『米国の「原則ある現実主義」が導く核なき中東 国際世論はイランに味方している』(5/14日経ビジネスオンライン 森永輔)について

5/16看中国<九一三事件:林彪出逃 周恩来欲软禁毛泽东(图) ——周恩来弑了林彪 毛泽东又弑了周恩来=913事件(林彪が逃亡して撃墜された日):林彪が逃げだした時 周恩来は毛沢東を軟禁しようとした 周恩来は林彪を殺し、毛沢東は周恩来を殺した>長いので簡単に説明。林彪は毛沢東の政治闘争に寒気を覚え、精神錯乱となり、「1号令」を出し、ソ連と戦争になりかけた。毛は林彪に自分の別荘に軟禁して反省させようとした。林彪は逃亡するつもりか遊びに出て気を紛らわせるつもりか分からない。周は林彪の妻の葉群に電話し、汪東興(党中央弁公庁主任・公安出身)にその内容を伝えた。林彪をソ連まで逃がし、裏切り者を出した責任を毛の追及に使う良い機会だからである。毛は事件を知らず、事後報告となった。周は呉法憲(軍副総参謀長)に「北京に来る飛行機は着陸させるな」と命令、これは林彪が改心して戻ってくるのを防ぐためである。

周の本心を見抜いたのは、毛と江青であった。それで江青は政治局会議で周を責め立てた。だから周に膀胱癌が見つかっても、治療団に「①機密保持、周とその妻には内緒に②検査は不要③手術も不要④栄養摂取と看護強化を命じ、死ぬのを待った。

これは共産党の暴虐な殺人であり、仁政を施さず、互いに殺し合い、その本質が邪悪である例証である。

https://www.secretchina.com/news/gb/2018/05/16/857918.html

5/17看中国<中兴只是“小事件” 习近平因何事夜不能寐?(图)=ZTEは小さなことである。習近平はどうして夜も眠れないのか>習の不眠の原因は、ワシントンの専門家は①重大リスクのメルトダウン防止②格差解消③汚染防止と。中国の速い経済発展の代価は高いものについた。環境汚染、極端な貧富の差、低効率の為の大量のエネルギーや材料の消費、低劣な製品しかできなく、甚だしい浪費である。更に生産過剰と在庫過剰、国と地方の債務は深刻さが大である。

NYTは5つの大問題で習は夜も眠れずという内容の新刊を紹介。①科学技術の劣勢②軍事上の劣勢③金融システムリスク(膨大な政府債務や不動産バブル)④ネットリスク(反共産党の正しい情報が入手可能)⑤環境汚染を原因とした社会動乱の5つである。

https://www.secretchina.com/news/gb/2018/05/17/858851.html

5/17北野幸伯氏メルマガ<アメリカの「イラン核合意離脱」で、中東大戦争が起こる?>

http://archives.mag2.com/0000012950/

この記事中に出て来る4/26JETROリリース<ユーラシア経済連合、イランとFTA締結へ>です。

https://www.jetro.go.jp/biznews/2018/04/345a2f9b9169d138.html

日経ビジネスオンラインの記事で、村上氏は「米国の国防授権法」が重要なポイントと言っています。米国の国防上、安全が阻害されるのであれば、イラン以外にも適用することはできるでしょう。新たな立法措置が必要でしょうけど。昨年度成立した2018年度国防授権法には台湾への米艦船寄港も明文化されました。やはり軍拡路線を突っ走る中国を困らすには$決済させないことです。イランのような鎖国に近い状況に陥るでしょう。或はロシアのような地域大国に止まるだけです。

JETROの記事では、イランは$決済ができないため貿易はルーブル建てにしたとのこと。日本の敵と言うか、自由社会の敵である中国も、$を使える状況にしておくのはおかしいです。自由で開かれた民主主義国と貿易で稼いでいながら、国内では苛政に勤しむのでは。自由主義諸国は中国のいいとこどりは許さないようにしませんと。

