『中国との「戦い」辞さないトランプ政権 成否の鍵は日本の対米協調』(1/29産経ニュース 田村秀男)、『トランプはかくも賢く、計算高い! メディアが知らない「真の実力」 歪んだイメージに騙されるな』(1/30現代ismedia 高橋洋一)、『【断末魔の中韓経済】トランプ氏問題視の「逆輸入問題」 日本も対中直接投資で中国の軍事力拡大に貢献した過去』(2/2ZAKZAK 三橋貴明)について

米国も日本も愚かなことに中国と言うモンスターを作ってしまいました。両国とも製造物責任を負うべきです。米国については田村氏の記事が、日本については三橋氏の記事が説明しています通り、対中貿易赤字や対中直接投資、対中輸入の額の大きさが中国の軍事拡張に利用されてきたという事です。田村氏の記事にあります通り、トランプ政権はその現状をストップするため、ナバロが中心になり「貿易」「金融」「軍事」のオプションを使って中国の勢いを削ごうとしています。それに、日本も協力をしていかなければ。同じく田村氏の記事に、中国保有の米国債の日本引き受けが載っていますが、小生も1/25本ブログで取り上げています。2/10首相と麻生財務相が訪米するときの議題に上るからと思った次第です。

http://dwellerinkashiwa.net/?p=5546

メデイアは人権問題を取り上げてトランプをバッシングしていますが、騒いでいるのはソロスの金で動いているのか、不法移民の類でしょう。TVしか見てない日本人はトランプ批判に容易に転じます。洗脳効果と言うものです。今世界は米中対決の方向で動いて行こうとしています。それに対して都合の悪いグループが金にあかせてメデイアや人々を使い、さも問題であるという印象操作をしています。中共と同じやり方ではありませんか?反日デモを共産党が組織し、大きくメデイアを使って報道、日本でも左翼媒体が大きく報道するといったパターンです。こういった構図で動いてきたことにトランプは異議申し立てしているだけです。ですからメデイアは信ぜず、ツイッターで彼の思っていることを述べようとしています。歪曲報道しかしないメデイアは存在価値がありません。

対中直接投資は日本人の雇用の流出を意味します。無警戒に中国へ進出して言って、戦前の教訓が全然生かされていません。中国人と言うのは、信頼するに値しないというのが、何故分からないのでしょう。軍事に関心のない日本の経営者が劣化していることもあるでしょう。もっと駐在員の生の声を聞くか、マテイス国防長官のように前線(中国)で戦わないと。結局はハニーも含めて接待上手な中国にしてやられることになります。日本の経営者は、中国や韓国に直接投資や技術移転をしてきたことを恥じるべきです。自ら強大な敵・反日国家を作ってしまったのですから。2/4日経に黒田真元通産審議官の記事が出ていました。誰の書かれた記事かは思い出せませんが、モトローラ等の米国半導体輸入の圧力をかわすため、彼がシャープの佐々木正役員を動かして半導体技術を韓国に移転したとのこと。それが真実だとすれば、シャープの凋落は言ってみれば黒田氏の指示のせいとも言えます。普通に考えれば、日経に出て来てコメントなぞできないのでは。(『「タフな交渉官」が語るトランプ氏対策 「冷静な説得重要」「2国間協定は是々非々で」』という記事です)

高橋氏の記事にありますとおり、トランプの英語は非常に分かり易いと感じます。ゆっくり且つ易しい単語なので字幕を見なくても殆ど理解できます。

2/3首相とマテイス国防長官の面談が行われましたが、マテイス国防長官は優秀な軍人だけあって、何気ない所作の中にあって、相手を射すくめる眼光の鋭さを感じました。宮本武蔵等を彷彿させ、日本の名だたる侍もかくありなんと思わせるような目です。「相手と会った時に、どう相手を倒すか」を常に考えているというのですから、日本の侍に相通じるものがあります。(「礼儀正しく、プロフェッショナルであれ。ただし出会った相手は、誰であろうと殺せるよう準備しておけ」と言ったとされています)

田村記事

トランプ米政権が始動するや否や、口撃の矛先が日本車にも向けられたが、慌てることはない。事実関係を説明すれば済む。新政権の最大の標的は中国であり、通商・安全保障一体の対中強硬策を繰り出そうとしている。この「戦い」の成否の鍵を握るのは日本の対米協調である。

