『トランプ氏“ファーウェイ発言”の裏にワシントンの暗闘』(6/30日経ビジネスオンライン 細川昌彦)、『「ファーウェイ容認」、なぜトランプは変節したのか 交換条件としてトランプは習近平に何を迫ったか』(6/30JBプレス 山田敏弘)について

6/30阿波羅新聞網<川习会 北京3底线让了2个半 川普对华为到底是什么态度? 美朝野领袖誓言否决解禁令=トランプ・習会談 北京の守るべき3最低線(①華為への米部品供給禁止の解除②総ての懲罰的関税の取消③中国が多くの米国製品購入することの放棄)は2つ半は譲った トランプの華為の態度は一体何だろう? 米国の与野党リーダーが禁令解除拒否を誓う>G20サミット期間中、トランプは習近平と二国間会議を開き、貿易戦争の一時停戦に同意すると同時に、「米国企業は国家安全に関係のないハイテク機器を華為に販売することができる。華為問題は交渉の終わりに話し合う」と述べた。 しかし、米国の力のある上院議員(マルコ・ルビオやチャールズ・シューマー)は、華為の米国製品購入禁止の解除に反対した。学者の章天亮は「中共は、表向きは面子を得たが裏では負けた」と考えている。 学者の何清漣は「米中は交渉のテーブルに戻ったが、知財の問題は依然として困難な核心問題である」と考えている。

共和党のマルコ・ルビオ上院議員は「トランプ大統領が最近の華為への規制を売りに出した場合、我々はその規制を復活させるための法案を必ずや通過させる。法案は絶対多数で可決され、拒否できない。 トランプ大統領が、華為に課された最近の制裁措置を撤回することに同意した場合、彼は大きな間違いを犯すことになる」と述べた。

民主党のチャールズ・シューマー上院議員は29日のツイッターで「華為は、中国が公正な貿易を行おうとする我々の数少ない効果的な手段の1つである。トランプ大統領がやろうとしているように後退した場合には、中国の不公正な取引慣行を変える力を大幅に弱めるだろう」と述べた。

https://www.aboluowang.com/2019/0630/1309281.html

6/30阿波羅新聞網<川普一夜创历史反转战局 核谈判重启 维持制裁 跨三八线四两拨千斤两 金正恩笑成这样=トランプは一夜にして歴史を創り、戦局を反転させた 核交渉は再開される だが制裁措置は維持 38度線を跨いだことは柔良く剛を制す 金正恩はこのように笑った>習と中共が朝鮮カードを出した後、金正恩は北京との共同コミュニケを発表しなかっただけでなく、習はすぐに帰り、平壤は「中共は日本の侵略の歴史を心に留めておくべき」と文章を発表した。 これと比べ強烈なのは、トランプは29日にTwitterで意見を述べ「38度線で金正恩に会い、挨拶したい」と。 金正恩はすぐに前向きに反応し、翌日すぐトランプと会談することとした。30日トランプは北朝鮮の土地を踏んだ最初の米国大統領となり、歴史を創った。 トランプと金正恩は約50分間話し合いをし、米国と北朝鮮は核交渉を再開するが、制裁は継続すると発表した。

https://www.aboluowang.com/2019/0630/1309278.html

6/30希望之声<板门店会金正恩 踏入朝鲜20步 川普再获赞应得诺贝尔和平奖=トランプは板門店で金正恩と会い、北朝鮮へ20歩踏み入った トランプにノーベル平和賞の声が再度上がる>フォックスニュース・コメンテーターのHarry J. Kazianisによると「トランプ大統領のこの1年間での朝鮮半島の和平プロセスへの貢献は、オバマ大統領の8年間で為したことよりもはるかに大きい。何もしなかったオバマがノーベル平和賞を貰ったのだから、トランプ大統領はこの名誉に値する」と。

