『物別れの米朝会談、溝が埋まらなかったウラン濃縮施設』(3/6日経ビジネスオンライン 宮本 悟)、『米朝会談の署名阻んだ金日成流の交渉術』(3/5日経ビジネスオンライン 森永輔)について

3/5希望の声<“翻白眼”蓝衣女记者再度亮相中共两会=白目をむいたブルージャケットの女性記者は再度中共の両会に姿を現す>中共の両会で、大陸のメデイア人の劉戈がウェイボーに、昨年の両会で白目をむいて人気を博した上海第一財経記者の梁相宜が両会に今年も現れた写真をアップした。イメージは変わっていた。だがこの写真は先日劉戈によって削除された。

梁相宜は上海第一財経をクビになっていなかったようで、それを示すためにも両会に出たのでは。

2018年の白目をむいた写真

https://www.soundofhope.org/gb/2019/03/05/n2700271.html

3/5希望の声<难掩重重风险 李克强念报告满头大汗=リスクを覆い隠すのは難しい 李克強は報告するときに大汗 >3/5李克強が全人代で2019年政府活動報告をするときに、大汗をかき度々ハンカチを出して汗を拭った。眼鏡にまで汗が流れた。台湾メデイアは「中共は経済崩壊と政権が動揺するリスクを避けるため、粉飾したのでは」と考えている。風険(=リスク)の二文字が今回の報告で多く使われている。

嘘つき民族が毎年嘘の報告をするセレモニーです。そもそも全国人民大会という呼称インチキで誰が国民から選挙で選ばれているのですか?全員共産党の指名した人物で、反対投票しない連中です(反対票がゼロではおかしく見えるので、中共が意図的に反対票が出るようにしています)。それでも少しは良心を持っていれば、体に異変となって現れるという事でしょう。習は李の汗を見て「こいつは上にはなれない」と思ったに違いありません。「騙す方が賢く、騙される方が馬鹿」なのが中国人の基本的価値観なので。日本のメデイアは汗を流しているのは写さないのでは。日本政府の都合の悪いようなところはわざわざ切り取って報道するくせして。左翼・リベラルは如何に真実の報道からかけ離れているかです。

https://www.soundofhope.org/gb/2019/03/05/n2700052.html

3/6阿波羅新聞網<金正恩急了!进出口全面暴跌 北韩经济已崩盘边缘=金正恩は焦り! 輸出入は全面的にダウン 北朝鮮経済は崩壊の瀬戸際>北朝鮮経済は崩壊?分析では「国際的制裁が功を奏し、北朝鮮経済はすでに崩壊の瀬戸際にある。2018年の輸出入総額は大幅にダウンし、中国との貿易赤字は歴史的記録となった。《The Korea Times》によれば、「第2回トランプ・金会談は破談となった。お互いの主張を譲らなかったためである。平壤当局は絶えず米国に制裁の一部解除を要求して来た。これは北の経済情勢が悪化している紛れもない証拠である。2018年北から中国への輸出は2.2億$、2017年と比べ87%も減り、2016年と比べれば96%減である。この他、中国からの輸入も1年前と比べ33%減り、22.4億$である。2018年は北にとって中国との貿易赤字は歴史的記録を創った。これは統計を取り始めてからの最高の記録である」と。

https://www.aboluowang.com/2019/0306/1255619.html

宮本氏の記事は、何時読んでも納得できます。今回の会談の目的は終戦宣言でなく、制裁解除にあったのは、上の中国記事を読めば分かります。如何に北の経済がピンチに陥っているかです。中国への輸出が前々比▲96%というのでは壊滅では。輸出を減らしてと言うか、制裁で輸出できないのかもしれませんが、国内消費に回しているのかもしれません。外貨は稼げないことになります。公式統計ですから、裏で瀬どりや何やらがあるのかもしれませんが、国際的な監視の目が厳しい中では大々的にはできませんので、相当苦しくなっていると思われます。中国にとって北への持ち出しが増えていけば、パキスタンやベネズエラのように焦げ付き債権となるだけです。まあ、中国国内でも焦げ付きは沢山あるでしょうから徳政令でも出すのでしょうか?外資はなぜ逃げないのか不思議でなりません。

