4/10カーター米国防長官と朴大統領の会談後の動きとして、4/14加藤前産経ソウル支局長の出国禁止解除や、サーチナ記事のように「慰安婦の強制性がなかった」との政府発言のように韓国外交の軌道修正が図られました。米国から厳しくお灸を据えられた結果でしょう。(在韓米軍撤退or戦時作戦統制権韓国移管(2015年12月から延期は決定しているが、時期は定めず)or有事に在日米軍は日本の協力を得られず、出動できず。またTHAADは面子を立て時間的余裕を与える等、小生の推測ですが)。サーチナ記事は『2015年4月14日、韓国・マネートゥデイによると、韓国政府が「慰安婦が強制連行された証拠はない」と発言し、韓国で批判が相次いでいる。 韓国女性家族部はこのほど、日本政府の歴史歪曲(わいきょく)に対応するため、小中高生別ワークブックと映像・パワーポイントなど教師用の資料で構成される教材を制作した。しかし、教師用の教材の中で慰安婦が「自分の意思に反し、慰安所に動員された女性たち」と説明されており、「『強制的』という言葉よりも謙虚で柔らかい表現を使用して、日本側に有利に記述している」との指摘が相次いだ。 これについて、女性家族部の関係者は「慰安婦問題で重要なのは、慰安所の中で『性的暴力』という悲惨な行為があったということ」と説明。また、「『強制動員された』という証拠はないので、その表現を直接的に入れることは難しい」と述べた。 これに対し、韓国のネットユーザーは以下のようなコメントを寄せている。 「前々から無能だとは思っていたが、ついに狂ったようだね」 「だから『親日政府』というレッテルを貼られてしまうんだ」 「女性家族部は慰安婦被害者のために作られたんじゃなかったの?」「日本の情報をもとに制作したのか?」 「生きて戻って来た慰安婦被害者の証言が何よりの証拠!」 「安倍首相が執筆した小説の内容かと思った」 「女性家族部ではなく、日本家族部に改名しろ」 「この国の政府は日本のための政府か?それとも米国のための政府か?」 「韓国国民が一つになれていないのに、日本に勝てるわけがない」 「韓国人の敵は韓国内にいる」 「不思議の国の歴史教科書…。もういい加減にして!」(翻訳・編集/堂本)』とあります。韓国民の事実に向き合う姿勢に疑問を感じます。まあ、小中華と言われますから、嘘とか賄賂が社会にビルトインされていて事実かどうかは関係ないのでしょうけど。挙証責任は原告側が持つのに、証言だけで証拠もなく騒いできたのが韓国です。安倍首相の「人身売買」発言はこの流れでしょう。(アメリカと充分擦り合わせての発言と思います。裏切り者の韓国より頼りになるのはやはり日本と思ったでしょう)。4/26からの訪米で議会演説も慰安婦発言があるとすれば「人身売買」の線と思います。また、4/14米財務省のウオンの人為的介入批判は韓国のAIIB参加に対する嫌がらせでしょう。しかし、アメリカも舐められていますね。オバマ大統領の軍事忌避、無能がたたっているとしか思えません。
昨年3/1の朴大統領の1000年怨み節、4/3外務省高官の「100回でも詫びるべき」発言は成熟した大人の感覚ではありません。ゆすり、タカリの暴力団と変わりません。併合されたとしても、それも歴史の一部というのが理解できていない。それを言うなら中国の属国の時代が長かったのだから中国に文句を言うのが正しい姿勢でしょう。日本が韓国を甘やかすからです。中国のレアアース同様、サムスンにスマホ部品を輸出できないようにして、iPhoneやAndroid だけにすると脅し、締め上げれば良いでしょう。体で覚えさせないとダメな民族です。
