『文在寅政権は「現状を打ち壊す」革命政府だ 「民族の核」を持つ北と組めば怖いものなし』(11/2日経ビジネスオンライン 鈴置高史)、『韓国徴用工判決、投資と観光客が激減する恐れ』(11/2日経ビジネスオンライン 向山英彦)について

10/29本ブログで「馬渕睦夫著の『2019年世界の真実』には、「ジャック・アタリは2025年までに中共の一党支配は終わると予言」(P.120)とありました。グローバル勢力が中共を見放したことになります。」と書きました。読み終わりましたので、その他の部分も紹介します。

①返還された北方領土にロシア軍の駐留を認めるのも一案。沖縄に米軍が未だに駐留していることを考えれば、何も不思議でない。(P.144~146)

②安倍政権時代にトランプ大統領が靖國神社に参拝することも大いにありうる。(P.147)

③「アメリカの伝統破壊はエスタブリッシュメントの交代に象徴的に表れています。ユダヤ系のブレジンスキーが自著『THE CHOICE』で指摘しているように、WASP (ホワイト、アングロサクソン、プロテスタント)をエスタブリッシュメントの座から弓き摺り下ろして新たにエスタブリッシュメントになったのはユダヤ系の人々です。その手法は黒人やヒスパニックなど少数派と組んだことだと、同書は種明かしをしています。つま り、移民(少数派)と組んで同じく少数派のユダヤ系がアメリカのエスタブリッシュメントに上り詰めた。移民はアメリカ社会変遷のために利用されたともいえます。

トランプ大統領はこうした事実に直接言及することは慎重に避けながら、アメリカ国民に対しアメリカを取り戻そうと訴えました。その意味で、トランプ大統領の挑戦は世界グローバル化勢力との戦いであるのです。」(P.166)

④「少数者優遇は多数者に対する差別である

では、国連による政治、思想分野での「世界統一」活動はどのように行われているのでしようか。この疑問に答える鍵はロシア革命にあります。

二〇一七年はロシア共産革命百周年でしたが、ロシア革命はまだ終わっていません。 私たちは一九九一年のソ連邦崩壊によってロシア革命は使命を終えたと無邪気に信じがちです。しかし、そうではありません。ロシア革命の思想を受け継ぐ革命家たちは、暴力的手段による共産主義革命から、文化を乗っ取ることによる内部崩壊方式に戦術を変更しました。この新しい戦術の理論的支柱になっているのが、先述のフランクフルト学派による秩序批判理論です。既存のあらゆる秩序を批判することによって社会を崩壊に導くという単純な理論ですが、この秩序破壊工作が明確に目に見える形で行われるわけではないので、私たちが社会の崩壊に気づくのが手遅れになる危険があるのです。

たとえば、昨今EUやアメリカを襲っている移民の波も、元はといえばフランクフルト学派の批判理論に基づき、先進国の社会秩序を破壊することを狙ったものです。しかし移民擁護者は自らの正体を明かさずに、移民の人権や人道問題の側面を強調することによって、人々の移民に対する疑問や不信感の表明を抑圧し、移民の受け入れが世界の理想に合致するものだとの印象操作を続けてきました。

近年、国連は移民に関する特別会合を開催し、移民は保護される権利があるとして各国に移民受け入れの促進を訴えました。この「移民の権利」擁護キャンペ—ンの尖兵となったのが各国のメディアであり、メディアに巣喰う知識人です。

彼らはポリテイカル・コレクトネス(政治的正しさ)という巧妙な口実を発明しています。これは少数者優遇であり、多数者に対する「逆差別」なのです。言うまでもなく、ポリテイカル・コレクトネスを推進しているのは世界の少数者グループです。フランクフルト学派の批判理論を言い換えれば、「既存の秩序は多数者の秩序であり、多数派から疎外されている少数者はこの秩序を破壊せよ」という革命的扇動になるのです。

移民を奨励する国連の移民条約の草案には「移民は移民した国の中で文化的にも社会的にも同化する必要はない」「移民は移民した国の国民と同等の権利を主張できる」という内容があります。あまり過激だから、誰も相手にしていませんが、国連はそういうことをやっているところです。」(P.182~183)

