とのディールの一環で緩和を決定したが、これに反発した議会上院は販売禁止の法案を可決した。

今、議会とナバロ大統領補佐官をはじめとする政権内の対中強硬派は共振しながら、「経済冷戦」へと突き進んでいる。トランプ氏による関税報復合戦だけに目を奪われていてはいけない。

具体的な動きとしては、米国の先端技術の中国への流出を阻止するための、投資規制と輸出管理の強化がそうだ。そしてそれは単に経済覇権だけの問題ではない。米国の安全保障をも脅かす懸念があることが、極めて重要なのだ。

まず前段の準備として、6月19日にホワイトハウスからナバロ大統領補佐官が主導した報告書が公表された。ここには中国による技術や知的財産権を奪取する手口が列挙されている。

例えば、米国企業の買収による技術の獲得、米国企業に対する強制的な技術移転の要求などがそうだ。更には、これまで「知財だけではない、中国・”標準化強国“の怖さ」で指摘した、中国標準の策定を通じた技術入手にも言及している。

また中国の知的財産権の侵害については、中国は“知的財産権の強化”を打ち出して批判をかわそうとしたが、この“触れ込み”は何ら解決策にはならないことは米国側も見抜いている。それどころか、中国市場において外国企業をたたく手段に逆利用する恐れもあることは、これまで「対中制裁では解消しない、中国・“知財強国”の怖さ」で指摘したとおりだ。

“対中ココム”復活?

そしてこれを受けて、6月27日、議会と呼応して、厳しい対中規制を行うための投資規制と輸出管理の強化に取り組むことを発表した。

米国企業の買収によって技術が中国に奪われる懸念は、大企業から新興ベンチャーにいたるまで広がっている。これに対しては、議会が主導して安全保障の懸念を審査する対米外国投資委員会(CFIUS)の審査を強化しようとしている。この法案にホワイトハウスが乗った形だ。

輸出管理の強化については、商務省を中心に検討されている。これについて“対中ココムの復活か、と報道されているが、これは誤解を招く過剰表現だ。ココム(対共産圏輸出統制委員会)はかつて冷戦期に共産圏諸国に対して西側諸国が戦略物資や技術の輸出を規制した国際的な枠組みだ。これを中国に対して復活するかのように報道されているのだ。

しかし、これは正しくない。すでに輸出管理は中国に対しても国際的枠組みの下で実施されていることはあまり知られていない。冷戦終結後、ココム廃止とともにこれに代えて、懸念国向けの軍事用途を輸出規制する国際的枠組みが作られ、私自身もこの策定に携わった。こうしたポスト・ココムとして現在実施されている輸出管理によって、軍民融合を標ぼうする中国への懸念に対してどう対応するかを見直している。

中国による強制的な技術移転以外にも、民間企業による自発的あるいは意図せざる技術移転もある。そうした技術移転も懸念あるものは、この輸出管理で阻止しようとしているのだ。

さらに米国大学への中国人留学生や研究所の中国人研究者が帰国して米国の技術が流出することも懸念している。中国企業が米国のシリコンバレーに設立した研究所で研究者、技術者を引き抜いていることも問題視している。こうした人材を通じて違法に技術が流出しかねない。これらも輸出管理の規制領域である。

主戦場・半導体で激しい戦い

こうした規制の対象としては「中国製造2025」の対象とされている10分野が焦点になる。

そのうち、主戦場になっているのが半導体だ。鉄鋼、自動車、半導体。これらは貿易摩擦の3大銘柄と言われてきた。1980年代の日米貿易摩擦がそうだった。中国は半導体の自国生産は12%程度で、国内生産による自給率を飛躍的に引き上げようとしている。先般のZTE社に対する米国の制裁によって米国製半導体を購入できなくなって危機的状況に陥った。その苦い経験から自らの弱みに気づき、中国は半導体の内製化を急いでおり、日米韓台からの技術者の引き抜きも激しさを増している。

先月、中国は米韓の半導体大手3社に対して、独禁法違反の疑いで調査を開始した。これも明らかに米国による半導体への規制を牽制するものだ。同時に、調査を通じて技術情報を入手することもできる。外国技術を奪取して、巨額の補助金で国内生産する。その結果、世界は供給過剰になる。鉄鋼で起こったことが、半導体でも起ころうとしている。

そこで今、焦点になっているのが半導体製造装置だ。日米のメーカーでほとんど生産しているが、一部コアの工程でオランダなどの企業もある。こうした企業から半導体製造装置の対中輸出を規制すべきだとの声も上がっている。今後日米欧が連携して共同対処すべき分野だろう。

これに対して中国は国家戦略の根幹に関わるものだけに「中国製造2025」を見直すわけにはいかない。さらにそれを下支えする技術入手の手法も根深く、表面的な制度の改正で済むような問題ではない。そういう意味で、着地点の見出せない問題だけに長期化は避けられないだろう。

対抗策として、中国で活動をする米国企業に対して不透明な法運用で差別的扱いをしたり、中国市場での米国製品の不買運動を仕掛けたりする、かつて日本や韓国に対してあった中国式手法を繰り出す恐れもある。そうなると泥沼の様相を呈することになりかねない。

日本が注意すべきことがある

ここで日本が注意すべきことがある。これらの輸出管理の強化については日本など同盟国との協力にも言及されていることを見逃してはならない。

中国に対する輸出管理の運用が従来比較的緩やかではないか、とされていた欧州も含めて、日米欧の共同歩調が重要になってくる。

さらに日本企業が注意すべきは、米国の輸出管理には再輸出規制があることだ。米国からの部材、技術を組み込んで日本から中国に輸出するケースも、米国の規制対象だということを忘れてはならない。

大学についても、日本の大学の研究現場でどこまでこの問題を深刻に受け止めているか、心もとないところがあるのも事実だ。通り一遍の説明会を開催してアリバイ作りだけで満足していないか検証してみる必要がある。

企業、大学も含めて、日本自身も他人事では済まされないのだ。

さらに今後米中摩擦が激化すると、警戒すべきは個別事件だ。

かつて80年代の日米貿易摩擦の時代には、82年に日立IBM産業スパイ事件、87年に東芝機械ココム事件があって、米国の圧力が激しさを増した記憶がよみがえってくる。米国が本気になった時の怖さだ。

前出の中国のZTE社による対イラン、北朝鮮への違法輸出事件もそれを思い出させるものがある。

今後、違法輸出に対する捜査当局の摘発が強化されることも想定されるが、日本企業が巻き込まれることはあってはならない。

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