『逆立ちしても国後・択捉は帰ってこない歴史的背景 日露首脳会談総括~神話の崩壊で両国関係は新しいステージに』(12/28JBプレス 杉浦敏広)について

売国奴の丹羽宇一郎率いる伊藤忠にしては(佐々淳行によれば瀬島龍三はソ連のスパイだったとのこと。ずっと、売国奴に牛耳られている会社です)、杉浦氏はまともと言うか、直言居士を思わせます。それでも伊藤忠を辞めたのは、利益追求優先で、国益を考慮に入れない売国体質が合わなかったからかもしれません。古森義久氏が毎日を辞め、伊藤正氏が共同通信を辞め、田村秀男氏が日経を辞めて産経に移ったのは、自分の考えていることを記事にしたくてもそれぞれの社風が許さなかったという所でしょう。産経の阿比留瑠比氏によれば「産経の給与は他紙と比べて低いうえに経費もなかなか出ない」とのこと。こういう新聞社に移ったのは、金よりは自分の矜持を大切にしたからと思います。杉浦氏もそうでしょう。

12/30日経で安倍内閣の支持率調査で、「内閣支持率64%に上昇 真珠湾慰霊「評価」84%」とあり、その中で、日ロ共同経済活動についてもアンケート結果が載せられていました。

<日ロ共同経済活動、「賛成」は57% 

安倍晋三首相は15、16両日のロシアのプーチン大統領との会談で、北方四島での共同経済活動の協議開始で合意した。これについて聞いたところ、賛成は57%で反対の24%を上回った。賛成と答えた人の割合は男性が63%で、女性の48%より多い。

今回の日ロ首脳会談を「評価する」は44%、「評価しない」は38%だった。

北方領土問題の進展を期待するか聞いたところ、「期待する」は57%、「期待しない」は35%だった。期待すると答えた人は、30代は67%、40代で66%と高い一方、70歳以上は47%にとどまった。高齢者ほど交渉の行方を慎重にみている。>(以上)

「期待する」と答えた人も4島全部が返ってくると思っている人は少ないと思います。アンケートの質問項目によって答え方は変わります。小生も杉浦氏の言うように二島返還が限界と思います。ただ、日本政府が主張してきたことに論拠がないというのは知りませんでしたが。国際間の契約は原文(正文)が優先されるのは、国家間・企業間でも同じです。軍事膨張主義の中国包囲網形成の為には、地政学的にロシアの協力が必要です。

また、同じく12/30日経には核融合の記事が載っていました。

<「地上の太陽」 35年に本格稼働 国際熱核融合炉の新計画 安全・無限…新エネへ前進 

太陽と同じ「核融合」と呼ばれる反応を地上で再現し、エネルギーを取り出す国際的な大型実験施設の建設が、軌道に乗り始めた。国際熱核融合実験炉(ITER)計画と呼ばれ、総投資額は約200億ユーロ(約2兆4000億円)。11月には2035年の本格稼働を目指す新計画がまとまった。技術的な課題も多いが、将来のエネルギー供給の切り札になる可能性を秘める。

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ほぼ完成した組み立て棟

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調整作業が始まっている電磁石用コイルの製作棟

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ITER計画には日本、米国、欧州連合(EU)、中国、韓国、ロシア、インドが参加。オーストラリアも協力する。管理運営を担うITER機構本部と、実際に核融合の実験を進めるための中核施設は南仏プロバンス地方のサンポール・レ・デュランス(カダラッシュ)にある。

核融合には原子番号が同じ水素だが、普通の水素とは違い原子核に中性子を持つ重水素と三重水素を使う。約1億5000万度の高温にすると、重水素などの原子はプラスの電気をもつ原子核とマイナスの電子に分かれ、高速で飛び交うプラズマと呼ばれる状態になる。原子核は秒速1000キロメートル以上のスピードで激しくぶつかり合い、融合する。このときに発生する大きなエネルギーを熱として発電などに有効利用するのが目標だ。

原料、海水から

出力100万キロワットの石炭火力発電所は燃料として年間270万トンの石炭が必要だが、ITER機構によると同等の出力の核融合炉なら重水素、三重水素合わせて250キログラムしかいらない。原料の重水素や、三重水素を作るのに必要なリチウムは海水中に無尽蔵にある。

また原子力発電の「核分裂」と異なり、長期間、有害な放射線を出し続ける放射性廃棄物を出さない。中性子のエネルギーの大部分は熱に変換され、安全性は確保しやすいという。

一方で課題も多い。高温プラズマを強力な磁石を使って閉じ込め、制御しなければならないが、出力を上げようとすれば制御は難しくなる。磁石は巨大な超電導コイルに電流を流す電磁石を使うため、それ自体に多くのエネルギーを消費する。緻密な工学設計、プラズマ技術、そして巨額投資が必要だ。

費用総額200億ユーロ

ITER計画は当初の見通しが甘く、参加国が資金の代わりに実験炉に必要な設備を作って「物納」するスケジュールなども明確でなかった。作業の詳細が徐々に固まり、各国との情報交換も進んだため「ようやくきちんとコストの見積もりを出せるようになった」(ITER機構長のベルナール・ビゴさん)。

今年11月のITER理事会は、建設費は07年の機構発足から25年までが約69億ユーロ、26~35年は約46億ユーロとした。参加国が物納する部分の費用と、25年末以降の実験費用を加えると35年までに総額約200億ユーロに達し、当初計画を50億ユーロほど上回る見通しだ。

11月下旬、訪れたカダラッシュのITER建設現場では約1500人が働き、作業用車両が頻繁に行き来していた。機構長室からは工事現場が一望でき「基礎工事は終わった。実験炉のアセンブリー(組み立て)棟もほぼ完成し、来春から使える」とビゴさんは胸を張る。

黒くそびえたつ組み立て棟の天井の高さは約60メートルあり、内部に巨大構造物を持ち上げて移動できる大型クレーンが備え付けられている。核融合炉を作るための電磁石やその収納容器を動かし、炉を組み立てる予定だ。

電磁石用のコイルは専用の製作棟で、ニオブチタン合金でできた超電導線材を多数束ねて作る。実際に使う際にはセ氏零下269度の液体ヘリウムをコイル内に流して冷却する。また、プラズマを発生させる容器は真空状態を保つ必要がある。構造物の位置のずれや隙間は、絶対に避けなければならない。1500トンもある構造物をミリメートル単位の誤差で設置しなければならず、高度なエンジニアリング力が求められる。

電磁石は組み立て棟に連なるトカマク棟の地下に設置する。ITERはトカマク型と呼ぶタイプの核融合炉を採用するため、心臓部となる建物をこう名付けた。わずかな揺れも核融合反応の妨げになるのでバネのような免震器具を493個設置し、総重量約30万トンの建物を支える。地震はまず起きない地域だが、念には念を入れた。

11月の理事会は、装置を稼働して最初にプラズマを発生させる時期を当初計画に比べ約7年遅れの25年12月、核融合反応を起こす本格稼働は約9年遅れの35年とする案を了承した。ビゴさんは「プレッシャーは大きいが、それはすべての参加国の人たちも同じだろう」と覚悟を決めるように語った。(編集委員 安藤淳)>(以上)

杉浦氏はパイプライン敷設について余り肯定的な評価はしていません。小生も同じで、パイプライン敷設等膨大な設備投資が必要なものは、将来のエネルギーミックスを考えて、止めておくべきでしょう。ガスや石油はタンカーで運べば良いと思います。

最後に、杉浦氏は、「米トランプ大統領誕生により、露米関係は好転するものと予測する。

露米関係好転により露は対日関係改善には関心を失うとの識者の見方もあるが、筆者はこのような説には与しない。事実は逆である。露米関係好転にともに、日露関係も好転すると考える。

露米関係・日露関係好転は、日中関係にも影響を及ぼすことになる。中国は露米・日露関係が改善すれば、自国の孤立化を恐れ、多少なりとも対日姿勢を修正する可能性もあると予測する。」とあり、小生も米ロがうまく行けば、日ロもうまく行くと思います。日本単独で動くことは米国が許さないでしょう。悲しい現実です。でも、対中政策を考えれば良いことでしょう。日本の安全保障に直結しますので。ただ、傲慢な中国が「自国の孤立化」を恐れるかは分かりません。行きつくところまで行くかも。中共が人民解放軍をコントロールできるかどうか。

記事

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都内の講道館を訪れ、笑顔で言葉を交わすロシアのウラジーミル・プーチン大統領(右)と安倍晋三首相(2016年12月16日撮影)〔AFPBB News

プロローグ/「あなたはロシアの国益を犯している」

端正な顔立ちのロシア紳士は何の前触れもなく突然、事務所にやって来た。そして、筆者の目の前に座ると筆者に冷たく言った。

「あなたはロシアの国益を犯している」

青雲の志を抱いてサハリンに赴任し、日露経済関係発展のために粉骨砕身努力しようと奮い立っていた矢先の出来事であった。

その時筆者は、レフォルトボ*1に収監される哀れな筆者の姿を想像した。突然やって来たその人の名刺には、「ロシア連邦保安庁(FSB)サハリン支局 法務中佐」と記されていた。

「日本の正義」 vs.「ロシアの正義」

その日、1つの神話が崩壊した。「北方領土は日本固有の領土」という名の神話が。

ロシアのV.プーチン大統領は2016年12月15日、11年ぶりに訪日した。2016年に入り、4回目の日露首脳会談である。しかし領土問題交渉は何も進展せず、日本側には「経済協力食い逃げ論」が出ているが、この認識は間違いである。

プーチン大統領は事前に「あらかじめ期限を設けた領土交渉は有害」と明言しており、領土交渉が進展しないことは事前に判明していた。

また、民間企業のビジネス構築はあくまでも経済合理性に基づくものであり、民間企業は利益の見込めない事業には着手しない。すなわち、「経済協力食い逃げ」はあり得ず、領土交渉が進展するとの安倍晋三首相の期待は独り相撲であった。

しかし、だからと言って、今回の日露首脳会談が無駄であったわけではない。首脳会談を通じ、北方領土を巡る双方の認識の相違が浮き彫りになった点は1つの成果である。

安倍首相は12月16日に開催された日露首脳共同記者会見の席上、この認識の相違を「日本には日本の正義があり、ロシアにはロシアの正義がある」と表現した。

換言すれば、日本の正義はロシアの正義ではないということになる。

では、ロシアの正義とは何か。それは戦勝国(連合国)の正義である。ソ連軍によるクリル諸島占領は第2次大戦の結果であり、これが戦勝国の論理・正義となる。日本側にとっては屈辱の論理・正義だが、米国もソ連のクリル諸島に対する主権を認めていた。

記者会見の実況中継を見ていた筆者は、安倍首相のこの発言こそ、パンドラの箱が開き、日本の神話が崩壊する瞬間であったと受け止めた。神話が崩壊した今こそ、今後の日露関係を構築するうえでの新たなる歴史の1ページが始まるのであろう。否、始めなければならない。

日露首脳会談総括(2016年12月15~16日)

最初に、今回の日露首脳会談を総括したい。領土問題に関しては何の進展もなく、この意味では安倍政権の政治的敗北と言えるが、筆者は下記の点で大きな成果があったと考える。

◆「北方領土=日本固有の領土論」神話の崩壊は新局面への第一歩。 ◆ 日ソ共同宣言に基づき、平和条約締結後、露側が2島を引き渡す確認が取れたこと。

今回の日露首脳会談において、短期的には、元4島住民のビザなし自由往来を検討することで合意した。択捉島や国後島にはロシアの軍事基地があるので自由に島内を歩けるわけではないだろうが、一歩前進と言えよう。早速、事務方では検討作業が始まったと言われている。

戦後日本では「北方領土は日本固有の領土」が国是となり、「北方4島即時一括返還」を錦の御旗にして、戦略としての対露関係構築の方向性を検討してこなかった。

しかし今回、日露安全保障問題や4島における共同経済活動の枠組み検討など、日露共同でやるべき指針・方向性が戦後初めて出てきたと言えるだろう。

一方、欧州連合(EU)は12月15日、日露首脳会談の最中に対露経済制裁を半年間延長することを発表。米財務省は12月20日、米国の対露経済制裁措置の強化を決定した。日本政府も12月25日、対露経済制裁措置を当面延長する方針を固めた。

これを歴史の皮肉と言わずして、何と言えようか。

日露首脳共同記者会見(20161216日)

東京で開催された上記共同記者会見の席上、幹事会社の記者が北方領土問題に関して質問した。

この質問に対するプーチン大統領の返答が圧巻であった。同時通訳が同時通訳にならず、安倍首相も質問した記者もプーチン大統領が何を言いたいのか、内容をよく理解できなかったのではないかと推測する。

プーチン大統領は記者の質問に答える形で、日露間の領土問題を巡る過去160年間の歴史に言及した。日露和親条約・樺太千島交換条約・日ソ共同宣言・ダレスの恫喝*2・・・である。

実によく勉強している。これでは、安倍首相はもちろん日本側の誰も太刀打ちできないだろう。

*1=モスクワにあるFSBの前身旧KGB(国家保安委員会)の刑務所。

*2=「ダレスの恫喝」とは、日ソ交渉が難航している最中の1956年8月、米J.F. ダレス国務長官は重光葵外務大臣と会談して、「日本が2島(歯舞・色丹)返還で決着させるなら、沖縄は永久に返還しない」と脅したことを指す。

安倍首相がロシアをよく知らないことは、上記の日露共同記者会見席上の発言でも明白である。安倍首相はプーチン大統領に対し、「ウラジーミル、君は」と呼びかけた(同じ呼びかけは12月15日の山口県長門市での首脳会談でもあり、またそれ以前にもあった)。

ここには間違いが2つある。ロシア語には“ウラジーミル”という呼びかけはそもそも存在しない。安倍首相は親しみを込めて言っているつもりなのであろうが、プーチン大統領は内心ギョッとしているはずだ。

ウラジーミルの愛称はバロージャであり、“バロージャ・シンゾー”が“ロン・ヤス”に相当する。

余談だがプーチン大統領は安倍首相をどのように呼んだのかと言えば、“Mr.Abe”である。この2人の呼びかけの相違が2人の関係を如実に反映していると言えよう。

2つ目は、公の場で一国の大統領に向かって「君は」はない。親しい仲間内だけの私的な宴席なら「君は」でよいが、公式の場では「プーチン大統領」と呼びかけるべき局面である。

安倍首相は自らの無知を天下に公言しているようなものだと、友人のロシア人が言っていた。安倍官邸には、ロシアを理解している人材がいないのだろう。

北方領土問題/日露交渉クロニクル

プーチン大統領訪日の前後、日系各紙では過去の日露間領土交渉が大きく報じられていたので、領土問題とは何かを考える良い機会が与えられたと言える。しかし、正直申し上げて、領土交渉に関する本質論は少なく、議論が混乱しているように思える。

では、なぜ議論は混乱しているのか?

結論から先に言えば、混乱の原因は、日露間の条約原文(正文)は「クリル諸島 (the Kurile islands) 」と書いてあるのに、日本側翻訳は「千島列島」になっている点である。

もし「クリル諸島」と「千島列島」が同じ地理的概念であれば問題は生じないが、定義の齟齬があれば、原文(正文)が優先されることは論をまたない。

本稿ではまず論点を整理すべく、領土問題を巡る過去160年間の日露交渉の歴史を概観する。

原文(正文)がクリル諸島の場合、この言葉を採用して、いくつかの事例において原文と翻訳を比較することにより頭の体操をしてみたい。

1855年2月  日魯通好条約(日露和親条約/安政条約/正文オランダ語)

千島列島に於ける日露間の国境線が二国間条約にて平和裏に画定。  北方4島は日本、得撫島以北は帝政ロシアに帰属。樺太は二重主権。

和文正文と露文正文も作成されたが、双方は相手の言葉を理解できず、二重通訳の問題が存在した。→ 和文と露文に相違がある場合、蘭語正文に依拠することになる。

1875年5月  樺太・千島交換条約(正文仏語)→「樺太・クリル群島交換条約」

樺太はロシア、クリル群島(18島)は日本に帰属決定。

和文と露文は単なる翻訳に過ぎず、条約正文は仏語のみ。ゆえに、和文と露文に齟齬が生じた場合、正文仏語に依拠することになる。

1905年9月  ポーツマス条約

日露戦争の結果、北緯50度以南の南樺太は日本に割譲。

1945年8月  太平洋戦争終結。 1945年9月  戦艦ミズーリ艦上にて、降伏文書調印。同日、連合国一般司令第1号発布(参考 ⑤)。

1946年1月 連合軍最高司令部訓令(SCAPIN)第677号発布(参考 ⑥)。 1951年9月 サンフランシスコ講和条約 締結。同日、日米安保条約調印。

日本はクリル諸島・樺太における主権を放棄(正文英語/和文翻訳)。(日本側認識:北方領土は日本固有の領土で、千島列島に含まれず)

1951年10月 外務省西村条約局長の国会答弁:

「サンフランシスコ条約にある千島列島の範囲については、北千島と南千島の両者を含むと考えます。なお、歯舞と色丹島が千島に含まれないことは米外務当局も明言されました」

1956年10月  日蘇共同宣言(ブルガーニン/鳩山)

ソ連側は、平和条約締結後、2島(色丹・歯舞)引き渡しを約束。  両国議会が批准しており、法的拘束力を有する。

1993年10月 東京宣言 (エリツィン/細川)。

平和条約早期締結交渉継続で合意。

1997年11月 クラスノヤルスク会談(エリツィン/橋本)。

2000年までに平和条約締結を目指すことで日露合意。

1981年2月 日本政府、「北方領土の日」(2月7日)制定。 1998年4月   川奈会談(エリツィン/橋本)。 日本側、国境線画定案を提示。 1998年11月 モスクワ会談(エリツィン/小渕)。 露側、中間的平和友好協力条約締結案。

2000年9月3日  プーチン大統領訪日。

森首相と会談の際、プーチン大統領は口頭にて日ソ共同宣言を確認すると発言。露側は川奈提案を拒否。

2001年3月 イルクーツク会談(プーチン/森)。

文書にて日蘇共同宣言を確認する声明を採択。

2016年12月 プーチン大統領/安倍首相の公式首脳会談(日本)

ロシアにとっての択捉島・国後島の重要性

ロシア連邦保安庁サハリン支局の法務中佐より「あなたはロシアの国益を犯している」と恫喝された筆者は、直ちに共同作業をしているロシア側の石油会社に駆け込み、助けを求めた。

その時、我々のコンソーシアムはオホーツク海の広大なる海洋鉱区において、海洋鉱区の地形を調査するため、調査船が海底にソナーを打ち込む作業をしていた。

パートナーの石油会社の社長は「心配するな。我々が処理する」と確約してくれたが、理由を訊いても説明はなく、ただニヤニヤしていた。

部屋のドアで別れ際に再度質問した。「なぜ連邦保安庁が私のところに来たのか?」。

その時、そっと返ってきた返事が「あれをやるとメタルが映る」。

どういう意味なのか。メタルと言ってもまだ海底パイプラインも建設していないので、メタルが映るはずはないのだが・・・。その時、突如閃いた。そうだ、潜水艦だ!

ロシア語の「あなた(ブィ)」は単数形と複数形が同形なので、法務中佐殿の「あなた」は、実は「あなた方」という意味だったのだろう。すなわち、ロシア側パートナーにとっては先刻承知の話であり、哀れな日本人が恫喝されて駆け込んでくることも、すべてお見通しだったのかもしれない。

12月16日の日露共同記者会見の席上、プーチン大統領は日本人記者の質問に答える形で択捉・国後は露の軍事的観点より必要という意味の返答をしている。また日本の軍事専門家も、択捉~国後間の国後海峡からロシアの軍艦や潜水艦が通過していると発言している。

確かにその通りだが、これは1枚のコインの表側の現象にすぎない。

では、裏側の露の本当の意図は何かと言えば、それは「オホーツク海の内海化」であり、米の攻撃型原潜がオホーツク海に侵入するのを阻止することである。

「オホーツク海の内海化」はスターリンの戦略であり、1945年8月18日に千島列島最北端に位置する占守(シュムシュ)島に侵攻したのも、スターリンが終戦直後トルーマンに北海道の北半分を要求したのも、「オホーツク海の内海化」戦略の一環にほかならない。

千島列島の弧を形成する最南端の島は択捉島と国後島になる。択捉・国後間の国後海峡は広く深く、水深が約480メートルあり、潜水艦が最大潜航深度で航行できる。太平洋戦争中の潜水艦の最大潜航深度は約100メートルであり、これ以上深く潜航すると圧壊した。

現在の潜水艦の最大潜航深度は約400メートルと言われているが、チタン製の露原潜は約600メートルまで潜航可能とも言われている。

このような深度になると海流や海温の関係で海上からのソナー探知による潜水艦発見は困難になるので、海底に潜水艦探知装置を設置して、音紋(スクリュー音)を採取する。

『レッド・オクトーバーを追え』でも潜水艦の音紋の話が出てくるが、1980年代中葉の旧ソ連邦の時代、ソ連海軍の潜水艦の音紋が一時期採取困難になり、西側軍事筋で話題になったこともあったという。

潜水艦は音紋を採取されると正体がバレ、価値が半減する。択捉・国後間の国後海峡にも、この潜水艦探知装置(ソーサス・ライン)が設置されていると想定するのが合理的判断だろう。

択捉島と国後島間は水深が深く、オホーツク海に遊弋するロシア海軍のミサイル搭載原潜がチョークポイントなしに通過できる海峡であり、ここを越えると太平洋に進出できる。

オホーツク海の内海化を国是とする軍事戦略の観点より、ロシアには択捉・国後両島は必要であり、そのような戦略的重要拠点をロシアが日本に引き渡すはずはないだろう。

これが冷徹な国際政治の現実であり、筆者が択捉・国後は永久に日本に還ってこないと主張してきたゆえんである。これが北方領土を巡る真実である。

「北方領土は日本固有の領土」とお題目を百万遍唱えても、日本に還ってくることはない。

日露経済協力案件

次に、日露経済協力案件を総括したい。

プーチン大統領訪日時、日露経済協力案件では計80(政府関連12事業+民間企業68事業)、総額約3000億円の経済協力案件が調印された。

しかし、いくつかの合意案件を除きほぼすべての案件が法的拘束力のないMoU(Memorandum of Understanding=了解覚書)であり、民間企業は今後、その事業が経済合理性を有するのかどうか精査することになる。

民間TVでは、識者と言われている人たちが「経済協力だけが先食いされる」類の発言を繰り返していたが、これは上述通り間違い。

経済協力と経済支援は似て非なるもの。経済支援は税金投入であるが、民間会社が推進する新規事業案件はあくまで、経済合理性に基づくビジネス関係の発展・拡大を意味する。

民間企業は経済合理性のない案件は着手しない。ゆえに、民間企業においては「経済協力だけが先食いされる」ことはあり得ない。総額3000億円はMoUの総額だが、仮に30億円でも300億円でも実態のある商業契約調印に結実すれば、それは今回の日露首脳会談の成果と言えよう。

サハリンから送電網を整備して日本向けに電力を輸出する構想「エネルゴ・モスト」や、サハリン島と北海道を橋梁やトンネルで接続する構想(妄想)が今回の民間68事業に入らなかったのは、当然と言えばあまりに当然の結果と言わざるを得ない。

また、最近では日露パイプライン議員連盟によるサハリンから日本縦断陸上天然ガスパイプライン建設構想が再度マスコミに登場するようになったが、この構想には致命的欠陥がある。

幹線パイプライン建設構想が成立する3要件は以下の通りである。

(1)供給源が存在すること。 (2)需要家が存在すること。 (3)パイプライン建設費が回収できること。

この1つでも欠ければ本来ならばパイプライン建設は不可能であるが、公共事業として税金を投入すれば物理的には建設可能である。筆者は、この種のパイプラインを「political pipeline=公設パイプライン」と呼んでいる。ちなみに、3要件を満たすパイプラインは通常の「commercial pipeline=商業用パイプライン」である。

この構想がなぜ致命的欠陥を有するのかと言えば、天然ガス供給源も最終需要家も不明であり、パイプライン建設費が回収可能かどうかの事業化調査も実施されていないからである。

すなわち、パイプライン建設が先行する構想であり、実態は利権追求型構想である。

新聞報道などによれば、日本縦断陸上パイプラインの建設費は約7000億円という。土地代の高い日本でこの建設費ですむはずがない。これもオリンピック同様、豆腐一丁・二丁の世界になるだろう。

ここで誤解を避けるためあえて追記するが、筆者はサハリンから日本向け天然ガスパイプライン建設構想自体に反対しているわけではない。供給源が存在し、需要家が存在し、パイプライン建設費が回収できるのであらば、すなわち経済合理性あらば、推進すればよいと考える。

ただしこの場合、日本縦断陸上パイプラインではなく、大陸棚沿岸に敷設する海底パイプライン建設構想の方が経済性ははるかに有利になるだろう。

クリル諸島」の範囲/「千島列島」の範囲

日本の外務省の公式見解では、「北方領土」とは、広義には『全千島列島と南樺太』となり、狭義には『歯舞群島、色丹、国後、択捉』となる。現在、北方領土を巡る交渉がかくも錯綜しているのは、上述のごとく、クリル諸島と千島列島の地理的概念に関し、日露間に解釈の相違が存在するからである。

1855年の江戸幕府と帝政ロシアが交渉して合意した文書は、あくまで蘭語正文である。日本語正文と露語正文は翻訳にすぎず、日本側は露語を、ロシア側は日本語を解せず、二重通訳の問題が存在した点も指摘した。

一方、樺太・千島交換条約の正文は仏文のみ。和文と露文は文字通り翻訳にすぎない点、日魯通好条約と少し事情が異なる。ゆえに、日本側と露側で解釈の相違がある場合、仏語正文のみに立脚しなければならない。

では、仏語正文を検証したい。まず、この仏文正文の条約名称を記す。

TRAITE D’ECHANGE DE L’iLe DE SAKHALINE CONTRE LE GROUPE DES ILES KOURILES

魯暦1875年4月25日、西暦5月7日、サンクト・ペテルブルクにおいて調印(仏文)

(仏語からの和訳) サハリン島(*樺太)とクリル諸島のグループ(*クリル群島)との交換条約 (日本語条約名称)樺太・千島交換条約

上記を比較すると、小さな、しかし本質的な相違に気づかれることだろう。

仏語正文の「クリル諸島のグループ」 (LE GROUPE DES ILES KOURILES)を和文(翻訳)の名称では「千島」と訳している。

すなわち、和文(翻訳)に拠れば樺太島と千島列島を交換したことになるが、これは不正確な翻訳であり、正しくは樺太とクリル群島を交換した。

ところが、同じ“LE GROUPE DES ILES KOURILES”を日本語条約本文(翻訳)の中では、「クリル群島」と仏語を正確に和訳している。

では、「クリル群島」とはどこを指すのか。仏語正文第2条に定義されている。

「全魯皇帝陛下は第一款に記せる樺太島の権理を受し代として其後胤に至る迄現今所有クリル群島(即ち、第1シュムシュ島、・・・第18ウルップ島)計18島の権理及び君主に属する一切の権理を大日本国皇帝陛下に譲り、而今而後クリル全島は日本帝国に属し、カムチャトカ地方ロパトカ岬とシュムシュ島の間なる海峡を以って両国の境界とす」(出典:外務省条約局『旧條約彙纂』第一巻)

すなわち、仏語正文によれば、クリル群島とは日魯通好条約により露側領土となった18島(占守島~得撫島)を指し、この18島(クリル群島)はクリル諸島の一部(1グループ)となり、この18島(クリル群島)と樺太島を交換することにより、クリル全島が日本の領土になる。

仏語正文には、これ以上のこともこれ以下のことも書かれていない。

列強による19世紀のクリル諸島・千島列島の認識

繰り返しとなるが、重要な点なので再度言及したい。現在の北方領土を巡る交渉がかくも錯綜しているのは、ロシア側のクリル諸島と日本側の千島列島の法的・地理的概念に関し、日露間に解釈の相違が存在するからである。

そこで、当時の世界列強および日本が「クリル諸島 vs. 千島列島」をどのように認識していたのか考察したい。

参考① ロシア皇帝ニコライ一世がプチャーチン提督に宛てた書簡

最初に、ロシア皇帝ニコライ一世がプチャーチン提督(露側交渉団長)に宛てた訓令をご披露したい。引用する書簡は、日露の外務省が北方領土問題を巡る問題点を整理するために協議・編纂した資料集であり、正式名称は『日露間領土問題の歴史に関する日本国外務省とロシア連邦外務省の共同作成資料集』(1992年9月作成)と題する。

