『米イラン衝突で見えた「世界の警察官」がいない世界の不安』(1/14ダイヤモンドオンライン 上久保誠人)について

1/17日経<「中国への備えを重視すべきだ」 元国防総省高官 ガイ・スノッドグラス氏

――日米同盟がこの60年で果たした役割をどう評価しますか。

「アジア太平洋を中心に地域の平和と安定に貢献してきたのは言うまでもない。(対ソ抑止が主眼だった)冷戦期から日本は米国との協力関係を段階的に広げてきた。中東での対テロ戦争で新法を作り、集団的自衛権の限定行使を可能にするよう憲法解釈を変更した」

「日本が自らの判断で中東に艦船を派遣するのは有益で、歓迎すべきことだ。しかし、それを米国が指示していいとは思わない。日本にも国内事情があり、米国には米国の事情がある。その溝を埋めるのが大事だ」

――いま同盟が直面する最大の課題はなんですか。

「中国への備えをより重視すべきだ。北朝鮮の核や中東でのテロとの戦いは懸念事項だが、私たちは優先順位を考えないといけない。(2010年代初めに)米海軍で日本に駐留していたとき、中国がなんらかの紛争をしかけてくる可能性をいつも懸念していた。その脅威は一段と高まっている」

「米国の強みは日本をはじめとした欧州、オーストラリアなどとの強固な同盟関係だ。中国は米国が持っているような関係を他国と構築できていない」

――トランプ大統領は日米同盟で米軍駐留費の増額など数字を重視しているようにみえます。

「トランプ氏本人は駐留費の大幅増が現実的だと考えていないかもしれないが、増額を望んでいるのは確かだ。有権者に『私は交渉で勝利した』と宣言するためにだ」

「17年7月、トランプ氏は国防総省で同盟の重要性について講義を受けた。日本や北大西洋条約機構(NATO)、サウジアラビアに安全保障を提供することで貿易活動が保証され、石油が安全に流通し、海賊が封じ込められる」

「だから米軍が世界中にいるのが大事で、米国にも利益があると伝えた。しかし、彼はそのメッセージを好意的に受け取らなかった」

――別の人が大統領に就けばどうなりますか。

「仮にトランプ氏ではなく野党・民主党のバイデン前副大統領やクリントン元国務長官が大統領だったとしても、より多くの支払いと貢献を同盟国に期待し、求めることになるだろう」

「NATOをみればよい。トランプ政権は加盟国に国防費を国内総生産(GDP)比で2%に増やすよう求めているが、これはオバマ前政権ですでに合意していた」

――トランプ政権はイラン革命防衛隊の司令官を殺害したことで、むしろ中東への米軍の増派を余儀なくされています。

「殺害は適切ではなかった。中東をより不安定にし、米国の同盟国を犠牲にしてイランだけでなく中国やロシアの影響力を増す機会を与えてしまった。米国が中東につなぎ留められる状況は、インド太平洋に力点を移すという中長期的な安全保障戦略とは相いれない」

――イランは報復しました。

「イランによるイラクの米軍駐留基地2カ所への攻撃は、司令官殺害への報復に釣り合ったものにみえる。事前に攻撃を通告し、米やイラクに被害が出ないようにしたようだ」

(聞き手はワシントン=永沢毅)>(以上)

1/15阿波羅新聞網<重磅!美军将对台派驻特遣作战部队?中国问题专家劝诫蔡英文=重大!米軍は台湾に特別タスクフォースを派遣するか?中国問題の専門家は蔡英文に諫め諭す>台湾の選挙後、中共の喉と舌の編集長は、「北京による台湾武力統一に些かも問題はない」と述べた。外国メディアは、「米軍が台湾またはフィリピン東部の島に戦闘機動部隊を配置する可能性が最も高い」と報じた。米国陸軍長官は、「中共の増大する軍事的脅威に対応するために、米国陸軍はインド太平洋地域に最初の多分野に亘る戦闘タスクフォースを展開する」と発表した。梁京評論員は、「蔡英文の勝利は台湾海峡を挟んだ戦争のリスクを減らす」と分析した。米国亡命中の学者である何清漣は、台湾の選挙の分析を書き、「蔡英文と民進党は、米国民主党を師とする路線を放棄すべきである」と諫言した。

