『トランプで当面はうまくいく、最悪なのはそのあとだ 独裁と自国最優先は短期間ならば経済に好影響』(2/14JBプレス 川島博之)、『トランプ大統領が安倍首相を手厚くもてなした理由 蜜月関係の構築を最優先した安倍首相』(2/14JBプレス 筆坂秀世)、『トランプ政権の本質、保護主義ではなく「帝国主義」 誤解されるトランプ政権~孤立・保護・差別主義ではない』(2/14JBプレス 武者陵司)について

日本のメデイアの報道では真実が見えてこない部分があります。下記の江崎氏のコメントはやはり米国の衰退を予言しています。ニューヨーク・マネーというのはユダヤ金融資本のことでしょう。反トランプの運動はニューヨーク・マネーが流れていると思います。米国の人口動態の中味が変わる時に、国家よりグローバリズムを優先させるユダヤ資本は米国から資本逃避し、共産中国に向かうのかどうか?中共まで傅かせられるのであれば、そうなるでしょう。そうなれば世界は暗黒の時代に入ります。進歩主義史観の人間はどう思うのでしょう?

2/14江崎道朗氏facebokより< 旧知の在米金融アナリストが一時帰国したので、赤坂でランチ。ご飯はそこそこに二時間近く、アメリカの経済状況についていろいろと率直に議論した。

二十年以上、ワシントンで金融アナリストをしている友人は、アメリカはニューヨーク・マネーに代表される金融業界に乗っ取られていて、もはや立ち直りは難しいだろう、との悲観的な見通しだった。

この金融マネーによるアメリカ政治の「簒奪」に対する怒りが、トランプを生み出したが、果たして、アメリカの政治を国民に取り戻すトランプの挑戦が成功するかどうか、かなり難しいだろう、というのだ。

加えてパット・ブキャナンが指摘したように、アメリカは今後、白人の国ではなくなっていく。それは、人口の割合が急激に変化し、あと十年もすれば、白人は過半数を割るからだ。これは出生率からみてどうしようもない現実だ。そうなったとき、アメリカはもはや覇権国としてのパワーを維持できなくなるかも知れない。

そうした事態を念頭に、日本はどうしていくべきなのか。安倍・トランプ会談の「成功」に沸き立つ報道を見ながら、アメリカがもはや覇権国ではなくなる日を考えておくことの重要性を噛みしめることになった。>(以上)

川島氏の記事で、トランプの独裁について心配していますが、論理矛盾があります。①ヒットラーのように三権全部を行政府が牛耳っている訳ではない=それは独裁とは言わない②百歩譲って独裁だとしても、中国の共産党独裁は政権を取ってから70年近く経ち、未だ政権が維持できていること。これについては言及していない。

筆坂記事は今までの安倍・トランプ会談を偏向した目でなく、淡々と解説したもの。日本のメデイアや野党のように何とか悪い部分を見つけて批判しようしようとする姿勢とは違います。元日共党員だからよく見えるのでしょう。

武者記事は世上言われています、トランプが孤立主義・保護主義・差別主義に則っているというのを否定し、強い米国を目指す21世紀型の帝国主義だと主張しています。メデイアの報道と違い、この見方が一番トランプの考えていることに近いと思います。

3者を比較して読むといろいろ考えさせられます。

川島記事

ワシントンで、警官隊の前でドナルド・トランプ氏の米大統領就任に抗議するデモ参加者(2017年1月20日撮影)。(c)AFP/Andrew CABALLERO-REYNOLDS〔AFPBB News

トランプ新大統領は就任早々大統領令を乱発して、米国と世界を混乱の渦に巻き込んでいる。大統領になれば穏健な発言や行動をとるかもしれない。そんな期待はかき消されてしまった。

彼の発言は唯我独尊的なところがあり(独裁と言ってもよい)、経済原理を無視している。メチャクチャ。そんな声も聞こえてくる。

このままの姿勢を続けると、米国経済だけでなく世界経済全体が低迷する。結局、にっちもさっちも行かなくなって、病気を理由に退陣する。自分から辞めなければ弾劾される・・・。そんな観測も出始めた。

