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『「湿地回復」へ改良ポプラ300万本を全量伐採 中国にはびこる上意下達の画一処理モデル』(1/12日経ビジネスオンライン 北村豊)について
1/13看中国<任意抓人 赴中国旅游需“提高警觉”(组图)>「中共当局は、旅行中の米国人やカナダ人を拘束、出国禁止や逆に追放とかをする。スマホ等で中共を批判しただけでも、国の安全と言う名目で」。中国への旅行は危険です。最も危ないのは麻薬をスーツケース等に忍び込まされて逮捕されること。最悪死刑です。罪をでっち上げることは、中共は得意ですから。日本人は平和ボケしていてそんなことは起こりえないと思っているでしょうけど、腹黒い連中ですから、何が起きても不思議ではありません。リチャードギアの映画「北京の二人(レッドコーナー)」を見れば、嵌められる怖さが分かります。
https://www.secretchina.com/news/gb/2018/01/13/846851.html
1/13看中国<衛星發射殘骸墜廣西 火光四射傳出巨響(組圖)>「中国の人工衛星が広西省で打ち上げられたが失敗、残骸が落下。地方政府の発表ではケガや死亡した人はいないとのことだが、疑問との話です」。天空1号が地球に落下、中国は没問題と言っていますが、制御不能で落ちて来るのですから、日本にも落下の可能性があり、有問題でしょう。中国の言っていることが嘘でないことを祈ります。
https://www.secretchina.com/news/gb/2018/01/13/846850.html
https://www.excite.co.jp/News/chn_soc/20180108/Recordchina_20180108013.html
http://www.sankei.com/world/news/171013/wor1710130069-n1.html
1/13NHKニュース21時37分<中国の歴史教科書 「文化大革命」を大幅縮小へ 批判高まる
中国の中学生の歴史教科書が改訂され、中国を混乱に陥れた政治運動「文化大革命」を扱う内容が大幅に縮小される見通しとなったことから、インターネット上で、共産党は歴史の教訓を十分に伝えるべきだという批判の声が高まっています。
改訂されるのは、中国の教育省が監修し、ことし3月から中学2年生が使用する歴史教科書です。 香港メディアによりますと、新たな教科書では、1960年代から70年代にかけて、中国を混乱に陥れ多数の犠牲者を出した文化大革命を扱う内容が大幅に縮小される見通しです。これまでの教科書では「文化大革命の10年」と題した項目がありましたが、この項目がなくなり、「毛沢東が誤った認識をしていた」という表現や「動乱と災難」という見出しなども削除されているということです。 新しい教科書とされるものはインターネット上に流出していて、教科書の出版社は文化大革命が巨大な損失を与えたことなどを十分に紹介していると釈明しています。しかしインターネット上では、「歴史を直視しなければ未来はない」とか「歴史教科書の問題は重要で、アジアの隣国も見ている」といったコメントが相次ぎ、共産党は政策の誤りに向き合い歴史の教訓を十分に伝えるべきだという批判の声が高まっています。>(以上)
中国や韓国が日本の歴史教科書に容喙して来るのは内政干渉です。宮澤喜一というリベラル政治家が近隣諸国条項なるものを定めたからです。文科省は外国の言うことなぞ聞く必要はないでしょう。今回の中国の歴史教科書で共産党に都合の悪い事実は消してしまう訳ですから。日本は逆に事実でないもの(慰安婦や南京)も採り上げています。採り上げるならきっぱり否定しませんと。事実が外国の政治的圧力で歪められることになります。まあ、前川喜平が事務次官をやるような三流官庁の文科省では無理でしょう。隠れ左翼が多い日本は滅びるかも。教育や政治に無関心では一党独裁の中国の侵略を防げません。
1/14日経<データ資源、米中攻防 経済覇権狙い囲い込み
インターネット上の閲覧や買い物の履歴など「データ資源」をめぐる米中の攻防が激しい。経済のデジタル化が進むなかで、データは消費者の嗜好分析やマクロ予測まで経済活動の基礎となる宝の山。その質と量が競争力を左右する。大きな消費市場と巨大なネット企業を抱える米中は、データ資源で優位を築く覇権争いを繰り広げる。政権の安定へネット統制を正当化する中国にデータの門戸を開くのか主要国は難しい選択も迫られている。

中国のネット通販最大手、アリババ集団傘下のアント・フィナンシャルは2日、米マネーグラムの買収を断念すると発表した。電子決済サービス「支付宝(アリペイ)」との相乗効果を狙い、世界200カ国超で送金サービスを提供する国際送金大手のマネー社を約12億ドル(約1330億円)で買収する計画だった。
ところが、外資による企業買収を安全保障上の観点から審査する対米外国投資委員会(CFIUS)が待ったをかけた。米国人の資産や送金情報など「マネー社の個人データ流出を懸念した」(米国法弁護士)とみられる。
米国では「個人情報の扱いに信頼性がない」として中国企業による買収阻止は当然との見方が多い。中国国営の新華社通信は「CFIUSの審査はブラックボックスだ」と批判。「(中国企業を過度に警戒する)『過敏症』を改めるべきだ」とけん制した。
その直後、中国でアントのずさんな個人情報管理が露見。アリペイの利用者が2017年の利用履歴を閲覧すると、ほぼ自動的に「個人情報を第三者に提供する」との条項に同意したことになる仕組みが発覚した。謝罪しシステムを変えたが、中国の情報管理への懸念が米国の過敏症でないことを浮き彫りにした。
一連の動きは、データ資源をめぐる米中の攻防を象徴する。米国はグーグルなどネットの巨人5社が世界中で日々、膨大なデータを蓄積する。一方、14億人の巨大市場を抱える中国では、5億人が使うスマートフォン(スマホ)決済のアリペイは毎秒2千件もの決済情報をサーバーに蓄積する。世界のデータ生成量は25年に163兆ギガ(ギガは10億)バイトとなり、16年の10倍に膨らむとされる。データを集めれば、それだけ人工知能(AI)の性能を高められる。「膨大なデータは現代の石油になる」(アリババの馬雲会長)。こんな認識が米中を突き動かす。
米国がデータ資源で中国を仮想敵とする大きな理由は、ネットに対する管理・統制を「国家主権の問題」として正当化していることだ。チャットの会話内容や移動の履歴も含めた個人のデータを国民監視や治安維持の道具にも使っていると指摘される。
中国は17年6月に「インターネット安全法」を施行。外資による中国内のデータの持ち出しを厳しく制限した。各国に批判されても、国家の安全を優先する姿勢を崩さない。米アップルが中国のクラウド事業を地元企業に移管すると発表するなど海外勢は対応に苦慮している。中国の広域経済圏構想「一帯一路」で経済支援する東南アジアやアフリカ諸国を中心に、中国発のネット統制が世界に拡散する恐れも強まっている。
米国市民の機微情報を渡さない――。米議会の超党派議員は17年11月、CFIUSの機能を強化する改正案を議会に提出した。肝は個人情報や遺伝子情報など米国市民に関する「機微情報」が、外国政府や外国企業に渡らないよう厳格に審査するルールだ。
CFIUSの従来の審査対象は、軍事や半導体など安全保障に直結する案件が中心。法案が原案通り成立すれば、米国民の個人データを持つ企業の買収は厳しく審査される可能性が高い。米下院公聴会では、CFIUSに関わった元政府高官が証言。中国政府の経営関与を疑われる中国企業が、AIやビッグデータなど先端分野の技術や情報を持つ米企業を続々と買収していることに危機感を示した。法案は事実上、中国企業の買収阻止を狙っているといえる。
個人情報保護に厳しい欧州連合(EU)も18年5月に、EU域外へのデータ移転を厳しく制限する「一般データ保護規則(GDPR)」を全面的に施行する予定だ。欧州の制度は情報の流通をただ制限するだけではない。「十分な保護水準がある」とした国や地域は、個別に許可をとらなくても個人情報の域外移転ができる仕組みも併せて備える。データという資源を保護する一方で、ビジネスへの活用との両立を図る狙いだ。
データの非資源国である日本は、自由な流通を掲げる。18年春にEUとの間で、EU並みの保護水準を確保して日欧間でデータを移転しやすくする新たな枠組みで合意する見通し。日本はアジア太平洋経済協力会議(APEC)が定めた個人情報の越境移転ルールに米国、カナダ、メキシコ、韓国とともに加わり中国にも採用を求めている。
データは21世紀の経済に不可欠な資源になった。世界経済の発展には、安全保障や人権を大義名分に自国で囲い込むのではなく、各国・地域で共有することが欠かせない。データを求めて動き始めた中国。ネット上の言論統制や国民監視など、民主主義とは相いれにくい動きを強める中国にデータの取得を許すのか。主要国には難しい判断が待ち構えている。(上海=小高航、ワシントン=鳳山太成、八十島綾平)>(以上)
日本も中国に対して買収(企業だけでなく土地や建物も)防止策を打たないと。それとスパイ防止法を早く成立させてほしい。日本には外国のスパイがうようよいるのに罰する法律がないため、スパイ天国と言われています。また日本人のスパイも相当数いる筈です。利敵行為をする人間は断罪されねば。
北村氏の記事で思い起こされるのは、1999年から始まった「退耕環林」プロジェクトでしょう。「退耕環林」の説明には「連作障害などで収量の減った土地での耕作をやめ、代わりにポプラなどを植えて林業へ転換して環境への負荷を減らし、収益も上げようという政策。参加した農民には、8年間分の補助金と苗木が支給される。苗木が育てば、森林法の範囲内で伐採・利用が可能。しかし、灌水・除草や柵のメンテナンスなど育生・管理コストは農民の自己負担であるため、ほとんどの土地が植栽後の管理をされておらず、植栽苗の生育は芳しくない。同様の政策で、退牧環草政策がある。牧草地利用を止め、草原を回復するという政策で、同様に補助金が支給されるが、こちらも補助金を食いつぶした後の展望がない点では同様。」とあります。 農民が手入れをすることがないのは農薬を大量散布して手をかけず毒野菜とする心理と一緒でしょうか?
また生態系に悪影響があると言われていたにも拘わらず、李鵬が賄賂を取るため、三峡ダム建設を強行しました。中国駐在時代、1998年に三峡川下りをして白帝城に行きました。劉備玄徳と諸葛孔明の人形が展示されていて、劉備の死に際し「息子の劉禅が蜀の皇帝の器量がなければあなたが代わりになってくれ」と言ったとのことでした。そこも今は水没して浮島になったとのこと、中共は人権だけでなく歴史も尊重しない賄賂塗れの悪逆非道の連中です。
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植樹も伐採も“極端な処理”が中国流
民間の社会団体である“中国環境保護協会”は、そのウェブサイトに2016年11月29日付で「“西洞庭湖”で生態の殺し屋“欧美黒楊”を徹底処理」と題する記事を掲載した。“洞庭湖”は、湖南省北東部にある淡水湖で、通常の面積は2820km²で琵琶湖4つ分に相当するが、増水期には2万km²に拡大して四国の面積(1万8800km²)を上回る規模となる。洞庭湖は、先端を少し短くした「J」の様な形状で、東、南、西に3地区に分けられ、それぞれ“東洞庭湖”、“南洞庭湖”、西洞庭湖と呼ばれる。
“欧美黒楊(学名:Populus xeuroamericana)”とは、「改良ポプラ」と呼ばれるもので、欧州・北米原産のポプラを欧州各地で交配して生まれた品種である。上述の記事には伐採されて、短く切り分けられた改良ポプラの木材を載せた運搬船が運河を進む写真が掲載され、下記のような説明が書かれていた。
改良ポプラのあだ名は湿地の“抽水機(吸い上げポンプ)”であり、改良ポプラは湖岸湿地の乾燥化を早めて“生態殺手(生態の殺し屋)”となる。洞庭湖保護区内の改良ポプラは出来るだけ早く徹底処理すべきで、今年7月末に中央政府の「環境保護監督査察チーム」が湖南省政府に提起した意見の中で整理改革を要求する突出した問題となった。目下、西洞庭湖にある国家級自然保護区の中心地区内の改良ポプラ5万ムー(畝)<注1>余りはすでに伐採が完了しており、南洞庭湖にある自然保護区の改良ポプラ2万ムー余りの伐採作業が進行中である。
<注1>1ムー(畝)は約667m²。1万ムーは6.67km²。5万ムー(33.35km²)は東京の杉並区の面積(34.1km²)に近く、2万ムー(13.3km²)は墨田区の面積(13.8km²)に近い。
狂ったように植えた300万本を全て伐採
さて、2018年1月2日付の全国紙「経済参考報」は、「洞庭湖の改良ポプラ300万本が全て伐採された:往時は狂ったように植樹」と題する記事を掲載した。その概要は以下の通り。
【1】300万本近い改良ポプラが切り倒された。2017年12月31日、これは中央政府の環境保護監督査察チームが湖南省政府に対して要求した洞庭湖湿地の改良ポプラ9万ムー以上<注2>を全て伐採する期限であった。往年は行政命令で“瘋狂植樹(狂ったように植樹)”したものを、今は惜しげもなく“全面砍樹(全面伐採)”している。発展と保護という相反する2つの力を反映し、“長江之腎(揚子江の腎臓)<注3>という称号を持つ洞庭湖でまたしても発展か保護かの綱引きが行われている。植林して造林するという過激な“大躍進”<注4>運動は、自然を救済して原点に戻ることで収束することになるが、これは地方政府の“非糧(食糧以外の)”産業の育成を反映しており、行政による衝動的な動きを抑制することは難しい。そして、それがもたらす産業の苦痛には深く反省させられるものがあるが、洞庭湖地区産業の持続的発展という難題の解明が待たれる。
<注2>9万ムーは60km²で、東京都大田区の面積(60.7km²)に相当する。
<注3>洞庭湖は長江の水を調節する機能を果たしていることから「長江の腎臓」と呼ばれる。
<注4>“大躍進”とは、1958年から始まった中国の第2次5か年計画の初年度に行われた農工業の大増段を図った政策であったが、非科学的であったことからわずか1年で失敗して終結した。
【2】2017年7月末に中央政府の環境保護監督査察チームが湖南省政府に提起した意見は、「洞庭湖地区に植えられている製紙用経済林である改良パルプの面積は39万ムーであり、その中核区域は9万ムー、周辺区域は21万ムーである。これらの改良ポプラは洞庭湖の生態安全に深刻な脅威をもたらすので、2017年の年末までに洞庭湖保護区中核区域内の改良ポプラを全て伐採することを要求する」というものだった。湖南省政府から命令を受けた人々は、否応なく改良パルプの伐採に応じた。2010年から改良ポプラの植林事業に参画した地元出身の企業家は4000ムー以上の植林を行っていたが、生態保護という名目には抗し難く、止む無くポプラを全て伐採した。“漢寿県”の西洞庭湖自然保護区で“造林模範”と呼ばれた“余青山”はチームを組織して10日間かけて長年育てた改良ポプラの樹を泣きの涙で全量伐採した。彼らには何らの補償金も出ないから、その損失は甚大なものがある。