中央通信社は、台湾の選挙結果が発表された後、中共の“環球時報”の編集長である胡錫進が11日夜にWeiboに投稿し、「中国社会は“台湾独立”に反対し、戦う準備ができている。“反分裂国家法”がそのマイルストーンである」と述べた。

12日の夕方、胡錫進はネットテレビ番組「胡侃」で、「北京は武力統一を優先的且つ現実的な選択肢として捉えている。まず、2つの戦略を決定する必要がある:第一に、共産軍は第一列島線近くで圧倒的な優位を形成しているので、北京は介入してくる米軍に耐え難い代償をもたらすことは簡単である。第二に、中国と米国は経済力を逆転させ、中国の市場規模と全体的な経済競争力は米国を上回っている」と述べた。

米国亡命中の学者である何清漣は大紀元に、「蔡英文は4年の執政期間中、欧米の左派から学び、台湾に左派の社会政策を実施し、台湾の実際の状況を考慮していない。例えば労働者の福利政策として“一例一休政策(=完全週休2日制)”を採ったが、結果は労使双方に不満を齎した。償却期限切れの自動車の廃車の環境保護政策は、民進党の支持基盤である農村で非常に不人気であった。国民投票の結果に関係なく同性婚の促進など薄い民進党支持者だけでなく、岩盤層の民進党支持者に動揺を齎した」と述べた。

何清漣はまた、「私も隠すことなく彼らに告げた。蔡英文政権の社会政策は見直されるべきであると。彼女は西側左派の大本営である、ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス・アンド・ポリティカル・サイエンスを卒業し、民進党はイデオロギー上、米国民主党に従った。しかし、事実が証明しているように、民主党は今の段階で“進歩的”と標榜している多くの社会政策は、実際には正常な社会秩序の基盤を傷つけている。台湾はかなりおかしい現実を認識する必要がある」と述べた。

「民進党は民主党にイデオロギー的に近いが、台湾海峡を挟んで中共と台湾の対決時に台湾を本当に支援しようとする人々は、実際には共和党リベラルである。若い民進党幹部もこの判断に同意する。共和党及びトランプ政権は、これらを理解しないかもしれないが、北京に対抗するためには、民進党政権に可能な限り支援する必要がある」

何清漣は「民進党は民主党の教訓から学び、もはや民主党の社会政策を師として扱わないよう」に呼びかけた。彼女は、蔡英文総統の勝利のスピーチの中に、“まだ足りない部分、やり足りない部分”という反省リストを盛り込んでほしかった。“やるには間に合わない”リスト中に、民主党の極左社会政策は絶対に入れないようにと。

米陸軍長官は「米中関係が悪化すれば、尖閣に極超音速ミサイルを配備する」と環球時報は1/14に伝えました。米国は中共の野心の膨張にやっと黙ってはいられないと発言しだしました。オバマでなくトランプだからです。

胡錫進の言う第一列島線内の中国の軍事的優位と中国の経済的優位、両方とも眉唾では。本当にそれを信じて書いたり、言ったりしているとしたら愚かです。少なくとも経済で米国に優位に立っているというのなら貿易協定に合意する必要はないはず。

https://www.aboluowang.com/2020/0115/1396610.html

1/17阿波羅新聞網<协议签署 崔天凯当面呛声川普 中南海内斗?刘鹤有危险?=協議のサイン  崔天凱はじかにトランプを非難 中南海の権力闘争?劉鶴は危険?>驚くべきことに、中国駐米大使の崔天凱は合意書に署名する現場で冷水を浴びせ、トランプに中共の立場を強調した。また、第二段階の協議については言及しなかった。アポロネットの王篤然評論員は、「崔天凱の代表は誰で、劉鶴の将来はどうか、中共の態度は一体どうなるか」を分析した。

