『G20で中国は「外交的勝利」を得るのか あるいは主要国は中国の「野望」を封じ込められるのか』(8/31日経ビジネスオンライン 福島香織)、『王毅外相の微笑と言い訳の落差  編集委員 中沢克二』(8/31日経)について

日本はホスト国への礼儀として、東シナ海や南シナ海を取り上げないとしたのでしょう。王毅の首とは関係ありません。9/1日経には「米印、南シナ海問題で中国けん制 G20控え」とありましたが、流石に米国もホスト国の習の顔に泥を塗ることはないでしょう。それができるオバマでしたら、とっくに中国に経済制裁か海上封鎖しています。

http://www.nikkei.com/article/DGXLASGM31H4Q_R30C16A8FF1000/

G20では成果が出ないから中国は温暖化対策を目玉にしようとしています。CO2排出量の多い米中2大国がやっとパリ協定に批准するようです。我儘大国2国の行動が少しはまともになると期待したいですが、中国はお得意の数字を改竄した報告をするのではと思っています。

http://www.sankei.com/world/news/160827/wor1608270020-n1.html

8/30にはキルギスで中国大使館向けに自爆テロが引き起こされました。漢人のウイグル人弾圧の凄まじさはムスリムであれば承知の所です。犯人はウイグル人なのかキルギス人か、或はISから流れて来た人間かは今の所、不明です。中国の言う「一帯」が危なかしいというのを世界に印象付けたと思います。

http://www.zakzak.co.jp/society/foreign/news/20160831/frn1608311206006-n1.htm

そう言う中で、AIIBにカナダも参加するとのこと。損しないと分からないのですね。中国はどうせ帳簿もいい加減につけるでしょう。外国人は中国国内では3重帳簿が当たり前というのを知らなさすぎです。投資運用先としては失敗に終わるのでは。

http://www.nikkei.com/article/DGXLASGM31H3T_R30C16A8FF2000/

中国の嘘が少しずつ暴かれて言っています。8/31産経ニュース「習近平氏が「日本の暴行暴いた」と称賛した英国人記者、「南京事件」の現場に居合せず 在職記録もなし」の記事です。如何に彼ら(韓国人もですが)は平気で嘘がつけるかです。彼らの主張と日本人の主張とどちらが正しいかは生活態度を見ていれば分かるはずです。戦後GHQの洗脳で、日教組や偏向マスコミの言い分を刷り込みさせられてきましたが、いい加減目を覚ますべきです。情報弱者では正しい判断はできません。ネットの中味は玉石混交ですが、良い情報が沢山タダで手に入ります。佐藤優は「米・情報将校の言うのに『機密情報の98%は公開情報から得られる』と。」言っていました。主体的に情報を得る努力をしませんと。

http://www.sankei.com/politics/news/160831/plt1608310011-n1.html

古いですが、レコードチャイナの記事です。中国人は「北海道は日本の領土じゃない!中国ネットの主張に「北海道が日本から独立することを望む」「北海道も沖縄も日本の領土ではなく、独立国家だ!」と言いだしているとのことです。遅れて来た帝国主義国です。21世紀にありながら、領土的野心を隠そうともしません。沖縄も北海道も独立後、中国が吸収、本土も然る後中国領とするつもりでしょう。植民地獲得競争は第二次大戦後の独立運動で幕を閉じました。時代錯誤も甚だしい。米・露ですら直接侵略は控えています(ウクライナ問題は米国の東方進出しないという約束破りが原因)。

http://www.recordchina.co.jp/a143324.html

福島記事

conferential place at G20

G20が開催される会議場。中国は「外交的勝利」に向けて準備を進めているが、その行方やいかに(写真:ロイター/アフロ)

来月早々に浙江省杭州市でG20サミットが開催され、主要20カ国・地域の首脳が一堂に会する。このサミットを仕切るのは習近平国家主席であり、2014年の北京APEC以来の大国際イベントとして相当気合が入っている。

「非難の嵐」は回避、伊勢志摩G7より盛大に

目下の中国の報道や専門家の発言をみると、最大の懸案であった「G20サミットの場で南シナ海のハーグ国際仲裁裁判所裁定を持ち出されて参加国から非難の嵐」という事態は、先に行われた日中韓外相会談での年内日中韓首脳会談実現、国連安保理の北朝鮮非難声明にもったいぶった末に同調したことへのバーターとして、避けられる見通しになったようだ。

