『オバマ広島訪問、米国内はどう受け止めたのか』(5/30日経ビジネスオンライン 高濱賛)

本日、安倍首相は野党の不信任決議を受けて、粛々と否決し、衆院解散するのでは。麻生副総理、谷垣幹事長、稲田政調会長も「消費税増税を延期するのであれば、衆院を解散して信を問うべき」と言いだしたのはその証拠では。示し合わせての発言ではないかと思います。二階総務会長は先日の御坊市長選で子息が落選する憂き目に遭い、支持基盤がガタガタになっているのでこの近くでの選挙はしたくない気持ちがありありですが。売国議員は落選した方が良いでしょう。

5/30日経では<内閣支持、56%に上昇 オバマ氏訪問「評価」92% サミット外交「評価」62% 

 日本経済新聞社とテレビ東京による27~29日の世論調査で、内閣支持率は56%で4~5月の前回調査から3ポイント上昇した。不支持率は35%で5ポイント低下。先の主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)で議長を務めた安倍晋三首相の働きぶりは62%、オバマ米大統領の広島訪問は92%がそれぞれ「評価する」と答えた。一連の外交成果が支持率を押し上げた形だ。(関連記事総合・政治面に)

approval rating of cabinet

 内閣支持率は2014年9月の内閣改造を受けた調査で60%を記録して以来の高水準となった。

 来年4月の消費増税は「反対」が63%と依然高水準。「賛成」は3ポイント上昇の32%だった。増税先送りで取り沙汰される衆参同日選は「反対」が1ポイント低下の42%、「賛成」は3ポイント低下し38%だった。経済政策「アベノミクス」は「評価する」が38%と2ポイント上昇し、「評価しない」は49%で4ポイント低下した。

 調査は日経リサーチが全国の18歳以上の男女を対象に乱数番号(RDD)方式で電話で実施。固定電話と携帯電話で計2278件を対象に、1089件の回答を得た。

外交成果、参院選へ与党に追い風 本社世論調査 

 日本経済新聞の世論調査で、主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)などの外交成果が安倍政権の内閣支持率を1年8カ月ぶりの高水準に押し上げた。2017年4月の消費増税も「反対」が6割超と、先送りの意向を示した安倍晋三首相を後押しする結果が出た。7月の参院選に向けて追い風になりそうだ。

 首相はサミットで主要7カ国(G7)首脳らとの議論を主導し、世界経済の減速阻止策を柱とした首脳宣言を取りまとめた。こうした議長としての働きぶりを「評価する」は62%で「評価しない」の21%を大きく上回った。内閣支持層で「評価する」との回答は8割に上った。

 政府・与党はもともと参院選を控えた時期のサミット開催を「選挙戦に弾みをつける格好の場」ととらえ、会議の成功を最重要課題としていた。安倍首相は5月の大型連休中に欧州を歴訪、財政出動を含む政策協調に慎重な英国やドイツの首脳と調整を重ね、首脳宣言の採択につなげた。

 世界経済が危機に陥るリスクに触れた首脳宣言は、17年4月の消費税10%への引き上げ先送りの口実になるとの批判も根強い。ただ予定通りの消費税引き上げに「反対」が「賛成」のほぼ2倍。内閣支持・不支持にかかわらず「反対」が多く、増税延期そのものが参院選に大きくマイナスになることはなさそうだ。

 サミットに併せて実現したオバマ米大統領の広島訪問も高い評価を受け、内閣支持率は56%と14年9月の第2次安倍改造内閣が発足した直後以来の高い水準になった。参院選の投票先も自民党が44%と「1強」を維持しており、選挙戦に向けた大きな懸念材料は見当たらないようにみえる。

 ただ沖縄県で米軍属が逮捕された女性遺棄事件への日本政府の対応は「適切ではない」が46%と「適切だ」の37%を上回った。事件には女性の反発が根強く、無党派層も半数近くが政府対応を「適切ではない」と回答した。6月上旬には沖縄県議選があり、その結果次第では参院選に逆風が吹く可能性もある。

参院選候補の野党一本化 「反対」が「賛成」上回る

 世論調査で7月の参院選での野党が進めている候補者一本化について聞いたところ、「賛成」が35%、「反対」が42%となった。

 野党の支持層でみると、民進党支持層が「賛成」73%、「反対」19%、共産党支持層も「賛成」63%、「反対」27%と一本化の軸になる民進、共産両党の支持層には一定程度浸透している。ただカギを握る無党派層は「反対」36%と「賛成」31%を上回った。

