『「ロシア革命」に変容する韓国の「名誉革命」 「広場民主主義」の暴走を恐れ始めた保守系紙』、『「キューバ革命」に突き進む韓国 どの大統領候補も皆「離米」』(12/20・22日経ビジネスオンライン 鈴置高史)について

12/19産経ニュース<世界にうずまく「恨」の不気味さ 「アメリカの韓国化」どう克服 評論家・西尾幹二

≪韓国を揺るがしたルサンチマン≫

朴槿恵大統領の職務剥奪を求めた韓国の一大政変には目を見張らせるものがあり、一連の内部告発から分かったことはこの国が近代社会にまだなっていないことだった。5年で入れ替わる「皇帝」を10大派閥のオーナーとかいう「封建貴族」が支配し、一般民衆とは画然と差をつけている「前近代社会」に見える。一般社会人の身分保障、人格権、法の下での平等はどうやら認められていない。

ただし李王朝と同じかというとそうではない。「近代社会」への入り口にさしかかり、日本や欧米を見てそうなりたいと身悶(もだ)えしている。騒然たるデモに荒れ狂った情念は韓国特有の「恨(ハン)」に国民の各人が虜(とりこ)になっている姿にも見える。「恨」とは「ルサンチマン」のことである。完全な封建社会では民衆は君主と自分とを比較したりしない。ルサンチマンが生まれる余地はない。

近代社会になりかかって平等社会が目指され、平等の権利が認められながら実際には平等ではない。血縁、財、教育などで強い不平等が社会内に宿っている。こういうときルサンチマンが生じ、社会や政治を動かす。

恨みのような内心の悪を克服するのが本来、道徳であるはずなのに、韓国人はなぜかそこを誤解し脱却しない。いつまでもルサンチマンの内部にとぐろを巻いて居座り続ける。反日といいながら日本なしでは生きていけない。日本を憎まなければ倒れてしまうのだとしたら、倒れない自分を発見し、確立するのが先だと本来の道徳は教えている。しかし、恨みが屈折して、国際社会に劣情を持ち出すことに恥がない。

≪吹き荒れる「ホワイト・ギルト」≫

ところが、困った事態が世界史的に起こりだしたようだ。ある韓国人学者に教えられたのだが、恨に類する情念を土台にしたようなモラルが欧米にも台頭し、1980年代以後、韓国人留学生が欧米の大学で正当評価(ジャスティファイ)されるようになってきた。

世界が韓国的ルサンチマンに一種の普遍性を与える局面が生じている、というのである。こういうことが明らかになってきたのも、今回の米大統領選挙絡みである。

白人であることが罪である、という「ホワイト・ギルト」という概念がアメリカに吹き荒れている、と教えてくれたのは評論家の江崎道朗氏だった。インディアン虐殺や黒人差別の米国の長い歴史が白人に自己否定心理を生んできたのは分かるが、「ホワイト・ギルト」がオバマ政権を生み出した心理的大本(おおもと)にあるとの説明を受け、私は多少とも驚いた。

この流れに抵抗すると差別主義者のレッテルを貼られ、社会の表舞台から引きずり下ろされる。米社会のルサンチマンの病もそこまで来ている。「ポリティカル・コレクトネス」が物差しとして使われる。一言でも正しさを裏切るようなことを言ってはならない。“天にましますわれらの父よ”とお祈りしてはいけない。なぜか。男性だと決めつけているから、というのだ。

あっ、そうだったのか、これならルサンチマンまみれの一方的な韓国の感情論をアメリカ社会が受け入れる素地はあるのだと分かった。両国ともに病理学的である。

20世紀前半まで、人種差別は公然の政治タームだった。白人キリスト教文明の世界に後ろめたさの感情が出てくるのはアウシュビッツ発覚以後である。それでも戦後、アジア人やアフリカ人への差別に気を配る風はなかった。80年代以後になって、ローマ法王が非キリスト教徒の虐待に謝罪したり、クリントン大統領がハワイ武力弾圧を謝ったり、イギリス政府がケニア人に謝罪したり、戦勝国の謝罪があちこちで見られるようになった。

≪トランプ氏は歪みを正せるか≫

これが私には何とも薄気味悪い現象に見える。植民地支配や原爆投下は決して謝罪しないので、これ自体が欧米世界の新型の「共同謀議」のようにも見える。日本政府に、にわかに強いられ出した侵略謝罪や慰安婦謝罪もおおよそ世界的なこの新しい流れに沿ったものと思われるが、現代の、まだよく見えない政治現象である。

各大陸の混血の歴史が示すように、白人は性の犯罪を犯してきた。旧日本軍の慰安婦制度は犯罪を避けるためのものであったが、白人文明は自分たちが占領地でやってきた犯罪を旧日本軍もしていないはずはないという固い思い込みに囚(とら)われている。

韓国がこのルサンチマンに取り入り、反日運動に利用した。少女像が増えこそすれ、なくならないのは、「世界の韓国化」が前提になっているからである。それは人間の卑小化、他への責任転嫁、自己弁解、他者を恨み、自己を問責しない甘えのことである。