⑤「では、二十世紀最大の謎を解く鍵は何か。答えは前述したロシア革命です。ロシア革命は決してロシア人による帝政打倒の革命ではありません。ユダヤ系の職業革命家によるロシアにおけるユダヤ人解放のための革命だったのです。そのためにマルクスの共産主義革命理論が利用されたに過ぎません。この真実は世界の眼から隠蔽されてきました。

ソ連共産主義体制下、ニ千万人のスラブ系住民が反革命や階級の敵という口実で、問答無用に殺害されましたが、このテロの恐怖による強権的支配の革命を支援したのは米英の金融資本家たちです。彼らは融資した資金を回収し、革命家たちはロシア人労働者を弾圧し、搾取する一方でスイスの銀行口座を持ち、私的に富を蓄えた。このような共産主義独裁政権がプロレタリアートのための政権であるはずがありません。革命から七十四年でソ連という人工国家は崩壊しましたが、この事実が共産主義体制の矛盾を如実に証明しています。

共産主義の悪行がこれほど明確に示されているにもかかわらず、なぜかロシア革命の実態について、私たちは知ることを阻まれています。それはロシア革命をプロレタリアート革命と持て囃した勢力によってです。彼らはプロレタリアート革命のロ実で行われた大量虐殺の協力者であり、人類史上最悪の虐殺行為が暴露されるのを隠蔽しなければならない人たちです。

結論を言えば、ロシア革命を支援した人々がアメリカやイギリスのメディアを握り、ロシア革命の虐殺の実態が明るみに出ないよう、ヒトラーという極悪人を糾弾することによって隠蔽してきたのです。「ロシア革命でユダヤ人が□シア人を大虐殺した」「ユダヤ人がロシア人を強制収容所で働かせた」。それを隠さなければいけないから、ユダヤ人を強制収容所に入れ、虐殺したヒトラーを極悪人として糾弾しつづけるのです。もちろんヒトラーは悪い奴でしよう。しかし、それ以上の大虐殺を無視するのはニ枚舌というしかありません。

今、アメリカの歴史学者の大御所は、だいたいユダヤ人です。そういう人が、自分たちに都合のいい歴史をつくっていて、ユダヤ系が多いメディアはそれに加担する。 安倍首相も「歴史修正主義者」というレッテルをそういう人たちから貼られましたが、本当のことがわかったら困るから、本当のことを言いそうな人を、「歴史修正主義者」といって抑えているわけです。」」(P.186~188)

⑥「また、外国人のベビーシッターになると、日本の子どもたちが日本語を覚えられなくなります。言うまでもなく、赤ん坊はまず耳から日本語を覚えるからです。子育てのような子どもの人生を左右する重要なことを外国人にやらせてはいけません。それどころか、「子どもをむやみに保育園に入れてはいけない」と私は主張しています。子育ては親がやるべきです。「待機児童」問題が大きな行政課題になっていますが、児童が保育園を待機しているのではありません。待機しているのは会社で働きたい母親です。今、そういう正論が通じない社会になっています。

「少なくとも生まれてまもない子どもは、また、できれば三歳ごろまでの子どもは、お母さんが自分で育てたほうがいい」というと、フエミニストから批判されたりする。しかし、そのフェミニストもかつてはお母さんに育てられたのでしょう。自分は母親に育てられておきながら、周りの人たちに「母親が育てるな」とどうして言えるのか。そういう反論をできない今の政治家、あるいは保守系の知識人はだらしないと言わざるを得ません。これでは日本の社会がだんだん劣化していくのを止められません。

昔は一人の働き手で家族を支えましたが、今は夫婦二人で働かないと経済的にも支えられなくなっています。簡単に言えば、一人頭の収入が半分に減っているのです。しかし、両親がともに働かなければならないから子どもを保育園に入れるというのは、本末転倒です。母親が働かなくてもいいと言ったら極論だから、百歩譲って、少なくても三年間は育児に専念できるような社会システムにすればいいのです。そうしないと、日本人がだめになっていきます。日本の小学校が荒れているのは、母親が育児をしないからです。母親がご飯をつくらないからです。教育心理学の難しい理論は必要ないのです。」(P.206~207)

11/2ZAKZAK<「徴用工判決」で韓国致命傷 ヒト、モノ、カネ…もはや関わることがリスクに>

https://www.zakzak.co.jp/soc/news/181102/soc1811020004-n1.html

11/3ZAKZAK<韓国「徴用工判決」に米国、台湾の識者も異常性指摘 エルドリッヂ氏「約束守れない国」 黄氏「追い詰められているのでは」>

http://www.zakzak.co.jp/soc/news/181103/soc1811030001-n1.html?ownedref=not%20set_main_newsTop