「米国第一」政策には、なぜ中国について通商と安保が不可分なのか。グラフは中国が世界貿易機関(WTO)に加盟した2001年以降の米国の対中貿易赤字と中国の軍事支出である。グローバルな貿易自由化の恩恵を受けた中国は対米貿易黒字を15年までに4・4倍増やしたのに対し、日本は1倍にも満たない。トヨタ自動車など日本の製造業が米国での現地生産を増強してきたからだ。

目を引くのは7・7倍にも上る中国の軍事支出の膨張だ。08年のリーマン・ショックの後は、中国の軍事費は対米貿易黒字の約5割相当だ。中国は貿易で稼いだドルを旧ソ連製の空母など、武器購入予算に充当する。人民解放軍のサイバー部隊によるハッカー攻撃が米国や日本を標的にしているが、そのハイテク技術の多くは米国製だ。

外貨の源泉はもちろん対米貿易に限らない。リーマン後は不動産ブームを演出し、海外からの投資資金を呼び込んできた。中国人民銀行は外国為替市場を管理して人民元相場をドルに対して固定し、その交換レートに基づいて流入外貨をことごとく買い上げ、外貨準備を積み上げてきた。

軍事支出の膨張は、14年までは外準の急増と軌を一つにしている。15年からは海外への資本流出が激しくなり、外準は縮小しているが、貿易黒字総額は年間6千億ドル前後(対米は約3500億ドル)と高水準を保っている。

こうした分析から、こと中国については通商と軍事は切り離せないと拙論は本欄などで以前から指摘してきたが、トランプ政権はまさにそこに焦点を合わせている。

鍵となる人物は、新設される「国家通商会議」のトップに任命されている経済学者のピーター・ナバロ氏だ。英エコノミスト誌は1月21日号で「米国導く対中強硬派、ナバロ氏」という題名で特集記事を組んだ。ナバロ氏は自ら監督した13年製作のドキュメンタリー映画“Death By China”(「中国による死」)の冒頭で、「中国製」と刻まれたナイフが米国本土を刺し血が流れるというアニメ映像を流し、トランプ氏から称賛された。

「米中もし戦わば」の題名で昨年11月に邦訳された著書(原本は15年11月刊)では、「中国のWTO加盟により米国経済は壊滅的な打撃を受けた」「米国による経済的関与が中国の軍事力の源泉になっている」と断じている。

トランプ氏は、大統領選中に提唱した中国への45%の報復関税適用には直ちには踏み切らない。北京と話し合う構えだが、北京の「一つの中国」路線を逆手に取って通貨と通商での譲歩を引き出す。

「一つの中国」論は台湾ばかりか、南シナ海の諸島や尖閣諸島(沖縄県石垣市)まで中国のものだという論理である。次期米国務長官のレックス・ティラーソン氏は、南シナ海で中国が造成した人工島への同国のアクセスを認めないと言明、トランプ氏もティラーソン氏を支持している。

政経分離の従来の対中政策は廃棄される。上記の国家通商会議はホワイトハウス内に設置され、関係閣僚やスタッフの陣容が整えば、通商問題を外交、軍事、金融に関連付けて対中戦略を練るだろう。米メディアでは、「米中対立、実際の戦争に発展するリスク」(1月18日付ウォールストリート・ジャーナル)を指摘するほど、対立激化の様相だ。軍事面で制約のある日本はどう対応すべきか。

トランプ政権の対中警戒論を共有し、全面的に協調するかどうかだ。例えば、ワシントンの強硬策に対抗して、北京が米国債売りを仕掛けてくるようだと、米金融市場は不安定になる恐れがある。その場合、カネ余りの日本は対米投資でカバーできる。共産党中央が人民元を管理し、国際通貨に仕立て上げ、それを武器に東アジア全域を中国の影響下に置こうとする習近平政権の野望にも、日米は結束して対抗しなければならない。

安倍晋三政権はこの際、トランプ政権の国家通商会議に倣った政治主導の横断的チームを設置してはどうか。通商は経済産業省、安全保障・外交は外務省、通貨・金融は財務省といったのでは官僚任せの事なかれ主義に終始しかねず、米国との対話は細分化された特定の分野に限定されてしまうだろう。