『ニコライ一世のプチャーチン提督宛訓令』(1853年)(抜粋) 1853年2月24日 皇帝陛下署名   1853年2月27日 第730号

『長崎表及び御老中宛て書簡(蘭語訳付)は本書別添の行嚢にて送付するが、これらの内より重要な御老中宛ての書簡の内容につき、外務省として以下の通り説明しておくべきと考える。この書簡においては、我々との通商関係開設に関する日本側への提案、及び追って指定する我々の商船(必要あれば軍艦も)に対する日本の港湾への寄港許可に関する提案の他、露日間の国境画定の要求も提示してある。国境問題に直ちに取り掛かるとの考えは、根拠のあるものと思われる。何故なら、このことを通じ、我々はいわば日本人が我々と交渉に入ることを余儀なくさせ得るからである(中略)』

この国境問題に関する我々の要望は、可能な限り寛大なものであるべきである。何故なら、通商上の利益というもう一つの目的の達成こそが、我々にとり真の重要性を持つからである。クリル諸島の内、ロシアに属する最南端はウルップ島であり、同島をロシア領の南方における終点と述べて構わない。これにより、我が方は同島の南端が日本との国境となり、日本側は択捉島の北端が国境となる。日本政府が予想に反してウルップ島に対し自らの権利を主張する場合には、先方に対し、この島が我々のあらゆる地図中でロシア領と記載されていること、(中略)。一般にこの島(ウルップ島)はクリル諸島における我々の領土の境とみなされている旨を説明し得よう』(註:下線・ゴシック体・強調部分は筆者の判断による)

上記書簡より、ロシア側の主張するクリル諸島がいわゆる北方領土を含むクリル列島であることは明白である。皇帝陛下は交渉団長を務めるプチャーチン提督に対し、クリル全島のうち、交渉により平和裏にウルップ島と択捉島の間を日露の国境として画定すべく指示を出している。

この指示は簡潔・明瞭であり、間違えようもない。ゆえに、プチャーチン提督はこの皇帝陛下の指示に忠実に従い、江戸幕府代表川路聖謨交渉団長と蘭語通訳を介し、辛抱強く、真摯な態度で日露国境線画定交渉を続けたと理解するのが理に適っている。

参考② 米国の記録

米国はペリー准将をして日本に開国を迫らせる一方、第2分遣艦隊を組織。1853年から1856年までオホーツク海を探検させている。この分遣隊に測量技師として乗船したドイツ人ヴィルヘルム・ハイネはその著『中国、日本、及びオホーツクの海洋探検』(1859年)に、「探検隊の艦船航路を示す北大洋の地図」を記載している。

その地図には、北海道はYeso(エゾ)、Kunashir Insel(国後)からSchumschu Insel(占守)までは“Kurilen-Reihe”(クリル列島)と明記されている(この場合、20島)。

これが当時の列強の認識である。なお、この地図を観るにつけ、今日のカムチャトカ半島・サハリン島・日本列島が正確に測量されていることに驚きを禁じ得ない。

参考③ 明治政府の千島列島の認識

では、一番肝心な日本は、当時の千島列島の範囲をどのように認識していたのか。

幕末・明治維新の碩学、本条約に於ける対露交渉の日本側代表海軍中将榎本武揚特命全権公使は『千島疆界行』(1875年)にて、「今、千島とは根室よりカムチャトカに連なる二十有余島の惣名」と明記している。すなわち、明治維新の日本側認識は当時の世界列強の認識と一致している。

上記より、「樺太千島交換条約」にあるクリル群島(18島)がクリル諸島の一部であり、当時の明治政府も政府の高級官僚も、「クリル諸島=千島列島(北方領土を含む千島全島)」と認識していたことが判明する。

ゆえに、現在の日本政府が主張する「北方4島は千島列島には含まれず」との論理が成立しないことは明白である。付言すれば、「北方領土」という言葉自体、戦後の造語である。

参考④ ヤルタ会談、1945年2月

ここで一言、ヤルタ会談に言及したい。米ルーズベルト・英チャーチル・蘇スターリンは1945年2月、クリミア半島のヤルタに集まり、戦後の世界分割を討議。独降伏3か月後にソ連が対日参戦する密約を結び、このヤルタ会談は日独終戦交渉に決定的な影響を与えた。

ゆえに、5月9日の独降伏を受け、ソ連は8月9日に対日参戦した。ちなみに、同年2月11日に署名された同協定の日本に関連する部分のみ、下記訳出する。

三大国、ソ連、米合衆国、英国の指導者達は独逸の降伏及び欧州に於ける終戦の2~3か月以内に、下記条件のもと、ソ連が連合国側に立ち、対日戦争に入ることに同意した。

1.外蒙(モンゴル人民共和国)の現状維持。 2.1904年、日本による背信的攻撃で犯された露所属の諸権利の回復、すなわち、

(a)樺太島南部及びその近くの凡ての島々をソ連邦に返還すること (b)(c)略

3.ソ連邦に対し、クリル諸島を譲与(Передача)すること(後略)。

3大国政府首脳は、ソ連邦のこれら諸要求が日本に対する勝利の後、無条件に満たされるべきことに同意した(後略)。

これが、国際政治における戦勝国(連合国)の論理(正義)となる。

考察⑤ 1945年9月2日付け連合国一般司令第1号

東京湾の米戦艦ミズーリ号甲板にて1945年9月2日、日本は連合軍に対する降伏文書に調印。その日、連合国司令部(GHQ)は一般司令第1号を発布。ここでは北方領土関連部分のみ抜粋する。(出所はこちら

1(b) The senior Japanese Commanders and all ground, sea, air and auxiliary forces within Manchuria, Korea North of 38 degrees North latitude, Karafuto, and the Kurile Islands, shall surrender to the Commander-in-Chief of Soviet Forces in the Far East.

1(ロ)満洲、北緯三十八度以北ノ朝鮮、樺太及千島諸島ニ在ル日本国ノ先任指揮官並ニ一切ノ陸上、海上、航空及 補助部隊ハ「ソヴィエト」極東軍最高司令官ニ降伏スベ シ(筆者註:日本語訳は千島列島だが、英文原文は the Kurile Islands=クリル諸島)

考察⑥ 1946年1月29日付け連合軍最高司令部訓令(SCAPIN)第677号

次に、1946年1月29日に発布された連合軍最高司令部訓令(SCAPIN)第677号には、以下のとおり記載されている(出所はこちら)。

1.日本国外の総ての地域に対し、又その地域にある政府役人、雇傭員その他総ての者に対して、政治上又は行政上の権力を行使すること、及、行使しようと企てることは総て停止するよう日本帝国政府に指令する。 2.(略) 3.この指令の目的から日本と言ふ場合は次の定義による。

日本の範囲に含まれる地域として

日本の四主要島嶼(北海道、本州、四国、九州)と、対馬諸島、北緯30度以北の琉球(南西)諸島(口之島を除く)を含む約1千の隣接小島嶼

日本の範囲から除かれる地域として

(a)欝陵島、竹島、済州島。 (b)北緯30度以南の琉球(南西)列島(口之島を含む)、伊豆、南方、小笠原、硫黄群島、及び大東群島、沖ノ鳥島、南鳥島、中ノ鳥島を含むその他の外廓太平洋全諸島。 (c)千島列島、歯舞群島(水晶、勇留、秋勇留、志発、多楽島を含む)、色丹島。

(中略)

6.この指令中の条項は何れも、ポツダム宣言の第8条にある小島嶼の最終的決定に関する連合国側の政策を示すものと解釈してはならない。

(後略)

正直申し上げて、筆者がこのSCAPIN677号を知ったのはつい最近のことである。筆者の尊敬するロシア専門家よりご教示戴いた次第。

第3項で日本の主権が及ばない地域が規定されているが、ウィキペディアによれば、最終領土画定は講和条約次第となる。

「SCAPIN-677が発令された半月後の1946年(昭和21年)2月13日に行われた日本との会談において、GHQはSCAPINが領土に関する決定ではないこと及び領土の決定は講和会議にてなされると回答している」(ウィキペディア)

この連合軍最高司令部訓令677号は暫定的指令であり、領土の最終画定は講和条約によると明記されている。その講和条約が1951年のサンフランシスコ講和条約となるが、この講和条約は翌年1952年発効したので、講和条約発効とともにこのSCAPINは消滅した

上記より、連合国(戦勝国)はクリル諸島=千島列島と理解しており、そのクリル諸島とは択捉・国後を含む20島と理解していたことが分かる。サンフランシスコ講和条約で日本が放棄したのはクリル諸島ゆえ、日本は名実ともに択捉・国後を放棄したことになる。

なおここでは、日本は「誰に対してクリル諸島を放棄したのか?」という問題が残る。当然、講和条約締結国に対して放棄したことになるが、ソ連邦はこの講和条約に署名していない点を付記しておく。

エピローグ/「あなたは国賊だ」

筆者はサハリン駐在時代から首尾一貫して、「北方領土=日本固有領土論には法的・歴史的根拠がない。択捉・国後は永久に日本に引き渡されることはない」と、孤高の論陣を張ってきた。

そのため、サハリンでは同胞から「あなたは国賊だ」と言われた。

FSBからは「あなたはロシアの国益を犯している」と恫喝され、同胞からは「あなたは国賊だ」と罵倒される辛いサハリン駐在であった。この話は今まで封印してきたが、12月16日にパンドラの箱が開いたので、あえてご披露した次第。

今回この文章を発表することにより「あなたは国賊だ」とまた言われることも覚悟しているが、神話が崩壊した今こそ、ドグマチズム(教条主義)を排し、感情抜きの実のある議論が進むことを心より願っている。

繰り返す。プーチン大統領は日ソ共同宣言を熟知しており、平和条約締結後、2島(歯舞・色丹)を引き渡す心構えはできているだろう。あえて1つの条件を付けるとすれば(実際に付けているが)、それは2島に米軍を駐留させないとの日本政府側からの言質となる。

日米安保条約によれば、日米双方が同意した場合、米軍駐留が認められる。

換言すれば、日本側が反対すれば、米軍の駐留は認められないことになる。歯舞・色丹が日本側に引き渡される場合、日本側は米軍を駐留させない対価として、自衛隊の駐屯を認めさせる選択肢が1つの交渉材料になるだろう。

米トランプ大統領誕生により、露米関係は好転するものと予測する。

露米関係好転により露は対日関係改善には関心を失うとの識者の見方もあるが、筆者はこのような説には与しない。事実は逆である。露米関係好転にともに、日露関係も好転すると考える。

露米関係・日露関係好転は、日中関係にも影響を及ぼすことになる。中国は露米・日露関係が改善すれば、自国の孤立化を恐れ、多少なりとも対日姿勢を修正する可能性もあると予測する。

換言すれば、露米・露日関係が悪化すれば、中国は今後さらなる対日強硬姿勢が可能となる。

この意味でも、今回のプーチン大統領訪日はまさに「奇貨、居くべし」と言えるだろう。

(参考文献:『クリル諸島の文献学的研究』(村山七郎著/三一書房/1987年8月発刊)

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『安倍首相が真珠湾で謝罪する必要がない理由 日米の絆を認め未来を向いている米国の元軍人たち』、『米中は対決の時代へ、日本には何が起きるのか 鮮明に中国との対決姿勢を見せるトランプ新政権』(12/27・28JBプレス 古森 義久)について

中国・台湾関係の記事を紹介します。

12/28ZAKZAK<中国との関係変化望まぬ台湾 米中「一つの中国」騒ぎのウラで盛り上がらず

今回が今年を締めくくる原稿である。その視点から中国を見たとき、やはり今年から来年にかけて大きなテーマとなる話題で締めくくりたいと思う。それは何か。  ずばり、ドナルド・トランプ大統領の誕生と米中関係である。  もちろん来年の中国は5年に一度の大きな人事の1年を迎えるが、このインパクトはそれに勝るとも劣らない衝撃となるはずだ。  先週の記事でも触れたように、トランプ氏は台湾の蔡英文総統との電話会談に続き、FOXテレビとのインタビューで、必ずしも「一つの中国」を重視しないといった発言をして米中の外交関係者を慌てさせた。  この原則に簡単に踏み込むトランプ氏の“外交素人ぶり”についてはすでに述べたが、一連の騒ぎの中で、メディアがなぜか見落としている一つの反応について、少し触れておかなければならない。  それは肝心の台湾がそれほど盛り上がっていないことである。  私はいま、台湾こそ驚いているのではないかと思う。まるで準備もしていない舞台にいきなり立たされたような戸惑いが彼らの反応の随所に感じられるからだ。  そもそも、トランプ氏が台湾の現状への同情心や台湾海峡問題に深くかかわってきたことを背景に中国にプレッシャーをかけているわけではない。単に取引材料として持ち出したことが明らかだけに、台湾の反応が複雑になるのも当然だ。  ここ数年、台湾で「大陸との関係」を問えば、「現状維持」という答えが圧倒的(たいてい80%を超える)であった。

現状維持とはもちろん大陸との統一は嫌だが、一方で独立へと突っ走って中国を刺激することもしたくないという考え方だ。  つまり台湾の人々は、急激な変化など望んでいない。  ここで思い出されるのが、「96年の経験」、いわゆる台湾海峡危機だ。  台湾初の直接投票による総統選挙が行われたこの年、最有力候補とされた李登輝氏が台湾独立派とみられていたことから中国が警戒し、ミサイル演習と称して台湾海峡にミサイルを撃ち込んだことで、一帯の緊張感が一気に高まった。  台湾市場の株価とニュー台湾ドル、そして地価が凄まじい勢いで暴落してゆき、多くの人々が海外移住のための準備を始めた。その過程では中所得者がパラオへの移住を目指し、二束三文の土地を売りつけられて苦労するといった様子を、私は現地でながめることとなった。  台湾を通して“国”が崩れてゆくとはこういうことかと実感したのを思い出す。  結局、この事態を憂慮した米国が台湾海峡に空母を2隻派遣し、事態を鎮静化させたのだが、台湾海峡が間違いなくアジアの火薬庫であることを実感させられた。  ■富坂聰(とみさか・さとし) 拓殖大学海外事情研究所教授。1964年生まれ。北京大学中文系に留学したのち、週刊誌記者などを経てジャーナリストとして活動。中国の政・官・財界に豊富な人脈を持つ。『中国人民解放軍の内幕』(文春新書)など著書多数。近著に『中国は腹の底で日本をどう思っているのか』(PHP新書)。>(以上)

富坂氏の論調は相変わらず中国寄りでは。日本人に誤解を与えます。台湾人の現状維持は平和を望むだけで、中国に時間の利益を与えることではありません。変えるべきところは変えて行かないと。トランプ大統領になって、日米で台湾の変化を支援していくべきです。96年の台湾危機に逃げ出そうとしたのは、中国からの亡命政権である蒋介石が連れて来た外省人ではないでしょうか。本省人は台湾で生まれ育ったので逃げ出すわけにはいかないでしょう。中国人・韓国人だったら我先に逃げるでしょうが。「日本死ね」で問題になった俵万智も東日本大震災の時に沖縄へ逃げ出しました。メンタリテイは中国人と一緒でしょう。だから「日本死ね」を擁護できるのです。

下は富坂氏の言っていることとは逆の動きです。中国が嫌がっていることを日台連携してやっていくという事です。台湾の正名運動に繋がります。来年のWBC(ワールドベースボールクラシック)や2020年東京オリンピックでは、日本政府は台湾を「中華台北」ではなく、「台湾」で参加させてほしいと思っています。

12/29日経<対台湾窓口機関が名称変更 「日本台湾交流協会」に 

【台北=伊原健作】日本の対台湾窓口機関である公益財団法人「交流協会」は28日、2017年1月1日から名称を「日本台湾交流協会」に変更すると発表した。1972年の日中国交正常化を受け、日台は断交。同協会が実務関係の維持を担ってきた。名称が曖昧で認知度が高まらないなどの問題が指摘されていた。台湾側も長く改称を求めていた。同協会は「日台関係がさらに発展するよう一層努力する」としている。>(以上)

12/29日経<中国「強烈な不満」 日台交流協会の名称変更 

【北京=永井央紀】中国外務省の華春瑩副報道局長は28日の記者会見で、日本の対台湾窓口機関が「日本台湾交流協会」に名称変更することに「強烈な不満」を表明した。華氏は「『二つの中国』のたくらみに断固反対する。台湾と国際社会に誤ったメッセージを送り、中日関係に新たな障害をつくってはいけない」と強調した。>(以上)

12/28大礒正美氏のメルマガでは「弁護士政権から史上初のMBA政権へ」とトランプ政権を位置づけています。確かに「今までのアメリカとは違うぞ」と期待させてくれます。

http://www.geocities.jp/oiso_zemi/column/latest213.html

米国の民主党政権は、中国に寄り過ぎて、日台を犠牲にして来ました。今後は中国の軍事膨張主義を抑えるために、中国包囲網を形成していかなければなりません。今度の安倍首相の真珠湾訪問で日米の絆は一層深まったと言えます。オバマを全否定したいトランプがどう思っているかは分かりませんが。中国の国際社会での傍若無人ぶりを抑え、中韓の歴史戦にも勝利するためにトランプの登場は喜ぶべきと思います。

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旧日本軍による米ハワイの真珠湾攻撃で犠牲となった人々を追悼し、米首都ワシントンの国会議事堂に半旗で掲げられた米国旗(2016年12月7日撮影)。(c)AFP/NICHOLAS KAMM〔AFPBB News

安倍晋三首相が12月27日にハワイの真珠湾を訪れ、75年前に旧日本軍が行った奇襲攻撃で犠牲になった米国軍人たちの霊を悼む。

「安倍首相は真珠湾で日本軍の攻撃について謝罪や釈明をすべきだ」という主張も一部から聞かれる。だが、米国側の日米戦争への認識を長年考察してきた立場からすると、そんな必要はもうまったくないように思える。米国側の怨讐にはとっくに終止符が打たれ、日米両国の今後の友好を重視する姿勢が明白だからだ。

日本軍と激しく戦ったブッシュ氏の言葉

1991年12月7日の真珠湾50周年の式典でも、そんな米側の日米戦争への認識と態度を確認することができた。

1991年は米国にとって、真珠湾で日本軍の奇襲攻撃を受け、日本との開戦、第2次世界大戦への参戦へと突き進むことになった歴史の転換点から半世紀という年だった。

式典は、日本軍が沈めた戦艦アリゾナの残骸の上に建てられたアリゾナ記念館で催された。私はこの式典を取材するためワシントンからホノルルへと飛んだ。

その時点では、日本軍の攻撃を受けたときに真珠湾の米軍基地で軍務に就いていた将兵たちの約1万2000人が健在だとされていた。その元将兵たちは「パールハーバー生存者連盟」という組織をつくっていた。そのうちの約6000人がこの式典に参加することになっていた。その人たちの間では「多くの戦友が日本軍のスニークアタック(だまし撃ち)に不意をつかれ殺された」という非難の声が出ていた。

そのため私は、ワシントンからホノルルまでの長い飛行機の旅で、その元米軍人たちと乗り合わせ、日本人だという理由で難癖をつけられたり非難されたりするのではないかという懸念を少なからず抱いていた。

だが、実際には私が元米軍人たちから非難されるようなことはまったくなかった。

真珠湾の式典でも、当時のジョージ・ブッシュ大統領はそんな私の懸念をあっさりと一掃する内容の演説をした。

ブッシュ大統領は過去の戦争へのネガティブな思いを一切述べず、以下のように語ることで現在および将来の日米両国の和解と友好を強調した。

「日本とはもう完全に和解を果たした」

「私は日本に対してなんの恨みも持っていない」

「戦争での最大の勝利は、かつての敵国で民主主義が実現したことだ」

「いまやもう罪をなすりあう時ではない」

広く知られているように、ブッシュ氏は米海軍の最も若いパイロットの1人として日本軍基地への爆撃に何度も出動した。そして小笠原諸島の日本軍基地を空から攻撃した際は、地上からの砲火を受けて、乗っていた戦闘機が墜落した。ブッシュ氏はパラシュートで脱出し、文字どおり九死に一生を得た。

そんな日本軍と激しく戦った経歴があるブッシュ氏が、戦争での怨讐はもう完全に過去のものと表明した点はきわめて意味が大きかった。

日本軍を称賛した元海兵隊の議員

過去の戦争の経緯をあえて振り返ることはせず、日米両国が戦後に果たした和解と友好、そして普遍的な価値観の共有を大切にする、という態度は、ブッシュ大統領をはじめ日本軍と実際に戦った経験のある米国人たちの間で特に顕著だった。

しかも、米軍と戦った日本軍の将兵の武勇を称えるという態度さえ頻繁に感じられた。私自身、新聞記者としてワシントンを中心に米国に通算25年以上駐在する間、日米戦争の体験者に数えきれないほど会ったが、いつもそうした印象を受けた。

たとえば、私がワシントンに毎日新聞の特派員として最初に赴任した1970年代後半に取材を通じて知りあったジョン・チェイフィー上院議員は、海兵隊員としてガダルカナルと沖縄の両方の戦闘に参加していた。私は当初、そのことを知らなかった。本人がまったく触れなかったからだ。

ところがある機会に自らの戦歴を語った同議員は、日本軍の勇猛さや規律を賞賛し、日米の戦後の友好がいかに価値ある絆であるかを力説した。その語調には日本の軍事行動を批判するという気配はツユほどもなかった。

私はさらに、南太平洋のブーゲンビル島上空で山本五十六提督の乗機を撃墜したという米軍パイロットや、中部太平洋のタラワ島の攻略戦で日本軍を全滅させた海兵隊の将校からもじっくりと話を聞く機会を得た。終戦からすでに40年以上が過ぎており、かつての敵国だった日本を非難する人は誰もいなかった。

みな、「両国の国益が不可避な形で激突し、戦争となり、両国とも死力を尽くして戦った」という認識を抱いているようだった。米国は完全に勝利し、日本は敗北の代償をさんざんに払ったのだから、どちらが悪かったのか、というような議論を蒸し返す必要はまったくない、という姿勢だった。日本の敗北の代償にはもちろん原爆の被害や東京裁判での懲罰も含まれる。

こうみてくると、真珠湾攻撃から75年、終戦から71年経った今、日本の首相が戦争行動を改めて謝罪すべきだという必然性はどこにも浮かんでこないのである。

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ミサイル駆逐艦「ジョン・S・マケイン」に星条旗を掲揚する乗組員。米海軍横須賀基地にて(資料写真、出所:米海軍)

米国のドナルド・トランプ新政権が中国との対決を辞さない強固な政策をとり、米中対決の新時代を迎えることが確実となってきた。米中関係が険悪となると、当然ながら日本への影響も重大となる。

トランプ氏は選挙戦期間中から中国に批判的な姿勢を貫いてきた。オバマ政権の対中姿勢に対しても軟弱に過ぎると非難し、自分が大統領となれば対決もいとわず中国を力で抑え込むという構えを示してきた。

この対中強硬姿勢は、トランプ氏が大統領に当選してからさらに強くなった。中国側もその動きに対して激しい反発を示しており、米中関係はオバマ政権時代とまったく異なるせめぎ合いとなりそうだ。

新政権の強硬な対中政策を裏付ける根拠

トランプ氏が中国に対して、オバマ政権とは正反対ともいえる強い抑止や封じ込め策を推し進めるという展望には、以下のような根拠がある。

(1)トランプ氏は選挙戦中から、中国に関するオバマ大統領の政策を「軟弱で宥和にすぎる」と非難してきた。中国の経済活動については「通貨レートを不当に操作し、貿易も不正に進めてきた」と糾弾し、中国製品に異常ともいえる高関税を課すことを提案した。

(2)トランプ氏は選挙戦中の9月の演説で、米軍が世界規模で縮小していることを批判的に取り上げ、米軍の再強化を具体的に提案した。そのなかで、東アジアにおいて中国の軍拡を抑止の対象にする海軍や海兵隊の増強案を明示していた。

(3)トランプ陣営の防衛問題顧問であるアレックス・グレイ氏は、選挙投票日の直前の11月初め、トランプ氏自身の考えとして「中国の無法な軍事拡張に対して、まず十分な抑止力の効く軍事増強を実現し、『力の立場』から断固として交渉する」と述べていた。

(4)トランプ氏は当選から間もない12月2日、年来の「一つの中国」の原則を無視して台湾の蔡英文総統と電話会談をした。中国側から抗議が来たが、「中国に命令されるいわれはない」と撥ねつけた。

(5)さらに12月11日に、トランプ氏は「米国はなぜ『一つの中国』策に縛られなければならないのか」という疑問を提起した。「私は『一つの中国』策をよく理解している」と強調したうえでの発言だった。

(6)トランプ氏は12月21日に、新政権の対中政策の一環として「国家通商会議」を新設することを発表した。議長には中国への厳しい政策提言で知られるピーター・ナバロ氏(カリフォルア大学教授)を任命した。

(7)ナバロ氏は、中国が軍事力を強化して南シナ海、東シナ海で強圧的な攻勢を進め、米国の国益までも侵害しているとして、米国の軍事力増強と日本など同盟諸国との連携の強化による中国封じ込め策を訴えてきた。

(8)トランプ新政権にはその他、対中強硬派として知られるランディ・フォーブス前下院議員、ビル・タレント前上院議員、デーナ・ローラバッカー現下院議員、ジム・ウールジー元CIA長官らが政策顧問や次期政権幹部として参集している。

軍事力は今なお米国が圧倒的という自信

こうしたトランプ氏の言動や、同氏を支える人物たちの特徴をみると、トランプ次期政権が外交政策において特に中国への対応を重視し、断固とした姿勢で中国に接していくことは明らかである。中国の軍事的な攻勢を抑止するためには軍事力の行使もいとわないという決意も見てとれる。協調や融和を優先して対決を避けるオバマ政権の対中政策とは根幹が異なっているのだ。

トランプ新政権のこうした強固な対中姿勢の背景には、今なお軍事力は米国が圧倒的な優位にあり、もしも軍事衝突が現実的となれば中国側は必ず譲歩あるいは妥協するという計算があるといえる。

だが、中国が国家の根幹にかかわる「一つの中国」の大原則までトランプ新政権に否定された場合、台湾への侵攻に乗り出す可能性もあり、その展開は予測が難しい。米中関係はまさに波乱や激動を予感させる。

こうした軍事面での衝突も含めて米国が中国と厳しく対決する場合、米国のアジアでの安全保障にとって、在日米軍や米軍基地の重要性がきわめて大きくなる。トランプ新政権にとっては日米同盟の価値がそれだけ高くなるというわけだ。

その場合、日本としては、米中両国間の摩擦や対立に揺さぶられる危険性が高まる一方で、日米の米安全保障の絆が強化される機会にも恵まれる可能性が出てくることとなる。

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『中国が操る韓国大統領レース THAADに連座、ロッテもイジメの対象に』(12/27日経ビジネスオンライン 鈴置高史)について

12/28安倍首相の真珠湾での演説は素晴らしかったです。オバマ大統領はやや軽い感じがしました。

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20161228/k10010822371000.html

日本のTV報道によれば、保守派と言われるFOXニュースが「和解するには謝罪が必要だ」と言ったというのは、米国人の驕りが透けて見えます。NHKの報道で、多分真珠湾の生き残りの米兵と思われますが、オバマ大統領・安倍首相共に彼らに話しかけましたが、安倍首相は身を低くして聞き入っていました。天皇・皇后両陛下が被災者に寄り添う姿勢と同じで、米国人は気が付かないかも知れませんが、相手に気を遣っていることが感じられ、日本人として嬉しく思いました。願わくば、何故日米開戦になったのかを、国民レベルで相互に真剣に学んで行った方が良いと思います。日米ともに、今までの通説だけでなく、新たな証拠に基づいて。和解ができた環境であればこそ可能です。