共同通信や毎日新聞の日本報道を引用して、中国側は日本がG20で南シナ海や東シナ海の問題に触れないと決定した、と報じている。これは中国側にしてみれば、安倍に妥協させたという外交勝利であり、それを引き出した王毅外相は来年の2017年秋の党大会前になんとか首の皮一枚つながったという感じではないだろうか。南シナ海のハーグ裁定が出た後のASEAN外相会合をはじめ国際会議において中国が自分に対する非難を封じ込めた外交手腕もさすがというべきだろう。

とりあえず最大の懸念が抑え込めたという感触をもっている中国は、この習近平政権2回目の大国際政治イベントをいかに完璧に成功させるか、ということに全精力を注いでいるといった様子である。少なくとも、5月末に行われた日本がホスト国となったG7伊勢志摩サミットよりも盛大に、成功したという印象を国際社会に与えなければならないという強い意欲が感じられる。どういった下準備をしているのか、中国内外での報道をもとに整理しておこう。

G20サミットの運営準備で、一番力をいれているのは治安維持である。各国首脳が集まるのだからテロの標的にされる可能性もあるし、習近平自身が恐れているのは中国国内のアンチ習近平勢力による暗殺だろう。また、社会不満を抱えている中国庶民による陳情や抗議デモを各国首脳の前でやられて習近平のメンツがつぶされることも絶対さけねばならない。

杭州市民は強制旅行、ウイグル料理店は営業停止か

このため、とにかく会場近くから一般庶民を遠ざけることが重要で、杭州市民には一週間の長期休暇が出され、無料の航空券などが配られて、ほぼ強制的に旅行に行かされることになった。また杭州市周辺のリゾート地や景勝地のホテルなどは値下げが命じられ、そうした市内から追い出された杭州市民の旅行者を積極的に受け入れるよう通達が出されているという。

一方で杭州および広州など周辺の都市の安価なホテルではテロ対策として、9月からアフガニスタン、パキスタン、トルコ、イラク、シリアの5カ国からの旅行客の宿泊を受け入れないように通達がでているようだ。香港英字紙サウスチャイナモーニングポストが広州の関係筋の話として報じている。

サミット会期中は、学校は休み、スーパーなども休業体制にはいり、レストランやタクシーの営業も大きく制限されている。特にウイグル料理の店は営業停止命令が出され、門は施錠するように通達されているとか。また営業自体は許可されている有名飲食店も、食材運搬車が交通規制によって入れないので極端に品薄になったり、休業がやむを得ない店も多い。

G20会場周辺の老朽家屋は見栄えと治安維持のために突如取り壊され、住民の抵抗運動もおきた。ナンバープレートを偶数・奇数にわけた乗用車の使用制限もとられ、少なくともサミット期間は市内で正常な市民生活を送ることは困難となっている。市民はこの時期は市内から脱出するか、あるいは食糧を買い込んで自宅に引きこもるかどちらかである。

また北京APECのときと同じように青空演出は絶対とされ、8月下旬から杭州のある浙江省ほか安徽省、江蘇省、江西省、上海市、山東省でも数百工場の操業停止、操業制限がかかっている。とくに長江沿岸の石油精錬工場の操業制限は夏の洪水被害とも重なって中国の石油業界に大打撃を与えるとみられている。

テロ対策を徹底、元の国際化をアピール

浙江省はキリスト教徒の多い地域だが、宗教活動家が外国からの賓客の目に触れないように教会の一時閉鎖も通達されている。7月から28000人の警官を省外から増員してサミット警備に当てるほか、80万人の治安維持要員が市内各地に配置される。上海では27日、近年最大規模の反テロ総合演習が行われ、G20の治安維持準備をアピールした。

8月20日以降、杭州市のG20会場近くに百以上の装甲車、戦車まで配備され、一部報道によれば、中国当局が東トルキスタン独立勢力がG20をターゲットに破壊工作を準備しているという情報をつかんだため、過去に例をみない大規模対テロ配備を指示しているとか。

