『ロシアから見た北朝鮮の核』(日経ビジネス2017年8月28日号 FT)、『朝鮮半島危機は台湾海峡に連動するか?微妙なバランスを保つ米中の政策、役割を問われる日本』(8/28JBプレス 阿部純一)、『強すぎる米国が作り出してしまった“ウイルス” 厄介な「怯える北朝鮮の核ミサイル開発」退治:日本の責任重大に』(8/28JBプレス 樋口譲次)について

8/29早朝に北はまたミサイルを飛ばしました。下記のワシントンポストの記事によれば、「Hwasong-12=火星12」(朝鮮語は中国語に似ています。中国語で火星はhuoxingですから)タイプのミサイルであれば3000マイル=4827Kmは飛ぶとのこと。ミサイルの方向を変えればグアムにまで届くとも。グアムまでの距離は3400キロと言われていますので。ただ、ロイターによれば今回のミサイルの飛行距離は2700Kmとありました。北朝鮮は米国を怒らせない程度に逆らっているというところでしょう。

<North Korean missile flies over Japan, escalating tensions and prompting an angry response from Tokyo >

https://www.washingtonpost.com/world/north-korean-missile-flies-over-japan-escalating-tensions-and-prompting-an-angry-response-from-tokyo/2017/08/28/e1975804-8c37-11e7-9c53-6a169beb0953_story.html?tid=ss_fb&utm_term=.7416f1948be0

https://jp.reuters.com/article/nk-missile-idJPKCN1B82EZ

FT記事にありますように、北の核保有を認めることが最善の策か疑問です。特に日本にとっては。小生は米軍がB61-11や”mother of all bombs”を使い、北の兵力を無力化してほしいと願っています。北の核保有を認めると、

①日本は中露北と核保有国に挟まれ、彼らの属国とされる可能性が高くなる。

②北に核保有を認めるのであれば、日本の核保有も認めさせるようにしなければ。樋口氏の言う「非核三原則」は当然撤廃。少なくとも米国とニュークリアシエアリングしながら「核保有」への道を探る。

③北と米国との交渉を中国はじっと見ている。北のような弱小国を武力行使して潰せないのであれば、中国相手に潰せる訳はないと彼らは思う。バノンの言ったように「北は前座」であり、「本命は中国」である。もしそうなれば、太平洋二分割で日本は中国の属国になりかねない。勿論、中国の野望は太平洋の二分割で収まる訳はなくて、世界制覇にある。

④樋口氏の言う「日本列島電子戦バリアー構想」、イージス・アショア(イージス艦MDシステムの地上配備型)や電子戦・サイバー攻撃、電磁砲・電磁波弾、さらにはレーザやレールガンの配備も早急に進めねば。予算措置が大事。早くGDPの2%の10兆円にしなければ。

⑤阿部氏の言う台湾放棄論は地政学上あり得ないのでは。米国と中国の経済的・軍事的な力が逆転すれば分からないが。それ故、中国へも早く経済制裁を課すべき。南シナ海で明らかな国際法違反を犯しているので。ロシア同様の扱いとすべき。

日経ビジネス記事

北朝鮮の核・ミサイル開発を巡って、米国と中国が駆け引きを激化させている。こうした中、もう一つの大国であるロシアの行動が重要性を増す。ロシア人研究者らは、北朝鮮の核開発に理解を示す。「核保有国として認めることが現実解」との見解も浮上する。

北朝鮮の金永南・最高人民会議常任委員長は8月、イランのハッサン・ロウハニ大統領の2期目の就任式に出席した。注目されるのは、はるかに便利な北京経由便ではなく、モスクワ経由便を利用してイラン入りしたことだ。

極東ロシア・ウラジオストクに入港する万景峰号。ロシアは北朝鮮への融和姿勢を取っている。今春から初めて、客船の定期便を運航させ始めた(写真=ロイター/アフロ)

観測筋によれば、金氏がモスクワ経由便を選んだのは、以下の2つのことを象徴している。一つは、同盟関係にある中国との関係が核開発を巡って冷え込んでいること。もう一つは、北朝鮮が、長く友好関係にあるロシアとの関係を一層強化しつつあることだ。

北朝鮮が意識をロシアに向け始めた変化は、急速に進む北朝鮮の核・ミサイル開発を抑制する策を探る米国の外交官にとって突破口となる可能性がある。

ロシアの力を測る米国

「北朝鮮は中国に怒りを感じている。中国との間にある政治的パイプの多くが凍結されたり極端に狭められたりしている」。在北朝鮮ロシア大使を務めた経験を持つワレリー・スヒニン氏はこう指摘する。同氏はロシア関係者の中でも北朝鮮問題に最も詳しい人物の一人だ。

北朝鮮政府関係者は過去1年の間にロシアをたびたび訪問し、モスクワで開かれた式典にも何度か出席した。西側諸国の観測筋によれば、北朝鮮内で同国の政府関係者がロシア人外交官と接触した回数は、中国人外交官と接触した回数より多いという。