ハフィントンポストによれば、「安倍首相へオリバー・ストーン監督ら公開質問状、「日本が攻撃したのは真珠湾だけではない」と声明を発表とのこと。真面に答える必要はありません。中韓が裏で糸を引いているのは見え見えですから。ヨタ連中の為せる業です。オリバー・ストーン監督の現夫人は韓国人のチョン・ソンジョン氏とのこと。記者会見時の写真にハングルが見えています。朝鮮人は国を捨てて、世界に出ていても、反日活動に勤しみます。通貨スワップはもっての他、GSOMIAも解消しないと。次期大統領は誰がなっても(潘基文氏でも)、必ず北と一緒になるように動くでしょう。国民感情には抗えません。抗えば朴槿恵大統領のように弾劾されます。共産主義国は粛清が当たり前の国なのに、それを国民レベルで望むとは。ヒトラーを民主的手続きで選んだドイツ国民以上に愚かとしか言いようがありません。後で自分が粛清の対象になった時に気付いても、時既に遅しです。ハフィントンポストに依れば、公開質問状には高橋哲哉東大教授も名を連ねているとのこと。左翼は分かりやすい行動を取ります。朴槿恵大統領が「1000年忘れない」と言ったり、中国のように「従軍慰安婦、南京虐殺、強制徴用」で歴史を改竄・捏造、尖閣や沖縄を盗もうという国に和解を求めてもしょうがないでしょう。過去の歴史でずっと日本を強請る気でいるのですから。彼らに未来志向はありません。あるのは、ゆすりタカリの精神だけです。金を取れれば嘘でも何でもよいという民族性です。未来永劫付き合わないことです。

oliver-stone

http://www.huffingtonpost.jp/2016/12/25/story_n_13854564.html

次は韓国ではなく、相手は中国と思われますが、東芝の原発で数千億円の損失を再度計上するとのこと。東芝の株主としては、経営者の劣化に怒り心頭です。経営者が、国際環境の変化を読み間違えたのではと疑っています。米国or経産省が中国への原発技術流出を嫌い、今のタイミングでわざと情報をリークしたのでは。12/28日経web版には「消費者、株主、取引先、従業員にとって「寝耳に水」状態だっただけでなく、経営陣も混乱している様子が垣間見えた」とあり、綱川社長も情報がどこから出たのか把握してないのでは。

12/27日経<日米、中国と原発受注目指す 資金期待も技術流出懸念

日米中企業による3カ国連合がトルコで原子力発電所4基の受注を目指している。東芝傘下の米原子力大手ウエスチングハウス(WH)が中国国有の国家電力投資集団と組んで、トルコ政府と交渉中だ。日本にとって強力なライバルだった中国のマネーを活用して海外で原発を受注すれば、日本の原発輸出のあり方にも一石を投じることになる。

受注が実現すれば2兆円規模の商談になるとみられる。3カ国連合の関係者は「2017年中にはトルコ側と(原発建設に向けて)合意できると期待している」という。受注を目指しているのは第3世代と呼ばれる最新の中型炉。WHの新しい加圧水型軽水炉(PWR)「AP1000」が軸になる。

WH会長のダニー・ロデリック氏は、今回のスキームの役割分担を「中国が発電事業に資金を提供し、WHは機器を供給する」と説明する。東芝・WHは出資を避けながら、中国マネーを活用して原発を受注しようとしている。

背景には資金面での高いハードルがある。2兆円規模とされる費用を、10年単位という長期間の売電収入で回収しなければならない。自分たちだけでそのリスクを負うのは難しいとみている。特に、政情が不安で地元通貨の急変動が起きやすい新興国では困難が多い。現地で出資者を募るのも簡単ではない。

一方、中国勢は潤沢な資金を持ち、日米などの原発技術を欲しがっている。海外での受注実績をつくり、自国の原発産業を早期に育成したい考えもある。WHのロデリック氏は3カ国連合について「すべての国にとって利益となる」と述べ、中国と日米の利害が一致すると指摘する。

懸念もある。技術が中国に流出することだ。将来、中国企業が海外市場で一段と台頭する可能性が高まる。日本政府もこうした懸念を抱いている。中国と組んだことについて日本政府関係者は「事前にまったく聞いていなかった」と戸惑いを隠さない。

だが、東芝・WH関係者は「何十年も同じ技術を抱え込むのは無理。次の技術を開発すればいい」と話す。

こうした姿勢は中国をライバル視する三菱重工業とは好対照だ。三菱重工はトルコ・シノプで新型の原発、PWR「アトメア1」を建設する計画。シノプは日本の官民が中国勢と受注を競った案件だ。

三菱重工などが事業に出資し、日本政府は国際協力銀行(JBIC)の融資でファイナンスを支援する方針。だが、事業性の調査を進めるにしたがい、収益を確保する難しさが浮き彫りになっている。

原発の輸出拡大は日本の原発メーカーにとって重要な課題。国内で新規建設が見込めないなか、技術を維持し成長を果たすためには必要不可欠とみている。技術流出を覚悟して中国と手を組むのか、それともあくまで中国と真っ向勝負を貫くのか。トランプ次期米政権が中国に強硬姿勢をとるとみられることも、選択を難しくしそうだ。

(花房良祐)>以上

12/28日経ビジネスオンライン<東芝、原発事業で陥った新たな泥沼 減損額は数千億円か、始まった債務超過へのカウントダウン 小笠原 啓

「減損回避のために買収した企業が、1年後、新たな減損の火種になるとは思わなかった。まるでブーメランのようだ」。ある東芝関係者は12月27日、本誌の取材に対してこう漏らした。

東芝は同日、米国の原子力事業で数千億円規模の減損損失が発生する可能性があると発表した。米原発子会社ウエスチングハウス(WH)が2015年末に買収した企業の資産価値が、想定より下回ったのが原因だ。

会見した綱川智社長は「(損失の可能性を)12月中旬に認識した」と述べ、「経営責任を痛感している」と強調した。一方で具体的な損失額については「精査中で答えられない」として言及を避けた。年明けにも減損テストを実施し、2月中旬までに計上すべき損失額を算定する。

問題となったのは、WHが子会社化した米CB&Iストーン・アンド・ウェブスター(S&W)。原発建設におけるパートナーだった米エンジニアリング会社のシカゴ・ブリッジ・アンド・アイアン(CB&I)から、2015年12月31日に「0ドル」で買収した。

買収後にWHがS&Wの経営状況を見直したところ、原発の建設プロジェクトなどでコスト超過が判明。資材や人件費などが想定よりも大幅に増えたという。その結果、S&Wの資産価値が当初の想定から大きく下がり、多額の損失計上が必要だと判断した。今後、数千億円規模の「のれん」を計上し、減損テストを経てその一部または全部を取り崩すことを検討する。

東芝は2017年3月期の連結最終損益を1450億円の黒字(前期は4600億円の赤字)と見込んでいる。数千億円の減損損失を計上すれば、最終赤字に陥る可能性が高い。

今年9月末の自己資本は3632億円。損失の規模によっては債務超過に陥る可能性すら出てきた。この点を問われた平田政善CFO(最高財務責任者)は「お答えできる状況ではない」と述べるにとどめた。

傘下に収めてわずか1年で、巨額減損の火種となったS&W。なぜ東芝とWHはこの企業を買収したのか。その理由を知るには、時計の針を1年ほど巻き戻す必要がある。

東芝の不正会計が発覚したのは2015年4月。7月に第三者委員会が2000億円以上の利益水増しを認定し、田中久雄氏ら歴代3社長が責任を取って辞任した。9月には東京証券取引所から「特設注意市場銘柄」に指定され、半導体や家電など複数の事業で厳しいリストラが始まっていた。

この間、一貫して焦点になっていたのがWHの減損問題だった。

電力会社との関係を修復する条件だったS&Wの買収

東芝は2006年に約6000億円を投じてWHを買収。買収価格とWHの純資産との差額、約3500億円の「のれん」を計上していた。買収後、リーマンショックや原発事故などで経営環境は激変したが、東芝は一貫して原子力事業は「好調」と説明し、巨額ののれん計上を正当化してきた。仮に不調を認めると減損処理を迫られ、経営危機に直面する可能性があったからだ。

一方で、原発建設の現場では「コストオーバーラン」が深刻な問題になっていた。WHは米国内で4基の原発を建設していたが、規制強化による安全対策や工事の遅延などでコストが増大し、事前の見積り額を超過するようになったのだ。

発注元の米電力会社はWHに超過分のコスト負担を求め、一部は訴訟に発展。工事を担当するCB&IとWHとの間でも、負担割合などをめぐって争いになっていた。こうした係争が深刻化して損失計上を迫られれば、WHの収益計画を見直さざるを得なくなる。すると、のれんの減損処理が現実味を帯びる。こうした事態を回避するために、東芝はS&Wを買収することで関係を整理することにした。

東芝は2015年10月28日、WHがS&Wを完全子会社化すると発表。プレスリリースには次のように記載されている。「米国のプロジェクトに関し現在訴訟となっているものも含め、全ての未解決のクレームと係争について和解する」。「価格とスケジュールを見直すことにも合意した」。

つまりS&Wを買収することが、電力会社との関係を修復する条件だったのだ。前述の東芝関係者は「S&Wを買収しなければ、WHは2015年中に減損処理に追い込まれていたかもしれない。資産査定などの時間は限られていたが決断せざるを得なかった」と振り返る。冒頭の「減損回避のための買収」とはこういう意味だ。

東芝は結局、2016年4月に原子力事業で約2500億円の減損損失を計上した。それが可能になったのは直前の3月に、東芝メディカルシステムズをキヤノンに約6655億円で売却できたからだ。

だが改めて数千億円の減損処理を迫られた場合、同じ手を使うのは難しい。過去1年でリストラを進めた結果、売れる事業が社内にほとんど残っていないからだ。資本増強の手段としてNAND型フラッシュメモリーの需要が旺盛な半導体事業の売却や、分社化して株式上場する案も考えられるが、それは東芝の「解体」と同義だ。

会見に志賀会長とWHのロデリック前社長は出席せず

東証から特設注意市場銘柄に指定されている東芝は、公募増資などの資本増強策が事実上取れない。12月19日には東証が指定期間を延長することを発表しており、2017年3月15日以降に東芝が提出する内部管理体制確認書で改善が認められなかった場合、上場廃止になる。平田CFOは会見で「銀行に状況を説明して協力を得たい」と述べ、金融支援の可能性に言及した。

日経ビジネスが繰り返し述べてきたように、WHの買収こそが東芝が粉飾決算を始めた「原点」だ。原子力での巨額買収の失敗を覆い隠すために、パソコンや社会インフラなど複数の事業部門が利益の水増しに手を染めた。S&Wの買収は、原発建設でのコスト超過に直面したWHが、それをカバーするために選んだ苦肉の策なのかもしれない。最初の失敗から負の連鎖が始まり、今なお新たな損失リスクを生みだしている。

なお、12月27日の記者会見には原子力事業を率いてきた志賀重範会長と、S&Wの買収時にWHの社長を務めていたダニエル・ロデリック氏(現エネルギーシステムソリューション社の社長)は姿を見せなかった。平田CFOによると両氏は「現地(米国)に飛んで、数字の精査をしている」という。>(以上)

IR法で菅官房長官は、パチンコや競馬競輪を含めてギャンブル依存症対策を講じるとのこと。良いことです。パチンコは脱税の温床且つ朝鮮総連経由で北に資金が流されています。入場時にはマイカードを提示させるようにし、且つ1日の上限枠を設定、且つ売上の5割は税金として国庫納付を義務付ければ10兆円(税)/20兆円(売上)で消費税増税しなくても済みます。日露戦争のための軍事費調達として課税されたビール税の小売価格に対する割合は、今の所42.2%もあります。(ビール酒造組合調べ)。それを考えれば、売上の半分を税金で取って依存症を減らすのは国民も賛成するのでは。反日民進党もきっと賛成に回るでしょう(笑)。パチンコの所管も警察ではなく、厚労省にして、規制した方が良いです。警察の天下り先で、公営でなく違法賭博なのに、取締りしてませんので。

http://news.tv-asahi.co.jp/news_politics/articles/000090959.html

記事

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2016年7月、抗議デモが展開される中で決定したTHAAD配備だったが、韓国「離米派」の台頭で、中国が望む「配備撤回」への動きが勢いを増している(写真:AP/アフロ)

前回から読む)

韓国で次期大統領を争うレースが始まった。裏で操るのは中国だ。

観光局長までが脅し

鈴置:朝鮮日報に興味深い記事が載りました。イ・キルソン北京特派員が書いた「中国に向けてろうそくを掲げられるか」(12月21日、韓国語版)です。

韓国の有力大統領候補が米軍のTHAAD(地上配備型ミサイル防衛システム)の配備に反対の声を上げた。すると、中国政府の観光関係者までが「THAADに反対しろ」と韓国を脅し始めた――との書き出しです。要約しつつ訳します。

  • 12月15日、韓中両国政府の観光部局が北京で式典を開いた。中国の李金早・国家観光局長は祝辞で「最近、両国関係がTHAAD配備で新たな局面と課題に直面した。適切な方法を探し、観光協力強化のために条件を整えてほしい」と述べた。
  • 9月の北朝鮮の5回目の核実験後、中国の外交・国防部以外は公にTHAADを取り上げなかった。北の核に不安を増す韓国の世論を考慮したためだろう。
  • しかし「THAAD反対」を叫ぶ韓国野党の声が大統領弾劾の局面で大きくなり、文在寅(ムン・ジェイン)「共に民主党」前代表のような有力大統領候補が配備延期を主張すると、中国は観光局長までがTHAADを語り始めたのだ。

外から援護射撃

7月8日、米韓は在韓米軍へのTHAADの配備を正式に決めました。すると、それに強力に反対していた中国が韓国への嫌がらせに乗り出したのです。10月、中国政府は「韓国に行く観光客を20%減らせ」と中国の旅行会社に指示しました。

中央日報の「中国政府『韓国に行く中国人観光客20%減らせ・・・ショッピングも1日1回だけ』」(10月25日、日本語版)などが報じました。

影響が出始めています。2016年11月に韓国を訪問した中国人客は前年同月比1.8%増に留まりました。

2015年に韓国でMERS(中東呼吸器症候群)が大流行。反動で2016年8月には同70.2%増を記録するなど、訪韓中国人数は急回復していました。その伸びが一気に鈍ったのです。

聯合ニュースの「訪韓中国人客が伸び悩み 日本人は3割増=11月」(12月22日、日本語版)は「THAAD問題が響いた」との大韓貿易投資振興公社(KOTRA)の分析を紹介しています。

当初、中国政府は訪韓観光の規制強化とTHAADは関係ないと説明していました。ところが朝鮮日報が書いたように、12月15日には国家観光局長がはっきりと「THAADを何とかしないと観光客をどんどん減らすぞ」と脅すに至ったのです。

韓国で文・前代表ら大物政治家が「THAAD反対」を叫び始めた時です。タイミングから見て「内側の声」に合わせ「外側からの圧力」を韓国政府にかける目的であるのは間違いありません。

韓流ドラマにも罰

韓流ドラマも同じパターンです。中国政府が映画、ドラマなど韓国製コンテンツを使うなとの「禁韓令」を放送局に指示したと11月、中国メディアは報じました。

同国政府はそれを否定していましたが12月20日になると、中国外交部の参事官が「禁韓令」に関する韓国記者の質問に答えて「まず、THAADを解決することが必要だ」と語りました。

国家観光局長と同様に韓国内で「離米派」が立ち上がった瞬間、方針を変更し、はっきりと「THAADを認めた罰だ」と言い渡したのです。

聯合ニュースが「韓流締め出しへの批判に『THAAD問題の解決必要』=中国高官」(12月21日、日本語版)で報じています。

毎日経済新聞の「中国の報復で非常燈が点いた対中事業・・・ロッテ税務調査、旅客中断、反ダンピング関税」(12月16日、韓国語版)は「THAADに対する報復」がオンライン通販、化粧品、石油化学製品、自動車関連など多様な業種に広がっていると報じています。

ゴルフ場でとばっちり

—記事の見出しに「ロッテ」が立っていますが。

鈴置:その部分を訳します。以下です。

  • 11月29日から、ロッテグループの中国内の(量販店)150余店舗が税務調査に加え、消防法や食品安全法による検査の対象となった。ロッテケミカルなど在中工場も同様だ。中国でこれほど厳しい「全方位検査」を受けるグローバル企業はなかった。
  • ロッテは中国での広告を停止した。ホームショッピング事業も売却を検討している。3兆ウォン(3000億円)をかけて瀋陽にロッテタウンを建設中だが、許認可が困難になるかもしれない。

—なぜ、ロッテがイジメに遭うのですか。

鈴置:米軍のTHAAD配備は住民の反対運動により、用地選定が難航しました。二転三転の結果、慶尚北道の星州(ソンジュ)郡にあるロッテグループのゴルフ場を軍が入手して米国に提供することになりました。

ロッテが頼んだわけではありません。とばっちりを食ったのです。でも、「泣く子と中国には勝てない」のです。

中国の威嚇で票稼ぎ

—韓国にとっても中国は「困った国」ですね。

鈴置:必ずしもそうとは言えません。「離米派」の大統領候補にすれば、中国は極めてありがたい存在です。

「離米派」は「3点セット」――THAAD配備、日本とのGSOMIA(軍事情報包括保護協定)締結、従軍慰安婦合意――の見直しを主張しています(「『キューバ革命』に突き進む韓国」参照)。

一方、中国がTHAAD配備容認に対する露骨な報復に乗り出しました。「3点セット」を見直さないと大変なことになる、との恐怖感が国民の間に広がるほど「離米派」は票をかき集められるのです。

—GSOMIAや従軍慰安婦合意も、中国と関係するのですか?

鈴置:大いに関係します。日韓GSOMIAに対し中国政府は明確に反対しています。「朝鮮半島の対立を深める」などと理屈をこねていますが、要は日米韓による中国包囲網を作らせたくないのです。

表「中韓の『慰安婦共闘』」を見れば分かる通り「慰安婦」でも両国は共闘体制を組んでいます。2014年7月の首脳会談で「慰安婦の共同研究」に中韓は合意し、共同声明の付属文書に盛り込みました。

中韓の「慰安婦共闘」

2014年7月3日
中韓首脳会談で「慰安婦の共同研究」に合意。共同声明の付属文書に盛り込む(聯合ニュース・韓国語版
2014年12月15日
韓国政府系の東北アジア歴史財団と、中国吉林省の機関、档案局(記録保管所)が慰安婦問題関連資料共同研究のための了解覚書(MOU)を締結(聯合ニュース・日本語版
2015年8月15日
中国国家公文書局が『「慰安婦」–日本軍の性奴隷』第1回文献テレフィルムを公式サイトで公表(人民網日本語版
2015年9月22日
サンフランシスコ市議会が「慰安婦碑または像の設置を支持する決議案」を全会一致で採択。運動の中心となったのは中国系団体(産経新聞)
2015年10月12日
中国外交部の華春瑩副報道局長、旧日本軍の慰安婦に関する資料について「ユネスコ世界記憶遺産への登録申請を他の被害国と共同で進める方針」(聯合ニュース・日本語版
2015年10月13日
韓国外交部の魯光鎰報道官、慰安婦資料のユネスコ世界記憶遺産に中韓が共同で登録申請することに関し「推進中の民間団体が判断すべきだ」。推進中の民間団体とは女性家族部傘下の財団法人、韓国女性人権振興院(聯合ニュース・日本語版
2015年10月28日
「中韓の慰安婦像2体」をソウル城北区に設置、除幕式。中韓の彫刻家が製作し、両国市民団体が支援(産経新聞

中国からすれば、米国の仲介による2016年12月の慰安婦合意は韓国の裏切りです。共同声明を証文に韓国に対し「慰安婦合意を破棄しろ」と圧力をかけることもできます。

米韓同盟の紐帯である「3点セット」の見直しを主張する「離米派」とは、中国の顔色をうかがう「従中派」でもあるのです。

意地を見せた韓経

—中国の報復に対し、反発は起きませんか?

鈴置:起きています。東亜日報は社説「ロッテにTHAAD報復し、北朝鮮制裁は真似だけする中国」(10月30日、日本語版)を載せました。

ただ、この記事は中国への反感を表明したうえで、中国依存度を下げようと呼び掛けただけです。私が見た限りですが、明確に中国に対抗しようと訴えたのは韓国経済新聞の社説「政府は中国の市場経済国(MES)の地位認定を撤回せよ」(12月2日、韓国語版)くらいでした。

—韓国政府は「市場経済国」と認定しているのですか?

鈴置:2005年、中国がWTOにおける「市場経済国」であるとの主張に韓国は賛成しました。今、中国の度重なるルール破りに怒った日米欧が「今後も認定しない」と言っているのと対照的です(日経「WTOの『市場経済国』、日本も中国を認定せず」参照)。

韓経は「ロッテなど我が国の企業があれだけ苛められているというのに、まだ認定すると言うのか」と韓国人に訴えたのです。ただ、韓経のように「意地」を見せたメディアは例外的です。

中国に屈する韓国紙

左派系紙はもともとTHAADなど「3点セット」に反対です。そして韓経以外の保守系紙は中国の報復に屈し始めました。

中央日報は社説「中国の偏狭なTHAAD報復・・・大国にふさわしくない」(12月3日、日本語版)を載せました。

見出しや本文では「中国の偏狭さ」を批判しています。韓国語版(12月2日)の見出しも同じです。でも、結論部分では次のように書いたのです。

  • 我々は中国が大局的な立場でTHAAD報復を撤回することを期待する。韓国政府もTHAAD導入において中国の立場を十分に配慮する措置が求められるだろう。

中国が報復を撤回するとは考えにくい以上、「中国の立場に配慮」とは「THAAD配備を拒否」を意味するのです。中央日報はもともと「拒否派」です(「『南シナ海』が加速させる『韓国の離脱』」参照)。

中国で「日本より下」に

—最大手の朝鮮日報は?

鈴置:中国に詳しい政治部のアン・ヨンヒョン次長が「中国の統一戦線戦術」(12月10日、韓国語版)を書きました。まず、中国が日本に対して以上に、韓国に冷たくなったと指摘しました。

  • 11月22日に北京で開かれたアキヒト日王(天皇)の誕生日祝賀会には、中国外交部の劉振民・副部長(次官)が壇上に上がり、中国駐在の日本大使と乾杯した。
  • 一方、10月19日に駐中韓国大使公邸で開かれた開天節(韓国の建国記念日)のパーティには中国外交部の課長が出席しただけだった。毎年、次官補級以上が参加していたというのに様変わりだ。
  • 中国は韓中共同戦線を組むことで日本を圧迫してきた。しかし、7月にTHAAD配備の発表に韓米同盟の強化を見て取ると、日本との関係改善を模索する姿勢を打ち出した。

中国が日本との関係改善に動いているとは言い切れません。ましてそれがTHAADのせいだ、というのは韓国人特有の天動説的発想と思います。

ただ、韓国人読者がこれ読めば「やはり、THAADが諸悪の根源だ」と思うでしょう。アン・ヨンヒョン次長は次のように結論付けました。

  • 中国共産党は国益のためには過去と理念にこだわらず、統一戦線戦術を繰り広げる。THAAD報復に怒るだけで、米国と北朝鮮だけを見つめる外交手法では中国のこの戦術に当たるのは難しい。

はっきりと「THAAD配備に反対する」とは書いていません。しかし「北朝鮮と米国だけを見つめる」とは「北の核ミサイルに対抗することだけを考える」ということです。

アン・ヨンヒョン次長は「それではダメだ」――つまり「THAAD配備を再検討しよう」と説いたのです。

脅せば従う韓国人

—韓国はTHAAD拒否に向かって雪崩を打っているのですね。

鈴置:ええ。7月に米韓がTHAADの配備を正式に決めた直後、人民日報の姉妹紙「環球時報」は「5つの対韓制裁」を発表しました(「『中国陣営入り』寸前で踏みとどまった韓国」参照)。

「環球時報」の英語版「Global Times」の記事「China can counter THAAD deployment」(7月9日)で読めます。

■環球時報が中国政府に建議した「5つの対韓制裁」

(1)THAAD関連企業の製品の輸入禁止 (2)配備に賛成した政治家の入国禁止と、そのファミリービジネスの中国展開の禁止 (3)THAADにミサイルの照準を合わせるなどの軍事的対応 (4)対北朝鮮制裁の再検討 (5)ロシアとの共同の反撃

注)環球時報の英語版「Global Times」では「China can Counter THAAD Deployment」(7月9日)で読める。

THAADに関し「協力した韓国企業製品の輸入禁止」だけでなく「賛成した政治家の入国禁止」も明言しています。

訪中できなければ韓国の大統領はやっていけません。大統領選挙で「THAAD賛成」を明確に訴えられる政治家はまず、いないと思います(「『習近平のシカト』に朴槿恵は耐えられるか」参照)。

ただ、これまでは1つ問題がありました。政治家として「中国の報復が怖いからTHAADに反対する」とは言えなかったことです。

韓国人の多くも本音では「不愉快でも中国の言うことを聞くしかない」と思っています。意識調査を見ても「中国が最も重要だ」と答える人が「米国」と答える人を上回っているのです。

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冒頭に引用した朝鮮日報の「中国に向けてろうそくを掲げられるか」(12月21日、韓国語版)に以下のくだりがあります。

  • 中国は我々を「強く出れば頭を下げる民族」として扱う。「歴史的に統一した中国に対し、韓国はただの一度も抗ったことがない」ということだ。
  • 「中国側に立てば10倍の褒美をやるというのに、なぜ、中国に反旗を翻し10倍の罰を受けるのか」ということでもある。

2匹目の「ドゥテルテ」

—「脅せば言うことを聞く」と、中国にすっかり見切られていますね。

鈴置:だからこそ、韓国の政治家は「中国の報復を避けるためTHAADは拒否しよう」との本音は言いにくかった。

それが朴槿恵(パク・クンヘ)大統領の弾劾騒動で「THAAD反対」の言い訳ができたのです(「『キューバ革命』に突き進む韓国」参照)。

「朴のやったことはすべて悪い」との雰囲気が盛り上がる中、離米派は「あれは『朴印』の政策だから反対する」と言えばいいのです。「従中派」のレッテルを張られず「従中」できるようになったのです。

—「離米派」と中国の共闘が始まったのですね。

鈴置:その通りです。中国が報復カードをちらつかせるほどに「離米派」の票は増える。それにより「離米派」の大統領が誕生すれば、韓国は自動的に「従中」する。明快な共闘の構図です。

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中国は目を細めて韓国のドゥテルテ(Rodorigo Duterte)たち――米軍は出て行けと叫ぶフィリピンの大統領――を眺めているでしょう。

「離米」に警告したトランプ側近

—米国はどうするつもりでしょうか。

鈴置:12月20日になって、トランプ(Donald Trump)次期政権から「見解」が明かされました。国家安全保障問題担当の大統領補佐官に就任する予定のフリン(Michael Flynn)元陸軍中将が韓国の外交部と国防部の高官に以下のように語りました。

東亜日報の「フリン次期国家安保補佐官、在韓米軍とTHAAD配備は韓米同盟の正しい決定」(12月22日、日本語版)から引用します。

  • 米軍とTHAADの(韓国への)配備は、韓米同盟次元の正しい決定であり、韓米同盟の堅固さを象徴するものだ。

もちろん「在韓米軍を追い出したり、THAAD配備を拒否したら米韓同盟がなくなると思えよ」という意味です。韓国に広がる「離米ムード」に警告したのです。

—ズバリ、言いましたね。

鈴置:でも、米国とスクラムを組む政治家が出てきそうにないのも事実です。中国と共闘したがる政治家はいっぱいいるのに。

—「親米派」の国民もいるのでは?