まあ、韓国を甘やかしてきた勢力が悪いのでしょうね。「共産主義の防波堤」の論理は既に破綻しています。朝鮮民族は事大主義者です。強きに媚び諂い、弱きを虐めるとんでもない民族です。中国のように動物をしつけるようなやり方でしか付き合うことはできません。何せ忘恩の徒ですから。日本人とは余りにかけ離れています。日本も国際司法裁判所提訴何て悠長に構えず、できる制裁はやっていくべきです。鈴置氏の言う「韓国は米国から断交を言わせる」作戦のように、日本も早く韓国から日本への断交を言わせるように持って行きませんと。国際社会に説明できる原稿を今の内から作って置けばよい。外務省は能力があるのか?中国人・朝鮮人は嘘つき民族ですから、捏造したアピールを出される可能性がありますので、事実でキチンと反論できるようにしておきませんと。

この期に及んでも、日本企業は韓国で商売やりたいor世界のサプライチエーンを利用したいと考えているとしたら、愚かでしょう。韓国は法治国家でないことを示しました。法的安定性が望めない国でビジネスするなら、自己責任でしょう。まあ、経営者は株主総会で糾弾されればよいでしょう。

鈴置記事

文在寅大統領は「徴用工判決」翌々日の11月1日、国会で施政方針を演説したが、「判決」に言及はなかった(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

前回から読む)

文在寅(ムン・ジェイン)政権は革命政府だ。「現状」は全て打ち壊す。核を持つ北朝鮮と一体になるのだから、怖いものはない。

「歴史カード」を奪回した

—韓国はいったい、何を考えているのでしょうか。日韓国交正常化の際の合意をいとも簡単に踏みにじりました。

鈴置:驚くことでもありません。文在寅政権は革命政権なのです。国内外を問わず、気にくわないものは全て破壊します。この政権を生んだ2016年から2017年にかけての朴槿恵(パク・クネ)打倒劇を、大統領自身がフランス革命に例えています。

10月30日の韓国の大法院――最高裁の「徴用工判決」は「日本の上に君臨する」ことを宣言する“革命的”なものでした(「新日鉄住金が敗訴、韓国で戦時中の徴用工裁判」参照)。

政権に近いハンギョレの社説「『裁判取引』で遅らされた正義…徴用被害者もあの世で笑うだろうか」(10月31日、日本語版)は「法的にも日本を下に置いた」と勝利をうたい上げました。

(最高裁)全員合議体の多数意見は「強制動員被害者の損害賠償請求権は『朝鮮半島に対する不法な植民支配および侵略戦争の遂行と直結した日本企業の反人道的不法行為を前提とする慰謝料請求権』であり、請求権協定の適用対象ではない」と宣言した。

「反人道的不法行為」による個人請求権は消滅していないとする最高裁の判断は、強制動員はもちろん、韓国人原爆被害者や日本軍慰安婦被害者など他の「人道に反する不法行為」にも適用されるものとみられ、注目される。

この判決さえあれば、慰安婦合意で失いかけた「歴史カード」を取り戻し、これまで以上に日本を思う存分に叩ける――との喜びがひしひしと伝わってきます。

韓国はICJで勝てない

—では、次は個人請求権の発動ですね。

鈴置:ただ、それは現実には難しい。元・徴用工ら原告団が差し押さえようにも、今回の裁判で被告となった新日鉄住金の韓国における資産はほとんどありません。

それに差し押さえに入れば、日本政府が国際司法裁判所(ICJ)に提訴するでしょうが、そこで韓国側が敗訴する可能性が高い。

文在寅政権含め、韓国の歴代政権は日本政府と同様「元・徴用工の請求権は1965年の日韓請求権協定で完全に消滅した」との立場をとってきたからです。

中央日報の「強制徴用問題で国際訴訟に向かう日本…ICJは独の軍配を上げた」(10月31日、日本語版)はドイツの先例を引いて「韓国敗訴」の可能性を指摘しました。日本語を整えて引用します。