トランプ政権は中国の姿勢にいら立ちを感じている。8月5日に国際連合が採択した新たな北朝鮮制裁を支持したものの、その経済的な影響力──北朝鮮の総貿易高の9割を対中貿易が占める──を駆使して金正恩委員長に圧力をかけようとしないからだ。

ロシアとの関係が悪化しているにもかかわらず米国は、ロシアが北朝鮮に揺さぶりをかけることに期待を寄せ始めている。

西側のある外交官は「米国は、ロシアが北朝鮮と接触し影響力を行使するかどうかを見極めようとしている」と語る。同外交官によれば「3月から4月にかけて(レックス)ティラーソン米国務長官は、中国が北朝鮮と接触し、影響力を発揮するかどうかを確かめようとしていた。今は同じことをロシアに対してしている」

ティラーソン氏は8月、中国とロシアについて同時に言及し、どちらも北朝鮮と「極めて太い対話のチャンネルを持っている」と述べた。

同氏は「両国は北朝鮮に対する影響力を行使できる」との考えを示したうえで、「その影響力をもって、北朝鮮を対話の場に引き出すことができると期待している」と語った。

2017年4月の軍事パレードに登場した「火星12号」とみられるミサイル。北朝鮮はこの型のミサイルを米グアム近海に撃つ準備をしていると警告した(写真=AP/アフロ)

数カ月にわたって米朝の緊張が高まる中、ロシアは、中立の立場にあることを示そうとしてきた。米朝が非難の応酬をエスカレートさせることの危険性を双方に対して警告している。加えて、北朝鮮が核とミサイルの実験を、米国が米韓合同軍事演習を同時に停止し、対話による解決の道を探るよう、中国とともに働きかけている。

前出の西側外交官は「米国は2つのことを見守っている。まずは北朝鮮がポジティブな反応を示すかどうか。そして、北朝鮮が強硬姿勢を崩さない場合に、同国を交渉のテーブルに着かせる上でロシアがどの程度の影響力を有しているかだ」との認識を示した。

制裁決議支持で影響力が低下

対北朝鮮制裁決議を議論する安保理を前に話をする、ロシアのウラジーミル・サフロンコフ国連次席大使(左)と米国のニッキー・ヘイリー国連大使(写真=Pacific Press/Getty Images)

危機を回避するためにロシアは重要な役割を果たすことができる──との米国の期待を、ロシアは冷ややかに受け止めている。

ロシアの専門家らは慎重だ。先の国連安全保障理事会で、北朝鮮を対象とする新たな制裁決議を支持したため、北朝鮮に対してロシアが辛うじて保持していた影響力も弱まってしまったと考えている。この決議には中国も賛成した。

かつて、ロシアと北朝鮮は同盟関係にあった。しかし2000年、両国はソ朝友好協力相互援助条約に代えて、ロ朝友好善隣協力条約に調印した。ソ朝友好協力相互援助条約には、北朝鮮が第三国から武力攻撃を受けた場合にロシアが支援するという条項が含まれていた。ロ朝友好善隣協力条約はそうした条項を盛り込んでいない。

スヒニン氏は「このため、北朝鮮はもうとっくにロシアに期待などしなくなっている。とはいえ、北朝鮮は少なくとも我々(編集部注:ロシア)を非難したり、我々を怒りの応酬に巻き込んだりはしないだろう。だが北朝鮮は直近の声明で、米国に屈し米国を支持したとしてロシアを初めて名指しで非難した」と指摘する。

スヒニン氏はこう続ける。国連の制裁決議を支持したことに対し、ドナルド・トランプ米大統領が中国とロシアに公式に謝意を表明したことが、とりわけ事態を悪化させた。「こうした状態が続けば、北朝鮮はロシアとも距離を置くだろう。そして孤立感を深め、揚げ句の果てに核開発計画を一層推進することになる」

恐らく最も重要なことは、北朝鮮の核開発計画を巡る行き詰まりについて、ロシアは米国と全く異なる評価を下していることだ。「ロシア政府は、こうした危機の責任は依然として米国にあると見なしている」。カーネギー・モスクワ・センターでアジア問題を研究するアレクサンドル・ガブエフ氏はこう捉える。

ロシア政府の担当者らは、北朝鮮が核兵器の開発に執念を燃やすのは、孤立した弱小国がより強力な敵から自国を守るための試みとして理解できると見ているのだ。

ロシアは北朝鮮が核保有国であると公式には認めていない。したがって国連による対北朝鮮制裁を支持している。しかしながらロシアの外交関係者やアナリストのほとんどは、この危機を緩和する唯一の現実的な選択肢は、北朝鮮をインドやパキスタンと同様に位置づけたうえで交渉に臨むことだと主張する。公式には認めないものの、事実上の核保有国として扱うわけだ。この際、北朝鮮に武装解除を求めないことも条件となる。

