『中国・キリスト教弾圧にバチカンの妥協どこまで?迫害の背景に浮かぶ中国共産党の危機感』(12/19日経ビジネスオンライン 福島香織)、『中国・高速列車で頻発する指定席の座席占領 罰金から行政拘留への処罰強化が遂に実現』(12/14日経ビジネスオンライン 北村豊)について

12/19阿波羅新聞網<外媒:内斗加剧 李克强两次演讲不提习 反习势力浮出水面=外国メデイア(WSJ):内部闘争は激化 李克強は2回の講演で習の名を出さず 反習勢力が水面に浮上して来た>12/18改革開放40周年記念大会の習の演説は古色蒼然、何も変わりは無かった。党内エリートと習の不協和音が目につくようになった。李克強は先月シンガポールで講演した時に習の名を出さず、鄧小平の名前を出した。鄧樸方は北京のやり方を批判した。

https://www.aboluowang.com/2018/1219/1220440.html

中国共産党は内部分裂すれば良いのに。ただ、お公家集団の共青団が力技の習を打倒できるかは疑問です。

福島氏の記事で、フランシスコ法王にパウロ二世のような役割を期待しても無駄でしょう。共産主義の恐ろしさを知っていて、中共に擦り寄っている気がします。赤い法王でしょう。何で枢機卿は彼を選んだのかと言う気がします。米国がバチカンに中共に擦り寄るなと警告しないと。

日本企業も中国に擦り寄りすぎです。自由を抑圧、非人道的な共産主義の怖さを経営者が分かっていません。目先の金に転んでいるとしか思えません。強かな中国人がそんな簡単に儲けさせてくれるはずもないのに。学力レベルでなく地頭の良さが問われます。まあ、米国がやがて対中COCOMを発動するでしょうから、その時焦っても遅いでしょう。

北村氏の記事で、“覇座”が中国で一般化していると言うものですが、福島氏の記事にありますように共産主義の非人間性、拝金主義に疲れ切った人は宗教に救いを求めますが、それもできない人間は公衆道徳を無視することで自分の力を誇示しようと思っているのでしょう。愚かな人達です。そういう人達が日本に大量に入って来たらどうなるか?入管法改悪は愚策としか言いようがありません。2年後の見直しで廃案にすべきです。

福島記事

ローマ・カトリック教会の法王庁(バチカン)で10月16日に開かれた世界司教会議に、中国の司教2人が初めて参加した(写真:ロイター/アフロ)

 バチカンは14日までに中国福建省閩東(ミントン)教区の地下教会司教だった郭希錦を同地区の政府公認教会の副司教にした。司教の地位は北京当局の任命した司教、詹思禄に譲られた。郭希錦はバチカンが任命した司教であり、長らく中国当局がその地位を承認してこなかった。地下教会司教として過去何度も拘束、尋問され虐待され、バチカンと中国が司教任命権をめぐる交渉を水面下で行っていた最中の3月にも、地元警察に身柄を拘束されていた。

 バチカンと中国が9月に司教任命権問題で“暫定合意”に至り、中国当局が勝手に任命し、バチカンから破門されていた7人の司教に対して破門を取り消した。これに続き、地下教会の司教を政府公認教会の司教の下につけることに同意したわけで、バチカン側は全面的に中国政府に譲歩し続けているという印象だ。だが、今中国で起こっている非公認教会の弾圧の嵐をみるに、バチカンの妥協は中国を勢いづかせることになりはしないか。バチカンはどこまで妥協するつもりだろう?

 郭希錦はバチカンの判断に従う意思をすでに表明しており、12月14日までに、北京の釣魚台迎賓館にて、バチカンから派遣された代表団とともに詹思禄と面会、譲位式が執り行われた。

 環球時報が14日に報じたところによれば、彼の司教譲位がバチカンと中国の交渉の焦点の一つであったようだ。中国側は2017年以来、なんども郭希錦に司教を譲位するように要求していたという。郭希錦は環球時報に対して、これで地下教会と政府公認教会は合併したと語っている。

 だがこれは本当に中国のキリスト教信者たちにとって喜ばしいことなのだろうか。というのも、今中国で進行しているカトリックを含むキリスト教弾圧は文革以降過去最悪と言われる苛酷さなのだ。