また、4/14アシアナ航空機事故で操縦士・副操縦士の先逃、CAの無能・避難指示もないし、社長がTV謝罪せず日本人副社長に謝罪させたことなど、民族の特性が良く出ています。メイド・イン・コリア、サービス・バイ・コリアンはダメと気づかないと。でもバカがつくほどのお人好しの日本人も、中国・韓国は平気で嘘をつく、平気で騙す民族と言うのを知ってきました。非韓三原則「助けず、教えず、関わらず」を行動で示しましょう。安いからと言って命を落としたのでは何もなりません。でもアシアナ機のパイロットの先逃についてはメデイアでは報道されていません。やはり日本のメデイアはおかしいです。セウオル号1周年で強調されるのを避けたのでしょうか?どこの国の報道か分かりません。
記事
米国に守ってもらいながら、中国の言う通りに動く韓国。気分は「もう、中立」だ。
「3NO」でTHAAD先送り
—終末高高度防衛ミサイル(THAAD=サード)の在韓米軍への配備の協議が先送りになりました。
鈴置:「韓国が米国の言うことを聞くのか、中国の言うことを聞くのか」で注目を集めていた問題です(「日米の同時『格下げ宣言』に慌てる韓国」参照)。
米韓は4月10日にソウルで開いた両国の国防相会談の後「THAADの問題は話し合われなかった」と発表しました。
聯合ニュースの「韓米国防長官共同記者会見……THAADは論議しなかった」(4月10日、韓国語)によると、「米国はTHAADを配備する考えはあるのか。あるとしたらいつ頃、結論を出すのか」との問いにカーター(Ashton B. Carter)米国防長官は以下のように答えました。
- THAADは本日の議題に含まれていない。理由は、まだ生産段階にあるためだ。配備の場所に関する論議もまだしていない。時期についても生産の進行状況により決定が下されるだろう。そしてこれに関連し、訓練と配備の可能性が議論されることになる。全世界の誰ともまだ、配備問題を論議する段階ではない。
星取表の判定を変更
3月11日に青瓦台(大統領府)は「THAAD配備に関する3NO」を宣言しました。米国から要請されたこともないし、協議したことも、結論もない――から「3NO」なのです。
はっきり言えば、韓国はTHAADに関する米国との協議を拒否したのです。さらに今回の米韓国防相会談でも、建前だけでしょうけれどそれを貫いた。だからカーター国防長官も「議題に含まれていない」と答えざるを得なかったのです。
—これで韓国は中国の怒りを避けられましたね。
鈴置:ええ。中国は「配備を認めれば、戦略武器――核兵器の攻撃対象にするぞ」などと脅していました(「『核攻撃の対象』と中国に脅される朴槿恵」参照)。確かに当分の間は、韓国は脅されにくくなるでしょう。
これまで「早読み 深読み 朝鮮半島」に載せてきた「米中星取表」。THAADの項目では「まだ完全には勝負がついていない」との判断から「―」の印を付けてきました。
しかし「3NO」と言い出すほどに韓国が露骨に「離米従中」――同盟国たる米国の意向を無視し、中国の指令に従うようになった以上、THAADの項目は「米国が劣勢」と判断して「▼」に、中国は「優勢の△」に判定を変えることにしました。
米中星取表~「米中対立案件」で韓国はどちらの要求をのんだか
(○は要求をのませた国、―はまだ勝負がつかない案件、△は現時点での優勢を示す。2015年4月15日現在)
案件 | 米国 | 中国 | 状況 |
日本の集団的自衛権 の行使容認 | ● | ○ | 2014年7月の会談で朴大統領は習近平主席と「各国が憂慮」で意見が一致 |
米国主導の MDへの参加 | ● | ○ | 中国の威嚇に屈し参加せず。代わりに「韓国型MD」を採用へ |
