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『中国「薬酒は毒薬」と批判した医師逮捕の背景 地方政府と地元企業の癒着で口封じか』(5/25日経ビジネスオンライン 北村豊)について
5/29アノニマスポスト<米国の韓半島専門家30人全員「完全非核化の可能性ない」 クリストファー・ヒル元6カ国協議米国代表も「北の非核化? 私はビール1杯も賭けない」~ネットの反応「専門家じゃない俺でもわかるよ」>あのヒルですら非核化しない方に賭けると言っています。北に騙され続けた男で、バンコデルタアジアの制裁をブッシュ(息子)に勧め、制裁を解除させ、資金を中国に移された愚か者ですが。国務省はこう言う手合いが多いです。
http://anonymous-post.com/archives/24134
https://www.newsweekjapan.jp/stories/2009/05/post-143.php
5/30日経朝刊<米朝会談、延期が賢明だ 本社コメンテーター 秋田浩之
いったん中止になった米朝首脳会談をよみがえらせようと、実務者の調整が続いている。だが、実現するにしても、6月12日の開催は先送りするのが賢明だ。
米報道や取材からうかがえる米政権内の様子を冷静に見つめると、いま首脳会談を開いても、得られる成果より、こうむる損失の方が大きいと思えるからだ。
トランプ米大統領は実務者協議で細部を詰めさせ、成功の手応えをつかめてから、金正恩(キム・ジョンウン)委員長と会うべきだ。そう考える理由は少なくとも3つある。

第1に、米国が求めるように、短期間で核を放棄する決断を正恩氏が下したのかどうか、なお分からない。
核の申告、査察、核の搬出……。北朝鮮はこれら非核化の段階ごとに制裁緩和や米韓演習の停止といった見返りを求めるつもりだろう。作業に何年もかかり、結局、時間稼ぎにつながってしまう。
北朝鮮は5月16日と24日の声明などで、リビアのような先行核放棄をはっきり拒んでいる。26日の南北首脳会談でも、その立場が変わったという形跡はない。
複数の外交筋によると、文在寅(ムン・ジェイン)韓国大統領もこうした北朝鮮の態度には気づいている。にもかかわらず、トランプ氏に「金正恩氏の非核化の決意は本物だ」とささやき、米朝首脳会談にもっていこうとしているフシがある。自国が戦場になり、何十万人もの死傷者が出ることは、何が何でも避けたいからだ。
だが、核放棄の意思があいまいな正恩氏とトランプ氏が会談しても解決にはならず、朝鮮半島から戦争の影は去らない。
延期すべき第2の理由は、トランプ氏が会談に応じたら、事実上、制裁を緩和したのと同じになってしまうことだ。彼と正恩氏が笑顔で握手する映像が流れれば、各国は「もう制裁を徹底しなくてもいい」と感じ、対北交流の蛇口を緩めてしまうだろう。
すでに、制裁網はほころびつつある。中朝国境では、国連制裁で規制されている海産物の交易などが復活した。韓国は今月、軍事境界線にある宣伝放送用のスピーカーの撤去も決めた。
国連制裁の中身は変わらないとしても、首脳会談が開かれれば、この流れは加速する。正恩氏は余裕を取り戻し、ますます核放棄を渋るにちがいない。
それでも、ち密に練られた戦略と万全の体制がトランプ氏にあるなら、正恩氏との直接会談で解決の糸口をつかめるかもしれない。だが、残念ながら、現実は逆に映る。これが延期が望ましい第3の理由だ。
「いま、急いで政府内の北朝鮮専門家を集めているところだ」。6月12日の会談日程が決まった5月上旬、米政権内からはこんな焦りの声が漏れた。
北朝鮮問題に詳しいジョセフ・ユン北朝鮮担当特別代表が3月に辞任するなど、「厳しい米朝交渉を仕切れる専門家がトランプ政権には少ない」(元米高官)。このため、ユン氏の前任者で、駐フィリピン大使であるソン・キム氏を急きょ、マニラから呼び、27日から米朝事前協議に当たらせている始末だ。
6月12日まで約2週間しかないなか、米朝の隔たりを縮め、首脳会談の舞台を整えるのは至難の業だ。ホワイトハウス高官も「6月12日とは、まるで10分後のようなものだ」と語り、準備が難しいことを認めた。
内情を知る米外交専門家によると、米政権内にも開催に慎重論があるものの、11月の中間選挙に向けて外交の手柄を急ぐトランプ氏に直言し、翻意させられる側近や閣僚は少ないという。
では、このままトランプ氏が正恩氏との会談に突っ込んだら、どうなるか。2つのシナリオが考えられる。いずれも望ましくない展開だ。
ひとつは、両首脳があいまいな非核化の合意でお茶を濁し、細部は実務者協議に丸投げするというものだ。トランプ氏は「会談は成功した」と勝利を宣言するだろうが、実態は負けである。
すでに触れたように、北朝鮮は完全な核放棄を確約しなくても、この会談によって、各国の制裁を緩ませることができる。そうなれば、トランプ氏が大統領選に忙殺される2020年まで、時間を稼ごうとするだろう。
もう片方のシナリオは、会談が決裂し、その責任を相手になすりつけ合う展開だ。トップ会談でケンカ別れしたら、実務者の協議で修復するのはさらに難しい。非核化の展望を描けないまま、朝鮮半島は昨年のような準戦時ムードに逆戻りしかねない。
トランプ氏がそれでも6月12日の会談にこだわるなら、2つの条件を正恩氏にのませることが、欺かれない最低条件になる。
まずは、非核化の完了に、長くても「2年以内」という期限を設けること。もうひとつは核放棄を検証するため、国際的な抜き打ち査察を認めさせることだ。これらの確約を取りつけられれば、時間稼ぎという最悪の展開は防ぎやすくなる。
もっとも、約25年の対米交渉の蓄積がある北朝鮮と渡り合うのは、一筋縄ではいかない。いまトランプ氏に必要なのは、北朝鮮に融和的な文大統領よりも、彼らへの疑念が強い安倍晋三首相の助言だ。安倍氏が育ててきた「シンゾー・ドナルド」関係の価値が、いまほど試される時はない。>(以上)
5/30日経電子版<6月7日に日米首脳会談 ホワイトハウスで>
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO31131460Q8A530C1MM8000/
多分ここまで来れば米朝首脳会談は開催しないことはないのでは。但し、ネットではマリーナベイサンズは6/12は一般客に開放したとの情報です。<シンガポールのホテル、6月12日の予定をキャンセル済み!!! 一般客が普通に泊まれる状況に… どうなるんだこれ???>秋田氏が心配するのは北に騙されないかと言う所です。米朝首脳会談前に安倍首相が訪米し、CVIDと拉致被害者帰還をトランプに強く要請するのは良いことです。秋田氏の「「シンゾー・ドナルド」関係の価値が、いまほど試される時はない」というのはまさにピッタリです。
http://www.news-us.jp/article/20180529-0000011w.html
5/30NHKニュース<外国人の人材受け入れ拡大へ 新たな在留資格創設へ>日本の役人も経営者もクズが多いとしか思いません。安全に対する歯止めもなく外国人を受け入れていけば、日本を危殆に瀕する事態が起きてしまうでしょう。移民政策と何ら変わりません。口先だけで誤魔化そうとするのは良くないです。少なくとも反日教育している国からは受け入れないというのを条文化する必要があります。中国・韓国が文句言って来たら「反日教育を止めろ」と言えば良いだけです。日本人は覚悟がないから、相手から舐められるのです。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20180530/k10011457661000.html?utm_int=news_contents_news-main_005
5/30日経朝刊<中国国産空母の死角
中国が初の国産空母「001A型」の航行試験を開始した。同空母は早ければ2019年にも正式に就役し、旧ソ連製を改造した「遼寧」と合わせ2隻体制となる。国家の威信をかけた空母の建設がなおも続くが、そこには「死角」もある。

5月13日、大連港から1回目の試験航海に出る中国初の国産空母「001A」型=ロイター
5月13日に大連港を出て黄海で6日間にわたり最初の航行試験をした001A型は、全長315メートル、満載排水量約5万トンで戦闘機は30機程度搭載できるようだ。米海軍が10隻運用する原子力空母ニミッツ級(333メートル、約10万トン、60機程度)に比べやや細身な空母だ。
「今世紀半ばまでに中国軍を世界一流の軍隊にするよう努める」――。2017年10月の共産党全国代表大会で習近平(シー・ジンピン)国家主席はこう強調した。政権にとって、空母は「世界一流の軍隊」の象徴であり、保有は30年以上前からの悲願だった。
中国軍がオーストラリア軍の廃棄した空母を鉄くず名目で買って研究に着手したのが1985年。その後、旧ソ連製空母のスクラップを3つ入手し研究を続行。3つ目は改造して「遼寧」と命名し、運用実験に供している。これを複製したのが今回の001A型だ。
空母にはさまざまな用途がある。第一に、本国から離れた海域に空母を派遣し軍事作戦をする「戦力投射」だ。さらに、大規模災害対処など「平時の活用」や、敵対国を威圧する「心理戦の道具」という使い道もある。
ただ戦力投射に限って言えば、中国軍の空母は米空母には遠く及ばない。米空母は巡洋艦や攻撃型原子力潜水艦などと「空母打撃群(CSG)」を組む。打撃群の運用には艦隊の組み方やデータ共有など独特の技が求められ、米海軍関係者は「一つの国がこれを習得するには100年はかかる」と自信ありげに語る。
米海軍は、搭載武器を含めて重さが20トン以上にもなるジェット戦闘機を短い飛行甲板からのべ何千回も打ち出せる「カタパルト」を保有する。未保有の中国軍は、搭載武器を減らしたうえで戦闘機を「スキージャンプ台」と呼ばれる飛行甲板から離陸させている。
戦闘機自体も現在はステルス性能のない「第4世代」機なので、仮にこの先、米中の空母部隊が激突しても、中国軍機は「第5世代」の米軍機に撃ち落とされてしまう。
それでも中国軍は空母の量産や改良を重ね、今後十数年をかけて原子力型を含め5~6隻を持つ見通しだ。ただ、そこには死角も潜む。中国が米軍に比肩する空母部隊を保有しても、そのころには大型空母そのものが時代遅れになっている可能性が出てきたのだ。
米軍は、短い飛行甲板でも離着陸できるステルス戦闘機F35Bの配備を始めている。同機は、離陸にカタパルトを必要としないことや垂直に着陸できるなどの優位点があり、米国から同機を調達できる同盟国であれば、無理をして大型空母を保有する理由がなくなりつつある。また、大型空母は対艦ミサイルや潜水艦の魚雷攻撃の標的になりやすい。今後は複数の小型空母とF35Bのような戦闘機を組み合わせて運用した方が、リスクも建造費も減らせるのだ。
実際、日本の防衛省・自衛隊はその方向で動いている。海上自衛隊は長年、日米共同訓練などを通して空母部隊の運用ノウハウを学んできた。海自最大の護衛艦いずも級(全長248メートル、満載排水量約2万7000トン)は、F35Bを十数機搭載できる。日本が同機を調達し、いずも級などと組み合わせれば、中国空母部隊に対抗可能な、あるいはそれ以上の実力を備えた「日本版空母部隊」を短期間に実現できる。
肝心の戦闘で負けない実力がいつできるかは別にして、中国の空母が、周辺国を威圧する「心理兵器」なのは確かだ。巨額の軍事費は、戦闘機や潜水艦の急激な増強ももたらしている。米国が環太平洋合同演習(リムパック)への中国招待を取り消したり、南シナ海で「航行の自由」作戦を実施しているのも、中国軍の増強ぶりが無視できないからだ。
弱点を抱えながらも膨張を続ける中国軍を、過大評価も過小評価もせずに注視し続ける姿勢が求められる。(編集委員 高坂哲郎)>(以上)
日本がアジア諸国を中国の魔の手から守らなければ、やがて日本もそれに膝を屈することになります。運命共同体という事です。それを邪魔するのは中共の手先と化した日本のメデイアと左翼野党です。まあ、彼らの言うことを簡単に信じる方も信じる方ですが。まだモリカケに対し、疑惑は深まっていると思っているのが多いという世論調査結果(5/14JNN世論調査、柳瀬氏招致で「疑惑深まった」74%)ですから。衆愚になっています。もっと自ら情報を取りに行けと言いたい。
中共の世界制覇の野望を抑えるのは多国間同盟と軍事力の充実(装備・人材・予算)です。NATO日本支部ができたことは良いことです。
北村氏記事は相変わらず中国人には正義の概念がないという事実です。公安、検察、人民法院総てグルになり、一人の市民を犯罪者として追い込むことが当り前のように起きています。今回はメデイアの加勢で少しは追及の手を緩めることができた部分はありますが、メデイアもいつも庶民の味方とは限りません。当然賄賂で動く記者もいますので。しかし本文章の最後の「中国憲法の第35条には国民が言論、出版の自由を持つことが明記されているのだが。」というのには笑えます。如何に中国と言う国が嘘で成り立っているかという事です。日本の護憲を主張する学者やメデイア、政治家はこれをどう見ますか?尖閣を侵略しようと虎視眈々と狙っている国ですよ。防衛力強化は焦眉の急でしょう。日本人を中国人の奴隷としないためには日本と言う国を強くしなければなりません。
記事

強引な手法で医師による謝罪を取り付けたが……。
2017年12月19日、広東省の医師“譚秦東”は、社交チャットソフトの“美篇APP”を使い、ネット上に『中国の神酒“鴻毛(こうもう)薬酒”は天国から来た毒薬である』と題する文章をTonyというハンドルネームで書き込んだ。彼は医師としての立場から人々に警鐘を鳴らすことを目的にその文章をネットに掲載したのだが、それが大きな事件に発展しようとは夢にも考えていなかった。当該文章の概要は以下の通り。
(1)中国の神酒は毎日1瓶飲むだけで天国により近くなる。人間が老年に到ると、心臓や血管に明らかな変化が生じ、心筋梗塞の類の心血管疾患および脳卒中の類の脳血管疾患を引き起こす根源となる。心血管系の変化には、1~5項目がある(各項目の詳細は略)。
(2)血管の老化と“粥様硬化(アテローム)”<注1>が管腔狭窄、血流抵抗の増加、流動の停滞などを引き起こす。たとえば、20~30歳代では総循環時間が42.8秒なのに、60~70歳代では58.5±3.7秒まで延び、80歳代では65.3秒まで増加する。血流が緩慢になる結果、老人では動脈と静脈の酸素量の差が増大するので、とりわけ高血圧、糖尿病の老人は酒を飲んではならない。“鴻毛薬酒廠”の広告の主たる消費者は基本的に老人である。老人が退職した後の時間潰しで最も多いのはテレビであり、鴻毛薬酒は“中央電視台(中央テレビ)”から地方の小さなテレビ局までテレビ広告を通じて人々の心に侵入している。どんな病気でも治ることを保証する販売広告は幾度も禁止命令が出されているのに、止まないのはなぜか。巨大な商業利潤の後ろには大きな企業が存在するからである。
<注1>アテロームは医学用語で、嚢腫状腫瘍や粥(じゅく)腫を指す。
凉城県の経済発展を担う鴻茅薬酒
