『米国に捨てられ、日本に八つ当たりの韓国 同盟の義務を放擲したうえ逆恨み』、『文在寅大統領が誕生。米韓同盟は「持つ」のか 反米親北政権」が招く北東アジアの更なる混乱』 (5/9日経ビジネスオンライン 鈴置高史)、『中朝関係崩壊、正恩氏暴挙に北内乱寸前 懸念は韓国大統領選、米国重大決断も』(5/9ZAKZAK)について

人の不幸を願い、嘘に塗り固められた妄想に生きる民族が朝鮮人です。北も南も一緒です。韓国の大統領には予想通り文在寅が選ばれました。今後、米・中・北・南の思惑がどういう展開になるのかは全く分かりません。南の軍部の中には北に内通するのもおり、文に対し、クーデターを起こす力はないでしょう。日本の自衛隊は、民主主義的手続きを経て共産主義政権が樹立された場合(万が一にもないと思いますが、5/9参院・予算委で安倍首相は小池晃共産党書記局長に「小池さんが総理になったら、私が自衛隊は違憲ですかって訊くんですよ。その時違憲って答えたら、その瞬間、自衛隊は解散ですね」と煽ってましたが)、クーデターが起こせるのでしょうか?三島の死を無駄にはしてほしくありません。毛・スターリン・ポルポト等の共産主義国家の虐殺・粛清・密告等、人を人とも思わないことが為されてきた歴史を振り返れば、軍事国家が未だマシに見えます。共産主義が日本に蔓延るとすれば中共の侵略以外にはないと思いますが。国民が一致団結して中共の侵略を撥ね返さないと。

今後の展開で、北が核とICBMを諦められるのかどうか?金正恩がクーデターで打倒されるのかどうか?米軍が空爆でなく、斬首作戦を実行するのかどうか?ただ、文と南の軍部が、国連軍の作戦行動を洩らす可能性があります。裏切りには「お仕置き」が必要です。戦時作戦統制権を米軍が握っている間に、米軍単独で行動し、北の金正恩を排除すれば良いでしょう。在韓米軍と日本にミサイルが飛んでこなければ、ソウルが北のロケット砲で火の海になろうと知ったことではないと米国は思うのでは。ただ金正恩を排除しても北の軍が核とICBMを諦められるかどうかがポイントですが。

米朝戦争の影の主役と言われる中国がどう出てくるかも見物です。経済制裁で本当に石油を止められるかどうか?(青山繁晴氏の情報に依れば、中国はハリス司令官のクビを差し出さないと制裁しないと本気で言ってるそうです。http://kukkuri.jpn.org/boyakikukkuri2/log/eid2052.html)止めれば、金正恩は狂って中南海に核ミサイルをぶち込むかもしれません。米国にミサイルが届かなくとも、北京でしたらノドンかテポドンで充分届きます。中国は「なんちゃってミサイル防衛システム」しか持っていません。データリンクしていなければ、マッハで飛んでくるミサイルは撃ち落せません。報復で核ミサイルをお見舞いするだけです。でも北の核ミサイル発射後、瀋陽軍が北京に進軍するかもしれません。米国も中朝の争いには関与できないでしょう。秋の中国共産党大会と米軍の動きに注目しておきましょう。いろんな動きが出て来る筈です。でも日米の目標は、第一ステップは北の脅威の排除、第二は中国の脅威の排除です。

http://www.thutmosev.com/archives/67097279.html

鈴置記事

「北朝鮮の核問題を解決するためのすべての選択肢がテーブルの上にある」とする米国に対し、韓国は明確な支持を表明しない。ペンス副大統領と黄教安大統領代行の会談でも、進展はなし(写真:ロイター/アフロ)

前回から読む)

国家の存亡がかかる時というのに、韓国は米国から「捨て駒」扱い。日本に八つ当たりして憂さを晴らすのが関の山だ。

「属国扱い」で大騒ぎ

—「中国の属国扱いされた」と韓国人が怒っている、という話で前回は終わりました。

鈴置:ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)との会見でトランプ(Donald Trump)大統領が「韓国は歴史的に中国の一部だった」と語りました。「WSJ Trump Interview Excerpts: China, North Korea, Ex-Im Bank, Obamacare, Bannon, More」(4月12日、英語版)です。

韓国メディアは大騒ぎ。記者会見などを通じ、米中両国政府に発言の真意を質しました。保守系3紙はこぞって社説で怒りを表明しました。

中国政府にも質したのは「(4月6、7日の)米中首脳会談で習近平主席からそう説明を受けた」とトランプ大統領が語ったからです。

—韓国人は「属国ではなかった」と言い張るのですか?

鈴置:「属国問題」に関し、韓国には定番の「説明」があります。今回も東亜日報がその理屈を展開しています。

4月20日の社説「『韓国が中国の一部だった』との習近平の認識 韓中関係の障害に」(韓国語版)から引用します。

  • 近代以前、中国と周辺国は朝貢関係を結んでいた。知識のない人が見れば、帝国と植民地の関係に見えるが、実態は西洋の主権国家同士の関係と変わらないというのが歴史学界の定説である。

貢女も独立門も

—本当ですか?