鈴置:もちろん残っています。「親中政権ができたら移民する」という人もいます。親米クーデターを考える人も出てきました。

※2017年は1月1日付で「2017年の日韓関係を占う(仮題)」を掲載します。

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『緊急連載 先読みトランプ 「素人外交」世界に波紋 最終回 変わる世界のパワーバランス』(日経ビジネス2016年12月26日・2017年1月2日号)、『トランプ氏、中国空母に鉄槌! 米国への挑発に猛反発必至 海上民兵の尖閣上陸もあり得る』(12/27ZAKZAK)について

トランプが第二のレーガンを目指すのであれば、SDIに代わる政策を打ち出すかもしれません。レーガンの敵はソ連でしたが、今回は中国です。如何に経済的結び付きが強くとも、中国が世界覇権を目指していることがはっきりしていますので、妥協の余地はないでしょう。国益の観点から言っても、従来米国の持っていた利益が損なわれるのは必定ですから。太平洋を何故米国が二分割して中国にくれてやる必要がありますか。米国の第二次大戦の戦利品です。米兵の血で贖ったもので、中国が戦争で勝ちとった訳ではありません。中国が太平洋、南シナ海に出てこようとするなら、早晩ぶつかることは間違いありません。ぶつかるのであれば、相対的に米国の力が弱まる前の方が良いに決まっています。

「肉を切らせて骨を絶つ」精神が必要です。日経は経済紙ですので、米中戦わば、経済的混乱が起きることを恐れていますが、そもそも戦闘が始まる前に、経済制裁をお互いにしあうのでは。戦前の日本の場合は一方的に制裁されましたが。トランプはまず経済的に締めあげて、中国の軍拡を押えようとするはずです。日本も経済面で中国との取引が減りますが、戦争するより良いでしょう。経営者は中国事業を授業料として諦めることです。そもそも人口の多さに幻惑され、「騙す方が賢く、騙される方が馬鹿」という信義誠実の原則が成り立たない国でビジネスしようとしたのが間違いですので。

日米露で準軍事同盟ができれば、日本の安全は飛躍的に高まります。勿論、ロシアはスターリンが日ソ中立条約を無視して日本を攻めましたが、所詮銀行強盗上りの共産主義者です。今のプーチンは柔道精神を大事にし、日ソ共同宣言を履行して、平和条約を結びたいと思っていると思います。ロシアにとっても国境線を接し、シベリアに中国人が増殖し、北極海航路を耽耽と狙っている中国は脅威です。如何に核大国で軍事大国のロシアと雖も、GDP比でみれば中国11,186B$:ロシア1,326B$と、ロシアは中国の1/10くらいしかありません。勿論、中国の公称のGDPが信用できないというのはありますが、継戦能力がないことは明らかです。ロシアにとって日米と準軍事同盟を結ぶことは悪い話ではないと思います。問題は、グローバリズムに染まった国際金融資本の影響を受けた米国議会が米ロの提携に難色を示すことと、北方領土に米軍基地を置かないことを米国が認めるかと言う点と思います。

藤井厳喜氏はトランプが大統領就任してすぐに経済制裁を中国に課し、「大統領令による『在米資産の凍結』だが、その前に特定個人や企業への制裁」と言っています。中国も米国の本気度に恐れをなすのでは。今の人民解放軍のレベルでは勝ち目がないのに、虚勢をはっても、コテンパンにやられるだけです。田村秀男氏は12/24ZAKZAKで「中国 止まらぬ資金流出、人民元の下落 習政権の慢心が自滅招く」という記事を書いています。先ずは中国を経済的に困らせることが大事かと。

http://www.zakzak.co.jp/economy/ecn-news/news/20161224/ecn1612241530002-n2.htm

日経記事

「偉大なる米国の復活」を掲げて次期大統領の座を手にしたドナルド・トランプ氏の外交手腕は未知数とされてきた。ツイッターの書き込みや主要閣僚人事には「素人」との批判が上がるが、「意外に戦略的」との見方も。少なくともオバマ政権とは異なる新たな秩序を築こうとしているのは間違いなく、世界はそれに身構えている。

中国を挑発する言動を連発

●トランプ氏の最近の行動や発言

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トランプ次期大統領(右上)は台湾の蔡英文総統(右下)と電話会談したほか、ツイッターなどで中国を非難。中国の習近平国家主席(左)はどう対応するか(写真=左:ロイター/アフロ、上:ロイター/アフロ、下:AP/アフロ)

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「米中関係が悪くなっても、米ゼネラル・モーターズ(GM)製自動車の販売に大きな影響はないと信じている。中国最大手メーカーの上海汽車集団との合弁事業だし、ディーラーは現地資本だから。しかし大統領就任後のトランプ氏の動きは気になる」

12月中旬、中国・上海でGM車などを販売する李方氏は、ドナルド・トランプ氏の次期米大統領就任について、わずかな不安を口にした。

GMは昨年、中国での新車販売台数で独フォルクスワーゲン(VW)を抑えて3年ぶりに海外メーカーとしてシェアトップに返り咲いた。GMが昨年、世界で販売した約996万台のうち、実に3分の1強を中国市場で売った。同社にとって中国は決して失うことのできない大切な市場だ。

だが、トランプ氏の最近の言動は、近年の米国と中国の安定した関係の上に築かれてきたビジネスにも影響を与えかねない。

そもそも米大統領選の直後まで、中国にはトランプ氏に対する楽観論があった。ビジネスマン出身のトランプ氏は交渉できる余地があり、人権など中国が抱える問題の根幹を突いてくる可能性の高いヒラリー・クリントン氏よりくみしやすいといった見方だ。

ツイッターで中国を批判

だが今月に入ってからトランプ氏は中国を挑発する言動を繰り返している。

12月2日、トランプ氏は台湾の蔡英文総統と電話で約10分間、会談した。米国の大統領や次期大統領と台湾の総統の会談が明らかになったのは、1979年の米国と台湾の断交以来、初めてのこと。さらにトランプ氏は12月11日、FOXニュースのインタビューで「1つの中国になぜ縛られなければならないのか」と再び台湾の問題に言及した。

中国は台湾を自国の一部とする「1つの中国」の政策を堅持しており、台湾を国家として認めていない。米国も79年の米中国交正常化後、「1つの中国」の原則を守ってきた。

96年には中台関係が悪化、中国が台湾に向けミサイルを発射し、米国が空母を派遣する事態に陥ったこともある。台湾を巡る問題は、米中関係で最もデリケートなテーマの一つだが、トランプ氏は台湾問題をも中国との取引材料に使う勢いだ。

トランプ氏の中国への挑発はさらに続く。12月4日には、ツイッターで「中国は我々に南シナ海で大規模な軍事施設を建設していいかどうか了承を求めたか。私はそうは思わない」などと中国を批判した。さらに12月15日に米海軍の無人潜水機が南シナ海の公海上で中国海軍に奪われたことを受けて、トランプ氏は17日、再びツイッターで「前代未聞の行為だ」と非難した。

「外交の素人」ゆえの振る舞い──。トランプ氏の言動はそう受け取られることが多い。しかし米国と中国、ロシアの3カ国に駐在経験のある商社関係者は「相当したたかだ」と言う。

その象徴が国務長官に親ロシア派と目される米エクソンモービルCEO(最高経営責任者)のレックス・ティラーソン氏を充てるという人事だ。「政治経験のないティラーソン氏の国務長官就任の含意は、どちらかと言えば米国よりも中国寄りのロシアとの関係を改善し、3カ国のパワーバランスを見直すつもりなのだろう」(同)と分析する。

日本企業も報復の巻き添えに?

中国へのトランプ氏の強硬な姿勢が続けば、経済にも影響が及びかねない。同氏はかねて中国製品に高関税をかけると公言しており、実行に移せば中国側も米国製品に高い関税をかけるといった報復措置に出ることが考えられる。ロイター通信は専門家の話として、中国政府が報復対象となり得る米企業のリストを作成していると報じている。

米国勢調査局によると、2015年の米中間の貿易額は約6000億ドル(約70兆円)に達する。米中関係が緊張した20年前の1995年と比べると10倍超に膨らんでいる。両国の経済関係の悪化が世界の経済に及ぼす影響は過去とは比べものにならないほど大きい。

中国に駐在する日系商社の幹部は「中国が米国に対し報復措置を取れば、日本企業も巻き込まれかねない。今後の中国ビジネスがどうなるかは予断を許さない」と話す。米国企業以外にも規制の網がかかり、日本企業の事業も落ち込みかねないとの見立てだ。

中国に対する厳しい言動から透けるのは、新たな国際秩序を築こうというトランプ氏の意志だ。大統領就任後に取る対中政策は2017年の世界経済の最大の波乱要因になる可能性がある。

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欧州では2016年、各国で既存の政治に「ノー」を突きつける動きが広がった。移民、難民、経済格差など、国民の鬱積した不満が爆発。6月に英国は欧州連合(EU)からの離脱を決め、12月にイタリアでは憲法改正を否決。マッテオ・レンツィ首相(当時)が退陣した。さらに、国民の不満を巧みに拾い上げ、「打倒既存政治」を掲げる極右政党が躍進しており、トランプ氏の大統領選勝利後、勢いを増している。

「東欧からの移民には労働許可証制度を導入すべきだ」。今年11月、オランダ地元メディアの掲載した記事が、EU加盟国に波紋を広げている。発言の主は、同国のローデワイク・アッシャー副首相。社会・雇用相も兼務するアッシャー氏は、これまで移民に寛容な姿勢を示す人物として知られてきた。ところが、最近になって移民の扱いに対する考え方を転換。早急な移民管理の必要性を訴え始めた。

現実には、EU加盟国の国民に労働ビザの取得を義務付けることは難しい。EUの基本理念の一つである「人の移動の自由」に反するからだ。それでもアッシャー副首相が移民制限を主張し始めたのは、来年3月に予定されている総選挙を意識しているためだ。

同選挙で躍進が予想されているのが、「反移民」を掲げる極右政党の自由党だ。党首のヘルト・ウィルダース氏は移民に対する過激な発言で知られ、12月にはモロッコ移民への差別発言で有罪判決を受けた。

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欧州では極右政党が躍進。ウィルダース氏(左)とルペン氏が注目される(写真=左:ロイター/アフロ、右:AP/アフロ)

「オランダのトランプ」躍進

にもかかわらず、移民流入に不満を抱くオランダ国民からの支持は高い。11月に実施された世論調査では、自由党の支持率は与党の自由民主党を抑えてトップに立った。トランプ氏とも親交があると言われるウィルダース党首はトランプ氏と似た主張を繰り返し、「オランダのトランプ」の異名を持つ。

アムステルダムは国際都市として、多国籍企業が欧州拠点を構えてきた。英国のEU離脱後、ロンドンに代わる都市としても注目を集めている。だが、仮に右翼勢力が台頭すれば、これまで築き上げてきた国際都市のステータスが崩れる恐れもある。

オランダ同様に極右政党の躍進に戦々恐々としているのが、2017年4月に大統領選を予定しているフランスだ。現職のフランソワ・オランド氏に代わり1月に選出される与党候補、既に出馬を表明した最大野党の共和党のフランソワ・フィヨン元首相、そして極右政党・国民戦線(FN)のマリーヌ・ルペン党首の争いになると見られている。

なかでも「反EU」「反移民」を掲げるルペン氏のFNは、着実に支持を高めており、2015年の地方選でも注目を集めた。ルペン氏は、大統領に就任した場合、「EU離脱を問う国民投票を実施する」と明言している。

秋に予定されるドイツ連邦議会選挙も懸念が広がる。2016年12月にキリスト教民主同盟(CDU)党首に再任したアンゲラ・メルケル首相は、EUの枠組みを維持する最後のとりでと目されている。しかし難民受け入れを続ける政策へのドイツ国民の不満はくすぶり、反難民を掲げる極右政党・ドイツのための選択肢(AfD)は勢いを増している。

欧州版TPPへの影響も必至

米国との経済関係も不安要因だ。トランプ氏がTPP(環太平洋経済連携協定)から撤退を宣言すると表明したことなどから、欧州版のTPPとも言える、環大西洋貿易投資協定(TTIP)を巡る交渉も、不透明感が増している。

特にドイツにとって米国とメキシコの関係悪化は自国の製造業を考えると頭の痛い問題だ。これまでVWグループや独BMWはメキシコに生産拠点を開設、NAFTA(北米自由貿易協定)を活用して米国への輸出を増やしてきた。米国とメキシコの関係が悪化すれば、戦術を見直す可能性が出てくる。

東欧の安全保障も懸念事項だ。トランプ氏がロシアとの関係改善を進めれば、ロシアの東欧での影響力が増しかねない。シリアでは政府軍とロシア軍がアレッポを制圧するなど中東地域の力関係も変わる可能性がある。

トランプ氏は欧州が進めてきた温暖化対策の国際的な枠組みにも懐疑的な見方を示している。英国との離脱交渉開始、主要国での選挙に加え、トランプ氏にどう対峙するか。EUの苦悩は深まりつつある。

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トランプ次期大統領の存在は日本の外交や経済にも影響を及ぼしつつある。

12月15、16の両日に行われた日ロ首脳会談。安倍晋三首相はウラジーミル・プーチン大統領と北方領土問題を含む日ロ間の平和条約締結に向け北方四島での共同経済活動に関する協議の開始で合意し、記者会見などで「平和条約への重要な一歩だ」と強調した。

経済協力をテコに日ロの信頼関係を深め、領土問題の解決につなげようというのが安倍首相の基本戦略。会談に合わせ日本側が提案した8項目の対ロ経済協力プランに基づき、約80件の経済協力に関する合意文書を交わした。だが北方領土の主権を巡る溝は埋まらず、領土問題の解決に直接つながる合意は得られなかった。共同経済活動の枠組みに関する協議も難航は必至だ。

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安倍晋三首相とプーチン大統領の会談にも影響を与えたとみられる(写真=読売新聞/アフロ)

今年5月や9月の安倍首相との会談で領土問題の解決に前向きな姿勢をにじませていたプーチン氏だったが、その後、態度を一変させた。領土問題で弱腰を見せればプーチン氏の政権基盤が揺らぎかねないといったロシアの国内事情に加え、大きな要因と見られるのがトランプ氏の大統領選での勝利だ。

オバマ米大統領とプーチン氏の仲は険悪と言える状況だ。EUもロシアと対立を深めている。米から圧力を受けながらも安倍首相がプーチン氏との関係強化を進めたのは、欧米の包囲網に直面するロシアに接近することでプーチン氏との信頼関係を構築し、領土交渉の前進と東アジアの安全保障を脅かす中国をけん制する狙いからだった。

だが、トランプ氏は国務長官にプーチン氏と親交のあるティラーソンCEOを起用するなど、ロシアとの関係改善に取り組む姿勢を鮮明にしている。ロシア経済を揺さぶってきた原油安も減産合意で一服しており、「政治・経済両面で日本との関係打開を急ぐ必要性が急速に薄れたのだろう」と政府関係者は指摘する。

利上げ・保護主義に警戒感

中東で戦闘指揮経験があるジェームズ・マティス元中央軍司令官を国防長官に充てるなど、トランプ氏は外交面では中東を重視する姿勢も見せている。その一方で対アジア政策の方向性は不透明だ。10ページでも見たように、トランプ氏は中国に強硬姿勢をちらつかせており、今後、南シナ海などで緊張が高まる恐れがある。

安倍首相は1月にも行われるトランプ氏との首脳会談で日米の緊密な連携を確認したい考えだ。ただ外務省幹部は「韓国政治の混乱が続く中、対中、対北朝鮮外交の基軸である日米韓の連携に揺るぎがないことを早く示さないと、中国、北朝鮮に隙を与えることになりかねない」と懸念する。

トランプ氏の勝利後に一変した市場環境の先行きはどうか。トランプ氏は大規模減税やインフラ投資などに注力する意向を表明。財政拡張路線を先取りして世界のマネーが米国に回帰し、ドル高・円安、日米などでは株高、金利高が進んでいる。米経済の改善を踏まえて米連邦準備理事会(FRB)も1年ぶりの利上げに踏み切った。

トランプ政権が掲げる大型減税などがある程度実現すれば米経済の成長が加速し、米長期金利やドルの一層の上昇につながる可能性がある。円安が進めば日本の輸出企業の収益改善を後押しする一方、食料品や原材料価格の値上がりが消費を冷やす恐れも出てくる。

米経済が過熱するようだとFRBの利上げが加速し、新興国からの資金流出や通貨急落リスクが高まりかねない。米国内の雇用維持に主眼を置くトランプ氏がドル高を嫌い、FRBに政治介入する可能性もささやかれる。米議会との調整が壁となってトランプ氏の政策の実現性に疑問符がつけば、日本を含む世界の市場が揺さぶられかねない。

保護主義への傾斜も大きな懸念だ。TPP離脱やNAFTA再交渉の方針をどのように具体化していくのかは不透明だが、これらが実行されれば企業のグローバル展開の阻害要因になるだけでなく、安倍政権の成長戦略にとって大きな痛手となる。

トランプ氏が特定の貿易相手国や海外企業に批判の矛先を向けるリスクへの警戒感もじわり広がっている。政府はEUとのEPA(経済連携協定)など大型の経済連携交渉の加速を目指しているが、経済産業省幹部は「2017年は日本の経済連携戦略が正念場を迎える年になりそうだ」と漏らしている。

(上海支局 小平 和良、ロンドン支局 蛯谷 敏、編集委員 安藤 毅)

ZAKZAK記事

習近平国家主席率いる中国が、新たな軍事的挑発を仕掛けてきた。同国初の空母「遼寧」の艦隊が25日、沖縄県の宮古海峡を通過して西太平洋に進出したのだ。「対中強硬姿勢」を明確にするドナルド・トランプ次期米大統領を牽制するとともに、弱腰が指摘されるオバマ政権の間に「第1列島線」(九州-沖縄-台湾-フィリピン)を突破した既成事実を示したかったのか。経済・安全保障面で、断末魔の苦しみに直面しそうな中国が暴発する危険性とは。今後、トランプ氏が猛反発するのは確実だ。  夕刊フジは19日発行の「スクープ最前線」(ジャーナリストの加賀孝英氏執筆)で、《中国が暴走する危険がある》《南・東シナ海で決起行動に出かねない》《沖縄県・尖閣諸島も危ない》と警鐘を鳴らしたが、やはり中国は動いた。  防衛省統合幕僚監部は25日、中国初の空母「遼寧」が同日午前10時ごろ、宮古海峡を太平洋に向けて通過したと発表した。海上自衛隊の護衛艦「さみだれ」と、那覇基地所属のP3C哨戒機が確認した。  遼寧が太平洋に進出したのを海自が確認したのは初めて。領海侵犯はなかったという。  遼寧は、ルーヤンIII級ミサイル駆逐艦、ジャンカイII級フリゲート艦など5隻とともに艦隊を組んでいた。海自は24日午後4時ごろに東シナ海中部の海域で初めて遼寧を発見しており、動向を追っていた。  防衛省はまた、25日午後にジャンカイII級フリゲート艦からZ9ヘリコプターが発艦し、宮古島領空の南東約10キロから30キロの空域を飛行したと発表した。航空自衛隊の戦闘機が緊急発進(スクランブル)した。  伊藤俊幸・元海上自衛隊呉地方総監(元海将)は「中国側は『訓練の一環だ』と言うだろうが、これは訓練レベルが上がるのを意味しており、米国への挑発と言える。トランプ氏に『1つの中国』を否定されたことへの意趣返しとみられ、示威的に力を見せ、出方を見たいのだろう」とコメントした。

遼寧は、ウクライナから購入したスクラップ状態の空母「ワリヤーグ」を、遼寧省大連で改修したもので、2012年に就役した。全長305メートル、全幅73メートル、排水量6万7500トン。  米海軍横須賀基地を母港とする米原子力空母「ロナルド・レーガン」が、全長333メートル、全幅77メートル。排水量は約10万1400トンだけに、大きさは大差がないが、性能は大違いだ。  ロナルド・レーガンは原子力空母のため、長期間連続航海が可能で、航行速度も速い。遼寧には、航空機を甲板から空中へ飛ばすカタパルト(射出機)がなく、甲板前部を坂にしたスキージャンプ式の発艦しかできない。艦載戦闘機「殲(せん)15」(J15)も重いと飛び立てないため、ミサイルや爆弾などのフル装備は不可能とされる。  軍事研究家は「パイロットの訓練の精度からみても、複雑な空母の運用は困難」と見る向きが多い。だが、中国が米海軍の無人潜水機を強奪したのに続き、空母を西太平洋に進出させる「対米強硬姿勢」に出たことは見逃せない。  背景には、トランプ次期政権の「対中強硬姿勢」が考えられる。  トランプ氏は、安倍晋三首相といち早く会談し、ロシアのプーチン大統領にも好意的なメッセージを送ったが、習氏の中国には批判的だった。  選挙中から「中国は為替操作国だ」と断じ、米国の雇用を奪っていると繰り返し批判。「中国からの輸入品に45%の関税をかける」と主張した。  通商政策などをホワイトハウスに助言する「国家通商会議(NTC)」の新設を決め、委員長に「対中強硬姿勢」で知られ、中国の政策を強く批判する著書を執筆してきた、カリフォルニア大学アーバイン校のピーター・ナバロ教授を充てると発表したのだ。

安全保障面でも、国防長官にジェームズ・マティス元中央軍司令官(退役海兵隊大将)、大統領補佐官にマイケル・フリン元国家情報局長(退役陸軍中将)ら「対中強硬派」の指名を決めた。  さらに、トランプ氏は台湾の蔡英文総統との電話会談に踏み切り、FOXテレビのインタビューで、「なぜ、『一つの中国』政策に縛られる必要があるのか分からない」と発言した。中国が「核心的利益」と位置付ける台湾問題で、「一つの中国」政策を見直す考えを示したのだ。  完全に中国は追い込まれ、習氏は大恥をかかされた。  中国には「死不認錯」(=死んでも間違いを認めない)という言葉がある。自分に非があっても謝らないし、勝てない相手にも弱みを見せない。 冒頭の「スクープ最前線」でも指摘したが、事実上、「死に体」状態であるオバマ政権の間に、中国が軍事的暴発に踏み切る危険性があるのだ。  前出のナバロ氏の著書『米中もし戦わば』(文芸春秋)には、米中戦争の「引き金となるのはどこか?」という分析が各章に分けて行われている。「台湾」「北朝鮮」に続き、3番目に「尖閣諸島の危機」がある。「ベトナムの西沙諸島」「南シナ海の『九段線』」より前であり、「危険度が高い」とみているようだ。  今後、習氏はどう動き、トランプ氏はどう対抗するのか。  国際政治学者の藤井厳喜氏は「ナバロ氏が国家通商会議のトップに決まったことで、トランプ政権は『経済と安保の両面で中国を追い込む方針』だと明白になった。断末魔にある中国は、オバマ政権の間に、できる限り、既成事実を積み重ねるつもりだろう。海上民兵の尖閣上陸も十分あり得る。トランプ氏は就任前は『許し難い暴挙』などと言葉でけん制しながら、就任直後から一気に動くはずだ。伝家の宝刀は大統領令による『在米資産の凍結』だが、その前に特定個人や企業への制裁を科すのではないか。台湾との関係強化も進めるだろう」と語っている。

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『アメリカに冷たくされたタイに食い込んだ中国兵器 オバマの理想主義がもたらした中国の“成果”』(12/22 JBプレス 北村淳)について

本記事を読みますと、日米で中国と言うモンスターを造り上げてしまった感を強くします。日本の大東亜共栄圏を日本に替わり実現しようとしているのでしょう。日本の五族協和とは違い、人民からの収奪が目的でしょうけど。日本も戦後委縮し過ぎです。米国が日本を押さえつけてきたせいもありますが。一帯一路政策が成功してしまうでしょう。

オバマは無能と言うか、世界に害を為しただけという気がします。リベラルというのは共産主義を認めるのでしょう。リベラルは、語源はリベレイトで黒人奴隷解放から来ています。まあ、中共もチベット侵略も農奴からの解放と主張していますが。そもそも人民解放軍と言う名前からして英語名がPeople’s Liberation Armyと言うのですから、リベラルと共産主義は相性が良いのでしょう。でも、オバマのように軍を嫌うのは珍しいです。日本の左翼リベラルと同じで、敵に陣地を明け渡す作戦なのかも知れません。こういう人物がノーベル平和賞なのですから、ノウルエー人も人を見る眼がありません。

タイはブミポン国王が逝去され、新しいワチラロンコン国王が就任されました。不倫問題等で国民の人気はイマイチと言われていまして、中国が介入する余地は沢山ありそうです。ネパールのように王制を打倒し、ネパール共産党毛派が牛耳っているように。ネパールのルンビニはお釈迦様がお生まれになった土地で有名ですが、今の宗教はヒンズーでインドの影響が大きい所にも中国は手を突っ込んできている訳です。

日本も沖縄独立を中国国内で喧伝し、中国人に刷り込みをしていますし、沖縄の左翼2紙を反基地運動のアジビラにして煽動しています。騙される方が悪いとはいえ、中国の人権弾圧の政治について沖縄県民は危機感が足りません。翁長を県知事に担いでいるようでは危ないでしょう。日本の公安調査庁と米国議会報告で反基地闘争の裏には中国がいるというのを明言しました。マスメデイアは殆ど報道していません。

http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2016/12/post-a146.html

http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/47344

12/21日経でもこの内容はスルーされております。中国に不利になる記事は流さない「日中記者交換協定」を墨守しています。これで社会の木鐸を気取るのですから、どうしようもありません。情報はネットで取った方が正しい情報が取れ、正しい判断ができます。

12/21日経<「サイバー攻撃深刻化」 公安調査庁が回顧と展望 

公安調査庁は21日、国内外の治安情勢をまとめた2017年版の「内外情勢の回顧と展望」を公表した。「サイバー攻撃の脅威が多様かつ深刻化している」と分析。20年東京五輪に向けて警戒を一層強める必要があると強調した。

回顧と展望によると、リオデジャネイロ五輪・パラリンピックでは、公式サイトに約2千万件のサイバー攻撃が確認された。企業などから重要情報が盗み取られるケースに中国や北朝鮮、ロシアなどの関与が指摘されているとした。

一方、国内ではオウム真理教から改称した「アレフ」が今年5月、札幌市に最大規模の施設を新たに確保するなど「危険な体質を維持している」と記した。信者の数は昨年と同じ約1650人で、10月末時点の資産は約9億1千万円としている。〔共同〕>(以上)

記事

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タイ陸軍が米国製M41戦車の後継として発注した中国のVT4戦車(出所:Wikipedia)

中国の軍事的・外交的拡張戦略の進展は、南シナ海だけにとどまらない。南シナ海での人工島建設や基地群誕生のように大々的に取り上げられることはないが、タイとの軍事的関係の親密化も目を見張る勢いで推進されている。

露骨にタイに冷たく接したオバマ政権

2014年5月、タイで政治的混乱を鎮定することを大義とした陸軍が中心となってクーデターが敢行され、8月にはプラユット陸軍総司令官が国王から首相に任命され軍事政権が発足した。

それ以降、軍事政権を一律に忌み嫌うオバマ大統領は、タイに対して露骨に冷たい姿勢を示し始めた。

オバマ政権の方針により、それまでタイ軍部と親密な交流を続けてきていたアメリカ軍部も、合同演習などの規模を縮小したり、中止したりせざるを得なくなった。そのため、東南アジアや極東軍事戦略を担当していたアメリカ軍関係者などの間からは、「アメリカ軍とタイ軍の関係が疎遠になってしまうと、その隙に乗じて中国人民解放軍の影響力が強まりかねない」といった危惧の声が上がっていた。

その心配は的中した。オバマによるタイ軍事政権に対する“冷たいあしらい”が始まるやいなや、中国側からタイ軍事政権への軍事的・経済的なさまざまなアプローチが開始されたのである。

本コラムでも指摘したように、2015年夏には、中国によるタイ海軍への潜水艦売り込みに関する具体的情報が流れ始めた。国防予算の関係でこの年の取引は白紙となったが、中国側が“経済的パッケージ”を提供したことで、2016年の夏には3隻の中国製「元型S26T」潜水艦をタイ海軍が手にすることが決定した(本コラム2016年7月14日「潜水艦3隻購入で中国に取り込まれるタイ海軍」)。

潜水艦は国家機密の塊ともいえる軍艦である。そのような潜水艦をタイ海軍に売却し、潜水艦要員の教育訓練や合同演習などを行うことで、人民解放軍海軍とタイ海軍の結びつきは強固になっていく。そして中国側は、潜水艦売却に加えて、継続的に必要となるメンテナンスや修理などを通して経済的利益をも手に入れることになったのである。

今度は新鋭地対空ミサイル

オバマ政権がタイ軍事政権を敵視する政策をとることは、中国にとって好機に他ならない。中国はこの機に乗じて、軍事上の利益と経済的利益を手中に収めつつ、中国国防圏をタイにまで拡大していこうとしている。その戦略は潜水艦取引にとどまらない。

12月13日、タイ空軍は、中国の「中国精密机械进出口总公司」(CPMIEC:中国国営の防衛企業。主としてミサイルや防空システムに関連した兵器や技術の輸出の代理店)から輸入したKS-1C中距離地対空ミサイルシステムを公開した。

1980年代以降、タイ空軍は短距離(最大射程10キロメートル以下)地対空ミサイルをイギリス、スイス、スウェーデンなどから輸入していた。だが、その後、それらは中国製のQW-2短距離地対空ミサイルに置き換えられてきた。そして今回、最大射程距離70キロメートル、最大射程高度27キロメートルとこれまでの短距離地対空ミサイルに比べると極めて高性能のKS-1C中距離地対空ミサイルを、タイ空軍は手にすることになったのだ。

KS-1Cは人民解放軍(陸軍と空軍)が使用しているHQ-12対空ミサイルシステムの輸出向けバージョンである。そのため、中距離地対空ミサイルを初めて手にしたタイ軍に対して、中国人民解放軍が教育訓練を実施することになる。訓練を通して両軍の関係はますます親密になっていくものと思われる。

中国は、KS-1Cよりも射程距離が短いKS-1A中距離地対空ミサイルをミャンマーに輸出しているし、タイと同じKS-1Cを中央アジアの隣国であるトルクメンスタンにも持ち込んでいる。そして、タイに引き続いてパキスタンとマレーシアにもKS-1Cの売り込み攻勢をかけている。それらの売り込みが成功すれば、地対空ミサイル供与を突破口に、人民解放軍の影響力が中国周辺諸国に広がることになるのだ。

タイ国内に中国の装甲車両工場が誕生?

