『金正恩の耳元でつぶやくトランプ 「イランとつるむな」「イスラエルに刃を向けるな」』(9/30日経ビジネスオンライン 鈴置高史)について

先ずは、昨日のブログに続き、「希望の党」の論評から。

9/29JBプレス池田信夫氏<なぜ民進党は小池百合子氏に「身売り」したのか 「吸収合併」で政党をリセットする政治的イノベーション>

http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/51212

9/29藤岡信勝氏のfacebookから。「9月28日は日本の政治にとって画期的な、記念すべき日だった。民進党という、反体制・容共政党が崩壊した日だったからだ。衆議院が解散すると同時に、野党第一党の民進党も事実上解散してしまった。前原代表だけは残務整理で残り、民進党は形式的にはまだなくなっていないかのようだが、それはただの移行過程にすぎない。菅直人、辻元清美も含む全議員が賛成し、つまり誰一人反対する者もなく、満場一致でみずから解党して消滅し去った。集団自殺のような光景だ。

これで米ソ冷戦期の産物で、負の遺産として日本政治のメインステージにデンと居座っていた容共政党がなくなる。これはまさに歴史的な、実に凄い出来事だ。こういう角度からの論評があまり見られないのは不思議だ。我々が目にする政治評論は、あまりに目の前の細々とした出来事に拘束されていて、大きな視野を見失っているように思える。

1990年代以降の日本政治を振り返ってみよう。そもそも民主党は鳩山由紀夫がつくった政党で、その機能は選挙互助会だった。綱領もない。つくろうとすると分裂するから長いことつくらなかった。その後民進党にかわったが、民主党も民進党もその客観的な役割は社会党と同じだった。その証拠に、2015年の安保法制騒動の中心になった。日本の政治の最大の課題は、国民の生命と財産の安全の確保だが、そのための政策に絶対に反対する政治的DNAを持った勢力が政界に根を張っていたのだ。

今回の小池新党もまさに選挙互助会だが、客観的機能は政界からの容共政治家の排除である。憲法と安全保障問題で左翼思想の人物は受け入れない、と小池は旧民進党議員受け入れの基準を明示している。昨夜(28日夜)前原から小池に、民進党から受け入れて欲しい立候補希望者の名簿を渡した。これを全部認めるというつもりは「さらさらない」と今朝のぶら下がり記者会見で小池は断言した。

今後のことはわからない。しかし、事態は、小池党首の国政選挙出馬を待望する声が大きくなり、10月5日の都議会終了後、立候補するという流れで進む可能性が高い。総理大臣になること以上に重要な案件はない。メディアは都政を放り出すのは無責任だと気違いのように批判するだろうが、その逆風が反対に有利に作用することもありうる。選挙結果は、希望の党だけで過半数をとることは難しい。他方、自民党も相当の議席を減らすだろうが、必死にがんばって、自公で過半数を維持するだろう。結果として、北朝鮮危機という国難に対処するために、大連立政権をつくるかもしれない。

結局、小池新党は、日本で初めて、保守二党体制が実現するきっかけになる。日本の政治は、自民党、希望の党、公明党、共産党の4つの政党に単純化されて行くだろう。北朝鮮危機を通して安全保障問題に国民が目覚めるように啓蒙すれば、戦力保持と交戦権を明記した憲法をつくる可能性が生まれる。一見、安倍首相と小池党首は対立し、互いに相手を批判することで選挙戦を盛り上げるだろうが、小池新党の登場は、自民党にとっても究極のセイフティ・ネットになっている。共産党と社民党は、小池新党を「自民党の補完勢力」と非難しているが、事実認識は私と全く同じである。真の敵こそが真実をより知っているのかも知れない。

今後、政局は激動し、予想外のことがおこり、紆余曲折を経るだろうが、大局は日本にとってよい方向に進んでいる、というのが私の観察である。政治的出来事の評価に当たっては、一切の感情論を排除して、政治的結果に着目し、大局的に観る必要があると改めて思う。」(以上)

藤岡氏は「希望の党」を評価しています。中山成彬氏が民進党の議員の選別をするとの話もあります。そうなれば左翼リベラルは連合の支援を受けなければ当選できません。無所属ですから比例復活もできません。良い傾向です。連合の神津里季生会長は篩い落とされた民進党議員は政策が一致すれば応援すると言っていますが、原発政策はどう考えるのでしょう?電力総連は当然アンチ反原発です。「希望の党」は小泉の影響を受けて反原発です。連合を離脱した化学総連は自民党支持です。連合も総評と同盟の2つに分かれた方が分かり易い。