中国は独裁で奇跡の成長を遂げた

私はこれまで農業からアジアの経済を見てきた人間なので、アメリカ経済についてどうこう言う資格はないが、独裁と極端な自国優先政策は、ある程度の期間であれば、経済に好影響を与えると考える。

開発経済学では、途上国が経済発展するためには、独裁ではなく民主主義、公平で透明性のある政権、積極的な外資の導入、自由貿易、良質な教育の普及などが重要とされる。

だが、中国を見てきた者として、この原則は当てはまらないと思う。1989年におきた天安門事件の後、中国に対する海外の目は冷たかった。外資が好んで投資する先ではなかった。

そんな状況の中で、中国共産党独裁政権は輸出産業を育成しようと考え、自国産業を保護する関税制度や非関税障壁を多数作り上げた。後にWTOに加盟したが、それでも多くの分野に恣意的な非関税障壁が残り、そして今も非関税障壁を作り続けている。自国の産業育成に害になるものは輸入しない。極めて自己中心的。

教育には熱心だが、質のよい教育をしているとは言い難い。共産党独裁を維持するために記憶中心の偏狭な教育を行っている。自由で伸びやかな思考をする人間を育ててはいない。その結果、改革開放路線に舵を切って40年ほどが経過したのに、14億人もの人間を抱えながら、ノーベル賞受賞者が極めて少ない。中国発の新技術も生まれていない。

そんな中国が奇跡の成長を遂げた。むしろ開発経済学者の学説に振り回されたアフリカ諸国の方が発展しなかったように思う。

もちろん、このような見方には多くの反論があると思うが、中国の経済発展を農業から見て来たものとして、独裁的で身勝手な手法は経済発展によい影響を与えると考える。

独裁は短期的には効率が良い

トランプ大統領をヒトラーに例える向きもある。

ヒトラー政権下の経済成長を見てみよう。下の図は、1930年代におけるドイツ、イギリス、フランス、それにソ連におけるGDPの推移である。ヒトラーが政権をとったのは1933年。それから第2次世界大戦が始まる1939年まで、ドイツの経済成長率はイギリスやフランスを大きく上回っていた。年平均成長率はドイツが7.1%、イギリスが2.9%、フランスが1.8%、ソ連が7.2%である。

図 1930年代の各国のGDP推移 単位:10億ドル(1990年基準)、出典:アンガス・マディソン

(* 配信先のサイトでこの記事をお読みの方はこちらで本記事の図をご覧いただけます。http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/49118

この奇跡の成長がヒトラーを支えた。経済が好転したために国民はヒトラーを支持したのだ。

同時期にソ連も奇跡の成長を遂げているが、それはスターリンの独裁が行われていた時期にあたる。スターリンは自らの政権基盤を固めるために多くの人々を処刑したのだが、そんな時代に経済は奇跡の成長を遂げている。

ここに示したのは少数の例に過ぎないと言ってしまえばそれまでだが、独裁は短期的には効率が良いようだ。トランプ大統領を非難する人々は、いまにも経済が崩壊するようなことを言っているが、移民の禁止や、気ままに関税を引き上げることは、中長期的には悪影響があっても、短期的には国内を活性化させる可能性が高い。

中国の奇跡の成長は共産党独裁下で20年以上も続いた。ドイツは6年の高度成長の後に戦争に突入してなにもかも失ったが、ソ連はドイツとの戦争に勝利したために第2次世界大戦後の冷戦において一方の雄になることができた。その遺産はプーチンが相続している。

歴史が教えるところによると、独裁によって経済がすぐに悪化し国力が疲弊することはない。もちろん1930年代のドイツやソ連、そして開発途上国である中国と、米国は大きく異なる。だから、過去の例をそのまま米国に当てはめることは危険だが、欧米の高級紙でも方向感をなくした論評しかしなくなった現在、歴史を振り返って考えておくことも重要だろう。