中国が経済的利益を手にしながら軍事的影響力を拡大していくために用いているのは、潜水艦や地対空ミサイルだけではなく戦車にも及んでいる。

タイ陸軍は、かつてアメリカから輸入したM41戦車(陸上自衛隊も1960年代にはM41戦車をアメリカから供与されていた)の後継として、28両の中国製VT4(MBT-3000)を発注した。初期の試験運用などの状況如何では、VT4を150両ほど追加注文するものとみられている。

VT4は中国北方工業公司(ノリンコ)が製造する輸出向け主力戦車であり、旧式の米国製軽戦車であるM41と違って、人民解放軍が使用している99式主力戦車を元にした近代的戦車である。このような新鋭戦車の輸出を通して、タイ陸軍と人民解放軍の交流がさら深まることは確実である。実際に、VT4の輸出にとどまらず、中国の装甲車両メーカー(すなわちノリンコの子会社)がタイに進出する話まで飛び出した。

先週、北京の中国国防省を訪問したタイのプラウィット国防大臣(副首相を兼任、退役陸軍大将)は、人民解放軍の最高幹部たちに対して、主力戦車をはじめとする装甲車両の整備工場や生産拠点をタイ国内に建設するよう誘致したという。中国側は即座にタイ側の誘致案を支持し、さっそくワーキンググループを発足させることで合意したという。

このほか北京では、プラウィット国防大臣と李克強首相との間で、タイ縦貫鉄道や高速道路を建設するための中国・タイ共同プロジェクトが合意されている。そのため、タイに中国の装甲車生産・整備工場が誕生する日もそう遠くはないと考えられる。そして、タイ陸軍が手にする100輛以上のVT4主力戦車は、タイ国内のノリンコ工場で生産されることになるかもしれない。

世界各国が最先端防衛技術を戦略的に活用

潜水艦にしろ、地対空ミサイルシステムにしろ、主力戦車にしろ、中国は、タイのように自ら兵器を製造できない国々に売り込むことにより、経済的利益を手にするだけではなく軍事的影響力をも着実に植え付けつつある。もちろんそのような武器供与は、単なる思いつきではなく綿密に練られた安全保障戦略に基づいている。まさに防衛産業を国防ツールとして有効に活用しているのだ。

このように、新鋭兵器の輸出を戦略ツールとしているのは中国だけではなく、アメリカ、イギリス、ドイツ、フランス、スウェーデン、イスラエル、ロシアをはじめ枚挙にいとまがない。最先端技術力を有し、各種兵器を生み出している国々の多くは、兵器の輸出を戦略ツールとして活用し、経済的利益を手に入れると共に、外交的立場を強化したり、国内産業の保護を図ったり、国内の最先端技術力の発展に役立てたりしている。

日本には、中国が戦略ツールとして輸出する元型S26T潜水艦、KS-1C中距離地対空ミサイル、VT4主力戦車と同等か、それ以上の性能を誇る潜水艦、地対空ミサイル、主力戦車を作り出す技術が存在する。ところが、いくら高性能兵器を生み出しても、自衛隊だけにしか供給できない仕組みが続いていては、国際競争から脱落することは自明の理である。日本政府は、せっかく国内に存在する技術力を戦略ツールとして活用していかなければならない。

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『トランプ次の一手は?オバマが激怒した「プーチンのサイバー攻撃」黒幕は中国』(12/18MONEYVOICE カレイドスコープのメルマガ)、『習近平と激突。手のひら返しで「対中国強硬路線」に舵を切るトランプ』(12/20MONEYVOICE 斎藤満)について

“MONEYVOICE”はメールで毎週金曜日送られて来ます。どちらかと言うと、グローバリズムとリベラルな論者の記事が多い印象です。また、記事全体が読める場合だけでなく、一部だけで後は購読しないとダメと言う場合もあり、本両記事ともそうでした。故に小生は全体を読んでいませんので、コメントが的を外している可能性もありますが、その場合にはご容赦願います。

「カレイドスコープ」記事でアーネスト報道官の「ハッキングしているのは中国」と口を滑らしたのが本当であれば、やはり民主党政権は米・日とも腐っています。困った時のプーチン頼みで、悪いことは総てプーチンのせいにするのであれば、一体何のためにロシアをそんなに敵国扱いしなければならないのか、不思議に思います。馬渕睦夫氏の講演会に参加したことがありましたが、ナポレオン戦争後のウイーン会議で、英国の提案にロシアが反対したため、その恨みが続いていると言う話だったと記憶しています。

http://www.kanekashi.com/blog/2015/01/3751.html

カレイドスコープ氏はロシアを中国との仲立ちと考えているようですが、それは無いと思います。斎藤氏の記事の方が的を射ているのでは。それこそキリスト教同盟で中国を包囲するのでは。ただ米中とも拝金体質ですからその点の注意は必要です。

中国は空母「遼寧」を西太平洋に進出させ、米国と太平洋二分割を実現させるつもりのようです。ただ、地政学上、沖縄に基地を置く米海軍は、太平洋二分割は認めないでしょう。「遼寧」は原子力でないので、どこかで給油しなければならないのでは。中国は太平洋に基地がある訳でなく、給油艦が並走しなければなりませんが、それを攻撃されれば空母は単なる鉄屑になります。離発着の訓練も時間が足りず、脆弱であり、こけおどしの為でしょう。電磁カタパルトを開発した可能性もあると言われていますので、今回の就航で発艦訓練されれば、事実が掴めると思います。

http://wedge.ismedia.jp/articles/-/4888?page=3

中国のA2/AD戦略は米軍空母群を中国の領海に近づけない戦略で、多数のミサイル攻撃がそれを可能にします。それであれば米軍も同じことができる筈です。空母は目くらましで、下には潜水艦がいて米大陸がSLBMで攻撃できる8000Kmのところまで連れて行くのが狙いではと想像しています。

空母は建設に金がかかる上に、護衛艦等が必要で単独行動できないため、コストがかかります。トランプが言うように、経済的に中国を締め上げる方が賢明かと。ピーター・ナバロが大統領通商顧問になりそれを実行していくことを願っています。軍拡に勤しむ中国は世界平和の攪乱要因です。南シナ海の国際仲裁裁判所の判決を紙屑と言ってのける国ですので、ロシアに課しているような経済制裁をすべきです。欧米は二重基準ではないでしょうか。クリミアを侵略と言うのであれば、南シナ海も同じ扱いにすべきです。

日本も防衛兵器だけで対応するのは限界があります。マッハ5(20Km/m)のミサイルを数多く撃たれたらミサイル防衛だけでは間に合いませんし、外す場合もあると思います。米国とニュークリアシエアリングの話をすべきですし、攻撃用武器の開発も進めるべきです。防衛費を10兆円に近づける努力をして行かないと。国民の支持が大切ですが、政府はキチンと国民に説明する必要があります。

レアアースの記事は、2010年尖閣での漁船拿捕時に中国がレアアースを日本に禁輸しましたが、日本は代替国や代替品、都市鉱山で困りませんでした。南鳥島沖にはレアアースが埋蔵されているとの情報もあります。中国が米国にレアースで報復するのであれば、日米で対応策を講じれば何とか乗り切れると思っています。

カレイドスコープ記事

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「米大統領選中のサイバー攻撃はロシアの仕業だ」オバマとワシントン内部のヒラリー派は、困ったときのプーチンとばかり濡れ衣を着せていますが、このロシア・ハッキング説は虚偽でしょう。(『カレイドスコープのメルマガ』)

※本記事は、『カレイドスコープのメルマガ』 2016年12月15日第186号の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。割愛した全文もすぐ読めます。

サイバー攻撃を仕掛けた「中国の罪」をロシアに擦り付けた米CIA

プーチンロシアとトランプ政権の「疑惑」

トランプ次期大統領は、国務長官にエクソンCEO、レックス・ティラーソン(Rex Tillerson)の指名を決めました。ティラーソンが有能であることは誰もが認めるところです。

しかし、ティラーソンが、トランプの選挙を操作したのではないかと疑われているロシアのプーチンと親しい関係を築いているということから、トレーダーたちは、この指名を訝しく思っているのです。

事実、ティラーソンは、数年前から、ロシアの英語圏向けニュース「RT」に何度か出演している有名人です。

トランプが、マイク・ペンスを次期副大統領にするために、元ニューヨーク市長のジュリアーニを推さず、クリス・クリスティーをあえて降格させたように、トランプが、一人の候補者に多くの政治的リソースを割く意味が不明で判然としない以上、ウォール街はやや困惑させられています。

なぜ、ペンスをそこまで高く評価するのか?なぜ、ティラーソンを外交の重要なポストに就けるのか…?

米国の左翼の陰謀論者は、プーチンが米国の大統領選を馬鹿にしているだけでなく、ティラーソンを指名したことは、トランプ政権をロシアの傀儡にするためのシナリオの一種であると考えています。

「困ったときはプーチンのせい」ヒラリー派の誤算

ここで珍妙な、ほほえましい場面(YouTube動画・英語)があります。

先日、ホワイトハウスで行われた記者会見で、ワシントンの報道官が、ロシアとの間の種々問題について、外交的解決の道はあるかという記者の質問に答えている場面です。ジョシュ・アーネスト(Josh Earnest)報道官が、ついうっかり漏らしてしまったこととは――

彼は、今回の大統領選を混乱させ「サイバー攻撃を仕掛けたのは中国である」と、うっかり口を滑らせてしまったのです。その後、すぐに「失礼、ロシアでした」と言い直したものの、ときすでに遅し。

ワシントン内部のヒラリー派は、「困ったときのプーチン」とばかり、この忍耐強く、なかなか真相を言わない男に濡れ衣を着せてしまえば、12月19日に実行される全米の大統領選挙人による投票でヒラリーを勝たせることができるかもしれないと考えているのでしょう。

しかし、ロイター(英文)が報じるところによれば、CIAを含む米国の情報機関のすべてを束ねているODNI(Office of the Director of National Intelligence)は、「CIAが主張しているロシア・ハッキング説を支持しない」と公式に言明したとのことです。

この会見でのアーネスト報道官の舌禍と、その後のバツの悪そうな表情は、ホワイトハウス自体がディスインフォメーションを流していることを決定的に証拠づけるだけでなく、さしてそれを気にも留めない大統領府の腐敗した体質を垣間見せたという点で、非党派的な政権移行への希望を持っていた米国の有権者を大いに失望させたのです

「トランプ・プーチン同盟」を形成させた2つの背景

トランプとロシアのプーチンとの間には、確かに信頼関係が形成されています。それには、明確な理由が一つ二つあります。

その一つは、ロシアと中国が、経済協力において同盟国であるだけでなく、軍事に関しても、強固な同盟関係を結んでいる事実があることから、実利的な中国との仲立ちをできるのがロシアしかないということです。

もう一つは、米国の産業界が中国のレア・アースに依存しているということ、この二つです。

今年4月、中国は、超音速兵器の最先端を行っていると軍事関係者に評されている最新鋭の超音速滑空体「DF-ZFグライダー」の7回目のテスト飛行に成功しました。それは、完成の域に達しています。

中国とロシアは、これまでにも、核攻撃を行う能力を持つ超音速兵器を繰り返しテストしてきました。少なくとも2014年から始まっています。

米国情報当局は、ますます複雑化している世界のミサイル防衛に対処するため、中国が、超音速で高高度を滑空できるグライダー型の核搭載型飛行体を配備する計画を持っていることを早くから掴んでいます。

DF-ZFグライターも、1時間以内に世界中のターゲットを攻撃することができる通常戦略攻撃兵器の一部として使われる可能性があります。

これらの超音速兵器の速度と破壊力が、どれほどのものか想像することさえ困難です。それは圧倒的で、マッハ5以上で飛行することができます。

中国とロシアの新兵器は、世界の安全保障に深刻な脅威を及ぼします。米国の兵器開発力は、すでにそれに追いつけないほど衰弱しています。

全米アカデミー(※)は、最近、空軍の委託を受けてとりまとめた詳細な報告書のうち、機密扱いにされていない部分の要約を発表しました。 ※全米アカデミー: United States National Academies ; National Academy Complex。全米科学アカデミー、全米技術アカデミー、米国医学研究所、全米研究評議会の4組織から構成されている。

そこには、「今の米国には、新兵器の明確な獲得方法が欠如している。(中国などの)潜在的な敵対者の熱狂的な研究開発のペースは速く、その成果は驚くべきものである。これは、米国とはまったく対照的であり、この分野への投資は重要である」と書かれており、新兵器開発で米国がロシア・中国の後塵を拝していることを認める記述があります。

なぜ中ロは野放しにされたのか?

なぜ中国とロシアは、国防を目的としながらその実もっとも攻撃的な新兵器の開発を、まったく邪魔されず成功させるに至ったのでしょうか。

もちろん、ネオコンに牛耳られているワシントンでは、米国とロシア、中国の利害が一致したからに他ならないのです。

日本では、北朝鮮が小型核弾頭の開発に成功したと、極東有事の可能性を煽っています。そして、米国は、北米が北朝鮮の大陸間弾道ミサイルのターゲットになろうとしている、と国民の恐怖を煽っています。

また、日本の自称右翼の人々は、核武装化によって日本の真の独立を勝ち取るべきだ、と主張しています。

これらは、現状をまったく知らないか、あるいは、知っていながら保守を気取っている軍事評論家による情報操作の賜物なのです。

レア・アースの獲得に赤信号が点った米国

米国も、もちろん、DARPA(国防高等研究計画局)が宇宙兵器の開発を急いでいます。しかし、この分野でロシアと中国に大きく水をあけられてしまったことは否定しようのない事実です。

その理由は、米国が幅広い分野で、コモディティー(原油・ガスなどのエネルギー、金・銀・プラチナなどの貴金属、小麦・大豆・とうもろこしなどの穀物の総称)の逼迫(品不足)に直面しているからです。

一方で、中国の兵器開発を牽制するかのような厳しい中国への批判を行い、一方で、米国の経済成長と軍事増強の二つを同時に達成しようというトランプの計画は、経済成長だけを求める新自由主義の投資家の熱狂を冷やすこととなり、トランプ政権の船出は、かなり厳しい障害に直面しそうです。

米国は重要なコモディティーのうちの50%以上を輸入しています。中でも、電気自動車から軍事技術までの広い範囲で必要不可欠なレア・アース(希土類元素)は中国に依存しています。

ペンタゴンは、10年以上の間、レア・アースの供給網への不自由なアクセスを改善しようと何ら手を打ってきませんでした。

しかし、2016年、米・連邦監査局は、レア・アースに関する広範な報告書の中で次のように警告しています。

「ペンタゴンは、重要なレア・アースを構成することについてまだ同意しない」。

中国のレア・アースに頼っている産業界は米国だけでなく日本も同じです。その中国が、レア・アースを外交カードに使うために、さらに戦略性を強化しようと、2020年に向けて生産量を制限する方針を発表しました。

米国にとって、それは安全保障を直撃するほとのインパクトになるのです。

米国は、完全に中国が輸出しなくなった場合に備えて、レア・アースを採掘し複雑なサプライチェーンを管理するエンジニアを、一刻も早く養成しなければならないのです。

しかし、米国のたった一つの大学でさえも、レア・アースについての本科を設置していないのです。人材の育成には、大分時間がかかります。

時間を稼ぐトランプ

トランプは、中国に軽いジャブを与える程度にして必要以上に刺激せず、資源確保のための計画を練る時間を稼いでいるのです。

だから、トランプにとってロシアのプーチンとの友好関係は、中国を間接的に制御する上で必要欠くべからざる要素なのです。

斎藤記事

親中派のキッシンジャー氏が北京を訪れている最中に台湾の蔡総統と電話会談し、習主席を怒らせたトランプ氏。今後も、経済・軍事両面で中国を攻める可能性が高いでしょう。(『マンさんの経済あらかると』斎藤満)

※本記事は、『マンさんの経済あらかると』2016年12月19日号の抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール:斎藤満(さいとうみつる) 1951年、東京生まれ。グローバル・エコノミスト。一橋大学卒業後、三和銀行に入行。資金為替部時代にニューヨークへ赴任、シニアエコノミストとしてワシントンの動き、とくにFRBの金融政策を探る。その後、三和銀行資金為替部チーフエコノミスト、三和証券調査部長、UFJつばさ証券投資調査部長・チーフエコノミスト、東海東京証券チーフエコノミストを経て2014年6月より独立して現職。為替や金利が動く裏で何が起こっているかを分析している。

トランプ政権は経済・軍事の両面作戦で中国を潰しにかかる

弱まっていた対中強硬論

トランプ次期大統領の対中国戦略が、かなり強硬路線になりそうなことが見えてきました。中国サイドがかなり神経質になっていると同時に、米国内にも対中関係の悪化、報復を危惧する声が高まっています。

これは日本にも当然大きな影響を及ぼしますが、日本政府の準備、対応が必ずしも十分でないのが気がかりです。

トランプ氏の米国が、これまでのオバマ政権以上にロシア寄り、英国寄り、イスラエル支持に傾斜していることが明確になり、さらに不透明であった中国戦略も、当初の予想と異なってきたのです。

【関連】トランプ次の一手は?オバマが激怒した「プーチンのサイバー攻撃」黒幕は中国

巷では、「アメリカ・ファースト」はかつての「モンロー主義」に近く、ロシアや中国には一定の範囲で好きなようにやらせる、との説がありました。このため、選挙キャンペーン中に発していた対中国強硬論、例えば中国を為替操作国に指定する、あるいは中国のダンピングに対して、高率関税をかける、などの発言は、実際には実行されず、最後には米中経済関係を重視せざるを得ない、との見方がありました。

12月8日には習主席と近いブランスタド・アイオワ州知事を中国大使に指名し、この感は強まりました。

またトランプ陣営の中では、中国が主導するAIIBにアメリカも参加すべき、との声も上がり、さらに、CFR(外交問題評議会)の重鎮で、親中派の代表ともいえるキッシンジャー元国務長官を北京に派遣したことから、対中強硬論はかなり後退しました。

手のひら返し

ところが、ここから事態は急変します。キッシンジャー氏がまさに北京を訪れている最中に、トランプ氏は台湾の蔡総統と電話会談をし、習主席を怒らせ、キッシンジャー氏の面子を潰しました。

トランプ氏は、中国の反発に対し、今度は「一つの中国」という考えにはとらわれないと、中国の基本認識自体を否定する発言をしました。ここに至って、トランプ次期政権の対中国路線は、これまで以上に強硬路線になることがほぼ判明しました。

中国は米国の出方を探るために、東シナ海で日本の領空を脅かし、日本を挑発し、南シナ海では米国の無人水中捜査船を拿捕しました。

中国は米国をけん制したつもりでしたが、さすがに米国は強硬に抗議したため、中国軍はこの無人水中捜査船の返還を約束しました。中国は米国と戦争しても勝てないのはわかっているので、軍事行動には慎重にならざるを得ないからです。しかし、米国が強硬策に出てくれば、中国が指をくわえてみているとも考えられません。

経済、軍事両面で中国を攻めるトランプ

トランプ氏は米国経済の苦境の一因として、中国の為替操作、ダンピングを挙げ、敵視しています。トランプ氏は今後、経済、軍事両面から中国を攻めてくる可能性があります。

一般に軍産複合体とは相いれないトランプ氏との評価も見られますが、実際には軍事産業にも配慮した動きが見られ、軍事面でも強硬論に出る懸念があります。

その点、対中国では米国が台湾への武器供給を進める可能性があり、台湾海峡の緊張が高まる可能性があります。米国では軍事産業にいい顔をすることができます。また国務長官に指名されたエクソンCEOのティラーソン氏は、親ロであると同時に、中国嫌いでも有名です。

経済的には、2つの面から米国が中国を攻める可能性があります。1つは、米国製品に対して中国が不当な関税をかけ、逆に中国製品は通貨安政策とダンピングで米国製造業を圧迫していることへの対応。今1つは、FRBの利上げを通じて中国の債務負担を高め、その面から中国の経済力を削ぐことです。

米国企業の中には中国の報復を懸念する声が上がっていますが、中国の対米黒字が圧倒的に大きい点を見ても、経済戦争になって大きなダメージを受けるのは中国です。

中国に進出している米国企業が不当な差別を受ければ、米国の軍事力行使や米国内での中国資産の凍結など、こちらの報復も甚大で、米国企業よりも中国マネーが大きな負担を強いられます。

来年のFRBの利上げには中国当局はかなり神経質になっています。ドル建て債務が大きいこともさることながら、中国からの資金流出が一層加速する懸念があり、中国経済がダブルで影響を受け、中国経済は来年かなり悪化が予想されます。

共産党政権が維持されている間は、中国危機は回避できます。しかし体制が崩壊すれば、旧ソ連と同じ運命になります。

このように、米中関係が緊張し、関係悪化が進むと、その影響は日本経済にも及びます。日本の輸出の約2割が中国向けで、アジア全体で5割、これに豪州を加えると6割を占め、これらも中国の影響を受けます。中国投資や中国に進出している企業も中国経済悪化の影響を受けます。中国関連銘柄は、今後米中の動きに細心の注意が必要です。

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『なぜ中国は米軍の潜水ドローンを拿捕したのか 忍耐力の低い米中の「偶発事件」に備えよ』(12/21日経ビジネスオンライン 福島香織)について

10/22日経<習氏悩ますトランプ流(ニュース解剖) 「一つの中国」も取引材料に

米次期大統領、トランプと中国国家主席、習近平が激しい神経戦を演じている。トランプは台湾総統、蔡英文との歴史的な電話会談に踏み切り、「一つの中国」さえも経済問題などの取引材料だとした。助走段階から不協和音が聞こえるトランプ時代の米中関係。その実相を追った。=文中敬称略

「南シナ海で米中が戦争か」――。アジアの一部メディアが派手に伝えた事件は20日、中国軍が奪い取った米国の無人潜水機を返還し、決着した。海中で情報を集める米軍と、それを実力で阻止した中国軍。一連の動きは、原子力潜水艦がせめぎ合う米中軍事対峙の危うさを浮き彫りにした。

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■政権移行期狙い挑発

中国は、トランプの「無人機が盗まれた」とのツイッターでの言及に対し、「路上で物を拾ったら(所有者などを)調べなければならない」と主張した。だが450メートルという近さにいた米無人機の母船は無線で返還を求めていた。所有者を知りながら持ち去れば窃盗である。中国軍の明らかな挑発だった。

しかも、場所はフィリピン・スービック港の北西90キロの公海上で、中国が一方的に管轄権を主張する「九段線」の外だ。中国が埋め立てを狙うスカボロー礁にも近い。中国側の意図は何か。その背景には、米国と軍事協定を結ぶフィリピンの大統領、ドゥテルテが突然、中国に急接近したことがある。

「中国軍は今ならフィリピン近海で米軍に手を出しても安全だと踏んだ。米政府とドゥテルテの反応を試したのだ」「米軍が動きにくい政権移行期を利用し、中国軍がスカボロー礁周辺を仕切る既成事実をつくりたい」。南シナ海問題の専門家らは中国の狙いをこう指摘する。

17日、ドゥテルテは7月の仲裁裁判所判決に絡み「中国にいかなる要求もしない」と述べ、米国との共同歩調を否定した。スカボロー礁の埋め立てをあきらめていない中国にとっては、狙い通りの展開だ。米側の反応が限定的なうちに無人機を早期に返還しても目的は達成したことになる。

中国軍は東でも駒を進めていた。10日、中国空軍の編隊は沖縄本島・宮古島間の「第一列島線」を突破。台湾・フィリピン間のバシー海峡を抜けて、台湾を取り巻くように飛んだ。

航空自衛隊のF15が緊急出動。米軍は無人偵察機グローバルホークで高空から中国軍を監視した。台湾紙、聯合報の報道だ。中国軍は日台に圧力をかけ、背後の米軍の動きを探った。

中国には別の政治目的もあった。接近する日本の首相、安倍晋三とロシア大統領、プーチンへのけん制球だ。2人が日本で会談した前後、中国軍のリークとされる奇妙な軍事映像がインターネット上に出回った。

「我が軍のスホーイ30戦闘機が(日本の)F15を狙う」。中国機の脇を飛ぶF15の映像説明は刺激的だ。しかもスホーイ30がF15を「ロック・オン(照準の固定)」との表現まである。

映像リークの思惑を中国の安保関係者が解説する。「注目点は、映像で中国がロシアから導入したスホーイ30を確認できること」。スホーイ30は中ロ「準軍事同盟」の証しだ。日ロ会談中にプーチンは中国陣営にいるとアピールしたのだ。

習近平は唯一の盟友、プーチンの動向が気になる。トランプもエクソンモービル出身でプーチンと親しいティラーソンを次期国務長官に指名した。

「トランプはプーチンを利用して中国に圧力をかけかねない」。中国のシンクタンク内では警戒の声も上がる。

■中国不動産王の脅し

中国が当初、トランプ当選を歓迎したのは、利で動く「商人」と見たからだ。中国に厳しいヒラリーとは違う。ニンジンをぶら下げて陰に陽に圧力をかけ、取引に誘い込めば中国有利に動かせる。そんな読みがあった。中国は資金力なら絶対の自信がある。

中国の戦術の一端が垣間見える動きがあった。主役はトランプの向こうを張る中国一の不動産王、王健林だ。「我々は米国に100億ドルを投じ、2万人超を雇っている。うまくいかないなら2万人が食いぶちを失う」。商業用不動産で中国トップの大連万達集団(ワンダ・グループ)を率いる王健林は10日、北京で言い放った。

中国の利益を侵せば投資を引き揚げる。それは単なる脅しではない。大連万達は既に米大手映画館チェーンAMCエンターテインメント、映画バットマンで知られる米映画製作会社、レジェンダリー・エンターテインメントを買収した。

関係者は、裏に控える共産党の意向を指摘する。大連万達は民間企業だが、中国の高級幹部の子弟を指す「太子党」と関わりが深い。王健林は習近平の姉の夫の会社が以前、同社株を持っていた事実も明かした。

トランプは旧来の枠組みを軽々と超え、「一つの中国」まで取引材料だとする。巨額の対中貿易赤字、関税、為替操作……。これらも皆、取引の対象になり得る。「利にさといビジネスマン」。そう甘く見ていたトランプが本領を発揮し、習近平が手を焼く構図だ。

来年後半、中国は最高指導部人事を控える。権力闘争が山場を迎える頃、習近平が海洋で強硬策に出る可能性は残る。2012年の最高指導部人事の直前、中国は尖閣諸島問題で突然、強硬姿勢に転じた。反日デモで日本企業に多大な被害が出たのは記憶に新しい。

トランプは次期国防長官に「狂犬」の異名を持つ元中央軍司令官、マティスを指名した。アフガニスタン、イラクで戦った経験豊富な元軍人を相手にする「火遊び」は危険だ。トランプの大統領就任後、南シナ海に変化があるのか、目が離せない。

米中ロ「三角関係」の先行きは読みにくい。日本もどんな展開にも対応できる入念な準備が要る。旧来の発想にとらわれない柔軟な外交戦略が求められる。(編集委員 中沢克二)>(以上)

12/23日経<米マクドナルド、中国事業2300億円で売却 CITICなどに

米マクドナルドは中国事業を中国の国有複合企業、中国中信集団(CITIC)と米投資ファンドのカーライル・グループの連合に売却する方針を固めた。対象は中国と香港に保有する店舗で売却額は20億ドル(約2300億円)を超えるとみられる。マクドナルドは業績が頭打ちとなっており世界でリストラを進めている。競争が激化している中国事業の売却で収益基盤を立て直す。

年明けにも発表する見通しだ。複数の投資ファンドが中国企業と組んで名乗りを上げていたが、金額などの条件面から最終的にCITIC連合が独占交渉権を獲得した。

マクドナルドは1990年に中国に進出した。現在は約2200店を展開し約10万人の従業員を抱えている。だが、2014年夏に取引先が賞味期限切れの鶏肉を使っていた問題が発覚し、売り上げが大きく減少した。中国の消費者の所得水準が向上し、最近は地元資本の外食チェーンや外資のカフェチェーンなどに顧客を奪われている。