9/27杉浦正章氏ブログ<米紙「金体制孤立化のターニングポイント」>には「サイバー攻撃によってミサイルや核開発を不可能とし、通信機能を麻痺させる作戦だ。次に「心理戦」だ。北の幹部はみな携帯を所有しているから、その携帯に向かって情報を流したり、“戦後の優遇”を保証して工作をさせる方式。さらには実験で発射するミサイルを片っ端から撃墜して、金正恩を心理的に追い込む。これらの作戦は既に机上で固まっており、後はトランプの指示を待つばかりであるようだ。」とあり、マテイス長官の「韓国の犠牲ない軍事選択肢はある」(当然日本もですが)との発言を裏付けるものです。

http://thenagatachou.blog.so-net.ne.jp/2017-09-27

9/29中国観察<金正恩走後門 找美專家探川普虛實(圖)=金正恩は別ルートでトランプの考えを探る>。でも北が当たった人間に拒絶されたとありました。金三胖もトランプに困り果てている様子が窺えます。時既に遅しでしょう。自分が助かりたいなら亡命しかありません。オバマと違い軍事力の行使も躊躇わないトランプだから外交ができると言うもの。NFLの黒人は国家・国旗に対し敬意を払わなければ、米国民を止めるべきです。昔のことを持ち出しても、進歩がないでしょう。人種差別と論理をすり替えるべきではありません。世界共通で左翼リベラルの得意とするところですが。日本の日教組・左翼教師も日本人を止めて中国人か北朝鮮人になればよい。愛する祖国の土を踏んだ途端スパイ容疑で射殺されるかもしれません。安全な日本で人権抑圧する共産主義活動をするなと言いたい。

http://chinaexaminer.bayvoice.net/b5/trend/2017/09/29/373320.htm%E9%87%91%E6%AD%A3%E6%81%A9%E8%B5%B0%E5%BE%8C%E9%96%80-%E6%89%BE%E7%BE%8E%E5%B0%88%E5%AE%B6%E6%8E%A2%E5%B7%9D%E6%99%AE%E8%99%9B%E5%AF%A6%E5%9C%96.html?utm_source=dlvr.it&utm_medium=facebook

鈴置氏の記事を読みますと、北の包囲網は着々と敷かれている印象を受けます。中国への金融制裁の脅しが効いたため北との銀行取引取りやめ、イラン絡みでのイスラエルの反北、NATOもICBM開発で脅威が他人事でなくなって来た状況があります。それが上述の「中国観察」の記事となったのでしょう。

日本が気を付けるべきは戦争にならなくても「朝鮮総連」や「朝鮮学校」の存在があり、彼らがテロを起こす可能性があるという事です。国交がない国の組織に補助金を出すのは止めるべきですし、パチンコも球出し規制なんて甘い対策でなく、全面禁止すべきです。

記事

香港の地下鉄での広告でスマホをいじる偽委員長と、覗き込む偽大統領(写真:ロイター/アフロ)

前回から読む)

トランプ(Donald Trump)大統領の激しい表現のツイッター。金正恩(キム・ジョンウン)委員長に直接、語りかける狙いもありそうだ。下からの情報に惑わされず、自分の目で世の中を見ろ、と。

ロケットマンへの直言

—トランプ大統領の「過激なツイート」が話題になりました。

鈴置: 9月23日につぶやいた「小さなロケットマンの先は長くない」が「金正恩氏を刺激する」と批判されました。

ロケットマンとはトランプ大統領が金正恩委員長に付けたあだ名です。そんな物言いは軍事的な衝突を起こしかねないから削除すべきだ、との声も起きました。原文は以下です。

Just heard Foreign Minister of North Korea speak at U.N. If he echoes thoughts of Little Rocket Man, they won’t be around much longer!