武貞氏の論調は毎日新聞の鈴木琢磨氏と同じく、朝鮮ファーストです。宮本氏の言うポリフェッサーでしょう。日本人の拉致問題にさしたる関心もなく、日本を朝鮮に関与させる方向で論陣を張っているようにしか見えません。マスコミに登場するのが多いので、彼らの言説を鵜呑みにしないで、自分の頭で考えませんと。どこに自分の家族以上に隣の家族を考える人がいますか?もしそうだとしたら、先ず配偶者から「できている」と疑われるのでは。日本ファーストでない彼らの出自自体も疑われます。そのように思われても仕方のない話ばかりしています。左翼・リベラルは世界市民を標榜しますが、その前に家族を大事に、子供を立派な大人に育てることが先でしょう。それもしないで、一気に拉致をした犯罪国家を支援するとはどういう頭の構造をしているのか疑います。左翼・リベラルは法治国家を破壊しようとしているのでしょう。

宮本記事

米朝首脳会談を終え、ベトナムを発つ金正恩(写真=AFP/アフロ)

2019年2月27日に始まった第2回米朝首脳会談の冒頭で米大統領のドナルド・トランプは、「これまで私たちは前進してきた。最大の成果は良好な関係だ」と語った。北朝鮮の最高指導者である国務委員会委員長の金正恩(キム・ジョンウン)も「皆が喜ぶ立派な結果を出せると確信しており、そうなるように最善を尽くす」と語っていた。

しかし、この会談は成果なく物別れとなった。28日の拡大会議の後に予定されていたワーキング・ランチや合意文書署名式はキャンセルになった。その後、ホワイトハウスは米朝が合意に至らなかったことを発表した。予定よりも早くホテルに帰ったトランプは記者会見で、「お互いに隔たりがあった」と結ぶことになった。

もちろん、これで米朝関係が終わったわけではない。仕切り直しではあるが、実務者協議は始まるであろう。ただし、これから多少の前進があったとしても、やはり大きな合意は期待できない。

想定内であった物別れ

米朝首脳会談が物別れに終わったことについて、想定外とか、驚いたとか、予想とは異なるという声が上がっているが、日本の国際政治学者の間ではそれほど驚きの声は上がっていないのではないだろうか。合意があっても、大したものは出ないことは国際政治学者の間ではおおよそ共有された認識であったと思われる。むしろ懸念の声があったのは、トランプだから勢いで安易な妥協をしないだろうかというものであった。逆にトランプだから何も妥協しないという懸念もあったのである。

非核化と制裁解除の取引はもともと成り立ちにくい。非核化の代わりに要求しようと北朝鮮が考えていたのが、2018年10月2日に朝鮮中央通信が個人論評で発表したように終戦宣言でないことは分かっていた。それは制裁解除であることが想定されていた。

しかし、制裁解除は無理な要求である。米国は、制裁をしたから北朝鮮が非核化に応じたのであり、制裁をやめれば北朝鮮は非核化しなくなると考えている。だが、北朝鮮は制裁を解除しようとしない米国を信用できないので非核化できない。このジレンマがある以上、構造的に成立しにくい取引なのである。もともと成果を期待できない首脳会談であった。

たしかに一部の朝鮮半島ウォッチャーの間では楽観的な観測が流れていた。これは、もしかしたら韓国の政府関係者や進歩系メディア、ポリフェッサー(政治・社会的な権力や地位を追求して政治活動に没頭し、研究しない大学教授や学者)たちのバイアスに満ちた情報が流されたのかもしれない。韓国の現政権は、制裁緩和を前提とした南北交流の構想を練っているから、韓国政府を支持する進歩系メディア、ポリフェッサーたちも楽観的な観測を流していた。

しかし、核問題では、韓国は当事国ではなく蚊帳の外である。その楽観的な主張にはほとんど根拠がなく、ただの夢でしかない。バイアスが入った情報をうまく処理することこそが、研究者の腕の見せ所である。韓国でも現政権下でポリフェッサーではない研究者たちは比較的冷静な発言をしていることが多い。

