5/13日経ビジネスオンライン 北村豊『21歳の辞世ブログが暴いた中国医療の暗部 がん発症の大学生、ニセ病院とウソ広告に翻弄された悲劇』について

麗澤大学の図書館で、台湾の5/10「中国時報」を読みました。WHA(世界衛生大会)のオブザーバー参加についてWHO(世界保健機構)は台湾が「一つの中国の原則」を認めないとダメと言ってきているとのこと。台湾民進党は「オブ参加と一つの中国は無関係、健康は人類の普遍的価値だから条件を付けるのはおかしい」と言ってるようです。何せ国連事務総長が韓国の潘基文、WHOの事務局長はSARSの時の対応がまずかった香港人のマーガレット・チャンですから、中国人の圧力に弱いので、5/20蔡英文総統就任まで圧力をかけ続けるでしょう。本記事によれば招待状は届いたが、参加できるパスワードが書いていないという姑息なことをやってるようです。如何に国際組織が腐っているかです。5/20総統就任式での発言によってパスワードを出すか出さないか決めるのかもしれません。

China Daily20160510

蔡英文次期総統は、日本の潜水艦を米国経由で購入し、安保面でも米日と連携していく考えとメルマガかFacebookで読みました。ただ、軍は国民党支持が多いのと、将来経済がうまく行かなくなれば台湾民進党から国民党に政権が変わる可能性もありますので、良く検討した方が良いでしょう。今、豪のターンブル首相がパナマ文書で名前が挙がっているのは、彼は中国に近いので牽制の意味もあったのでは。日本の潜水艦購入を米国は画策していたのに、米日豪一体で中国へ対抗しようとする目論見が崩れたためでしょう。でなければもっと早く名前が出ていたはずです。

本記事は如何に中国社会が腐敗しているかという事です。賄賂や不正を許容する社会、力を信奉する社会ですから、弱者に対する目配りはありません。民主主義国家であれば、選挙でダメな政党は政権交代させられますが、共産主義国では望むべくもありません。本来このケースのような場合には、国民が怒って、革命を起こすべきでしょう。民衆自体不正に狎れ、また自らも不正をしているケースが多々あるので怒りのエネルギーが出て来ないのでしょう。何せ「騙す方が賢く、騙される方が馬鹿」という基本的価値観の国柄ですから。

中国在勤時代には、怪しげな診療所のチラシが電柱や壁に貼っていました。町中で堂々と営業していました。とても怖くて診て貰いたいとは思えないような所でしたが。それでも病院へ行くと保険があっても、当時2000年頃は20元くらいの給付しかないので、金持ちしかかかれませんでした。病気になったら、自分で治すしかない社会でした。

記事

中国の医療は“看病難、看病貴(診療を受けるのは難しく、受けられても医療費が高い)”と言われて久しく、ただでさえも悪評ふんぷんだが、その医療体制を根底から揺り動かす驚くべき事実が明らかになった。それはがんで死亡した21歳の大学生が死の直前にスマホのメッセージアプリ“微信(WeChat)”に書き込んだ、病魔と闘う経緯を記した文章が引き金となったものだった。

がんとの戦い、武警第二医院に託す

 “魏則西”は陝西省“西安市”にある“西安電子科技大学”の“計算機学院(コンピューター学部)”の学生であった。彼は大学2年生の時に行われた“体格検査(健康診断)”で異常が発見され、精密検査を受けた結果、がんの一種である滑膜肉腫の晩期であることが判明した。滑膜肉腫は悪性軟部腫瘍であり、新たな技術開発や臨床実験中の技術を除いて有効な治療方法が発見されていない難病である。将来の希望に燃えていた魏則西にとって、これは正に青天の霹靂であったが、彼の両親にとっても寝耳に水の出来事だった。大事な1人息子を凶悪な病魔に侵されて、両親は悲しみに打ちひしがれた。