 民進、共産両党に社民、生活両党を加えた野党4党は参院選で32ある「1人区」すべてで一本化のメドを立てている。

 今後は政策のすり合わせなどが課題になりそうだ。

 参院選で投票したい政党は、自民党が44%で4~5月の前回調査から変化はなかった。民進党は3ポイント低下の12%だった。公明党4%、共産党5%、社民党1%でいずれも横ばい。おおさか維新の会は2ポイント低下の4%で、生活の党は1ポイント上昇の2%。態度未定は4ポイント増え28%だった。

 政党支持率は自民党が2ポイント低下の44%、民進党が3ポイント低下の8%。無党派は9ポイント上昇し30%だった。>(以上)

安倍首相の支持率も上がり、解散には良いチャンス。参院の野党一本化も衆院と同日選をすることにより実質一本化の活動ができなくなります。第二次安倍内閣の使命は憲法改正です。衆参の2/3を確保する良いチャンスです。先ず96条改正して衆参1/2の発議にすれば良いのでは。国民投票はそのまま。

米国も多様な意見の存在が認められる社会ですので、いろんな意見が出るのは健全でしょう。でも、日本が歴史の見直しをしようとすると、「歴史修正主義者」の烙印を押して封じ込めるのは間違っています。お互いの立場を尊重するのが自由主義国家の良い所でしょう。米国人ももっと、自国の歴史を学ぶべきです。インデイアンの虐殺、黒人奴隷、原爆投下は米国の原罪です。自覚してほしい。日本人は謝罪は求めませんが、歴史の見直しはして行きます。

記事

Obama in hiroshima

被爆者の人をハグするオバマ大統領(写真:AP/アフロ)

—米国のバラク・オバマ大統領が来日しました。被爆者を含めた日本国民の多くは同大統領の広島訪問、原爆資料館見学、慰霊碑前での演説の“3点セット”を高く評価しています。米国の反応はどうですか(オバマ演説の英文全文はこちら)。

高濱 3人の米識者に聞いてみました。彼らが付けたスコアはA+~B+(最高点はA+、最低点はC-)でした。

  • リベラル派:ダスティン・ライト博士、カリフォルニア大学サンタバーバラ校歴史学部

 オバマ大統領によるこれまでの演説の中で最も重要な演説として記憶されるだろう。とくに原爆で命を奪われた日本人はもとより、韓国人、米兵ら戦争捕虜の人たちに触れたのも非常によかった。

 加えて、何に言及しなかったかも重要だ。原爆投下によって戦争終結が早まり、あれ以上多くの米兵や日本人が戦争の犠牲にならなかった――という点に触れなかった。これは、原爆投下正当論の修正につながる可能性がある。少なくとも、従来からの論議に一石を投じたことは間違いない。(採点はA+)

  • 穏健保守派:米主要シンクタンクの上級研究員(匿名希望)

 オバマ大統領は就任する前から広島を訪問したいと希望してきた。2009年のプラハ演説で謳い上げた『核なき世界』に向けた決意を広島で再び発信したいという願望を実現した勇気は見上げたものだ。レガシー(遺産)作りの一環だと批判されようと、お構いなしにやってのけた。

 共和党の大統領候補への指名を確実にした不動産王ドナルド・トランプ氏の品位も哲学もないアジ演説を聞くにつけ、オバマ大統領の言動は米国人にとって一服の清涼剤となる。世界に誇れるものだ。これだけの知性と見識を持った大統領はなかなかいない。

 ただ核兵器廃絶についての具体的な青写真が提示できなかったのは残念だ。(採点はA-)

  • 中道派:デイビッド・ストラウブ氏(国務省で日本部長、朝鮮部長を歴任した日韓関係をよく知るアジア通。スタンフォード大学アジア太平洋研究センター朝鮮問題研究プログラムのディレクター)

 オバマ大統領は、就任当初からやろうとしていた広島訪問を実現した。この点についてはそこそこの成功(modest success)と言える。「謝罪はしない」と事前に公言するなど用意周到に根回しをして、米国内にくすぶり続けている政治的な信管を抜き取った。反対してきた退役軍人団体も最後には無視するか、いやいやながら訪問を了承した。

 戦略面でみると、海洋進出を続ける中国や核開発に余念のない北朝鮮に対して、『核兵器なき世界』を広島からアピールする狙いはある程度成功した。

 広島は日米同盟にとって、のどに刺さったトゲだ。それを取り除いて和解することに役立ったのは違いない。ただし、日米の間で和解はすでに済んでいる。

 その一方で、東アジア全域に目を転じて、今回の広島訪問を考えてみると、中国、韓国、北朝鮮は控えめな形ではあるが訪問に否定的だった。オバマ大統領は、慰霊碑の前で述べた所感で韓国人被爆者にも触れた。だが広島訪問が、東アジア全域で第二次大戦の傷を癒す和解につながったかどうかは疑問だ。(採点はB+)