イタリア最高裁は2004年、戦争中に強制労働に動員されたイタリア人がドイツ政府を相手取って起こした損害賠償訴訟で原告勝訴判決を確定した。

これを不服とするドイツ政府はICJに提訴。ICJは2012年2月「イタリア裁判所はドイツの自主権を侵害した」としてドイツに軍配を上げた。平和条約で問題はすでに解決済みとの意味だ。ICJの判事15人中12人が主権免除原則により判決に賛成した。

なお、この記事の見出しに「強制」とあるのは、韓国側の用語です。日本側は「当時の朝鮮人――いわゆる半島出身の日本人は法的に日本国民だったのだから、戦争中の国民の義務として徴用された」との立場です。一方韓国は「韓日併合自体が違法だったから、徴用は『強制労働』だったのだ」と主張しています。

さらになお、今回の裁判の原告4人は徴用ではなく日本製鉄(当時)の募集に応じた人たちです。判決にもそう書いてあります。強制的に連れて行かれたわけではありません。そもそも裁判を「徴用工裁判」と呼ぶこと自体が間違っています。

中央日報は別の記事「韓国政府『歴史・未来ツートラック』慎重…日本がICJ提訴すれば外交的負担に」(10月31日、日本語版)でもICJへの提訴を取り上げ、韓国政府が苦境に陥ったと指摘しました。

ICJでの裁判は拒否できるが、国際世論戦を仕掛けられたら韓国が不利になる――との解説です。

日本のカネで財団を作れ

—韓国政府はどうやって苦境を脱出するつもりでしょうか。

鈴置:日本の政府や企業がカネを出して「徴用工財団」を作れと要求して来ると思われます。韓国紙には早くもそれを示唆する記事が載り始めています。

例えば、東亜日報の「ドイツ政府―企業、財団を作って個人被害を補償」(10月31日、日本語版)です。書き出しを引用します。

ドイツは第2次世界大戦でナチス政権が行った強制労働に対する賠償問題を解決するために、政府と企業による共同の財団を作った。170万人にのぼる被害者が補償金として計44億ユーロ(約5兆7千億ウォン)を受け取った。

なお、ドイツと比べるのは無理があります。ドイツ――厳密に言えば西ドイツは日本とは異なり、関係国との国交正常化の際に政府として補償金を支払っていないからです。

そこでドイツの例には触れず、「現実的な案」として「徴用工財団」の設立を主張する人もいます。中央日報の「強制徴用問題で国際訴訟に向かう日本…ICJは独の軍配を上げた」(10月31日、日本語版)は結論部分で、そうした専門家の意見を紹介しました。

建国大法学専門大学院のパク・イヌァン元教授は「強制徴用被害者が概略25万人と推算される」として「25万人の訴訟を司法府が行政力で処理することもできず、数十兆ウォンに達する賠償額も企業が負担するには現実的に難しい」と指摘した。

同時に、「両国が妥協できる接点を探して財団を通じて被害者の痛みを癒すのが正しい方向」と話した。

日本企業に加え、POSCOなど韓国企業が一緒になって救済のための財団を作り元・徴用工におカネを支給する――とのアイデアはかなり前からありました。

韓国企業も負担するのは本来、元・徴用工らに支払われるべきおカネを韓国政府が代わりに受け取って、浦項総合製鉄(現・POSCO)などを設立したからです。

朝日新聞は財団派?

—日本は支払い済みなのだから、韓国企業だけが財団に出資すべきでは?

鈴置:正論です。ただ、韓国側は「それでは面子が潰れるから日本企業もカネを出してくれ」と泣きついてくるわけです。韓国との融和を重視する日本人はそうした意見に耳を傾けがちです。外務省にも「日韓共同で出資する財団」を作ろうとの意見がありました。

朝日新聞では、未だにそちらに話を持って行きたいようです。社説「徴用工裁判 蓄積を無にせぬ対応を」(10月31日)の最後のくだりをご覧下さい。

日本政府は小泉純一郎政権のとき、元徴用工らに「耐え難い苦しみと悲しみを与えた」と認め、その後も引き継がれた。

政府が協定をめぐる見解を維持するのは当然としても、多くの人々に暴力的な動員や過酷な労働を強いた史実を認めることに及び腰であってはならない。

負の歴史に由来する試練をどう乗り切り、未来志向の流れをつくりだすか。政治の力量が問われている。

はっきりと書いてはいませんが、見出しと合わせると「日韓共同財団の設立により解決すべきだ」との声が、喉まで出かかっている感じです。

韓国への配慮は逆効果

—日本政府は?

