『米国の北朝鮮攻撃は中国の胸三寸 ミサイルが日本に着弾しても、トランプ大統領は動かない』(9/8日経ビジネスオンライン 森永輔)、『北朝鮮制裁、最後の手段「石油禁輸」が持つ意味 経済制裁・輸出管理に携わった筆者が解説』(9/8日経ビジネスオンライン 細川昌彦)について

9/9アンデイチャン氏メルマガ<トランプと不法入国者問題>

http://melma.com/backnumber_53999_6580747/

国の内外を問わず、左翼が跋扈すると社会がおかしくなるという事です。聖域都市(サンクチュアリ・シテイ)=法を守らないで済む→無法地帯になるという事ではないですか。こんなシステムは言ってみれば共産党支配の中国と同じと感じます。中国では立派な法律が沢山あるにも拘らず、その通り運用されません。賄賂と罰金が少ないためです。また党>法律なので、権力者が法律を恣意的に解釈することができます。遵法精神を忽せにすると社会は不安定になるし、人権弾圧への道にもなりかねません。人類が長い時間をかけて開発した法律と言う国民統治の手段を蔑ろにすることは人類の叡智に対する冒涜です。

川上氏の論考の中でポイントは①戦争勃発の可能性は50:50②米国が北の核保有を認めた場合、賠償金や慰安婦の問題が出て来る(日韓基本条約で朝鮮半島全体について解決済みであるが。何度も乞食のようにゴールポストを動かす民族と同一民族なので、言って来るでしょうが。核の恫喝というやつです。初動が肝心です。拉致被害者の帰国の問題は棚上げ?③反トランプ運動の目を逸らすため、トランプが戦争に打って出る可能性④反日国民の大量難民発生(済州島で留めねば)と言う所でしょうか。

細川氏記事は迂回取引について触れられています。儲かれば何でもするという国があるので、制裁は尻抜けになる可能性があります。衛星に依る監視と金融制裁強化しか手はないのかしら?

森記事

北朝鮮が9月3日、6回目の核実験を強行したのを受けて米国の姿勢が大きく変化した。 それまでは、トランプ大統領が軍事力の行使をほのめかす強硬な発言をすると、ティラーソン国務長官やマティス国防長官火消しに回り、対話に導こうとする動きが一般的だった。

だが、核実験を境に、マティス長官までが「(北朝鮮は)有効かつ圧倒的な大規模軍事反撃に見舞われるだろう」と発言するに至った。

米軍が軍事力を行使するとすれば、どのような条件が整った時か。どのような戦闘が行われるのか。そして、その時、日本はどのような環境に置かれるのか。米国の安全保障政策に詳しい、拓殖大学の川上高司教授に聞いた。

(聞き手 森 永輔)

米国と北朝鮮軍が対峙する日は来るか(写真:ロイター/アフロ)

—今回の北朝鮮の核実験にはびっくりさせられました。兆候はかねて指摘されていましたが、てっきり、9月9日の建国記念日にぶつけてくると思っていました。

川上:本当にそうですね。びっくりしましたよ。

川上 高司(かわかみ・たかし)氏 拓殖大学教授 1955年熊本県生まれ。大阪大学博士(国際公共政策)。フレッチャースクール外交政策研究所研究員、世界平和研究所研究員、防衛庁防衛研究所主任研究官、北陸大学法学部教授などを経て現職。この間、ジョージタウン大学大学院留学。(写真:大槻純一)

—この核実験を機に、米国の対北朝鮮政策のフェーズが変わったとの印象を受けます。これまでは、ドナルド・トランプ大統領が、軍事力の行使をほのめかす強硬な言葉をツイートする。それを、「対話を希望する」とレックス・ティラーソン国務長官やジェームズ・マティス国防長官が発言することで、“火消し”する――というパターンを繰り返してきました。しかし、ついにマティス長官までが「有効かつ圧倒的な大規模軍事反撃に見舞われるだろう」と発言するまでになりました。

川上:私も同じ変化を感じています。この変化は、ホワイトハウス内の権力争いが軍人派の勝利に終わり、外交・安全保障政策に一貫性が出てきていることの表われだと思います。

ジョン・ケリー氏が大統領主席補佐官に就任し、スティーブン・バノン首席戦略官・上級顧問を政権外に“追い出し”ました。これでホワイトハウスは秩序を取り戻した。大統領に面会するためには事前にアポイントメントを取る――という当たり前のことができるようになりました。

