『中国が本格的に検討し始めた尖閣、台湾侵攻シナリオ 日中台の軍事力バランスから見た具体的な作戦とは』(1/19JBプレス 矢野義昭)について

日本の防衛戦力の充実を図るのと米軍が左翼政権に代わって、どの程度共同作戦ができるかにかかるのでは。

記事

PLAの「J-10」戦闘機(2020年12月30日撮影、China Militaryより)

米国防総省の『PRC(中華人民共和国)を含む軍事力と安全保障の発展』に関する米議会への2020年の報告によれば、米軍はPLA(人民解放軍)の将来について、以下のように分析している。

「PLAは、長期的な世界の軍事的な潮流に、現在のドクトリン、概念、戦役(campaign)を適応させて中国の国益の拡大に対応させ、PLAの重大な構造と能力の変化について説明することを必要とするようになるだろう」

ここで言う「戦役」概念とは、PLAが中国の戦略的な目標を達成するために、いまPLAが開発している概念である。戦役では、国境防衛から大規模な多国間の戦争までの行動が組み込まれている。

PLAの統合作戦は、「戦区部隊司令部のような統合司令部指揮下の2軍種かそれ以上の複数の軍種にわたる作戦であり、統合火力打撃、島嶼封鎖、島嶼侵攻作戦などの攻勢作戦、あるいは防空、国境防衛、対上陸作戦などの防勢作戦を含む」とされている。

PLAの新たな戦役概念では、PLAの戦力投射と防衛能力は中国本土からはるかに遠方にまで拡大され、その能力は宇宙・サイバー・電磁波戦などの新空間にも及び、それらの戦力は統合一体化される。

戦役概念は新領域を含む宇宙での対決まで含む、マルチドメイン作戦の概念と類似していると言える。

戦役作戦の様相について米国防総省は、「複数の戦区戦力が参加し、地理的には西太平洋からインド洋に広がり、統合火力打撃、島嶼封鎖、島嶼侵攻作戦などの攻勢作戦と、防空、国境防衛、対上陸作戦などの防勢作戦が遂行される。非戦争軍事行動も含まれ、海外での作戦、他国軍との共同作戦も行われるようになるであろう」とみている。

特に、台湾と日本の南西諸島に対する侵攻では、PLAの主に東部戦区と南部戦区の戦力が使用され、米軍の来援阻止のために北部戦区の海軍が使用されるかもしれないとみている。

以上のようなPLAの戦略、「戦役」教義と以下の軍事力バランスに基づき、尖閣と台湾に対する侵攻のシナリオと様相を分析する。

台湾海峡両岸の軍事力バランスに関する米国防総省の見積とその分析

上記報告では、中国と台湾の戦力データとして、台湾両岸の陸海空軍およびロケット戦力について各付表を付している。

前記の、米国防総省のPLAに関する軍事力の発展報告と各付表の台湾海峡両岸の軍事力バランス評価から、以下のような点が指摘できる。

台湾での軍事作戦に参加するのは、東部戦区と南部戦区の陸海空軍が主であるが、人民武装警察指揮下の海警局と武装海上民兵の舟艇も参加するであろう。北部戦区海軍は洋上での米軍等の接近阻止あるいは他の戦区海軍の支援をするかもしれない。

宇宙、サイバー、電磁波戦は戦略支援部隊の支援の下、平時も含めた早い段階から隠密裏あるいは奇襲的に実施され、戦争目的達成に最大限に活用されるとみられる。

また、選挙介入、輿論操作、プロパガンダなどの「三戦(心理戦、輿論戦、法律戦)」、破壊工作、民兵や特殊部隊を使用したグレーゾーンの戦いなどの「非戦争の軍事行動」と、海外基地を活用した遠距離での作戦、ロシア、パキスタン、イラン、北朝鮮などの各国との共同作戦なども実施されるとみられる。

戦力比較表から、地上戦力については、兵員数は総兵力で十数倍、戦車、火砲など主要装備で6~8倍、正面戦力では兵員数で4~5倍、部隊単位では数倍程度の格差がある。

PLAには6個旅団の水陸両用旅団と7個の空挺旅団がありヘリボーンが主の空中攻撃旅団も7.5倍編制されている。これらの戦力による迅速な多正面からの立体包囲作戦が脅威となるとみられる。