上記の文章には“鴻毛薬酒”と書かれているが、中国語の“毛(mao)”と“茅(mao)”の発音が同じであることから、それが実はテレビで宣伝を繰り返している“鴻茅(こうもう)薬酒”を指すことは容易に見当が付いた。本来ならばTonyというハンドルネームで文章を発表すれば、それが誰かは特定できないのが普通であるにもかかわらず、譚秦東は“鴻茅薬酒”を直接名指して批判するのを避けて、実在しない“鴻毛薬酒”と書いて批判を婉曲なものとしたのだった。
ところで、“鴻茅薬酒”は内蒙古自治区の中南部に位置する“烏蘭察布市(ウランチャブ市)”の管轄下にある“凉城(りょうじょう)県”で生産されている。凉城県は人口25万人程の小さな県で、主たる産業は牧畜業であるが、工業で最大の企業は“鴻茅薬酒”を生産する“内蒙古鴻茅国薬股份有限公司”(以下「鴻茅国薬」)である。2017年に鴻茅国薬が凉城県政府に納めた税金が3.5億元(約60億円)であったのに対して、2016年の凉城県の財政収入予算は4.1億元(約70億円)であったことから考えて、鴻茅国薬は凉城県にとって極めて重要な経済的支柱であり、その鴻茅国薬が中国全土へ販売する鴻茅薬酒は、凉城県の経済発展を担っていると言っても過言ではない製品なのである。
相次いだ薬効への疑問の声
一方、2018年4月13日に内蒙古自治区の経済界主催で発表された「2017年内蒙古年度経済ランキング」の2017年十大経済人には、鴻茅国薬の“董事長(会長)”である“鲍洪升”が選出された。これは鴻茅国薬にとって栄誉であるだけでなく、人口25万人程の小さな県である凉城県にとっても名誉なことであった。なお、鴻茅薬酒は“甲類非処方薬(自分の判断で購入・使用が許される医師の処方を必要としない薬)”であり、中央テレビの2018年第一四半期における広告頻度が最も高い商品であったが、それに反比例する形でその薬効に疑問を投げかける声は高かった。
さて、この文章を引き金にして惹起された事件の経緯を述べると以下の通り。
【1】2017年12月22日、鴻茅国薬は“凉城県公安局”に事件を通報した。それは、インターネット上に誰かが「鴻茅薬酒は毒薬である」と悪意の中傷を行ったと通報したものであり、インターネット上に虚偽の情報が大量に流されたことにより、多数の代理店から返品や返金の要求を受け、鴻茅国薬は多大な損失をこうむったという事件だった。凉城県公安局は2018年1月2日に事件を立件して調査に着手し、鴻茅薬酒を毒薬と中傷した文章が投稿された際に使われたソフト「美篇APP」の運営元から投稿者の身元を聴取することにより、当該文章は広東省“広州市”の医師である譚秦東が書いたものであることを突き止めた。この結果を踏まえて、凉城県公安局は、譚秦東の行為が企業の信用と商品の名声を毀損したことは明白であり、証拠も十分あると判断した。
【2】1月10日、凉城県公安局は被疑者である譚秦東に対し強制的に刑事拘留を行うことを決定し、内蒙古自治区から遠く離れた管轄外の広東省広州市まで警官を派遣した。同日の夜、譚秦東は“広州市天河区中山大道”にある住宅団地“旭景佳苑小区”の自宅へ帰ってきたところを4人の男に取り囲まれ、地面に押し倒されて逮捕された。この時、譚秦東の妻である“劉璇(りゅうせん)”は隣人から急報を受けて家から出て、譚秦東が逮捕されるのを目撃した。彼女が男たちに「何をするの」と叫ぶと、その中の1人が警官証を提示し、譚秦東に強制措置を執ると告げたという。譚秦東はその日のうちに内蒙古自治区の凉城県へ連行されていったが、その後に劉璇は譚秦東の連行が12月に彼が書いた文章に起因することを知ったのだった。
【3】凉城県へ連行された譚秦東は、1月11日に“凉城県留置所”へ到着し、12日には刑事拘留されることが決定した。1月18日に凉城県公安局が逮捕状を請求し、25日に“凉城県人民検察院”が批准したことにより、譚秦東は正式に逮捕されて凉城県留置所に拘留されることになった。なお、譚秦東が弁護士に語ったところによれば、捕えられた後に彼は自宅がある天河区の“車陂派出所”で凉城県から来た警官による尋問を受けた。その後は深セン市、北京市を経由して凉城県へ到着したが、彼を捕捉、護送したのは4人の男たちでその中の3人は警官だったが、残りの1人は鴻茅国薬の高級管理職であり、凉城県へ戻るまでの全ての費用はその男が負担した。北京市から凉城県までの護送には鴻茅国薬の商用車が使われ、この車を運転した高級管理職は彼に対する尋問にも必ず同席していた。
【4】譚秦東に対する取調べは連日続けられ、3月13日に凉城県公安局は譚秦東に関する起訴意見書を完成させたが、そこには「譚秦東の文章により全国の商店や消費者から大量の返品が殺到したことにより、鴻茅国薬の直接損失は143万元(約2430万円)に上った」と書かれていた。また、その罪状は企業の信用と商品の名誉を棄損した容疑となっていた。
【5】4月14日、メディアの記者が譚秦東担当の警察官に確認した結果、この事件に関する凉城県公安局の調査は終了し、事件はまもなく凉城県人民検察院へ送られて審理が開始されることが判明した。これを聞いた譚秦東の妻の劉璇は、譚秦東を逮捕しに来た4人の警官の中に鴻茅国薬の人間が1人含まれていたことを提起した。さらに、弁護士が譚秦東の保釈を申請しようとしたところ、凉城県公安局が鴻茅国薬の了承書が必要と言明し、さらに保釈を要請すると、鴻茅国薬の意向の確認が必要と述べたことが判明した。弁護士はこうした凉城県公安局の対応は明らかな規則違反であると問題を提起した。これらの事実がメディアによって報じられると、世論は大きく反応し、譚秦東は凉城県公安局によって不当逮捕されたとして、凉城県公安局の責任を追及する声が上がった。
【6】4月16日、中国政府“国家薬品監督管理局”がこの事件に反応し、鴻茅国薬に対し過去5年間に各地の薬品監督管理部門から合計2630回の虚偽および誇大広告で通告を受け、商品の販売停止処分を何十回も受けていることの原因と問題点を社会に明確に説明するよう命令を出した。同日、“中国医師協会”法律部門は鴻茅薬酒事件に関する声明を発表し、譚秦東に法律支援を行うと表明すると同時に、3項目の呼び掛けを行った。それは、1. 各医薬企業は『医療広告管理規則』を遵守して広告を出す、2. 薬品に関する異なった観点に対して慎重に対応し、生命に責任を負う、3. 公権力機関は異なった学術的見解や意見に対応を慎重にし、民事紛争が刑事事件に発展するのを阻止するというものであった。
【7】4月17日、中国政府“公安部”は鴻茅薬酒事件に関し、内蒙古自治区の公安機関に対して法に照らした調査を行い、法執行の監督を強化し、事実を根拠に、法に基づく処理を厳格に行うよう命令を出した。これを受けて、“内蒙古自治区人民検察院”は「本案件は事実が不明瞭で、証拠も不足している」旨の通知を出し、同時に凉城県人民検察院に対して鴻茅薬酒事件の調査打ち切りと強制措置の解除を命じた。この結果、同日の夕刻に譚秦東は保釈が認められ、凉城県留置所から釈放された。保釈までに3カ月間も拘留された譚秦東は、留置所から出所するとメディアの取材に答えて「“自由真好(自由は本当に良い)”」と述べたという。この日、国営通信社の「新華社通信」は評論を発表して「“跨省追捕(省を跨いでの追跡・逮捕)”は厳格に手続き、法規などに準じて行わねばならず、決して気ままに行うべきではない」と表明した。
【8】釈放された譚秦東はメディアに対してコメントを発表して次のように述べた。すなわち、自分は鴻茅薬酒に関連する文章を書いたことを後悔していない。あれは医師として当然問題を提起しなければならないことだった。早く釈放されて非常に嬉しいが、これは多くの皆さんやメディアの方々が本件に注目してくれたおかげであり、衷心より感謝します。拘置所で過ごした100日近い日々は、私にとって一種の修行であった。
【9】しかし、こうして釈放の喜びに浸っていたのもつかの間のことで、譚秦東は4月下旬頃から精神的に不安定な状態になり、医院で心理療法を受けて症状は回復に向かっていた。
12時間にも及んだ尋問
そんな矢先の5月11日、内蒙古自治区の凉城県から警察官が広州市へ到着し、保釈中の譚秦東に対して広州市天河区の車陂派出所へ出頭を命じたのだった。譚秦東はこの出頭命令に応じて車陂派出所へ出向いたが、そこで待っていたのは12時間に及ぶ尋問であった。それがどのようなものであったかは不明だが、相当に厳しい尋問が行われたことは想像に難くない。それというのは、11日夜に帰宅した譚秦東は精神を病み、独り言を言ったかと思えば、誰かが彼を殺して家をめちゃくちゃにすると叫び、さらには自傷行為に及んで頭を壁に打ち付けるようになったのであった。譚秦東はその日のうちに医院へ入院した。回復に向かっていた譚秦東は再度厳しい尋問を受けたことにより精神面でのバランスを崩したのだった。
【10】5月17日、譚秦東の妻である劉璇はSNSの“微博(WeChat)”上に譚秦東の署名入りの声明を発表した。この声明の要旨は、「私が文章をネット上に書き込んだ際に“毒薬”という表題を使ったのは、主としてこの種の驚かせる方式で読者の興味を引こうとしたものでありましたが、それは考慮が行き届かず、慎重さに欠けた行為でした。鴻毛国薬股份有限公司が許してくれることを希望します」という内容だった。譚秦東がこの声明の中で「鴻茅国薬」ではなく、依然として「鴻毛国薬」と、問題になった文章の中で使った架空の名称を使っているところに、彼のささやかな抵抗が見て取れるのは気のせいだろうか。
【11】譚秦東の声明が発表された後の5月17日夕刻、鴻茅国薬は声明を発表して、「当公司は譚秦東本人が行った謝罪を受け入れる」と表明し、これと同時に凉城県公安局に対する事件の通報を撤回し、凉城県人民法院に対して権益侵犯訴訟の取り下げを行った。
以上が中国で「鴻茅薬酒事件」あるいは「譚秦東事件」と呼ばれて話題となり、世論を沸騰させた事件の全貌である。譚秦東はネットに書き込んだ文章の中で、医師としての良心にかられて、至極まともな意見を述べたに過ぎない。しかしながら、それが鴻茅薬酒の販売にマイナスの影響を与えたからと言って、企業の信用と商品の名誉を毀損したとして刑事事件に仕立て上げるのは、どう考えても言いがかりであり、企業の過剰防衛と言えるのではないだろうか。
何が何でも必要だった口封じ
この事件で重要なのは、凉城県の経済を支える鴻茅国酒を擁護し、鴻茅薬酒の販売を支援するために、凉城県政府の主導の下で、凉城県公安局、凉城県人民検察院、凉城県人民法院が結託して譚秦東に圧力を加え、最後には譚秦東の謝罪を取り付けたことである。凉城県の経済を担う鴻茅国酒の利益が減少して、凉城県政府の税収が減少するようなことになれば、凉城県は立ち行かなくなる。だからこそ、何が何でも鴻茅薬酒を批判する譚秦東の口を封じなければならなかったのである。
それは恥も外聞もない、凉城県が生きるか死ぬかの問題であり、中央政府が何と言おうが、内蒙古自治区政府が何と言おうが、それらを無視してでも実行せねばならない課題だったのだ。5月11日の再尋問で相当な圧力をかけて譚秦東を精神的に追い込み、彼から謝罪の言葉を勝ち取ったのだから、表面上は凉城県が勝者のように思えるが、この事件が提起されたことにより、鴻茅薬酒が毒酒であるという印象は人々の頭に深く刻まれたはずであるから、今後も鴻茅薬酒の販売が順調に伸びるとは考え難い。
この事件を通じて投影された地方政府と地元企業による癒着の関係は、中国全土で普遍的に見られる図式で、いつまでも変わることなく存続するはずである。この事件は、中国では医師という専門家の立場から事実を語ることさえもが危険と隣り合わせであることを白日の下にさらけ出した。中国憲法の第35条には国民が言論、出版の自由を持つことが明記されているのだが。
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『中国の14億総主流化と「殺馬特」の死 生存空間を奪われる外れものたち』(5/24日経ビジネスオンライン 山田泰司)について
5/27自由時報<中國政府主導陝西徵地案 數十人持棍棒毆打村民=中国政府は陝西省の土地収用を主導 数十人が棍棒を持って村民に襲い掛かる>村民と土地面積で争いがあり(多分政府が過少に見積もったものと思われます)、売却に反対して、工事開始をストップしたところ、迷彩服を着た男たちに殴打されたと言うもの。共産主義が如何に人権無視で恐ろしいかが分かろうと言うもの。世界は、特に平和ボケ日本で、共産中国の恐ろしさに目を向けませんと。中国を世界のリーダーにしてしまったら大変なことになります。
http://news.ltn.com.tw/news/world/breakingnews/2439068
<川金会前如过山车 金家忐忑心态 一人表情泄底 ——朝卫队拔刀迎文在寅 金与正满面愁容但堆笑逢迎 此前还多次变脸=米朝首脳会談前はローラーコースターの如し 金一族は情緒不安定 一人の表情が内情を漏らす 北の儀仗隊は抜刀して文在寅を迎える 金与正は満面に愁いを含んではいるが笑顔で出迎え、前回とは打って違い、いろんな顔を持つ>平昌オリンピックの時の金与正の文に対する態度と今回では違いがありすぎます。小生も同じように感じていました。文に対し、トランプにとりなしを頼みたいからと記事には書かれています。文にそんな力はありませんが、溺れる者は藁をも掴む心境なのでしょう。トランプは妥協することなく、CVIDを貫徹してほしい。



http://www.aboluowang.com/2018/0528/1120987.html
山田氏記事の「殺馬特=sha1ma3te4」=“smart”の意味だそうです。音が似ているからのようです。中国は格差社会(ジニ係数0.73、北京大学調べ)であるだけでなく、差別社会でもあります。農民工がいなければ快適な都市生活は送れないにも拘らず、汚いとの理由で都会から追い出そうとしてきています。北京の大興区の火災何てその例でしょう。非人間的なことができるのが共産主義です。
以前中国勤務の時、都会に住む中国人から「辺境(内蒙古、ウイグル、チベtット)は要らない。税を彼らに投入して支援するのはばかげている」という話を聞きました。やはり都市戸籍の人間と農村戸籍の人間では受け止め方が大分違います。格差もなく、平等な日本人には(日本のメデイアや野党は殊更格差や、不平等を訴えますが、事実とは違います)理解できないでしょうけど、都市戸籍者と農村戸籍者では子供の教育、医療給付、年金給付総てに差があります。結果の平等を目指す共産主義なのにこの体たらくです。三権分立もなく、為政者の思い通りになるシステム、人権弾圧や場合によっては粛清、虐殺が平然と行われる人類を不幸に陥れる仕組みです。世界から共産主義者を放逐しなければ。
そもそも「主流」とか「非主流」何て言いだせば日本の左翼は差別やヘイトと大騒ぎするでしょう。PC“political correctness”とか言葉狩りまでして言論弾圧する連中です。中共に牛耳られている中国人も同じ発想をします。尤も彼らは共産主義者と言うより根っから偏見を持った人たちですから。特にひどいのは黒人に対してです。
主人公の羅氏は「中国は「異なるもの」を抱える余裕がなくなった」と感じたようですが、元々共産主義には自由はないし、ただ昔は今ほど格差が大きくなく、大多数が貧しかったため、そんなに感じなかっただけなのでは。