反対してきた退役軍人は反応せず

 米主要メディアも「オバマ大統領は原爆投下について謝罪はしなかったが、悲惨な戦争で命を奪われた罪なき人々を追悼した」(MSNBC)といったトーンで広島訪問が成功だったと報じています。

—当初、オバマ大統領の広島訪問に強く反対していた退役軍人、とくに日本軍の捕虜になった人たちの反応はどうでしたか。

高濱 反対派は反応しませんでした。

 オバマ政権による徹底した根回しが功を奏したのです。オバマ大統領自身、「謝罪しない」とメディアとのインタビューなどで繰り返し述べました。スーザン・ライス大統領補佐官も退役軍人団体の幹部に会って「謝罪はしない」と口を酸っぱくして説明しました。

 退役軍人団体の人たちは当初はこう反発していました。「たとえ謝罪しなくとも、大統領が広島に行って慰霊碑に献花すれば、日本人はそれを謝罪と受け取りかねない」。それが根回しの結果、退役軍人のある者は黙りこくり、ある者は無視する姿勢に変わったように思います。

 オバマ大統領は広島に訪問する直前まで、軍隊や退役軍人といった反対派に配慮し続けました。例えば、米軍岩国基地に立ち寄り、日米同盟の最前線で働いている米兵の労をねぎらいました。

 慰霊碑に献花した際にオバマ大統領は、黙とうはしたものの頭は下げませんでした。見ている米国民に「謝罪」と受け取られかねないジェスチャーを避けたのでしょう。

「広島訪問は愚行」となじる保守系サイト

 もっとも保守派の中には今回の広島訪問を手厳しく批判する者もいます。926万人がアクセスしているというウエブサイト「ヤング・コンサーバティブ」のマイケル・カントレル編集長はこうコメントしています。

 「オバマ大統領がまたまた陳腐な愚行(old shenanigans)をやらかした。被爆地・広島を訪問したのだ。そこで、原爆投下は『罪悪だ』(evil)と言ってのけた。なんで原爆が投下されたか、知っているはずだ。カミカゼがパールハーバーを奇襲したからだ。この男は嘆かわしい(deplorable)」

米国民の原爆投下正当論は変化するか

—オバマ大統領の広島訪問を契機に、米国民の間にある原爆投下正当論は今後、弱まっていくでしょうか。

高濱 しばしば引用される「原爆投下を正当化する米国民は56%」という世論調査結果は2015年のものです。これが今後劇的に減っていくかどうか、まだ分かりません。

 ただ原爆投下正当論の実態を調べていくと、ハリー・トルーマン第33代大統領の原爆投下決定が正しかったという紋切り型の自己弁護以上の何かがあります。それは第二次大戦を戦った米国民の大義名分を守らねばならないという信念です。日本軍国主義と戦い、打ち負かしたという歴史認識の修正は絶対に許せないという「偉大なる世代」*が抱く矜持なのかもしれません。

*:「偉大なる世代」(The Greatest Generation)は、大恐慌を生き抜き、第二次大戦で帝国主義と戦い勝利した1930年以前に生まれた米国民を指す。NBCテレビのアンカーマン、トム・ブロコウ氏が著書の中で使用し、その後一般化している。

反対の理由は「偉大なる世代の業績と遺産」を守ること

 ロイド・ベッセイ米海軍退役少将の指摘にそのことがにじみ出ています。同氏は退役軍人会の幹部で、潜水艦の乗組員として第二次大戦を戦いました。「原爆投下で日本は無条件降伏した。もし原爆を使用しなければ、米軍は日本本土に上陸し、日本軍と戦っただろ。多くの米兵の命だけでなく、日本国民の命を犠牲にしたかもしれない。あのトルーマン大統領の決定は正しかった。第二次大戦に参戦していた米兵にその是非を問えば、彼らのほとんど全員がトルーマン大統領の決定に賛同していたはずだ」。

 「オバマ大統領と安倍晋三首相は、同大統領が広島で謝罪しないことで合意したそうだ。だが、米国の現職大統領が広島を訪問すること自体が大統領による『暗黙の謝罪』(implicit apology)と受け止められる」

 「米大統領は平和と戦争の双方に大変な責務を負っている。トルーマン大統領は原爆投下という空前絶後の歴史的かつ宿命的な決定を迫られた。何らかの謝罪をすべきだと信じている者は、トルーマン大統領が当時直面していた立場に自らをおき、歴史的脈絡の中でその意味を考えるべきだ」