四川省では信者100人以上逮捕

 たとえば四川省成都の秋雨聖約教会が、ほぼ同じ時期に大弾圧にあっている。この教会はカトリックではなく、カルバン派の牧師、王怡が指導者として知られ、2005年に創立。王怡が妻とともに逮捕されたほか、100人以上の信者らが逮捕、拘束された。事件は国際社会も注目している。この一斉拘束の際、非暴力を掲げる信者たちに警察は武器なども使って威嚇しており、まさに羊の群れに踊り込んだ狼の様相であったと、ラジオ・フリーアジア(RFA)は報じていた。

 45歳の王怡は政権転覆罪で起訴される可能性があり、有罪判決がでれば懲役15年の可能性が指摘されている。だが王怡がこれまで法律家として言論人として宗教家として弱者救済に尽力し、中国社会をより良くしようとしてきたことは周知の事実。当初の活躍は、中国のメディアでも好意的に取り上げられ、2004年には中国で最も影響のある公共知識人の一人として「南方人物週刊」に取り上げられていたほどだ。

 9月には北京の錫安(シオン)教会が取り壊されていた。「民政部に登記のないまま、勝手に社会組織を名乗り活動を展開し、社会組織管理秩序を見出し、社会団体登記管理条例、違法民間組織取締り暫定弁法などの規定に違反」しているという理由だ。この教会は2007年に創立された北京最大の家庭教会で、もともと7つの礼拝堂をもち毎週1500人が礼拝に参加していたという。過去、何度も弾圧を受け、潰されかけそうになりながらも熱心な信者たちに守られてきたが、今年に入ってカルト扱いされ、周辺には顔認証監視カメラが設置され、教会内にも盗聴器が仕掛けられたという。

 また警察側は牧師たちを個別に尋問してスパイがいるなどと吹き込んだり、家族が入院中の牧師に対して協力するならば万元単位の入院費を肩代わりしてやるといった買収をしかけたりしていたらしい。4月以来、9月までに7つの礼拝堂のうち6つが閉鎖においこまれ、9月9日の最後の一つの礼拝堂に警察70人が乗り込み、教会や牧師の個人所有物を押収、強制立ち退きを行った。指導牧師の金明日は「教会に物件を貸していた家主が政府から強い圧力を受けて、契約を中止したいと頼んできたので、我々は閉鎖せざるを得ない。だが新しい場所を借りることはもう不可能だろう」と語っていた。

 このほか、今年2月以降、浙江省や河南省の家庭教会や地下教会の弾圧、閉鎖が続いているという。河南省南陽市で10年の歴史をもつ光彩キリスト教会は9月、警察が突然やってきて教会の十字架を撤去、聖書その他の教会の所有物を押収し、絵画や設備の破壊した。河南は500~600万人のキリスト教徒がおり、光彩教会はその信仰の中心地の一つだった。河南では家庭教会だけでなく、政府公認の三自愛国系の教会ですら十字架撤去を強制されている。

背景に中国共産党の統治の危機感

 RFAが秋雨教会の大弾圧後、米国のキリスト教系NGO対華援助協会の責任者である牧師、傅希秋や亡命作家の余傑にインタビューしている。

 傅希秋はこうコメントしている。

 「“習皇帝”の統治下では、キリスト教の中国化、宗教の中国化が叫ばれている。主な目的は共産党がすべての宗教組織および独立傾向の強い宗教団体および個人を絶対的にコントロールすることだ。(2015年の)浙江省の強制十字架取り壊し事件などが起きたあたりから、共産党内部文書で“キリスト教の増長と過熱的発展を抑制する”ことが目的だと通達されている」

 余傑はこれが個別の事件ではなく、習近平政権が始まって以来の政策の重要なステップであり、背景に中国共産党の統治の危機感があると指摘していた。

 「今年に入って秋雨教会、北京の錫安教会の迫害が起きた。これらは都市部の新興教会として中産階級のパワーを集め、広義の人権を含め、信仰の自由を守ろうとしていた。これに中国共産党が恐怖し、慌てたから、こうした弾圧と破壊を行ったのだろう」

 キリスト教の中国における発展は、たしかに目を見張るものがある。2010年の社会科学院のリポートによれば中国のキリスト教徒は2300万人、今年4月に発表された宗教白書によればそれが3800万人以上。10年もみたない時間で65%の増加である。この数字は非公認教会の信者の数字を入れていないので、全体では1億人近いのではないか、という推計もある。