草も生えず、鳥の影もない
【3】湖北省と湖南省の間に横たわる中国第2の淡水湖である洞庭湖は、長江の重要な調整湖で、“魚米之郷(土地が肥沃で物産が豊な土地)”として知られている。その地理的優位性から洞庭湖は中国で最初に『“国際湿地公約(ラムサール条約)”』に登録された7つの湿地の1つで、世界的にまれな巨大な「種の遺伝子」の宝庫と呼ばれている。その洞庭湖に改良ポプラが導入されたのは2000年の初めだった。当時は食糧を植えても利益が薄く、一方で製紙工場の“楊樹(ポプラの樹)”に対する需要が急増していた。洞庭湖地区では水田にポプラの苗木を植えるところが出現したため、「新華社」が2003年に「良田にポプラを植える風潮に警戒せよ」と報じ、これを政府が問題視すると同時に世間が注視するようになった。すると、ポプラの植樹は⽔⽥から離れ、堤防を越えて洞庭湖の⽔際へと移って行った。水際の荒地が大量に請負われて改良ポプラの植林場と化したことにより、湿地保護区の中核地区でさえもその被害を免れることはできなかった。
【4】請負人は勝手気ままに水際を変貌させ、原生の葦(あし)を刈り払ったり、直接に排水を行った上で改良ポプラを植えた。甚だしい場合は水際にコンクリートの枠を組んで土地を囲い込み、排水した上で改良ポプラを植えた。「湿地の吸い上げポンプ」というあだ名を持つ改良ポプラが自然保護区に大量に植えられたことによる損害は甚大で、湿地は日に日に陸地化が進んだ。改良ポプラの成長に有利なように、植林の請負人たちは、油圧ショベルで溝を掘り、掘った土で湿地を埋め立てて土壌に変えた。また、ポプラはカミキリムシの食害に遭いやすいことから、殺虫剤も多用されたため、土壌汚染も進んだ。改良ポプラが密集する地域では、渡り鳥の姿もなく、地元の人々は、「樹の下には草も生えず、樹の上には鳥の影もない」と嘆いた。
【5】改良ポプラの価格は2000年前後がピークで、改良ポプラ1ムー当たりの木材価格は5000元(約8万7000円)以上であったが、伐採する前3年間は樹の周囲で野菜の栽培が可能で、別途1ムー当たり1000元(約1万7400円)の収入を得ることができた。ところが、改良ポプラの1ムー当たりの木材価格は2003年頃から急激に下降し、2014年には2000元(約3万4800円)前後に落ち込んだ。
【6】2014年4月、『洞庭湖生態経済区計画』が中央政府“国務院”で承認され、これに加えて「長江経済ベルト建設」が国家戦略になると、洞庭湖地区は新たな歴史的転機を迎えることになった。しかし、洞庭湖の生態悪化は明白で、洞庭湖地区の生態環境は深刻な状況にあった。中央政府の環境保護監督査察チームが湖南省政府に意見を提起した時には、“一針見血(ずばり急所を突いて)”次のように指摘した。すなわち、洞庭湖のⅢ類水質<注5>は2013年には36.4%あったものが、2016年にはゼロに低下し、出口部分の総リン濃度は97.9%に上昇しており、形勢は楽観できないものとなっている。洞庭湖周辺の人々は、“靠湖吃湖(湖に頼って生活)”しながら、洞庭湖の生態保護など一顧だにせず、長年にわたって慣れと依頼によって洞庭湖をむしばんで来た。その縮図の最たるものが改良ポプラの植林なのである。
<注5>中国の水質基準(地表水)はⅠ類が水源水、Ⅱ~Ⅲ類が生活飲用水、Ⅳ類は工業用水、Ⅴ類は農業用水。
残る21万ムーも全て伐採へ
こうした状況下で、2017年7月末に中央政府の環境保護監督査察チームが湖南省政府に要求したのが、12月末までに洞庭湖湿地の中核地区に植えられた9万ムーの改良ポプラを全て伐採して根絶することだったのである。この9万ムーに植えられていた改良ポプラの総数は何と300万本、それを8月から12月末までの5カ月間で全て伐採することが至上命令として中央政府から湖南省政府に下され、湖南省政府はそれに応えて12月末を待たずに300万本の改良パルプの全量伐採を完了させたのだった。
2000年頃から始まった改良ポプラの植林は、地方政府にとって利益を生む、うま味のある事業であったことから、洞庭湖周辺の市政府や県政府が挙って詳細な「改良ポプラ発展計画」を策定し、政府出資の奨励策や企業誘致などを行って大々的に改良ポプラ植林事業を展開した。“郷”や“鎮”の幹部が植林事業に不熱心であると、その怠慢の責任を追及されたという。
改良ポプラを植林したことにより、洞庭湖の湿地は乾燥して土壌となり、改良ポプラが密集する地域では太陽光がポプラにさえぎられて、周辺の植物は壊滅の危機に瀕した。また、改良ポプラは魚類の繁殖地や鳥の生息地をも破壊した。さらに、湿地が土壌に変わったことにより、洪水期には水の円滑な流れが阻害され、洪水防止にも影響を与えた。確かに改良ポプラの植林は地元の政府や企業に利益をもたらしたが、ラムサール条約に登録されている洞庭湖の湿地を破壊し、その貴重な生態系に甚大な損害を与えたのである。
上述したように、洞庭湖地区における改良ポプラの植林面積は30万ムーであり、2017年12月末までに伐採されたのは、そのうちの中核区域の9万ムーに過ぎない。残る21万ムーは引き続き伐採されることになるが、改良ポプラの数量は9万ムーの密集地域で300万本であったから、密集度が多少低い21万ムーでは恐らく500万本前後になるだろう。今後何カ月かけて21万ムーの伐採が完了するかは分からないが、伐採によって作られる改良ポプラの木材が膨大な量であることは間違いない。
全てお上のご意向に沿って“一刀切”で
1月3日付の北京紙「新京報」は、環境研究者である“于平”の「300万本の改良ポプラを植林して伐採し、洞庭湖を痛めつけた責任は誰が負うのか」と題する所見を掲載した。于平はこの事件の経緯を説明した上で、専門家や業界人が絶えず植林事業に異議を申し立てたにもかかわらず、目先の利益に目がくらんだ地元政府の役人は耳を傾けることなく無視を決め込んだため、植林狂騒はますますひどいものとなったと苦言を呈し、文末で次のように述べている。
過去数十年間、勝手に湿地を占拠してでたらめな開発を行うことは、全国各地で普遍的に行われて来た。利益を得るために、一部の地方役人はそれをはばかることなく行っているが、湿地保護の法的執行力が脆弱なだけでなく、責任を追及する体制ができていない。指導幹部の環境に対する「離任審査」や「責任の終身追及」制度はすでに明確になっているが、目下のところ、地方政府の主要幹部が湿地破壊により責任を追及された例はない。環境破壊を行いながら昇進した役人に対して遡って処罰しないのであれば、誰もが湿地開発に手を伸ばすのではないか。湿地を野蛮な開発の犠牲にしないためには、法律の完備と事後の責任追及が伴わなければならない。
これは正論であり、湿地破壊に止まらず、“形象工程”と呼ばれる「指導者個人のイメージアップや指導者とその仲間の利益獲得を目的とした、実際には必要ないのに、権力を濫用して国民の財産・労力を浪費する工事」などにも当てはまる。そうした無用な工事が業績として評価された者は党の高級幹部や高級官僚に昇進し、無用な工事の後処理を背負わされた後任者が貧乏くじを引くことになるのだ。改良ポプラの植林を推進して地方財政を潤すことに成功した官僚たちは昇進を果たしただろうが、後処理の伐採作業を強制させられた後任者たちこそいい面の皮と言えよう。
ところで、中国語に“一刀切”という言葉がある。これは「(実情を無視して)物事を画一的に処理する」ことを意味する。上述した改良ポプラの植林も伐採も全てお上のご意向に沿って“一刀切”で行われたものであり、中国共産党主導の中国では異議を唱えることは許されない。改良ポプラを例にとれば、改良ポプラが湿地の“抽水機(吸い上げポンプ)”であることを科学的に検証していれば、貴重な洞庭湖の湿地を破壊するであろうことは事前に分かったはずである。しかし、科学的な検証を怠り、目先の利益だけを追求した結果が、改良ポプラの植林による湿地の破壊であり、今回の30万ムーの改良ポプラの全量伐採である。改良ポプラを全量伐採したとしても、根っこまで掘り出すわけではなく、短期間に元の湿地に戻るわけではない。科学的検証を経て、湿地に回復する最善の方策を究明した上で改良ポプラの伐採を行うのならまだしも、単に伐採すればよいと“一刀切”で動くのはいかがなものか。
繰り返される「非科学的技術とずさんな管理」
1958年に毛沢東主導で開始された“大躍進”政策では、農工業の大増産により数年で経済的に米国や英国を追い越すことを目標としたが、非科学的技術とずさんな管理により数千万人の餓死者を出して失敗し、1959年に毛沢東は責任を取って国家主席を辞任した。この時も科学的検証に基づき毛沢東をいさめる人がいれば、数千万人の餓死者を出す悲劇は起こらなかったはずだが、全国民が毛沢東の指示に妄信的に従い“一刀切”で動いたことが甚大な損害と悲劇を導いた。当初の政策決定が非科学的であり、目先の短期的利益を追求するものであれば、後日必ずその後遺症が現れる。それは大躍進により発生した数千万人の餓死者であり、改良ポプラの植林によって破壊された洞庭湖の湿地であった。
2017年11月18日に北京市“大興区”の“聚福禄公寓(アパート)”で発生した火災を契機として北京市が開始した“低端人口(低級人口)”を北京市内から駆逐する動きは、“一刀切”でいかなる例外も認めない形で進められている。地方から出稼ぎに来た人々に借家・借室から数日以内に立ち退くよう要求し、拒めば住居の取り壊しや電気・水の供給停止を行い、立ち退きを強制している。彼らが北京市内から去った後は、家政婦、子守、トラック運転手、宅配便の配達員、各種の店員や作業員などの低賃金労働者が不足し、物価上昇や都市の機能不全が発生している。北京市ではこれと同時進行で、大気汚染を減らすための“煤改気(石炭を天然ガスに換える)”や都市景観を整えるための「ビル屋上・壁面から広告・看板標識の撤去」<注6>が強制的に“一刀切”で行われた。
<注6>“煤改気”および広告・看板標識の撤去の詳細は、本リポートの2017年12月15日付『1000万人が凍える中国「暖房変換政策」の失態』および12月22日付『北京に吹き荒れた「看板・広告撤去騒動」の顛末』参照。
2017年12月17日に“北京大学”講堂で開催された第19回「北京大学光華新年フォーラム」に登壇した教育企業“新東方教育科技集団”会長の“兪敏洪”は講演の中で、北京市で行われている低級人口の駆逐、“煤改気”、広告・看板の撤去に言及し、「私が特に怖いのは、中国で出現している各種各様の“一刀切”モデルである。中国の官僚主義は上位下達の管理モデルで、下部が執行する時に現実の状況を考慮しないばかりか、庶民感情も考慮せず、盲目的に指示に従う対応を引き起こす」と述べて、事前に事態を十分に検討することの必要性を訴えた。このように“一刀切”の問題点を公式の場で堂々と指摘する人物もいるのだが、こうした意見が取り入れられて“一刀切”モデルが見直されるのはいつの日か。
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『中国「北朝鮮フェイク文書」はなぜ流布したか 偽造犯は米国逃亡中の元スパイ?』(1/10日経ビジネスオンライン 福島香織)について
1/13現代ビジネス<中国「大物政治家」のスキャンダルを暴露し続けた大富豪の狙い 民主化の星か、中国版籠池氏か… 安田 峰俊>
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/54113
1/11ZAKZAK<中国共産党が恐れる郭文貴を直撃 「宿敵・王岐山を絶対潰す」>
https://www.zakzak.co.jp/soc/news/180111/soc1801110012-n1.html
郭文貴が未だ生き延びられているのは、彼の持っている金のお蔭か、彼の持っている中共にとって都合の悪い資料を米国が守るため安全を保証しているためかは分かりません。両方かも知れません。『毛沢東の私生活』を書いた李志綏は米国移民して本の出版3ケ月後、シカゴの自宅浴室で遺体となって発見されました。1995年2月のことで、心臓発作が原因との発表でしたが、江沢民が殺したとの噂がありました。タイミングが良すぎましたので。
また、先日慰安婦像の寄贈を受けたリー・サンフランシスコ市長も中共のスパイ容疑でFBIの調査が入る前日に、中共が暗殺したとの噂がたちました。死因は同じく心臓発作です。朝日新聞の若宮啓文元主筆も北京のホテルで病死しました。中共は用済みになれば無慈悲に処分するという事でしょう。「ザ・レイプ・オブ・ナンキン」を書いたアイリス・チャンの自殺も中共の関与があってもおかしくないと思っています。
郭文貴はデータを小出しにしていると、いつ暗殺されるか分からないから、手持ち資料を全部出した方が良いのでは。CIAには渡しているのかもしれませんが。米中衝突のタイミングを見ているのかもしれません。アサンジやスノーデンはロシアが支援していると1/12宮崎正弘氏メルマガにありました。米露で暴露合戦をすれば国民を犠牲に悪に手を染めているのが白日の下に晒されるから良いと思いますが。
http://melma.com/backnumber_45206_6632369/
1/12日経電子版<中国、17年の対米黒字最高 米経済好調で輸出拡大>
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO25601980S8A110C1MM0000/
これで益々トランプは中国に厳しい政策を採るようになるでしょう。1/11ロイターの記事“China opposes U.S. pro-Taiwan bills welcomed by Taipei”のように中国の嫌がることを米議会でも始めています。
1/13宮崎正弘氏メルマガ<『広辞苑』こと『嘘辞苑』は開き直り、岩波の本性を暴露したが デルタもマリオットも「台湾は独立国」ばかりか、チベットも主権国家だ、と>では、
「中国に乗り入れている米国のデルタ航空はウェブサイトにおいて「台湾、チベット、マカオ、香港」を独立国家として扱ってきた。
同様に最大のホテルチャーン「マリオット」、服飾の「ZARA」、そして医療メーカーの「エドロニクス」などは自社のウェッブサイトにおける表現で「台湾、チベット」は独立国家と記述してきた。」とありました。日本は中国に弱腰すぎます。在米の民主派を価値観を共有するとして支援、南京や慰安婦は中共の息のかかった在米反日組織の「世界抗日戦争史実維護連合会」(世界史維会)のプロパガンダと主張して貰えば良いでしょう。
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“犯人”は郭文貴?(写真:ロイター/アフロ)