核の平和利用は譲れない

米朝首脳会談に対する楽観的な見方の根拠になっているのは、金正恩が非核化の「意思」を持っているということであった。だが、これはどうでもよい。米朝首脳会談は朝鮮半島の非核化についての交渉でもあるので、非核化の意思がなければ金正恩が交渉に出てくるはずもない。問題となるのは、非核化の「意思」ではなく、非核化の「意味」である。ただし、米朝の間では、非核化の意味について合意をしていない。

2019年1月1日に金正恩が発表した「新年辞」から、北朝鮮で考えられている非核化の意味や範囲を理解できる部分がある。金正恩は「原子力発電能力を展望性あるよう助成」すると主張した。つまり「核の平和利用」は放棄しないことになる。それ自体は祖父である金日成(キム・イルソン)以来の北朝鮮の方針であるから驚きはしない。

ただし、「核の平和利用」は放棄しないとなると、すべてのウラン濃縮施設を破棄することはできないことになる。北朝鮮は寧辺(ニョンビョン)で軽水炉を建設中であり、それが続いていることを2018年11月22日に国際原子力機関(IAEA)が報告している。その軽水炉の核燃料となるのが低濃縮ウランである。

北朝鮮にはウラン鉱山があるので、ウラン濃縮施設があれば、基本的に軽水炉の核燃料を自国内で生産できることになる。原料から完成品までを一貫して国内で生産するのは、北朝鮮の経済政策である「自立的民族経済建設路線」(自力更生とか主体化などで表現される)に合致する。もちろん、先進国では自国内で何もかも生産するような非効率な経済政策は推進しない。

2018年9月19日に行われた南北首脳会談の「9月平壌共同宣言」で北朝鮮が永久に核施設を破棄すると宣言した寧辺には、ウラン濃縮施設も建設中の軽水炉もある。「新年辞」の方針の通りだと、寧辺のウラン濃縮施設や建設中の軽水炉は破棄できないことになる。かつて朝鮮半島エネルギー開発機構(KEDO)が建設していた咸鏡南道新浦(ハムギョンナムドシンポ)市の琴湖(クモ)地区にある軽水炉はまだ廃墟のままであるので、寧辺に建設中の軽水炉は特に破棄できないはずだ。寧辺のウラン濃縮施設は破棄できたとしても、他の場所にあるウラン濃縮施設を維持しようとするだろう。

金正恩はウラン濃縮の道は捨てない

「新年辞」の通りだと、米国がウラン濃縮施設や「核の平和利用」の破棄を要求しても、北朝鮮は受け入れられないことになる。第2回米朝首脳会談が物別れに終わった原因の一つは、寧辺以外の核施設の破棄をめぐる米朝の見解の違いであった。会談後の記者会見でトランプは「寧辺の施設が巨大であっても我々の望みには不十分」と語った。また、米朝首脳会談の拡大会議に参加した北朝鮮の外務大臣である李容浩(リ・ヨンホ)も、会談後の記者会見で「米国側は、寧辺地区の核施設を廃棄するほか、もう一つしなければならないと最後まで主張」したと語った。寧辺以外の核施設に、ウラン濃縮施設が含まれることをトランプは認めている。

北朝鮮がウラン濃縮施設を破棄しないとなると、高濃縮ウランを使った核爆弾を製造する危険性は常に付きまとう。イランと異なり、北朝鮮はすでに核爆弾の製造に成功している。米国がウラン濃縮施設の破棄を求めるのは当然であろう。これに対して李容浩は、2018年8月8日にイランを訪問してアリ・ラリジャニ国会議長と対話した際、「米国が我が国に対する敵意を捨てることはないと分かっており、我々は核技術を保持する」と語ったと報じられている。現在のところ、北朝鮮は、すべてのウラン濃縮施設の破棄を受け入れる準備があるようには思えない。