ソウルにある韓国国民大学のアンドレイ・ランコフ教授は危機解決に向けた選択肢を探る論評の中で、こう論じた。「米国をはじめとする関係国は、北朝鮮に核を放棄させるという実現不能で達成し得ない目標を追い求めるよりも、不快ではあっても現実に達成可能な目標に静かに転換すべきだ。すなわち、北朝鮮に小規模の安定した核兵器の保有を認めるという目標だ」

スヒニン氏は「北朝鮮の目標は、インドやパキスタン、イスラエルと同様に今や核兵器を保有している事実を、たとえ非公式であっても、すべての人々に受け入れさせることにある。彼らはそうした状態を達成したいと思っている」と分析する。

「北朝鮮がロシアや中国に脅しをかけるとは思えないが、このプロセスがさらに広がらないようにすることが重要だ。核がこれ以上拡散しないよう保証する必要がある」(同氏)

Kathrin Hille and Katrina Manson ©Financial Times, Ltd. 2017 Aug.17

阿部記事

パナマは台湾との外交関係を断絶し、「一つの中国」原則を受け入れて中国と外交関係を樹立した。共同記者会見で握手するパナマのイサベル・サインマロ副大統領兼外相(左)と中国の王毅外相(2017年6月13日撮影)。(c)AFP/GREG BAKER〔AFPBB News

北朝鮮によるICBM開発の進展で緊張が高まる朝鮮半島をめぐって、米朝の駆け引きに関心が集まっている。はたして、北朝鮮によるグアム島近海へのミサイル発射があるのか、そうした場合、トランプ米政権は何らかの軍事的対抗手段を採りうるのか。事と次第では日本にも北朝鮮からミサイルが飛んでくる可能性さえある中で、予断を許さない状況が続いている。

しかし、それが東アジアのもう1つのフラッシュポイント(引火点)である台湾海峡に与える影響についてはあまり議論されていないようだ。

今も変わらない米中の構造的な対立要因

1950年6月25日に朝鮮戦争が勃発すると、トルーマン政権下の米国は即座に参戦を決定するとともに、台湾海峡に第7艦隊の艦船を差し向けて海峡の「中立化」を図った。建国間もない中国が朝鮮戦争勃発をチャンスと見て台湾に武力侵攻し「中国革命」を完遂すること、また、逆に台湾に逃れた国民党政府が大陸反攻に打って出ることを抑制するための措置である。それは、東アジアで同時に2つの武力紛争に関わりたくない米国にとって合理的な措置でもあった。

言うまでもなく現在の状況は当時とは大きく異なる。最も大きく異なる点は、米国と中国とが経済的に深い関係にあり、おいそれと対立を先鋭化させるわけにはいかないことである。

朝鮮半島における米中の利害が対立したにせよ、朝鮮半島危機がそのまま台湾海峡危機に連動する要素は直接的にはないと言っていいだろう。

しかしながら、当時も今も変わらない構造的な対立要因を抱えていることは指摘しておかなくてはならない。すなわち、まず共通項として、南北朝鮮、中台という「分断国家」の「統一」問題が絡むことと、そして、そこにおいて米中関係が決定的役割を担っていることである。朝鮮戦争が事実上の米中戦争であったように、台湾海峡危機も事実上の米中対峙の構図で理解できる。

朝鮮半島においては、中国側にとって米軍の撤退による「中立化」の下での統一が望ましい。韓国に米軍が配置されている現状が続く限り、バッファー(緩衝)としての北朝鮮の存続が必要となる。たとえ北朝鮮が中国のコントロールの効かない核とミサイルを開発・保有しても、その状況は変わらない。

台湾について言えば、中国は常に台湾を併呑し「統一中国」を完成させたいというモチベーションがある。その統一スキームは香港返還で適用された「一国二制度」である。だが、民主主義体制下にあり住民が指導者を選出できる台湾で、それが受け入れられる余地はないと言ってもよいだろう。中国の平和的手段による「統一」政策が奏功せず 台湾が将来的な「統一」を拒絶した場合には、中国は武力行使も辞さないとしている。

その一方で米国にとっては、朝鮮半島ではいまだ朝鮮戦争は終結しておらず、「休戦協定」によって現状が維持されている状況である。米国は韓国との相互防衛条約によって北朝鮮の軍事的脅威に対抗するための兵力を配置してきた。北朝鮮の核保有と米国本土に届くICBMの配備は、北東アジアの緊張を高めるばかりか、米国本土の安全をも脅かすことになるため容認できない。米国の目標は、北朝鮮の核・ミサイル開発の「凍結」、さらには「放棄」による朝鮮半島の非核化である。だが、それを北朝鮮に受け入れさせるのはもはや見込めない状況となっている。

また、米国の台湾に対する立場は、1979年の「台湾関係法」によって規定されている。つまり、正式な国交はないものの、台湾の安全が脅かされる事態を米国は座視せず、台湾の防衛に必要な武器を供与するとしている。米国はいわゆる「一つの中国」政策を採っているが、中国が言う「台湾は中国の不可分の領土である」という主張を受け入れているわけではなく、中国(中華人民共和国)の主権が台湾には及んでいないという認識から、上記の「台湾関係法」を維持してきた。