海軍戦力については、正面戦力でも駆逐艦が約6倍、潜水艦はPLAの原潜6隻を含む38隻に対し台湾は2隻しかない。

PLA海軍は空母2隻、巡洋艦1隻、コルベット39隻を保有しているが、これに対抗する艦艇は台湾側にはない。

上陸用艦艇についても、正面で51隻に対し14隻と4倍近い差があり、特にPLAの戦車揚陸艦、ドック型揚陸艦などの大型揚陸艦艇が増加している。PLAのミサイル哨戒艇は総数で約倍、正面で1.5倍に上る。

その結果、潜水艦、各種艦艇・航空機からの長射程ミサイルの集中攻撃などによる洋上での台湾封鎖、台湾の地上目標制圧、米海軍空母艦隊の来援の遅延と阻止、さらに水陸両用艦艇を使用した迅速な大規模上陸侵攻支援に適した戦力構造になっている。

また民間船舶の動員による後続上陸戦力と兵站輸送能力の増強にも注意が必要である。

航空戦力については、戦闘機の総機数で4倍近い差があり、正面では1.5倍の格差がある。また、爆撃機は台湾側にはない。

輸送機の総数は13.3倍の格差がある。長距離輸送力があり総機数の大半の台湾正面への集中は可能とみられる。その他の民間航空機の動員による輸送力増強も注意が必要である。

航空戦力バランスについて全般的には、長距離の爆撃機、輸送機の戦力は中国側が優位にある。

また第4世代機以上の近代化された戦闘機戦力約800機は、域内の米軍と日台韓の航空戦力にほぼ等しく、近代化が質量ともに進んでいる。

台湾海峡と東部を含む周辺の航空優勢は、米軍空母艦載機の来援がなければ、PLA側に奪われることになるとみられる。

ロケット戦力については、射程が300キロ以上の各種ミサイル戦力はPLAが一方的な優位にある。

短距離ミサイルでも移動式であり、300キロあれば台湾海峡を射程下に入れ、西岸からの台湾侵攻を掩護できる。

新型の短距離ミサイルは射程が約1000キロあり、台湾海峡や日本の南西諸島周辺を制圧できるだけではなく、台湾と沖縄の東部海域を攻撃することも可能であり、米海軍の来援阻止に使用可能とみられる。

また射程が1500キロから3000キロの準中距離ミサイルは日本全土を攻撃でき、射程約3000キロ以上の中距離弾道ミサイルはグアムも制圧できる。

特に通常弾頭の対艦弾道ミサイル「DF-21D」は洋上の空母など大型艦を攻撃でき、「DF-26」は核・非核両用でグアムを攻撃できるとみられ、いずれも米軍から重大な脅威と見られている。

これらの各種ミサイル火力が有事には、米空母来援の遅滞と阻止のためのA2/AD戦略の基幹戦力となるとともに、当初の奇襲段階では台湾、尖閣諸島、南西諸島、必要に応じ日本本土、グアムに対する攻撃に使用されるとみられる。

以上から総合的に判断して、台湾に対する中国の各種戦力要素の優位はますます高まっており、圧迫も強まっていると判断される。

日本周辺での中国軍の活動状況

事実、『令和二年版防衛白書』では、日本周辺での中国軍の活動について、以下の状況図が示されている。

この図からも、特に尖閣諸島~宮古海峡から沖縄と台湾の東岸部への海空軍の活動が活発化していることが明らかである。

また、日本海から津軽海峡、宗谷海峡への進出、太平洋での空母の演習など主要海峡から北極海を含めた外洋に出ようとする行動も活発になっている。

さらに、中露海空軍のわが国周辺での共同演習・訓練も増加している。

防衛省によると、2020年12月22日、中国とロシアの爆撃機が日本海から東シナ海にかけて共同監視飛行を行った。

参加したのは、中国軍「H-6」爆撃機4機、ロシア軍「TU-95」爆撃機2機であり、竹島周辺、対馬海峡、沖縄本島と宮古島の間を飛行した。

両国による共同飛行は2019年7月以来2回目であり、極めて異例な訓練である。

これらの中国軍の動向は、前期の軍事ドクトリン、戦略、軍事バランスなどからみた分析と符合しており、特に宮古海峡から台湾、南西諸島の東部、更に西太平洋に出ようとする中国軍の意図は明らかである。

また、ロシアとの共同を誇示し、日米台を牽制しようとする狙いも伺われる。

ただし、ロシアは2020年の中印紛争の最中に、インドに対し最新鋭の防空ミサイル「S-400」や最新鋭戦闘機「Su-30MKI」の売却を進めており、中国と全面的に軍事的に親密な関係になっているとはみられない。

