『米中が朝鮮半島で談合する時 「北の核」と「米韓同盟」を取引しよう』『「米韓同盟」も「中朝」も賞味期限切れだ 「同盟国を捨てる機会」を見計る米中』(4/5・6日経ビジネスオンライン 鈴置高史)について

本記事を読みますと、ニクソンも周恩来も「朝鮮民族は米中にとっても扱いにくい」と思っていたのが分かります。日本はそういう民族を1910年~1945年まで仲間として統治していたのですから、如何にロシアの脅威があったにせよ、大変だったと思います。何せルーツは中国人、言葉も中国語の方言のようなものです。中国人をもっと「すれっからし」としたのが朝鮮人です。それはそうでしょう。事大主義で強い方に靡くのですから裏切りが当り前です。

沈志華教授とマイケル・スウェインが主張する「朝鮮半島の統一と非同盟」がセットという考えは中国に大きなメリットを齎すだけです。米韓同盟と中朝同盟をなくし、韓国主導で統一させたとしても、抗日政府を樹立した北朝鮮に正統性があるという親北派の多い韓国民を、“所謂従軍慰安婦”に見られるように、裏で操作できるようにするでしょう。また、韓国主導と言っても、政治システムを議会制民主主義化することはありません。金正恩の北朝鮮が抵抗するでしょうし、中国も共産主義国家で香港の一国二制度すら形骸化させてきているのに、朝鮮人に自由を認めるはずがありません。統一は李氏朝鮮時代の属国に戻すことを意味します。最初は韓国主導と言いながら、政治体制について議会制民主主義へのギャランテイーなしというか、朝鮮半島を第二の香港にするつもりでしょう。親中派議会人を多く送り込み、共産党一党独裁化することを狙っていると思います。

しかし、映画「スノーデン」で彼が横田基地に在籍していた時に、日本のインフラにマルウエアを埋め込んだというのが出て来るそうです。北や中国にも同じことができる技術を米国は持っていないのでしょうか?米国の軍事予算を増やすためとか、兵器を消費して最新型にするために、日本を脅威に晒すのだったら止めてほしい。

でも、北や中国に時間の利益は与えることは出来ません。腹黒い中国の言うがままに「朝鮮半島の統一と非同盟」に乗せられると中国を利するだけです。トランプがどう判断するかです。取引の達人と自負しているトランプですから習を追い込む姿勢を見せないと。中国国内は嘘の報道であふれるでしょうが。

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「ヤルタ体制に戻れ」。中国の学者の主張が注目を集めている(写真:AP/アフロ)

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「米中が協力し朝鮮半島を統一・中立化する」構想が米中双方で語られる。北朝鮮から「核」を取り上げるのが目的だ。

「韓国主導で統一を」と中国学者

鈴置:今、アジア専門家の間で注目を集めている講演があります。中国の有力な学者が「韓国が主導する朝鮮半島の統一」を訴えたのです。

主張したのは中国の冷戦研究の第一人者と言われる華東師範大学の沈志華教授です。中朝関係史に詳しく、豊富な資料を駆使して『最後の「天朝」』(日本語)を書いた人でもあります。「中国と北朝鮮は血盟の間柄」との神話を打ち砕いた大著です。

沈志華教授は3月19日、大連外国語大学で「中朝関係史の角度から見た『THAAD問題』」(中国語)と題し講演しました。講演筆記は中国のSNS(交流サイト)の「微博」など、ネットで読めます。

—「韓国による統一」に中国政府が動く可能性があるのですか?