王篤然は、「中南海内部での激しい権力争いは、米中間の長期交渉を通じて達成された合意草案にも反映されている」と述べた。多くのメディアの報道によると、江派の韓正と王滬寧常務委員は、米中貿易戦争を混乱させ、2019年5月に米中間で交わされようとした貿易協定を流産させた。今回、崔天凱は、一般的にいえば中南海の高官の同意を得て、トランプを直接非難した。中共の組織原則によれば、崔天凱の発言は組織によって承認された。 崔天凱は第2段階について言及しなかったし、中共のメデイアの報道にも、第2段階の交渉については触れられなかった。

しかし、これは韓正と王滬寧の意思であることを除外することはできない。 崔天凱の履歴を見ると、崔天凱は数十年も中国外交部で働き、中国外交部は江派の手にあった。 崔天凱と江派の関係は、習近平との関係よりも自然に近いものである。習近平は外交システムを粛清しなかった。

王篤然は、「崔天凱の話は少なくとも中共の不本意を示しており、それは、つまり中共が第一段階の合意にしぶしぶでも署名せざるを得なかったことを証明する」と述べた。さらには、ワシントンで全世界の注目を集めている中で、トランプの勝利を見せびらかす署名式に出席しなければならなかった。また、トランプは、中共は約束を守らなかったと非難し、米国企業の強い要求にも直面せざるを得なかった。これは、中国経済が悲惨なため中南海が受け入れざるを得なかったためである。

王篤然は、「米中交渉の中国側のリーダーである劉鶴は、王滬寧が牛耳るメデイアによって名は挙げないものの“投降派”として繰り返し批判されている。劉鶴が第1段階協議に署名したので、反習軍は必ず機会を捉えて彼を攻撃する。 劉鶴の状況が将来的に王岐山と同じであるかどうかは、習近平の力の真の反映である」と分析した。

内部闘争が激しくなって、外部との戦争ができなくなることが理想です。でも、内部闘争のように見せかけているだけかもしれませんが。このところ、イラン、北朝鮮と中共の台湾侵攻問題がメデイアで取り上げられるようになりました。敏感に戦争勃発を感じているからでしょう。

https://www.aboluowang.com/2020/0117/1397327.html

1/17阿波羅新聞網<美中协议幕后 川普女婿点醒北京留得青山在=米中合意の裏で トランプの娘婿は北京を目覚めさせる 留まれば青山ありと>米中は15日に第1段階の貿易協定に署名したが、明らかにこの協定は双方にとって満足のいく結果ではなかった。 WSJの舞台裏分析では、トランプの娘婿のクシュナーの提案を聞いた後、北京は米国との関税合戦を一時的に回避することを決定したと指摘した。

崔天凱は、米国は懲罰的関税を十分に撤回しなかったと率直に言ったが、クシュナーはお互いに「これは双方が撤兵する良い時期である」と気づかせた。「もし、今回合意に達しなかったら、トランプは12/15に1560億$の中国の商品に新しく関税を賦課する。 スマートフォンやおもちゃなどが含まれる」と。「中国は関税を撤廃することだけを考えるのではなく、合意に達することができなかったらどうなるかを考える」ことを提案した。

まあ、クシュナーに言われなくともそんなことはすぐ気づくでしょうけど。習独裁のせいで誰も何も言えないせい?

https://www.aboluowang.com/2020/0117/1397149.html

1/16看中国<孟晚舟引渡听证在即 面临最高30年刑期(图)=孟晩舟の引渡し聴聞会はすぐ 最高30年の刑に直面している(写真)>

2019年は過ぎたばかりであるが、米中関係は雷雨の中にある。 米国と華為の関係は米中関係の重要な焦点である。 元華為CFOの孟晩舟はカナダで1年以上拘留されており、最近注目すべき進展が見られた。 来週の月曜日(1/20)に孟晩舟の引渡しの聴聞会が始まり、カナダ司法省は最近、孟晩舟の事案は引渡し基準を満たしていると明らかにした。孟晩舟の運命は次にどのように発展するのだろうか? 米国に引渡されるのにどれくらいかかるのか? 次の重要なステップは何?