先週のネットの話題でなかなか興味深かったのは、中央弁公庁の“絶密文書”を米国のニュースサイト・ワシントンフリービーコンが入手した、というものだった。この“絶密文書”は、中国党中央として、下部組織に、国連の対北朝鮮制裁決議は象徴的に実施するにとどめとけ、とか、北朝鮮が核実験をやめてくれれば、中国としては体制維持を保障し、北朝鮮の国防建設や民生インフラ建設への投資を拡大して、中距離弾道ミサイルなんかも供与する、とか、北朝鮮にすぐさま核兵器を廃絶させる必要性は中国にはない、とか結構スゴイことを通達していた。本物の絶密文書であれば、超一級特ダネであり、とりあえず日本の毎日新聞だとか産経新聞だとか、それなりの大手メディアも転電していた。
だが、この絶密文書、コピー写真が同ニュースサイトで公開されていて、それをよくよくみれば、なんか偽物っぽい。1月2日に公開されて、3日に日本や英米メディアが転電したりしたが、4日はおおむねの人が「フェイクニュース」と断定するにいたった。しかしながら、時期的にも、北朝鮮が南北対話を受け入れるというタイミングで、さらにトランプ政権の暴露本『炎と怒り』出版もかさなり、米中はいったい北朝鮮問題をどうするつもりなんだというところに投下された、この“フェイクニュース”は、誰が何のために、作り上げたのだろうか、と興味をそそられることだろう。ちょっと勝手な推理をしてみようか。
「核問題解決を深化させるための決定」
まず、文書の中身をもう一度、詳しく紹介しよう。
タイトルは「我が国と朝鮮民主主義人民共和国が当該国の核問題解決をさらに一歩深化させるためのコミュニケーション協調工作に関する中央弁公庁の決定」。2017年9月15日発行の日付と中央弁公庁印がついてある。党中央の外交マターを担う中央対外連絡部に決定を通達する文書であるが、9月19日には全人代、国務院、中央軍事委員会にも回された、という。
内容は「朝鮮(北朝鮮)は我が国の西側敵対勢力に抵抗するための重要な軍事緩衝区であり、わが党が指導する中国の特色ある社会主義制度としても、朝鮮の持つ政治的戦略的地位の重要性は何物にも代えがたい。このため、わが党、国家は一切の代価を惜しまずに朝鮮の主権とその領土の保全を守り、そして朝鮮政権の安定と継続を切実に保障する必要性がある」
「手をこまねいて傍観することはない」
「党中央および国務院の北朝鮮問題対応にかかわる関連部署および中央国家安全委員会のこれまでの会議の中で処理してきた北朝鮮にかかわる問題の指導的精神にかんがみ、朝鮮執政当局と当該国の核問題について交渉協力工作を行う関連部署に対しては、以下のように具体的な要求を通達する」
「中共中央を代表し、朝鮮サイドに対してはわが方は朝鮮政権の防衛の決心を一層強調する」
「朝鮮政権の崩壊及びこれにより引き起こされる米国を始めとする西側敵対勢力が朝鮮半島において引き起こすであろう直接的軍事対峙(原文では対持と誤記)を防ぐため、わが国とロシアなどの国家は外交斡旋と軍事牽制など一切の手段を駆使して、必ずや朝鮮半島の平和安定を保障し、戦乱が生じることを防止すると決心しており、これはわが方とロシアなどが共通して堅持する立場である」
「同時にもし米国が対朝鮮戦争を発動した場合、アジア太平洋地域および全世界の政治経済の枠組みが巨大な影響と衝撃を受けうることを十分考慮し、わが方とロシア方面は絶対に朝鮮半島の混乱情勢を手をこまねいて傍観することはない」
「国連の対北朝鮮制裁決議については、我が国は朝鮮内の内需を十分に保障する前提のもと、象徴的に処理して懲罰すればよい」
「中国で開設されている朝鮮企業は閉鎖されたが、わが方は対北朝鮮貿易仲介機関および第三国(地区)を経由して引き続き関連貿易活動を展開することをしばらくは制限しない」
「朝鮮民生と基礎インフラ建設に対する援助は、2018年度は、2017度比で一回当たり15%増とする。今後5年の間、年平均で前年同期比10%増をくだらないようにする」
「わが方の朝鮮と関連する銀行業務は一時的に停止する規定があるが、これは中央直属の国有銀行および一部地方銀行に限定することになるだろう」
「北朝鮮の防御的軍事建設に対する投資は増加させ、わが国の先進的中短離弾道ミサイルやクラスター爆弾などハイレベル軍事科学技術を提供する」
「厳正に朝鮮当局に核問題における自制を警告すると同時、目下、わが方に強制的にすぐさま朝鮮の完全核兵器廃棄を要求する必要性は存在せず、そのかわり北朝鮮に自制を求め、将来若干の条件が成熟したときに、徐々に改革を行い、最終的に朝鮮半島の非核化要求に到達すればよい」…。
要するに、中国は北朝鮮がこれ以上の核実験を行わないでいてくれるなら、ロシアとともに核兵器保有を容認する、国連の制裁決議も象徴的な実施にとどめるし、何なら北朝鮮の国防のために中距離ミサイルやクラスター爆弾をあげてもいいよ、という話であり、中国が国連の対北朝鮮制裁決議に賛成したり、米国と足並みをそろえて北朝鮮に圧力をかけるというのは完全な見せかけである、という内容である。本当ならば中国の嘘の大暴露である。
作ったのは、逃亡中の郭文貴?
だが残念ながら(?)、この文書がフェイクであることも、ほぼ間違いない。中国外交部は捏造と一蹴しているし、確かに見る人が見れば、変である。
具体的にいえば、今時の公文書には公文書QRコードがつけられる規定になっているが、そのQRコードが見当たらない。「直接的軍事的対峙」とあるべきところが「直接的軍事的対持」というありえない誤字がある。そもそも、絶密文書というのは幹部に回した後、持ち帰ることも許されず、読んだあとはすぐ回収されるので普通はコピーも不可能。コピーすれば画面がつぶれる特殊な紙でできている。用語も党中央とすべきところを中共中央と表示していたり、党中央の文書として不自然な言葉遣いが散見される。ただ、全くのド素人が作ったものとするほど幼稚でもない。(コピーして黒くつぶれたものを特殊な光を当てて読み取ったかのような不鮮明なコピー写真をわざわざ作っている)。それなりに党中央内部に通じた人間が作ったものとみられる。
では、誰が作ったのか、という話だが、一般に噂されているのは「闇の政商」として北京五輪プロジェクトにかかわったビジネスマンで、習近平政権に汚職容疑で失脚させられるとみて、政権スキャンダルの証拠をにぎったまま現在米国に逃亡中の郭文貴である。このコラムでも何度か取り上げた。彼は自分自身でも告白しているが国家安全部17局に所属してビジネスマンの肩書を使って諜報・特務工作に従事していたことがある。つまり、スパイである。文書の偽造などはお手のものではあろう。
ではネタ元が郭文貴だと仮定し、なぜ彼がこのようなこった文書を捏造し、フリービーコンという新興保守ネットニュースメディアに報道させたのか。
郭文貴といえば、昨年から王岐山および中央規律検査委員会のあることないことを含めたスキャンダルをネットを通じて暴露し続け、習近平政権を揺さぶり続けているが、なぜ急に北朝鮮がらみのフェイクの絶密文書を持ち出したのか。自分の身を守るための習近平政権に向けた駆け引き材料としてのフェイクニュース投下なら、習近平や王岐山の蓄財や下半身スキャンダルの方が裏がとりにくい分、長持ちするだろうに。
わかっていても転電したくなる
一つには、この文書がフェイクでありながら、文書の中身がじつのところまんざらフェイクばかりともいえないものを含んでおり、外国メディアがフェイクとわかっていても転電したくなるようなものであるという点だろう。
実際のところ、中国共産党内に北朝鮮擁護派が依然存在しており、金正恩の体制維持は絶対である、という主張はまだ根強い。そういう親北勢力を抑えながら、習近平は少なくとも表向き、対北朝鮮制裁を強化する姿勢を示した。しかしながら、トランプ政権は中国の対北朝鮮制裁の本気度を疑っており、中国の石油タンカーが海上で北朝鮮に原油を提供していることが、米監視衛星の写真などで判明したこともあって、米中の北朝鮮問題をめぐる共闘関係も揺れている。そういうなかで、なんとか南北対話が行われることになったのだが、果たしてこれに素直に期待を寄せてよいのかどうか、不安が募る。
一方、中国の民主化を願う華人活動家や、米国の反中保守派は、北朝鮮問題における米中融和・協力体制が進むこと自体に強い懸念を感じている。というのも、解放軍が実際に北朝鮮の核兵器排除のために米国の要請にしたがって軍事行動を行えば、半島における中国の軍事プレゼンスが強化され、韓国のTHAADミサイルの撤退、ともすれば在韓米軍の撤退などにもつながりかねず、極東アジアの米中パワーバランスは中国が圧倒的に有利になるやもしれない。これは習近平政権の独裁確立シナリオを補強することになり、共産党政権の崩壊を願う華人民主化活動家からすれば、避けたい未来なのだ。
華人民主化活動家たちは、むしろ米中対立が激化し、トランプ政権が中国共産党体制を弱体化させてくれればいい、と思っている。だから、中国の人権問題では真逆の立場にあるスティーブ・バノンを持ち上げたりするのである。バノンは「米国にとって真の敵は中国」といってはばからないトランプ側近の中の反中派の筆頭で、すでにトランプ政権からは追い出されているのだが、華人民主化活動家たちは依然トランプ政権になんらかの影響力を持つと思って働きかけている。トランプ政権が妙に対中融和的な動きをしていることに懸念している在米華人活動家たちは、バノンを通じてトランプ政権をもう一度選挙前に見せたような対中強硬路線にひき戻したい、と考えている。
このバノンと郭文貴は10回以上面会し、郭文貴は独自のメディア・プラットフォームを創るために、ブライトバードニュース会長のバノンにアドバイスを求めていることをAFPのインタビューで明らかにしている。郭文貴はこのインタビューで、自分の活動の目的が中国の体制転換、つまり民主化であるとしている。どこまで本気かは知らないが、少なくとも郭文貴は、自分の生き残り策を、米国で華人民主化活動家たちに協力することで切り開こうとしている。
とりあえず現状に楔を
郭文貴は、華人民主化活動家、バノンら米国政治の反中保守派勢力と共闘関係を構築しようとする中で、こうした米中間の疑心暗鬼を引き起こすようなフェイクニュースを投下した、ということになる。その狙いを想像するに、民主化活動家たちの期待に応えて米中間に不信を引き起こすこと。絶密文書という、めったに手に入らない情報を入手できる自分の価値をバノンや保守派政治家たちにアピールし、その庇護を求めること。さらに言えば、王岐山や党中央指導部の個人スキャンダルレベルでは、米国を含む外国メディアは反応しなくなってきた。もっと、外国メディアが食いつきやすいネタ、それが北朝鮮問題であったということだ。
北朝鮮に対する姿勢は、おそらくまだ党内で完全には一本化されていない。習近平がトランプと対北朝鮮政策でなんらかの合意をもっている一方で、金正恩とも密約があっても不思議ではない、と誰もが思っている。また、北朝鮮核問題の落としどころが、北朝鮮の核保有容認とならざるを得ないということは、中国の専門家の意見にもある。文書自体はフェイクだろうが、中身はこれまで内部での専門家たちの議論が反映されているので、ある種の説得力があるのだ。
だから私はフリービーコンやそれを転電した保守系メディアは、文書の真贋の裏を取らずに、とりあえず米中融和の現状に楔を入れたいという意図もあって、わざと郭文貴のフェイクニュースに乗ったのではないか、とも疑っている。
昨年から「フェイクニュース」という言葉が一つの流行語となっているが、フェイクニュースというのはなかなか面白い。ニュースの受け手自身も、それが事実であるかどうかより、その言説が流布することでどういう影響を政権や国際情勢に与えるかということを優先して信じたり騙されたりする。安倍政権を打倒するという目的で流れるフェイクニュース、トランプ政権を揺るがすフェイクニュース、そして習近平政権を揺るがすフェイクニュースがほとんど同時に世界に流れるのも偶然の一致だろうか。
個人的にいえば、このフェイク北朝鮮文書ニュースに関しては、私もちょっと騙されたふりをしたい気分だ。実際、南北対話なんて、そちらのほうがよほどフェイクな気がする。
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『中国「一帯一路」が英国の国家事業に触手を伸ばす思惑』(1/12ダイヤモンドオンライン 姫田小夏)、『英国のEU離脱を歓迎し、待ち構える中国 ブレグジットでますます深まる英中経済関係』(1/9JBプレス 姫田小夏)について
1/8アポロネット<中共國恐怖計劃 兩年後全體國民成瓮中之鱉 ——逾700萬人登上黑名單=中共国務院は恐怖計画を持つ 2年後には国民全体が甕の中のスッポン同様逃げられず 700万人超がブラックリストに掲載>国が国民を評価するシステムを作り、公共道徳、政府への不満の言論をした人はブラックリストに載せられ、既に700万人を超えたと。二等国民として、航空券や乗車券も買えないし、銀行ローンや住宅も買えない。新聞記者は腐敗追及の記事を載せただけでブラックリスト入りした。2017年、何の通知もなく、逮捕もないのにこの扱いを受けた。2013年に捏造拡散罪で逮捕・起訴、2015年に裁判では名誉棄損で訴えられ、判決はHPに謝罪文の掲載を要求された。この信用システムは、当局が政治的に異なる意見に対し圧力をかける手段として使っているのに、驚くことに、大陸の人は批判を多くしない。
共産党は毛沢東がやった黒5類と同じことをやろうとしています。共産党に敵対する者は二等国民に仕立て上げ、社会生活をできないようにします。まだ文革のように虐殺が起きていないだけマシとは言えるでしょうが、党や政府を批判できない社会程恐ろしいことはありません。これが三権分立のない、選挙で自分達の統治者を選ぶこともできない共産主義の実態です。
http://hk.aboluowang.com/2018/0108/1051666.html
1/8希望の声<“一代奸相”周恩來42周年忌 評:秦檜、西特勒自嘆不如=一代の国民への裏切り宰相 周恩来の42周忌 評価:秦檜もヒットラーも彼には及ばない>毛沢東が文革後、聖壇から降り、周は共産党の道徳聖人の役割を果たした。しかし、周がいなければ、毛は文革を発動できなかったし、他の残虐な事件も周が手を貸していたのでできた。日本人の中で、周は不倒翁として褒め称える向きもありますが、単なる保身の塊です。毛を抑えようとすれば出来たかもしれないのに、それをせず何千万と餓死させました。彭徳懐将軍の方が良心的でしょう。
http://www.soundofhope.org/b5/2018/01/08/n1429749.html
1/10ダイヤモンドオンライン・ロイター<中国の不良債権市場、世界的な専門ファンドが食指>悪辣な中国は、ハゲタカの為すが儘にはさせないでしょう。買わせておいて急に法律を変え、売らせることをできなくし、再建したらハゲタカの買値で、買い戻しするのでは。こんな国を信用する方が間違っています。
http://diamond.jp/articles/-/155410
1/10希望の声<传一批中共特工渗入朝鲜 金正恩生日加强警戒>朝鮮の新義州に中国のスパイが入り込んでいるので、(斬首作戦を恐れてか?)朝鮮の緊張は高まっているとの話です。
http://www.soundofhope.org/gb/2018/01/10/n1439115.html
