『米国の恫喝に欧州はどう反応するのか 新国務長官「防衛費を増額しないなら欧州の同盟を見直す」』(3/2日経ビジネスオンライン 熊谷徹)について

3/5日本経済新聞電子版によると米中軍拡に現実味 中国国防費が初の1兆元超え 

【北京=永井央紀】中国の2017年予算案の国防費が初めて1兆元(約16兆5千億円)を超えるのが確実となった。5日に開幕する全国人民代表大会(全人代、国会に相当)の傅瑩報道官が記者会見で今年の伸び率が7%前後になると明らかにした。ふんだんな予算で海洋進出を支える海空軍の強化を急ぐ構えで、米トランプ政権との軍拡競争が現実味を帯びてきた。

傅氏は記者会見で「中国の国防費は国防の必要性と経済情勢から検討される」と説明した。中国の国防費はかつて21年連続で10%以上増えていたが、景気減速にともない16年から2年連続で伸び率が1ケタになった。ただ、規模はすでに日本(約5.1兆円)の3倍以上で、今年の増加分だけで650億元(約1兆円)となり、軍備拡張の基調は変わっていない。

国際社会の厳しい視線を意識してか、傅氏は北大西洋条約機構(NATO)が加盟国に国防費を国内総生産(GDP)の2%以上とするよう求めていると指摘したうえで「中国の国防費はGDP比1.3%の水準を保っている」と説明。「米国は中国に追い越されるのが心配かもしれないが、米国との力の差は非常に大きい」とも強調し、中国の国防費増の正当性を訴えた。

中国軍内では国防費の伸びを再び2ケタ台に戻すよう求める声は多い。「台湾問題は武力統一を目指す段階に入っている」(軍の元高官)などの強硬論も根強く、予算増への圧力となっている。こうした強軍路線に一層の拍車をかける可能性があるのは「米史上最大級の軍備増強」に決意を示すトランプ米大統領の存在だ。

トランプ政権は3月中旬に示す2018会計年度(17年10月~18年9月)予算案で、国防費を540億ドル(約6兆円)増額して6千億ドル規模とする方針。中心となるのは核戦力の拡大で、大陸間弾道ミサイル(ICBM)の更新などにあてるとみられる。トランプ氏は2日にも建設中の空母上で演説し、空母増強などの「海軍再建」に意欲を示した。

中国はこれまでも着々と海洋進出を進めてきた。全人代開幕を3日後に控えた2日、過去最多13機の軍用機が宮古島と沖縄本島の間の宮古海峡上空を抜けて西太平洋で遠洋演習を実施した。中国から離れた地域での演習は年々増加し、昨年12月には中国初の空母「遼寧」が太平洋から南シナ海に抜け、台湾を一周した。中国周辺への米軍の展開を阻む「接近阻止・領域拒否(A2AD)」戦略の一環とされる。

海空軍の武器装備の充実も続く。関係者によると昨年末、ロシアの最新鋭戦闘機「スホイ35」4機が中国に初納入された。今後さらに20機が中国に到着する。大連や上海では国産空母を建造中だ。

国際社会からは中国の発表する国防費が不透明だとの懸念が強い。空母など武器装備の研究開発費は国防費とは別枠の予算に計上され、実際の軍事関連費は公表数字の2倍近いとかねて指摘されている。中国の公表数字への信ぴょう性の低さが周辺国や米国の警戒を強め、各国の軍拡を一段と招く構図となっている。>(以上)

中国の国防費は公表されていない方が多いと言われています。日経記事の2倍ではなく、3倍くらいと言われて来ました。総額が増えていますので、そこまで伸ばすことができなくなったのかもしれませんが。世界平和にとって最大の脅威は中国であることは間違いないでしょう。ロシアは飛び地のカリーニングラードに核弾頭搭載可能な弾道ミサイルを配備しましたが、領土的野心は見せていません。中国が日本に照準を合わせている核ミサイルを配備していることを考えますと、米国が核報復を確約していれば大騒ぎしなくても良いのでは。まして米国とベルギー、ドイツ、イタリア、オランダはニュークリアシエアリングしていて、日本より進んでいます。ただ、ポーランドの核武装したいという気持ちも頷ける話ですが。