—娘のイバンカさんも、顧問としてトランプ大統領に会う場合にはアポが必要になったそうですね。

川上:米国の外交・安全保障政策は、ケリー大統領首席補佐官、マティス国防長官、H.R.マクマスター大統領補佐官(国家安全保障担当)の3人が主導する形になりました。いずれも、将軍を務めた軍人出身です。

軍隊の行動は段取りが重要です。対北朝鮮政策も段取り通り進んでいる印象を受けます。例えば、ティラーソン国務長官とマティス国防長官が8月14日、米ウォール・ストリート・ジャーナルに、核・ミサイル問題をめぐって「北朝鮮と交渉する用意がある」と寄稿しました。この時点の米国は、対話を重視する姿勢を北朝鮮に対して強くアピールしていたわけです。時間を与えるから話し合いに路線を転換するように、との重要なシグナルでした。しかし、北朝鮮はこれを無視した。

さらに、8月29日に日本列島を飛び越えるように弾道ミサイルを発射し、9月3日、ついに6度目の核実験を強行した。明らかに一線を越える行為でした。これにより、米本土を射程に収める核ミサイルの実現まで、残るハードルは弾頭の大気圏突入実験だけになりました。7月には大陸間弾道弾(ICBM)を実験、核弾頭の小型化にも既に成功したとされますから。

米国は、北朝鮮がこの最後の一線を越えるのを2年後と見込んでいましたが、米国防情報局(DIA)の報告によれば来年の早い時期と修正しました。来年の早い時期というと春。米軍はこの時までに、先制攻撃の準備を万全にすると思います。

—軍事力の行使はどれくらいの規模が想定されるでしょう。

川上:北朝鮮が保有する戦力の10~20倍になるでしょう。航空母艦3~5隻程度を徐々に朝鮮半島周辺に移動させる。仮に3隻とすれば、1隻は朝鮮半島の東岸、もう1隻は西岸に配備。最後の1隻は、中国が台湾や尖閣諸島に手を出さないよう監視の役割を充てます。そして、日本列島が第4の空母の役割を果たす。ちなみに湾岸戦争の時に米軍は6隻を派遣しました。

ただし米国が実行するのはカウンターフォースの戦争です。核施設をはじめとする軍事施設だけが攻撃対象。ミサイルや爆撃機による攻撃、特殊部隊の投入にとどまると思います。地上部隊を投入することもないでしょう。ピョンヤンに特殊部隊を投入して北朝鮮の指導部を抹殺する斬首作戦を展開することはあると思います。でも、まして、ピョンヤンを攻めるようなことはしないと思います。

この準備として、人の移動を進めるでしょう。韓国には米国人が20万人いるとされます。これらの人々を徐々に移す。韓国人のVIP、各国の大使など外国人のVIPも国外に待避させる。ソウルには百数十カ国から大使が赴任しています。

—核施設の一部だけを破壊する外科手術的攻撃(surgical strike=精密誘導兵器を使って、目標をピンポイントで攻撃すること)をする可能性はありませんか。

川上:その可能性は低いと思います。残った戦力で報復されるのが確実ですから。その時には韓国はもちろん、日本やハワイ、グアムが対象になるでしょう。

米国が軍事力を行使するかどうかは、トランプ大統領の決断しだいです。私は、その確率を今のところ50対50とみています。

核・ミサイル実験の加速は話し合いのため

—まだ話し合いの余地は残っているのですよね。

川上:はい。米朝ともに戦争はしたくないでしょう。

—とすると、北朝鮮は話し合いをするために、核とミサイルの開発をギアアップしている。

川上:そうですね。北朝鮮としては、核保有国となり米国と対等の立場に立った上で話し合いに臨みたいわけですから。核保有国となり核抑止が完成すれば、金正恩・朝鮮労働党委員長が最も大事にしている、自身の命が守れると考えています。

加えて、中国が共産党の党大会を終えるまでは、核とミサイルの実験を繰り返しても米中が動くことはないと考えているのではないでしょうか。習近平政権は同大会が終わるまでは、米国の動きをなんとしても止めようとするでしょうから。

—これは何とも皮肉な状態ですね。米朝どちらも話し合いで解決したい。しかし、その話し合いのために北朝鮮は核・ミサイルの開発に巻きを入れる。それを脅威と感じる米国は軍事力行使の準備を進める。

川上:全くです。

—米国が、北朝鮮を核保有国と認めてしまうことはあり得るでしょうか。

川上:あり得ます。“普通の核保有国”になるならば認める、ということが考えられます。これ以上、核兵器を作らない。周囲の国を脅さない。核を拡散させない。テロリストに渡したり、輸出したりしないということです。