記事

羅福興の「殺馬特」時代(本人提供、以下同)
中国でこの春、ある人物の「卒業」が話題になった。
大きな括りではX JAPANのようなビジュアル系の出で立ちで街を闊歩し写真をネットに上げ、国民の大多数から「悪趣味」「外れもの」と非難されてきた「殺馬特」(シャマト)と呼ばれるスタイルを生み出し、この一群を率いてきた28歳の青年。その青年が、ピンクや緑に染めスプレーで逆立てていた長髪を切って黒髪に戻し、顔のおどろおどろしいメイクを落とし、指、耳、手首、足首にぶら下げていたアクセサリーを外し、スタッズとファスナーに埋め尽くされたレザーの上下を脱ぎ捨て、同じ黒づくめでもシックなロングジャケットに着替えた。つまり、殺馬特の象徴だったスタイルを、創始者の彼が捨てた。そして、彼の卒業を、『人民日報』『新浪』『南方都市報』『広州日報』等、中国の大メディアが相次いで伝えたのだ。
彼の名前は羅福興。1990年に広東省梅州郊外の農村に生まれた。
小学校に上がる前、深圳に小さな商店を開いた両親とともに羅氏は暮らしたが、小学校に上がると同時に実家に返され、小学生の彼は両親と離れて暮らす生活が始まった。都会に出稼ぎに行った両親と離れて暮らす、いわゆる「留守児童」として彼も幼年時代を過ごしたというわけである。
勉強を見てくれる人もいなかったため、成績は振るわなかった。そんな彼を小学校の教師もあまり構ってくれず、「騒がず問題を起こさないでくれていたらそれだけでいい」とばかりに教室の最後列に追いやられたという。中国メディアのインタビューで当時を振り返って彼は、「幼いながらも、自分の存在がないもののように扱われている、ということを感じていた」と回想している。
そして彼は、小学校5年生からネットカフェに入り浸るようになるのだが、ゲームの中で知ったビジュアル系のキャラクターに惹かれ、自分も真似をするようになる。「このスタイルをすれば、自分の存在を周囲が認めるのではないか」と思ったのである。
村の理髪店で髪を逆立ててもらい、100円ショップならぬ「2元店」(約34円)で買ったヘアカラーで髪をピンク色に染め、赤い口紅を引き、ピアスの穴を開け、全身黒ずくめで、ハサミで穴だらけにしたジーンズを履いた。そして彼は、その格好で外を歩くようになる。
羅氏は、中学を卒業せずに街に出て、工場や美容院で働き出す。そして2008年、18歳になった彼は、髪を逆立てビジュアル系のスタイルをする自分のような一群のことを「殺馬特」と名付ける。英語の「smart」から作った造語である。彼は自らの写真を撮り、ネットで拡散するようになる。訪日中国人の増加により日本でも受け入れる店が増えた電子決済「ウィーチャットペイ」(微信支付)やソーシャルネットワーキングサービス(SNS)「ウィーチャット」(微信)の開発・運営元として知られるIT大手テンセント(Tencent=騰訊)が、ウィーチャットに先行して運用していたSNS「QQ」に「殺馬特家族」というグループを作り、そこに上げたのだ。同じような境遇にある農村出身で都会で働く低学歴の若者たちの間に、「殺馬特」の言葉と共に、スタイルと羅福興の名前が急速に広がっていった。

「殺馬特」の仲間と共に
とはいえ、殺馬特が流行りだし全盛を迎えたという2008~13年当時、上海に暮らしていた私は、殺馬特の存在に全く気付かなかった。鉄道やバスのターミナル駅や、上海でも郊外の工場地帯などに行くとX JAPANのような出で立ちをしたどうやら地方出身らしき若者がチラホラいるなと認識はしていたものの、それが、一大潮流と言えるほどのボリュームになっていることには気付かなかった。
もっとも、羅氏自身が中国メディアに対し「殺馬特は最も多かった時期で1万人程度」と話している。2017年末時点で13億9008万人の人口を抱える中国では決して高い比率だとは言えない。さらに、後述するが、殺馬特の全盛時に私が生活していた上海は、殺馬特のような、異端の人びとやファッション、文化が育ちにくい土地柄であることも、殺馬特をあまり見かけなかった理由かもしれない。羅氏の故郷がある広東省など華南地方において、盛んだったのだろう。
「脳残」「無文化」「悪趣味」とこき下ろされる
21世紀の中国に登場したビジュアル系の若者たち「殺馬特」に対する中国社会の反応は強烈だったようだ。ようだ、というのは、先に触れたように、それらの言論は、羅氏が殺馬特を卒業したという記事が出た今年になって、過去の記事にまで遡って読んでみて初めて知ったからである。
さて、中国社会の反応はどのように強烈だったのか。まず、社会は彼らを、自分たち「主流」に対して「非主流」と位置付けた。「非主流」を「サブカルチャー」と訳す向きもあるが、中国における殺馬特の場合は「外れもの」とする方がしっくりくる。
そして、彼らの出で立ちや存在を「脳残」(精神病患者)「無文化」「悪趣味」と散々にこき下ろした。
ちなみにこの「脳残」という言葉、任天堂DSのソフトとしてヒットした「脳を鍛える大人のDSトレーニング」の中国版「脳鍛錬」が2006年に中国でも流行り、そこから派生してできた新語だと言われている。
殺馬特は、社会から弾き出されて居場所をなくして荒れる若者が1970~80年代の欧米を席巻した西欧のパンクやメタル、スキナーズ、日本の竹の子族や暴走族につながる系列であることは確かであり、自分たちを見下す社会への反抗と、存在証明が源になっているのもまた間違いのないことだ。
もっとも、社会に対する反抗は、共産党体制下の中国において、欧米のような暴力性を伴うものにはならなかった。また、殺馬特の彼ら自身がどこまで、このようなことを意識していたかと言えば、むしろ自覚的でなかった人が多数を占めたのではないかとも思う。ただ、創始者の羅氏が自ら語るように、存在感が希薄だと小学生時代に既に認識し、存在証明を求める中で殺馬特は誕生した。
ところが、中国の殺馬特に対するメディアの論評やネットに上がる世間の評価を見ると、都会に生きる地方の農村出身者の存在証明だということを肯定的に捉えるものが皆無に等しいことに気付く。

理髪店で髪を逆立ててもらうのが「殺馬特」の1つの特徴
例えば広東省の新聞『南方都市報』の記者、張天潘氏が「殺馬特・貧困な文化の産物」と題した記事で定義した殺馬特に属する若者たちは、次のようなものである。
「農村で1990年代以降に生まれた世代で、学歴は中卒か中卒後に専門学校を卒業。安い服を好み、使用している携帯電話は国産のコピー品、自撮りした写真をQQ等のSNSに投稿するのが大好きだが、街の写真館やプリクラで写真を撮るのも好きで、写真館ではなぜか目の覚めるような青空の絵を背景に選んでいるものが圧倒的に多い。学校卒業と同時に故郷の家を出て、小都市や大都市に来て、安アパートやさらに家賃の安い地下室に多くの場合誰かと同居することがほとんど。職業は美容師、警備員、ウェーター、鴻海のような工場勤務が多いが、闇の社会で働くことも少なくなく、この点は、建設現場で体を酷使し額に汗して働いた彼らの父や祖父の世代とは大きく異なっている。むしろ、体力を使う仕事は避ける傾向にある。付き合うのは同郷の同年代で、ネットで知り合うケースも多い。余暇はネットカフェ、ディスコ、屋台を冷やかして過ごす」(『南方都市報』2013年3月8日付。以下同)
そして、殺馬特の源流と、現象の意味するものについては、「欧米のパンクやメタルなどの『非主流』(サブカルチャー)に影響されたものだ」と指摘する一方で、「主流に対する反逆でも、イノベーションでも、謀反でも、下克上でもない。つまり、欧米のサブカルチャーとの類似性はほとんど無い」と切り捨てる。
都会人を模倣しようとした末の失敗なのか
ではなぜ農村出身の若者たちが殺馬特に走ったのかについて張氏は、このような認識を披瀝する。「殺馬特は、彼らが理解しイメージする都会人の姿だ。都会人になりたい、都会人を模倣しようとして努力した末の失敗した結果なのだ」と。さらに、「彼らは都会人に近づきたいと思い続けているが、本当の都会人になるにはお金がかかる。しかし、彼らにその経済力は無い。だから、チープなものを身に着けるしかない」とした上で、殺馬特とは、「貧困な文化の産物なのだ」と結論づけるのだ。
私が知る限りにおいて、張氏の意見は、中国における知識人や都会生まれの都会人のみならず、国民の一般的な認識だといっても過言ではない。この文章が発表されたのは2013年のことだが、5年経った今も基本的に認識は変わっていない。羅氏同様、留守児童として育った農村出身者も、多くは殺馬特の存在を評価していないのだ。殺馬特の存在を知った私は、20代前半の元留守児童たち数人に殺馬特の評価を聞いて回った。すると、大学院生、中卒で自動車部品工場勤務、大卒で上海のサービス業勤務、中卒で上海の物流会社勤務と、それぞれ現在の境遇は異なる彼らは一様に、「殺馬特? 非主流でしょ。良くないよね」とにべもないのである。「評価はしないものの、境遇は理解し存在は認める」、というのでもなく、「良くない」と一刀両断なのだ。

「殺馬特」を卒業し、長髪を切って黒髪にした羅氏(回転した自分の店の前で)
殺馬特に対するこのような評価には、中国人がそもそも、あらゆる方面で主流を好むという傾向があることも大きく関係している。ただ、土地柄による違いはあって、北京は首都でありながら反骨精神や変化を尊び評価する土壌が幾分あるが、上海は既に評価が定まったものを好む保守的で安定志向なところがある。先に私は、上海にいて殺馬特の登場をほとんど認識できなかったと書いたが、それは、異端である彼らを端から弾いてしまったため、もともと生存空間の少なかった彼らが入り込む余地が生じなかったということなのだと思う。
そして今年の春節(旧正月)を間近に控えた1月末。「殺馬特の生みの親である羅氏が、殺馬特を卒業して主流に戻る」という記事を複数の大手メディアが伝えた。一昨年、病気で父を亡くし、広東省のある土地で家政婦として働く母と、やはり同省の工場に勤務する2人の妹を抱える羅氏が、「長男としていつまでもバカばっかりやっていられねえ」と目が覚め、深圳のへんぴな場所に理髪店を開業したというのがその内容だった。そしてまたどれもが、「主流に戻るという正しい選択をした」「母のために頑張っている」と羅氏の決断を評価していた。
どの報道も羅氏自身の言葉として伝えているので、殺馬特を辞めた理由として、それはうそではないのだろう。ただ、「主流」の人たちから、「脳残」「悪趣味」「無文化」とあれだけこき下ろされた彼、小学生時代に既に存在感のなさを自覚して非主流に向かった彼が、「主流に戻って良かったね」とまさに主流の人たちから評価されていることについて、「ああ、おれはバカだった。若気の至りだった」と単純に反省して喜んでいるとはとても思えなかったし、父の死の他にも、彼を殺馬特を辞めようと思わせたものが何かあったのではないかと思えてならなかったのだ。
中国は「異なるもの」を抱える余裕がなくなった
そこで私は、彼に直接話を聞いてみたくなった。幸いにもSNSで彼とのコンタクトを取ることができたので、「殺馬特やあなたの卒業のことを報じた記事を読んだが、そのどれもがあなたが主流に戻ったと評価するものばかりで、表面的なことしか書いていないと違和感を持ったのだ」と話しかけた。
すると彼からまず返ってきたのは、
「同じような考えの人ばかりにしようというのは、とても怖いことだ。病んだ社会だ」
というメッセージだった。
これが聞けただけで十分だ、と私は思った。
彼は、「主流」の人びとが言うようなただの「悪趣味」でも「脳残」でも「無文化」でもなく、自らの意思を持って「非主流」を選択した人だった。そして、その本質は今でも何ら変わっていない。それでも彼が「非主流」を捨てて「主流」に呑み込まれる選択を迫られた背景にあるものは何か。
それは、「同じものばかりにしよう」という社会の風潮であり、殺馬特が生まれた2008年当時に中国にはあった「違うもの・異なるもの」を抱えておく余裕を、いまの社会がなくしてしまったということである。そしてそれは、なんとなく息苦しさを増した最近の中国で、「人と違うことをしない、つまり主流にいれば安心」という意識が、市民の間に働き始めているのだと思う。
14億総主流化の中国はどこに向かうのだろうか。
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『米国のパンチかわそうと抱擁してみせた南北首脳 これで韓国は完全に北朝鮮側に立った』(5/27日経ビジネスオンライン 鈴置高史)、『仕切り直しの米朝会談、完全非核化は出口に?!核を放棄させる好機は「南北統一」にあり』(5/28日経ビジネスオンライン 森 永輔)、『朝鮮人民軍に翻弄される米朝首脳会談 「トランプ方式」なら非核化に合意も』(5/28日経ビジネスオンライン 重村智計)、『トランプが米朝会談中止の大バクチを平気で打てた理由』(5/28ダイヤモンドオンライン 上久保誠人)について
紹介記事が長いのでコメントは短く。いろいろ読んで感じることは、日本も核武装しないと駄目なのではという事です。トランプがCVIDを諦め妥協するかもしれないし、武貞氏のようにいろいろ理屈を付けて朝鮮半島を核保持のまま統一しようと考え、日本にやがて投下させようと思っているのではと疑います。武貞氏の言う統一の先にある図は何かを聞きたい。何もないでしょう。騙されてはいけません。あなたの祖国はどこですかと聞きたい。統一朝鮮に日本は金を出す必要はありません。米朝戦争の戦費は勿論出しますが。それが日本の拉致被害者救出、北朝鮮国民の為になるので。
重村氏の記事を読めば、軍がそれだけ力があるのであれば、トランプはクーデターを興させるように画策した方が良いのでは。それこそ直前に会談をキャンセルして。その方が北朝鮮国民にとってハッピーでは。上久保氏の議論は、日本はどうすべきの議論が抜けていると感じました。
鈴置記事

南北会談で抱擁を交わす金委員長(左)と文大統領(写真:The Presidential Blue House/ロイター/アフロ)
(前回から読む)
5月26日午後、金正恩(キム・ジョンウン)委員長と文在寅(ムン・ジェイン)大統領が板門店の北側施設で突然、会談した。トランプ(Donald Trump)大統領が軍事的な圧迫を強めるのに対抗、南北はスクラムを組んで見せたのだ。
仲介を誇った文在寅
鈴置:文在寅大統領は5月27日午前10時から青瓦台(韓国大統領府)で会見し、前日の南北首脳会談に関し説明しました。
「2次南北首脳会談 結果発表文」(5月27日、韓国語)から、大統領の発言のうち、米朝首脳会談に関連する部分を引用します。
・私は先週の韓米首脳会談の結果を説明した。金委員長が完全な非核化を決断し実現した場合、トランプ大統領には北朝鮮との敵対関係の終息と、経済協力に対する確かな意思があるとの点を伝えた。
・金正恩委員長は板門店宣言に続き再度、朝鮮半島の完全な非核化の意思を明らかにされた。
・(さらに)朝米首脳会談の成功を通じ、戦争と対立の歴史を清算し、平和と繁栄のために協力したいとの意思を披歴された。
要は、自分はトランプ大統領と金正恩委員長の間を仲介し、北朝鮮の米朝首脳会談への意欲を引き出した、と誇ったのです。
米とは異なる非核化
—本当に「仲介できた」のでしょうか?