鈴置:強弁です。朝鮮半島の歴代王朝は中国の歴代王朝に朝貢し、冊封体制下にありました。王が即位するには中国の皇帝の承認が要りました。若い女性も制度的に貢いできました。それを指す「貢女」(コンニョ)という言葉もあります。

これらからすれば「主権国同士の関係だった」とはとても言えません。「歴史学界の定説」部分も「韓国の歴史学界の定説」と言うべきでしょう。

ソウルには1897年に建てられた「独立門」という名の建造物があります。日清戦争(1894―1895年)の結果、朝鮮朝は清の冊封体制を離脱することができました。

その「独立」を内外に示すために作られた門です。韓国人もそれまでは「独立していなかった」と認識していたことを証明しています。

—なるほど。

鈴置:ただ、朝鮮半島の人々は「中華帝国の一部」であることを誇りとしてきました。韓国語のSNS(交流サイト)では「日本人は劣った民族である」といった会話が盛り上がります。日本人が中華帝国の外の「化外の民」――野蛮人だったとの認識からです。

一方で、韓国人は中国に根深い恐怖心を抱いています。地続きの超大国、中国との戦争で負け続け、支配されてきたためです。

韓国メディアが「天皇」を「日王」と表記するのは、「皇」という漢字を使えるのは中国だけなのに、日本ごときに使っては中国から叱られると考えるからです。

日本の植民地になったこともない

—昔、朝貢していたにしろ「今はもう、属国ではない」と主張すればいいのではないですか。

鈴置:そう思います。誰しも過去は変えられないのですから。しかし韓国人はそう考えません。理由は2つあります。

韓国が豊かになるほどに「我が国はずうっと独立国だった」と思いたくなったのです。「系図買い」の心境です。

だから日本の植民地支配も「なかったこと」にしようと「あれは日本の不法占拠だった」と強調し始めたのです。

もう1つは中国が再び強くなるに連れ、その言うことに逆らえなくなったことです。「属国に戻りつつある」と内心忸怩たるものがあるからこそ「昔は属国だった」と指摘されると、逆切れするのです。

米中が対立する案件の多くで、同盟国の米国ではなく中国の言いなりになる(「米中星取表」参照)。そんな韓国を見て、米国人が首を傾げます。「世界最強の同盟国をないがしろにして、何であんな非民主主義国にゴマをするのか」というわけです。

米中星取表~「米中対立案件」で韓国はどちらの要求をのんだか (○は要求をのませた国、―はまだ勝負がつかない案件、△は現時点での優勢を示す。2017年5月8日現在)

 

案件 米国 中国 状況
日本の集団的自衛権 の行使容認 2014年7月の会談で朴大統領は習近平主席と「各国が憂慮」で意見が一致
米国主導の MDへの参加 中国の威嚇に屈し参加せず。代わりに「韓国型MD(ミサイル防衛)」を採用へ
在韓米軍への THAAD配備 韓国は「要請もなく協議もしておらず決定もしていない(3NO)」と拒否していたが、朴槿恵大統領の弾劾訴追後の2017年2月28日にようやく米軍への用地提供を決定
日韓軍事情報保護協定 (GSOMIA) 2012年6月、中国の圧力もあり韓国が署名直前に拒否。締結を望む米国に対し、朴槿恵大統領は「慰安婦」を理由に拒否。しかし下野要求デモが激化した2016年11月突然に締結
米韓合同軍事演習 の中断 中国が公式の場で中断を要求したが、予定通り実施
CICAへの 正式参加(注1) 正式会員として上海会議に参加。朴大統領は習主席に「成功をお祝い」
CICAでの 反米宣言支持 2014年の上海会議では賛同せず。米国の圧力の結果か
AIIBへの 加盟 (注2) 米国の反対で2014年7月の中韓首脳会談では表明を見送ったものの、英国などの参加を見て2015年3月に正式に参加表明
FTAAP (注3) 2014年のAPECで朴大統領「積極的に支持」
中国の 南シナ海埋め立て 米国の「明確な対中批判要請」を韓国は無視
抗日戦勝 70周年記念式典 米国の反対にもかかわらず韓国は参加
 

(注1)中国はCICA(アジア信頼醸成措置会議)を、米国をアジアから締め出す組織として活用。 (注2)中国はAIIB(アジアインフラ投資銀行)設立をテコに、米国主導の戦後の国際金融体制に揺さぶりをかける。 (注3)米国が主導するTPP(環太平洋経済連携協定)を牽制するため、中国が掲げる。

彼らに「冊封体制」下の人々の旧・宗主国への恐怖心を説明すると、ようやく疑問が解けたという顔をします。トランプ大統領がWSJにわざわざ「韓国は中国の一部だった」と語ったのも、そんな納得感からかもしれません。

なお、ベトナム人には韓国人のような鬱屈はありません。ベトナムの王朝も中国の王朝に朝貢したことがありましたが、戦争でしばしば勝ったからです。最近では中越戦争(1979年)で、中国の侵略軍を散々に打ち負かしました。

中国人も「ベトナムは属国だった」などと下には見ません。そんなことを言えば「属国に負けたのか」と笑われてしまうからです。

THAADの代金を払え

—韓国人は「本当のことを言ってしまった」トランプ大統領に不信感を持ったでしょうね。

鈴置:不信感は膨らむ一方です。「トランプの暴言」がその後も続いたからです。トランプ大統領は4月27日、ロイターに対し「韓国政府はTHAAD(=サード、地上配備型ミサイル迎撃システム)の代金として10億ドル(約1100億円)払うべきだ」と語りました。

記事は「Exclusive: Trump vows to fix or scrap South Korea trade deal, wants missile system payment」(4月28日、英語版)です。

在韓米軍へのTHAAD配備問題は、韓国が米中の間で板挟みになったいわくつきの案件です。結局、北朝鮮との緊張が高まる中、4月26日未明に慶尚南道星州(ソンジュ)に緊急配備されました。