心配すべきなのは中長期への影響

筆者はトランプ大統領の政策が極めて短い期間に行き詰まることはないと考える。そして、多くの人がそう考えるから、ニューヨークダウ平均もそれなりの高値を維持しているのだろう。

心配すべきことは中長期への影響である。ヒトラーは独裁を始めてから6年後に戦争を始めた。スターリンは独裁を維持することに成功し、日本流にいえば畳の上で生涯を閉じたが、その残した体制は1970年頃になると成長できなくなってしまい、自滅した。そして、奇跡の成長が続いた中国も共産党独裁が生んだ不動産バブルと国有企業の改革が難しいことに苦しみ始めている。その繁栄が長続きするとは思えない。

以上のように考えてくると、トランプの大統領がそれなりに成功し、それによって米国民に支持されるケースが最も危険である。そんな時代がしばらく続くと、現代は時間の流れが速いから数年後、あるいはそれよりも早く、リーマンショックのような形の崩壊に遭遇するかもしれない。取沙汰される米中戦争が起こる可能性だってある。

極端な政策によって米国経済が少々好転するとしても、米国民がそれに惑うことなく、早めにトランプ路線を修正することを祈るばかりである。

筆坂記事

米フロリダ州パームビーチのリゾート施設「マーアーラゴ・クラブ」で共同記者会見に臨む安倍晋三首相(左)とドナルド・トランプ大統領(2017年2月11日撮影)。(c)AFP/Nicholas Kamm〔AFPBB News

中東・アフリカの7カ国の国民の入国を一時禁止する大統領令を巡って、アメリカ国内でも、あるいは世界でもトランプ大統領への批判の声が渦巻いている。

またTPP(環太平洋パートナーシップ協定)からの離脱、国境税の創設、FTA(自由貿易協定)などの通商関係、中国やロシアとの関係など今後どういう手を打ってくるのか見通しが立たない中で、各国の首脳はトランプ大統領とどういう距離感で接していくべきなのか、頭を悩ましている。

異例の蜜月関係を構築した安倍首相

そんな中で異例の速さでトランプ大統領に接近し、蜜月関係の構築を最優先したのが日本の安倍首相である。

これに対して、アメリカのメディアの中には、「トランプ大統領に取り入ろうとしている」(NBCニュース政治担当ディレクターのチャック・トッド氏のツイッター)とか、「こんなに大統領におべっかを使う外国の首脳は見たことがない」(ニュース専門局MSNBCのアナリスト、デビッド・コーン氏のツイッター)と批判するものもある。

だが私はそうは思わない。日本の安全保障は、アメリカ抜きではあり得ない。相手の大統領がどのような人物であろうとも、緊密な関係を構築することは避けては通れないことである。

記者会見で入国禁止令について聞かれた安倍首相は、「内政問題である」として、コメントを控えた。この大統領令は、トランプ大統領にとって、ある意味、一丁目一番地の公約であり、コメントを控えたのは仕方がないことであったと思う。

だがこの対応は、当該国や他国からの批判が安倍首相に向けられるというリスクも背負ったことになる。

蜜月関係が「率直に物を言えぬ関係」になってはならない。トランプ大統領の政策内容によっては、時にはたしなめることも必要な場面もあるかもしれない。世界の信頼を得るために、安倍首相はその責任も果たしていかなければならない重責を担ったということでもある。

共同声明に使われた「核」という言葉

防衛相幹部が、安全保障分野は「満額回答」だったと評価したという。

確かに共同声明では、「核および通常戦力の双方による、あらゆる種類の米国の軍事力を使った日本の防衛に対する米国のコミットメントは揺るぎない」と明記され、さらに、「両首脳は、日米安全保障条約第5条が尖閣諸島に適用されることを確認した。両首脳は、同諸島に対する日本の施政を損なおうとするいかなる一方的な行動にも反対する」ことが明記された。