Kazianisは、トランプ大統領がノーベル平和賞受賞の声を上げたが、これは最初の呼びかけではないと。 2018年5月の初め、シンガポールでの最初のトランプ・金会談の1か月以上前に、共和党の18人の議員が共同でトランプ大統領を2019年のノーベル平和賞候補として指名した。 今年2月には、安倍晋三首相もトランプ大統領をノーベル委員会に推薦した。

https://twitter.com/i/status/1145387965679570946

中共はトランプを再選させないことが短期の目標であるから、その逆をするのが正しい。トランプはノーベル平和賞より再選されて、中共をはじめとする共産国を封じ込めて成果を出して欲しい。それからノーベル平和賞の話でしょう。オバマのように無能で何もできなかった人間が先にノーベル平和賞を貰ったのはおかしい。裏で中共が動いたのでは。

https://www.soundofhope.org/gb/2019/06/30/n2997730.html

7/1阿波羅新聞網<库德洛:短期内与中国不会达成协议 松绑华为禁令并非“大赦”= クドロー:短期的に中国と合意はできない 華為の縄を解くのは“大赦”の意味ではない>WH首席経済顧問のクドローは6/30(日)にFox newsのインタビューを受け、「米中貿易交渉が再開されるのは“非常に重要な出来事”であり、米中間の貿易合意は短期的には達成できない。相当長い時間がかかる」と述べた。

「最後の10%(交渉の内容)が最も難しいかもしれない。サイバー攻撃を含む多くの未解決の問題がある。中共が米国企業に技術の強制移転の要求をし、政府補助金を出したり、米国の華為向け製品出荷禁止の問題等がある」

「トランプは習近平との会談で、華為への米国製品の販売禁止の一部を解除することに同意した。共和党の同僚の何人かは、華為は海外で販売している製品に情報窃取のチップを挿入することができると考えているので、異議がある。 ルビオ上院議員は、華為の禁止措置の解除は「壊滅的な過ち」だと述べた。彼は、華為に技術を売るのは“国家安全に懸念がある”ことを知っている。 “慎重に検討しなければ”と言った」

クドローは「自分はトランプによる華為への製品販売禁止の解除は“大赦ではない”」と指摘した。

https://www.aboluowang.com/2019/0701/1309307.html

細川氏の記事では、今回の米中首脳会談は中国ペースで進められたとありますが、上述の在米中国人学者の見立ては違っています。華為への禁令は売る部分だけで、米国が買う部分については相変わらず禁止のままです。

山田氏の記事では、華為はZTE同様ペナルテイ処分になるのではと言う見方ですが、それでも細川氏同様甘すぎると2020再選に響くと見ています。

7/1宮崎正弘氏メルマガ<なぜトランプは「ファーウェイとの取引続行」を容認したのか 第四次の対中追加関税は課さないとも発言した真意は>

http://melma.com/backnumber_45206_6835458/

いろんな人がいろんなことを言っています。多分複合しているのでしょうけど。今後の推移を見てみないと予測は難しい。

細川記事

G20大阪サミットで、米国のトランプ大統領と中国の習近平国家主席は、交渉でどのような攻防を繰り広げたのか(写真:AFP/アフロ)

 G20大阪サミット(主要20カ国・地域首脳会議)で、特に世界の注目が集まったのが米中首脳会談だ。大方の予想通り、新たな追加関税は発動せず、貿易協議を再開することで合意した。一応の“想定内”で、市場には安堵が広がった。しかし、その安堵もつかの間、トランプ米大統領の記者会見で激震が走った。中国の通信機器大手・華為技術(ファーウェイ)との取引を容認すると発言したからだ。

 早速、各メディアは以下のような見出しを打った。

 「華為技術(ファーウェイ)との取引容認」

 「ファーウェイへの制裁解除へ」

 だが、トランプ大統領の発言だけで判断するのは早計だ。米中双方の政府からの発表を見極める必要がある。

 確かに、トランプ大統領は記者会見で、「(米国企業は)ファーウェイに対して製品を売り続けても構わない」と言った。しかし、同時に「ファーウェイを禁輸措置対象のリストから外すかどうかについては、まだ中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席と話していない。我々が抱えている安全保障上の問題が最優先だ。ファーウェイの問題は複雑なので最後まで残すことにした。貿易協議がどうなるかを見ていきたい」とも語っている。そして「安全保障上の問題がないところは装備や設備を売ってもいい」と付け加えているのだ。

 もともと、米国の法律上、ファーウェイに対して「事実上の禁輸」になっているのは、ファーウェイが「安全保障上の重大な懸念がある」と米商務省によって認定され、いわゆる“ブラックリスト”に載ったからだ。「事実上」というのは、“ブラックリスト”の企業に輸出するためには、商務省の許可が必要になり、それが「原則不許可」の運用になるからである。現在でも「安全保障上問題がない、例外的なケース」は許可されている。