1/12日経朝刊「EU離脱、後戻りできない英国 ジャンクロード・ピリス氏 元EU理事会法制局長
英国の欧州連合(EU)離脱交渉の第1段階が簡単でなかったのは、英政府と英保守党が結束できず、国民に「交渉はとても難しい」と説明できずにいたからだ。国民が何を望んでいるかを知るには、EU離脱から15年は必要だろう。その間、経済的には苦しむ。

Jean-Claude Piris フランス国立行政学院(ENA)卒。仏国連代表部などを経て、2010年までEUに勤務。数多くのEU条約の起草に携わった。74歳。
EU加盟国とノルウェー、アイスランド、リヒテンシュタインの31カ国が加盟し、人やモノ、カネ、サービスを域内で自由に行き来させられる欧州経済地域(EEA)がある。英国では今でも多かれ少なかれ、EEAのような合意をEUと結べるという幻想がある。
しかし、英国は合意を結べない。EUから離脱した後はEUの政策決定に参加できないのに、英国のような大国がEUの法律のコピーを受け入れるわけがない。法的に可能だとしても、EEA入りには残る30カ国の議会承認が要る。
英EUの将来の協定は、EUがカナダや韓国と結び、日本と交渉が妥結した自由貿易協定(FTA)なら可能だ。協定はFTAに「プラスアルファ」を加えるのがいい。安全保障やテロ対策、原子力、医薬品、航空といった分野での協力になるだろう。
英国は現状のままだと離脱後、EUの金融サービス市場には自由にアクセスできなくなる。EUとカナダのFTAの金融の取り決めは、世界貿易機関(WTO)の協定を写した薄い内容だ。英国はEUと金融規制などで同等の条件を得ようと努めるだろうが、同等かどうかはEUの執行機関である欧州委員会が決める。
ロンドンの金融街シティーは魅力的な場所で、多くの人材を抱える。(EU離脱後に)1万~10万の雇用が失われても、シティーの終わりでない。EUと自由にアクセスできなくなるのは、英国への懲罰でも差別でもない。EU加盟国でないウクライナのような欧州の国に示した条件と同じだ。
もし(単一市場内での)人の移動の自由を望んでいない国があれば、移動できなくなる。スイスにも金融サービスの自由なアクセスは与えていない。単一市場はEUの魂そのものだ。金融サービスだけいいとこ取りするのは、政治的にも法的にも問題外だろう。
離脱後の少なくとも2年近くの移行期間中、英国は今のまますべてを手に入れられる。ただEUがそれを超えた期間を設定する用意があるとは思えない。せいぜい1年を加えた3年近くだろう。アイルランドは5年というが、無理だ。離脱から5年後(2024年)には市民を代表する欧州議会の選挙がある。
英国のEU離脱自体の撤回は可能だろうか。実は法的には、交渉の最初の時点では可能だと思った。英国が単一市場に残りつつ、ユーロ圏に対しても、国境管理を廃止したシェンゲン協定にも入らない今の立場を保てると思った。しかし、政治的にもう後戻りできるとは思えない。EU離脱を撤回する可能性はせいぜい2~3%で、それ以上ではないだろう。
仮に英国とほかのEU加盟27カ国がEU離脱撤回で合意しても、合意案は英下院だけでなく欧州議会でも審議される。私は英国が要請すれば離脱を撤回できると思っているが、加盟国で構成するEU理事会の法制局によると、撤回には英国の要請に加え27カ国の合意が必要という。
欧州議会は撤回の阻止さえできる。予定通りであれば、英国がEUから離脱した直後の19年5月か6月、次の欧州議会選が控える。(英国のEU残留を前提に)欧州議会の選挙運動が英国で展開されるとは想像できない。現実的・政治的にEU離脱撤回の可能性はほぼなくなった。英議会が離脱に反対し、政権が退陣し、総選挙や再び国民投票があったとしても時間切れを迎えつつある。
EUが英国を失うのはとても不幸で、悲しいことだ。EU理事会の法制局時代も英国人とともに働いてきた。だが、EUにとって単一市場は必要不可欠で、きわめて重要なのだ。単一市場のルールはEU司法裁判所で解釈される。その司法管轄権は厳密に守らなければならない。
(談)
準備進む欧州議会
ピリス氏はEU法の権威だ。英国のEU離脱撤回は可能と訴えてきたが、主張を百八十度変えたところにEU本部のあるブリュッセルの雰囲気の変化がみてとれる。
日本ではなじみの薄いEUの議決機関である欧州議会だが、19年の次回選挙を控え、実は英EU離脱を前提にした改革案をめぐる水面下の議論が大詰めを迎えている。欧州議会選挙法の改正にあわせ各加盟国の選挙法も変えなければならず、「逆算すると18年の早い段階で改革案をまとめねばならない」と欧州議会幹部は明かす。
欧州議会選の準備が着実に進む中、英国はもう後戻りできなくなったというのがピリス氏の判断だ。度重なる条約改正で権限を強める欧州議会は交渉自体にもにらみを利かし始めている。(編集委員 瀬能繁)」(以上)
ピリス氏の言うのは、英国のEU脱退撤回は加盟国の承認が要るのでできないとの見通しですが、元々英国にその気もないでは。あれば早くから手を打っていたでしょう。“Commonwealth of Nations ”と中国を活用しようとしているのかも。ただ姫田氏の意見にもありますように、中国の狙いは“Commonwealth of Nations ”に「一帯一路」を繋げようとしている訳ですから、取らぬ狸になる可能性があります。オズボーンは中国人の正体を知らずウブだったか、ハニーにでもかかったかです。何せ中国の屈辱の原典は阿片戦争にあります。ただ当時の中国は満洲人に統治されていましたが。扶清滅洋から滅満興漢に簡単に切り替わるのですから、漢民族は如何に忠義のない民族という事です。阿片戦争については、英国を相当恨んでいる筈です。英国王室の執事としてのロスチャイルド(真田幸光氏談)に中国とくっつくことをどう思っているのか聞きたいものです。河添恵子氏は習近平はリークワンユー亡き後のロスチャイルドの東南アジアの代理人だと言っていました。
ダイヤモンドオンライン記事
急接近する中国と英国
中国と英国が急接近している。両国が距離を縮め始めたのは、1997年の香港返還が契機だが、これまで中国にとっては、長期にわたって「喉の奥に小骨のささった状態」が続いていた。

ロンドンのチャイナタウンは、すごい賑わいを見せていた Photo by Konatsu Himeda
そもそも、中国と英国の関係には長い歴史がある。南京条約(アヘン戦争の講和条約・1842年)で英国は清朝に開港を迫り、香港を割譲させた。その後英国は、日清戦争(1894~95年)のドサクサにまぎれて香港の領域を拡大させ、1898年から99年間にわたる租借権を設定したのだ。
近年は、2012年にキャメロン首相が、ダライ・ラマ14世と会見したことが関係をギクシャクさせたが、2015年10月の習近平国家主席による訪英で、二国間関係はこれまでにない発展的局面を見せた。
このとき、両国はその外交関係において「21世紀グローバルな全面的戦略パートナー関係」を結び、英中両首脳(当時の英国はキャメロン政権)はこの二国間関係を「黄金時代を迎えた」と自賛した。
従来、中国にとって英国は「全面的戦略パートナー関係」という立ち位置だったが、これが格上げされた形だ。「21世紀」「グローバル」「全面」「戦略」「パートナーシップ」という五つのキーワードの並列について、中国の研究者は「二ヵ国の関係が最高級の段階に引き上げられたことを示唆するもの」と指摘する。
ちなみに同じ欧州でも、中国とフランスの関係は、中英関係に比べて温度差がある。1月9日に北京で行われた中仏首脳会談では、1997年に結ばれた「全面的戦略パートナーシップを推進」することで一致を見たものの、英国とのパートナーシップからすればその成果は精彩を欠く。
「一帯一路」が英国の国家事業とドッキング
訪英時の演説で習主席は、「一帯一路は開放されたもので、英国など欧州国家の参加を歓迎する」と強調し、英国に向けてアピールした。英国によるお墨付きをもらえれば、「一帯一路」も”鬼に金棒”との思惑が見て取れる。
振り返れば2015年、米国やEUとの歩調も顧みず、英国が率先してアジアインフラ投資銀行(AIIB)に加盟したことは、中国が進めようとする「一帯一路」に自信を与えるものにもなった。中国はこれを「英国は『一帯一路』に対し金融面からサポートするもの」と解釈したのだ。
習主席の滞在中、両国は、総事業費160億ポンドの原子力発電所建設プロジェクトを始め、英国政府によるイングランド北部の経済振興策(ノーザンパワーハウス)のプロジェクトを含む、総額400億ポンドにのぼる150のプロジェクトに署名した。 「150のプロジェクトに署名」というのは、そもそも英国が進める国内プロジェクトに中国が便乗した構図だが、英国の一部のプロジェクトは、「一帯一路」とドッキングした形になった。
「既存のプロジェクトに相乗りする」という手法で、「一帯一路」に関わりのある国を増やそうというケースは、他国の例でも散見される。
イングランド北部の経済振興策は、「EU離脱決定を受けて、政府が今後ロンドンのみならず、英国全土への投資誘致を強化する上で重要性を増す」(自治体国際化協会ロンドン事務所)と言われており、ロンドンに次ぐ第二の経済の中心を形成すべく、産業振興と交通インフラ整備が計画されている。これが、インフラ建設を得意とする中国の”垂涎の的”であることは想像に難くない。
原発建設への中国資本の参入については、一時、英国メディアの強い危機感とともに、メイ首相が再検討に入る場面もあったものの、最終的には調印にこぎつけた。
英国が中国資本に対して行った市場開放は、「メード・バイ・チャイナ」(特に原発建設)にお墨付きを与え、世界市場を切り開く追い風になったという意味で、今後の「一帯一路」にとって中国に有利な展開になったことは間違いない。
余談だが、ドッキングを提案したのは、キャメロン政権時の財務大臣ジョージ・オズボーン氏だったという。オズボーン氏は親中派で知られており、英国では「拝金主義者」かつ「中国共産党寄り」という悪評すら存在するようだ。「英国がAIIBに先進国で一番乗りしたのは、彼が首謀したからだ」とも伝えられている。
大英帝国の”遺産”にうまみか
「一帯一路」の布陣を広げるなかで、中国が英国を重要国家に位置づけるのは、いくつかの理由がある。
その一つが、英国を抱き込めば、間接的に英連邦圏への影響を強めることができ、「一帯一路」の舞台を格段に広げられるという胸算用だ。英国をパートナーにすれば、欧州市場はもとより北米、中東、アフリカへのアクセスに弾みがつく。
大英帝国時代、英国もまた植民地でインフラ建設に乗り出し、鉄道や道路の建設が行われた。商品の供給先や資本の投資先、あるいは資源の調達先である植民地で、当時英国が行ったインフラ整備は、まさに中国の「一帯一路」と相似を成す。
サマセット・モームの小説には、南洋の島に英国から派遣された行政官が、実に狡猾に地元の労働者を使いこなす様子が描かれているが、世界経済の頂点に立とうとする中国は、経験豊富な英国を巧みに利用しようとしているのではないだろうか。
英国も「中国しか目に入らない」
日増しに高まる中国の影響に「いまや英国は中国しか目に入らない」と語るのは、ロンドン在住の日本人実業家だ。その変化は日常にも色濃く表れる。
「ロンドンのギャラリーで貸し出すイヤホンガイドは、日本語から中国語に取って代わりました。飛行機のビジネスクラスで配られるのは中国紙、中国人スタッフが常駐するブランドショップでは、中国人客を歓迎こそすれ日本人客には見向きもしません。テレビのコンテンツに至っては、中英同時放映が実現しますが、日本に番組が上陸するのは1年遅れです」
皮肉なことに、筆者がロンドンで最もにぎわいを感じたのがチャイナタウンだった。「安くておいしい」という評判もあるのだろう、小雨の降る夜、実に多くの観光客でごった返し、どの飲食店にも長蛇の列ができていた。
英国において、日本企業はまだ優勢だが、今後は中国企業の対英投資に勢いが出てくる可能性が強い。それは、中国が「世界2位の投資大国」となったからでもある。中国商務部によれば2015年、中国の対外直接投資総額は1456億ドルとなり、日本の対外直接投資の1364億ドルを抜いた。中国の旭日昇天の勢いは否めない。
世界の観光客が集まるロンドンの中華街が暗示するのは、「品質もそこそこで価格も安い」とされる”メード・バイ・チャイナ”の影響力だ。「老獪な英国は、日本と中国を競争させようとしている」(在英の日本人駐在員)といわれるだけに、その動向から目が離せない。
(ジャーナリスト 姫田小夏)
JBプレス記事

英ロンドンのバッキンガム宮殿で開かれた公式晩さん会で、エリザベス女王(右)と乾杯する中国の習近平国家主席(2015年10月20日撮影、資料写真)。(c)AFP/DOMINIC LIPINSKI〔AFPBB News〕
1月2日、米調査会社のユーラシア・グループが「2018年の10大リスク」を公表した。その筆頭は「中国の影響力」だが、8位に「英国」がランキングしている点にも注目したい。なぜ英国がリスクかというと、ブレグジット(Brexit、英国のEU離脱)の期限が2019年3月末に迫るなか、英国が首尾よくこの離脱手続きを進められるかが問われているためだ。
ロンドンに拠点を置く日本の政府機関も、「英国とEUとの間で交渉の進め方に隔たりがある」と懸念する。英国は離脱に関わる清算金の交渉にケリをつけ、離脱後の貿易条件を協議したいところだが、「EUから自由になりながらもEUとの関係を維持したい英国の思惑に、EUは反発している」(同)という。
EU離脱は英国経済や社会に短期的な弊害をもたらす。一方、EU残留は長期的な苦痛をもたらす――そんな判断のもとブレグジットを選択した英国に対し、国際社会は「2018年のリスクは英国そのものだ」と悲観的な視線を向けている。
ブレグジットは「リスクよりチャンス」
しかし、“ブレグジットは好機だ”とばかりに英国に急接近を図っている国もある。中国だ。
2016年6月、離脱をめぐる英国の国民投票が僅差で「離脱」という結果になったとき、中国は歓迎しなかった。中国による英国企業の買収が進む中、「中国が投資した資産価値はどうなるか」が懸念されたのだ。
だが時間の経過とともに、「英国のEU離脱は、中国にとってリスクよりチャンスが大きい」と楽観視する空気が形成されていき、英国に同調する記事も徐々に増えてきた。
例えば、中国商務部のシンクタンクに所属する研究員は、中国紙への寄稿で次のように指摘している。
「EUの管理システムは官僚主義だ。そのルールは世界で最も細かくて煩わしく、事務効率は主要先進国に比べて低い。これらは英国の経済的活力をそいできた」
EUとの交渉を担当した日本の通産省OBも、「EUは各国の寄り合いなので意思決定に時間がかかるのは事実。そもそも『欧州の統合』という高邁な理念のもとに結成された組織なので、理念先行のきらいがある」と明かす。
英国はこうした大陸諸国とは異なり、よりプラグマチックに思考する。「経済的実利」を追求するという点では、むしろ中国とそりが合うといえるだろう。両国がブレグジットをきっかけに接近を図ってもおかしくはない。
英国市場へのアクセスが容易に?