鈴置:「できなかった」と思います。金正恩氏が明らかにしたという「非核化の意思」が、米国の要求する「完全な非核化」とは全く異なるものだったからです。
北朝鮮も5月27日午前6時に朝鮮中央通信を通じ、前日の南北首脳会談を報じました。「歴史的な第4回北南首脳対面 最高指導者金正恩委員長が文在寅大統領と再開し会談を行う」(日本語版)から「米朝」関連部分を拾います。
なお、「第4回」とあるのは、2000年6月と2007年10月の南北首脳会談から通算した数字です。前者は金大中(キム・デジュン)大統領が、後者は盧武鉉(ノ・ムヒョン)大統領が、金正日(キム・ジョンイル)総書記と平壌で会いました。
・北南の両首脳は、朝鮮半島の非核化を実現するために共同で努力するという立場を表明し、今後、随時会って対話を積極化し、知恵と力を合わせていくことについて見解を同じくした。
・金正恩委員長は、6月12日に予定されている朝米首脳会談のために多くの努力を傾けてきた文在寅大統領の労苦に謝意を表して歴史的な朝米首脳会談に対する確固たる意志を披れきした。
・金正恩委員長は、朝米関係の改善と朝鮮半島の恒久的で強固な平和体制の構築のために今後も積極的に協力していこうと述べた。
核保有を認めよ
—米朝首脳会談には意欲を示している……。
鈴置:確かに、金正恩氏は6月12日にシンガポールで予定されていた米朝首脳会談の実現に意欲を示して見せました。しかし、「非核化」に関しては「努力する」と言ったに過ぎません。
それどころか北朝鮮がこう言った場合、「核は放棄しない」と主張していると見るべきなのです。「自らを核保有国として認めろ。そのうえで米国とは核軍縮を交渉しよう」というのが北の基本的な姿勢です(「しょせんは米中の掌で踊る南北朝鮮」参照)。
「非核化に向け努力」の「努力」とは核軍縮交渉を指します。5月24日、北朝鮮は核実験場を爆破して見せました。その際も「(実験場の破壊による)核実験の中止は、世界的な核軍縮のための重要な過程である」と表明しています。あくまで「核保有国が軍縮に努力している」との立場なのです。
米朝首脳会談にいくら意欲を示して見せようが、「核保有国であることを認めろ」と主張し続ける限り、北朝鮮との首脳会談に米国は容易には応じないでしょう。
仲人口、再び
—でも、文在寅大統領は「完全な非核化の意思を明らかにした」と説明しました。
鈴置:縁談を無理にまとめようと、双方に美しい話をする「仲人口(なこうどぐち)」の典型です。
米朝会談の開催が話し合われた時から韓国には「この仲人口外交が米朝関係を、さらには韓米関係を破局に追い込みかねない」との危惧がありました(「『文在寅の仲人口』を危ぶむ韓国の保守」参照)。
5月27日の会見でも、韓国記者が「金正恩委員長の(非核化に関する具体的な)発言を明かして欲しい。北朝鮮が主張してきた段階的な非核化から進展があったのか」と追及しました。
「仲人口」を疑ったのです。朝鮮中央通信の記事を読めば、誰しもが疑います。が、文在寅大統領は答えを避けたうえ「(米朝の)非核化の意思は同じでも、どう実現するかで両国間の協議が要る」と話をずらしました。
このやりとりはNEWS1の「一問一答 文在寅大統領 第4回南北首脳会談を自身で説明」(5月27日、韓国語)で読めます。
やはり運転席に座っている!
—では、この南北首脳会談は何のために開催したのですか?
鈴置:文在寅政権は「北朝鮮の核問題で主導権を握ることができていない」「それどころか関係国から無視されている」との批判を浴びていました。
5月16日に予定されていた、北朝鮮との閣僚級会談は当日になってキャセルされてしまいました(「トランプと会うのが怖くなった金正恩」参照)。
加えて、トランプ大統領の北朝鮮への首脳会談中止通告(「米朝首脳会談中止通告、『最後通牒』で投降促す」参照)。前々日に米韓首脳会談を開いたのに、それも相談されなかった。
米朝首脳会談は平昌冬季五輪をきっかけに浮上しましたから、韓国人は「我が国が米朝を仲介した。運転席に座った」と胸を張っていた。それが突然、米朝双方から無視されるようになったので、政権は困り果てていました。
そんな中、南北首脳会談を開き再び、米朝の仲介役を演じることができました。よく見れば「演じている」に過ぎませんが、普通の人は細かいことは気にしません。
大統領が会見で「日常生活で友達同士が会うようになされた今回の会談には大きな意味がある」と言えば「そうだな」と感じる人が多いと思います。
閣僚級会談の6月1日開催が決まったので「北から無視された」と国民の不満を多少は解消できるでしょう。
会談は北朝鮮にとってこそ必要だったのです。会見で大統領が「一昨日(5月25日)午後、金正恩委員長が形式的なことはいっさい抜きにして会いたい」と伝えてきた」と明かしています。
5月24日のトランプ大統領の首脳会談中止通告に、北朝鮮は震え上がりました。金正恩委員長への書簡は、要は「首脳会談に応じなければ、どうなっても知らないぞ」というものでした。
北朝鮮のわび状
—「核戦争をも辞さない」とのくだりもありました。
鈴置:同日の崔善姫(チェ・ソニ)外務次官の談話で「米国がわれわれと会談場で会うか、でなければ核対核の対決場で会うかどうかは全的に、米国の決心と行動いかんにかかっている」なんて突っ張るから、言い返されてしまったのです。
そこで北朝鮮は、そさくさと「わび状」を書きました。5月25日朝、「会談に応じる」との金桂官(キム・ゲグァン)第1外務次官の談話を発表したのです。
実は、トランプ書簡以上に、北朝鮮を震撼させたと思われる文書があります。書簡を発表して約2時間後にトランプ大統領が会見で以下のように語ったのです。
ホワイトハウスの「Remarks by President Trump at Signing of S. 2155, Economic Growth, Regulatory Relief, and Consumer Protection Act」(5月24日、英語)から、関係する部分を引用します。
・I’ve spoken to General Mattis and the Joint Chiefs of Staff. And our military — which is by far the most powerful anywhere in the world and has been greatly enhanced recently, as you all know — is ready if necessary.
・Likewise, I have spoken to South Korea and Japan. And they are not only ready should foolish or reckless acts be taken by North Korea, but they are willing to shoulder much of the cost of any financial burden, any of the costs associated by the United States in operations, if such an unfortunate situation is forced upon us.
韓国は米国側で戦う
トランプ大統領はまず「世界でもっとも強力な米軍に必要な(戦争に向けた)準備を命じた」と脅しました。
さらに「韓国と日本にも、北朝鮮がバカなことをしでかしても対処できるよう話してある。それだけではなく韓日は『米軍の活動に伴う費用の相当部分を引き受ける』と言っている」と語ったのです。
特に後段は、北朝鮮にとって相当な衝撃を与えたでしょう。米朝が戦端を開く際、韓国は中立を宣言すると文在寅政権は示唆してきました(「ついに『中立』を宣言した文在寅」参照)。
北朝鮮にとって「韓国の中立化」こそが、米国による攻撃を予防する材料の1つだったのです。
専門家によれば、北朝鮮を空爆するのには韓国の基地は必ずしも必要ではない。海から、あるいはグアムや日本の米軍基地からの攻撃で十分だからです。ただ、政治的には同盟国が中立を宣言し反対するなか北を攻撃できるのか、との問題は残るからです。
ところがトランプ大統領は「いざとなれば韓国は米国側で戦う」と語ったのです。北朝鮮は頭を抱えこんだことでしょう。
戦争への歯止めを失えば、外交的な選択も狭まります。米国が迫る首脳会談を受けなければ、攻撃を受ける可能性がグンと増す。首脳会談に応じた際も同様です。
「米朝首脳会談、3つのシナリオ」をご覧下さい。米国からは、即刻、完全に核を放棄するリビア方式を要求されるでしょう。これを「拒否する」選択肢は極めてとりにくくなります。
- 米朝首脳会談、3つのシナリオ
| 米国、リビア方式での非核化を要求 | ||
| ↓ | ↓ | |
| 北朝鮮が受諾 | 北朝鮮が拒否 | |
| ↓ | ↓ | ↓ |
| ①米国などによる核施設への査察開始 | ②米朝対話が継続 | ③米国、軍事行動ないし経済・軍事的圧迫強化 |
軍事カードを使いやすくなった米国は、北が時間稼ぎをして②「対話継続」に持ち込むことを許さないでしょう。米国が③に進むにしろ、時間のかかる経済制裁の強化よりも、即効性の高い軍事行動に出やすくなります。
北朝鮮側に立つと約束
—そこで北朝鮮は……。
鈴置:急きょ、韓国に首脳会談を申し込んだのだと思います。文在寅大統領に直接会って「あのトランプ発言はどうなんだ。米国と一緒になって攻めてくるつもりか」と問い質したでしょう。金正恩委員長がなじったのか、あるいは哀願したのかは分かりませんが。
文在寅大統領は「安心しろ。中立は守るから」と言ったと思われます。先に引用した北朝鮮側の発表に「答」があります。
・北南の両首脳は、朝鮮半島の非核化を実現するために共同で努力するという立場を表明し、今後、随時会って対話を積極化し、知恵と力を合わせていくことについて見解を同じくした。
「朝鮮半島の非核化」が「北朝鮮の核保有を米国に認めさせる」ことを意味することはすでに述べた通りです。
その実現に向け「北南の両首脳が共同で努力する」と言い切っていることに注目下さい。要は、文在寅大統領は「核問題で韓国は北朝鮮側に立つ」と改めて約束したのです。
ひしと抱き合う写真
—北朝鮮側が勝手に言っている可能性は?
鈴置:あり得ません。南北が合意した「板門店宣言」にも同様のくだりがあるからです(「『民族の祭典』に酔いしれた韓国人」参照)。
・南と北は、完全な非核化を通じて核のない韓半島を実現するという共通の目標を確認した。
・南と北は、北側が取っている主動的な措置が韓半島の非核化のために非常に意義があり、大きい措置だという認識を共にして、今後それぞれ、自己の責任と役割を果たすことにした。
・南と北は、韓半島の非核化のための国際社会の支持と協力を得るために積極的に努力することにした。
5月26日の南北首脳会談は、4月27日の「南北」で交わした板門店宣言の中核である「核問題での共闘」を再確認するのが目的だったのです。
—その「南北共闘」はさりげなく謳われただけです。米国への有効なメッセージになるでしょうか?
鈴置:確かに。そこで南北は演出したと思います。両首脳がひしと抱き合っている写真です(1ページ目参照)。韓国は5月26日夕刻に同日午後の首脳会談開催を発表した。しかし中身に関しては翌27日の午前10時まで明かさなかった。
世界のメディアはこのニュースを報じる際、「南北抱擁」などの写真を中心に報じるしかなかった。結果、たいして中身のない会談だったけれど、「南北が運命を共にする覚悟」は世界に発信できたのです。
南北共闘で時間稼ぎ
—でも、どんな小細工をしようと北朝鮮は――南北朝鮮は、絶体絶命の窮地にあります。
鈴置:その通りです。首脳会談に応じても、応じなくても米国から軍事攻撃される可能性が高まった。少なくとも経済制裁の強化は免れない。
こうなったら、米朝首脳会談を開くか開かないか、をあやふやにすることで時間稼ぎするしかありません。南北は、口では「米朝」に前向きですが、本当に開いたら地獄が待っているのです。
—トランプ大統領が開催に前向きの発言に転じました。
鈴置:AFPの「米朝会談、6月12日開催に向け『非常に順調』トランプ氏」(5月27日、日本語版)によると5月26日、大統領は「(米朝首脳会談は)非常に順調に進んでいる」「われわれは6月12日にシンガポールでの開催を目指している。そのことに変わりはない」と語りました。
それこそ北朝鮮――南北朝鮮への圧迫でしょう。「会談に応じろ」との。
- 北朝鮮の非核化を巡る動き(2018年)
| 1月1日 | 金正恩「平昌五輪に参加する」 |
| 1月4日 | 米韓、合同軍事演習の延期決定 |
| 2月8日 | 北朝鮮、建軍節の軍事パレード |
| 2月9日 | 北朝鮮、平昌五輪に選手団派遣 |
| 3月5日 | 韓国、南北首脳会談開催を発表 |
| 3月8日 | トランプ、米朝首脳会談を受諾 |
| 3月25―28日 | 金正恩訪中、習近平と会談 |
| 4月1日頃 | ポンペオ訪朝、金正恩と会談 |
| 4月17―18日 | 日米首脳会談 |
| 4月21日 | 北朝鮮、核・ミサイル実験の中断と核実験場廃棄を表明 |
| 4月27日 | 南北首脳会談 |
| 5月4日 | 日中と中韓で首脳の電話協議 |
| 5月7-8日 | 金正恩、大連で習近平と会談 |
| 5月8日 | 米中首脳、電話協議 |
| トランプ、イラン核合意から離脱を表明 | |
| 5月9日 | ポンペオ訪朝、抑留中の3人の米国人を連れ戻す |
| 日中韓首脳会談 | |
| 米韓首脳、電話協議 | |
| 5月10日 | 日米首脳、電話協議 |
| 5月16日 | 北朝鮮、開催当日になって南北閣僚級会談の中止を通告 |
| 5月16日 | 北朝鮮、「一方的に核廃棄要求なら朝米首脳会談を再考」との談話を発表 |
| 5月20日 | 米韓首脳、電話協議(米東部時間では5月19日) |
| 5月22日 | 米韓首脳会談 |
| 5月24日 | 北朝鮮、米韓などのメディアの前で核実験場を破壊 |
| 5月24日 | トランプ、金正恩に首脳会談中止を書簡で通告 |
| 5月26日 | 南北首脳会談、板門店の北側施設で |
| 6月8-9日 | G7首脳会議、カナダで |
| 6月12日 | 史上初の米朝首脳会談? |
(次回に続く)
森記事

韓国で、米朝首脳会談を求める示威運動が行われた(AFP/アフロ)
トランプ米大統領が5月25日 、米朝首脳会談を「中止」する意向を明らかにしたと報じられた。北朝鮮の非核化の行方を注視していた世界中が驚きに包まれた。しかし、朝鮮半島問題の専門家、武貞秀士氏はトランプ氏の意図は「中止でない」とみる。
(聞き手 森 永輔)
—米ホワイトハウスが5月24日、ドナルド・トランプ大統領が北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)委員長に宛てた書簡を公表。「私は現時点ではこの長く計画してきた会談を実施するのは不適切だと感じる。よって(中略)シンガポールでの会談は実施しないと表明する」と記されていることが明らかになりました。トランプ大統領はなぜこの時期に米朝首脳会談の中止を決定したのでしょう。
武貞:トランプ大統領は「中止」ではなく「仕切り直し」を提案したのだと思います。書簡の宛名が「金正恩委員長閣下」と非常に丁寧な表現になっていることがそれを示している 。そして、その後の展開から、米国も北朝鮮も首脳会談をキャンセルしたくなかったことが分かります。

武貞 秀士(たけさだ・ひでし)氏
拓殖大学大学院特任教授
専門は朝鮮半島の軍事・国際関係論。慶應義塾大学大学院修了。韓国延世大学韓国語学堂卒業。防衛省防衛研究所に教官として36年間勤務。2011年、統括研究官を最後に防衛省退職。韓国延世大学国際学部教授を経て現職。著書に『韓国はどれほど日本が嫌いか』(PHP研究所)、『防衛庁教官の北朝鮮深層分析』(KKベトスセラーズ)、『恐るべき戦略家・金正日』(PHP研究所)など。
まず米政権が書簡の内容を公表してからわずか半日で、北朝鮮が反応しました。金桂官(キム・ゲグァン) 第1外務次官が「わが方はいつでも、いかなる方式でも対座して問題を解決していく用意があることを米国側にいま一度明らかにする」(産経新聞5月26日)と結ぶ談話を発表。この素早い反応はトランプ大統領にとってもサプライズ だったと思います。
トランプ大統領もすぐ「北朝鮮から温かく生産的な声明を受け取った」 とのメッセージをツイッターに投稿しました。「6月12日の開催もあり得る」との見通しも示しました 。
どちらもキャンセルしたくなかったのは明らかです。
「体制の保証」をめぐるすれ違い
—では、なぜトランプ大統領はこのような書簡を送ったのでしょう。
武貞:6月12日に会談を開催しても「完全で検証可能かつ不可逆的な非核化(CVID)」 に合意できないことが明らかになったからでしょう。合意できなければ、対北強硬派であるジョン・ボルトン大統領補佐官(国家安全保障問題担当)などが収まりません。ならば「首脳会談は行わず、仕切り直した方がよい」とトランプ大統領は考えたのだと思います。
今日までの経緯を振り返ってみましょう。3月8日に韓国の特使、鄭義溶(チョン・ウィヨン)大統領府国家安保室長がトランプ大統領と会談し、金委員長がトランプ大統領との会談を熱望していると伝えました 。金委員長は非核化の意欲を示すとともに、核・ミサイルの実験を凍結すると約束しました。米韓合同軍事演習にも理解を示したとされます。
トランプ大統領はこれを即座に受け入れ、会談に応じる考えを示しました。ここから米朝の協議がスタートしたわけです。
この時点では、トランプ大統領は、CVIDが実現できると考えていたと思います。しかし、協議が進むにつれ「体制の保証」と「非核化」についての理解が米朝間で異なることを悟った。
「体制の保証」について、トランプ大統領は「軍事境界線の北側にある北朝鮮を存続させる」「金委員長が統治する体制を崩壊させない」と理解していました。しかし北朝鮮が求める体制の保証は、米国が韓国に提供している核の傘をたたむことまで含むものでした。また「非核化」の進め方についても、米国が6カ月程度の期間内に一括して核装備を搬出することを想定したのに対し、北朝鮮は「段階的」に進め、その都度見返りを求める「相互」方式にこだわりました。
戦略爆撃機B52は認識の差の象徴
—米国が、この溝は埋めがたいものであると認識したのはいつでしょう。
武貞:北朝鮮が5月16日 に南北閣僚級会談を中止した時だと思います。この時、北朝鮮は理由として、米韓が空軍の合同演習「マックスサンダー」を実施したことと、この演習に核兵器搭載可能な戦略爆撃機B52を参加させたことを挙げていました。
米国は、B52を参加させても問題ないと考えていました。北朝鮮が「米韓合同軍事演習に理解を示す」意向であることを鄭安保室長から聞いていたからです。それにB52は、過去の米韓演習に何度も参加しています。1953年に休戦協定を締結して以来、戦争が起きていないことを考えれば、米韓相互防衛条約と在韓米軍、B52をはじめとする戦略爆撃機こそが北朝鮮の存続を保証する装置であるわけです。こう考える米国にとって北朝鮮が語る論理は非常に奇妙 なものに聞こえました。
しかし、「体制の保証」は①米国が核の傘をつぼめることと②韓国に提供する防衛を低下させることを含むと考えている北朝鮮にとって、B52の参加は、米朝首脳会談の開催で合意した後、受け入れがたいものになっていたわけです。
実際にはB52は参加していませんでした。現行のB52は核兵器を搭載してもいません。米国とロシアが結んだ新戦略兵器削減条約(新START) が核弾頭の数を制限しているためです。しかし北朝鮮は「改造すれば、すぐに搭載が可能になる」と猜疑心を高めています。
つまり、北朝鮮がいう「体制の保証」が朝鮮半島全体を対象に米国の関与を解消することを意味しているのに対し、米国が考える「体制の保証」は北朝鮮の体制存続を想定しているわけです。米国は北朝鮮の体制を保証する、つまり現状維持なら朝飯前、「取引(ディール)できる」と考えていた。しかし北朝鮮は米国の核の傘解消という現状の変更を求めていたわけです。
この認識の違いを残したままでは、6月12日の首脳会談で合意に至ることはできないと悟り、首脳会談の中止を決断した。しかし、米朝首脳会談が流れてしまえば、金正恩体制を中国側に追いやることになるし、南北交流は進展し続けるというリスクを理解したトランプ大統領は再交渉への期待を含んだ文言を入れた。書簡にある「この最も重要な首脳会談について考え直すことがあったら、遠慮なく私に電話するか手紙を書いてほしい」 という部分です。
つまりトランプ大統領は仕切り直ししようとしたのです。そして、北朝鮮が半日後に首脳会談開催の意義に触れたサプライズの談話を発表しました。いま首脳会談実現に向けて再交渉中ですが、米国は、期限を設け北朝鮮にCVIDを迫る方針からCVIDの内容を緩和する方向に舵を切りつつあるようです。
北朝鮮は“泣きを入れた”のか?