共同声明で「核および通常戦力の双方による・・・日本の防衛」と表現するのは、核の傘を含む「拡大抑止」という考え方の表明である。「拡大抑止」とは、同盟国が攻撃を受けた際にも報復する意図を示すことで、同盟国を他国の攻撃から守るという考え方である。この点は、マティス国防長官が2月初頭に来日した際にも、同様の考え方を表明していた。

2月12日付産経新聞によれば、共同声明で「核」という表現が入ったのは、1975年の三木武夫首相とフォード大統領の共同文書以来だという。北朝鮮の核・ミサイル開発が健在化してからは初めてのことであり、北朝鮮の動向を念頭に置いた声明だと報じている。

また、尖閣諸島が日米安保条約第5条の適用範囲であることは、オバマ前大統領も明言してはいたが、共同声明に明記されたことは初めてであり、その意義は大きい。防衛相幹部が「満額回答」だと評価したのも当然であろう。

だが同時に、日本は大きな責任も負うことになった。共同声明には、「アジア太平洋地域において厳しさを増す安全保障環境の中で、米国は地域におけるプレゼンスを強化し、日本は同盟におけるより大きな役割および責任を果す」ことも明記された。

これは、日本やアジア太平洋地域の安全保障をアメリカ任せではなく、日本自身の軍事力強化や米軍への支援や共同作戦の強化という課題が、日本に課せられたということである。

だがこれは当然のことと言ってよい。尖閣諸島の防衛は、一義的に日本自身が行うことだからだ。

駐留経費の負担増はなくなった

トランプ氏は、大統領選挙中、在日米軍駐留経費の日本側負担問題について、「日本が100%負担せよ。さもなくば撤退する。必要なら日本自身が核兵器を持て」などと述べていた。

だがこの点でも、2月4日に稲田朋美防衛相と会談したジェームズ・マティス国防長官が、記者会見で、日本の駐留経費負担は「お手本」と評価したように、トランプ大統領の選挙中の発言は覆されていた。おそらくマティス長官から話を聞いたのであろう。トランプ大統領は、「米軍を受け入れてくれている日本国民に感謝する」とまで発言し、大統領選中の発言を180度変えた。

これで駐留経費負担増問題は、完全に解決したと考えて良い。これだけでも大きな成果である。

また、尖閣諸島が日米安保条約第5条の適用範囲であることは、オバマ前大統領も明言してはいたが、共同声明に明記されたことは初めてであり、その意義は大きい。防衛相幹部が「満額回答」だと評価したのも当然であろう。

だが同時に、日本は大きな責任も負うことになった。共同声明には、「アジア太平洋地域において厳しさを増す安全保障環境の中で、米国は地域におけるプレゼンスを強化し、日本は同盟におけるより大きな役割および責任を果す」ことも明記された。

これは、日本やアジア太平洋地域の安全保障をアメリカ任せではなく、日本自身の軍事力強化や米軍への支援や共同作戦の強化という課題が、日本に課せられたということである。

だがこれは当然のことと言ってよい。尖閣諸島の防衛は、一義的に日本自身が行うことだからだ。

異例の厚遇の背景にあるのは?

それにしても今回の首脳会談は、安倍首相への異例とも言える厚遇が目立った。

ホワイトハウスの会談では、報道されている限り、日本に無理難題を突き付けてくることはまったくなかった。日本の財界からも、国民の間からも、「ほっとした」という感想が聞こえてくる。率直な感想であろう。

その後はフロリダに場所を移し、2人でゴルフに興じた。なぜ、これほどまでのもてなしが行われたのか。

1つには、各国首脳がトランプ大統領との間合いの取り方に悩んでいる時に、安倍首相がためらいもなく当選直後に会いに行って祝意を述べ、大統領就任後はイギリスのメイ首相に続いて2番目に訪問したことがあった。

安倍首相がこういう選択をしたのは、当然のことであった。安全保障でも、経済分野でも、日本はアメリカとは切っても切れない関係にある。このアメリカと良好な関係を構築しようとするのは、日本の首相として当然のことである。