鈴置:もう、相手にしない可能性が高い。「韓国の顔を立てる」などという甘い姿勢をとってきたからこそ関係が悪化した、と安倍晋三首相が考えているからです。

安倍氏は2012年夏、産経新聞のインタビューに答え、以下のように語っています。「単刀直言 多数派維持より政策重視」(2012年8月28日)から引用します。

自民党が再び政権の座に就けば東アジア外交を立て直す必要がある。過去に自民党政権時代にやってきたことも含め、周辺国への過度の配慮は結局、真の友好にはつながらなかった。

この思いは多くの日本人に共通するでしょう。私に対し「韓国に甘い顔をしたのがいけなかったですね」と言って来る日本人が相次いでいます。

その多くが昔は「日本は韓国に悪いことをしたから……」と言っていた人たちです。リベラルを気取っていた人こそが韓国を憎むようになった。

そもそも、財団を作っても根本的な解決策にはなりません。韓国人にとって「歴史カード」は「自分たちが日本人よりも上に立つ」ための切り札です。

「徴用工財団」を作れば文在寅政権の間は、問題は収まるかもしれません。が、次の政権が「この財団では不十分だった」と言い出しかねない。

21世紀に入ってから韓国は日本を下に見下すことに全力を挙げているのです(『米韓同盟消滅』第3章第2節「『反日』ではない、『卑日』なのだ」参照)。

「日韓」を無法状態に

—「慰安婦財団」は消滅しかかっています。

鈴置:その通りです。朴槿恵政権当時に日韓合意の下で設立した「慰安婦財団」が、現政権の気にくわないとの理由で事実上、消滅したのがいい例です。

「徴用工財団」を作れば、冒頭に引用したハンギョレの社説が小躍りしたように「原爆被害者財団」とか「新・慰安婦財団」を作れ、ということになるでしょう。韓国人に「歴史カード」を手放す気はないのです。

それに今回の最高裁判決は状況を根本から変えました。日韓国交正常化の際の合意の中核部分、日韓請求権協定を全否定したのです。日韓関係を定める協定が否定され、無法状態に陥ったのです。この問題を放っておいて「財団」でもないでしょう。

1965年に結んだ日韓請求権協定では国家と個人は、協定の締結後は請求権を行使できないと繰り返し明記しました。以下です。

両締結国及びその国民の間の請求権に関する問題が(中略)完全かつ最終的に解決されたこととなることを確認する。

締結国及びその国民の(中略)すべての請求権であって、同日(署名日)以前に生じた事由に基づくものに関しては、いかなる主張もできないものとする。

日本政府が韓国の個人に支払おうとした補償金を韓国政府は「すべて政府に渡して欲しい」と懇願。日本は韓国政府の意を汲んで受け入れました。

しかし将来、韓国人から「自分は貰っていない」と訴えられると懸念し、協定で「すべての請求権は消滅した」と2度も念押ししたのです。このため文在寅政権を含め、歴代政権も「元・徴用工の請求権は消滅した」との立場をとってきました。

この鉄壁の文言をすり抜けるため、韓国最高裁は詭弁を弄しました。判決は49ページに及ぶので、その要旨を翻訳しながら解説します。

「慰謝料」にすり替え

最高裁は判決で「原告(元・徴用工)の損害賠償請求権は請求権協定の適用対象か」を問題にしました。「適用対象でない」ことにすれば、被告の新日鉄住金に賠償を請求できるからです。そのうえで「適用対象ではない」理由を展開しました。以下です。

原告が求めているのは未支払い賃金や補償金ではなく、日本政府の朝鮮半島に対する不当な植民地支配や侵略戦争の遂行に直結した日本企業の反人道的な不法行為を前提とした強制動員被害者の慰謝料要求である。

請求権協定は日本の不当な植民地支配に対する賠償のためのものではなく、サンフランシスコ条約第4条に基づく韓日両国の財政的、民事的な債権、債務関係を政治的な合意により解決するものと見える。

請求権協定の第1条により日本政府が大韓民国政府に支給した経済協力基金と、第2条による権利問題の解決とが、法的に対価の関係にあるとは明らかではない。

請求権協定の交渉過程で日本政府が植民地支配の不法性を認めず、強制動員の被害の法的な賠償を原則的に否認したため、認めなかったため、韓日両政府は日帝の朝鮮半島支配の性格に関し、合意できなかった。この状況から強制動員の慰謝料請求権は請求権協定の適用対象に含まれると見るのは難しい。

要は、元・徴用工が求めているのは植民地支配に対する精神的な慰謝料であり、請求権協定の締結時に日本政府が植民地支配を謝罪していない以上、慰謝料もまだ支払われていないことになる。今、それを支払え――との理屈です。

ちなみに、ここでも職の募集に応じた人たちを「強制動員被害者」に仕立て上げてしまっています。事実認定からしておかしいのです。

韓国は法治国家ではない

—「慰謝料」問題と規定し直したのがミソですね。

鈴置:でも、そこが判決の弱点でもあるのです。それなら1965年の請求権協定の締結時に韓国政府は「精神的な慰謝料」を求めるべきだった。しかし、現政権に至るまで要求してこなかった。

そして今になって「慰謝料」を持ち出すことにより、日韓関係の法的な基盤をひっくり返したわけでもあります。

当然のことながら、河野太郎外相もここを批判しました。「河野外務大臣臨時会見記録(平成30年10月30日16時22分)」から引用します。

日本と韓国は1965年に日韓基本条約並びに関連協定を結び、日本が韓国に資金協力をすると同時に請求権に関しては完全かつ最終的に終わらせたわけであります。

これが国交樹立以来の日韓両国のいわば関係の法律的な基盤となっていたわけでありまして、今日の韓国の大法院の判決はこの法的基盤を韓国側が一方的かつかなり根本的に毀損するものとなりました。

差し押さえの危機に直面する新日鉄住金はもちろん、無法状態の韓国に進出した日本企業や日本人が今後、どんな目にあうか分かりません。河野外相はその点もクギを刺しました。

日本の企業あるいは国民がこの判決によって不当な不利益を被ることがないように韓国政府において毅然とした必要な措置をとっていただきたいというふうに思っております。

さらに、2国間の取り決めを平気で破るのなら、韓国は法治国家ではないと難詰しました。

法の支配が貫徹されている国際社会の中ではおよそ常識で考えられないような判決でありますので、韓国側には韓国政府にはしっかりとした対応を取っていただきたいと思いますし、日本としてはまず韓国政府のしっかりとした対応が行われるということを確認をしたいというふうに思っております。

政権に近い人を最高裁長官に

—文在寅政権は重荷を背負い込んだ?

鈴置:日本との間に立つ外交部は困惑していると思います。最高裁の判決を実行しないよう要求されたのですから。もし原告が差し押さえに動けば、世界から「法治国家ではない」と認定されてしまう。

ただ文在寅政権の中枢は、日韓摩擦は織り込み済みと思われます。この政権が発足した2017年、大統領は人権派として有名で、自身の考え方と近い金命洙(キム・ミョンス)氏を大法院長(最高裁長官)に任命しました。

春川(チュンチョン)地裁裁判長からの就任という異例の人事異動でした。当時から「徴用工裁判で日本企業の責任を問うための最高裁長官人事」と見られていました(日経「韓国最高裁長官に人権派の金命洙氏 徴用工裁判へ影響も」参照)。

—しかし、これでは日韓関係が完全におかしくなってしまいます。

鈴置:むしろ、それを望んでいると思います、政権の中枢部は。この政権は北朝鮮との融和を最優先しています(「北朝鮮と心中する韓国」)参照)。

すると、北朝鮮を共通の仮想敵としてきた米国との同盟が邪魔になります。米韓同盟を何とか廃棄に持って行きたい、というのが文在寅政権の本音でしょう。

そして米韓同盟は、良好な日韓関係があってこそ十分に機能します。つまり、日本との関係を悪化させることが米韓同盟廃棄の伏線となるのです。

ただ、こうした手口は韓国の保守派の一部からは見ぬかれている。政権としては自分の手を汚さず、最高裁をして日本との関係を破壊させるのがベストの解決策なのです。

本性を現わした文政権

韓国が露骨に北朝鮮の非核化の邪魔をするようになったので、米国メディアは「文在寅は金正恩(キム・ジョンウン)の首席報道官」と書き始めました(「『北朝鮮の使い走り』と米国で見切られた文在寅」参照)。

でも、この政権はそんな“雑音”は無視し、北朝鮮との共闘にオールインしています。北朝鮮の非核化を阻止したうえ、南北が一体化を進めれば「民族の核」を持つ強国として米国から独立できるのです。

