『米軍準機関紙が断言「米軍は北朝鮮を攻撃しない」 ソウルにおけるメガシティ戦闘で泥沼化の恐れ』(6/16JBプレス 部谷直亮)、『試射と侮ってはいられない北朝鮮の地対艦ミサイル 国産「巡航ミサイル」の開発に成功か』(6/15JBプレス北村淳)について

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6/17渡部亮次郎氏メルマガの記事で、櫻井よしこ氏が週刊新潮6/15号に寄稿したもの。

世界の安定剤、マティス長官の安全観

毎年シンガポールで開催される「アジア安全保障会議(シャングリラ・ダ イアローグ)」は、世界の安全保障戦略で何が一番の問題になっているかを知り、大国の思惑がどのように交錯しているかを知る、極めて有意義な場である。今年は米国防長官、ジェームズ・マティス氏が演説を行った。

トランプ大統領が、ロシア問題で追及され、身内のジャレッド・クシュ ナー大統領上級顧問までもが疑惑を取り沙汰されている。そうした中、軍人として培った揺るぎない安全保障観を披露したマティス国防長官は、国際社会の安定装置として機能しているかのようだ。

6月3日に行われた氏の演説の内容は予想を超える率直さだった。敢えてポイントを2つに絞れば①アジアの同盟諸国への固い絆の再確認、②中国には断固たる姿勢を取る、ということになるだろう。

まず、アジアの安全保障についてマティス氏は、アメリカが如何に国際法順守を重視しているかを強調した。

アジアの安全保障が国際法に基づいて担保されるべきだとの考えは、世界恐慌とそれに続く第二次世界大戦の凄まじい体験から学びとった教訓だと、マティス氏は強調する。氏は演説で人類の戦いの歴史にさり気なく触れたが、蔵書6000冊を有し、その大半が戦史に関する著作だといわれる氏の、国家と国家の摩擦としての戦いや、その対処の原理についての、奥深い理解を感じさせる。

氏は語っている。国の大小、その貧富に拘らず、国際法は公平に適用されるべし、と。海の交通路は全ての国々に常に開かれ、航行及び飛行の自由が保たれるべきだという価値観は、時代を通して守られてきたとマティス氏は語る。その自由で開かれた世界を、アメリカはこれからも担保するのだと。

同じ趣旨を、表現を変えながら、マティス氏は繰り返した。講演録を読むと、国際法の重要性を説いた段落が幾つも続いている。

「航行の自由」作戦

それらの発言が中国に向けられているのは明らかである。マティス氏がこれ程、或る意味で執拗に、国際法や航行の自由について語ったのは、アメ リカは北朝鮮問題で中国に協力を求めても、南シナ海、東シナ海、台湾などの他の重要な地域問題で従来の基本的立場を譲るつもりは全くないと示しているのである。マティス氏は、中国について前向きに丁寧に言及しながらも、要所要所で釘をさしている。

「トランプ政権は、朝鮮半島の非核化に向けての国際社会の努力に中国が コミットメントを再確認したことに安堵している」「(4月の米中首脳会 談で)習近平主席は、全ての関係国が各々の責任を果たせば、朝鮮半島の核の問題は解決されるはずだと語った」と、紹介したうえで、マティス氏は述べた。

「自分は習近平主席に全く同意する。大事なのは、そうした言葉は行動によって本物であることが確認されなくてはならないということだ」

中国に強い口調で迫っているのである。中国よ、言葉はもういい。実行によって証明せよ、制裁を強化せよと要求しているのである。

約30分の演説の中で、マティス氏は南シナ海の問題についても、中国の建設した人工島を批判しながら言及した。主旨は、①中国の行動は国際社会の利益を侵し、ルールに基づく秩序を揺るがすもので、受け入れることはできない。②人工島の建設とその軍事化は地域の安定を損ねる。

氏の一連の発言に、質疑応答で、多くの質問者が率直な謝意を表した。 国防長官の発言は「希望をもたらす」とまでコメントした人がいた。膨張する中国が恐れられ、嫌われているのとは対照的に、強いアメリカが望まれているということだ。