 従ってトランプ発言は、単に現行制度について発言しているにすぎず、何か変更があったとしても、せいぜい、若干の運用を緩和する程度だという見方もできる。

超党派の議員から「トランプ発言」への批判が噴出

 ファーウェイはツイッターで、「トランプ氏はファーウェイに米国のテクノロジーを購入することを再び許可すると示唆した」と発信し、自社の都合のいいように受け止めている。だが、果たしてどうだろうか。

 昨年春、米国が中国の大手通信機器メーカー・中興通訊(ZTE)への制裁を解除した時は、ZTEは罰金支払いや経営陣の入れ替えに応じた。ファーウェイに対しても禁輸措置の解除に向けて何らかの条件を付けるべく、今後協議が行われるかのような報道もあるが、これもなかなか難しいだろう。

 米ワシントンではこうしたトランプ氏の発言に対して早速、民主党のシューマー上院院内総務や共和党のルビオ上院議員が厳しく批判している。「ファーウェイの問題は安全保障の問題で、貿易交渉で交渉材料にすべきではない」というのが、米国議会の超党派の考えだ。

 昨年春、トランプ大統領が習主席からの要求に応じてZTEの制裁を取引で解除したことは、彼らにとって苦々しい経験となっている。大統領選に立候補を表明しているルビオ上院議員にいたっては、大統領が議会の承諾がないまま、勝手に貿易交渉で安全保障の観点での制裁を解除できないようにする法案まで提出している。

 仮に今後、ZTEのようなパターンになりそうならば、トランプ大統領は選挙戦において共和党からも民主党からも厳しい批判にさらされることは容易に想像できる。

 果たしてファーウェイへの制裁がどういう方向に行くのか、大統領選も絡んでもう少し見極める必要があるようだ。

トランプvs“オール・ワシントン”の綱引き

 私はトランプ政権を見るとき、トランプ大統領とトランプ大統領以外の“オール・ワシントン”を分けて考えるべきだ、と当初より指摘してきた(関連記事:米中の駆け引きの真相は“トランプvsライトハイザー” 、以降、“オール・アメリカ”よりも“オール・ワシントン”の方が適切なので、表現を改める)。“オール・ワシントン”とは議会、政権幹部、シンクタンク、諜報機関、捜査機関などのワシントンの政策コミュニティーである。

 トランプ大統領自身は関税合戦によるディール(取引)に執着している。今や2020年の大統領再選への選挙戦略が彼の頭のほとんどを占めていると言っていい。すべてはこの選挙戦にプラスかマイナスかという、いたって分かりやすいモノサシだ。中国に対して強硬に出る方が支持層にアピールできる。民主党の対抗馬からの弱腰批判も避けられると思えば、そうする。追加関税の引き上げが国内景気の足を引っ張り、株価が下がると思えば、思いとどまる。株価こそ選挙戦を大きく左右するとの判断だ。

 他方、後者の“オール・ワシントン”の対中警戒感は根深く、トランプ政権以前のオバマ政権末期からの筋金入りだ。ファーウェイに対する安全保障上の懸念も2000年代後半から強まり、この懸念から2010年には議会の報告書も出されている。米国の技術覇権を揺るがし、安全保障にも影響するとの危機感がペンス副大統領による“新冷戦”宣言ともいうべき演説やファーウェイに対する制裁といった動きになっていった。

 この2つはある時は共振し、ある時はぶつかり合う。

 昨年12月、ブエノスアイレスでの米中首脳会談の最中に、ファーウェイの副社長がカナダで逮捕された件はこれを象徴する。トランプ大統領は事前に知らされなかったことを激怒したが、捜査機関にしてみれば、トランプ大統領に習主席との取引に使われかねないことを警戒しての自然な成り行きだ。

 そして5月15日には米国商務省によるファーウェイに対する事実上の輸出禁止の制裁も発動された。これはこの貿易交渉決裂の機会を待っていた“オール・ワシントン”主導によるものだ。

 実はファーウェイに対する事実上の輸出禁止の制裁は2月ごろから米国政府内では内々に準備されていた。それまでのファーウェイ製品を「買わない」「使わない」から、ファーウェイに「売らない」「作らせない」とするものだ。ファーウェイもこの動きを察知して、制裁発動された場合に備えて、日本など調達先企業に働きかけるなど、守り固めに奔走していた。しかし次第に貿易交渉が妥結するとの楽観論が広がる中で、発動を見合わせざるを得なかったのだ。そうした中、この切り札を切るタイミングが貿易交渉決裂でやっと到来したのだ。