いずれにしても、中国の台湾統一、尖閣諸島を含むわが国南西諸島に対する侵攻作戦の能力は着実に質量ともにミサイル戦力、海空・両用作戦能力など各方面で向上しており、侵攻を可能にする軍事力バランスが現実のものになろうとしているとみるべきであろう。

台湾と尖閣に対する侵攻シナリオの要因ごとの分析の手順

台湾と尖閣に対する侵攻シナリオの分析に当たっての分析手順は以下の通りである。

①まず様々の要因ごとのありうるシナリオを列挙し、

②要因ごとに、それらのシナリオを比較分析して可能性が大きく、影響度の大きなシナリオをそれぞれ絞り込み、

③それらの諸要因を一連のストーリーとして時系列にまとめて、分析評価する。

侵攻シナリオの分析要因には、①侵攻の正面、②戦力、③時期、④要領などが挙げられる。

これらの諸要因について、それぞれのシナリオを列挙し、他の要因とも関連付けつつ、その可能性と影響度を比較分析し、要因ごとにひとつのシナリオに集約することとする。

①侵攻正面に関する分析

侵攻正面としては、台湾と尖閣の両者を対象として、以下の3通りがありうる。

ケース1:台湾のみの単独侵攻
ケース2:尖閣のみの単独侵攻
ケース3:台湾と尖閣の同時侵攻

以下の理由から、ケース3の同時侵攻の可能性が高いものと判断される。

a.PLAの戦略家たちの文献では、台湾と尖閣諸島をPLAが太平洋に出るための「大門」のかんぬきとして、戦略的に一対不可分の地政学的価値を持つとみていること。

b.実際のPLAの海空軍の演習や訓練でも宮古海峡を通過して西太平洋に出て、それから台湾東岸に回りさらに台湾を周回する経路、また日本本土太平洋岸に出る経路が多数確認されていること。

c.PLAが、台湾本土武力併合のためA2/AD戦略をとり米軍空母部隊の来援阻止のために、海空軍と各種ミサイル火力により西部太平洋での戦略守勢をとるとすれば、台湾の南北にある宮古海峡とバシー海峡の両翼から台湾を包囲するのが、最も早期かつ確実に米軍来援に対する阻止・遅延態勢を確立でき、台湾を完全に孤立化させることができる。

また宮古海峡の北部には、沖縄の米軍基地が、南北には自衛隊が所在するが、有力な東部・北部戦区の海空軍の支援を直接得られ、上海以北には港湾や航空基地、兵站拠点も多く距離的にも近い。戦略攻勢を採るには中国側の態勢としては望ましい攻勢正面である。

ただし、両翼包囲には大規模な侵攻戦力の集中が必要となり、北部戦区の一部も支援する必要がある。

その場合、在韓・在日本本土の米軍による、地形縦深の薄い政経中枢の北京・天津地区への最短距離からの攻勢に対する防御を主任務とするとみられる、北部戦区の戦力が手薄となり、日米韓の共同による攻勢を受ける恐れが高まる。

南部戦区も南シナ海正面の防衛に主力を使用するため、バシー海峡からの攻勢に全力で参加はできないとみられる。

結果的に、両翼から同時に台湾を奇襲的に包囲するに十分な戦力を集中するのは限界があるとみられる。

ただし、奇襲的なミサイルの集中攻撃、宇宙・サイバー・電磁波戦での戦略先制奇襲に成功すれば、日米韓の戦力発揮は一時的に困難となり、反攻作戦を遅延させ、その間に台湾を一挙に占拠することも可能かもしれない。

逆に、在沖縄、日本本土、韓の米軍が健在する限り、台湾に対する宮古・バシー両海峡からの両翼包囲により一挙に台湾を孤立させることは容易ではないとみられる。

PLAとしては、在沖縄・日本本土・韓国の米軍の撤退または不介入を保障できる情勢の下では、宮古海峡正面からの主攻勢による台湾に対する両翼包囲を奇襲的に行う可能性が高い。

その際には、一体とみている尖閣諸島を台湾本島侵攻と同時または直前に奪取するとみられる。

d.ケース2の台湾単独侵攻は、南シナ海・南太平洋正面との連携を重視するとともに、在日・在韓米軍を刺激せず、その参戦を抑止あるいは遅延させるとともに、台湾本島と太平島、比との連携を絶ちつつ、南翼から孤立させながら占領するという狙いをもって行われる可能性がある。

