7/1日経ビジネスオンライン 福島香織『中国公営宝くじ不正問題の背後 総元締めの超大物・曾慶紅と習近平、最終決戦へ』について

「ラスボス」の意味は「last bossで勝てそうにない相手、解決が難しそうな問題」とのこと。習が勝つか曽が勝つか見物ですが、団派がどちらに着くかでしょう。習に肩入れすれば次は団派がやられると考えるでしょうが、胡錦濤治世時代邪魔をした江沢民の大番頭曽を許したくはないはずです。団派にとって一番良いのは両派が勢力を使い果たしてヘトヘトとなり、裏から牛耳れるようになるか、習の次の主席を団派から出すことでしょう。

誰が主席になろうとも反日のスタンスは変わりがありません。嘘で固めた歴史教育をしてきたので今更「あれは嘘でした」とは共産党は言えないでしょう。日本と戦争になるかどうかですが、先ずは南シナ海を内海にしてからだと思います。次に台湾、次が日本と言う順で攻めてくるのでは思います。米国と日本、台湾、ASEANが一致協力して早い段階から中国の野望を挫かないと世界は暗黒時代を迎えることになります。

記事

 先日、中国で審計署(会計審査院に相当)が2014年度審計公告を発表した。

 この中身について、まずざっくりとみてみたい。

「169億元を不正流用」の裏側で

 おそらくこの公告の中で、一番の話題は公営宝くじ(彩票)の収益169億元についての不正流用である。

 2012年から2014年10月の18省における公営宝くじ収入658.15億元について抽出審査をしたところ、その4分の1を超える資金が不正に利用されていたという。ちなみに、この期間18省の宝くじ収入は合計6687.84億元、うち福利くじは3743.6億元、スポーツくじは2944.24億元。くじの売り上げのうち、中央および地方の宝くじ公益金として1855.54億元(27.74%)を留保しておくことになっている。くじの発行費(人件費など)は940.39億元(14.06%)、くじの賞金は3891.91億元(58.2%)。これらの経費を引いた純利益は、福利くじなら地域の社会福祉に、スポーツくじなら、地域のスポーツ振興に使われなければならない。

 だが、抽出審査のサンプルは全体の収益のわずか18%だが、その審査結果によれば、169億元について、虚偽の申告がなされており、実際には地方の官僚たちが別の経費の補てんに使ったり、虚偽のプロジェクトの申告によって着服したり、違法に会館を造ったり、違法な公用車購入や、出張、研修旅行などの名目の海外旅行遊興費に流用していた。

 また17省の公営宝くじについて、違法なインターネットによる宝くじ販売を行って630.4億元の売り上げを上げていたことも判明。公営宝くじが、地方政府官僚らの不正の温床であったことを印象付ける発表だった。

 ちなみに、このほかの話題としては、14の中央企業および46の中央省庁、3つの金融機構で会計上の不正が報告され、中でも中国電力投資集団傘下の企業が1753.66万元も経費で高級酒を買ったとか、中国国電集団傘下の企業が143.54万元も経費で酒とたばこを買っていたとか、会議費名目で中糧集団高官が傘下の不動産企業から不動産を購入しているのに、手付金を払っただけで全額払わなかったとか、そういう不正報告もあげられていた。地方政府の収入報告の5割が虚偽報告であるとか、6省政府の22部局で106億元も違法な鉱山権取引に投資しているとか、中国の政府・中央企業の会計のでたらめぶりは、詳細に読んでいくと、それなりに面白い。

ただ、中国の地方政府や企業の会計が実は荒唐無稽というほど粉飾され、でたらめなのは、今に始まったわけでもないし、また今回、名指しで批判された省や企業だけの問題でもないのは、中国経済に多少かかわったことがある方々ならばご存知の通りである。

 それよりも、なぜ、今、この企業、この産業、この省の不正が白日の下にさらされ、追及されているか。それを考えるのは、かなり憶測も交じるのだが、やはり権力闘争の国なので、そこを分析する必要はある。

宝くじ利権は曽慶紅が握っていた?

