2/3日経ビジネスオンライン 堀田佳男『トランプの戦術ミス! 緒戦アイオワ州を軽視』について

トランプは、2/4日経電子版『トランプ氏、投票やり直しを要請 アイオワ州党員集会で

【ワシントン=川合智之】米大統領選に向けた1日の共和党のアイオワ州党員集会で2位だった不動産王ドナルド・トランプ氏(69)は3日、首位のテッド・クルーズ上院議員(45)陣営に不正行為があったとして投票のやり直しを求めた。トランプ氏は「新たに選挙するか、クルーズ氏の結果を無効にすべきだ」とツイッターに投稿した。

 クルーズ氏の選挙スタッフは1日、クルーズ氏と支持層の重なる元神経外科医ベン・カーソン氏(64)が撤退すると示唆し、支持者にクルーズ氏にくら替えするよう暗に呼びかけたという。クルーズ氏は誤りを認め、カーソン氏に謝罪した。カーソン陣営は謝罪を受け入れたが「汚い手口だ」と批判した。』と党員集会無効を主張しています。話題作りとはいえ敗北を素直に認めないのは如何なものか。デイスインフォメーションでどれだけカーソンからクルーズに移ったのか分からず、普通投票人は本当に撤退したかどうか確認して投票するでしょう。トランプの焦りの表れです。不正は糾弾しても良いですが、結果は受け入れないと。選挙不正が行われたと噂されるケネデイVSニクソン、ブッシュ(息子)VSゴアも敗者が素直に認めたではありませんか。潔くありません。

トランプは破産の危機にあり、「トランプ氏は今まで事業で5回倒産し、6度目の倒産が迫っていたが、大統領選という妙案を思い付き、実行してみたら大当たりし彼のジャンクボンド(信用度が低い社債)は飛ぶように売れ倒産を免れた。だからテッド・クルーズ氏が勝ったことでトランプ氏とテッド・クルーズ氏はそれなりにほっとしただろう。もともとトランプ氏はアメリカの大統領などと言う器でないことはご本人が一番よく知っている。あり得ないことだが、仮にトランプ氏が大統領になって一番困るのはご本人。」という話もあります。

トランプ支持者だけでなく、「トランプを絶対に大統領にしたくない」人を投票所に向かわせたトランプのエネルギーは凄いものがあります。このように共和党支持者を投票所に向かわせ、最終的に共和党候補の一本化が図られ、本選で民主党に勝利するのを望んでいます。

記事

昨年7月から支持率トップを維持してきた米共和党のドナルド・トランプ候補(以下トランプ)がアイオワ州党員集会で“負けた”。

1月31日にアイオワ州内で開かれた集会で話をするトランプ

Trump in Iowa

 予備選が始まる直前まで不敵な自信をみなぎらせていたトランプは、いったいどうしたのか。勢いに陰りが見え始めたのか。有権者がようやくトランプの資質に疑問を抱いたということか。

 民主党サイドでも、昨年末までヒラリー・クリントン候補(以下ヒラリー)が圧勝すると思われていたが、今は、1年前までほとんど無名だったバーニー・サンダース候補(以下サンダース)に互角の戦いを強いられている。ヒラリーはいったいどうしたのか。

トランプはなぜ高い支持率を維持できるのか

 まずトランプである。筆者は、米アイオワ州に向けて取材に発つ前から抱き続けていた問いがあった。

「半年以上も悪態をつき続けるトランプは、なぜ高い支持率を維持できるのか」

「有権者はトランプを真剣に支持しているのか」

 インターネットを使えば数え切れないほどの関連する新聞・雑誌記事が読める。ユーチューブなどでは動画も眺められる。米国の選挙関連情報は捨てるほど入手できるが、筆者の疑問に明解に答えてくれる資料はなかった。現地で取材するしかない。1月下旬に同州に入り、都市と地方を回って多くの有権者と話をした。専門家とも意見を交換した。

 日本人からすれば、トランプがメキシコからの不法移民を「レイピスト(強姦魔)、犯罪者」と呼んだり、「イスラム教徒の米国入国禁止」を口にしたりすると、ほとんど「振り切れてしまった危険人物」といった印象を受ける。多くの方は大統領には相応しくない人物と思うだろう。

 だが、アイオワ州で負けた後も、全米レベルの支持率を見るとほとんどの世論調査でトップを維持している。

トランプ効果で投票者が5割増し

 アイオワ州でも党員集会が行われる前日まで、トランプはトップを走っていた。コネチカット州にあるクイニピアック大学が実施した世論調査ではトランプが31%で首位。2位のテッド・クルーズ候補(以下クルーズ)は24%だった。