鈴置:この講演の存在をご教示下さった中国研究者の辻康吾氏は「『韓国による統一』を中国政府が直ちに受け入れるとは考えにくい。しかし、こうした主張が堂々と中国のネットに掲載されていることには注目すべきだ」と語っています。

これは私の見方ですが、この講演が広く公開されているのは「1つの選択肢として提示し、米国の反応を見る」目的と思います。

「韓国による統一」は上手にやれば中国の利益になりますが、その実現は米中の足並みがそろわなければ難しいからです。

辻康吾氏は毎日新聞の香港・北京支局長を歴任した後、東海大学と獨協大学の教授を経て、現代中国資料研究会代表を務めるベテランの中国学者です。講演筆記は長文なので、辻康吾氏による抄訳を以下に引用します。

北は敵、南は友人

  • 表面的には中朝は同盟関係にあり、米国と日本が支持する韓国は北朝鮮と対峙している。だが、これは冷戦の遺物に過ぎない。状況は根本的に変化した。北朝鮮は中国の潜在的な敵となる一方、韓国は中国の友人となった。
  • 中朝が朝鮮戦争を共に戦ったことによる特殊な関係はすでに瓦解した。原因は3つある。1970年代初めから中・米関係が大きく改善したという「外交的要因」。北朝鮮が欲しいものは何でも与えるという姿勢を中国が改めたことによる「経済的要因」。そして1992年の中韓国交正常化という「政治的要因」だ。
  • 中朝関係の根本的変化が北朝鮮を孤立させ、その核開発を引き起こした。北朝鮮の相次ぐ核実験が朝鮮半島の危機をエスカレートし、中国を取り巻く環境を不安定にした。
  • 中国の根本的な利益には平穏な環境、対外発展が必要だが、北朝鮮の核武装で失われた。中朝の利益は必然的に対立している。であるからして北朝鮮の核問題は中国が主導的に解決すべきである。北朝鮮の立場に立っての解決は不可能なのだ。

米・朝を喜ばせた「中韓」の悪化

—「中国が主導的に解決すべき」とは?

鈴置:中国政府はこれまで「北朝鮮の核問題は米朝が対立していることが原因だ。解決には米朝対話が不可欠だ」と主張してきました。

沈志華教授は「そんな外交的レトリックを使って逃げてばかりでは、問題は解決しない」と断言。そのうえで「こうした受け身の姿勢により、敵に得点を与えている」と政府を厳しく批判しました。

「敵に得点」とは北朝鮮の核武装を放置したため、東北アジアでの戦力増強や「米日韓3国軍事同盟」結成の名分を米国に与えたことです。

さらには、米軍の戦力増強の一環であるTHAAD(=サード、地上配備型ミサイル迎撃システム)配備により、中韓関係が悪化したことです。沈志華教授は、これも米国と北朝鮮を喜ばせるだけだった、と言うのです。

兵糧攻めで「統一」を飲ませる

—今の状況は、中国からは「米国の得点」に見えるのですね。

鈴置:米国や日本からは「北朝鮮の核武装を暗黙裡に認めることで中国は、在韓米軍撤収や米韓同盟廃棄と交換するカードを着実に作っている」と見えるのですがね。

実際、中国はしばしば「米韓合同軍事演習の中断と、核実験の中断を交換せよ」と米朝に呼び掛けます。表「朝鮮半島を巡る米・中のカード」で示したように、米朝対話のシナリオの大団円として中国は「米韓同盟廃棄」を考えていると思われます。

朝鮮半島を巡る米・中のカード

米国 中国
THAAD配備留保 従来より強い対北朝鮮制裁容認
米韓合同軍事演習の中断と一部制裁の解除 北朝鮮の核・ミサイル実験の中断
米朝平和協定(不可侵協定)の締結  ・米朝国交正常化  ・在韓米地上軍撤収  ・在韓米軍撤収  ・米韓同盟廃棄 北朝鮮の核兵器廃棄  ・核弾頭の増産中断  ・弾頭再突入技術の開発中断  ・弾頭小型化技術の開発中断  ・保有核兵器の全廃
「朝鮮半島の非核化・中立化」の制度的保障