 実は2月に宝くじサイト「新浪愛彩」、「百度楽彩」「500彩票ネット」などが軒並み販売停止に追い込まれていた。これらネット宝くじの元締めは、「中福在線」である。

 中福在線は2002年、国の宝くじ運営の元締めである、中国福彩センター傘下に作られたオンライン宝くじ企業で、いわば国の持ち株会社みたいものだ。それまで宝くじのネット販売はなかった。設立時の出資者は中国福彩センターのほか、北京銀都新天地科技有限公司、北京華遠中興デジタル科技有限公司。会長は福彩センターから派遣された。技術的な運営、サポートは高科技有限公司という国有企業だ。

 2014年にはオンライン宝くじだけで1300億元以上の売り上げがあり、いまや宝くじとネットは切り離せない関係になった。中福在線の総経理は賀文という人物で、銀都新天地、華遠中興の大株主でもあり、オンライン宝くじの利権をおおかた握っていた。役員、その他株主は、だいたい賀文の家族か深い関係の人物である。

 賀文は、中福在線の利権でもって27億元を懐にいれていたという。これに対し、筆頭株主の福彩センターの収入は18億元だった。中国報道では、賀文が何者かは明らかにされていない。だが、個人で27億元もの横領ができる人間は、必ず強い政治的背景があるはずである。その政治的背景について、昨年11月、審計署が彩票をターゲットに動き出したころ、ある人気微博アカウントがこうつぶやいたので、ネット上では話題になった。

 「習近平は曾慶紅に対して動きはじめた。大芝居がまもなく開演するぞ。香港の衝突は江沢民集団の軍師曾慶紅が、習近平を困難に陥れるために仕組んだのだが、現在香港はほとんどひっくり返ってしまった。まさにロード・オブ・リングの結末と一緒で、魔の指輪が消滅すれば、その他妖怪も雲散霧消する。最近発表された二つのニュース、警察が香港で1.5トンの麻薬を押収したというニュースと、会計審査当局が宝くじ資金を臨時審査というニュース、まさに、ポルノ、賭け事、麻薬を掌握している曾慶紅がターゲットだ」

このつぶやきは華夏正道という匿名のアカウントが発信したものだ。彼は翌年4月に、政権転覆扇動罪で広州市警察に逮捕されている。この情報に根拠があるのかどうかはわからないが、もう一つ気になるのは、2月に宝くじサイトが軒並み閉鎖した当時、中央規律検査委のサイトがある評論文を掲載した。タイトルは「大清”裸官”慶親王の作風問題」。

 慶親王とは清朝の皇族の位で、この論評で語られているのは、清朝末期に中国史上最初に作られた慶親王内閣の総理大臣・奕劻のことである。彼は財政予算をほしいままにし、食事に麻雀、投資に明け暮れ、中国を侵略している外国勢力と親しく付き合い、英国の銀行に712.5万ポンドを蓄財し、中国民族系銀行に一銭も貯金していなかった。今でいう「裸官」(公金を横領して不正に蓄財した資産を外国に移転して、将来失脚したときに備える官僚。すべてを外国に移転しているので、裸の官僚、と揶揄される)だった、と痛烈に批判し、彼の物語を、今の我々は「居安思危」の教材とせねばならない、と結んでいる。

「裸官・慶親王」への宣戦布告

 この「慶親王」がインターネット界で曾慶紅のことを指す隠語であることはよく知られている。この論評は、中央規律検査委から曾慶紅に対する宣戦布告である、と受け取られている。なので、今年4月の香港誌「争鳴」も、曽慶紅家族が宝くじ利権にかかわっているとの立場で分析していた。

 中国の福利宝くじ産業が不正や腐敗の温床であったことは、実はかなり以前から噂ではあった。だが、ある意味、アンタッチャブルの業界でもあった。そもそも、この福利宝くじは1986年、三峡ダム建設による移民補償の資金が足りないと言う当時の民政部長の訴えをうけて、副首相だった李鵬が提案した集金システムだ。そこに、さまざまな利権が絡んだことが想像もつく。しかも、この数年の間に、ニセ宝くじ問題、宝くじ当選操作問題など、さまざまな問題が噴出していた。

 だが、習近平政権になってその宝くじ業界にメスが入りはじめた。11月に審計署の抜き打ち審査に続いて、昨年12月にはこの20年来、累計1.7兆元分の宝くじを発行してきたのに、その用途が不明である、という批判報道を新華社が流した。諸費用、賞金分をのぞいても普通35%が公益金として残るはずなのに、福祉民生にどのように利用されたか、はっきりしない、というのである。

また今年1月、中国の宝くじ抽選生中継が突如中止になり、抽選結果発表後すぐ、広州の若い移民労働者が当選した、と公表された件については、「予定外の人間が当選したので、発行元が慌てた」という説が流れた。普通に考えれば、抽選結果が分かってすぐ、当選者が判明することは不自然ではないか、というわけだ。この真相はいまだ霧の中だ。