 そして2月1日の投票日、「トランプ効果(筆者はこう呼ぶ)」が起きた。

 効果は2点ある。1つは「トランプだけは共和党の代表にしてはいけない」と思った有権者を投票所に向かわせたことだ。

caucus of Republican

2月1日午後7時過ぎ、共和党党員集会の様子

 州都デモイン郊外の投票所で、人材派遣会社に勤務するマイケル・クラウダーさんが早口で語った。「実際の投票日が来るまで、誰に1票を入れるか決めかねていました。トランプ以外であれば誰でもいいと思っていたのです。投票日になって、絶対にトランプを大統領にしてはいけないと思ってやってきました」

 クラウダーさんはクルーズに投票した。トランプ反対票だ。

 もう1つのトランプ効果がある。こちらはトランプを支持する人々を投票所に向かわせた。建設会社を経営するケドロン・アッシュブレナーさんはこう述べる。「私が党員集会に来たのは1988年以来、初めてです。なぜ来たのか? トランプに投票するためですよ。彼は私の心をかき立てるだけの価値がある候補です。口だけの政治家とは異なるビジネスマンの行動力に期待します」。

 相反する2つの作用をなす「トランプ効果」によって、アイオワ州共和党の投票者数は前回比50%以上も上昇した。2012年は12万1000人、今回は18万人超である。

 ただし、トランプは負けこそしたが、得票率ではクルーズの27.7%に対して24.3%と、大差で敗北を喫したわけではない。トランプ効果に戻れば、「大統領にしたくない」人に及ぼした効果の方がわずかに大きかったということだ。

ドブ板運動が勝敗を分けた

 トランプには別の敗因もある。米国は広大な国だが、アイオワ州やニューハンプシャー州、フロリダ州といった激戦州では今でもドブ板選挙が行われている。過去25年にわたって米大統領選を追ってきた筆者の経験から言えることだ。

 日本の国政選挙のように街宣車が町中を走るわけではないし、顔写真がついた選挙ポスターを町中に貼るわけでもない。しかし米国では戸別訪問が許可されており、ボランティアの運動員が地域の家屋をすべて訪ねるくらいは普通である。それだけではない。フォンバンキング(電話勧誘)といった古典的な手法もいまだに有効だ。

 トランプはそんなアイオワ州での選挙活動に出遅れた。昨夏まで、全米で最初に党員集会が開かれるアイオワ州を飛ばして、次の戦場であるニューハンプシャー州に力を注いでさえいた。トランプ陣営は予備選最初の州であるアイオワ州が持つ重要性を見直し遊説を始めたが、トランプ選挙対策本部の関係者は「同州で遊説に費やした期間は計36日でしかなかった」と明かす。

 数多くのメディアに登場して政策を述べたり、候補の印象を高めたりすることは大事だが、それ以上に、地を這うような運動ができたかどうかで得票に差がでる。

 加えて、トランプは同州でテレビ・ラジオ広告を今年になるまでまったくしなかった。過去30年を振り返ると、テレビ広告をまったく打たないで支持率トップを維持した候補はいない。

 億万長者だがカネをあまりかけず、テレビ広告も流さない。選挙対策本部の組織力は弱い。ボランティアによる投票の勧誘もクルーズの選対と比較すると弱いと言われた。

 一方のクルーズはドブ板的な運動を着実に行った。アイオワ州にある99の郡すべてを訪れている。トランプが収容人数の多い大会場を借りるのに対し、クルーズは小さな町のカフェで有権者と話をしたりした。文字通り草の根のキャンペーンが効を奏した。

 加えてクルーズは、オンラインを利用した「ミクロ・ターゲット」と言われる手法を使って、有権者の心に巧みに影響をおよぼしたとされる。英ガーディアン紙によると、クルーズの選対はケンブリッジ・アナリティカという企業に300万ドルを支払い、有権者の決断を左右する試みをした。フェイスブックの利用者が書き込む内容を巧みにデータベース化し、条件に合った特定の利用者にクルーズ支持を促す政治広告を流したのだ。

ヒラリーは新鮮さに乏しい

 最後になったが、民主党のサンダースは社会格差の是正を訴える。しかも「新しい中流を作りたい」との考えで、「信じられる未来」を実現したいと言う。

 ヒラリーを体制派と捉えると、サンダースは間違いなく反体制派の候補である。ルイジアナ州立大学のロバート・バー教授は「サンダースとトランプはワシントンの体制派とは違う場所から生まれた。そこに有権者は共感を覚える。4年前には見られなかった現象だ」と指摘する。

 ヒラリーはすでに体制派になってしまっている。新鮮さに乏しく、新しいメッセージや変革を担う候補とは思えない。上院議員や国務長官として確実に職務をこなしてきた経験はあるが、大統領になって米国を新しい場所に導けるかどうかは疑問だ。クリントン家に対する辟易感が一部の国民に生まれているのも確かだ。

 いずれにしても、来年1月に大統領になるのは民主党の2人と、トランプを含めた共和党の3人、計5人にほぼ絞られた。

 5人による本当の戦いはこれからだ。