高橋記事

公約実行は当然のこと

トランプ政権が20日にスタートし、矢継ぎ早に大統領令を出している。

これに対してほとんどのマスコミは「異例である」と報じ、識者の多くはトランプ政権が早々に行き詰まるだろう、という見方を示している。

筆者がレギュラー出演している朝日放送「正義のミカタ」(毎週土曜日朝9時~)でも、米国人モーリー・ロバートソン氏が大統領令について、「異例の多さで、内容が悪い」と語っていた。彼は民主党支持者で、まるで大統領選挙中の民主党によるトランプ批判そのものを聞いているかのようだった。

米国の大統領令は、連邦政府や軍に対して連邦議会の承認を得ることなく、行政権を直接行使するものだ。これをモーリー氏は「今回は異例に多い」と言っていた。これに対して一緒に出演していた岡田斗司夫氏は、「オバマ大統領も数多くの大統領令を出していた」と返していた。

また、筆者は、実はどこの国でも行政権の行使に関して、議会承認を得ないで行うものはあり、たとえば日本でも政令は国会の承認を得ないで行うものだと説明した。同じ番組内で、新たな元号についての話題もあったが、実は元号の決定は国会の承認ではなく、政令によって政府が決めているものだ。

アメリカの大統領令の範囲が明確でないという批判もあるが、連邦議会の制定する法律に基づき大統領に委任されているものも少なくない。

この点、日本の政令でも、根拠法律が明確な委任政令と、そうでない実施政令が混在しているので、アメリカの大統領令との差異は、少なくとも筆者にとってはそれほど明確でなく、五十歩百歩ではないかと思う。

こうした意味で、「大統領令が乱発されている」という報道は、アメリカでもなされているが、やや大げさであると思う。

新政権が選挙期間中の公約を実行に移すのは当然である。また、見方を変えればトランプ政権は、選挙期間中、当選後の戦略をよく考えて、議会の承認の必要のない大統領令でできることばかりを公約に掲げてきたともいえるのだ。

もっとも、連邦議会が反対法律を制定したり、過去にも大統領令について連邦裁判所が違憲判断を示したことも2回ある。行政権の執行であるので、三権分立の立場から立法と司法からチェックを受けるのもまた当然である。

マスコミが知らないトランプの素顔

マスコミの報道の多くは、いまだに「トランプ大統領はバカではないか」というものが主流であるように感じる。これは(筆者は直接トランプ大統領と面識があるわけではないが)、私の友人・知人を通じて知るトランプ大統領のイメージと異なっている。

実は、昨年11月、安倍首相が当選直後のトランプ氏と電撃的な会談をしたが、それを仲介した人物は、筆者の長年の友人である日系三世アメリカ人、村瀬悟氏である(http://gendai.ismedia.jp/articles/-/50422)。友人の名を明かすのは気が引けるが、もういいだろう。

彼は、日本語の勉強のために日本に中学・高校と留学しているが、留学先は成蹊中学・高校である。年齢は安倍首相と一つ違いであり、安倍首相も成蹊中学・高校であるので、当然よく知っている仲だ。

ハーバード大卒、ニューヨークで評判のいい弁護士をしており、トランプ大統領のかつてのビジネス案件も手がけていたこともあって、トランプファミリーとも密接な関係がある。

当然、トランプ大統領に直接連絡できる人物だ。彼は、トランプはとても賢く数々の発言は計算に基づいているといっていた。

また、トランプ大統領がかつて倒産したとき、彼のために金策で奔走した日本人も知っている。苦境の時に助けに乗り出した人であり、そういうときの恩義は古今東西を問わず忘れないものだ。その人も、トランプ大統領はかなり賢く、先々のことをいろいろと考えて行動していたといっていた。

最も大きな失点は「国境税」

さらに、かつてのトランプ氏は今のようなやさしい英語を使わなかった。しかし、不動産で失敗した後、テレビショーに出演していたときのトランプ氏は別人のように言葉づかいが変わり、難しい表現を使わなかった。

しかも、WWEというプロレス団体のリングにも登場した。日本では、地位のある人がプロレスを好きだといっても自然だが、アメリカではプロレスは完全にプア・ホワイトら向けのもので、リング上で使われる言葉も基本的には低レベルだ。こうした経験を積むこと、トランプ大統領は一皮むけたという。