トランプ氏の登場は、多少ともアメリカ国内のルサンチマンの精神的歪(ゆが)みを減らし、アメリカ人を正常化することに役立つだろう。オバマ大統領が許した「アメリカの韓国化」がどう克服されていくか、期待をこめて見守りたい。(評論家・西尾幹二 にしおかんじ)>(以上)

石平氏の『韓民族こそ歴史の加害者である』を読むと「朝鮮人は我が身を守るために外国勢力を国内に引き入れ、外国を振り回して売国するのが当たり前の政権が続いた」とありました。新羅の統一、元寇、李成桂、壬午事変、甲申政変、皆そうです。日本は朝鮮半島がだらしがないため、結局日清・日露戦争を戦わざる羽目に陥りました。朝鮮人にとって裏切りは当り前の世界です。朴槿恵大統領も中国に擦り寄ったり、米国に擦り寄ったりと忙しい。石平氏の本によると、元寇も高麗が元を唆して起こしたとのこと、朴槿恵が被害者の立場は1000年不変と言うのであれば、元寇の謝罪もないというのはおかしいと。

韓国保守が今頃になって、慌てて朴槿恵追及の手を緩めようとしても遅いでしょう。韓国民は情緒優先の民族です。言葉を変えて言えば、未熟という事です。論理的、合理的判断ができないという事です。国会で経済界を追及して、苦境にあるサムスンの足を引っ張るようなことを平気でします。雇用が失われ、自分の首を絞めることに気付いていません。まあ、北朝鮮のような粛清が当たり前の国にするつもりでしたら、企業は国有化されるでしょうけど。その時には、海外への輸出も制約されるのでは。どういう道を歩むにしろ、日本を恨むことでしかカタルシスを得られない、愚かとしか言いようがない民族です。

アメリカも韓国を見捨てるのでは。国民がここまでアホだと、救いようがない。米国が圧力をかけて結ばせた「慰安婦合意」も破棄されるでしょう。こうなることは見えていました。裏切りが当たり前の国ですので。アチソン声明に朝鮮半島を入れなかったのは正解でした。北朝鮮と一緒になればよい。米中共にどう動くかですが。

12/20記事

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韓国保守紙は朴大統領を弾劾した「名誉革命」が「ロシア革命」に変質することを恐れる。写真はロシア革命の様子が描かれた絵画(写真:AP/アフロ)

前回から読む)

韓国の保守系紙が慌てる。朴槿恵(パク・クンヘ)大統領を断罪した「名誉革命」が「ロシア革命」に変容する可能性が出てきたからだ。現在の体制を破壊されたら、自分たちも危ういのだ。

憲法裁判所に圧力

—12月9日、韓国の国会が朴槿恵大統領への弾劾訴追案を可決しました(「韓国国会、朴槿恵弾劾案を可決」参照)。

鈴置:混乱は続いています。可決以降の「下野を要求する土曜デモ」は憲法裁判所にも向かうようになりました。弾劾を棄却しないよう圧力をかけるためです。

デモ隊は大統領権限代行に就任した黄教安(ファン・ギョアン)首相に対しても辞任を要求しています。公安検事出身でタカ派なので、デモなどに強権を発動するのではないかと恐れているのです。

野党第1党の「共に民主党」も「即刻下野」と早期の弾劾決定を要求しています。弾劾案可決に成功した今の勝利ムードが続く間に、次の大統領選を実施したいのです。

同党の最有力大統領候補の文在寅(ムン・ジェイン)前代表は12月16日「もし、憲法裁判所が弾劾を棄却したら?」との質問に「そんな判決が出たら、次は革命するしかない」と答えています。

朝鮮日報が「文在寅『国民の憲法意識がすなわち憲法・・・弾劾棄却すれば次は革命しかない」(12月17日、韓国語版)で報じました。

弾劾訴追の可否を憲法裁判所がいつ下すか分からないことも、政局の不安定感を加速しています。一方、与党「セヌリ党」は親朴派と非朴派の対立が激化し、分裂状態です。

デモに便乗する勢力

注目すべきは保守系紙が怯え始めたことです。保守系紙は大統領を弾劾訴追に追い込んだ毎週土曜日の大型デモを「名誉革命」と絶賛してきました(「『名誉革命』と韓国紙は自賛するのだが」参照)。

「広場民主主義」の勝利とも褒めそやしてきました。ろうそくを手に広場に集まった人々が議会を突き動かしたからです。「100万人のデモでもガラス1枚割れない民度の高さ」も誇りとなりました。

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しかし「革命の熱気」が高まるに連れ、保守系紙は「広場」に不気味なものを感じ取ったのです。中央日報の社説「弾劾とろうそくに便乗する統合進歩党と尹昶重氏」(12月6日、韓国語版)がそれをよく表しています。

記事が載ったのは、6回目のソウルのろうそく集会(12月3日)に150万人(主催者側発表)が集まった後。大統領の弾劾訴追案が国会で可決される見通しが強まった時でした。ポイントを訳します。

  • 問題はこのような純粋な志に便乗して私利を得ようとする勢力が台頭し始めたことだ。北朝鮮式の社会主義を実現しようとしたとして2014年末、憲法裁判所が「危険な政党」と規定し解散させた統合進歩党出身の人物らが代表例だ。
  • この者たちは、内乱扇動罪で懲役9年を宣告され収監中の李石基(イ・ソッキ)前・統合進歩党議員の釈放を求める要求するプラカードをデモ現場で掲げた。

体制をひっくり返す

—統合進歩党とは?