—金次官が25日に発表した談話は、北朝鮮が米国に対して“泣きを入れた”ようにも読めます。「トランプ大統領が中止理由に挙げた『怒りや敵対心』は、一方的な核放棄を迫る米側の行き過ぎた言動が招いた反発にすぎない」 (産経新聞5月26日)という表現は言い訳のように受け取れます。
「望ましくない事態は、米朝の敵対関係がどれほど深刻で、関係改善のための首脳会談がいかに切実に必要であるかを示している」は首脳会談を懇願しているニュアンスを受けます。
武貞:果たしてそうでしょうか。「トランプ大統領がこれまでどの大統領も下すことができなかった勇断を下し、首脳対面という重要な出来事をもたらすために努力したことについて、ずっと内心は高く評価してきた」は、褒められることに弱いトランプ大統領に対する誘い水でしょう。
「わが方は常に度量が大きく開かれた心で米国側に時間と機会を与える用意がある」という表現は上から目線ですらあります。
米朝首脳会談がもたらす6つのメリット
—厳格なCVIDの合意を取り付けることができなくとも米朝首脳会談を流すことなく実施することで米国はどんなメリットが得られるのですか。
武貞:第1は米国、もしくはトランプ大統領自身が主役になれること。北朝鮮が平昌オリンピックに参加して以降、今日まで、朝鮮半島をめぐる国際関係は韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領を中心に回ってきました。この主導権をわが手に取り戻す。
5月22日に米韓首脳会談が行われた際、文大統領が「米朝首脳会談は99%行われると信じる」と発言する傍ら、トランプ大統領は「どうなるか分からない」と語り、違いを際立たせました。トランプ大統領はこうしてでも、流れを米国に持ってきたかったのでしょう。そして、トランプ大統領が首脳会談キャンセルの手紙を韓国に事前通告することなく送ったのですから、文大統領のメンツは丸つぶれでした。
第2は、合意が成立しなくとも米朝協議が続くことで、北朝鮮との全面戦争が避けられること。トランプ大統領も戦争は望んでいません。
第3は北朝鮮が中国に一層近づく事態を避けられること。中国の最近の発言は「北朝鮮が核開発をしなければならないのは、米国が核で北朝鮮を脅かすからだ」ということを暗示しています。習国家主席は、第2回中朝首脳会談が行われた直後にトランプ大統領と電話協議し、北朝鮮の非核化プロセスでは「段階的な行動を望む」と伝え、北朝鮮の意向を考慮するよう迫りました 。
第4は、北朝鮮と韓国が米国抜きで関係改善を進める事態を避けられることです。
北朝鮮と韓国は4月27日に南北首脳会談を開きました(関連記事「日本が過小評価する南北宥和が狭める米の選択肢」)。これを「米朝首脳会談の前座」と評する向きがありますが、それは誤りです。この時に両国は、南北の宥和と核の問題を切り離し、非核化協議が膠着状態に陥っても南北が統一を自主的に進めることで合意したのです 。核の問題は米国に任せて、南北でできることをしていくということです。
そして第5は、少なくとも米朝協議が継続している間、米国は核技術や核物質の拡散を防止するべく北朝鮮の核開発を直接監視しやすくなることです。
最後の第6は、北朝鮮を舞台にした資源獲得競争に米国も参加できるようになることです。
核よりも大事な、資源をめぐる先陣争い
—北朝鮮を舞台にした資源獲得競争ですか。
武貞:はい、そうです。順にお話ししましょう。まず中国。習近平政権は、これまで経済発展が遅れてきた東北部・吉林省の開発に力を入れています。その一環として開発が遅れている吉林省の発展のために長吉図開発開放先導区という特区を設けた。長吉図はこの地域の中心となる3都市の頭文字を並べたものです。「長」は長春。「吉」は吉林市。「図」は中朝国境の町、図們。既に長春から図們までを高速鉄道で結んでいます。
中国はこの特区の延長線上に、北朝鮮・茂山の鉄鉱山の採掘や、北朝鮮の天然の不凍港である羅津(ラシン)港の活用を見据えています。茂山は、国境となる豆満江 を越えてすぐのところにある東アジア最大の鉄鉱山。韓国の鉄鉱石輸入量の100倍に相当する埋蔵量があると言われています。ここの独占採掘権を中国が握っており、北朝鮮の資源獲得は中国が先行しています。利権確保のために中国は、中朝国境にあるたくさんの橋を全額負担をして作り直し、北朝鮮の羅先市に続く道路の改修をしています。
南北が統一すれば我が物となるはずの鉄鉱資源を中国に取られていることに韓国はほぞをかんでいます。この状況を改め、北朝鮮に眠る資源を韓国が開発できるようにするための国策を探っている。文大統領が南北宥和を進めているのは単なる感情論からだけではありません。こうした実利も重視しての行動なのです。
中国に続いてロシアもこの資源競争に加わっています。ご存知のように羅津港第三埠頭の49年にわたる租借権を手にしています。ロシアと北朝鮮の国境のすぐ近くにある港ですね。冬はウラジオストック港が凍結するので、ロシアはどうしても羅津港は使用したい。北朝鮮での利権を確保するためにプーチン政権は金正恩体制に対して1兆1000億円の借金の返済免除をしています。
周辺国がこうした動きをしている中で、北朝鮮との国交がない米国は同国の資源にアクセスできずにいる。
—米国が北朝鮮の資源に注目しているのはどこから分かるのでしょうか。
武貞:マイク・ポンペオ国務長官の5月13日 が示しています。同長官はCVIDに向けて北朝鮮が行動を起こしたら経済再建を支援する意向を示しました。エネルギーとインフラ、農業技術を対象に民間部門による投資を認める。この分野における米企業の技術を提供する見返りに、資源へのアクセスを得る意図が読み取れます。また、6月12日に米朝首脳会談を開催するための再調整の過程で米国は「非核化に向けて行動を起こせば経済支援を行う」と繰り返しています。
CVIDの実現は「出口」に
—米国がCVIDの実現にあきらめ、資源へのアクセスを重視する方向に進むとすると、今後の米朝関係はどう展開していくのでしょう。
武貞:米朝首脳会談はいずれ開かれます。6月12日開催に向けて米朝両国が詰めの真っ最中です。トランプ大統領は前言を撤回することをはばからないですから、6月12日に会談が開催される可能性は十分です 。既に、CVIDで合意できなくても、お互いが恥をかかないですむ発表文の作成に着手していることでしょう。
—昨日(5月26日)に行われた第2回南北首脳会談は今後の米朝協議にどんな影響を与えるでしょう。
武貞:北朝鮮が韓国の顔を立てて米朝首脳会談実現に向けての思いを語りました。同時に、米朝の協議がギクシャクしても4月27日の板門店宣言で約束した軍事当局者会談、閣僚会談、離散家族再開は粛々と実行してゆきましょうということで一致した。
金委員長は、やはり文大統領は仲介者だと持ち上げて、韓国からの経済支援の約束を確認した上で、トランプ大統領に予定した通りの首脳会談開催を呼びかけました。南北が認識を共有しながら、北朝鮮が米朝首脳会談に臨むという展開になりました。北朝鮮は孤立しているようには見えないのですから、米国は首脳会談を延期しにくくなったし、北朝鮮に対して厳格なCVID受諾を迫りにくくなっています。
—しかし、米朝首脳会談が実現しても、CVIDで合意できず会談が長引くことになれば、米本土に届くICBM(大陸間弾頭弾)が完成してしまいませんか。米国はそれを容認するのでしょうか。約束を反故にされてきたこれまでの経緯を繰り返す事態も懸念されます。
武貞:容認はしません。CVIDをにらんだ様々な要求を北朝鮮にしていくでしょう。例えば、MTCR(ミサイル技術管理レジーム)*に加盟し、このルールに則ることを求めることが考えられます。
*:大量破壊兵器の運搬手段となるミサイル及びその開発に寄与しうる関連汎用品・技術の輸出を規制すべく、輸出管理の取組を調整するための非公式・自発的な集まり
両国の信頼醸成につながる取り組みを進めることもあるでしょう。例えば米国が主導する多国間海軍演習である環太平洋合同演習(リムパック)への参加を北朝鮮に促す。以前は中国海軍も参加していました。
これまで米国はCVIDの実現を交渉の入り口に置いてきました。CVIDを実現すれば、休戦協定を平和協定に転換するとか、経済支援を実行するといった具合です。しかし、これを出口に持っていくことを考え始めているのではないでしょうか。
これは北朝鮮に核保有を認めることではありません。非核化は目指す。しかし、米中間選挙までの半年とか、次の米大統領選挙までの2年間で、という具合に時間を縛る考えは捨てる。NPT(核不拡散条約)も、核保有国に対し核を廃棄することを求めていますが、期限は設けていません。これのバリエーションと考えれば、それほどおかしな考えではないと思います。
朝鮮統一後にCVIDを求めるのが現実策
日本は核保有国であるインドやパキスタンとつき合っています。イスラエルとも同様です。北朝鮮をこれらの国と同じように考えてもよいのではないでしょうか。
北朝鮮が保有する核兵器は日本にとっての脅威です。日本全国を射程距離内に入れているノドンミサイルが200発以上の核弾頭を配備されています。しかし、北朝鮮の核兵器は日本を征服するために作ってきたのではなく、半島有事で日本が米軍への便宜供与をする決定を阻止するためのものです。
北朝鮮は、朝鮮半島を統一するために米軍の軍事介入を阻止したいのです。そのために米本土を射程に収める核搭載ICBMを完成することで、「米国第一」を最優先する米国が軍事介入を断念して、南北だけで朝鮮半島を統一する環境を作りたいというのが北朝鮮の戦略です。
つまり北朝鮮は核兵器で米国との核戦争を勝ち抜くことを考えているのでありません。
軍事境界線北側の体制の安全を確保するため、という見方も破綻しています。1953年に朝鮮戦争が休戦となって以来、戦争は起きていません。つまり北朝鮮が保有する既存の通常兵器と在韓米軍と米韓相互防衛条約の存在で戦争は抑止されてきました。
つまり、統一が実現すれば、北朝鮮は核兵器の使い道を失います。統一に向けて南北が話し合いを続けるとき、少しずつ核兵器を放棄する作業をすることが可能になるでしょう。南北和解のプロセスとリンクさせつつ、核兵器を廃棄するよう外交を展開すればよいのではないでしょうか。
北朝鮮に対して期限内にCVIDを実現するよう強要することが、いまの日米韓の公式の政策です。北朝鮮が呑まなければ、米国は軍事行動を起こすという説明が数多くあります。この方法を選べば韓国と日本で数十万人の死者が出ると言われています。このシナリオと半島統一へのプロセスの過程で段階的に核兵器の廃棄を求める方法のどちらが適切でしょうか。
日本について言えば、統一コリアができた時、国交正常化の後の経済支援を約束した日朝平壌宣言*を再交渉することになるでしょう。小泉純一郎首相が2002年に行った外交は見事なものでした。北朝鮮から賠償という名目の法外な支援要求を受ける根拠はありません。国交樹立と双方の請求権の放棄、経済支援という道筋を付けたのです。この原則は1965年に結んだ日韓基本条約の原則を踏襲しています。
*:小泉純一郎首相が2002年に訪朝し、金正日(キム・ジョンイル)総書記と署名した共同宣言 。日本は過去の植民地支配に対するお詫びの気持ちを表明。両国による請求権の放棄、国交正常化後の経済協力を盛り込んだ
その後、北朝鮮によるウラン濃縮が明らかになり、拉致問題が膠着状態に陥ったため、この宣言に基づいた国交正常化交渉はとまっています。朝鮮半島統一の時は、日朝国交正常化の後の経済支援というシナリオではないのですが、軍事境界線の北側の地域と住民に対する経済支援の問題が残るでしょう。
日本はこの時に、「経済支援には核兵器の放棄が前提となる」と交渉すればよいのです。「労働新聞をひもといたら『ノドンミサイルは日本の都市を狙っている』と書いてあります。これを撤去し、検証するまで、日本は支援としての大金を支払うわけにいかない」と主張すればよいのです。これこそが外交ではないでしょうか。国益に基づいた政策とはこういうものをいうのだと思います。
「統一コリアは核を持ったまま日本を脅かす。したがって今のうちに軍事力を行使して核兵器を除去すべき」という主張があります。これは偏った議論でしょう。核施設を確実に除去できるのかどうか。除去に至る過程で軍事衝突が起こり日本と韓国に多数の犠牲者が出るシナリオを両国民が受け入れるとは思えません。
—朝鮮半島の統一は現実に進むのでしょうか。
武貞:それは南北の交渉しだいです。4月27日に南北首脳会談が行われた後、韓国の文大統領の支持率は上がり史上最高の85%に達しました。同大統領の任期はあと4年あります。これから毎年、南北首脳会談を繰り返す。そして、任期の最終年にはなだらかな市場統合を実現するでしょう(関連記事「南北会談の主題は『非核化』ではなく『統一』」)。
南北関係が順調に進めば文大統領の弟子が次期大統領の座に就くでしょう。いま米朝関係がギクシャクしても南北交流は続いているのです。この間、米国が韓国に厳しい姿勢を見せれば見せるほど、韓国の進歩派政権への支持率は高まります。「米国の圧力に抗して、民族の宥和を進めた」と韓国国民は考えるからです。
文大統領の残り4年、プラス、次期大統領の任期5年の合計9年。こうした状況が続くならば、統一は夢物語だとは言えなくなります。
先日、韓国を訪問した時、全国紙の記者や学者と討論をしました。皆さん、南北対話と融和の先にある朝鮮半島統一を議論していました。「日本パッシング(日本を外すこと)の平和のプロセスには反対だ。北朝鮮の経済再建の過程で韓国は日本の財力を頼りにしなければならないから」という論議さえ行われていました。朝鮮半島で「まさか」は起きないと思っていてはいけません。
重村記事