トランプ政権発足以来約4か月が過ぎた5月下旬、ようやく南シナ海で「航行の自由」作戦を行った。北朝鮮問題で中国に配慮して南シナ海とバーターするのではないかという懸念の声さえささやかれていたときに行われた「航行の自由」作戦は、オバマ政権のときには見られなかったアメリカの断固たる意志を示すものだった。

スプラトリー諸島のミスチーフ礁に建設された人工島の近く、中国が自国の領海だと主張している12カイリ内の海で、「航行の自由」作戦は、中国 への「事前通告」なしに行われた。オバマ政権時代に4回行われた「航行の自由」作戦と、今回のそれには全く異なる意味があった。今回は、通常は公海で行う海難救助訓練を行ったのだ。

「米中接近」はない

中国の主張など全く認めないという姿勢を示したのだが、この訓練には中国も反対しづらい。なぜなら、それは「人道的な」海難救助だったからだ。

非常に慎重に考え抜かれた緻密な作戦を決行したことでアメリカは、人工島を建設しても中国は領海を拡大することはできないと示したのだ。アメリカの考えは、まさに常設仲裁裁判所がフィリピン政府の訴えに対して出した答えと同じものだった。

もうひとつ、非常に大きな意味を持っているのが、マティス氏がパートナー国との関係を継続していくとする中で、インド、ベトナムなどに続いて台湾に触れたことだ。

「国防総省は台湾及びその民主的な政府との揺るぎない協力を継続し、台湾関係法の義務に基づいて、台湾に必要な防衛装備を提供する」と、マ ティス氏は語った。

トランプ大統領が北朝鮮の核及びミサイル問題で中国に配慮する余り、南シナ海や台湾への配慮が薄れて、台湾も事実上見捨てられるのではないかという懸念さえ、生れていた。そのような疑念をマティス氏の発言はさっ と拭い去った。

米国防長官としては異例のこの発言と、それを支える戦略的思考が、トランプ政権の主軸である限り、台湾や日本にとっての悪夢、「米中接近」 はないと見てよいだろう。

会場の中国軍人が直ちに質問した。「中国はひとつ」という米中間の合意を覆すのかと。マティス氏は「ひとつの中国」政策に変更はないと答えたが、蔡英文総統は独立志向が高いと見て、台湾に軍事的圧力を強めるようなことは、アメリカが許さないという強いメッセージを送ったということだ。

アメリカの政策は読み取りにくい。マティス発言に喜び、トランプ発言に 不安を抱く。トランプ氏は基本的にマティス氏らの進言を受け入れているかに見えるが、究極のところはわからない。だが、マティス氏ら手練れの兵(つわもの)が政権中枢にいる間に、わが国は急いで憲法改正などを通して、国の在り方を変えなければならないと、心から思う。>(以上)

Facebookからの記事。蔡英文台湾総統(日本語と英語で表記されていました。中国人が漢語を使えと文句を言っていましたが)

台湾はアメリカ、日本とほかの国からの相変わらずの支持に対して、誠に感謝しています。これからも引続き地域の平和と安定のために、各国と一緒に頑張りたいと思います。

23:01 – 2017年6月15日

それに対し西村幸祐‏ 氏のリツイート

台湾の蔡英文総統の非常に重要なツイートだ。台湾が自由と民主主義と独立の危機に瀕している事。ヒタヒタと中国共産党の覇権主義の侵略意思が台湾に忍び寄っている事を、世界中の人々に気づいて欲しい、注視して欲しいという心からの叫びである。日本は台湾と軍事も含めた関係強化に直ちに取り組むべき。>(以上)

台湾に対して日本政府は口先、形だけの支援に止まっているようにしか思えません。中国が外交・経済で台湾の締め上げを図っている時ですので、台湾と一緒にASEAN諸国へのインフラ投資ができるように手を差し伸べる等やってほしいし、2020年東京オリンピックも台湾名義での参加もできるようにしてほしいです。中国が東京オリンピックをボイコットするなら、それもOKです。国連に代わる新たな組織、G7+NATOを中心とした組織を作るように動いていけば良いのでは。国連は第二次大戦国の戦勝国の組織で、産み落とされた瞬間から不純なものがあり、敵国条項がその最たるものでしょう。今やP5の拒否権で機能不全に陥っています。そんな組織を有難がって崇拝するほど愚かなことはありません。