ただし、トランプ大統領の行動すべてが計算づくでうまくいっているわけではない。

メキシコとの国境に壁をつくる、というところまでは想定内だ。実際、今でもメキシコとの国境には壁がある。そもそも国境に壁があるのは、アメリカとメキシコの間を往復すれば旅行者もわかることだ。それに入国管理を強化するのも大統領選挙期間中の公約である。

しかし、国境税についてまともにブチ上げたことには面食らった。たしかに大統領選挙でも国境税については言及されていたが、これは悪手だろう。早速、「国境税といっても、相手国に課すことができない以上、アメリカ国民が支払うことになる」といった批判が出た。

この批判はその通りであるし、相手国もWTOなどの国際機関をうまく使えばかなり防戦できる。こうした意味で、これは「ディール」に向かない戦法であり、トランプ政権としては「しまった!」と思ったはずだ。

ただ、トランプ大統領とメキシコのエンリケ・ペニャニエト大統領との間で、電話会談が行われたので、ディールは一歩前進している。結果オーライ、ともいえるかもしれない。

実はしたたかな「失業・雇用論」

さて、経済政策に関しての言動は想定内である。もっとも、トランプ政権への批判はまだ強く、そうした論者のなかには「トランプ政権が掲げる経済政策は、とてもできっこない」と断言する者が多い。

一方、『現代ビジネス』のサイトには、冷静な記事もある。1月26日付けの安達誠司氏の「トランプの経済政策は本当に『保護主義』なのだろうか?」(http://gendai.ismedia.jp/articles/-/50815)は有用だ。この見方には、経済学的な観点から賛同するとことが多いが、筆者の場合、それに政治的な観点を加えてみている。

トランプ政権は、雇用を増やすことを主張しており、これに対して「アメリカはいま、完全雇用に近い状態」という批判がなされている。安達氏は、アメリカ経済は「完全雇用」に近いのか? と自ら問いかけて、実際の「失業率」はもう少し高いとの試算を提供している。

興味深い指摘だが、もしそうであっても、統計で目に見える「失業率」は容易に低下しない。高い失業率を低くするのは困難なので、これでは政治的には無意味な主張になる。

トランプ政権の射程は2年、中間選挙までに政治的に目に見える成果を求めている。それまで、マクロの「失業率」は、理由がどうあれ顕著に低下することはない。

トランプ政権はこのことをよく知っているのだと思う。マクロの「失業率」には目をくれずに、個別企業の雇用を促進させ、「その雇用はオレが作った」と成果を主張することを考えているのだろう。

実際、そういわんばかりのつぶやきをツイッター上で展開している。一連の日本叩き、日本企業叩きも、そうした戦略から行われているのだろう。

となると、日本としては、1980年代に起こったような日本叩きにならないよう、したたかな対応が必要だ。

幸いなことに、対日貿易赤字は80年代ほど大きくはない。ところが、貿易赤字は経済学的にはたいした意味はないが、政治的な意味は大きいので、あまり経済的に考えるのは得策ではないのだ。

80年代、筆者は実際に対米交渉をやった経験があるが、そのとき一応経済学的な観点から各所に説明するのだが、あまり意味がなかった。今や中国が日本のポジションに変わっているので、この点(つまり、政治的な観点)を強調した方が日本のためにもなる。

日本が優位に立つチャンスはある!

さて、これについて「トランプ政権の80年代を彷彿させる行動は、トランプ政権が比較優位の貿易論も知らないから採られるもので、いわば暴挙」という識者もいるが、それは誤りだ。

伝統的な貿易論どころか、その次の「新貿易論」、さらに貿易は格差の源になりうるという「新新貿易論」さえも利用して、対日交渉に臨んでくると思ったほうがいい。

1月28日夜、安倍首相とトランプ大統領は電話会談した。2月10日、安倍首相が訪米し日米首脳会談を行うことを取り付け、その直前の2月3日にマティス国防長官が来日する予定だ。

当面は、トランプ政権が離脱を表明しているTPPの後をどうするかだ。筆者は、昨年米大統領選直後11月14日付けの本コラムで、日米2国間交渉に移行すべきと書いた(http://gendai.ismedia.jp/articles/-/50202)。それは、日本が言わなくともアメリからそう求めてくることが予想できたからだ。

案の定、日米2国間貿易交渉という流れが出てきている。報道によれば、アメリカから提案が持ち出されたら、日本も受けるという。だが、この報道通りの受け身対応だと、ちょっと心配である。