制裁の「全面的な解除」か「一部解除」か

米朝が合意できなかった要因として、もう一つ問題になっているのが、北朝鮮側が求めたのが対朝制裁の「全面的な解除」か「一部解除」かである。トランプは北朝鮮が対朝制裁の「全面的な解除」を求めてきたと言っている。ただし、李容浩は「国連制裁決議11件のうち、2016年から2017年までに採択された5件、そのうち民需経済と人民の生活に支障を与える項目」を「部分的制裁解除」として提案したと語った。

北海道大学の鈴木一人教授によるGLOBE+の論考や2019年3月2日付ニューヨークタイムズ(電子版)の記事によると、李容浩の方が正確だ。2006年からの北朝鮮に対する国連安保理制裁決議のうち、北朝鮮側が解除を要求したのは、多くとも2016年以降の決議だけのようである。さらに、セカンダリー・サンクション(二次的制裁)によって国連安保理制裁決議の罰則の役割を果たすアメリカの独自制裁の解除は要求していない。北朝鮮が要求したものは全面的な制裁解除とは言い難い。

これは鈴木一人教授が指摘するように、制裁に対するトランプ政権の認識が北朝鮮側とは異なることに起因すると考えられよう。北朝鮮側が解除を要求した国連安保理制裁は、トランプ政権が最も力を入れていたため、全面的な制裁の解除とトランプは受け取ったのかもしれない。

トランプ政権になってから北朝鮮に制裁を科す国連安保理制裁決議は4つ採択された。それに比べると、トランプ政権になって新たに加えたアメリカの独自制裁は少ない。トランプが対朝制裁のためだけに署名した大統領令は、北朝鮮と取引する海外企業に制裁する非常に強力な内容ではあるが、一つしかない。

北朝鮮が2016年以降の国連安保理制裁の民生部門に限った制裁解除を求めたのは、それが北朝鮮の経済に最も悪影響を及ぼしたためと考えて間違いないだろう。実際に北朝鮮に対する国連安保理制裁は、2016年3月2日の決議2270号で大きな変化があった。核・ミサイルに関する特定の取引や人物に的を絞って制裁を科すスマート・サンクションから、北朝鮮の外貨獲得の手段を絶つという包括的制裁に力を入れるようになったのである。北朝鮮に科せられた制裁については、北朝鮮側がよく理解しているようだ。

ただし、李容浩もいい加減な面がある。2016年から2017年までに採択された北朝鮮に制裁を科す国連安保理決議は5件ではなく6件である。どういう数え方をしたのかよく分からない。また、国連安保理制裁決議とは、正確には、制裁措置の根拠が「国連憲章第7章41条(非軍事的措置)」に基づく決議のことを意味する。こうした決議は2006年から9件しかない。おそらく、正確には制裁決議ではない1695号(2006年7月15日)と2087号(2013年1月22日)を含めて数えたのであろう。

交渉の本丸は「非核化と安全保障」

非核化の代わりに北朝鮮が求めているのは、2018年6月12日にシンガポールで開催された第1回米朝首脳会談での共同声明にも記されている安全保障である。制裁解除は、本来は北朝鮮が非核化の代わりに求めているものではなかった。第2回米朝首脳会談の後の記者会見でも李容浩は、「非核化措置を取っていくうえで重要な問題は、安全保障の問題であるが、米国がまだ軍事分野の措置をとるのは負担だろうと思い」「部分的制裁解除」を求めたと語った。

北朝鮮が非核化の代わりに安全保障ではなく制裁解除を求めたのは、李容浩が言うような米国に対する配慮ではあるまい。非核化の代わりに制裁解除という取引を持ち出したのは、北朝鮮の国内で制裁解除を求める圧力が大きくなったからであろう。制裁解除を米国から引き出すために北朝鮮が破棄できるものは、非核化の対象として米国が最も重要視する核爆弾ではなく、老朽化が進んでいる寧辺の核施設だったのであろう。そもそも寧辺の核施設の破棄は、以前に何度か議題に上がっていた。北朝鮮にとってはハードルが低い取引だ。