米軍の北朝鮮攻撃はいろんな人がいろんな意見を言っています。鈴置高史氏や青山繁晴氏、山口敬之氏は「あるかも知れない」派で、「何時攻撃するかは分からない」と(6月~8月、秋以降とかあります)。これに対し部谷氏は「ない」と言いきっています。確かに民間人の犠牲が多ければ多くなるほど攻撃は躊躇せざるを得ないでしょう。でも、日本だって300万人の犠牲を第二次大戦で払っています。犠牲者数だけで戦争が起きないとの論理展開は出来ないのでは。況してや自国への脅威が増大するとなれば、他国への犠牲には目を瞑り、「今の内に」と考えるのはおかしくないでしょう。善悪の問題ではありません。戦争が悪とすれば、世界で戦争が起きる筈もない。日本や韓国にとっては堪ったものではありませんが。

6/13のNHKニュースに依れば、米国議会の公聴会でダンフォード統合参謀本部議長は「(朝鮮で)戦争になればわれわれが勝利することは疑いがないが、この6、70年間では見たこともない犠牲者が出る」と述べました。ただ、戦争はしないとは言っていません。可能性はあるという事です。日本はその備えがキチンとできているのかを問うべきです。「ない」と言って切り捨てるのでもなければ、「あるある」と言って不安を煽るのではなく、起きた時の対処を万全にするようにすべきと考えます。官邸・自衛隊・警察・消防・海保・市町村・民間がどう動くべきかを予行演習しなければ咄嗟には動けません。そうしなければ、起きたときに犠牲者が増えることが予想されます。

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20170613/k10011016181000.html?utm_int=news-new_contents_list-items_001

やはり、日本の防衛体制は、今までの延長線で考えることはできないという事です。中国が陰に日向に北朝鮮を支援してきたのは事実なので、日本も米国に核保有(できなければニュークリアシエアリング)やレールガンやレーザー研究を一緒にやるくらいの話を持ち掛けませんと。そのためには、江崎道朗氏が言いますように、防衛費をGDPの2%まで上げませんと、トランプは相手にしてくれないでしょう。

部谷記事

韓国・ソウル。米軍が北朝鮮を攻撃すると北朝鮮軍が一気にソウルに侵入してくる可能性がある(資料写真)

今年の春、米軍の北朝鮮への先制攻撃の可能性を報じたメディアやジャーナリストは今やすっかり口を閉ざしてしまった。中にはいまだにそうした見解を述べる論者も散見されるが、現実的にはその可能性はきわめて薄い。

5月21日、米軍の準機関紙「military times」は、北朝鮮への先制攻撃はリスクが高く、トランプ政権は攻撃を考えていないとする記事を掲載した。記事の概要は以下のとおりである。

*  *  *

トランプ政権は、北朝鮮への軍事的選択肢はないと考えている。

確かに北朝鮮の現政権によるミサイル実験は頻繁さを増し、金正恩は米西海岸への核攻撃能力獲得に近づいている。だが、米国の軍高官は、先制攻撃が大惨事を招き、最悪の場合、10万人の民間人を含む大量の死者を生み出すと懸念している。

まず、国境地帯の花崗岩の山岳地帯に秘匿された北朝鮮の砲兵部隊は、砲撃から数分で山中に秘匿できる。また、韓国のソウルは非武装地帯から約56キロメートルにある人口2500万人の大都市である。シンクタンクの分析では、170ミリ自走砲、240ミリおよび300ミリの多連装ロケットシステムがソウルを攻撃できる。特に300ミリロケットがソウルに向けられた場合、都市火災が発生する。数百万人の民間人がソウルから南下して鉄道・航空・道路における大混乱をもたらし、大規模な人道危機を引き起こす。

元航空戦闘軍団司令官のハーバート・カーライル元空軍大将は、「米韓連合軍が北朝鮮を倒すのは間違いないが、韓国の民間人犠牲者を減らすのに十分な迅速さで北朝鮮軍を機能停止に追い込めるかが最大の問題だ」と警鐘を鳴らす。専門家たちも、ひとたび通常戦争が始まれば戦いは数カ月以上続くとみている