上訴等の対抗措置を取れば、厦門の遠東事件の主犯・頼昌星をカナダから中国に引き渡すのに10年くらいかかったので、そのくらいはかかるかもと。孟晩舟は華為では忘れ去られるのでは。それに30年の刑が科されたら、死ぬまで出れないのでは。

https://www.secretchina.com/news/gb/2020/01/16/919936.html

上久保氏の議論では、米国は共産主義と対峙するために同盟国を増やしていったと言いますが、中共は共産主義国なのに同盟国扱いまでして、ビルクリントンは軍事機密まで教えました。共産主義と対峙なんかしていないでしょう。ケナンとキッシンジャーの能力の差ではありますが。こんな怪物を育て、台湾で戦争が起きたとしたら、キッシンジャーの責任は重大です。死んでいるかもしれませんが。こんな人物を米国は外交の御大として崇めてきたのですから。

「コミュ障国家」は別に日本だけでなく、相手のある話なので、韓国にも言ったらどうかと思う。日本は今まで譲歩しすぎた結果、韓国を増長させたのです。そんな事実すら無視して偉そうに言う必要はない。所詮学者の限界でしょう

記事

米国とイランの衝突は、トランプ大統領の「経済制裁を実施する」との声明でエスカレートを回避したかに見える Photo:AFP=JIJI

米軍のイラン軍司令官殺害に端を発する紛争は、トランプ大統領の声明発表により、これ以上の武力行使の応酬にエスカレートする事態は回避できる見通しとなった。今回の事件から見えてくるのは、トランプ大統領の「アメリカファースト」に基づき、米国が「世界の警察官」役を降りた後の世界の在り方だ。(立命館大学政策科学部教授 上久保誠人)

 イラン革命防衛隊は、米軍がガーセム・ソレイマニ司令官を殺害した報復として、イラクの米軍駐留基地に地対地ミサイル数十発を打ち込んだ。イランの最高指導者アーリー・ハメネイ師は、「今回の米国への攻撃は顔を平手打ちした程度に過ぎない」「米国は敵であり続ける」と発言し、米国と対立する姿勢を鮮明にした。ただし、「米国が反撃しなければ、攻撃を継続しない」との書簡を攻撃直後に出していたことも明らかにした。

 一方、ドナルド・トランプ米大統領はホワイトハウスで演説し、この攻撃によって米国の死者が出なかったことを強調した上で、イランもこれ以上の事態悪化を望んでいないとの見方を示した。そして、「軍事力を使うことを望んでいない」と発言し、イランに追加の経済制裁を科すと表明した。

あらためて証明されたトランプ大統領の「アメリカファースト」に沿った行動原理

 この連載では、トランプ大統領の行き当たりばったりで支離滅裂に見える行動は、彼の「アメリカ第一主義(アメリカファースト)」という考え方に基づき、彼なりに一貫性があるものだと指摘してきた(本連載第170回)。今回の軍事衝突も、彼のアメリカファーストに沿ったものである。

 トランプ大統領は、ソレイマニ司令官の殺害について「戦争をやめるため」と説明している。一見、屁理屈のようなのだが、よく聞いてみると大統領なりに筋が通ってはいる。大統領は「ソレイマニ司令官は長い間、数千人もの米国人を殺害したり重傷を負わせ、さらに多くの米国人殺害を目論んでいた」と指摘し、「米国の外交官や兵士らを対象に悪意のある差し迫った攻撃を画策していた」発言した。

 元々、トランプ大統領はイランに対する軍事行動には強い難色を示してきた(第211回)。ソレイマニ司令官の暗殺についても、当初は承認するつもりはなかったという。それが一転して承認したのは、「米国に対する大規模なテロが計画されている」という情報を大統領が聞いたからだ。