東部戦区には一級戒備令が出ており、少なくとも武装警察機動師団二師団が杭州市内で三重、市外で三重に配備されており、正規軍の精鋭部隊も出ているという。空軍および戦略ミサイル軍が杭州防衛体制に入り、また下水道からの侵入などを防ぐために鉄柵がすでに設けられている。一部では、テロ対策というのは表向きで、G20の機会を借りて、習近平が軍制改革後の作戦運営を念頭に置きながら、部隊の演習を行っているのではないか、とまでいわれている。

市民にしてみればとんだ迷惑なG20だが、中国がこのG20で期待する成果は少なくない。

一つはこのサミット開幕直前に世界銀行が、上海に拠点を置く銀行を引受先としてIMFの仮想通貨SDRに基づく債権を発行することで、このG20で人民元の国際化推進がアピールできるという点だ。

この債券は3年が満期でドル換算で7億ドルに相当する5億SDR。今年10月から5番目の通貨として人民元のSDR入りが予定されており、償還時のSDR価値は人民元を加えた5通貨で計算されることになる。このタイミングの世銀の中国向けSDR発行は米国の杭州サミットに対する祝砲、と言う風に中国サイドは受け取っており、南シナ海で険悪化した米中関係の改善のシグナルという見方もある。

G20では、人民元のSDR市場に対する戦略的意義なども討論のテーマになるとみられている。中国がこの場を借りてIMF改革の推進を呼びかけ、中国がグローバル金融の監督管理システムに一層食い込もうとするのではないか、とみられている。

また中国が推進する「グリーン金融」も新たなG20のテーマとして注目されている。

グリーン金融(緑色金融)とは、環境問題克服のための金融活動のことであり、特に環境保護と生産過剰産業の再編成という中国の重要な内政課題を、国際金融機関によるグリーンボンドなどの発行によって解決していく方法論だ。

グリーン金融、BIT、多極外交

中国自身がすでに年初に1200億元のグリーンボンドを発行しているが、グリーンボンド市場のリスク分析や管理の在り方の研究が重要になってくる。このグリーンボンド市場開拓によって事実上、暗礁に乗り上げているアジアインフラ投資銀行(AIIB)にてこ入れしたいと考えているのが、うっかりAIIBに加盟してしまった英国で、グリーンボンド市場開拓に積極的のようだ。

中国の環境問題は、国内の鉄鋼などの過剰生産産業の構造改革とも深く関係しているが、この過剰生産の建築材などを消費する目的などもあって、習近平政権は一帯一路構想(陸のシルクロードと海のシルクロード経済一体化構想)をぶち上げた。その資金調達機能を期待して創設されたのがAIIB、新開発銀行(BRICS銀行)、シルクロード基金などだが、現在のところほとんど機能していない。G20の場で、こうした中国主導の国際金融機関を再度軌道に乗せるための金融協調提案などが行われるとみられている。

中国が打ち出したいもう一つのテーマは、貿易投資協定だ。特に2008年から交渉が始まり、その後リーマンショック問題で長らく中断していた、米中投資協定(BIT)の締結にむけた動きが期待されている。TPPの先行きに黄信号がともっている一方で、米国のBITに対する期待の重みが変わってきている、というのが中国サイドの受け止め方だ。

中国の報道をみていると、あたかも中国が外交力によって、南シナ海問題を言い出そうとする日米を封じこめ、自国に有利なようにG20のおぜん立てをしているかのように見える。あるいはG20後は従来の全方位敵対外交を改め、鄧小平時代以来の多極外交に路線を戻すかのようなそぶりで各国の態度軟化を引き出しているようにも見える。国際社会の方でも、今の全世界的経済不況の突破口として中国の役割に依然期待する向きは少なくないようだ。

だが、本当に今の状態を中国の外交的勝利の結果とみるかどうかは、もう少し俯瞰してみる必要があるかもしれない。

実際のところ、韓国のTHAADミサイル導入は決定事項であり、これは明らかに中国の外交的敗北であった。南シナ海のハーグ判決も中国の外交的失策だとして習近平は北戴河会議で相当立場を悪くしたようだ。

豪英の中国離れ、日本の有効打、いかに対するか

また従来、親中政策をとっていた英国、オーストラリア両国がにわかに中国と距離をとり始めたのも事実だ。オーストラリアは100億豪ドル規模の通信網構築プロジェクトの国際競争入札に中国企業の参入を拒否したし、英国は中国の投資による原発新設計画の再検討を発表した。