9月22日、金正恩委員長が声明を通じ「超強硬対応措置の断行」を宣言しました(日経・電子版「金正恩氏の21日の声明」参照)。

同日、それについてニューヨークに滞在中の李容浩(リ・ヨンホ)外相が「過去最大の水爆実験を太平洋上ですることではないか」と解説したのです(日経・電子版「太平洋で水爆実験なら国際法に違反」参照)。

さらに9月23日、李容浩外相は国連総会で「最終的な目標は米国と(核戦)力で均衡を作ること」などとも演説しました。

演説内容は聯合ニュースの「北の李容浩『斬首・攻撃の気配あれば、先制行動で予防措置』(総合2報)」(9月24日、韓国語版)で読めます。

この演説を受けて「小さなロケットマンの先は長くない」はつぶやかれたのです。

報告はちゃんと上がるか

—トランプ大統領はなぜ、北朝鮮に対し物議を醸すようなツイートをするのでしょうか。

鈴置:金正恩委員長に直接、語りかける目的もあると思います。大統領は9月19日の国連演説で「このまま行けば、ロケットマンもその政権も自殺行為になるぞ」と、核を放棄するよう警告しました(「北朝鮮に『最後通牒』を発したトランプ」参照)。

Rocket Man is on a suicide mission for himself and for his regime.

でも、その演説がきちんと金正恩委員長に報告されたかは疑問です。部下が「国連で米国の老いた狂人が妄言を吐きました。核を持った我が国が恐ろしくて、口先で意気がっているのです。絶対に攻撃されません。予告通り、次は太平洋上で水爆を実験しましょう」などと具申した可能性が大きい。

もし「トランプが戦争のハラを固めたようです。ここは少し大人しくしましょう」とでも言おうものなら「腰抜け。お前は米国のスパイか」と、粛清されかねないからです。

ツイッターを使えば改竄されず、警告はそのまま金正恩氏に届きます。41分間もの長いトランプ演説を視聴しなくても、ツイッターくらいは覗くと思われます。金正恩氏は西側で教育を受けましたから。なお、普通の北朝鮮国民はツイッターにアクセスできません。

仮に本人がツイッターを見なくとも、部下は「ひょっとして親分がツイッターを見て『なぜ、報告しなかったのか』と怒り出すかもしれない」と恐れ、渋々「トランプが『先は長くない』とつぶやいています」と報告せざるを得ない。

小さなロケットマンの先は長くない」の中に「北朝鮮外相のスピーチが小さなロケットマンの意向を反映しているのなら」とあるのも、ツイッターによる「直接対話作戦」を思わせます。

北朝鮮のような国で、外相が最高指導者の意向と異なる発言はできません。なのに、最高指導者と周辺の間に外交方針に差があるかもしれないことを念頭にツイートする。少し変なのです。

やりたい放題やっても罰はな

—「部下に騙されているぞ。核の均衡など夢想するな」と耳元でつぶやいた……。

鈴置:部下も「騙す」というよりも「引っ込みがつかなくなっている」のだと思います。これまで北朝鮮はやりたい放題。それでも国際社会から罰を受けなかった。

アジア安保の専門家、ニューシャム(Grant Newsham)米海兵隊・退役大佐は「北朝鮮がなぜ、自殺行為に及ぶのか」との疑問に対し、以下のように答えています。

Asia Times の「North Korea: Doesn’t Kim Jong Un understand ‘suicidal’?」(9月2日)で読めます。

米国、日本、韓国など国際社会は、行いを改めるとの約束と引き換えに食糧、カネ、石油、果ては原子炉まで与えてきた。

(というのに)北朝鮮は、ラングーンで韓国の閣僚を爆弾で殺す。韓国の戦闘艦を潜水艦で撃沈する。日本人を拉致する。ミサイルを発射する。核兵器を作っては試験する。人で混み合う(マレーシアの)空港では白昼堂々と義理の兄弟を毒で殺す。

なぜか?(やりたい放題やっても)何も起きなかったからだ。

国全体がそんな「成功体験」に酔っている時に「いいかげんにしとかないと、そろそろ殴られますよ」と意見具申する部下はまず、いないのです。

日本からもお祝い

—会社も同じです。

鈴置:在日朝鮮人のグループが9月19日、建国69周年を祝う手紙を金正恩委員長に送っています。朝鮮中央通信の「在日本朝鮮人祝賀団メンバーによる手紙」(9月21日)が報じました。日本語版から、その一部を引用します。

世界を震撼させた大陸間弾道ロケット装着用水爆実験の大成功と9月の祝日をより意義深く輝かした各軍民慶祝大会を通じて共和国の強大無比の威力を全身で痛感しながら金正恩委員長が居て朝鮮革命の最後の勝利は確定的だという鉄の真理をいっそう心に深く刻み付けた。