欧州はイラン核合意を遵守する構えを見せていますが、米国がSWIFTやFATCAを使い、パナマ文書のように従わない国の機密を漏らす可能性があります。軍事的にもNATOを支えているのは米軍ですので、トランプはNATOの米軍の大幅削減を言いだすかも知れません。まあ、米国がどこまで本気になって追い込むかですが。村上氏の言うようにトランプのイラン封じ込めは難しいとして、イスラエル&サウジVSイランの戦争が起きるかどうかですが、村上氏の言うイランに核兵器開発の技術を持っていないとすれば、戦争を起こす大義名分がないので、戦争にはならないのでは。中東問題もユダヤVSアラブではなく、スンニVSシーアの問題の方が大きくなっていますので。アラブでないチュルク(トルコ)とペルシアの動きに注目していた方が良いでしょう。両国は過去に強大な帝国でしたので、中国のように「民族の偉大な復興の夢」を追い求めるかもしれません。そうなると戦争の可能性も出て来るのかと。

記事

トランプ米大統領が5月8日、イラン核合意からの離脱を決めた。「近隣諸国の核武装を抑止する機能が低下する」と懸念する向きもあるが、村上拓哉・中東調査会協力研究員は「イランは穏健路線を維持する」とみる。その背景に何があるのか。(聞き手 森 永輔)

米国によるイラン核合意離脱に抗議するテヘラン市民(写真:AP/アフロ)

—ドナルド・トランプ米大統領が5月8日、イラン核合意からの離脱を決めました。「イランは核エネルギーの平和的な利用だけを考えているという巨大な作り話に基づく」と断定。この合意では、イランは短期間で核兵器が獲得できる状態にとどまる、核弾頭を搭載できる弾道ミサイルの開発にも対処できない、と理由を挙げています。これらも含めて、今回の離脱の理由をどう分析していますか。

村上:それらに加えて、この合意に反対する共和党議員からの強い支持があったと思います。彼らは、核合意の交渉中に「(もし合意に至ったとしても)次期大統領が無効にすることができる」との書簡をイランの指導者宛に送ったりしていました。

村上拓哉(むらかみ・たくや)
中東調査会協力研究員。2007年3月、中央大学総合政策学部卒業。2009年9月、桜美林大学大学院国際学研究科博士前期課程修了(修士)。2009年10月~2010年8月、クウェート大学留学。在オマーン日本国大使館専門調査員を経て中東調査会に

 「この合意ではイランの核開発を封じることができない」との懸念を感じているからでしょう。トランプ大統領が指摘しているようにミサイルの開発を止めるものではありません。イランが心変わりし、核開発を秘密裏に行う可能性も完全に否定することはできません。

 1994年の米朝枠組み合意が北朝鮮の核開発を止めることに失敗したように、イラン核合意についてもこうした懸念を抱くのはもっともです。ただし私は、合意を維持していく方がイランの核開発を制限できると考えています。

 共和党議員からの支持に加えて、トランプ大統領自身が持つ姿勢もあるでしょう。1つは、バラク・オバマ前大統領のレガシーを無に帰したいという考え。TPP(環太平洋経済連携協定)から離脱したのと同様です。2つ目はトランプ大統領のイラン観です。

—それは、親イスラエルの裏返しですか。イランとイスラエルは対立の度を深めています。トランプ大統領は在イスラエル米国大使館をテルアビブからエルサレムに移転することを決めました。娘婿のジャレッド・クシュナー氏はユダヤ教徒です。

村上:トランプ大統領の中で親イスラエルと反イランがどこまでつながっているかはよく分かりません。親イスラエルであることは間違いありませんが、イスラエルのネタニヤフ首相が求めることをすべて受け入れているわけでもありません。

 シリアに対する米国の姿勢にネタニヤフ首相は不満を抱いていることでしょう。イランが支援している民兵やヒズボラ*がシリアで活動範囲を拡大させているのを放置しているのですから。イスラエルにとって目前の問題は彼らの存在です。イランの核は、将来に問題となる可能性はありますが、「今」の問題ではありません。

*レバノンで活動するイスラム教シーア派政治組織

 ただしネタニヤフ首相がトランプ大統領に対してこの状況に強く文句を言うことはないでしょう。オバマ政権との関係に比べればはるかにましですから。

欧米の良識に期待

—イランは再び米国から強力な制裁を科されることになります。しかし、今のところ強硬な動きはなく、平静を保っていますね。米国が離脱した後の合意に残留する価値があるのでしょうか。

村上:イランと米国の間に通商関係はほとんどありません。このため、イランが恐れるのは米国の制裁により他の国との通商が阻まれる事態です。特に大きいのは米国の国防授権法がもたらす影響ですね。イランの金融機関と取引する第三国の銀行と米国の銀行とのドル決済を禁止するものです。国防授権法が2012年に施行された後、イランは非常に辛い目に遭いました。