他方、トランプ大統領にとっても、国内外から入国禁止令などによって、厳しい批判にさらされている中で、G8(主要国首脳会議)の中でもいまや古株になっている安倍首相と親密な関係を築くことは、他国首脳に影響を与えることができるという計算があったはずである。

2つには、この会談は、トランプ大統領が在日米軍の駐留経費問題などでまっとうな対応をすることを世界に示せる格好の機会である。会談の前日には、中国の習金平主席との電話会談で、「一つの中国」という原則もあっさり受け入れていた。ここでも世界のスタンダードを受け入れているのである。

3つには、トランプ大統領にとっての本命である通商・貿易問題では、これから麻生副総理とペンス副大統領との間で交渉に入るが、ここで日本の譲歩を迫るためにも、安全保障問題では、日本側に満足させる必要があった。

これらのことが異例の厚遇につながったのであろう。

経済・貿易関係はこれから

2月12日付朝日新聞によれば、「トランプ氏がこだわる二国間の通商交渉の提案は米国側からなく、日本車や円安への不満も出なかったという。同席した日本政府高官は「トランプ氏は『アメリカでいい車をつくってくれてありがとう』という感じで、和気あいあい過ぎるぐらいだった」という。

だが、経済問題はもちろんこれからである。TPPを断念し、今後はアメリカとのFTA(自由貿易協定)の交渉を迫られることになるだろう。自動車輸出や円安問題だけではなく、豚肉、牛肉などの関税撤廃も議題になってくる可能性が高い。その時に、2人の蜜月関係がどう作用するのか。依然として、緊張した日米関係は続くことになる。

武者記事

米首都ワシントンの国防総省で、マイク・ペンス副大統領(左)とジェームズ・マティス国防長官(右)が見守る中、署名した大統領令を示すドナルド・トランプ大統領(中央、2017年1月27日撮影)。(c)AFP/MANDEL NGAN〔AFPBB News

トランプ政権の戦略目標は単純明快で分かりやすい。(1)強いアメリカ、(2)安全な世界、(3)強い国内雇用、(4)それらを阻んでいる不公正(a.他国の過小な軍事負担と米国の不適切な対外関与、b.米国に不利な通商産業政策・為替政策、c.不適切な移民・難民政策)の是正、である。

それなのに、トランプ氏は人々の不満に訴える選挙戦術として、(4)の不公正の是正を特に強調した。またトランプ氏を快く思わないメディアも(1)(2)(3)を全く看過し、(4)のみをトランプ氏の過激発言と絡めて報道した。そのために、トランプ政権の事実とは異なるイメージが定着している。

つまりa.の従来の国際軍事戦略に対する不満が孤立主義と受け取られ、b.の通商産業政策の不満が保護主義と受け取られ、c.の難民・移民政策に対する不満が人種・人権差別主義ととらえられている。

しかし、(1)強いアメリカ、(2)安全な世界、(3)強い国内雇用を実現するためには、孤立主義や保護主義が全く逆効果であることは論を待たない。また世界で最も民主的な米国において、過激な差別主義が定着するとは思われない。トランプ政権の政策の成長進化、メディアの曲解是正により、トランプ政権の3つの負のイメージ(孤立主義・保護主義・差別主義)は急速に是正されていくはずである。

確認された対外関与の強化

2月10~11日の日米首脳会談において、トランプ大統領は日米同盟の意義を強調し、米国が対外関与を薄めるという孤立主義的誤解を大きく解消した。トランプ政権の軍事力増強計画、力による平和戦略(Peace through Strength)はむしろ対外関与を強化するものである。

また、多国間ではなく2国間の通商交渉により、米国に不利な不公正さを是正するというトランプ政権の政策も、保護主義と言うべきではあるまい。安倍首相が日米首脳共同記者会見でいみじくも「国有企業による国家資本を背景とした経済介入はあってはならず、知的財産のただ乗りは許されない」と指摘したように、中国に極端にみられる不公正通商慣行の是正は保護主義とは真逆のモノである。