ただし、以下の問題点がある。

南シナ海は、軍事化したとは言え岩礁と小島嶼しか基地群がなく、基地機能の抗たん性に劣り、長期の兵站維持も困難である。

また態勢上、東・西・南の3正面を、敵性国の越、比、シンガポール、インドネシア、さらにその背後の豪とグアムの米軍基地に囲まれている。このため、有事には短時間で制圧されるおそれがあり脆弱である。

逆に米軍としては、豪とグアム、シンガポールの基地群を反攻作戦の基盤として利用でき、かつ越、比などの協力も得られる。

そのため、反攻作戦としては、南太平洋から脆弱な南シナ海正面、次いで台湾へと北上する戦略攻勢方向をとるのが、リスクが小さく、成功の可能性が高いとみられる。

PLAとしてこの脅威に対処するのは、主に南部戦区の責任となるが、南部戦区としては、バシー海峡の制圧よりも、まず南シナ海特に原潜基地が所在する海南島の防衛を優先することになるとみられる。

またPLAとして、バシー海峡正面からの主攻勢は宮古海峡方向からの主攻勢に比べ、北部・東部戦区の支援を得にくく、海南島以外に支援基地群も脆弱であり、戦力の集中と維持がより困難とみられる。

これらの諸要因から、南部戦区の主任務は南シナ海基地群の防衛にあり、バシー海峡からの主攻勢への参加は一部戦力に留まる可能性が高いとみられる。

半面、台湾単独侵攻の狙いの一つが、在沖縄・日本本土・韓国の米軍基地の参戦を遅延させることにあるとしても、

①米台関係法に基づく米国の台湾防衛義務の存在、②日米安保条約下にある在沖縄米軍基地に台湾軍の一部が緊急に避難してくる可能性があること、③PLAのミサイル戦力により台湾を孤立させるためには、同時に先島諸島の自衛隊基地および在沖縄米軍を制圧する必要があることなどを考慮しなければならない。

すなわち、台湾単独侵攻を企図しても、PLAとしては必然的に、先島諸島と在沖縄米軍基地を、事前または同時に制圧しなければならなくなる。

もし制圧をしなければ、米台関係法に基づき無傷の在沖縄米軍による台湾防衛への早期の先制介入を招く可能性が高い。

以上の理由から、PLAとしては、台湾単独侵攻を企図するとしても、台湾北翼と在沖縄・在日・在韓米軍への対処を同時に行わねばならないであろう。

すなわち、台湾単独侵攻は全般態勢と戦略的合理性から見て、成立しないことになる。

e.尖閣単独侵攻は所要兵力も少なく、米国や国際社会の介入前に比較的短期間で占拠に成功する可能性はある。

しかし、その後日米による尖閣上陸部隊に対する海上封鎖と遠距離火力による反撃に会い、尖閣占領部隊の戦力を維持するのは、容易ではないとみられる。

また尖閣諸島が占拠された場合には、日本の輿論の憤激を招き、政治的にも対中融和派が影響力を失い、日本の本格的な防衛力増強、台湾との安全保障協力強化を誘発するおそれがある。

日本の台湾支援政策は一挙に進み、日中国交断絶と日台国交回復、対台湾武器援助、日本版台湾関係法の制定、日台物品役務相互提供協定・防衛機密包括保護協定の締結、日米台共同作戦計画の策定と三国共同軍事演習の実施など、一気に日本の台湾防衛協力、日米台間の防衛協力を加速することになるであろう。

また同時に台湾の対中警戒心を高め、台湾の軍事力増強、米国からの武器支援による台湾の防衛力強化がさらに進むであろう。

半面、中国側が、「九二共識」や台湾への年頭の呼びかけを通じもくろんでいる、輿論工作や経済関係強化による吸収合併などの平和裏の政治統一の可能性は遠のくであろう。政治的にも台湾独立派の支持が高まることになる。

特に台湾での反中意識の高まりは、台湾の武力の威嚇下での政治的統一の可能性を弱め台湾武力併合の選択肢を採らざるを得なくなるが、その際の軍事力バランスもかえって中国側に不利になるであろう。