注)左右の項目は必ずしも連動しない

—では、沈志華教授はどんな大団円を主張するのですか。

鈴置:結局は「米韓同盟廃棄」ということなのでしょうが、表向きは「南北統一」を掲げています。講演では以下のように語っています。

(中国にとって必要な)米日韓3国軍事同盟の打破と、朝鮮半島の長期的な平和には第1に「統一」、第2に「米国との関係」がポイントになる。

そして「統一された朝鮮半島は中国の脅威にならない」「それどころか韓国主導の統一国家は、中国・東北部の経済発展に大きく寄与する」と強調したのです。

—確かに統一すれば、米国や韓国に負けまいと作った北朝鮮の核は不要になります。でも、どうやって統一に持って行くのでしょうか。

鈴置:ええ、その疑問がわきます。「統一」が簡単にできるのなら、とっくにしているはずです。ことに「韓国主導の統一」を北朝鮮が素直に飲むとは思えません。途方もない状況を作れば別ですが。

沈志華教授は講演で「統一」に至るプロセスに一切、触れていません。が、現実には「途方もない状況を作る」――例えば、中国が北朝鮮との貿易を完全に中断して兵糧攻めにする――くらいしか選択肢はありませんので、それを念頭に置いていると思います。

あるいは米国が北朝鮮の核・ミサイル施設を先制攻撃し、金正恩(キム・ジョンウン)政権が死に体となった後の「出口戦略」として「韓国による統一」が有効と考えているのかもしれません。

人民解放軍が北に侵攻

—中国は「米国による対北先制攻撃」は、何が何でも阻止したいのではありませんか?

鈴置:中国政府はその姿勢を打ち出してはいます。しかし「米国による北の核開発能力の除去」、果ては「金正恩の除去」を期待する中国の専門家もいます。

何と、中国人の学者が米国での講演会で堂々とそう語ったのです。聯合ニュースが「China scholars, policy makers begin talking about supporting surgical strike on N.K.: Chinese professor 」(2016年10月7日、英語版)で報じています。以下は前文と本文の書き出し部分の邦訳です。

  • 中国の学者と当局者が、北朝鮮への外科手術的な攻撃と指導者である金正恩の権力からの追い落としを、政策の選択肢として支持する方向で議論し始めた。
  • コロンビア大学(Columbia University)のZhe Sun上級客員研究員がワシントンで開いた安全保障に関するフォーラムで、そうした会話が中国の指導層で交わされていると明かした。

情報源を明示した上での報道です。記事によると、Zhe Sun上級客員研究員は以下のように踏み込んで語りました。

  • 米韓による「外科的手術と首のすげ替え」を支持すべきだと語り始めた学者や当局者がいる。もっと過激な意見もある。中国が指導者(金正恩)を換えねばならない。軍が国境を超えて北朝鮮に駐屯し、核開発の放棄と改革開放政策の採用を迫る――との意見だ。

暗殺事件の引き金か

—金正恩がこれを読んだらパニックに陥ったでしょうね。

鈴置:そう思います。隣の大国、それも同盟国が自分の国への侵攻と自身の「除去」を議論し始めたのです。この記事は英文でしたので、そのまま世界中の媒体に掲載されました。「面子も丸つぶれ」です。

マレーシアでの異母兄、金正男(キム・ジョンナム)氏暗殺事件(2017年2月13日)は、この記事が引き金となった可能性があります。「首をすげ換える」としたら、金正男氏が後継と見なされていましたから。

—中国の人民解放軍が北朝鮮に侵攻して核開発を止める、なんてことがあり得るのでしょうか。

鈴置:米国に先に実施されて主導権を握られるぐらいなら、自分が先にやろうと中国が考えても不思議ではありません。

ちなみに、私の書いた近未来小説『朝鮮半島201Z年』(2010年11月刊)でも、米軍ではなく中国軍が北朝鮮に侵攻して「核」を北から取り上げます。

北京の目と鼻の先に空軍基地

—なるほど「中国による侵攻」も否定できないのですね。では「統一韓国」が生まれた後、米韓同盟はどうすべきだと沈志華教授は言っていますか?