鈴置:2012年の選挙では300議席中13議席を占めた、それなりに存在感のある政党でした。この選挙でも得票率は10.3%を記録しています。既存のいわゆる「進歩的な政党」に飽き足らない人々から支持を集めていたのです。

一方、保守は「北朝鮮の手先」として危険視していました。韓国憲政史上初めて政府が命令してこの政党を解散させたのもそのためです。解散を主導したのが当時、法務長官だった現在の黄首相です。

同党の指導者、李石基議員(当時)も2013年9月に内乱陰謀罪や内乱扇動罪などで逮捕されました。国会は289人中258人の賛成で逮捕に同意しています。

—なぜ、この政党の解散問題が蒸し返されるのですか?

鈴置:今、韓国では「朴槿恵が国を滅茶苦茶にした」ということになっています。左派はそのムードを利用して、既存の体制を一気にひっくり返そうと狙っています。

「ABP」モードに

—体制をひっくり返す、ですか!

鈴置:韓国紙には「ABP(Anything but Park)」という言葉が散見されるようになりました。「朴がやったことはすべて否定する」という意味です。この際、統合進歩党の強制解散も「ひっくり返そう」と考える人が出てきたのです。

左派系紙のハンギョレが、ロシア出身の朴露子(パク・ノジャ、Vladimir Tikhonov)オスロ国立大学教授の寄稿を載せています。「朴槿恵の最悪の犯罪」(12月4日、日本語版)です。朴露子教授の専門は韓国学です。彼の主張を要約します。

(朴槿恵政権の)悪行の中でも統合進歩党の法的解散とイ・ソッキ前議員らの拘束と裁判は特筆に値する。この事件により、1987年の大闘争で勝ち取られた形式的・手続き的民主主義は回復し難い傷を負った。事件以後の大韓民国を民主国家と呼ぶこと自体が無理だ。

裁判で国家情報院と検察の主張の核心的部分が事実上虚偽であることが判明した。被告たちが「作った」という「革命組織」の実体がなかったことが明らかになり「内乱陰謀」という恐ろしい容疑に対しても無罪が宣告された。

朝鮮日報は権力の手先だ

—「韓国は民主国家ではない」と言い切っていますね。

鈴置:今回の崔順実(チェ・スンシル)氏による「国政壟断事件」が露見する前でしたら、韓国人の反発を買ったと思います。でも今、韓国人は「これでも国か」と自信を失っています(「『美し過ぎた自画像』が呼んだ朴槿恵弾劾」)。

そんな時に「統合進歩党の解散だって、まともな国だったらあり得なかった」と言われれば「確かにそうだな」と考える韓国人が出ると思います。

しかし韓国の保守にとって「北朝鮮の傀儡組織」統合進歩党の解散は譲れない一線です。それに左派の矛先は自分たちに向いているのです。朴露子教授は朝鮮日報も批判しています。以下です。

  • 朝鮮日報や韓国日報など多くの新聞が、国家情報院が執筆した「内乱陰謀」小説を事実であるかのように報じた。
  • 情報機関とマスコミが一緒になって政権の政敵に対する従北攻撃(北朝鮮に賛同追従する勢力だという攻撃)に出るならば、民主主義や基礎的な人権常識がまともに残り得ようか?

左派政権のイジメ

—朝鮮日報は名指しで攻撃されましたね。

鈴置:最大手紙として保守の声を代表してきた朝鮮日報は当然、左派の最大の攻撃目標です。朴露子教授だけではありません。「朴退陣デモ」も朝鮮日報を標的にしています。

朴槿恵大統領の退陣を求める集会やデモの現場で歌われる歌には「セヌリ党よ、朝鮮日報よ、お前らも醜悪な共犯じゃないか」とのくだりがあります。

東京基督教大学の西岡力教授が月刊『正論』2017年1月号に載せた「混迷の韓国 次は過激な親北政権?」でこの歌を解説しています。西岡教授の記事によると、歌詞は以下のように続きます。

  • (朴槿恵批判の)ショーをするな。だまされないぞ。お前らも解体してやるぞ。

—朝鮮日報が「標的」になると、販売部数が減るということですか。

鈴置:それもあります。韓国ではそれに加え、政権からのイジメも恐れなければなりません。金大中(キム・デジュン)政権、盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権の10年間、保守系紙は苦労しました。