ファーウェイ問題、第2ペンス演説、そして香港問題

  “オール・ワシントン”にとって、ファーウェイは本丸のターゲットだ。前述のZTEはいわばその前哨戦であった。今回も習主席は昨年のZTE同様、ファーウェイへの制裁解除を首脳会談直前の電話会談で申し入れていた。

 トランプ大統領がこの本丸まで取引材料にすることを警戒して、“オール・ワシントン”もそれをさせないように、水面下でさまざまな手を打ってトランプ大統領をけん制していたようだ。

 ペンス副大統領による中国批判の演説を巡る綱引きもそうだ。

 中国との新冷戦を宣言した、有名な昨年10月のペンス演説に続いて、天安門30年の6月4日、中国の人権問題を強烈に批判する「第2ペンス演説」が予定されていた。トランプ大統領はこれに介入して、一旦6月24日に延期され、更に無期限延期となっている。米中首脳会談をしたくてしようがないトランプ大統領が、その妨げになることを恐れ介入したのだ。

 これに対し、 “オール・ワシントン”もさらなる対中強硬策を繰り出す。本来、予定されていた第2ペンス演説には、中国の大手監視カメラメーカー・ハイクビジョンなど数社に対する制裁の発動も盛り込まれていた。これが当面、表に出なくなったことから、次に用意していた中国のスーパーコンピューター企業への制裁を急きょ発動したのである。

 香港問題についてもポンペオ国務長官は「首脳会談で取り上げる」と香港カードを振りかざしていたが、中国は「内政問題」として首脳会談で取り上げることに強く反発していた。人権問題に全く無関心なトランプ大統領本人は、「中国自身の問題」と至って淡泊で、首脳会談で取り上げられることもなかった。

 中国は「敵を分断する」のが常とう手段だ。トランプ大統領と対中強硬派の“オール・ワシントン”を分断して、組み易いトランプ大統領とだけ取引をする。そんな大統領の危なっかしさは今後、大統領選で増幅しかねない。“オール・ワシントン”が警戒する日々が続く。

前回の首脳会談より後退した貿易交渉の再開

 貿易交渉そのものについては、第4弾の追加関税は発動せず、貿易交渉を再開することで合意した。これはまるで昨年12月のブエノスアイレスでの米中首脳会談の光景を繰り返しているようだ。トランプ大統領の本音が経済状況からさらなる関税引き上げをしたくない時のパターンなのだ。この時、NYダウは乱高下して先行き懸念が持たれていた頃だ。

 その際、私はこう指摘した。

 「トランプ大統領は習近平主席との取引をしたがったようだ。米国の対中強硬路線の根っこにある本質的な問題は手付かずで、90日の協議で中国側が対応することなど期待できない。制度改正など政策変更を必要とするもので、中国国内の統治、威信にも関わる」

 「今回の“小休止”はクリスマス商戦を控えて、さらなる関税引き上げを避けたぐらいのものだ。これらは何ら本質的な問題ではない。」(関連記事:G20に見る、米中の駆け引きの真相とは

 今回はこの90日という交渉期限さえ設けられていない。いつまでもズルズルといきかねない。

苦肉の交渉カード集めに奔走した習近平

 5月初旬の貿易交渉決裂後、米中の攻防はなかなか見ごたえのあるものだった。常に米中双方の交渉ポジションは流動的で、ダイナミックに変化する。

 本来、貿易戦争の地合いは国内経済状況を考えれば、圧倒的に米国有利のはずだった。中国国内の失業率は高く、経済指標は悪化をたどっている。関税引き上げによる食料品の物価は上昇しており、庶民の不満も無視できない。他方、米国経済は陰りの兆しが出てきたといっても、米連邦準備制度理事会(FRB)の利下げ予想もあって依然、高株価を維持している。米中の相対的な経済の体力は明らかに米国有利だ。ただし、これはトランプ大統領が焦りさえしなければ、という条件付きだ。

 5月10日、閣僚級の貿易交渉が決裂して、米国による2000億ドル分の中国製品に対する追加制裁関税が発動された。前述のように5月15日にはファーウェイに対する事実上の輸出禁止の制裁も発動された。