鈴置:それにも明確には言及していません。しかし米韓同盟は当然、廃棄すべきだと考えていると思います。そうしなければ中国は米軍が駐留する「統一韓国」と国境を接してしまいます。

北朝鮮を消滅させるために汗をかく中国としては割の悪い話です。それを避けるために、米軍は朝鮮半島南部――現在の韓国にだけ駐留できるとの約束を取り付ける手もあります。

しかし今や、米国と対等な関係を目指す中国人の目には、それも不愉快千万な状況に映るでしょう。中国は米国のそばに軍事基地を持たない半面、米国は北京と目の鼻の先の韓国に空軍基地を置き続けるのですから。

韓国の反米情緒を活用

—韓国が同盟廃棄を飲むと沈志華教授は考えているのですか?

鈴置:直接的には語っていませんが、講演では「米日韓3国軍事同盟」に関連し、次のように述べています。

  • 韓国には親米勢力と反米勢力が存在する。外交的な手段を上手に駆使すれば韓国の反米情緒をかき立て、反米勢力をして「3国軍事同盟」を解体することができる。

統一すれば、反米派の「米国との同盟は不要」との主張がより説得力を持つようになります。仮想敵である北朝鮮が消滅するのですから。

—しかし、中国というもっと大きな脅威と国境を接することになりませんか、「統一韓国」は。

鈴置:それを懸念して米国との同盟を続けたいと考える韓国人もいるでしょう。ただ日本人や米国人が想像するほどには、彼らの「中国に対する恐怖」は大きくないと思います。

千数百年間にわたって、朝鮮半島の歴代王朝は中国大陸の帝国の一部――朝貢国でした。「中国人の下で生きて行くこと」に韓国人は慣れているのです。それを楽しいと思うかは別の問題ですが。

ヤルタ体制に戻れ

—米国は米韓同盟の廃棄に応じると沈志華教授は見ているのですか。

鈴置:少なくとも呼び掛ける価値は十分にあると考えているようです。先ほど引用した部分でも「朝鮮半島の長期的な平和には『統一』に加え『米国との関係』がポイント」と言っています。

辻康吾氏は沈志華教授の講演の最後の部分「冷戦で崩壊してしまったヤルタ体制に戻れ」に注目します。中国にとって「ヤルタ体制」とは「アジアのことは中国が仕切る」との国際的な約束なのです。

沈志華教授は「ヤルタ体制では朝鮮半島や台湾は米国の防衛線の外に置かれた」とも語っています。それからすると「統一韓国」は中国のシマになるべきと考えているはずです。狙いは最低で朝鮮半島の中立化、できれば「統一韓国」と中国の同盟でしょう。

トランプ政権が北朝鮮の核武装阻止に本気で動き始めました。中国にとっては「北の核」と「米韓同盟」を同時に廃棄しようと米国に取引を持ちかける、絶好のチャンスが来たのです。

沈志華教授はそれを「韓国による統一」という糖衣でくるみ、米国や韓国が飲みやすくしたのです。もちろん北朝鮮に配慮せねばならない中国政府は「過激な意見」と見なすのでしょうが。形式的ではありますが中朝同盟はまだ、存在しています。

米国から呼応

—米国が韓国を見捨てるでしょうか?

鈴置:興味深いことに、沈志華教授が「朝鮮半島の統一」――本音ベースでは「ヤルタ体制への復帰」を唱えた直後に、それに呼応するような意見が米国で語られました。

「核問題解決には、米中が協力して朝鮮半島の統一と非同盟化を進めるしかない」との論文が有力外交誌に載ったのです。「米韓同盟を打ち切る」つまり「韓国を見捨てる」のが前提の議論です。

「Foreign Policy」の「China and America Need a One-Korea Policy」(3月21日、英語)です。

—4月6、7日と米国で米中首脳会談が開かれます。

鈴置:いずれの記事も、それに合わせて掲載されたかと思われます。

(次回に続く)=4月6日に掲載予定

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1972年、ニクソン大統領と周恩来首相が交わした“本音”は、今も米中の共通認識となっている(写真:AP/アフロ)

前回から読む)

米国と中国が仕切る「朝鮮半島の統一・中立化」は実現するのか。

統一による平和

前回は「米中が協力して朝鮮半島の統一を進めよう」との声が両国であがり始めた、という話でした。

鈴置:中国の学者、華東師範大学の沈志華教授の主張を要約すれば「北朝鮮の核問題は小手先では解決しない。『統一』という大技を発動すべきだ。それこそが中国の利益になる」です。