左派政権から「税務調査するぞ」「オーナーを収監するぞ」と脅され続けたのです。韓国では新聞も政治のプレーヤーの1つなのです。

財閥も解体せよ

—次に左翼政権ができたら保守メディアは大変ですね。

鈴置:だから朝鮮日報も「広場に便乗する勢力」に対し、必死の反撃に出ています。朴相薫(パク・サンフン)論説委員の「大衆の憤怒に乗ってはいけない」(12月12日、韓国語版)から引用します。

  • 警戒すべきことがある。(今の)雰囲気に便乗してすべてをひっくり返そうとする極端な流れだ。ろうそくデモの人波の中に、昔の統合進歩党勢力が登場した。
  • 野党の大統領候補は「鮮明性」競争を繰り広げている。朴槿恵政権のすべてを否定するというのだ。支持率1位の候補は「国家の大掃除」を打ち出した。野党で2位の候補は財閥解体論に打って出た。財閥は直すべき点が多いが、「解体」とは扇動に近い。
  • 大統領の退陣が既定事実となった状況で今、我々は冷静でなければならない。直すところは直し、守るところは守る――という玉石を見極める知恵を発揮すべきだ。
  • 何を守るのか。国家の基本を守らねばならない。統合進歩党の解散は国家体制を否定する集団に対する憲法的決定だった。大韓民国の秩序を危険にさらす勢力に対しては、より目を見開かなくてはいけない。

サムスンのオーナーを面罵

—野党で支持率1位、2位の候補とは?

鈴置:2人とも「共に民主党」の政治家で、1位の候補とは文在寅氏。2位は昔から過激な発言を繰り返し「韓国のトランプ」と評される李在明(イ・ジェミン)城南市長です。

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ただ李在明市長は「トランプ」とは異なって、政治的立場はかなり左です。極貧の環境で育った人で財閥解体論を唱えています。「日本は敵性国家だ」とも発言しています。

「ABP」ムードの中、「以前から朴槿恵を徹底的に攻撃してきた人」として急速にスポットが当たっています。文在寅・前代表の発言が過激になっているのも、李在明市長の人気急上昇を警戒してのことと見られています。

—韓国では財閥解体論が語られているのですね。

鈴置:「すべてをひっくり返す」一環です。12月6日、崔順実氏の「国政壟断事件」に関する国会の聴聞会に、財閥のオーナー9人が呼ばれました。朴大統領を初めとする歴代政権との「政経癒着」を追及されたのです。

ある野党議員はサムスン電子の李在鎔(イ・ジェヨン)副会長に向かって「あなたの財産は8兆ウォン(8000億円)でしょう」「相続税は(たったの)16億ウォン(1億6000万円)と言われています」と畳み掛けました。テレビで中継された聴聞会の場で、財閥への反感を煽ったのです。

韓国経済新聞は「『歳はいくつだ、経営権を手放せ』・・・企業人を面罵した聴聞会」(12月6日、韓国語版)の見出しでこの聴聞会を報じました。別の野党議員は李在鎔副会長を「50歳にもならないのに、ちゃんと質問に答えろ」と面罵したのです。

「革命前夜」の韓国

—韓国は「革命前夜」ですね。

鈴置:「ハンギョレ」にキム・ドンチュン聖公会大NGO大学院長が「再び岐路に立った韓国」(11月29日、日本語版)を書きました。これを読むと、左派の発想と戦略がよく分かります。引用します。

  • 「キャンドルデモ」に集まった韓国の国民は真に偉大だ。その力で弾劾局面まで持ってきた。しかし朴槿恵政権の企画、監督、演出者はそのまま残っており、政策も何も変わっていない。
  • 1987年の6月抗争(民主化)直後のように、いや4・19(1960年の学生革命)、いや8・15(日本からの独立)直後のように、韓国は再び岐路に立っている。

要は「韓国は何度も変革を体験したが、いずれも不十分だった」との認識です。そして「今こそ、既得権勢力を一掃して国を正そう」と呼び掛けたのです。以下です。

  • このゲート(国政壟断事件)のすべての法律違反者と共謀者を徹底的に捜査・処罰し、責任を負わせなければならない。
  • 検察改革、国家情報院改革、選挙法改正、公営言論改革がない改憲論や大統領選挙競争は、再び国民を”卒”(日本の将棋の歩に相当)に転落させるだろう。
  • 弾劾は始まりに過ぎず、大統領選挙は終着点ではなく過程だ。

「革命の波」は外交にも

キム・ドンチュン大学院長らの「体制一新」の主張を、保守――既得権勢力は深い恐怖感とともに聞いています。空論ではなく実現しそうだからです。次の大統領選挙では左派が勝つ可能性が高いのです。

「韓国革命」の波が及ぶのは内政に留まりません。このまま行くと、米国との同盟を打ち切ることにもなりかねないのです。

(次回に続く)=12月22日に掲載予定

「国政壟断事件」の動き(2016年)
7月
26日 TV朝鮮「財界の文化財団『ミル』への486億ウォンの募金に青瓦台幹部が関与」
10月
24日 JTBC、大統領演説の草稿など機密資料が崔順実氏に漏えいと報道
25日 朴大統領が資料提供を認めて国民に謝罪
   