国防授権法はイランと米国のどちらを取るのか第三国に踏み絵を迫る措置と言えます。これを突き付けられてイランを選ぶ国はないでしょう。

 とはいえ欧州諸国は、米国から制裁逃れとの追及を受けることなくイランとの関係を維持する策を模索しています。イランは欧州諸国を味方につけ、制裁がもたらすネガティブな効果を十分に軽減することができるかどうかを、見極めようとしています。

 米国の制裁を回避するには、まずは前回の国防授権法のときと同様に、制裁対象から除外される例外措置の適用を米国に要請することでしょうか。例えば、イランからの石油輸入量をある程度減らしたら、制裁の対象からはずすという措置が前回は取られました。

 もちろん、容易なことではありません。しかし欧州産業界が各国政府に強い要望の声を上げるでしょう。例えば仏トタルをはじめとする少なからぬ欧州企業がイランへの投資を決めていますから。

—トタルは2017年4月、南パルス田の開発をめぐってイラン国営石油会社(NIOC)および中国石油天然ガス集団(CNPC)と契約を結んでいますね。

村上:はい。そして国際世論はイランに味方しています。核合意を支持する声も大きい。米国という巨人が一人で暴れている、と見る向きが多いのです。

 後はロシア、中国、インドがどのように行動するかが注目です。インドは、イラン核合意がまとまる前、国防授権法の影響を避けるため、イランとの間でドルを介さない物々交換のような貿易をしていました。イラン産の原油とインド産の小麦を交換するといった具合です。

—90日・180日の期限がすぎ制裁が本格化したとき、イランが強い対抗措置に出る可能性はありませんか。

村上:ロウハニ政権のこれまでの主張に照らして考えると、その可能性は低いでしょう。ロウハニ大統領は次のような論理で自らの立場を正当化しようとします――米国が勝手に合意から離脱し、イランに対して不当な制裁を再び科そうとしている。そして、我々は、良識ある国際社会の国々と共にこの苦難に立ち向かっていく。なので合意維持を唱える諸国との連携を崩すような過激な行動は取りづらいでしょう。

 国内的な要因もあります。イランでは「米国の制裁など効いていない」ことになっています。したがって、ロウハニ政権に反対する勢力も制裁再開をもって同政権を攻撃することはできません。ロウハニ大統領は昨年の選挙で再選されたばかりで、任期は後3年あります。欧州諸国との交渉で事態を打開できるチャンスがある。ここで強い行動に出る必要はないでしょう。

 さらに原油価格が高止まりしているのも、政権を支えます。制裁のため輸出が減少するのは避けられません。しかし、高い原油価格がこの影響を軽減するでしょう。米国と距離を保つ中国とインドがイラン産の石油を買い続けてくれればなおさらです。

—現在のイランの原油輸出先は両国が1位と2位を占めていますね。それぞれ24%、18%です。

ウラン濃縮の強化やNPT離脱はない

村上: ただしロウハニ政権と対立する保守強硬派の動向は要注意です。例えば最高指導者直属の革命防衛隊や、彼らの支援を受けた国会議員などですね。彼らがイスラエルとの間で軍事的な緊張を高めようとする可能性が考えられます。

 もちろん全面戦争にする気はどちらにもないでしょう。代理戦争が行われるのはやはりシリアだと思います*。

*:イスラエル軍は5月10日、シリア国内にあるイランの軍事拠点数十か所に対して空爆を実施した

—制裁への対抗措置として、イランがウランの高濃度濃縮を再開するという見方があります。

村上:ロウハニ大統領が、産業レベルの濃縮を無制限で行う準備をするよう原子力庁に指示しました。産業レベルが何を指すのか明確ではありませんが、これまでの経緯を考えると発電用途を指していると思います。周辺国に脅威を与える発言とは言えないのではないでしょうか。

—イランはNPT(核不拡散条約)*から離脱するかもしれないと見る向きもありますが。そのようなことは……

*:核兵器の管理に関する条約。以下の3点が柱。米、ロシア、英、仏、中の5か国を「核兵器国」と定め、この5カ国以外への核兵器の拡散を防止する。核軍縮交渉を誠実に行なう。原子力の平和利用を認める