筆者が昨年の本コラムで書いたのは、どうせ2国間になるから、日本から先に持ちかけるべきだ、ということだ。そのほうが、議論の枠組が作れるので有利になるからだ。

これも新聞報道だが、アメリカが2国間交渉を日本に持ちかけるとき、在日米軍の駐留経費負担増を日本に求めない、とのマティス長官の話が出ている。

一見すると、マティス長官は日本に配慮したように見えるが、日本にとってはいい話ではない。じつは、在日米軍の駐留経費増を日本がいわれても、年間2000億円程度なのでたいした話でないのだ。むしろ増額に応じて、2国間貿易交渉を有利に運んだり、日米地位協定の見直しをとる方が、日本としても得策だっただろう。

トランプ政権がそれを察知して在日米軍の駐留経費増を持ち出さないのだとしたなら、2国間交渉はかなりタフなものとなるだろう。

日米2国間交渉は、TPPで決まったことをベースにして行うのは当然として、場合によっては、オーストラリア、ニュージーランドの旧英連邦も加えればいいだろう。少なくとも、TPPベースの交渉ではいいパートナーとなる。

さらに、NAFTAで再交渉のカナダ、EUから離脱するイギリスも加えて、アングロサクソン+日本という先進国型自由貿易経済圏を模索するのもありだ。

トランプ政権は、貿易交渉をしようというだけで、先進国間では保護主義ではなくどちらかといえば自由貿易を指向するだろう。その中で、日本もしたたかな交渉術が求められている。

ディール(契約)は、売りと買いで折り合いがつかないと思っても粘り強く交渉すると着地点があるように、決して破壊的な結末ではなく、両者が納得できるところに落ち着くものだと肝に銘じてほしいものだ。

三橋記事

ドナルド・トランプ米大統領は、メキシコからの低賃金労働者流入に加え、「逆輸入問題」を問題視している。逆輸入とは、米国の企業が「安い人件費」を求め、メキシコに工場を建設する直接投資を実施する。そして、メキシコで米国企業が生産した「安い製品」を米国に輸入する。これが逆輸入問題だ。

対外直接投資と輸入の組み合わせは、米国経済の「雇用」と「需要」に悪影響を与える。本来は、米国国内で、米国国民が生産し、供給すべき需要が、外国に奪われてしまうのだ。

なぜ、米国企業がメキシコに工場を移したのか。もちろん、その方が利益が増え、株主が喜ぶためだ。さらに、米国国民も「消費者」としては、安い製品を購入できるというメリットを受ける。とはいえ、その反対側で米国の生産者たちが所得や雇用を奪われ、彼らのグローバリズムに対する怨嗟(えんさ)の声が、トランプ大統領誕生に繋がった。

さて、対外直接投資と輸入の組み合わせといえば、わが国にとっても他人事でも何でもない。実は、日本は「ある国」に対外直接投資を実施すると同時に、その国で生産された「安い製品」を輸入することで、デフレを促進してきたのだ。

言うまでもないが、中国である。

図の通り、わが国はほとんどゼロに近かった対中直接投資を、21世紀に入って以降に激増させた。もちろん、例えば、日本が完全雇用で、国内の生産能力が限界に達しているにも関わらず、日本製品に対する世界各国の需要が大きい-といったケースであれば、日本企業の対中直接投資は正当化される。

とはいえ、現実には、日本は対中直接投資を増やすと同時に、対中輸入も激増させたのだ。日本で生産可能な製品について、わざわざ中国で生産し、日本の国内需要に向けて逆輸入した。中国からの逆輸入は、間違いなく日本のデフレ長期化の一因となった。  同時に、わが国は対中直接投資で、中国の生産力を強化してしまった。すなわち、仮想敵国の経済力、財政力、そして軍事力拡大に貢献してしまったのだ。  米国とメキシコとの間には、別に軍事的な緊張があるわけではない。とはいえ、日中関係は違う。われわれは「利益」のために対中直接投資、対中輸入を拡大し、仮想敵国を育ててしまったのである。  本件は、日本国の存亡にかかわる重要な問題だ。というわけで、筆者は本問題を社会に提起するため、昨日、小学館新書から『中国不要論』を刊行した。

良ければ下にあります

を応援クリックよろしくお願いします。