また、民主党の人権派を含めた米国輿論の超党派の反発を招き、米国の軍事力の増強と米日台3国間の防衛協力を促進させることになろう。

沖縄、韓国、グアムの米軍増強も招き、長期的な戦略目標である西太平洋の覇権獲得も「強軍の夢」も遠のくことになる。

東南アジア諸国やインド、豪州、欧州各国の反発も強まり、世界的な対中包囲網が経済・金融・貿易・外交・技術・情報など各方面で強まり、中国の国際的孤立が決定的となろう。

以上の、日本側の対応による軍事的リスク、日台米の反発による政治的リスクと防衛力増強の誘発、外交的孤立のリスクを総合的に考慮すれば、中国による尖閣諸島への侵略と占領は軍事的にはいつでも可能としても、安易に実行される可能性は低いとみられる。

ただし、米バイデン政権の意思を試し、あるいは米国と日台との連携の度合いを探るために、中国が、尖閣諸島侵攻あるいは台湾本島以外の太平島、澎湖諸島など周辺の台湾の島嶼を占領するなどの脅威を作為する可能性はいつでもありうる。

その場合中国は、作為した紛争を外交的な解決で決着を図り、日台と米政府を油断させ、紛争後はむしろ緊張緩和を演出するとみられる。

しかし、むしろその真意は台湾併合のための有利な状況を作為することにあるのを忘れてはならない。

②侵攻戦力の分析

侵攻戦力としては以下の3通りに大きく区分できるであろう。

ケースa:東部戦区と南部戦区
ケースb:東部戦区主
ケースc:南部戦区主

以下の理由から、ケースaが最も可能性が高いとみられる。

a.侵攻正面としては、在沖縄・日本本土・韓国の米軍による早期介入のおそれがなければ、台湾南北からの両翼包囲の可能性が高く、かつ尖閣諸島は台湾とほぼ同時に進行される可能性が高いとの結論を得た。

その場合の所要戦力は最大となり、北部戦区海軍による台湾東部西太平洋での米空母来援阻止も含め、東部・南部戦区主のほぼ全力での作戦となる可能性が高い。

なお北部戦区の陸空軍主力は北京・天津の首都圏を米日韓の航空侵攻の脅威から護るために控置されることになろう。また、南部戦区主力は南シナ海方面の防衛に充てられることになろう。

b.ケースbは尖閣・澎湖諸島など小島嶼への限定目標の短期侵攻の際に行われ、兵力規模としては、東部戦区の海空軍と支援するミサイル部隊は全力展開されるが、上陸部隊は武装民兵、偽装特殊部隊の大隊規模程度となろう。

短期間に防衛態勢を固めるため、揚陸艦艇、ホバークラフト、空母搭載のヘリ、空挺部隊も併用し、迅速に兵力を増強するであろう。

その際には上陸部隊として、大型ヘリなどで対空レーダ、SAM、SSMなどを最優先で早期展開するとともに、築城土木機能を強化して迅速に抗たん力のある地下陣地の構築に努めるとみられる。

遠距離の陸海空発射母体から発射される各種ミサイルの攻撃目標の発見・識別・誘導、衛星通信、サイバー・電磁波攻撃支援、無人機・無人艇などの偵察警戒手段、機雷戦・潜水艦戦支援機能など、マルチドメイン作戦に対応した能力も展開するとみられる。

また、日米のミサイル攻撃による反撃に備え、弾道ミサイル・巡航ミサイルに対処する能力を持った各種艦艇、地上配備のミサイル防衛システムも展開されるであろう。潜水艦戦、機雷戦、対潜作戦も短期間だが熾烈に戦われることになろう。

このような尖閣上陸部隊の機能と作戦の様相は、台湾本島との同時侵攻などの場合も規模はやや小型になっても基本的には同様になるとみられる。

c.ケースcの南部戦区主となるのは、主攻勢が南シナ海、バシー海峡正面に指向された場合であり、この場合も一部の戦力を配備して在沖縄・日本本土・韓国の米軍の反撃などに備えなければならない。

その意味では、東部戦区は戦略守勢とはいえ、尖閣諸島、先島諸島の占領も含め、日本領土の部分占領を必要とする可能性は大きく、東部戦区の主力は、宮古海峡南北での戦略防衛態勢確立のために運用される可能性が大きい。