 「われわれ『偉大なる世代』は自らが築き上げた遺産と業績に誇りを持っている。原爆投下について大統領が謝罪することは、第二次大戦に参戦し死んでいった同志の魂を踏みつけにする酷い仕打ち以外のなにものでもない。それがいかなる形であれだ」

「真珠湾vs広島」という一次方程式に疑義

 かって東京特派員だった米ニューヨーク・タイムズの知日派ベテラン外交記者デービッド・サンガー氏は、オバマ大統領の広島訪問について「Obama’s Visit Raises Ghosts of Hiroshima」(オバマ訪問は広島の亡霊を呼び覚ます」という見出しの記事でこう指摘しています。

 「オバマ大統領の広島訪問は、大統領選の真っ最中というこの時期を念頭に入れれば、オバマの『謝罪の旅』を批判してきた勢力にとって格好の標的になる」

 「一方、懸念されるのは、それでなくとも歴史認識問題で修正主義的な主張をしてきた日本の保守勢力が、オバマ大統領の広島訪問で勇気づけられ、『先の戦争は正しかった』という自分たちの主張は正しかったと言い出すことだ。彼らは第二次大戦前中に日本軍が犯した南京虐殺、従軍慰安婦問題、捕虜虐待拷問といった過去をしっかりと受け止めようとはしていない」

 「オバマ大統領がなぜ、いま広島訪問に踏み切ったのか、それは広島を知る『偉大なる世代』の人たちが歯が抜けるように死んでいるからだ。やがて彼らは皆いなくなり、トルーマン大統領の原爆投下決定を支持する世代は絶滅してしまうだろう」

—オバマ大統領の広島訪問をめぐる論争は、「真珠湾vs広島」という一次方程式――日本軍が真珠湾を攻撃したからその報復として原爆を投下した――ではないのですね。底辺には根深い歴史認識の問題がある。

高濱 その通りです。

 一つは、原爆投下についての日米の記憶の違いです。米国にとっては、日本帝国主義を破り、第二次大戦を終結させ、冷戦に向けて備えたという意味があります。日本にとっては無条件降伏と世界唯一の原爆被害国としての記憶です。お互いに異なる歴史認識を持っているわけです。

 そこには日米両国民の歴史認識をめぐる溝があるのです。あまりここを突くと、サンガー記者の指摘するように、眠っていた「亡霊」を起こしてしまいます。オバマ大統領が「謝罪する」「謝罪しない」との論議に潜んでいたのはまさにこの歴史認識の問題でした。

—オバマ大統領の広島訪問を受けて、その答礼として「今度は安倍首相がアリゾナ記念館で追悼すべきだ」という議論が巻き起きないでしょうか。同記念館は、水没した戦艦アリゾナ真上に建てられています。

高濱 安倍首相が真珠湾を訪問するという話は、5月25日の日米首脳会談後の共同記者会見でも出ました。安倍首相はそうした計画はないと明言。同首相のこの発言を米メディアはやや批判的に取り上げました。今後、保守派を中心に同様の要求が出てくる可能性は十分ありそうです。

オバマ大統領は従来の歴史認識を堅持

—オバマ大統領は訪日する前、ベトナムを訪問しました。ベトナムは75年4月まで米国と戦争をしていた国です。ベトナムから見れば、米国はベトナムを「侵略した敵国」です。空爆で罪のないベトナム人を大量に殺したことについて、ベトナム国民の間で「米国は謝罪すべきだ」といった声は上がらなかったのでしょうか。

高濱 それがまったくなかったんですね。専門家によると、理由は三つあります。

 一つは、ベトナム人の平均年齢が若いこと。ベトナムの人口9342万人のうち60%以上は「戦争を知らない世代」です。従って、空爆もソンミ虐殺も遠い昔の話になってしまっている。そして若い世代は親米なのです。

 2番目の理由はベトナムの歴史にあります。外国勢力から徹底的に侵略されてきました。まず2000年前に中国に侵略された。1428年に中国から独立したかと思うと、今度はフランスに占領された。1954年まで続きました。

 ベトナム駐在経験のある米外交官は筆者にこう言っています。「米国は63年から75年までベトナムで戦闘活動に従事した。これはあくまでも南ベトナムを支援するためだった。内戦の助っ人だった。だからベトナム人には米国だけを悪者扱いする国民感情はないんだ。現にベトナム人の76%が米国に好感を持っているという世論調査がある」。

 3番目は、中国が脅威となっていること。南シナ海での海洋権益追求、軍事基地化はベトナムにとってはたいへんな脅威です。かって中国と戦争をしたベトナムが中国に対して抱く恐怖心は他国とは比較にならないほど強い。そこで頼りにしたいのが米国です。

 今回のオバマ訪越で実現した武器禁輸の全面解除は、ベトナムにとっては最重要案件でした。「謝罪」なんかよりも「武器」だったのです。

 米国にとっては「侵略に対する謝罪」などもっての外の話です。「共産勢力の拡大を阻止する」という大義名分のため南ベトナムを支援した――これが米国の歴史認識です。

 オバマ大統領にとって今回のベトナム、広島歴訪は、「謝罪することなく、従来の歴史認識を堅持する」の旅でした。

「謝罪なし」は日本から提案した?