この発言も、これまた各紙が一斉に取り上げる「社説ネタ」になりました。韓国政府は国民に対し「土地は韓国が提供するが、THAADの機材は米国が負担する」と説明していたからです。

中央日報の社説「理解できないトランプ大統領の『THAAD費用10億ドル要求』=韓国」(10月29日、日本語版)は韓国人の当惑を隠しませんでした。ポイントは以下です。

  • 韓米は昨年、THAAD展開および運営費は米国が負担し、韓国は場所を提供することで合意している。ところが突然、国家間の合意を無視して韓国に追加負担を要求した。
  • THAADのために防衛費分担金(韓国側負担駐留経費)を増額するのも限界がある。昨年は9441億ウォン(約940億円)だった。トランプ大統領の内心は分担金の大幅引き上げのようだ。今年末に始まる防衛費分担金交渉で相当な増額は避けられない見通しだ。

保守候補は不利に

—トランプ大統領が要求した10億ドルは韓国の防衛分担金の1年分に相当します。

鈴置:ええ、巨額の負担増となります。韓国人にとって、もっとショックだったのは、この発言が大統領選挙で左派候補を勢い付かせるものだったことです。

THAAD配備で韓国は中国からいじめられています。韓国製品の不買運動や中国人の韓国向け観光旅行の制限が続いています。

THAADの配備場所を提供したロッテグループは、消防法違反として中国全土の量販店を閉めさせられました(「中国が操る韓国大統領レース」参照)。

THAADを容認する保守・中道候補はただでさえ苦しい立場にあります。そこに米国大統領が「巨額の代金を支払え」と命じてきたのです。選挙戦でますます不利になるのは確実です。

すかさずというべきか4月28日、配備に反対する「共に民主党」の文在寅(ムン・ジェイン)候補は、配備容認に転じた中道の「国民の党」の安哲秀(アン・チョルス)候補に対し「10億ドルを我々が負担しても配備に賛成するのか」「(韓国が配備に)無条件で賛成するから、費用も出せということになる」と攻撃しました。

その様子は日経の「THAAD配備費1100億円 トランプ氏、韓国に要求」(4月29日)が報じています。

米国は同盟を打ち切るつもりか

韓国人の心をよぎったのは「米国から見捨てられる不安」でした。文在寅候補が当選すれば、親北反米政策にカジを切ると見られている。というのに、国民の反米感情をかき立てる「中国の一部」発言や「THAADの代金を払え」発言で、韓国の反米派の当選を後押しするトランプ大統領……。

もう、米国には韓国との同盟を維持する意思はないのではないか――と韓国人、ことに親米保守は絶望的な心境に陥りました。

韓国経済新聞の社説「トランプ大統領の相次ぐ対韓圧力、『韓米同盟見直し』の信号弾か」(5月2日、日本語版)が、そんな懸念を吐露しています。

  • トランプ大統領発言は、妙なことに北朝鮮を扱う最近の中国の動きとも重なる。北核阻止レベルでは望ましいが、中国の対北朝鮮警告・メッセージも非常に激しく直接的だ。
  • あたかもトランプ―習近平会談で、両者間に方法論的な共感が形成されたのではという考えになるほどだ。
  • 血盟の韓米同盟であっても運営方式や発展方向ではいくらでも変わる可能性がある。韓国には費用負担増加以上になることも考えられる。

オブラートに包んで書いていますが、要は「中国が北朝鮮に核を放棄させる一方、米国は韓国との同盟を打ち切るか、形骸化する」との談合が進んでいるのではないか、との恐怖感です。

そうした米中の「大きな取引」の可能性は、すでに世界のメディアが指摘しています(「『米韓同盟』も『中朝』も賞味期限切れだ」参照)。

同盟国の義務にそっぽ

—なぜトランプ政権は突然、韓国に冷淡になったのでしょうか。

鈴置:韓国の自業自得です。この肝心な時に、米国の同盟国としての義務を果たそうとしないし、今後も果たすつもりがないことを韓国が明らかにしたからです。

米国政府は「北朝鮮の核問題を解決するためのすべての選択肢がテーブルの上にある」と繰り返し表明しています。「対話を捨てたわけではないが、軍事行動も辞さない」との宣言です。

日本政府は当然、「テーブルの上にある」表明を支持しました。米国と足並みをそろえることで対北、対中圧力を増すためです。

例えばペンス(Mike Pence)副大統領が4月18、19日に日本を訪れた際の安倍晋三首相の発言は以下でした。外務省のホームページの「ペンス米国副大統領による安倍総理大臣表敬」から引用します。

  • 安倍総理からは、外交を通じて平和を守ることが重要であることは言うまでもない、同時に、対話のための対話では意味がない旨述べつつ、北朝鮮が真剣に対話に応じるよう、圧力をかけていくことが必要である旨発言し、トランプ政権が、これまでの「戦略的忍耐」という考え方をとらず、「全ての選択肢がテーブルの上にある」という考え方に立って問題に対処しようとしていることを、我が国として評価している旨述べました。

「テーブルの上」表明を支持せず

—確かに、日本は明快に米国の軍事行動を支持しています。

鈴置:ところが韓国政府は「すべての選択肢がテーブルの上にある」との表明を支持しないのです。ペンス副大統領は訪日前の4月16、17日に韓国を訪れて、大統領権限代行の黄教安(ファン・ギョアン)首相と会っています。