米国にも「統一による非核化」を主張する学者が登場しました。カーネギー国際平和財団( the Carnegie Endowment for International Peace)のマイケル・スウェイン(Michael Swaine)シニアフェローです。

米外交誌の「Foreign Policy」に「China and America Need a One-Korea Policy」(3月21日、英語)を載せました。

この記事の副題は「北朝鮮(の核武装)を止めるには、朝鮮半島の将来の統一と、非同盟を保証するしかない」です。

「統一による非核化」という点で沈志華教授と全く同じですが、より明確に「中立化」をうち出しています。原文は以下です。

  • The only way to stop North Korea is by guaranteeing the peninsula will eventually be united–and non- aligned.

「日本は我慢しろ」

本文のポイントを訳します。

  • この数十年間、米中韓日、そして時にはロシアが北朝鮮に核武装計画を断念させようと懐柔、威嚇、甘言をもって努力を続けてきた。しかし、完全な失敗に終わった。
  • 米中は過去の失敗を再演するのではなく、協力を始める時だ。米中は双方が受け入れることのできる朝鮮半島の平和的な統一を目指し、誠意を持って行動に移るべきだ。半島の統一と、広い意味での非同盟化(すなわち、外国軍が駐留しない)が解決策である。

—なぜ今、こうした声が米中であがり始めたのでしょうか。

鈴置:北朝鮮の核武装が時間の問題となったからです。ただ、平和裏に解決するには中国の強力な経済制裁しか手がない。けれど、それは北東アジアの安保環境の激変につながる。だからこそ、スウェイン・シニアフェローは次のように強調したのです。

  • 非同盟化は韓国と日本を危険にさらす。しかし、北朝鮮に対し極度の孤立と崩壊の危険を選ぶのか、あるいは核武装なしで安全を確保するのかを問いただす道は、中国の対北影響力を完全に発揮することだけなのだ。

軍事力を使わずに北朝鮮から核を取り上げるには、中国の経済制裁を通じた「統一・中立化」しかない。米国から事実上、同盟を打ち切られる韓国と、大陸に向けた盾を失う日本は不安にかられるだろうが、北の核をなくすのだから我慢しろ、ということです。

出そろう取引材料

沈志華教授はこの状況を見て「米国が困っている今だからこそ、朝鮮半島から手を引かせられるチャンスだ」と考えたのでしょう。

スウェイン・シニアフェローは「統一・中立化構想」を「future Korea」と名付け、これを協議する米中双方の「取引条件」にも具体的に言及しています。以下です。

  • 米国はすべての戦闘力の朝鮮半島からの撤収と、米韓連合司令部の解体、米韓合同軍事演習の中止、THAAD(=サード、地上配備型ミサイル迎撃システム)配備撤回の可能性を探らねばならない。
  • 一方、中国は北朝鮮とのすべての経済的な関係の中断を準備すべきだ。「統一韓国」に対しては明快で拘束力のある安全保障上の保証を与える必要がある(これには外国の軍隊が挑発的な姿勢で展開しないとの約束も含む)。将来は中朝軍事同盟も廃棄すべきだ。

表「朝鮮半島を巡る米・中のカード」でも示したように、両国が話し合うとするなら、この辺が取引材料となるのです。

朝鮮半島を巡る米・中のカード

米国 中国
THAAD配備留保 従来より強い対北朝鮮制裁容認
米韓合同軍事演習の中断と一部制裁の解除 北朝鮮の核・ミサイル実験の中断
米朝平和協定(不可侵協定)の締結  ・米朝国交正常化  ・在韓米地上軍撤収  ・在韓米軍撤収  ・米韓同盟廃棄 北朝鮮の核兵器廃棄  ・核弾頭の増産中断  ・弾頭再突入技術の開発中断  ・弾頭小型化技術の開発中断  ・保有核兵器の全廃
「朝鮮半島の非核化・中立化」の制度的保障
 