村上:ないでしょう。イランが核兵器の保有を望んでいるという見方はまゆつばものです。

—IAEA(国際原子力機関)はイランへの査察に基づいて「2003年まで組織的に核兵器の開発が行われていた。しかし、それ以降について確証はない」と報告しているわけですね。

村上:はい。それに、イランの技術力はまだ十分なレベルに達していないと思います。さらに、イランは地域において孤立しているわけではありません。イラク、ロシア、中国、インド、パキスタン、アフガニスタン、中央アジア、アゼルバイジャンなどのコーカサス諸国……。これらの国との関係を維持できるようまず考えると思います。

米国が進める「原則ある現実主義」

—次に米国の中長期戦略についてうかがいます。村上さんは、トランプ大統領が用いる「原則ある現実主義」という表現に注目されています。

村上:ほとんど話題にされることがありませんが、「米国第一主義」と並ぶ重要な戦略だと思います。トランプ大統領が初の外遊として2017年5月にサウジアラビアを訪問した際に行ったリヤド演説でこれに初めて言及しました。続いて2017年9月の国連総会でこの表現を用いました。この時は対象を中東戦略から政策一般に広げています。さらに2017年12月に発表した「国家安全保障戦略」でもこの考えを踏襲しました。

 その意味するところは、米国の価値観に根差した原則の推進と力の重視です。具体的な手段としては、「同盟国と協調した力による抑止」となるでしょう。トランプ大統領には政策理念というものがほとんど見られません。望ましい社会像を提示することもない。ただし、国家には主権があり、これを侵害してはならない――という一線だけは守る。後は目前の問題を是々非々で判断する。

 トランプ大統領は、米国が世界の秩序を維持するのはもう無理と考えているのでしょう。内政干渉もしない。では何をするのか。伝統的な力による抑止を強め、「米国の安全保障を守る」ことに軸足を移したわけです。地域の問題は地域で解決するよう促す。米国が考える1つの秩序ではなく、地域もしくはそれより小さな単位でのミニ秩序が多数出来上がることになります。

 この考えを中東政策にフォーカスしてブレークダウンすれば次の5つになります。

(1)米国の国力は相対的に衰退している。よって、中東に軍事的に深く介入することはしない。

(2)中東地域における米国にとっての最大の懸念はイスラム過激派のリスト。これを殲滅すること、再び力を持たせない環境を確立することが重要。

(3)地域の不安定化を引き起こしているのはイラン。これを封じ込める必要がある。

(4)地域の問題は地域が主導的に解決すべき。米国の役割は支援である。支援には限定的な軍事関与を含む。

(5)上記の目標が達成されるのであれば、米国は地域秩序や現地の政治体制の在り方に積極的に関心を払うことはない。

—「同盟国と協調した力による抑止」はいわゆるオフショアバランシングとは異なるのですか。

村上:そこは意見が分かれるところです。オフショアバランシング戦略では「米国が求める秩序の実現をジュニアパートナーに任せ、これを支援する」ことになります。冷戦期の中東が分かりやすい例でしょう。米国はサウジアラビアやイランを支援して共産主義に対する防波堤を築きました。しかし、現在のトランプ政権は、「米国が求める秩序」を示していません。

米国の中東での軍事行動はない

—トランプ政権は4月にシリアを空爆しました。これは先の5つの項目に合致しないように映ります。

村上:これは、化学兵器の使用に対する制裁でした。これによって米国の強さを世界に示すことができる。ただしイラク戦争に突き進んだブッシュ大統領と異なり、トランプ大統領はコストをかける気はありません。攻撃はあくまで単発。これならば、統治に関するコストの負担にはつながりません。

—先ほど言及された「反オバマ」の特性がなさしめたものかもしれませんね。

村上:それもあるかもしれません。つけ加えるとすれば「なめられてたまるか」という意識です。オバマ政権は2013年にシリア空爆を躊躇し批判にさらされました。トランプ大統領は「自分は違う」というところを見せたかった。

—トランプ大統領はシリアからの米軍撤収をほのめかしています。「原則ある現実主義」に沿って考えた場合、実現する可能性をどう見ますか。

村上:米国がシリア駐留に利益を見いだすのは難しいでしょう。最大の敵であった、過激派イスラム国(IS)はほぼ壊滅しました。

 シリアにアサド政権が残存し、弾圧されるかわいそうな人々が残り、イランの橋頭堡ができても、そのいずれも米国を攻撃することはありません。

 この地域の秩序が乱れればイスラエルに負の影響がありますが、それに対しては武器供与などのかたちで協力すればよい。

 トランプ大統領は3月末「シリアのことはほかの人たちに任せよう」と発言しました。ロシアやアラブ諸国を念頭に置いての発言と思われます。イスラエルは反対するでしょうが、米国が一方的に撤収する事態も十分にあり得ることだと考えます。