—ところでオバマ大統領の「謝罪なき広島訪問」の舞台裏(ジョン・ケリー国務長官とキャロライン・ケネディ駐日大使による水面下での活動など)についていろいろ報道されています。米側から何かインサイドストーリーは流れていますか。

高濱 「謝罪なし」を最初に言い出したのは日本サイドだったことを仄めかす極秘外交文書の存在が明らかになっています。

 オバマ大統領は09年11月に訪日した際に、すでに広島訪問を考えていたのです。これはジョン・ルース駐日米大使(当時)がヒラリー・クリントン国務長官(当時)に宛てた機密公文(09年9月3日付け)で明らかになったものです。ウィキリークスが11年10月12日に暴露しました。

 この中でルース大使は09年8月28日、薮中三十二・外務事務次官(当時)との会談内容についてこう報告しています。「薮中事務次官は次のように述べた。オバマ大統領は日本国民の間で史上まれにみる人気を博しており、同大統領の11月の訪日に強い期待を抱いている」。

 「とくに日本の反核グループは、大統領が4月5日にプラハでした非核演説を踏まえ、大統領が広島に足を運ぶのではないかと推測している。日米両国政府はそのような世論の期待感を抑制すべきだ。オバマ大統領が原爆投下について謝罪するため広島訪問するというのは『non-starter』(考慮するに値しない)である」

 「適切なメッセージを携えた、派手さのないシンプルな広島訪問は確かに極めてシンボリックだが、今年11月の訪日に絡めるのは時期尚早である」

 オバマ大統領が広島を訪問するという考えをルース大使、薮中次官のどちらが言い出したのか、この公文からはわかりません。ただし、オバマ大統領が広島を訪問する可能性について両国政府が極秘裏に話し合っていたことは分かります。また日本側から「謝罪抜き」を提案していた事実も浮かび上がってきます。

—今回の広島訪問は次期大統領選に何らかのインパクトを与えそうですか。

高濱 トランプ氏は28日の選挙演説でこう述べています。「オバマ大統領は広島を訪問したが、謝罪さえしなければ問題にはしない。誰が気にするか、だれもしないだろう」。「黙認」というよりも「無視」といった感じです。ただツィッターでこう書いています。「オバマ大統領は日本滞在中に真珠湾奇襲について話したのかね。数千人の米国人が命を落としてるんぞ」。

 クリントン氏のほうは28日午後9時現在(東部時間)コメントしていません。

 予備選の最終段階に入り、トランプ氏もクリントン氏もそれどころではないのでしょう。また、国論を二分する「原爆投下」の是非論など、どちらも取り上げたくないでしょう。是非論を支持する人は民主党と共和党のどちらの支持層にもクロスオーバーして存在しています。1995年のギャラップ調査によると、「米大統領は原爆投下について謝罪すべきでない」と答えた共和党支持者は74%、民主党支持者は52%でした。

広島で謝らず、死体遺棄で謝罪

 トランプ氏は核使用論を展開していますからオバマ大統領の「核廃絶」宣言には真っ向から反対でしょう。

—オバマ大統領が広島を訪問する直前に沖縄で、米軍関係者が日本人女性の死体を遺棄する事件(いずれ殺人事件になると思いますが)が起こりました。当初危惧された広島訪問への悪影響はなかったようです。米国はこの事件をどう見ていますか。

高濱 確かにバッドタイミングでしたが、広島訪問そのものに悪影響は出ませんでした。

 ただ7月には沖縄で大々的な県民抗議集会が予定されているようです。今回の事件が普天間基地移設問題にどう影響を及ぼすか。1995年に米兵3人が少女を暴行した事件の悪夢を彷彿させます。成り行きを注視しています。

 オバマ大統領は日米首脳会談の席上、この事件について「謝罪」しました。これを受けて米メディアの中には、「広島では謝罪しないのに、元海兵隊員の殺人事件(米メディアは死体遺棄とは言わずに殺人と決めつけています)で謝罪した」と皮肉っぽく報道していました。

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