米マクドナルドは成長鈍化に直面する。16年7~9月期決算は純利益が前年同期比3%減になるなど利益減少が続き、コストのかかる直営店から外部に運営を任せるフランチャイズ店への切り替えを進めている。

18年末までに世界の店舗の1割弱をフランチャイズ店に移行する計画を掲げ、シンガポールとマレーシアでも店舗の経営権を売却した。中国事業もCITIC連合に売却したうえで、マクドナルドの店舗として営業を続ける公算が大きい。

米マクドナルドは保有する日本マクドナルドホールディングス株の一部売却も検討している。日本でも賞味期限切れ鶏肉問題などで客離れが進んだが、11月まで既存店売上高が12カ月連続で増加するなど業績が回復している。株価も大きく上昇しており、株の売却計画が進むかは不透明だ。>(以上)

マックの中国事業の株式売却は経済的理由だけでなく、今後の米中(トランプVS習)の覇権争いで、関税問題や経済制裁等の報復合戦、場合によっては南シナ海or東シナ海での小競り合いが起きるかもしれないと考えた上での決断では。賢明と思われます。日本企業の撤退は時間がかかり過ぎて間に合わないでしょう。ソニーは株式売却を従業員に手切れ金を払う形で解決しました。平時であれば非難の対象とすべきですが、准戦時と考えれば見事な決断と言えます。ただ中国事業は「まだまだ、かなりの投資機会があると見てよい」というのは中国へのリップサービスでしょう。本当にそう思っているなら売却しないと思います。因縁つけられるのを避けるためです。中国は暴力団が国を運営しているという事の証拠です。従業員を裏で煽動しているのは共産党でしょう。撤退させないように。

12/23日経<ソニー、中国工員スト金銭解決「供給守る現実策」 現地法人トップに聞く

ソニーの中国南部にある広東省の工場で11月、従業員約4千人による大規模なストライキが起きた。工場を中国企業に売却することに不満を示し、補償金を求めるストが約2週間続いた。同時期に米コカ・コーラの中国工場でも同様の理由でストが起き、中国ビジネスの難しさが改めて浮き彫りになった。ソニーの中国の現地トップ、高橋洋董事長(55)に金銭解決に至った判断や中国事業への見方を聞いた。

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約2週間にわたってストが続いたソニーの広州工場で掲示板を見る従業員ら(11月)

――今回、カメラ部品を生産する広東省の広州工場で、なぜ大規模なストが起きたのですか。

「11月に中国企業への工場売却が決まった。従業員も労働条件など、そのまま中国企業に引き継ぐことも決まり、我々は粛々と業務移管を進めればよかった。ただ、従業員はソニーと全く関係のない企業に移ることが不安で、不満を持った」

――ソニー側に何か、落ち度はありましたか。

「正直ない。今振り返っても、こうすればよかったと思うこともない。我々は全力を尽くした」

――ただ、従業員はソニー側から工場売却に関し、事前の説明不足を指摘していました。

「私には2つの原則がある。1つは、不安になっている従業員に誠心誠意寄り添い、包み隠さず、会社の決定を丁寧に説明すること。2つ目は法に従い、現地政府の指導も受け行動を進めること。この2つの原則を絶対に曲げずに貫くことが中国ビジネスでは大事で、今回もそれを貫いた」

――ただ今回、従業員は職場を放棄したうえ、支払う義務のない経済補償も求めました。

「非合法な要求だが、会社が替わることに不安を持つ気持ちも分かる。だが、我々には顧客への供給責任がある。だから、生産ラインに戻って仕事を再開してくれる従業員には(最大約1万6千円の)『功労金』を支払うことにした」

――従業員のごね得にも映りますが、やはり金銭解決は必要ですか。

「顧客への供給責任がある以上、(2週間も続いたストに)どこかで落とし所をみつけるしかない。我々も、最後は現実的な解決をしたわけだ」

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インタビューに応じた高橋洋ソニー(中国)董事長兼総裁(上海市)

――高い経済成長を遂げた中国ですが、この10年間で従業員の質にどんな変化がありましたか。

「ホワイトカラーの質が格段に上がった。非常に能力が高い。一方、工場の従業員の方々は正直、本質的には、まだあまり変わってはいない」

――中国で労働争議は今後も続きますか。

「中国は国全体が今、構造改革の途上にある。改革にはリストラなど大変な痛みが伴う。労働争議は不可避で今後も増えるだろう。だが、だからといって中国が駄目だというのは少し短絡的だ」

「労働争議は改革に必要なプロセス。それを通して色々な経験を今、企業も政府も労働者も蓄積している段階だ。政府もそれをよく理解していて今回起きたストへの対処にも協力的だった」

――ソニーは中国で7工場を持ち、数万人を雇用しています。今後のビジネスをどう見ますか。

「(政府に対しては)外資企業の参入や撤退の手続きを、もう少し容易にしていただきたい。だが、中国のビジネス環境自体は間違いなく良い。日本企業の場合、自社が強い分野に特化して参入したとしても、まだ巨大な市場が広がっている。こういう国は他にない。当社も確実に利益を出している。日本企業にはまだまだ、かなりの投資機会があると見てよい」>(以上)。

呉士存の言う「米国が(中国が領海と主張する)九段線の中に入ってきたのは・・・」と言うのは、事実誤認であります(九段線の外)が、わざとそう言ったと思われます。そもそも、九段線を世界で認めている国は中国以外であるのか、国際仲裁裁判所の判決が出ているのに、です。本当に中国と言うのは自己中心で平気で嘘がつける民族と感心します。

日本人は、米中で局地戦がおきる可能性を考えておかないと。それが尖閣になるのか南シナ海になるのかに拘わらず。尖閣は警察・海保・自衛隊が米軍より先んじて出動しなければなりません。米軍が先に血を流すことはありません。そうしなければ日米同盟は危殆に瀕します。その時に、左翼にかぶれている日本人がどういう行動を取るかです。すぐマスコミは「戦争反対」の大合唱が始まるでしょう。その声は中国に投げかけるべきなのに。洗脳された軽薄な人々もマスメデイアの言いなりになるに違いありません。そうなれば、日本の終わりです。如何に国民全体で国家権力の行使を支えられるかが勝負と思います。そのときにしか国民は憲法改正の意義が分からないと思います。

記事

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「暴君トランプ」と「狂犬マティス」は中国の挑発をいなせるのか(写真:AP/アフロ)

中国の人民解放軍海軍が南シナ海で米軍の無人潜水探査機(ドローン)を「違法に奪取」した。12月15日のことである。米国側はすぐさま返還を要求、18日には中国側も返還に応じることを決定したが、いったい中国側は何を考えて、このような大胆な真似をしたのだろうか。今後の米中関係の行方を占ううえでも、気になるところだ。

フィリピンと中国の係争水域で

米国防総省の発表では、15日、アメリカ海軍の海洋調査船「バウディッチ」が南シナ海のフィリピン・ルソン島沖、スービック湾から北西93キロの地点で、無人潜水探査機(ドローン)2機による海洋調査を実施、探査機を回収しようとしたところ、中国海軍の潜水艦救難艦がボートを出して1機を奪ったという。バウディッチは無線で返還を要請したが、救難艦は応答せずに探査機を持ち去った。

米国側によればドローンは海水の塩分濃度や透明度などを調査するものだが、これは潜水艦航行時のソナーデータに役立つ情報でもある。潜水艦の航行、作戦に必要とされる情報といえば、軍事情報になるが、機密というほどのものはない。国防総省の発表でも、今回の調査は、民間用のドローンを使って非機密情報を収集していたという。

無断でこのドローンを拿捕した中国国防部は「中国海軍は15日午後、南シナ海海域で正体不明の装置を発見し、船舶の航行の安全と人員の安全を守るために、救難艦の責務としてこの装置の識別検査をしたのだ」と主張した。

だが、目の前に米海軍の調査船があり、無線で返還を呼び掛けているのに持ち去ったとなれば、この主張も口実にすぎないとわかる。中国国防部側は識別検査の結果、無人潜水探査機であると判明したので米国に返還すると決定した、と説明。「中国側は米国側とずっと連絡を保っているのに、米国側が一方的に問題を公開し、騒ぎ出したのは不適当であり、問題をスムーズに解決するのに不利となった。我々はこのことに遺憾を表明する」と開き直った。

さらに中国国防部は「強調すべきことは、長年、米軍は頻繁に中国当面海域で偵察や軍事測量を行ってきているが、中国はこのことには断固反対しており、この種の活動を停止することを米国側に要求する。中国側は引き続き米国側のこうした活動に対し警戒を維持し、必要な措置をもって対応する」とけん制した。

米海軍海洋調査船が寄港していたスービック湾沖という現場は、本来フィリピンの排他的経済水域内だが、スービック湾西200キロの地点にあるスカボロー礁はフィリピン、中国が領有権を争う係争地である。米国側はこの周辺海域を国際水域、つまり公海や自由海に準ずるものとして認識しているが、中国側にすれば現場は中国の排他的経済水域ということになる。排他的経済水域内の科学目的調査は沿海国への「妥当な考慮」が必要となっている。

この海域の認識はともかく、軍の船が領海領空のボーダーに近いところで調査を行えば、沿海国にとっては苛立つものだし、情報収集艦が接続水域や領海に入ってこないように、追尾し、監視して追い払おうともするだろう。中国の情報収集艦もしばしば尖閣諸島などの接続水域に入り、ときに領海を横切ることもあったので、日本もきりきりしている。ただ、日本は抗議するが、実力行使を行ったことはない。

中国側がいきなりドローンを無断で拿捕するということは、これは実力行使、戦闘行為に発展してもおかしくないぐらいの挑発といえる。

米国側が抗議と返還要求という抑制の効いた対応になったのは、前代未聞の中国海軍の行為にあっけにとられたのか、ひょっとするとこれは中国政府の意思に反した現場の暴走ではないかと考えたのか、奪われたドローン自体が民間の商用品で収集していた情報も非機密情報であったので、さして慌てる必要もなかったのか。トランプはこの件について、そんなドローンなど中国にやってしまえ、とツイッターで発言したのは、そこに軍事機密として保護を優先させるものはなく、中国の挑発に乗らないことを優先させた、ということかもしれない。

しかし、いったい、中国側は何を考えて、こうした前代未聞の、米国に対して真っ向から喧嘩を売るような行動に出たのだろう。

中国側の主張は、南京大学中国南海研究院院長の呉士存が環球時報のインタビューに対して語ったことにまとめられている。

「米軍の腹はわかっている」

「外国メディアが言っている国際水域、これは米国サイドの言い分であって、海洋法公約上にはこういう言い方はない。海洋には領海、領海の外側の接続水域、排他的経済水域、その外に公海がある。公海は公海としての管理規則がある。国際水域という明確な法律上の定義はない。

したがって、米国が中国に無人潜水探査機を拿捕されたのは国際水域ではない。黄岩島(スカボロー礁)の近海、つまり中国の排他的経済水域内かどうかを判断しなければならない区域である。ならば中国はこの種の科学的研究目的の潜水機に対し管轄権を有することになる。拿捕後、中国は米国と話し合い、最終的な交渉結果を出したわけだ」

「米国はどうして軍事測量船を用いたのか。なぜなら海洋法公約にはアナがあるからだ。沿岸国家が排他的経済水域における排他的主権・管轄権を有しており、海洋科学研究や海底ケーブル敷設や、人工施設建設・管理などについては沿岸国の同意が必要だ。だが、軍事測量については沿岸国の同意が必要、とは書いていない。米国はこの法的アナをついてきたのだ」

「米国が(中国が領海と主張する)九段線の中に入ってきたのは、米国の言うような海水濃度のデータ収集といったものではなく、実際のところは、中国の南沙諸島における施設建設状況にかかわる情報偵察が目的であろう。あるいは、中国の南シナ海の潜水艦航路の探索が目的であろう」

「この意味から言えば、米国の無人潜水探査機は中国の安全に対して脅威をなすものである。これは新たな接近偵察である」

「米国よ、お前は何をしに来たのか? 米軍の腹はわかっている」

習近平政権における「南シナ海政策ブレーン」の筆頭、呉士存がここまではっきりと中国の立場を主張するからには、おそらく今回の事件は現場の暴走というようなものではないと考えられる。一部で習近平自身も知らされなかった「現場の暴走」説が出たのは、そうしないことには、米国側も収まりがつかないからではないか。

ちなみに、2013年1月に東シナ海尖閣諸島付近で起きた「ロックオン事件」も、日本側は「現場の暴走」説をとることによって早期に収束させたが、後々に漏れ伝えられる情報を突き合わせると、習近平政権は2013年当初は、東シナ海で日本を挑発し軍事行動をとらせることで、日本の軍国主義台頭脅威の国際世論をあおり、日米離反を画策する目論見があったようである。日本は挑発に乗らず、この目論見は崩れた。

軍の末端が、政権の意向を無視して、勝手に対象国の軍艦に火器照準を合わせたり、探査機を拿捕したりしたら、それはそれで政権が軍を制御できないということであり、恐ろしい状態である。習近平の軍制改革があまりうまくいっていないという話もあるので、その可能性は捨てきれないのだが、拿捕後の中国の対応、落ち着きぶりを見れば、今回の件に関しては計算づくで来たような印象を受ける。

「やられたら、やり返す」

呉士存の意見をさらに見てみると、こう続く。

「いわゆる南シナ海の国際法廷による仲裁が出たあと、南シナ海問題は中国、フィリピンの当事国同士で解決するという形で下火になったのに、米国はそれに甘んじることができなかった。つまり、それは米国利益に合致しておらず、米国は南シナ海をかき回して中国の平和的発展をけん制しようとしている」

「中米の南シナ海における“地縁的政治競争”、海洋覇権ゲームに決着がついていない以上、米国はまたやってくる」

「中国が南シナ海問題のコントロールを強くできるか否か、それが米国に欲しいままにさせないためのカギだ」

「中国軍はこの点に関しては自信がある。南シナ海情勢は中国の南沙における関係施設の配置にともない徐々に変化してきている。米軍は焦っているのだ」

そのうえで、中国側がドローンを米国におとなしく返還したのは、「我々には米国の接近偵察が国家安全を脅かすことに対し、反撃の用意がある。…中国はただ黙っているだけの忍耐はない。今の時代、やられたらやり返す、ということだ」ということを伝える意味があったという。

トランプは国防長官に中国に強い警戒感を持つ元海兵大将・ジェームズ・マティスを指名しており、軍事的には対中強硬姿勢を強めてくるとの観測が中国側にも出てきている。トランプ政権が登場した当初は、トランプはオバマのアジアリバランス政策を後退させるのではないか、という期待が中国側にもあったが、政権チームの概要が見え始めてくるにつれ、南シナ海、台湾問題など、アジア太平洋における米中軍事対立の先鋭化は避けられないという見方に修正してきた。

もっとも、それでも習近平政権にとっては、トランプ政権はヒラリー政権よりも歓迎すべきだという考えが政権内部には強い。国外に巨大な敵の存在があれば、不安定な内政問題から国民の関心は逸れ、国内はまとまりやすく、共産党政権の求心力は高まる。軍、特に海軍空軍の士気は上がり、習近平の考える軍制改革、つまり陸軍中心から海空軍中心の覇権拡大に向けた軍制への改革が進めやすくなるし、それに伴う軍の掌握によって習近平が目指す独裁体制への道も近くなる、という期待があろう。

しかも米中二大大国冷戦構造というのは、中国が大国として米国に認識されたということでもあるので、そこはかとなく自尊心もくすぐられる。かつての冷戦構造は米ソ対立であり、その米ソ対立ゆえに、米国は中国を経済的軍事的に支援して自分たちの仲間に引き入れようとしてきたのだ。それが今やロシア(旧ソ連)と中国への米国の対応は入れ替わっている。

呉士存が指摘するように、南シナ海は米中の地縁政治競争、海洋覇権ゲームの最重要対局盤である。特に中国は、フィリピンのドゥテルテ政権が心底嫌米であることを布石として、今のタイミングをもってこの対局を制したいところではないか。それが成功するかしないかはともかく。

日本は「偶発的有事」を覚悟せよ

とすると、米中の間に、そう遠くない時点で、なにがしかの軍事的衝突があってもおかしくはない。

誰もが思い出すのは2001年の海南島付近上空での米中軍用機衝突事件(海南島事件)である。無線傍受偵察をしていた米海軍電子偵察機に対して、中国海軍戦闘機が挑発行為をした結果、接触し海に落ちた中国人パイロットは行方不明、米軍電子偵察機は中国側に回収され、機体の返還をめぐって緊張感の続く長い交渉があった。

この事件は中国を「戦略的競争相手」と認識したブッシュ共和党政権下で起きたこともあって、一つ間違えば紛争に発展しかねないものだったが、時の江沢民政権が外資導入による中国経済高度成長政策にプライオリティを置いていたこともあり、双方が忍耐をもって事件を決着させた。

これに続く米中危機は2009年のインペッカブル事件だ。米軍海洋調査船「インペッカブル」が海南島沖南120キロの地点で調査を行っていたところ、中国艦船5隻が取り囲み、立ち退きを要求。中国艦船はインペッカブルに25メートルまで近づき、あわやアレイ・ソナーを奪われそうになった。このときも、ひょっとすると軍事紛争に発展しかねないという危機感があったが、当時のオバマ政権、胡錦濤政権とも基本は協調外交路線にあり、双方が忍耐をもって危機を回避した。

今後、南シナ海で同様の軍事的偶発事件が起きる可能性は十分に予想されることだ。だが過去二度の米中軍事危機と明らかに違うのは、米国・トランプ政権にしても中国・習近平政権にしても、忍耐力が過去の政権と比して明らかに低そうなことだ。政治的にも経済的にも地政学的にも両国の動きに翻弄されやすい立ち位置の日本は、十分にアンテナを張って覚悟を決めておく必要があるだろう。

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『「ロシア革命」に変容する韓国の「名誉革命」 「広場民主主義」の暴走を恐れ始めた保守系紙』、『「キューバ革命」に突き進む韓国 どの大統領候補も皆「離米」』(12/20・22日経ビジネスオンライン 鈴置高史)について

12/19産経ニュース<世界にうずまく「恨」の不気味さ 「アメリカの韓国化」どう克服 評論家・西尾幹二

≪韓国を揺るがしたルサンチマン≫

朴槿恵大統領の職務剥奪を求めた韓国の一大政変には目を見張らせるものがあり、一連の内部告発から分かったことはこの国が近代社会にまだなっていないことだった。5年で入れ替わる「皇帝」を10大派閥のオーナーとかいう「封建貴族」が支配し、一般民衆とは画然と差をつけている「前近代社会」に見える。一般社会人の身分保障、人格権、法の下での平等はどうやら認められていない。

ただし李王朝と同じかというとそうではない。「近代社会」への入り口にさしかかり、日本や欧米を見てそうなりたいと身悶(もだ)えしている。騒然たるデモに荒れ狂った情念は韓国特有の「恨(ハン)」に国民の各人が虜(とりこ)になっている姿にも見える。「恨」とは「ルサンチマン」のことである。完全な封建社会では民衆は君主と自分とを比較したりしない。ルサンチマンが生まれる余地はない。

近代社会になりかかって平等社会が目指され、平等の権利が認められながら実際には平等ではない。血縁、財、教育などで強い不平等が社会内に宿っている。こういうときルサンチマンが生じ、社会や政治を動かす。

恨みのような内心の悪を克服するのが本来、道徳であるはずなのに、韓国人はなぜかそこを誤解し脱却しない。いつまでもルサンチマンの内部にとぐろを巻いて居座り続ける。反日といいながら日本なしでは生きていけない。日本を憎まなければ倒れてしまうのだとしたら、倒れない自分を発見し、確立するのが先だと本来の道徳は教えている。しかし、恨みが屈折して、国際社会に劣情を持ち出すことに恥がない。

≪吹き荒れる「ホワイト・ギルト」≫

ところが、困った事態が世界史的に起こりだしたようだ。ある韓国人学者に教えられたのだが、恨に類する情念を土台にしたようなモラルが欧米にも台頭し、1980年代以後、韓国人留学生が欧米の大学で正当評価(ジャスティファイ)されるようになってきた。

世界が韓国的ルサンチマンに一種の普遍性を与える局面が生じている、というのである。こういうことが明らかになってきたのも、今回の米大統領選挙絡みである。

白人であることが罪である、という「ホワイト・ギルト」という概念がアメリカに吹き荒れている、と教えてくれたのは評論家の江崎道朗氏だった。インディアン虐殺や黒人差別の米国の長い歴史が白人に自己否定心理を生んできたのは分かるが、「ホワイト・ギルト」がオバマ政権を生み出した心理的大本(おおもと)にあるとの説明を受け、私は多少とも驚いた。

この流れに抵抗すると差別主義者のレッテルを貼られ、社会の表舞台から引きずり下ろされる。米社会のルサンチマンの病もそこまで来ている。「ポリティカル・コレクトネス」が物差しとして使われる。一言でも正しさを裏切るようなことを言ってはならない。“天にましますわれらの父よ”とお祈りしてはいけない。なぜか。男性だと決めつけているから、というのだ。

あっ、そうだったのか、これならルサンチマンまみれの一方的な韓国の感情論をアメリカ社会が受け入れる素地はあるのだと分かった。両国ともに病理学的である。

20世紀前半まで、人種差別は公然の政治タームだった。白人キリスト教文明の世界に後ろめたさの感情が出てくるのはアウシュビッツ発覚以後である。それでも戦後、アジア人やアフリカ人への差別に気を配る風はなかった。80年代以後になって、ローマ法王が非キリスト教徒の虐待に謝罪したり、クリントン大統領がハワイ武力弾圧を謝ったり、イギリス政府がケニア人に謝罪したり、戦勝国の謝罪があちこちで見られるようになった。

≪トランプ氏は歪みを正せるか≫

これが私には何とも薄気味悪い現象に見える。植民地支配や原爆投下は決して謝罪しないので、これ自体が欧米世界の新型の「共同謀議」のようにも見える。日本政府に、にわかに強いられ出した侵略謝罪や慰安婦謝罪もおおよそ世界的なこの新しい流れに沿ったものと思われるが、現代の、まだよく見えない政治現象である。

各大陸の混血の歴史が示すように、白人は性の犯罪を犯してきた。旧日本軍の慰安婦制度は犯罪を避けるためのものであったが、白人文明は自分たちが占領地でやってきた犯罪を旧日本軍もしていないはずはないという固い思い込みに囚(とら)われている。

韓国がこのルサンチマンに取り入り、反日運動に利用した。少女像が増えこそすれ、なくならないのは、「世界の韓国化」が前提になっているからである。それは人間の卑小化、他への責任転嫁、自己弁解、他者を恨み、自己を問責しない甘えのことである。

トランプ氏の登場は、多少ともアメリカ国内のルサンチマンの精神的歪(ゆが)みを減らし、アメリカ人を正常化することに役立つだろう。オバマ大統領が許した「アメリカの韓国化」がどう克服されていくか、期待をこめて見守りたい。(評論家・西尾幹二 にしおかんじ)>(以上)

石平氏の『韓民族こそ歴史の加害者である』を読むと「朝鮮人は我が身を守るために外国勢力を国内に引き入れ、外国を振り回して売国するのが当たり前の政権が続いた」とありました。新羅の統一、元寇、李成桂、壬午事変、甲申政変、皆そうです。日本は朝鮮半島がだらしがないため、結局日清・日露戦争を戦わざる羽目に陥りました。朝鮮人にとって裏切りは当り前の世界です。朴槿恵大統領も中国に擦り寄ったり、米国に擦り寄ったりと忙しい。石平氏の本によると、元寇も高麗が元を唆して起こしたとのこと、朴槿恵が被害者の立場は1000年不変と言うのであれば、元寇の謝罪もないというのはおかしいと。

韓国保守が今頃になって、慌てて朴槿恵追及の手を緩めようとしても遅いでしょう。韓国民は情緒優先の民族です。言葉を変えて言えば、未熟という事です。論理的、合理的判断ができないという事です。国会で経済界を追及して、苦境にあるサムスンの足を引っ張るようなことを平気でします。雇用が失われ、自分の首を絞めることに気付いていません。まあ、北朝鮮のような粛清が当たり前の国にするつもりでしたら、企業は国有化されるでしょうけど。その時には、海外への輸出も制約されるのでは。どういう道を歩むにしろ、日本を恨むことでしかカタルシスを得られない、愚かとしか言いようがない民族です。

アメリカも韓国を見捨てるのでは。国民がここまでアホだと、救いようがない。米国が圧力をかけて結ばせた「慰安婦合意」も破棄されるでしょう。こうなることは見えていました。裏切りが当たり前の国ですので。アチソン声明に朝鮮半島を入れなかったのは正解でした。北朝鮮と一緒になればよい。米中共にどう動くかですが。

12/20記事

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韓国保守紙は朴大統領を弾劾した「名誉革命」が「ロシア革命」に変質することを恐れる。写真はロシア革命の様子が描かれた絵画(写真:AP/アフロ)

前回から読む)

韓国の保守系紙が慌てる。朴槿恵(パク・クンヘ)大統領を断罪した「名誉革命」が「ロシア革命」に変容する可能性が出てきたからだ。現在の体制を破壊されたら、自分たちも危ういのだ。

憲法裁判所に圧力

—12月9日、韓国の国会が朴槿恵大統領への弾劾訴追案を可決しました(「韓国国会、朴槿恵弾劾案を可決」参照)。

鈴置:混乱は続いています。可決以降の「下野を要求する土曜デモ」は憲法裁判所にも向かうようになりました。弾劾を棄却しないよう圧力をかけるためです。

デモ隊は大統領権限代行に就任した黄教安(ファン・ギョアン)首相に対しても辞任を要求しています。公安検事出身でタカ派なので、デモなどに強権を発動するのではないかと恐れているのです。

野党第1党の「共に民主党」も「即刻下野」と早期の弾劾決定を要求しています。弾劾案可決に成功した今の勝利ムードが続く間に、次の大統領選を実施したいのです。

同党の最有力大統領候補の文在寅(ムン・ジェイン)前代表は12月16日「もし、憲法裁判所が弾劾を棄却したら?」との質問に「そんな判決が出たら、次は革命するしかない」と答えています。

朝鮮日報が「文在寅『国民の憲法意識がすなわち憲法・・・弾劾棄却すれば次は革命しかない」(12月17日、韓国語版)で報じました。

弾劾訴追の可否を憲法裁判所がいつ下すか分からないことも、政局の不安定感を加速しています。一方、与党「セヌリ党」は親朴派と非朴派の対立が激化し、分裂状態です。

デモに便乗する勢力

注目すべきは保守系紙が怯え始めたことです。保守系紙は大統領を弾劾訴追に追い込んだ毎週土曜日の大型デモを「名誉革命」と絶賛してきました(「『名誉革命』と韓国紙は自賛するのだが」参照)。

「広場民主主義」の勝利とも褒めそやしてきました。ろうそくを手に広場に集まった人々が議会を突き動かしたからです。「100万人のデモでもガラス1枚割れない民度の高さ」も誇りとなりました。

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しかし「革命の熱気」が高まるに連れ、保守系紙は「広場」に不気味なものを感じ取ったのです。中央日報の社説「弾劾とろうそくに便乗する統合進歩党と尹昶重氏」(12月6日、韓国語版)がそれをよく表しています。

記事が載ったのは、6回目のソウルのろうそく集会(12月3日)に150万人(主催者側発表)が集まった後。大統領の弾劾訴追案が国会で可決される見通しが強まった時でした。ポイントを訳します。

  • 問題はこのような純粋な志に便乗して私利を得ようとする勢力が台頭し始めたことだ。北朝鮮式の社会主義を実現しようとしたとして2014年末、憲法裁判所が「危険な政党」と規定し解散させた統合進歩党出身の人物らが代表例だ。
  • この者たちは、内乱扇動罪で懲役9年を宣告され収監中の李石基(イ・ソッキ)前・統合進歩党議員の釈放を求める要求するプラカードをデモ現場で掲げた。

体制をひっくり返す

—統合進歩党とは?