DIAの報告によれば北朝鮮は60発の核兵器を保有しているといわれています。この量に留まるならば、考えようによっては、米国にとって大きな脅威ではありません。懲罰的抑止が効く範囲だからです。

—仮に北朝鮮が60発の核兵器で米国を攻撃したら、それをはるかに上回る報復が待っている。北朝鮮としてはペイしないというわけですね。

川上:その通りです。中国も核保有国ですが、米国の懲罰的抑止が効いている状態です。

実は米国には昔から、北朝鮮の核保有を「認めてもかまわない」と考える勢力が存在します。オバマ政権時代に、大統領補佐官(国家安全保障担当)を務めたスーザン・ライス氏やクリントン大統領の時に国防長官を務めたウィリアム・ペリー氏はその一部です。

さらに、ある程度の核兵器を保有させた方が、地域の安定に役立つので、拡散させたほうがよいと主張する論者も居ます。ケネス・ウォルツ氏など核楽観主義者と呼ばれる人たちです。インドとパキスタンの間で均衡が保たれているのが一つの論拠です。いずれも核保有国である両国が隣り合っているわけですね。ウォルツは「北朝鮮に核を持たせるならば、日本と韓国にも持たせるべきだ」と論じています。

北朝鮮が核保有国となることは、日本にとっては戦後の大きな国難です。しかし、米国には日本ほどの危機感はありません。ロシアや中国と既に相対してきている。それに北朝鮮の問題は地球の反対側のアジアの話です。さらにトランプ政権になって、米国第一主義や白人至上主義に傾いている。

—仮に話し合いが実現したとして、北朝鮮は何を得ようとするのでしょう。朝鮮戦争を終わらせ、米国と平和条約を結ぶことが狙いとされています。

川上:加えて、平和条約締結に伴う国連軍の解体。在韓米軍の撤退でしょう。

—北朝鮮は2013年に「並進路線」を取ると宣言しました。核抑止を完成させ、国防費を増やす必要をなくしたうえで、経済の再生に注力する。今、挙げていただいた三つを実現し、経済の再生に専心したいわけですね。

川上:経済再生はもう少し先の話になるかもしれないですね。

このシナリオは日本にとっては必ずしも良いものではありません。朝鮮戦争が終結すれば、先の大戦に関わる賠償金を北朝鮮から求められるようになるでしょう。慰安婦問題も浮上します。

攻撃の引き金は中国の同意と米国の世論

—米国が軍事力行使を決断するとしたら、どのような条件がそろった時でしょう。

川上:大きく三つあると考えています。一つは中国が同意すること。中国がなんとしても北朝鮮を守ると言ったら、米国が動くのは難しい。まして、中国が核兵器の使用も辞さないという場合はなおさらです。

ただ、米国による軍事力行使をめぐる米中の話し合いが進んでいる気配を感じます。環球時報*を読んでいたら、こんな記事が載っていました。

米国が北朝鮮に対して先制攻撃をするならば、中国は中朝友好協力相互援助条約に基づいて北朝鮮を支援する。一方、北朝鮮が先に手を出した場合は中立を維持する。 *:人民日報系の国際情報誌

—米国が軍事力を行使するつもりならば、北朝鮮に先に手を出させればよい。中国は黙認するという意味ですね。

川上:そう取れると思います。

もう一つは米国内の世論が十分に高まることです。世論と議会が同意しない以上、トランプ大統領は動かないと思います。

仮に北朝鮮が発射したミサイルが日本に着弾しても通常弾頭であったら動かないかもしれません。その程度のことでは、かつて対日戦争に向けて米国の背中を押した真珠湾攻撃のようなインパクトはないと思います。湾岸戦争の時、イラクが放ったミサイルがイスラエルに着弾しました。イスラエルは報復しようとしましたが、米国は我慢させました。

三つ目は、同じく世論です。ただし、反トランプ世論の高まりです。米シャーロッツビルで白人至上主義者と市民が衝突しました。あの時のトランプ大統領の対応を契機に米国に住む白人の半分近くが不満を持ったとされます。彼らの声を代弁していたバノン氏を排除したことが、この動きに輪をかけた。一方、ロシアゲート疑惑への不信に端を発する反トランプ感情も高まっています。これらがある線を超えた場合、その目をそらすために北朝鮮を攻めるというケースが考えられます。

—内政における失敗を、海外に向けさせることで覆い隠すという、為政者の典型的な動きですね。国連が絡む要素はありますか。小川和久氏の著書『日米同盟のリアリズム』の中に以下の主旨の記述があります。国際法的には朝鮮戦争がまだ続いているので、国連軍が存在している。米国が北朝鮮を攻撃するには国連軍の同意が必要になる。もちろん「国連なんて関係ない。米国は単独でも実行する」という場合もあるでしょうが。

