5/7・8日経ビジネスオンライン 鈴置高史『朴槿恵外交に噴出する「無能」批判 「日本の孤立化」に失敗、ついに身内も「NO!」 ナポレオン3世に擬された朴槿恵 「扇動メディアが国を亡ぼす」と悲鳴を上げる大物記者たち』記事について

置氏の言いたいことは最後のパラグラフにあるとおり韓国とは「適度な間合い」を取って付き合うという事です。小生が思っていますのは1000年「非韓三原則」(=助けず、教えず、関わらず)を貫くことです。今まで付き合って良いことがあったでしょうか。歴史的に見て禍を齎しただけです。平気で嘘を世界に撒き散らし、それで「謝罪」と「賠償」(「道徳的劣等民族の烙印」と「金くれ」)要求です。個人的にもこんな人達を友達にしたいとは思わないでしょう。韓国が好きな日本人は日本国籍を抹消して韓国人になったらよい。ロジャー・パルパースと四方田犬彦の対談集『こんにちは、ユダヤ人です』を読みましたが、四方田は国民国家の存在と日本が嫌いと言うのが読むほどに分かり、不快な気分になりました。日本は国籍を移す自由があります。大江もそうですが、どうして日本が嫌いな人達は他の国の国籍を取得しないのでしょう。アメリカでも、中国でも、朝鮮半島でも好きな国に行けばよい。よその国は日本ほど甘くないし、反日を言えば稼げるのが分かっているからでしょう。我が身を安全地帯に置いて人を悪しざまに言うと言うのは卑怯者のやる事です。自分だけが正しいと思い、国民を見下した物言いは傲慢としか言いようがない。国民は安倍首相の政策を選挙の結果で見れば支持している訳ですから。東大卒は反権力を標榜するのを目的にしているのでは。愚かなことです。

記事

「日本の孤立化」に失敗した朴槿恵(パク・クンヘ)外交。韓国で「無能」と糾弾されるに至った。それも身内の保守系紙からだ。

「2年間の無能と無気力」

—韓国紙が朴槿恵政権の外交を「無能」と批判したそうですね。

鈴置:最大手紙、朝鮮日報が社説「米日新同盟、北東アジアに対決の構図を作ってはならぬ」(4月30日、韓国語版)の結論部分で「無能」という単語を使いました。以下です。

  • 朴槿恵大統領は今年夏頃に米国を訪問する予定だ。韓米同盟を強化できる絶好の機会となる。一方、韓中関係もまた疎かにしてはならない。韓国外交が過去2年あまりの無能と無気力から脱却し、国家生存戦略を掲げ、これを行動に移すべき時だ。

 朴槿恵外交の全否定です。この厳しい書き方には驚きました。朝鮮日報は、保守系紙の中でも政権に最も近いと見られていたのです。

 同紙は続いて、5月4日付の社説「外交も、経済も、改革もできない無気力な青瓦台(大統領府)」(韓国語版)で、結語に「無能」を使いました。以下です。

  • 人事の刷新を通じて国を率いる力を取り戻さなければ、この政権は「無気力」という批判に晒され続けることになろう。そして結局は「無能な政権」という汚名をそそがざるを得なくなるのだ。

許せない指揮官

 朴槿恵外交に関し「無能」という言葉をいち早く使ったのは、同紙の姜天錫(カン・チョンソク)論説顧問でした。「日本の後進外交、韓国の無能外交」(4月24日、韓国語版)というコラムで、です。

 姜天錫論説顧問は日本の外交を「周辺国の恨みを買う子供っぽい外交」と決めつける一方、自国の外交当局も厳しく批判しました。

 韓国の執拗な反日に対し米国が発していた警告と、首脳会談に向け動いていた日中の動きを察知できなかった鈍感さを槍玉に挙げました。そして「この政権は許せない」とまで書いたのです。以下です。

  • 「戦闘に敗れた指揮官を許すことはできても、警戒を怠った指揮官は許すことができない」という言葉は、軍隊だけで適用されるものではない。

—朝鮮日報が「無能攻撃」をかけている感じですね。

与党も「外相更迭論」

鈴置:保守系紙が保守政権に「無能」というレッテルを貼るのは異例です。政権との全面戦争を意味するからです。

 政権末期ならともかく、朴槿恵大統領の任期はまだ2年半以上残っているのです。朴槿恵外交への苛立ちがいかに大きいか分かります。

 朝鮮日報だけではありません。ほかの新聞も「外交敗北」などの単語を日常的に使うようになりました。

 社説だけではなく、シニア記者や社外の識者のコラム、果ては座談会まで、大手紙だけをチェックしても毎日どこかに必ず「失敗続きの外交」を叩く記事に出くわす感じです。

 メディアでここまで「外交敗北論」が盛り上がると、与党、セヌリ党も放っておけなくなりました。尹炳世(ユン・ビョンセ)外相に対し、与党重鎮が辞任する考えはないか、と問い質すまでになりました。

 尹炳世外相や外交部スポークスマンは、記者会見やシンポジウムで「敗北」を追及されては「失策していない」と弁解する羽目に陥っています。それに同意する韓国人はほとんどいないようですけれど。

素人は外交に口を出すな

—ついこの前まで、韓国紙は「米中両大国と過去最高の関係を結び、それをテコに日本を孤立させている」と朴槿恵外交を褒め讃えていました。豹変ぶりというか、しょげぶりには驚きます。

鈴置:3月30日の尹炳世外相の発言が引き金になりました。尹炳世外相は「米中の間に挟まれた韓国の境遇は厄介なことではなく、双方からラブコールを受ける祝福として受け止めるべきだ」と語ったのです。

 韓国は二股外交の結果、終末高高度防衛ミサイル(THAAD=サード)やアジアインフラ投資銀行(AIIB)など多くの問題で、米中板挟みに陥りました(「米中星取表」参照)。

米中星取表~「米中対立案件」で韓国はどちらの要求をのんだか

(○は要求をのませた国、―はまだ勝負がつかない案件、△は現時点での優勢を示す。2015年5月6日現在)

案件 米国 中国 状況
日本の集団的自衛権 の行使容認 2014年7月の会談で朴大統領は習近平主席と「各国が憂慮」で意見が一致
米国主導の MDへの参加 中国の威嚇に屈し参加せず。代わりに「韓国型MD」を採用へ
在韓米軍への THAAD配備 青瓦台は2015年3月11日「要請もなく協議もしておらず、決定もしていない(3NO)」と事実上、米国との対話を拒否
日韓軍事情報保護協定 中国の圧力で署名直前に拒否。米も入り「北朝鮮の核・ミサイル」に限定したうえ覚書に格下げ
米韓合同軍事演習 の中断 中国が公式の場で中断を要求したが、予定通り実施
CICAへの 正式参加(注1) 正式会員として上海会議に参加。朴大統領は習主席に「成功をお祝い」
CICAでの 反米宣言支持 2014年の上海会議では賛同せず。米国の圧力の結果か
AIIBへの 加盟 (注2) 米国の反対で2014年7月の中韓首脳会談では表明を見送ったものの、英国などの参加を見て2015年3月に正式に参加表明
FTAAP (注3) 2014年のAPECで朴大統領「積極的に支持」

 

(注1)中国はCICA(アジア信頼醸成措置会議)を、米国をアジアから締め出す組織として活用。

(注2)中国はAIIB(アジアインフラ投資銀行)設立をテコに、米国主導の戦後の国際金融体制に揺さぶりをかける。

(注3)米国が主導するTPP(環太平洋経済連携協定)を牽制するため、中国が掲げる。

 当然、これに対しては韓国メディアも不安の声を上げていました。というのに外相が「板挟み」ではなく「米中双方からのラブコールだ」と強弁したのです。

 また「外交の素人が余計な口を出すな」的な言い方もしたため、メディアの外交批判に火が付いたのです。

米中の賭博の舞台に

 中央日報の裵明福(ペ・ミョンボク)論説委員の「自画自賛の韓国外交」(3月31日、日本語版)は、2つの新聞マンガを転載しました。マンガもネット版で見ることができます。

 1つは、3月にニューヨーク・タイムズ(NYT)がオピニオン欄に載せたものです。米中が、賭博場のテーブルに広げた韓国の地図の上で賭けている図です。

 米国は賭け金としてミサイルの束を、中国は現金を出しています。ミサイルはTHAAD、中国の現金はAIIBを意味します。

 韓国人はこれにいたくプライドを傷つけられたようで、いくつかの韓国紙がこのマンガを報じました。

 彼らは「米中の2大大国を競わせることにより、双方から利益を引き出している」と政府から説明を受けていた。つまり、韓国は「したたかな中堅国外交」を展開していることになっていた。