26日 検察が崔氏自宅など家宅捜索。外交資料なども漏洩とメディアが報道
28日 朴大統領は首席秘書官全員に辞表を出させる。秘書室長が辞表提出
28日 韓国ギャラップ「朴大統領の支持率が6週連続で落ち、過去最低の17%に」と発表
29日 青瓦台、検察の家宅捜索を拒否。ソウルで1万人強の退陣要求デモ
30日 青瓦台、検察に資料提供。朴大統領は一部首席秘書官らを辞任させる
30日 与党、挙国一致内閣を提案するも野党は真相究明が先と拒否
30日 崔順実氏帰国、31日に検察に出頭、逮捕状なしで緊急逮捕
31日 リアルメーター「潘基文氏の支持率が前週比1.3ポイント低い20.9%に」
11月
2日 朴大統領、首相を更迭し、後任に盧武鉉時代に要職を歴任した金秉準氏を指名
2日 野党各党、新首相の就任に必要な国会聴聞会を拒否することで一致
2日 検察、安鍾範・政策調整首席秘書官を緊急逮捕
3日 検察、崔順実氏を逮捕。容疑は「安鍾範氏と共に財閥に寄付を強要した」職権乱用など
4日 韓国ギャラップ「朴大統領の支持率は過去最低の5%、不支持率は89%」と発表
4日 朴大統領「検察の捜査受ける」と国民向け談話。野党は「退陣要求運動を展開する」
5日 ソウルで4万5000強人の退陣要求デモ。釜山など他都市にも拡散
6日 禹柄宇・前民情首席秘書官が検察に出頭
7日 与党・セヌリ党の金武星議員、大統領に脱党を要求
7日 朴大統領、与野党代表との会談を提案するも3野党に拒否される
8日 ソウルで4万5000強人の退陣要求デモ。釜山など他都市にも拡散
8日 検察、崔順実氏に関連するとしサムスン電子本社や大韓乗馬協会を家宅捜索
8日 朴大統領、丁世均・国会議長を訪ね「国会が推薦する総理を受け入れ、内閣を任せる」
9日 野党3党、朴大統領の国会推薦総理案を「一考の価値なし。大統領は2線に引け」と拒否
9日 米次期大統領にトランプ氏決定
11日 韓国ギャラップ「11月第2週の大統領支持率は前週と同じ5%。不支持率は最高の90%」
12日 全国で朴大統領の退陣求める集会。ソウルでは26万人参加
13日 検察、「国政壟断事件」でサムスン電子の李在鎔・副会長ら財閥トップを参考人として聴取
13日 青瓦台「昨日、大統領は国民の声を重く受け止めた。国政正常化のため苦心している」
13日 検察、国政壟断事件に関連し朴大統領に15日か16日の参考人事情聴取を要請
13日 金武星・前セヌリ党代表「唯一の収拾策は大統領弾劾」
14日 与野党、国政壟断事件に関する特別検察官の任命で合意
14日 共に民主党、大統領に対する要求を「2線への後退」から「即時退陣」にと強化
14日 秋美愛「共に民主党」代表、早朝に大統領との会談を受諾したものの同日夜に拒否
14日 日韓、東京でGSOMIAに仮署名
15日 文在寅「共に民主党」前代表「条件なき退陣求め在野団体と『非常時局機構』作る」
16日 韓国軍「2017年初めまでにTHAAD工事着工」と発表
16日 朴大統領、釜山の大型不動産開発事業「エルシティ」を巡る疑惑の徹底調査を指示
17日 崔順実氏の国政介入疑惑に関し、特別検察官任命法案と国政調査実施を可決
18日 韓国ギャラップ「11月第3週の朴大統領の支持率は5%、不支持率は90%」
18日 秋美愛「共に民主党」代表「大統領は支持者による衝突と戒厳令を準備している」
18日 青瓦台「東京での韓中日首脳会談の日程が決まれば朴大統領は参加する」
19日 退陣デモ。全国で24万人、うちソウルは17万人(警察発表)。支持デモに1万1000人(同)
20日 検察、崔順実氏らを職権乱用共犯などで起訴。「大統領も共謀と判断、捜査続ける」と発表
20日 朴大統領の弁護士「検察は想像と推測で捜査、対面調査には応じない」
20日 青瓦台「検察の発表は遺憾。特別検察官の捜査で無実を証明する」
20日 野党の大統領選立候補予定者ら8人「国民的退陣運動と平行し弾劾推進論議で合意」
21日 青瓦台スポークスマン、退陣を前提とした野党の首相推薦は拒否
21日 第1野党「共に民主党」と第2野党「国民の党」がそれぞれ弾劾推進を決定
22日 朴元淳・ソウル市長、閣議で閣僚辞任要求と日韓GSOMIAへの反対を表明
22日 崔順実疑惑を解明するための特別検察官任命法案を閣議決定
23日 ソウルで日韓GSOMIA署名・締結。写真撮影禁止に韓国写真記者が一斉抗議
24日 野党3党、朴大統領弾劾で合意
25日 韓国ギャラップ、11月第4週の朴大統領の支持率は4%、不支持率は93%
26日 5回目の退陣要求デモ。参加者はソウル27万人、全国32万人
28日 朴大統領の弁護士「求められた29日までの検察の対面調査は困難」
28日 政界元老集団と与党の「親朴」重鎮議員らがそれぞれ秩序ある退陣を朴大統領に要請
28日 教育部、国定歴史教科書の内容を開示
29日 朴大統領、3回目の国民談話を発表「任期短縮を含め進退は国会にすべて任せる」
30日 野党3党「無条件退陣の要求」と「弾劾推進」で合意
30日 朴大統領、国政壟断事件の特別検察官に元ソウル高検検事長の朴英洙氏を任命
12月
1日 セヌリ党、「4月退陣」を党論に決定
1日 朴正煕元大統領の生家に放火。犯人は「大統領が退陣しないので火を付けた」
2日 韓国ギャロップ、12月第1週の朴大統領の支持率は4%、不支持率は91%
2日 セヌリ党非朴派「12月7日午後6時までに退陣時期明言なければ弾劾に賛成」
3日 野党3党、朴大統領の弾劾訴追案を提出
3日 6回目の退陣要求デモ。参加者はソウル32万人、全国で43万人
4日 セヌリ党非朴派「4月退陣案への大統領の姿勢とは関係なく弾劾訴追案に賛成する」
5日 青瓦台「『4月退陣・6月大統領選』案を朴大統領はセヌリ党員として受け入れる」
6日 国会で「国政壟断」に関する聴聞会。財閥オーナー9人が証人として出席
6日 朴大統領「4月退陣受け入れる。弾劾可決時には憲法裁判所の審理を見守る覚悟」
6日 セヌリ党、弾劾訴追案は自由投票と決定
7日 国会で「国政壟断」に関する聴聞会。証人喚問された崔順実、禹柄宇氏らは欠席
8日 弾劾訴追案、国会本会議に報告。「セウォル号沈没当時の大統領の行為」は削除せず
9日 国会、朴大統領の弾劾訴追案可決。賛成は234票でセヌリ党から62人が賛成
10日 「共に民主党」、憲法裁判所に「早期に弾劾を認めよ」と要求
10日 「即位退陣」と「逮捕」を求めソウルで12万人がデモ。4万人が弾劾無効訴え集会
15日 文・前代表「慰安婦の法的責任と謝罪を求め追加協議を。THAADは次の政権で」
16日 朴大統領の弁護人団「弾劾訴追に足る資料なし」と反論の答弁書を憲法裁に提出
16日 文・前代表「弾劾が棄却されたら革命だ」
17日 ソウルで大統領の即時罷免と黄首相辞任を求めるデモ。保守派は弾劾無効を訴え集会
20日 崔順実氏、初公判で起訴内容を全面否認
 