文在寅政権はすっかり、その革命政権としての本性を現わしたのです。ただ、怖いのは保守派の「反革命」でしょう。

もし今、文在寅政権が「米国との同盟を打ち切る」と宣言すれば、青瓦台(大統領官邸)は大群衆に包囲され、弾劾されかねない。しかし、米国にまず「同盟を打ち切る」と言わせれば、保守派も文句は言えなくなります。

日韓関係の破壊はその一里塚です。革命政権の米国からの独立作戦は着々と進んでいるのです。

(次回に続く)

向山記事

元徴用工が新日本製鉄(現・新日鉄住金)を相手に起こした損害賠償請求訴訟で、同社に賠償を命じる判決を韓国大法院が確定した(写真:Lee Jae-Won/アフロ)

韓国大法院(最高裁)は10月30日、韓国の元徴用工4人が新日本製鉄(現・新日鉄住金)を相手に起こした損害賠償請求訴訟の再上告審で、4人にそれぞれ1億ウォン(約1000万円)を賠償するように命じる判決を確定した。

判決後、新日鉄住金と日本政府はこの問題は65年の「日韓請求権ならびに経済協力協定」(略称)で解決済みであり、本判決は極めて遺憾であるとのコメントを表明した。今後の韓国政府の対応次第では、日韓関係に深刻な影響を及ぼす可能性がある。

盧武鉉政権の見解を覆す

日本政府・企業にとって衝撃的な判決となった。というのは、「日韓請求権並びに経済協力協定」の規定に反するだけでなく、従来の韓国政府の見解とも異なるからである。

65年に、日本と韓国との間で「日韓基本条約」(略称)、「日韓請求権並びに経済協力協定」などが締結され、国交が正常化した。正常化のネックとなっていた請求権問題については、日本が韓国に経済協力することで「政治的決着」が図られた。この背景に、当時の朴正煕(パク・チョンヒ)政権側に、日本から資金供与を受けて経済建設を推進したかったことがある。

具体的な内容をみると、同協定の第1条で、日本が韓国に対して、3億ドルの無償供与、2億ドルの低利融資、3億ドルの商業借款を供与すること、第2条で、「両締約国は、両締約国及びその国民(法人を含む)の財産、権利及び利益並びに両締約国及びその国民の間の請求権に関する問題が、…(中略)…完全かつ最終的に解決されたこととなることを確認する」と規定された。

日本政府はこの規定を拠り所に、個人の請求権問題は「解決済み」との立場をとっている。同様に、韓国政府もこの協定で解決ずみとの見解を示してきた。盧武鉉政権(ノ・ムヒョン、文在寅=ムン・ジェイン=大統領は当時秘書室長)も、日本政府が同協定に基づき供与した無償3億ドルのなかに請求権問題を解決する資金が含まれているとの見解を示した。

今回の裁判でも、一審、二審は基本的に政府と同様の見解を示したが、12年5月に大法院が個人の請求権は消滅していないとの判断を示して、二審判決を破棄した。13年7月の差し戻し控訴審で高裁は、新日鉄住金に対して1人当たり1億ウォンの支払いを命じる判決を下した。新日鉄住金はこれを不服として上告。この後、5年間審理が行われなかった。

そして10月30日、大法院が新日鉄住金の上告を棄却し、判決が確定した。

大法院の見解の変化と5年間の空白の理由

今回の一連の動きには、二つの疑問が浮かぶ。一つは、大法院の見解が12年になぜ変わったのか、もう一つは、上告審で5年間審理が行われなかった理由は何かである。

大法院の見解が変わった背景に、国民による過去の問題に対する問い直しがあったと考えられる。韓国では80年代後半に民主化が進み、情報公開を求める動きが広がるなかで、過去の日韓会談関連の外交文書が公開されるようになった。これを機に、過去の政府が不問にした問題に対する問い直しが始まり、いわゆる慰安婦問題や徴用工問題が再浮上した。こうした世論に押されるかのように、65年に形づくられた日韓の法的枠組みそのものを司法が問題にしたと考えられる。日本からすれば、「ちゃぶ台返し」である。