微妙なバランスを保つ米中の政策

こうした米中の朝鮮半島と台湾に関する政策の違いは、微妙なバランスによって安定が保たれていると言ってよいだろう。

皮肉なことに、南北朝鮮も中台も、「和解」によって「統一」が実現するような事態になれば、在韓米軍は撤退することになり、「台湾関係法」は無効化する。米国の韓国、台湾への安全保障コミットメントは、南北朝鮮の軍事的対立の継続、台湾における一貫した「中国との一体化への忌避」によって支えられているのである。

この微妙なバランスを朝鮮半島に当てはめてみよう。もし米国が、北朝鮮の核・ミサイルの脅威を除去することについて外交的にも軍事的にも有効な手を打てないままでいた場合、北朝鮮を「核保有国」として認めたうえで「米朝平和協定」を結んで「敵対関係」を解消し、国交を樹立することによって「北朝鮮の脅威」を解決するべきだという議論が出てくるだろう。北朝鮮が脅威でなくなれば、在韓米軍を維持する必要もなくなるから撤退が現実のものとなる。期せずして中国が望む「米軍がいない朝鮮半島」が実現することになる。

台湾の場合はどうか。2008年から2016年まで8年間続いた馬英九政権のもとで、中台関係は大きく改善を見せた。中台がともに「一つの中国」を共通認識として共有する(「92共識」)合意がその背景にあった。中台FTAであるECFA(「経済協力枠組み協定」)が締結されて中台の経済関係が進展する中で台湾の中国への依存度が拡大し、また中台直航便の開設とその拡大が両岸の人的往来を飛躍的に高めることになった。

その結果、米国内で台頭してきた議論が「台湾放棄論」であった。中台の事実上の「一体化」が進み、中台間での武力衝突の可能性が低下するなかで、もはや米国による台湾への防衛コミットメントは必要なくなったという認識がその背景にあった。

しかし、台湾内部では、逆に台湾人としての自己認識、すなわち「台湾人アイデンティティー」が高まっていった。中台が「経済的には接近したが、心理的には遠ざかる」状況下で、「92共識」を認めない蔡英文政権が成立したことで、中台関係は政治的に冷却化していった。その結果、米国で「台湾放棄論」は影を潜めたものの、中台間では公式の対話ルートが途絶えたまま、中国からの観光客の減少による台湾観光業へのダメージが継続している。パナマの台湾との断交に見られるように、中国による台湾への外交的締め付けも強まっているのが現状である。

朝鮮半島危機と台湾問題を連動させるトランプ政権

そうした中で、トランプ米政権には、むしろ朝鮮半島危機と台湾問題を積極的にリンケージさせるような行動が見られる。

例えば今年4月、トランプ大統領は習近平主席をフロリダの別荘に招き、中国に北朝鮮への圧力強化を求めたが、それが期待外れと分かると、6月末に台湾向けの14億ドルの武器売却を決めた。

また、ほぼ同時期に、台湾への米海軍艦船の定期寄港を認める内容を盛り込んだ2018年国防授権法案が米上院軍事委員会で承認された。朝鮮半島危機が米中の齟齬を拡大していけば、おのずと台湾海峡に影響が及ぶことになる。

朝鮮半島と台湾海峡の両方に安全保障上深くかかわるわが国としても、主体的に何ができるか、何をするべきか、が問われることになる。陸上配置のイージス・システム(イージス・アショア)導入はその一環であり、防衛力強化は必然の選択であろうが、外交的に何らかの役割を見出せなければ、日本は東アジア国際政治の場でますます「縁辺化」されてしまいかねない。

樋口記事

北朝鮮の国防科学院化学材料研究所を視察した金正恩朝鮮労働党委員長(撮影日不明、2017年8月23日配信)。(c)AFP/KCNA VIA KNS〔AFPBB News

朝鮮戦争を引き起こしたのは誰か?

忘れてはいけない。朝鮮戦争を引き起こした張本人は、北朝鮮の金日成である。

朝鮮半島は、第2次大戦末期に、対日参戦の目的で満州から朝鮮半島に入ったソ連赤軍によって北半分を占領された。その急進撃に触発された米軍は、沖縄から軍を進め仁川に上陸して朝鮮半島の南半分を占領した。

その後、1948年8月に米国の影響下で大韓民国(韓国)が建国されたのに対抗して、同年9月、占領中のソ連赤軍の強い指導により、「傀儡国家」として朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)がつくられた。

北朝鮮の憲法、立法・行政・司法制度、朝鮮労働党による一党独裁の政治制度、軍事機構、治安機関などの国家機構は、すべてソ連体制の複製であり、朝鮮民主主義人民共和国という国名もロシア語からの直訳であった。