不思議なことに、韓国の国務総理室のホームページの「報道・解明資料」欄(韓国語)に、普通なら載るはずのペンス副大統領との会談に関する報道資料が見当たりません。

会談後の記者会見で、ペンス副大統領は「テーブルの上」発言を繰り返し、先制攻撃も辞さない姿勢を明確にしました。が、黄教安首相は北朝鮮の軍事行動への「反撃」は強調したものの、「先制」には言及しませんでした。

朝鮮日報の「ペンス『戦略的忍耐は終わった 北はトランプを試すな』」(4月18日、韓国語版)などでそれが分かります。

—なぜ、韓国政府は「テーブルの上」を支持しないのでしょうか。

鈴置:第2次朝鮮戦争の勃発を恐れているのです。

—いくら戦争が嫌といっても、このまま行けば北朝鮮は核武装します。韓国にとって国の命運がかかった問題のはずです。

鈴置:韓国人は戦争を決意できないのです。全面戦争となれば、ソウルは北朝鮮の長距離砲やロケット砲の攻撃にさらされる可能性が高く、日本以上に被害が大きいと考えられています。

それに米国の軍事行動を支持しただけで、中国との対立が深まるからです。中国は米国の軍事行動に反対していますから、賛成すれば、中国からどんなしっぺ返しをされるか分かりません。今でさえTHAAD配備問題で、中国から激しくイジメられているのです。

「スクラム拒否」の候補者ばかり

—そうは言っても、国の存亡がかかっている問題です。

鈴置:韓国には、前にも説明したように「旧・宗主国」への服従心と絶望的なまでの恐怖感があるのです。

今回の大統領選挙に出馬した有力候補者5人全員が軍事攻撃には及び腰で、「あくまで話し合いで解決すべきだ」と主張しています。

4月13日、5人を集めた1回目の討論会が開かれました。聯合ニュースの「大統領選挙討論 米国の対北先制攻撃を仮想した質問に多様な処方―1」(4月13日、韓国語版)で関連部分を読めます。

司会者は真っ先に「もし、米国が北朝鮮に軍事行動を実施しようとした際、どうするか」と聞きました。

5人の候補者のうち4人が「米中と電話で協議する」と答えました。この答は答になっていません。韓国がいくら米中と相談しても、煮詰まった状況下で米国の軍事行動は止められないからです。

保守の「正しい政党」の劉承旼(ユ・スンミン)候補だけが「北朝鮮による我々への攻撃が差し迫った時は、米国による先制攻撃は自衛権的な措置だ」と語りました。

が、「テーブルの上」を支持するとまでは言わず、「米国と緊密に協議する」と答えました。要は「話し合い」路線です。

5人の発言をトランプ大統領が聞いたら、韓国という国に落胆したことでしょう。なぜなら現時点で必要なのは、米日韓がスクラムを組んで北朝鮮と中国に圧力をかけることです。

というのに、誰が大統領に当選しても韓国の次期政権は「テーブルの上」に賛同しないことが明らかとなった。

中国や北朝鮮から「最大の利害関係者でお前の子分の韓国が、軍事オプションに反対しているぞ」とあざけ笑われてしまいます。

トランプ大統領が「韓国は中国の一部だった」と見下すような発言をしたのも、「THAADの代金を支払え」と安保のただ乗りは許さない姿勢を明確にしたのも無理はないと思います。

米国兵士の命をかけて米韓共同の敵に立ち向かっているのに、韓国は中国の顔色を見てそっぽを向いているのです。

北朝鮮に通報する

—「ただ乗り」に米国が怒るのは当然ですね。

鈴置:それどころではありません。反米親北の「共に民主党」の文在寅候補の答は米国を激怒させるものでした。先の記事から引用します。

  • まず、米国の大統領に電話し、我々との同意がない米国の一方的な先制攻撃は認めないことを知らせ、留保させる。次に、全軍に非常命令を下し、国家非常体制を稼働する。
  • ホットラインを初めとする複数のチャネルを通じ、北朝鮮に対し米国の先制打撃の口実となるような挑発を即刻中断するように要請する。その過程では中国とも協調する。

—「米国が先制攻撃するぞ」と北朝鮮に知らせるというのですね。

鈴置:そこです。それでは奇襲を旨とする先制攻撃になりません。驚きの発言です。文在寅候補は無意識のうちに語ったのでしょうが「北朝鮮側の人」と見なされても文句は言えません。

—韓国では文在寅候補への非難の嵐が起きたでしょう。

鈴置:いいえ。そんな非難の声は高まりませんでした。普通の韓国人も「北朝鮮へのタレこみ」が問題とは考えなくなっているのです。

「テーブルの上」を支持しないことに関しても同様です。韓国メディアで、これに対する疑問は全くといってよいほど提議されていません。韓国人は米国と共に戦うつもりなどないのです。

米空母に怯える韓国人

—「米国への裏切り」を批判する記事が出ないというのもすごい話ですね。

鈴置:厳密に言うと、ほんの数本ありました。「韓国の弱腰」に関しては、朝鮮日報の鮮于鉦(ソヌ・ジョン)論説委員の「米空母が来るといってなぜ我々が怯えるのか」(4月12日、韓国語版)です。

