『トランプとプーチンが実は握っている可能性 トランプ大統領は貿易赤字と南シナ海を取引しかねない』(4/10日経ビジネスオンライン 森永輔)、『トランプ大統領の「大芝居」に習主席は動じず 安全保障の不一致、経済協力で穴埋めどこまで?』(4/10日経ビジネスオンライン 鈴木貴元)について

国際政治の裏側では何が起きているかは分かりません。シリアの毒ガスもアサドがやったという説とCIAの謀略という説の2つがあります。しかし、何れの側であっても人をそんなに簡単に殺していいのかという気になります。 日本のお花畑脳の人とは考え方は違いますが、逆にそういう弱肉強食の世界でどう生き延びるのかを真剣に考えませんと。無抵抗主義では国民の生命財産は守れません。

http://saigaijyouhou.com/blog-entry-16263.html

http://www.chokugen.com/opinion/backnumber/h29/jiji170410_1157.html

また、クシュナーとイバンカの娘が習近平を前にして歌った歌は「茉莉花」でチュニジアのジャスミン革命を象徴したものというのが林建良氏の解説です。分かっていて歌わせたというのであれば凄いものです。Facebookからの引用となります。

<【茉莉花(ジャスミン)】トランプの孫娘が歌った中国の民謡

米中会談の前にトランプの孫娘アラベラ・ローズちゃんが中国の民謡を歌って習近平をもてなした。その民謡とは「茉莉花」(ジャスミン)だった。

そう、シリア内戦のきかっけとなる「ジャスミン革命」のあのジャスミンである。中国はジャスミン革命のときに国内に波及することを恐れてこの歌を一時的に禁止した。

ニコニコしながらかわいいアラベラ・ローズちゃんの「茉莉花」を聞いている習近平は、その直後にアメリカによるシリアの攻撃が発動されることを知る由もなかった。

「好一朶美麗的茉莉花、好一朶美麗的茉莉花」(こんなに綺麗なジャスミン、こんなに綺麗なジャスミン)アラベラ・ローズちゃんが歌っているこの民謡は、米中外交の一ページになるに違いない。

『台湾の声』 http://www.emaga.com/info/3407.html から転載>(以上)

また、台湾は今回のトランプ・習会談を満足できるものになるだろうと事前に予測していたとのこと。どう考えても、中国に分があったとは思えません。貿易でも北朝鮮でも重い宿題を課せられたという所でしょう。川上氏の聞いている所では、北に止まらず中国も叩き潰すと考えている軍人がいるとのこと。当然でしょう。軍拡を続ける中国をこのまま放置すれば牙をむくのは必定。時間の利益を与えずに潰すべきです。

<台灣對川習會處理台灣問題方式滿意

2017年4月10日 | Filed under: 時事動向 | 來源: 阿波羅網

美國總統川普和中共國家主席習近平在佛羅里達州棕櫚灘的海湖莊園(2017年4月7日)

台灣星期天表示對川普總統在首次美中首腦會晤處理台灣問題方式感到滿意,對美國秉持在台美關係上“零意外”的原則台灣表示歡迎。

台灣外交部說,美國白宮及國務院資深官員在川習會上三次在相關說明會中表示,美方將恪守基於美中三公報及“台灣關係法”的“一中政策”。台灣外交部還說,在川普和習近平會晤過程中台灣與美方維持密切聯繫。

在上星期剛剛結束的美國總統川普與中共國家主席習近平的首次面對面會晤後,中共外交部長王毅表示,中國在會晤中重申了對台灣、涉藏等問題的原則立場。觀察人士注意到,台灣問題並沒有成為這次川習會的重點議題。中共官方媒體星期天發布的介紹習近平訪美成果中也隻字未提台灣問題。