北朝鮮の核ミサイルの標的となっている日本からも「水爆実験成功のお祝い」が寄せられるのです。金正恩氏ら指導部はさぞ、高揚した空気に包まれていることでしょう。

—北朝鮮の『「空気」の研究』ですね。

鈴置:こういう空気の下では、判断を誤り続けます。北朝鮮の指導層は「我が方が核で反撃するのを恐れ、米国は先制攻撃して来ない」と信じている、あるいは信じたがっているのです。

邪悪な存在にも警告はする

—でも米国が反撃を封じるために、核兵器も使って先制攻撃してきたらどうするのでしょうか。

鈴置:「米国は先制核攻撃しない」とも、なぜか信じ込んでいるのです。集団幻想です。

これまで北朝鮮のように外国に向かって「核で先制攻撃するぞ」と脅した国はありません。北朝鮮は2015年頃から、核による先制攻撃を何度も宣言しています(「朴槿恵は『北爆』を決意できるのか」参照)。

そんな国は、先制核攻撃されても文句は言えません。というのに、北朝鮮ではそこを読めなくなっている。だからいまだにやりたい放題なのです。

そこで最高指導者に直接「目を覚ませ」と……・

鈴置:大統領の国連演説で、北朝鮮は少し腰が引けました(「金正恩をコーナーに追い詰めたトランプ」参照)。でも、核を放棄する気はもちろんない。

トランプ政権は「こっちは本気だ。戦争する覚悟はあるんだよ」と、畳みかけておこうと考えたのでしょう。

国連演説で大統領は北朝鮮を「邪悪(wicked)」な存在と決めつけました。でも、そんな国だって「完全に破壊(totally destroy)」する前に「完全な警告」はしておきたいものです。いくら悪漢でも、撃ち殺したら寝覚めが悪い。

イラン・コネクション

そして今は「ツイッター」という直接対話の道具がある……。

鈴置:そこです。新しくできた便利な道具を利用しない手はないのです。昔だったら敵の指導者に密書を送るところです。でも密書は途中で握り潰されることも、改竄されることもある。

ツイッターならそんな心配はない。それに文章の長さに制限はあるけれど、何本も送ることができる。

小さなロケットマンの先は長くない」と同じ日に、トランプ大統領は北朝鮮関連のツイッターをもう1本、発信しています。「イランがイスラエルに届く弾道弾を撃った」です。

Iran just test-fired a Ballistic Missile capable of reaching Israel. They are also working with North Korea. Not much of an agreement we have!

9月23日、イランが「射程2000キロの多弾頭の新型弾道弾『ホラムシャハル』の試射に成功した」と発表しました。米英仏はイランのミサイル開発は国連決議に違反すると批判しています。

このツイートは弾道弾の試射を非難したものです。3番目の文章をご覧下さい。これだけでは分かりにくいのですが、2015年にオバマ(Barack Obama)政権が結んだ、イランに核兵器開発を凍結させる合意は意味がないと指摘したのです。

トランプ政権はこの核合意を破棄したくてしょうがない。合意ではイランの核武装を食い止められないとの判断です。大統領は9月19日の国連演説でも北朝鮮に続き、イランを非難しました。以下です。

We face this decision not only in North Korea. It is far past time for the nations of the world to confront another reckless regime — one that speaks openly of mass murder, vowing death to America, destruction to Israel, and ruin for many leaders and nations in this room.

「邪悪(wicked)な存在」の2番目にイランを挙げました。「虐殺と米国の壊滅、イスラエルの破壊を公然と誓う向こう見ずな政権」と規定し、北朝鮮と同様に世界は対処を迫られていると訴えたのです。

イスラエルが強く批判

—なぜ、核合意の見直しを今になって言い出したのですか。

鈴置:もともと米国では、実効性が疑わしいこの合意を結ぶべきではないとの意見が根強かった。イスラエルが核合意を強く批判していたこともありました。

しかしオバマ政権はイスラエルを見捨てる格好でイランと妥協した。2017年1月に、イスラエルと近いトランプ政権が発足し、見直しの声が高まったのです。

もう1つ理由があります。安全保障専門家、あるいは北朝鮮や中東の専門家の間では、北朝鮮とイランは核・ミサイルを共同開発しているというのが常識でした。

ツイート「イランがイスラエルに届く弾道弾を撃った」の2番目の文章「イランは北朝鮮と一緒に働いている」はそれを指します。

北朝鮮が弾道弾を乱射するのを見て「よくカネが続くな」と首を傾げる人が多い。でもイランが北朝鮮に資金を提供していると考えれば納得できます。ことに核合意により、イランは経済制裁を解除されたのです。