米国のアジア回帰の為には、欧州は自力で防衛できるようにしてほしいと思います。米国も二正面作戦は取れないでしょう。中国と対峙する前に、北の問題を解決するようです。3/5の宮崎正弘氏のメルマガでもティラーソン国務長官の訪日でそのように書いています。いよいよ金正恩政権が打倒されようとしています。前にも書きましたが、攻撃は在韓米軍の家族を沖縄に移動させてからになると思います。朝鮮総連傘下の人間や、韓国籍の在日であってもスリーパーがいます。破壊工作を仕掛けてくるかもしれません。治安維持に市民も協力しないと。韓国からの難民が出て来たら、彼は「日本も韓国の領土」と言いだすに決まっています。済州島に押し返しましょう。ビザも復活させてほしいです。大使がいなくても領事業務はできるでしょう。

http://melma.com/backnumber_45206_6496194/

中国は経済拡大と共に軍拡をして来ました。独裁国家ですからできることですが、これを止めるためには経済崩壊させるしかありません。このままいくと、2045年を待たずに、米国の国防費を追い越します。盗みが得意ですので、技術的にも追いつく可能性があります。時間の利益を中国に与えてはなりません。南シナ海では基地の撤去はしないでしょう。確実に米中衝突はします。その前に経済制裁して、中国国内で国民の不満を共産党に向けることができれば。評論家は経済の面だけ見て米中両国に打撃になるとしかコメントしませんが、軍事を支える経済に打撃を与えませんと。中国に代わる外国企業を探す努力を米国企業にさせれば良いだけです。

記事

軍事演習を行うドイツ連邦軍の兵士たち。(撮影・熊谷 徹)

ミュンヘン中心部の高級ホテル「バイリッシャ―・ホーフ」。ここで毎年2月に開かれる「ミュンヘン安全保障会議(MSC)」は、民間団体が主催するイベントだが、ドイツ政府の首相をはじめ、主要国の外務大臣、国防大臣らが一堂に集うユニークな催しだ。比較的狭いホテルなので、通路は立錐の余地もないほど混み合うことがある。参加者は特定の条約、協定について合意しなくてはならないという、時間的なプレッシャーにさらされていないため、比較的自由に意見を交換できる利点もある。

注目されたペンス演説

今年2月17~19日に開かれたMSCは、内外のメディアや安全保障関係者から特に大きな注目を浴びた。昨年11月にトランプ政権が誕生してから初めてのMSCであり、同政権の副大統領マイク・ペンスが参加したからである。彼が米国外で演説するのは初めてのこと。

トランプは選挙期間中に、「NATOは時代遅れだ」と言い切っていた。「トランプの大統領就任とNATOの運命/atcl/opinion/15/219486/120600023/」でお伝えしたように、この発言は、欧州に強い不安と動揺をもたらしている。欧州諸国の指導者たちは、「米国は将来も欧州の防衛に関わるのか。それとも、欧州から徐々に手を引こうとしているのか」という問題に強い関心を示している。

特にロシアが2014年にクリミアに戦闘部隊を送って強制併合、ウクライナ東部の内戦にも介入するなど、不穏な動きを強めている。ロシアと国境を接するバルト3国やポーランドでは、80年代の東西冷戦の時代に似た不安感と緊張感が高まっている。MSCで、米新政権のナンバー2が、NATOの未来についてどのような方向性を示すのかが注目されたのは、そのためだ。

「欧州諸国は約束を守れ」

ペンスが2月18日にミュンヘンで発信したメッセージは、独首相アンゲラ・メルケルら会議場を埋めた欧州諸国の政治家たちの胸に、安堵と不安が混ざった感情を生じさせたに違いない。

ペンスは、トランプのような露骨な表現を避け、「米国はNATOを力強く支援する。大西洋を挟んだ軍事同盟への関与は揺るがない」と述べた。紋切り型の表現ではあるが、少なくとも米国は、欧州との軍事同盟に関わり続けるという言質を与えた。このことは、メルケルら欧州諸国からの参加者に、一抹の安堵感を与えただろう。

だがペンスは、彼のボスからのメッセージを伝えることも忘れなかった。それは、「米国は防衛ただのりをもはや許さない」という意思表示だ。

ペンスは「北大西洋条約は、加盟国が攻撃を受けた場合、他の国が結束して反撃するという集団的自衛権の原則に基づいている。この原則は、加盟国が応分の貢献をすることも義務付けている」と述べ、「NATO加盟国は、約束した防衛費をきちんと負担することを約束した」と欧州諸国に矛先を向けた。NATO加盟国は、2006年の会議で、「2024年までに、国内総生産(GDP)に対する防衛支出の比率を、2%に引き上げる」と合意している。