戦力規模は縮小され、宮古海峡以南と尖閣占領が主となるが、基本的な作戦様相はケースaと変わらないであろう。

③侵攻時期に関する分析

侵攻時期については、以下の3つのケースが考えられる。

ケースa:2021年夏頃
ケースb:2020年代前半
ケースc:2020年代後半から2035年までの間

中国の戦略的な狙いと日米台の国内情勢および対応により異なるが、尖閣など周辺島嶼への限定目的の局地侵攻については、ケースaの可能性が高いとみられる。

また台湾全島の併合については、各国の国内情勢、戦力整備などの諸要因が成熟する期間を考慮すれば実行の可能性の面から、ケースbを追求することになるとみられる。

しかしケースbが実現できなかった場合も、ケースcの、習近平政権が「強軍の夢」達成の中間目標年として掲げている2035年までに台湾統一のための行動に出る可能性は高い。

a.小島嶼への限定目的の侵攻は、いつでもありうるが、バイデン政権成立後間もなく米国内が不安定で、海象が安定する、コロナ禍で米日が弱り、オリンピックと選挙に日本が追われる、今年夏が好機になるとみられる。

なお、日米への刺激を避け、台湾のみを対象とするため、太平島、あるいは澎湖諸島など台湾の周辺島嶼への侵攻もありうる。

b.ケースbは、バイデン政権後にさらに極左の米政権が成立し米国の国力と軍事力が弱体化し、米国内が巻返しを図る保守派と極左に分断され経済も低迷し国内の混乱が深まり、他方で中国共産党内の権力闘争が激化せず習近平独裁体制が維持される場合には可能性が高い。

台湾・尖閣侵攻の可能性が出てくるかどうかを見極めるには、まだ数年はかかるとみるべきであろう。特に、中国国内ではまだ習近平派と江沢民派の権力闘争は続いており、習近平派が権力を固めるにはまだ数年を要するとみられる。

他方の米国の内政も不透明である。

例えば、中国から資金提供を受け息子のハンター・バイデン氏の事業で利益を得ているバイデン大統領の対中融和政策がどの程度進展するのか、副大統領カマラ・ハリスの大統領昇格はあるのか、ドナルド・トランプ前大統領支持派の巻き返しが成功するのか、米国内の混乱が深まるのか否か、米国経済特に軍需産業の衰退は起こるのかなどの不透明な要因がいくつもある。

これらの帰趨を見極めなければ、台湾統一が可能な情勢になるかどうかは判断できない。

また、超限戦の発動とその効果の見極めにも時間を必要とする。

選挙介入については、2020年の大統領選挙でも、ANTIFAへの支援、選挙集計機の操作、投票用紙の偽造など、中国の選挙介入の証拠が挙げられている。

台湾でも中国によるサイバー攻撃による選挙介入が行われたとみられており、米日台の各種選挙でも同様の選挙介入、政治家、財界人、学界、メディアなどへの影響力の浸透、フェイクニュースなどによる輿論捜査、心理戦、法律戦も展開されるとみられる。

これらの効果が浸透するには、数年を要するが、その間にも米日台で最高指導者の選挙、議会選挙などが行われる。その際にまた同様の手法で、選挙介入がされ、中国に対して融和的な政権が米日台などで誕生する可能性もある。

コロナ禍により各国の経済と政治が混乱し、国力が弱まることが今回立証されたが、中国共産党指導部が新型コロナのヒト・ヒト感染の事実を知りながら、虚偽と隠蔽により世界に拡散させたことは明らかになっている。

遺伝子操作が簡単にでき、生物兵器の研究も進んでいるとされる中国が超限戦の有力な手段として、さらなる新型ウイルスの拡大を実行するおそれもある。

以上の各種超限戦の手法の実行とその効果の見極めにはまだ4~5年は必要である。

戦力整備にもまだ数年を要するとみられる。

直接の侵攻戦力の骨幹となる、大型揚陸艦艇、新型の空母、巡洋艦、潜水艦などの海軍渡洋戦力の増勢、第六世代機の開発配備、海軍陸戦隊や陸軍東部戦区部隊、海上民兵の増強、兵站準備にも、まだ数年は必要であろう。

また画期的な各種新型兵器の開発配備にもまだ数年を要する。IoTの進歩により、物理的破壊も含めたインフラ攻撃が、サイバー攻撃により可能となるかもしれない。

また、電磁波攻撃も宇宙空間、航空戦、弾道ミサイル防衛などでは多用されることになるであろう。しかしまだ兵器として運用できるほど成熟してはいない。

中米露ではミサイル迎撃システムを突破する極超音速滑空体などの開発配備の競争が激化しているが、各国とも主力装備として配備するにはまだ数年を要する。大型ジェットエンジン、第六世代機、新型潜水艦の開発にも中国はまだ数年を要するとみられる。