 晩期であっても治療方法は必ずあるはずだ。そう考えた両親は魏則西を連れて北京、上海、広州など各地の医院を訪ね歩いたが、どの医院も治癒の可能性に否定的だった。最早この病気から逃れる術はないのか。思いあぐねた魏則西はその治療方法についてインターネットの活用を思い付き、2014年3月30日に中国最大の検索エンジン「百度(バイドゥ)」で滑膜肉腫の治療方法を検索してみた。その検索結果の第1位にランクされたのは「武装警察北京総隊第二医院」(以下「武警第二院」)の生物免疫療法だった。この旨を両親に告げると、両親は即座に武警第二院へ電話を入れて面談の約束を取り付けると、大急ぎで北京へ向かった。

 北京に到着した両親は、武警第二院で「“生物診療中心(センター)”」主任医師の“李志亮”と面談した。両親は息子が滑膜肉腫の晩期であることを告げて、何としても生物免疫療法で治癒して欲しいと述べると、李志亮は両親に次のように語った。すなわち、生物免疫療法は米国のスタンフォード大学が研究開発したもので、滑膜肉腫に対する有効確率は80~90%に達しているので、息子さんの命を20年間保証することは何も問題がない。

 これを聞いて安堵した両親が李志亮について調べてみると、李志亮は“中央電視台(中央テレビ)”の番組で何度も紹介されているし、武警第二院は“三甲医院(最上ランクの医院)”であった。さらに、武警第二院の生物免疫療法は百度の検索結果で第1位にランクされていたこともあり、信頼に足ると判断できたことから、両親は魏則西の治療を武警第二医院に委ねることを決断したのだった。

2014年9月から2015年12月末まで、魏則西は武警第二院で都合4回にわたる生物免疫療法の治療を受けた。この間の費用は20数万元(約400万円)に達したが、両親は家中のカネをかき集めても到底足りず、親戚友人に借金して賄った。しかし、魏則西の病状は一向に改善しないばかりか、がんは肺に転移する始末で、医師から余命2か月と宣告されるに至った。

最大の悪は希望を餌に苦しむ人を騙すこと

 生物免疫療法を4回も実施したのに病状は悪化するだけで、何らの改善も見られないのはなぜか。疑問を感じた魏則西が知り合いの米国人留学生経由で調査を行った結果、生物免疫療法は米国では20年前に淘汰された技術であり、米国内の医院では全く使われていないことが判明した。一方、父親が主任医師の李志亮に「息子の命を20年間保証すると言ったのに、余命2か月とはどういうことだ」と詰め寄ると、李志亮は前言を翻し、今までにどの患者にも命の保証などしたことがないと述べ、生物免疫療法をさらに続ければ効果がでると言う始末だった。李志亮が魏則西と両親を騙し続けていたことは明白だった。

 2016年4月12日、武警第二院の病室で魏則西は21歳の若き命を閉じた。魏則西は死の直前、スマホの“微信”へ「あなたは人間性で最大の悪は何だと思う」と題する文章を書き込み、病魔と闘う経緯を記していた。魏則西はその答が何かを明確に述べてはいなかったが、彼の文章を読んだ人々は、それが「人間性で最大の悪は希望を餌に苦しむ人を騙すこと」なのだと理解した。魏則西の死によって辞世となった彼の文章は、人々の共感を呼んで広く知られることとなり、中国社会に大きな波紋を投げかけた。彼の文章に突き動かされた人々やメディアは、中国の医療体制を根底から揺り動かす一大事を暴き出したのである。メディアが報じた内容を取りまとめると、その概要は以下の通り。

【1】武警第二院が“武装警察”系列というのは名ばかりで、経営の実態は“莆田(ほでん)系”と呼ばれる詐欺的医療集団が請負っていた。彼らの目的は金儲けだけで、病気の治癒などは最初からまじめに考えていなかった。莆田系とは、福建省“莆田市東庄鎮”出身の医療従事者を言い、その起源は文化大革命期間中に毛沢東によって生み出された“赤脚医生(はだしの医者)”に遡る。彼らは正式な医学教育を受けていない農村医療人員で、農業に従事しながら初歩的な予防・治療活動を行っていたが、文化大革命終結後は全国各地をわたり歩いて無免許で違法かつ詐欺的な医療行為を行った。

