4/30日経ビジネスオンライン 福島香織『郭伯雄も失脚、不安定化する中国 軍の長老排除の先は、江沢民追及かクーデターか』記事について

中国の権力闘争が熾烈さを増してきているという事です。習近平・王岐山は生き延びれるかという所です。勝てば太子党の天下がずっと続き、国民はひもじい儘です。(でも誰が政権を握ろうが政権に対するチエックが働かない共産党政権では国民は蚊帳の外でしょうけど)。以前述べたように上海派の大物・曽慶紅の逮捕が間近であるとすれば、流石に主席経験者の江沢民の逮捕はないと思いますが。過去には主席である劉少奇や華国鋒が文化大革命や四人組打倒の流れで逮捕や更迭されましたが。中国が動乱の時代でしたので。今はネットで瞬時に情報が駆け巡る時代です。いくら中国政府がネット遮断しても。

何清漣は『中国 現代化の落とし穴』の中で、「権銭交易」(quan2qian2jiao1yi4で権と銭の発音が似ているためこう言った)=「権力の市場化」と言って政治の自由がないのに、経済的自由が認められたたためポストが金で取引されるようになったことを批判しています。軍も官僚組織ですから当たり前で、昇進するためには上官に賄賂を贈らなければ如何に能力があろうとも上には行けません。まあ賄賂を贈る能力(当然部下から人事権を行使して賄賂を取り、それをかき集めて上官の賄賂とする)も含めた能力という事でしょう。ただ、周永康もそうでしたが、日本が賄賂で逮捕或は報道される額とは桁違いです。兆円単位ですから。

上海派打倒の後は団派との戦いとなれば、習・王が生き延びるのは難しいのでは。太子党には「血」の正統性しかありません。共産主義で「血」の正統性を訴えても笑われるだけです。北朝鮮の金王朝を相手にしない習近平が「血」を言うことは自己矛盾です。団派はそれに引き換え、共産党の思想を忠実に守ることを誓約して集まった組織です。(殆ど出世のためにフリをしているだけでしょうけど)。小生は共産主義が嫌いですのでどちらにも肩入れはしませんが。上海派の残党が狙うし、団派も追い込まれれば窮鼠猫を噛むでしょうから。

記事

 中国の権力闘争がますますきな臭い。いよいよ、郭伯雄・元中央軍事委副主席失脚の正式発表も秒読みのようだ。元中央軍事副主席で党籍を剥奪されて軍事法廷での起訴準備が進められているうち、膀胱がんで死亡した東北の虎こと徐才厚と並んで、西北の狼と称された江沢民時代から軍を牛耳っていた上将である。産経新聞の情報を信じるならば、北京市内で軟禁状態にあった郭伯雄を、杜金才・党中央規律検査委員会副書記が4月9日に訪ね、「双規」(党内における取り調べ、事実上の身柄拘束)を通告した、という。この情報を裏付けるように、解放軍七大軍区幹部らに9日に中央軍事委および解放軍規律検査委が郭伯雄とその家族に対する取り調べを決定したという通達があったとサウスチャイナ・モーニングポスト(20日付)も報じている。七大軍区幹部らは思想教育の名目でこの日、北京に召集されていた。米国に本部を置く華字ニュースサイト博訊によれば、郭伯雄は北京の秦城監獄に収容されているとか。

 徐才厚に続いて郭伯雄という解放軍元制服組トップ2の長老を排除したことは、習近平政権の今後にどのように影響を与えるのか、考えてみたい。

江沢民の代理人、不正蓄財100億元超、愛人多数

 郭伯雄とはどんな人物であったか。

 1942年、陝西省出身で16歳の時、地元の軍工場学徒労働者となる。3年の勤務満期後、解放軍陸軍第19軍55師団に配属、64年に兵役満期後も軍残留を認められ、幹部コースに昇進。実戦経験はないが、江沢民国家主席に見出されて、順調に出世し、解放軍総後勤部(装備部)部長、北京軍区副司令、蘭州軍区司令などを歴任。2002年には中央軍事委副主席となり、中央政治局委員、解放軍常務副参謀長まで務めた。

 徐才厚とならんで、江沢民が自分の軍内における権力固めに出世させた上将であり、解放軍における江沢民の代理人ともささやかれた。江沢民が総書記、国家主席、そして中央軍事委主席を引退した後も彼らを通じて解放軍に強い影響力を持ち続けたため、胡錦濤政権は事実上、ほとんど解放軍における実権を握れなかった。