在韓米軍への THAAD配備 | ▼ | △ | 青瓦台は2015年3月11日「要請もなく協議もしておらず、決定もしていない(3NO)」と事実上、米国との対話を拒否 |
日韓軍事情報保護協定 | ▼ | △ | 中国の圧力で署名直前に拒否。米も入り「北朝鮮の核・ミサイル」に限定したうえ覚書に格下げ |
米韓合同軍事演習 の中断 | ○ | ● | 中国が公式の場で中断を要求したが、予定通り実施 |
CICAへの 正式参加(注1) | ● | ○ | 正式会員として上海会議に参加。朴大統領は習主席に「成功をお祝い」 |
CICAでの 反米宣言支持 | ○ | ● | 2014年の上海会議では賛同せず。米国の圧力の結果か |
AIIBへの 加盟 (注2) | ● | ○ | 米国の反対で2014年7月の中韓首脳会談では表明を見送ったものの、英国などの参加を見て2015年3月に正式に参加表明 |
FTAAP (注3) | ● | ○ | 2014年のAPECで朴大統領「積極的に支持」 |
(注1)中国はCICA(アジア信頼醸成措置会議)を、米国をアジアから締め出す組織として活用。 (注2)中国はAIIB(アジアインフラ投資銀行)設立をテコに、米国主導の戦後の国際金融体制に揺さぶりをかける。 (注3)米国が主導するTPP(環太平洋経済連携協定)を牽制するため、中国が掲げる。
米国はいつでも協議を開始
—米国はTHAADの韓国配備をあきらめたのでしょうか。
鈴置:そんなことはありません。前記の聯合ニュースの記事によると、カーター長官は会見で「THAADの生産はいつ終わるのか」との質問に対し、以下のように答えています。
- 時期は未定だ。だから、生産完了後に配備の可能性などを決めることができる。アジア太平洋地域の米軍防御と、弾道ミサイルの危険性に関しては、常に我々が一歩先んじるよう努力している。最近もアラスカに地上迎撃システムを追加配備した。そうした方法で朝鮮半島と日本のミサイル防御をも同時に行っている。
中国に脅される韓国の窮状に配慮して、米国は配備の協議を一時保留したに過ぎないのです。カーター長官の発言をよく読めば「ミサイルが完成した」と米国が言い出せば、いつでも協議を要求できるのです。
「大統領が難物」
—では、その時期はいつになるのでしょうか。
鈴置:北朝鮮が核弾頭の小型化に成功するなど「THAADが絶対に必要だ」との方向に韓国の世論が傾くのを米国は待つ作戦と思われます。
カーター長官も「弾道ミサイルの危険性に関しては、常に我々が一歩先んじるよう努力する」と言っています。THAADはすでに米国内には配備済みですし、UAEへの輸出も決めています。米国は機会到来と判断すれば、いつでも協議に動くでしょう。
—韓国軍は配備に賛成しないのですか。
鈴置:もちろん、北朝鮮の核の脅威に危機感を高める韓国軍は賛成でした。2014年6月18日、金寛鎮(キム・グアンジン)国防相(当時)は国会で「米軍のTHAAD配備に問題はない」と答弁しています。
ただ、直後に韓国国防部が「国益を考慮し慎重に検討する」との答弁書を出し、発言を修正しました。青瓦台――大統領の意向からと思われます。5月末に米軍が韓国配備をリークすると、直ちに中国が反対していましたから。
米国の安全保障担当者は、その頃から「韓国軍とは意見が一致するのだが、朴槿恵(パク・クンヘ)大統領が難物だ」と、日本の専門家にこぼしていました。
ただ、いくら「親中」の朴槿恵大統領でも、北の核兵器が実用化したとなればTHAAD配備にNOとは言えなくなるだろう――と米韓両軍は判断していると思われます。
韓国の国論は分裂
—THAADに対する世論の風向きは?