話は10年以上前にさかのぼるが、2005年に繊維製品の輸入数量規制が撤廃されると、EU市場にどっと中国製品がなだれ込んだ。このとき、EUは緊急輸入制限(セーフガード)の発動を発表するが、英国は自由貿易を主張して輸入制限に反対した。中国は今なお、このときの英国の対応を評価している。
そして、英国のEU離脱に対しても、英国との貿易の障壁を低くし、英国市場にアクセスしやすくするものであると確信しているのだ。
2017年1月、浙江省義烏と英国ロンドンを結ぶ国際貨物列車が運行を開始した。鉄道によって中国と英国の市場はますます接近している。義烏から運ばれる貨物は大半が日用雑貨だと言われるが、ロンドン発の復路にはウイスキーが積まれている。
ウイスキーは英国にとって、国内産業をけん引する重要な商品である。しかし人口6500万人(2015年)の島国である英国にとって国内市場は今後の成長が見込めない。そのため輸出拡大への取り組みを避けることはできない。そこにタイミング良く打ち出されたのが中国の「一帯一路」構想だった。英国のウイスキーは今後「一帯一路」に乗って中国へ大量に運ばれるだろう。
中国メディアは「『一帯一路』はブレグジット後の英国に、市場のみならず自信も与えることになるだろう」と論じている。
中国は、英国が債務問題を抱え、生産現場が資金不足に陥っていること、大量のインフラが老朽化していることを知っている。「英国にはパートナーが必要だ。中国の投資で製造業を復活させてやろう」――中国がそう目論んでいることは想像に難くない。
両国は「英中黄金時代」を宣言
中国の掲げる「一帯一路」と英国の「ノーザンパワーハウス(Northern Powerhouse)」(イングランド北部の経済振興策)、中国の「メイド・イン・チャイナ2025」(製造業の強化を図る政策)と英国の工業政策「The future of manufacturing」など、両国の経済政策には類似性があり、さまざまなプロジェクトの相互乗り入れが検討されている。
また、中国は「ロンドンが、中国の人民元の国際化を推進する橋頭保になる」と期待している。ブレグジットが決まった際、「ロンドンは国際金融センターとしての地位が低下し、パリやフランクフルトに取って代わられるだろう」との見方があった。しかし今では、「結局、ロンドンの地位が他所に取って代わられることはなく、影響は限定的だった」(中国の電子メディア)と捉えられている。
「一帯一路」構想で世界への影響力を強めようとしている中国にとって、ブレグジットは渡りに船だ。すでに両国は「英中黄金時代」を宣言しており、ブレグジット後の英国の運命は“中国とのタッグ”に強く支配される気配さえする。
果たして数年後、世界の10大リスクから英国の名前は消えているだろうか。
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『バノンはなぜトランプを刺したのか 「バノン大統領選出馬」から「猿芝居」まで諸説紛々』(1/10日経ビジネスオンライン 高濱賛)、『「史上最低の大統領・親日家グラント」が米国で大評判 スキャンダルと失政だらけで、どこかトランプに類似?』(1/9JBプレス 高濱賛)について
1/10日経<バノン氏、極右サイト会長辞任 暴露本で出資者と対立>によれば、バノンは「ブライトバート・ニュース」会長も辞任とのこと、次の大統領選に誰がスポンサーになるかを考えれば、高濱氏が言っています、バノンが大統領候補となるのは難しいのでは。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO25493010Q8A110C1000000/
1/10トランプのツイッター“Cutting taxes and simplifying regulations makes America the place to invest! Great news as Toyota and Mazda announce they are bringing 4,000 JOBS and investing $1.6 BILLION in Alabama, helping to further grow our economy!”法人税減税と規制緩和で米国は投資適格国になった。トヨタとマツダはアラバマに4000人の雇用確保と16億$の投資を発表し、そのことは我が国の経済発展に役立つであろう。
1/10看中国<美攻朝 陸攻台?專家談北京局勢(圖)>カナダの学者が「米軍が朝鮮を攻撃すれば、中国は朝鮮半島で戦えないので、報復として台湾を侵攻するだろう」と発表したが、大多数の学者は彼の意見に賛成しなかった。西側全体を敵に回すことになると。中国の心理作戦だろうとの見方。
http://chinaexaminer.bayvoice.net/b5/comments/2018/01/10/386754.htm%E7%BE%8E%E6%94%BB
1/11看中国<中共要掌控对台“制空制海权”(组图)>中共は(日本と)台湾にサラミスライス作戦を展開、現状維持の約束を少しずつ中国有利なように変更して来たと言うもの。
https://www.secretchina.com/news/gb/2018/01/11/846607.html
1/11宮崎正弘氏メルマガ<すごいニュースが飛びこんできた 米国と台湾の政府高官相互訪問解禁の「台湾旅行法」を米連邦議会下院が可決>蔡英文総統のホワイトハウス公式訪問も可となるとのことです。日本も台湾関係法&旅行法&安全法を制定すべきです。日米台で自由主義社会を守るべきです。朝鮮半島には自由はありませんので、彼らは敵と看做した方がより正確です。上記の看中国の記事のように、中共は台湾を手に入れるために、制空権・制海権を抑えることを狙っています。同盟を結び防ぐようにしないと。
http://melma.com/backnumber_45206_6631819/
1/9正義の見方<【マスコミ】視聴者の会「最近のテレビ、偏向報道が増えていると思いますか?」⇒ 調査結果 「最近のテレビは偏向報道が増えている」が 67.8%>

http://www.honmotakeshi.com/archives/52760932.html
日本でも「モリカケ」が捏造だったというのが、知られてきているのでは。それなら、慰安婦も南京も同じようにメデイアが操作してきたのではと勘づけば良いのに。
日経ビジネスオンライン記事

バノン氏が掲げた政策がプアホワイトの琴線に触れ、トランプ氏を大統領の座に就かせたとされる(写真:Jeff Malet Photography/Newscom)
—スティーブ・バノン前大統領首席戦略官・上級顧問 の発言*1が新年早々、大問題になっていますね。ドナルド・トランプ大統領の「分身」とまでいわれた人物です。
高濱:ホワイトハウスは、「バノン爆弾」炸裂で大揺れです。バノン発言を盛り込んだ暴露本が5日に発売されました。飛ぶような売れ行きです。トランプ氏の弁護士は出版差し止めを裁判所に要請しました。
この暴露本には、「トランプ氏は大統領職に適していない」「トランプ氏は元々大統領になどなると思っていなかった」など大統領周辺の関係者が語った話が記述されています。
なんといっても最大のインパクトは、最側近だったバノン氏がトランプ氏の長男や娘婿が取った行動を「売国的行為だった」と糾弾している点です。どちらもロシアゲート疑惑に関わったとされています。
バノン氏は、トランプ氏の長男であるドナルド・ジュニア氏や娘婿のジャレッド・クシュナー氏といった選挙対策幹部たちが選挙中にロシア人弁護士と会っていたことを後から知って、「売国的行為だった」と激しく批判した「事実」を同書で暴露されたのです。
トランプ氏の最側近だった人物がロシアゲート疑惑をめぐって「正論」を述べたというのでメディアは大騒ぎ。トランプ氏はわざわざ声明まで出して、バノン氏を「正気を失った」となじりました。
*1:バノン氏は、1月5日に発売された「Fire and Fury」*2(炎と怒り)の中で、ドナルド・ジュニア氏(選挙当時は選対顧問)らがロシアのウラジミール・プーチン大統領周辺と親しいロシア人弁護士らと選挙期間中に面談していたことについて、「国家に対する反逆行為であり、愛国心のない行為だ。すぐに米連邦捜査局(FBI)に通報すべきだった」と発言した
*2:同書の著者はマイケル・ウォルフ氏(64)。同氏は「USAトゥデイ」などにコラムを書いているジャーナリスト。「事実関係よりも、たくましい想像力に基づく記事が少なくない」との批判が一部にある。サラ・ハッカビー・サンダース大統領補佐官は「本の内容はでっち上げばかり」と攻撃している (”Fire and Fury: Inside the Trump White House,” Michael Wolff, 2018)
「16・6・9会談は売国的行為だった」
—バノン氏は、トランプ・ジュニア氏らがロシア人弁護士たちに会ったことを「売国的行為」と断定しています。なぜ、ですか。
高濱:トランプ・ジュニア氏は16年6月9日午後、ロシア人の弁護士、ナタリア・べセルニツカヤ氏 らとトランプタワーで会いました。タブロイド紙の元記者から「ヒラリー・クリントン民主党大統領候補(当時)のイメージダウンにつながる情報を持っているロシア人がいるが、会うか」と言われて、飛びつきました。
この会談にはクシュナー氏(選挙当時は選対幹部、現大統領上級顧問)や選対委員長だったポール・マナフォート氏(当時選挙対策本部長)も同席しました。
ドナルド・ジュニア氏は「大した話はなかった」と議会の未公開公聴会で証言しているのですが、外国勢力が米大統領選挙に「介在」した点において、ボブ・モラー特別検察官 が捜査中のロシアゲート疑惑の最も重要な事案になっています。
バノン氏の発言が、ホワイトハウスに衝撃を与えたのは、「16・6・9会談」をトランプ氏の最側近だった人物が「売国的行為」と言い切っているからです。
ついに「正論」を吐いてしまったバノンの性
高濱:ワシントンに在住する、民主党系政界オブザーバーの一人は、寓話「サソリとカエル」*に例えてこう言っています。
「サソリ(バノン)は自分が川で溺れ死ぬのが分かっていてもカエル(トランプ)の背中を刺す。サソリの性(さが)なのだろう。部外者には理解できないのがトランプ氏とバノン氏の関係じゃないのか」
*:川を渡りたかったサソリがカエルの背中に乗せてくれと懇願。カエルは、サソリが自分を刺さないことを条件に乗せるが、結局刺されて死んでしまうという寓話
「トランプ氏もバノン氏も保守主義者で、我こそ一番頭が良いと思い込んでいる。政権樹立までは、ともに『アメリカ第一主義』を貫き、オバマ前政権のやってきた政策とは正反対の保守政権を目指した。ところが出来上がった政権は、バノン氏にしてみれば、トランプ氏の親族と軍人と実業家からなる寄せ集め政権。これに耐えられなかった。問題の発言は、解雇された昨年8月以降のもの。ロシアゲート疑惑の中心人物であるドナルド・ジュニア氏やクシュナー氏に対する憤りが口をついて出たのだろう。本音というか、バノン氏の性が出てしまった」
—サソリはカエルの背中を刺してしまいましたが、バノン発言だけではカエルであるトランプ氏の政治生命は終わりそうにありませんね。
高濱:さあ、どうでしょう。サソリの毒がカエルの体中に回って、命取りにならないとも限りませんよ。
バノン氏の意図については、別に2説あります。
一つは、これはトランプ氏とバノン氏が仕組んだ「猿芝居」だという説です。つまりロシアゲート疑惑でトランプ・ジュニア氏が起訴されるのは時間の問題だというのです。ひょっとしたらクシュナー氏も起訴される可能性があります。そうなる前にこの二人を悪者にして、トランプ氏と切り離す。同氏は安泰。まさにトカゲのしっぽ切りです。
もっともバノン氏の発言内容が発覚した後のトランプ氏の憤りを見ていると、本心からのようにみえます。
「スティーブ・バノンは私及び大統領職とは何の関係もない。スティーブは(首席戦略官・上級顧問を)解雇されたとき、その職を失っただけでなく正気も失った(lost his mind)」
「スティーブが私と差しで話すことは極めてまれだった。あたかも(私に対する)影響力があるかのように見せていただけだ。(私との)アクセスや接点もないくせに影響力があるかのように見せ、人々を欺いていた。そしてインチキ本を書く手助けをした」 (”Read Trump’s Reaction to Steve Bannon’s Comments,” New York Times, 1/3/2018)
20年大統領選への出馬に向け準備を始めたバノン?