さらに、日本については、東シナ海尖閣周辺の漁船大量来襲という恫喝を受けて、防衛大臣の8月15日靖国神社参拝を回避させるなど、いかにも中国に譲歩したように見せかけてはいるが、米国報道官にこのタイミングで「尖閣諸島に対する日本の施政権を傷つけようとするいかなる一方的行動についても米国は反対する」といった発言をさせたことは、安倍政権の対米外交の一つの成果ではなかったかと思う。

あれほど蜜月ぶりを見せつけていた中韓の決裂を決定的にしたのが2015年12月の日韓合意であるし、ナイロビの第6回アフリカ開発会議(TICAD6)で示した対アフリカ新戦略など心底中国の嫌がることを丁寧にやっている。

中国側は、伊勢志摩サミットの機会に広島の平和記念公園を訪問し献花したオバマ米大統領に、G20の機会に南京大虐殺記念館への参観を再三要望していたが、これをオバマがきっぱり拒否したのも“安倍のせい”と悔しがっていると、現地の記者から聞いた。中国側は結局、9月3日の反ファシズム・抗日戦争勝利記念日の公式行事を見送った。建前は国際協調をアピールする、ということらしいが、それなりに日本に対しても配慮を迫られている、と解釈してもいいだろう。

世界の枠組みが大きく変わろうという今の時代で、誰が外交勝利者となるのか、まだわからない。G20の行方は、その一つの指標になるかもしれない。本当に中国が予想するように、南シナ海や東シナ海の問題に一切触れず、中国の思惑どおり人民元の国際通貨化がG20の協力によって後押しされ、AIIBや一帯一路が軌道に乗り、中国の外交勝利が確認されるのか。あるいは日米外交の成果によって、従来の中国の全方位的敵対外交が封じ込められ、多極協調路線に転換していかざるを得なくなるのか。

これだけ中国地元民と経済に犠牲を強いて行われる国際政治イベントなのだから、少なくとも習近平の自己顕示だけで終わらずに、きちんと外交的経済的成果が打ち出されることを私も願っている。

中沢記事

中国国家主席、習近平の下で外相に就任して3年半。駐日大使を務めた「知日派」の王毅が8月末、初めて来日した。その表情には大きな変化があった。4月末、北京で外相の岸田文雄と会談した際は“大国”の外交担当者とも思えぬけんまくでかみついたが、今回はまったく違った。

8月24日、王毅は日中外相会談の冒頭撮影時こそ表情を崩さなかったものの、終了後に日本の記者団らの質問に答えた時は、初めから表情は柔和。微笑さえたたえていた。

■全てG20のため、国営テレビも王毅の微笑放映

注目すべきは、この王毅の“ぶら下がり”記者会見での微笑は、中国国内でも放送された事実だ。国営の中国中央テレビのニュース番組やインターネットニュースである。見出しが極めて面白い。

Kishida,Wang,Yun

日中韓外相会談の冒頭、撮影に応じる(左から)中国の王毅外相、岸田文雄外相、韓国の尹炳世外相(8月24日、東京都港区の飯倉公館)

杭州20カ国・地域(G20)首脳会議の準備は全て順調――。

驚くことに、王毅来日、日中外相会談、日中韓外相会談がメーンのニュースではない。王毅が日本の記者団を前に「G20の準備は整っている」と微笑をたたえて答えた部分を放映したのだ。

この場で王毅は、日中間の懸案である偶発的衝突を防止する「海空連絡メカニズム」の協議が前進した事実にも触れた。そして、小さな問題は残っているものの早期に合意できる、との見通しまで示した。この重要ニュースを中国国営テレビは伝えていない。

ここに中国側の意図が透ける。王毅来日は、政治的には全て9月4、5日のG20首脳会議のためなのだ。大きな使命は、習近平の晴れの舞台となる杭州G20を盛り上げることだった。

中国国営テレビによる王毅の微笑の放映は、厳しかった対日関係が底を打ち、上向いているという雰囲気を中国国民に示す「世論操縦」でもあった。

最近まで中国の国営系メディアは、首相の安倍晋三の動きを批判的に報じ続けていた。急に態度を変え、いきなり日中首脳会談まで実現してしまうと、戸惑いが広がるばかりか、中国外務省への批判が起きかねない。