 ここまでは明らかに米国の攻勢に中国は受け身一辺倒で、中国指導部は手詰まりで焦りがあった。中国指導部としては党内の対米強硬派や国内世論の不満をなだめなければならない。そのために対米交渉を“対等”に闘っている姿を見せるための交渉カードを早急にそろえる必要があったのだ。8月には定例の重要な会議である北戴河の会議があって、党内の長老たちから対米交渉について厳しい批判を受ける恐れもある。

 交渉カードの1つが、米国が輸入の8割を中国に依存するレアアースの禁輸のカードである。習主席が急きょレアアース関連の磁石工場を視察したり、レアアース規制のための検討委員会を設置したり、揺さぶりの動きを繰り出した。(関連記事:「反ファーウェイvsレアアース」の米中衝突を徹底解説

 更にファーウェイに対する制裁に協力する企業をけん制するために、中国版のブラックリストの策定も検討するという。中国製の先端技術の禁輸をほのめかすという、“空脅し”まで繰り出した。

 この段階ではいずれも検討している動きを見せて、米中首脳会談に向けて揺さぶりになればよいのだ。そして米国が繰り出す対中制裁に対して“対等”に対応していることを国内に示せればよい。

 香港問題で地合いが悪くなると、電撃的に北朝鮮を訪問して、交渉カードを補強したのもその一環だ。「中国抜きでの北朝鮮問題の解決はない」と、中国の戦略的価値を誇示できればよい。メディアの目を香港問題からそらす効果もある。

中国に見透かされたトランプの焦り

 6月に入ってからのトランプ大統領のツイッターを読めば、中国との首脳会談をやりたい焦りがにじみ出ていた。大統領再選の立候補宣言をして、選挙戦を考えてのことだ。

 「会わないのなら、第4弾の3000億ドルの関税引き上げをする」

 このように5月13日に第4弾の制裁関税を表明したものの、本音ではやりたくなかったのだろう。これまで累次の制裁関税をやってきて最後に残ったもので、本来やりたくないものだ。消費財が4割も占めて、消費者物価が上がってしまう。議会公聴会でも産業界からは反対の声の大合唱だ。選挙戦で民主党の攻撃材料にもなりかねない。そこで振り上げた拳の降ろしどころを探していた。

 中国もそんなことは重々承知で、第4弾は「空脅し」だと見透かして、首脳会談への誘い水にも一切だんまりを決め込み、じっくりトランプ大統領の焦りを誘っていた。

 中国にしてみればトランプ大統領の心理状態がツイッターの文面で手に取るようにわかる。

 首脳会談をしたいトランプ大統領をじっくりじらして、直前のサシでの電話会談で条件を申し入れて首脳会談の開催を決める。こうして首脳会談は中国のペースで進んでいった。

“オール・ワシントン”の動きは収束しない

 こうして本来、地合いが悪いにも関わらず、巧みな駆け引きで中国ペースで終始した今回の米中首脳会談であった。

 しかし貿易交渉を再開するといっても、それぞれ国内政治を考えれば、双方ともに譲歩の余地はまるでない。中国も補助金問題や国有企業問題などを中国にとって原理原則の問題と位置付けたからには、国内的に譲歩の余地はない。米国も大統領選では対中強硬がもてはやされる。あとは国内経済次第だ。急激に悪化して軌道修正せざるを得ない状況になるかどうかだ。

 いずれにしても、関税合戦が収束しようがしまいが、米中関係の本質ではない。

 根深い“オール・ワシントン”による中国に対する警戒感は、中国自身が国家資本主義の経済体制を軌道修正しない限り、延々続くと見てよい。中国がかつて、鄧小平時代の「韜光養晦」に表面的には戻ろうとしても、一旦衣の下の鎧(よろい)が見えたからには、手綱を緩めることはまずない。

 例えば、中国に対して量子コンピューターなどの新興技術(エマージング・テクノロジー)の流出を規制するための“新型の対中ココム(かつての対共産圏輸出統制委員会)”の導入の準備も着々と進められている。米国の大学も中国企業との共同研究は受け入れないなど、サプライチェーンだけでなく研究開発分野の分断も進んでいくだろう。