 キリスト教の発展の背景は、傅希秋によれば、“中国共産党の暗黒政治、マルクス主義や無神論思想の破綻”が原因らしい。共産党体制のもと唯物主義、拝金主義がはびこり、人々の道徳や誠実さの水準が地におちたとき、人々が信仰をもとめたのだという。それがある人にとってはキリスト教であり、また別の人にとってはイスラム教であり、チベット仏教や仏教であったということだろう。

 米国の亡命華人作家の余傑は、私が現役の記者であった2003~08年ころ、北京で何度かあって取材したことがある。彼が主宰する北京方舟教会の礼拝に何度かうかがった。信者の多くが中産階級で、社会的地位も高く教養もある金持ちであったが、信仰に入ったきっかけなどを取材していくと、多くの人が、拝金主義や競争社会における精神の疲労、虚しさを訴えていた。人を騙した人も騙された人もいて、救いを欲していた。

バチカンは中国の恐ろしさをわかっていない?

 同じころ、世間では孔子ブームも起きていて、毛沢東時代に批判したおした孔子を中国伝統の文化として再評価し、道徳や礼節を取りもどそうという運動も展開されていたが、余傑によれば、儒教文明の基本は農業社会の価値観にあって、現代の産業化社会には合わなかった、という。都市の知識文化人がこうしてキリスト教に傾倒していたという。あの頃から、確かに家庭教会はさまざまな迫害をうけていたが、中国社会に静かに根を張り、広がっていた。

 宗教は、中産階級の知識人と地方の農村や低層の虐げられた人々を結び付ける絆になりえ、中国社会の不条理や不安・不満の思いを結集させてよりよい社会を作っていこうというポジティブな力に転嫁させる可能性を秘めていたが、それが共産党体制を転覆させかねないパワーになると気づいたため、習近平政権になって急速な宗教の中国化政策がとられたわけだ。宗教を共産党がコントロールできなければ、宗教は共産党を飲み込みかねない。

 キリスト教、カトリックを共産党が支配するためには、まず総本山のバチカンを中国共産党がコントロールできなければならないのだ

バチカンが中国の宗教というものに対する警戒心を十分理解しているかどうかは、わからない。ただバチカンが中国の恐ろしさをわかっていないのではないか、という不安と疑問は、9月以降、信者たちの間で少しずつ広がっている。

 閩東教区の例をうけて、各教区では地下教会は公認教会のもとに下るのが、バチカンの指示であるという解釈を受け入れた寧夏教区の地下教会の神父・王沢義も、公認教会に入ることを公表した。だが同じ教会の同僚や信者たちから「軟弱」「裏切りもの」と批判を浴び、教会から離れた信者もかなりいたという。地下教会が分裂しかかっており、バチカンの9月以降の動きは、中国共産党の宗教の力の淡化、宗教の中国化という狙いに利している、という危機感をもつ信者もいるという。香港教区司教の陳日君は11月突然、隠居宣言を行った。86歳の彼はこれまでバチカンの今の親中路線が危ういと言い続け、これを推し進めているバチカン・ナンバー2枢機卿のピエトロ・パロリンを名指しで批判してきた。

フランシスコ教皇、訪中の可能性も

 だが、フランス宗教紙のインタビューで、彼は今後について、「同じ宗教内で争うことはできない」と語り、修道院にこもって隠居生活を行う、としている。司教としてバチカンの決めたことには逆らえない、ということだろう。中国の宗教の自由のために尽力してきた陳日君の諦観のにじむ言動は、中国の信者の動揺を誘っているという。

 来年末にはフランシスコ教皇が日本を訪問するようだが、中国訪問も俎上にあがっている。教皇自身が中国訪問を強く望んでいるとも聞くので、ひょっとすると同じタイミングで訪中予定が組まれるかもしれない。教皇訪中は遅かれ早かれ実現することだろう。教皇は何を中国訪問に期待しているのだろう。単に世界最大の布教市場への期待だけではあるまい、と思いたい。