その上でペンスは「この約束は、あまりにも長い間、大半のNATO加盟国によって無視されてきた。この約束を達成したのは、まだ数か国にすぎない。欧州の大国の中にも、防衛費を本格的に増やす努力を始めていない国もある。この約束不履行は、軍事同盟の基盤を侵食している」と批判した。米国の本音は、「NATOへの関与を続ける」という外交辞令ではなく、むしろこちらの方だろう。

ドイツに向けられた矛先

ペンスは名指しを避けたが、「防衛費を増額するための真剣な努力を始めていない大国」とは、欧州最大の経済パワー・ドイツのことである。NATOの統計によると、2016年のドイツの防衛支出の対GDP比率は1.19%で、2%の目標から遠く離れている。英国(2.21%)やフランス(1.78%)にも水を開けられている。ペンスは「我々は、同盟諸国がこの目標を達成することを期待している。今や、本格的な行動を始める時だ。欧州の防衛には、米国だけでなく欧州の貢献も欠かせない」と釘を刺した。

ドイツの防衛支出

(出所:ドイツ連邦政府)

つまりペンスの発言は、「ドイツなどが応分の防衛負担を怠り、欧州の防衛について米国に過度に依存しているのは、もはや許せない。米国が将来NATOに関与し続けるのは、他のNATO加盟国が防衛費増額の約束を守った場合のみだ」というメッセージを含んでいるのだ。

MSCの会場でペンスの演説に対する拍手は、少なかった。彼の発言は、外交辞令のオブラートに包まれていたとはいえ、しょせんはトランプによる欧州批判の繰り返しである。このため欧州諸国の外務大臣や国防大臣たちは、喝采を送る気にならなかったのだろう。

MSCでメルケルは、「防衛支出の増額は、徐々に行うべきものであり、効率性についても配慮しなくてはならない。安全保障に貢献するのは、防衛支出の増額だけではない。発展途上国への援助や教育水準の改善、難民の援助も安全保障にとって重要だ」と反論。議論の焦点を防衛支出だけに絞り込むトランプ政権の姿勢を、間接的に批判した。

同時にメルケルは「対GDP比で2%」の目標達成に向けて努力する方針を強調するとともに、「欧州はイスラム過激派の脅威とロシアの野心に直面しており、米国の軍事力を必要とする」と述べ、欧州が独力ではこの2つの試練に対応しきれないという本音を漏らした。

集団的自衛権の原則から逸脱?

ペンスは3日後にブリュッセルのNATO本部で事務総長イェンス・ストルテンベルグと会談。その後の記者会見で、ミュンヘンでの演説よりも率直な表現を使い、「防衛支出の目標を達成しない同盟国に対する、米国市民の忍耐は、永遠には続かない」と述べている。彼は、そうした国に対して米国がどのような措置を取るかについては、明言を避けた。

ペンスに先駆けて、2月15日にNATO本部を訪れた米国の国防長官ジェームズ・マティスは、ペンスよりも単刀直入に「他のNATO加盟国が防衛費増額の努力を怠るならば、米国は欧州防衛への貢献を減らす」と語った。これは、欧州に対する「恫喝」もしくは脅迫とも取れる発言だ。

欧州の加盟国が最も強く懸念しているのは、北大西洋条約の第5条、つまり「NATO加盟国は、他の国に対して行われた軍事攻撃を、自国への攻撃とみなす」という原則が、トランプ政権によって揺るがされることだ。トランプがNATOを批判して以降、「欧州諸国は、対GDP比2%の目標を達成していない国が攻撃されても、米国は自国への攻撃と見なさず、反撃しないのではないか」という懸念を強めている。

この点について、NATOの事務総長ストルテンベルグは、ペンスとの共同記者会見で「北大西洋条約の第5条が定める集団的自衛権について、(防衛費負担などの)条件を全く付けていない」と釘を刺している。この発言は、ロシアからの脅威に最も直接的に曝されているバルト3国やポーランドが抱く不安を緩和するためだろう。

独の2024年までの目標達成は不可能

さてペンスに批判されたドイツにとって、2%の目標達成は容易なことではない。ドイツはロシアがクリミアを併合した2014年以来、防衛支出を毎年引き上げている。その増加率も、年々増えている。2017年には防衛支出を前年比で7.9%と大幅に増やした。その伸び率は、GDP成長率を上回る。

だがストックホルム国際平和研究所(SIPRI)が2015年の各国の防衛支出を比較した統計によると、ドイツの支出は393億9300万ドルで、米国(5960億ドル)の約15分の1に過ぎない。

主要NATO加盟国の防衛支出の対GDP比率(2016年)

(出所:NATO)