 こうした中で、今後、日本政府、日本企業は、安全保障の視点でどう動くべきかという問題を米国側から突き付けられる場面も想定しておくべきだろう。

 大統領選にしか関心のないトランプ大統領にばかり目を奪われず、“オール・ワシントン”の動きも見逃してはならない。

山田記事

6月29日、G20大阪サミット終了後に記者会見するトランプ大統領。ファーウェイとの取引容認はここで発表された(写真:ロイター/アフロ)

(山田 敏弘:国際ジャーナリスト)

 日本でも連日報じられた、G20大阪サミット。言うまでもなく、G20でもっとも注目されたのは、貿易戦争を繰り広げている米中による首脳会談だった。そして6月28日の米中首脳会談からは、驚きのニュースが報じられた。

 ドナルド・トランプ大統領は6月29日、米政府によって5月に米企業との取引を禁じる「エンティティー・リスト」に加えられていた中国通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)について、米企業との取引を許可する方針だと発言し、世界を揺るがした。安全保障につながるものは売らないと条件をつけたが、この発表を受けて米ウォールストリート・ジャーナル紙は、トランプがファーウェイに「命綱を投げた」と報じている。

 ただどこまでファーウェイが米企業にアクセスできるのかについては、まだ細かなことは明確にはなっていない。とりあえずは、再開する米中の貿易交渉の中で決定していくということのようだが、少なくとも、その間、ファーウェイは米企業から部品などを購入できるようになると見られる。

 もちろんまだ、エンティティー・リストから解除されるのかどうかもわかっていない。おそらく背景としては、ファーウェイが習近平国家主席に働きかけ、習近平がトランプに直談判し、トランプもそれを容認したというのが真相ではないだろうか。 

過去にZTEに対しても同様の措置

 ではこの突然のニュースをどう捉えればいいのだろうか。このファーウェイに対する、「禁止措置からの緩和」という流れは、実は、過去にも似たようなケースが起きている。中国通信機器大手・中興通訊(ZTE)に対する米政府の措置だ。

 米政府は2017年、ZTEが対イラン・北朝鮮制裁に違反して米国製品を輸出しており、さらに米政府に対して虚偽の説明をしたと発表。それを受け、2018年4月、米商務省はZTEを「エンティティー・リスト」という“ブラックリスト”に加え、米企業との取引禁止を7年間禁じる措置をとった。
これにより、半導体など基幹部品を米国企業から調達できなくなったZTEは、スマホなどの自社製品の生産ができなくなってしまった。そこでZTEは習近平に泣きつき、習近平はトランプ大統領に直接電話をして、この措置を中止するようお願いした。

 するとトランプは、普通なら受け入れられないような非常に厳しい条件を出す。まずZTEに10億ドル(約1080億円)の罰金を科し、エスクロー口座(第三者預託口座)に4億ドル(約430億円)を預託させた。条件を守れなければ没収する保証金だ。さらには、米商務省が指名した監視チームを10年にわたって社内に受け入れることにも合意させられている。

大阪市で開かれた20か国・地域(G20)首脳会議(サミット)に合わせて開かれた米中首脳会談で、握手するドナルド・トランプ米大統領(左)と習近平中国国家主席(2019年6月29日撮影)。(c)Brendan Smialowski / AFP〔AFPBB News

 ファーウェイも、2019年5月に、ZTEと同じように商務省によってブラックリストに入れられた。この措置によって、ファーウェイは米政府の許可を得ることなく米企業から部品などを購入することが禁止になった。

 ここで問題になったのは、例えば、ファーウェイのスマホ製品には、米国企業の部品が多く含まれていることだ。またファーウェイは同社製のスマホ携帯のOSに米グーグルのアンドロイドを採用している。商務省のブラックリストにより、ファーウェイはこうした不可欠な部品などを米国から手に入れられなくなり、ビジネスに多大なる影響が出ることなる。

4割も売り上げが落ち込んだファーウェイ製スマホ

 一応、こうした措置を見据えて、ファーウェイは米国製部品などを約1年分、備蓄しており、しばらくは商品の販売は続けられるということだったが、米グーグルのOS・アンドロイドについては3カ月の猶予の後にアップデートすらできなくなる恐れがあった。ファーウェイ側は独自開発のOSにシフトするという強気な姿勢を見せていたが、その実力を疑問視する専門家も少なくなかった。米政府の措置後の月は、ファーウェイのスマホの売り上げが40%も下落している。