  • 一昨日の夜、日本のNHKが朝鮮半島の緊張状況を報告した。米原子力空母艦隊の移動をレポートしたうえで「北爆説」を紹介した。米政府の強硬姿勢から見て、デマと片づけるわけにはいかないとのニュアンスだった。
  • だが、NHKは実行されにくいとも報じた。韓国政府が自国民の被害を懸念し北爆に反対するからということだった。これを裏付ける発言が直ちに韓国政府から出た。統一部は「北爆説はさほど心配する必要はない」と言った。
  • 外交はゲームだ。ゲームには戦略がある。強攻策は相手の恐怖心を刺激して譲歩を誘導する戦略だ。空母の再配備と北爆説もこれに該当する。
  • 先日、米国は、シリアを爆撃した。「妥協か、さもなくば爆撃」という明確なシグナルを北朝鮮に送ったのだ。その時、世界は(米国の強攻策を)信じた。
  • ところが、今はそう確信しない。北爆説によって北朝鮮よりも深い恐怖に陥って動揺し、反対する韓国という国があるからだ。敵国を脅そうとした時に同盟国がまず怯えるというのなら、どんな強攻策も通じない。

「米国を裏切る」自覚なし

—米国の脅迫が北ではなく、南を怯えさせてしまったとは……。

鈴置:文在寅候補の「北へのタレこみ」を批判したのは中央日報のコラムニスト、チョン・ヨンギ氏でした。「韓国、平和だけを叫べば周辺国から蔑視される」(4月17日、日本語版)です。

  • 文在寅候補は米国が先制攻撃を準備する場合「北朝鮮にホットラインを通じて挑発を直ちに中断することを要請する」とした。戦争を防止するという忠実な気持ちは理解する。
  • だが、金正恩委員長にとって文候補は攻撃の情報を事前に知らせる有難い韓国人で、米国にとっては戦争秘密を敵国に渡す信じられない同盟になり得る。

—チョン・ヨンギ記者の言う通りですね。

鈴置:でも「米国への裏切り」を指摘する空気はほとんどないのです。それこそが韓国の危機です。

「米国を裏切っている」との自覚が全くないから、「米国に見捨てられかけている」という現実に目が行かないのです。

だからトランプ大統領が「韓国は歴史的に中国の一部だった」とか「THAADの代金を支払え」などと韓国を見放すと、韓国紙は筋違いの怒りに身を焦がすのです。

前者に関しては「韓国は大統領が不在だ。そのすきを突いて中国や日本が米国に嘘を吹き込んでいる」といった論調が主流です。

後者は「トランプはしょせん商売人。ゼニカネでしか世界を見ていない」といった説明がなされることが多い。韓国という国の迷走に従い、メディアの論調もますます冷静さを欠いてきました。日本に対する「八つ当たり」です。

戦争を煽る憎き安倍

—また、ですか。今度はどんな「八つ当たり」ですか?

鈴置:日本が戦争を煽っている、との主張です。今や、韓国紙の社説の定番です。典型的なのが中央日報の「半島の不安感あおる日本、自制すべき」(4月19日、日本語版)です。

  • 最近、日本が韓半島(朝鮮半島)危機を利用し、度が過ぎる姿を見せている。韓国外交部の報道官は昨日、「仮想状況を前提に誤解を引き起こしたり、韓半島の平和と安定にマイナスの影響を及ぼす言及は自制しなければいけない」と指摘した。
  • 外交部が韓半島有事の際の過度な対応を示唆した日本側の発言に遺憾を表明したのは当然のことだ。

連日のように韓国紙が「日本が戦争を煽る」と書くものですから、韓国政府も日本批判に乗り出したのです。中央日報の引用を続けます。

  • 安倍首相は4月12日、「さまざまな事態が起こった際、拉致被害者の救出に向けて米側の協力を要請中」と述べた。他人の不幸を利用して実益を得ようという話として聞こえる。
  • 安倍首相は翌日、「北朝鮮がミサイル弾頭にサリンを装着して発射する可能性もある」と主張した。確認されていないことを話して軍事力増強を合理化しようとの疑いを招く発言だ。
  • さらに韓半島有事に関連し「上陸手続き、収容施設の設置および運営、 わが国が庇護すべきものにあたるか否かのスクリーニングといった一連の対応を想定している」と述べた。戦争勃発を前提に韓国人が難民になって押し寄せる状況を想像したのだ。隣国の国民の自尊心に触れる発言だ。

日本の大地震を願う

—なぜ、日本の危機対応を非難するのでしょうか。

鈴置:日本人は半島危機を望んでいる、と韓国人は信じています。韓国のSNSでは何かあるたびに「日本に大地震が起こればいい」との希望が口々に語られます。自分が他人の不幸を望んでいるので、他人もそうに違いない、と韓国人は考えるのです。

それに「日本人は悪い奴だ」と八つ当たりしていれば、第2次朝鮮戦争の恐怖から目をそらすこともできます。米国や中国から馬鹿にされたり、脅される憂さも晴らすことができるのです。

—韓国人が現実を見つめることはあるのでしょうか。

鈴置:5月9日投票の選挙で、よほどリーダーシップの強い大統領が当選し「北朝鮮の核武装という国難に立ち向かおう」「米国とスクラムを組み、戦争のリスクをとっても戦争を防ごう」と国民に呼び掛ければ、そうなるかもしれません。

しかし5人の有力候補者を見渡しても、国民の力を結集できそうな人は見当たらない。「米国の軍事力行使をどう考えるか」と聞かれ「話し合う」と答える人ばかりなのです。

ただ、韓国の保守の間では「とにかく親北反米の候補の当選だけは阻止しよう」との思いがあります。「文在寅大統領」が登場すれば直ちに米韓同盟が崩壊する恐れがあるからです。