NATOの統計によると、2016年のドイツの防衛支出の対GDP比は、NATO加盟国28カ国中で第16位(2%の目標に達しているのは、米国、ギリシャ、英国、エストニア、ポーランドの5カ国だけ)。つまりNATO加盟国の82%は、2%の目標に達していない。

ドイツの防衛支出の対GDP比率

(出所:ドイツ連邦政府・NATO)

ドイツの2%達成が難しい理由は、経済規模が大きいことだ。2017年のドイツの防衛支出は、370億ユーロ(約4兆4400億円)。2016年のドイツのGDPは、3兆1330億ユーロ(約375兆9600億円)。GDPの2%は、627億ユーロ(約7兆5192億円)である。

つまりドイツが米国に対する約束を果たそうとすると、防衛支出を現在より257億ユーロ(約3兆840億円)も増やす必要がある。約70%もの増額だ。欧州最大の経済パワーといえども、これは難題である。ドイツが7年以内、つまり2024年までに、2%の目標を達成するのは不可能であろう。

米国への依存からの脱皮を目指すドイツ

トランプの圧力は、欧州の安全保障地図を塗り替え、米国からの「乳離れ」を促す可能性がある。今欧州の安全保障関係者の間では、「米国がNATOへの関与を減らす場合に備えて、我々は防衛能力を高める可能性がある」という意見が強まっている。

ドイツのジグマー・ガブリエル外務大臣は、MSCの直前に行ったドイツの保守系日刊紙フランクフルター・アルゲマイネ紙(FAZ)とのインタビューの中で「欧州諸国は、いつまでも米国に防衛してもらえばよい、自分たちは何もしなくてよいと長い間思い込んできた。だがそうした時代は、完全に終わった。我々は、強い欧州を作らなければならない。そうしなければ、トランプ、プーチン、中国から一人前のパートナーとして見られることはない」と断言している。

彼は「米国がリーダーとしての役割を果たさなくなるのであれば、欧州は防衛力の強化という、長年の課題を実行に移さなくてはならない」と述べ、米国との新たな関係を模索することになるだろうと指摘した。

さらに過激な意見も出ている。ポーランドの元首相ヤロスワフ・カチンスキーは、今年2月初めに「米国が欧州を防衛しないとしたら、欧州は独自の核抑止力を持つべきだ」と発言した。

かつてソ連の支配下に置かれた中東欧諸国は、米国に対して、ロシアの脅威から自分たちを守る守護者の役割を期待してきた。中東欧諸国が、独仏とは異なり、ブッシュ政権のイラク侵攻を支援したのは、そのためである。だが中東欧諸国の期待は、トランプ政権の誕生で大きく揺らいでいる。「米国の核の傘は、本当に頼りになるのか?」。カチンスキ―の発言の背景には、NATOの将来について不透明感が強まったことに対する、中東欧諸国の焦燥感がある。

平和の配当を享受できる時代は終わった

MSCの2日後、ドイツ連邦政府は連邦軍を増強すると発表した。連邦軍の将兵の数は現在17万8000人。これを2024年までに2万人増やして19万8000人とする。ドイツは東西冷戦の終結後、徴兵制を廃止した他、将兵の数を年々減らしていた。欧州の中央に位置するドイツは、冷戦終結による「平和の配当」を最も享受してきた国の1つである。

だがロシアだけではなく、大西洋の反対側の米国、そして中東や北アフリカでも、地政学的な不透明感が強まりつつある今、ドイツは「米国のいない西側陣営」の中で指導的な役割を果たすよう、EU諸国から求められる可能性がある。ドイツが平和の配当を享受していればよい、居心地の良い時代は、終わったのだ。

2017年は、ドイツそしてEU諸国が米国からの自立を目指し始める、重要な分水嶺となるかもしれない。

欧州の対米戦略に注目するべきだ

我々日本人は、米国の豹変に直面した欧州人たちの焦りと不安感を、対岸の火事として眺めているだけでよいのだろうか。SIPRIによると、日本の2015年の防衛支出はGDPの1.0%で、ドイツよりも低い。409億ドルも防衛に支出しているのに、対GDP比率が低いのは、経済規模が大きいためだ。つまり日本も、ドイツと同じ悩みを抱えている。

万一トランプ政権が、日本に対しても防衛費増額を要求してきた時、我が国はどう答えるのか。欧州とアジアの地政学的状況は大きく異なるとはいえ、欧州が考える対米戦略の中に、我々が学べる内容もあるはずだ。本シリーズでは、今後も欧州諸国の動きについてお伝えしていくつもりだ。

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