鈴置:韓国の国論は割れました。最も右――つまり親米かつ反北朝鮮、反中国の趙甲済(チョ・カプチェ)ドットコムは当然、THAAD配備に賛成です。
保守系紙の多くも、総じて賛成の方向で紙面を作っています。理由は「経済よりも安全保障の方が重要だ」です。
「THAAD配備に賛成すれば中国から経済的に苛められるだろう」と韓国では考えられています。それに対する「でも、おカネより命の方が大事だ」との主張です。
「二股外交」をやめて「米国回帰」しようと訴える保守の大御所、金大中(キム・デジュン)朝鮮日報顧問も「北朝鮮の核にやられたら中国が守ってくれるのか」(3月17日、韓国語版)で「THAAD配備賛成」を表明しました。サブ見出しの1本が以下です。
- 国益を考えれば米国が正解……北の攻撃に備えるにはTHAADが必要、はっきりとした立場を中国に明かせ
一方、左派系紙の「ハンギョレ」は、明確に配備反対を打ち出しました。理由は「中国と敵対すべきではない」です。
「サード配備問題は日和見主義では解決されない」(3月18日、日本語版)や「明確な反対意思でTHAAD問題を終わらせるべきだ」(3月28日、日本語版)など、相次ぎ反対の社説を載せています。
後者では「THAADの有効性にそもそも疑問がある」との理由で「おカネより命」という主張に反撃しています。
露骨な中国の圧力に反感
—政界は?
鈴置:興味深いことに、保守の与党が分裂しました。「3NO」など、THAADに関し青瓦台の優柔不断とも見える姿勢がひどくなると、セヌリ党の中の「反・朴槿恵」系議員は「THAAD配備賛成」を言い出しました。
さらに、中国の露骨な圧力が強まって国民の反発が強まったことも、彼らの背中を押したと思われます。
なお、左派の野党第1党である新政治民主連合は「中国への配慮」を理由に、与党の一部が賛成に動いたことを批判しています。
—「中国の露骨な圧力」とは?
鈴置:3月16日に中国の劉建超外務次官補が「THAAD配備に憂慮」「AIIBに参加を」と韓国に求めたのですが、これが韓国人の反発を呼んだのです。
それまでも中国のTHAAD反対の意向は繰り返し報じられていましたが、訪韓した中国の高官が直接、韓国メディアに「要求」したのは初めてでした。物言いが横柄に見えたためでしょう「未だに宗主国のつもりか」と反感を抱いた韓国人が多かったようです。
理念よりも党派の争い
—中国は失敗したのでしょうか。
鈴置:そうとは言えません。与党の賛成派はほとんど「反・朴槿恵派」と言われています。3年後の大統領選挙を念頭に、脱・朴槿恵色を打ち出すのが本当の狙いでしょう。
理念というよりも党派の争いですから、中国が個別に圧力をかければ「配備賛成」の旗を降ろす可能性があります。
今は“党内野党”だからそんな主張をしているのであって、もし、大統領になれば――大統領候補になるだけでも、中国の顔色を見ないわけにはいかないのです。
同様に新聞も微妙です。さきほど「保守系紙の多くはTHAAD配備に総じて賛成の方向で紙面を作っている」と申し上げました。でも「THAAD配備に賛成」とはっきり書いているのは少数の大物記者だけです。
社説でも、賛成の臭いが伝わってくることが多いのですが、各紙とも断定的には書かないのです。2015年1月1日から4月2日までに、THAADに関し保守系の大手3紙は合計8本の社説を載せています。朝鮮日報と東亜日報が各2本、中央日報が4本です。
うち4本が「THAADで圧力をかけてくる中国」が主なテーマでした。それらは「THAADがだめだというなら科学的根拠を示せ」「配備に反対するなら北の核開発を抑えてくれ」といった中国への要望か、せいぜい反発に過ぎないのです。
残り4本は「大統領が決めろ」「腰を据えて考えろ」などと韓国政府に決断を求めるものでした。結局「中国が何と言おうが米国のTHAAD配備に賛成する」との、決然とした社論を打ち出した新聞はないのです。