今後、核爆弾などを破棄するためには、安全保障を求めてくるだろう。もちろん、非核化と安全保障の取引が成立しやすいわけではない。だが、最終的に北朝鮮が、核爆弾を破棄する見返りとして、北朝鮮の安全保障を求めてくることは間違いない。たとえ、非核化と制裁解除の取引が何らかの形で落ち着いたとしても、次は非核化と安全保障の取引が待っている。そして、これが本来の米朝首脳会談の非核化交渉である。

森記事

第2回の米朝首脳会談が2月27~28日に行われ、合意文書に署名することなく終了した。朝鮮半島情勢に詳しい武貞秀士・拓殖大学大学院特任教授は、北朝鮮が「パルチザン思想に基づく賭け」に出たことが原因と分析する。一方、日本の外交にとって、北朝鮮との国交正常化に向かうチャンスになる可能性がある、と展望する。

(聞き手 森 永輔)

合意文書への署名なく首脳会談が終了した後、記者会見に臨む北朝鮮の崔善姫(チェ・ソンヒ)外務次官(写真:AFP/アフロ)

—第2回の米朝首脳会談が2月27~28日に行われ、合意文書に署名することなく終わりました。会談前に、結果を楽観視する報道が相次いでいたので、驚きました。米CNNは「(米朝首脳が)28日、共同声明に署名する見通しであることがわかった」と報じていました。

武貞:まったく予想外でしたね。28日朝までに、米朝双方が発信していたメッセージを見ていると、共同声明にいくことを示唆していました。ドナルド・トランプ米大統領は会談後「文書は準備が整っており、署名はできた」と語っています。北朝鮮の金正恩委員長も28日午前まで「私の直感では、良い結果が生まれると信じる」と楽観的な見方を示していました。

武貞 秀士(たけさだ・ひでし)氏
拓殖大学大学院特任教授
専門は朝鮮半島の軍事・国際関係論。慶應義塾大学大学院博士課程単位取得退学。韓国延世大学韓国語学堂卒業。防衛省防衛研究所に教官として36年間勤務。2011年、統括研究官を最後に防衛省退職。韓国延世大学国際学部教授を経て現職。著書に『韓国はどれほど日本が嫌いか』(PHP研究所)、『防衛庁教官の北朝鮮深層分析』(KKベストセラーズ)、『恐るべき戦略家・金正日』(PHP研究所)など。

準備していた合意文書は、朝鮮戦争の終戦宣言と連絡事務所設置を示唆する文言があったとしてもおかしくありません。北朝鮮が求める終戦宣言は米国にとってさほどハードルが高い事項ではありません。米国のスティーブ・ビーガン北朝鮮政策特別代表は1月31日にスタンフォード大学で講演し「トランプ大統領にはこの戦争を終わらせる用意がある」と発言していました。

連絡事務所も、実質的にその役割を果たすものがかつて存在していました。米国務省のケネス・キノネス北朝鮮担当官(当時)は1992年から97年の間、国務省で核交渉に直接かかわった時期にピョンヤンに滞在しながら北朝鮮と交渉していました。当時はこれを「連絡事務所」とは呼びませんでしたが、実質的にはその役割を果たしていました。

これら二つの事項を盛り込むことで、昨年6月12日に実施した第1回首脳会談より前進したイメージを作ることができます。

ただし非核化をめぐる表現はあいまいなままだったでしょう。実務者協議や閣僚協議を通じて、両国はそうとう突っ込んだやりとりをしてきました。米国はこれまで明らかになっていなかったカンソンのウラン濃縮施設の存在まで指摘しました。核関連施設のそれぞれについて、申告するか否か、査察を受け入れるか否か、廃棄するか否か、見返りとしてどのような制裁緩和を与えるかと綿密に話し合った。その結果、溝が埋まらないことが再認識された。

ならば、首脳会談を開かなければよいわけですが、実際に会い、合意文書に署名するニーズが双方にありました。トランプ大統領は、南北関係が良好な関係にあり、米国抜きでの経済協力などが進むのを苦々しく思ってきました。ここにくさびを打ち込みたい。特に3大プロジェクト――①開城の工業団地の再開、②金剛山の観光事業の再開、③南北縦断鉄道の開通――を米国は警戒しています。