 これは、北朝鮮のミサイル開発について、当初は静観していたトランプ大統領が行動を始めたのが、北朝鮮が大陸間弾道弾(ICBM)を開発し「米本土を直接攻撃できる可能性が生じた時」だったことと一貫しているようにみえる(第155回)。

 その終息の仕方もトランプ流である。戦争はコストがかかるのでしたくない。米国に直接危害が加わる可能性が一応遠のいたのなら、経済制裁で十分だ。特に、イランに関しては、石油依存で脆弱な経済構造であることを、大統領は既に見抜いていたのだ(第211回・P.3)。換言すれば、「米国に危害が加わる懸念」だけが、トランプ大統領を行動させた唯一の理由だったといえるのではないだろうか。

カネがかかる戦争を徹頭徹尾嫌うトランプ大統領のわかりやすさと危うさ

 結局、トランプ大統領は、一貫して米国民や米権益に危害を加えることを断固として許さない「アメリカファースト」の考え方に基づいて行動するということが、あらためて明らかになったということだ。トランプ大統領は行き当たりばったりで支離滅裂、その行動は読みにくいという人は多いが、そんなことはない。彼なりに一貫していて、実にシンプルで、読みやすいのだ。

 それにしても、トランプ大統領ほど、徹頭徹尾「戦争を嫌う米大統領」は過去いなかったのではないかと思う。アメリカファーストの考え方からすれば、外国と戦争することほどカネの無駄遣いはない。「ディールの達人」である大統領は、武力など使わなくても、「経済制裁」をチラつかせて交渉すれば、他国を抑えられると心から信じているのだ。

 ただし、トランプ大統領は「ディールの達人」だが、それはあくまでビジネスマンとしての経験に基づくものだということは注意が必要だ。彼は「政治家」としては、いまだに素人の域を出ない。アメリカファーストという行動原理が極めてシンプルでわかりやすいものであることは、それを利用しようとする人が簡単に付け入りやすいということでもある。

 米国にはいろいろな立場の人がいる。戦争をしたい人もいる。トランプ大統領が徹頭徹尾戦争を嫌っていても、「米国が攻撃される」と吹き込めば、簡単に軍事行動に動いてしまう。

「ソレイマニ司令官暗殺」は、そういうトランプ大統領のわかりやすさと危うさを示したのではないだろうか。そして、そのトランプのわかりやすさと危うさを、今最も恐れているのが、金正恩北朝鮮労働党委員長であるのは、言うまでもないだろう。

「世界の警察官」だった米国が国際社会で果たしてきた役割

 この連載では、トランプ大統領が「アメリカファースト」で変えようとしている、「米国が築いてきた国際秩序」とは何かについて、論じてきた(第191回)。

 それを簡単におさらいすると、米国は「世界の警察官」となり「世界のマーケット」となって、多くの国を守り、豊かにしてきたということだ。それは元々、東西冷戦期に共産主義の拡大を防ぐためだった。

 米国は、西ドイツ、フランスなど西欧、日本、韓国、トルコなどアジアの共産主義と対峙するフロントラインであり、地政学的な戦略的拠点である国々と同盟関係を築いた。そして、世界各地に米軍を展開し、同盟国の安全保障をほぼ肩代わりし、その領土をソ連の軍事的脅威から防衛する「世界の警察官」になった。

 また、「世界の警察官」は、同盟国を守るだけではなく、米国自身と同盟国が安全に石油・ガスなど天然資源を確保するため、「世界の全ての海上交通路」を防衛した。それまで同盟国は、国家の軍事力のかなりの部分を、特に公海上での商人とその貨物の護衛に割いていたが、米国が「世界の警察官」となってくれたことで、自国の沿岸をパトロールする小規模な海軍を維持するだけでよくなった。

 さらに米国は同盟国に、「米国市場への自由なアクセス」を許した。米国は、同盟国を自らの貿易システムに招き、工業化と経済成長を促した。その目的は、同盟国を豊かにすることで、同盟国の国内に貧困や格差による不満が爆発し、共産主義が蔓延することを防ぐことだった。