川上:おっしゃるとおりです。なので、米国は国連安全保障理事会の決議を取ろうとするでしょう。米国が軍事力を行使するのは中国と話がついた時なので、中国は安保理を欠席もしくは棄権するなどして決議案を通すのではないでしょうか。

—韓国は、米軍が北朝鮮を攻撃するときは韓国の許可が必要と言っています。

川上:それは意味がないと思います。韓国が何と言おうと、米国はやる時はやる。

—韓国としては、何の発言力もないまま、自国が戦場になる可能性があるわけですね。

川上:そういうことになりますね。ある自衛隊OBがこんな話をしていました。米軍による攻撃が北朝鮮の戦力の40%しか破壊できない場合、北朝鮮による報復は非常に大規模になる。その場合、米国は核兵器を使用する必要が生じるかもしれない。核を使えば、北朝鮮の残った兵力を一掃することができる。しかし、これは一大事です。なので、少なくとも90%程度を破壊できる作戦を立てて実行するのだと思います。

朝鮮半島に核のない親中政権

—米国が軍事力を行使した場合、朝鮮半島の戦後処理はどうなるでしょう。

川上:先ほど、米国の行動は空爆や特殊部隊の投入にとどまるとお話ししました。一つ考えられるシナリオは、地上での戦闘は中国軍が担当するというものです。そして核兵器を収容する。金正恩政権を継続させるか、別の政権を立てるかは、どちらもあり得ると考えます。いずれにせよ、核のない親中政権が誕生することになります。

—米国が軍事力を行使すると、朝鮮半島に対する影響力をすべて失うことになりかねないわけですね。しかし放っておけば、米本土が核の脅威にさらされる。ここにジレンマが生じる。 —中国が米国に同意するのはどういう時でしょう。

川上:米国による軍事力行使に中国が同意するのは、経済面における米国の要求が過大になった時かもしれないですね。中国が北朝鮮を抑えきれないことに米国は苛立っています。

—トランプ政権は、通商法301条に基づいて中国による知的財産権侵害の調査を始めました。トランプ大統領は「北朝鮮とビジネスをする全ての国との貿易停止を検討している」とのツイートもしています。中国を念頭に置いたつぶやきといわれています。

川上:中国は北朝鮮を米国に差し出すことで、経済的な圧力を緩和する「ディール」をするかもしれないですね。このディールは巧妙です。先ほどお話ししたように、米国が軍事力を行使した場合、朝鮮半島に親中政権が誕生させるチャンスが生じるわけですから。中国はしたたかな国なのです。

福島原発事故級が同時に多発

—仮に米国が軍事力を行使した場合、自衛隊は何をすることになりますか。

川上:まずは後方支援です。米軍基地を守る。後は輸送、医療です。米国は既にプランを立てているでしょう。さらに韓国にいる約6万人の邦人の救出です。

それから米艦防御が要請されるでしょう。イージス艦を派遣して米国の艦船を守る。弾薬の提供もあり得る。自衛隊は完全に米軍の傘下に入ります。一連の動きの基本部分は、東日本大震災の時にすべてシミュレーションできていると思います。

—安全保障法制が制定され、平時でも、自衛隊が米国の艦船を防護できるようになりました。

川上:影響を受けるのは自衛隊だけではありません。日本にも、核ミサイルが2~3発飛んでくることを覚悟する必要があるでしょう。北朝鮮の特殊部隊が日本の原発を攻撃する事態も考えられる。2011年に起きた福島第1原発のような事故が3正面、4正面で同時に起きる事態に直面しかねません。

さらに、自国の死傷者の手当てをしなければならない中で、朝鮮半島からたくさんの人々が逃げてきます。朝鮮戦争の時には200万人の人が海を渡ってきました。こうした人々に住居や医療を提供する必要が生じます。日本は聖徳太子の時代から、朝鮮半島で動乱が起こるたびにこうした事態を経験してきたのです。

いずれにせよ、日本にとっては良いことは全くありません。

細川記事

北朝鮮に対する制裁強化で、国連安全保障理事会の議論では「石油の禁輸」が焦点となっている。石油の禁輸は経済制裁の中でも「最後の究極の手段」とも言われている。国民生活など人道上の問題も生じかねないからだ。中国やロシアの反対も予想される中で、北朝鮮への制裁で重要なポイントは何か。かつて経済制裁・輸出管理に携わり、摘発した経験もある筆者が解説する。