加えて、側近だった顧問弁護士のマイケル・コーエン氏が米議会でロシアゲート疑惑をめぐってトランプ大統領に不利な証言をしました。同大統領は外交で成果を上げ、国民の視線をこれらから反らしたかったでしょう。

北朝鮮は、こうした時期だからこそ、経済制裁の完全解除を実現するビッグディールへの布石が打てると踏んでいたのです。

よって、何もなければ、両首脳は準備していた文書に署名していたと思います。

金正恩が仕掛けた“ハプニング”

しかし、会談2日目の午前の拡大会議の席で、このビッグディールをにらんだ北朝鮮が“ハプニング”を仕掛けました。そうでなければ、それまで双方が宥和的な姿勢をみせていたことの説明がつきません。

—ハプニングですか。

武貞:ええ。米国にとってはハプニング、北朝鮮にとっては周到に計算した賭け。

署名する公式文書とは別に、口頭で「経済制裁の一部解除を期待している。ただし、その先では、全面解除を急いでほしい」といった話をし、それを認めさせる言質を取ろうとしたのでしょう。これを米国は「北朝鮮は制裁の全面解除を求めた」と解した。米国にとって、寧辺(ニョンビョン)の核施設の廃棄と制裁の全面解除は成り立つ取引ではありません。これはマイク・ポンペオ国務長官の基本路線でした。そこで、交渉の席を立つことを決めた。

—強硬派のジョン・ボルトン大統領補佐官(国家安全保障問題担当)が大きな役割を果たしたとの見方があります。

武貞:私はそうは思いません。トランプ、ポンペオ、ボルトンの3氏が一致して決断したと思います。あえて言えば、意思決定に関して、トランプ大統領やポンペオ国務長官の方がボルトン氏よりも大きな権限を持っています。

祖父・金日成から受け継いだ交渉術

北朝鮮はこれまでも、実現したい条件を交渉の最後に持ち出し、それを実現させる交渉術を駆使してきました。北朝鮮にとって「交渉」は「闘争」と同義です。相手の弱みを見つけ、交渉の土壇場で奇襲のように攻撃を繰り出す。これは金日成(キム・イルソン)が抗日パルチザンを率いていたころからのお家芸です。そして彼の孫である金正恩委員長は、これを引き継いだ。

2000年に韓国の金大中(キム・デジュン)大統領(当時)と北朝鮮の金正日(キム・ジョンイル)総書記(同)が南北首脳会談を行った時も同様のことがありました。共同宣言案と言われて事前に一部マスコミに配布されていた文書と、実際に署名され発表された文書がかなり違うものだったのです。署名された文書は、「同じ民族同士」「統一をめざして協力」というニュアンスを前面に出した内容でした。「同じ民族同士」「統一をめざす」というのは北朝鮮が建国以来の願いとしていたものです。ある人は「主体(チュチェ)思想*の香りがする共同宣言だ」と形容しました。その直前に南北の最終合意が難航して、6~7時間、膠着状態に陥り、深夜になってようやく発表されたものでした。

*:金日成が唱えた、北朝鮮及び朝鮮労働党の指導指針。政治、経済、国防の自主が柱

金大中大統領は当時、韓国内で大きな期待を受けており、妥結せずに帰国するのは難しい状況にありました。こういう時は交渉経過が国民にオープンになっている側の方が融通が利かない。それゆえ金大中は北朝鮮案に合意せざるを得なかったのです。

今回も北朝鮮は、先ほどお話しした、トランプ大統領を取り巻く環境から考えて、米国は「制裁の全面解除案」に同意せざるを得ないと計算し、賭けに出たのだと思います。

米朝双方が驚きを隠せず

制裁の完全解除を持ち出された米政権は驚いたでしょうね。それは、トランプ大統領の記者会見の様子から察することができます。冒頭で、「北朝鮮は制裁の完全な解除を求めた」と発言しました。