【2】彼らは性病、鼻炎、腋臭(わきが)、リューマチ、皮膚病など、命に関わることのない病気を治療する旨の広告を電柱に張って客を集め、効果が期待できない自家製の軟膏、膏薬、丸薬などを原価の何倍、時には何十倍の価格で売り付けて大儲けした。客の患者たちが全く効果のない薬に疑問を抱く頃には、彼らはとんずらして他地域へ移動しているという筋書きであった。どだい彼らには医学や薬学の基礎知識すらなく、有るのは口八丁で患者を騙すペテンの技術だけだった。何はともあれ、偽医者である彼らは全国をわたり歩いて患者を騙してカネを稼ぐことで巨万の富を築き上げた。

【3】2002年頃から、彼らはその財力を背景に、各地の二流医院や“人民解放軍”や武装警察などの系列医院の「科」や「室」の経営を請け負うことを始め、徐々に系列医院や民営医院そのものの経営を請け負うようになり、その後は民営医院を買収して勢力を広げていった。2013年の政府統計によれば、全国の医院総数は2万4700カ所で、そのうち民営医院は1万1300カ所だが、8000か所(70%)以上の民営医院は莆田系と考えられている。莆田系の民営医院では“陳”、“詹(せん)”、“林”、“黄”の4大家族グループが有名で、彼らが大きな勢力を占めている。陳家グループは全国の“華夏”、“華康”、“華東”を頭に冠した医院、詹家グループは全国の“瑪麗医院”と“瑪麗亜婦産医院”、林家グループは全国の“博愛”、“仁愛”、“曙光”を頭に冠した医院、黄家グループは各地の“五洲男子医院”および“聖保羅(セントポール)女子医院”などをそれぞれ経営している。

ニセ医者集団が病院をグループ化

【4】彼ら4大家族グループの創始者も“游医”と呼ばれる各地を転々とする無資格の医師であったが、偽薬を販売することで大金持ちとなり、今ではこれら4大家族グループに属する人々の中には個人資産が億元(約17億円)を超える人が数百人いると言われている。一方、莆田グループ発祥の地である福建省莆田市東庄鎮では、全人口11万人のうちの7万人が医院だけでなく、薬品や医療器械などの医療産業に従事している。彼らは全国の1万社以上の医薬関連企業に身を置いており、その年間営業額は3200億元(約5兆4400億円)に達しているが、この規模は寧夏回族自治区、青海省、チベット自治区の各域内総生産(GRP)を上回っている。ちなみに、全国31省・自治区・直轄市のGRP(2015年)は、29位の寧夏回族自治区が推計2900億元、30位の青海省が2417億元、31位のチベット自治区が1026億元。

【5】それでは、武警第二院で魏則西に生物免疫療法による治療を行った主任医師の李志亮は本当に莆田系なのか。李志亮は魏則西の死亡後に武警第二院を引退した模様だが、ネット上に残る李志亮に関する紹介文には次のように記載されている。

 李志亮:“中国腫瘤(=腫瘍)生物治療協会”常務副会長、“南京明基医院腫瘤精準医院中心”主任医師。1977年に“江南(長江下流南岸)”の有名校、“東南大学医学院”を卒業。40年近く一貫して悪性腫瘍の臨床治療と科学研究に従事し、国家や地方政府の課題研究に数多く参加し、科学研究論文を30本以上発表している。現在、武警第二院腫瘤生物診療中心主任医師。

メディアの記者がこの内容を調査した結果は以下の通り。 (1)東南大学医学院の学籍簿には李志亮という名の卒業生は見当たらない。 (2)中国腫瘤生物治療協会という組織は存在しない。 (3)悪性腫瘍の専門家に問い合わせても、誰一人として李志亮という名を知る者はいない。 (4)紹介文には李志亮が発表した論文30本以上の明細が列記されていたが、それら全ては他人が発表した論文で、李志亮本人の論文は見つからなかった。