注)左右の項目は必ずしも連動しない

時間がかかる米中合意

—「future Korea」は実現するのでしょうか。

鈴置:米中の話し合いというか、談合路線には1つ難点があります。合意を得るのに、あるいは対北制裁の効果が出るのに時間がかかりそうなことです。下手すると、その間に北朝鮮が核武装に成功してしまう。

4月2日、FTがトランプ(Donald Trump)大統領にインタビューしました。4月6、7日の習近平主席との会談直前ですから「米中間の取引」について聞いています。

日本語では日経の「〔FT〕トランプ氏会見、中国に北朝鮮への対応迫る」(4月3日)で読めます。FTの元記事は「Donald Trump warns China the US is ready to tackle North Korea」です。

FTの質問は「中国が北朝鮮への圧力を強める代わりに、将来の朝鮮半島からの米軍引き揚げを保証する『大きな取引』を検討しているか」でした。

それに対しトランプ大統領は「中国が北朝鮮問題を解決しないなら、我々がやる。今言えるのはただそれだけだ」と述べました。原文は以下です。

  • Asked if he would consider a “grand bargain” ? where China pressures Pyongyang in exchange for a guarantee that the US would later remove troops from the Korean peninsula ? Mr Trump said: “Well if China is not going to solve North Korea, we will. That is all I am telling you.”

その前段では「中国は北朝鮮に対し非常に大きな影響力を持っている。中国は北朝鮮問題で我々に力を貸すか否かを決めることになる」「米国に協力するなら、それは中国にとって非常に良いことだ。協力しないなら、誰にとっても良くない結果になるだろう」と語っています。

左派政権誕生を待つ中国

要は「北朝鮮への強力な経済制裁をかけるよう中国に要求する。それが嫌なら米国は北への先制攻撃で核問題を解決する」と宣言したのです。

「大きな取引」(grand bargain)に対しては否定も肯定もしていませんが、トランプ大統領の一連の発言からは「問題解決に時間をかけるつもりはない」とのワシントンの空気がひしひしと伝わってきます。

もっとも、中国は「大きな取引」あるいは「future Korea」にすぐには応じないと見る向きが多いのです。5月9日の韓国の大統領選挙で左派「共に民主党」の文在寅(ムン・ジェイン)候補が勝つ可能性が極めて高いからです。

「反米親北」色の濃い次期政権が米国との関係を悪化させれば中国は米国への譲歩、つまり対北圧力なしでの米韓同盟の弱体化、消滅を期待できるのです。

成均館(ソンギュングァン)大学のキム・テヒョ教授は朝鮮日報に寄稿した「米国は北朝鮮より韓国を懸念する」(4月3日、韓国語版)で以下のように書いています。

  • 中国にすれば、韓国の次期大統領さえちゃんと選ばれれば問題は解決する。あえて米国と韓米関係で争う必要はない。

韓国を格下げした米国

—「米中の談合」が今すぐ始まる可能性は低いということですね。

鈴置:その通りです。ただ、それでも「米中による統一・中立化に向けた話し合い」には目を向けておく必要があります。それは「筋がいい解決法」だからです。

まず、この方法を捨てれば、軍事行動をとるしかなくなります。米国が北朝鮮の核・ミサイル施設を破壊する場合、空・海軍力だけを動員すると見られています。

地上戦に持ち込めば被害が大きくなるからです。ただ、それは米国の思惑であって、限定戦争のつもりが北朝鮮の反撃にあって、全面戦争に拡大する可能性がないわけではない。

その際にも中国は参戦しないでしょうが、北朝鮮からの難民を引き受けるリスクが高まります。それに戦争の結果、北東アジアにおける米軍の存在感が一気に高まってしまいます。