しかし、北朝鮮の計算に反して、米政権はこれを蹴った。交渉に出席したのがトランプ大統領だけだったら署名していたかもしれません。しかし、ポンペオ国務長官とボルトン大統領補佐官が同席しています。

米国が席を立ったことに、今度は北朝鮮側が驚いたことでしょう。その後の関係者の反応がそれを表しています。3月1日朝の記者会見に姿を見せた崔善姫(チェ・ソンヒ)外務次官は顔面蒼白で、発言はそれまでの力強さがありませんでした。

その崔善姫外務次官が「金正恩委員長は『非核化に対する相応の措置がなければ「新たな道」を模索せざるを得ないと述べた』」とし、次の米朝首脳会談の開催は難しいとほのめかしたのに対し、北朝鮮国営の朝鮮中央通信(KCNA)は同日、金正恩委員長はトランプ大統領と「再び会って交渉を続けると約束した」と報じました。発言に統制が取れていませんでした。

北朝鮮は、トランプ大統領を御しやすい交渉相手と見込んでいたが、同大統領は意外と筋を通して北朝鮮に非核化を迫ったわけです。

痛手を負ったのはトランプ大統領

—米国民はトランプ大統領の決断をどう評価するでしょう。

武貞:トランプ大統領にとってはやはり痛手だったでしょう。これだけ時間と労力をかけて交渉してきたのに、共同声明はなし。これは外交上のマイナスです。次の大統領選をにらんでもマイナスポイントでしょう。したがって、トランプ大統領は交渉を継続する意思をすでに表明しています。

—金委員長の国内での立場に影響を与えるでしょうか。「威信を失った」との見方があります。

武貞:ダメージは大きくはありません。北朝鮮には国の外交を批判する世論はありません。朝鮮中央テレビも労働新聞も北の交渉戦術がまずかったとは言えないし、書けないでしょう。もちろん共同声明をお祝いしようと思っていたのにできなくなったのは気分の悪いことでしょうが、深刻なダメージではありません。

トランプ大統領が思いのほか手ごわい相手だったので、それを踏まえて戦略を練り直すことになるでしょうね。

制裁緩和をビジネスチャンスにしたい中国

—米朝の一連のやりとりは、中国にとってはどのような意味を持つでしょう。

武貞:マイナス面が2つ、プラス面が1つあると評価しています。マイナス面の第1は経済制裁の緩和に道筋をつけられなかったこと。中国は北朝鮮からの資源輸入を制裁前の状態に戻したいのですが、これがお預けになりました。北朝鮮の資源開発、例えば茂山の鉄鉱石。これは東アジア最大の鉄鉱山で、韓国の鉄鉱石輸入量の100倍に相当する埋蔵量があると言われています。ここの独占採掘権を中国が握っている(「仕切り直しの米朝会談、完全非核化は出口に?!」)。

ちなみに北朝鮮とのビジネスチャンスには米国の投資家も期待しています。ジム・ロジャーズ氏は「今後10年、20年は朝鮮半島に熱い視線が注がれるだろう」と発言しています。

第2のマイナスは、米国が北朝鮮に対し毅然とした態度で「ノー」と言ったことです。北朝鮮の非核化が米国主導で進むことを中国は面白く思っていません。今回米国が取った態度に気分を害したことでしょう。

その一方で、中国の存在が再認識される機会になったことはプラスです。「やはり、北朝鮮を説得できるのは中国しかない」ことを改めて示すことにつながりました。

文在寅大統領は米朝の仲介役に固執

—米朝交渉の経過を受けて、韓国はどう考えるでしょうか。

武貞:残念と思う一方で、チャンスがやってきたと考えているでしょう。韓国は経済制裁が緩和され、3大プロジェクトを再開できるというシナリオを描いていました。これがダメになってしまいました。

チャンスとは、米朝間を仲介・仲裁する役割を果たすチャンスです。文在寅(ムン・ジェイン)大統領はこの役割を果たしたいと考えている。具体的には、まず南北首脳会談を再び開こうとするでしょう。動機は十分にあります。韓国は、南北関係が改善したから米朝首脳会談が実現したという論理を一貫して主張しています。そして、米朝首脳会談が再び必要だと説得を試みるでしょう。