—もう一つの説はどんなものですか。
高濱:バノン氏は、政治経験のまったくないトランプ氏に選挙参謀、戦略担当者として仕え、同氏を大統領にしてしまいました。トランプ氏の当選を阻もうとした共和党保守本流と真っ向から戦い、それでも見事当選させた。ホワイトハウスを去った後も上院アラバマ州の上院補選で、共和党執行部が支持する候補者に対抗馬を立てて勝ちました。政策面でも選挙でも大変な自信を持っているようです。
なので、バノン氏自身が大統領選に出馬するとの説が昨年後半から出ているのです。そこに持ってきて今回のトランプ氏との「決裂」劇が出馬説をいやが上にも盛り上げる。
無論、この場合、共和党の現職であるトランプ氏が再選を目指さないことが前提条件としてあるわけですが……。つまり、「ポスト・トランプ」を狙うバノン氏のキャンペーンの始まり、というわけです。 (”Bannon 2020? ‘I have Power’: Is Steve Bannon Running for President?” Gabriel Sherman, Vanity Fair, 12/21/2017) (”Bannon may run for president,” Brent Budowsky, The Hill, 10/24/2017)
北朝鮮情勢が何となく収まる方向に進み始める中で、トランプ政権にとっては予想だにしなかった「バノン爆弾」が年明けから炸裂しました。政界はまさに一瞬先は闇です。
JBプレス記事

ドナルド・トランプ米大統領。ホワイトハウスで(2017年12月16日撮影)。(c)AFP PHOTO / NICHOLAS KAMM〔AFPBB News〕
作者はミュージカル「ハミルトン」の原作者
年末から年始にかけて米国内で売れに売れている本がある。米大統領経験者として初めて日本を訪問したこともあるユリシーズ・グラント第18代米大統領の一生を描いた「Grant」である。965ページの超大作だ。
著者はロン・チャーナウ氏。大ヒットのブロードウェー・ミュージカル「ハミルトン」(アレキサンダー・ハミルトン第1代財務長官の物語)の原作者。
これまでにもジョージ・ワシントン初代大統領をはじめモルガン財閥の創始者ジュニアス・モルガンやジョン・D・ロックフィラーの伝記を書いている。2010年にはワシントンの伝記でピューリッツアー賞を受賞している。
歴史上の人物を徹底的に調べ上げ、新たな視点から人物像を絶妙の筆致で描き出す伝記は多くの読者を引きつけてきた。日本で言うと、さしずめ司馬遼太郎のような作家だ。
目下各紙ベストセラーのランキングではトップの座を占めている。
「書けば売れるチャーナウ」は「米国の司馬遼太郎」

Grant by Ron Chernow Penguin Press; First Edition edition (October 10, 2017)
売れる理由は、まず第1にチャーナウ氏の新作だということ。今や彼が書けば読者は飛びつくのだ。これまで手がけてきた本はすべてベストセラーになっている。
第2の理由は、グラント氏が、どこか、就任1年を迎えようとしているドナルド・トランプ大統領によく似ているからという声を聞いた。
読書家の中学校英語教師、ボブ・ローリンさん(42)。ロサンゼルス在住の公立中学校で歴史を教える白人教師はこう筆者に語っている。
「毎日テレビや新聞で連日報道されるトランプの妄言に皆あきれ返っているんですよ。待てよ、俺たちの大統領の中にこんなひどいのがいたかな、と思う」
「これまで大統領と言えば、みなジョージ・ワシントン初代大統領とか、エイブラハム・リンカーン第17代、ジョン・F・ケネディ第35代大統領を思い浮かべる。何冊もの伝記も出ているし、米一般国民は彼らについては何となく分かる」
そんな中、史上最悪の大統領の1人といったイメージのあるユリシーズ・グラント第18代大統領の本が出た。読んでみようじゃないか、っていう感じなんですね」
「どれほどひどかったのか。トランプと比較したらと、興味が湧いてくるんです」
確かにトランプ政権発足後、米経済は順調に推移している。経営者出身の大統領が何をやり出すかという期待感もある。年末やっと議会を通過成立した税制改正が追い風となるとの見方も出ている。
一部に熱狂的な白人支持者がいる一方で、米国民の60%近くの人たちはトランプ氏に落第点をつけている。
支持率は就任以降、4割を超えるか超えないか。2017年12月28日現在の各種世論調査機関の平均支持率は39.8%、不支持率は55.8%。
政策もさることながら、むしろトランプ氏の人品骨柄と言うか、言動に皆、辟易しているのだ。
南北戦争の「英雄」必ずしも大統領には適さず
オハイオ州の製皮業者の息子として生まれたグラント氏は陸軍士官学校を卒業し、南北戦争では武勲を重ね、英雄となる。その後、北軍勝利の英雄として絶大なる人気を浴び、推されて大統領になってみたもののだった。政治経験はゼロ。
閣僚人事ではウォール街の金融業界の大物や陸軍時代の旧友などを集めた。この「仲良し内閣」が政治音痴の「将軍大統領」の足を引っ張る。閣僚や補佐官たちが次々とスキャンダルを起こし、汚職を繰り返す。
グラント大統領自身は、リンカーン大統領による奴隷解放宣言(1863年)以降の「リコンストラクション期」(南北戦争後の再建期)における諸問題の解決に奔走する。
しかし北部と南部諸州との「しこり」解消や黒人の法的地位の確立などまったくうまくいかなった。さらに原住民(アメリカインディアン)の保留地政策を推進するが、強引な囲い込み策が裏目に出る。
当時の国内分裂の状況は、トランプ政権下の米国の現状にそっくりなのだ。「仲良し内閣」内のスキャンダル騒動もロシアゲート疑惑に振りまわれるトランプ政権によく似ている。
明治天皇に「民主主義とは何たるか」をご進講
ところがこのグラント氏は、大統領を辞めてから外交面で大活躍するのだ。
特に日本との関係では、グラント氏は1879年、米大統領経験者として初めて訪日した歴史上の人物として知られている。
滞在中は、当時26歳だった明治天皇に会い、訪日前に訪問した欧州情勢にはじまり、諸外国からの借款問題、対日不平等条約、教育や招聘外国人教師の問題に至るまで進講したとされている。
これに対し、明治天皇はグラント氏に「発言を多とする。よく検討させてもらう」と感謝の意を表したとも言われている。
(”Remembering Ulysses S. Grant’s visit Japan,” Hiroshi Chida, Stars and Stripes, 4/8/2004)(参照=https://www.stripes.com/travel/remembering-ulysses-s-grant-s-visit-to-japan-1.22915)
本書は、このグラント氏の訪日について詳しく記述している。
大統領を引退したグラントはリチャード・トンプソン海軍長官から地中海からスエズ運河を経てインド、中国、日本を訪れる政府所有の汽船に乗って世界旅行をしないかとの誘いを受ける。1877年5月から1879年9月までの2年間の旅だった。
友好親善と通商促進を目的した米代表団の団長に『武勲のある前大統領』を据えることで米国の「威厳」を示そうとしたわけだ。ある意味では失意のうちにホワイトハウスを去った前大統領の名誉挽回を狙ったとも言える。
それをグラント氏は快諾したのだ。2年にわたる外遊で最後の訪問先日本を訪れる前に清国を訪れ、恭親王と会う。
親王は当時日本との間で外交論争になっていた琉球(沖縄)帰属問題*1でグラント氏に調停役を依頼する。グラント氏はその要請を受けて、伊藤博文内務卿(当時)ら政府高官とこの問題でついて協議。日本側から日清交渉合意を取りつけた。
*1=清国は琉球の帰属を主張、グランド氏の調停で日本は中国国内での欧米並み通商権を認めさせることを条件に宮古・八重山を清国に引き渡す「分島・増約案」で合意。(但し、清国側の都合で署名せず)日本は1895年、日清戦争で勝利したため琉球問題はあいまいなまま日本に帰属。
http://rca.open.ed.jp/history/story/epoch4/syobun_8.html
日本は前大統領を礼砲21発で元首級待遇
「グラント前大統領を乗せた『リッチモンド』が長崎に到着したのは1879年6月21日(9月3日に離日)だった。
日本政府は礼砲21発*2で同氏に最大級の敬意を表した。天皇の特使が出迎えに出た。その夜は由緒ある寺で歓迎の宴が開かれた55品のコースが出された。
グラント氏は近くの公園にベンガル産菩提樹を植えた。その横に建てられる石碑に刻まれる銘文にこう記した。
『この樹木が立派に育ち、未来永劫、生き続けること、そして日本国の末永い繁栄と成長を象徴することを心より望む』
グラント氏は米国を発って約半年の外遊で多くの諸国を訪れたが、ことのほか日本が気に入ったようだった。彼はそこに美しさ、調和、洗練さの典型を見出したのだ」
「自然の美しさとともに日本人の優しさと清潔さに魅了されたのだ。それは世界中で最高のものだった。視察した学校での水準の高い、規律正しい授業。それらが東アジアで最も優れた人々を創り出していることを実感したのだった」
*2=礼砲21発は、当該国の国旗および元首(天皇、国王、大統領など)に対して行われる最大級の歓迎を意味する。
病床のグラント氏に駐米大使を4回も遣わせた明治天皇
米国内では「最低の大統領」といったイメージの強いグラント氏だが、日本では「米歴代大統領としては最も尊敬された人物」だった。特に明治天皇がグラント氏に抱く尊敬の念、親近感は絶大だった。
半年にわたる外遊から6年後の1885年、グラント氏は病に倒れた。その知らせを聞いた明治天皇は直ちに駐米大使を見舞いに遣わした。その年、グラント氏は他界する。駐米大使はその間、明治天皇の命を受け4回もお見舞いに行っている。
1929年、グラント氏の訪問50周年を記念して上野公園内に石碑が建立された。35年には同氏の没後50周年の式典がそこで催された。47年以降、毎年、同氏の命日には追悼式が行われている。
(参考=https://wiki.samurai-archives.com/index.php?title=Ulysses_S._Grant)
大統領を辞めた後のグラント氏の「外交手腕」は日本でも今も生き続けている。
明治天皇との「絆」のなせる業なのだろうが、米国内で一般向けに評価されるのはおそらくチャーナウ氏の手による本書が初めてではないだろうか。
2018年も厳しい政権運営が迫られているトランプ大統領。安倍晋三首相は積極的なアプローチで「ドナルド・シンゾー」関係を築き上げ、トランプ大統領はにわかに「親日大統領」になったわけだが、米国内ではそのことを評価する声はあまり聞かない。
それよりも「トランプと親しい国はイスラエルと日本だけ」(国務省担当の主要紙記者)と皮肉を言う者もいるくらいだ。
さて、そのトランプ大統領は、これから10年後、50年後、米国ではどのような評価を受けるのだろうか。そして日本ではどのような大統領として歴史に刻まれるのだろうか。
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『「五輪休戦」で金正恩の窮地を救う文在寅 「南北合作劇」に虚を突かれたトランプ』(1/8日経ビジネスオンライン 鈴置高史)、『元駐韓大使が占う2018年の北朝鮮、軍事衝突まで想定した具体策を』(1/9ダイヤモンドオンライン 武藤正敏)について
1/2日経<2018年の世界10大リスク、首位は「中国の影響力拡大」>第2位の「偶発的なアクシデント」の例としては、サイバー攻撃や北朝鮮問題などで偶発的な衝突が起きる危険性を挙げています(朝日新聞)。今年は中朝絡みで世界が揺れ動くという事です。日本国民も覚悟しておかないと。平昌オリンピックで浮かれることは、日本人はないでしょうけど、その後が危ないという認識は持っておいた方が良いと思います。鈴置氏の記事では、米国の北への核放棄の期限は2月末と言っていますが、平昌オリンピック・パラリンピックの開催期間はそれぞれ2/9~25、3/9~18です。ここまで来れば米軍の攻撃はあるとすれば3/19以降と読むべきか?1/5産経ニュースに<米韓合同演習は平昌パラリンピック終了後 マティス米国防長官>とありました。まあ、韓国軍は信用できませんので、合同演習時ではなく、米軍の単独行動で先制攻撃すると思います。

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO25283350S8A100C1FF8000/
1/9日経朝刊<「18年最大のリスクは北朝鮮」 英国際戦略研究所長に聞く
2017年は北朝鮮や中東情勢の緊迫など、地政学リスクが国際社会を揺さぶった。18年の展望について、安全保障の分野に強い英有力シンクタンク、国際戦略研究所(IISS)のジョン・チップマン所長に聞いた。

英国際戦略研究所(IISS)のチップマン所長
――18年の国際社会を取り巻くリスク要因をどう分析しますか。
「典型的な地政学の観点で最も大きなリスクは、北朝鮮の紛争だろう。地域のパワーバランスを変えるリスクとしては中東でのロシアの台頭も懸念される。サイバー攻撃もグローバルな脅威で、政府機関と民間の双方が対策を優先課題に据えなければならない」
――北朝鮮情勢を巡る緊張緩和に向けて何が必要ですか。
「緊張を和らげるための第一歩は、緊張をやや高めることではないか。米国が国連安全保障理事会の支持を得て進める経済制裁はその一環で、北朝鮮の活動コストを引き上げるものだ。経済面で中国にできることがまだあると思う。日本や西側諸国が期待するほど影響力を行使していない印象だ」
――トランプ米政権による軍事行動の可能性をどうみますか。
「0か100であり、確率は推し量りようがない。明らかなのは、仮に北朝鮮がグアムであれ米領土に直接攻撃すれば、米軍が報復に動くリスクは高いということだ」
「多くの人が注目するのが中国の(軍事的な)出方だ。北朝鮮の指導者の受け入れがたい行動への対処に乗り出す必要性を認識する可能性も排除できない。もっとも、米中がどれだけ軍事面で強固な協力関係を築けるかにかかっている」
――日本は対北朝鮮で何をすべきでしょうか。
「ミサイル防衛能力の向上が大切で、米国と弾道ミサイル防衛システムの開発を続けるべきだ。中国は韓国や日本のミサイル防衛強化に難色を示すが、それを認めないなら、日韓が独自に抑止力を持つ必要性を模索することになる。中国は北朝鮮を説得できていないがゆえの結果として受け入れるべきだ」
――中東のリスクは。
「イランが支える勢力とイスラエルの衝突が主なリスクだ。イランはこの1年、過激派組織『イスラム国(IS)』との戦いを通じてイラクやシリア、レバノン、イエメンで影響力を広げた。イスラエルはその領域的な広がりだけでなく、イランが後ろ盾となる軍事勢力がミサイル能力を持つことも警戒している」
――米国はエルサレムをイスラエルの首都と認定しました。
「東西を分けずにエルサレム全体が首都だという考え方を支持しているのは米国だけだ。追随する国はほぼ出ないだろう。最大の問題点は、米国が果たしてきた中東和平プロセスを進める調停役が、他にいなくなってしまったこと。新たな役割を欧州諸国に期待する向きもあるが、まだ彼らはそこまでの外交政策を持ち合わせていない」
――ISは支配地域をほぼ失いました。テロとの戦いの行方は。
「テロはSF映画で顔を変え続けるモンスターのようなもので、見た目が変わっても同じ力を持ち続ける。支配地域が一掃されてもコピーされた手法が拡散し、戦い方を難しくする。18年もテロの脅威は続く」(聞き手はロンドン=篠崎健太)>(以上)
中国が何を言おうが、民族の生存権として脅威に対する抑止力を持つべきと考えます。今は米軍頼みで歯がゆい部分があります。日米同盟は自由・民主主義・法治・基本的人権の尊重と言った価値観を共有する同盟ですので、日本の軍事力強化と矛盾しません。
米国も国際社会の反応を見ているのでしょうが、金正恩とその手先の文在寅の時間稼ぎを許さないようにしてほしい。朝鮮半島の非核化で、一番良いのは金正恩の亡命、二番目がクーデターか金正恩の暗殺、三番目が戦術核を使った核施設の破壊、四番目が戦術核を使わない核施設の破壊となると思います。
米軍の攻撃があれば、日本の左翼メデイアとそれに洗脳されている人達が騒ぎ出すと思います。自分達の安全が脅かされているのに、意図的に知らない振りをしているのか、単なる間抜けなのかは別として。北からミサイルが飛んでくるか国内でテロが起きて被害者になって初めて気が付くのかも。或はそれでも「トランプが悪い」、「安倍が悪い」とか言いだすのでしょう。少しは自分の頭で世界の現実を見ろと言いたい。
1/8ぼやきくっくり<虎ノ門ニュース 青山繁晴氏>
(年末にハワイの太平洋軍司令部を訪問して、北への攻撃を)
「米軍は苦悩している。 やるべきだと思いつつも、民間人に犠牲を出さないというのはシミュレーションではできるが、果たして可能なのかと。最終的にはやっぱり大統領の決めることだと強調していた。」とあります。
http://kukkuri.jpn.org/boyakikukkuri2/log/eid2140.html#sequel
鈴置記事

金正恩委員長は新年の辞で「平昌五輪に代表団派遣の用意がある。核のボタンは常に私の机の上にある」と発言した(写真:AP/アフロ)
(前回から読む)
韓国と北朝鮮は最後の賭けに出た。北朝鮮ののど元を締めあげる米国の剛腕を、南北合作の「五輪休戦」でふりほどく作戦だ。
中国の支持も獲得
—1月9日午前10時から、南北朝鮮は閣僚級の会談を開き、北朝鮮の平昌(ピョンチャン)冬季五輪参加について話し合います。
鈴置:窮地に立った金正恩(キム・ジョンウン)委員長に、親北左派の文在寅(ムン・ジェイン)大統領が助け舟を出したのです。
文在寅政権は平昌五輪・パラリンピックに重なる時期――例年、3月初めごろから約2カ月間実施予定の米韓合同演習を延期し、それをテコに北朝鮮を対話に引き出す構想を温めていました(「平昌五輪『選手団派遣は未定』と言い出した米国」参照)。
平昌五輪・パラリンピックの期間中、米韓軍事演習も実施されず、北朝鮮の妨害活動も核・ミサイル実験も行われない――つまり「五輪休戦」を韓国の手で実現することで外交の主導権を握る、との目論見です。
中国の支持も得られると読んでいました。かねてから中国は米韓合同軍事演習の中断と、北朝鮮の核・ミサイル実験の中断を取引し、これをきっかけに米朝が対話に入る「双中断」を主張していました。
「五輪休戦」は五輪を名分にして、結果的に「双中断」を実現することになります(「『約束を守れ』と韓国の胸倉をつかんだ中国」参照)。そのため中国は、今回の南北会談が決まると直ちに「事実上の双中断である」と歓迎しました。
文在寅政権は政権維持のためにも「五輪休戦」を実現する必要に迫られていました。韓国民の間には、自分たちの運命を決する北朝鮮の核問題を米中と北朝鮮が仕切り、韓国は疎外されているとの不満が高まっていたからです。
- 文在寅政権の「反米・親北・従中」
| 2017年4月13日 | 文在寅氏、大統領選挙の討論会で「(米国が先制攻撃を準備する場合)北朝鮮にホットラインを通じて直ちに連絡し、挑発を中断するよう要請する」と発言 |
| 5月10日以降 | 「手続きが不透明」としてTHAADの追加配備を認めず |
| 8月15日 | 文在寅大統領、「朝鮮半島での軍事行動は大韓民国の同意なくして誰もできない」と米国の先制攻撃に反対 |
| 9月21日 | 「時期は未定」としつつ、800万ドルの対北人道支援を発表 |
| 9月27日 | 国連総会第1委員会で、北朝鮮の非核化を念頭にした「核兵器廃絶決議案」に棄権 |
| 9月28日 | 文在寅大統領、「戦時作戦統制権を早期に米国から韓国に移す」と国軍の日の記念式典で演説 |
| 10月31日 | 「中韓合意」を発表。THAADの追加配備などを否定する「3NO」とTHAADに関する協議の実施を受け入れ |
| 11月29日 | 文在寅大統領、北朝鮮のICBM発射直後に「米国が先制攻撃を念頭に置く状況にならぬよう防がねばならない」と発言、米国を牽制 |
| 12月14日 | 中韓首脳会談で「朝鮮半島の戦争は絶対に容認しない」などの「4大原則」に合意し、米国を牽制 |
| 12月19日 | 文在寅大統領、NBCに「平昌五輪期間中は合同演習を延期するよう米側に提案」 |
| 2018年1月2日 | 北朝鮮に五輪と南北関係改善を協議する高官級会談を提案 |
| 1月9日 | 南北高官級会談を実施へ |
美女応援団で再び聾落
「五輪休戦」にかける政権の意図をはっきりと語っていた人がいます。大統領の本音を体現することから「影の外交部長官」と呼ばれる、文正仁(ムン・ジョンイン)統一外交安保特別補佐官です。
2017年12月27日、国民日報のナム・ドヨン政治部長に、以下のように述べました。国民日報は大手キリスト教会の指導者が創設した保守系の中堅紙です。
平昌を平和五輪にすることには2つの意味がある。1つは軍事的な衝突が起きないとの狭義の意味。もう1つは南北関係が改善し、北朝鮮と米国の対話も始まることで朝鮮半島に平和の機運が生まれるとの広義の意味だ。文在寅大統領は後者を望んでいると思う。
—南北関係が改善したからと言って、米朝対話が始まるものでしょうか。
鈴置:文在寅政権は「南北関係が改善すれば、韓国民の間に米国主導の『第2次朝鮮戦争』への反対機運が高まる。すると米国も『非核化』要求を降ろして北と対話せざる得なくなる」と計算しているのです。
平昌五輪・パラリンピックに南北が合同チームを作って参加したり、北朝鮮が「美女応援団」を送ってきたら、韓国の空気はかなり変わると思います。
美人ぞろいのうえ、きさくで人間らしさを感じさせる「美女応援団」。2002年の釜山アジア競技大会で初登場し、韓国人の北朝鮮観を大きく変えました。
反米感情の苗床に
—でも今や、北朝鮮は核を持っています。
鈴置:確かに2002年当時と比べれば、北朝鮮に対する感情はさほど好転しないかもしれません。しかし「美女応援団」を間近に見て「北にも我々の同胞が住んでいるのだ」と思い起こし「金正恩は悪い奴だが、罪のない同胞を巻き添えにしてまで北を攻撃しようとする米国も悪い国だ」と考える人が出てくるのは間違いありません。
北朝鮮と文在寅政権にとって、それで十分なのです。韓国で米国への反感をかきたてれば、米国の先制攻撃の可能性が減じると考えているのです。
2018年春までに北朝鮮が核を放棄しない限り、米国が先制攻撃するかもしれない、との懸念が韓国内で広まっています。それは北朝鮮も同じことでしょう。それを防ぐことが彼らにとって緊急課題なのです。
米国は無条件で対話せよ
—「反米感情により攻撃可能性が減じる」のですか?