—以上の話を踏まえて、「原則ある現実主義」を改めてイランに当てはめると、米国が軍事的な動きを示すことは……

村上:考えづらいでしょう。トランプ大統領は一度も言及していません。政権スタッフも同様です。

—国家安全保障問題担当のジョン・ボルトン大統領補佐官ですら言及していませんね。

村上:その通りです。つまり、トランプ政権において現実的な選択肢になっていないのです。

トランプ氏が望むイラン包囲網形成は難しい

—今回の米国の核合意離脱が、中東の関係図を塗り替えることはありますか。イランとイスラエルの対立が中心にあり、米国がイスラエルへの支持を強めていく。その後は……

村上:米国としてはイラン包囲網を形成したいところでしょう。先ほどお話しした、地域のことは地域に任す、です。その第一歩として、サウジアラビアとイスラエルとの連携が強まるのを期待する。サウジアラビアは対イランでイスラエルと同じ立場にあります。しかし、両者の間にパレスチナ問題*をめぐる対立がある限り、サウジがイスラエルとの協力関係を表沙汰にすることはないでしょうが。

*:中東におけるアラブ人とユダヤ人の対立を指す。第二次世界大戦後、アラブ人が住むパレスチナに、ユダヤ人がイスラエルを建国したことで発生した。両者は以降、中東戦争を繰り返した

 米国は、湾岸諸国が対イランで連帯することにも期待しています。そのため、サウジとカタールの対立も早く解決してほしいと考えているでしょう。サウジは2017年6月、カタールがイランに融和的な態度を取っている、サウジがテロ組織に指定しているムスリム同胞団を保護しているとして断交に踏み切りました。

 しかし、カタールはイランとの関係を無碍にすることはできません。イランとガス田を共有しています。また、イランからオマーンに天然ガスのパイプラインを通すという話もあります。こうした国々は、イラン包囲網への参加には「ちょっと待ってくれ」と考えているでしょう。

 米国はイラン包囲網にエジプトやヨルダンが加わることを望んでいます。米国の伝統的な同盟国ですから。エジプトはイスラエルと79年に平和条約を締結しており、安全保障上の対立はありません。一方で、エジプトとイランは79年以降、国交断絶が継続しています。しかし、エジプトはイランとの対立に巻き込まれるのを懸念している状態です。得られるものは何もありませんから。

 イラン包囲網が形成され、関係国がトランプ政権が望むレベルで負担を負う可能性は高くないでしょう。サウジアラビアは米国に代わって地域秩序を維持するだけの軍事力も指導力も有していません。エジプトやカタールはイランとの関係を損なうデメリットを考えています。こうした中で、トランプ政権が軍事的な関与を避け、地域に負担を求め続ければ、サウジやイスラエルが米国離れを起こす事態が進みかねません。

 また、湾岸諸国が一致してイランに対抗する状態を展望するトランプ大統領は、その足並みを乱す行動を自ら取っています。サウジがカタールとの断交を決めた時、トランプ大統領はサウジを積極的に支持する発言をしました。これには米国務省、米国防総省、米軍ともに強く反対しました。カタール含め湾岸諸国には米軍の基地が点在しており、地域での米軍の活動に支障が出る恐れがあるからです。

イランがもたらす脅威は核より覇権拡大

—サウジ、トルコ、ロシアという周辺の大国の動きをうかがいます。

 サウジアラビアは米国が合意から離脱するのを支持しました。ライバルであるイランが核開発する可能性が出てくるわけですから、本来なら反対すべきではないでしょうか。

村上:サウジの関心は、イランの核開発よりも、地域における覇権的な行動を止めることにあります。イラクやシリア、レバノン、イエメン、バーレーン、サウジ東部におけるシーア派勢力への支援をやめさせる。サウジにとっては、これらが実存的脅威です。