 彼は、江沢民政権時代に軍内における利権をほしいままにしたと言われている。特に、すでに失脚している元総後勤部副部長の谷俊山(元中将)と組んで、大量の軍事用地を売りさばき、周永康(失脚済、元政治局常務委)や賀国強(引退、元中央規律検査委書記)と共謀して不正蓄財を謀ったとか。郭伯雄の蓄財額は2010年の段階ですでに100億元を超え、広東、福建、江蘇、北京、雲南、広西、陝西、甘粛などに100を超える不動産を所有。いずれも億を超える豪華マンション、別荘であったとか。しかも郭伯雄は精力絶倫であり、愛人を十数人も抱えていたとか。郭伯雄は自分のお気に入りの愛人を徐才厚を通じて軍の歌舞団に入団させてもいたとか。

こうした話は、博訊が北京の三つの異なるソースから確認したものだという。

 香港報道を総合すると、郭伯雄が問われるであろう罪状は主に三つあると言われている。まず谷俊山から郭家に大量の金品が賄賂として贈られていること。また郭伯雄の妻、秘書、息子も大量の賄賂を受け取っていると言うこと。三つ目は軍常務副主席として、軍全体の腐敗の責任を問われるということ。解放軍内では昇進に具体的な賄賂額が暗黙に決まっており、事実上の将官位の売買が行われていた。目下、郭伯雄だけでなく、妻、息子、娘、秘書らの立件も準備に入っているという。

 本来なら、今年3月の両会(全人代と政治協商会議、国会に相当)直後に、郭伯雄の失脚が公式に発表される予定だったらしいが、徐才厚の死によって延期になったと言われている。

“恩”ある徐才厚を非情に追い詰めた習近平

 習近平の軍の汚職退治では、最初に失脚させられた大物が谷俊山で、2012年からの谷俊山の汚職取り調べが本格化、その過程で徐才厚が谷から少なくとも3600万元の賄賂を受け取っていることが証拠固めされた。2014年6月、徐才厚が史上最高額の軍汚職容疑で逮捕された。ちなみに、徐才厚は逮捕当時、末期の膀胱がんであったが、それでも容赦なく厳しい取り調べが行われた。

 徐才厚は、習近平がまだ国家主席になる前、軍内における後見人役として習近平をバックアップし、習近平夫人で元軍属歌手(少将)の彭麗援とも親しい間柄であった。その恩ある徐才厚に対する習近平の非情さについては、徐才厚のかつての愛人が、今の習近平の弟・習遠平の妻・張瀾瀾(元解放軍属歌手)であるという私怨が関係していたのではないかと言われている。一説によれば、徐才厚は、江沢民に習近平政権の軍における後見人を頼まれてはいたが、「五年(一期)たったら、やめさせる」と郭伯雄に語っていたという噂が、軍内に広がっていて、それが習近平の耳に入っていたという話もある。

 ちなみに習遠平が、徐才厚の愛人だった張瀾瀾の清純な容姿に惑わされて、習家の大反対を押し切って「できちゃった婚」によって2008年に結婚を果たしたいきさつは、やはり元軍属の歌姫・湯燦(失脚済、服役中)の獄中記「我的壮麗青春」の中に妙に生々しく書かれていた。湯燦は、徐才厚や谷俊山、周永康、李東生、令計画ら習近平の反汚職キャンペーンで失脚した要人たちの間を渡り歩いた「公共情婦」とも呼ばれ、2011年12月に中央規律検査委の呼び出しを受けて以降、行方不明となっている。一時、要人の秘密を知り過ぎたために秘密裡に処刑されたという噂も流れたが、その後、湖北省の刑務所で米CIAに国家・軍事情報を漏らした罪などで服役中だと香港メディアが報じていた。その後、彼女の獄中記なるものが今年2月に出版されているが、これが本物か偽物か確かめるすべはない。

 徐才厚の失脚によって、郭伯雄は自らの身に危険を感じたので昨年7月、国外脱出を図ったと噂されている。7月14日夕方、南京軍区の軍事演習による管制という理由で北京と上海間の飛行機100機以上の離陸の取り消し遅延があり、道路封鎖やテレビやネットで情報統制も敷かれた事態があったが、この時ネットに流れた噂では、郭伯雄が女装して国外脱出を図ろうとしたのを取り押さえたのだと言われていた。後にこの情報はガセであるとわかった。だが、郭伯雄が次なる「大虎」であることは、この頃からほぼ確定していたという。

江沢民まで追及か、クーデターの懸念増幅か

 今年3月の香港誌「動向」によれば、郭伯雄の息子・郭正鋼(解放軍浙江省軍区副政治委員、少将)は9冊のパスポートを用意して海外逃亡を画策したのだが、その逃亡計画が実行される前の2月に逮捕されたという。郭正鋼と妻は、偽名で杭州から深圳までの飛行機チケットを買い、陸路で香港に入り、香港かスウェーデンに行く予定だった。だが、郭正鋼にはすでにひそかな監視がついており、計画は実行されないまま、規律違反容疑で逮捕されたという。この息子の逃亡計画失敗によって、規律検査委側は郭伯雄の拘束(双規)に踏み切ったという。

 「動向」の分析によれば、9冊ものパスポートを用意したというのは、かなり異常なことであり、徐才厚の逮捕、そして取り調べ中の死亡によって、郭伯雄一族がいかに危機感に焦っていたかがうかがえる。

 今後の予想としては、徐才厚や郭伯雄ら長老だけでなく現役国防部長の上将・常万全ら現役軍幹部にまで粛正の手が伸びるのではないかともいわれている。徐才厚失脚後から今年3月までの間に失脚した軍幹部は33人以上で、現役少将以上の軍幹部は14人以上という。それ以外にも100~200人が取り調べを受けているともいう。前国防部長で退役上将の梁光烈の失脚も近いと噂されている。彼も江沢民政権時代に南京軍区司令から総参謀部長に抜擢された江沢民派の大物軍人である。ひょっとすると、元中央軍事委主席で元総書記の江沢民にまで、習近平の反汚職キャンペーンの追及の手は伸びるのではないか、という憶測もある。

 こうした状況から、習近平政権と軍の関係についての見方はおおむね二つに分かれている。根強い江沢民派の軍長老・現役幹部の影響力、利権構造を根こそぎ排除した習近平は、自分のお気に入りの若手幹部を七大軍区などの主要地位につけて、解放軍内に新たな秩序を築いて軍の掌握をほぼ完ぺきにした、という意見。もう一つは、粛正の恐怖により表向きは習近平への忠誠をうたう軍幹部が増えているが、内心の不満はたまっており、これが一気に噴出する、つまりクーデターなどの懸念はむしろ高まっているのではないかという意見だ。

 ここで、気になるのは、胡錦濤に連なる李克強、李源潮、汪洋といった共産主義青年団派閥(団派)と、政権の主導力を握る習近平・王岐山グループとの対立との兼ね合いだ。

 薄熙来、周永康、徐才厚らと並ぶ「新四人組」の一人として汚職・規律違反で失脚した令計画は、実際のところ胡錦濤の腹心であり団派である。周永康との関係が失脚の原因と表向きは報道されるも、習近平の権力闘争の矛先が最終的には団派に向かっているということのシグナルだというのが一般の見方だ。

 普通ならば、次の党大会で現在の7人の政治局常務委員のうち5人が引退し、現在の政治局委員の中から繰り上げ昇進となるのだが、現政治局委員の実力派メンバーは団派、李源潮(国家副主席)、汪洋(副首相)、胡春華(広東省党委書記)らである。中でも胡春華は次期総書記、国家主席にもっとも近いポジションにいるといっていい。習近平としては、自分の後に総書記となる人間は、自分の意をくんだ腹心をつけたいはずで、そのためには胡春華つぶし、胡春華を次期総書記の座につけようと画策する団派勢力を抑える必要がある。これは江沢民政権時代の陳希同事件、胡錦濤政権時代の陳良宇事件を振り返るまでもなく、何度も繰り返されてきた権力闘争のパターンと言える。令計画の失脚後、次のターゲットは李源潮だといわれ、実際、李源潮の腹心らが次々と失脚している。

著者不明の『誰が習近平を謀殺するのか』

 習近平は解放軍内の江沢民派と長老排除を急速に進める一方で、次の党大会をにらんだ団派との権力闘争も激化させる、いわば二面作戦を展開している。いや、もっと言えばメディア・ネットの締め付け強化、ウイグル・チベットの少数民族弾圧強化なども進めている。習近平・王岐山の敵は国内だけでも数知れない。香港メディアによれば、2013年以降、習近平は6回以上、王岐山は十数回の暗殺未遂に遭っているとか。習近平の暗殺のうち2回は周永康が企てたものだとか。会議室に爆弾が仕掛けられたり、北京301病院に赴いたときに毒針をさされそうになったという。

 今年2月ごろ、著者不明の電子書籍『誰が習近平を謀殺するのか』がネット上に話題になったのだが、それは習近平政権の容赦ない反腐敗キャンペーンが恨みを買ったり、反習近平勢力の結束を生んだりして、政変、軍事クーデター、暗殺を引き起こす可能性がある、そう考えている人が中国共産党内部に増えていると訴えている。

 こういった言説を信じるべきか否かは、判断の難しいところだが、ただ表向きに喧伝されているように、習近平が順調に権力基盤を固め、軍の掌握を進めているというものではないだろう。むしろ、中国の政治も社会も天安門事件以来もっとも不安定な時代が到来しているといえそうだ。

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