朝鮮人民軍の兵士は、金正恩委員長に従順な者ばかりではない(提供:KNS/KCNA/AFP/アフロ)
北朝鮮との交渉には、秘訣がある。最悪の場合には「決裂」を辞さない――と覚悟できないと交渉は成功しない。これを知るドナルド・トランプ米大統領の「交渉術」が、米朝首脳会談を再び実現に向かわせた。同氏は、交渉術に精通した元ビジネスマンだ。
米朝首脳会談が実現し、一定の合意に達する可能性が高い。
北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)委員長と韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領が5月26日、板門店で再び会談。米朝首脳会談の再開とトランプ大統領にどう対応するかを、相談した。
父親や祖父の時代と違い、北朝鮮の若い指導者には、国際社会に友人がいない。それに近い存在は中国の習近平国家主席と文大統領だけだ。金委員長は「二人ともトランプ氏と通じており、信頼していいのか不安だが、助けが欲しい」という心境だろう。韓国の指導者も、首脳会談が中止になると国民の信頼と権威を失う。南北の指導者は、助け合わざるをえない状況にある。
軍に対して党がクーデター
トランプ大統領は24日に「米朝首脳会談中止」を発表した際、「交渉はゲームだ」と述べた。さすがに、交渉術をよく知っている。
90年代初期に米朝が核交渉を米ニューヨークで行った際、その初日に、演説に立った北朝鮮代表は同国の公式の立場を説明するとともに、長々と米国を非難した。ガルーチ米代表は初日は我慢したが、2日目も続いたので演説を中止させ「会談を打ち切る」と通告し席を立った。北朝鮮代表は、あわてて追いかけ「明日も会談を続けてくれたら、合意する」と頼んだ。北朝鮮との交渉は、打ち切りや中止の覚悟がないとうまくいかない。
交渉ゲームの基本は、相手の状況を正確に把握することだ。米国は、平壌内部の情報を相当深く手に入れており、指導者と軍部の厳しい関係を理解している。
金委員長は北朝鮮社会の近代化と経済発展を考え、父親が進めた軍を優遇する「先軍政治」をやめ、祖父の「労働党優先政治」に切り替えた。資金を経済に振り向けるため、軍の利権を減らした。権力機関である「国防委員会」も廃止した。これは、軍に対して党が行った「親政クーデター」と言っても過言ではない。
軍部が金政権に反発し、強い不満を抱くのは当然だ。金委員長がこれを抑え、「核実験中止」「核実験場廃棄」「非核化」を決めたのは、相当な指導力と胆力の持ち主であることを示している。同委員長は軍指導者の多くを処刑した。米国との国交正常化なしには、北朝鮮は生き残れない、との決意があった。
首脳会談流れれば軍によるクーデターも
こうした経緯があったため、もし「米朝首脳会談」が中止になれば、金委員長は軍部や指導層からの信頼を失いかねない。その権威も失墜する。軍部によるクーデターや混乱に直面する可能性も浮上する。だから、「米朝首脳会談」は必ず実現しないといけないのだ。
北朝鮮国内のこうした状況を理解しているから、金委員長への書簡を書くに当たってトランプ大統領は、礼を尽くした言葉を選んだ。書簡の中で金委員長への「感謝」の言葉を3度も繰り返している。「シンガポールで予定されている首脳会談に対する、あなたの忍耐強い努力に感謝している」。「あなたが(米国人)人質を解放し、家族のもとに返してくれたことに感謝したい」。「(米国人解放は)すばらしい意思表示で、謝意を表する」
そして最後に、「遠慮なく私に電話をするか、書簡を送ってほしい」と伝えた。金委員長を決して非難することなく、首脳会談再開に含みをもたす書簡だった。
トランプ大統領に「中止」を決断させたのは、北朝鮮外務次官の「談話」であった。崔善姫(チェ・ソンヒ)外務次官は24日 に発表した談話で、マイク・ペンス米副大統領が「軍事攻撃は排除しない」と述べ「核の完全廃棄」を求めたことに反発し、同副大統領を「愚鈍なまぬけ」と名指しで批判した。この品を欠く表現は、北朝鮮軍部の反発がいかに激しいかを、物語っている。米国に対し、これほど激しい「非難」を表明しなければ軍部が納得しない状態にあり、外交当局者は追い詰められていた。
一方、トランプ大統領は、ペンス副大統領への非難を、自分への攻撃と受け止めて怒った。そしてジョン・ボルトン大統領補佐官(国家安全保障問題担当)のアドバイスを受け入れて「首脳会談中止」を決めた。だが、前述のように、中止を通告する書簡は丁寧で相手の立場を考慮したものだった。金委員長が、トランプ大統領が「感謝」の意を示す書簡を送ってきたと国内に説明できる内容だった。
この書簡に気になる表現があった。米朝首脳会談について「北朝鮮側が求めたものだと伝えられたが、それが見当違いだということがわかった」と述べている。
これは崔次官が談話で「(米国が)対話を請託したにもかかわらず、我々が要請したように世論をミスリードしている」と指摘したことへの返事である。仲介した韓国がなんらかの小細工をしたのではないか、と米朝双方が感じているようだ。
リビア方式は×、トランプ方式なら○
トランプ氏の「首脳会談中止」に驚愕した北朝鮮は、金桂官(キム・ゲゲァン)第1外務次官の「談話」を発表し、「首脳会談再考」を求めた。「談話」の次の表現から、北朝鮮指導部が追い詰められている状況がよく理解できる。
「トランプ大統領が、どの大統領もできなかった勇断を下し、首脳会談に努力したことを、内心高く評価してきた」。「金委員長もトランプ大統領との出会いは良い始まりになり得るとおっしゃり、準備に全ての努力を傾けられた」。「いつでもどのような方法でも、向かい合って問題を解決していく用意がある」。北朝鮮側の悲痛な思いが、伝わってくる。
加えて、この書簡は、「リビア方式」でなく「トランプ方式」なら合意できると示唆している。「『トランプ方式』は双方の懸念をすべて解消し、私たちの要求と条件にも合致し、問題の解決に実質的な作用をする賢明な方策になることを期待していた」
つまり、北朝鮮側は「リビア方式」という言葉を使わず「トランプ方式」との言葉を使えば、合意は可能だと交渉妥結の方法を教えているのだ。
リビア方式とは、リビアが核施設を完全に廃棄するのを優先し、その後に、米国が関係正常化や制裁解除などの見返りを与えたやり方だ。この道を選んだリビアはアラブの春のあと崩壊した。
一方、トランプ大統領は「完全な非核化をすれば、北朝鮮は繁栄する。経済支援や投資が可能だ。北朝鮮の体制は保証する。軍事攻撃はしない」と明言した。この米国の方針を、「トランプ方式」と言えば北朝鮮は応じる、というわけだ。
トランプ大統領の「首脳会談中止」決断は、米朝双方に「譲歩」と「合意」のムードを生んでいる。北朝鮮では、軍部の圧力を和らげる契機となった。仮に米朝首脳会談が中止されれば、米軍は軍事攻撃に至る。北朝鮮が反撃すれば、全面戦争に発展し北朝鮮は崩壊する。この現実を考えると、北朝鮮軍部は強硬な立場を続けるわけにはいかない。
これに対して米国は、完全な非核化と核廃棄を北朝鮮が約束し「廃棄作業に着手すれば」、日本、韓国、中国などが制裁を解除するのを認めるといった妥協をすることが考えられる。米国は、米朝平和協定の締結や在韓米軍の撤退を約束するだろう。
だが、北朝鮮が完全な核放棄に応じるとは、考えにくい。軍部を説得するために、核開発を再開できる可能性を少しでも残す合意にしたいと考えているだろう。一方で米国は、核開発の再開を認めない合意を目指す。「完全な核廃棄」か、核開発再開の芽を残す「非核化」か、をめぐりなお厳しい駆け引きが続く。
上久保記事

Photo:REUTERS/AFLO
ドナルド・トランプ米大統領は5月24日、シンガポールで6月12日に予定されていた、北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長との「米朝首脳会談」を中止する意向を明らかにした。北朝鮮が、豊渓里(プンゲリ)の核実験場を爆破し、「朝鮮半島の非核化」を目指す姿勢を示した直後の発表であった。
これに慌てた北朝鮮が、金委員長が韓国の文在寅大統領と急遽、板門店で首脳会談を行い、米朝首脳会談開催への「確固たる意志」を表明し、決裂回避に動き始めた。トランプ大統領はツイッターで、自身で表明した首脳会談の中止から一転して、今度は開催に前向きな姿勢を示した。
結局、米朝首脳会談は当初の予定通り、シンガポールで6月12日に開催されることになる見込みだ。筆者は、突如首脳会談中止を表明し、相手が慌てたところで「やっぱりやろう」と揺さぶったトランプ大統領に、「ディールの達人」の恐ろしさを見た。そして、金委員長は、完全に逃げ場を失い、「袋小路」に追い込まれた。
「アメリカファースト」のトランプ大統領は既に「ディール(取引)」を終えている
トランプ大統領にとって、「朝鮮半島の完全な非核化」や「北東アジアの紛争回避」など、実はどうでもいいことなのではないだろうか。そもそも、トランプ政権が「北朝鮮の核・ミサイル開発問題」に介入し始めたのは、北朝鮮が米国を直接核攻撃できる大陸間弾道弾(ICBM)を持つ可能性が出たからだった(本連載第155回)。
トランプ大統領は、口を開けば「朝鮮半島の完全な非核化」、「拉致問題を解決する」などといろいろ言ってはいるが、実は自国の安全保障のことしか考えていない。北朝鮮が核実験場を爆破して、核弾頭を搭載したICBMを開発できないということを確認した、まさにその日に首脳会談中止を表明したのは、そのことを象徴的に示している。
首脳会談を流すという、既存の政治家には絶対にできない「挑発」は、いかにもトランプ大統領らしい。だが、1つ言えることは、大統領にとって、「完全な非核化」など、所詮「オマケ」に過ぎないということだ。やはり、大統領の行動は、あくまで「アメリカファースト」なのだと、あらためて示したといえる(第170回)。
トランプにとって「完全な非核化」以外に会談実施の意味はない
トランプ大統領にとって、米朝首脳会談とはどういう意味を持つのか、もう少し考えてみる必要がある。まず、金委員長が「ICBMの実験中止」を表明し、「核実験場」を爆破したことの持つ意味である。
端的にいえば、北朝鮮が「米国を直接攻撃できる」懸念が消えたことを意味するだろう。つまり、米朝首脳会談の開催前にして、トランプ大統領が本当に欲しいものは、既に手に入ってしまったことになる。
その上、北朝鮮に拘束されていた米国人3人も取り戻し、米国世論にアピールできるオマケも得た。「朝鮮半島の非核化の実現」とは、それができれば「ノーベル平和賞」級の偉大な成果となり、そういう意味での関心はあるだろう。だが、「アメリカファースト」の大統領の本音としては、実現してもしなくても、どちらでもいいこととなる。
一方、この連載で指摘したように、「朝鮮半島の完全な非核化」の実現が「在韓米軍の撤退」を意味することは想定される。だが、これは米国の長期的方針としては既に決定していることであり、その実行のタイミングだけの問題である(第180回・p5)。そういう意味では、トランプ大統領が是が非でも米朝首脳会談をやりたいという動機付けにはなるものではない。
あえていえば、トランプ大統領にとって米朝首脳会談は、デメリットの方が大きいものかもしれない。大統領は「ディールの達人」として名をはせているが、そのイメージが崩れるかもしれないからだ。
例えば、米朝首脳会談の席上で、「ICBMの実験中止」「核施設爆破」を金委員長に宣言させるならば、その他が「段階的核廃絶」など曖昧な決着になったとしても、トランプ大統領が「ビッグディール」を成功させたということになるだろう。だが、金委員長は、既にそれを宣言し、実行してしまったのだ。そうなると、首脳会談で話し合うことは「朝鮮半島の完全な非核化」のみとなってしまう。
言い換えれば、トランプ大統領にとって、首脳会談での「ディール」の成功を示すものは、「朝鮮半島の完全な非核化の実現」だけになってしまった。だが、それは北朝鮮にとって簡単に飲めることではなく、実現は難しい。そうかといって、北朝鮮が望む「段階的非核化」を大統領が認めたら、それは単なる妥協ということになる。大統領のタフなイメージが壊れるだけである。
それでは、首脳会談の席上でガチンコで「完全な非核化」で揉めて決裂したら、どうなるか。あまりにその衝撃は大きすぎる。「ディールの達人」というトランプ大統領の評価が完全崩壊するだけでなく、北朝鮮がブチ切れて「最悪の事態」を招くリスクもある。
要するに、金委員長が「ICBMの実験中止」「核施設爆破」というカードを先に切ってしまったことで、トランプ大統領にとって、米朝首脳会談で「ディール」を成功させるハードルが一挙に「完全非核化」に上がってしまったのだ。しかし、大統領は既に得るものを得てしまっているので、米朝首脳会談をやる意味が希薄になっていた。
それにもかかわらず、金委員長はいささか調子に乗ったのか、首脳会談での「ディール」の「落としどころ」は「段階的核廃絶」だと、楽観的に考えていたのだろう。部下に米国を「挑発」するような、軽はずみな言動を繰り返させてしまった。
また、金委員長と米国の「仲介役」を務めてきた韓国の文大統領や、金委員長の「後ろ盾」である中国の習近平国家主席も、同じように楽観的に構えているようであった。
トランプ大統領からすれば、それは許せないということになったのだろう。そこで、「完全非核化を北朝鮮が飲まないのであれば、別に米朝首脳会談など無理にやる必要などないのだ。それで北朝鮮が逆ギレするなら、軍隊を出して簡単に叩き潰すぞ」という脅しをかけた。
トランプ大統領は、金委員長や、韓国、中国に「俺は圧倒的に強い立場にあるのだぞ。それを忘れるなよ」ということを、強く知らしめたかったのではないだろうか。
金正恩も事実上の「核保有国」となるために会談を回避したほうがいいと考えるか?