在這次會晤前,曾有分析人士擔心,習近平會向川普施加壓力,迫使他在台灣問題上作出讓步,擔心台灣會成為美中兩個大國博弈之間的棋子。

來源:美國之音

台湾はトランプ・習会談の台湾問題の扱いに満足

2017年4月10日| Filed under: 時事動向 | 由来: アポロ・ネット

アメリカ大統領のトランプと中国共産党国家主席習近平とはフロリダ州シュロ浜の別荘で会談 (2017年4月7日)。

台湾は日曜、トランプ大統領の初回の米中首脳会談での台湾問題の処理方式に満足し、米国が台米関係上「意外性ゼロ」の原則を保持していることに歓迎を示した。

台湾外交部は、米国のホワイトハウスと国務省の上級役人は首脳会談で3度も「米国は米中の3つのコミュニケと台湾関係法の一中政策を遵守する」と説明したと聞いたとのこと。台湾外交部は更に「首脳会談中に台湾と米国は密接に連絡取り合っている」と説明したとのこと。

先週には終ったばかりの首脳会談について、中国共産党外交部長の王毅は「中国は会議の中で再三台湾やチベットなどの問題についての原則的立場を説明した」と述べた。筆者は、今回の会談の中で台湾問題は重点議題にならなかったと思う。中国共産党政府筋メディアは日曜の発表で、習近平の訪米の成果の中に台湾問題はひと言も触れていなかった。

今回の会談の前に、分析者は「習近平がトランプに圧力をかけて、台湾問題で米国に譲歩させるようにし、台湾が米中の2国間のバクチの駒になること」を心配していたが。

由来:ボイスオブアメリカ>(以上)

森記事

クルーズミサイルを発射する米駆逐艦ポーター(提供:Mass Communication Specialist 3rd Class Ford Williams/U.S. Navy/AP/アフロ)

トランプ政権が4月6日、シリア政府軍の空軍基地をミサイル攻撃した。米国はシリア政府軍が同4日に化学兵器を使用したと非難。「アサド政権が再び化学兵器を使用するのを防ぐため」攻撃に踏み切ったとする。同基地は化学兵器攻撃の拠点とされる。

アサド政権を支援するロシアとの関係悪化を懸念する声が高まっている。しかし、米国の安全保障政策に詳しい拓殖大学の川上高司教授は、ロシアとの関係改善を進める交渉を促すため今回のミサイル攻撃に踏みきった可能性があると指摘する。

(聞き手 森 永輔)


 

川上 高司(かわかみ・たかし)氏 拓殖大学教授 1955年熊本県生まれ。大阪大学博士(国際公共政策)。フレッチャースクール外交政策研究所研究員、世界平和研究所研究員、防衛庁防衛研究所主任研究官、北陸大学法学部教授などを経て現職。この間、ジョージタウン大学大学院留学。(写真:大槻純一)

川上高司(以下、川上):何と言っても驚きました。

化学兵器を使用したのがシリア政府軍かどうかはまだ明らかになっていません。アサド政権は否定しています。そうであるにもかかわらず、トランプ大統領はすぐにシリア政府の仕業と決めつけました。急ぎすぎの感があるのは否めません。

仮に本当にアサド政権が行なったものだったとして、トランプ大統領はオバマ前大統領との違いを米国民に印象づけたかったのでしょうか。オバマ氏は2013年、シリア政府軍が化学兵器を使用したことが明らかになっても、公言していた空爆を実行しませんでした。

今回のミサイル攻撃によって、アサド政権を支援しているロシアとの関係が悪化することは避けられません。オバマ氏との違いを印象づけられたとしても、とてもペイするとは思えません。

まずはガツンと一発かます

川上:では、なぜトランプ大統領はミサイル攻撃に踏み切ったのか。

私は二つの可能性があると考えています。一つは、今後のロシアとの交渉と取引(ディール)を有利にまとめるために、ロシアが最も嫌がることをやったという可能性です。

中国とのやりとりを思い出してください。トランプ大統領は就任前の16年12月、台湾の蔡英文総統と電話協議。続いて17年1月、「一つの中国の原則(中国と台湾は不可分)にこだわらない」と発言しました。これらは、これまでの米中関係の根幹を崩すもので、習近平国家主席に最も妥協できない事柄です。