米国に対しては、経済制裁の緩和を求めると思います。先の3大プロジェクトの実行の必要性を再び説く。

ただし、トランプ大統領は韓国のこの姿勢を嫌がっています。韓国が昨年のピョンチャン五輪以降、米国との相談なく南北関係を緊密にしている。「これはやりすぎだ」と折に触れてメッセージを発しています。

米国は韓国に厳しく接するでしょう。米国内には「南北関係がうまくいっているのであれば、米国民が払った税金を使って韓国を防衛するは必要ない」との考えがあります。トランプ大統領は昨年、韓国に駐留負担の大幅な増額を要求しました。交渉は難航した末、年間8億ドルから10億ドルに上がったとされています。2018年末、3月に予定されている米韓演習「フォール・イーグル」や「キー・リゾルブ」を縮小する見通しを発表していたのもこの考えに沿ったものです。

非核化の進展、半島統一とリンク

—非核化の交渉は今後進展するでしょうか。いつ、どのような条件が整えば進みますか。

武貞:米朝の交渉は継続するでしょう。両国が決定的な不信感を持ったわけではありませんから。

加えて、交渉を継続しないと、北朝鮮による核開発がさらに進んでしまいます。トランプ大統領は今回のハプニングを機に北朝鮮に非核化の意思がないことを理解しました。「以前と変わらない。核兵器は容易に放棄しない。それでも制裁の全面解除を望んでいる」と述べています。

北朝鮮が核兵器を捨てることはないでしょう。国家目標と軍事戦略の根幹にあるわけですから。北朝鮮が核兵器にこだわるのは、米国が介入できない状態を作り、北朝鮮主導で戦争を経ないで朝鮮半島を統一したいからです。少なくとも、これが実現するまで、もしくは、南北関係が一層改善し、米韓同盟が解消され(核の傘が取り除かれ)、在韓米軍が撤収し、米朝不可侵条約が締結されるまで、核兵器の放棄はあり得ないでしょう(関連記事「仕切り直しの米朝会談、完全非核化は出口に?!」)。

日朝国交正常化のチャンスがめぐってきた

—非核化が進まないということは、日本にとって良い方向には進まないということですね。

武貞:非核化が進まないのは困ります。しかし、安倍晋三首相はこの機会を日本のために生かそうとしています。トランプ大統領と電話会談した後、すぐに日朝首脳会談に言及しました。これは正解です。北朝鮮は米朝協議が難航するようになれば日本との関係改善をてこに、米国を交渉の場に引き出そうとする可能性があります。日本にとってのチャンスです。

北朝鮮が、田中実さんらが北朝鮮で結婚して暮らしているとの情報を日本政府に伝えていた話が何度か報道されました。これは拉致問題についての新しい事実であり、日本と交渉する意思があることを示すシグナルかもしれません。

—日本はこれを利用して拉致問題の解決を進めるべき、というわけですね。

武貞:拉致と核、ミサイル、そして国交正常化です。安倍首相は今年1月の施政方針演説で日朝国交正常化に触れました。

日朝は膠着状態から脱するチャンスです。「東京オリンピックに関する情報をやりとりするために連絡事務所を置こう」と提案すれば、応じてくる可能性は十分にあります。

日朝対話が始まれば韓国の文在寅大統領も現在の「日本パッシング戦略」――北朝鮮をめぐる問題において日本に役割はないと喧伝する――を見直さざるを得なくなるでしょう。同大統領は三一節での演説で徴用工と慰安婦の問題に言及しませんでした。そして、日本との協力関係に触れた。今回の米朝首脳会談を機に流動的になった朝鮮半島情勢の今後を考えての発言だと評価しています。

日本と北朝鮮の関係についても、日本と韓国との関係についても、日本にとって良い機会がめぐってきたと言えるでしょう。これを生かせるかどうかは政治家の英知にかかっています。政府統計が正しいとか間違っているとかに、政治リソースを消費している時ではないでしょう。

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