そしてソ連は、満州で抗日ゲリラ活動に従事していたソ連赤軍大尉・金日成を北朝鮮の初代指導者に指名した。

全朝鮮に施行されるべきとされた北朝鮮の1948年憲法(朝鮮民主主義人民共和国憲法)は、南北朝鮮の統一を積極的に促進するという政治目標を掲げ、北朝鮮体制を南朝鮮に拡大させる、いわゆる「赤化革命」を正当化するものであった。

それが、「北朝鮮の野心的な指導者」と見られていた金日成の企てによって、ソ連のスターリンと中国の毛沢東を動かし、ソ中ともに冒険的な南進武力統一を承認したことから、1950年6月に始まり、1953年7月に休戦となった朝鮮戦争へと突入したのであった。

北朝鮮軍が38度線を越えて仕かけた戦争に対して、国連安保理は北朝鮮の行為を国連憲章違反と非難し即時停戦を求めたが、事態が深刻化したため、米軍を主体とした国連軍の創設が決議された。

国連軍後方司令部(キャンプ座間、2007年に横田飛行場へ移転)が置かれた日本は、その活動を後方から支援した。

なお、国連軍創設決議は、当時、国連の中国代表権(安保理の議席)は中華民国政府(台湾)が有し、そのことに抗議してソ連が安保理の採決をボイコットしたことによって成立したものであった。

一方、戦後の復興期にあったソ連のスターリンは、米国との衝突が第3次大戦へと拡大するのを極度に恐れ、武器の提供などの兵站支援と航空機の派遣にとどめた。

スターリンによってアジアの個別的問題に対する主導的役割を認められた中国は、そのまま放置すれば米国が隣人となりかねない朝鮮半島の地政学的重要性を深刻に受け止め、中国人民義勇(志願)軍として約500万人とも言われる大兵団を参戦させた。

北朝鮮をソ連と中国が支援し、韓国を米国と日本が支援した朝鮮戦争の対立構造は、今日に至ってもそのまま続いており、周辺各国の戦略的利害が交錯する朝鮮半島の地政学的宿命を反映しているとの見方が成り立とう。

北朝鮮の最高目標は金王朝の存続と南北統一

北朝鮮は、思想、政治、軍事、経済などすべての分野における社会主義的強国の建設を基本政策として標榜している。

また、金日成、金正日、金正恩と3代にわたって金一族の世襲による権力移行体制が固定化されてきたことから、世襲制の専制君主国家、すなわち金王朝の存続が最高の国家目標となっていることは疑う余地がない。

一方、南北(祖国)統一は、北朝鮮にとっても、また韓国にとっても至上の政治目標となっており、民族共通の歴史的悲願と言えよう。

しかし、北朝鮮が武力統一を目指した朝鮮戦争は、半世紀以上にわたって同じ民族を分断する悲劇を生み出した。

そして、休戦状態とはいえ、現在も非武装地帯(DMZ)を挟んで、両軍併せて150万人ほどの地上軍が対峙する厳しい現実を突きつけており、南進武力統一(暴力革命)や赤化革命を標榜し、力によってその実現を目指してきた北朝鮮の統一戦略には、特段の注意を払わざるを得ない。

北朝鮮の1998年憲法では、南北(祖国)統一について、以下のように記述されている。まず、その「序文」では、

 偉大な領袖金日成同志は、民族の太陽であり、祖国統一の救いの星である。金日成同志は、国の統一を民族至上の課題としてかかげ、その実現のためにあらゆる労苦と心血をすべて捧げた。

 金日成同志は、共和国を祖国統一の強力な堡塁として固める一方、祖国統一の根本原則と方途を提示し、祖国統一運動を全民族的な運動に発展させて、全民族の団結した力で祖国統一偉業を成就するための道を開いた。

また、「第1章政治」の第9条では、

 朝鮮民主主義人民共和国は、北半部において人民政権を強化し、思想、技術、文化の3大革命を力強く繰り広げ、社会主義の完全な勝利を成し遂げ、自主、平和統一、民族大団結の原則から祖国統一を実現するために戦う。

このように、序文では、朝鮮戦争を引き起こした金日成を「祖国統一の救いの星」と奉り、「祖国統一偉業を成就するための道を開いた」偉大な領袖として神格化している。

また、第9条では、「北半部において人民政権を強化し、・・・社会主義の完全な勝利を成し遂げ、自主、平和統一、民族大団結の原則から祖国統一を実現するために戦う」として、北朝鮮を革命基地と位置づけ、韓国を吸収統一する方針を堅持しており、現在でも北朝鮮の南北統一戦略は、基本的に建国当初と何ら変わるところはない。

つまり、北朝鮮の南北統一戦略の目標は、朝鮮半島全体に金王朝を拡大し、その支配を永久化して絶対安定を実現するものと見ることができるのである。

北朝鮮は、長年にわたって韓国に対して侵入、殺傷、破壊、瓦解工作を繰り広げてきた。そして、陸海からのルートを使ってスパイを送り込み、韓国内に地下党組織を構築し、韓国内の民衆革命の機運を醸成しつつ「決定的な時期」を待って蜂起の機会を窺ってきた。