もう1つ、米中にとって「筋がいい」理由があります。それは賞味期限切れの「米韓」「中朝」の両同盟を、北の核問題を解決するとの名分の下、解消できるからです。

沈志華教授が強調したように、中朝同盟は形骸化したうえ、中国にはお荷物になっています(「米中が朝鮮半島で談合する時」参照)。

米国にとっても韓国との同盟は不良資産化しています。米国が同盟国と中国包囲網作りに励む中、韓国だけがそっぽを向いています。それどころか米中対立を利用して、両国を天秤にかける「二股外交」まで始めました。

米国が巨額の予算と人材を投入し、韓国を北朝鮮の脅威から守っているというのに、あまりのやり方です。

ティラーソン(Rex Tillerson)国務長官が韓国を「同盟国」ではなく「パートナー」と呼んだのも当然です(「米国から『同盟国』と呼ばれなくなった韓国」参照)。

共通の主敵を失った米韓、中朝

—なぜ、そんなことになったのでしょうか。

鈴置:米韓が共通の主敵を失ったからです。米国の最大の仮想敵は中国。しかし韓国は絶対に「隣の巨人」中国を敵に回そうとはしません。

在韓米軍へのTHAAD配備問題が揺れるのは、米韓同盟の矛盾の象徴です。中国との良好な関係を維持したい韓国は、在韓米軍を守るための兵器の導入に難色を示し続けたのです。次期政権は配備を拒否するかもしれません。

仮想敵の異なる国同士の同盟は極めて不安定です。どうせ長続きしない同盟なら、それを捨てて見返りに中国から「強力な対北制裁」を引き出そうと米国が考えても不思議ではありません。

半島の構図は合わせ鏡です。中朝も共通の敵を失いました。中国の仮想敵は米国と日本であって韓国ではありません。

半面、北朝鮮の主敵は韓国であって米国ではありません。できれば米国や日本とは関係を改善し「国境を接する巨人」である中国を牽制したいのです。

寿命の尽きた2つの同盟

—確かに「米韓」「中朝」の2つの同盟は寿命が来ていますね。

鈴置:いずれも惰性で続いているのです。沈志華教授はこの構図を見切ったからこそ「強力な対北制裁」つまり「北朝鮮の切り捨て」を実行し、その代価として米国に韓国を捨てさせようと主張しているわけです。

赤字の事業を抱える大企業が2社あると想像下さい。収益が悪化し続けるというのに、ライバルと張り合うため2社ともその事業を嫌々ながら続けてきた。ある日、その馬鹿馬鹿しさに気づいた2社のトップが談合、それぞれの赤字事業を同時に切り捨てる――というアイデアなのです。

—それはあり得ますね。ただ、最近の米中は決して仲が良くない。

鈴置:でも、朝鮮半島に関しては「極めて仲がいい」のです。米中には「朝鮮民族の内輪もめに引き込まれ、多大の人的損害を出した朝鮮戦争の失敗を2度と繰り返したくない」との共通認識があるからです(「韓国は無視して『パンドラの箱』を開ける米国」参照)。

1972年、米中関係正常化のためニクソン(Richard Nixon)大統領が訪中しました。その際、周恩来首相に以下のような本音を漏らしています。

「衝動的な人たち」に嫌気

ニクソン訪中機密会談録』(毛里和子・毛里興三郎訳)の100ページから引用します。『増補決定版』では136ページです。原文は「Nixon’s Trip to China」の「Document 2」の17ページで読めます。

  • 朝鮮人は、北も南も感情的に衝動的な人たちです。私たちは、この衝動と闘争的態度が私たち両国を困らせるような事件を引き起こさないよう影響力を行使することが大切です。朝鮮半島を我々両国政府の争いの場とするのは愚かでばかげたことです。一度起こってしまいましたが、二度と起こしてはなりません。首相と私が協力すればそれを防ぐことができると思います。

周恩来首相も次のように答えました。

  • そのことがまた南北の接触を促進するでしょう。

「感情的に衝動的な」(emotionally impulsive)人々には大昔から、米中ともに嫌気がさしているのです。

日本は米中が突然に談合し、朝鮮半島を投げ捨てる日に備える必要があります。それは「北の核」が平和的に解決される時はもちろん、力で解決される場合にも「後始末」として起こり得るのです。

(次回に続く)

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