鈴置:2012年の選挙では300議席中13議席を占めた、それなりに存在感のある政党でした。この選挙でも得票率は10.3%を記録しています。既存のいわゆる「進歩的な政党」に飽き足らない人々から支持を集めていたのです。

一方、保守は「北朝鮮の手先」として危険視していました。韓国憲政史上初めて政府が命令してこの政党を解散させたのもそのためです。解散を主導したのが当時、法務長官だった現在の黄首相です。

同党の指導者、李石基議員(当時)も2013年9月に内乱陰謀罪や内乱扇動罪などで逮捕されました。国会は289人中258人の賛成で逮捕に同意しています。

—なぜ、この政党の解散問題が蒸し返されるのですか?

鈴置:今、韓国では「朴槿恵が国を滅茶苦茶にした」ということになっています。左派はそのムードを利用して、既存の体制を一気にひっくり返そうと狙っています。

「ABP」モードに

—体制をひっくり返す、ですか!

鈴置:韓国紙には「ABP(Anything but Park)」という言葉が散見されるようになりました。「朴がやったことはすべて否定する」という意味です。この際、統合進歩党の強制解散も「ひっくり返そう」と考える人が出てきたのです。

左派系紙のハンギョレが、ロシア出身の朴露子(パク・ノジャ、Vladimir Tikhonov)オスロ国立大学教授の寄稿を載せています。「朴槿恵の最悪の犯罪」(12月4日、日本語版)です。朴露子教授の専門は韓国学です。彼の主張を要約します。

(朴槿恵政権の)悪行の中でも統合進歩党の法的解散とイ・ソッキ前議員らの拘束と裁判は特筆に値する。この事件により、1987年の大闘争で勝ち取られた形式的・手続き的民主主義は回復し難い傷を負った。事件以後の大韓民国を民主国家と呼ぶこと自体が無理だ。

裁判で国家情報院と検察の主張の核心的部分が事実上虚偽であることが判明した。被告たちが「作った」という「革命組織」の実体がなかったことが明らかになり「内乱陰謀」という恐ろしい容疑に対しても無罪が宣告された。

朝鮮日報は権力の手先だ

—「韓国は民主国家ではない」と言い切っていますね。

鈴置:今回の崔順実(チェ・スンシル)氏による「国政壟断事件」が露見する前でしたら、韓国人の反発を買ったと思います。でも今、韓国人は「これでも国か」と自信を失っています(「『美し過ぎた自画像』が呼んだ朴槿恵弾劾」)。

そんな時に「統合進歩党の解散だって、まともな国だったらあり得なかった」と言われれば「確かにそうだな」と考える韓国人が出ると思います。

しかし韓国の保守にとって「北朝鮮の傀儡組織」統合進歩党の解散は譲れない一線です。それに左派の矛先は自分たちに向いているのです。朴露子教授は朝鮮日報も批判しています。以下です。

  • 朝鮮日報や韓国日報など多くの新聞が、国家情報院が執筆した「内乱陰謀」小説を事実であるかのように報じた。
  • 情報機関とマスコミが一緒になって政権の政敵に対する従北攻撃(北朝鮮に賛同追従する勢力だという攻撃)に出るならば、民主主義や基礎的な人権常識がまともに残り得ようか?

左派政権のイジメ

—朝鮮日報は名指しで攻撃されましたね。

鈴置:最大手紙として保守の声を代表してきた朝鮮日報は当然、左派の最大の攻撃目標です。朴露子教授だけではありません。「朴退陣デモ」も朝鮮日報を標的にしています。

朴槿恵大統領の退陣を求める集会やデモの現場で歌われる歌には「セヌリ党よ、朝鮮日報よ、お前らも醜悪な共犯じゃないか」とのくだりがあります。

東京基督教大学の西岡力教授が月刊『正論』2017年1月号に載せた「混迷の韓国 次は過激な親北政権?」でこの歌を解説しています。西岡教授の記事によると、歌詞は以下のように続きます。

  • (朴槿恵批判の)ショーをするな。だまされないぞ。お前らも解体してやるぞ。

—朝鮮日報が「標的」になると、販売部数が減るということですか。

鈴置:それもあります。韓国ではそれに加え、政権からのイジメも恐れなければなりません。金大中(キム・デジュン)政権、盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権の10年間、保守系紙は苦労しました。

左派政権から「税務調査するぞ」「オーナーを収監するぞ」と脅され続けたのです。韓国では新聞も政治のプレーヤーの1つなのです。

財閥も解体せよ

—次に左翼政権ができたら保守メディアは大変ですね。

鈴置:だから朝鮮日報も「広場に便乗する勢力」に対し、必死の反撃に出ています。朴相薫(パク・サンフン)論説委員の「大衆の憤怒に乗ってはいけない」(12月12日、韓国語版)から引用します。

  • 警戒すべきことがある。(今の)雰囲気に便乗してすべてをひっくり返そうとする極端な流れだ。ろうそくデモの人波の中に、昔の統合進歩党勢力が登場した。
  • 野党の大統領候補は「鮮明性」競争を繰り広げている。朴槿恵政権のすべてを否定するというのだ。支持率1位の候補は「国家の大掃除」を打ち出した。野党で2位の候補は財閥解体論に打って出た。財閥は直すべき点が多いが、「解体」とは扇動に近い。
  • 大統領の退陣が既定事実となった状況で今、我々は冷静でなければならない。直すところは直し、守るところは守る――という玉石を見極める知恵を発揮すべきだ。
  • 何を守るのか。国家の基本を守らねばならない。統合進歩党の解散は国家体制を否定する集団に対する憲法的決定だった。大韓民国の秩序を危険にさらす勢力に対しては、より目を見開かなくてはいけない。

サムスンのオーナーを面罵

—野党で支持率1位、2位の候補とは?

鈴置:2人とも「共に民主党」の政治家で、1位の候補とは文在寅氏。2位は昔から過激な発言を繰り返し「韓国のトランプ」と評される李在明(イ・ジェミン)城南市長です。

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ただ李在明市長は「トランプ」とは異なって、政治的立場はかなり左です。極貧の環境で育った人で財閥解体論を唱えています。「日本は敵性国家だ」とも発言しています。

「ABP」ムードの中、「以前から朴槿恵を徹底的に攻撃してきた人」として急速にスポットが当たっています。文在寅・前代表の発言が過激になっているのも、李在明市長の人気急上昇を警戒してのことと見られています。

—韓国では財閥解体論が語られているのですね。

鈴置:「すべてをひっくり返す」一環です。12月6日、崔順実氏の「国政壟断事件」に関する国会の聴聞会に、財閥のオーナー9人が呼ばれました。朴大統領を初めとする歴代政権との「政経癒着」を追及されたのです。

ある野党議員はサムスン電子の李在鎔(イ・ジェヨン)副会長に向かって「あなたの財産は8兆ウォン(8000億円)でしょう」「相続税は(たったの)16億ウォン(1億6000万円)と言われています」と畳み掛けました。テレビで中継された聴聞会の場で、財閥への反感を煽ったのです。

韓国経済新聞は「『歳はいくつだ、経営権を手放せ』・・・企業人を面罵した聴聞会」(12月6日、韓国語版)の見出しでこの聴聞会を報じました。別の野党議員は李在鎔副会長を「50歳にもならないのに、ちゃんと質問に答えろ」と面罵したのです。

「革命前夜」の韓国

—韓国は「革命前夜」ですね。

鈴置:「ハンギョレ」にキム・ドンチュン聖公会大NGO大学院長が「再び岐路に立った韓国」(11月29日、日本語版)を書きました。これを読むと、左派の発想と戦略がよく分かります。引用します。

  • 「キャンドルデモ」に集まった韓国の国民は真に偉大だ。その力で弾劾局面まで持ってきた。しかし朴槿恵政権の企画、監督、演出者はそのまま残っており、政策も何も変わっていない。
  • 1987年の6月抗争(民主化)直後のように、いや4・19(1960年の学生革命)、いや8・15(日本からの独立)直後のように、韓国は再び岐路に立っている。

要は「韓国は何度も変革を体験したが、いずれも不十分だった」との認識です。そして「今こそ、既得権勢力を一掃して国を正そう」と呼び掛けたのです。以下です。

  • このゲート(国政壟断事件)のすべての法律違反者と共謀者を徹底的に捜査・処罰し、責任を負わせなければならない。
  • 検察改革、国家情報院改革、選挙法改正、公営言論改革がない改憲論や大統領選挙競争は、再び国民を”卒”(日本の将棋の歩に相当)に転落させるだろう。
  • 弾劾は始まりに過ぎず、大統領選挙は終着点ではなく過程だ。

「革命の波」は外交にも

キム・ドンチュン大学院長らの「体制一新」の主張を、保守――既得権勢力は深い恐怖感とともに聞いています。空論ではなく実現しそうだからです。次の大統領選挙では左派が勝つ可能性が高いのです。

「韓国革命」の波が及ぶのは内政に留まりません。このまま行くと、米国との同盟を打ち切ることにもなりかねないのです。

(次回に続く)=12月22日に掲載予定

「国政壟断事件」の動き(2016年)
7月
26日 TV朝鮮「財界の文化財団『ミル』への486億ウォンの募金に青瓦台幹部が関与」
10月
24日 JTBC、大統領演説の草稿など機密資料が崔順実氏に漏えいと報道
25日 朴大統領が資料提供を認めて国民に謝罪
   
26日 検察が崔氏自宅など家宅捜索。外交資料なども漏洩とメディアが報道
28日 朴大統領は首席秘書官全員に辞表を出させる。秘書室長が辞表提出
28日 韓国ギャラップ「朴大統領の支持率が6週連続で落ち、過去最低の17%に」と発表
29日 青瓦台、検察の家宅捜索を拒否。ソウルで1万人強の退陣要求デモ
30日 青瓦台、検察に資料提供。朴大統領は一部首席秘書官らを辞任させる
30日 与党、挙国一致内閣を提案するも野党は真相究明が先と拒否
30日 崔順実氏帰国、31日に検察に出頭、逮捕状なしで緊急逮捕
31日 リアルメーター「潘基文氏の支持率が前週比1.3ポイント低い20.9%に」
11月
2日 朴大統領、首相を更迭し、後任に盧武鉉時代に要職を歴任した金秉準氏を指名
2日 野党各党、新首相の就任に必要な国会聴聞会を拒否することで一致
2日 検察、安鍾範・政策調整首席秘書官を緊急逮捕
3日 検察、崔順実氏を逮捕。容疑は「安鍾範氏と共に財閥に寄付を強要した」職権乱用など
4日 韓国ギャラップ「朴大統領の支持率は過去最低の5%、不支持率は89%」と発表
4日 朴大統領「検察の捜査受ける」と国民向け談話。野党は「退陣要求運動を展開する」
5日 ソウルで4万5000強人の退陣要求デモ。釜山など他都市にも拡散
6日 禹柄宇・前民情首席秘書官が検察に出頭
7日 与党・セヌリ党の金武星議員、大統領に脱党を要求
7日 朴大統領、与野党代表との会談を提案するも3野党に拒否される
8日 ソウルで4万5000強人の退陣要求デモ。釜山など他都市にも拡散
8日 検察、崔順実氏に関連するとしサムスン電子本社や大韓乗馬協会を家宅捜索
8日 朴大統領、丁世均・国会議長を訪ね「国会が推薦する総理を受け入れ、内閣を任せる」
9日 野党3党、朴大統領の国会推薦総理案を「一考の価値なし。大統領は2線に引け」と拒否
9日 米次期大統領にトランプ氏決定
11日 韓国ギャラップ「11月第2週の大統領支持率は前週と同じ5%。不支持率は最高の90%」
12日 全国で朴大統領の退陣求める集会。ソウルでは26万人参加
13日 検察、「国政壟断事件」でサムスン電子の李在鎔・副会長ら財閥トップを参考人として聴取
13日 青瓦台「昨日、大統領は国民の声を重く受け止めた。国政正常化のため苦心している」
13日 検察、国政壟断事件に関連し朴大統領に15日か16日の参考人事情聴取を要請
13日 金武星・前セヌリ党代表「唯一の収拾策は大統領弾劾」
14日 与野党、国政壟断事件に関する特別検察官の任命で合意
14日 共に民主党、大統領に対する要求を「2線への後退」から「即時退陣」にと強化
14日 秋美愛「共に民主党」代表、早朝に大統領との会談を受諾したものの同日夜に拒否
14日 日韓、東京でGSOMIAに仮署名
15日 文在寅「共に民主党」前代表「条件なき退陣求め在野団体と『非常時局機構』作る」
16日 韓国軍「2017年初めまでにTHAAD工事着工」と発表
16日 朴大統領、釜山の大型不動産開発事業「エルシティ」を巡る疑惑の徹底調査を指示
17日 崔順実氏の国政介入疑惑に関し、特別検察官任命法案と国政調査実施を可決
18日 韓国ギャラップ「11月第3週の朴大統領の支持率は5%、不支持率は90%」
18日 秋美愛「共に民主党」代表「大統領は支持者による衝突と戒厳令を準備している」
18日 青瓦台「東京での韓中日首脳会談の日程が決まれば朴大統領は参加する」
19日 退陣デモ。全国で24万人、うちソウルは17万人(警察発表)。支持デモに1万1000人(同)
20日 検察、崔順実氏らを職権乱用共犯などで起訴。「大統領も共謀と判断、捜査続ける」と発表
20日 朴大統領の弁護士「検察は想像と推測で捜査、対面調査には応じない」
20日 青瓦台「検察の発表は遺憾。特別検察官の捜査で無実を証明する」
20日 野党の大統領選立候補予定者ら8人「国民的退陣運動と平行し弾劾推進論議で合意」
21日 青瓦台スポークスマン、退陣を前提とした野党の首相推薦は拒否
21日 第1野党「共に民主党」と第2野党「国民の党」がそれぞれ弾劾推進を決定
22日 朴元淳・ソウル市長、閣議で閣僚辞任要求と日韓GSOMIAへの反対を表明
22日 崔順実疑惑を解明するための特別検察官任命法案を閣議決定
23日 ソウルで日韓GSOMIA署名・締結。写真撮影禁止に韓国写真記者が一斉抗議
24日 野党3党、朴大統領弾劾で合意
25日 韓国ギャラップ、11月第4週の朴大統領の支持率は4%、不支持率は93%
26日 5回目の退陣要求デモ。参加者はソウル27万人、全国32万人
28日 朴大統領の弁護士「求められた29日までの検察の対面調査は困難」
28日 政界元老集団と与党の「親朴」重鎮議員らがそれぞれ秩序ある退陣を朴大統領に要請
28日 教育部、国定歴史教科書の内容を開示
29日 朴大統領、3回目の国民談話を発表「任期短縮を含め進退は国会にすべて任せる」
30日 野党3党「無条件退陣の要求」と「弾劾推進」で合意
30日 朴大統領、国政壟断事件の特別検察官に元ソウル高検検事長の朴英洙氏を任命
12月
1日 セヌリ党、「4月退陣」を党論に決定
1日 朴正煕元大統領の生家に放火。犯人は「大統領が退陣しないので火を付けた」
2日 韓国ギャロップ、12月第1週の朴大統領の支持率は4%、不支持率は91%
2日 セヌリ党非朴派「12月7日午後6時までに退陣時期明言なければ弾劾に賛成」
3日 野党3党、朴大統領の弾劾訴追案を提出
3日 6回目の退陣要求デモ。参加者はソウル32万人、全国で43万人
4日 セヌリ党非朴派「4月退陣案への大統領の姿勢とは関係なく弾劾訴追案に賛成する」
5日 青瓦台「『4月退陣・6月大統領選』案を朴大統領はセヌリ党員として受け入れる」
6日 国会で「国政壟断」に関する聴聞会。財閥オーナー9人が証人として出席
6日 朴大統領「4月退陣受け入れる。弾劾可決時には憲法裁判所の審理を見守る覚悟」
6日 セヌリ党、弾劾訴追案は自由投票と決定
7日 国会で「国政壟断」に関する聴聞会。証人喚問された崔順実、禹柄宇氏らは欠席
8日 弾劾訴追案、国会本会議に報告。「セウォル号沈没当時の大統領の行為」は削除せず
9日 国会、朴大統領の弾劾訴追案可決。賛成は234票でセヌリ党から62人が賛成
10日 「共に民主党」、憲法裁判所に「早期に弾劾を認めよ」と要求
10日 「即位退陣」と「逮捕」を求めソウルで12万人がデモ。4万人が弾劾無効訴え集会
15日 文・前代表「慰安婦の法的責任と謝罪を求め追加協議を。THAADは次の政権で」
16日 朴大統領の弁護人団「弾劾訴追に足る資料なし」と反論の答弁書を憲法裁に提出
16日 文・前代表「弾劾が棄却されたら革命だ」
17日 ソウルで大統領の即時罷免と黄首相辞任を求めるデモ。保守派は弾劾無効を訴え集会
20日 崔順実氏、初公判で起訴内容を全面否認
 

※注 デモの参加者数は警察発表

12/22記事

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韓国の大統領候補は「離米派」揃い。韓国の「名誉革命」は「ロシア革命」から、さらに「キューバ革命」へと進む様相を呈している(写真:AP/アフロ)

前回から読む)

「韓国革命」により、米韓同盟が存亡の危機に立つ。

「3点セット」拒否

前回は、韓国の自称「名誉革命」が、既得権層を打ち倒す「ロシア革命」に向かい始めた、という話でした。

鈴置:それだけではありません。米国との関係を断絶する「キューバ革命」に至る可能性も相当にあります。大統領候補と見なされる政治家が一斉に「米国離れ」を叫び始めたからです。

世論調査で支持率1位を占めることが多い「共に民主党」の文在寅(ムン・ジェイン)前代表。12月15日にソウルの外信記者クラブで以下のように語りました。

聯合ニュース「文『THAADは次の政府に先送りすべきだ・・・誰がなるかは分からずとも、政権交代は確実』」(12月15日、韓国語版)から引用します。

  • 朴槿恵大統領の職務が停止され首相が権限を代行する中で、THAAD(地上配備型ミサイル防衛システム)を強行するのは望ましくない。次の政権で十分に議論し、外交的努力を尽くして合理的な判断を下すべきだ。
  • (日本との慰安婦合意に関しては)正当性を認めることが難しい。合意に関する両国の説明が異なるだけに、合意を(再)確認する必要がある。
  • (日本とのGSOMIA=軍事情報包括保護協定=については)この協定を通じ受け渡しする情報が何なのかに対し、十分に見直し検討する必要がある。

THAADもGSOMIAも、そして実は「慰安婦合意」も米韓同盟の紐帯です。その3点セットをすべて見直す、と表明したのです。「文在寅政権」は米国との同盟を打ち切る方向で外交政策を組み立てると宣言したのも同然です。

文・前代表は翌12月16日にも「大統領に当選したら最初にどこに行くか」との質問に「躊躇せずに言う。私は真っ先に北朝鮮に行く」と答えました。

これも明確に「離米路線」を打ち出したと受け止められました。朝鮮日報が「文在寅『国民の憲法意識がすなわち憲法・・・弾劾棄却すれば次は革命しかない」(12月17日、韓国語版)で報じています。

韓国防衛に責任を持てない

—「慰安婦合意」も米韓同盟に絡むのですか?

鈴置:米国から、日本とのGSOMIAを結べと要求された朴槿恵政権は「日本が慰安婦問題の解決に応じない」という無茶苦茶の言い訳を掲げて逃げ回りました(「ついに米国も韓国に踏み絵を突きつけた」参照)。

一方、韓国の要求に対し安倍晋三首相は「何度も謝る必要はない」と突っぱねるつもりでした。しかし、米国の仲介でやむなく「慰安婦として苦労した方々へのお詫びと反省の気持ち」を表明したうえ、元慰安婦を支援するために10億円を支払いました。

そして両国の外相は「この合意により、慰安婦問題は最終的かつ不可逆的に解決された」と確認しました。これが2015年12月28日の「慰安婦合意」です。

慰安婦合意は米国を事実上の保証人として成立したのです。ことに「最終的かつ不可逆的」部分は韓国の蒸し返しを防ぐために、日本が望んだ条件でした。逆に言えば、韓国がこの合意を破棄する時は、米国との相当な摩擦を覚悟せねばなりません。

THAADもGSOMIAも同様です。米国は韓国に対し「この2つを拒絶するなら、米国は韓国の防衛に責任を持てない」と言い渡していた模様です。米国の国防政策に詳しい日本の安全保障専門家が明かしました。

THAADは米国が長らく配備を希望していました。韓国を守るために在韓米軍基地は存在します。それを防衛するためのTHAAD配備です。韓国が拒否するというなら、米軍が出て行くのは当然です。

しかし中国から「配備を認めるな」と脅されたため、韓国はなかなか応じませんでした。ようやく2016年7月8日になって米韓は正式に合意しました。配備の場所は慶尚北道・星州(ソンジュ)に確定し、時期は2017年末の予定です。

突然動いたGSOMIA

日韓のGSOMIAも主な狙いは北朝鮮のミサイル対策です。日米と米韓は同盟を結んでいるため、その間では軍事情報は円滑にやり取りできます。しかし日韓の間には同盟関係はありません。

そこで米国は日韓間でGSOMIAを結ばせ、3カ国の軍事協力強化を狙ったのです。しかしこれにも中国が反対しており、朴槿恵政権は乗り気ではありませんでした。

その朴政権が突然に動いたのが10月27日でした。聯合ニュースが「韓国政府、日本とのGSOMIA締結を検討」と報じたのです。そして11月14日には、東京で仮署名という素早い展開になりました。

米国からの「見捨てられ」を懸念したと思われます。崔順実(チェ・スンシル)氏の「国政壟断事件」で朴政権は突然に弱い立場に追い込まれました。

「GSOMIA検討」を聯合ニュースが報じた日の2日前の10月25日に、朴大統領は自分の非を認める1回目の国民談話を発表しています。1日前の10月26日には検察が崔順実氏の自宅など家宅捜索しています。

混乱時には米国が「裁定」

—「国政壟断事件」とGSOMIAがどう関係するのですか?

鈴置:韓国で民衆が蜂起し、これを抑えるため戒厳令が布告されるなど際どい状況に陥った時、米国は「裁定」を下してきました。

1960年、初代の李承晩(イ・スンマン)大統領が戒厳令を出した際、米国は圧力をかけて下野させました(「朴槿恵の下野か、戒厳令か」参照)。

1979年に釜山などで民主化運動が突然に高調した時、当時の政権は動揺し地域限定で戒厳令を布告しました。この事件が朴正煕(パク・チョンヒ)大統領――朴槿恵大統領のお父さんです――暗殺事件の遠因となりました。

暗殺犯は大統領の側近でした。民主化運動を弾圧する朴正煕政権を米国が見放すと想定した上での犯行だった、との見方も多いのです。

現在も韓国メディアは「平和なデモを米国政府が支持している」などと相当に無理筋の分析記事を流し、朴大統領に圧力をかけています。

「民衆蜂起」を恐れる朴槿恵大統領とすれば、米国の信任を取り付けるために日本とのGSOMIA締結を急ぐ必要があったのです。

10月29日に「朴退陣」を求める第1回目のデモが起きました。青瓦台(大統領官邸)に迫るものでした。GSOMIA決断の情報リーク(10月27日)は、その直前だったのです。

見捨てないでね

THAADも「国政壟断事件」との関連を疑わせます。韓国軍は11月16日、突然「2017年初めまでにTHAAD工事着工」と発表しました。

「THAAD配備を認めるな」との中国の圧力は相変わらず続いていますから、朴政権は「着工」をできる限り先延ばししたかったはずです。

そもそも配備に同意したのも、親中派が「配備拒否」に動いたため、その反動で認めてしまった側面が強いのです(「『中国陣営入り』寸前で踏みとどまった韓国」参照)。

しかし、デモの参加者が膨れ上がり、朴大統領の支持率も急降下。背に腹は代えられず「THAADも約束通りちゃんと受け入れます」とメッセージを出すことで、米国から見捨てられる可能性を少しでも減らそうとしたのだと私は見ています。

強弁に終始した文在寅

—文在寅・前代表は米韓同盟に関し明確な発言をしていますか?

鈴置:12月15日の外信記者クラブでの会見では、以下のように語りました。

  • 韓米同盟が強固であることが何よりも重要だ。過去の政府の韓米政策をそのまま継承することはもちろん、同盟を強固にし、発展させるよう努力する。

でも、この発言をそのまま受け止めた韓国紙はありませんでした。「THAADもGSOMIAも見直す」と言っているのですから「過去の韓米関係を継承する」ことは不可能です。なお、文・前代表はTHAADに関しても以下のように付け加えています。

  • THAADの再検討が韓米同盟を害するとは思わない。

これも誤魔化しです。在韓米軍基地へのTHAAD配備は「韓国防衛に責任が持てない」とまで言われたので朴槿恵政権が認めたのです。文・前代表は在韓米軍の撤収や米韓同盟の打ち切りを覚悟のうえで、再検討を語っているのでしょう。

離米は「トランプ」が先導

—安保問題に関しほかの候補は?

鈴置:野党候補は皆「3点セット」見直し論です。要は「離米派」ばかりです。朴大統領の行ったことはすべてひっくり返す、というのが今の韓国のムード。「ABP(Anything but Park)」なのです。

中でも、この3点セットは朴槿恵大統領の「悪行中の悪行」とされています。大統領選に立候補する者なら「NO!」と叫ばなくてはなりません。

激しい発言から「韓国のトランプ」と呼ばれる李在明(イ・ジェミョン)城南市長の発言に注目する必要があります。李在明市長は「日本は敵性国家だ」とまで言い出し、それを理由に「3点セット」に強く反対しています。

支持率調査あるいは人気投票で2位、あるいは1位に付けることもある政治家です。この人の発言に引っ張られ、与党系含めすべての候補が「反日・離米」に傾いて行くと思います。

「油ウナギ」の潘基文

—保守・中道から出馬すると言われる国連事務総長の潘基文(バン・キムン)氏も、ですか?

鈴置:潘基文氏は「慰安婦合意」に関しては歓迎を表明したことがあります。中央日報が「潘基文国連事務総長『朴大統領の慰安婦妥結勇断、歴史が評価』」(1月4日、日本語版)で報じています。

ただ、この人の韓国でのあだ名は「油ウナギ」。状況に応じて姿勢をコロコロ変えるので有名です。慰安婦合意の直後は、朴大統領を援護射撃するために「歓迎」を表明したのでしょう。

でも、今や「韓国人の憎悪の的」となった朴大統領とははっきりと距離を置いています。むしろ「離朴」の証拠として「慰安婦合意の見直しを要求する」と言い出すかもしれません。もともと、反米で鳴らした盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権の外交通商部長官だった官僚です。

—GSOMIAやTHAADも見直すつもりでしょうか?