中道候補の凋落

その恐怖感が保守政党「自由韓国党」の洪準杓(ホン・ジュンピョ)候補への支持率を一気に押し上げました。当初、保守派の一部は、文在寅候補ほどには「左」でなく、保守候補よりも当選可能性が高い安哲秀候補に投票するつもりでした。

しかし初回の討論会が開かれた4月13日以降、安哲秀候補の支持率はつるべ落とし。THAAD問題でも姿勢がいまひとつ不鮮明で、強いリーダーシップが求められる時に、それを示すことができなかったのです。

安候補に票を投じようと考えていた保守派はその姿を見て、暴言を吐くけれど指導力がありそうに見える洪候補に鞍替えしたのです。

在野保守の指導者、趙甲済(チョ・カプチェ)氏も一時期は「次悪の選択」として安候補への投票を呼び掛けていました(「文在寅が大統領になったら移民する」参照)。が、4月30日を期に、洪候補支持に切り替えました。

とりあえずは5月9日投票の大統領選挙に注目です。

(次回に続く)

前回から読む)

5月9日投票の韓国大統領選挙で、左派「共に民主党」の文在寅(ムン・ジェイン)候補の当選が確実となった。当選が確定し次第、準備期間を置かず直ちに大統領に就任する。北朝鮮の核武装を巡り、米朝の軍事的緊張が高まる中で「反米親北政権」がどう動くかが焦点となる。

「北との融和」唱える文在寅

文在寅候補は5月9日午後11時50分過ぎ、ソウルの中心部の光化門広場で「国民の念願する改革と統合という2つの課題すべてを果たす」と演説した。

文在寅氏の勝利は、2期9年間続いた保守政権への幻滅が原動力となった。韓国では朴槿恵(パク・クンヘ)前大統領を弾劾する過程で、政府や財閥など「力を持つ者」への不満が噴出。「進歩・革新」を掲げる文在寅氏はその波に上手に乗った。

保守勢力は文在寅政権の登場を防ごうと、自由韓国党の洪準杓(ホン・ジュンピョ)氏に期待をつないだ。同候補は選挙終盤で支持を急速に伸ばしたが、及ばなかった(「韓国大統領候補の支持率の推移」参照)。

今後の展開を読むためのポイントは2つ。まずは外交だ。文在寅氏は「当選したら米国よりも北朝鮮に先に行く」と語るなど「融和」を対北政策の柱に掲げる。

選挙の討論会でも「米国が対北軍事行動を起こそうとしたら、北朝鮮に連絡しその挑発を抑える」と述べ、「先制攻撃を北に通報するのか」と批判されたこともある(「米国に捨てられ、日本に八つ当たりの韓国」参照)。

警戒強める米国

米国も文在寅政権に警戒感を強める。「反米親北」で名をはせた盧武鉉(ノ・ムヒョン)大統領の盟友で、同政権(2003―2008年)では大統領秘書室長を歴任したからだ。

米議会が設立した自由アジア放送(RFA)は「北朝鮮、中国の代わりに韓国の新政府と密着可能性」(5月4日、韓国語版)で、北朝鮮が韓国の次期政権との経済協力を模索するとの専門家の予測を引用した。

CSISの中国専門家のグレーザー(Bonnie Glaser)中国学部長兼先任研究員が語ったもので、ポイントは以下だ。

  • 米国の要請に応え、中国が北朝鮮への圧迫に乗り出したのは確かだ。ただ、まだ原油供給の中断などには乗り出してはいない。
  • 北朝鮮が中国の役割の身代わりにロシアを選ぶのは容易ではない。しかし来週にもスタートするであろう、進歩的な傾向の強い韓国の次期政権との積極的な経済協力を通じ、北朝鮮は中国の圧迫に耐えることができるだろう。
  • 韓国の新政権が新たな政策を打ち出し、より大きな経済支援に出るなど南北交流を活発化すると北朝鮮の指導者、金正恩は期待できる。

中国は「反米政権」を利用

北朝鮮へのドル送金のパイプとなっていた開城(ケソン)工業団地と金剛山(クムガンサン)観光事業に関し、文在寅氏は「再開を検討する」と表明してきた(「『市街戦が始まる』と悲鳴をあげた韓国紙」参照)

文在寅新政権がこれらをテコに北朝鮮との関係改善に動けば、米国が主導する北朝鮮包囲網に大きな穴が開く。

トランプ(Donald Trump)政権はそれを防ぐため、韓国の新政権を圧迫すると思われる。しかし反対に、トランプ政権が北朝鮮との対話を始める契機になる可能性も少しだが残る。

「反米政権」の誕生を中国が利用するのは確実だ。在韓米軍へのTHAAD(=サード、地上配備型ミサイル迎撃システム)配備に関し、撤去を求め中国は韓国に圧力をかけ続けている(「中国が操る韓国大統領レース」参照)。

文在寅氏は選挙期間中、一貫して「THAAD配備の可否は新政権が決めるべきだ」と主張してきた。中国がこの問題で文在寅新政権を自陣営に引き込めば、米韓の間に亀裂が入るのは確実だ。それは中国にとって念願の在韓米軍撤収につながる道である。

保守政権の不正を暴く

「文在寅政権」を占う、もう1つのポイントは激しい左右対立だ。対北朝鮮政策、THAAD配備など政策面で新政権と親米保守派が激突するのは間違いない。

その対立に油を注ぐのが左右の政治勢力の間の「遺恨」である。文在寅氏は「大統領になれば積弊清算特別調査委員会を立ち上げる」と繰り返し述べている。「過去9年間の保守政権の不正の責任を追及する」との宣言だ。