中国が怖い韓国紙
—案外と弱腰なのですね。韓国紙の日本語版を見ると連日、日本を罵倒する記事や社説に満ちあふれているのに。
鈴置:恐ろしい中国から目を付けられたくない、ということでしょう。「日本や米国ならどんなに悪口を書いても大丈夫だけれど、中国は何をしてくるか分からない」とこぼす韓国の新聞人が多いのです。
あるいは、朴槿恵政権の決断と反対方向の紙面を作りたくはないので様子見しているのだ、と冷ややかに見る韓国人もいます。政府が「二股外交」を展開中なので、与党系紙も「二股紙面」になってしまう、ということでしょう。
—おとなしいからといって、日本に対しては無茶苦茶書くというのも変な話ですね。
鈴置:それが韓国です。
THAAD支持派にも「危険な臭い」
—韓国を引きとめておきたいとすれば、ですが、米国も韓国の世論形成では親米派のシニア記者が頼り、ということですね。保守系紙を含め「中国の顔色を見る」空気が広がっている以上は。
鈴置:そこで気になることが1つあります。THAAD配備を支持するシニアの記者のコラムにも「危険な臭い」がたちこめ始めたのです。日本や米国にとって、ですけれど。
例えば、朝鮮日報の楊相勲(ヤン・サンフン)論説主幹が4月9日に書いた「THAAD、中国の立場も傾聴し尊重せねば」(韓国語版)です。
このコラムは、はっきりとTHAAD配備に賛成しています。また、楊相勲論説主幹らしく切れ味も鋭い。例えば以下のくだりは、浮ついた観念論を振り回す凡庸な識者の顔を赤らめさせたでしょう。
- 多くの人が「中国に対してアジアインフラ投資銀行(AIIB)加盟という贈り物をしたのだから、THAADではお返ししてもらえばいい」と言う。では中国が「AIIBに加盟しなくてもいいから、THAAD配備に反対しろ」と返答してきたらどうするのか。経済と安保は市場でのように交換できないのだ。
中国の信頼を勝ち得てこそ
さて、楊相勲論説主幹の主張は「THAAD配備のためには、中国との信頼関係を構築することが必須だ」というものです。論理は以下です。
- 中国がTHAAD配備に反対するのは、米国の(高性能)レーダーを恐れているからだ。また中国は、北朝鮮の体制までを犠牲にして、その核をなくそうとは考えない。中国が米勢力と国境で向き合うことを避けるには、北朝鮮の存続が必要だからだ。
- 韓国がこのままの状態でTHAAD配備を受け入れれば、中国は北朝鮮との軍事的関係を強化したり、在中韓国企業に対する圧力をかけるなどのカードを切るかもしれない。その際、韓国には「北のミサイルを完全には防げないTHAADで、より多くのものを失った」との論議が広がるだろう。
- それを防ぐには中国人に、韓国が米国の対中軍事戦略にいたずらに追従する国ではないと信じてもらい、韓国が米日と一緒になって中国を包囲する国ではないとの確信を持たせ、米中の平和共存を世界で最も願っているのが韓国であるとの認識と、統一韓国が中国の安保上の利益になるとの期待を抱かせる必要がある。
中国に中立化を約束
—筋が通った主張ですね。
鈴置:ええ、堂々たる正論でしょう、韓国としては。そしてこれが韓国の保守本流の、THAADに限らず、外交の基本的発想を代表していると思います。
朴槿恵大統領はともかく、外交部や軍はとりあえずは、ですがこの線で――米国との同盟を基本にしながらも、何とか中国を敵に回さない方向で道を探しています。
金大中顧問も先のコラム「北朝鮮の核にやられたら中国が守ってくれるのか」の「中国への説得部分」で似た論理を展開しています。以下です。
- 韓国は自らの生死がかかった北朝鮮のミサイルが関心事なのであり、中国のミサイル探知は関心事ではないことを(中国に対し)明らかにせねばならない。