米軍が特に懸念しているのが、ソウルの一角に北朝鮮軍が侵入する事態である。北朝鮮軍は非武装地帯に多数掘削した秘密トンネルから1時間に2万人を侵入させることができる。これは「恐るべきメガシティ戦闘」を引き起こす可能性がある。カーライル元空軍大将は「ソウルのどこかに北朝鮮軍が侵入すれば、航空戦力の優位性は相対化される。メガシティ戦闘では航空戦力は極めて限定的な役割しか発揮できない」と指摘する。

米海兵隊の活動も困難である。第1の理由は、海兵隊は朝鮮戦争以来、大規模な強襲揚陸作戦を行っていないこと。第2は、現在西太平洋に展開中の5~6隻の水陸両用艦艇では、上陸作戦に必要な1~1.7万人の戦力を運べないこと。第3は、北朝鮮の沿岸防衛能力は1950年とは比較にならないほど向上し、何百マイル先の艦艇や舟艇を破壊できることだ。

しかも、開戦となれば、米軍の地上基地が打撃を受ける可能性があるため、利用可能なすべての米空母がこの地域に吸引されることになる。陸空軍なども同様で、全世界における米軍の即応能力を低下させるリスクがある。また、ヘリテージ財団研究員のトム・スポウラー元陸軍中将は「戦争が始まると米陸軍は旅団戦闘団を新たに編成しなければならない。だが、イラクにおける経験で言えば2年間は必要だ」と指摘する。

*  *  *

考えれば考えるほどリスクが高い先制攻撃

以上の記事から分かるのは、元軍人たちは我々が考える以上にリスクを重く見ているということだ。

元米軍人たちの指摘は、(1)海兵隊の脆弱性に伴う上陸作戦の困難性、(2)頑丈な花崗岩と複雑な地形を利用した砲兵陣地の強靭さと威力、(3)メガシティ戦闘、(4)戦力の枯渇、に集約できる。

海兵隊の脆弱性は言うまでもないが、(2)(3)(4)については改めて説明が必要だろう。まず(2)についてだが、地形・地質の有効な活用は沖縄戦における日本軍の粘り強さを振り返れば、その効果がよく分かる。沖縄戦闘時の日本軍は、沖縄の硬い珊瑚岩と起伏の激しい地形を利用して砲兵陣地(いわゆる反斜面陣地)を形成して、航空・火砲の圧倒的な劣勢下でも米軍を苦しめた。

(3)の「メガシティ戦闘」は、2014年頃から米陸軍が強調している概念である。米陸軍は、2030年には全世界人口の6割がメガシティ(人口1000万以上の大都市圏で、世界に27か所存在)に居住する時代になるとして、メガシティ戦闘に必要な将来の米陸軍の戦力構成やドクトリンの検討を続けている。

米陸軍は、メガシティでは民間人への配慮や戦力の分散が余儀なくされるため、作戦が極めて複雑になる他、敵戦力が建物や住民に紛れ込むことで航空戦力が活用できず、相手の情報も手に入らないため、大苦戦が予想されるとしている。イラク戦争時のファルージャ攻防戦や近年のイスラム国との各都市における死闘を思えば、元軍人たちがソウルに北朝鮮軍の部隊が侵入すればやっかいなことになると考えるのも当然だろう。

(4)については、要するに北朝鮮問題以外にも米国の抱える脅威はたくさんあるということだ。米国は既にイスラム国との戦い、アフガンでの戦い、テロとの戦い、サウジアラビアとイランの覇権争いに巻き込まれている。米国としては、すでに炎上しているそちらの「戦線」にこそ、まず戦力を割く必要がある。特にイスラム国打倒はトランプ政権の主要公約であり、これを成し遂げねば北朝鮮どころではない。

実際、トランプ政権のシリアへの肩入れはさらに深まっている。6月13日、米軍はついに「南シリア」に初めて長距離砲兵部隊を展開させた。しかも、国防総省のスポークスマンたるライアン・ディロン大佐は、記者たちに対して「これは親アサド勢力の脅威に備えるためである。今後もそのために米軍の現地におけるプレゼンスを拡大していく」と述べた。親アサド勢力とは、イランが支援する武装勢力のことであり、これは単にシリアへの深入りだけではなく、イランの代理勢力と米軍の戦闘すら秒読みに入ったことを意味する。要するに、米イラン関係の悪化の第一歩になりかねないということだ。