 これ以外にも李志亮が中央テレビで紹介された事実はなく、カネを出して李志亮が映し出される広告を買ったというのが真相だった。

かつては電柱、今は百度

【6】要するに、李志亮という人物は医学の知識も医師の資格も持たないインチキ医師であることが明白となったのである。そのインチキ医師が魏則西に施したという生物免疫療法による治療とは何だったのか。恐らく生物免疫療法と称して治療の演技を行っていただけで、魏則西の病状を放置したものと思われる。李志亮にとって、魏則西は生物免疫療法という疑似餌(ルアー)に飛びついた魚で、釣り上げた後は好きに料理してカネを儲ければ良かったのだろう。それこそが莆田系のインチキ医師の本分であり、魏則西の場合は見事にそれが成功した例であったのである。

【7】魏則西が生物免疫療法を見つけ出したのは、検索エンジン「百度」で滑膜肉腫の治療方法を検索した結果であり、武警第二院の生物免疫療法は検索結果の第1位にランクされていた。魏則西がそれを信頼できるものと考えて両親に伝えたことが、全ての始まりだった。李志亮によるルアーフィッシングに手を貸し、検索結果の第1位に配置することにより武警第二院の生物免疫療法に権威と信頼性を与えたのが百度だった。

【8】かつては電柱に広告を張って客(患者)を呼び込むことで偽薬を販売した莆田系だが、彼らの営業戦略は依然として宣伝広告である。時代の変遷は彼らの広告手段を電柱からインターネットやテレビへと変え、今や彼らの広告媒体の主体は中国最大の検索エンジン「百度」となり、百度にカネをつぎ込むことで患者の獲得を図っている。それは、百度が広告枠の配置順位をオークションにより決定しており、それが推薦可能な医院の検索結果にも反映されることになっていることに起因している。財力に勝る莆田系医院は常に広告枠の上位を勝ち取り、推薦可能な医院の検索結果でも上位に配置される。

【9】最も重要な事は、百度が広告主の資格審査を従来から全く行わぬまま、オークションで高価格を提示する莆田系医院を優遇し、彼らのインチキ商売に手を貸し、彼らを野放しにしたことだった。百度と莆田系医院の密接な関係は、2003年に百度が広告枠のオークション制度を開始した時から始まり、すでに13年が経過している。百度はカネが儲かるという理由だけで、広告主の資格審査を行わぬまま、莆田系医院に便宜を図ってきたことは明白だった。その結果が百度の検索結果を信じた魏則西を死に追いやったといっても過言ではない。

【10】こうした背景を知った世論は激高し、百度の責任追及を求める声が沸騰した。世論の圧力を受けた百度は医院広告の担当責任者を解雇することで事件の沈静化を図ったが、世論はその姑息な対応に怒りをさらに強めた。世論に押された中国政府および北京市の関係部門は5月2日に調査チームを組織し、“魏則西事件”に絡んで百度の広告枠オークション制度の調査を行った。5月9日、調査チームは調査結果を発表し、百度に対して医療広告の全面的見直しと広告枠オークション制度の廃止を含む業務改善を勧告した。一方、同調査チームは百度と並行して武警第二院の調査も実施し、武警第二院は営業停止を命じられた。

無法の放置、撲滅なるか

 『三国志・蜀志・諸葛亮伝』に「死せる孔明生ける仲達を走らす」という言葉がある。これは偉大な諸葛孔明は死んでも、敵の仲達を恐れさせて敗走させたということで、「死してもなお影響力のあること」を意味する。魏則西は諸葛孔明のような偉人ではないが、死を前にして“微信”に書き込んだ文章が死後に注目されたことで、百度の医院広告の不条理や莆田系医院によるインチキ治療が暴き出される切っ掛けとなった。

 百度は調査チームの勧告に従って業務改善を行うだろうが、問題は民営医院の70%以上を占め、一部の公営医院にも進出している莆田系をどうするかであろう。今回の事件により莆田系医院が百度の検索を広告媒体とすることには歯止めがかかるだろうが、財力がある莆田系の人々がただ手をこまねいているとは思えない。中国政府が徹底的に無資格医を取締り、莆田系を壊滅させない限り、魏則西に続く新たな犠牲者が出る可能性は高い。また、死に至っていなくとも莆田系医院およびその医師によって騙された経験を持つ国民は膨大な数に上るはずである。莆田系の撲滅はひとえに中国政府の決断にかかっている。

良ければ下にあります

を応援クリックよろしくお願いします。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください