『高齢化控える中国「老人の世話は…」発言の波紋 約束した「年金による老後の生活保障」は反故か』(5/18日経ビジネスオンライン 北村豊)について

5/18希望之声<“中兴案”似难翻身 美众议院禁止取消制裁=ZTE制裁案件は引っ繰り返すのは難しいだろう 米下院は制裁取消を禁止する>17日下院は「ZTE制裁保持修正案」を提出し、商務省がZTEへの輸出禁止令を取消すのを禁じた。下院通過後、上院で可決されれば、法案成立となる。下院での投票は6月中に行われる見込み。法案提出後トランプはZTEに言及することはなくなった。マルコ・ルビオ議員はFOXニュースに「私はZTEとか華為とかいう会社に済まないという感情は持たない。中国政府が支持してきた企業が既に多くの我が国の会社を倒産させてきた。彼らはこのようにして経済的、ネポテイズム(中国企業に米国高官及びその縁者を雇用の意味?)を利用して、国家の安全を危険に晒している。我々は彼らを助けるべきではない」と。

https://www.soundofhope.org/gb/2018/05/18/n1792512.html

5/20日経朝刊<中国、米製品の購入拡大 両国合意 1日遅れで声明>共同声明は「米国が検討する対中制裁の撤回には触れておらず、両国は「高いレベルで引き続き貿易問題の解決策を探る」としている。」とあり、駆け引きが続きます。次は王岐山の出番でしょうが、ポールソン人脈がどの程度生きているかでしょう。ゴールドマンサックス繋がりで言えば、ムニューチンですが、前回北京での会合時にもムニューチンが譲歩する様子は窺えませんでした。次はラリー・クドロー辺りに焦点を充てるのかもしれませんが、トランプの思惑と外れることはできないでしょう。米中貿易摩擦は米国の対中高関税で終わるというか、次には金融制裁が待っているという気がします。

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO30740300Q8A520C1000000/?nf=1

5/18日経ビジネスオンライン<中国頼みだったスクラップ処理が危機に 日本資源戦略の危機、サントリーが放つ一手とは 馬場 未希>中国が環境保護を意識してスクラップの輸入を減らし、国内でのリサイクルを強化するとのこと、うまく行くかどうかです。まあ、中国人に分別回収は難しいのでは。何でも道路に捨てる公衆道徳のない人が大半なので、上の号令があるからといってすぐにできるかというとそうはならないのでは。北京市の石炭使用禁止令のようにガス供給が間に合わなくて撤回に追い込まれたように、企業の原料が調達できなくなって撤回に追い込まれることは充分考えられます。しかし日本ではもっと国内でゴミを資源として活用する方向に行かないと。中国だけでなく世界にスクラップを輸出するのはどうかと。勿論、中古の物は良いと思いますが。ゴミと中古の線引きが難しいかも。

http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/16eco/042500006/051700009/?n_cid=nbpnbo_mlpum

5/20日経朝刊<中国の「ダム攻勢」、メコン川流域の東南ア諸国を翻弄

カンボジア北東部ストゥントレン州の稲作農家のサム・イン氏は2016年、東南アジア最長の河川であるメコン川の支流沿いにあった家から立ち退いた。今年後半に本格稼働すれば、発電能力400メガ(メガは100万)ワットと同国で最大規模のダムになる「セサン2」建設に伴い、村が水没するためだ。

メコン川でのダム開発は漁獲量の減少を招くという(支流のカンボジア・トンレサップ川で魚を捕る漁民の親子)

10年ほど前にダムの計画を聞かされた際、サム・イン氏ら村民は反対した。カンボジア政府は、ダムの発電が国全体に寄与すると説明した。代替地には、政府が約束した灌漑(かんがい)施設も農機具もなく、生産性は以前の半分以下に低下したという。メコン川流域ではほかにも、ダム建設により稲作に必要な川の堆積物が減り、魚も絶滅の危機にひんすると予想される。

カンボジアは12年、中国の支援を得て「セサン2」のプロジェクトを推進した。中国発電最大手の中国華能集団の子会社が、ダム会社の過半数の株を持つ。中国によるダム建設は、メコン川に頼る6000万人規模に上る東南アジアの流域住民の生活を、大きく変えつつある。中国は全長約4800キロメートルの川のうち、自国の上流域を制御し、下流域には摩擦や懸念を引き起こす。一部の専門家は、物流なども含むメコン川流域国のリスクの度合いを、中国による南シナ海の人工島建設と比べる。

米非政府組織(NGO)インターナショナルリバーズによると、中国以外のメコン川本流で計画するダム11カ所のうち、6カ所は中国の支援を受ける。一方、欧米や日本などの投資家は、メコン川のダム開発から撤退しつつあるようだ。日本が最大株主のアジア開発銀行(ADB)は環境への影響を考慮し、メコン川本流での水力発電プロジェクトへの融資を凍結した。

中国政府は、メコン川を使った巧みな外交攻勢を展開してきた。16年の干ばつでは下流域の水流を改善するため、上流域のダムからの放水を発表した。特に緊張が高まっていたベトナムとの関係改善に役立てたかったようだ。タイやラオス、ミャンマーも含め流域国はダムについて、巨大な貿易相手や投資国となった中国への反対は難しいと感じている。中国は15年に発足した、中国を含む流域6カ国の新たな枠組み「瀾滄江―メコン川協力(LMC)」も主導した。16年の第1回首脳会議では、流域開発に100億ドル(約1.1兆円)超の融資枠を設けると約束した。

電力の需要は高まっている。カンボジア政府は、約50%の家庭にしか電気が届かない現状を、30年までに70%まで改善したいとする。ラオスも、電力販売により「東南アジアの電源」となるのを望む。だが電力供給が増えても、環境への悪影響のほうが大きいという研究結果は少なくない。タイのメーファールアン大学の17年の報告書によれば、30年までに計画中のダムがすべて完成すると、下流域の国への悪影響は今後半世紀ほどで73億ドルにのぼる。

東南アジア最大の淡水湖、カンボジアのトンレサップ湖は同国の全漁獲量の半分以上を占める。湖水の約60%はメコン川から流れ込むが、上流のダム開発は魚の回遊を妨げ、漁獲量の減少を招く。漁業を営むオエル・ネイビー氏は「どこかの政府が発電のためダムをつくっていると聞くが、自分に関係があるとは感じられない。生きていくため、もっと魚を捕りたい」と話す。

(バンコク=小野由香子)>(以上)

中国は環境保護強化を謳っていますが、それなら下流の国々に迷惑がかかるダムの建設は止めるべきでは。中国の水源はチベットにあり、元々中国とは別の国です。漢民族お得意の歴史の改竄・捏造です。結局水を政治的に利用し、東南アジア諸国を中国に從わせようという帝国主義的振舞いなのでは。

北村氏記事で感じますのは、中国の年金や医療保険の基金は高級官僚が着服して、全員に給付することはできないのではという事です。それでなくとも低い給付なのに、それすらできないような状況になっているという事です。また、北村氏が言いたかったのは「中国の夢」なる中華帝国を作るための軍拡を止め、その財源をもっと福祉に充てたらと言うものと理解しました。大賛成です。中国の平和的台頭は歓迎しますが、軍拡には反対します。世界の平和への攪乱要素となりますので。でも中国人の性格から言って無理でしょう。自己中で周りを見ませんから。今、井波律子氏の『中国侠客列伝』を読んでいますが、非常に面白い。紀元前まで中国には自分の命を顧みず、他人の為に戦った侠(おとこ)が沢山いたという話です。秦の始皇帝の命を狙った荊軻も含まれています。長い歴史の中で、漢民族は北方民族に圧迫され(北宋時代)、南に下っていき、昔の漢族が残っているは今の広東省や福建省の客家だとも言われています。客家たちでも、昔の侠(おとこ)と言われる人は少ないでしょうが。

記事

一人っ子を失った両親による北京での抗議集会(写真:ロイター/アフロ、2016年4月18日撮影)

5月12日は“国際護士節(国際看護師の日)”である。この日は、1854年に勃発したクリミア戦争に看護婦として従軍し、その目覚ましい働きから「クリミアの天使」と呼ばれ、後に英国の看護教育に貢献して、「近代看護教育の母」と呼ばれたフローレンス・ナイチンゲールの誕生日であり、これにちなんでスイスのジュネーブに本部を置く国際看護師協会が1965年に「国際看護師の日」を制定した。

国際看護師の日を2日後に控えた5月10日、中国政府“国家衛生健康委員会”(以下「国家衛生委」)は記者会見を行った。それは、2008年1月に公布された『“護士条例(看護師条例)”』の実施10周年と中国が2008年5月に国際看護師の日を初めて実施してから10周年に当たることを記念して開催されたのだった。

この記者会見に出席した国家衛生委“医政医管局”副局長の“焦雅輝”(女性)は以下のように述べた。

【1】『看護師条例』の施行以来、看護事業は急速な発展を遂げ、顕著な成果を納めている。2017年末における、我が国の登録看護師の総数は380万人を超えており、衛生・家族計画専門技術者の42.3%を占めている。彼らの67%が大学卒業以上の学歴を持っている。ここ数年、我々は看護士の労働条件を絶えず改善し、看護師の待遇を保障し、労働と成績に応じた報酬を実現し、看護師の積極性を引き出している。

【2】データによれば、目下のところ、中国の60歳以上の老人は約2.4億人で、65歳以上の老人は約1.6億人であるが、その中には要介護と要支援の老人が相当数含まれている。但し、老人介護と老人看護に携わる看護師は慢性的に不足し、看護師の増員は急務であり、2020年までに全国の看護師を450万人にする目標を達成する必要がある。

【3】これら看護師による優良看護サービスはすでに全ての“三級医院(上級医院)”で実施されており、90%近い“二級医院(中級医院)”でも優良看護サービスが展開されている。しかし、今後さらに増大する老齢人口に対応するためには、これら医院の介護サービスだけに頼っている訳にはいかない。そこで、国家衛生委は人々の看護サービスに対する多様化した複合的な要求に対応すべく、看護師部隊の創設を強化し、新たな看護サービスモデルを創り、看護サービスの供給を増大させ、看護サービス業務の改革と発展を推進する。

【4】現在2.4億人に達している60歳以上の老人は、今後さらに増大するが、我々は積極的に人口の高齢化に対応し、老人介護と老人看護を発展させなければならないが、そのためには「誰が世話をする」、「誰の世話をする」、「誰がカネを出す」などの問題を解決しなければならない。我が国の国情から見て、政府機関による看護は我々の主要な方向ではない。将来、これら老人たちを看護する主体と主要なモデルは“社区(地域社会)”と家庭である。特に地域社会では、現在多くの地方で互助式の“養老(老人をいたわり養う)”が模索されており、都市には老人が集中する老人アパートや地域社会があり、農村には民政部門が推進しているものに似た“養老”のための“幸福院”、または互助の“養老”モデルがある。村の“衛生室(診療室)”付近では、村の医師が日常的に健康サービスを提供している。

【5】誰がカネを出して老人の世話をするのかという問題を解決する件に関しては、日本の経験を参考にして、医療保険の他に長期看護保険があるので、老人の長期医療看護問題は解決できる。我が国では中央政府の人力資源・社会保障部門が先頭に立ち、全国の一部の都市で長期看護保険の試験を行っており、長期医療看護の費用負担問題の解決を図っている。この他に、我が国は民間保険をさらに発展させ、民間保険会社に老人の長期介護と看護に特化した保険を開発して補充作用を発揮してもらわねばならない。

「中国の年金政策は不公平、無責任、不透明」

上述した焦雅輝副局長の発言を受けて、米国の中国語ニュースサイトである“阿波羅新聞網(アポロニュースネット)”は、5月12日付で「人を驚かす社会保障の内幕、中国は約束の履行を拒否して、“養老”を地域社会や家庭に押し付ける」と題する同ネットの記者の筆による記事を報じた。その概要は以下の通り。

(1)数日前、中国版Twitterである“微信(WeChat)”の“朋友圏(モーメンツ)”に“独生子(一人っ子)”という題名の写真が掲載され、大きな話題となった。それは1人の若い男性が2つ並んだ病院のベッドの間に座り、左右のベッドに横たわる2人の患者を見守っている写真であった。ベッドに横たわっているのは病気に倒れた彼の父母で、右のベッドには父親が、左のベッドには母親が、それぞれ憔悴しきった様子で写っていた。“朋友圏”で結ばれた人々は写真を見た後に評価を返信したが、中には涙をこらえきれない人もいた。その写真が表していたのは中国政府による一人っ子政策がもたらした高齢化問題の厳しい現実であるが、中国政府はまたしてもその責任を回避しようとしている。5月10日、中国政府の国家衛生委は、老人医療看護問題の解決を強力に推進するとして、未来の老人看護は主として地域社会と家庭が受け持つことになるだろうと言明した。

