黄文雄著『中国が世界地図から消える日』を読んで

本日の日経に「首相、年内の解散選択肢」とありました。やはり、消費税増税先送り解散をするようです。「自民党は衆院で300近い議席があり、解散したら議席が減るのでしない」という評論家もいましたが、第一次安倍内閣の時には伝家の宝刀を抜くこともなく終えましたので、力のあるときにやるのは必定です。自民党の反安倍派も次の人事では処遇されないかもしれません。新閣僚で問題になった人も次は選ばれないでしょう。早く解散した方が良いです。

 

さて、表題の件です。書名を見て驚く人もいるかもしれませんが、勿論地理的概念で中国大陸がなくなる訳はありません。今の共産党統治がうまく行かなくなる時の、日本と中国の付き合い方を説いております。ただこれははっきり言って分かりません。変数が多すぎるからです。アメリカの出方、ロシアの出方、インドの出方、ASEANの出方、EUの出方等ありますので。しかし、バブルが弾ける、弾けると言われながらなかなか弾けないものです。その理由も挙げて説明しています。帝国の衰亡には時間がかかるとのこと。多分インフレ覚悟で札を刷るのではと思いますが。しかし、王陽明の人種差別発言とか、中国語が読めないと分からない点を勉強できます。今の日本でエリートと言われる人は軍事を知らなすぎます。世界や日本の過去の歴史を見れば如何におかしいかと感じれるでしょう。

 

P.56~58

 

列島に生まれ育った日本人にはこの地なりの自然の摂理や社会の仕組みがあり、半島や大陸とは根本的に違っている。しかし戦後の日本人には、それを見る余裕があまりないようである。3 0 0年近く続いた遣唐使は菅原道真の建言によって中止されたが、その理由として、 唐の内乱、遭難など危険の大きさ、もはや唐の文化に学ぶべきものはないこと、遣唐使が 朝貢使扱いされるのは屈辱であることをあげている。一ロに唐といっても、盛期の唐、安史の乱(755〜763年、唐の家臣•安禄山が玄宗皇帝に対して起こした反乱。玄宗と楊貴妃の悲恋で有名)後の唐、黄巣の乱(875〜 884年に起きた農民の反乱)後の唐は雲泥の差がある。当時の『唐書』『新唐書』『五代史』、またアラビア商人による『シナ・インド物語』に、当時の阿鼻叫喚地獄の様が記されている。遣唐使の廃止は894年であり、唐の滅亡(907年)は目前だった。また福沢論吉が「脱亜論」を唱えざるを得なかったのは、中華の人間の頑迷な守旧ぶりだけが原因ではない。当時の中華社会は天下大乱による殺し合い、餓死、病死が続く地獄のような状態だった。日中がどう付き合いどう立ち向かうかを考える前提条件として、双方の時代背景を知ることこそ、最も必要なのである。戦後日本の文化人が、戦前以上にコモンセンス(常識)を身につけているとは限らない。 戦後持つベき知識や情報量は戦前の比ではないにもかかわらず、戦後日本人の知識は量的のみならず質的にも制約されているのではないかと想像される。中国はGDPで日本を抜いて世界2位になってはいるが、いまだに日本のODA援助を求めている。「国民1人あたりの平均収入は日本の10分の1だから」というのがその理由だ。軍事大国であることをさんざんアビールして恫喝しておきながら、金が欲しいとなると臆面もなく弱者面をしてくる。引けば引くほど押してくるのが中国のやり方だ。だからこれに対するには「毅然として臨む」しかない。日本的な思いやりや遠慮、「いつか誠意を分かってくれるはず」という期待が全く通用しない相手であることを理解するべきである。

 

P.191

 

例えば、朱子学では極端に排外的な思想が論じられ、朱子は華夷の分を強く主張、復仇心にみなぎっている。陽明学の開祖•王陽明は非漢族の苗族を禽獣として種族虐殺を主導した殺し屋である。このような伝統的な華夷思想が近代的ナショナリズムとは異なるのは、文化•文明の開化を二元的とするのではなく、文明を中心に野蛮を辺境とし、区分する種族観である。もちろんそのような蔑視観は中国人に限らず、古代ギリシャやローマなど多くの文明国にもあった。しかし、より近代化された先進国を中国人が夷狄視することは時代錯誤以外のなにものでもない。

 

P.252~255

 