 ヒトラーと渡り合ったピウス12世は結果的には、ユダヤ人虐殺を食い止められなかった教皇といった汚名もかぶった。ヨハネ・パウロ2世は旧ソ連や東欧の民主化を後押しし、東西冷戦終結における重要な役割を担った。バチカンは時代の節目節目で国際政治のギアチェンジの役割を担い、おそらく今もそれだけの影響力を持ち得る国家だろう。だからこそ、宗教、信仰とまったく縁のない私までが、バチカンと中国の駆け引きが気になるのである。バチカンの今現在の妥協は長大な駆け引き、戦略の一環であり、最終的にはその影響力を中国の過去40年来最悪の人権侵害、宗教弾圧の救済のため、そして中国が赤い帝国の野望を捨てて、普通の国として生まれ変わるきっかけのために発揮してくれることを切に願う。

北村記事

中国では他人が座るべき指定席を占拠して座り続けるトラブルが社会問題化している(写真はイメージ=PIXTA)

 中国語で“覇”という漢字は、「占領する」とか「横取りする」といった意味を持つ。そこで、中国語辞典で“覇”の付く熟語を調べると、“覇占(力ずくで占領する)”、“覇持(強行に独占する)”などといった言葉が目につくが、最近の中国でたびたび目に付くのが“覇座”という言葉である。“覇座”とは何を意味するのか。中国語の“座”は「座席」を意味するから、“覇座”は「座席占領」となり、列車や飛行機などの交通機関で他人が座るべき指定席を占拠して座り続けることを意味する。

 “中国共産主義青年団北京市委員会”の機関紙「北京青年報」は12月8日付で「“動真格了 高鉄覇座女乗客首次被拘留(まじでやったぜ、高速鉄道で座席占領の女乗客が初めて拘留された)”」と題する記事を掲載した。その概要は以下の通り。

【1】12月6日に遼寧省“大連市”の“公安局”が発表したところによれば、12月3日14時9分、内モンゴル自治区“包頭市”発遼寧省“大連市”行きのK56列車が遼寧省“瀋陽市”の市内にある「蘇家屯駅」を出発した直後に、列車長から「1号車の車両で乗客による“覇座(座席占領)”が発生している」という通報が列車に乗車している“乗警(鉄道警察官)”へ発せられた。

【2】“覇座”を行っていたのは女性乗客の“劉某”(22歳、黒龍江省“甘南県”出身)であり、彼女は瀋陽駅から乗車して“営口市”にある「熊岳城駅」へ向かおうとしていた。瀋陽駅から熊岳城駅までの距離は218kmで、所要時間は約3時間であった。K56列車が蘇家屯駅を発車後に、1号車の座席番号64の指定乗車券を持った“祝某”という乗客が、当該座席に座っていた劉某に対して座席を明け渡すように要求したところ、劉某はこれを拒否し、「座席は早く座った者勝ちだ」と言い放った。列車の乗務員がやって来て劉某の説得を試みたが効果がなかったので、列車長経由で乗車していた鉄道警察官に報告した。

【3】劉某の不当行為に対して、2人の鉄道警察官が劉某の指定席占領という行為は列車の秩序をかき乱すとして何度も通告を行うと同時に、『治安管理処罰法』違反の容疑に当たると警告し、劉某に速やかに座席を明け渡すよう要求した。しかし、劉某は聞く耳を持たず、極めて無礼な態度で要求を拒否しただけでなく、鉄道警察官や周囲の乗客に対して罵声を浴びせる始末だった。劉某に何度警告を行っても効果が無かったので、鉄道警察官は列車の秩序維持を理由に、劉某を強制的に連行し、最寄りの「大石橋駅」にある派出所へ劉某の身柄を引き渡した。鉄道警察官2人が劉某を連行するために、力ずくで座席から引き離そうとした時、劉某は「座席の“搶劫啦!(強奪だ)”」と大声を張り上げて抵抗したという。

【4】派出所に身柄を引き渡された劉某は、“覇座”を行ったことに関して“供認不諱(包み隠さず自供した)”。“大連鉄路公安処(大連鉄道警察署)”は『治安管理処罰法』の関連規定に基づき、劉某に対して行政拘留の処罰を与えた。

初の「行政拘留の処罰」

 上記のニュースが報じられると、人々は鉄道警察が劉某に対して「行政拘留の処罰」を与えたことに喝采を上げたという。それは記事の表題にもあった「“動真格了(まじでやった)”」という言葉が示すように、この種の“覇座”事件において「行政拘留の処罰」が下されたのは劉某が初めてだったからである。