(2)最近、写真家の“張審軍”が撮影した“独生子”と題する作品がネット上に繰り返し投稿されたが、これを見たあるネットユーザーは「この写真は人を絶望させる」と述べた。3月8日午後に中国メディアのインタビューに答えた張審軍は、「写真は社会の忌諱(きき)<注1>に触れるかもしれない。それは主として一人っ子政策との時代的な関連性である。この写真を撮影したのは2013年だが、写真の中に写っている母親はすでにこの世を去った」と述べた。
<注1>「忌諱(きき)」とは、嫌って避けること。

(3)時事評論家の“李沐陽”は、「これは今の中国の現実であり、中国が30年以上にわたって推進してきた計画出産政策で生まれた第一世代の一人っ子が40歳前後の中年になった。誰もが知っているように、現在この年代は「“上有老(上に老人)”、“下有小(下に子供)”」の段階にある。一人っ子が直面している家庭構造はどのようなものだろうか。ある学者は現在の家庭構造を「4+2+1」と表現している。すなわち、上には夫婦の両親である60歳を過ぎた老人が4人いて、下には未成年の子供が1人いる。

(4)少し前にネット上に『インフルエンザ下における北京の中年』と題する文章が掲載されたことがあった。それは北京の中産階級の話で、1人の老人がインフルエンザに罹って病気になると、医療費が高いので2カ月も経たないうちに長年蓄えた家財が空っぽになるというものだったが、もしこれが他の地方だったらどうだろう。これは想像したくない問題だが、中国では実際に必ず直面しなければならない問題である。それが“養老”問題だったらどうだろうか。

(5)著名な経済学者である“郎咸平”はかつて文章の中で、中国の年金政策には不公平、無責任、不透明という重大な問題が存在していると指摘した。不公平な問題は2つある。第1は、給料の8%が年金保険料として自動的に天引きされる。第2は、低収入の人々が徴収される年金保険料が割高である。中国政府は月収の最低基準で計算して保険料の納付を要求しているが、月収が最低基準に到達していない人も同じ基準で保険料を納付しなければならず、低収入の人々はそれ以上の負担を求められているのに等しい。退職者の年金はもっと不公平である。公務員の年金は企業職員の年金より数倍も高い。

話は変わるが、年金保険に加入していて保険契約の解除を求めても、思い通りに解除して従来納入した保険料の払い戻しを受けることができた人はほとんどいない。2007年頃、広東省“深セン市”では494万人が年金保険に加入していたが、保険契約を解除した人は83万人に達した。彼らのうち、保険料の払い戻しを受けることに成功したのは9672人に過ぎず、残る82万人が納入した保険料は一銭も払い戻しされなかった。この金額は巨大である。同様に、企業が職員のために納入する年金保険料(給料の20%)は社会統一管理口座に収められるが、その口座に集められた保険料がどのように運用されているか、運用益がどうなっているかは全く知らされていない。

「政府が責任を持つのは不可能」

(6)郎咸平が述べているように中国の年金政策には不公平、無責任、不透明という重大な問題が存在しているというのに、5月10日に国家衛生委の焦雅輝副局長は将来の“養老”の主役は中国政府ではなく、地域社会や家庭だと言明したのである。この点について米国ウイスコンシン州立大学の客員教授で中国人口学者の“易富賢”は、次のように述べた。すなわち、中国の老齢人口が直面する“養老”問題は極めて深刻である。中国政府が過去に計画出産政策を実行した時には、政府は国民の“養老”に責任を負うと約束していたのに、高齢化問題がますます深刻な状況になったら、政府が“養老”に責任を持つことなど根本的に不可能と表明している。これはどう考えても政府の身勝手であると言える。

(7)2015年12月、“失独者(一人っ子を亡くした父母)”の代表が北京に集まり、当時の「国家衛生・計画出産委員会(現:国家衛生委)」に対し、一人っ子の子供が死亡したことにより自分たちの“養老”に多大な負の影響が出ている旨を訴えた<注2>。しかし、国家衛生・計画出産委員会の回答は、一人っ子が死亡した家庭に国家が行政保障を行うとの法的根拠はないというものであった。