韓国では政権が変わるたびに前政権の非を暴いて貶めることが定例化している。政権末期になると大統領の家族の不正がメディアによって報じられ、次期政権の顔色を読んだ検察が摘発に乗り出すこともあった。

このため初代の李承晩(イ・スンマン)以降、第11代の朴槿恵まで、名目的な大統領2人を除き、権力を振るった9人の大統領全てが国外追放になるか、暗殺されるか、自殺するか、不正事件の摘発で名誉をはく奪されるという悲惨な末路を迎えている(「韓国歴代大統領の末路」参照)。

  • 韓国歴代大統領の末路
①李承晩(1948年7月―1960年4月) 不正選挙を批判され下野、ハワイに亡命。退陣要求のデモには警察が発砲、全国で183人死亡
②尹潽善(1960年8月―1962年3月) 軍部のクーデターによる政権掌握に抗議して下野。議院内閣制の大統領で実権はなかった
③朴正煕(1963年12月―1979年10月) 腹心のKCIA部長により暗殺。1974年には在日韓国人に短銃で撃たれ、夫人の陸英修氏が殺される
④崔圭夏(1979年12月―1980年8月) 朴大統領暗殺に伴い、首相から大統領権限代行を経て大統領に。軍の実権掌握で辞任
⑤全斗煥(1980年9月―1988年2月) 退任後に親戚の不正を追及され隠遁生活。遡及立法で光州事件の責任など問われ死刑判決(後に恩赦)
⑥盧泰愚(1988年2月―1993年2月) 退任後、全斗煥氏とともに遡及立法により光州事件の責任など問われ、懲役刑判決(後に恩赦)
⑦金泳三(1993年2月―1998年2月) 1997年に次男が逮捕、懲役2年判決。罪状は通貨危機を呼んだ韓宝グループへの不正融資関与
⑧金大中(1998年2月―2003年2月) 任期末期に3人の子息全員が斡旋収賄で逮捕
⑨盧武鉉(2003年2月―2008年2月) 退任後、実兄が収賄罪で逮捕。自身も2009年4月に収賄容疑で検察から聴取。同年5月に自殺
⑩李明博(2008年2月―2013年2月) 2012年7月、実兄で韓日議員連盟会長も務めた李相得氏が斡旋収賄などで逮捕、懲役2年
⑪朴槿恵(2013年2月―2017年3月) 2016年12月9日、国会が弾劾訴追案を可決。2017年3月10日、憲法裁判所がそれを認め罷免。3月31日に収賄罪などで逮捕され、4月17日に起訴

盧大統領自殺の恨み

保守系で、最大手紙の朝鮮日報は5月2日の社説「文候補は『盧武鉉の悲劇』を報復するために執権するのか」を載せた。以下、要約だ。

  • 文在寅候補は遊説で「朴槿恵前大統領の友人が国家権力を利用して不正に蓄財した財産はすべて国家が環収する。李明博(イ・ミョンバク)政権による4大河川をめぐる不正などすべて改めて調査し、不正に蓄財された財産があれば環収する」などとした。
  • 裁判が終了した事案を再び取り上げ問題視する文氏の狙いは、もしかすると李明博政権で行われた盧武鉉政権に対する捜査、盧元大統領の自殺に対する恨みを晴らすことにあるのではないだろうか。

韓国社会には不安感が広がる。左右対立の激化に加え、米韓同盟廃棄への恐怖からだ。「米国に守ってもらえない韓国には住みたくない」と明かす韓国人が増す(「文在寅が大統領になったら移民する」参照)。

東北アジアは激動の時代に

もちろん、「反米親北」の新政権に真っ向から立ち向かおうと決意する保守派もいる。その1人、在野の保守運動指導者、趙甲済(チョ・カプチェ)氏は「国民抵抗権」の発動を主張する。

自由と民主主義をうたう大韓民国憲法を否定する政権に対しては実力で戦う権利が国民にはある、との呼び掛けだ。

親米保守派の中にはクーデターも念頭に置く人もいる。建国以来、韓国では2度クーデターが成功したが、いずれも社会が混乱し急速に左傾化した時だった(「『民衆革命』は軍事クーデターを呼んだ」参照)。

北朝鮮の核武装を阻止しようと動く米国と日本。その真っ只中に登場した韓国の「反米親北」政権。展開を読むのは難しい。1つ言えるのは、どう転んでも東北アジアの混乱がより深まることだ。

(次回に続く)

ZAKZAK記事

北朝鮮はゴールデンウイーク中の5日、「米国と韓国の情報機関が、北朝鮮の最高首脳部を狙った生物・化学テロを企てた」と主張し、米韓両国は完全否定した。背景には、世界最強の米軍に包囲された金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長が追い詰められ、国内でクーデターや内乱の兆候が出てきたことがあるという。中国の習近平国家主席による制裁強化の動きと、米国の対北戦略を無にしかねない韓国大統領選(9日投開票)後の動きとは。米国は、韓国新大統領の言動次第で「在韓米軍撤退」「同盟解消」の重大決断に踏み切るのか。ジャーナリストの加賀孝英氏による独走リポート。  「正恩氏は、習氏を『裏切り者』『無能』などと罵(ののし)っている。北朝鮮メディアも中国を直接批判するなど、中朝関係は崩壊した。正恩氏は、米軍特殊部隊の『斬首作戦』や『限定空爆』に異常におびえて、側近すら疑い、わめき散らしている」  旧知の米情報当局関係者はこう語った。そして、「正恩氏は狂乱状態だ」と明かした。  ご承知のように、北朝鮮の秘密警察、国家保衛省は5日突然、「正恩氏を狙った暗殺計画が最近発覚して、粉砕した」「主導したのは、CIA(米中央情報局)と、韓国の国家情報院(国情院)」「米国はテロ国家だ」と、激しく非難した。国営メディア「朝鮮中央通信」が伝えた。