※注 デモの参加者数は警察発表

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韓国の大統領候補は「離米派」揃い。韓国の「名誉革命」は「ロシア革命」から、さらに「キューバ革命」へと進む様相を呈している(写真:AP/アフロ)

前回から読む)

「韓国革命」により、米韓同盟が存亡の危機に立つ。

「3点セット」拒否

前回は、韓国の自称「名誉革命」が、既得権層を打ち倒す「ロシア革命」に向かい始めた、という話でした。

鈴置:それだけではありません。米国との関係を断絶する「キューバ革命」に至る可能性も相当にあります。大統領候補と見なされる政治家が一斉に「米国離れ」を叫び始めたからです。

世論調査で支持率1位を占めることが多い「共に民主党」の文在寅(ムン・ジェイン)前代表。12月15日にソウルの外信記者クラブで以下のように語りました。

聯合ニュース「文『THAADは次の政府に先送りすべきだ・・・誰がなるかは分からずとも、政権交代は確実』」(12月15日、韓国語版)から引用します。

  • 朴槿恵大統領の職務が停止され首相が権限を代行する中で、THAAD(地上配備型ミサイル防衛システム)を強行するのは望ましくない。次の政権で十分に議論し、外交的努力を尽くして合理的な判断を下すべきだ。
  • (日本との慰安婦合意に関しては)正当性を認めることが難しい。合意に関する両国の説明が異なるだけに、合意を(再)確認する必要がある。
  • (日本とのGSOMIA=軍事情報包括保護協定=については)この協定を通じ受け渡しする情報が何なのかに対し、十分に見直し検討する必要がある。

THAADもGSOMIAも、そして実は「慰安婦合意」も米韓同盟の紐帯です。その3点セットをすべて見直す、と表明したのです。「文在寅政権」は米国との同盟を打ち切る方向で外交政策を組み立てると宣言したのも同然です。

文・前代表は翌12月16日にも「大統領に当選したら最初にどこに行くか」との質問に「躊躇せずに言う。私は真っ先に北朝鮮に行く」と答えました。

これも明確に「離米路線」を打ち出したと受け止められました。朝鮮日報が「文在寅『国民の憲法意識がすなわち憲法・・・弾劾棄却すれば次は革命しかない」(12月17日、韓国語版)で報じています。

韓国防衛に責任を持てない

—「慰安婦合意」も米韓同盟に絡むのですか?