<注2>“失独者”の詳細については、2015年12月11日付の本リポート『「一人っ子」亡くし、56歳で出産した母の挑戦』参照。

中国には1996年8月に制定され、2012年12月と2015年4月に改正された『老人権益保障法』という法律があり、以下の条文が明記されている。

【第2章 家庭扶養】
第13条:老人の“養老”は住家を基礎とし、家庭構成員は老人を尊重、重視、世話しなければならない。

第14条:扶養者は老人に対し経済上の扶養、生活上の世話と精神的上の慰めを履行すべきであり、老人の特殊な要求に対応しなければならない。扶養者とは老人の子女およびその他法に照らして扶養義務を負う人を指す。扶養者の配偶者は扶養者の扶養義務の履行に協力せねばならない。

第18条:家庭構成員は老人の精神的要求に関心を払わねばならず、老人を無視したり、冷遇してはならない。老人と別居している家庭構成員は絶えず老人を見舞ったり、ご機嫌伺いをしなければならない。雇用組織は国家の規定に基づき扶養者が帰省休暇を取る権利を保障しなければならない。

【第3章 社会保障】
第28条:国家は基本年金保険制度を通じて、老人の基本的生活を保障する。
第29条:国家は基本医療保険制度を通じて、老人の基本医用の需要を保証する。最低生活保障を受ける老人と低収入家庭の条件に符合する老人は、参加する新型農村協力医療保険と都市住民基本医療保険が必要とする個人の納入する保険料を政府が補助する。

ところで、2012年12月に改正された同法は2013年7月1日に発効したが、その発効当日に江蘇省“無錫市”の“北塘区人民法院(下級裁判所)”で公開審理が行われた親の扶養を巡る裁判は、原告である親が、家庭内紛で家を出て、親との関係を絶った娘と娘婿を被告として訴えたものだったが、判決は被告に対し親に一定の経済的保障を与えるほかに、少なくとも2カ月に1回は親を見舞うことを命じた。第18条は2012年12月の改正で修正が加えられた条文で、この判決が親を定期的に見舞うのを命じた最初の判例となった。

不足する施設や看護、介護スタッフ

話は本題に戻る。上記の条文からも分かるように、中国政府は国家が年金制度を通じて老人の基本的生活を保障すると約束したはずである。しかし、郎咸平が述べている不公平、無責任、不透明な年金政策と乱脈な年金運用による結果かどうかは分からないが、2017年4月時点で“清華大学”の報告書は国民から集めた年金資金が4.7兆元(約80兆円)も不足していると指摘しているし、2017年12月に中国政府の報告書が多数の一級行政区(省・自治区・直轄市)で年金資金の不足が急を告げていると述べている。中国政府は年金資金不足を懸命に否定し、年金財政は健全であると公言しているが、すでに中国の年金制度は破綻したと公言する学者もいるのである。

そうした状況下で国家衛生委の焦雅輝副局長が「今後、“養老”の主体は国家ではなく、地域社会と家庭である」と言明したことで、中国の年金制度が危機的状況にあり、社会保障全般に問題があるのではと、国民が危機感を募らせる結果となったのである。

中国には養老施設が2017年末時点で15.4万カ所存在しているが、正式に登録されているのは約2.9万カ所にすぎず、これら施設のベッド数は700万床しかなく、とうてい現在2.4億人いる60歳以上の老人の中で介護や看護を必要とする人々を収容できる態勢には程遠い現状である。また、国家資格を持つ介護士は2万人しかおらず、今後必要となる介護士1000万人を養成するには相当な年月を必要とする。

“養老”を地域社会や家庭が主体となって行うにしても、要介護や要看護の老人を世話するのには限度がある。限度を超えた段階では、国家が彼らを受け入れる必要があるが、それが期待できないとなれば、現在の日本で問題となっている親の介護を理由とする退職や老々介護が増大することになるだろう。中国の高齢者は2050年には4.8億人となり、予測される総人口13.6億人の35%を占めることになる。

世界第2の経済大国となった中国は、習近平が提唱する「中国の夢」を実現して世界に覇を唱えようとしているが、超高齢社会(65歳以上の人口が全人口の21%以上)が到来することを念頭に今から万全な対策を取り、地道な努力を積み重ねないと、悲惨な未来が待つことになるだろう。

中国の史書『戦国策』にある“燕策”の故事から出たとされることわざ「先ず隗(かい)より始めよ」(意味:遠大な事業や計画を始めるときには、まずは手近なところから着手するのがいい)の精神は、今の中国にとって不可欠なものではないだろうか。

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