 ちなみに、審計署から不正を名指しされた中国国電集団や中国電力投資手段は李鵬一族が絡んでいることも、知られた話である。李鵬一族も目下、汚職ターゲットに上がっている。

周辺から、追い詰める

 曾慶紅に対する包囲網が徐々に狭まってきているという観測は、今年1月の国家安全部副部長(次官)の馬建失脚から強まって来た。馬建失脚や郭文貴事件に関しては「米国を巻き込む習近平の権力闘争」ですでに紹介した通りである。また、元人民銀行総裁で後に天津市長を務めた戴相龍の娘婿・車峰が中央規律検査委の取り調べを受けている。香港メディアによれば、彼は長らく香港にいたが、久しぶりに北京に戻り、友人と食卓を囲んでいるときに拘束されたという。一部香港メディアで戴相竜が3月に中紀委に「自首」して、不正な経済活動を行ったことを涙ながらに告白した、という情報が流れたが、車峰の件は、戴相竜の不正経済活動の件とは別の、曾慶紅の腹心の郭文貴や馬建に関わる事件らしい。米国への情報漏えいが容疑とも伝えられている。

 中国の王岐山寄りのメディア・財新網が伝えたところでは、車峰は郭文貴に6億元を貸したこともあるような深い関係であり、郭文貴を通じて馬建とも知り合ったという。また車峰自身、曾慶紅の息子の曾偉とも親交があった。また劉雲山の息子ともビジネスパートナーの関係であり、劉雲山もそろそろ危ないのではないか、という見立てもでている。

 さらに言えば、曾慶紅の元秘書の聯通総経理の陸益民、曾慶紅の元ボディガードの中国中化集団副総裁の張志銀、曾慶紅の家臣とも言われた中国国家電網公司会長の劉震亜、こういった面々がつぎつぎ汚職で失脚している。香港誌「明鏡週刊」6月4日号によれば、広州日報元社長の戴玉慶(2012年7月起訴、2015年4月に汚職で懲役11年の判決を受ける)の事件も、本当の狙いは広州市紀律検査委書記の王暁玲(曾慶紅の妻の姪)がターゲットだったようだ。裁判では、戴玉慶の妻から名指しで汚職に加担したと告発された。だが、証拠不十分ということで、ことの真相はうやむやになっている。こういう報道をみると、いよいよ、曾慶紅を討ち取りにきたか、という気もしてくるのである。

曾慶紅は、父親が紅軍幹部の曾山、母親の鄧六金はあの長征に参加した女性革命兵士27人のうちの一人である。鄧六金は1948年の淮海戦役前、華東保育院を創設し、戦役に参加する華東野戦軍高級幹部の子女100人以上を母親父親代わりになって面倒をみた人物である。このことから、革命家二代目たちにとって、鄧六金は母と同じ、曾慶紅は兄弟と同じ親近感を抱き、また中国的価値観からいえば、裏切ることのできない恩を受けていると言われていた。曾慶紅の広く濃密な太子党人脈はこの「偉大なる革命家両親の遺産」というわけである。

習近平、ラスボスを討ち取れるか

 彼は江沢民の参謀役として、汚れ仕事も引き受けながら、江沢民政権を支え、また胡錦濤政権になってからは、習近平を総書記・国家主席出世コースに乗せるために、胡錦濤サイドときわどい駆け引きもした。国家安全部などインテリジェンス部門を長年にわたり掌握し、石油・エネルギー利権、香港芸能界・メディア、そして宝くじ利権を一族で牛耳り、その蓄財額は天文学的という噂もあるが、ほとんどがオフショア金融機関にあると言われている。息子には早々にオーストラリア国籍をとらせている。一見強面の悪人顔であるが、わりと日本好きで、実際に彼とあったことのある日本の政治家や財界人もよい印象を持っている人が多かった。事実上、江沢民よりも権力と利権を握り、人心を掌握してきた、生粋の共産党貴族(皇族)の筆頭であり、実力を備えたラスボスである。

 習近平政権が本当に権力を掌握し、パーフェクトな独裁体制を打ち立てて2017年以降も党中央トップの座に君臨していられるかどうかは、この曾慶紅を本当に追い込めるかどうかが一つの見どころではないだろうか。

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