このように、考えれば考えるほど、北朝鮮への先制攻撃は軍事的リスクが高く、それは外交的・政治的リスクに直結しているのである。もちろん、政治的に「詰み」に近づきつつあるトランプ大統領が北朝鮮攻撃を決断するといった可能性もあるが、その場合でも、現時点では中東でさらなる軍事行動の方がはるかに安易かつ安全なのは言うまでもない。やはり、北朝鮮への先制攻撃の可能性は「現時点」では低いだろう。

北村記事

北朝鮮軍の新型ミサイルを搭載した装軌TEL(地上移動式発射装置)

韓国軍合同参謀本部によると、6月8日早朝、北朝鮮軍が元山付近から地対艦ミサイルと思われる飛翔体を数発発射した。ミサイルは日本海上空を200キロメートルほど飛翔し公海上に落下したとのことである。

今回のミサイル連射に対してアメリカ政府はさしたる反応は示しておらず、国連安全保障理事会も新たな制裁などに関する動きは見せていない。日本政府も「我が国の安全保障に直ちに影響を与える事態ではない」との声明を発し、「アメリカ、韓国と連携しながら・・・」といったお決まりの対処策を述べたにとどまった。

国産巡航ミサイルの開発に成功か

今回の地対艦ミサイル発射試験に関して、北朝鮮の国営メディア(KCNA)は「新型の巡航ロケットは海上の目標を精確に探知し命中した」と伝えており、「(北朝鮮)攻撃のために接近を企てる敵の軍艦を、地上から攻撃する強力な手段である」と豪語している。

韓国軍や米軍関係ミサイル専門家たちの分析のように、北朝鮮メディアが「巡航ロケット」と発表した今回の飛翔体は沿岸防備用巡航ミサイル(CDCM:いわゆる地対艦ミサイル)であることは間違いない。今年に入って北朝鮮は弾道ミサイルの試射を10回繰り返してきたが、今回は初めて巡航ミサイルの試射を行ったことになる。

これまでも、北朝鮮軍がソ連や中国から手に入れた「シルクワーム」(北朝鮮バージョンはKumsong-1、Kumsong-2)と呼ばれる地対艦ミサイルを装備していたことは知られていた。ただし、それらの最大飛翔距離は、長くとも、せいぜい120~130キロメートル程度と考えられていた。

それらに加えて北朝鮮はロシアからKH-35U地対艦ミサイルを手に入れたことも確認されていた。このKH-35Uは最大射程距離が300キロメートルに達すると言われている極めて強力な対艦巡航ミサイルである。そして、KH-35Uをベースに北朝鮮が改良を加えてKumsong-3という新型地対艦ミサイルを造り出しているといわれていた。

今回試射された地対艦ミサイルは、飛翔距離が200キロメートル程度であったことから、KH-35UあるいはKumsong-3である可能性が高い。とすると、北朝鮮軍は国産の巡航ミサイルの開発にも成功し、その配備も開始したと考えることができる。すなわち、これまでは北朝鮮のミサイル戦力イコール弾道ミサイルという図式で考えられてきたが、それに巡航ミサイルも加えなければならないことになったのだ。

中国と類似するミサイル戦力強化の過程

北朝鮮のこのようなミサイル戦力強化の流れは、中国と類似している。

中国人民解放軍も当初は、アメリカに到達する核弾道ミサイル(ICBM)の開発に全力を投入していた。それが達成されると、ICBMだけでなく中距離や短距離の弾道ミサイルの高性能化を目指した。そして弾道ミサイル戦力がある程度強化されると、それまでも地道に研究開発を続けていた巡航ミサイルの開発生産に本腰を入れ始め、アメリカのトマホークミサイルを凌駕する長距離巡航ミサイルの開発を目指した。

現在は、「中国だけが開発に成功した」と豪語する対艦弾道ミサイルをはじめ多種多様の弾道ミサイル、それに地上・空中・海上・海中の様々なプラットフォーム(地上移動式発射装置、駆逐艦、潜水艦、航空機など)から発射される多種多様の長距離巡航ミサイルを合わせて2000発以上保有する長射程ミサイル大国になっている。