5Gの情報通信機器、AI、量子技術、智能化自律型無人兵器など先端兵器の開発も進んでいるが、中国が優位を固められるとしても、それにはまだ数年を要するであろう。

以上の諸要因の分析結果を踏まえれば、台湾の武力併合を必要とするか、政治併合は可能か、武力併合をするとした場合に米日の介入をさせないような政治経済情勢に持ち込めるか否かなどの不可測要因を見極めるためには、2020年代中ごろまではかかるとみるべきであろう。

国内で習近平政権の独裁権力を固めるためにも、数年はかかるとみられる。また侵攻に必要な戦力の整備、革新的兵器の独自開発と配備などにも、まだ数年は要するであろう。

以上から、台湾本島の侵攻については、条件成熟を待つためケースbとなる可能性が高い。特に、2020年10月の共産党第十九期中央委員会第五回総会で「奮闘目標実現」の年として掲げられた、軍創設百年を迎える2027年が節目の年になるとみられる。

c.ケースcについては、習近平政権の「強軍の夢」実現の中間段階の目標年である、2035年までが節目となる。

「強軍の夢」実現までの年表として挙げられた3段階のうちの第2段階は、2021年から2035年とされ、その間に、全面的な軍事理論、軍隊組織形態、軍事人事、武器装備の現代化を達成するとされている。

他方で習近平政権は2018年3月の全国人民代表大会で、それまで2期10年までと定められていた国家主席の任期条項を削除した。結果的に習近平氏は2035年頃までは国家主席、党総書記、中央軍事委員会主席として留まれることを意味している。

故李登輝元台湾総統も指摘しているように、習近平氏には軍事的実績がないことから、在任間に宿願の台湾併合を何としても成し遂げるとの意向をもっているとみられており、2035年までに台湾併合を、必要とあれば武力行使をしてでも成し遂げる可能性は高い。

その意味では、ケースbが、情勢が成熟せず達成できなかった場合も、さらに長期の一貫した戦略目標として、ケースc、すなわち任期内で、「強軍の夢」達成の中間目標年である2035年までに達成しようとする可能性は高い。

④侵攻要領に関する分析

侵攻要領については、以下の様々のケースが考えられる。

要領1:超限戦の全面的活用
要領2:政治統合を主に武力行使で威嚇
要領3:武力行使

これらの可能性については、要領1は常に平時からあらゆる方法で長期にわたり執拗に行われるとみるべきであろう。

要領2は、表向き歴代共産党政権も習近平も表明している方針であり、その可能性は高い。しかし、特に習近平政権になってからは、要領3のあからさまな武力行使を示唆する軍事的な圧迫や武力の誇示が目立つようになっている。

その意味では、要領3の可能性の方が高まっていると言えよう。

超限戦については、非軍事の経済、金融、貿易、情報、技術、政治、文化、教育などあらゆる分野で、あらゆる文明の利器を逆用して展開される。戦争ではない軍事行動も含まれる。

特に尖閣諸島に対しては、サラミスライス戦術による既成事実の積上げ、政財界、メディア、学界などへの影響力行使作戦による抵抗意思の剥奪、法律戦、歴史戦、フェイクも交えた輿論戦による正当化と日本国民の間の反発意識の低下などに注意が必要である。

台湾侵攻に際しても、すでに現在活発に行われている。

例えば、サイバー攻撃、選挙介入、フェイクニュースによる輿論操作、対中融和派への支援による分断工作、旅行者の制限による圧力、台湾企業の大陸経済へ取り込み、技術の移転強要と窃取、人の往来を通じた懐柔と獲得工作など多方面にわたり活発に行われている。

このような状況は今後も継続し、台湾の独立派に無力感を与え、国民党など融和派を政治的に盛り立て、両岸間の政治協定締結など、政治的な併合を目指すとみられる。

その点では、ケースbとケースaは一体であり、その最終目標が台湾の政治統一にある。しかし、その背後には軍事的恫喝が必ずともなっており、ケースcにも通じている。

しかし、習近平政権は、台湾も尖閣諸島も「核心的利益」とする立場を取り、いずれも「太平洋に出るための大門を閉ざすかんぬき」であり、武力行使をしてでもいずれ奪還すべき固有の領土である、それらの奪還が無い限り「祖国の統一」もなく、「偉大な中華民族の復興」もない、そのために何よりも「強軍の夢」が果たされねばならないとの姿勢を鮮明にしている。