 だのにNYT――韓国では権威そのものです――が大国同士のギャンブルの舞台として、つまり従属的な国として韓国を描いたのです。

日露の間で悲鳴を上げた朝鮮人

 もう1つのマンガは、100年以上も前の日露戦争当時に、西洋の新聞に載ったものです。日本人とロシア人が朝鮮人に綱を付け、両側から引っ張っている図です。朝鮮人は悲鳴を上げています。

 裵明福論説委員は2つのマンガを並べることにより、下手すると韓国は日本に植民地化される前のように、再び大国が取ったり取られたりする勢力圏争いの場にされるぞ、と警告したのです。

 そして尹炳世外相の「ラブコール」に言及、韓国がこれほど際どい状況に突入しているというのに、外交当局の現状認識がいかに甘いことか、と手厳しく批判したのです。

 尹炳世外相の呑気な自画自賛発言で外交批判が燃え上がったところに、日本が油を注いだ形になりました。

 4月22日、安倍晋三首相がインドネシアのジャカルタで開かれたバンドン会議で習近平主席と会いました。4月29日には米上下院合同会議で演説しました。

 韓国人はこれこそが「外交敗北」の明白な証拠と受け止めました。こんな空気の中、ついに保守系紙が政権に「無能」のレッテルを貼り出したのです。

ハードルに激突した朴槿恵

—「敗北」と言っても、日本が戦争を仕掛けたわけではありません。

鈴置:確かにそうです。韓国がいつものように独り相撲をして、勝手に土俵から転げ落ちただけなのです。

 安倍首相の米議会での演説は日米間の問題だし、日中首脳会談も日中の問題です。そもそも韓国が口出しするのがおかしいのです。

 でも、朴槿恵政権は日本の足を引っ張ることにより内外で得点を稼ごうと、安倍演説に対し反対運動を展開し、失敗しました。

 韓国は無理筋の外交ハードルを設定した挙句、ハードルに激突してしまったのです(「『アベの米議会演説阻止』で自爆した韓国」)。

 5月4日、外遊疲れのため1週間休養していた朴槿恵大統領が、久しぶりに公の席で発言しました。この中で、安倍首相の米議会演説は真の謝罪ではない、と批判しました。

 予想された発言でしたが、大統領は「(演説内容に対しては)米国でも批判がある」と付け加えたのです。「外交敗北」との批判を意識し「完敗したわけではない」と言いたかったのでしょう。

「我が国は孤立した!」

 日中首脳会談も「韓国外交敗北の証拠」と韓国では見なされています。韓国は中国と「反日歴史同盟」を結び「アベとは会ってやらない」と口を揃えて、日本を大いに苛めているつもりでした。

 しかし2014年11月10日、習近平主席は北京で安倍首相と会いました。韓国人は「裏切られた」と大きなショックを受けました(「中国の掌の上で踊り出した韓国」参照)。

 ただ、この会談では習近平主席が苦虫を噛み潰した顔だったこともあり、韓国政府は「廊下の片隅で会った非公式の会談に過ぎない」と説明して世論の鎮静化を図りました。

 でも、今回のジャカルタでの首脳会談は誤魔化しようがありませんでした。習近平主席が薄ら笑いを浮かべる写真が配信されたし、正式の会談でした。

 韓国メディアは「中国は日本と本気で関係を改善するつもりだ。我が国は孤立した!」と大騒ぎしたのです。

—しかし、韓国にも「二股外交なぞはうまくいくはずがない」と指摘する人がだいぶん前からいましたよね(「米国も見透かす韓国の『卑日一人芝居』」参照)。

トラの威を借りて威張る韓国

鈴置:ええ、趙甲済(チョ・カプチェ)ドットコムなど保守派サイトは「朴槿恵政権の米中等距離外交、あるいは親中反日外交は危険だ」と警鐘を鳴らしていました。

 親中反日は反米につながる。韓米関係が悪化すれば中国も韓国を軽く扱うだろう――と韓国保守運動の指導者である趙甲済氏や、趙甲済ドットコムの金泌材(キム・ピルジェ)記者、匿名の外交評論家、ヴァンダービルド氏らは2013年から繰り返し指摘していました。

 日本からしても、トラの威を借りて日本を脅す韓国への対応は簡単です。キツネは無視して、トラたる米中との関係さえしっかりしておけばいいからです。2014年夏頃から、安倍政権は「韓国は放っておく」方針を固めたようです。

 そもそも、キツネのような国との関係を無理に改善しなくとも、日本は困りません。一時期は「日―米―韓」の同盟強化を目指す米国から「韓国との関係を良くしろ。謝ったらどうか」などと打診があった模様です。