鈴置:韓国が反対すれば米国は戦争しない、と思い込んでいる韓国人が未だに多い。米国は自身の安全を担保するために北朝鮮の非核化に動いている。というのになぜか、米国が韓国を救うために介入した「第1次朝鮮戦争」のノリで考えるのです。
それに平和ムードを醸し出せば、世界の世論も米国の強硬姿勢に厳しくなるのは間違いありません。世界のほとんどの国にとって、北朝鮮が核武装しようが関係ないのです。
「何と美しい光景だったろうか。米朝を含め世界中の選手が手に手をとった平昌五輪。トランプ(Donald Trump)大統領はこの平和の尊さを心に刻み、かたくなな姿勢を改めて無条件で北朝鮮との話し合いに応じなければならない」なんて主張する左派系紙が日本でも出ると思います。
なお、文正仁特別補佐官の発言は国民日報の「文正仁『南北関係が改善すれば、韓米同盟に過度の依存も不要に』」(1月1日、韓国語)で読めます。
同盟破棄は覚悟のうえ
—「米韓同盟は不要」とも発言したのですか?
鈴置:米韓同盟に関し、文正仁特別補佐官は以下のように語りました。
我々が同盟を結ぶのは北朝鮮の脅威があるからだ。南北関係が改善すれば同盟に恋々とすることもなくなる。
驚く話ではありません。文正仁特別補佐官はこれまでも米韓同盟の破棄を主張してきました(「『米韓同盟破棄』を青瓦台高官が語り始めた」参照)。
文在寅政権は民族至上主義者の集まりです。人権を蹂躙しようが国際ルールを破ろうが、どんな政権であろうと同族なら手を結ぶのが彼らの正義です。
民族至上主義者にとって米国は民族の団結を踏みにじる邪悪な存在であり「米韓同盟はない方がいい同盟」なのです。
そこまで腹をくくっているからこそ文在寅政権は、米国を怒らす「五輪休戦」に平気で乗り出したのです。
核武装に向け最後の時間稼ぎ
—南北が手を組んで米国の圧迫と開戦を防ぐ「五輪休戦」。意図がよく分かりました。
鈴置:もちろん韓国の保守は「危険な南北対話」を批判しています。朝鮮日報の社説「『核武装完成』の時間稼ぎの会談は許せない」(1月8日、韓国語版)の結論部分を翻訳します。
国際社会が構築した対北朝鮮制裁の原則を壊したり、一部の大統領の参謀が主張するように韓米合同演習を「核開発を凍結する」との約束と取引してはならない。
そうした形の南北合意は北朝鮮が核武装完成という目標に駆け上がる間、息をつかせるものであり、北朝鮮の対話提案の下心に踊らされるものである。
「五輪休戦」で時間稼ぎするうちに、北朝鮮は米国に届くICBM(大陸間弾道弾)を完成する。そうなったら韓国は終わりだ――との悲鳴です。
一方、左派系紙のハンギョレはこうした批判を先回りして封じ込めようとしました。1月5日の社説「『軍事演習延期』が南北会談成功への道」(韓国語版)は以下のように締めくくりました。
口さえ開けば「安保」を叫ぶ保守派が、朝鮮半島が対話局面に進むことを不安視して苛立つ様は見苦しい。南北対話の進展を邪魔しないでほしい。
意表を突かれたトランプ
—「五輪休戦」は予想されていたのですか?
鈴置:こんなにあっけなく「五輪休戦」に向け、世の中が動くと読んでいた人は少なかった。米政府の目には「『反米・親北・従中』に突き進む文在寅政権がまた小陰謀をたくらんでいる」と映っていた。演習延期の申し出など、まともに取り合いませんでした。
それに業を煮やしてのことと思います。12月19日、文在寅大統領は米NBCに「五輪期間中は合同演習を延期するよう、米国に提案した」と語りました(日経・電子版「なぜ韓国は『五輪休戦』に執着するのか」参照)。
「軍事演習を予定通り実施すると、北朝鮮がテロなどで平昌五輪を妨害する可能性がある。五輪が混乱すればNBCも大損だろう」と独占放映権を持つNBCを揺さぶったのです。
韓国政府の力ではトランプ政権を動かせない。そこでNBCの力を借りたと思われます。
しかし、これに対しても米国が見せたのは冷たい反応でした。ティラーソン(Rex Tillerson)国務長官は同日「演習の予定を変える、いかなる計画も私は知らない」と述べたのです。
当然です。合同軍事演習も北朝鮮に核放棄を迫る極めて重要な圧力の一端だからです。それに演習を延期しても、北朝鮮が五輪を妨害しないとの保証はありません。
結局、その3週間後の1月1日になって北朝鮮は「妨害しない証拠」として「五輪参加」を言い出したのです。
これはトランプ政権にとっても予想外の動きでした。大統領を含め、南北会談への評価は揺れ続けました。よほど意表を突かれたのでしょう。
メダルが取れない北朝鮮
—北朝鮮は五輪に参加するつもりはなかったのですね。
鈴置:2018年1月1日に金正恩委員長が参加を表明するまで「参加しない」というのが大方の見方でした。韓国が主宰する大会であるうえ、韓国選手がメダルを多数取ると見られています。半面、北朝鮮の選手で五輪の出場枠を得たのはフィギュアスケートのペアだけ。
北がこの五輪に参加すればあらゆる点で韓国との国力の差を見せつけられ、メンツを潰すのは確実です。出場枠を得たフィギュアスケートのペアも、期限までに出場の意思を示していませんでした。
文正仁特別補佐官も同じ理由から、北朝鮮が五輪参加を表明するとは想像していなかったようです。国民日報のインタビューで「参加できる選手も少ないうえ、成績も期待できないとなれば(五輪参加は北朝鮮にとって)政治的に負担が大きい」と語っています。
朝鮮日報の元旦の社説「北朝鮮の核『3か月期限説』の中で始まる2018年」(韓国語版)の書き出しは次のようなものでした。
「北朝鮮が核を搭載したICBMを完成するのにかかるのは後3カ月」と米CIAが分析したとの報道が出て1カ月経った。新年の春までに何らかの決着が付くということだ。
韓国を排除して米国と北朝鮮が朝鮮半島問題を協議することもあり得るし、軍事的に衝突することもあるだろう。ところが我々はこの危機を他人事のように見ている。
「韓国は無視されている」と嘆くこの社説がネット版に掲載された数時間後に、金正恩委員長が「五輪対話」を韓国に呼び掛けたのです。執筆した朝鮮日報の論説委員は頭をかいたことでしょう。
予想以上の圧迫効果
—なぜ、大方の予想に反して北朝鮮は五輪参加に転じたのですか。
鈴置:外から見る以上に、北朝鮮は心理的に追い詰められていたと思われます。米国は経済、軍事、外交面で圧迫を強めています。それを瞬時でも緩めたくなったのでしょう。メダルの数で韓国に負けるなどということは、もう小事になっていたわけです。
12月22日、国連安保理は北朝鮮向け石油精製品の輸出を90%削減するなどの追加制裁決議を採択しました(日経・電子版「安保理、北朝鮮への制裁強化 全会一致で決議採択」参照)。
北朝鮮に対する制裁に乗り気でない中国も、米国の圧力で決議案に賛成しました。この制裁強化ですぐさま北朝鮮が困窮するわけではありません。が、経済がじり貧になっていくのは確実です。
米軍の爆撃機「B1B」が北朝鮮周辺を飛び回るようにもなりました。「B1B」は金正恩暗殺用と見なされており、北朝鮮は神経を尖らせています(「金正恩をコーナーに追い詰めたトランプ」参照)。
12月4日から8日まで実施した大規模の空軍演習「ビジラント・エース 18」(Vigilant ACE 18)。F22やF35など最新のステルス機を含む230機が参加、実戦に近い形で実施されました。米国は「空爆だけでお前を潰せるぞ」と腕まくりして見せたのです。
12月5日には米国務省の報道官が「北朝鮮への先制核攻撃も辞さない」と、米政府系メディア、VOAに述べました(「『北に先制核攻撃も辞さず』と言明した米国務省」参照)。
金正恩政権は「核の報復攻撃を恐れ、米国は戦争を仕掛けて来ない」と国民を安心させてきました。しかし北朝鮮に対し核兵器を使って先制攻撃すれば、米国は反撃の可能性を極小化できます。
米国務省の「先制核攻撃宣言」を読んだ北朝鮮の要人は、腰を抜かしたことでしょう。多くの日本の安保専門家も「米国は核を使う覚悟も固めたのか」と驚きましたが。
「金正恩後」を米中が協議
—「米国は北朝鮮を攻撃できない。北の核施設は中国との国境地帯にあり、核汚染の被害が及ぶ中国が反対するからだ」と言う人がいます。
鈴置:北朝鮮の指導層はそうも期待していました。でも米国はその安心材料も軽く打ち砕いて見せました。
12月12日、ティラーソン国務長官はアトランティック・カウンシル(Atlantic Council)で演説しました。
その中で「金正恩体制の崩壊後の問題に関し、中国の軍・外交部と話し合っている」と明言したのです。原文は以下です。
the diplomatic and strategic dialogue that Secretary Mattis and I chair with our counterparts, and we actually have included Joint Chief of Staff Chairman Dunford, General Dunford, and his counterparts from China as well.
These are the subjects of these dialogues, and to try ? for us to gain an understanding of, first, how credible do we think the Chinese concern is about a mass flow of refugees across the border in the event of a regime collapse. China is taking steps to prepare for such an eventuality. I think it is something that they can manage.
「中国は難民の大量流入を恐れているが、それへの備えも進めており何とか処理するだろう」と、かなり具体的に意見交換をしていることを明かしました。
指導層に広がる動揺
米中は「金正恩後の北の核」についても相談しています。「もっとも重要なことは核兵器が、それを手にすべきではない人の手に落ちることであり、米中はその問題を話し合った」というのです。
the most important thing to us would be securing those nuclear weapons they’ve already developed and ensuring that they ? that nothing falls into the hands of people we would not want to have it. We’ve had conversations with the Chinese about how might that be done.
さらに「米軍が38度線(軍事境界線)を越えることはあるだろうが、すぐに戻ると中国に約束している」というくだりまであるのです。
We have had conversations that if something happened and we had to go across a line, we have given the Chinese assurances we would go back and retreat back to the south of the 38th parallel when whatever the conditions that caused that to happen. That is our commitment we made to them.