鈴置:米国から、日本とのGSOMIAを結べと要求された朴槿恵政権は「日本が慰安婦問題の解決に応じない」という無茶苦茶の言い訳を掲げて逃げ回りました(「ついに米国も韓国に踏み絵を突きつけた」参照)。

一方、韓国の要求に対し安倍晋三首相は「何度も謝る必要はない」と突っぱねるつもりでした。しかし、米国の仲介でやむなく「慰安婦として苦労した方々へのお詫びと反省の気持ち」を表明したうえ、元慰安婦を支援するために10億円を支払いました。

そして両国の外相は「この合意により、慰安婦問題は最終的かつ不可逆的に解決された」と確認しました。これが2015年12月28日の「慰安婦合意」です。

慰安婦合意は米国を事実上の保証人として成立したのです。ことに「最終的かつ不可逆的」部分は韓国の蒸し返しを防ぐために、日本が望んだ条件でした。逆に言えば、韓国がこの合意を破棄する時は、米国との相当な摩擦を覚悟せねばなりません。

THAADもGSOMIAも同様です。米国は韓国に対し「この2つを拒絶するなら、米国は韓国の防衛に責任を持てない」と言い渡していた模様です。米国の国防政策に詳しい日本の安全保障専門家が明かしました。

THAADは米国が長らく配備を希望していました。韓国を守るために在韓米軍基地は存在します。それを防衛するためのTHAAD配備です。韓国が拒否するというなら、米軍が出て行くのは当然です。

しかし中国から「配備を認めるな」と脅されたため、韓国はなかなか応じませんでした。ようやく2016年7月8日になって米韓は正式に合意しました。配備の場所は慶尚北道・星州(ソンジュ)に確定し、時期は2017年末の予定です。

突然動いたGSOMIA

日韓のGSOMIAも主な狙いは北朝鮮のミサイル対策です。日米と米韓は同盟を結んでいるため、その間では軍事情報は円滑にやり取りできます。しかし日韓の間には同盟関係はありません。

そこで米国は日韓間でGSOMIAを結ばせ、3カ国の軍事協力強化を狙ったのです。しかしこれにも中国が反対しており、朴槿恵政権は乗り気ではありませんでした。

その朴政権が突然に動いたのが10月27日でした。聯合ニュースが「韓国政府、日本とのGSOMIA締結を検討」と報じたのです。そして11月14日には、東京で仮署名という素早い展開になりました。

米国からの「見捨てられ」を懸念したと思われます。崔順実(チェ・スンシル)氏の「国政壟断事件」で朴政権は突然に弱い立場に追い込まれました。

「GSOMIA検討」を聯合ニュースが報じた日の2日前の10月25日に、朴大統領は自分の非を認める1回目の国民談話を発表しています。1日前の10月26日には検察が崔順実氏の自宅など家宅捜索しています。

混乱時には米国が「裁定」

—「国政壟断事件」とGSOMIAがどう関係するのですか?

鈴置:韓国で民衆が蜂起し、これを抑えるため戒厳令が布告されるなど際どい状況に陥った時、米国は「裁定」を下してきました。

1960年、初代の李承晩(イ・スンマン)大統領が戒厳令を出した際、米国は圧力をかけて下野させました(「朴槿恵の下野か、戒厳令か」参照)。

1979年に釜山などで民主化運動が突然に高調した時、当時の政権は動揺し地域限定で戒厳令を布告しました。この事件が朴正煕(パク・チョンヒ)大統領――朴槿恵大統領のお父さんです――暗殺事件の遠因となりました。

暗殺犯は大統領の側近でした。民主化運動を弾圧する朴正煕政権を米国が見放すと想定した上での犯行だった、との見方も多いのです。

現在も韓国メディアは「平和なデモを米国政府が支持している」などと相当に無理筋の分析記事を流し、朴大統領に圧力をかけています。

「民衆蜂起」を恐れる朴槿恵大統領とすれば、米国の信任を取り付けるために日本とのGSOMIA締結を急ぐ必要があったのです。

10月29日に「朴退陣」を求める第1回目のデモが起きました。青瓦台(大統領官邸)に迫るものでした。GSOMIA決断の情報リーク(10月27日)は、その直前だったのです。

見捨てないでね

THAADも「国政壟断事件」との関連を疑わせます。韓国軍は11月16日、突然「2017年初めまでにTHAAD工事着工」と発表しました。

「THAAD配備を認めるな」との中国の圧力は相変わらず続いていますから、朴政権は「着工」をできる限り先延ばししたかったはずです。

そもそも配備に同意したのも、親中派が「配備拒否」に動いたため、その反動で認めてしまった側面が強いのです(「『中国陣営入り』寸前で踏みとどまった韓国」参照)。

しかし、デモの参加者が膨れ上がり、朴大統領の支持率も急降下。背に腹は代えられず「THAADも約束通りちゃんと受け入れます」とメッセージを出すことで、米国から見捨てられる可能性を少しでも減らそうとしたのだと私は見ています。

強弁に終始した文在寅

—文在寅・前代表は米韓同盟に関し明確な発言をしていますか?