—ではなぜ、楊相勲論説主幹のコラムが「気にかかる」のでしょうか。
鈴置:よく読んで下さい。要するに、米国に対しTHAAD配備を認める代わりに、中国には米中間で韓国は中立を保つと約束しよう、という主張なのです。
また、統一後は朝鮮半島から米国の軍事力をなくす――つまり、制度的にも米韓同盟を解消することを示唆しています。
「米中の平和共存を願う」などと言葉は美しい。でも、そうやって中国人から理解と信頼を得ようと努力するほどに中国は韓国を舐め、要求を強めることでしょう。中国が「平和共存と言うなら、証しとして米韓合同軍事演習はやめよ」と言い出したら、韓国はどうするのでしょう。
「でも、北朝鮮からは守ってね」
—確かにそうなりかねませんね。
鈴置:もう1つ、本質的な問題があります。「米中どちらの要求を受け入れたか」という点から見れば、韓国はすでに中国側に傾いています(「米中星取表」参照)。このうえ、堂々と「中立」を宣言したら、状況は大きく変わります。
米国だって韓国の二股は苦々しく思っています。でも、建前はまだ米国側にいることになっていて、何とか同盟が成立している。
韓国が「米中対立の局面では米国に協力しない」と中国に約束しているのを傍から米国人が見たら、どういう気がするでしょうか。さらに「だけど、北朝鮮からは守ってね」と韓国から言われるのですから。
—韓国の虫のよさに米国は怒り出すでしょうね。中国はそこまで狙って「THAAD配備に反対せよ」と韓国に命じたのでしょうか。
鈴置:証拠はありませんが、そう思えます。仮に韓国が「THAAD反対」に動けば米韓同盟にヒビを入れることができる。
そこまでいかなくとも、悩んだ韓国が中国に「敵対する意思はない」と理解を求めて来ればしめたものです。「中立化」を自ら宣言させてしまえるのです。
明を裏切った朝鮮
17世紀の明清交代期の話です。新興勢力の後金(のちの清)は朝鮮に力を見せつけ、明清の間での二股外交――中立政策を採用させました。
1619年に中朝国境の中国側で、明と朝鮮の連合軍が後金と戦いました。サルフの戦いです。明の形勢が悪いと見ると、朝鮮の軍はその王が予め指示した通りにさっさと降伏します。そして、朝鮮の将軍は後金にこう言ったのです。
- 我が方はあなたたちの敵ではない。我々が互いを敵対視する理由はない。ほかに手はなかった。我が方は意思に反して、気乗りがしない境遇に置かれたのだ。(秀吉が攻めてきた)壬辰倭乱の時、明は我が朝鮮を助けてくれた。その恩義に報いる意味で(この戦いに)少しばかりの関心を見せないわけにはいかなかったのだ。しかし状況を見れば分かる通り、我が方はあなたたちと和解の用意がある。
以上は、米国のジャーナリスト、ホーマー・ハルバート(Homer B. Hulbert)が1905年に書いた『The History of Korea』の韓国語訳『韓国史、ドラマになる②』の108ページを翻訳したものです。
この「明清間での中立化宣言」は、その場しのぎには役立ちましたが、本質的には朝鮮をさらなる苦境に追い込んでいきます。
明との同盟を放棄した朝鮮に対し、清はますます強気に出ました。そして明が完全に弱った後、朝鮮に反清的な王が登場したのを機に、清は朝鮮を武力で制圧するに至ったのです。
「歴史を鑑とする」のが大好きな中国人が、明清交代期の朝鮮の中立化政策を思い出さないはずがないのです。
踏み絵をハメ手に
—なるほど、400年前と同じ手口ですか。
鈴置:米国の「THAAD配備」の打診には、韓国の忠誠心を確かめる意図もあったのでしょう。サルフの戦いの前に、明が朝鮮の忠誠心に期待して出兵を求めたのと似ています。
でも中国はその「踏み絵」を逆手にとって「中立化宣言」を誘導するハメ手に使おうとしている――ということかと思います。そして朴槿恵政権はそのハメ手に、はまりかけているように見えるのです。