しかも、2035年までに「強軍の夢」の中間目標を達成するとしており、世界一の軍隊建設の途上での最大の中間目標とは、具体的には台湾統一、尖閣奪取を意味しているとみるべきであろう。

これまでの習近平政権の方針や行動を分析すれば、ケースcこそが本音であるとみて、それに備えることが必要である。

まとめ:ありうる侵攻シナリオと様相

諸要因の分析から最も蓋然性が高いとみられるシナリオは概略以下の通りとなろう。

2020年夏以降随時、尖閣諸島に対するサラミスライス戦術を併用した着上陸を含む奇襲侵攻は起こりうる。しかし、その目的は日米台の対応とその間の連携を見極めることにあり、事態は政治的外交的に解決される可能性が高い。

その後、緊張緩和ムードを盛り立てて、日米台の国防力整備を遅延させつつ、台湾・尖閣同時侵攻に必要な着上陸戦力、それを支援する海空、ミサイル戦力の増強、民間力の動員態勢の整備などを行い、侵攻準備を進めるであろう。

他方では、米国の選挙、台湾と沖縄の輿論などを主な標的として、『超限戦』を進め、選挙介入、サイバー攻撃、フェイクニュースの流布、政財学界要人への影響力工作など、あらゆる手段を駆使して、対中融和政策の推進、日米台の国防力強化の妨害を試みるであろう。

なお在韓米軍については、韓国の左派政権下で米韓同盟が破棄され尖閣・台湾侵攻前に撤退しているか、同盟が有名無実となり戦力として空洞化している可能性が高い。

戦いは、サイバー、宇宙、電磁波などの新ドメインでの先制打撃及び濃密な各種ミサイルによる台湾・南西諸島の米軍基地、日台の基地群に対する攻撃から始まるであろう。

台湾本島と先島に対し、着陸侵攻も併用した立体的な多正面からの迅速な分散奇襲侵攻が行われ、短期間に主要都市を制圧し、占領の既成事実化を図るとみられる。

特に、台湾から沖縄東岸沿岸部の努めて遠方に海空軍を進出させ、ミサイル火力などにより米空母部隊などの来援を遅延・阻止しつつ、在沖縄・在日米軍の早期制圧とグアム以東への撤退を画策するとみられる。

台湾と沖縄では海空優勢をPLAが一時的に確保し、部分的に着上陸侵攻は成功し、日台の国土と住民の一部は一時的に占領下におかれる可能性が高い。

数か月後には米軍のマルチドメイン作戦などの成果により、来援が可能になる可能性がある。それまでは、日台は独力で国土、国民を防衛しなければならないであろう。

その際には日台の抵抗意思を挫くために中国が核恫喝をかける可能性が高い。

また、住民を人質に取り、臨時革命政府の樹立と分離独立宣言、PLAに対する救援要請、それらに呼応した中国による独立承認とPLA後続部隊の本格上陸など、政治・外交戦も併行的に展開するとみられる。

地上戦では長期のゲリラ戦が占領された島嶼でおこなわれ、日台ではそれを支援するための海空隠密輸送が必要になるであろう。

同時に島内の残留住民の退避と保護が重要な課題となる。特に九州には台湾と沖縄の難民、避難民が多数流入することになるとみられる。

最終的には日米台の反攻作戦により、PLA侵攻部隊は海空優勢を失い、戦力が枯渇し降伏を余儀なくされ、戦争は終結する可能性が高い。しかし、それまでには数カ月から場合により数年を要するかもしれない。

以上は一つのシナリオに過ぎず、厳密な計数的検討やシミュレーションを経た結果ではない。

また、様々の不可測要因があり、実際にどのようなシナリオと様相になるか、そもそも侵攻自体が起きるのかという問題もある。

しかし、このような蓋然性の高いシナリオを予測し、計画を立て必要な防衛力を整備し、訓練を積んでおくことは、国防上必要不可欠であり、それが紛争の抑止力にもなることは間違いない。

特に、ありうるシナリオに対して採るべき対応策が決まれば、それが実行できるような防衛力を整備しておくことは、火急の急務である。特に日本としては、尖閣への奇襲対処と安全保障分野での日米台の連携強化に努めなければならないであろう。

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