北朝鮮が主張した「暗殺計画」は驚くべきものだ。概要は次の通りだ。  《CIAと協力した国情院が2014年、ロシア極東で働く北朝鮮労働者1人を買収した。主導したのは国情院の李炳浩(イ・ビョンホ)院長だ。韓国の工作員は、北朝鮮労働者と直近で4月20日に接触した》  《80回以上の指示があり、計12万ドル(約1350万円)以上の工作資金が渡された。正恩氏が軍事パレードに出席したときなどに、放射性物質や毒性を含む生化学物質を使う計画だ。標的に接近する必要がなく、死に至るのは半年か1年後。CIAにとっては最善の方法だ》  米韓両国は、即座にこれらを否定した。  言っておくが、北朝鮮は、国連安保理決議を無視して核・ミサイル開発を強行し、今年2月には異母兄の金正男(キム・ジョンナム)氏を猛毒の神経剤VXで暗殺した。そんな凶悪テロ暴走国家、北朝鮮に、他国を批判する資格などない。  旧知の外事警察幹部は「実は十数年前から、米韓情報当局は北朝鮮の軍内部に協力者をつくり、北朝鮮の民主化、金王朝転覆工作を仕掛けてきた」といい、続けた。  「だが、今回の『暗殺計画』はデタラメだ。笑い話だ。北朝鮮は米国をテロ国家呼ばわりして、米国が北朝鮮をテロ支援国家に再指定し、制裁強化に動くのを阻止したい。それで話をつくった。それだけ、正恩氏は追い詰められ、必死ということだ」

事実、北朝鮮内部で大変なことが起きている。以下、複数の米韓情報当局、米軍関係者から入手した情報だ。 「正恩氏は11年に3代目を世襲してから、4回以上の暗殺未遂に遭っている。朝鮮人民軍の犯行とされる。危機感を覚えた正恩氏は、中国から極秘裏に高級ジープなどを輸入し、金日成(キム・イルソン)主席の生誕記念日(4月15日)に、軍幹部にプレゼントして忠誠心を買ってきた。その数、2000台以上という。ところが、昨年から途絶えた。一方で、残酷な粛清と処刑を繰り返し、軍部の怒りは爆発寸前だ」  私(加賀)は前回連載(4月24日発行)で、次の情報を報告した。  (1)正恩氏は、4月15日に「6回目の核実験」を強行する予定だった。だが、米国に「核実験をやれば先制攻撃する」と脅かされて、震えあがり、直前で延期した。  (2)口先だけのぶざまな姿を見て、軍の一部が憤慨し、クーデターの兆候が出てきた。正恩氏は「核実験をやらなければ名誉回復はできない」と追い込まれて、半狂乱になっている。 核実験は8日現在、行われていない。  さらに、北朝鮮人民が怒りを爆発させている。  「軍が、人民から『慰問』名目で、食糧や日用品を強制徴用し始めた。飢餓が始まっている。ガソリン価格も高騰した。農作物に不可欠な肥料も、石炭輸出とバーターで中国から輸入していたが、制裁で断たれた。今年秋の収穫は絶望的だ。朝鮮労働党庁舎の前で、市民が抗議の割腹自殺をした。人民が怒りの声をあげ始めた」

そして、情報は次のように続いている。  「正恩氏がいつどこにいるのか、極秘情報がリークされている。ミサイルの秘密基地の位置、地下秘密基地網の地図、正恩氏の隠れ家…など。米軍の攻撃を受けたら、正恩氏は逃げられない。丸裸だ」  ドナルド・トランプ米大統領は、中国を使って、北朝鮮に「核とミサイル開発の完全放棄」を求めている。妥協はない。加えて、5月末まで、日本海に世界最強の原子力空母「カール・ビンソン」を中心とする第一空母打撃群を展開させる。事実上の海上封鎖を行い、北朝鮮をしめ上げる。さらに、中国がパイプラインを通じた原油の禁油に踏み切れば、北朝鮮は3カ月ともたない。クーデターが起きて、正恩体制は100%倒れる。  だが、重大な懸念がある。韓国の問題だ。  米政府関係者は「悪夢の事態が考えられる」といい、続けた。  「韓国大統領選で、最大野党『共に民主党』の文在寅(ムン・ジェイン)氏が当選すれば、韓国は『反日反米』『従北』路線に突き進む。文氏は『当選直後の訪朝』『南北首脳会談』『北朝鮮への経済支援』を正恩氏に約束している。これが実行されれば米国の努力は水の泡だ。米国内には在韓米軍撤退、韓国との同盟関係解消論も出ている。韓国の真意を問うことになる」  まったく迷惑な国だ。朝鮮半島情勢は依然として緊迫している。正恩氏が玉砕、自滅覚悟で暴走する危険は消えていない。日本は不測の事態に備えなければならない。  ■加賀孝英(かが・こうえい) ジャーナリスト。1957年生まれ。週刊文春、新潮社を経て独立。95年、第1回編集者が選ぶ雑誌ジャーナリズム大賞受賞。週刊誌、月刊誌を舞台に幅広く活躍し、数々のスクープで知られている。

良ければ下にあります

を応援クリックよろしくお願いします。