その中で、特に学生、労働者、宗教界などサークル形態の小組織をターゲットに宣伝・煽動活動を着実に拡大してきた。

最近では、韓国海軍哨戒艦「天安」号撃沈事件(2010年3月)や延坪島(ヨン・ピョンド)砲撃事件(2010年11月)など、北朝鮮は北方限界線(NLL)を紛争地化し、韓国を軍事的に圧迫するとともに、韓国内の思想対立を拡大させ、また、戦争の恐怖を呼び起こして対南交渉を優位に導こうと画策してきた。

また、金大中政権以降、「太陽政策」を利用した「わが民族同士」という戦略が提起され、「南北和解」を演出することで米韓の対立を煽り、米軍撤退と有事における米軍介入の阻止を狙った工作が展開された。

顧みれば、北朝鮮は、韓国大統領官邸である青瓦台襲撃事件(1968年)、米国情報収集艦プエブロ号拿捕事件(1968年)、朴正煕大統領襲撃事件(1974年)、アウンサン廟爆破事件(1983年)、KAL爆破事件(1987年)など、対南工作のために重大事件をたびたび引き起こし、国際社会に大きな衝撃を与え、世界を震撼させた。

日本関連では、対南工作の「側面部隊」と位置づけられる朝鮮総連を活用し、日本を経由した工作戦術が駆使されてきた。

特に、1970年代から1980年代にかけて北朝鮮の工作員や「よど号グループ」などによって、多数の日本人が、日本から極秘裏に北朝鮮に拉致され、いまだに拉致被害者の救出は果たされていない。

本当に危うい韓国の政治社会状況

2012年の韓国大統領選挙では、右派・セリヌ党の朴槿恵(パク・クネ)氏の得票率は51.6%、金大中大統領による太陽政策(包容政策)を継承した盧武鉉前大統領の秘書室長を務め、北朝鮮に対する融和政策を支持する左派・民主統合党の文在寅(ムン・ジェイン)氏は48.0%であった。

朴槿恵大統領の当選は僅差で、北勢力の浸透の深刻さを物語る選挙結果であった。

その朴槿恵大統領も、弾劾裁判の結果、2019年3月に失職した。その後の大統領選挙では、前述の文在寅(「共に民主党」)氏が得票率41.08%を獲得し、旧与党「自由韓国党」の洪準杓候補(同24.3%)、中道野党「国民の党」の安哲秀候補(同21.41%)を破って大統領選に勝利した。

ロウソク・デモによって朴槿恵大統領を弾劾裁判に追い込んだ左派勢力は、その手法の成功体験に味をしめて、盛んにデモを繰り返している。

一方、右派勢力は、朴槿恵大統領の罷免が妥当だとした憲法裁判所の判断を合憲だとは認めず、大韓民国憲法精神で保障した「国民抵抗権」を根拠に、弾劾反対団体が集まった「国民抵抗本部」を発足し、大統領弾劾棄却のための国民総決起運動として、同じく街頭に出て気勢を上げている。(中央日報日本語版(2017年2月19日11時59分)から要約加筆)

前2回の大統領選挙の結果などから見ても、韓国の世論は左右に分かれて大きく対立し、一種の内乱状態に陥っていると言っても過言ではなく、北朝鮮の対南工作から見て、韓国の政治社会状況は極めて危うい局面に立たされている。

北朝鮮最大の障害は米国:核ミサイルは「最後の切札」

韓国に親北・左派の政権が誕生した現在、北朝鮮の最高目標である金王朝の存続と南北統一の最大の障害となるのは、米韓相互防衛条約に基づいて陸空軍を中心に約1.7万人の在韓米軍を維持する米国の存在である。

米国は、湾岸戦争(1991年)やコソボ紛争(1999年)において、通常戦力の優越を存分に見せつけ、ロシアや中国などはその実力に驚嘆し、あるいは恐れ慄いたと伝えられている。

なかでも北朝鮮は、依然として大規模な軍事力を維持しているものの、旧ソ連圏からの軍事援助の減少、経済の不調による国防支出の限界、韓国の防衛力の急速な近代化といった要因によって、在韓米軍や韓国軍に対して通常戦力において著しく劣勢に陥っているため、「従来の通常兵器を使った“戦場”で米国に直接対抗するのは不可能だ」との教訓を得ていることは間違いないところであろう。

このため、北朝鮮は、核兵器などの大量破壊兵器や弾道ミサイルの増強に集中的に取り組むことにより劣勢を補おうとしている。

逆に、通常戦力において圧倒的な優越性を保持している米国の立場から見れば、その優越性が核の拡散を助長するジレンマを引き起こす要因となっている。

すなわち、現状において、米国の圧倒的な通常戦力の優越に対抗できる国はなく、その反動で、米国の通常戦力に対抗し、それを相殺する「最後の切札」としての核兵器の価値と有用性を高めてしまった。