権貴階級に莫大な富を蓄積させることになったのは、中国経済の急成長であるが、これ は外資に頼った成長だったのだ。たとえば、中国に対する直接投資は2011年で1160億米ドルである。そのうち香港が全体の6割強を占めるが、これは各国とも手続き上、香港経由で投資をしたほうが便利だからである。直接投資でいえば、日本(63億5000万米ドル)は合湾(67億300 o万ドル)に次いで3位の投資を行っている。中国のバブル崩壊については、すでに21世紀の初頭から指摘されつづけている。「パブル崩壊はすでにはじまっている」という見方が「時おり」というより、繰り返し出ている。でははたしてバブル崩壊は「すでにはじまっている」のか、あるいは「すでに崩壊している」のか。日本人は1990年代に入ってから中高年の世代はたいてい経験している。 経済史から見るかぎり、「昭和恐慌」といわれる時代やら欧米でもバブルを経験してきた。たとえば台湾は、日本よりもやや遅れて、はっきりしたバブル崩壊のショックがなくても、90年代の後半以後、産業資本と技術、人材の中国への移転により、産業空洞化と国富の流失からくる長期の経済停滞に苦しんでいる。韓国は、バブルどころか、国家財政の破綻、国家破産を二度も経験した。一度目は李朝王室の完全な国家破産による日韓合邦で、 ニ度目は97年のアジア通貨危機による国家破産である。二度目の破産では、韓国は「第二の国辱」と忍びがたきを忍んでIMFに引き取られた。反日の「歴史の立て直し」によって、「千年の恨」を日本にぶつけ、革新政権の不甲斐なさを責任転嫁している。金泳三、 金大中、廬武鉉三代の大統領本人もしくは家族が収賄で逮捕されるのみで、なんとか韓国もOECDの加盟国として面目を保たれた。もちろん中国は易姓革命の老大国だから、バブル崩壊の検証については、いくつかのポイントに目を向けないと分かりづらい。以下6点を示す。

 

①老大国だけでなく、中国のような超国家(天下国家)は、ローマ帝国も、オスマントルコ帝国も、小国やミニ国家とはちがって、没落から崩壊、消滅に至るまでは、比較的長い時間がかかる。中国だけの例をみても、たとえば、秦、隋は別として、漢も唐も清も消えていくのは、時間がかかる。たとえば、清はすでに乾隆の盛世が過ぎてから峠を転げ落ちていく。18世紀末の白蓮教徒の乱から延々と内乱内戦をつづけていても消えるまでは100年以上も かかった。

 

②中国は易姓革命の国だから、モンゴル人やら満州人に征服されても、それは中国人の祖先だと言い張り、中国は永久不滅につづいているという自己満足によって生きのびていく。毛沢東の社会主義政権はじっさいすでに文革後、終わってしまっていても、鄧小平以降はあいかわらず「中華人民共和国」という看板を掲げて、生き残ろうとし、建前と本音を使い分けているので,外から、たとえば日米欧からも、中国の主張に同調せざるをえな い。外からは建前と本音を見分け、区別する必要もない。よく耳にするのは、中国はそう言っているからと、日本はその言いなりにすべきだという日本人は多い。

 

③人口が多く、国土面積も広く、しかも「内中国」と称される地域と「外中国」と称される強制統合されたチベット人やらウイグル人、モンゴル人など55も非漢族がいる。地方と地方、農村と都市、党幹部、軍幹部、政府高官などと一般民衆、改革開放の勝ち組と負け組などの格差があまりにも天と地とのちがいがあるので、そもそもいわゆる富裕層と、 農民工(盲流)などの格差だけでなく、生活様式が異なるので、バブルがはじけても、原始人とまったくちがわない民衆はバブルとはまったく別世界の人間である。だから、影響も限定的ではっきりと見えない。

 

④中国5000年史を見ると、バブルどころか、かりに経済が完全に崩壊しても、共食いによって生き残っているので、流民になって、四散すればよい。その具体的な例としては、大躍進後に経済は完全崩壊、文革は経済だけでなく、党も政府も完全崩壊、残っているのは、物理的力をもっている軍だけであった。中国によく見られる政治難民も経済流民も、環境盲流も大量噴出した後、山河破れて人が残るのだ。

 

⑤中国共産党政府を支える二つのテコである軍と筆は、なくならないかぎり、軍が党を守り、筆が数字の捏造や改竄によってプロパガンダを続ければ、表だけではバブルの実態の姿は見えない。だから分からない。

 

⑥不動産バブルはじっさいすでに完全崩壊,残るのは「鬼城」といわれる廃墟のみだ。 株市場もじっさい中国では成り立たない。それは鉄火場としての賭博場と見做すベきだから、バブルの指標にはならない。