 イランが核兵器を保有するのをもちろん容認はしません。しかし、イランが核兵器を用いる対象はまずイスラエル、あるいは米軍です。サウジではありません。

 したがってサウジが望むのは、米国がイランに対して強硬な姿勢を取り、その力を削ぐべく経済制裁をかけ続けることなのです。

—米国の離脱により核開発のドミノ現象が起こるという見方があります。まずイランの核開発を招く。これに対抗すべく、サウジをはじめとする周辺国が追随する。こうした事態は当面考えづらいということですね。

村上:はい。少なくともロウハニ政権下でイランが核開発に進むとは考えられないです。先ほどご説明したとおりです。

—サウジのムハンマド・ビン・サルマン皇太子が「イランが核武装すればサウジも追随せざるを得なくなる」と発言しています。

村上:それは現時点ではブラフでしょう。サウジは同様の発言を10年以上前から何度となく繰り返しています。

去就が見えないトルコ

—トルコはどう動きますか。

村上:トルコはややこしいです。戦略的にどちらを向いているのかよく分からない。

 当面の課題はクルド勢力の封じ込めです。この点に関してはイランと手を組むことができる。イラクのクルド勢力が昨年の9月、自治区の独立を目指して住民投票を実施しました。このとき、トルコとイランはイラク政府とともに軍事演習を実施し威嚇しました。ただし、イランのクルド勢力はトルコやイラクのクルド勢力ほど独立志向が強くない。したがって、イランにとってそれほど深刻な問題ではありません。トルコとは温度差があるのです。

 一方、トルコとイランの経済関係は良好です。米国が核合意からの離脱を決定した後、トルコのゼイベクチ経済大臣はイランとの貿易を今後も続けるとすぐさま宣言しました。

 トルコと米国の関係は悪化していますが、両国の間に戦略的な対立はありません。米国が、シリアで活動するクルド人民兵組織「人民防衛部隊」(YPG)への支援をやめ、ギュレン問題*が解決すれば改善に向かう可能性が高いでしょう。

*フェトフッラー・ギュレン氏はトルコで活動するイスラム教指導者。同氏を指導者と仰ぐ勢力が軍、警察、官公庁に多数いるとされる。AKP(公正発展党)を与党とするエルドアン現政権と対立関係にある。エルドアン政権は、2016年7月のクーデター未遂に同氏が関与していると主張。現在、米国で暮らす同氏を引き渡すよう、トルコ政府は米国政府に求めている

 というわけで、クルド問題やギュレン問題など目の前の課題が解決した後にトルコが、米国とイランのどちらに向くか判断が難しいのです。確実なのは、トルコは、サウジとイランが対立する湾岸地域の争いに巻き込まれたくはないということでしょう。

ロシアはゲームマスターを目指す

—最後は、ロシアについてです。

村上:ロシアの動きも読みづらいところです。シリアに目を向ければ、イランと協調しアサド政権を支援しています。

 一方、石油市場に目を向ければサウジとの協調を続けている。

 サウジはロシアとの関係を強化したいと考えています。米国との関係が悪化した時のことを考えて、ロシアをヘッジに使いたい。昨年10月にはサウジのサルマン国王が訪ロし、ロシア製のS400地対空ミサイルシステムを購入することで合意しました。資金面の支援を誘い水に、シリア問題やイラン問題での協調を呼びかけてもいます。ロシアは乗ってきませんが。

 これらを勘案すると、ロシアの目標は、中東のゲームマスターになることだと思います。サウジとイランのどちらかにつくのではなく、必要に応じてパートナーを組み替える。ソ連時代のように共産主義・社会主義体制の国を支援したような硬直した考えはありません。

 そして、関係国の皆がロシアの方を向き、ロシアを頼る環境を作りたいと考えているのかもしれません。加えて、ロシア製の武器を買ってくれる。こうしたこの目標は実現に向かって既に動いています。

 例えばイスラエルのネタニヤフ首相が5月9日に訪ロしました。10日に実施したシリア空爆について事前に話を通したのでしょう。米国の同盟国であるイスラエルがこのような行動を取るようになっているのです。

 また、イランとサウジがどちらもロシア製地対空ミサイルを導入している。サウジは先ほどお話ししたとおりS400を購入、イランはS300を購入しました。加えて、トルコもS400を購入しています。対立する国の軍がいずれもロシアから武器を購入している。しっちゃかめっちゃかの状態です。普通なら信義の問題になるものですが、ロシアはそんなこと気にしていないようです。

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