もちろん、北朝鮮と中国では国力が圧倒的に違うため、北朝鮮軍が中国軍のような超強力な長射程ミサイル戦力を手に入れるには至らないであろう。しかし、丸腰に近い状態の日本を脅かす程度のミサイル戦力を手にすることは可能である。

既に北朝鮮軍は日本各地を射程圏に納めた弾道ミサイル(ノドン、スカッドER)を、おそらくは100程度は手にしている。中国ミサイル戦力の進化過程を当てはめると、北朝鮮軍の次のステップは弾道ミサイルの性能アップと長距離巡航ミサイルの開発ということになる。

そして、最近連続して実施された弾道ミサイル試射によって、北朝鮮の弾道ミサイル技術が目に見えてレベルを上げていることが明らかとなった。そして、今回の地対艦ミサイルの試射により、北朝鮮製が国産巡航ミサイルの開発に本腰を入れ始めたことも明らかになった。

ミサイル技術者たちによると、巡航ミサイルの場合、射程距離を伸ばすだけならば、技術的に困難ではないという。つまり、今回北朝鮮が試射した巡航ミサイルは200キロメートルほど飛翔したが、これを400キロメートル飛ばすということ自体はそれほど困難ではないというのだ。

もちろん、ただ長距離を飛ばせれば長射程巡航ミサイルが出来上がりということにはならない。400キロメートル、そして1000キロメートル、さらには2000キロメートルと攻撃目標が長射程になれば、そのようなはるか彼方の攻撃目標を的確に捕捉する技術や、長距離にわたって海面すれすれを飛翔させる技術、攻撃コース(注)の制御技術など、さまざまな最先端技術が必要になる(注:巡航ミサイルは弾道ミサイルのように一直線に飛翔するのではなく飛行機のように転針を繰り返して目標に接近する)。そのため、北朝鮮技術陣にどれだけの力量があるのかによって北朝鮮軍の巡航ミサイルの開発速度は左右される。だが、そう遠くない将来には、北朝鮮から直接日本を攻撃することができる長距離巡航ミサイルが誕生することになるであろう。

進化しているミサイル発射装置

ミサイルそのものに加えて、アメリカ軍関係ミサイル専門家が注目しているのは、試射に使われているミサイル発射装置である。

ここのところ北朝鮮がミサイル試射を行う際に、これ見よがしに公表しているのが「TEL」と呼ばれる地上移動式発射装置である。かつては、中国から輸入したTELしか確認できなかったが、今回の地対艦ミサイルだけでなく最近発射した「北極星2号」中距離弾道ミサイルや「新型スカッド」短距離弾道ミサイルなども装軌式(戦車のようなキャタピラーで動き回る方式)のTELが用いられた。

中国から北朝鮮が手に入れたTELはすべて装輪車両であったため、装軌TELは北朝鮮国産ということになる。北朝鮮の道路の大半(97%)は未舗装道路であるため、装軌TELのほうが使い勝手が良いと思われる。その上、装軌TELの場合、海岸や荒れ地それに山岳地帯など、移動発射地域が大幅に広がるという利点もある。

このように、発射装置に関しても、北朝鮮のミサイル戦力の強化には警戒を払わねばならない。

北朝鮮軍の弾道ミサイルを搭載した装軌TEL

北朝鮮軍の地対艦ミサイルと装軌TEL

北朝鮮軍長距離巡航ミサイルへの備えも必要

菅官房長官や稲田防衛大臣が述べたように、射程距離200キロメートル程度の地対艦ミサイルを北朝鮮軍が手にしても「日本の国防が直接脅威を受けるような問題ではない」ことは確かである。

しかしながら、北朝鮮が“ミニ中国”のようなミサイル戦力強化の途を歩んでいることは間違いない。そして戦力強化は中国同様に一定レベルに達すると加速度的になされる可能性が高いため、対日攻撃用弾道ミサイルの性能が強化され、対日攻撃用の長距離巡航ミサイルが誕生することも否定できない。

日本国防当局は、中国人民解放軍の対日攻撃用ミサイル戦力に対して完全に後手に回っている。少なくとも北朝鮮軍の対日攻撃用ミサイル戦力の脅威からは、国民を守り抜く対抗戦略を構築し、防御態勢を固めなければならない。

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