鈴置:その可能性が大いにあります。この人は「中国に弱い」のでも有名です。潘基文氏は2015年の天安門の軍事パレードを参観しました。

その際、会談した習近平主席に「この行事によって、平和を守るという中国の人々の願いが存分に示された。中国は長年にわたって国際平和・開発事業に積極的に尽力してきた」と称賛したのです(「『中国の尻馬』にしがみつく韓国」参照)。

米国のアジア専門家の中には「この男が大統領になったら、韓国は完全に中国側の国になる」と言い切る人もいます。

国連事務総長になれたのは米国の強力な後押しがあったからです。でも、米国にすれば「やらせてみたら中国の言いなりだった」のです。

中国が決める韓国の進路

—でも、潘基文氏は韓国ではそれなりの支持率を維持しています。

鈴置:保守としては他に選択肢がないのです。世論調査でも、5%以上の支持を獲得できる保守の大統領候補はこの人しかいないのです。

—逆に、野党候補の中に「当選するまでは『離米』だけれど、当選したら米韓同盟を熱心に維持する人」は出てきませんか。

鈴置:安哲秀(アン・チョルス)「国民の党」共同代表はそうかもしれません。「経済はリベラル」を標榜していて財閥には厳しい。でも「政治は保守」をうたっていますから。

ただ、この人を含め、韓国の政治家は外交政策を自ら選択できなくなっています。中国が圧力をかけ続けているからです。それに抗してTHAADやGSOMIAに賛成できる政治家がいるかは、大いに疑問なのです。

(次回に続く)=12月27日掲載予定

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『北方領土交渉進展へ一段と高いハードル 共同経済活動はもろ刃の剣』(12/20日経ビジネスオンライン 池田 元博)について

左翼リベラル偏向メデイアは論外ですが、保守派の中にも「経済支援だけすると、食い逃げされる恐れがある」との批判があります。可能性としては確かにその可能性はありますが、それを恐れていては何もできません。それでは中国へ6兆円も支援したときに、ストップをかけたかと言いたいです。日本の支援にも拘わらず、中国は南京や従軍慰安婦の嘘を世界に撒き散らし、反日教育をして国民に日本に対し恨みを抱くようにし、且つ尖閣はおろか沖縄までとりに来ようとしています。ロシアは少なくとも反日教育はしていません。将来国民同士が友好的に付き合うことは可能と思います。勿論、日ソ中立条約違反やシベリア抑留等過去の問題はあったにしろ。米国の原爆投下を許してきたのだから、充分ロシアの過去の行為だって許せるはずです。日本人の特質は「水に流す」ことです。中国人・韓国人のように歴史をあげつらって強請る民族ではありませんので。

ある人は「北方領土返還で一番問題は4島に日米安保が適用されるかどうか。安倍首相が1月下旬にもトランプ大統領と会い、日米安保の適用除外or4島に米軍基地は置かないと確認、密約するのでは。それを受けて本格的な返還交渉、平和条約締結交渉となるのでは」と言っていました。今回の安倍・プーチン交渉は、その露払いであったのかもしれません。日本の最大の敵国は中国です。米国の力が相対的に下落傾向にある時に、中国包囲網を築くには、ロシアをどうしてもその中に組み込まなければなりません。

米国メデイアや日本のメデイアの発する記事だけでは、真実を師知ることはできません。ネットでいろんな情報を取り、情弱を脱しませんと。それをベースにして自分の頭で考えるようにすれば、メデイアや学者、共産党や反日民進党の嘘にも騙されなくなります。民主主義は国民一人ひとりが賢明になることが要請されている政治システムです。そうでなければ衆愚政治に陥ります。

記事

やはり、というべきだろうか。大統領として11年ぶりとなったロシアのプーチン大統領の来日は、北方領土問題を含めた平和条約締結交渉で確たる進展のないまま終わった。ロシア側の強硬な立場が改めて浮き彫りになった。

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来日したプーチン大統領は12月16日、安倍首相と共同記者会見を行った(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

ロシアの首脳にとって、日本訪問は鬼門だ。会談では常に北方領土問題が議題の中心にならざるを得ないからだ。プーチン大統領が今回、初日の会談場所となった山口県の旅館に約2時間半遅れて到着したのも、日本側の期待値をあらかじめ下げる思惑があったのかもしれない。

12月15日に安倍晋三首相の地元の山口、翌16日には東京に場所を移し、2日間に及んだ今回の日ロ首脳会談。大統領の到着が遅れたとはいえ、会談時間は合計で約6時間に上った。このうち領土問題を集中的に議論したのは、初日の安倍首相とプーチン大統領による通訳だけを交えたサシの会談だった。

首相は2人だけで約95分間も会談したとし、「平和条約の問題を中心に議論した」と語った。その成果は翌日、日ロが別々に発表した2つの「プレス向け声明」に盛り込まれた。ひとつは北方4島における共同経済活動の協議開始の合意、もうひとつは4島の元島民らがロシアの査証(ビザ)なしで「自由往来」できる制度の拡充・簡素化をうたったものだった。

なかでも注目を集めたのは、4島での共同経済活動だろう。声明では共同経済活動の協議開始が「平和条約の締結に向けた重要な一歩になり得る」と指摘。具体的な分野として漁業、海面養殖、観光、医療、環境などを挙げ、関係省庁に条件、形態などを調整する協議開始を指示するとしている。

さらに、実施のための法的基盤の諸問題は「国際約束の締結」を含めて検討するとし、共同経済活動が「平和条約問題に関する日ロの立場を害するものではない」と明記した。声明には、両首脳が「平和条約問題を解決する自らの真摯な決意を表明した」との一文も盛り込まれた。

なんとかつないだ、領土問題解決への「細い糸」

ロシアのウシャコフ大統領補佐官によると、日ロは数週間前から事務レベルで「共同文書」の作成作業を進めてきた。しかし、文書の内容や表記の仕方で合意できず最終的に首脳の裁量に委ねられ、両首脳が約40分かけて調整したという。つまり95分に及んだ2人だけの会談のうち、半分近くは「プレス向け声明」に費やしていたわけだ。

ちなみに、当初予定していた共同声明が日ロ別々の「プレス向け声明」になった理由をいぶかる向きもあるが、日ロの表記で違う部分は北方4島の表現だけだ。日本側は「択捉島、国後島、色丹島及び歯舞群島」とし、ロシア側は「南クリール諸島」と記している。4島の名前を明記しなかったのは、ロシアでは歯舞群島とは言わず、色丹島と歯舞群島を合わせて「マーラヤ・クリールスカヤ・グリャダー」(小クリール群島)と総称しているからだろう。

話を戻そう。今回の会談は日ロの領土交渉の当面のヤマ場とみられていたが、発表された声明を見る限り、領土問題という言葉は全くなく、4島における共同経済活動の協議開始がほぼ唯一の成果だったことになる。

安倍首相は9月にロシア極東のウラジオストクを訪問した際、プーチン大統領と会談後に「新しいアプローチに基づく交渉を今後、具体的に進めていく道筋がみえてきた」と表明していた。その道筋が今回の合意だったのだろうか。

首相はウラジオ訪問に先立って5月にロシア南部のソチを訪問し、ウクライナ危機後に控えていた本格的な日ロ首脳対話を再開した。このソチ訪問の際に、首相はプーチン大統領との間で「新しいアプローチ」を掲げたわけだが、日本側はその一環として、当時から北方領土での共同経済活動に前向きに取り組む姿勢を示していたとされる。

ただ、ソチ、ウラジオ会談当時、日本側が想定していたのは恐らく、「2+α」方式だったのだろう。色丹、歯舞両島は日本に引き渡してもらい、択捉、国後の両島は共同経済活動によって日本が関与できる形で決着させる方式だ。

プーチン大統領はかねて、平和条約締結後に色丹、歯舞の2島を日本に引き渡すとした1956年の日ソ共同宣言の有効性を認めている。北方領土での日ロの共同経済活動にも前向きだ。安倍首相は70年以上も未解決の北方領土問題を動かすには、ロシアが応じやすい方式で着地点をみいだすのが現実的だとみて、これを「新しいアプローチ」と称して進めてきたようにみえる。

ところが、プーチン大統領の来日が近づくにつれ、領土問題に対するロシア側の想像以上に厳しい姿勢が明らかになり、結局は共同経済活動と元島民らの4島往来の拡充だけを打ち出す形で、なんとか細い糸をつないだのが実情ではないだろうか。

早くも浮き彫りになった日ロの見解の相違

では、共同経済活動によって平和条約交渉進展の道は開けるのだろうか。

もちろん、北方4島に日本が直接関与できるメリットはある。ヒト、モノ、カネの往来を盛んにし、現地の経済インフラを整えれば、将来の返還に向けた環境整備を事前に進めることにもなるし、地元住民との信頼醸成にも寄与するだろう。しかし、主権の問題があやふやなまま進めれば、逆にロシアによる4島の実効支配を固定化することにもなりかねない。共同経済活動はもろ刃の剣だともいえる。

両首脳の声明は確かに「双方の(法的な)立場を害さない」としており、安倍首相は「ロシアの法律でも日本の法律でもない特別な制度の下で実施していく」と述べ、「特区」を念頭に進める考えを示す。ただ、ウシャコフ大統領補佐官は「(4島が)ロシアに帰属しているのだから、ロシアの法律で実施するのは当然だ」としており、早くも日ロ間の見解の違いが浮き彫りになっている。

過去をさかのぼると、日ロ両国は1998年、北方領土の周辺水域での日本漁船の操業枠組み協定を結んだ経緯がある。管轄権を事実上棚上げにして、双方が安全に漁業に従事できるようにしたもので、日本側は今後、これを参考にしながら実現の道を探っていくとみられる。

ただ、小渕政権時代のこの年には日ロの共同経済活動委員会も設置され、操業枠組み協定を発展させてウニ、貝類の栽培漁業などを進めようとしたが、主権の問題などが絡み実現しなかった。今回もあくまでも「双方の立場を崩さない」方式で共同経済活動を実施しようとすれば、入念かつ綿密な事前調整が欠かせない。実現にはかなり長い時間がかかるとみるべきだろう。

新たなリスク要因となりかねない共同経済活動

首脳会談で打ち出された共同経済活動の協議開始の合意は、別の観点からみても新たなリスク要因となりかねない危うさを抱える。今後の平和条約交渉を進める前提条件となる恐れがあるからだ。

プーチン大統領はこれまで、平和条約の締結には「高いレベルの信頼関係」が不可欠とし、信頼醸成のひとつの方策として、日ロ間の大規模な経済協力を挙げていた。一方の日本側は今回、安倍首相が提案した「8項目の対ロ経済協力プラン」に基づき、官民合わせて80件、総額で3000億円規模に上る日ロの合意文書をまとめた。

ところが、プーチン大統領は来日直前、読売新聞と日本テレビのインタビューで、「例えば南クリール(北方領土)を含めた大規模な共同経済活動」が平和条約を準備する条件づくりに寄与するかもしれないと語っている。来日時の合意事項を事前に踏まえたうえでの発言といえるだろう。

つまりロシア側は今後、日本が4島でどれだけ共同経済活動に関心があるのかを注視するだろうし、仮に活動条件や形態をめぐる事前調整が長らく難航すれば、平和条約締結に向けた「高いレベルの信頼」が醸成されていないと言い続けることもできるわけだ。

大統領は来日時の共同記者会見で、ロシアは1855年の日魯通好条約で北方4島を日本に「引き渡し」、第2次世界大戦後にこれらの島々を「取り戻した」と言明した。両国の国境線を択捉島とウルップ島の間と定めた通好条約は日本側が「北方4島は日本固有の領土」と主張する根拠になっているが、大統領は当時から「ロシアは自国に帰属するとみなしていた」として、日本の歴史認識にも鋭くクギを刺した。

日ソ共同宣言についても「(主権の問題を含めて)どのような原則で2島を日本に返還するのかは分からない」と改めて強調。日米同盟に基づき、米軍が駐留する懸念も領土交渉の障害になっていると示唆している。平和条約締結交渉の前途はかなり厳しいと予測せざるを得ない。

ロシアが強硬姿勢を貫く背景には、米国でロシアに融和的なトランプ政権がまもなく誕生し、原油価格も底打ちしたことで、日本に接近する動機が薄れたという事情もあるのだろう。

平和条約締結への前向き姿勢は崩していないプーチン大統領

ただし、ここで止まってしまえば、領土問題決着の道は完全に閉ざされる。プーチン大統領の国内支持率は依然として80%を超え、しかも強い指導力を持つ。手ごわい相手ではあるが、日ロの平和条約締結に前向きな姿勢は崩していない。

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安倍首相はその大統領とすでに16回も会談している。今後とも首脳間の信頼関係をはぐくみ、日ロ双方の国益や実利につながる協力を積み重ねながら、局面打開の方策を粘り強く模索していくべきなのだろう。

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『トランプ時代の米中対立、想定される中国の報復シナリオ』(12/16ダイヤモンドオンライン ロイター発)、『習近平主席「トランプ劇場」に我慢の限界?』(12/14日経 中沢克二)について

トランプがブランスタド・アイオワ州知事を駐中国大使に任命するのは、楊潔篪と父ブッシュの逆をやると考えれば良いのでは。問題が生じたときの、緩衝材としての役割を果たすことが期待されていると思います。

http://blog.livedoor.jp/ussyassya/archives/52076054.html

上のURLのブログ記事を読みますとイレーン・ラン・チャオ(趙小蘭)運輸長官候補は江沢民派と思われます。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A4%E3%83%AC%E3%83%BC%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%83%81%E3%83%A3%E3%82%AA

江崎道朗氏によれば、今の習政権は江派の利権を潰すように動いているという事なので、中国からの投資で米国へのインフラ整備は難しくなるのでは。日本の出番と思われます。企業も内部留保を貯め込むだけが能でなく、安全保障にも目配りした外国投資が必要です。トランプはインフラ整備にメイドインUSAの物を使うと言っていますので、工場を建てるとか金融支援の道を探さないと。中国と米国の経済的結び付きをこれ以上深めないように日本は振る舞うべきです。

ダイヤモントのロイター記事にありますように、中国は着々と米国に報復しています。あまつさえ、日本や台湾にまでも。

①台湾近辺での軍事的挑発

中沢氏の記事にありますように、人民解放軍は空自機にロックオンしたのは間違いないでしょう。空自機が妨害弾を発射することは憲法の制約があってできないはずです。「チャフ」や「フレア」でロックを回避したという所では。12/17の士気の集いの江崎道朗氏の講演会に織田邦男氏も来ていましたが、「差しさわりがある」とのことで事実関係につき聞けませんでした。やはり、憲法を早く改正しないと、自衛隊員の命が守れません。

②南シナ海における対決姿勢

12/17日経<中国、南シナ海で米の無人潜水機奪う 米は返却求める 

【ワシントン=川合智之】米国防総省のクック報道官は16日、南シナ海の公海を調査していた米国の小型無人潜水機1機を中国海軍の艦船が奪ったことを明らかにした。「国際法の義務に従い、無人機を速やかに返却するよう中国に要請する」と表明した。

15日にフィリピンのスービック湾から約90キロメートル北西を航行していた米海軍の調査船が、海温や塩分濃度などを調べる無人機を海中に降ろして調査していたところ、中国海軍の艦船が近づいて無人機を引き揚げた。米海軍は無線で返却を呼びかけたが、中国軍艦は無視して立ち去ったという。

米メディアによると、無人機の価格は15万ドル(約1800万円)。無人機が集めていたのは海洋調査のデータで、機密情報ではないとしている。中国軍艦は米海軍の調査船に数日間にわたりつきまとっており、調査船が無人機を回収しようとした際、先回りして引き揚げ、去っていったという。

>(以上)

12/18日経<米、中国が奪取した潜水機返還で合意と発表

【ワシントン=川合智之】米国防総省のクック報道官は17日、中国軍が南シナ海で奪取した米国の無人潜水機について、返還を受けることで中国側と合意したと発表した。中国側も17日に返還する意向を示していた。>(以上)

中国は分かりやすく報復行動を起こします。子供じみていますが、何と言われようとも脅した方が良いと考えるのが彼らの流儀です。これから延々とこういう展開が続くと思います。しかし日米のメデイアとも強く中国を非難することはしません。左翼・リベラルの巣窟と言うこともありますが、中国のことですから裏で金を配っているのでは。悪の国の経済を大きくすれば賄賂の財源として使われます。日系企業はもっと考えないと。

オバマは本当に罪作りです。世界の平和を攪乱するような怪物を作り上げて。それでいてロシアにあれだけ強硬なのですから、二重基準としか言いようがありません。「ノーベル平和賞」受賞には全然値しないでしょう。選考基準がおかしいのでは。

ダイヤモンドオンライン記事

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2月13日、米国のドナルド・トランプ次期大統領が中国を怒らせている。台湾の蔡英文総統と電話会談を行い、米国が長く維持してきた「一つの中国」原則と言う立場を必ずしも堅持する必要はない、と発言したためだ。写真は2011年、北京のホテルに掲げられた米国と中国の国旗(2016年 ロイター/Jason Lee)

[13日 ロイター] – 米国のドナルド・トランプ次期大統領が中国を怒らせている。台湾の蔡英文総統と電話会談を行い、米国が長く維持してきた「一つの中国」原則と言う立場を必ずしも堅持する必要はない、と発言したためだ。

台湾問題は、米中関係における最も難しい要素であると言える。中国は台湾を反乱地域と見なしており、これを支配下に置くための武力行使を放棄したことはない。

トランプ氏が台湾問題をめぐって強硬姿勢を維持する場合、米国に対する中国の報復措置として、想定されるシナリオは以下の通り。

  • 米国との断交

トランプ氏が台湾に対し、何らかの公式な外交的承認を提示するならば、中国は大きな混乱を招く過激な行動ではあるが、米国との外交関係を絶つ可能性が高い。中国は、台湾と国交を維持する国に対して外交関係を持つことを拒否している。米国との断交は、中国政府による最終手段となる可能性が高い。

  • 台湾近辺での軍事的挑発

中国は、台湾近辺で軍事的挑発を行うことで、台湾支配に向けた決意を示す可能性がある。たとえば、人口密度の高い台湾西岸に近い水域にミサイルを発射することによって海路や空路を実質的に封鎖するなどの手段に訴える可能性があり、これは地域を不安定化する動きとなる。中国の国営メディアは、台湾問題を断固として解決するためには、いまや軍事的手段が必要となるかもしれないとさえ示唆している。

  • 南シナ海における対決姿勢

中国は領有権争いが生じている南シナ海において、「航行の自由」作戦の下で米国が行った哨戒活動に怒りを示してきた。中国は南シナ海で占拠した島嶼(とうしょ)や岩礁で埋め立て工事を行い、飛行場その他の施設を建設している。

これまで中国は、哨戒活動を行う米艦を追尾し、言葉による警告を発するという形で対応してきた。だが、米国による今後の哨戒活動に対しては、より強硬な手段をとる可能性がある。2001年には、米軍の偵察機が南シナ海で中国側戦闘機と接触した後、中国領内に強制着陸させられた例がある。

ただし、中国は自国の通商路を確保しておくために南シナ海の平和を必要としており、軍事衝突を起こすことには消極的だろう。

  • 台湾向け武器輸出に関与する米国企業への制裁

2010年、中国はオバマ米政権による台湾への新たな武器輸出に怒りを示し、関与した米国企業への制裁措置をほのめかした。最終的にはこの制裁は実施されなかった。

  • 保有する米国債の大量売却

中国は米国にとって最大の債権国であり、9月時点で1兆1600億ドル(約137兆円)相当の米国債を保有している。

中国が保有する米国債のかなりの部分を急に売却すると決定すれば、米債券市場に深刻な打撃を与え、米国は資金を求めて慌てることになる。ただ、中国による報復的な米国債の大量売却は、精密な照準爆撃とはなり得ない。グローバル市場を混乱させ、ひいては中国自身にもその衝撃が及ぶ可能性が高い。したがって一部のアナリストは、こうした動きは、戦争に次ぐ最悪のシナリオと認識している。

  • 北朝鮮への圧力緩和

米国は、核武装を進める北朝鮮に対して、中国に「厳しい対応」を繰り返し求めている。中国は北朝鮮にとって経済や外交面における最大の支援者ではあるが、中国自身も北朝鮮の核実験・ミサイル発射実験については強い怒りを示している。

中国が米国への不快感を表現するために北朝鮮に対する国連制裁を緩和する可能性はあるが、それは逆効果を招き、結局のところ、北朝鮮政府とそのミサイル・核開発計画を後押ししてしまう可能性がある。これは中国政府が望まない結果だ。

  • 米企業に対する圧力

国営メディアや消費者団体を通じて、あるいは単に国民感情を煽ることによって、米企業に打撃を与えるという間接的な手段もある。

南シナ海における領有権紛争に関して今年、国際司法の場で中国が敗れた後、アップルやケンタッキーフライドチキンの親会社ヤム・ブランズなど複数の米国ブランドが、短期間ではあるが反米的な抗議行動やボイコットの標的となった。

米企業に対し関税を引き上げる可能性や、航空機などの製品について、米国以外の競合他社へ乗り換える動きが露骨に進められることも考えられる。

また中国は、国内で活動する米企業に対して官僚主義的な障害を設けるかもしれない。在中の米大手消費財メーカー幹部は、米企業に対する何らかの報復があるとすれば、声高で攻撃的な対応よりも、地元当局による認可プロセス停滞や書類処理の遅れなどが発生する可能性が高いとロイターに語った。

  • 農産物調達先の乗り換え

銅からトウモロコシ、原油に至るまで、中国は世界随一のコモディティ消費国である。したがって中国は、農産物調達先の乗り換えを模索することで米国に打撃を与えることができる。トウモロコシから大豆に至るまで、米国産農産物の中国輸出量は、2015年に過去最高の4790万トンに達した。

  • 市場アクセス推進の停止

トランプ氏が「1つの中国」原則を捨てれば、ほぼ確実に2国間投資協定をめぐる協議に差し障りが出る。そもそもトランプ氏はこの種の協定に乗り気ではないかもしれないが、2国間投資協定による市場アクセスの拡大は、中国に対して米ビジネス界が望む最優先項目である。

以前からずっと、米中の2国間投資協定が中国に対する投資自由化の先駆けになると考えられていた。その協議が停滞すれば、中国は欧州との投資協定に関する協議を推進する可能性もある。

  • サイバー問題に関する合意への障害

トランプ氏が「1つの中国」政策を維持しなければ、2015年に中国の習近平主席とオバマ大統領が合意したサイバーセキュリティに関する誓約を中国が反故にする可能性がある。政府顧問やセキュリティ専門家は、この誓約によって中国主導のサイバースパイ行為が減少したと評価している。

(Ben Blanchard記者、Michael Martina記者、John Ruwitch記者、 Jo Mason記者、Adam Jourdan記者、翻訳:エァクレーレン)

日経記事

「トランプが『一つの中国』を商業的な利益と交換しようとするのは幼稚な衝動だ」「外交をまるで知らない子供」「台湾に関して平和統一を武力統一に優先させる必要があるのか」

中国共産党機関紙、人民日報傘下の環球時報は12日付の社説でかなり鋭く米次期大統領トランプを攻撃した。言いたい放題である。そこには共産党内部の本音がにじむ。

さらに、13日付社説では「北京は、非平和的手段による台湾独立派への様々な懲罰を探る必要に迫られている」「武力行使による台湾統一は一つの選択肢だ」などと強調した。

同紙は中国の保守・強硬派を意味する「左派」の影響力が強く、ときに当局の公式答弁と異なる見解を示す裁量権を持つ。特に今回は、中国が武力行使も辞さない「核心的利益」とする台湾問題だ。関係者は「編集幹部は人脈上、人民解放軍との関係が深く、内部の声も反映されている」と指摘する。

■「一つの中国」のほごも取引次第

「様々な取引ができないなら、なぜ『一つの中国』の原則に縛られなければならないのか」

トランプの米FOXテレビにおける発言は、中国国家主席、習近平に衝撃を与えた。中国が40年かけて慎重に重ねた「積み木」を崩されかねない。トランプは「外交の素人」を装って、高いハードルを軽々と乗り越えそうな勢いだ。その威力は、トランプと台湾総統の蔡英文による電話会談を超す。

なお、中国政府の公式答弁はおとなしい。「関係報道に注目している」「強く懸念している」。中国外務省スポークスマンは、トランプという固有名詞の名指しをあえて避け、新しい米政府の指導者という用語を使った。「一つの中国」に関する立場を表明する声色も抑制的だ。

なぜなのか。前回、このコラムで紹介したように、訪中した米元国務長官、キッシンジャーが習近平に「協力的に対処せよ」とアドバイスした点も効いている。

習近平としては、トランプが2017年1月20日に大統領に就任する前に、決定的な対立に至るのは避けたい。だが、共産党内の情勢は刻々とそれを許さない雰囲気に傾きつつある。その一端が、連日掲載された環球時報の社説にも表れた。

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習近平・中国国家主席(左)とトランプ米次期大統領=AP

一方、トランプは中国に変化球を投げ込んだ。次期駐中国米大使に70歳のアイオワ州知事、ブランスタドを指名したのだ。習近平の古い知り合いだからである。1985年、32歳だった習近平は初めて訪米した。当時、彼は河北省の小さな町、正定県のトップだった。

訪米の目的は、農業大国の穀倉地帯、アイオワ州の視察である。そこで習近平は、若きアイオワ州知事のブランスタドに会う。中国トップへの道が見えてきた頃から、2人のパイプは徐々に太くなる。12年、習近平が国家副主席として訪米した際も、わざわざアイオワ入りし食事を共にした。

トランプ人事は、なかなか巧妙である。農業州、アイオワにとって中国は大得意先だ。トウモロコシ、大豆の大切な輸出先なのだ。中国は、習近平の「老朋友(古い友達)」を拒めないし、農産物の対中輸出拡大にも寄与する、とにらんでの人選だった。

はたして中国は、次期中国大使を大歓迎した。トランプ・蔡英文の電話会談が「硬」の策とすれば、中国に秋波を送る「軟」の策がブランスタドの起用――。中国はそう分析した。

ところが、事はそう単純ではなかった。それはトランプが出向いたアイオワ州の集会に布石があった。トランプは次期大使を紹介する前のあいさつで、予想を覆して対中強硬発言を繰り返した。ツイッターのつぶやきを拡声器で言い直したような中身は、大統領選挙中の激しい言葉を彷彿(ほうふつ)とさせた。

■駐中国大使は「トロイの木馬」か

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2016年9月、宮古海峡の上空を飛行して西太平洋に向かう遠洋訓練を強行した中国空軍のH6K爆撃機(左)と戦闘機スホイ30=共同

「米国の貿易赤字の半分近くを中国がつくり出している。中国は市場経済でない。彼らに(規則順守を)始めさせる時だ」「知的財産を盗み、我々の企業に不公平な税を課した」「北朝鮮の脅威を抑える役にも立っていない」「(人民元の)為替相場を低く抑え、ダンピング輸出している」

最後に、こう付け加えた。「ここで挙げたこと以外、彼ら(中国)は、なかなかすばらしい」。皮肉の効いたトランプ演説は、とても次期大使への餞(はなむけ)には聞こえない。ブランスタドは驚きつつも、トランプとにこやかに握手するしかなかった。

一連のトランプ発言は、その後のテレビインタビューで語った「『一つの中国』にこだわらない」という発言の前段だった。そこでトランプは南シナ海問題にも踏み込み「巨大な要塞を造っている」と中国を非難した。ひとまず習近平に歓迎されて北京入りするブランスタドだが、トランプが中国に送り込む「トロイの木馬」にも見えてくる。

中国の内部では侃々諤々(かんかんがくがく)の「トランプ論議」が始まっている。強硬派の本音の一端が表れたのが、先の環球時報の論調でもある。さらに問題なのは、中国人民解放軍の「独自」の動きだ。

電子偵察機を含む中国空軍の編隊は12月10日午前、スホイ30の護衛を伴って沖縄本島と宮古島の間を超えた後、台湾南部の空域とバシー海峡を通過した。台湾をぐるりと囲むように飛行したのだ。中国による明らかな挑発行為だった。

飛行の目的はなにか。日本の自衛隊、台湾軍、そして背後にいる米軍を試しているのだ。特に、政権移行期にある米軍の動きを気にしている。中国が本気で台湾を攻略しようとすれば、台湾東部の西太平洋の制空権、制海権を握って島全体を攻囲するのが手っ取り早い。「第一列島線」を越え、台湾南部とフィリピンの間のバシー海峡に回り込むのはその訓練だ。

■軍は日米台けん制、空自機を「ロックオン」?

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日本側は航空自衛隊のFー15が出動。台湾南部の守りを担う戦闘機も緊急発進し、追尾した。一部の中国系軍事サイトが驚くべき情報を意図的にリークした。「日本の戦闘機は東シナ海で人民解放軍機に『ロックオン』されて、妨害弾を放って命からがら逃げた」との見方だ。「ロックオン」情報のリークは、一連の動きが軍主導の動きであることを示唆している。

今回、中国国防省は「空自機の妨害」に関して、日本側の機先を制していきなり発表した。中国軍機の動きをあえて明かして「台湾問題は日本にも大きく影響する」と脅した形だ。真の狙いはトランプにある。だが、矛先はひとまず日本にも向けられている。

日本側は、空自機による至近距離の危険行為や、「妨害弾」の発射を否定している。とはいえ、周辺に緊張が走ったのは事実だ。だからこそ台湾側も「スクランブルをかけて、中国軍機を追い払った」としている。

習指導部は外交上、なお「冷静な対応」を続けているが、軍の論理と動きはまったく別である。トランプと蔡英文の電話会談を見過ごすわけにはいかない。人民解放軍はあらかじめ一定の権限を付与されている。軍が安全保障上の理由で作戦を立てるなら、最高指揮官の習近平は認めるしかない。今回の事態は、ある意味で軍が習近平に圧力をかけている、とも言える。

そもそも習近平は「韜光養晦(とうこうようかい)」と呼ばれる、鄧小平以来の安全保障の考え方を捨てた。軍事的な実力を隠して、ひたすら経済建設に没頭する中国は、すでに過去のものだ。それなら「核心的利益」である台湾問題では、武力行使も辞さない姿勢を示すしかない。仮に副作用がどんなに大きくても、である。トランプ劇場「台湾編」の刺激は強い。周辺からの圧力も強まるなか、いつまで習近平が我慢できるのか。限界は近付いてきている。(敬称略)

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