—「北朝鮮処分」を米中で話し合っているのですね。これを読んだ北朝鮮の指導層はショックを受けたでしょう。
鈴置:北朝鮮内部に詳しい人によると、経済・軍事・外交面の圧迫を受け、指導層に動揺が広がっています。そもそも、金正恩委員長に腹心の部下はいないとされます。30歳そこそこで突然にトップに立ったうえ、相次ぐ側近の粛清で「付いて行く人」がいないのです。
米国はそこまで見切ったうえで「核を放棄するのか、しないのか」と北朝鮮を問い詰めています(「米国務長官演説は『ハル・ノート』だ」参照)。
「最後通牒」の返答期限
—「最後通牒」の返答期限はいつですか?
鈴置:それは分かりません。ただ「2017年11月末までに、CIA長官がトランプ大統領に対し『あと3カ月で、ワシントンを含む米国の全都市を核で攻撃できる能力を北朝鮮が持つ』と報告した」との情報が流されました(「『北に先制核攻撃も辞さず』と言明した米国務省」参照)。
それが事実とすれば――韓国でもこの説が広く信じられるようになっていますが――どんなに遅くても、返答期限は2018年2月末と想像されるわけです。
先ほど引用した朝鮮日報の元旦の社説「北朝鮮の核『3か月期限説』の中で始まる2018年」(韓国語版)も、それを念頭に置いて書いています。
北朝鮮が「核を放棄する」と答えれば、米朝は「放棄する条件」の話し合いに進むことになります。「核をカネで買う」うえ、在韓米軍の撤収や米韓同盟の破棄などが取引条件になるでしょう。
でも、金正恩委員長が核を手放す可能性は極めて低い。その際、米国は「テロリスト集団が核を手放さないと明言した」ことを名分に先制攻撃をしかけるつもりと思われます。
「核を放棄しない」との返答を期に、北朝鮮船舶に対する臨検を実施、北の暴発を待って攻撃する手もあります。あるいは第2の「トンキン湾事件」(1964年)を起こすかもしれません。
—しかし、南北の間で対話が始まれば……。
鈴置:そこです。最後通牒への回答期限を誤魔化して先送りするためにも、南北対話は活用されていくと思います。
「我々は今、平和に関して話し合っているのだ。邪魔しないでくれ」と米国に言うつもりでしょう、北朝鮮と韓国は。声をそろえて。
| ●「五輪休戦」を巡る動き | ||
| 2017年11月29日 | 北朝鮮、ICBM「火星15」試射、「核武装を完成」 | |
| 12月19日 | 文在寅大統領、米NBCに「五輪期間中は合同演習を中断するよう米国に提案した」 | |
| 2018年1月1日 | 金正恩委員長、新年の辞で「平昌五輪に代表団派遣の用意ある。核のボタンは常に私の机の上にある」 | |
| 1月2日 | 文在寅大統領、南北対話の速やかな実施を指示。韓国、北朝鮮に「高官級会談の1月9日開催」を提案 | |
| 1月3日 | 北朝鮮、南北連絡チャネルを再開、五輪参加を協議と発表 | |
| 1月4日 | 米韓首脳、電話協議で合同軍事演習の延期に合意 | |
| 1月5日 | 北朝鮮、高官級会談の開催を受諾 | |
| 1月9日 | 板門店で南北高官級会談へ | |
| 2月9-25日 | 平昌冬季五輪 | |
| 3月9-18日 | 平昌冬季パラリンピック | |
(次回に続く)
武藤記事

金正恩が「新年の辞」で平昌五輪への代表団派遣に言及
北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長にとって、2018年は生き残りをかけた「節目の年」となりそうだ。
1月1日、金委員長は国営メディアを通じ、「新年の辞」を発表した。この中で、米国への威嚇と韓国との対話姿勢に言及、硬軟織り交ぜた内容にして、国際社会を惑わすことを狙った。
まず、金委員長は、米国本土全領域が核攻撃の射程内にあり、「核のボタンが私の机の上に常にある」と威嚇しつつ、核弾頭と弾道ミサイルの増産・実戦配備の加速を指示した。一方で、2月に開催される韓国・平昌オリンピックについて「心から成功を願う」と述べ、代表団を派遣する用意があるとした。ただ、南北関係の改善を進めるために米韓合同演習の中止などを要求することを忘れなかった。
しかし、結論から言えば、金委員長が核ミサイルの開発・配備にこだわる限り、国際社会の流れは止められないと思う。対する日米韓にとっての今年の課題は、いかに北朝鮮の政権交代を図っていくかということである。
金委員長の発言に対し、韓国の文在寅大統領はすぐさま歓迎の意向を示し、趙明均(チョ・ミョンギュン)統一相も高官級の南北当局者会談を9日に板門店で開催することを提案した。中国も、対話による問題の解決を進めるように促した。
一方で米国のトランプ大統領は記者団に「様子を見よう」と発言、対話姿勢に疑問を呈した。日本でも、「北朝鮮は、米韓関係にくさびを打とうとしているのではないか」との反応が見られた。 米国を始めとする国際社会は、決して北朝鮮の核保有を容認せず、これを前提とした対話には応じられないとの立場である。しかし文在寅大統領は、平昌オリンピックを契機として北朝鮮との対話を模索しており、これに目をつけた形で揺さぶりをかけてきたのだ。
金正恩発言に対し反応が分かれる国際社会
北朝鮮の戦略は、核ミサイルを保有することで「核保有国」として認めさせ、米国と対等に交渉して自国の安全を確保するとともに、経済制裁を取り下げさせるというものだった。
そのため、北朝鮮は昨年11月29日、米国本土全域を攻撃できるICBM「火星15」の発射実験に成功したとして、「核戦力の完成」を宣言した。
しかし、北朝鮮のそうした期待に反し、核保有を公言した後も米国主導によって経済制裁は一層強化され、米国は北朝鮮をテロ支援国家に再指定した。これにより、北朝鮮への輸出のほぼ全てが遮断されたほか、石油精製品も9割削減され、公海上での石油を始めとする輸出品の積み荷の移転取り締まりも厳しさを増している。
北朝鮮が韓国を狙い撃ちにして仕掛けた”揺さぶり作戦”
このまま行けば、早晩、北朝鮮経済は立ちゆかなくなることは目に見えている。そうした状況を打破しようとした”揺さぶり作戦”が「新年の辞」であり、国際社会の結束の中で最も揺らいでいて”軟弱”な韓国を狙い撃ちしたものなのだ。対話を進めることで時間を稼ぎ、あわよくば北朝鮮に対する国際的な包囲網を打ち破ろうという思惑があったものと見られる。
こうしたタイミングで、北朝鮮は初めて「文在寅大統領」と呼び、中断していた南北間の通話ルートを再開させた。ただ、米国からの報道によれば、近日中に再度、弾道ミサイルを発射する兆候もあるようで、韓国を盾に核ミサイル開発を続けるつもりなのかもしれない。
実は、今回の「新年の辞」のような揺さぶり作戦は、2014年に開催された仁川アジア大会の際にも行われた。
大会の閉会式に、当時、北朝鮮の「実力者3人組」だった黄炳瑞(ファン・ビョンソ)人民軍総政治局長、崔龍海(チェ・リョンヘ)労働党書記、金養建(キム・ヤンゴン)党統一戦線部長を突然派遣。韓国では、金寛鎮(キム・グァンジン)国家安保室長や柳吉在(ユ・ギルジェ)統一部長官などか空港に出迎え、南北対話に対する期待が一気に高まった。実際、南北間の超高官級接触の再開にも合意していた。
しかし、一行の訪問直後、北朝鮮は西海(黄海)北方境界線(NLL)での交戦や、非武装地帯(DMZ)でビラ射撃を行った。そしてその後、韓国の民間団体のビラ散布を問題視して高官級接触を一方的に白紙に戻したという過去があるのだ。
そうした北朝鮮の今回の提案は、あくまでも核保有を前提としたものであって、日米などにとっては受け入れられないもの。そればかりか、北朝鮮は米韓合同軍事演習の中止まで要求している。
これに対し韓国は、北朝鮮の非核化こそ求めているものの、それを対話の入り口とはしていない。また、米韓合同演習については、米国に対しオリンピック期間中を避けることを提案、米国はこれを検討中であると公表した。こうした韓国の姿勢が、北朝鮮に利用されたのである。
しかし、米国のティラーソン国務長官は、そうした事実は承知していないと語っており、マティス国防長官も演習を中止する考えはないと述べている。米国は、北朝鮮の脅威に備えるためには合同演習が不可欠だとの立場であり、北朝鮮の要求は到底のめるものではないのだから当然だ。
つまり、北朝鮮は姑息な手段で延命を図ろうとし、韓国がそれに乗ってしまったという構図。文政権には本当に困ったものである。
核保有を認めて”管理”するのは可能か
確かに、米国国内においても、北朝鮮の核ミサイル開発はもはや完全に止められないのだから、核の保有は認めつつ、対話を進めることでこれを”管理”することを検討すべきだとする意見がある。オバマ政権に近い筋がこのような見解を述べている。しかし、それは可能かなのだろうか。
安倍晋三首相は、「対話のための対話は無意味」だと語っているがその通りである。それは、これまでの北朝鮮の行動を検証してみれば分かることだ。 金委員長は、前述した仁川アジア大会のときのように、約束したことを簡単に反故にしており、ただの一度として守ったことはない。核施設の査察をIAEAに認めるとした約束も誠実に実行せず、最終的には反故にした。また、異母兄の金正男氏を大量破壊兵器となり得る猛毒のサリンで殺害した。
そのようなことをしてしまう指導者が、核を使わないという保証はない。まして、武器を密輸し、資金を確保することを”生業”としている北朝鮮が、核をテロリストに譲渡しないという保証などどこにもないのだ。
要するに「核を管理する」という主張は幻想でしかない。特に日本にとって、核ミサイルを保有する北朝鮮を米国が容認するということは、金委員長が国内で行っている横暴を国際社会の中でも許しかねないという意味で、安全保障上きわめて深刻な脅威となるだろう。
北朝鮮の核ミサイルがどこまで完成したかは、専門家の間でも意見の分かれるところである。しかし、筆者もこれまでダイヤモンド・オンラインに寄稿したように、金委員長としては、もはやこれを自ら進んで放棄することができないところまできていると見るべきだろう。いや、最初から放棄するつもりなど、さらさらなかったと考えるべきだ。これまで、北朝鮮の”良心”に期待してきたのは無駄だった、それによって一層、危険度が増してしまったと言えるのだ。
これに対し、米国を始めとする国際社会の大勢も、国連制裁などで北朝鮮に対する包囲網を狭めてきており、北朝鮮との対立は核ミサイルの放棄なくして反転することはない。要するに、北朝鮮の核ミサイル問題を巡る対立は決定的で、もはや止めることができないのである。
米軍の軍事行動による犠牲を最小限にする擦り合わせが必要な時期
そこで浮上するのが米軍による軍事行動である。
日本国内には、もし北朝鮮を非核化するために米軍が軍事行動を起こした場合、犠牲が甚大となる可能性が高いので、安倍総理は「朝鮮半島では絶対に戦争を起こさせない」とする文大統領と一緒になって、トランプ大統領の軍事行動を制止するべきだとの議論がある。
筆者も、軍事行動は非常に大きな犠牲を伴うと考えており、できる限り避けるべきだと考えている。しかし、だからと言って、北朝鮮の核ミサイル開発を容認してもいいと考えているわけではない。金委員長が国内で行っている専制政治の余波を、日本が受けることだけは絶対に避けなければならない。
今のところ米国は、北朝鮮に対する軍事行動には慎重な姿勢を見せている。だが、軍事行動を起こす確率は徐々に高まってきているというのがおおかたの見方だ。軍事行動は最後の手段だろうが、決断された時には、現実問題として止めるのは難しいだろう。
だとすれば、軍事攻撃以外の選択肢にいかなるものがあるか、それを尽くしたのか、仮に最悪、軍事行動が不可避な場合、わが国への犠牲をいかに最小限にとどめるかといったことを、米国と擦り合わせざるを得ない時期に来ているのかもしれない。
もう一つの選択肢として、直接軍事力を使わず金正恩体制を変えるという方法があり、今後、その動きが強まるのではないかと考える。そして、こうした流れに、中国がすでに組み込まれているのではないか。
ティラーソン米国務長官は昨年12月22日講演の講演で、半島有事の際の難民対策や核兵器の管理について中国と協議している、仮に米軍が38度線を越えて北朝鮮に侵攻した場合でも、条件が整い次第、撤退することを中国に「確約」すると伝えていると述べた。
米中の間で議論が始まっている北朝鮮有事への対応
こうした発言は、米中の間で北朝鮮有事への対応について話し合いが始まっているからこそ出てくるもの。中国では、「米国の北朝鮮攻撃不可避論」や「中国の北朝鮮介入論」が徐々に高まっていると聞く。
また、中国共産党関係者からは、有事の際に中国軍が北朝鮮領内に入り、核ミサイル施設を制圧し管理するとの発言もあった。中国の習近平国家主席が昨年夏ごろ、すでに吉林省に難民キャンプ5ヵ所の設置を指示したとの情報も伝えられている。
中国は、米国に北朝鮮との対話を促しながら、一方でこうした現実的な対応も始めている。そうした流れは、習主席の特使として北朝鮮を訪問した宋濤(そう・とう)政治局員が、金委員長との面会すら実現しなかったあたりから強まったと見られる。
北朝鮮で政権交代を促すためには、あくまでも米国の軍事的な圧力が背景となるだろうが、最終的にどのような決着になるかは米中の話し合い次第だ。米中がそろって介入することで、北朝鮮の反撃能力を取り除くことができれば、日本の犠牲は最小限にできるだろうし、米国が北朝鮮を崩壊させることが確実になれば、中国が先に手を下すかもしれない。
また、米国や中国が直接、手を下すのではなく、朝鮮人民軍のクーデターによって政権が交代する方がより犠牲は少なくなるであろうし、その方が望ましい。これまで、北朝鮮におけるクーデター計画は未然に防止されてきた。
しかし、米国ないし中国が後方支援するとなればクーデターを行おうとする動きが出てくるかもしれないし、成就する可能性も高まろう。秘密裏にクーデターを支援するという場合、米国よりも中国の方が協力しやすい面もあるだろう。
日本はタブーを捨て現実的に対応するべき
日本は、これまでこうした議論は避けてきた。しかし、それで本当にわが国の国民の安全を守れるのか。そろそろタブーを捨てて、現実的に対応することが国益に資するのではないか。状況さえ把握していなかったという事態は最悪である。
そしてもう一つ。日本にとって重要なことは、米中の話し合いが先行することがないよう、米国との連携を強化しつつ、米中の連携を後押ししていくことだろう。
文大統領も、こうした選択を迫られた時に影響力を行使できるよう、米中の首脳といい関係を結んでおくべきなのだが、実際にやっていることはこれに逆行するもの。日本に対しても、慰安婦問題などで挑発的な行動に出ている。日米韓の連携が最も重要な時期に何を考えているのかと思うが、それが現実である。韓国とどのような協力が可能か、今しばらくは様子を見るしかない。
こうした動きが本格化するのは、中国の人事などが固まる3月の全国人民代表大会(全人代)以降だろうが、残された時間は少ない。今すぐにでも日本として現実的に取り得る対策は全て整えていく必要がある。
(元在韓国特命全権大使 武藤正敏)
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