そして、比較的安価かつ容易に開発でき、決定的な破壊(損害付与)力を持ち、政治的恫喝手段としての役割も果たす核兵器の開発が促進され、米国の核戦力削減の方向に逆らうかのように、さらなる核の拡散を引き起こすという負のスパイラルに陥っている。

金正恩は、2013年の党中央委員会総会で父・金正日の「先軍政治」から転換して、核武力建設と経済建設の「併進路線」を提案し、2016年5月はじめ、35年ぶりの朝鮮労働党大会(第7回)でも同路線の堅持を確認した。

金正恩は、「わが民族の自主権と生存権を守るための唯一の方途は今後も、核戦力を質量共により強化して力の均衡をとることである」と述べたが、これは、金王朝の存続には核兵器が不可欠である、と宣言したことに等しい。

同時に、北朝鮮のGDP(国内総生産、約400億ドル=約3兆9000億円、韓国銀行等推計)は日本の茨城県内総生産規模と見られ、その行き詰まった国家経済を立て直し、破綻国家や中国の属国に陥らないためには、軍事予算の削減は避けて通れない。

このため、その矛先は自ずと大規模で、老朽化が著しい通常戦力の削減に向けられることになり、併せて国家運営に及ぼす軍の影響力を極力低下させようというのが「併進路線」の狙いであろう。

つまり、北朝鮮は、国際社会からの非核化の要求を尻目に、今後一段と核兵器の地位と役割を押し上げ、その建設と運用に大きく依存することは間違いない。

北朝鮮は、核の力を背景に、ぎりぎりまで緊張を高めて相手に譲歩を迫る瀬戸際外交を常套手段としている。

また、米国の圧倒的な通常戦力の優越に対しては、核による恫喝・使用(エスカレーション)によって脅威を相殺するものと見られ、わが国の安全保障にとっても「眼前の差し迫った脅威」、また中長期的な脅威として重大な影響を及ぼすことになる。

北朝鮮による核ミサイル危機をいかに乗り越えるか?

北朝鮮は、2017年3月6日、4発の弾道ミサイルを同時に日本海に向けて発射し、そのうちの3発は日本の排他的経済水域(EEZ)に落下した。

翌7日の朝鮮労働党機関紙・労働新聞は、発射を行った部隊について「有事の際には在日米軍基地を攻撃する任務を持つ部隊」と説明し、日米同盟下の日本攻撃の可能性について初めて言及した。

北朝鮮が、日本を攻撃する「能力」のある弾道ミサイルを多数保有し、日本をターゲットとして使用する「意思」を明示したことは、わが国安全保障上の死活的課題として再認識させ、核抑止の強化のための国を挙げた総合的な対策の必要性と緊急性をいやが上にも高めることとなった。

北朝鮮は、スカッドER(射程約1000キロ)、ノドン(同約1300キロ)、テポドン1(同約1500キロ)に新型ミサイル・ムスダン(約2500~4000キロ)を加えた多種の中距離弾道ミサイルを開発し、日本から西太平洋・グアムまでの攻撃能力を強化している。

米国防情報局(DIA)は、2017年7月、北朝鮮が弾道ミサイルに搭載可能な小型核弾頭の生産に成功したとの機密分析をまとめた、と報じられている。

弾道ミサイルの実戦配備に必要な弾頭部の大気圏再突入技術を保有しているかどうかは不透明だが、多くの専門家は来年末までにこの技術を獲得する可能性があるとみている。日本政府も北朝鮮の核兵器について、17年版防衛白書で「小型化・弾頭化の実現に至っている可能性が考えられる」と分析している。

そこで、本論のまとめとして、米国、日米共同および日本独自の政策を「懲罰的抑止」と「拒否的抑止」の観点から考察し、わが国の核抑止のあり方について述べることにする。

(1)米国および日米共同の政策

わが国にとって最大の問題は、北朝鮮の核ミサイル開発によって、東アジアにおける米国の「地域的核抑止」が無効化しているのではないか、との深刻な懸念が生じていることである。

では、それを打ち消し、米国の核抑止の実効性を高めるにはどうしたらいいのか?

わが国は、「非核3原則」によって米国が保有する抑止機能をいたずらに縛っており、安全保障上の大きな損失となっている。

わが国および周辺地域における核抑止を確保するには、米空母や潜水艦、あるいは戦略爆撃機の運用上の要求による核の持ち込みを認めなければならない。また、情勢緊迫時には、目に見える形で、戦域レベルのパーシング・ミサイルシステムの日本配備を求めることによって抑止効果も格段に高まろう。

つまり、「非核三原則」のうち「持ち込ませず」を廃止して「非核二原則」にするか、その見直しが不可能ならば、有事(情勢緊迫時)を例外として、核の持ち込みを可能にする政策の柔軟な運用が欠かせない。