そこに北朝鮮の「水爆実験」(9月3日)。イスラエルはもちろん、同国を支持する米国人も、さらには欧州各国も危機感を強めました。イランが北朝鮮と一緒に核武装する可能性が高まったからです。

「イラン・北朝鮮コネクション」に、ようやく注目が集まりました(日経・電子版「北朝鮮とイランに協力疑惑 核・ミサイル開発」参照)。北朝鮮とイランの2つの核問題は、一体のものとして検討されるようになったのです。

局面が変わった

—金正恩氏がトランプ大統領のツイートを見たら、どう考えるでしょうか。

鈴置:このツイートは米国民や世界の人々に「イラン・北朝鮮コネクション」の存在を認識させたうえ、北の核開発阻止に全力をあげるとの決意を示したものです。

金正恩氏が注意深く読んだら「局面が変わった。相当にまずいな」と思ったはずです。核武装してしまえば世界が追認するはずでした。米国はいざとなれば自分の核で均衡を作り、対抗できる。欧州にとって北朝鮮は遠い国で、直接的な脅威を感じないからです。あとは日本と韓国を脅して認めさせればいい。

でも、イランが北朝鮮製の核を持つ可能性が高まると、米政界で強い力を持つイスラエルが「北の核」潰しに動くのは目に見えています。

イランが開発に成功したという射程2000キロの「ホラムシャハル」に核弾頭を載せれば、イスラエルは日常的に核の威嚇にさらされます。

もし、イランが射程4000キロの弾道弾を持てば――北朝鮮の「火星14」は8000キロ以上の射程を持つとされています――英国までが攻撃範囲に入ります。

NATO(北太平洋条約機構)加盟国も安穏とはしていられません。結局、北朝鮮の核を巡り世界が妥協する可能性は急速に減ったのです。

米国の外交界には「米本土まで届く弾道弾は作らないと約束させたうえで、北の核は黙認しよう」とのアイデアもありました。が、それを受け入れる空気は急速にしぼむでしょう。

—北には「核兵器を輸出しないから核保有を認めてくれ」と言う手がありませんか?

鈴置:そんな妥協案が受け入れられるかは疑問です。北朝鮮は信用がありません。これまで約束を破り続けてきたからです。

もし北が誠実に約束を守ってきたら、今頃は米国や日本との国交も樹立し、朝鮮半島は核のない地域になっていた可能性が高い。

安倍晋三首相が9月20日の国連総会の一般演説で、北朝鮮の数々の約束違反を列挙しました。韓国や米欧に残る「対話で解決すべきだ」などという、現実を無視した主張を潰す目的もあったのでしょう。

ガソリンが足りなくなるぞ

—トランプ大統領は金正恩委員長の耳元でつぶやくことで、軍事的な圧迫の威力を増そうとしている……。

鈴置:経済制裁の威力を増す狙いと思えるツイッターもあります。9月17日の「北朝鮮のガソリンスタンドには列ができる」です。

I spoke with President Moon of South Korea last night. Asked him how Rocket Man is doing. Long gas lines forming in North Korea. Too bad!

北朝鮮が経済制裁の強化に対応するため、ガソリンの販売規制を始めたとの情報がありまして、それをもとにつぶやいたものと思われます。

9月11日に採択された制裁案では原油の全面禁輸は盛り込めず、現行水準で凍結するに留まりました。ただ、ガソリンなど石油精製品の輸出は年間200万バレルの上限を設けました(日経・電子版「国連安保理 北朝鮮追加制裁決議の要旨」参照)。

そこでトランプ大統領は「ガソリン不足に陥るぞ。さあ、どうする」とつぶやき、金正恩委員長に北の厳しい未来を思い起こさせたのです。

「ガソリンスタンドに列」との情報が金正恩氏に上がっていない可能性もあります。その際これを読めばさらに動揺するとも計算したのでしょう。

「世界」だけでなく「相手の統治する国」の情報も伝えることが独裁者の説得には有効なのです。

(次回に続く)

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