 劉某に適用されたのは『治安管理処罰法』の第23条第1項の規定だと思われるが、その内容は以下の通り。

【第23条第1項】

 下記する5項目の行為のうちの該当するものが一つある場合は、警告あるいは200元(約3300円)以下の罰金。情状が比較的重い場合は、5日以上10日以下の勾留とし、同時に500元(約8250円)以下の罰金を科すこともできる。

 5項目は箇条書きで規定されており、そのうちの第3項目が“覇座”に関連すると思われるが、そこには次のように書かれている。

(3)公共の自動車、電車、汽車、船舶、航空機あるいはその他公共交通機関上の秩序をかき乱す行為

 従い、劉某に下された行政拘留は「5日以上10日以下」ということになるが、具体的に何日間の勾留になったのかは報じられていない。

 なお、“覇座”行為を抑制するため、“広東省人民代表大会常務委員会”は2018年10月9日に『広東省鉄路安全管理条例』を採択し、同条例は12月1日から施行された。同条例には、「鉄道の乗客は乗車券に明記された座席に従って乗車せねばならず、他人の座席を占領してはならない」と明記されている。但し、同条例には“覇座”を行った場合に適用される具体的な罰則規定は記載されていない。

当事者の特定、容易に

 ところで、中国では今年の8月以降に列車の乗客による“覇座”事件が頻発するようになり、それがメディアのニュースによって報じられることにより世論が盛る上がると同時に、“覇座”の当事者が社会から指弾を受けることが多くなっている。その原因はネット社会であり、限られた個人情報から当事者が容易に特定されることにある。

 2018年8月21日、山東省の「済南駅」発「北京南駅」行の列車No.G334に乗った“王新穎”(仮名)という女性が、自分が購入した窓際の指定席(座席F)に座ろうとしたら、何とその席にはすでに赤の他人の男性が座っていた。驚いた王新穎が男性に乗車券を示して自分の席だから座席を空けるように要求したところ、男性は「俺はこの席が良い」と言うばかりで動こうとしない。困り果てた王新穎が列車長に窮状を訴えて呼んでくると、男性は列車長の要求に応じて乗車券を示したが、そこに記載されていたのは1列後ろの窓際の指定席(座席A)であった。列車長が「ここはこちらの女性の指定席だから、座席を空けて、貴方自身の指定席へ移動して欲しい」と要求すると、男性は「座席から立つことができない」と言い出した。

 これを受けた列車長がどこか身体が悪いのかあるいは酒でも飲んでいるのかと尋ねると、男性は「酒なんか飲んでいない」と反発した。さらに、列車長が酒を飲んでいないのに、どうして立てないのかと聞くと、男は「俺にも分からない」と答えた上で、「下車する駅に着いても立てないと思うから、車椅子を用意しておいて欲しい」と述べ、その後に「俺は絶対に俺の席には座らない」と言い放つと、王新穎に向かって「あんたもそこに立っていないで、俺の席に座るか、食堂車へ行けば」と言う始末だった。

 王新穎は大学を卒業したばかりの女性で、「済南西駅」から乗車したが、男性は1つ前の始発駅である「済南駅」から乗車して、彼女の指定席に座ったのだった。男性に対しては列車長のみならず鉄道警察官も自分の指定席に座るように説得を試みたが、らちが明かず、王新穎には“商務車廂(グリーン車)”の席が、男性が彼女の指定席を空けるまでという条件付きで手配されたが、結局彼女はグリーン車に座ったまま終点の北京南駅に到着した。

“覇座男”は誰なのか

 北京に到着した王新穎は、指定席を占拠した不埒(ふらち)な男性に対する怒りを表明するために、彼女が列車長と男性のやり取りを撮影した動画をネット上に投稿したのだった。投稿された動画は大きな反響を呼び、“覇座男(座席占領を行った男)”は誰かという“人肉検索(ネットユーザーが協力して限られた情報から人物を特定すること)”が行われた。

 その結果として判明したのは、“覇座男”は“孫赫(そんかく)”(1985年生まれの33歳、山東省莒南県出身)であり、現在は韓国“圓光大学”の博士課程在学中の人物だった。