 米国市場への自由なアクセスは、日本、ドイツだけではなく、韓国、台湾、オセアニアの諸国、北米大陸、西ヨーロッパが参加した、そして、東西冷戦終結後には共産主義の大国である中国までもが参加した。中国は「米国に食べさせてもらった」おかげで、高度経済成長を達成したのだ(第211回・P.4)。

米国が世界にもたらした多大な利益、5つの具体例

 ここで重要なことは、多くの国が米国から多大なる利益を得たことである。以下に整理する。

 1.フランスとドイツは、お互いに相手を警戒して武装する必要がなくなった。

 2.スウェーデンやオランダなどの中規模の国家は、貿易に焦点をあてて自国の強みを活かすことに集中できるようになり、防衛には最小限の努力を割くだけでよくなった。

 3.世界中の貿易路の安全が保障されたことで、さまざまな土地を占領する必要がなくなった。最古の小麦生産地であるエジプトは、過去2000年で初めて、自由に息をつけるようになった。

 4.世界中に散らばるヨーロッパの植民地が解放された。アジアでは東南アジア諸国連合(ASEAN)が設立され、独自の自由貿易ネットワークを形成した。

 5.日本はもはや東アジア沿岸地域を搾取する必要がなくなった。アメリカの安全保障下で、韓国、台湾、シンガポールの3国が世界で最もダイナミックな経済国として台頭した。中国はその歴史上で初めて、外部の干渉のない安全な環境で国の基盤を固めることができた(ゼイハン,2016:135-7)。

 要するに、米国が築いた同盟体制とは、単に米国が同盟国を共産主義から守ったというだけではない。より重要なことは、それぞれの国が、領土の安全の確保、資源の確保、市場の確保のために、長年の歴史において「敵」となっていた隣国を警戒する必要がなくなったということであった。

米国の仲介を必要とする「コミュ障国家」が多すぎる

 しかし、トランプ大統領のアメリカファーストとは、米国が「世界の警察官」を続ける意思がなく、「世界を食わせる」ことをやめるということである。これから米国は、米国自身のために軍隊とカネを使う。むしろ同盟国は、米国のために少なくともカネを出せということだ。

 その結果、さまざまなトラブルが世界中に起こっている。米国は基本的に世界中から撤退していこうとしている。しかし、撤退の姿勢を見せるやいなや、どこかの国がそれを埋めようとして台頭してくると、米国はそれが気に食わず、後先考えずに潰そうとする。まるで「モグラ叩き」のようであり、「暴力団」のような振る舞いである(第201回)。

 しかし、現在の国際秩序の混乱を、トランプ大統領のアメリカファーストにのみ負わせるのでは、酷ではないだろうか。なぜなら、現在の混乱はある意味、「米国が築いた国際秩序」以前の状態に戻ったとも考えられるからだ。

 例えば、日本も韓国も、米国と対話しようとするばかりで、お互い直接対話することには積極的ではないのではないか。米軍に依存してきた安全保障についてなら、それも理解できる。しかし、歴史認識問題のような、純粋に日韓の間の懸案事項でさえ、米国が間に入らないと、まともに話し合えないことばかりではないか(第219回)。

 米国に間に入ってもらえないと、揉め事を解決するための、コミュニケーションすらまともにとることができない「コミュ障国家」が多すぎるのだ。米国が築いた国際秩序による平和というのは、米国の圧倒的な軍事力と経済力を背景としたものだ。その傘下にいる国々は、米国から自立できていたとはいえない。あえていえば、平和も豊かな社会も「幻想」に過ぎなかったのではないだろうか。

 要は、現在の国際情勢を改善するには、米国抜きで隣国同士が紛争を回避し、友好関係を築けるように努力することが重要なのではないだろうか。まずは、隣国に対する「コミュ障」を改め、お互いに顔を合わせて、なんでもいいから話し合うところから、始めたらどうだろうか。

【参考文献>】
ピーター・ゼイハン(2016)『地政学で読む世界覇権2030』(東洋経済新報社)

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