トランプ政権の米帝国再構築の野望

そろそろ「弱体化する米国経済の下で不満が高まりポピュリスト政権が誕生した」というステレオタイプ化した考え方を改めるべきではないか。

トランプ政権の神髄は「弱いアメリカ? 守り・保護・孤立」ではなく、「覇権国アメリカを強化する」という攻撃性にある。彼が横暴に見えるのはその攻撃性があからさまであるからであろう。

「オバマ政権の8年の間に、世界はより危険になり、米国の経済軍事的プレゼンスは大きく低下した。そのしわ寄せが米国国内雇用にも及んでいるとすれば、その枠組みを力づくで変えなければならない」というトランプ政権の目指すところはアメリカ帝国の再構築という表現が最もふさわしいのではないか。

現代の帝国とは第二次大戦前の植民地支配を意味するのではなく、国境の外に強い影響力を確保することで国益を追求する明示的な国家戦略と定義されるが、そうした狙いを潜在的に持っているのは、米国と中国だけである。帝国は国境内の中枢地域と国境外の辺境・周辺地域に分かれ、両者の間に明白な優劣がある。価値観・経済力・軍事力で優位にある中枢が、辺境・周辺に対して一方的影響力を持つことが正当であるという論理である。

トランプ氏が大統領就任演説において価値観も世界戦略も語らなかったからと言って、彼に戦略性がないと決めつけるのは正しくはない。トランプ氏は明確に米国の優越性を認識し、それを維持・強化しようとしている。

それはオバマ政権が理想とした米国が世界の警察官から降り、各国の協調で営まれる世界共和国的概念(global commonwealth)とは大きく異なる。

再度、アメリカ帝国主義の時代に、ドル高が国益に

そこで問われるのはトランプ氏の帝国主義的野望は正当か、実現できるのかだが、正当であり、実現可能と考えられるのではないか。

無政府化しテロリストが割拠する中東、中国・北朝鮮の軍事的膨張、国家資本主義により歪められ世界通商基盤などを見れば、世界の民主主義を保証する警察官国、アメリカ帝国の必要性は世界中から求められている。

またアメリカ帝国主義を実現する経済基盤がかつてなくしっかりしていることは、かねてレポートしている通りである。

米国の産業競争力は、情報インターネットインフラで圧倒的競争力を持ったことにより、かつてなく強い。企業収益(企業における価値創造)は空前であり、世界の警察官たる装備を十分に整える財政的基盤がある。トランプ政権の保護主義的に見える二国間交渉による通商秩序の構築はただでさえ強い米国の産業基盤をさらに強くするという、攻撃性、帝国主義の衝動と考えるべきであろう。

言うまでもなく、トランプ氏のアメリカ帝国主義の野望には、強いドルが整合的かつ不可欠であり、トランプ政権は保護主義だからドル安を望んでいるという見解は、いずれ是正を余儀なくされるだろう。

日本に吹く歴史的順風

さて今回の日米首脳会談において、アメリカ帝国再構築に乗り出したトランプ政権と日本の安倍政権は、信じがたい蜜月関係を持つことになった。

近代日本の長期繁栄は地政学によって規定されてきた。明治から大正期の日本資本主義勃興期(日英同盟)、1920年代後半以降の停滞から破局期、1950年から1990年の戦後の奇跡の復活成長期(日米同盟)、1990年以降の長期停滞期、はいずれも地政学、世界のスーパーパワーとの位置関係が日本の運命を決めてきた。今後、米中対立が明確となりトランプ政権の中国封じ込め政策が現実となった場合、日米同盟は米国にとって最も重要な二国関係になっていくだろう。

トランプ新政権の下でアメリカ帝国主義という色彩が強まる中で、日本には歴史的追い風が吹きつつある、と考えられよう。

◎本記事は、武者リサーチのレポート「ストラテジーブレティン」より「第177号(2017年2月13日)」を転載したものです。

(*)投資対象および銘柄の選択、売買価格などの投資にかかる最終決定は、必ずご自身の判断でなさるようにお願いします。本記事の情報に基づく損害について株式会社JBpressは一切の責任を負いません。

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