他方、5年間審理が行われなかったのは、おそらく朴槿恵(パク・クネ)政権下で改善し始めた日韓関係への影響に配慮(政府から求められた可能性も)したものと推測される。しかし、その後の「ろうそく革命」による朴大統領の弾劾、文在寅政権の誕生(17年5月)によって状況が変わった。とくに歴史問題に対して原則的な立場を採る文在寅政権下で、慰安婦問題に関する日韓合意を再検証する作業が進められたことにより、大法院は日韓関係への影響に配慮する必要がなくなったと考えられる。

日韓経済関係に及ぶ3つの影響

今回の判決を受けて、今後相次いで同様の訴訟が起こされることが予想される。日本企業が賠償に応じなければ、韓国内の資産を差し押さえられる可能性がある(その場合、日本企業が国際的な仲裁措置を求める可能性も)。

他方、韓国政府も難しい対応を迫られる。判決後、韓国政府は司法の判断を尊重しつつも、日韓関係に否定的な影響を及ぼすことがないように取り組むと表明したが、どのような具体策を出してくるかは現時点では不明である。日本政府はそれをみて、今後の対応を決定することになる。国際司法裁判所への提訴を含めて厳しい姿勢で臨むことも予想される。

今回の判決は今後の日韓関係、とくに経済関係にどのような影響を及ぼすのであろうか。この点に関しては、以下の3点を指摘したい。

第1は、日韓の企業間関係への影響は限定的にとどまることである。

日本と韓国の企業がサプライチェーンで結びついている。日本企業は韓国企業に対して、高品質な素材、基幹部品、製造装置を供給している。東レが韓国で炭素繊維を生産しているのは、生産コストの低さもあるが、グローバルな事業活動を行っている韓国企業が顧客として存在していることが大きい。

また韓国企業も、半導体や鉄鋼製品、自動車部品を日本企業に供給している。こうしたサプライチェーンは日韓の枠を超えて、世界に広がっている。日韓企業は長年の取引を通じて信頼関係を築いているため、今回の判決がこの点でマイナスの影響を及ぼすことはないだろう。

第2は、韓国経済にマイナスの影響が及ぶことである。

まず、日本企業による投資が減少する。訴訟対象になる企業を中心に、韓国での投資計画の先送りや新規投資の見送りが生じるほか、韓国の法的安定性への信頼低下により、日本から韓国への新規投資が減少する可能性がある。

日本からの投資は近年、素材、部品、研究開発分野に広がっており、韓国の産業高度化に寄与しているため、日本企業による投資減少の影響は大きい。

つぎに、観光への影響である。判決後、日本企業の韓国からの撤退、韓国との断交を求める投稿がネット上で増え始めた。日本国内で「嫌韓ムード」が広がれば、日本から韓国への観光客数が減少する可能性がある。中国からの観光客が本格的に回復していない状況下で、日本人観光客が減少すれば、韓国の観光業界には大きな痛手となる。ちなみに、日本の訪韓者数は今年に入り増加基調で推移し、1~9月は前年比21.9%増であった。

韓国ツートラック戦略に危機

第3は、日韓の政府間協力の動きが停滞することである。

文在寅政権発足後、慰安婦問題に関する日韓合意(15年12月)が「白紙化」されたのに続き、今回の判決が出たことにより、日本政府の韓国政府に対する信頼は著しく低下したと考えられる。今後関係が悪化すれば、各分野における政府間協力の動きが停滞するのは避けられないだろう。米国の保護主義の強まりや利上げなどを背景に、新興国では資金流出が始まった。韓国でも、日本との間で通貨スワップ協定を再締結して、セーフティネットを強化すべきとの意見が出ているが、その実現が遠のくことになる。

さらに、政府間関係の悪化は民間レベルの交流にも少なからぬ影響を及ぼすであろう。文在寅政権は歴史認識問題に関して原則的な立場を採る一方、「ツートラック戦略」に基づいて、日本との間で経済協力(第4次産業革命での連携や人材交流など)を進める方針であるが、それが難しくなる。

韓国経済に及ぶマイナスの影響は、おそらく韓国政府が想定している以上のものとなる。このような事態に陥ることを避けるためにも、韓国政府には従来の政府見解に基づいて、政府が事実上個人の賠償に応じるなど、日本企業に実害が及ばない策を講じることが求められる。

向山 英彦(むこうやま・ひでひこ)

日本総研 調査部 上席主任研究員
中央大学法学研究課博士後期過程中退。 ニューヨーク大学で修士号取得。 専門は、韓国経済分析、アジアのマクロ経済動向分析、アジアの経済統合、アジアの中小企業振興。

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