日米両政府は、2015年4月に新「日米防衛協力のための指針」(ガイドライン)を了承した。その中で、平時から緊急事態までのあらゆる段階における自衛隊・米軍の活動に関連した協議・調整のための「同盟調整メカニズム」の設置などに合意し、11月初めから運用を始めた。

今後、同メカニズムにおいて「核抑止の強化」を協議の主要テーマとして取り上げ、共同核抑止戦略を構築するとともに、統合幕僚監部と太平洋軍司令部の間で組織される「共同運用調整所」などを常設して、共同の情報収集、警戒監視および偵察(ISR)活動を継続し、弾道ミサイル発射などの情勢変化に即応できる態勢を確立することが必要である。

米国は、航空自衛隊車力分屯基地(青森県)および米軍経ヶ岬通信所(京都府)に最新型ミサイル防衛用「Xバンド・レーダー」を配備している。また、米軍の「ペトリオットPAC-3」が嘉手納飛行場と嘉手納弾薬庫地区に配備されている。

わが国にこの種の弾道ミサイル防衛(BMD)施設やシステムを配備することは、日本のみならず周辺地域の核抑止・対処体制の強化に資するものである。併せて、いわゆる「トリップ・ワイヤー」として米国の拡大抑止の信頼性・信憑性を高めるうえでも有効であり、今後、このような施策の積極的な拡大が望まれる。

(2)日本独自の政策

現在、わが国の拒否的抑止力としては、イージス艦とペトリオットPAC-3があるが、その能力は質量ともに限られている。また、国家機能や重要インフラ、国民や産業基盤を防護・維持する「損害限定戦略」の一環としての国土強靭化が進んでいない。

一方で、報復的抑止力は、米国の力に全面的に依存しており、わが国の核抑止は極めてバランスを欠いた不十分な態勢にあると言わざるを得ない。

核の脅威を抑止するには、基本的に核に頼るしかない。その厳しい現実の中で、わが国が自ら報復的抑止力としての核開発に踏み出せば、米国や周辺諸国をはじめとする国際社会の複雑な反応を引き起こすとともに、国論の分裂を見るのは火を見るよりも明らかである。

わが国の核政策は、軍事戦略上の合理性・妥当性を超えて、政治外交上の実現の困難さが重く圧しかかかり、結論の見えない論争に巻き込まれること必定である。

他方、限定的ながら、通常戦力である自衛隊の統合力をもって報復的抑止力を創出することが可能である。

つまり、国際法上認められた主権国家の当然の権利としての「自衛権」の範囲で、自衛隊に北朝鮮や中国のミサイル基地を叩く敵基地攻撃の任務権限と地中貫通型ミサイル、ステルス・無人対地攻撃機、特殊作戦部隊などの能力を政治決断によって付与すればよいのである。

さらに、地域的抑止の限界を認識する米国が同盟国・友好国に求めているように、拒否的抑止力を可能な限り自力で賄う努力が不可欠である。

昭和50年代に「日本防衛ハリネズミ論」が提唱されたことがあるが、その現代版は、さしずめ「日本列島電子戦バリアー構想」であろう。

喫緊の課題は、北朝鮮(そして中国)の弾道ミサイルによる飽和攻撃なので、日本の全領域を覆うように電子戦バリアーを張り巡らせて、北朝鮮の核ミサイルの能力を可能な限り無効化あるいは盲目化することである。

わが国には優れた電子戦の技術・能力があり、その装備化を可能とする小型高出力電源の技術も保有している。

つまり、拒否的抑止力の実効性を高めるためには、「日本列島電子戦バリアー」の展開を基盤として、既存のMDに加え、イージス・アショア(イージス艦MDシステムの地上配備型)や電子戦・サイバー攻撃、電磁砲・電磁波弾、さらにはレーザやレールガンなどによる新たなBMDシステムを導入し、多重多層のBMDシステムを構築して質量両面からわが国のBMD能力を強化しなければならない。

併せて、核弾頭の運搬手段には、弾道ミサイルのみならず、巡航ミサイルや有人・無人の航空機などが使用されるため、航空を対象とする防空と巡航・弾道ミサイル防衛を一体化した統合防空・ミサイル防衛(IAMD)システムの開発が待たれる。

また、核攻撃に対する自衛隊の施設、装備、C4ISRおよび部隊行動時の強靭性・抗堪性の強化には、格別の対策を施さなければならない。

同時に、わが国の国家機能、重要インフラや産業基盤の維持ならびに国民生活保護のための民間防衛(国民保護)の強化は不可欠であり、そのため、地下シェルターなどの避難用施設・場所、食料・水・医薬品等の生活必需品、輸送交通の確保などの対策を講じることも大きな課題である。

国土強靭化は、災害対策のみならず、安全保障・防衛上の「損害限定戦略」と一体化した総合的な国家施策として強力に推進することが重要である。

わが国は、世界で唯一の被爆国であり、そのために、他のどの国よりも自国の核抑止に真剣に取り組むことを当然の責務として、何としても北朝鮮による核ミサイルの危機を乗り越えなければならない。

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