—相手の頭が一瞬真っ白になるような“球”を投げつけて、ひるませておいて交渉を有利に運ぶ。

川上:その通りです。同様に、今後開催されるであろう米ロ首脳会談を念頭において、プーチン大統領が最も嫌がることを実行した可能性があると考えられます。

—トランプ大統領は、プーチン大統領との間でどのようなディールをまとめたいのでしょう。

川上:中東と欧州におけるパワーバランスを米ロが拮抗する状態に戻すことです。

オバマ政権の8年間で、米国は中東におけるプレゼンスを大きく落としました。いまこの地域を力を振るっているのはロシアとイランです。この傾いたバランスを元に戻したい。

加えて、過激組織「イスラム国(IS)」との戦いにおけるプレゼンスを高めることと、ロシアと情報共有などの面で共闘することをロシアに認めさせたいところでしょう。こうすることで、ロシアとのバランスを元に戻すと共に、イランの影響力を抑えることができます。

対IS戦において、米国には三つの選択肢があると思います。一つは現状維持、すなわち何もしないことです。ドローン(無人機)を使った空爆を繰り返していますが、これは何もしていないのと同じです。

シリアのアサド大統領(写真:SANA/ロイター/アフロ)

2つ目のオプションは陸上部隊を投入し、戦闘に全面的に参加すること。これは米国の国内世論が許さないでしょう。すでに厭戦気分が蔓延していますから。

最も可能性が高いのは3つ目。地上戦を戦う特殊部隊を投入し、全面参加することなく米軍のプレゼンスを高めることです。このオプションはイスラエルも強く推すでしょう。トランプ大統領の娘婿でユダヤ教徒のジャレッド・クシュナー氏がこの案をプッシュしているとみられます。

—欧州でのパワーバランスはどうなりますか。

川上:欧州では、フランス大統領選でポピュリストのマリーン・ルペン氏(極右政党「国民戦線」の党首)が世論調査で高い支持率を維持しています。ほかの国でもポピュリスト政党が勢いを増しており、米国にとって面白くない状況にある。このバランスを元に戻したいという意向があると思います。

トランプとプーチンが談合?

川上:第2の可能性は、トランプ政権とプーチン政権が水面下で握っている、つまり話をつけている可能性です。国連の安全保障理事会で米ロが激しくやり合っています。ロシアがミサイル攻撃を「国際法違反」と責めれば、米国は「ロシアが味方となっているから、アサドは悪事をしても罪に問われないと考えてきた」と逆襲する。しかし、両者が“歌舞伎”を演じているかもしれない。

言葉や文字にしなくても、お互いにシグナルを送り合い、理解し合うことはできます。

トランプ政権は、トマホーク巡航ミサイルを59発も発射したにもかかわらず、23発しか命中していません。空軍基地の滑走路はまだ使える状態といいます。わざとはずしたとしか思えないような精度の低さです。さらに、ミサイル攻撃を1回にとどめるとの意向も明らかにしています。

安全保障担当の大統領補佐官を解任されたマイケル・フリン氏が依然として、トランプ政権とプーチン政権をバックチャネルでつないでいるという話が耳に入ってきます。

ロシア側も同様に「国際法違反」「侵略行為」と批判してはいますが、本気度が高いようには見えません。

トランプ大統領が就任して以降、政権幹部が選挙期間中からのロシアと接触していたことが次々に明らかになりました。フリン氏はその一人。司法のトップであるジェフ・セッションズ長官も選挙期間中に駐米ロシア大使と面会していたことも問題視されています。これらの点を議会で民主党から追及されて辛い状況にある。国民もトランプ政権に対する懸念を高めている。トランプ大統領としては、かねて主張してきたロシアとの関係強化がなかなかできない状態が続いています。

国民を納得させロシアへの接近を実現するためには、言葉で何を言っても不十分。そこで、ミサイル攻撃という行動を起こすことで疑念の払拭を図ろうとした。

—このシナリオの場合、トランプ政権とロシアとどのようなディールをするのですか。

川上:米国が望むのは先ほどと同様に、パワーバランスの正常化です。一方のロシアは制裁の解除、もしくは、米国がロシア産のガスを買う大型取引などを望むでしょう。

—いずれのシナリオだったにせよ、ミサイル攻撃されたシリアはなんとも哀れですね。

川上:そうですね。国際政治は残酷なものです。

北朝鮮の核開発をやめさせなければ先制攻撃も…

(写真:大槻純一)

—今回のミサイル攻撃は米中首脳会談のさなかに実行されました。これはどんな意味を持つのでしょう。

川上:とても偶然とは思えません。北朝鮮を巡って、米国が中国にメッセージを送ったのでしょう。「北朝鮮が進める核開発を抑えるよう真剣に取り組め。そうでないと北朝鮮の核施設を先制攻撃することも辞さない」。米中会談は表面的には良好な関係を強調しましたが、カモフラージュである可能性が高いと思います。

先制攻撃では、約700あるとされる米国の攻撃ターゲット――北朝鮮の核施設を含むWMD(大量破壊兵器)――のすべてを破壊する必要はありません。国防長官(当時)だったロバート・マクナマラが米ソ冷戦時代に行なった試算によると、全体の7割を破壊すれば実質的に機能停止に追い込むことができるそうです。金正恩委員長を探し出して殺害しなくても、政権はがたがたになるでしょう。

そして、攻撃した後、米国はすぐに撤退して後を中国に託す。

—え、北朝鮮に新たな親中政権が出来上がるのを容認するということですか。つまり、金王朝ではなく、核兵器を保有しないのであれば、親中政権でもかまわない、と。

川上:そういうことです。

ただし、このようなディールは今の習近平政権にとって好ましいことではありません。彼らが望むのは現状維持です。少なくとも、今秋に控える共産党大会が終わるまでは、余計なディールはしたくない。

仮に米国が北朝鮮の核施設を先制攻撃して、金正恩政権を倒した場合、最も大変になるのは日本です。米国が、北朝鮮が保有する核兵器の7割を破壊したとしても3割は残ります。それが日本にある米軍基地に向かって発射されることを覚悟しておく必要がある。

トランプ政権は軍人主導になった

さらに朝鮮半島の北半分に核を持たない親中政権ができるとは限りません。核を保有する親中政権が成立する可能性だって皆無ではないのです。親中か親米か、核保有か核なしか、選択肢は4通りあるわけですから。

—それにしても不思議なのは、北朝鮮の核問題が突然、脚光を浴び始めたことです。オバマ政権の時代には、戦略的忍耐という政策の下で、北朝鮮を無視してきました。

川上:それはトランプ政権が軍人が主導する政権になったからです。オバマ政権が北朝鮮に対して何もしないことに軍は非常に怒っていました。

—4月5日に、トランプ大統領はスティーブン・バノン首席戦略官・上級顧問を米国家安全保障会議(NSC)のメンバーから外しました。それと関係があるのでしょうか。

川上:まさにそれです。バノン氏が抜け、国家安全保障担当の大統領補佐官であるハーバート・マクマスター氏とジェームズ・マティス国防長官という二人の軍人が仕切る体制に変わりました。

バノン氏が抜けたことで、軍人コンビに加えて、クシュナー氏の力が増しています。クシュナーを軍が取り込んだという情報もあります。先ほど、中東におけるイランの力を排除する可能性を指摘した背景には、同氏の存在があります。

習近平政権は、このクシュナー氏にだいぶ接近しているようですね。同氏をして、北朝鮮に集中しそうな米軍のパワーを中東に振り向けさせることに成功したという見方もあります。

貿易赤字を解消するなら南シナ海から退く…

—米国が北朝鮮に先制攻撃を仕掛ける可能性はどれくらいあるでしょう。

川上:私はかなり高いとみています。

このまま放置すれば、米本土を射程に収める大陸間弾道弾(ICBM)を北朝鮮が完成させるのは時間の問題です。そうなってからでは遅い。今なら、その目的を挫くことができると考えているのです。

—そうすると、シリアと北朝鮮と同時に対峙することになりますね。

川上:トランプ大統領ならあり得るでしょう。

それどころか、「米軍はこれを機に中国海軍まで叩きたいと考えている」と指摘する米国の専門家もいます。

—中国と戦うのですか。

川上:そうです。北朝鮮の核と同様に、中国も航空母艦をはじめとする海軍力をどんどん強めています。こちらも取り返しのつかない規模に成長する前に、今のうちに叩きたいと考えているのです。

私は米中のディールは北朝鮮の核にとどまらないと見ています。トランプ大統領は対中貿易赤字の解消と、南シナ海や東シナ海における安全保障との取引が進行中だと見ています。

—安全保障と貿易を取引材料にするのですか?

 2月に行なわれた日米首脳会談について、いくつかのメディアは、「安全保障と経済をバーターにしない。つまり、米国が日本を守る代わりに、日本は対米貿易赤字を解消する、といったディールを行なわない」との言質をトランプ大統領から取ったので会談は成功と評価していました。

川上:私は異なる見方をしています。トランプ大統領が重視するのは、一にも二にも貿易赤字の解消です。そのおよそ半分を中国が占める。中国がトランプ政権の要求を受け入れて赤字解消に動くならば、米国が南シナ海への介入をやめることもあり得るでしょう。南シナ海の入り口を扼す台湾への肩入れもやめる。ステルス性能を持つ第5世代戦闘機F-35を台湾に売ることもないでしょう

東シナ海も例外ではありません。米国は、尖閣諸島の防衛に関与しない。中国公船が今以上に多く、高頻度で押しかけるようになりかねません。

—貿易赤字の解消と、南シナ海や東シナ海における安全保障の取引は、日本人の目から見ると、天秤が中国有利に大きく傾いているように見えます。

川上:そうかもしれません。しかし、トランプ大統領には釣り合っているように見えると思います。

—南シナ海や東シナ海が中国の勢力圏に入れば、米国のシーレーンの安全を脅かすことにもなりませんか。

川上:米軍はそう見ていると思います。なので、トランプ大統領がこのようなディールをまとめる前に、中国海軍と一戦交えようと主張する勢力があります。

—え、戦争によって事態の解決を図ろうというのですか。

川上:先ほどお話しした北朝鮮に対する先制攻撃と同じ考え方です。勝利する確率が高い今のうちに中国海軍の力を削いでおく。

—どっちに転んでも日本には大きな影響がありそうです。

川上:はい。日本は米国が提供する拡大抑止への依存度を減らす道を考える時期に来ているのかもしれません。

鈴木記事

4月6、7日の米中首脳会談では、開催前からトランプ米大統領は貿易赤字問題や北朝鮮問題などを通じて、習近平主席に対して様々な「大芝居」を打ってきた。だが、習主席は大きな土産を持参することはなかった。その背景を、丸紅中国・経済調査チーム総監の鈴木貴元氏が解説する。

(「トランプウオッチ」でトランプ政権関連の情報を随時更新中)

トランプ政権は、習近平主席に対して様々な「大芝居」を打ってきたが、習主席は動じなかった (写真:AP/アフロ)

米国東部時間4月6日午後8時半頃、フロリダのパーム・スプリングス「マール・ア・ラーゴ」でトランプ大統領主催のディナーが終わったとき、トランプ大統領は中国の習近平主席に、米国のトマホーク第一弾がシリアに着弾したことを告げた。

発射命令がエアフォース・ワンで下されたのは、着弾から遡ること4時間半前の午後4時。機中、記者団には、米中首脳会談では北朝鮮情勢と巨額の対中貿易赤字への対応を迫ると述べていたが、その時、実はトランプ大統領はサプライズを抱えていたのだ。

そして、1時間後の午後5時、トランプ大統領は笑顔と握手で、そして娘イバンカ氏の娘・息子による中国の民謡「茉莉花」の歌唱と「三字经(唐詩)」の朗読で習主席夫妻を迎えた。ディナー中に、「中国から全く何も得ていない」と不満を述べつつも、習主席とは「意気投合し、良好な友好関係を築いた」と語っていた。

習近平主席には「お土産」を持参するメリットなかった

このような経過を経て、シリア攻撃の話を繰り出したわけであるから、トランプ大統領はかなりの芝居を打っていたように思える。4月2日のフィナンシャル・タイムズのインタビューで「中国が解決しなければ、我々がする」と、北朝鮮情勢について中国に圧力をかけていたこともあり、習近平主席としては、米国の武力行使への本気度とともに、ある種の戸惑いや不信感を感じたかもしれない。

一方、トランプ政権は上層部もスタッフもまだ指名が終わっておらず、外交・通商政策の方針が依然として固まっていない、また、関税政策や為替操作国などの対中対抗策をはじめ、トランプ大統領が選挙時に掲げていた保護主義的・孤立主義的な政策は実現する可能性が低下しているため、習近平主席はそもそも大きなお土産を持ってくる必要も、中国の従来のスタンスを変更して米国にすり寄る態度をみせる必要もないと考えられていた。

米中関係に関する中国内の論調は、以下のようなものだった。

(1)米国と中国の経済は補完関係にあり、対立は互い利益がない。米国の輸出において、大豆の56%、ボーイング機の26%、自動車の16%、半導体の15%が中国向けであり、北米自由貿易協定(NAFTA)以外の地域で最も拡大が速い国である。直接投資においても、両国で年間170億ドルもの投資が実施されている。よって、協力こそが米中関係の在り方である

(2)中国は、自由貿易体制を支持しており、米国こそが現在の体制を否定している。中国は改革開放路線を変えていない(米国からはサービス部門の開放と、知的財産侵害・サイバーセキュリティー問題の改善が求められているが)

(3)中国は一帯一路や二国間・多国間の自由貿易協定FTAを進めており、トランプ大統領に対する世界的な懸念に対して、中国は現在の自由貿易体制を支えている(実際、3月には環太平洋経済連携協定(TPP)参加国のオーストラリアやニュージーランドを李克強総理が訪問。ノーベル賞の問題で2014年以来、関係が悪化していたノルウェーとも関係を正常化している)

「米中対立」回避は大きな成果だが…

中国外交部と米国ホワイトハウスによると、今回の会談の成果は目立ったものはない。しかし、(1)米中関係を改善させることや、パートナーとしての協力を進めること、(2)トランプ大統領が年内に中国を訪問することや、密接な関係を保持すること、(3)「外交安全対話、経済対話、法執行とサイバーセキュリティーの対話、社会と人文対話」の4つの対話を新しく設立すること、(4)投資協力協定(BIT)に向けた交渉を進めることや、両国間の貿易・投資を進めること、インフラ建設やエネルギー領域での協力を進めることなどで、方向性の一致を確認している。

具体的な成果と言えないかもしれないが、オバマ政権からトランプ政権に代わるにあたって最も懸念されることであった、両国間の対話の枠組みの維持とその在り方が4つの対話の設立ということで確認された。さらに、その延長戦として、トランプ大統領の年内中国訪問が今後の取り組みに上ったことは、北朝鮮の問題でも大きな懸念材料となり得た「米中対立」を避けることができたという意味で大きな成果であった。

一方、現在の重大な国際問題(シリアへの攻撃)や地域の問題(北朝鮮、南シナ海と考えられる)では一致をみることができなかった。習近平主席は「敏感な問題は適切に処理されるべき」と述べている。

米国のシリア攻撃については、中国は化学兵器の使用についてはっきりと反対の立場を表明しているが、ロシアのパートナーとなっていることが影響しているとみられる。また北朝鮮については、中国も石炭輸入停止など厳しい措置をとっているが、中国自身の安全保障に影響を及ぼす軍事行動による解決を受け入れることはないようだ。

安全保障における不一致の大きさが拡大している中、経済協力がその穴をいつまで埋め合わせられるのか。現状、両国間の難しさは強まる方向にある。

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