 人肉検索で特定された孫赫は、8月22日の夜、自分の態度が極めて悪く、深く反省しているとして、ネット上に王新穎に対する謝罪表明を書き込んだ。謝罪表明の全文は以下の通り。

 ネット上で私が本人だと暴露された高速鉄道座席占領事件に関し、私は悔悟と自責の念を表明します。ここに、私は当事者となった女性と全国の人々に対して衷心よりお詫びします。私は深く反省し、この種の行為が社会のマナーに重く違反し、当事者を深く傷付け、社会に悪い影響を与えたことは、痛恨の極みです。今後はこの種の誤りを再び犯さぬように、さらに修養を積み、人としての素質を高めるよう努力しますので、どうか全国の皆さん、私に自分を改める機会を与えて下さい。

 孫赫は上述のように謝罪表明を行ったが、事態はそれで終わりとはならなかった。その翌々日の8月24日、列車No.G334 を管轄する“中国鉄路済南局集団公司”は、加害者である孫赫に対する処罰を発表し、『治安管理処罰法』第23条第1項の規定に基づき孫赫に200元(約3300円)の罰金を科すと同時に、一定期限内における列車乗車券の購入制限を付加したのだった。

 一方、8月22日早朝には、広東省「深圳駅」発で山東省「青島駅」行の高速鉄道T398の済寧区間で、“無座車票(立ち席乗車券)”を購入した、赤い上衣を着た40歳前後の女性が女子大生の購入した指定席に座り込んで占領するという事件が発生した。自分の指定席に座ろうと思ったら他人が座っているのを見た女子大生は、列車の乗務員を呼んで協力を要請した。乗務員が女性の乗車券を調べると、それは「立ち席乗車券」で、座席に座ることができない乗車券だった。そこで、乗務員が女性に席を空けるよう説得したが、女性は厚顔にも最後まで席から離れず、女子大生は座席指定の乗車券を持ちながら早朝4時から6時までの2時間をずっと立っていることを余儀なくされた。

「ごね得」処罰に喝采

 この女性については、いかなる処罰も与えられなかったようで、関連記事をチェックしても何もない。要するに、“覇座”に関しては、上述した孫赫のように、罰金と一定期間の乗車券購入制限が処罰の限度と考えられ、T398の女性のように何の処罰も受けない「ごね得」が通用することもあったのである。そうした状況に一石を投じたのが、文頭に述べた北京青年報の記事で、「“動真格了(まじでやった)”」と喝采を浴びたように、処罰を「罰金」から一歩踏み出して「行政拘留」まで拡大したことだった。

 ところで、中国ではどうして“覇座(座席占領)”が多発するのか。教育レベルが低いからだというのは、上述した孫赫が韓国の圓光大学博士課程の学生であることを考えると説明がつかない。もっとも、孫赫は人間検索を受けたことにより過去に行った各種の悪事が露見しており、本質的に悪事を平然と行うタイプの人間であることが判明しているので例外と言えるのだが。

 この点について中国メディアが報じている意見は、鉄道の列車長や乗務員、さらには鉄道警察官が“覇座”に対して寛大で、厳しい処罰を行うことなく、200元程度の罰金で済ませて来たことが、「指定席だろうが、誰も座っていない空席に座って悪いか」という意識を持つ人々を増長させたというものである。それは、最悪でも200元の罰金で済むというなら、屁理屈を並べながらも指定席に座っていた方が得だといった感覚を持たせるに至ったということである。誰かが“覇座”で得をしたという話を聞けば、俺も俺もと模倣犯が出て、いつの間にかそれが流行するという中国の伝統的な行動形態なのである。

 “覇座”の処罰にようやく「行政拘留」が導入されたことで、模倣犯の出現率は低下すると思うが、“覇座”をより一層厳しく取締り、厳罰に処すことが改善の鍵だと思われる。中国には“殺鶏給猴看(ニワトリを絞め殺してサルを脅かす)”という成語があり、日本の「一罰百戒」と同様な意味を持つが、1件でも良いから典型的な“覇座”事件に厳しく対処して、メディアを通じて大きく報じ、ごね得は絶対に許されないと人々に示すことが、中国社会の改善には不可欠だと思う。但し、こうした事件は中国だけでなく、日本でも少数とはいえ発生しているのである。

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