一方、金委員長の立場から見れば、事前に大統領に対してカードを切りすぎたことは大失敗だったように見える。米朝首脳会談を通じて、トランプ大統領から「体制維持の確約」を得て、「段階的核廃絶」を約束することで事実上の「核保有国」になれればよかったのに、トランプ大統領の「アメリカファースト」を読み間違えて、自ら首脳会談のハードルを「完全な非核化」に上げてしまったからだ。
金委員長は慌ててトランプ大統領の機嫌を取って、予定通り首脳会談を実施する方向に一応向かってはいる。だが、金委員長は本当にこのまま、首脳会談を行ったほうがいいのだろうか。
そもそも論だが、北朝鮮が目指してきたのは「核保有国」になることだ。それが「体制崩壊」を防ぐ唯一の道だというのは、金委員長の父・金正日氏の「遺訓」であった。金委員長が融和の姿勢を示し、韓国の文大統領との南北首脳会談で「核なき朝鮮半島の実現」を約束したが、それは本気ではないはずだ。
本音は「段階的非核化」という曖昧な着地点を勝ち得て、実質的に「核保有国」になることが目標だったはずだ。だが、既に欲しいものを手に入れてしまい、あわよくば「ノーベル平和賞」でも取れれば儲けものくらいに考えて、思い切り「ディール」のハードルを上げてきたトランプ大統領と、どう渡り合ったらいいのだろう。金委員長は、これから非常に頭を痛めるはずだ。
それならば、むしろ米朝首脳会談を流したほうがいいという判断はあり得るだろう。そうすれば、「朝鮮半島の完全な非核化」は議論する場がなくなり、中距離核ミサイルは日本に向けてズラリと並んだままとなり、北朝鮮は実質的に「核保有国」となることができる。そして、中国、ロシア、韓国も、本音では北朝鮮が核保有国となることは悪いことではないと思っている(第166回)。
米国は、「アメリカファースト」なので、ICBMさえ持たなければ、北朝鮮を攻撃することに関心は持たないだろう(第155回)。もちろん、米国はいまや「世界の暴力団」なので、トランプ大統領を怒らせたら何をされるかわからない(第181回)。ただ、たとえ首脳会談が流れても、北朝鮮は自ら「段階的核廃絶を行っていく」と宣言したりして、慎重にトランプ大統領の機嫌を取っていけばいい。
要するに、トランプ大統領が既に「ディール」で「実」を得たことで強硬姿勢に出たように、今度は金委員長があえて首脳会談を流して、事実上の「核保有国」となる「実」を得ようと、動く可能性があるかもしれない。
「ディールの達人」トランプは、金正恩を完全に「袋小路」に追い込んだ
だが、金委員長が米朝首脳会談を流して核保有国になるという「実」を得ることは、相当に難しいかもしれない。それは、トランプ大統領は強硬姿勢を示すことで、韓国の文大統領の首根っこもガッチリと掴んでしまったように思うからだ。
韓国の文大統領は、米朝首脳会談で北朝鮮が「体制維持の保証」と「段階的核廃絶」をトランプ大統領から勝ち取れば、一挙に南北首脳会談で金委員長が求めてきた経済協力を進めるつもりだった。だが、トランプ大統領が米朝首脳会談の「ディール」を、北朝鮮が簡単に飲めない「朝鮮半島の完全な非核化実現」に引き上げたことで、簡単に「ディール」が成立することはなくなり、南北の経済協力を進める思惑は棚上げせざるを得なくなるだろう。
米朝首脳会談が流れれば、北朝鮮は事実上の「核保有国」になれるが、国連の経済制裁は解除されないことになる。金委員長にとって、南北間の経済協力が非常に重要になるが、トランプ大統領を無視して、文大統領が経済協力を進めることは、難しいのではないだろうか。
北朝鮮に対する国連の経済制裁は、非常に効いているとされている。北朝鮮は米朝首脳会談を流して「核保有国」となれても、経済制裁が解除されなければ、早晩行き詰まることになる。かといって、米朝首脳会談を行えば、トランプ大統領から「完全な非核化」を強く要求されることになる。
金委員長は、結局経験不足だったのだろうか。軽率にも首脳会談の前に、トランプ大統領の欲しいものを渡してしまった。結果、米朝首脳会談は「退くも地獄、進むも地獄」となってしまった。「ディールの達人」トランプ大統領は、完全に金委員長を袋小路に追い込んだように見える。
(立命館大学政策科学部教授 上久保誠人)
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『中国で「IT革命」が劇的に進んでいる3つの理由』(5/23ダイヤモンドオンライン 藤岡久士)について
5/25ダイヤモンドオンライン ロイター<米朝首脳会談を中止、トランプ大統領が通告 「最大限の圧力継続」>
https://diamond.jp/articles/-/170995?utm_source=weekend&utm_medium=email&utm_campaign=doleditor
5/25杉浦正章氏ブログ<米朝会談中止の背景を探る>
http://thenagatachou.blog.so-net.ne.jp/2018-05-25
5/26ダイヤモンドオンライン 武藤正敏<米朝会談中止は中韓が北に幻想を抱かせたのも一因、元駐韓大使が解説>
https://diamond.jp/articles/-/170986?utm_source=weekend&utm_medium=email&utm_campaign=doleditor
5/26産経ニュース電子版<仲介役自任し諦めぬ文在寅大統領 米朝首脳会談実現へ問われる外交手腕>
https://www.sankei.com/world/news/180526/wor1805260058-n1.html
6/12米朝首脳交渉が開かれるかどうか全く先が読めません。トランプは文書を以て正式にキャンセルした後、「予定通りに開かれるかもしれない」と記者団に話したり、ツイッターで投稿したりしました。変わり身が早いというか作戦の一つでしょうけど。早速北の手先の文在寅が動いて、金正恩と2回目の会談をしました。文・金会談で、何とか米国を騙せないか知恵をめぐらしたと思われます。しかし、トランプは文の言うことは全然信用していないので、5/25米韓首脳会談で文に恥をかかせたと思われます。文が動けば動くほど空回りするのでは。金がすぐに核全廃ではなくとも、2、3年の内にはCVIDできることを約束しない限り、金王朝は打倒されるのでは。しかし武藤氏は北が核を放棄することはないと見ています。そうなれば制裁強化か戦争が待っているでしょう。また、中国が北に助け舟を出せば中国には厳しい経済制裁、金融制裁が待っているのでは。
5/23東京新聞<ローマ法王、台湾を見捨てないと 台北大司教の訴えに>中国が金の力で台湾と断交させて来た国全部を合わせた、その数百倍もの国際社会での価値があるバチカン。その法王から「台湾を見捨てない」と言質を取ったのは大きいです。台湾は中国の領土と言うのを否定したのも同然です。バチカンの金に転んだ司教が中国とバチカンとを国交を結ばせるためいろいろと工作してきましたが、これで一安心です。
http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2018052301001814.html
5/25看中国<落马女官生活糜烂 与英俊男下属权色交易(图)=逮捕された女性官僚の生活は糜爛していた ハンサムな男性部下と権力と色とで取引>この記事には3人の女性がその地位を利用して金を取るか、性行為を金の代わりとして貢がせたという内容です。中国では上下・男女関係なく賄賂を上げたり、取ったりするのは当り前のこと。生活習慣です。
藤岡氏の記事で、彼は2000年から中国在住で、今はフードコンサルタントとして活躍とのこと。中国の裏のダーテイな部分を良く知っていると思います。特に会社設立認可を迅速に行うにはいろんな部署に賄賂が付きまといます。日本のように届出だけでは済みません。会社設立後も、公安や、各役所が査察と称して賄賂をねだりに来ます。そこら辺をよく理解して日本人は進出しませんと。きれいごとだけではありません。看中国の記事のように法執行側の人間が男女を問わず賄賂(含む性行為)を取ります。人民法院の裁判官と手同じです。尤も共産党が支配する中国では三権分立はなく、司法部門も行政機構の一部です。まあ、小生は敵国・中国への進出は勧めませんが。
2016/10/17記事<【第86回】中国における外商投資企業の設立は許可制から届出制へ>
http://work-as1.com/special/?p=1843
とありましたが信用できません。事後審査するにしても役人は賄賂を要求するでしょう。彼らの収入の一部に組み込まれているというか正規の報酬を上回ることが大部分なので。
中国のスマホ決済やシエアリングの便利さは、日本の快適さとは程遠いです。まず、個人情報が国家に筒抜け、犯罪者逮捕には便利でしょうが、政治犯や冤罪での逮捕、誤認逮捕が多い中国ではいつも政府の動向を気にしなければ生きていけません。いつ落とし穴にはまるか分かりません。5/26キリスト教団体関係の日本人21人が逮捕拘留、5人釈放というニュースが流れましたが、政府の意に反する行為があればすぐ逮捕されます。彼らは脱北者の支援活動をしていたとの噂でしたが。
スマホ決済も現金だと偽札が2割も流通するから、その対策の意味もあったと思います。別にスマホ決済でなくともカード決済があれば充分では。小口は現金で払うことに違和感はありません。何を騒いでいるのという気がします。
記事

先月、中国グルメサイト大手「大衆点評(ダージョンディエンピン)」やネット宅配サービスを展開する「美団点評(メイタンディエンピン)」が、日本進出で話題となったシェアサイクル大手「Mobike(モバイク)」を買収した。
昨今、中国のIT化や中国企業の動向を伝えるニュースが増えてきているが、いったい中国で何が起こっているのか。
中国在住18年でサービス産業のコンサルタントをしている筆者が解説したいと思う。
美団点評(メイタンディエンピン)とは 急成長の「食品デリバリー市場」
美団点評は、昨年企業価値が300億ドル(約3兆2000億円)に到達した、「ユニコーン」第4位の注目企業である(「ユニコーン」とは、企業としての評価額が10億ドルを超える、非上場のベンチャー企業を指す)。
現在、グルメサイト「大衆点評(ダージョンディエンピン)」と、食品デリバリーサービス「美団(メイタン)」 を事業の軸に据え、中国市場において、この分野で圧倒的なシェアを誇っている。
その独占的なポジションを評価され、2015年には微信(WeChat)でおなじみの騰訊(テンセント)からも資金調達を果たしている。
ちなみに、競合に当たるアリババは、4月、中国食品デリバリー市場において美団と双璧をなす「餓了麼(ウーラマ;Ele.me)」を95億ドル(約1兆円超)規模で買収している。
また、企業価値500億ドルで2017年「ユニコーン」第2位で、現在中国の配車サービス市場を独占している滴滴出行(ディディチューシン)」も3月、100億元(約1700億円)規模のファイナンスを実行し、無錫で食品デリバリー市場に参入を果たしている。
美団点評が主戦場としている「食品デリバリー市場」は、昨年中国で66.2%と群を抜いた成長を遂げた、注目の市場なのである。
中国のITイノベーションは オンラインとオフラインの融合
今、中国でITイノベーションが起こっていると言っても、ピンとこないかもしれない。
筆者は決して、「キャッシュレス化」や「配車サービス」、「自転車」をはじめとする「シェアサービス」や「無人コンビニ」といった、最新のITサービスの普及を指して、イノベーションと言っているわけではない。
これまで一般的に、仮想空間とされ、現実の社会とは区別される傾向にあったオンラインの世界が、現実の社会を補完し、インフラとして広がりつつあるのだ。
中国で起こっているイノベーションの正体は、オンラインとオフラインの世界が融合したことなのだ。
日本でもスマートフォン(以下スマホ)は普及しているし、Apple Payをはじめとするキャッシュレスサービスだって、既に目新しいものではなく中国だけ進んでいるわけではないと感じる方もいるだろう。
実際日本にも、O2O(オンラインtoオフライン)を意識したマーケティングを強化している企業もあれば、「オムニチャネル」を実践している企業があることも事実である。
しかし、これら日本国内の進化と、今中国で起こっている変化はレベルが違うと言わざる得ない。
では、なぜ中国でこのようなイノベーションが実現したのだろうか。
中国でイノベーションが実現した理由 BATと政府の存在感
大きな要因の1つが、ハード(スマホ)の十分な普及である。
ここで大切なのは、単に普及したというだけでなく社会インフラとして機能するだけの、十分な普及を果たしたという点である。
もちろん細かいことを言えば、中国でも全ての人がスマホを所持しているわけではない。
ただ、中国では、物乞いをする人間ですらスマホを所持しており、それに誰も疑問を持っていないことに驚かされる。
スマホは既にぜいたく品ではなく、必需品であるということなのだろう。
また、誤解を恐れず言うと、中国人には「割り切り」「切り捨て」的な思想がある。
そのことが、結果としてさらなる普及を促していると感じる。
2つ目の要因は、全ての端末(スマホ)に基本、個人ID(身分証明書)と銀行口座がひも付いたこと。
これにより、従来匿名性の高かったオンラインの世界と、オフライン(現実)の世界との垣根が大幅に下がり、オンライン上でも十分な信用が担保される世界が広がった。
社会体制の影響からくる、個人情報保護に対する意識の甘さも、結果としてプラスに働いた。
そして3つ目の要因が、14億人の巨大市場を背景に世界中から流入する巨額の資金だ。
現在の中国には、その豊富な資金力を元手にペガサス企業や次々と生まれる新興企業がM&Aを繰り返す、ダイナミックな市場環境がある。
加えて、業界の垣根を越えプラットホームを築いていくネット業界の巨人、BAT(百度、アリババ、テンセント)と、それを後押しする政府の存在も需要な役割を果たしている。
これから成功しそうなサービスを展開してるスタートアップ企業を、次々とBATが支援・買収することにより、新しい便利なサービスが、微信(WeChat)をはじめとする、彼らのプラットホームを共有し連動していく。
また、政府は少々問題が発生してもすぐには規制に入らず、一定期間静観し、動向を見極めた上で調整に入る。
この官民連携が、「正の連鎖」をもたらしている。
ITイノベーションがもたらした社会 信用のプラットホーム
アリババの決済サービス「支付宝(アリペイ)」に登録すると、個人信用を数値化する「芝麻信用(ジーマーシンヨン)」というサービスが自動的に付随してくることを知らない日本人は多い。
「芝麻信用(ジーマーシンヨン)」スコアは、「支付宝(アリペイ)の消費履歴」だけでなく、アリババグループのさまざまなサービスと“ひも付け管理”されており、「支払履行能力」や「消費傾向」がわかる。
驚くことに、「学歴」「職歴」や「人脈」、「個人資産」といった、極めて個人的な情報も加味されるようプログラムされている。
このスコアが上がると、各種シェアサービスやホテル宿泊の際に必要なデポジット免除、特定の国のビザが取りやすくなるなど、多くの特典を享受することができるのだ。
“魅力的な特典”を与えることで、このサービスの“肝”となる個人情報を、顧客に躊躇なく入力させることに成功している。
実際、「芝麻信用(ジーマーシンヨン)」は、既に社会的に信用のおける「評価システム」のプラットホームとして機能しはじめており、さらなる発展が期待されている、シェアリングエコノミーをはじめとする個人対個人(P2P)のビジネスを底支えする役割を果たしている。
もちろん、このサービスには個人情報保護の側面で問題がある。しかし、その利便性が中国人にとって将来のリスクに勝ったことは、理解するに難しくない。
ITイノベーションによる劇的な生活の変化は、今後もさらに進んでいくと考えられる。
一方、これらIT社会の発展は、より便利な社会を実現すると同時に、危険な一面を持ち合わせていることは間違いない。
しかし、その「負」の部分を杞憂し、躊躇、足踏みすることは意味のないことである。
科学技術の進歩により、一度進んでしまった社会は後戻りできない。
筆者は長らく中国に住み、そのダイナミックな変化を目の当たりにしてきたが、今はまさに「時代の転換期」であると強く感じている。
(ゼロイチ・フード・ラボCEO 藤岡久士)