 ちなみに、ファーウェイは2018年11月に同社が取引をしている外国企業92社のリストを公開している。その内訳によれば、全92社のうち、米国企業は33社、中国企業は22社、日本企業は11社、台湾企業は10社で、あとはドイツや韓国、香港の企業が名を連ねる。つまり、ブラックリストに入ることで、米企業33社とは取引ができなくなる。

 さらに例えばファーウェイの最新機器の場合、部品の内訳は金額ベースで見ると米国企業が16%を占めていたという(日経新聞、2019年6月27日)。

もっとも、ファーウェイをブラックリストに加えたことについては、ファーウェイに部品などを売っていた米企業からも悲鳴が上がっていた。半導体大手クアルコムやマイクロン、IT大手インテルなどは合わせると、ファーウェイに部品を売るなどで年間110億ドルほどを得ていた。だがブラックリストに入ればこれらはすべて失われる。米企業にとっても痛手だったのは事実である(最新の報道ではこれらの企業は抜け道などでファーウェイとのビジネス再開に動いていたというが・・・)。

中国・深センで開かれたパネルディスカッションに出席した華為技術の任正非氏(2019年6月17日撮影)。(c)AFP/HECTOR RETAMAL〔AFPBB News

 ただ誰よりも窮地に追い込まれたのはファーウェイ自身だ。そこで同社は、米国のブラックリスト入りではビジネスにならないとしてトランプに泣きついたということではないだろうか。少なくとも、そういう印象を世界に示す結果となった。要は、トランプに屈したということになる。ただメンツを重んじる中国だけに、巧妙な言い方で、自分たちの言い分を公表することになるだろうが。

 また、ZTEの顛末を見ると、こんな見方もできる。筆者はこれまでも、習近平がトランプにファーウェイのブラックリストを解除するよう要請するには、ZTEがのんだような、それ相応の条件をのまなければならないだろうと指摘してきた。今回のファーウェイのケースでも、おそらくそれは例外ではないだろう。

トランプに振り回される世界

 ではどんな条件なのか。筆者の見解では、米中貿易戦争で中国が米国に対して何らかの妥協をする、ということだろう。まずは現在膠着状態にある貿易交渉で懸案となっている「貿易不均衡の是正措置」。また「知的財産権の侵害」「技術移転の強要」「産業補助金」を法律で禁止するという米国の要求に、中国側が大きな譲歩をするのだろう。

 要するに、米国が、2015年に発表した「中国製造2025」の実現に重要な企業のひとつと位置付けてきたファーウェイに対する厳しい措置を緩和することで、米中貿易交渉で米国の望む合意を取り付けようということである。ファーウェイのビジネス自体が米国の安全保障に脅威だとする声もあるのだが、まだ米商務省もコメントはしていない。ホワイトハウス内にも、この動きに否定的な人たちがいるのも事実である。

 ただいずれにしても、ファーウェイをめぐって世界はまた振り回されることになる。すでに世界各地で、ファーウェイのスマホなどを扱わない方針で動いていた。例えば、日本でも各通信会社がファーウェイ製スマホの発売延期などを発表していたし、英国の携帯会社も取り扱いを一時停止する措置などが報じられた。韓国でもファーウェイの取り扱いの中止を検討していたという。そうした影響と、ファーウェイがまたいつブラックリスト入りするかもしれないといった懸念がリスクとなり、世界的にもファーウェイを敬遠する動きが出ることも考えられるだろう。

 すでに述べたように、安全保障につながるようなものについては引き続きファーウェイには売らないし、商務省のブラックリストと同じタイミングで署名した大統領令も撤回していない。5月の大統領令は、サイバー空間などで国家安全保障にリスクがあるとみられる企業の通信機器を米企業が使用するのを禁じている。ファーウェイという企業は名指しされていないが、ファーウェイを対象にした措置なのは自明だ。

 これから今回のトランプによる発表の詳細が明らかになっていくだろうが、少なくとも、トランプもあまりにファーウェイに対する妥協が過ぎると、2020年の大統領選にもマイナスのイメージが付きかねない。そんなことから、ファーウェイ問題も慎重に扱わなければならないはずだ。米政府側の決定が注目される。

 ひとつ明らかなことは、ファーウェイと米中貿易摩擦をめぐる混乱はまだまだ続くことになるだろう。いや、来年の大統領選が近づくにつれ、世界はさらに米国に振り回されることになるだろう。

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