 が、さすがに今になると米国政府は「韓国を刺激するな」とは言っても「謝罪しろ」とは言ってこなくなったそうです。「韓国は、日本に歴史戦を仕掛ける中国の使い走り」と気づいたからでしょう。

朝鮮日報は扇動メディア

—趙甲済氏らは「ほら見ろ!」という心境でしょうね。

鈴置:朴槿恵外交というか、韓国における意思決定に関し、趙甲済氏が最近も興味深い記事を書いています。「朝鮮日報は反日を主導した扇動メディアだ」というのです。

(次回に続く)

(前回から読む)

 韓国の大物記者2人が相次ぎ「事実よりも感情を優先して書く」と韓国メディアを批判した。矛先は、その扇動型メディアに動かされる朴槿恵(パク・クンヘ)大統領にも及ぶ。

朝鮮日報は扇動メディアだ

—前回は、韓国で朴槿恵政権の外交が「無能」と批判されている、という話でした。

鈴置:保守派指導者の1人、趙甲済(チョ・カプチェ)氏は朴槿恵政権がスタートした2013年から「米中等距離」や「親中反日」外交は反米につながる危険なものだ、と繰り返し主張してきました(「米国も見透かす韓国の『卑日一人芝居』」参照)。

 その意見が韓国でようやく理解され始めた時、趙甲済氏は「国内外で見捨てられる朴槿恵の親中反日路線」(4月23日、韓国語)を自身のネットメディアに載せました。

 この記事が興味深いのは朴槿恵政権だけではなく、「反日」を扇動した主犯として、最大手紙の朝鮮日報を厳しく批判したことです。

 趙甲済氏はまず、朝鮮日報の社説「5カ月ぶりにまた開いた中・日首脳会談、孤立避ける戦略はあるのか」(4月23日、韓国語版)を引用します。この社説も朴槿恵外交への批判が目的でした。趙甲済氏が引用したのは以下の部分です。

  • 「米中双方からのラブコール」などと外交当局のトップが言い、日本との首脳会談を3年間も避けているうちに、中・日首脳会談が相次いで開かれた。
  • 政府は日本の歴史に関する退行的な言動に対しては原則を持って対応しつつも、安保や経済問題についてはもう少し柔軟性のある現実的な打開策を考える必要がある。

手のひら返しで「反日の失敗」と批判

 この社説を引用した後、趙甲済氏は返す刀で次のように朝鮮日報に筆誅を加えます。

  • 朝鮮日報をはじめとする韓国メディアの一方的、感情的、非戦略的な反日報道に迎合し、親中反日の外交路線を堅持してきた朴槿恵大統領が、この社説を読んだらさぞ複雑な思いにとらわれたであろう。
  • もし、朴大統領が条件なしで安倍首相と会談しようとしたら、歴史戦争をそそのかしてきた朝鮮日報などのメディアは「自尊心のない外交」と猛烈に非難したことだろう。
  • (朴大統領の反日外交は)中国のラブコールと韓国メディアの反日報道に忠実に従ったものだ。しかし、日中和解ムードと米日の蜜月関係の進展によって韓国が孤立した姿を見せるや否や、その事態の展開に責任のあるメディアが朴大統領の反日外交に背を向け始めた。

 確かに朝鮮日報は、先頭に立って韓国を「反日」に誘導してきました。それなのに反日路線が破綻すると、突然に手のひらを返し「反日政権」を批判したのです。「いくら何でもご都合主義ではないか」と趙甲済氏は問い質したのです。

世界を知らない韓国人

—朝鮮日報にことさらに厳しい感じですね。

鈴置:「反日」に限らず内政に関しても、朝鮮日報の扇動的な報道がひどくなる一方だ――と、保守層の一部は問題視していました。趙甲済ドットコムでも、しばしば話題になります。

 趙甲済氏はこれまでも、韓国メディアの無責任さを厳しく追及してきました。例えば「安倍が勝ち、韓国言論人が負ける日!」(2014年12月13日、韓国語)です。

 日本の総選挙での自民党大勝に韓国人は驚く。韓国紙が「安倍は内外で四面楚歌に陥っている」と偏向報道してきたからだ。韓国メディアの感情的で偏った反日報道により、韓国人は世界がどう動いているか知らないのだ――との内容でした。