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『南シナ海界隈で中国の動きが騒がしい 人工島で爆撃機離発着訓練、軍事的プレゼンス誇示』(5/23日経ビジネスオンライン 福島香織)について
5/25東洋経済オンライン 渡邉哲也<米国は中国を一体どれだけ警戒しているのか トランプ陣営の姿勢は両国経済に影響する>米国が21世紀型COCOMを作って、自由主義国に中国との取引制限を課そうと考えているようです。
https://toyokeizai.net/articles/-/220395
5/25日経朝刊<「対中融和」象徴に終止符 米、環太平洋演習から中国排除 南シナ海でけん制強める 対北朝鮮政策に影響も>5/20本ブログでも中国のリムパック排除を訴えましたが、その通りの展開となりました。今後は中国を敵国としての扱いが露骨になるのでは。このリムパックもオバマのツケの清算です。王毅が何を言おうとも6/12首脳会談は実行されないでしょう。負け犬の遠吠えです。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO30915960U8A520C1FF1000/
http://dwellerinkashiwa.net/?p=8943
5/25日経朝刊・5/10日経電子版<米制裁、中国のシリコンバレーを直撃 日米の認識に大きなズレ
多くのスタートアップ企業が集まり、最近は「中国のシリコンバレー」ともてはやされていた街に激震が走った。中国南部の広東省深圳市だ。ここに本社を置き、ハイテクの代表銘柄である中国2大通信機器大手の中興通訊(ZTE)と華為技術(ファーウェイ)が米国から制裁を受け経営が今、大きく揺れている。特にZTEは会社存亡の危機だ。
ZTEはイランや北朝鮮に、核開発やロケット開発にも通じる通信機器を長年にわたり違法に輸出した。ZTEは不正を認め、米側に1千億円以上の罰金の支払いで合意したが、米当局は4月、今後7年間に渡り、ZTEと米国企業との取引禁止を命じた。これでZTEの多くの製品は作れなくなったが、犯した罪を考えれば、言語道断だ。
さらにZTEは別件でもファーウェイとともに、両社の通信機器が米国で中国政府のスパイ活動に利用されていると2012年ごろから米議会で指摘され続けてきた。この件でも制裁が決まる見通しだ。米国だけでなく英国でも似た動きがある。
これらから学ぶべきは米中の単なる経済摩擦というだけではない。時代は今、データ戦争の時代に突入した。データを握るものが国家間の戦いをも制する時代。中国ではデータを一手に握った政府が、昨年から14億人の国民や企業の監視を一気に強められたことでも明白だ。ただ、現場に大量のデータがあっても、実はそのデータを吸い上げたり、やりとりしたりする技術が重要となる。
それが通信機器の技術で、中国ではファーウェイとZTEが2大メーカーだ。米国ならシスコシステムズとなる。残念ながら今の日本には肩を並べる企業は無くなったが、米国がそんな中国二大企業の米国内での動きに神経質になるのは、むしろ当然の話だ。
だが、日本を見ると不安だ。「深圳が今、ハイテクな企業が集まりすごいらしいぞ」。この1年間もこの「らしい」を求め、日本から大手銀行の行員、商社の社員、国会議員らが続々と深圳を訪れた。お決まりはファーウェイやZTE、ドローンで有名なDJIの見学コース。
見学を終えた参加者らは「深圳はすごかった」と手放しで喜び、「我々もこんな企業と何か連携しビジネスをしたい」と語り、帰国するのがもはや定番化した。実際、この1~2年で日本企業とZTE、ファーウェイとの連携は驚くべきスピードで進んだ。日米のあまりの認識のズレ。本当に大丈夫だろうか。(N)>(以上)
本当に日本人の判断基準はズレているとしか言いようがありません。これも国家の安全保障への無関心の為せる業でしょう。ZTEや華為はIT機器にバックドアを仕掛け、情報を盗み取ることをしています。彼らと付き合い、提携すれば、彼らの製品を使うようになります。企業の機密情報何て簡単に盗み取られるではないですか。使わなければ良いという議論は成り立ちません。提携は相手の機器を使う前提でするものです。やはり、平和ボケ、平和教育、憲法9条の刷り込みが脳を腐らせているのでしょう。自分の頭で考えたことがないのか、自分の出世のことだけで、日本国民全体のことを考えない経営者、社員が増えているという事です。ただ、今後本記事を書いた記者が懸念しているように、米国が正式にZTEや華為に経済制裁発動した時には、彼らと取引のある日本企業も米国並びに自由主義国で取引できなくなります。イラン制裁で仏・トタルがイランから撤退したのと同じことが起きるでしょう。それまでの投資がパアになります。
福島氏の記事は時間的にずれ(6/12米中首脳会談キャンセル前)があります。彼女の言うように、北の問題が解決すれば、米国と中国が南シナ海でホットウオーになるかどうか分かりませんが、今の南シナ海の状況が良い訳がありません。国際法違反の現状変更です。力による侵略は力によって抑えるしかありません。禁輸、海上封鎖、金融制裁等経済力を使うか、武力行使するかです。人権弾圧する共産主義国は無くなり、生まれ変わってほしいと願っています。
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南シナ海上空を監視飛行する中国の爆撃機H-6K(写真:新華社/アフロ)
米中通商協議で貿易戦争を暫定的に回避する合意が出た。この駆け引きの内幕に関する情報がそこはかとなく出てくるには、おそらくあと数日必要だろう。だが、その裏側で行われている様々な米中の駆け引きが影響を与えていることは間違いないと思われる。例えば6月に予定されている米朝首脳会談であり、もう一つ考えうるのは南シナ海情勢である。最近、南シナ海界隈で中国の動きが騒がしい。この機会に整理しておこう。
南シナ海の島嶼の中国による実効支配が進んでいることはすでに何度もこのコラム欄で紹介してきた。これはオバマ政権下での痛恨の外交ミスともいえる。このしりぬぐいを任されている米トランプ政権だが、目下の関心は、中東と朝鮮半島に集中しているように見えて、実は南シナ海情勢については4月以降、急激に温度が上昇している。
最近注目されたニュースは南シナ海の人工島に、中国解放軍初の爆撃機離発着訓練が行われたことだろう。中国国防部が5月18日に発表した。訓練を行ったのは中距離ミサイルや核搭載が可能な轟6K(H-6K)爆撃機。具体的な場所は不明だが、米軍事専門誌によればパラセル(西沙)諸島のウッディー島(永興島)だと見られている。この島はベトナムと台湾が領有権を主張している。
中国国防部の発表によれば、「この訓練によって全辺境へいかなるタイミングの、全方位的な攻撃能力を向上できた」としており、「西太平洋進出をひかえ、南シナ海をめぐる戦いに向け、研ぎ澄ませた剣を掲げ、新たな航路を常に切り開く」と南シナ海で戦争を仮定した訓練であることも隠していない。さらに、この訓練について「宇宙と一体化した攻防を兼ね備えた戦略目標に着眼し、空軍が全辺境作戦の現代化戦略性に向かって前進するもの」と位置づけている。
爆撃機の所属先は発表では南方の某基地としか記されていないが、郝建科という師団長の名前とH-6K配備の空軍師団という条件を考えると、北部戦区の西安基地を拠点とする中国空軍第36爆撃機師団(空36師団)でほぼ間違いないと見られている。空36師は原爆・水爆投下試験任務を2017年までに完遂しており、習近平政権においては重点建設部隊として注目されている。
また自主開発爆撃機H-6Kは2011年の試験飛行を経て実戦配備が始まったばかりだが、すでに100機以上が製造・配備されていると報道されており、習近平政権下の軍事戦略において非常に重視されていることがうかがえる。台湾メディアによれば、東シナ海や宮古海峡あたりにしばしば飛んでくる爆撃機も空36師のH-6Kらしい。今回は単発の訓練ではなく、事実上のH-6K配備と考えるのが普通だろう。爆撃訓練も行われた、と一部で報じられている。
この訓練発表が発信するメッセージは結構重要だ。一つは「南シナ海の実効支配は中国が握っており、すでに軍事拠点化も既成事実化している」という現実を見せつけている。環礁を埋め立てた人工島に突貫工事で作った滑走路は軍事利用に耐えられないのではないか、という多くの人たちの希望的観測を裏切って「人工島に作られた滑走路は爆撃機の離発着に利用できる強度がある」ということも示された。さらに「南シナ海を拠点にすればH-6Kは全アジアを作戦空域に入れることができる」「南シナ海の軍事拠点化の目的が西太平洋に打ってでることであり、そのための南シナ海をめぐる作戦を想定している」といった含みもある。
H-6Kの能力について、私自身は専門家ではないので正確に評価できないのだが、この爆撃機が実戦配備された当初、ロシアの軍事専門家ワシリー・カシンは「飛行距離は8000キロ、さらに射程距離2000-2500キロの巡航ミサイルCJ-10Kの搭載も可能であり、いままでグアムを含む第二列島戦までとされていた攻撃範囲がハワイより先に広がる」「10年たってH-6Kの配備が増えた場合、アジアにおけるパワーバランスが中国有利に傾く」と分析していた。
米国に対して挑発を繰り返す理由
そう考えると、この訓練は米国に対してのかなりきわどい挑発、あるいは牽制だともいえる。では、なぜ今、南シナ海で中国はこうした派手なパフォーマンスを伴って米国を刺激しているのか。単に米海軍の「航行の自由作戦」に対する牽制、というだけなのか。
この爆撃機訓練だけでない。その翌々日には、中国海警船と海軍艦艇がパラセル諸島海域で合同パトロールを行ったことも発表された。公式発表ではないが、5月上旬、南シナ海の七つの人工島のうちにファイアリークロス礁、スービ礁、ミスチーフ礁に地対艦ミサイル、地対空ミサイルを配備したと米国の情報機関をソースとしてCNNが報じている。このときは中国外務省としては事実確認を避けていた。4月12日には南シナ海で空母「遼寧」を含む48艦艇と戦闘機76機、将兵1万人を動員した建国以来最大規模の海上閲兵式が行われた。海軍迷彩軍服に身を包んだ習近平がミサイル駆逐艦「長沙」に乗船し閲兵。海軍の増強を訴えた。
トランプ政権誕生後しばらくは、中国側も南シナ海の人工島における軍事拠点化については、あまり刺激しないように気を付けていた。半島問題で中国が米国に協力的である代わりに南シナ海問題を一旦棚上げする水面下の約束があったのではないか、という説も流れた。だが中国は今年4月半ばごろから南シナ海における軍事的プレゼンスを見せつけるような動きに出ている。
背景として考えられるのは、一つは経済力と軍事的脅威を武器に、着々と囲い込んできたASEAN諸国の対中感情に4月になって変化の兆しが見えてきたことがある。たとえば、マレーシアにはアンチ中国のマハティール政権が誕生した。マレーシアは2004年以降のナジブ長期政権下でアジア最大の中国の投資先となっている。特に一帯一路戦略関連だけでもマレーシア・シンガポール高速鉄道計画や東海岸鉄道計画など40以上のプロジェクトを受け入れており、その額は1350億ドル、マレーシアのGDPが3100億ドルであると考えれば経済が乗っ取られかけているといっても過言ではない。
中国は東南アジアの国々にその国の経済規模に見合わない大規模融資を行ってインフラ建設を行い、その融資が返済不能に陥ると、現物を差し押さえるという「悪徳金融」さながらの手法で、要衝地に軍事利用可能な港や土地を獲得してきた。パキスタンのグワダル港やスリランカのハンバントタ港の借地権・運営権の取得手法がいい例だろう。マレーシアもナジブ政権下では、そうなりかねない状況だった。
そういう状況で、92歳のマハティールが選挙によって首相に返り咲いたのは、中国への経済依存脱却を公約として掲げたからだ。ナジブ政権はチャイナ・マネーまみれで腐敗しており、有権者から愛想をつかされていたのは事実だが、その巨額のチャイナ・マネーをバックにした与党を破ることは、アジア的金満選挙においてはかなり難しい。マハティール率いる野党が勝ったということは、有権者の反中感情が相当強い、ということでもある。また、中国と直接領有権問題を抱えているフィリピンもながらく大統領のドゥテルテが開き直るように中国マネーに期待し中国へのすり寄りぶりを隠さなかったが今年4月末、中国系ロビー団体が建てたマニラ市内の慰安婦像を撤去させた。これはドゥテルテがささやかながら中国への抵抗の意を示した、と言う風にもみえる。
ASEAN全体に高まる中国への抵抗姿勢
4月のシンガポールでのASEAN首脳会議では昨年11月の議長声明では盛り込めなかった南シナ海問題への「懸念」の言葉が復活した。中国を名指しすることは避けたものの、ASEANなりに頑張って中国を牽制しようとている。南シナ海問題は当事国およびASEANを丸め込むことでコントロールできるとタカをくくっていた中国だが、押さえ込んでいたはずのASEAN全体に中国への抵抗姿勢が復活しそうな気配なのだ。
そういえばベトナムも、ロシアの石油会社ロスネフチのベトナム部門が南シナ海で石油掘削を始めることを認めている。3月にこの鉱区に隣接する海域でスペインのエネルギー会社レプソルが掘削を始めようとしたときは、中国の抗議でベトナム政府は掘削の許可を取り消した。スペイン企業に石油掘削を認めず、ロシア企業に認めるのは、もちろんロシアという国自身の国力、強さがあるだろうが、やはりベトナムが3月の時点より今の方が中国に対して強気になっているのではないか。
背景に米中駆け引きでの劣勢?
もう一つの背景は、やはり米国との通商協議、半島問題、台湾問題での駆け引きで、中国がかなり劣勢に立たされているのではないか、ということだ。二回目の米中通商協議では貿易戦争の暫定的な回避を含む合意が発表されたものの、その合意の中には米国が中国に突き付けた2000億ドルの貿易黒字削減ノルマや中国通信端末大手のZTEへの7年間の米国製チップ禁輸措置など具体的な部分への言及は避けられている。
ムニューチン財務長官は「一旦保留」といっており、問題解決とはいっていない。単に米国経済への悪影響を避けるため、というものではなく、おそらくは来る6月の米朝首脳会談における中国の役割が米国にとって協力的であることを期待しての保留ではないか。そうなってくると、中国は唯一の同盟国・北朝鮮を説得するか、裏切るか、という難しい状況に直面することになる。
また、米国が台湾旅行法を可決し、米国在台協会(米大使館に相当)新庁舎の落成式にトランプ政権から誰が出席するか、という問題もある。台湾旅行法の可決自体が、中国にとっては当初は宣戦布告に相当する米国からの挑発であるうえ、新庁舎の落成式にドラゴンスレイヤーこと大統領補佐官ボルトンを派遣するとかしないとかという情報も流れた。4月の海上大閲兵式は台湾旅行法可決に対する牽制が目的だったとみられる。
ちなみに、落成式を6月12日の米朝首脳会談と同日にしたのは、ボルトンの派遣はない、というメッセージを込めた中国側への配慮ではなかったか。米朝首脳会談と同日であれば、落成式へのメディアの注目度、ニュースバリューは薄れる。もっとも中国としては年明けから一気に進んだ米台関係の深化に気が気ではないはずである。
こういう国際情勢と突き合わせて考えると、中国の南シナ海の軍事プレゼンスアピールは、ASEANに対する牽制、台湾に対する牽制、航行の自由作戦に対する牽制と同時に、多極的な米中駆け引きで劣勢に立たされている状況を、国内の人民や国際社会に悟らせないための関心の分散を狙ったものではないか、という気もする。もし、米国とのこれら駆け引きでの失点を負わされた習近平政権の求心力が揺らいだとき、南シナ海でのプチ紛争によって国内世論や軍内、党内の不満不平批判を外に向けることもできそうだ。
南シナ海がすでに中国の実効支配地域であり軍事基地群が形成されているという現状は、はっきり言って米国が軍事力を行使する以外は変えようがない段階にきている。だが、米国マッドマンのトランプも中国と直接軍事対決を選択するはずがない、と習近平は思っているだろう。だからこそ、南シナ海の戦争をちらつかせることができるのだ。だが、戦争とは、こうした危険な挑発や牽制を繰り返しているうちに、偶発的に起こることもある。半島問題、そして貿易戦争が一段落つけば、次は本当に南シナ海のホットウォーが起こりうるかもしれない。
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