鈴置:12月15日の外信記者クラブでの会見では、以下のように語りました。

  • 韓米同盟が強固であることが何よりも重要だ。過去の政府の韓米政策をそのまま継承することはもちろん、同盟を強固にし、発展させるよう努力する。

でも、この発言をそのまま受け止めた韓国紙はありませんでした。「THAADもGSOMIAも見直す」と言っているのですから「過去の韓米関係を継承する」ことは不可能です。なお、文・前代表はTHAADに関しても以下のように付け加えています。

  • THAADの再検討が韓米同盟を害するとは思わない。

これも誤魔化しです。在韓米軍基地へのTHAAD配備は「韓国防衛に責任が持てない」とまで言われたので朴槿恵政権が認めたのです。文・前代表は在韓米軍の撤収や米韓同盟の打ち切りを覚悟のうえで、再検討を語っているのでしょう。

離米は「トランプ」が先導

—安保問題に関しほかの候補は?

鈴置:野党候補は皆「3点セット」見直し論です。要は「離米派」ばかりです。朴大統領の行ったことはすべてひっくり返す、というのが今の韓国のムード。「ABP(Anything but Park)」なのです。

中でも、この3点セットは朴槿恵大統領の「悪行中の悪行」とされています。大統領選に立候補する者なら「NO!」と叫ばなくてはなりません。

激しい発言から「韓国のトランプ」と呼ばれる李在明(イ・ジェミョン)城南市長の発言に注目する必要があります。李在明市長は「日本は敵性国家だ」とまで言い出し、それを理由に「3点セット」に強く反対しています。

支持率調査あるいは人気投票で2位、あるいは1位に付けることもある政治家です。この人の発言に引っ張られ、与党系含めすべての候補が「反日・離米」に傾いて行くと思います。

「油ウナギ」の潘基文

—保守・中道から出馬すると言われる国連事務総長の潘基文(バン・キムン)氏も、ですか?

鈴置:潘基文氏は「慰安婦合意」に関しては歓迎を表明したことがあります。中央日報が「潘基文国連事務総長『朴大統領の慰安婦妥結勇断、歴史が評価』」(1月4日、日本語版)で報じています。

ただ、この人の韓国でのあだ名は「油ウナギ」。状況に応じて姿勢をコロコロ変えるので有名です。慰安婦合意の直後は、朴大統領を援護射撃するために「歓迎」を表明したのでしょう。

でも、今や「韓国人の憎悪の的」となった朴大統領とははっきりと距離を置いています。むしろ「離朴」の証拠として「慰安婦合意の見直しを要求する」と言い出すかもしれません。もともと、反米で鳴らした盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権の外交通商部長官だった官僚です。

—GSOMIAやTHAADも見直すつもりでしょうか?

鈴置:その可能性が大いにあります。この人は「中国に弱い」のでも有名です。潘基文氏は2015年の天安門の軍事パレードを参観しました。

その際、会談した習近平主席に「この行事によって、平和を守るという中国の人々の願いが存分に示された。中国は長年にわたって国際平和・開発事業に積極的に尽力してきた」と称賛したのです(「『中国の尻馬』にしがみつく韓国」参照)。

米国のアジア専門家の中には「この男が大統領になったら、韓国は完全に中国側の国になる」と言い切る人もいます。

国連事務総長になれたのは米国の強力な後押しがあったからです。でも、米国にすれば「やらせてみたら中国の言いなりだった」のです。

中国が決める韓国の進路

—でも、潘基文氏は韓国ではそれなりの支持率を維持しています。

鈴置:保守としては他に選択肢がないのです。世論調査でも、5%以上の支持を獲得できる保守の大統領候補はこの人しかいないのです。

—逆に、野党候補の中に「当選するまでは『離米』だけれど、当選したら米韓同盟を熱心に維持する人」は出てきませんか。

鈴置:安哲秀(アン・チョルス)「国民の党」共同代表はそうかもしれません。「経済はリベラル」を標榜していて財閥には厳しい。でも「政治は保守」をうたっていますから。

ただ、この人を含め、韓国の政治家は外交政策を自ら選択できなくなっています。中国が圧力をかけ続けているからです。それに抗してTHAADやGSOMIAに賛成できる政治家がいるかは、大いに疑問なのです。

(次回に続く)=12月27日掲載予定

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