 この記事に関しては「『慰安婦』を無視されたら打つ手がない」で引用、解説してあります。

実利より人気、事実より扇動

 趙甲済氏の「国内外で見捨てられる朴槿恵の親中反日路線」の批判は「扇動メディア」だけではなく「それに迎合する大統領」に及びます。以下です。

  • 指導者が扇動的メディアや扇動的な世論に従うことほど危険なことはない(ナポレオン3世はそうして普仏戦争を起こし、プロシアに大敗北したのだ)。
  • 朴大統領は実利よりも人気、事実よりも扇動に弱い体質を見せてきた。セウォル号に関連した海洋警察の解体、いったんは首相に内定した文昌克(ムン・チャングク)氏の処遇。いずれもメディアの(事実と異なる)攻撃を基にした判断だ。
  • 朴大統領は核武装した北朝鮮の政権に対しては条件なしでの対話を提案する一方、友好国の日本には条件付きの対話を提議した。誰が見ても従軍慰安婦問題は、韓国人の生存自体を脅かす北の核問題よりも優先順位が低いはずなのだが。

 朴槿恵大統領を、おじの七光りで権力を握り大衆迎合で国を治めようとして失敗したナポレオン3世になぞらえる韓国人に会ったことがあります。

 でも、それは私的な席での発言でした。しかし今や、読者の少ないネットメディアとはいえ、公開の場で語られるようになったのです。

強面だから信念がある?

 なお、保守系大手紙は政権を「無能外交」と批判しても、さすがに大統領本人を追い詰めるような攻撃はしません。

 「大統領は外交に明るくない。そこで周辺の人々が外交をやっているのだろうが、この人たちが間違っている」的な書き方が多いのです。

—大統領の意向を忖度して新聞が「反日」記事を書くのではなく、新聞が「反日」だから大統領がそれに引っ張られる、という趙甲済氏の分析は興味深いですね。

鈴置:そこです、この記事の面白い点は。いつも強面で他人を非難する朴槿恵大統領は、何やら確固たる信念があるように見えます。韓国の指導層も外国人にそう説明しますし、米国や日本のアジアハンズにもそう見る人が多い。

 でも実は「反日」を含め、この大統領の激しい言動はメディアや中国に煽られているに過ぎないのだ――と趙甲済氏は断じたわけです。

 そして大統領を煽る韓国メディアも、ご都合主義的にくるくると主張を変える、と批判しているのです。

「信じたいこと」を書く新聞

 趙甲済氏のメディア批判に応えたかのように、朝鮮日報の金大中(キム・デジュン)顧問が2月17日「李首相承認の敗者はメディアだ」(韓国語版)を書きました。金大中顧問はもちろん同名の元大統領とは別人で、韓国保守言論の大御所的存在です。

 李完九(イ・ワング)前首相の就任を巡る騒動から書き起こしていますが、本質はメディア批判――自己批判です。ハイライトは以下です。

  • メディアの最も危険な要素は「虚偽報道」である。自分の信じたいこと、したいことだけに執着し、事実から目を背け、国民を誤った道に導く「虚偽メディア」は「権力に迎合して書けないメディア」よりも害が大きい。

 金大中顧問は「虚偽メディア」の具体例として「安倍首相の歴史認識に同調する日本の右翼メディア」と、虚報を繰り返した米NBCのアンカーを挙げています。

ナッツリターンも世論に迎合

 しかしこのくだりの少し前を読むと、一番批判したかったのは韓国メディアだったと思えてきます。以下をご覧下さい。

  • 新聞・放送は第4の権力と称されてきたが、今や交流ソフト(SNS)などのインターネット言論が第5の権力を形成したと言っても過言ではない。
  • 今日の新聞・放送はネットが作る“世論”というか、ポピュリズムと戦わなくてはならなくなった。どこかで誰かが作った“世論”の顔色を、メディアはうかがわなくてはならないのだ。
  • 対北朝鮮、旅客船「セウォル号」、ナッツリターン、慰安婦、福祉と税、高齢化などの敏感な問題で、世論によって何らかの雰囲気が醸し出されると、メディアはそれを意識して発言の水位を調節する傾向がある。

 ここを読むと明らかに自己批判です。ただ、同時に“ネット世論”に配慮せざるを得ない、大手メディアの立場を弁解しているようにも見えます。

—「発言の水位を調節する」とは?