国連安全保障理事会は、北朝鮮の核実験を受けて緊急会合を開催した(写真:AP/アフロ)

北朝鮮の挑発が、ミサイル発射、核実験と先鋭化する中、国連安全保障理事会では新たな追加制裁の決議案に焦点が当たっている。ポイントは「石油の禁輸」という強力な措置で、予想通り中国とロシアの反対で難航している。

石油の禁輸は経済制裁の中でも最後の究極の手段と言われている。国民生活など人道上の問題も生じかねないからだ。おそらく中露もそれを盾に反対するだろう。また人道上の供給は例外にして、抜け穴を作ろうとすることも予想される。

いずれにしても、中露とは今後の朝鮮半島への影響力を巡っての駆け引きが展開される。

これに関連して、先日あるテレビ番組で、「経済制裁も石油の禁輸ばかり議論されているが、核、ミサイルの部品などに焦点を当てて規制すべきだ」とのコメンテーターの発言があった。北朝鮮のミサイルにウクライナかロシアから流出したとみられるエンジンが使われていると報じられたからだろう。一見もっともらしい議論だが、どうも経済制裁のことを十分調べずに発言しているようで、そういう場面がメディアでしばしば見られることに驚かされる。

まず、これまでの大きな流れを見てみよう。

北朝鮮への経済制裁は2006年の第一回核実験に対する国連決議に始まった。実に10年以上の歴史がある。日本独自の措置はさらに1998年にまでさかのぼる。

国連決議では、まず北朝鮮のミサイル、核開発計画への関連物資の輸出の防止が決議された。その後、北朝鮮の相次ぐミサイル発射、核実験に伴って、経済制裁の内容を強化、拡大していった。対象をミサイル、核に限らず、すべての武器に広げ、着実に実施されるように貨物検査も行うことになった。

同時に、開発計画に関連する個人・団体の資産も凍結され、カネの流れやヒトの入国へと次第に対象を広げていった。そして近年では経済制裁の目的も拡大して、開発のための資金調達の道を断つべく、外貨獲得源になっている石炭の輸入停止という流れをたどっているのだ。

そうした流れをたどった上で、今回、最後の手段である石油の禁輸の議論が出てきている。

北朝鮮は日本が思うほど“孤立”していない

ミサイル・核の部品は当初から、当然制裁対象になっている。問題はそれが確実に実行されているかどうかだ。特に一般加盟国以上に、安保理決議を行った当事者の常任理事国である中露の責任は重いはずである。そこに問題がある。

かつて私は経産省時代に、北朝鮮の経済制裁、輸出管理に取り組んでいた。当時は中朝国境での物資の行き来は自由に行われ、東北部の人民解放軍に対する北京政府のコントロールも十分ではなかった。最近テレビ画像でもよく見られるミサイルの移動式発射台についても、これに改造するためのトラクターも中国から流入していたようだ。現在の状況は大きく変化しているであろうが、そういう土壌があることは常に注意しておくべきだろう。

また東南アジアの国々を巻き込んだ迂回輸入も要注意だ。

というのも、当時私は北朝鮮が日本から規制物資を迂回輸入しようとしたのを摘発した経験を持つからだ。神戸港を出港した貨物船に積まれていたのは、核開発に使う遠心分離機に組み込まれる周波数変換器であった。タイのバンコクの民間企業がエレベーターの電流コントロールに使うとの申告で、これをバンコクで北朝鮮の調達エージェントが入手して、北朝鮮に持ち込む予定であった。当時タイでは輸出管理が厳格に行われていないことを狙ったものだ。

この件ではバンコクに到着する前に、日本に積み戻させることができて事なきを得たが、米国からは驚きをもって受け止められた。

独自の諜報機関を持たず、情報を他国に依存することが多い日本が、こうした迂回輸出を見抜くには地道な国際的なネットワーク力しかない。また、北朝鮮は日本で考えられているほど国際的に孤立しているわけでもない。東南アジアの国々の中には北朝鮮との関係を維持している国も多い。この件もそういうことを利用したもので、氷山の一角かもしれない。

先のコメンテーターの発言に戻ろう。発言内容はおそらく誤解によるもので、ミサイル、核の関連部品は当然すでに制裁対象になっている。ただし、それが十分遵守されていないのも事実だ。

制裁対象を石油の禁輸などに拡大することは、もちろん大事だ。だが、それだけでなく、既に制裁対象になっているコアの部分の実効性を上げるために、中露、東南アジアなどに取り決めを遵守させる手立ても併せて打たなければ意味がない。そういう日本の外交力が問われているのだ。

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