日本での日中韓外相会談、日中外相会談の実現は、G20盛り上げのための手段。王毅は、習近平の露払いにすぎなかった。

中国と韓国との関係も揺れている。中国は、韓国が米軍の地上配備型高高度ミサイル迎撃システム(THAAD)の配備を決定したことに大反発している。裏では事実上の経済制裁までちらつかせる。

それでもG20がある以上、習近平は、韓国大統領の朴槿恵(パク・クネ)と簡単には“離婚”できない。北朝鮮の潜水艦発射弾道ミサイルの発射を巡る国連安全保障理事会の非難声明に、中国が一転して同調したのもそのためだ。

それでも王毅の権限は限られている。中国軍の艦船、多くの海警局の公船、230隻もの漁船が沖縄県・尖閣諸島に押し寄せた問題の詳細をかみ砕いて日本側に説明する権限は持っていない。

王毅は、中国共産党指導部を形づくる25人の政治局委員の一人でもなければ、国務委員という副首相級の人物でもない。200人以上いる中央委員の一人にすぎない。

China coast guard in Senkaku

沖縄県・尖閣諸島周辺の接続水域を航行する中国海警局の船(8月6日、第11管区海上保安本部提供)=共同

中央軍事委員会、軍や農業・漁業部門と連携する海警局、「海上民兵制度」と関わる漁船の動きについて、中国外務省はいわば門外漢である。つまり、日本側が、中国外務省に抗議しても「のれんに腕押し」なのだ。

■まやかしの説明の理由

王毅の微妙な立場が透けたのは、8月23日夕の来日第一声だった。羽田空港で王毅を待ち受けていた日本の記者団は、中国の漁船、公船が尖閣諸島の領海、接続水域付近に押し寄せた事件について説明を求めた。

「半分は漁期だから。半分は誇張である……」

王毅はじっと考え込んだ後、言葉を選ぶように答えた。そこには迷いが見て取れた。「漁期だから、魚を捕るという目的のために漁船が尖閣に集結したにすぎない」という説明は、奇妙だ。まやかしと言わざるをえない。

それは過去の事例でも明らかだ。1978年春、日中平和友好条約の締結交渉の際も中国漁船100隻が尖閣に押し寄せ、長期間、とどまった。2012年の尖閣を巡る日中摩擦の際も、大量の漁船が浙江、福建両省の港から出港した。中国は日本に圧力をかける目的で時期を選んで動いている。

78年の事件の際、日本政府の抗議に対して中国側は「偶然、発生した」と説明していた。今回、王毅が口にした「漁期だから」は、言葉こそ違うが、構造は似ている。説明できない、という意味なのだ。

説明できないのは、中国外務省出身の駐日中国大使、程永華も同じだった。程永華は8月10日、自民党幹事長に就任した二階俊博の下に就任祝いに訪れた際、尖閣に押し寄せた中国漁船問題について「魚が非常に密集していて豊漁だった」と語っている。「ルールにのっとってもらわないと困る」と指摘した二階とのやり取りだった。王毅と同じ言い訳である。

2014年11月、北京で初会談し、握手する安倍晋三首相と中国の習近平国家主席。杭州G20での会談はあるのか=ロイター

到底、日本国民、国際社会を納得させられる説明ではない。しかし、逆効果と分かっていても、そう説明せざるをえない。それが実態だ。王毅の久々の日本での微笑と、漁船問題での言い訳の落差は、中国外務省の置かれた現状を象徴している。

■尖閣は「既に事態は正常化」

王毅は、漁船や公船が押し寄せた問題について最後にこう語った。

「事態は既に基本的に正常な形に戻っている」

意味はこうである。当初、中国外務省がコントロールできないところで決まった大方針に従って公船、漁船がやってきた。目的をほぼ達成したため、その動きは基本的に終わった。王毅は、上層部から「ほぼ終わった」という事実だけは伝えてよいとの権限を得て来日した。優先事項は杭州G20の成功である。

杭州G20での安倍晋三と習近平の会談に向けた交渉の詰めは、日中外相会談の直後に訪中した国家安全保障局長の谷内正太郎と、国務委員(副首相級)の楊潔篪の会談に委ねられた。

日中首脳会談実現の是非は、最後のギリギリの段階まで分からない。しかし、G20を最大限に盛り上げたい習近平が、それを望んでいるのは間違いない。しかも、メンツが立つ形で。王毅の微笑もそれに沿っていた。(敬称略)

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