鈴置:韓国のネットに書かれる意見は、もちろん既存のメディアと比べ、より感情的で過激です。この結果、既存メディアは“ネット世論”に引っ張られ、主張が過去にも増して感情的で過激になっている――ということでしょう。

ネットと過激さ競う韓国紙

—日本のネットも、既存メディアと比べ過激で感情的です。でも、既存メディアの主張がネットに引っ張られているという話は聞いたことがありません。

鈴置:韓国ではものごとが理屈よりも感情で決まりがちです。既存メディアが“ネット世論”以上の社会的影響力を保とうとすると、それに負けない激しい感情論を展開せざるを得ないのです。

 もともと韓国の新聞やテレビは日本や西欧と比べ、論理よりも感情を基に主張します。それがインターネットとの競争で、ますます感情的、情緒的になったのです。

 趙甲済氏と金大中顧問という、韓国の2人の超大物記者は立場は異なります。が、情緒的になる一方のメディアが国を誤らせる、との危機感では期せずして一致したのです。

 2人の記事を補助線に、韓国という国の「今」を描くと以下の図式が浮かびます。

 大衆迎合的な指導者が登場した。この指導者は民意に極めて敏感で、過激な“ネット世論”と、それに引きずられる既存メディアに動かされている。その結果、韓国は時に常識を超えて暴走する――。

日本の産業遺産登録も阻止

—確かに「反日」を見ても、最近の韓国の行動はこれまでの「争い方の常識」をはるかに超えています。

鈴置:産経新聞の前支局長を在宅起訴して8カ月も出国禁止にする。盗んだ仏像を日本に返さない。戦時徴用者への補償など、国交正常化時に完全に解決した問題を再び蒸し返す。安倍晋三首相の米議会演説は国を挙げて邪魔する。明治日本の産業遺産が世界遺産に登録されそうになると、外交部が「全力で阻止」と宣言――。

 こうした常軌を逸した行いの数々には首をひねらざるを得ません。韓国人の気分は一時的に満足させるでしょうが、長期的には韓国の国益に大いに反するからです。

 ただ「日本をやっつけろ」という激しい“ネット世論”と、それに影響された既存メディアが、大衆迎合的な指導者の背中を押していると考えると、納得がいきます。少なくとも「朴槿恵大統領は頑固だから」といった単純な説明よりは説得力があるのです。

奇妙な動きは止まらない

—内政でも同じ構図なのですね。

鈴置:もちろんそうです。「セウォル号」が沈没した際、“ネット世論”と既存メディアが感情に任せ「海洋警察の不手際」を叩きました。すると朴槿恵大統領は真相究明が始まってもいないのに、海洋警察の解体を決めてしまいました。

 文昌克氏という中央日報の元主筆が首相候補になったことがあります。一部のメディアが文昌克氏を「親日派」と決めつけたら、完全な虚偽報道であるのに、この政権は候補から降ろしてしまったのです。

 いずれも趙甲済氏が「国内外で見捨てられる朴槿恵の親中反日路線」で指摘した「メディアに扇動された大統領の失政」です。

 「国全体が情緒に振り回される」という構造が続く限り、韓国は内政でも外交でも奇妙な動き――韓国の国益にさえ沿っていない行動を続ける可能性が大です。

強硬路線を変える素振り

その韓国が日本との関係改善に動く、との報道があります。

鈴置:「2トラック戦略」などと称し、韓国は日本に対し「歴史問題では対日要求を降ろさないが、安保や経済では協力しよう」と言い出しています。

 「外交的孤立から脱せよ」との“世論”が韓国に充満したからです。“世論”に敏感なこの政権は、少なくとも路線を変える素振りは必要と判断したのでしょう。

 日本に対しては、慰安婦での強硬姿勢は変えないが、通貨スワップは結んでほしいし、北朝鮮の軍事情報は持ってこい――と言ってくるのではないかと思われます。

情緒不安定な人との間合い

—日本はどう対応すればいいのですか?

鈴置:日本の悪口を世界で言いつつ「仲良くしようぜ」と言い出す韓国の虫のよさは、とりあえず横に置きます。先ほどからくどいほど述べたように、韓国という国はますます感情や情緒で動く国になりました。

 今現在は「外交的孤立を恐れる」情緒で動いています。しかし、中国から少し優しくされたら「やはり中国は我が国の味方だ」とそっくり返って、対日協調路線などはすっ飛ぶ可能性があります。

 反対に、中国から「日本などと仲良くするな」と脅されても、韓国の世論は縮み上がり、再び日本叩きに乗り出すかもしれません。

 今の韓国を人間に例えれば、信念がありそうで実は自信がなく、情緒が不安定な人と考えておくべきです。そういう人との付き合いは、適度の間合いを置くのが常道です。

 米国も韓国の、特にこの政権の性格を見切ったのでしょう、非常に慎重に――距離感を持って、韓国を取り扱うようになっています。ことに米大使襲撃事件以降は。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください