『香港初の女性行政長官は親中派だが習派にあらず 中国権力闘争の余波が、7月の返還20年記念式典を揺らす』(3/29日経ビジネスオンライン 福島香織)について

陳破空氏の『常識ではあり得ない中国の裏側 中国人だからよくわかる』から、中国人の民族性、「騙す方が賢く、騙される方が馬鹿」というのが良く分かる話を紹介します。漢民族は嘘つきが当り前です。まあ、日本人経営者も東芝、てるみくらぶ、籠池氏を見ていると他人のことも言えませんが。メデイアと教育の責任は大きいと思います。彼らに騙されないように眉に唾して見ないと騙されます。

・共産党は今も昔も「“人民元”の為に働く」(P.67)。これは毛沢東が言った“為人民服務”をもじったもの。拝金教の意味です。

・中国嫌いで西洋崇拝者の世界一の殺人者—「建国の父」毛沢東の知られざる素顔(P.85)。ヒトラーは600万人のユダヤ人を虐殺し、スターリンは1200万人のロシア人を虐殺した。だが毛沢東が虐殺した中国人は少なくとも3000万人以上に上る。大躍進に因る餓死者を合わせれば7000万人以上(8000万人以上との説もある)の中国人が命を落としている。(P.86)

・危険な覇権主義、冒険主義の行き着く先(P.96~98)。中国政府にとって軍拡の本当の目的は、実は対外的なものではない。国内、すなわち中国の民衆に対してであり、独裁政権の存続を守ることが目的。第一段階は中国人民をターゲット。第二段階は台湾をターゲット。第三段階は周辺諸国をターゲットにし、アメリカを挑発すること。中国共産党が狂ったように軍拡を押し進めるその目的は、中国国内のみならず世界をコントロールするため、中国人民のみならず世界の人々を奴隷化するため。

・最強の友人関係か、はたまた従属関係か?—隣国ロシアとの100年に亘る愛憎劇(P.106)。これまでの歴史のどこを見ても、ロシア人が中国に入ってくるたびにもたらされたのは、例外なく大きな災難。

・19世紀のドイツの哲学者ヘーゲルは中国について研究し、次のように指摘している。「中華帝国は神権政治を実施する全体主義国家である。父親が個人を制御する家父長制の思想が、その政治体制の根幹を為す。この暴君は多くの等級を通してただ一つの組織系統をもつ政府を指導する。個人は精神上の個性を有していない。中国の歴史とは本質的には歴史がなく、ただ君主が入れ代わり立ち代わり減亡しては復興しているにすぎない。そこからは如何なる進歩も生まれることはない」

へーゲルの判断は基本的に正しい。

思想と文化に対する厳しい取締りは、歴代王朝はみな似たり寄ったりで、このため民族の生命カはがんじがらめに抑制され、中華民族を保守的で活力のない民族へと変貌させた。今日の中国共産党による独裁の世は、これが極限に達した状態である。

今の中国は、過去数十年にわたる経済成長を経験し、再び繁栄の世を謳歌しているかのようだが、中国の市場経済はいまだに強固な一党独裁の政治制度に阻まれて、これ以上前に進むことができないでいる。「復興した」中国は、再びさまざまな面で泥沼にはまり込み、 あちらこちらで綻びが生じている。いわゆる「空前の盛世」とは一時の強がりの言でしかなく、実を伴わないため、持続的に維持していくことは難しい。今日の中国の「盛世」と は、漢唐の盛世にははるか及ばず、時代に逆行して継続し続ける一党独裁のもとで咲いた“あだ花”だから、今にも崩壊寸前なのである。(P.148~149)。やはり中国で民主主義の芽が育つのは難しいのでは。香港という小さな土地ですら民主主義を認めないのですから。

・モンゴル人は漢人が反乱を起こさないよう、漢人の武器所有を禁じた。包丁ですら何家族かで1丁を共用しなければならず、しかもその包丁は村を管轄するモンゴル人の家にあり、許可がなければ、漢人はそれを使って調理することもできなかった。このため、漢人はモンゴル人を「老竈爺(“竈の旦那様)」「老竈姐(“竈の奥様)」と呼んだ。

また、毎年旧暦の12月23日には、漢人の各家庭はモンゴル人の家へご馳走を届けてご機嫌うかがいをしなければならなかった。これが今に伝わる「祭竈(竈の神を祭るしきたり)」の由来である。モンゴルによる中国滅亡は、遊牧民が農耕民族を征服し、遅れた文明が進んだ文明を減ぼした世界史上初の例であった。これは中国にとって大きな不幸であり、人類史に暗い1 ページを刻んだ。ある歴史学者は「崖山の後、中華は消滅した」と述べた。

モンゴルのチンギス•ハンも、自分の死後、中国人が自分を「中国人」だと見なして盲目的に崇拝しようなどとは、思いもよらなかったであろう。征服され奴隸化された人々が、征服者をなおも拝するとは、非論理的であり得ないことだ。中国はあたかも「ストックホルム症候群」に冒された病態にあるともいえるのである。(P.153)

・辛亥革命が生んだ成果が維持されなかった原因はいくつかある。まず、2000年もの独裁体制を経験してきた中国において共和思想を育む土壌は肥沃ではなく、いまだ独裁観念が支配的だったことだ。人々に国民としての自覚が欠けていたため、ちょっとした問題が起こると耐えることができず、「何が新しくて共和国で民主的だ」「全体主義で独裁の昔の中国と同じじゃないか」という潜在意識が働き、新国家建設への支持や意欲を結局なくしてしまう。政治的野心を持つ者も権力に目が曇ったまま蜂起し、軍事力の増強や縄張りの拡人に躍起となり、権力の獲得に夢中になってしまった。

外国の強敵、ソ連や日本はこの機に乗じて中国を分割しようと企み、中国の知識人に影響を与えて転向を促した。また、ある思想家は「救亡が啓蒙を圧倒する」(滅びつつある国を救うことは、啓蒙を行うことよりも緊急の一大事である)と提起した。こうして言論界は衰退していき、これにより政治的野心家や独裁を復活させようとする者たちを、さらにのさばらせることとなったのだ。こうしてついに共和制中国は消滅し、民主という胎児は生まれ得ぬまま一生を終えた。これが近代中国にとって非常に大きな悲劇なのだ。

だが歴史はまだ終わってはいない。今日の共産中国は歴史における1つの過程にすぎない。フランス革命に成功した後も、共和制がいったん中断され、独裁勢力が一時勢力を盛り返したこともあった。共和制と独裁制を繰り返しながら、第2次世界大戦後、5回目の共和国を建設し、フランスの民主と憲政はやっと定着したのである。

人類の歴史とは曲がりくねった道である。どの国も理想へ一直線などといううまい話はないということを、肝に命じなければいけない。(P.158~159)

・この時、袁世凱と宋教仁の関係は良好だったが、孫文と宋教仁の関係は決裂していた。まさに絶好調の宋教仁に孫文は深く嫉妬していたのだ。

孫文は宋教仁暗殺事件を口実として、袁世凱への攻撃を開始する。1913年7月、「第2次革命」を発動して袁世凱陣営を破り、袁世凱は日本へと亡命する。(?)孫文は1911年の暮れに中国に帰国して以来、袁世凱を倒して自分が出世することだけを目的としてきた。

国家の大局などにはおかまいなしであった。

孫文はただ大総統になりたかった。当時の情勢では、選挙によってそのチャンスを獲得するしかなかった。だが、孫文は自分が党内でも、また国民からも人望がないことをよく知っており、選挙によって大総統に選ばれることは難しいとわかっていた。だから、「第 2次革命」の狼煙を上げ、共和への道を歩き出した新生中国を再び、ぶち壊し、自分が総統になるために最初からやり直ししようとした。自分以外の者によって実現された共和政治は孫文にとっては価値がなく、自分自身の手によって実現してこそ価値があるものであったのだ。

そのためには誕生したばかりの中華民国を再び混乱に陥れることもいとわなかった。「天下為公(天下は公の為に)」とは笑わせる。「天下為私(天下は私の為にこそが彼の本心だったのだ。(P.164)

・打ち続く「天災3割、人災7割」の去則—未だ報われない「大躍進」での犠牲者3800万人

1959年から1961年まで数千万人の中国人が餓死したことについて、中国の教科書は「3年間の自然災害」「困難な3年問」などと表記している。

当時の劉少奇主席は毛沢東の「天災7割、人災3割」との言葉を看過できず、「7 千人大会」で「私が思うに天災3割、人災7割であった」と発言。これが毛沢東の逆鱗に触れ劉少奇は後に文革で死に追いやられる。

1950年代末、毛沢東は「大躍進」運動を発動した。「米英を追い越せ」をスローガンに、「中国人民には勇気があり、広大な土地という財産を持っている」と人々にハッパをかけ、農工業全般の大増産を求めた。毛沢東自ら「衛星を打ちあげる」よう鼓舞、(大躍進中に虚偽の生産量を記した生産物を衛星に見立てて描き、ポスタ—化した)。こうして、無意味な政策のもと、設定された高すぎるノルマを達成するため、「1ムー(1畝=6.7アール)当たり5000キロの収穫」などという水増し報告が横行した。さらに、全国で乱獲や森林伐採が行われ、生態系は壊滅的な状態に追い込まれたのだ。さらに致命的だったのは、国民経済の崩壊を招いたため、大飢謹の速鎖をもたらしたことだ。1960年代初頭、大躍進の失敗で少なくとも3800万人(4300万人という 説もある)が餓死した。わずか3年という短期間で発生した餓死者数は、中国数千年の歴史における餓死者の総数を超えたのだ。

同時に中国共産党政府は原爆製造に国カを惜しげもなく注ぎ、人民の財産を浪費した。 中国が製造した1発目の原子爆弾は41億ドルかけて製造された。イギリス在住の中国人作家張戎は、もしもこの1発の原爆にかけた費用を国民のために使っていたなら、当時の物価に基づいて計算すれば、「餓死した3800万人は、本来1人として死ぬことはなかった」 と指摘している。また、中国人作家楊継縄は大量の資料を分析し中国大飢饉の真相を暴いた『墓碑』を上梓し、米ハーバード大学から「ルイス• M .ライオンズ賞」を受賞した。だが中国政府は楊氏が受賞のために出国するのを禁じたのだ。

この大躍進による飢饉も含め、中国共産党の統治下で起きたほぼすベての災難は天災より人災による側面のほうが大きい。たとえば1976年に唐山大地震が起き、死者24万 人、重傷者16万人という甚大な被害が生じた。だが、その死傷者の数を政府が公表したのは発生から3年も経ってからだ。死者が最も多く、損失が最も大きく、救援が最も乏しく、 復興が最も遅い、という点で世界に類を見ない地震災害といえよう。(P.178~179)

陳破空氏は天安門事件で広州での民主化運動のリーダーとして活躍、4年半に及ぶ投獄生活を送りました。如何に共産党一党独裁が人権無視のひどいシステムか分かるでしょう。日本の左翼人士はこういう現実を見ながら、日本を中国のものにするため策動しているのですから。今回の森友問題も日本共産党、反日民進党、社民党、自由党(一番自由でない党、中核派に牛耳られている)、同和が倒閣の為、共同戦線で動いています。ネットでは裏の動きを伝えています。メデイアが反日民進党の恫喝に屈しというか、元々仲間だと思いますが、フジ・産経以外は辻元議員の嘘を報道しません。籠池氏も、辻元議員も公の場での嘘つきです。日本人の劣化も極まれりです。まあ、日本人のなりすましの可能性もありますが。

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香港の行政長官選挙は茶番であり、北朝鮮の代表選びと何ら変わることがありません。一番問題なのは国際的な公約である「一国二制度」を中国が反故にしているのに、英国が何も言わない所でしょう。英国も落ちぶれたとしか言いようがありません。まあ、EU離脱でそれどころではないのかもしれませんが。

記事

香港の行政長官選挙では親中派の林鄭月娥が、世論調査で高い支持を集めていた曾俊華を大差で破ったが…(写真:ロイター/アフロ)

先週の日曜日は香港の行政長官選挙であった。2014年秋の“雨傘革命”はまさに、この選挙において“普通選挙”を実施しようと願った反政府運動、反中国運動であり、結局は挫折したのだった。なので、今回の選挙は約1200人の「選挙委員」による間接選挙のままである。結果から言えば、中国共産党中央が推していたとされる、元政務官の林鄭月娥(キャリー・ラム)が、香港大学の世論調査で56%とラムより27ポイントも高い支持率を誇る曾俊華(ジョン・ツァン)候補にダブルスコアの大差で勝利し、香港初の女性行政長官となった。世論調査の支持率と選挙結果が違うのは、米国大統領選挙の例もあるので、不思議なことではないが、米国選挙と違うのは、世論調査結果が操作されているのではなく、選挙結果の方が“コントロール”されているということだろう。しかもそのコントロールバーを握っているのは中国である。

中国への返還から20年目、選挙結果から香港の行方を考えてみたい。

777票にまつわる噂と汚れ役の責務

投票総数1194票、有効票1163票のうちキャリー・ラムの得票は777票。対抗馬のジョン・ツァンは365票。香港本土派が最も期待を寄せていた元裁判官の胡国興はわずか21票。ラムのスロットマシーンのジャックポットのような得票数は何かを暗示しているのかもしれない。七の広東語発音が、侮蔑語の発音と似ていることから、選挙管理当局がひそやかな抵抗の気持ちを込めて、この得票数にした、などという噂も流れた。

しかしながら、同じく行政長官選に出馬した親中鷹派の葉劉淑儀(レジーナ・イップ)と比べれば、政務官として、それなりに真面目に仕事をしてきた有能な官僚という印象もある。彼女の不人気は、「雨傘革命」が発生したとき、梁振英(CY・リョン)行政長官に代わって、メディアで政府の立場を発言し、学生代表らと対面したときの譲歩を拒否した強面の印象と、北京が露骨に後押していることがあるからだろう。だが、逆に言えば、一官僚としての立場と責務を自覚しての汚れ役を引き受けたわけで、少なくとも学生たちとの対面を逃げ回っていた行政長官よりもよっぽど、ましである。

生い立ちを振り返れば、湾仔のボロアパートで育った庶民家庭出身で、香港大学社会科学科で学位をとり、ヒラの一公務員からキャリアを積んで、最終的に香港初の女性行政長官に上り詰めた。その行政能力の高さは推して知るべしだろう。しかも出馬会見で「(出馬は)香港のために働けという神の思し召し」と締めくくるほどのクリスチャンでもある。

習近平はツァン推しだった?

そもそも、対抗馬のツァンも元財政官で親中派。雨傘の学生たちに理解を示すなどリベラルな面が注目されているが、香港基本法23条に基づく国家安全条例(詳細は後述)の制定に反対はしていない。どちらが当選したとしても、香港の明るい未来につながるとはいえない。ラムを推していたのは、党中央の中では、張徳江ら、上海閥や旧香港利権派で、習近平は実はツァンを推したかったが、党内権力闘争に負ける形で習近平サイドが妥協した、という説もある。香港でもっぱら流れているこの噂を信じるならば、香港の選挙であっても、その実は中国党中央のおなじみの権力代理闘争に過ぎなかったといえるかもしれない。

ちなみに、香港の今回の選挙が上海閥と習近平の代理権力闘争であり、習近平は実はツァンを行政長官にしたかったという噂の根拠は、ツァンが習近平の経済ブレーンと親交があり、習近平自身とも2回も握手したことがあるという香港紙「信報」などの報道や、中国太平保険(習近平に近い国有保険会社)の宣伝紙「太平報」がツァンを大絶賛し、ラムを批判する4000字の記事を書いた(2月27日付け)ことなどに求められている。

全人代常務委員長(国会議長に相当)の張徳江が深圳に赴き、香港の親中派議員や団体・組織の代表を呼びつけて、ラムを中国共産党中央が推す唯一の候補だと、全面支持するよう党の意向を伝えたと報じたのは香港紙明報(2月6日付)や成報。これらは、どちらかというと親習近平派と見られているメディアで、ラムが党中央とべったりだ、というマイナスイメージを流そうとしたのかもしれない。共産党が応援すると候補の人気が落ちるということは、彼ら自身もよくわかっているらしい。

中国メディアが、選挙一か月前に、ツァン持ち上げ報道をする、というのは異常な感じがするので、やはり党中央の意向が選挙直前まで割れていたという可能性はある。そういえば、選挙2日前の香港紙、星島日報で、「党中央は曾俊華を信用していない」と発言した全国政治協商委員会副主席の盧文瑞が、急に汚職で罷免されたという未確認情報(大紀元の独自取材)が流れたのも、ラム当選について、習近平自身が沈黙を守っているのも、奇妙といえば奇妙である。

実際、香港社会の急な不安定化は党中央の権力闘争とリンクしている。香港は少なくとも習近平政権発足前までは、上海閥、特に曾慶紅がその利権をほぼ完全に掌握していた。例えば国務院香港・マカオ事務弁公室トップを13年務めてきた廖暉も、中央政府駐香港連絡弁公室(中連弁=中国の在香港大使館のようなもの)のトップの張暁明も、曾慶紅の子飼いの部下であり、彼らの後押しで行政長官を務めていた梁振英も上海閥の利権とからんでいた。宋林(華潤集団元董事長)や蕭建華(明天系創始者)ら、香港経済・金融の重鎮も曾慶紅の側近だ。香港芸能界、スポンサーも、ほぼ曾慶紅人脈に牛耳られていた。

最大の受難は「国家安全条例」の制定

だが、その曾慶紅の子飼いたちは、現在までにほとんど失脚させられている(張暁明は一時消息不明で双規の噂が流れていたが、彼は選挙直前になって無事が確認された)。しかも、すでにこのコラムでも取り上げた蕭建華事件などの例を見てもわかるように、この権力闘争とみられる現象のあおりで、香港の一国二制度があからさまに踏みにじられることも一度や二度ではない。

今回の香港行政長官選挙が、上海閥VS習近平派の代理権力闘争で、上海閥が勝利し、習近平としては、あまり面白くない選挙結果であるとしたら、香港の受難はむしろこれからである。最大の受難は、おそらく、基本法23条に基づく国家安全条例の制定を迫られることだろう。

国家安全条例は、いわゆる香港における治安維持法で、香港内に居住する市民、外国人に対して、中国共産党政権、体制に脅威を与える人間を反乱煽動の罪などで逮捕できる法律だ。民主活動家や法輪功学習者、香港本土派・独立派なども、こうした脅威とみなされる可能性があり、もしこの法律が制定されれば、香港の言論空間は厳しく制限され、中国本土と変わらない言論・報道・思想の統制が進むことになる。2003年の董建華長官時代、中国当局は一度、この法律の制定を試みたが、香港市民の激しい抵抗にあい、香港の安定を優先した中国・胡錦濤政権は、これを断念した経緯がある。

だが、習近平政権は、香港市民がいかなる反対運動、抵抗運動を展開しようとも譲歩をすることはないのではないか。

一般にキャリー・ラムのように世論調査で支持率が極めて低い候補を北京の操作によって無理やり行政長官につけた場合、世論の反感を抑えるために、政権発足当初は香港に対して厳しい要求をしないよう北京サイドが手心を加える様子見期間がある。せっかくできた傀儡政権を早々につぶすわけにはいかないからだ。梁振英が行政長官に就任したばかりのときの北京の態度がそうだった。

自らの失敗を政敵の失敗で相殺

だが、もしキャリー・ラムが習近平の“コマ”でないならば、その支持率が低迷し、香港市民から激しい抵抗運動が起きようとも、香港社会が不安定化したとしても、責任は張徳江ら上海閥のせいと突っぱねることができる。現在の香港の不安定化の根っこは、習近平政権になって香港・台湾のコントロール強化をあからさまに急ぎすぎたことで、市民が危機感に目覚めたからであり、ありていに言えば、習近平の対台湾、対香港政策の失敗だとされている。この失敗を相殺するには、より大きな、政敵による香港コントロールの失敗を招けばいい、ということになる。

すでに習近平は雨傘革命のときも、一切の妥協をせず、香港の混乱が2か月半におよび、その経済的信用が地の底に落ちても気にしなかった。それどころか、この香港の混乱の責任を理由に、曽慶紅人脈の筆頭であった廖暉を失脚させるなど、権力闘争に利用している。さらに、銅鑼湾事件や蕭建華事件のような香港の司法の独立を平気で踏みにじるようなこともしている。

秋には党大会が控えており、権力闘争はこれからも激化するだろう。香港は、間違いなくその権力闘争の一つの戦場だ。返還20年という今年の7月1日、新行政長官の就任も兼ねた香港の中国返還記念式典に、習近平は出席すると見られている。また習近平は解放軍駐香港部隊の閲兵式も行うとの観測も出ている。

このときにもし、香港市民による大規模デモがぶつけられたら、習近平はどうするだろうか。2015年に話題となった香港映画「十年」のシナリオではないが、習近平も、その政敵も香港の安定より権力闘争をいかに勝ち抜くしか考えていないとしたら、どのような流血沙汰の陰謀が仕掛けられるかもしれない。このときの政権の対応次第では、50年維持すると中英共同宣言で決められた一国二制度が、20年で放棄される可能性もゼロではなかろう。

ラムは当選を受けての演説で、自分の使命は、香港の分裂を修復し、一国二制度と香港の核心的価値を守ることだと語り、香港の若者たちの意見や主張を重視していきたいと殊勝に語った。その言葉に嘘がないならば、(クリスチャンの彼女が嘘をつかないとしたら)、彼女の行く先も、香港の行く先も、茨の道でしかない。

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『F22戦闘機24機とB2爆撃機10機で北朝鮮の核粉砕 真剣に「軍事的対応」を検討し始めたトランプ政権』(3/27日経ビジネスオンライン 高濱賛)、『トランプの米国で起こっている真に恐ろしいこと ニューレフトから超保守に転向した論客の指南書が示す米国の今』(3/27JBプレス 高濱賛)、『監視は事実?オバマによるトランプ盗聴疑惑に新資料 下院委員長が「通話は傍受されていた」と言明』(3/26JBプレス 古森義久)について

「金三胖」と呼ばれる金正恩が米軍襲撃を恐れ、ヤク漬けになっているかもしれないとの記事がありました。そんなに怖いのなら、自分の北への統治を諦めて、米国か中国の軍門に下ればよいのにと思いますが、朝鮮人民軍のクーデターが起こり、処刑されることは充分考慮していると思います。何せ無慈悲に粛清してきたトップですから、幸福な死に方はしないと思います。

http://www.zakzak.co.jp/society/politics/news/20170328/plt1703281130001-n1.htm

北と言い、南と言い、朝鮮民族は合理性を基にした判断ができません。情緒優先なので、科学的思考ができません。韓国のノーベル賞などこういうスタンスが続く限り無理でしょう。

米国の北への「斬首作戦」ですが、トランプはやると決めたらやるでしょう。トランプケアの議会工作失敗や入国制限の大統領令への司法の却下など、失政が続いていることもあり、リカバリーをどこかでと考えるかも知れません。ただそうは言っても、米国民の犠牲が大きくなれば、大統領弾劾にもなりかねません。記事にある通り、最初は、北と取引のある金融機関の取引停止を目論むでしょう。北と取引があるのは、3/28宮崎正弘氏のメルマガによれば、中国以外にも、ナミビア、南ア、モザンビーク、アンゴラ、ウガンダ、タンザニア、コンゴ等アフリカ大陸です。中国の銀行を取引停止にすれば経済的困難の状況にあり、中国の経済崩壊を早めて良いと思われます。AIIBの参加加盟国が70国に増えたと嬉しそうに中国は報道していますが、銀行業務の本筋は金を集めて、必要な所に貸付することです。いくら支店を増やしても預貸業務で実績を示さない限り、評価されないのと同じです。況してや無格付けでスタートして、今も取れていません。高い金利を払って預金集めせねばならず、必然的に高い金利で融資することになります。北との取引は人民元でやるようになるのかも。でも、人民元は暴落の噂もあり、大損こくようになるのでは。

http://melma.com/backnumber_45206_6506616/

http://melma.com/backnumber_45206_6506280/

http://melma.com/backnumber_45206_6506943/

http://www.zakzak.co.jp/society/foreign/news/20170118/frn1701181130003-n1.htm

「斬首作戦」を実行するとなると、在韓米軍の家族の安全を第一に考え、訓練に名を借りた、沖縄基地への移動が先にあるでしょう。B61-11が使われるかどうかです。小型水爆とのことで米国は核を2度もアジアで使うことになります。国際世論の非難に耐えられるかどうか。でも、これを使わなければ確実に北の反撃を許します。自走砲による、固体燃料のミサイルではミサイル防衛で全部撃ち落せるかどうか。日本は森友問題に現を抜かしている状況ではないのに。

CIAやFBIが盗聴しているのはアサンジやスノーデン、フーバー元FBI長官の例を挙げれば納得するでしょう。ただ、トランプ側の傍受をオバマが命じたかどうかは藪の中でしたが、連邦議会下院情報委員会のデビン・ヌネス委員長が「トランプ陣営の通話はオバマ政権の情報機関に傍受されていた」と公式の場で発言したとのこと。ウオーターゲートならぬオバマゲートになる可能性も出てきました。パシフィストのオバマがノーベル平和賞を貰い、世界の平和が混迷してきたのは皮肉です。彼は無能を絵に描いた人間です。民主党のカーター、ビル・クリントン、オバマが北と中国を増長させた主犯です。日本の安全にとって物凄い脅威を育ててきたという事です。

高濱日経ビジネスオンライン記事

米軍のF22戦術戦闘機(写真:ロイター/アフロ)

—米国では、レックス・ティラーソン米国務長官の日中韓歴訪をどう評価していますか。同長官が歴訪中に「北朝鮮次第で、軍事的対応も辞さず」と発言したことに対し北朝鮮は「いかなる戦争にも対応できる意志と能力がある」(3月20日北朝鮮外務省報道官)と反発しています。

高濱:ティラーソン長官は、就任して以来1回も記者会見をしていません。外交面では、ドナルド・トランプ大統領の過激なツィッター発言*ばかりが目立っていました。

*:トランプ大統領は3月17日にもツイッターで「北朝鮮は悪事を働いている。中国は(北朝鮮問題で)ほとんど協力していない」と中国を批判している。

米国民は、ティラーソン長官について、エクソンモービルの元会長でロシアのウラジミール・プーチン大統領と個人的に親しいことぐらいしか知りません。

同長官は、軍人出身のジェームズ・マティス国防長官にすっかり水をあけられています。マティス国防長官はすでに日韓を訪問して一定のインパクトを与えました。口の悪い外交関係筋の中には、「影の薄い国務長官」(米主要シンクタンク上級研究員)などティラーソン国務長官の陰口を叩く者もいます。

今回のティラーソン国務長官の東アジア歴訪は、汚名を返上する絶好のチャンスでした。

「オバマ前政権の対北朝鮮政策は完全な失敗」

ティラーソン国務長官が日中韓を歴訪した狙いの一つは、「オバマ前政権の対北朝鮮政策は失敗だった」と内外に公言し、「新たなアプローチで臨む」と宣言することでした。そのこころは、「北朝鮮が核・ミサイル実験を繰り返すなら軍事行動も辞さず粉砕する」という決意表明です。

マティス国防長官の後塵を拝した「米外交の司令塔」、ティラーソン国務長官の初めての東アジア歴訪の最大の懸案は何だったか。ギクシャクしている米中関係を正常化することと、瀬戸際外交を続ける北朝鮮への対応を日米ですり合わせることでした。

韓国は朴槿恵大統領(当時)の弾劾で政局は流動的。米国としては、最新鋭ミサイル迎撃システム「高高度防衛ミサイル(THAAD)」の在韓米軍への配備を急ぐ必要がありますが、韓国の暫定政権と交渉しても進みません。

ティラーソン国務長官は韓国滞在中、韓国政府高官と昼食も夕食も共にしませんでした。夕食は一人で食べたと言っています。「現実」を反映したビジネスライクな対応でした。

ティラーソン訪中の評価は二分

—中国の習近平国家主席ら最高指導者との会談の成果について、米国ではどう受け止められていますか。

高濱:トランプ大統領は、「一つの中国」という米中合意の基本原則に疑義を唱えたり、安全保障や経済の面から中国を批判したりしてきました。トランプ大統領と習国家主席との電話対談で関係改善に一応一致したものの、双方ともに疑心暗鬼。それを解消するのがティラーソン国務長官のミッション(任務)でした。そのうえで、対北朝鮮問題について習国家主席からポジティブな反応を引き出しかったわけです。

その結果はどうだったか。米国内での評価は二分しています。

米ロサンゼルス・タイムズのジェシカ・マイヤーズ北京特派員は極めて辛い点数をつけています。

「中国は、『北朝鮮の挑発行為に対して米国は軍事行動も排除しない』としたティラーソン長官の主張を一蹴。トランプ政権の対中関係改善の真意を試そうとした。中国メディアは会談後、『中国外交の勝利』だと宣伝している」 (“China pushed back on tougher U.S. approach to North Korea.” Jessica Meyers, Los Angeles Times, 3/18/2017

マイヤーズ記者はさらにこう解説しています。  「ティラーソン国務長官と習国家主席以下の中国指導部は、北朝鮮の核・ミサイル開発を阻止すべく米中が協力することで一致したものの、米国の強硬姿勢には猛反発、従来通りの対話重視を求めた。そのうえで北朝鮮には一定の影響力を持つ中国が北朝鮮にさらなるプレッシャーをかけることに関しては明言を避けた」

中国は「相互尊重」「ウィン・ウィン」発言を高く評価

一方、ティラーソン訪中を評価するメディアもあります。米ワシントン・ポストのサイモン・デニヤー北京特派員はこう分析しています。

「ティラーソン国務長官の訪中は中国最高指導部との建設的かつ結果重視志向の関係を築くのが狙いだった。これに対して中国は、トランプ政権が対北朝鮮に対し軍事行動の可能性を示唆しているにもかかわらず、ティラーソン長官を歓迎した。習国家主席は、ティラーソン国務長官に『あなたは、米国の政権交代をスムーズにするために積極的な努力をされてきた。米中関係は協力と友好によってのみ定義づけられるというあなたのコメントを評価したい』と述べた」

「ティラーソン国務長官は、公の場では中国最高指導部が好んで使う『相互尊重』『ウィン・ウィン協力関係』(持ちつ持たれつの共存関係)というフレーズを使った。これは中国にとって驚きだった。ティラーソン国務長官はその一方で、非公開の席上では、対北朝鮮問題や米中貿易不均衡問題に対する中国の対応を厳しく批判したはずだ」 (“In China debut, Tillerson appears to hand Beijing a diplomatic victory,” Simon Denyer, Washington Post, 3/18/2017

ティラーソン国務長官は、トランプ大統領の就任でギクシャクした米中関係を正常化し、切迫する北朝鮮情勢での連携を強化するための下地作りには成功。それを受けて4月の米中首脳会談に向けた調整に漕ぎつけたと、デニヤー記者はみるわけです。

国務省を担当する米主要紙のベテラン記者はデニヤー記者の見解に同意して、筆者にこう指摘しました。「ティラーソン国務長官は対中交渉では百戦錬磨のビジネスマンらしいアプローチを見せたように思う。前例を重んじる職業外交官にはできない交渉術だ。相手のメンツを立てつつ、こちらの言いたいことはばしっと言ったようだ。王毅外相や楊潔篪国務委員とは、中国が対北朝鮮石炭輸入禁止などでもっと圧力をかけるべきだと釘を刺したに違いない」

直ちには実施できない「軍事的選択」

—ティラーソン国務長官は歴訪中に対北朝鮮問題で「軍事的選択」をちらつかせました。北朝鮮が瀬戸際外交を続ける場合、米国は本当に対北朝鮮で軍事行動に出る可能性があるのでしょうか。

高濱:「軍事的選択」発言の狙いは、北朝鮮の金正恩委員長に揺さぶりをかけることにあります。

金委員長は最高指導者になって5年の間に、核実験3回、ミサイル発射実験は30回以上も実施しています。なぜ、経済難が続く中で、核開発やミサイル開発にそこまでこだわるのか。

米専門家の中には、「若輩で何ら実績のない金委員長にとって、偉大な指導者としての地位を確立する手段はこれしかない」(元米国務省高官)といった指摘があります。また「北朝鮮が金正男氏を暗殺したのは、正男氏の後ろ盾になっていた中国が正男氏を担ぎ出すのではなかろうか、という疑心暗鬼があった」(米シンクタンクの北朝鮮問題専門家)と分析する向きもあります。

北朝鮮の瀬戸際外交は、同国の内政に大きく関わり合いを持っているという認識です。ということは、米国が「軍事的選択」に踏み切る時には、北朝鮮の核・ミサイル施設を攻撃してそれで「終わり」というわけにはいきません。核施設を粉砕し、ミサイル施設を全滅させたあとの北朝鮮がどうなるのか。当然、金正恩体制が崩壊する事態も視野に入れる必要があります。

北朝鮮は在日米軍基地を核の標的にしていると公言しています、したがって米国は当然、日本や韓国の出方も見極めなければならない。日本政府は日米軍事同盟の深化を強調していますが、万一、北朝鮮が報復措置として日本の原発や自衛隊基地を標的にする事態になったらどうなるでしょう。

韓国は5月には革新派が大統領になりそうです。米軍による北朝鮮攻撃に猛反対するでしょう。

ティラーソン国務長官が「軍事的選択」発言をした直後に、北朝鮮は新型ロケットエンジンの燃焼実験に成功したと発表しています。このエンジンを使った長距離弾道ミサイルの発射実験を近く行うことも示唆しています。

金委員長はまったく空気が読めないのか。それとも突っ走るほか選択肢がないのか。

核・ミサイル基地攻撃機は在韓、在日米軍基地から発進

—米国は「軍事的選択肢」としてどういった軍事作戦を検討しているのでしょう。

高濱:「ストラティジック・フォーキャスティング社」(Stratfor)*は、米軍が北朝鮮を攻撃する際の具体的な軍事作戦について分析しています。

それによると、北朝鮮の防空網は旧式で、米軍のB2ステルス爆撃機やF22戦術戦闘機の侵入を探知するのは極めて困難だとしています。

*:国際軍事・経済・政治の動向を予測分析する有力民間調査機関として定評がある。

具体的には、米軍が北朝鮮の核施設を攻撃し破壊するには大型貫通爆弾*(Massive Ordnance Penetrator=MOP)や誘導爆弾GBU-32**(Joint Direct Attack Munition=JDAM)を搭載したF22戦術戦闘機24機とB2戦略爆撃機10機もあれば十分だと分析しています。

F22戦術戦闘機は在韓米軍基地や在日米軍基地から発進することになります。

北朝鮮攻撃となれば、在日米軍基地が重要な役割を演ずることになります。北朝鮮が在日米軍基地を標的にすると宣言しているのも頷けるというものです。

*:MOPは1万3600キログラムの「バンカーバスター」精密誘導爆弾(制式名称はGBU-28)。貫通力は30メートル、強固な地下要塞、地下に配備された弾道ミサイル、地下指令所の精密機器破壊用として開発された。 **:JDAMは、無誘導爆弾に精密誘導能力を付加する装置で、無誘導の自由落下爆弾を全天候型の精密誘導爆弾(スマート爆弾)に変身させることができる。イラクやアフガニスタンで使用された。 (“What the U.S. Would Use to Strike North Korea,” Analysis, Stratfor, 1/4/2017

トランプが攻撃決定を決める時

—トランプ大統領が北朝鮮攻撃を決断するのは、どんな状況になった時でしょうか。

高濱:ティラーソン国務長官は今回の歴訪時に二つのケースを上げています。一つは、北朝鮮が韓国軍あるいは米軍に脅威を与える行動に出た時。二つ目は、「米国が行動しなければならない」という段階にまで北朝鮮が兵器装備計画をレベルアップさせた時です。

北朝鮮に対して米国が軍事行動を取る狙いは、あくまでも核開発阻止です。第二次朝鮮戦争に陥る事態は絶対に回避するのが大前提です。しかし核とミサイルを失った北朝鮮はどうなるのか。北朝鮮を攻撃する時にはそれによって生じるコンセクエンス(必然的な結果)についても考えなければなりません。

確かに、米国内にも軍事行動に出ることを疑問視する向きがあります。事態が悪化した場合は、とりあえず、対北朝鮮経済制裁の強化に踏み切るでしょう。トランプ政権内部は北朝鮮を国際金融から排除する広範囲な制裁措置を検討しています。北朝鮮と取引がある第三国で活動する中国企業などを制裁対象にする案が有力視されています。イランに対して実施した制裁と同じようなものです。

忘れてならないのは、トランプ大統領はオバマ前大統領ではないことです。何をやりだすか、予想不可能なのがトランプ大統領です。本当に怒り出したら何をやりだすか分かりません。大統領を取り巻くスティーブ・バノン首席戦略官ら超側近はタカ派ばかりです。

「そのへんを甘く見て、金委員長が火遊びを続けていると、何が起こるか、わからんぞ」。ホワイトハウス中枢を良く知るワシントンのジャーナリストの一人は、筆者にこう囁きました。 (“Adult Supervision: Secretary Tillerson in Asia,” Stephan Haggard, PIIE, 3/20/2017

■変更履歴 掲載当初、「F22戦術戦闘機は在韓米軍基地や在日米軍基地、空母から発進することになります」としていました。「F22戦術戦闘機は在韓米軍基地や在日米軍基地から発進することになります」の誤りです。お詫びして訂正します。[2017/03/28 14:30]

高濱JBプレス記事

米大統領の娘イヴァンカさん、ホワイトハウス入りへ オフィス確保(ホワイトハウスで開かれた記者会見に出席した時の写真、右は夫のジャレッド・クシュナー氏、2017年3月17日撮影)〔AFPBB News

反対する共和党下院議員を脅迫する大統領

「I’m gonna come after you」(お前らを追いかけ回すぞ)

次の選挙で「お前らを追いかけ回して、落っことしてやるからな。そう思え」という意味だった。

発言の主はドナルド・トランプ米第40代大統領。場所は立法の府、米連邦議会議事堂、上院と下院とを分けるドーム下のロタンダ(円形広間)。数人の下院議員に向かって言ってのけた。

選挙公約の最重要課題であるオバマケア(国民健康保険改革)廃止に伴う共和党提案に異議を申し立ててた一部下院議員に放った暴言だ。与党内から出ている反論に怒り心頭に発したのだろうが、行政府のトップが立法府の議員に向かっていうべき言葉ではない。

大統領選の時から言いたい放題を言ってきたトランプ氏が「思ったことを腹にしまっておけない」性格なことはすでに米国民は分かっている。が、それでもこの暴言はいただけない。

FBIの否定もなんのその、「オバマは俺を盗聴していた」

それだけではない。

トランプ大統領が「オバマ前大統領は選挙中にトランプ選挙本部を盗聴していた」とツィートしたのは3月4日。

米連邦捜査局(FBI)のジェームズ・コミー長官自らが議会での証言で「それを裏づける証拠は見つかっていない」と全面否定しているにもかかわらず、2週間以上その発言を取り消そうとはしていない。

大企業目線で保守的な論調を旨とするウォール・ストリート・ジャーナルですら3月22日付け紙面で「A President’s Credibility」と題する社説を掲げ、「トランプの欺瞞は国内外での大衆の信頼を失っている。事実を軽視すれば、国民はトランプを偽大統領と見なすようになる」と警告している。

なぜ、そうまでして言いたいことをTPOをわきまえずに言い、自分の思い込んでいる「間違った事実」を頑なに堅持しようとするのか。

その謎を解く1つのカギを提供してくれている本が出ている。今回紹介する本書、「A Big Agenda: President Trump’s Plan to Save America」(重要なアジェンダ:トランプ大統領のアメリカ救済計画)だ。

一言で示せば、「トランプ大統領の勝利は保守主義の復権であり、革命なのだ。目指すは個々の政策ではなく、保守イデオロギーの復権にある」ということ。

その意味では事実関係がどうのこうの、ごちゃごちゃした枝葉末節などうっちゃっておけというのだ。

トランプ大統領をはじめトランプ陣営の面々にとっては「バイブル」とまで言われている本だ。この本の書評を書いているのは保守系メディアだけ。トランプ大統領が対決するニューヨーク・タイムズほか主流メディアは完全に無視している。

かって黒人過激派を支援した論客はなぜ「転向」したのか

Big Agenda: President Trump’s Plan to Save America by David Horwitz Humanix, 2017

筆者は「米国でも屈指の保守主義扇動者」と評されているディビッド・ホロウィッツ(78)。

両親は生粋の共産主義者。その影響を受けて1956年から75年までニューレフトの旗手と言われてきた。70年初頭には黒人過激派組織「ブラックパンサー」に共鳴し、運動資金集めに奔走した。

当初は、ソ連のヨシフ・スターリン(ソ連共産党書記長)に傾倒するが、厳しい粛清・殺戮を繰り返すスタリーンに失望して共産党を脱党する。

長い沈黙ののち、1994年の大統領選には保守派のロナルド・レーガン共和党候補に1票を入れたのを機会に左翼から右翼へ転向した。

「ウィキーリーク」編集長ジュリアン・アサンジ氏のインターネット番組に出演したホロウィッツ氏は転向の動機についてこう述べている。

「共産主義者の言うユートピアは理想に過ぎない。人間というものはそれほど崇高なものではない。自己中心的であり、嘘つきであり、欺瞞だらけだ。スターリンがそのいい例だ。共産主義者というものは他の人間を裏切り、貶める」

「人間は宗教心がなければ、ユートピアを求めてナチスか共産主義に走る。しかし権力の座についたとき、独裁者に化ける」

「私はその恐ろしさを知っている。私は最初からオバマは隠れ左翼だと思っている。その証拠にオバマ政権内部には左翼の危険人物が張り込み、アメリカを骨抜きにしようとしている」(リンク

レーガンの時より「保守革命」実現のチャンス

本のタイトルを見る限り、トランプ大統領が目指す個々のプランを伝授しているかのような印象を与える。しかし、中身はむしろトランプ政権の政権たるゆえん、つまり「トランプ革命」の本質を論じている。

「トランプ氏の2016年大統領選挙での勝利は歴史的番狂わせ以上の意味合いがある。この勝利は、大規模な政治的、経済的、社会的革命の始まりを意味しているからだ。それは米国を変え、世界を変えるだろう」

「トランプ政権は、就任100日のうちに大統領令を次々と発布する。その第1弾は、グエンタナモ捕虜収容所の再開、キーストンXL*、恩赦拒否。そして連邦最高裁判事や地方裁判事の指名。さらにはオバマケア破棄、環境保護局の規模縮小、黒人向けの『ニューディール』政策だ」

*カナダから米国に原油を輸送する「キーストン・XLパイプライン」と米ノースダコタ州に敷設予定の原油パイプライン「ダコタ・アクセス」の建設を推進する大統領令。

「与党共和党が上院の過半数を占めたことでトランプ大統領は、米国の政治的風景を作り直し、海外における米国の死活的な国益を確実なものにしたロナルド・レーガン(第40代大統領)よりもより大きなチャンスを手中に収めた」

「トランプ大統領と共和党は今や、個々の政策を実現するために戦っているのではなく、保守主義のイデオロギーを復権させるために戦っていることを忘れてはならない。その反対勢力とは、米国のパワーと偉大さを弱体化させ、トランプ革命を阻止するためにラディカルなアジェンダを掲げて抵抗しようとする左翼どもだ」

「大統領選という1つの戦いに我々は勝利した。しかし戦いはまだまだ続く。この本は、保守主義の復位を阻止しようとする左翼勢力とどう戦うかを書き留めたガイドブックだ」

米主流メディアが完全に無視してきた「もう1つの米国」

日本のメディアが好んで引用する米メディアの主流の主張や論調とは、全く異なる「もう1つの米国」がある。その「もう1つの米国」の復権を目指す勢力が2016年の大統領選挙で勝利した。

言い換えると、これまで馴染んできた「オバマの米国」が名実ともに「トランプの米国」に取って代わったのだ。

その「トランプの米国」が「オバマ前政権によって大きく左に動いた時計の針を強引に右へ動かそうとしている」(カリフォルニア大学バークレイ校政治学教授)。

その「トランプの米国」の本質は何か――。

ともすれば、我々日本人には馴染みが薄い「もう1つの米国」。本書は、今、「分裂国家・米国」で何が起こっているのか、を知るための必読の書と言える。

 

古森記事

米下院情報特別委員会の公聴会で証言する連邦捜査局(FBI)のジェームズ・コミー長官(2017年3月20日撮影)。(c)AFP/Nicholas Kamm 〔AFPBB News

3月初頭、ドナルド・トランプ氏が、大統領に就任する前にオバマ政権の情報機関によって盗聴されていたとツイートし、大きな波紋を広げた。

これについてFBI(連邦捜査局)長官は「盗聴」には証拠がないと反論している。ところが3月22日、連邦議会下院情報委員会のデビン・ヌネス委員長が「トランプ陣営の通話はオバマ政権の情報機関に傍受されていた」と公式の場で発言し、その証拠をホワイトハウスに送ると述べた。

トランプ陣営、オバマ政権、FBI、そして共和党と民主党・・・さまざまな組織や機関が政治的な利害を絡ませてせめぎ合うなかで、「盗聴」事件はますます混迷と対立をエスカレートさせてきた。

トランプ大統領のツイート

トランプ陣営内部の会話が記録されていた

3月22日、下院情報委員長のヌネス議員(共和党・カリフォルニア州選出)は、米議会で臨時の記者会見を開き、情報機関関係者から新たに入手したという資料の内容を公表した。

その突然の暴露は、「オバマ政権によるトランプ陣営の盗聴」をめぐる論議に新たな爆弾を投下する内容であり、衝撃が広がった。

ヌネス議員の証言の骨子は以下の通りである。

・トランプ氏が大統領に当選した2016年11月7日ごろから、大統領に就任する2017年1月20日までの間に、オバマ政権の情報機関がトランプ陣営の多くの人間の言動を傍受していた。その結果を詳しく記述した数十通の報告書を入手した。報告書は、情報機関の関係者たちから下院の情報委員長である自分のもとに、参考書類として合法的な形で届けられた。

・報告書にはトランプ陣営内部の人物たちの言動が実名とともに記され、各政府機関に流されていた。

・記録された内容は、トランプ氏の住宅兼オフィスであるトランプタワーを「オバマ政権が『盗聴』した」ことの直接的な裏づけにはならない。しかし、トランプ陣営のメンバーと他の人たちとの内部のコミュニケーションが数多く記録されていた。政府情報機関が、電話やその他の通信手段の盗聴や傍受によって情報を収集した結果だと思われる。トランプ氏本人の交信が傍受された可能性もある。

・情報機関は、最初からトランプ陣営の人たちを標的として監視を始めたというよりも、他の情報収集のための監視や傍受の活動をしているうちに、偶然、その対象がトランプ陣営にまで広がった可能性が高い。

・報告書の内容を詳しく確認して、トランプ大統領に提出する。議会でも公表して、立法府として対応する際の資料にする。CIA(中央情報局)、NSA(国家安全保障局)、FBIにもさらなる協力を求める。

FBI長官は今も民主党寄り?

米国議会下院では、「オバマ政権のトランプ陣営盗聴」に関する公聴会を3月20日に開き、FBIのジェームズ・コミ―長官らが証言した。コミー長官は「政府機関がトランプタワーを盗聴したと証明する情報はない」と答え、トランプ大統領の発言を否定していた。

コミ―氏は2013年にオバマ大統領によってFBI長官に任命された。政治スタンスは民主党寄りの人物だとされる。FBI長官は、政治的立場にかかわらず10年の任期を務めることができる。そのためトランプ政権側には、コミ―長官は今も民主党側についており共和党政権に不利になる言動が多いという批判もある。

こうした両党の思惑がからみ合うなかで、ヌネス議員の暴露的な発言が突然出てきたわけだ。

ヌネス議員の発言は、トランプ政権や共和党側からは歓迎される一方、民主党議員たちからは「議会で追及すべき案件を突然大統領のところへ持ち込むのはおかしい」(下院情報委員会の民主党側筆頭メンバーのアダム・シフ議員)などと反発されている(その件についてヌネス議員は委員会メンバーに謝罪した)。

今後、さらにどんな情報や証拠が出てくるのか。最終的な決着まではまだかなりの期間を要しそうである。

良ければ下にあります

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『身内に通じなかったトランプ流交渉術 立法府での第一ラウンドで完敗、次ラウンドは税制改正』(3/28日経ビジネスオンライン 篠原匡)、『「君は2種類の違う生き物の話をしているよ」 国境のレストランオーナー、オバマとトランプを語る』(3/23日経ビジネスオンライン 篠原匡、長野光)について

3/24ロイターにトランプケアの議会工作失敗と税制改革の見通しの記事がありましたので、紹介します。

Bull market not dead as tax reform takes spotlight

Traders work on the floor of the New York Stock Exchange (NYSE) in New York, U.S., March 21, 2017. REUTERS/Lucas Jackson

By Rodrigo Campos and Chuck Mikolajczak | NEW YORK

NEW YORK The death of the Republican healthcare reform may not prove to be the knife to the heart of the bull market some had feared, but to keep the Trump Trade alive investors should temper expectations for the breadth of expected tax cuts.

Anxiety over prospects for the healthcare bill gave stocks their largest weekly drop since the November presidential election. But its failure to pass could also force the Trump administration to come up with a palatable tax reform that could deliver this year some of the stimulus Wall Street has rallied on.

The S&P 500 rose as much as 12 percent since the surprise Nov. 8 election win President Donald Trump, mostly on bets that lower taxes, deregulation and fiscal stimulus would boost economic growth and corporate earnings.

As he acknowledged defeat for the healthcare bill, Trump said Republicans would likely pivot to tax reform. Bets on that shift in focus were seen in stocks late on Friday, as the market cut its day losses when news of the health bill being pulled emerged.

“The market believes it raises the probability of a tax cut later this year since Trump is showing more strategic behavior. (It) puts the market a little more at ease,” said Paul Zemsky, chief investment officer of multi-asset strategies and solutions at Voya Investment Management in New York.

On the campaign trail Trump promised to lower the corporate tax to 15 percent. In order to make the tax reform revenue-neutral, and agreeable to the most money-sensitive wing of his party, his administration counted on savings from the health bill that will no longer materialize.

“If we want to get something passed by the August break, it’s going to look a lot like tax reform light,” said Art Hogan, chief market strategist at Wunderlich Securities in New York.

“If we settle somewhere between the 25-30 percent corporate tax rate, that is far from the 15 percent offered in the campaign trail and the 20 percent currently in the House plan, (and) I think that’s where we end up.”

Softer cuts in corporate taxes leave stocks vulnerable after a rally on hopes for more, he said.

“It’s not a negative, it’s just not the positive the market had priced in.”

Aside from Trump’s pro-growth agenda some investors have pointed to an improving global economy and expectations for double-digit growth in corporate earnings as support for the lofty valuations in stocks.

“The evidence suggests to me that there is some Trump fairy dust sprinkled on this rally. That said, the underlying fundamentals do look better,” said Alan Gayle, director of asset allocation at RidgeWorth Investments in Atlanta, Georgia.

A survey on Friday showed Germany’s private sector grew at the fastest pace in nearly six years in March, suggesting an acceleration in growth for Europe’s largest economy in the first quarter.

Stocks could also turn to earnings to justify their price. First quarter earnings are expected to grow by more than 10 percent, according to Thomson Reuters data. In another sign of investor bullishness, February’s reading on consumer confidence touched its highest level since July 2001.

If earnings fail to deliver double-digit growth, stocks could again be seen as too expensive. At $18 per dollar of expected earnings over the next 12 months, investors are paying near the most since 2004 for the S&P 500.

“The advance we’ve had and the large spike in confidence, the expectations on the economy and earnings expectations – we continue to believe it is too high,” said Julian Emanuel, executive director of U.S. equity and derivatives strategy at UBS Securities in New York.

(Additional reporting by Lewis Krauskopf; Editing by Cynthia Osterman)

強気市場は、税制改革を焦点としたため、死なず

(写真)2017年3月21日、ニューヨーク証券取引所(NYSE)のトレーダーの働きぶり。ルーカス・ジャクソン /ロイター

ロドリゴ・カンポスとチャック・ミコロイザック/NY

共和党のヘルスケア改革の崩壊は、何人かが恐れている強気市場の中心へナイフを突き立てたことにはならないかもしれない。しかし、トランプの貿易政策を生かしておくために、投資家は期待される減税幅の予想を下げるべきである。

ヘルスケア法案の見通しに対する不安は、11月の大統領選挙以降、株式市場に1週間の間で最大の下げとなった。

しかし、ヘルスケア法案が通らなかったことは、トランプ政権に対し、ウォール街がずっと議論してきた刺激策の一部を今年になって実現すべく、口当たりの良い税制改革を出すように仕向けるだろう。

スタンダード・アンド・プアーズ500は昨年11月8日のまさかのトランプの大統領選での勝利以降12%も上げたが、大部分は低い税、規制緩和と財政刺激の政策によるもので、それらが経済成長と企業収益の向上を齎すと考えられたため。

トランプはヘルスケア法案についてしぶしぶ敗北を認めたが、共和党は次に税制改革に軸を置くだろうと言った。ヘルスケア法案の当面の撤回のニュースが出たとき、市場はその日の内に損切りしたように、税制改革への移行に焦点を当てた賭けは金曜日遅くに株式市場で見られた。

「トランプがより戦略的なスタンスを示している限り、今年後半には減税の可能性を高めると市場は思っている。それは、市場を緩和させるように働く。」と、ポール・ゼメスキー(NYのボヤ投資会社の多面的投資戦略・解決に関する主任投資アドバイザー)は言った。

選挙遊説中に、トランプは15パーセントまで法人税を下げると約束した。しかし、税制改革を税収中立で、かつ共和党内の財政規律派に承認されるために、政権は、もはや材料の無いヘルスケア法案からの救いを目論んでいた。

「もし、8月の夏休みまでに通過できると期待するものがあるとすれば、それは税制改革のように見える」と、アート・ホーガン(NYのウンダーリヒ証券の主任市場戦略分析家)は言った。

「法人税率が25-30パーセントの間に決まれば、選挙遊説で約束した15パーセントからは程遠いが、今議会で検討されている20パーセントが、結局落ち着くところであると思う。」

法人税の削減幅の少なさは、多くの期待を寄せた議論の後では、市場を脆弱にすると、彼は言った。

「それは消極的投資でなく、市場が値付けしてきた積極的投資でないというだけだ。」

トランプの民間主導の開発方式を支持する一部の投資家は、世界経済の改善と企業収益の二桁成長への期待は株の急激な値上がりが予想されると指摘した。

「この会議で撒かれたトランプの妖精の粉があるように、証拠は示している。またそれは、経済の基礎的条件が良くなっているように見えるとも」と、アラン・ゲイル(アトランタのリッジワース投資会社資産配分取締役)は言った。

金曜日の調査では、ドイツの民間部門が3月に於いてはこの6年で最も速いペースで成長したことを示し、第1四半期においてヨーロッパでの最大の経済主体が成長を加速できたことを意味する。株は、利益に変えれば、価格に反映される。トムソン・ロイターのデータによれば、第1四半期の利益は、10パーセント以上成長することが期待されている。

投資家が強気なのは、消費マインドが2001年7月以降、最高の水準にあると2月に読み取ったため。

利益が二桁成長できないならば、株は高過ぎと看做されるだろう。次の1年で、期待収益率が18倍どまりであれば、スタンダード・アンド・プアーズ500の投資家は、2004年以降ほぼ最も多く払っている計算になる。

「我々が体験した前進と経済と利益に関する予想の急騰への自信に関し、我々は、それがあまりに高過ぎると思っている。」と、ジュリアン・エマニュエル(NYのUBS証券のデリバテイブ戦略と米国資産の上級取締役)は言った。

(ルイス・カウスコフによる追加報道、シンシア・オスターマンによる編集)>(以上)

税制改革には保守強硬派も賛成しているので、減税幅がいくつであっても賛成すると思います。ヘルスケア法案は無資格者が出る恐れと国の財源カットが少なすぎと保守強硬派に思われて賛成を得られなかったのが大きく響いたと思います。トランプのやりたいことがなかなかできない、これも三権分立が進んだアメリカの現実と思います。

3/23の記事は、米墨の壁について書かれています。勿論壁を米国が造れば、米国が負担するのは当り前です。それを国境税で賄うつもりなのでしょうけど。メキシコがもっと非合法移民対策をしないと壁はつくられるという気がします。

3/28記事

3月24日、トランプ米大統領は、オバマ前大統領が推進した医療保険制度改革、いわゆる「オバマケア」に代わる法案を、採決直前に取り下げた。(写真:AP/アフロ)

「ディール・メーカー」としての能力に疑問符

期せずして、政策の優先順位が変わることになりそうだ。

3月24日、共和党指導部はオバマケア(米医療保険制度改革法)の代替法案を撤回した。もともとは23日の木曜に下院で採決される予定だったが、法案通過のための賛成票に見通しが立たず、一度は延期が決まった。その後、翌金曜の夕方に再び採決されることになったが、反対派の切り崩しが進まず、撤回に追い込まれた。

オバマケアの撤廃は過去4回の選挙で訴えてきた共和党の看板政策だ。上下両院を共和党が制し、ドナルド・トランプ氏がホワイトハウスの主になった現状は長年の宿願を果たすまたとない好機だった。それが、まさかの大敗北である。ディール・メーカーとしてのトランプ大統領の能力、下院議長としてのポール・ライアン氏の指導力に疑問の目が向けられている。

トランプ政権の命運を左右する「下院フリーダム議連」

採決にすら持って行けなかった最大の理由は共和党内の分裂だ。とりわけ、保守強硬派が集う下院フリーダム議連(HFC:House Freedom Caucus)の造反である。

HFCはティー・パーティの流れをくむ下院共和党の保守強硬派。小さな政府を金科玉条とし、徹底的な歳出カットや減税を求める財政タカ派だ。大きな政府の象徴であるオバマケアを蛇蝎のごとく嫌っている。メンバーが開示されていないため正式な数は不明だが、30~40人とされる。

彼らの存在が一躍、有名になったのは2015年9月のベイナー・前下院議長の追い落としだ。

2013年10月以来の政府閉鎖を回避すべく、2016年度予算案の成立に向けてギリギリの調整を続けていたが、前議長の政治的妥協を批判していた同議連は解任動議を提出、ベイナー前議長は辞任に追い込まれた。後任として白羽の矢が立ったライアン氏は挙党一致を条件に下院議長に就任した。この時はHFCもライアン議長の支持を表明している(下院フリーダム議連がライアン氏を支持した時の声明)。

トランプケアは「撤廃とはほど遠い内容」

トランプ大統領の最初のビッグディールでHFCの面々が造反したのは、ライアン議長など下院共和党指導部の提示した案が撤廃とはほど遠い内容と考えたためだ。

代替法案では批判の多かった個人や従業員の健康保険加入の義務付けを撤廃、低所得者向けの補助金に替わるものとして、年齢や収入をベースにした税額控除も盛り込んだ。だが、払い戻す形での税額控除は補助金と替わらないと反発を強めた。

下院共和党は定数535議席中、過半数を超える237議席を抑えている(空席が5議席)。ただ、下院で法案を可決させるには空席を考えると216票が必要で、22人が反対すれば、法案は通らない。

共和党の穏健派は無保険者の増大を懸念

一方で、共和党の穏健派は代替法案によって想定される無保険者の増大に懸念を強めた。

オバマケアによって2000万人以上の無保険者が健康保険に加入することが可能になった。既存保険者の保険料アップやオバマケアに伴う増税には強い批判があるが、既にオバマケアは制度として定着している。オバマケアの撤廃と置き換えで無保険者が増加すれば、次の選挙で自身の首が危うい。

実際、2月の議会休会中に各議員が地元で開催したタウンホール・ミーティングでは、自身の保険内容が劣化するのではないかと不安に感じた有権者の批判が相次ぎ、各所で炎上した。中立的な議会予算局(CBO)も、「代替案を施行すれば、現行制度を継続させた場合と比べて無保険者が2016年に2400万人増える」という衝撃の試算を発表している。

撤廃しなければ公約違反だが、撤廃後、無保険者が増えても政治的打撃が大きい。中道派の共和党議員は極めて難しい立場に置かれた(参考 2017年2月28日配信記事「共和党に回り始めたオバマケアの『毒』」)。

HFCのメンバーをボーリングに招待したりしたが…

トランプ大統領は保守強硬派や立場を決めていない議員を懐柔するため、「代替法案に賛成するか、さもなくば(2018年秋の)中間選挙で落選するか」という脅しに近い圧力をかけた。同時に、HFCのメンバーをボーリングに招待したり、賛否未定の議員をエアフォースワンに同乗させたり、執務室で記念写真を撮ったり、硬軟織り交ぜて説得に当たった。だが、結果はご存じの通りである。

大統領令を連発するなど就任直後は活発に動いた感のあるトランプ政権だが、その後は側近の辞任やロシアを巡る疑惑など足元はふらついている。肝心の政策も、イスラム圏からの入国制限を企図した大統領令は連邦裁判所によって二度にわたり差し止め命令が出された。各省庁の政治任命スタッフは指名さえされていないケースが大半で、「政権の体をなしていない」という声も漏れる。今回の挫折は混乱が続く政権には大打撃だろう。

さらに、オバマケア撤廃の頓挫によって、今後予定される抜本的な税制改正にも暗雲が垂れ込める。

下院共和党はオバマケアの撤廃・置き換えを完了させた後、税制改正に取り組む意向を示しており、代替法案の撤回によって税制改正の時期が繰り上がった格好だ。もっとも、下院共和党指導部はオバマケアの撤廃で削減される公的支出を法人税減税や個人所得税引き下げの原資に考えていた。これまで財政タカ派は税収中立を訴えており、大規模減税を実現するには別の財源を見つけなければならない(一方で「完全な税収中立は求めない」という声も上がり始めた)。

「税制改正」はトランプ大統領に可能か

財源確保のウルトラCとして下院共和党指導部は「国境調整」の導入も視野に入れるが、こちらも大きな影響を受ける小売業界やエネルギー業界の反対が強く、共和党の上院議員を中心に反対の声が広がっている(国境調整とは:参考 2017年2月7日配信記事 「トランプ政権は言われるほどひどくない」)。10年間で1兆ドルとささやかれる国境調整の税収がなければ、トランプ大統領の提唱する法人税15%はともかく、ライアン議長の20%も難しいが、議会の批判もあり、導入の可能性は低いという声が大半だ。

「ヘルスケアはとても複雑なイシューだが、ある意味で税制改正はオバマケアよりもシンプルだ」。ムニューシン財務長官はこう述べるが、オバマケアの顛末をみていると、再びHFCが抵抗勢力になる可能性は否定できない。

今回の税制改正では税率の引き下げだけでなく、ワールドワイド課税(米国外で稼いだ利益を配当で持ち帰る際に課税される制度)の見直しなど、1986年のレーガン改正以来の大規模な税制改正になることが期待されている。だが、カオスの中で政治資本を浪費しているトランプ大統領に、そして凄腕のディールメーカーとしての看板が色あせつつあるトランプ大統領に可能なのか。懐疑の目が向けられている。

3/23記事

米国最南端の町、ブラウンズビル。メキシコ国境に隣接する町には国境のフェンスが既にある。もっとも、両国を隔てるリオグランデ川から離れたところに建てられたため、実際の国境とフェンスの間に取り残された住民も少なくない。彼の日常生活に支障が出ないよう、道路のところはフェンスが切れている。フェンスの目的が不法移民を阻止することだとすれば、その効果は全くない。  「米国第一主義」というスローガンの下、トランプ大統領は雇用の国内回帰と治安の強化を推し進めようとしている。その政策を支持する米国人は一定数、存在する。それでは、国境に住む人々はどう感じているのか。 「フェンスの向こう側」シリーズ5回目は、ブラウンズビル(米国)の対岸の町、マタモロス(メキシコ)で人気レストラン「Garcia’s restaurant bar」を経営している親子に意見を聞こう。

(ニューヨーク支局 篠原 匡、長野 光)

(フェンスの向こう側  Vol.1 / Vol.2 / Vol.3 / Vol.4  から読む)

メキシコとの国境に接するブラウンズビル(米国テキサス州)。国境のフェンスよりメキシコ側に住むアメリカ人が少なからずいる

フェンスの向こう側 Vol.5  レストラン・ガルシア

 

Raul Garcia(ラウル・ガルシア)  Manuel Garcia(マヌエル・ガルシア)  レストランなど経営

過去10年を振り返ると、最初の8年は客足が減少しましたが、ここ2年くらいはだいぶ戻ってきています。麻薬カルテルの抗争でマタモロスが特に危ないという噂が広がったことがとにかく大きかったですね(参考記事「パトカーが先導する『死のハイウエー』、メキシコ」 毎日新聞)。マタモロスだけでなく、国境の町はどこも危険でしたが、メディアが危険性ばかりを声高に語ったんです。そういう話が、ここ2年でようやく落ち着いてきました。

「銃撃戦なんて一度も見たことはありませんよ」

噂ではなく事実ではないかって? 確かに、ここから10マイル(約16キロメートル)、20マイル離れれば危ないところもあるかもしれません。ただ、私たちの店は国境のゲートからあまりに近いので、麻薬カルテルが銃撃戦を始めるなんてことはまずない。私の家族はマタモロスに住んでいますが、銃撃戦なんて一度も見たことはありませんよ。

ブラウンズビル(米国)の住民が足繁く通う人気レストラン「Garcia’s restaurant bar」のラウル・ガルシア氏(写真:Miguel Roberts、以下同)

その昔、この場所に大きな市場があったのですが火事で焼失してしまいました。その跡地を私の父が購入しビジネスを始めたのがきっかけです。1969年のことです。その後、1980年か1981年にまた火事があり、当時のビルが全部燃えてしまった。それで1983年に今のビルを建てたんです。

2000年代後半以降、麻薬カルテルの抗争が激化したマタモロス(メキシコ)。外務省の海外安全情報ではレベル2(不要不急の渡航は止めてください)に指定されている

もともとは米国からの旅行者向けにメキシコのアートや雑貨を扱っていましたが、奥さんが買い物をしている間、旦那さんが酒を飲んで待てるように…とバーを併設したところこれが成功しまして。その後、レストランやドラッグストアとビジネスを拡大していきました。1975年頃は10人客が来たら8人が米国人でしたが、今は国内(メキシコ)のお客さんの方が多いね。

安価な薬を求めて米国から買いに来る人が多い

ドラッグストアを開いたのは、薬を買いに来る米国人が多いからです。向こうで「タイレノール」(頭痛・解熱薬)がいくらするのかしらないけれど、こちらでは30錠が1ドル程度で手に入る。マタモロスの病院に通う人も多いですね。米国では虫歯を治すのに1000ドル近くかかると思いますが、こちらだと100ドルで直してくれる。医者の腕? 全く悪くありませんよ。

マタモロスの町には安価な薬や歯科治療を求めて大勢の米国人がやってくる

私が子供の頃、1975年ぐらいの話ですが、国境警備自体ほぼありませんでした。みんな好きに行き来して、1週間くらい米国で過ごして帰るなんていうこともよくあった。リオグランデ川も今よりずっときれいで、子供の時はよく泳ぎました。とても楽しかったですね。

政治に関するコメントは控えさせてもらいますが、国境警備の厳格化やNAFTA(北米自由貿易協定)の見直しでマキラドーラ(注)が影響を受けることはあり得るだろうね。自動車産業は特に怖がっているよね。ああ、父がちょうど来ました。

(注)製品製造にかかる原材料や部品、機械を無関税で輸入できる保税輸出加工区のこと。ティファナやシウダー・ファレスなどメキシコの国境の町にある。

八百屋の店主とマタモロスの日常

仲のいい隣人との間に壁を作るなんて

私は「壁」に大反対だ。なぜかって? メキシコと米国はずっと仲良くやってきたんだ。それなのに、トランプは高い壁を建設するといっている。攻撃的だ。これは人権に関わる問題だ。仲のいい隣人との間に壁を作るなんて。われわれのビジネスに与える影響なんてどうでもいい。人権の問題なんだ。

何で壁なんて作る必要があるんだ? 米国の大統領はしゃべり方、やることなすことすべて攻撃的だ。オバマはどうかって? 君は2種類の違う生き物の話をしているよ。片方は横暴で、片方は穏やかでナイスだ。ケンカの前に、まずは座って話そうじゃないか。オバマは本当にいい大統領だった。

壁の費用なんてメキシコが払うわけないだろう! この店のためにカネを借りれば払うのは私だ。そんなの当たり前だろう。NAFTAはどうかって? 彼はやめないと思うよ。彼自身が必要と思うはずだ。時々、ヒトラーみたいなクレイジーな人間が出てくる。トランプとヒトラー? そっくりだよ。

このカーブを曲がると入国ゲートがある

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『メルケルを脅かすSPDの「シュルツ旋風」 ポピュリズム台頭に対抗するドイツ』(3/23日経ビジネスオンライン 熊谷徹)、『EUは危機打開の第1関門を通過したけれど 「極右ポピュリズム」のドミノ倒しは防げたか』(3/22日経ビジネスオンライン 岡部直明)について

欧州は米国と違い、日本国内ではあまり関心がないのではと思います。文化芸術の部分では米国より遙かに優れたものの蓄積があり、旅行へ行くのでしたら欧州へという日本人は多いと思いますが。

本記事を読みますと、ドイツでは欧州統一派のシュルツがドイツ優先主義(?)のメルケルを破るかも知れないという事のように思えます。メルケルはトランプのアメリカ・ファースト政策を批判していますが、彼女はEUの統一通貨ユーロのお蔭で、強いマルクの代わりに、ユーロ使用の欧州各国にドイツ製品を輸出して、経済的にドイツの独り勝ちの状況を作り出してきました。ギリシャ救済でも緊縮財政を要請して支援を渋る所なぞ、トランプを批判できないのでは。欧州全体の利益よりドイツ人の価値観を押し付けている形でしょう。それはそうです。各国話す言葉が違うし、伝統文化が違うものを無理やり、一つにしようとしても国民が受け入れないでしょう。欧州で反EU、反移民の嵐が吹いていますのは、グローバリズムというフィクションに国民が反旗を翻している構図です。

シュレーダーのアゲンダ2010は誤りだったというのは、端的に言えばグローバリズムが誤りだったという事でしょう。「雇用市場改革プログラム」は労働者の地位を低下させ、経営者のみが富む状況であれば、国民が犠牲になるだけです。ビル・クリントンの政策が会社の利益の90%を株主に還元することを始めてから、世界的に貧富の差が拡大したと思われます。日本の経営者は横並びが好きで、よそがやっているからウチもとなり、労働市場も自由化して、非正規労働者を増やしてきました。非正規労働者が増えれば生活が苦しくなり、結婚もできず、少子化に拍車をかけます。グローバリズムのやり方を真似したことが日本の社会に歪みを齎しました。今は労働力が足りなくなってきており、非正規労働者を正規に切り替える動きが出てきています。やっとまともになってきました。

大学でもグローバリズムの美名のもとに、中国人が爆留学してきているとのこと。3/26TV“バンキシャ”の中の「モクゲキシャ! (ニュース)」で紹介していました。概要が下記のように纏められています。世界の大学ランキングで北京大学とか清華大学とかが東大より上との解説がありましたが、週刊朝日の記事が事情をキチンと説明しています。『北京大を卒業し、東大大学院博士課程に在籍する朱偉(仮名・26歳)の回答はこうだ。「北京大が東大よりもランキング上位? そんなの中国人は誰も信じないですよ。そもそもイギリスの会社が発表したランキングで、評価基準は曖昧で欧米有利。教授の英語論文の数では日本が不利なのは当たり前だし、英語で学位が取れるコースも日本はもともと少ない。でも、少なくとも教授の質という点で東大はアジアでナンバーワンだと自分は思います。少なくとも北京大学を卒業し、アジアでの進学を考えるなら、香港大やシンガポール国立大よりも東大に行きたいと望むはずです」』と。自由のない国が学問の自由を認める訳がないのに、北京や清華大学を日本の大学より上のランクにするのはおかしいでしょう。ですから、日本の大学は外国人の入学枠を設け、制限しないと。長く税金を納めて来なかった外国人の子弟を試験だけで入学させるのは納得いきません。また中国人の研究は中国に帰れば、軍事目的に利用されます。日本学術会議の軍事研究はしないというのはおかしいでしょう。また、日本を侵略しようとする国にメリットを与えて放置するのは、愚かなことです。在日が東大や京大で研究したものが核ミサイル開発に利用されたのは有名な話です。日本人は自分以外のことにももっと関心を持つべきですし、メデイアのいう事をもっと疑ってかかるべきです。

<昨年度、東京大学や早稲田大学では外国人入学生が過去最多を記録、そのおよそ半数を中国の入学生が占めていた。1月、成田空港の到着ロビーでは男性が日本の大学を目指す中国からの受験生31人を待っていた。3月10日に合格発表が行われ今年は3012人が難関を突破した。日本にやってくる外国人留学生は増え続けている。来日した受験生が通うのは中国人専用の名校志向塾であった。中国人女性は「競争もそんなに厳しくないので日本にきてよかった」などと話した。

朱光耀さんは一昨年日本へやってきた。月20万円の仕送りを受け寮で暮らしている。朱光耀さんは「北京大学とか定員数がかなり限られていて、なかなか入れない」などと話した。中国では大学のある地域に戸籍を持つ受験生が優遇されるなど、過酷な入試制度が敷かれている。北京大学の場合去年の新入生3425人で特別枠で2027人。一般入試の受け入れは1398人だった。この一般枠も地域ごとに何人合格できるか決まっている。

上海から来た蔡蘊多さん。取材した日は1か月半ぶりの外出。蔡蘊多さんは高校生のときに日本に1年間留学していた。その時に日本の高校生の英語力が酷くて驚いた、中国だと小学校で習う内容だという。蔡蘊多さんは地方出身のハンデがのしかかり、得意な日本語をいかし東大を目指そうと決意した。中国では学歴で人を見極める社会だという。

園田茂人は「江蘇省で北京大に落ちた子と北京市で受かった子では落ちたこの方が頭がいいかもしれない。そういう子たちが東京大学の研究・教育全体の水準をあげてくれればハッピーなこと」などと話した。

東京大学の合格発表の日。蔡蘊多さんは不合格だった。しかし蔡蘊多さんは早稲田、慶応、一橋に合格していた。蔡蘊多さん「中国にいると一橋大学レベルの中国の大学には絶対に入れない」などと話した。>(以上)

http://www.news24.jp/articles/2017/03/06/07355783.html

https://dot.asahi.com/wa/2016120700209.html

本記事で、ルッテが勝ったとありますが、議席数を減らしておいて勝ったというのはおかしいでしょう。印象操作の一つです。オランダ自由党は議席数を増やしたのですから、自由党勝利と言っても良い。ドイツの選挙の前に仏大統領選がありますのでそちらに注目したいと思います。ルペンとマクロンの争いと言われていますが、どちらに転ぶかは分かりません。

熊谷記事

SPDの党大会で挨拶するシュルツ氏(写真:ロイター/アフロ)

9月に連邦議会選挙が行われるドイツ。この国の政治のダイナミズムを象徴する現象が今起きている。左派勢力のカムバックは、欧米を覆いつつある右派ポピュリズムの暗雲に対するドイツの回答だ。

3月19日、社会民主党(SPD)はベルリンで臨時党大会を開催した。最も重要な議題は、党首の正式な選出である。最も有力な党首候補は、欧州議会の議長だったマルティン・シュルツ(61歳)。1月末にジグマー・ガブリエルが党首の座を退き、シュルツが事実上内定していた。

得票率100%で党首に

この党大会で、驚くべきことが起きた。有効票を投じた605人の代議員の全員が、シュルツを党首に選んだのだ。SPDの153年の歴史の中で、党首が100%の得票率で選ばれたのは、今回が初めて。

シュルツは満面の笑みをたたえて「この投票結果は、我々が連邦首相府を制覇するという堅い意志の表れだ」と獅子吼。党員たちは座席から立ち上がり、スタンディング・オベーションを送った。年配の女性党員は「全員が立ち上がって党首に拍手を送ったのは、ヴィリー・ブラントが1964年に党首に選ばれた時以来ではないかしら」と感慨深げに語った。

シュルツ登場でSPDの人気が急上昇

いまSPDは、熱い興奮に包まれている。10年以上にわたり低迷を続けた同党が、シュルツの登場以来、猛然たる巻き返しに転じたのだ。SPDによると、今年1月以降、約1万人の市民が新たにSPDの党員になった。この「シュルツ現象」の勢いにはドイツの政治ジャーナリストだけではなく、SPDの幹部たち自身も目を丸くしている。

シュルツ現象のダイナミズムは、ここ数カ月間の世論調査の結果にはっきり表れている。公共放送局ARDが3月9日に行った調査によると、SPDの支持率は1ヶ月前の調査に比べて3ポイント増えて31%となった。今年1月に比べるとほぼ10ポイントの上昇である。

SPDはメルケルが率いるキリスト教民主・社会同盟=CDU・CSU(32%)に肉迫している。もしもSPDが左翼党(リンケ)、緑の党と連立すれば47%になり、CDU・CSUを大幅に上回る。

メルケルは2015年に89万人のシリア難民を受け入れたことをめぐり、保守勢力から厳しく批判され、支持率が低下している。ARDが実施した世論調査によると、回答者の55%が「メルケル政権の仕事ぶりに不満だ」もしくは「やや不満だ」と答えている。

左派連立政権が誕生する可能性

保守派に属するドイツ人の間では、「メルケルの政策があまりにも左傾化している」として疎外感を抱く人が増えている。このためCDU・CSUは、反EUと反イスラムを旗印に掲げる右派ポピュリスト政党「AfD(ドイツのための選択肢)」に支持者を奪われつつある。メルケルにとって最大の脅威は、これまでAfDだと考えられてきた。

しかし今年1月に突如巻き起こったシュルツ旋風も、メルケルが無視することのできない重大な脅威となりつつある。つまり、シュルツを首班とするSPD+リンケ+緑の党の「赤・赤・緑連立政権」の誕生が、急激に現実味を帯びてきたのだ。

ARDが2月初めに行った世論調査によると、「もしも首相を直接選ぶとしたら、シュルツを選ぶ」と答えた回答者は50%に達し、メルケルへの支持率(34%)を上回った。

ドイツ政党支持率調査(2017年3月9日)

資料・ARD

「アゲンダ2010は誤りだった」

なぜシュルツの人気は高いのだろうか。彼はベルリンでの党大会で「社会的公正を実現するとともに教育と家庭を重視し、労働組合との結束を強める」と宣言したが、具体的な政策はまだ提示していない。詳細は今年6月の党大会で発表する予定だ。

だがすでにはっきりしていることは、彼が社会保障を重視するSPD左派に属することだ。つまりシュルツは、1998年以来SPDを支配してきた、シュレーダー、ガブリエルという財界寄りもしくは実務派の政治家とは、一線を画す人物なのである。ある意味では、SPDが「労働者と社会的弱者を守る」という伝統路線に戻ろうとしていることを示している。そのことが、多くの党員を熱狂させているのだ。

シュルツは今年2月に、かつてSPDの党首だったゲアハルト・シュレーダーが断行した雇用市場改革プログラムを修正し、富の再配分を強化する方針を明らかにしている。2003年に実施されたこの改革は、戦後ドイツの雇用市場・社会保障制度に最も深くメスを入れた。

「アゲンダ2010」と呼ばれるこの改革で、シュレーダーは失業者に対する国の給付金を切り詰め、長期失業者の数を大幅に削減することに成功した。さらに彼は社会保障サービスの切り詰めによる労働コストの削減、人材派遣業の規制緩和など、企業の利益を増大させる政策を次々に打ち出した。この政策は、財界だけではなくCDU・CSUからも高い評価を受けた。メルケルは、2005年に首相に就任した時に、アゲンダ2010について、シュレーダーに感謝の言葉を送ったほどだ。

2009年にユーロ危機が表面化した後も、ドイツ経済が絶好調であった理由の一つは、シュレーダー改革によって、労働コストの伸び率を他国に比べて低く抑えることに成功したからだ。

だがシュルツは、「ドイツでは所得格差が拡大する一方で、不安定な仕事しか持てない人が増えている。これは、社会の主流派が過去に犯した過ちがもたらした結果だ。我が党も過ちを犯した。だが我々はそのことに気づき、過ちを修正しつつある」と述べた。

つまり、彼は「アゲンダ2010」が過ちだったとして、この改革プログラムを批判したのだ。

社会保障の拡充による富の再配分を

特にシュルツは、中高年の失業者向け援助金の支給期間を延長する方針を打ち出した。なぜ彼は、この点を問題視しているのか。

シュレーダー改革以前のドイツには、Arbeitslosengeld (失業者給付金)とArbeitslosenhilfe(失業者援助金)という2つの援助金があった。前者は税引き前の年収(上限6万2000ユーロ)から社会保険料と税金を引いた額の60%~67%を、最長32カ月支給した。また後者は、失業者給付金の支給期間が過ぎた後に、手取り所得の53%~57%を支給。その期間は、無期限だった。

シュレーダーは「失業者への援助が手厚すぎるので、賃金の低い仕事に就きたがらず、失業者でいる方が良いと考える人が多い」として、このシステムを廃止。これらに代えて、Arbeitslosengeld(第一次失業者給付金)とArbeitslosengeld II(第二次失業者給付金)という2つの給付金を導入した。

前者は、税引き前の年収から社会保険料と税金を引いた額の60~67%を支給するもの。この点は変わらないが、シュレーダーはその支給期間を18カ月に短縮した。以前のシステムに比べて14カ月も短い。

18カ月が過ぎると、失業者は第二次失業者給付金を受け取ることになる。その金額は当初西独で毎月345ユーロ(4万1400円・1ユーロ=120円換算)、東独では月331ユーロ(3万9720円)と定められた。これは、生活保護とほぼ同じ水準である。多くの年配の勤労者が、失業して1年半経つと生活保護並みに低い援助金しかもらえなくなったのである。これは多くの失業者にとって、屈辱だった。

2005年に誕生したメルケル政権は、シュレーダー改革はあまりにも厳しいと考え、58歳以上の失業者に対する第一次失業者給付金の支給期間を24カ月に延長した。さらに第二次失業者給付金の金額も若干引き上げた。

シュレーダー改革は、企業に長年勤めた後に解雇された失業者も、ほとんど働いていない若年失業者と同じく、生活保護と同水準の援助金しかもらえないシステムを生み出した。このことは、特に中高年労働者のSPDに対する怒りを増幅させた。彼らは長年にわたり失業保険制度に保険料を払い込んできた。それゆえ、若年労働者と同じ扱いを受けるのは不当だと感じたのだ。

シュルツは、これらの政策が社会の不公平感を強めていると主張している。

さらに、期限付き雇用契約についても彼は批判の目を向けている。ドイツの雇用契約は、原則として無期限だった。シュレーダーが規制を緩和し、期限付きの雇用契約を締結しやすいようにした。シュルツは、企業が期限付きの雇用契約を締結できる条件を、これまでに比べて厳しくする方針を打ち出している。

アゲンダ2010はSPDに深い傷を与えた

ドイツの雇用統計を見ると、失業者数は2005年には486万人だったが、2012年には290万人に減った。だがその一方でシュレーダー改革は、低賃金労働者を増加させた。たとえばシュレーダーは、ミニジョブという制度を作り、企業に対し社会保険料の支払いを免除した。仕事の内容はオフィスの掃除など、低賃金の職種である。

だがミニジョブだけでは、給料の額が低すぎて生活できない市民が多い。このために第二次失業者給付金を受け取っていた市民の数は、2011年の時点で286万人に達した。彼らは国から援助金をもらっているものの、一応仕事を持っているので、雇用統計上は失業者とはカウントされない。シュレーダーが失業者数を大幅に減らすことに成功した陰には、こうした統計上のトリックがあった。つまりシュレーダー改革は、米国や日本と同様のワーキング・プアー問題をドイツにもたらしたのだ。

シュレーダー改革に対して、旧東独を中心に抗議の声が上がった。SPDは州議会選挙で次々に惨敗。SPD地方支部からは、シュレーダーを批判する声が高まった。労働組合も、彼に背中を向けた。シュレーダーは2005年の連邦議会選挙で敗北して、首相を辞職し政界を去った。1998年の連邦議会選挙におけるSPDの得票率は約40%だったが、2009年には23%に落ち込んだ。史上最低の得票率を記録することになった。

シュレーダー政権で財務大臣を務めたオスカー・ラフォンテ―ヌら党内の左派勢力はSPDを去り、「リンケ」を創設した。1990年にSPDの党員数は約94万人だったが、2012年には約半分の47万人に減少した。アゲンダ2010はドイツに未曽有の好景気をもたらしたが、SPDは満身創痍となった。

庶民派首相候補・シュルツ

シュレーダーがアゲンダ2010を実施して以降、CDU・CSUとSPDの政策が似通ってしまい、両党とも独自性が見えなくなった。

つまり、SPDが「アゲンダ2010」をはじめとするネオリベラル的な政策を取り始め、労働者ではなく企業を利する党に変質したとして、市民たちは落胆した。彼らは今、シュルツが登場し「アゲンダ2010を見直すことによって、SPDが以前の姿を取り戻す」ことに強い希望を抱いているのだ。これに対してCDU・CSUと経済界は「シュルツの政策はドイツの経済成長にブレーキをかけ、再び失業率を高めるだろう」と警告している。

社会保障を拡大することで富の再配分をめざすシュルツの路線は、CDU・CSUとSPDの政策の違いを多くの市民に見えやすいものにした。

シュルツの経歴は異色だ。彼は1955年に、オランダ国境に近い、ノルトライン・ヴェストファーレン州のヴュルゼレンという人口4万人足らずの町で、警察官の家庭の五男として生まれた。1966年にアーヘンの近くのギムナジウム(大学へ進学する準備をするための高等中学校)に入ったが、1974年に中退。大学などの高等教育を受ける道は閉ざされた。

このため彼は本屋の店員になるための実務教育を受け、出版社や書店に勤務。1982年から1994年まではヴュルゼレンで書店を経営していた。彼は1970年代に一時アルコール依存症となったが、克服して1980年からは断酒している。

彼は19歳の時にSPDに入党し、1984年にヴュルゼレン市議会の議員、1986年にはヴュルゼレンの市長を務めた。1994年には欧州議会選挙で初当選し、欧州議会の社会民主党議員団の院内総務などを歴任。2012年から今年1月までは、欧州議会の議長を務めた。

つまり、シュルツは23年間欧州議会に所属し、ドイツの州レベル、連邦レベルでは議員として活動したことが全くない。ドイツ国内の政争にもまれず、シュレーダーが2003年にアゲンダ2010を断行した時にも、この国の政界から離れていたことが、シュルツにとって幸いした。前党首ガブリエルの人気が高まらなかった理由の1つは、彼がアゲンダ2010を支持したために、党内の左派から常に冷ややかな目で見られていたことである。

つまりSPDはシュルツというドイツ国内政治の門外漢を迎えることによって初めて、アゲンダ2010の呪縛から解放されることができた。髭面のシュルツは大学を出ていないせいもあり、エリート臭さがない。むしろ町工場の経営者か食料品店の店主のような、庶民的な印象を与える。

同じSPDに属しながら、イタリアの高級紳士服「ブリオーニ」をまとい、葉巻をくゆらすのを好んだシュレーダーとは、全く毛色が異なる政治家なのだ。CDUに属するヴォルガング・ショイブレ財務大臣は、シュルツについて「左のポピュリストだ」と警戒心をむき出しにしている。

首相レースは振り出しに?

ドイツの保守系日刊紙フランクフルター・アルゲマイネ紙(FAZ)の記者ヤスパー・フォン・アルテンボックムは、3月20日付の社説で「シュルツが登場し、連邦首相の座をめぐる競争は振り出しに戻った」と述べた。彼は、去年12月まではほぼ確実と見られていたメルケル4選が、覆されるかもしれないと主張しているのだ。

政治の世界ではモメンタム(勢い)が重要な役割を果たす。2003年以来右に振れていたSPDの振り子は、今大きく左へ戻ろうとしている。この勢いを利用したシュルツが、メルケルを破って首相の座に就く可能性も否定できない。

9月の連邦議会選挙の動向を占うカギとなるのは、3月から順次行われる州議会選挙の結果だ。まずは3月26日にザールラント州で、5月14日にはノルトライン・ヴェストファーレン州で行われる。ドイツの政治が、ますます面白くなってきた。(文中敬称略)

岡部記事

オランダ下院選(定数150)の投開票が3月15日行われ、現職のマルク・ルッテ首相率いる与党・自由民主党が33議席を獲得し、現有の40議席から大きく減らしたものの、第1党を維持した。(写真:新華社/アフロ)

欧州連合(EU)の行方を左右すると見られていたオランダの下院選は、ウィルダース党首率いる極右ポピュリズム(大衆迎合主義)政党、自由党が伸び悩み、ルッテ首相率いる中道右派の自由民主党が第1党を維持した。英国のEU離脱、米国のトランプ大統領の登場で、世界にポピュリズムが蔓延するなかで、EUはともかく危機打開の第1関門は通過した。しかし、反EUの排外主義はEU全域に浸透しており、フランスの大統領選挙はなお予断を許さない。EUが危機打開できるかどうかは、EU自身が大胆な改革に踏み出せるかどうかにかかっている。

反面教師になったトランプ流排外主義

「オランダ国民は誤ったポピュリズムに待ったをかけた」。ルッテ首相はこう勝利宣言をした。自民党は議席を40から33に減らしたが、ともかく反イスラムを鮮明にする極右ポピュリズム政党・自由党の台頭に歯止めをかけたのは、勝利だったと言えるのだろう。英国のEU離脱、トランプ米大統領の誕生に連鎖する形で、オランダで極右ポピュリズム政党が第1党になれば、フランスの極右「国民戦線」を勢いづかせる恐れがあった。それはEUの今後に深刻な打撃を与えかねないところだった。投票率が80%を上回ったのをみても、オランダ国民の間に極右台頭への警戒感が強かったことを示している。

その背景にあったのは、トランプ米大統領が実践する排外主義をめぐる大混乱だろう。大統領令による移民排斥、難民受け入れ停止など保護主義を超えた排外主義は、米国の分裂を招いただけでなく、国際社会の批判にさらされた。そんななかで、「オランダのトランプ」と言われるウィルダース氏率いる自由党が第1党の座に就く危うさを、オランダ国民は感じていたのだろう。ウィルダース氏をはじめ欧州の極右勢力はトランプ大統領の登場を「次はわれわれの番だ」と大歓迎したが、トランプ流排外主義はオランダ国民にとって「反面教師」になったのである。

オランダの選択は時代の流れを変えるか

では、オランダ国民の選択はポピュリズムの世界的潮流を変えられるだろうか。小さな国ではあるが、先進国のオランダが時代の流れを変えたことはある。冷戦末期の1980年代はじめ、米ソ間の軍拡競争はピークに達していた。旧ソ連の中距離核ミサイルSS20配備に対抗して、米国の核ミサイルが西欧諸国に配備されるなかで、西欧には核危機への不安が高まっていた。西欧に反核運動が広がるなかで、オランダ政府は米核ミサイルの配備延期を決断する。

それは北大西洋条約機構(NATO)の一員として苦渋の決断だった。当時のルベルス・オランダ首相にインタビューしたが、狭い首相執務室で頭をかきむしる若き首相の姿をいまも思い浮かべる。

NATOの結束を乱す決断に西側で一時批判が高まったが、この小さな国の選択は世界を動かすことになる。米ソ緊張から米ソ・デタント(緊張緩和)へ、そして冷戦の終結へと時代は大きく転換することになる。

世界に蔓延するポピュリズムに対するオランダの選択もまた時代の流れを変えることになるだろうか。オランダ国民の選択がそれに続く仏独の国政選挙にどんな影響を及ぼすかにかかっている。

仏大統領選にどう響くか

オランダの選挙結果に、仏独を中心に欧州の首脳たちは祝意を表明した。メルケル独首相は「欧州人として協力を続けられるのが楽しみだ」と民主主義の勝利を素直に喜んだ。フランスのオランド大統領は「過激主義に対する明白な勝利だ」と述べた。国政選挙を控えて、極右ポピュリズムへの防波堤になってくれたことを歓迎した。

最大の焦点は、フランスの大統領選挙である。4月23日に第1回投票、5月7日に決選投票が実施されるが、いまのところ極右・国民戦線のルペン党首が先頭を走り、無所属でリベラル派のマクロン前経済相が追い上げる展開になっている。一方で、当初は有力とみられていた共和党のフィヨン元首相は、家族の不透明な給与問題で苦戦を強いられている。決戦投票では、ルペン氏とマクロン氏の対決が予想されるが、極右大統領の誕生を食い止めるため左派と右派が連携できるかどうかが注目点だ。

オランダ国民の選択がルペン陣営の足を引っ張るかどうかは別にして、ルペン陣営が隣国の極右政党の台頭という追い風を受けられなくなったのは間違いない。

もっとも、オランダ選挙でウィルダース氏率いる自由党は、第1党になれなかったとはいえ、議席を8から20に伸ばしている。当初の見積もりははずれたものの、議会で影響力を発揮できる地位を確保したともいえる。仏国民戦線のルペン党首は、この極右勢力の伸長に着目している。

少なくともEU諸国で極右ポピュリズムはなお影響力をもっているとみておくべきだろう。移民問題などでオランダのルッテ首相はウィルダース氏の主張を一部受け入れることによって、第1党の座を維持した面はある。そこに政権に影響を及ぼすポピュリズムの本質がある。

フランスの大統領選も英国のEU離脱とトランプ流排外主義の影響は大きいとみられる。トップを走るルペン候補が反EU、反ユーロを鮮明にしているだけに、英国のEU離脱交渉の展開は微妙な影響を及ぼすだろう。交渉の難航が避けられないうえに、スコットランドの独立機運など「英国の分裂」を招く事態になれば、仏国民も反EU、反ユーロの極右ポピュリズムを選択しにくくなるはずだ。

トランプ米政権が排外主義を強め、地球温暖化防止のためのパリ協定を離脱する事態になれば、トランプ大統領を歓迎してきたルペン候補の足を引っ張る可能性もある。

メルケル首相は4期目に入れるか

ドイツでも右派「ドイツのための選択肢」が勢力を拡大している。といっても、ドイツの場合、右派が政権の座に近づく可能性は皆無である。秋の総選挙でEUの盟主といえるメルケル首相が4期目を迎えられるかどうかが焦点である。

対抗馬と目されるのは連立を組む社会民主党の新党首、シュルツ前欧州議会議長である。ここにきて急速に支持率を高めている。メルケル、シュルツ氏ともに筋金入りのEU主義者だけに、EUを主導する姿勢には変わりはないだろう。シュルツ氏は内政経験がないのがアキレス腱だが、社民党が前に出れば、財政規律より成長戦略という現実路線が期待できるという見方もある。

しかし、英国のEU離脱とトランプ米大統領の排外主義のもとでEUを運営するには強力なリーダーシップが求められる。メルケル首相4選への期待は高まるだろう。

「2速度方式」でEUは再生できるか

EUは反EUのポピュリズムを乗り越えて統合を進化させられるかが問われている。ユンケルEU委員長は、英国のEU離脱を受けて2025年に向けての「欧州の将来に関する白書」を公表した。そこには統合をどう進化させるか5つのシナリオを提示している。第1は現状維持、第2は単一市場の完成、第3はEU域外の国境警備などに限定・集中、第4は2速度方式(統合を進めるのに熱心な加盟国はどんどん統合を進め、熱心でない国や現状では困難な国はゆっくりで構わないという方式)、第5は連邦主義的統合、である。

現状維持から「欧州合衆国」までかなり広い視野で統合を推進する姿勢である。EUの究極の目標であるはずの「欧州合衆国」構想を1つのシナリオと位置付けているのは、危機のなかで、EUも現実的選択を模索せざるをえなくなったことを示している。

この5つのシナリオのうち、ユンケルEU委員長やメルケル独首相はじめEU主要国の首脳が推しているのが2速度方式である。防衛、治安対策、税制などでの統合推進を念頭に置いている。

EUはもともと原加盟国と後発国、ユーロ加盟国と非加盟国、移動の自由を求めるシェンゲン協定加盟国と非加盟国など、2速度方式で運営されてきているが、これをさらに広げ徹底しようというものだ。

これは現実的選択にみえるが、この構想に後発組の旧東欧圏がはやくも強く反発している。27カ国の結束を維持しながら、統合を進化させられるかどうかが問われる。

とはいえ、EUが崩壊の危機にさらされているとみるのは悲観的すぎる。2度の世界大戦を経て創設され、冷戦終結で進化したこの平和の組織は簡単には崩壊しない。危機にあってこそEUの粘り強さに着目すべきだ。オランダ国民の選択は、そんなEU市民の粘り強さを示したといえる。

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『米国から「同盟国」と呼ばれなくなった韓国 「食事会なし」で韓国を離れた米国務長官』(3/23日経ビジネスオンライン 鈴置高史)、『韓国の米ミサイル配備に中国の不満(社説)』(3/23日経FT)について

テイラーソンの食事接待の問題は、嘘つき韓国の面目躍如たるものがあります。韓国は「所謂従軍慰安婦」と同じく、嘘をついてもその場が凌げれば良いという発想でしょう。米国は日本と違い、事実関係を追及して発表します。翻って我が国はすぐに謝ります。事実関係を無視してまでも。GHQの占領期間、彼らに媚び諂ってきたメデイアが未だ自虐史観によって立つ報道を続けますので、ネット情報を取れない人は、洗脳されたままその情報を安易に信じてしまいます。戦後の呪縛がまだまだ解けていません。

米国人もやっと韓国人が嘘をつく民族だというのに気付いてきているのでは。“Korean fatigue”と言う言葉が囁かれ出した頃から、日本人と朝鮮半島人は違うと気付いたはずです。「金三胖(=金王朝三代目のデブ)」の瀬戸際政策も米国にとっては許し難く、今迄問題解決してこなかった中国(というか米国攪乱の道具として放置してきた)にも怒りを覚え、従北に揺れる韓国にも呆れ返り、今回の接待問題で、同盟破棄の手前まで来ているのを分からせようとしたのでは。

同盟を破棄したとしても、米軍基地を置くこととは別問題です。THAADは配備したままにすると思います。“tripwire”の役目を果たすのでは。しかし、同盟破棄すれば間違いなく戦時作戦統帥権は韓国に返還されると思います。同盟破棄後、もし朝鮮半島で戦争が起きれば、米軍基地が襲われない限り、米国としては自動参戦せず、北と南で戦争するのを暫し眺めるという可能性もあります。核を北が使わない限り、放置するでしょう。米国が出なければ、中国も傍観するでしょう。その前に、米軍基地はかなり、縮小するのでは。その分を台湾に回せば良いでしょう。

FTの記事は、白人は中国人のことを殆ど理解していないと思います。歴史的に中国は外国製品ボイコットや暴力的デモを多用してきました。そもそも個人の基本的人権や民主主義について中共が国民に教えているとは思えません。個人が自由に生きる権利を制限していますので、中共の命令は絶対です。個人で動くにしても、中共の了解のもとに動かなければ、逮捕抑留されます。所詮共産主義国家、一党独裁国家です。自由主義諸国と社会構造の基本が全く違うという事を必ず思い起こして判断しないと間違います。習近平がダボスで「自由貿易を擁護」する発言をしたとのことですが、先ずは自国民に「言論の自由」を与えてから言ってほしいと思います。

日経ビジネスオンライン記事

尹炳世外相と臨んだ会見で、ティラーソン国務長官は厳しい表情を見せた(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

前回から読む)

米韓の間の外交的な亀裂が、傍目にも分かるほどに広がった。

岸田外相とは飯を食べたのに

鈴置:米国のティラーソン(Rex Tillerson)国務長官の訪韓で騒ぎが起きました。国務長官は3月15日からの訪日の後、17日にソウル入りしました。

米国は現在、THAAD(=サード、地上配備型ミサイル迎撃システム)の在韓米軍への配備を進めています。それを韓国が邪魔しないよう督励に来たのです。

マティス(James Mattis)国防長官らの訪韓と同様、対韓圧力の一環です(「米国のTHAADを巡る対韓圧力」参照)。

米国のTHAADを巡る対韓圧力

2016年
12月20日 安全保障補佐官に内定のフリン元陸軍中将、訪米した韓国政府高官に「THAAD配備は米韓同盟の強固さの象徴」
2017年
1月31日 訪韓を前にしたマティス国防長官、韓民求国防長官に電話し、THAAD配備を確認
2月2日 マティス国防長官、訪韓し「北朝鮮の核の脅威が最優先課題」と表明、THAAD配備も再確認
3月1日 マクスター安全保障補佐官と金寛鎮・国家安保室長、電話会談し「THAAD配備を再確認」
3月1日 マティス、韓民求の米韓両国防長官、電話で会談しTHAAD配備を再確認
3月6日 米軍、THAADの一部機材を烏山空軍基地に搬入
3月17日 訪韓したティラーソン国務長官、会見で「韓国の次期政権もTHAADを支持することを期待する」

ティラーソン国務長官は翌18日に北京に向かいましたが、韓国政府の誰とも食事をしませんでした。これが騒ぎの発端です。

韓国各紙は「尹炳世(ユン・ビョンセ)外交部長官が夕食に誘ったのに断られた」と一斉に書きました。

中央日報の「米国務長官、日本外相と1時間の夕食会、韓国では会談だけ」(3月18日、日本語版)から引用します。

  • 予想されていた尹長官との夕食会がなかった。韓国側は今回の訪韓を契機に両国外相間のスキンシップ強化を内心望んでいた。
  • このため外交部は当初、夕食会の日程を構想していたが、ティラーソン長官は個人の日程を消化するという立場だった。外交部は招待を断られる格好となった。
  • ティラーソン長官は岸田外相とは3月16日午後5時40分から1時間ほど業務協議を兼ねて夕食会をした。
  • 同長官は3月17日の晩、ナッパー(Marc Knapper)駐韓米国大使代理と食事をし、韓国の動向などについて報告を受けたという。

国務長官の「疲れ」のせいだ

—「差別された」と怒っているのですね。

鈴置:韓国人はどんなことでも「日本並み」の待遇を受けないと怒り出します。当然、この怒りを英語でも発信しました。

コリア・ヘラルド(The Korea Herald)はティラーソン訪韓のまとめ記事「US says ‘strategic patience’ on NK is over」(3月17日、英語)の最後でそれを訴えました。

  • Tillerson spent almost 2 1/2 hours with Japanese Foreign Minister Kishida including a dinner, and another hour with Prime Minister Abe. But his meetings with Yun and Hwang were each confined to about an hour, without a lunch or dinner gathering. Seoul officials said the US side opted not to have a meal together, citing the secretary’s “fatigue.”

岸田外相とは夕食付きで2時間半も話したのに、尹外相とはたったの1時間。ランチも夕食もなかった――という恨み節です。

これだけなら「また韓国人がひがんでいるな」という話で終わったと思います。が、韓国の役人が言ったとされる「余計な一言」が問題に火を付けました。「食事なしはティラーソン長官の疲労のせい」との部分です。

米国の外交界には「韓国疲れ」(Korea Fatigue)という言葉があります。日本の足を引っ張ろうと韓国政府が「日本の首相を米議会で演説させるな」などと無理難題を言うようになったからです(「米国の『うんざり』が『嫌韓』に変わる時」参照)。

米国の外交担当者は一時は韓国人に会うのも嫌がるようになりました(「『アベの米議会演説阻止』で自爆した韓国」参照)。でも、今回の「疲れ」は肉体的な「疲労」です。

この記事を読んだ誰もが「それぐらいの体力がなくて米国の国務長官が務まるものか」と考えたことでしょう。さっそく、世界のメディアがこの記事を引用しました。

ワシントン政界に大きな影響力を持つ政治サイト「ザ・ヒル(The Hill)」は「Report: Tillerson cuts short South Korean Visit, citing ‘fatigue’」(3月17日、英語)と「疲労」を見出しにとりました。

訪韓のまとめ記事ですが「疲労のために訪韓日程をはしょった話」から書き起こしています。

韓国政府は嘘八百

—なぜ、韓国の役人は「疲れのせい」にしたのでしょうか。

鈴置:米国側の、それも不可抗力の理由にしておかないと「日本と比べ軽んじられた」との怒りが、自分たちに向くと思ったからでしょう。韓国の役人が本当にそう言ったとしての話ですが。

国務長官としての資質に疑問を付けられたティラーソン長官は、直ちに反論しました。3月18日、ソウルから北京に向かう機中で、ただ1社だけ長官搭乗機への同乗を許されたウェブメディア「インデペンデント・ジャーナル・レビュー」(IJR)の記者に以下のように語ったのです。

Transcript: Independent Journal Review’s Sit-Down Interview with Secretary of State Rex Tillerson」(英語)から引用します。記者の初めの質問が「韓国紙は疲労から夕食会を断ったと報じているが、何があったのか?」で、それへの答えです。

  • They never invited us for dinner, then at the last minute they realized that optically it wasn’t playing very well in public for them, so they put out a statement that we didn’t have dinner because I was tired.

ティラーソン長官は「私が夕食会を断ったのではない。韓国政府が招いてくれなかったのだ」と明言しました。さらには「それが明らかになると世論に悪い影響が出ると気がついた韓国政府が、私の疲労のせいにしたのだ」と言い切りました。

すると記者がすかさず「韓国側が嘘を言っているのですね?」と確認しました。それに対してティラーソン長官は「いや、状況を説明しただけだ」と答えました。

中国の顔色を見た韓国

—「状況を説明しただけ」ですか……。

鈴置:「韓国人が嘘つきと大声で言うつもりはないが、彼らの言っていることは嘘だ」ということです。

長官は自らの主張を補強するためでしょう、「政府高官の日程はホスト国が組むものだ」と付け加えています。

—どちらの言っていることが本当なのでしょうか。

鈴置:それに関しては「ヴァンダービルド」のペンネームで外交・安保に精力的に筆をふるう韓国の識者が考察を加えています。

崔甲済(チェ・カプチェ)ドットコムの「朴槿恵の最悪の失策は尹炳世の起用」(3月20日、韓国語)の一部を翻訳します。

  • ティラーソン長官の主張が事実なら「尹炳世の外交部」の態度(思惑)を以下のように推定(仮定)しても無理筋ではない。
  • 「中国はTHAAD配備に反対している。ティラーソン長官は配備を督励(強調)するために韓国に来た。その長官を我々(韓国外交部)が手厚くもてなせば、中国が不快に思うことだろう」

「ズボンが破れた」と言い訳

—「飯なし」は中国の顔色を見てのことだった、というのですね。

鈴置:十二分にあり得る話です。中国の反対を懸念して韓国外交部はTHAAD配備に消極的でした。朴槿恵政権内部でも、配備派の国防部と厳しく対立していました。

2016年7月8日、国防部は在韓米軍司令部と突然、「2017年末までの配備に合意した」と発表したのです。この時「尹炳世の外交部」は決定に「すねて見せる」パフォーマンスを敢行しました。

国防部の記者会見と同時刻に尹炳世長官は「ズボンが破れた」と称し、ソウル市内の百貨店の紳士服売り場でショッピングをして見せたのです(「『中国入り陣営寸前』で踏みとどまった」参照)。

外相として顔を出してもいい会見には出ず、敢えて衆目の中で買い物をする――。韓国では「私は配備に反対しました」との中国に対する言い訳だったと見なされました。

中国に気に入られるためなら、せこいパフォーマンスを平気でやる外相ということです。である以上は今回の「飯なし事件」の犯人も韓国側と見なされてもおかしくはありません。

安倍首相にも「飯なし」

—そう言えば、訪韓した安倍晋三首相に対しても「飯なし」でしたね。

鈴置:2015年11月、日中韓首脳会談に出席するため訪韓した安倍首相は朴槿恵(パク・クンヘ)大統領と2国間でも会談しました。が、食事には招待されませんでした。朴槿恵大統領は李克強首相に対しては晩さん会で歓迎しましたから、露骨な嫌がらせです。

どの国でもそうですが、ことに韓国では客に飯を出さないというのは異常なこと。当時、韓国では「いくら日本との関係が悪いからと言って、これは恥ずかしい」との声も上がりました。

ヴァンダービルド氏も先ほど引用した記事で、安倍首相とティラーソン長官がそれぞれ経験した「飯なし事件」を並べて書いています。以下です。

  • 「尹炳世の外交部」にはすでに「反日に迎合する昼食不提供(対安倍)」という前科がある。先の推定が正しければ、今回は「親中に迎合する夕食不提供(対米国)」である。
  • 中国の顔色を見、反日勢力の顔色を見るためなら、友好国(米日)との外交に悪影響を及ぼす非礼も辞さないアマチュア(国益毀損)外交を「尹炳世の外交部」は展開してきたのだ。

「文在寅の門前」に市

—韓国人はよほど中国が怖いのですね。

鈴置:元・朝貢国とはそういうものなのでしょう。もっとも「尹炳世の外交部」が顔色を見るのは中国だけではありません。

5月9日の大統領選挙で本命と見られるのが文在寅(ムン・ジェイン)「共に民主党」前代表です。

朴槿恵前大統領の「国政壟断事件」が起きる直前には、北朝鮮との関係を疑われて支持率が低迷していました。というのに大統領の弾劾事件を主導した形となって、他を大きく引き離す人気No.1候補に躍り出たのです。

文在寅・前代表は反米左派の盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権で秘書室長を務めました。今も「大統領になったら、THAAD配備の見直しや開城工業団地の再開を検討する」と明言しています。

そして「共に民主党」は大統領権限代行の黄教安(ファン・ギョアン)首相に対し「THAAD配備は国会の批准を得てからにせよ」と米国との約束をひっくり返すよう要求し始めました。

朝鮮日報が「事前に約束もなしに突然、黄代行を訪れTHAADを抗議した民主党」(3月21日、韓国語版)で報じています。

政権をとったかのような「共に民主党」の一連の振る舞いに、同紙は社説「いくら支持率1位とは言え、やり過ぎの民主党人士」(3月17日、韓国語版)で厳しく批判しています。

一方、役人も次期政権で登用してもらおうと、文在寅氏の周辺に群がっています。朝鮮日報の「文の前に列を成す官僚たち」(3月17日、韓国語版)が詳しく報じました。

韓国はただのパートナー

—それを聞くと今回の「飯なし事件」の犯人は「尹炳世の外交部」という気がしてきました。

鈴置:確たる証拠はありませんが、状況証拠では真黒です。ティラーソン長官も、そうしたレクチャーを受けたと思います。ちゃんと「お返し」しています。

先に引用した「インデペンデント・ジャーナル・レビュー」(IJR)の「Transcript: Independent Journal Review’s Sit-Down Interview with Secretary of State Rex Tillerson」で、「尹炳世の外交部」を真っ青にさせる発言をしました。

「韓国人の嘘」に関する会話の次に「日本に何を求めるか」と聞かれた長官は以下のように答えました。

  • Japan is ― because of the size of their economy ― they are our most important ally in the region, because of the standpoint of both security issues, economic issues, stability issues. So that’s not anything new. That’s been the situation now, for decades. South Korea, similarly, is an important partner relative to stability of northeast Asia.

「日本は最も重要な同盟国」と語った後に、聞かれてもいない韓国に触れ「北東アジアを安定させるための重要な1つのパートナー」と述べたのです。

韓国では「日本が最も重要な同盟国と位置付けられた半面、我が国は同盟国と呼んでもらえなかった」「米国にとって、我が国は『1つのパートナー』に過ぎない」と問題になりました。

聯合ニュースのシム・インソン・ワシントン特派員の「ティラーソン『日本は同盟、韓国はパートナー』で論議、日本優先の本音が露呈?」(3月20日、韓国語版)は、必死で火を消そうとする韓国の外交関係者の発言を紹介しています。

  • ティラーソン長官はインタビューで米日と韓米関係に不均衡はないと言っている。全体の文脈を見れば「同盟」か「重要なパートナー」かに意味を与える必要はない。

しかし、この記事はそれを否定する次のような「反証」も載せています。

  • 米国の当局者は通常、友好国に言及する時には戦略的な重要度に応じて、同盟―友人―パートナーの順で言及する。

お灸を据えた米国

—「同盟国事件」は、ひがみがちな韓国人の思い過ごしでしょうか。

鈴置:いいえ、ティラーソン長官は意図的に韓国を「同盟国」扱いしなかったのだと思います。

この「たった1人の同行記者」との一問一答は実によく練られていて、米国政府の意向の微妙なヒダまで伝えています。

例えば「日韓の核武装」というテーマにも触れていますが、日本で大騒ぎにならないよう言葉を選ぶ半面、「北の核武装を許すのなら日韓にもさせるぞ」と、ちゃんと中国を脅しています。

米国政府の意向をとにかく正確に伝えることを狙ったこの記事で、不要な誤解を招く発言をするはずはありません。明らかに韓国にお灸を据えるために「同盟国から外した」のだと思います。

身から出たサビ

—そもそも韓国は米国から離れ始めていますしね。

鈴置:そこです。韓国人は「米国が大事にしてくれない」と文句を言いますが、韓国自身が米中二股外交に邁進して来て今、一気に「離米」に動くところなのです。「軽んじられる」のは当然です。身から出たサビなのです。

ことに第2次朝鮮戦争が始まるかもしれないという時です。米国にすれば、在韓米軍を守るTHAADの配備を韓国政府に邪魔されてはかなわない。

ティラーソン長官の訪韓の最大の目的は、韓国が中国側に寝返ってTHAAD配備を拒否することを防ぐことでした。

しかし5月中旬にスタートする次期政権は配備拒否に動く可能性が高い。現政権でさえ、中国の顔色を見るのに必死であることが現地に来てよく分かったことでしょう。

となれば、ここで一発、韓国を脅しておく必要があります。「THAAD配備を拒否したら同盟を打ち切るぞ」――とです。

同盟を直ちに打ち切るかはともかく、配備を拒否したら米国は在韓米軍の撤収に動くと見るのが日米の専門家の常識となっています。

「パートナー」という言葉にも意味があるのかもしれません。米軍は北朝鮮の核武装を防ぐために韓国の基地を使う可能性が大です。

「パートナー」からは「とにかく基地は使うからな。その後、同盟がどうなろうと気にしない。もう、お前は一時的な協力者に過ぎないのだ」との米国の気分が嗅ぎ取れます。

「米韓」は「日米」の下受け

—ティラーソン長官の脅しは効きましたか?

鈴置:大いに効きました。韓国経済新聞の社説「『日本は核心同盟、韓国はパートナー』と述べた米国務長官」(3月21日、日本語版)は「同盟国事件」と「飯なし事件」に関し、強い懸念を表明しました。

  • 韓米同盟は我々にとって死活的な利害関係だ。繁栄を可能にした原動力でもある。「隷属だ」と騒ぐ一部の声は民族主義的な安っぽい感傷論にすぎない。
  • 米国は「アメリカファースト」のスローガンの下、外交安保葛藤を覚悟して原点から見直している。世界は動いているが、韓国外交部はどういう考えなのか心配だ。

朝鮮日報は3月21日の社説「米国務長官の言葉通り、朝鮮半島の未来は予測できない」(韓国語版)で以下のように書きました。

  • トランプ政権は韓米同盟を米日同盟の下部システムと認識している感もある。米国の朝鮮半島政策と韓米関係が、これまでは想像もできなかった方向にも行くかもしれないという事実をまずは受け入れねばならぬようだ。

「米韓同盟」は「日米」の下請けに過ぎなくなった。それに気づかず今まで通りに行動していると、米国から見捨てられるかもしれない、との焦りの表明です。

陳謝のためワシントンへ?

中央日報の金玄基(キム・ヒョンギ)ワシントン総局長も同じ日に「あきれる韓国外交」(日本語版)を書きました。この記事は「飯なし事件」を主題にしていますが、興味深いくだりがあります。

  • 怒ったティラーソン長官に陳謝でもするかのように、尹炳世外交部長官は会談4日後の21日、我々には特に急ぎでもない米国務省主催の「反イスラム国(IS)外相会議」に出席するためワシントンへ行く。

確かに、尹外相のこの会議への参加発表には唐突感がありました。「陳謝」のための可能性が大です。記事は以下のように結ばれています。

  • 朝米間、米中間の衝突より韓米間の衝突が先に発生するしかない構造だ。その場合、「コリアパッシング」どころか、韓米同盟64年の最大の危機を迎えることもある。大統領候補らはそのような覚悟ができているのか。

「名誉革命」が呼ぶ米韓同盟の危機

ほとんどの保守系紙を含め、韓国メディアは「世界に誇る名誉革命」と、朴槿恵弾劾劇を誇って来ました(「『名誉革命』と韓国紙は自賛するのだが」参照)。

でも、その結果「反米左派政権」が誕生しそうです。「革命」を煽っているうちに、国を滅ぼしかねない危険な穴に自らを落とし込んでしまったと保守系紙もようやく気がついたのです。今となってはもう、手遅れの気もしますが。

(次回に続く)

FT記事

他国を攻撃させるために自国のナショナリスト(国家主義者)を解き放ち、逆に同じナショナリストに倒された政権の事例は歴史上いくつもある。中国共産党はこのことを知っている。にもかかわらず、その時々にたまたま中国を刺激した国がどこであれ、中国はその標的に対する攻撃をあおり、ボイコットを促さないと気が済まない。

今回は韓国にその順番が回ってきた。韓国は、北朝鮮による核武装の脅威にさらされるなか、国内に米軍の地上配備型ミサイル迎撃システム(THAAD)を配備すると決断した。これを受けて中国は、そのレーダーの監視範囲が中国の奥深くにまで届くことから、この配備は地域の戦略的バランスを崩し、中国自身の軍事力を弱体化させると主張している。

米ミサイルの韓国配備に反発して韓国製品のボイコットが広がっている(北京のロッテマートの店舗)=AP

これこそが、米国政府によるTHAAD配備計画の理由の一部であることに間違いはない。米国は、中国に依存する北朝鮮を制する中国の行動は不十分で、そのことに業を煮やしているのだと中国政府に告げている。もし中国がTHAAD配備を望まないのであれば、北朝鮮による挑発的攻撃を抑え込むようさらに手を打つべきだ。

■子どもにも韓国ボイコット教え込む

だが、中国共産党はそうする代わりに、反韓国の辛辣な批判や、韓国ビジネスに対する攻撃、中国人観光客の訪韓阻止を国営メディアで展開した。さらには、学校の子どもたちに対してさえも、韓国製品に対する大規模集会やボイコットを教え込んでいる。

中国による攻撃の矢面に立ったのは、THAAD配備に土地の一部を提供した韓国のスーパー、ロッテだ。中国で展開する99店舗の実に87店舗は一時的、もしくは恒久的に閉店させられた。なかには、偽りの「防火安全対策」違反の標的になった店舗も多かった。こうした行為は世界貿易機関(WTO)の規則に抵触する可能性があり、韓国政府は既に、WTOに中国の行為を調査するよう求めている。

中国は現在、米国のトランプ大統領が持つ保護主義への強い衝動に対抗しようとしているが、そのなかで、中国自身がとったこの行為は自滅的だ。中国がグローバル化を嫌っていると非難する西側諸国に、攻撃の手段を与えるようなものだ。

中国は、単に国民の意見を反映したものだとして、対韓国の抗議行動から距離を置こうとした。だが、中国では、党の指導者がいら立ちを募らせる最新の的(韓国)に対して不満を募らせる人たちを除いて、公の場でのあらゆる形の抗議は実質的に禁止されているのだが。

■ナショナリズム利用は慎重に

中国が、韓国の次期大統領にTHAAD配備を撤回させることを期待して、ボイコットを促し、反韓感情をあおっているのは明かだ。韓国の大統領を罷免された朴槿恵(パク・クネ)氏の後任を選ぶ選挙は5月上旬に実施される。後任の最有力候補は、最大野党「共に民主党」の文在寅(ムン・ジェイン)前代表で、配備を見直すこと既に表明し、米国に対して「ノー」と言うことを学ばなければならないと語っている。どの候補が大統領になっても、北朝鮮との緊張緩和の道を探らなければならない。また、最大の貿易相手国である中国とも協力しなければならないだろう。だが、中国の経済的圧力に屈したり、一方的にTHAAD配備を撤回するのは過ちだ。

中国は、圧力をかけるのは効果的だと考えており、他国との対立に経済的ナショナリズムを利用し続ける。これまで圧力で他国を引き下がらせることに成功してきた。良識のある指導者なら、自国でナショナリズムをあおる一方で、そうした戦略的要請と商業的強要を混同して他国に対することには慎重になるだろう。この混同は貿易関係をこじらせるだけでなく、同じナショナリストが、結局は自分にとっても手に負えない勢力であると証明しかねない。

(2017年3月23日付 英フィナンシャル・タイムズ紙 https://www.ft.com/)

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『韓国ロッテが怯えた中国「告発TV番組」の顛末 日本産食品の「産地誤読」で面子を失った国営中央テレビ』(3/24日経ビジネスオンライン 北村豊)、『中国の「放射能汚染」告発に無印良品が徹底反証 “小清新”は「中国産フェイクニュース」より「日本産」を支持』(3/22日経ビジネスオンライン 福島香織)について

本両記事を読んで感じましたのは、「無印良品」の中共への戦い方が正しいという事です。ナイキは米国企業なのに簡単に謝罪し、補償金まで払ったというのでは、余りに骨がありません。思い起こすのは小生が2005年に北京駐在時代、反日デモを仕掛けられたことでした。本社の指示で、「翌日記者会見を開いて謝罪せよ」とのことでした。言いがかりに近いもので、義憤を感じ、北京駐在の役員に掛け合っても「本社指示」とのことで相手にしてくれませんでした。後で聞くと、社外取締役の岡本行夫氏が「早く謝罪した方が良い」と言ったからとのこと。それを鵜呑みにして、現地に言ってくる本社役員もどうしようもありません。岡本氏はアメリカ、エジプトしか駐在経験がないはずです。それが、中国について判断し、あろうことか「謝罪を」というのですから。アメリカにいれば謝罪の意味が何であるかが分かるはずです。謝罪=賠償と言うのは国際常識です。ですから、慰安婦でも強制徴用でも韓国は金をせびる道具として使っている訳です。認めたら歴史への冒涜、日本人の不名誉、賠償と繋がる訳です。日本の政治家は国際化していないし、共産国家の思惑にしてやられてきたという事です。

岡本氏は三菱マテリアルの強制徴用問題でも簡単に謝罪をさせ、賠償金を払ってしまいました。売国奴です。日韓基本条約で解決済なので突っぱねれば済むのに、金で解決という安易な道を選びました。外務省は戦える人間がおらず、日本の名誉を傷付けても、自分が安泰であれば良いという輩ばっかりです。また岡本氏は「北米一課長時代、日本が出した湾岸戦争の戦費をちょろまかした」と日高義樹氏の本にありました。機会があり、日高氏にこの件を確認しましたところ、「そのとおり。岡本氏から何も抗議が来てないのが良い証拠」という事でした。最低な奴が偉そうに発言している所に、戦後日本の問題が凝縮されていると思います。

話しが飛びましたが、反日デモの話に戻ります。謝罪したくないと思った社員達が知恵を出し、日本の広告会社と新華社の合弁企業のPR会社の社長を読んで話を聞こうという事にしました。来たのは女性社長でしたが、きっぱりと言われました。「新聞に掲載された内容は事実ですか?もし、事実でなければ、謝る必要はないし、中国国民を愚弄するものになる。事実を何らかの手段で伝えた方が良い」とのことで、彼女の考えを本社に伝達、翌日の謝罪記者会見は中止とし、中国用のHPに事実関係を掲載しました。

その後、本記事の福島氏(当時、彼女も産経新聞社の北京駐在でした)から小生宛電話があり、「もし、御社が事実でないことを書かれたなら、裁判を起こした方が良いのでは」と。小生は「この中国で今まで、裁判や労働委員会に訴えられ、逃げずに相手をしてきたことはありますが、国家を相手では・・・・。またご存じのように中国の裁判官は賄賂を取りますし。個人的には戦いたいという気持ちはありますが・・・」ということで電話を置きました。まあ、あの当時の日本企業の役員で中国を相手に戦うという気概を持った人はいないでしょうし、蟷螂の斧になるだけです。今の役員でも大部分そうだろうと思います。その後、福島氏とは日本で「士気の集い」の講師としてお招きし、懇親会で北京時代の話をしたりしました。

北村記事

中国の「告発番組」で日本産の食品が標的となったが…(写真:Imaginechina/アフロ)

中国の国会に相当する“全国人民代表大会”の第12期第4回会議は3月5日に開幕し、3月16日に12日間の会期を終えて閉幕した。その閉幕日前日の3月15日は“国際消費者権益日(世界消費者権利デー:World Consumer Rights Day)”で、中国では“中国消費者協会”が毎年テーマを決めて全国的な活動を展開している。今年のテーマは「“網絡誠信 消費無憂(誠実で信用できるインターネットで憂いなき消費)”」で、全国各地の消費者協会はインターネットショッピングで安全な消費を行うためのキャンペーンを展開した。

最有力候補は韓国ロッテグループ

また、3月15日の夜には国営の“中央電視台(中央テレビ)”が、特別番組「世界消費者権利デー消費者の友特別夜会」(略称:3・15夜会)を放送するのが毎年恒例となっている。3・15夜会は1991年3月15日から開始された番組で、中国政府の関係部門と中国消費者協会が共同で主催し、社会生活の中で消費者の権益を侵害する事例を取り上げてその実態を暴露することにより、消費者の権利保護を呼び掛けると同時に、消費者の合法的権利意識の向上を目的としている。

3・15夜会に対する中国国民の関心は非常に高く、視聴率が高い国民的人気番組の一つとなっている。このため、3・15夜会で消費者権益を侵害している事例として取り上げられると、致命的なダメージを受ける可能性が高く、企業は存亡の危機に立たされるし、商品は販売に急ブレーキがかかり、売上高の大幅な低下は避けられない。そればかりか、3・15夜会は外資企業を標的とした外資叩きの手段としての役割も果たしており、2013年にはアップルとスターバックス、2014年にはニコン、2015年には日産、ベンツ、フォルクスワーゲンが消費者権益を侵害しているとして取り上げられ、各社が大きな損失を被っている。

さて、中国国民は3・15夜会を心待ちにすると同時に、消費者権益を侵害している事例として取り上げられる可能性が高いのは何かと想像をたくましくした。そこで最有力候補に浮かび上がったのは韓国のロッテグループ(中国名:“楽天”)であった。中国が反対する米軍の最新鋭迎撃システム「高高度防衛ミサイル(略称:THAAD)」の韓国配備に、その配備地として所有するゴルフ場の敷地を国有地と交換する形で提供したのがロッテだった。THAADの韓国配備に協力したロッテは中国に盾突いた企業となった。ロッテ所有のゴルフ場敷地がTHAAD配備地に決定した昨年11月以来、中国はロッテ叩きを開始し、中国国内でロッテが「楽天」として展開する事業に対する規制を強化し、楽天は事業の休止を余儀なくされつつある。<注1>

<注1>中国の楽天叩きについては、2017年3月17日付の本リポート「THAAD韓国配備開始、止まらぬ中国のロッテ叩き」参照。

人々は3・15夜会で消費者権益侵害の事例として槍玉に挙げる可能性が最も高いのは楽天であろうと想像していたし、多数の評論家も同様の予想を発表していた。そうした事態を最も恐れていたのは楽天を始めとする韓国の中国進出企業であった。今や韓国はTHAAD配備によって中国に敵対する国として位置づけられ、楽天を筆頭とする韓国の中国進出企業は針のむしろに座らせられ、祈るような気持ちで3・15夜会の放送が始まるのを待った。

告発は7件、韓国企業は含まれず

3・15夜会は中央テレビの「財経チャンネル(CCTV2)」で3月15日の夜8時から2時間にわたって会場となる中央テレビ本部ビル内の大ホールから実況放送された。同番組の中で消費者権益を侵害している例として取り上げられたのは7件で、その概要は以下の通りであった。

(1)世界最大の中国語百科ウェブサイト“互動百科”に掲載されているデタラメな広告。

4800元(約8万円)を支払えば、科学的裏付けのない薬品や経歴詐称の医院の広告が堂々と掲載され、善良な消費者を騙す手助けをしている。

(2)河南省“鄭州市”の“科視視光公司”

科視視光公司は無資格で鄭州市内の小中学校で視力検査を行い、検査時に児童・生徒に家庭情報を記入させ、そこに書かれた電話番号を使って父母に連絡を取り、同社が扱うコンタクトレンズの販売を行っている。彼らには医師資格もなく、彼らの行為は全て違法である。

(3)家畜の成長促進剤、オラキンドックス(Olaquindox)

かつて中国では“痩肉精(赤身エキス)”<注2>と呼ばれる飼料添加剤が大きな問題となったが、今日新たにオラキンドックスが飼料添加剤として販売されている。その肉を人間が食べることにより健康に与える影響は極めて危険である。

<注2>“痩肉精”の詳細については、2011年4月1日付の本リポート『薬品漬け「健美豚」の恐ろしい副作用』参照。

(4)日本の放射能汚染地域で生産された食品を輸入して販売

2011年3月に日本の福島県で発生した原発事故による放射能汚染地域で生産された食品が生産地をごまかす形で輸入されて、「無印良品」や「“永旺超市(イオン)”」などの店舗で大量に販売されている。中国は日本の放射能汚染地域からの食品輸入を禁止しており、これは明らかな違反行為である。

(5)“耐克(ナイキ)”製シューズの「エアクッション」搭載という虚偽広告

米バスケットボールの選手「コービー・ブライアント」が2008年の北京オリンピックで使用したシューズの複製品の販売広告で、ナイキが特許を持つエアクッション「ズームエアー」搭載の製品と宣伝していたのに、実際に当該製品を購入したらズームエアーは搭載されていなかった。これは明らかに虚偽広告である。

(6)黒いサプライチェーンの“月嫂(出産・育児ヘルパー)”

浙江省“杭州市”の一角には100m足らずの路地に数十軒の“月嫂公司”が軒を連ねて“月嫂”の紹介・派遣業務を行っている場所があるが、“月嫂公司”は無資格なのに、“月嫂”になりたい女性たちに“月嫂”の資格証明書である「“月嫂証”」の偽物を販売して金儲けしている。このため、彼らが派遣する“月嫂”の多くは何の知識もない無資格者である。

(7)老人に伸びる黒い手、悪辣な「健康講座」

全国各地で老人を集めて行われている健康講座は、優しい言葉で老人の信頼を獲得した後は、病歴などを聞き出した上で言葉巧みに騙して、病状の改善には何の効果もない健康補助食品を数十倍の高値で販売する詐欺集団である。

人々の予想に反し、上記の通り3・15夜会が提起した7件の消費者権益侵害の事例には楽天を始めとする韓国の中国進出企業は含まれていなかった。3・15夜会を外資叩きの手段の一つとしている感のある中国が、どうして楽天を筆頭とする韓国の中国進出企業を標的にしなかったのか。その理由は不明だが、楽天が胸を撫で下ろしたことは想像に難くない。

ナイキは謝罪・賠償、無印良品は反駁

外資企業として消費者権益侵害の例に挙げられたのは、(4)の日本の放射能汚染地域で生産された食品を輸入販売したとされた無印良品などの日本企業と(5)の米国のナイキであった。“耐克体育(中国)有限公司(ナイキ中国)”は3・15夜会の放送直後に“上海市楊浦区市場監督管理局”の調査を受け、翌16日には謝罪を表明した。3月17日、ナイキ中国は声明を発表し、同社製品の「ハイパーダンク(Hyperdunk)2008 FTB」モデルの宣伝に間違いがあったとして販売済み商品の回収を表明し、回収に応じた購入者に対して販売価格1499元(約2万5000円)の全額を返金するのに併せて4500元(約7万4000円)の賠償金を支払うことを言明した。さすがはナイキで、3・15夜会が告発した問題に迅速に対応し、わずか2日で解決にこぎ着けたのだった。

ところで、無印良品などの日本企業はどう対応したのか。中国は2011年3月に福島県で発生した原発事故から6年間が経過した現在もなお、日本の宮城県、福島県、茨城県、千葉県、栃木県、群馬県、埼玉県、東京都、新潟県、長野県からなる10県を放射能汚染地域として認定し、当該10県を原産地とする食品の輸入を禁止している。良品計画の中国子会社“無印良品(上海)商業有限公司”は、3月16日に“微博(マイクロブログ)”を通じて中央テレビの3・15夜会の指摘に対して下記の声明を発表して強く反駁した。

声 明 書

2017年中央テレビ「3・15夜会」の中で暴露された「無印良品の一部輸入食品が日本の放射能汚染地域産である」とされた件に関し、当社は次のように声明する。

【1】今回誤解を引き起こした原因は、当社が販売している輸入食品の表示に「販売者・株式会社良品計画RD01 東京都豊島区東池袋4-26-3」とあったことだが、これは当社の親会社の名称と登記住所を示すものであり、当社が輸入販売する食品の原産地ではありません。

【2】3・15夜会が指摘した2件の輸入食品の原産地は以下の通り:

無印良品「ノンカフェイン ハト麦とレモングラス(穀物飲料)」原産地:日本国福井県  無印良品「卵黄ボーロ(焼き菓子)」原産地:日本国大阪府

【3】当社は全国の消費者に向けて言明します。当社が輸入・販売する日本の食品は、「国家品質監督検査検疫総局」が公布した日本の食品・農産物の検査検疫に関わる規定を厳格に遵守しており、中国政府が禁止した日本の放射能汚染地域産の食品を輸入・販売していません。当社が輸入・販売する食品には全て「原産地証明書」が有り、証明書の正本は「上海出入境検査検疫局」に提出し、併せて「中華人民共和国入境貨物検査検疫証明」を取得しています。毎回の輸入食品の通関検疫申告書および証明書は全て規定に合致しています。

声明者:無印良品(上海)商業有限公司   2017年3月16日

無印良品の2件以外に3・15夜会が暴露したのは、(a)“永旺超市(イオン)”が販売していた北海道産米の「パックご飯」の中国語表示を剥がしたところ、実際の原産地は放射能汚染地域の新潟県であった、(b)広東省“深圳市”の“海豚跨境科技有限公司”がネット上で販売していたカルビーの「フルグラ(フルーツグラノーラ)」は中国語の原産地表示は「日本」となっていたが、袋の裏面に表示されていた工場記号K1は放射能汚染地域である栃木県の清原工場であった、という2件であった。(a)と(b)について反論が行われた様子はなく、3・15夜会の指摘が正しいものであるかどうかは分からない。

北京市で「汚染地域産食品」見つからず

3月16日に“中新網(中国新聞ネット)”は「“北京市食品薬品監督管理局”:北京市で日本の放射能汚染地域産の食品は差し当たって見つからず」と題する記事で次のように報じた。

【1】3月16日、北京市食品薬品監督管理局は全市の流通要所に対し食品安全監督取締り検査を行った。“食品管理流通処”の処長は、「今回の検査範囲は、市場、“超市(スーパーマーケット)”、“便利店(コンビニエンスストア)”、農産物市場などの実質的な食品経営企業で、無印良品、“永旺(イオン)”、“711(セブンイレブン)”、“屈臣氏(Watsons)”などの総合食品経営企業も含むものだ」と述べた。

【2】16日午前9時までに、北京市内の“家楽福(カルフール)”、“華堂(イトーヨーカ堂)”、“永旺(イオン)”、“沃尓瑪(ウォルマート)”、“楽天(ロッテ)”などの18のスーパーマーケットチェーン、北京市の農産物市場、“京東商城”などの電子商取引企業が輸入食品の自主検査を行った結果、国家が禁止する日本の放射能汚染地域を原産地とする輸入食品はとりあえず見つからなかった。セブンイレブン本部は北京市内の全店舗に対して日本からの輸入食品を売場から下げて自主検査を行うよう指示したが、問題の商品は存在しなかった。

上記の事実から分かることは、3・15夜会が暴露した「中国が禁止している日本の放射能汚染地域を原産地とする食品が輸入され、中国市場で販売されている」という事実は存在しないということである。それは単に食品薬品監督管理局の役人が商品に貼られていた表示を読み誤り、生産企業の本社所在地を生産地と誤解しただけのことだった。その誤解を鵜呑みにして、3・15夜会で意気揚々と消費者権益侵害の事例として放送したのは中央テレビの極めて恥ずかしい勇み足と言える。

「独善と我田引水」治す薬、見つからず

この事実を踏まえて、中国のインターネットの掲示板には中央テレビを非難する書き込みが殺到した。あるネットユーザーは、「ばつが悪い話だ。中央テレビは問題の商品を摘発しようとして、逆に虚偽報道を摘発された」と書き込んだ。また、別のネットユーザーは、「無印良品をやっつけようとしたのは中央テレビではなく、“外交部(外務省)”だった。結果として、中央テレビは無印良品の宣伝に寄与した」と書き込んだ。

事の真相は分からないが、中央テレビは国営メディアであり、中国共産党総書記の“習近平”が主導する“媒体姓党(メディアの名前は党)”であるからには、中国共産党が何らかの意図で日本からの輸入食品に対し打撃を与えようとした可能性は否定できない。だが、残念ながら、その意図はあっけなく打ち砕かれ、中央テレビは面子を失ったのだった。

3・15夜会が楽天を含む韓国の中国進出企業を槍玉に挙げることはなかったが、それが確認された後の3月20日、韓国政府はTHAADの韓国配備を理由に中国が韓国に対する経済的報復を強めているとして、世界貿易機関(WTO)へ中国による協定違反の可能性を提起した。これに対し中国外交部の報道官は、報復措置は中国国民の民意によるものだとして、政府の関与を否定した。しかし、上述の無印良品に関わるネットユーザーの書き込みからも分かるように、報復措置への中国政府の関与を否定する中国国民はごく少数なのではなかろうか。独善と我田引水は中国が患う難病だが、それを治す薬は残念ながら未だ開発されていない。

福島記事

中国中央テレビCCTVは特別番組「315晩会」で「無印良品」を告発したが…(写真:Imaginechina/アフロ)

毎年3月15日の世界消費者デーの夜に、中国中央テレビCCTVは特番を組んで消費者目線に立って企業やブランドの問題点を暴露する。いわゆる「315晩会」である。消費者保護のためのキャンペーン番組の体をとっているが、その実、外資企業や大手企業をバッシングすることで、社会不満を募らせる庶民のガス抜きをする番組でもあり、また外資系企業の評判を落とすことで、中国国内企業を擁護する狙いもあるといわれている。とにかく視聴率は高く、その番組でやり玉に挙げられた企業は株価が一気に下がったり、クレームが殺到して、一時的にでも市場から排除されるので、外資企業も含め、この日はびくびくなのだった。

今年は、折りからTHAADミサイルの報復として韓国企業・ブランド・韓流ドラマなどが排斥されていたので、ターゲットは韓国企業になるだろうと思われていたのだが、蓋を開けてみると、ターゲットになったのは、米国企業と日本だった。ナイキと、日本の“福島原発汚染食品”を販売していたとされた無印良品だ。

興味深いのは、無印良品側はこの報道に対し、「誤解である」と反論、対象商品の撤去にも応じなかったことである。そしてさらに面白いことには、ネット上にはCCTVの取材のほうが怪しい、どっちを信じる?といった発言まで流れた。これまでも「315晩会」の取材の在り方には確かに不条理な部分もあったのだが、企業側はその不条理に文句を言わず、ひたすら謝罪し、“バッシング”をやり過ごす、という方法をとってきた。その方が“被害”が少ないからだ。

では、無印良品が強気にも反論した背景は何なのか。

互動百科は謝罪、ナイキは返金を表明

今年の315晩会で、消費者をだます悪徳企業としてバッシングされたのは大手では、中国ネット企業・互動百科、アメリカのスポーツ関連品メーカー・ナイキ、そして日本の無印良品(良品計画)である。

互動百科は中国のウィキペディアみたいな、ネット上の知識プラットフォームだが、そこにはあからさまな商品広告が載せられていた。例えば健康食品「極核5S」の欄には、「冬虫夏草の800培の功能」といった虚偽の商品宣伝が載せられている。中国では健康食品の広告において、根拠のない功能をうたってはいけないと決められているが、互動百科という、“ネットユーザーによる知識プラットフォームにおける意見”というスタイルにすることで、その盲点をついた“広告宣伝”が可能というわけだ。

しかも、百度百科は本来、ユーザーが無料で知識・情報を書き込んでいくもので、そこに虚偽があった場合は、互動百科側が削除・凍結するルールになっているのだが、実のところ、互動百科側に広告費を払えば、あたかもユーザーによる知識プラットフォームの体を装った広告が、削除されないまま残ることまで暴いた。互動百科はこの番組放送後、いち早く「一部社員のやったことで、今後企業管理に漏れがないようにいたします」と謝罪を表明した。

またナイキのテクノロジーシューズ・ズームエアに内蔵されているはずのエアユニットが、中国でコービー・ブライアント北京五輪仕様復刻版と銘打って売り出されたものに関しては内蔵されていなかったことも315晩会で暴露された。国際標準のズームエアと、中国国内限定販売用のズームエアと仕様が二つあるというのだが、消費者にしてみれば納得いかない話だろう。ナイキ側は誤解を呼ぶ広告の仕方をしたとして、消費者が望めば全額返金に応じるとしているが、消費者側は消費者権益保護法にのっとって、購入額の三倍の慰謝料を支払うべきだと訴えていた。ちなみに、この番組放送後、ナイキ側は沈黙を守っている。

「なんと恐ろしいことか」

さて、問題の日本の“放射能汚染食品”のバッシング報道だが、CCTVは中国国内1万3000以上のネットショップやスーパーで日本の核汚染食品が売られていると暴露した。例えば、カルビーのスナックの製造元は東京都。工場は栃木県。東京都も栃木県も2011年の311東北大地震以降、中国が食品輸入禁輸措置をとっている対象12都・県(現在は10都・県)に含まれている。スーパーの棚に並んでいるレンジでチンするごはんパック。中国語の製造元表示には北海道産とあるのだが、その中国語表示をめくると、製造者住所は新潟県。これも禁輸措置対象地域だ。こうした“日本の放射能汚染食品”は、良質・安全を売りにしているブランド・無印良品のスーパーで売っていることも判明した。

からくりは至って単純で、天津や深圳の保税区留めで輸入したのち、保税区内から宅配便で保税区外に送る。よくある密輸入のパターンである。

こうしたCCTVの調査報道映像のあと、スタジオの司会者は、「初期統計で1万3000もの店で放射能汚染食品が売られているとは。この数字はなんと恐ろしいことか。まさか輸入代理店は、国家の法律を知らないわけではないでしょう。まさか、これら食品が自分たちの同胞友人たちの健康を損なうかもしれないことを知らないわけではないでしょう」と怒りをあらわに訴えるのである。

この放送を受けて、中国のメディアは「恐怖!日本の放射能汚染食品を我々は食べていた!」と煽情的なニュースを流し、ネットショップでは一斉にカルビー製品が姿を消し、全国のスーパーは日本産の食品を棚から撤去したのだ。だが、この番組に反論した企業があった。無印良品だった。

CCTVを信じるか、無印を信じるか

無印良品サイドは、中国のSNS微博のオフィシャルアカウントで「輸入食品はすべて安全検査を受けている。放射能汚染食品を販売したという事実はなく、CCTVは製造会社の住所と生産地を混同しているだけであり、報道は全くの誤解だ」と表明した。そして315晩会で批判対象となった日本産食品・飲料の原産地は、実は福井県と大阪府であるとの説明をしたうえで、原産地証明を出してきちんと税関検査を受けて、合格を得た商品であるということを、税関書類の写真を添付しながら訴えた。もちろん、店舗から対象食品・飲料を撤去しなかった。

さらに意外なことに、この無印良品の抵抗は中国のネットユーザーたちを味方につけ「無印良品の逆襲が成功!」「企業広報は無印良品に学べ!」「CCTVを信じるか?無印を信じるか?」といった発言も飛び出した。また、一部大手ネットメディアも無印良品側の言い分を丁寧に報じた。

これはなぜかということを考えるとなかなか面白い。

微博ユーザーのV(VIP称号、影響力のあるアカウント)アカウントの少なからずが、CCTV報道に突っ込みを入れて、無印良品サイドの立場に立って発言している。

例えば「青年考古学生」という編集者のアカウントはこういう。

「CCTVが何を言おうが、地方メディアが何を信じようが、無印良品が声明を出す前は、ほとんど一方的な暴露でしかなかった。さらに言えば新京報メディアは、(独自取材もせずに)“無良印品”などと揶揄した。メディアは自分で事実を求める精神で再調査・再取材しないのか?」

とあるブログニュースはこう指摘する。

「中国において、メディアの擬人化がひどく進んでいて、まるで視聴者・消費者を父母のように一方的に誘導するようになっている。…CCTVが発信したのだから、我々も唱和せねばならない。CCTVをそらんじておけば、どちらにしろ私たちには責任がない。こういう大衆の心の在り方は、無責任なメディアと同じである」

中国における官製メディアへの不信は実は、ネットを駆使するような若い世代や知識層の間には根強くある。だが、メディアが共産党の喉舌であり、党の代理人としての立場にある以上、表立った官製メディア批判は党批判となるので、多くの視聴者はフェイクニュースだとわかっていても、あまり文句はいわない。そして、政治的安全を考えて、時にそのフェイクニュースにあえて乗じて、自分の利益になるように行動する。

例えば、かつて日本で生産されているSK‐Ⅱの化粧水に、中国の品質検査上問題のある成分が検出された、という報道があると、それが実は日中関係悪化にともなう中国サイドの一種の報復バッシングであるとわかっている消費者も、空のSK‐Ⅱの瓶を持って返金を要求したりもした。真実は何かということよりも、どう行動すれば政治的に安全であり、個人として利益を得られるか、ということが中国大衆の判断基準でもあった。

では、この“日本の放射能汚染食品”問題について、少なからぬネットユーザー、大衆が多少の“政治的安全”を犯して、無印良品のサイドに立ったのは、どういうわけか。

“小清新”が好む村上春樹、岩井俊二、無印良品

ここからは私の想像なのだが、一つの背景は、“無印良品”という日本を体現するようなブランドの威力、信頼性というものがあったのではないか、と思う。中国経済の悪化にともない、外資系企業、外資系ブランドの撤退ラッシュが続く中、無印良品は怒涛の出店を展開し中国の若い世代に圧倒的な支持を受けている。中国の「名創優品」チェーンなどは、明らかに無印良品のブランド力に乗じた戦略で人気を博した。しかも無印良品の持つイメージ、たとえばシンプル、ナチュラル、エコ、オーガニック、ちょっと上質な暮らしといったキーワードは、中国のプチブル層に誕生した“小清新”と呼ばれる若い女性層の好みに合致し、いわゆるエルメスやシャネルに身を固めるセレブ層とは違う、洗練された自然派の都市民ファッションの一つの流行となった。

そもそも小清新というイメージ自体が、非常に日本的といわれ、小清新が好む小説・映画といえば村上春樹や岩井俊二がトップに来るし、化粧も日本的なナチュラルメイク、美肌スキンケアに重点を置き、ふかひれアワビの飽食よりも、オーガニック食品やマクロビ(日本発の健康食生活法)にこだわる。つまり小清新のイメージは無印良品であり、無印良品のイメージは日本を体現しており、若い小清新な中国人にとって日本とは、シンプル、ナチュラル、エコ、オーガニック、ちょっと上質な国として、圧倒的な信頼を得ている。日本のこの無印良品的ブランド力は、中国における一つの文化形成に寄与するだけの影響力を持っていたわけだ。このあたりの背景は、拙著『本当は日本が大好きな中国人 (朝日新書)』(朝日新書)に詳しいので参照してほしい。

そのきわめて日本的イメージの無印良品が、CCTV報道に対して「誤解だ」といち早く発信した。ここで、CCTVは嘘つきだ、といわずに「誤解だ」というあたりが奥ゆかしい。そして、わざわざ丁寧に、証拠の税関書類や品質検査合格書類などを添付して、冷静に誤解を解こうとしていることが、好感を得た。こうなってくると、普段、中国のフェイクニュースに対して正面から声を上げることが難しい中国ネットユーザーたちも、ちょっと嬉しくなってくるようだ。ネット上では「疑いなく、無印良品の勝利」と指摘する声もあった。

傲慢フェイクニュースにうんざり

もう一つは、中国人消費者の間に、中国の“日本の放射能汚染地域生産物”の全面禁輸にうんざりしている空気があった。エコ、ナチュラル、安心、安全、ちょっと上質にこだわる中国の都市部プチブル層は、実は日本製の食品を買いたい。だから、日本旅行に行った際に食品の爆買いをするし、日本に留学・駐在している友人に頼んで送ってもらったりする。売れるから、ネットショップで、カルビーのフルグラ(栃木県産)が販売されるのだし、密輸入の真空パックごはんにわざわざ北海道産とウソの生産地を書いたシールを張ってまでスーパーの棚に並べられるのだ。

スーパー側も消費者側も、震災後6年も経つ今なお、日本の10都県からの禁輸措置を不条理だと感じているのだ。はっきり言って、日本の放射能汚染食品の問題よりも、そろそろ北京にも飛んでくる黄砂とともに放射性セシウムを吸い込むことによる内部被ばくの方がよっぽど深刻で切実な問題ではなかろうか。

この後、中国当局の無印良品イジメが本格化して、最終的に無印良品側が前言を撤回して謝ることになるのか、それとも無印良品の冤罪ということで決着がつくのかはまだわからない。

だが、消費者にとって、バッシングすべき不良品は、自前取材をせずにフェイクニュースを日常的に流し、あたかも自分たちが世論をコントロールしているかのような傲慢さを隠さないメディアの方だということは、別に中国だけの話ではないということだ。

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『高まる経済ナショナリズム 中国の反韓行為は自滅的』(3/24日経FT)、『米中首脳は歩み寄れるか 』(3/23日経FT)、『強硬トランプ 中国危機感 対北朝鮮制裁を前倒しか 石炭輸入停止、米に配慮 』(3/23日経朝刊)について

メデイアの中国の見方は甘いとしか言いようがありません。歴史的に国家が他国の製品ボイコットやデモをさせ(五四運動・裏には米国が動いたという説もあり。反日デモ、カルフールへのデモ、マックへの期限切れ鶏肉調査)、中華思想に基づく国際的なルール破りは当り前です。レアアースの対日輸出禁止に見られるようなWTO違反や南シナ海の国際仲裁裁判所の判決を「紙屑」と言い切ることができる国です。

中国が自由貿易の守護者と言うのは間違っています。自国の輸出には甘く、ソーシャルダンピングを平気でします。鉄鋼の在庫を吐くために低価格で輸出してきていました。また、非関税障壁で、輸入物品の通関をいくらでも遅らせることもできます。通関職員に賄賂を贈らない限り、スムースな通関は出来ません。それで外国企業は、通関は中国人にやらせるわけです。日本人は担当できません。賄賂の金は当然「小金庫」(中国企業は必ず二重帳簿、三重帳簿にして役人に贈る賄賂の裏金をプールする仕組みにしています)から出します。韓国にも懲罰的な製品・サービスのボイコットを国がやらせています。どんなに民間が決めたと言い逃れてしても、中共に営業の自由はありません。党の命令以外に、外交問題に発展することが決められるはずがありません。

3/23FT記事では、習近平がトランプを自由貿易に戻るよう説得せよとの話ですが、中国は自分の都合の良いときだけ「発展途上国」を主張して、国際ルールは守らないような行動を取る国です。トランプを説得できる立場にはないでしょう。先ず自分の行動を改めてからのみ人に説得は可能です。蓮舫が森友問題で安倍昭恵氏を国会で証人喚問をと喚いていますが、先ず自分の二重国籍の問題を説明してから他人に要求するのが筋では。自分を棚に上げられるところは、やはり中国人(≠台湾人)の面目躍如たる所があります。

また中国は米国のインフラ投資に協力できるとの見方ですが、①軍事的に米中対決するかも知れない国に、インフラ投資させれば、バックドアを仕掛けられ、機雷を陸上に仕掛けられるのと同じ意味を持ちます。筆者は平和ボケの典型です。米国軍はそんなことは許さないでしょう。②中国経済は崩壊寸前にあり、データを遣り繰りして誤魔化しているだけです。自国内でも融資平台の扱いに困り果てているのに、これ以上の投資余力はないし、外貨流出防止策を採っていて、下請けとなる米国の土建・建設業者に払う米$もないのでは。

3/24FT記事

歴史上、自国のナショナリストの不満が他国への攻撃に向かうようにした結果、逆に同じナショナリストに倒された政権は枚挙にいとまがない。中国共産党はこのことを知っているのに、神経を逆なでした国に対し、国民による攻撃をあおり、製品ボイコットをたきつけている。

今回は韓国だ。北朝鮮による核攻撃の脅威にさらされる同国は、国内に米軍の地上配備型ミサイル迎撃システム(THAAD)を配備することを認めた。これに対し中国は、レーダーの監視範囲が国内の軍事拠点まで届くことから、地域の戦略バランスが崩れ、同国の軍事力が脅かされると主張している。

確かに、これも米国が配備する理由だろう。もし、中国が韓国内のミサイル配備を望まないなら、北朝鮮の挑発的攻撃を抑えるため、さらに手を打つべきだというのが米国の言い分だ。

ところが、中国共産党は国営メディアを総動員して韓国への辛辣な批判を展開し、韓国企業へ嫌がらせをしたり、中国人観光客が訪韓しないようにしたりもしている。小学生児童にも韓国製品をボイコットするよう教え込んでいる。

そうした攻撃の矢面に立たされたのが、配備に土地の一部を提供した韓国のロッテグループだ。中国で展開するスーパー99店舗のうち87店舗が一時的なものも含め、閉店に追い込まれた。

中国はトランプ米大統領の保護主義的な主張に反発しているにもかかわらず、こうした反韓行為をとっている。これは自滅的だ。グローバル化に問題点があるのは中国のせいだと非難する西側諸国に、攻撃材料を与えるようなものだ。

韓国の次期大統領が配備を撤回することを期待し、中国がボイコットなどで反韓感情をあおっているのは明らかだ。

朴槿恵(パク・クネ)前大統領の後任の最有力候補で、最大野党「共に民主党」の文在寅(ムン・ジェイン)前代表は、既に配備を見直すと表明している。どの候補が大統領になっても、北朝鮮との緊張緩和の道を探らなければならない。しかし、中国の経済的圧力に屈し、一方的に配備を撤回するのは誤りだろう。

他国との対立に経済ナショナリズムを利用するのは中国の常とう手段で、これまではそうしてかなり言い分を通してきた。自国内でナショナリズムをあおる一方、戦略的要請と商業的重要課題を混同して外交を展開するのは賢明な指導者のやることではあるまい。今のやり方では、重要な隣国との貿易関係をこじらせるだけでなく、外に向けたはずのナショナリストの怒りが、結局、国内に跳ね返ってくることにもなりかねない。

(23日付、社説)

3/23FT記事

今後の世界は、建国の歴史は比較的浅いが覇権国として長く世界に存在感を示してきた米国と、古代は帝国であり、近年再び超大国として急浮上してきた中国がどんな関係を築くかに大きく左右される。両国の関係は、ポピュリスト(大衆迎合主義者)で排外主義を掲げるトランプ氏が米国で大統領に就任し、中国では権力を一手に掌握する習近平国家主席が独裁色を強めていることから、非常に厳しいものになっている。

保護主義を掲げる米国のトランプ氏=AP

同様に対照的なのは、両者の世界経済の捉え方だ。中国をかつて支配した毛沢東が目指したのは自給自足による経済の自立だった。だが1978年以降は、一貫して毛の後継者、鄧小平が提案した「改革開放」を合言葉にしてきた。一方、米国は第2次世界大戦後、国際的な自由主義体制を築いたが、多くの米国人は米国が世界の指導者であることに問題を感じ始めた。そのため、目覚ましい成果を収めてきた従来の米国の政策は自国の利益に反すると考える人物を指導者に選んだ。

■世界経済への姿勢、食い違い

開かれた世界経済に対する両国の姿勢が逆転したのは皮肉だ。それを浮き彫りにしたのが1月の2人の発言だ。世界経済フォーラムの年次総会(ダボス会議)で習氏はグローバル化を支持するとのメッセージを強く発したのに対し、トランプ氏は3日後の20日、大統領就任式で「(自国産業の)保護こそが素晴らしい繁栄と強さにつながる」というとんでもない演説をした。3月18日に閉幕したドイツでの20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議では、共同声明から「あらゆる形態の保護主義に対抗する」という文言が削られた。米国によるこうした保護主義的な動きがどんな影響をもたらすかは未知数だが、極めて気がかりだ。脆弱な世界経済にとり、米中間の貿易戦争ほど望ましくないものはないからだ。

自由貿易の重要性を強調する中国の習近平氏=AP

北京で先ごろ開かれた「中国発展高層論壇(チャイナ・デベロップメント・フォーラム)」に参加して、各国政府が掲げてきた理想と現実のギャップがいかに大きいかを痛感した。中国側の参加者らは非公式に、資本主義や民主主義、開かれた経済の成功モデルとして米国を見てきたと話してくれた。ところが世界金融危機が起こり、トランプ氏が大統領に選ばれ、米国が保護主義に傾くのをみて、彼らはこの3つのモデルにおける米国の成功は崩れ去ったと考えている。

これに対し西側諸国は、中国は先端産業で世界に通用する企業を育成しようと手厚く保護するなど、中国経済は開かれているとする中国の主張は現実とかけ離れていると批判する。海外企業への中国のサイバー攻撃も批判の対象だ。加えて、中国の経済開放を支援すれば民主化が進むだろうとの期待にもかかわらず、中国の民主化が進んでいないことへの失望感も強い。

しかし、欠くことのできない世界的な公益、つまり地球規模で人類が共有している資産の管理や国際安全保障、安定した繁栄を確保していくには、この奇妙なコンビが協力しなければならない運命にあることも明らかだ。トランプ氏が「米国第一」を宣言し、習氏は自国民の快適な暮らしの実現を最優先しようとするかもしれない。

ただ、いずれも他の国々の利益や考え方に注意を払わなければ、自分の望みを実現させることはできない。現在、中国の指導者の方が米国の指導者よりもこのことをよく理解しているように見えるのは、驚くべきことだ。

■会談、多くは期待できぬが

両氏が4月、初の首脳会談で「冬のホワイトハウス」と呼ばれるフロリダ州にある別荘「マール・ア・ラーゴ」で会う時は、互いに協力できる基盤を見つける必要がある。最近の状況を考えると、会談にはあまり期待できそうにない。トランプ氏は中国の通商政策と為替政策を標的にし、中国大陸と台湾が一つの国に属するという中国政府の「一つの中国」の政策に異議を唱えるそぶりまで見せた。2人は性格もこれまでの経験も大きく異なる。「最高ツイート責任者」であり、様々なディール(取引)をまとめてきた不動産王のトランプ氏に対し、習氏は昇進していくのが難しい共産党の組織を上り詰めた勝者だ。

ここで経済にだけ目を向け、互いに相手の言うことにほぼ耳を傾けない2人が会談でどうしたらうまくいくか考えてみたい。

まず、習氏とトランプ氏は、2人が対立していたら、どちらも自分の目標を達成できないことを互いに納得し合わなければならない。これが実際の戦争なら当てはまるのは明白だ。だが、貿易戦争にも当てはまる。どちらの国がより深く打撃を被るかはあまり重要なことではない。間違いなく両国ともに直接的、間接的に損をする。

第2に、習氏はトランプ氏に、中国の政策に対するトランプ氏の見方は救いがたいほど時代遅れだということを説得する必要がある。中国は2014年6月以降、人民元を下支えするために外貨準備から1兆ドル(約111兆円)を使った。06年から16年にかけて、中国の輸出は国内総生産(GDP)比35%から同19%に低下した。中国の劇的な経済成長を支えた輸出はもはや昔の話だ。

第3に、トランプ氏は習氏に対し、中国の産業政策について諸外国が懸念を持つのはもっともなことだと伝える必要がある。中国が自国はまだ発展途上国だと主張するのは当然だろう。だが既に巨大な経済大国でもある。中国が発展を求めて進める諸政策は、他国の目には侵略的な重商主義のように映る。各国が互いに依存する今の世界では、他国も中国がやることについては相応の利害を持っているということを中国は認識すべきだろう。この点は、中国の経常黒字の規模にも当てはまる。トランプ氏も当然、似たような論点を理解しなければならない。トランプ氏が自分の行動が世界にもたらす影響を気にしないのなら、中国も気にする必要はないということになる。

第4に、中国はトランプ氏が望みを実現するのに手を貸せる。トランプ氏は産業空洞化により打撃を受けた米国の地域に新しい工場を建設していきたいと望んでいる。産業空洞化の流れを反転させることはできないが、習氏にとって、喜んで米国に投資したい中国企業を見つけるのは簡単だろう。トランプ氏はそうした投資決定の発表を好むだけに、習氏はトランプ氏を支援すべきだ。

最後に、トランプ氏は米国でのインフラ投資ブームを起こしたいと考えている。中国は、実際のインフラ構築から、その引き渡しまで圧倒的なスピードで実現できると自負する存在だ。この中国の能力をトランプ氏の目標と結びつけるのは可能に違いない。

米中がどれほど対照的に見えるとしても、両国は利益を共有している。開かれた世界経済を維持することもその一つだ。トランプ氏に、貿易に対する彼の見方が間違っていると納得させることも極めて重要だ。自由な世界貿易を維持するメリットについて、米大統領を説得するのに中国の共産党指導者を頼りにしなければならないとは、従来は考えられなかった。しかし、今の絶望的な状況においては、そうした考えにくい手段も必要ということだ。

By Martin Wolf

(2017年3月22日付 英フィナンシャル・タイムズ紙 https://www.ft.com/)

3/23日経朝刊

中国は2月19日から北朝鮮からの石炭輸入を停止した。核・ミサイル開発の原資を断ち切るために国連制裁決議が定めた上限に、2017年の輸入額が「近づいたため」だと説明する。ところが1月の税関当局の統計をみると上限額の3分の1にも達していない。浮かぶのは、トランプ米政権の強硬姿勢に危機感を強め、前倒しで制裁に踏み切ったという構図だ。

北朝鮮・新義州の石炭積み出し港

「こんな数字が出るとは不可解だ」。2月下旬、北京で中朝関係を担当する外交官の間で疑問の声があがった。中国税関総署が発表した1月の石炭輸入額は1.2億ドル。国連制裁決議が定めた上限額は4億ドルで、まだまだ余裕があった。

中国政府と深いつながりがあるシンクタンクの研究者が日本経済新聞の取材に、からくりを解説してくれた。「米国に協力姿勢をアピールするために制裁を前倒しで発動した」。トランプ米大統領の対北強硬姿勢への危機感があったという。

難民流入を懸念

トランプ氏は大統領選中、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)委員長との直接会談に意欲を示したが、最近は「かなり先になる」と後退。「中国に意思があれば北朝鮮問題は簡単に解決できる」と中国に積極的な対応を求めるようになった。

中国は北朝鮮への圧力強化に及び腰だ。北朝鮮はそれに乗じて核・ミサイル開発を進め、核弾頭を搭載した大陸間弾道ミサイル(ICBM)で米本土を射程に収めようとしている。そうなる前に、米国は手を打つ必要があり、まずは中国を動かすのが先決だ。ある中国人研究者はトランプ氏の思考をこう分析する。

2月17日、ティラーソン国務長官は王毅外相との初会談で、北朝鮮の挑発抑止へあらゆる手段を使うよう求めた。中国ではトランプ政権の強硬姿勢に危機感が一気に高まった。中国商務省が北朝鮮からの石炭輸入停止を関係者に通知したのは翌18日のことだ。北京の外交筋は米が中国に3つの圧力をかけたとみる。

一つは日韓両国との安全保障協力の強化。中国が嫌がる在韓米軍への地上配備型ミサイル迎撃システム(THAAD)配備はその一環だ。もう一つは北朝鮮と取引する第三国企業に独自制裁をかけること。実施されれば中国企業が対象になる。最後に北朝鮮への軍事力行使。発足したばかりのトランプ政権がすぐに打てる策ではないが、北朝鮮の混乱で難民が押し寄せることを懸念する中国がもっとも嫌がる話だ。

ティラーソン氏は3月中旬のアジア歴訪でも、「あらゆる選択肢がテーブルの上にある」と軍事オプションをちらつかせた。韓国から中国へ移動する専用機内では、米メディアのインタビューに応じて日韓の核武装に言及。現時点では検討していないとしたうえで、「将来はわからない」と含みを持たせた。石炭禁輸だけでは足りないとの意思表示だった。

次の協力探る

王毅氏は3月の会談で北朝鮮への圧力強化に一定の協力姿勢を改めて示した。米国をなだめると同時に、中国が期待する早期の首脳会談へ環境整備する必要があったからだ。ただ、「対話による解決」を求める方針は変えず、石炭禁輸に続く協力策を明示することもなかった。北朝鮮を混乱させない範囲内で協力しつつ、米国を北朝鮮との直接協議へ促すとの方針をなお維持した。

中国の筋書きに展望があるわけではない。かつては米朝平和協定を結べば北朝鮮が核兵器を放棄するとみていたが、すでに北朝鮮は憲法に核保有国と明記し、核を手放す選択肢は事実上ない。対話しても米国が受け入れ可能な合意は得られそうにない。このまま次の協力策を出さなければ、米国が再び中国への態度を硬化させるとの見方が浮上している。

北朝鮮は今月19日、北京での米中外相会談を尻目に弾道ミサイル用とみられる新型エンジンの燃焼実験を実施したと発表した。中国は北朝鮮問題の根本的な解決策を探しあぐね、先送りしてきた。だからこそ微妙な均衡にある現状を崩しかねないトランプ政権の強硬姿勢に神経をとがらせる。王毅氏はその翌日、北京での講演で語った。「我々は戦争に至るか対話に戻るかの岐路にある」

(北京=永井央紀)

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『見え始めたトランプ政権の“行動原理” ピュアな外交課題は従来路線を踏襲する(3/22日経ビジネスオンライン 篠原匡、長野光)、『トランプ氏 移ろう中国観』(3/22日経朝刊 本社コメンテーター 秋田浩之)について

トランプが中国に弱腰になってきたように見えるのは、やはり、クシュナー・イバンカへの安邦保険のプレゼントが効いているのかもしれません。でもそれでは、本記事のオースリン氏が言っている「米国の労働者と米国経済を守りたい」という所から外れます。「アメリカ・ファースト」の看板が泣きます。

本当に弱腰になっているかどうかは

①4/6,7に習近平の訪米を受け入れるかどうか

②訪米したら、共同声明の中味がどうなるか

によって判断できると思います。まあ、訪米しても、両者譲れる所は多くないでしょう。両者の裏には軍がついており、迂闊な譲歩は出来ません。経済的な面にしても、トランプは国民に公約してきた手前、中国に甘い顔をすることは出来ません。そう考えると、習の方が不利で、それなら訪米は止めようとなるでしょう。いくら訪米しても、帰りのお土産もなくては北戴河会議でここぞとばかりに叩かれます。何せ反腐敗運動で政敵をつるし上げて来ていますので。

昨日の小生のブログで宮崎氏のメルマガを紹介しましたが、米国は台湾の軍事支援に力を入れ出しました。ただアンデイ氏や兵頭氏が心配するように、中国への技術流出が国民党残党から為されることです。早く内省人中心の部隊編成にしないと、台湾軍は台湾国民党軍となり、国共合作がまた起こり得ます。

蔡総統も少しずつ現状維持の姿勢を変えようとしているのでは。李登輝総統のように慎重こそが政治家には必要かも。昨日のブログで兵頭氏は機雷敷設すれば中国は台湾に負けると述べました。ただ、台湾経済も対中依存度が高いため、ガタガタになります。やはり、中国を抜きにした経済体制を作っていかねば。日本も勿論そうです。敵を経済的に助け、軍事拡張に手を貸すのは愚の骨頂です。

日経ビジネスオンライン記事

トランプ政権が発足して早2カ月。貿易・通商政策や移民政策、国境警備の厳格化など大統領選の際のスタンスを継続している分野もあるが、同盟国に対する立場や「一つの中国」原則に対する見方など、主張を修正させている分野も目立つ。端から見るとぶれているように見えるトランプ政権の主要政策。その背景にある法則について、アメリカン・エンタープライズ研究所(AEI)のマイケル・オースリン日本部長が解説した。(日経ビジネスニューヨーク支局 篠原匡、長野光)

—日韓の核武装を容認したり、北大西洋条約機構(NATO)を時代遅れと批判したり、ロシアとの関係改善に強い意欲を示したり、外交・安全保障に関するトランプ氏の選挙期間中の発言は従来の米国の政策とは大きく異なるものでした。ただ、その後は「一つの中国」原則を尊重するなど、伝統的な路線に回帰しているようにも見えます。トランプ政権の外交・安全保障政策をどう整理すればいいのでしょうか。

マイケル・オースリン氏(以下、オースリン):トランプ氏が大統領選に勝利した後、誰もが彼の外交政策はラジカルなのではないか、米国の外交政策のプライオリティは大きく変わるのではないか、と考えました。ただ現実を見ると、彼が変えようとしているのは国内問題に直結する外交課題に過ぎません。

「トランプ大統領には一貫したロジックがある」と語るAEIのマイケル・オースリン氏(写真:Aaron Clamage Photography (c) American Enterprise Institute)

例えば、トランプ大統領はTPP(環太平洋経済連携協定)からの離脱やNAFTA(北米自由貿易協定)の再交渉を表明しましたが、これは国内の雇用問題につながるイシューとしてTPPやNAFTAを捉えているからです。イスラム圏7カ国の入国禁止を命じた大統領令も、国内のテロ対策という文脈で捉えれば一貫しています。どちらも外交課題ですが、トランプ大統領は国内問題としてみています。

一方で、純粋な外交政策については従来の政策を踏襲しています。トランプ大統領は日米同盟の重要性に繰り返し言及していますし、(対日防衛義務を定めた)日米安全保障条約第5条の尖閣諸島への適用も明言しました。NATOに対する支持も表明しており、従来からの「一つの中国」という原則を尊重するとも語っています。

もちろん、そういう伝統的な外交政策を変えようと思えば変えられます。トランプ大統領と外交政策チームは今後、変えようとするかもしれない。ただ現在についていえば、あらゆることが直ちに変わると思われてきたけれども、それは起きていません。国内問題に直結する外交課題か否か。トランプ大統領には一貫したアプローチがあるとみています。

—トランプ大統領は選挙期間中からロシアに対して融和的な姿勢を取ってきました。先ほどのロジックに照らすとロシアはどうでしょうか。

オースリン:少し前に統合参謀本部のジョセフ・ダンフォード議長がシリアにおけるロシア軍との共同作業について、ロシアのカウンターパートと話し合いを持ちました。これはオバマ政権からの大きな変化です。一方で、トランプ政権はウクライナを巡る対ロ制裁は続けていますし、国連代表も国連の場でロシアによるウクライナ侵攻やシリア介入を批判しています。

確かに、ロシアについてトランプ大統領はかなり複雑なポジションを取っており、現時点では様々なものが混じり合っています。ロシアを巡るスタンスについては、もう少し成り行きを見守る必要がありますが、ロシアに対する伝統的な政策を維持していると言えます。

彼の言う経済ナショナリズムは保護主義とは異なる

—トランプ政権にはスティーブ・バノン首席戦略官のような人物がいる一方で、マティス国防長官など伝統的な立場を取る人々もいます。

オースリン:我々が知る限り、バノン氏はかなり高いレベルで政策に関与しており、トランプ大統領に強い影響力を持っています。イスラムすべてを指しているのかは分かりませんが、彼は米国がイスラムと戦争状態にあると信じています。宗教上の対立をナチュラルなものと捉えているという面で、バノン氏の世界観はかなり独特と言えます。

一方で、トランプ大統領はマティス国防長官やティラーソン国務長官、マクマスター大統領補佐官など伝統的な志向を持つ人々を数多く指名しています。彼らは並外れた頭脳を持つ、クオリティの高い優れた人々です。彼らはバノン氏の世界観を共有していません。そのため、政権内には競争が起きていますが、意見の相違があるのは決して悪いことではありません。

バノン氏は強固な信念を持っていますが、それがトランプ政権のすべてを形作っているとは思いません。バノン氏のビジョンに同意すべきものがあれば、大統領は自身の政策を変えるでしょうし、同意しない場合もあるでしょう。最終的に決断するのが大統領だということを考えれば、自身の政策がベターだと両方のサイドが大統領を納得させなければなりません。

足元でみれば、純粋な外交政策については伝統的な立場を取る人が勝利を収めているように見えますが、移民や貿易など国内問題についてはバノン氏が勝利を収めているように見えます。どちらかが100%という話ではありません。バノン氏の世界観は物議を醸していますが、その裏側にある「米国に利益をもたらす」という哲学は議論されてしかるべきものだと思います。

—バノン首席補佐官は経済ナショナリズムを主張しています。

オースリン:彼の言う経済ナショナリズムは保護主義とは異なるものだと思います。トランプ大統領は米国の労働者と米国経済を守りたいと考えています。そして、彼らが実際に話しているのは、現在の自由貿易がフェアかどうか、米国が経済活動の中で打撃を受けていないか、それを確認しましょうということです。経済ナショナリズムとは、こういう考え方を指す新しい言葉です。

ご存じの通り、保護主義は海外の貿易相手に対して国境を閉ざすということですが、トランプ大統領がそれを望んでいるとは思いません。日本の方々がどう受け止めているかは分かりませんが、米国の利益のために、もっといいディールになるように交渉しようと言っているだけです。それがピュアな保護主義だとは思いません。

—メキシコなど海外に製造拠点を移そうとした企業を攻撃している点はどうでしょうか。

オースリン:経済ナショナリズムという観点で見れば、トランプ大統領のしていることはロジカルだと思います。次に生じる疑問は、トランプ政権が採ろうとしている政策がいい政策なのかどうかです。彼の政策が経済を改善させるのか。それこそが問われるべき真の問いでしょう。我々は開かれた国境がベターであり、強固な自由貿易体制がベターだと考えていますが、真実はまだ分かりません。トランプ政権の下で経済に何が起きるのか、もう少し注視する必要があると思います。

日経記事

なぜだろう。就任前、あれほど厳しかったトランプ米大統領の中国観が、じわりと変わり始めているという。その真相を探ると、アジアに混乱をもたらしかねない不安の種がみえてくる。

米中要人の往来が加速している。中国外交トップの楊潔篪国務委員(副首相級)が2月末に訪米したのに続き、ティラーソン国務長官が18~19日に北京入りした。習近平国家主席が4月上旬に訪米する案も検討されている。

「中国と建設的で、結果を重視した関係をめざしていく。米国民の利益になり、同盟国との信頼関係にもかなうはずだ」。米政府高官はこう説明する。

だが、米国のアジアの同盟各国には不吉な予感が漂っている。米中が何らかの裏取引を交わし、自分たちが外されてしまうのではないか。そんな不安だ。

なぜなら、トランプ氏の対中戦略はなかば空洞であり、軸足がぶれやすい現実が少しずつ明らかになってきたからである。

たとえば、事実上、台湾を中国の一部とみなす「一つの中国」政策への対応がそうだ。トランプ氏は当初、これに従わない可能性をにじませていた。

ところがトランプ氏は2月上旬になると、この政策の堅持をあっさり中国に約束し、関係改善に意欲すらみせた。かつて強く非難した人民元や南シナ海の問題でも、最近は発言を控え気味である。

いったい、トランプ氏の中国観はどうなっているのか。手がかりになるのが、2月10日の安倍晋三首相との初会談だ。複数の関係者によると、伏せられたやり取りはこんな感じだったらしい。

約40分間の会談のほとんどが中国問題に費やされたほか、その後の昼食会でも中国が主な話題のひとつになった。

中国は経済力や軍事力にものをいわせて、東・南シナ海で勢力圏を広げようとしている。「中国主導のアジア」をつくり、米国の影響力を排除するつもりだ。そうさせないよう、日米同盟を強めなければならない――。

会談は安倍氏が主導し、こんな対中認識を共有する流れになった。最側近のバノン大統領首席戦略官・上級顧問は会談後、「中国に関する安倍首相の説明はすばらしい」と、日本側にささやいた。

ところが、トランプ氏は時折、日本側が「おやっ」と、不安を感じる発言もしていたのだ。

「そうはいっても、習近平氏もなかなか見どころがある人物だ」

「習近平氏とは初めて電話したが、とても良い話ができた」

トランプ氏は、安倍氏との共同記者会見でも米中連携に前向きな姿勢をみせた。彼は安倍氏と親交を結ぶ一方で、もう片方の手で習近平氏とも握手をかわそうとしているようなのである。

秋田浩之(あきた・ひろゆき) 政治部、北京支局、ワシントン支局などを経て、外交・安全保障担当の編集委員兼論説委員。近著に「乱流 米中日安全保障三国志」

トランプ氏の心変わりのきっかけは、日米首脳会談の前日にあたる2月9日、習近平氏と交わされた電話だ。

米中関係者らによると、米政権が重視する国内雇用やインフラの整備のため、中国が協力していく姿勢を習近平氏がみせたらしい。オバマ前政権が求めていた米中投資協定の締結について、前向きな意向を示したとの情報がある。

トランプ氏はこの見返りとして「一つの中国」政策を堅持し、関係の改善に動いたとみるべきだろう。習近平氏への4月の米国招待も、この延長線上にある。

トランプ氏には骨太な戦略観がなく、損得に外交が流されやすいという不安がかねて指摘されていた。やはり、そうだったのだ。

むろん、彼としても中国の対米貿易黒字や東・南シナ海での強硬な行動に怒ってはいる。だが、それは明確な理念にもとづく反応というより、感情的に腹を立てているといったほうが近いという。

中国の外交ブレーンによれば、習近平氏は「トランプ氏は取引好きで、御しやすい」と見抜いている。トランプ氏を取り込むため、今後、さまざまな協力案件を打診するにちがいない。経済に加えてもう一つの有力なカードが北朝鮮問題での協力だ。

ひそかに、米中間で取引が始まっている形跡がある。米国は先月17日、ドイツで開かれた初の外相会談で、北朝鮮に「あらゆる手段」を使って圧力を強めるよう、中国側に求めた。

すると、その翌日。中国商務省は突然、北朝鮮からの石炭輸入を今年末まで停止すると発表した。「偶然とは思えない。何らかのディールが交わされたのだろう」。アジアのベテラン外交官からはこんな声が漏れる。

北朝鮮問題をめぐって米中が連携を深めること自体は、世界にとっても朗報だ。問題は、トランプ氏がその見返りに、中国側にどんな譲歩をするのかである。

もし、東・南シナ海での中国の行動をめぐり、米政権が甘い態度をとることになれば、日本やオーストラリア、東南アジアの同盟国の安全保障が脅かされてしまう。

では、日本やオーストラリアはどうすればよいのか。ひとつの方策は安全保障に精通し、厳しい対中観をもっているマティス国防長官らと連携し、トランプ氏が危ない対中取引に走らないよう抑えることだ。この意味で、ペンス副大統領もカギをにぎる。

それでも、大統領が絶大な権力をにぎる米国では、副大統領や閣僚の影響力には限界がある。空洞になっているトランプ氏の中国観がきちんと肉付けされていくよう、同盟国は彼との対話を深めていかなければならない。

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『台湾の自衛力』(3/21AC通信 アンデイ・チャン)、『トランプ政権、過去最大の武器供与を台湾へ   総額18億ドル、対艦ミサイル、フリゲート艦など』(3/22宮崎正弘メルマガ)、『台湾の蔡英文総統、潜水艦の自主建造を表明』(3/21 Newsweek)、について

本日は台湾関係のニュースです。日本が本年1/1より「交流協会」を「日本台湾交流協会」に名称変更したのに合わせ、今般台湾でも「台湾日本関係協会」に名称変更しました。

3/20李登輝友の会HPより<行政院が認可「亜東関係協会」を「台湾日本関係協会」に名称変更へ>

http://www.ritouki.jp/index.php/info/20170320-1/

兵頭二十八著『日本の武器で滅びる中華人民共和国』を読みますと、台湾関係についても書かれていますが、それ以外でも面白い部分がありますので紹介します。(主な頁だけ表記)

・尖閣を守るにはtripwire(=鳴子)を配置する必要あり。自衛戦争だけが国連憲章で認められているため。Tripwireとして、魚釣島に穴を掘り、日本の74式戦車を半分埋め、コンクリで固めて「沿岸砲台」とする。(当然人員配置する)。日本の施政権を強調できる。(P.32)

・ニクソン・毛の密約。「両国はICBMの競争をしない」、「米国は東京に核の傘をさしかけず、日本には決して核武装させない。東京は当分、中共からの核攻撃に対して丸裸にしておく。」(P.58)

(3/21三島由紀夫研究会主催の西村幸祐氏講演会で、氏は、片岡鉄哉氏から聞いた話で「沖縄返還交渉時、ニクソンは佐藤総理に日本の核武装を勧めたが、佐藤総理が断った」とのこと。日本側密使として若泉敬京産大教授が当たったが、この裏話を三島に話したのではと推測している。あくまでも推測でしかないが。それを基に三島は『美しい国』を書いた。これは映画化され、本年5月に封切りされる。核戦争の危機を書いたものだが、映画は原作と違っている。ただ、若い人は三島を知らない人が多いので、三島を知るきっかけとしては良いとのこと。)

・米国とNATOのニュークリア・シエアリングはB61(小型水爆)を分解して部品として貯蔵されているドイツ、オランダ、ベルギー、イタリアが「核の傘」があるとロシアは認識している。(P.74)

・日本に「核の傘」はあるか。71年11月の「非核三原則」衆議院決議で核の持ち込みすら拒否した形。(P.75)

・弾道ミサイル防衛の如何わしさ。弾道ミサイルは、その軌道の絶頂部分が、スピードが最低に。その時を狙って迎撃ミサイルをヘッドオン(正面衝突)できれば破壊が可。イージス艦も敵ミサイルの飛翔コースの中間点にいる必要あり。現実に中国大陸から発射されれば、朝鮮半島の陸地に阻まれ、位置することはできない。(P.95)

・中国の核脅威から逃れる術=中共体制を崩壊させ、各地に軍閥政府が乱立、米政府の特殊部隊が「核弾頭差押え」のため出動する。(P.100)

・中共の「アキレスの踵」は沿岸の大陸棚に沈底式機雷を撒かれること。(繋維式機雷と違い安い)。水深30m未満の浅い海面に機雷敷設は簡単。マレーシア、フィリピン、ベトナム、ブルネイ、インドネシアの海軍でも、特別な訓練は必要でなく、高額な専用設備も必要ない。(P.111)

・アジアに平和を齎すにはマレーシア、フィリピン、ベトナムでスプラトリー島嶼全域での領有権主張の調整が必要。+ブルネイは簡単。(四か国で軍事同盟を結べば良いという事)(P.129)

・これに対し、台湾は、『まあ、「本当に戦争にでもなったら、台湾から遠い海外へ逃げてしまえばよい」というのが、フットワークの軽い台湾国民の本音でしよう。そして政府にも、工廠などの固定資本に投資しても、内戦になれば持って逃げられないから損だ、という、チャイナ夕ウンの零細料理店主に似た思惑があるのかもしれません。

台湾軍がいくら望もうとも、台湾政府と国民は、台湾海峡に機雷を敷設することに反対するでしょう。大陸との往来ができなくなったら、ビジネスが干上がってしまうのは台湾湾人のほうなのです。

面白いのは、中共海軍もそこを見抜いていることでしょう。「こっちが機雷を撒けば台湾は終わりだぞ」と、よく宣伝しています。第三者から見たら、台湾海峡が機雷だらけになったら、中共軍は輸送船や揚陸艦で台湾へ押し寄せられなくなってしまうのですから中共側が困り、台湾側は喜んでよいはずです。』(P.131)

・『現今の台湾政権は、二〇一五年一〇月に、「一五〇〇トン級の国産潜水艦を整備する」 という計画を公表しています。しかし、もしその話が最速で前進しても、初号艦の就役は 二〇二五年よりも後になるらしい。

いったいその前に中共軍が上陸作戦を発起したら、彼らはどうするつもりなのでしょうか?

台湾の指導層は、大陸(中共)の最大の弱点が、「沿岸に機雷を撒かれると簡単に体制 が崩壊し、長期にわたって経済的三等国に転落するしかない運命にある」ということがよく分かっている。それゆえに機雷戦には乗り気ではないのだと想像しますと、台湾のこのような不自然な軍事政策が、矛盾なく説明されるように思います。

両国間には暗黙の了解があるので、台湾海軍もまた、沈底式機雷を探知•掃海するための近代的装備が事実上ゼロであっても、平気なのでしよう。』(P.157)

・『中共に筒抜けになる軍事情報

米国は、国民党がシナ大陸内に保持している人脈、すなわち親戚や戦前の知人を通じた情報の収集力を、貴重だと評価しています。

ところが一九八五年以降、大陸と台湾のあいだの直接商売や個人旅行が趨勢としてもう止めようがなくなると、それに乗じて台湾軍内にも中共側のスパイ工作が浸透しました。

台湾軍の中堅将校としては、いまさら台湾軍が大陸を征服できるわけのないことは判断できますし、その逆に米国政府次第では大陸が台湾を吸収してしまう事態があり得るという計算ができます。だから、古い長老将軍たちに義理立てするよりも、自分の現在や将来を考えるようになるでしよう。米国は、そこまで読んでいます。』(P.160)

・『台湾単独でも機雷戦で勝てるが

台湾経済は、一九九〇年代から、大陸経済への依存を強めてきました。そしてニ〇〇九 〜一三年にかけて、もう事実上、中共経済に隸属してしまったと見ていいのではないでしょうか。

インド、マレーシアもしくはインドネシアが(台湾の行動とは関係なく)、マラッカ海峡を機雷で封鎖した場合、中共の石油輸人はそれだけでも八割を断たれることになると思われますけれども、実は台湾単独で機雷戦に訴えても、中共を亡ぼすのにはもう十分なのです。

そうなってしまうのは、なにも現代の機雷がスーパー兵器だからではなくて、誰も予想もしなかったほど経済発展してしまった一九九〇年代以降の中共の「地政学的弱点」が、それだけ特異であるからなのです。

しかし、撒いた機雷の効果が長期におよぶことを、台湾人は怖れているように見えます。要するに台湾人は、中共経済を破壊したくはないのです。』(P.167)

著者は中国に民主主義革命を起こさせることが、世界への中国の脅威をなくすことと信じていますが(P.206)、中国は民主主義にはならないでしょう。分裂してもミニ中共ができ、軍閥支配の多国家ができるだけのような気がします。それでもそちらの方が安心ですが。

日本の新幹線技術も台湾高鉄の副総裁から中国に流出しました。彼は台湾人ではなく、中国人だからできたのでしょう。外省人と思われます。

https://news.infoseek.co.jp/article/searchina_1630582/

アンデイ記事

中国の強い圧力にもめげず韓国はサード(THAAD、終末高高度防衛)ミサイルを導入すると決定した。日本の自衛隊は二年前からサードミサイルの導入を検討していて、稲田防衛相は今月13日にグアムの空軍基地でサードミサイルを視察した。ところが台湾では同じ日に国会で議員から台湾にサードの導入を聞かれた馮世寛国防部長はNoと答えた。しかも馮世?部長は理由を聞かれて、台湾は米中間の戦争に巻き込まれたくないと答えたのだ。 ●サード導入に反対の理由 馮世寛部長が導入に反対した理由の第一は、台湾は米中間の戦争に介入せず中立を守る。台湾は自国の主権を守るために戦うべきで他国を援助すべきではないと言ったのだ。これは誰でもおかしいと感じる。アメリカは台湾の安全を守ることを法律で決めている。つまり台湾の敵か味方かはすでに明らかだ。アメリカに頼っていながらアメリカの味方にならないで中立を守ると言う理屈は通らない。 米中戦争に巻き込まれたくないと言っても戦争になれば中国は真っ先に台湾と沖縄、グアムを攻撃する。馮世寛が台湾は中立を守ると言ったのは中国に忠誠心を示したのであろう。これが台湾の国防部長なら一旦戦争になれば台湾軍はすぐに降参するか、それとも中国に寝返るかもしれない。この男は早急に更迭すべきである。 次に馮世寛部長は、台湾は中国に近いから高高度ミサイルで台湾を攻撃する必要がないと言った。だが韓国と北朝鮮はもっと近いけれど韓国はサードの設置に踏み切ったのだ。中国がサードを怖れる理由はサードのレーダーが広い範囲にわたって敵陣の動きを探知できるからである。サードを台湾に設置すれば韓国に設置したサードレーダーが探知できない中国の内部や、海南島や南シナ海まで監視できる。サードを拒否した馮世寛は中国の味方である。 馮世寛部長の第三の理由は高価なサードを買う金で他の武器を買う方が良いと言うのだ。確かにサードは高いだろう。しかしサードは中国の動きを監視できるから台湾の安全にも寄与するはずだ。 台湾がサードを買わなくてもアメリカにサード基地を貸せば金は要らない。アメリカの基地があれば中国は台湾を攻撃できなくなる。台湾を防衛するならこれが最良だ。アメリカと台湾は国交がない。しかしアメリカは台湾から99年租借で土地を借りて大規模な領事館を建設した。それならサード基地の租借など簡単である。 台湾の安全はアメリカに頼っているのに台湾の国防部長は中国を怖れているか、中国に味方しているかのような態度である。台湾はこのような軍隊に頼れるだろうか。 ●アメリカの軍備提供 アメリカがトランプ政権に変わって台湾に新しい武器を提供すると言い出した。最近のニュースではアメリカが台湾に高移動性ロケット砲撃システム(HIMRS)を売ると言ったそうだ。HIMRSミサイルは射程が200キロもあるので、ミサイル防御の外に中国沿岸のミサイル基地を先制攻撃することもできる。 これについて蔡英文総統は、アメリカが最新武器を提供するならF35ステルス戦闘機や潜水艦も売って欲しいと述べた。台湾のニュースによるとアメリカはブッシュ時代に潜水艦を台湾に売ると約束したが今になってもまだ提供していないと言う。アメリカが最新武器を提供しないのは台湾の軍部が信用できないからだろう。 三年ほど前にアメリカがアパッチヘリコプターを台湾に売ったところ、パイロットの空軍中佐が芸人グループを軍事基地に招待してアパッチヘリを見せびらかし、コックピットの計器類の写真を撮らせた事件があった。しかもこの操縦士は叱責されただけで今でもアパッチのパイロットとして軍務に勤めている。こんな軍隊にF35ステルス戦闘機を提供したらどうなるか。パイロットが離陸して台湾のレーダーから消えたとたんに中国に飛んでいくかもしれない。潜水艦も同様だ。馮世寛部長の話を聞けば台湾軍の忠誠心に問題があることは明らかである。 ●最新武器よりも忠誠心が先決 問題の核心は台湾に中台統一したい人間がいて、おまけに彼らが政治や軍事の決断をする上層部に居ることである。台湾にはすでに中国から来た人が数十万も居る。戦争になったら台湾軍が最新武器を持っていても上層部が降参するかもしれないし、内通する者が居るかもしれない。国民の85%が台湾人で独立を望んでいても少数の中国人が政治や軍事を操っていれば安心できない。 台湾人の蔡英文が総統になったが、彼女にとって大切な仕事は台湾に忠誠を尽くし、台湾のために戦う軍隊を作ることである。それには中国系の将軍たちを引退させ、台湾人を上層部に任命して最新武器を持つ部隊の忠誠心を厳しく監督しなければならない。 国会議員も国家の安全と将来を真剣に考えるべきである。先日の国会ではある議員が馮世?部長を召喚し漫才の掛け合いのように二人で軽口をたたいていた。時間の浪費だけでなく政治家失格である。 軍事機密を中国に渡した事件は数え切れないほどある。武器よりも軍隊の士気と軍人の忠誠心が大切だ。アメリカが最新武器を提供しても台湾軍の自衛力は疑問だらけ、台湾人さえ信用しない軍隊をアメリカが信用するわけがない。外省人の台湾に対する忠誠心が問題なのだ。蔡英文は現状維持など寝言を言うときではない。台湾軍の刷新は蔡英文にかかっている。

宮崎記事

トランプ政権は台湾の安全保障のため、要請のある武器供与を過去最大の規模に拡大する模様である。 もっとも米国は「台湾関係法」により、台湾への武器供与を条約上も義務付けているが、オバマ政権では北京からの抗議の少ない、「比較的穏やかな武器」(ネッド・プライス前安全保障会議スポークスマン)に限定してきた。  トランプ大統領は昨年12月3日に、蔡英文台湾総統からの祝賀電話を受け、「ひとつの中国」という過去の歴代政権が取った原則には拘らないと発言し、北京を慌てさせたが、その後、やや発言を修正し、浮上した北朝鮮のミサイル実験以後は、中国との関係重視に傾いた。  4月6日には習近平主席をフロリダ州に招待し、北朝鮮問題を主議題に話し合う予定が組まれている。 このため、事前のつめの目的でティラーソン国務長官を北京に派遣した。  こうした情勢を踏まえ、台湾への武器供与は米中会談が終わるまで表面化することはないが、ロイターは(3月18日)、政権内部で真剣に議論されており、供与される武器は対艦ミサイル、フリゲート艦など、総額18億ドルを超えるだろう、と報道した。  しかしながらトランプ政権は肝腎の政権高官人事が遅れに遅れており、国務省、国防省ともに副長官、次官、次官補人事が難航している。 このため、実際に台湾への武器供与が決められるのは、2018年に持ち込むことになろうと観測筋はみている。

ニューズウイーク記事

3月21日、台湾の蔡英文総統は、南部・左営の軍港を視察し、潜水艦を自主建造する方針を表明した。同総統が視察した潜水艦は50年近く運用されており、主要防衛装備を刷新する必要性が浮き彫りとなった。写真は潜水艦から手を振る同総統。台湾の高尾市の海軍基地で撮影(2017年 ロイター/TYRONE SIU)

台湾の蔡英文総統は21日、南部・左営の軍港を視察し、潜水艦を自主建造する方針を表明した。同総統が視察した潜水艦は50年近く運用されており、主要防衛装備を刷新する必要性が浮き彫りとなった。

蔡総統は、水中での戦闘能力の引き上げは台湾の防衛にとって必要不可欠だと指摘。「これは誰もが認識している問題だ」とし、「軍の指揮官として、この問題を解決する決意がある」と述べた。

台湾が所有する潜水艦4隻のうち、2隻は第2次世界大戦時代の潜水艦。米国から購入し、主に訓練用に使われている。残りの2隻は1980年代にオランダから購入したもので、運用開始は70年代となる。

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『米中経済戦争勃発に新たな火種 北朝鮮リスクと中国市場悲観論に傾き始めた米産業界』(3/21JBプレス 瀬口清之)について

瀬口氏の中国に対する見方は、基本的に間違っています。中国に完全に自由な民間活動はありえません。あるのは共産党の指導の枠内での自由です。勿論、自由主義国であっても法律による規制はありますが、中共は法治国家を仮装している人治国家です。賄賂で何とでもなる世界、逮捕状なしで拘引できるのですから。

「主要プレイヤーが政府ではないことによるリスク」と言って、恰も自由に行動できる民間企業が存在するように書いていますが、あのアリババのジャック・マー会長がトランプ大統領と会いに行ったのも、中共の命令です。ソフトバンクの孫社長がトランプ大統領と会ったのとは目的が違います。ジャック・マーは中国への経済制裁防止、孫は「Tモバイル」の買収の道筋をつけ、「スプリント」と合併させ、シナジーを出すことです。勿論、民間企業が国の外交に関与して悪いと言う訳ではありませんが、国が民間企業に強制的にやらせる仕組みが問題と思っています。共産主義は官民の総力戦ができ、非常に効率は良いです。共産主義こそが全体主義の一部でしょう。

瀬口氏も富坂聰氏と同じく、中国をわざと誤解して見せるような誘導をしているようにしか思えません。まあ、中国の悪口、中国に不利な記事を書けば、ペナルテイが待っています。情報をシャットアウトすれば記事が書けなくなりますので。金もハニーも使う必要はありません。

今般のテイラーソン国務長官と王毅外相、習近平主席との会談で、中国は北朝鮮問題にゼロ回答だったようです。4/6~7の習訪米(3/14日経から、未確定?)、トランプとの会談も中味の無いものになりそうです。それはそうでしょう。今秋には大事な党大会があり、人事が決定されるので、迂闊に譲歩できません。そんなことをすれば北戴河会議で長老から袋叩き似合い、望んでいる人事もできなくなります。でも、手土産なしで会えば、トランプがメルケルに示したような態度で終わることでしょう。中国国内的には、「米中経済の発展を確認」くらいでお茶を濁すのでは。鄧小平が中越戦争で中国が勝利したと誤魔化したように。

瀬口氏は米中経済戦争を避けることを願っていますが、中国の軍事拡張に時間の利益を与えるものです。現実の戦争になるより、経済で追い込み、崩壊させて、軍事拡張もできなくさせ、ひいては解放軍の内乱、中国の分裂となるのが理想でしょう。このまま中国を肥大化させれば、日本にとっての軍事的脅威は膨大なものとなります。日本の独立は心もとなくなります。それが読めない人間は、学力レベルだけの頭の良さでしょう。地頭が無いという事です。“没有头脑”です。

記事

20か国・地域(G20)外相会合の開催地であるドイツ・ボンで初会談に臨む、レックス・ティラーソン米国務長官(左)と中国の王毅外相(2017年2月17日撮影)〔AFPBB News

米中両国は経済的相互依存関係を深めており、仮に経済戦争に突入すれば互いに報復をエスカレートさせ、双方が極めて深刻な打撃を受ける関係にある。

これは両国経済のみならず、最悪の場合、世界経済全体にリーマンショック以上の衝撃を与え、世界大恐慌を招く可能性も十分ある。

米中両国間の経済戦争がそうした深刻な打撃を与えることを考慮すれば、両国政府は経済戦争を仕かけることによるリスクを十分認識し、互いにそうした事態を回避するよう努力するはずである。

以上が米中両国の経済関係には大量の核兵器保有国同士の間の相互確証破壊と似た関係が成立しているように見えると述べた前回2月の拙稿の主な論点である。

3月前半に米国出張した際に、以上の筆者の見方を米国の国際政治学者らに伝えたところ、概ね賛同を得られた。

ただし、米中両国間の外交問題を巡る深刻な対立による関係悪化が経済面での疑似的「相互確証破壊」の成立を妨げ、経済戦争に突入するリスクを完全に否定することはできないなど、いくつかの貴重な指摘を受けた。

本稿ではそれらのポイントについて紹介したい。

1.北朝鮮リスク

先月の筆者の論稿は米中両国の経済関係に焦点を当てたものだったが、米国の国際政治学者は以下のような外交問題が両国の経済関係に与えるリスクについても考慮する必要があると指摘した。

ドナルド・トランプ政権下において、現在、米中外交関係上の最大の懸案は北朝鮮問題を巡る対立先鋭化のリスクである。

トランプ政権は北朝鮮がミサイル発射による対米牽制行動をとったことに対し、北朝鮮に対する武力攻撃を含むあらゆる選択肢を検討し、強い態度で臨むスタンスを示していると報じられている。

早ければ4月にも行われる可能性があるトランプ大統領・習近平主席間の初の米中首脳会談において、北朝鮮への対応が主要議題の1つになると予想されている。

トランプ大統領は習近平主席に対して、中国からも北朝鮮に対してより強く厳しい対応をとるよう要求すると見られている。

しかし、中国と北朝鮮の関係はすでに冷え切っており、中国がある程度強く厳しい制裁措置を実施したとしても、北朝鮮が中国からの要求に耳を貸す可能性はほとんどないとの見方が一般的である。

そうした状況下で中国が北朝鮮に対してとり得る制裁措置は、エネルギーおよび食料の供給停止といった究極の強硬策しかない。もしこれを実施すれば北朝鮮経済は危機的状況に陥り、大量の難民が中国東北地域にあふれ出してくると予想される。

東北地域は過剰設備を多く抱える構造不況業種が集積しており、ただでさえ長期の経済停滞に苦しんでいることから、ここに難民が流入するのは中国の政治経済の安定確保に深刻な悪影響を及ぼすリスクが高い。

これほど内政上のリスクの大きな措置を中国政府が米国のために実施することは考えにくい。

そうした点を考慮すれば、中国が米国からの強い要請に応えて、米国がそれに満足する可能性は極めて低いと見られている。その場合、米中両国の対立が先鋭化し、米国側が中国に対して一段と強硬姿勢に転ずる可能性が高まる。

それが米国政府のどのような施策につながるかは未知数であるが、仮に南シナ海における軍事行動を伴う対中強硬姿勢や台湾に関する「1つの中国」論の見直しを迫るといった対応に出れば、米中関係は一気に悪化する。

そうした米国の強硬姿勢が中国国民の反米感情を煽り、中国全土で米国製品ボイコット運動や反米デモなどを引き起こし、米国政府が為替操作国の認定や関税引き上げなどで対抗するといった形でエスカレートしていくと、経済戦争に突入する可能性は否定できない。

ただし、以上のシナリオは民主党寄りの国際政治専門家が主張する、かなり極端な悲観的シナリオであり、トランプ政権の外交政策の欠陥を強調するために、あえて最悪のケースを想定している面は否めない。

これに対して、共和党寄り、あるいは中立的な立場の専門家は、これほど深刻な事態に至る可能性はそれほど高くないと見ている。

現在、トランプ政権内において対中政策をリードしているのは、ジェームズ・マティス国防長官、レックス・ティラーソン国務長官、ゲーリー・コーンNEC(国家経済委員会)委員長、ケネス・ジャスター国家安全保障会議(NSC)国際経済担当大統領次席補佐官らであると言われている。彼らはトランプ政権内では穏健派に属する。

これに対して、対中強硬路線を主張するタカ派には、スティーブ・バノン主席戦略官、ピーター・ナヴァロ大統領補佐官(国家通商会議担当)、ウィルバー・ロス商務長官らがいるが、今のところ対中政策にはあまり影響を及ぼしていないと見られている。

こうした穏健派主導の体制で対中外交を進めていくと、上述のような激突シナリオを回避できる可能性も十分あると考えられる。

ただし、これらのトランプ政権の主要メンバー間の勢力バランスの変化というリスクに加え、トランプ大統領自身の気分の変化が政策に及ぼす影響がもう1つのリスクであるとの見方がある点は考慮しておく必要がある。

このようにトランプ政権の対中外交方針は不透明で予測不可能な部分が多い。これに対して中国政府があまり過敏に反応せず、じっくりと構えて慎重に対応していくことができれば、米中衝突リスクは軽減される。

2.主要プレイヤーが政府ではないことによるリスク

当面、米中関係を悪化させる主因は上記の政治外交要因であるが、これを受けて米中関係の悪化を加速させる可能性があるのが、経済分野における主要プレーヤーである市場参加者=一般国民の動向である。

安全保障面における本来の相互確証破壊の関係を支える主要プレーヤーは両国政府である。一方、経済面での疑似的「相互確証破壊」の主要プレーヤーは市場参加者=一般国民であるため、政府同士のような制御が効きにくい。

いったん相手国に対する強い不満や憤りが国民感情として広く共有される場合、政府の力でこれをコントロールすることが難しくなる。

つまり疑似的な「相互確証破壊」の関係が成立していると分かっていても、両国の激突を招くモメンタムを止めることができなくなる可能性がある。

具体的には、中国国民による米国製品のボイコット運動や反米デモの動きが中国全土に拡散する場合、これを中国政府が短期間の間に沈静化させるのは極めて難しい。

あるいは、米国の労働者や一般国民の間で強い反中感情の高まりが生じる場合、米国政府もこれをコントロールすることは難しい。これは以前、尖閣問題発生後の日本に対する中国国民の姿勢の変化を思い起こせば容易に理解できる。

この主要プレーヤーのコントローラビリティの低さが疑似的「相互確証破壊」の成立を妨げる1つの要因となる。

3.中国ビジネスに対する米国企業の悲観論増大の影響

さらに、もう1つの指摘は、最近の米国企業の対中投資姿勢の変化である。

米国企業はこれまで、アップル、ゼネラル・モーターズ(GM)、フォード・モーター、ファイザー、P&G、マクドナルド、スターバックスなど、様々な分野で中国国内市場の大きなシェアを確保し、巨額の売上高と利益を享受してきた。

しかし、最近になって、上海の米国商工会議所の不満に代表されるように、知的財産権の侵害、資金回収難、政府の規制の突然の変更、中国企業と外資企業との差別的な扱いなどに対する不満が強まっている。

この1、2年、これらの問題点により、米国企業にとって中国市場は以前ほど魅力的ではなくなっているとの見方が増大している。

同時に中国経済の減速を眺め、中国市場の将来に対する見方も悲観的になっていることから、対中投資が慎重化しているとの声を耳にすることが多くなっている。ただし、実際の米国企業の対中直接投資金額は減少せず、むしろ逆に増加している。

以上で指摘されている問題点は日本企業にとっては数年前からずっと直面してきている問題であるため、最近になってこうした問題点に関する懸念が高まっているという声は聞いたことがない。

米国企業が最近になってこうした懸念を強めている背景についてはさらに分析を深める必要がある。

以上のような米国企業の中国ビジネス悲観論の拡大、それに伴う対中投資姿勢の慎重化は、両国が激突することによって生じる経済的打撃に対する受け止め方の変化をもたらす。

以前であれば深刻なダメージを懸念して、米中対立が先鋭化しないことを強く望んだ人々が、今後はそれほど強く望まなくなる可能性が高い。

これも疑似的「相互確証破壊」の成立にとってマイナス要因である。

以上のように、経済面における疑似的「相互確証破壊」は上記の3つの要因によって成立しにくくなる脆弱性を内包している。

米中両国はこうした点にも慎重に配慮しながら、経済戦争への突入を回避するために、様々な努力を重ねていくことが望まれる。

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